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2018年3月1日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成30年3月1日(木)13:00~

 

○場所

厚生労働省専用第22会議室

○出席者

出席委員(18名)五十音順

赤 羽 悟 美、  石 川 欽 也、 今 井 輝 子、  大 賀 正 一、
大 森 哲 郎、○奥 田 晴 宏、 金 子 明 寛、  川 上 純 一、
神 田 敏 子、  佐 藤 雄一郎、 柴 田 大 朗、  杉       薫、
鈴 木 邦 彦、  武 田 正 之、 増 井    徹、 ◎松 井    陽、
森    保 道、  山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名
 

欠席委員(3名)

磯 部 光 章、 岡   淳一郎、 平 石 秀 幸
 
 

行政機関出席者

宮 本 真 司 (医薬・生活衛生局長) 
森    和 彦 (大臣官房審議官) 
山 本    史 (医薬品審査管理課長) 
佐 藤 大 作 (医薬安全対策課長) 
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長) 
宇 津    忍 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
林    憲 一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。本日の委員の出欠についてですが、磯部委員、岡委員、平石委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、石川委員、大森委員より、遅れての御到着との御連絡を頂いております。ほかにも少し御到着が遅れておられる先生がいらっしゃいますが、本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち15名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。なお、本日は、審議事項、議題1に関して、横浜市立大学大学院の齋藤知行先生に参考人としてお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
部会を開始する前に、事務局より、所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について報告いたします。今回、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいております。委員の皆様におかれましては、会議開催の都度、書面を御提出いただいており、御負担をおかけしておりますが、引き続き何とぞ御理解、御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。それでは、以降の進行を松井部会長にお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告をお願いします。
○事務局 順番に、配布資料の確認をいたします。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1から資料10-21をあらかじめお送りしております。このほか、資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。
続きまして、資料13、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告いたします。1ページ、ヘルニコア椎間板注用1.25単位ですが、本品目は保存療法で十分な改善が得られない後縦靱帯下脱出型の「腰椎椎間板ヘルニア」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
2ページ、オルケディア錠1mg、及び同錠2mgですが、本品目は「維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
3ページ、ラパリムスゲル0.2%ですが、本品目は「結節性硬化症に伴う皮膚病変」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
4ページ、スージャヌ配合錠ですが、本品目は「2型糖尿病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
5ページ、ガラフォルドカプセル123mgですが、本品目は「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
6ページ、シグニフォーLAR筋注用キット10mg、ほか3規格ですが、本品目は「クッシング病(外科的処置で効果が不十分、又は施行が困難な場合)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
7ページ、アジレクト錠0.5mg、及び同錠1mgですが、本品目は「パーキンソン病」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
8ページ、タウリンですが、本品目は「MELASにおける脳卒中様発作の再発抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○松井部会長 ただいまの事務局からの説明に特段の御意見はありませんか。委員の先生方、よろしいですか。それでは、本部会の審議事項に関する競合品目・競合リストについては、委員の皆さんの了解を得たものといたします。
続いて、委員からの申入れ状況について報告してください。
○事務局 各委員からの申し出状況については、次のとおりです。議題1、ヘルニコア、退室委員、議決には参加しない委員は共になし。議題2、オルケディア、退室委員なし、議決には参加しない委員は大森委員、武田委員、森委員。議題3、ラパリムス、退室委員、議決には参加しない委員は共になし。議題4、スージャヌ、退室委員なし、議決には参加しない委員は大森委員、杉委員、武田委員、森委員、山田委員。議題5、ガラフォルド、退室委員なし、議決には参加しない委員は大森委員、森委員。議題6、シグニフォー、退室委員なし、議決には参加しない委員は大森委員。議題7、アジレクト、退室委員なし、議決には参加しない委員は川上委員、武田委員。議題8、タウリン、退室委員、議決には参加しない委員は共になし。委員からの申し出状況については以上です。
○松井部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等ありますか。よろしいですか。それでは、皆さんに御確認を頂いたものといたします。
本日は、審議事項8議題、報告事項2議題となっております。早速、審議事項の議題1に移ります。議題1について、医薬品医療機器総合機構から概要を説明してください。
