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2018年11月9日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成30年11月9日(金)16:00~

 

○場所

厚生労働省講堂(低層棟2階)

○出席者

出席委員(14名)五十音順

  赤 羽 悟 美、 今 井 輝 子、 大 森 哲 郎、 岡   淳一郎、
○奥 田 晴 宏、 神 田 敏 子、 佐 藤 雄一郎、 柴 田 大 朗、
  武 田 正 之、 長 島 公 之、 平 石 秀 幸、 増 井    徹、
  森    保 道、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人2名
 

欠席委員(7名)

石 川 欽 也、 大 賀 正 一、  金 子 明 寛、 川 上 純 一、
杉      薫、 代 田 浩 之、◎松 井    陽
 

行政機関出席者

宮 本 真 司 (医薬・生活衛生局長)
森    和 彦 (大臣官房審議官)
山 本    史 (医薬品審査管理課長)
関 野 秀 人 (医薬安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
森 口    裕 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
宇 津    忍 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
鈴 木 章 記 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医薬品審査管理課長 ほぼ定刻になりましたので、また、皆様おそろいですので、「薬事食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日は、お忙しい中、また遅い時間の会議ですが、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日の委員の出席についてですが、石川委員、大賀委員、金子委員、川上委員、杉委員、代田委員、松井委員より、御欠席との御連絡を頂いております。本日、現在のところで当部会委員数21名のうち14名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを報告申し上げます。なお、本日は、審議事項の議題1に関して、国立大学法人神戸大学の曽良一郎先生、武蔵野赤十字病院の泉並木先生を参考人としてお呼びしています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、部会を開始する前に事務局より、所属委員の皆様方の薬事分科会規程第11条への適合状況について御報告させていただきます。今回、全ての委員の皆様より第11条に適合している旨を御申告いただいております。毎度のことではありますが、委員の皆様には書面での御提出を頂いており、御負担をお掛けしておりますが、引き続き御理解と御協力を是非賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 なお、本日、部会長の松井委員が御欠席ですので、本日の会議の進行については、部会長代理の奥田先生にお願いしたいと存じます。それでは、奥田先生、以降の進行をよろしくお願い申し上げます。

○奥田部会長代理 それでは、本日の議題に入ります。まず、事務局から、配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。

○事務局 それでは、配布資料の確認を順番にさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されております資料1~5-7及び資料7をあらかじめお送りしております。このほか、資料6「プラルエント皮下注75mgペン及び同皮下注150mgペンの最適使用推進ガイドライン()」、資料8「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料9「専門員リスト」、資料10「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 また、今回より会議のペーパーレス化に向けた試みとして、机上には従前の紙の資料に加えて、同じ内容の電子媒体を格納したタブレット本体、スタンド、スタイラスペン、操作説明書を配布しております。なお、本日及び次回の医薬品部会では、試行的にタブレットと紙資料の両方を配布することとしておりますので、どちらか見やすいほうを御利用いただければと思います。その後、部会の状況を踏まえ、来年以降から紙資料の一部の廃止について検討していく予定としております。

 タブレットを縦にしていただき、画面が表示されていない場合は、画面下の丸いボタンを2回押してください。画面が表示されましたら議題ごとにフォルダが表示されておりますので、「審議議題1」をタッチしてください。議題1の資料一覧が表示され、御覧になりたい資料名をタッチしていただきますと資料が表示されます。他の資料を御確認いただく場合には、左上の青字「審議議題1」をタッチしていただくと、資料一覧が再度表示されます。また、他の議題を御確認いただく場合には、左上のマイプライベートファイルをタッチしていただくと、再び議題ごとのフォルダが表示されますので、必要に応じてフォルダをタッチして御覧いただくようにお願いいたします。なお、タブレットの動作不良や操作についての御質問などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト(資料10)について、御報告させていただきます。資料10の1ページを御覧ください。「セリンクロ錠10mg」ですが、本品目は「アルコール依存症患者における飲酒量の低減」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページを御覧ください。「プレセデックス静注液200μg「ファイザー」他3規格」ですが、本品目は「集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページを御覧ください。「シポニモド フマル酸」ですが、本品目は「二次性進行型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○奥田部会長代理 今の事務局からの説明に特段の御意見はありますか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆さんの了解を得たものとします。

 それでは、委員からの申出状況について、報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。議題1「セリンクロ」:退室委員:なし。議決には参加しない委員:大森委員、武田委員、平石委員、森委員、山田委員。議題2「プレセデックス」:退室委員:なし。議決には参加しない委員:大森委員、武田委員、平石委員。議題3「シポニモド フマル酸」:退室委員:なし。議決には参加しない委員:大森委員、平石委員、森委員、山田委員。委員からの申出状況については、以上です。

○奥田部会長代理 今の事務局からの説明に特段の御意見等はありますか。では、よろしければ、皆さんに御確認いただいたものとします。

 本日は、審議事項3議題、報告事項2議題、その他2議題となっています。それでは、審議事項の議題1に移ります。議題1について、機構から概要をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1-1及び資料1-2、セリンクロ錠10mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 本剤の有効成分であるナルメフェン塩酸塩水和物は、選択的オピオイド受容体調節薬であり、μ及びδオピオイド受容体に対するアンタゴニスト作用、並びにκオピオイド受容体に対する部分アゴニスト作用を有する化合物です。本申請はアルコール依存症に関わるものですが、これまでアルコール依存症の治療目標は、原則として断酒の達成とその維持とされてきました。しかしながら、近年、アルコール依存症の診療ガイドラインにおいて、断酒のみではなく、飲酒量低減も治療目標の一つと位置付けられました。今般、本剤のアルコール依存症患者における飲酒量の低減に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外では、アルコール依存症に関連する効能・効果では、2017年8月現在、欧州等42の国又は地域で承認されております。

 本申請の専門委員として、資料9に記載されている9名の委員を指名しております。

 臨床成績を中心に審査の内容を説明させていただきます。

 まず、有効性ですが、審査報告書31ページの表31を御覧ください。アルコール依存症と診断され、スクリーニング来院時及び無作為化来院時に、男性で1日平均60g、女性で1日平均40gを超えるアルコールを摂取している患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目であるFASにおける投与後12週の多量飲酒日数(男性で1日60g、女性で1日40gを超えるアルコールを摂取した日数)のベースラインからの変化量について、本剤10mg群及び20mg群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。

 次に、安全性ですが、主な有害事象として、審査報告書39ページの表37に中枢神経系の有害事象の発現状況、審査報告書40ページの表38に、「精神障害関連の有害事象の発現状況」、審査報告書41ページの表39に「消化器系の有害事象の発現状況」を記載しております。これらの有害事象について、一部の事象で本剤群においてプラセボ群より発現割合が高い傾向が認められましたが、重篤な事象や重症度が高度の事象はほとんど認められず、臨床的に大きな問題となる可能性は低いと判断いたしました。

 最後に、審査報告書54ページの1.2「本剤の適正使用について」の項を御覧ください。本剤による治療は、アルコール依存症の専門医療機関に加えて、現在アルコール依存症患者が通院している精神科、消化器内科、プライマリ・ケア医等の医師が所属する専門医療機関以外での処方も想定されます。また、アルコール依存症の治療においては、心理社会的治療が中心であり、薬物治療は補助的なものとされております。したがって、本剤の適正使用のためには、マル1国際疾病分類等の適切な診断基準に基づくアルコール依存症の診断ができる医師がいること。マル2心理社会的治療を含むアルコール依存症治療が実施可能な体制があること。及びマル3専門医療機関であること又は専門医療機関との連携が可能なことを満たす医療機関において実施することが適切と考えております。

 そのため、アルコール依存症治療の十分な経験のない医師においても、本剤を適正使用できるように、「アルコール依存症を専門とする学会(日本アルコール関連問題学会及び日本アルコール・アディクション学会)において、診断、治療体系等の情報を記載した手引きを作成し、本剤を処方する可能性のある医師が多く所属する関連学会の学会員に周知すること」、「アルコール依存症を専門とする学会により、本剤を処方する可能性のある医師が多く所属する関連学会に依頼し、アルコール依存症治療の十分な経験のない医師が本剤を処方する場合には、講習会を受講するよう広く周知すること」、「本剤の処方が想定される又は処方が確認された医師のうち、心理社会的治療の経験が十分でない医師に対して、申請者から講習会への参加を強く促すこと」及び「アルコール依存症を専門とする学会と協力し、非専門医療機関からの紹介患者の受入が可能な医療機関をリスト化し、情報を提供すること」が提案されており、これらの対応は適切と判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品、特定生物由来製品には該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会には報告を予定しています。

 説明は以上です。御審議の程よろしくお願いいたします。

○事務局 事務局より追加で御紹介をさせていただきます。本議題では、本剤の臨床的位置付け等について御説明いただくため、曽良参考人、泉参考人にお越しいただいております。

○奥田部会長代理 それでは、曽良参考人から本議題について御発言をお願いします。よろしくお願いします。

○曽良参考人 本剤の医療上の必要性臨床の位置付けについて、一言申し上げます。アルコール依存、薬物依存の全般にわたっていることですが、長期間の服薬治療によって慢性疾患となっておりますので、再燃・再発が頻繁に起こる疾患という位置付けになっております。今まで本剤が出るまでに抗酒剤という薬はあったのですが、こちらは断酒が前提となっておりますので、断酒状態でなく飲酒した状態で服薬すると、アルデヒドが大量に出て、引っくり返ってしまうという危険な面もあります。ですので、断酒会等、あるいはアルコールアルメスト等は、断酒を原則として手段は精神療法できたのですが、ここ10年から5年は、ハームリダクションという、依存に対しても断酒、断薬ではなくて、一部、服用しながら治療していこうという考え方も起こってまいりました。ですので、それに合う今回の節酒を目的とした薬剤が出るということは、治療の選択が増えて大変好ましいと考えております。

 次に、本剤の適正使用に関してですが、先ほど申し上げたように、薬物依存、特にアルコール依存は再燃・再発が必ず伴うと考えてよろしいのですが、その場合に単に薬だけを処方するだけでは、その治療を継続することは極めて困難です。再燃・再発のときにどう対応するかも含めて、心理社会的なサポートをしっかりすることが必要ですので、その経験を有する医師が本来は治療すべきですが、残念ながら本邦で専門とする医師がそれほど多くありませんので、かかりつけの先生方あるいは必ずしもアルコール依存を専門とする先生方ではなくても治療に関わっていただく必要があるかと思いますが、ただ前提として、その治療に対しての一定の研修なり、あるいは御経験を積んでいただくことが必要ではないかということで、今、機構の方からも御説明があった次第です。以上です。

○奥田部会長代理 ありがとうございました。引き続き、泉参考人から本議題について御発言をお願いします。

○泉参考人 武蔵野赤十字病院院長の泉と申します。専門は消科器内科、主として肝臓を専門にさせていただいております。飲酒に伴う問題として、大量飲酒に伴う肝障害で受診される方が多いことと、大量飲酒に伴う重篤な肝障害で救急搬送されて、生命に関わる状態で入院される方が非常に多いわけです。そうすると、1か月から2か月の長期の入院で、非常に重篤な状況で救命措置をいろいろ必要とする場合が結構多いわけです。

 何とか快復なさって、1か月から2か月のうちに退院なさって、今後は何とか断酒をしてくださいとか、禁酒をしてくださいということをお勧めしますが、退院なさるときは、本当に今回こそ命からがら助けていただいたんで、今回こそ絶対やめますというふうにお誓いなさって、私どもから精神科の医師あるいはアルコール依存専門の医師に御紹介しますが、いや、先生、今回ひどい目に遭いましたので、二度と飲みませんので、いや、今回だけは固く守りますということをお誓いなさって退院なさる場合が多いのですが、大体数箇月の間に、また大量飲酒なさって重篤な肝障害で搬送される場合が非常に多いということです。

 ですから、必ず禁酒をする、断酒をなさるという非常に心掛けの高い方は、専門のアルコール依存あるいは精神科の先生にお願いするわけですが、受診をお勧めしても、なかなか行ってくださらないと。結果として、入院するとか社会的な問題を引き起こすことが非常に多いということです。ですから、多くは肝障害の方ですので、重篤な場合もあります。あるいは膵炎を起こす方もいらっしゃいますが、そういう方に少なくとも肝障害を起こさないような、飲酒量を控えることは非常に重要だろうし、社会的な問題を起こさないためにも重要だろうと思っております。

 今、曽良参考人が御発言なさったように、私も内科から見ていましても、禁酒が必要、節酒が必要ということで、依存症の専門医あるいは精神科の専門医に受診するようお勧めしても、本人がなかなか了解なさらなくて、受診していただけないことが多いので、内科的な肝機能障害という方を非常に大量な飲酒にならないように治療するという意味においては、薬剤は内科の医師がきちんとこの薬剤の特性を本当によく理解して、処方の仕方をきちんと理解した上で使用するというふうにしていかないと、なかなか問題を解決しないと思っております。

○奥田部会長代理 どうもありがとうございました。それでは、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。

○大森委員 ハームリダクション節酒という観点の治療が導入されるのは非常にいいことだと思いました。質問として、内科系の先生方にも有用だということなのですが、これは、これまでの試験で肝機能障害などが改善されるというようなデータもあるのでしょうか。

○奥田部会長代理 事務局からお答えできますか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。肝機能への影響という観点で臨床試験で評価を行っております。審査報告書の43ページの表41を御確認いただければと思います。肝機能に関する検査値等は臨床試験で評価はしているのですが、評価の方法として、悪化した患者はいなかったのかという観点で評価を行っており、そういう観点で本剤群とプラセボ群と比較して、悪化が認められた患者が多いという状況ではありませんでした。ただ、改善する方向だったのかということに関して、臨床試験の中で、もともと重篤な肝疾患等を有する患者は除外されているところなので、現時点では明確ではないと考えております。

○大森委員 肝機能に副作用は出ていないということなのでしょうけれども、例えば国外の試験などで、アルコール性の肝障害の人がこれを服用すると、それも改善するというようなデータはあるのかどうか。

○医薬品医療機器総合機構 我々が把握した限りでは、本剤はもともと申請者の大塚製薬とルンドベック社が共同開発をしているのですが、それで提出された資料には、肝機能障害の患者に対して本剤を投与したというデータは確認できておりません。

○大森委員 実際に使われるようになってからのデータは?。

○医薬品医療機器総合機構 

 公表文献等で、アルコールの摂取量が1日平均210gから60gに減ることで、肝疾患に対してもよい影響があるだろうということが報告されておりまして、そういう患者に対して臨床試験で検討したところ、アルコール摂取量が210gを超えるような患者に対しては本剤群では半分から66%程度、アルコール摂取量が減っているという結果が出ていますので、アルコールによって肝疾患のリスクが高いような集団に本剤を投与すると、それが治まるようなレベルまで飲酒量が減るというところまでは分かってきています。

○大森委員 飲酒量は減るけれども、肝機能の数値は今のところは分からないと。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。もともと障害を持った患者に対してというところはデータがありませんので、今のところは明らかになっておりません。

○大森委員 それでは、実際に使われてからのフォローが大切ということになるのかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 製造販売後調査の中では、そのような評価項目を取るようにしておりますので、そこでまた検討させていただければと考えております。

○奥田部会長代理 ほかにいかがでしょうか。

○平石委員 このアルコール依存症というのは、慢性的で再発と再燃を繰り返すというのが特徴な病態であるわけですが、このお薬の投与期間について、何か制限等は設けられているのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。お手元の資料の医薬品リスク管理計画書(案)1.11の後ろから9ページ目、「14」と書いてあるページを御覧ください。7 セリンクロの投与中フォローアップという「投与中の流れ」の図が記載されています。まず、本剤投与中には、日記等を用いて1か月ごとに有効性を確認していただいて、治療の評価としては3か月ごとを目安にというところで、資材等で情報提供しているところです。一方で、これは臨床試験で3か月で改善が認められたというところからきていて、より長期の有効性については明らかとなっていないところです。

 ですので、この3か月というところを目安に、治療の効果を確認して継続の可否は検討することになるのですが、具体的な投与期間の制限というのは設けておりません。

 今の点に関して、添付文書にも注意喚起を記載しております。1.8の添付文書(案)の1ページの「用法・用量に関連する使用上の注意」を御覧ください。右側の列の一番上の()本剤の投与継続及び治療目標の見直しの要否について定期的に検討し、漫然と投与しないことということで、「国内臨床試験において1年を超える使用経験はない」ということを注意喚起しているところです。

○平石委員 ということは、一応1年をめどにということと理解してよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1年で投与を中止してくださいという注意喚起ではなくて、定期的に確認した上で継続の要否を検討してほしいというところが注意喚起の趣旨となります。

○奥田部会長代理 摂取という効能ですが、大森委員、よろしくお願いします。

○大森委員 添付文書の用法・用量の所で、「服薬せずに飲酒し始めた場合には、飲酒中に気付いた時点で直ちに服薬すること」とあり、その後には、「飲酒後に服薬した際の有効性及び安全性は確立していない」と書いてあるところが妙な組合せになっているような気がするのですが、確立していないにもかかわらず、直ちに服薬することとしたのは、何か訳があるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。まず、この注意喚起の内容の趣旨としては、臨床試験でも、お酒を飲み始めた後に気付いた場合には薬剤を服用するようにというところで、お酒を飲み終わった後に関しては、薬剤を服用しないような状況で実施されておりました。

 その臨床試験の中で、飲酒前に本剤を服用した場合と、飲酒中、お酒を飲み始めた後に本剤を服用した場合の投与のタイミングを記録しており、それによって有効性及び安全性がどうなるのかというところで検討して、本剤は10%以上の割合で飲酒中に服用した場合でも有効性及び安全性に問題がなかったというところで、飲酒中であれば本剤を服用する意義はあるだろうと考えています。

 一方で、飲酒終了後に関しては、本剤を服用しても意義がありませんので、そこは本剤を服用しないようにという趣旨の注意喚起です。

○大森委員 つまり、飲酒中と飲酒後で違うということなわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 そのように考えています。

○大森委員 それは微妙な違いのように思いますけれども。

○奥田部会長代理 大森委員の御発言は、この有効性というのは服用した結果としてお酒を飲まなくなるということですよね、そのときに飲んでいるお酒が。違うのかしら。だから、まだ飲酒中であれば、それ以上は飲まないかもしれないけれども、飲んでしまったらもう結果は出ているわけですよね。そういう意味で、「有効性が確立していない」というのが、すごく不思議な気持ちがするということかと思ったのです。飲酒後に飲んだとしても、そのお薬の効果が体内の血中にとどまって、次のときにそれが効くとか、そういうことではないのですよね。この薬の効果の発揮の仕方というのは。だから、大森委員は「不思議ですね」とおっしゃったのかと思ったのですが。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいたとおりで、飲酒終了後に飲んでも、次の飲酒に有効であるわけではないということで、飲酒後にこの薬剤を飲むものではないということを示している注意喚起です。

○大森委員 もう1つ、多分、表現の問題もちょっとあって、括弧の中の「飲酒後」というのが、飲酒を始めた後にという意味にも取れるのではないかと思うのです。実際には、お酒を飲み終わって、寝る前に飲んでも駄目だという意味なのですよね。ただ、この書き方ですと、飲酒を始めた後にという意味にも取れてしまうので、それで飲酒中と飲酒後が混乱したということで、私の最初の疑問はそこからだったのです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきまして、ありがとうございます。我々も、確かに分かりにくいと感じましたので、注意喚起の記載内容については検討させていただければと思います。

○奥田部会長代理 そこの部分は、文言の問題と併せて検討いただくとして、ほかにいかがでしょうか。

○山田委員 アルコール単独に依存となっている患者以外に、併存症と言うか、例えばニコチン依存とかギャンブル障害を併存しているとか、そういう患者に対して、この薬剤を投与したとき、ほかの依存物質に対する反応がどうなるかというような臨床試験の結果というのは、これまで報告があるのでしょうか。あるいは、そういう患者に特段の注意をする必要があるかどうか、そういったことは情報としてありますでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。本剤の臨床開発の中では、基本的にアルコール依存症の患者を対象としており、そのほかの依存症の患者を対象として、体系的に有効性等を確認した臨床試験等は余りないところですので、現時点ではその辺りは明らかではないと考えています。基本的には、アルコール依存症の患者に服薬していただく薬剤だと考えております。

○山田委員 分かりました。リスク管理計画の中にも、そういったことは入らないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤は製造販売後の調査を実施することが計画されており、その中で様々な合併症、先ほど御指摘いただいた肝機能障害、若しくは精神疾患、他の依存症というところは収集することになっておりますので、もし調査の中で、そういう患者が入ってきたら、影響については確認できると思います。

○山田委員 分かりました。

○奥田部会長代理 ほかに、このお薬について、御質問、御意見はございますか。

○神田委員 承認の条件として、治療を適切に実施することができる医師によってのみ処方されるような適切な措置を取るようにということが条件として載っておりますが、先ほど適正使用についての御説明があったので、ここに書かれていることかなと思うのですが、非専門医がやる場合もあるので手引きを作るということと、講習会を開催するとなっています。具体的には大体、こういうことの内容で、この条件はクリアできるということなのでしょうか。講習会については、必ず講習会を受けなければいけないという強い調子では書いていないので、開催します、あるいは呼び掛けますという段階でとどまっているような気がしましたので、その辺は必ず受けなさいということでもなく、この条件はクリアできるかと考えてよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。このアルコール依存症治療における心理社会的治療自体はこれまでも医療現場では実施されてきたところで、特殊な治療法ではないと考えています。ただ、これまでアルコール依存症治療で、断酒のみを治療目標として治療を行ってきたところで、近年は飲酒量低減というのが目標の1つとされて、位置付けが高まってきております。

 また、最近では、このアルコール関連問題に関して、早期介入の必要性も高まってきておりまして、依存症治療を専門としている医療機関以外の医療機関でも、こういったアルコール依存症の患者を診療する機会というのは増えてきていると伺っているところです。

 したがいまして、この「心理社会的治療の実施若しくは本剤の治療」という所自体で、何か特殊な技能等を有するような治療ではないと、我々としては考えています。

 ただ、先ほど御説明させていただいたとおり、比較的新しい治療法であり、プライマリ・ケア医などを含めて、本邦の医療現場に飲酒量低減という治療自体が広く浸透しているものではないと考えておりますので、上市した場合に、十分な知識とか経験のない医師によって、その学習の機会が与えられないまま使用される可能性があるのではないかというところを、もともと懸念して今回の検討を行ったところです。

 これらの背景から、特殊な手技や設備が必要な薬剤なので実施されているような企業による実技講習とか、eラーニングを受講した医師を登録して、それらの医師に限定するような対応をされている薬剤もあるとは存じているのですが、そのような医師を限定して対応するというよりは、適切な依存症治療の方法について、各学会とも協力して広く周知していくということが重要なのではないかと考えました。

 講習会を受けなかった医師に関して、完全に手当がされないわけではなくて、申請者のほうでも、本剤の処方を行った医師をリスト化して、それぞれ市販後に、そういう先生方を回って、アルコール依存症治療の経験ですとか、講習会受講などを確認することになっていまして、その中で余りにも不適正な状態が続くようでしたら、また対応を検討することにはされておりますので、こういった対応で十分ではないかと考えているところです。

○神田委員 分かりました。ただ、この場合は軽度な依存症の方を対象にしたお薬ですよね。だから、重度なのか軽度なのかという判断は難しいのかなと素人なりに思ったものですから。それで大丈夫であるということであれば、結構です。

○奥田部会長代理 よろしいでしょうか。

○柴田委員 今の点について手続上のことを教えてください。この承認条件の内容は「適切な措置を講じること」という書き方になっているのですが、これは何らかの対応を取ったら、もうこの承認条件が解除されるということではなく、再審査期間終了まで、この承認条件は付き続けるという理解で正しいですか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的には、再審査期間完了時までは維持されると考えています。

○奥田部会長代理 森委員、お願いします。

○森委員 こちらの薬剤は他国でも販売されているとお聞きしていますが、他国でも日本と同じように飲酒の1、2時間前に服用するという用法で発売されているのでしょうか、若しくは飲酒の有無に関係なく定時に服用するようにとなっているものなのでしょうか。

 今、お聞きしている理由は、飲酒の1時間前にお薬を服用するということですと、飲酒を医師が容認しているというように取れるので、例えば30日間処方して、30日毎日服用し、飲酒するかしないかは患者の状況で決まるというのであれば、通常の薬剤は理解しやすいのですが、「今日はお酒を飲むからお薬を飲もう」というようになるので、そのように各国でも使用されているのか、若しくは日本の用法はこのようにしているということなのか、状況が分かったら伺いたいと思いました。

○医薬品医療機器総合機構 まず、海外の用法・用量について御説明いたします。配布している資料の1.6「外国における使用状況等に関する資料」を御覧ください。初めに欧州の添付文書案があるのですが、後ろのほうに、その日本語訳があり、その日本語訳のほうの1ページを御確認いただければと思います。4.2「用法・用量」という所の「用量」の5行目からですが、「セリンクロは頓用で用いる:患者が飲酒のおそれを感じた日に、望ましくは飲酒が予想される時刻の1~2時間前に1錠服薬する。セリンクロを服薬せずに飲酒し始めた場合は、できる限り早く1錠服薬する」というところで、用法・用量になっていまして、日本と同じ用法・用量とされております。

○森委員 表現としては、この表現のほうが望ましいと今、思いました。今の添付文書の表現ですと、「飲酒の1、2時間前に」と簡単に書かれているので、摂取すればよいということですので、飲酒することに対しては、是認ではありませんけれども、禁止はしていないというニュアンスに取れるのですが、これはこのように書くことが基本的にはよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤を服用する場合には必ず飲酒をするとか、飲酒を許容しているものではなくて、基本的には飲酒量低減の意思がある患者にのみ使用されますし、心理社会的治療によって飲酒量低減の動機付けはされている患者に使用される薬剤と考えておりますので、必ず本剤を投与している場合には飲酒を許容しているというものではないと考えております。

 御指摘の点について、情報提供資材等に記載できればと考えますが、いかがでしょうか。

○森委員 患者が、今日は飲酒しないという日は、基本的には飲まないという運用でと。

○医薬品医療機器総合機構 その点は記載させていただきます。

○森委員 この薬効が出てくると、だんだん飲酒する日が減少してくるので、全く飲まない日も出てきて、お薬を飲まない日も増えてくると期待してよいということでしょうか。これは、もともと飲酒しない日も連用する薬剤ではないと理解してよろしいのでしょうか。御専門の先生の御意見も頂ければ助かります。

○曽良参考人 基本的に、先ほどの御質問で、飲酒をしているときは必要ないのかどうかというものがあったと思うのですが、まず前提として、アルコール依存の方は飲まない日はほとんどありません。ですので、基本的にずっと飲んでいるわけです。あえて「飲まないときは服用しない」と書かれていたのは、結局アルコールを摂取したときに報酬効果が出るので、それを抑制する薬であるから、アルコールを飲んでいないときにはその効果は期待できないという意味です。

 残念ながら、このお薬は、精神薬と言えども、決して軽症の方が服薬するわけではありませんので、重症の方でも断酒の意思がない方に対して、ハームリダクションという考え方で節酒をお勧めして服薬していただくということですので、基本的に連日飲酒されている中で量が減っていくということですから、現実的には飲酒をしない日がない前提で治療が進んでいくとお考えくださったほうが、現実的で実際に即しているかと思います。

○森委員 ありがとうございます。医療の現場では、恐らく多くの依存症の患者は平日は何とか夜だけ飲んでいますが、土日は朝から飲んでいる方も多いので、ほぼ毎日飲酒されているし、その日の一番最初に飲むときの前に飲むようにするということが原則だということでよろしかったでしょうか。そういう理解でよろしいでしょうか。

○曽良参考人 ただ、いつ飲むかというのは患者によって違いますので、基本的にはお薬が入っているほうがベターです。大体1日のうちで、素面でいないといけない就労の時間を除けば、かなりの頻度でお酒が入っているとお考えいただいたほうがよろしいかと思います。

○森委員 先行して、この薬剤を服用するということがいいと。

○曽良参考人 そういうことです。

○森委員 理解しました。ありがとうございました。

○奥田部会長代理 事務局から追加の発言等はよろしいですか。

○医薬品審査管理課長 すみません、少し戻らせていただきますが、先ほど承認条件についてのお尋ねが柴田委員よりございました。この承認条件については、再審査期間を終えての再審査の後も、しっかりした体制を維持するという意味で、このままいくことを想定しております。

○奥田部会長代理 そろそろ皆さんの議論は出尽くしたかもしれませんが、ほかに何かございますか。なければ議決に入ります。なお、大森委員、武田委員、平石委員、森委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。曽良参考人、泉参考人は御退席ください。大変ありがとうございました。

 それでは、議題2に移ります。議題2について、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、プレセデックス静注液200μg「ファイザー」他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 本剤の有効成分は、メデトミジンのD体であるデクスメデトミジンであり、選択的な中枢性αアドレナリン受容体作動薬です。本邦において「集中治療における人工呼吸中及び離脱後の鎮静」並びに「局所麻酔下における非挿管での手術及び処置時の鎮静」の効能・効果で既に承認されております。今般、集中治療下の小児患者を対象とした国内臨床試験成績等を基に、小児患者に対する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。なお、2018年7月時点で、海外において小児に対する用法・用量は承認されておりません。本申請の専門委員として、資料9の2ページに記載されております4名の委員を指名しました。

 続いて、審査内容について臨床試験成績を中心に御説明いたします。本品目の有効性については、審査報告書9ページの表8を御覧ください。集中治療室にて挿管下で鎮静を必要とする修正在胎45週以上17歳未満の小児患者を対象とした国内第III相試験(0801017試験)において、主要評価項目は治験薬投与開始後24時間又は人工呼吸終了のいずれか早いほうまでの期間に適切な鎮静に到達・維持するために人工呼吸中にレスキュー鎮静薬であるミダゾラムを使用しなかった被験者の割合とされました。その結果は、表8にお示ししたとおりであり、全体集団における有効割合の95%信頼区間の下限は、あらかじめ設定された閾値である40%を上回りました。以上の試験成績に基づき、集中治療下の小児患者における鎮静に関する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 次に、安全性について御説明いたします。9ページの下から2行目を御覧ください。小児患者を対象とした本試験において、有害事象は87.3%に認められました。本剤との因果関係が否定されなかった事象としては、徐脈、低血圧、呼吸抑制、嘔吐等が挙げられ、本剤投与に際しては、これらの有害事象に注意が必要であると判断いたしました。しかしながら、いずれも成人において既に知られている事象であり、小児患者に対する本剤投与により、新たな安全性の懸念は認められず、本剤の使用は小児においても許容されるものと判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は、新用量医薬品に該当することから、再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○奥田部会長代理 委員の先生方から、御質問、御意見をお願いいたします。よろしいですか。

 1点、私から確認ですが、今、事務局から紹介いただいた表8で、読んでいて、これはオープンの試験なので思ったのですが、閾値である40%を上回ると有効ということですが、40という数字はどこから出てきたのか、この資料には何か説明は特になかったように思いますが。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。40%という閾値について、申請者は、成人を対象とした同様のICU下での成人患者を対象とした国内外の臨床試験成績等に基づいて設定したと説明しております。成人試験の成績については、国内試験の成績が添付文書に掲載されておりますので、1.8添付文書()の「臨床成績」の項を御覧ください。4ページ目の右段の下ほどにグラフがあります。成人での同様の患者における試験成績になります。プラセボ対照試験です。こちらにおいては、国内試験が●、海外試験が○で示されており、プラセボではいずれも大体40%程度、本剤では8090%程度という成績が得られております。こちらに加えまして、医学専門家からは、「小児集中治療では鎮静薬を用いずに鎮静管理を行うことはなく、プラセボでは40%は得られない。医療現場では必要に応じて複数の鎮静薬、あるいはレスキュー鎮静薬を用いて鎮静管理を行っており、単独で有効割合が40%以上であれば十分臨床での使用における有用性を示すものである」という意見が得られているとのことです。

○奥田部会長代理 どうもありがとうございます。ほかにプレセデックス錠の小児用量の件で、御意見、御質問はありますか。よろしいですか。特段なければ、それでは、議決に入ります。なお、大森委員、武田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題3に移ります。議題3について、事務局から概要を説明してください。

○事務局 議題3、資料3、シポニモド フマル酸を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料3の2つ目のタブ「評価報告書」のタブをお開きください。報告書1ページの中段を御覧ください。申請者は、ノバルティスファーマ株式会社、予定される効能・効果は、二次性進行型多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制となります。まず、1ページの1.対象患者数について御説明いたします。二次性進行型多発性硬化症は、指定難病である多発性硬化症の病型の1つであり、また、多発性硬化症の患者数は約2万人と報告されていることから、患者数に関する基準は満たしております。

 次に、2.医療上の必要性について、1ページの下段から御説明いたします。多発性硬化症は、臨床経過に基づき、再発寛解型、二次性進行型、一次性進行型の3病型に分類され、このうち二次性進行型は、再発寛解型として経過した後に、「再発の有無にかかわらず障害が徐々に進行する」病型と定義されています。

 2ページ目、二次性進行型では、徐々に歩行能力の低下、認知機能障害、延髄機能障害、視力障害など、日常生活に深刻な影響を及ぼす障害が見られるようになり、最終的には歩行困難となります。国内では、多発性硬化症に対する薬剤として、インターフェロンβ、フィンゴリモド塩酸塩、ナタリズマブ等が承認されておりますが、これらの薬剤は、主に再発寛解型の患者を対象とした臨床試験成績に基づき承認されており、今回の二次性進行型の患者に対する十分な有効性のエビデンスを有する薬剤はありません。

 一方、本剤は、フィンゴリモド塩酸塩と同じスフィンゴシン1-リン酸受容体調節薬であり、二次性進行型の患者を対象とした国際共同第III相試験が実施され、本剤群はプラセボ群と比較して、身体的障害進行及び臨床的再発をプラセボに比べ有意に抑制したという結果が得られております。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、2ページ目の下段から、3.開発の可能性について御説明いたします。先ほどの御説明のとおり、国際共同第III相試験において二次性進行型の患者に対する効果が確認されておりますので、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○奥田部会長代理 委員の先生方から、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。二次性進行型の多発性硬化症の再発予防、それから、身体障害の進行抑制ということで、指定ということですが、要件は満たしているという説明でしたが、この要件について、特段の御質問と御意見がないようでしたら、議決に入りたいと思いますが、よろしいですか。では、議決に入ります。なお、大森委員、平石委員、森委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。それでは、御異議がないようですので、指定を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、報告事項に移ります。報告事項について、事務局から説明をお願いします。

○事務局 事務局より、報告事項について御説明させていただきます。はじめに、報告事項、議題1、プラルエント皮下注75mgペン及び同皮下注150mgペンの製造販売承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料No.4を御覧ください。本剤は、LDL受容体の分解に関与するPCSK9に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体であるアリクロマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする注射剤です。本邦では、本剤は2016年に心血管イベントリスクが高く、スタチンで効果不十分な家族性高コレステロール血症及び高コレステロール血症に係る効能・効果で承認されております。今般、サノフィ株式会社により、心血管イベントリスクが高く、スタチンによる治療が適さない家族性高コレステロール血症及び高コレステロール血症に係る効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。

 機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。また、提出された申請資料に誤記載がありましたので、審査報告書を2箇所訂正させていただきます。1箇所目は、審査報告書7ページ30行目に「CYP3A4阻害剤(フィブラート系薬剤、免疫抑制薬、アゾール系抗真菌薬又はエリスロマイシン等)の併用」と記載されていますが、正しくは、「CYP3A4阻害剤(免疫阻害薬、アゾール系抗真菌薬又はエリスロマイシン等)又はフィブラート系薬剤の併用」ですので、修正させていただきます。2箇所目は、13ページ32行目に、「CYP3A4阻害剤の併用」と記載されていますが、正しくは、「CYP3A4阻害剤又はフィブラート系薬剤の併用」ですので、こちらも併せて修正させていただきます。説明は以上でございます。

○奥田部会長代理 委員の先生方から、この件について御質問がありましたらお願いいたします。報告事項ですので、特段の御質問がなければ、この議題1については御確認いただいたものとします。関連で事務局から引き続き、説明をお願いします。

○事務局 資料No.6を御準備ください。今般、アリロクマブ(遺伝子組換え)の効能追加に伴う最適使用推進ガイドラインの改訂案を作成しておりますので、その改訂内容について御説明いたします。2ページ目の「1.はじめに」を御覧ください。改訂の対象の品目は、プラルエント皮下注75mgペン及び150mgペンであり、HMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない患者に対しての効能・効果及び用法・用量の追加を行う予定です。8ページ目から、今回の効能・効果及び用法・用量の追加に係る臨床試験成績を追加しております。15ページ目、「5.投与対象となる患者」について、今回、効能追加されたスタチンによる治療が適さない患者を具体的に示しております。対象として想定しているのは、いずれのスタチンについても、マル1副作用の既往等によりスタチンの使用が困難であること、マル2スタチンの使用が禁忌とされていること、のいずれかの条件に合致している方です。また、17ページ目、「6.投与に際して留意すべき事項」のマル2投与方法について」、今回、スタチンの治療が適さない患者に対象を拡大することに伴い、「スタチンの投与が適さない場合を除き、スタチンと併用すること」に改訂を行う予定です。最適使用推進ガイドライン改訂内容案の説明は、以上となります。

○奥田部会長代理 新たに効能・効果の変更に伴って最適使用推進ガイドライン改訂を行うということですが、委員の先生方から御質問等がありましたらお願いいたします。最適使用推進ガイドラインは、分科会にもっていくというものではないのですね。報告はあくまでも、最初のアリクロマブの話のところだけということですね、確認です。

○事務局 分科会に報告いたします。

○奥田部会長代理 分かりました。この件についてなければ、報告事項の議題2について説明をお願いします。

○事務局 続いて、報告事項、議題2「医療用医薬品の再審査結果について」御報告いたします。資料番号は、5-1~5-7で、これらは各品目の医薬品再審査確認等結果通知書となっておりますので、まとめて御報告させていただきます。資料5-1は、一般的名称は「オランザピン」、販売名は「ジプレキサ錠2.5mg他3規格、ジプレキサザイディス錠2.5mg他2規格」のものです。資料5-2は、一般的名称は「ナルフラフィン塩酸塩」、販売名は「レミッチカプセル2.5μg及びノピコールカプセル2.5μg」のものです。資料5-3は、一般的名称は「ビマトプロスト」、販売名は「ルミガン点眼液0.03%」のものです。資料5-4は、一般的名称は「フェンタニルクエン酸塩」、販売名は「イーフェンバッカル錠50μg他5規格」のものです。資料5-5は、一般的名称は「ミルタザピン」、販売名は「リフレックス錠15mg、同錠30mg、レメロン錠15mg及び同錠30mg」のものです。資料5-6は、一般的名称は「エンタカポン」、販売名は「コムタン錠100mg」並びに一般的名称は「レボドパ/カルビドパ水和物/エンタカポン」、販売名は「スタレボ配合錠L50及び同L100」のものです。資料5-7は、一般的名称は「クロピドグレル硫酸塩」、販売名は「プラビックス錠25mg及び同錠75mg」のものです。

 これらの品目について、製造販売後の特定使用成績調査、使用成績調査及び製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われ、申請の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと。すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。報告事項に関する事務局からの御説明は、以上でございます。

○奥田部会長代理 委員の先生方から御質問がありましたら、お願いいたします。よろしいですか。報告事項2については、御確認いただいたものといたします。

 次は、その他事項をお願いします。

○事務局 その他議題2、資料No.7、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について御説明いたします。

 医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議、以下、「検討会議」と呼びますが、検討会議とは、欧米等では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品及び適応について、開発要望を募集し、要望があれば本邦での医療上の必要性の評価、承認のために必要な試験の有無及び種類の検討を行う会議です。はじめに、検討会議による検討における本「事前評価」の位置づけについて御説明いたします。

 資料7の31ページを御覧ください。資料の右上から御説明いたします。学会や患者会等から要望が挙げられ、検討会議で医療上の必要性を評価し、医療上の必要性が高いと評価された医薬品については、厚生労働省が企業に対して開発要請を行います。企業は、開発の手段として、その医薬品が臨床現場において既に医学薬学上公知である場合には、公知申請を選択し、本邦において有効性・安全性を確認する試験が必要な場合には治験等を行います。本部会での「事前評価」につきましては、図の真ん中左下あたりに記載されておりますが、企業が、開発の手段として公知申請を希望し、検討会議で公知申請に該当すると判断された場合に、公知申請の「事前評価」として御確認いただくこととしております。本部会での御確認を頂いた後に、企業が公知申請を行い、機構での審査を経て、改めて部会で承認をいただくという流れになります。それでは、検討会議で公知申請を行うことが適当と判断されましたカンデサルタン シレキセチルについて御説明いたします。

 3ページを御覧ください。本要望は、日本小児循環器学会、日本小児腎臓病学会より、小児高血圧症に対する適応追加の要望です。本要望の公知該当性について説明いたします。

 有効性の評価については、2122ページを御覧ください。要望内容に関して、カンデサルタン シレキセチルは海外の臨床試験成績、教科書及びガイドライン並びに本邦のガイドライン及び使用実態調査を踏まえ、小児高血圧症に対する本剤の有効性は、医学薬学上公知と判断可能と評価されました。

 安全性の評価については、2224ページを御覧ください。海外臨床研究、国内外の副作用報告及び国内での使用実態調査を踏まえると、カンデサルタン シレキセチルについて、日本人及び外国人いずれにおいても、成人と比較して、小児でのみ注意すべき新たな副作用は認められていないこと、日本人小児及び外国人小児において報告された有害事象又は副作用は類似しており、日本人小児において特に発現割合が高くなる事象は認められなかったこと、また、本薬を日本人小児に投与した際にも他のARB投与時と同様、適切な管理がなされるものであると考えられること、以上より、検討会議は、日本人小児高血圧症患者に本薬を投与する際に発現する副作用は、臨床使用にあたって適切に管理可能と評価されました。以上より、本要望内容の臨床的有用性及び安全性は医学薬学上公知と判断可能と評価されました。

 続きまして、効能・効果及び用法・用量等の記載の妥当性について御説明いたします。効能・効果の評価については、24ページを御覧ください。日本小児循環器学会及び日本小児腎臓病学会から、効能・効果に「小児高血圧症」を記載する要望がなされていましたが、本薬は既に「高血圧症」の効能・効果を有していることから、検討会議は、効能・効果は変更せず、小児の用法・用量を追加することが適切と判断されました。

 用法・用量の評価については、2427ページを御覧ください。海外臨床試験、海外の教科書、ガイドライン、及び承認用量、国内の成書、ガイドライン、及び使用実態調査を踏まえると、カンデサルタン シレキセチルの高血圧症に対する用法・用量に、「通常、1歳以上6歳未満の小児には1日1回カンデサルタン シレキセチルとして0.050.3mg/kgを経口投与する。通常、6歳以上の小児には1日1回カンデサルタン シレキセチルとして2~8mgを経口投与し、必要に応じ12mgまで増量する。ただし、腎障害を伴う場合には、低用量から投与を開始し、必要に応じて8mgまで増量する。」、そして、<用法・用量に関連する使用上の注意>に、「小児に投与する場合には、成人の用量を超えないこと。」を追加することが適切と判断されました。以上でございます。

○奥田部会長代理 委員の先生方から検討会議の公知申請の件について、御質問等がありましたらお願いいたします。よろしいですか。それでは、本議題については御確認いただいたものといたします。

 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告等はありますか。

○事務局 次回の部会は、12月3日()、午後4時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。

○奥田部会長代理 本日は、これにて終了とさせていただきます。お疲れさまでした。

( 了 )

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)

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