○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品ヘルニコア椎間板注用1.25単位の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。腰椎椎間板ヘルニアは、脊柱管内に突出又は脱出した腰椎椎間板組織(ヘルニア)が馬尾や神経根を圧迫し、腰痛、下肢痛、下肢の神経症状等を引き起こす病態であり、主に加齢に伴う椎間板の退行変性、重量物挙上やスポーツ等の力学的負荷により発症する疾患です。腰椎椎間板ヘルニアの形態分類について、審査報告書2ページの図1を御覧ください。ヘルニアの形態と後縦靱帯の穿破の有無により、四つの形態に分類されています。
本剤の有効成分であるコンドリアーゼは、グラム陰性桿菌の一種であるProteus vulgarisから分離精製されたグリコサミノグリカン分解酵素であり、髄核の主な成分であるプロテオグリカンを構成するグリコサミノグリカンのうちコンドロイチン硫酸、コンドロイチン及びヒアルロン酸を分解し、髄核の保水能を低下させることにより、椎間板内圧を低下させ、ヘルニアの臨床症状を改善すると考えられております。本申請の専門委員として、資料12に記載されている10名の委員を指名しております。
臨床成績を中心に、審査の内容を説明いたします。まず、有効性ですが、審査報告書27ページの表15を御覧ください。膨隆・突出型又は後縦靱帯下脱出型の患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目であるFASにおける投与後13週の過去24時間の最悪時の下肢の痛み(以下、下肢痛)のベースラインからの変化量について、本剤1.25U群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。次に、審査報告書29ページの表16を御覧ください。審査中に試験結果の速報が得られた米国第III相試験では、主要評価項目であるITTにおける投与後13週の過去24時間の最悪時下肢痛のベースラインからの変化量において、本剤1.25U群とシャム処置群の間に統計学的な有意差は認められませんでした。申請者はこの結果について、試験に参加した被験者の背景因子が国内臨床試験と米国第III相試験で異なっており、米国第III相試験に組み入れられた患者の多くが本剤の投与対象として適切ではなかった可能性があると考察しております。一方、本邦では、国内第II/III相試験及び国内第III相試験の両試験において、本剤1.25Uの有効性が再現性をもって確認されていることを踏まえると、米国第III相試験の成績は、国内臨床試験で認められた本剤の有効性を否定するものではないと判断しております。
次に、安全性ですが、審査報告書32ページの表19を御覧ください。椎間板及び周辺組織への影響について、国内臨床試験では、プラセボ群と比較して本剤群で、腰痛に関連する「椎間板の高さがベースラインから30%以上低下した被験者」、及び隣接する椎体の変性を示す「Modicの分類がType1~3に変化した被験者」が多く認められましたが、その程度及び発現割合は手術療法であるヘルニア摘出術で認められるものを大きく上回るものではありませんでした。また、審査報告書40ページの表26を御覧ください。本剤投与後の長期予後を検討する臨床研究において、治験薬投与後に腰椎椎間板ヘルニア切除術を実施した被験者は、国内臨床試験のプラセボ投与対象集団で13.3%、本剤投与対象集団で7.9%であり、統計学的に有意ではないものの、本剤投与集団で、やや手術に至った症例が少ない傾向でした。また、椎間板ヘルニアの再発や椎体への影響が手術療法を大きく上回る可能性は示唆されませんでした。
戻って、審査報告書36ページの表24を御覧ください。本剤は異種タンパク質であること。類薬として米国で販売されていたキモパパインでは、市販後に重度のアナフィラキシーが集積したこと等により市場撤退に至っていることから、潜在的にアナフィラキシーのリスクを有するものと考えられます。国内臨床試験では過敏症関連の有害事象の発現割合は、プラセボ群と比較して本剤群の投与時にわずかに高くなる傾向が認められたものの、重篤な事象は認められませんでした。
審査報告書51ページの「1.2.1 アナフィラキシー関連の有害事象について」の項を御覧ください。合計1,000例以上の患者に本剤投与が行われた2つの海外臨床試験においてもアナフィラキシーが疑われる事象は認められていないことを踏まえると、現時点では本剤投与によるアナフィラキシーのリスクが臨床上、大きな問題となる可能性は低いと考えております。なお、本剤投与後にアナフィラキシーが発現する可能性は否定できないことから、添付文書で注意喚起を行った上で、本剤のリスク並びに過敏性反応、又はアナフィラキシーが認められた場合の具体的な対処方法について、医療現場に十分に情報提供する必要があると考えております。
関連して、審査報告書53ページの「1.5 製造販売後の適正使用について」の項を御覧ください。本剤は椎間板内投与製剤であり、変形・彎曲等を生じた脊椎に対し、神経を損傷することなく本剤を投与するためには適切な投与手技を要することを踏まえ、本剤の安全性、投与手技等について医療現場に適切に情報提供すること、販売初期には、本剤を投与可能な医師要件として、椎間板穿刺の経験を有しており、かつ日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医、又は日本脊髄外科学会認定脊髄外科指導医、それらの指導医の指導下にある医師、並びに本剤の治験に参加した医師との規定を定めることが申請者から提案されております。また、アナフィラキシー又は過敏性反応が認められた場合に迅速かつ適切な処置を行うことが可能な医療機関に限定して導入することとされております。なお、医師要件については、関連学会と連携して教育研修セミナー等を開催すること、及び本剤の製造販売後安全性情報等も加味して、必要に応じて見直すことが計画されております。
最後に、効能・効果について、戻って審査報告書31ページの表18を御覧ください。国内第II/III相試験及び国内第III相試験では、膨隆・突出型の患者で本剤の有効性が減弱する傾向が認められました。また、病態生理学的にも、膨隆・突出型の患者では髄核の線維輪からの脱出が認められず、軟骨終板を伴って突出した線維輪を含有するヘルニアが多い可能性があることから、本剤の投与対象は後縦靱帯下脱出型の患者に限定することが適切と判断いたしました。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品、特定生物由来製品には該当せず、原体及び製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○事務局 事務局より追加で御紹介させていただきます。本議題では、本剤の臨床的位置付け等について御説明いただくため、齋藤参考人にお越しいただいております。
○松井部会長 齋藤参考人から、本議題について御発言をお願いいたします。
○齋藤参考人 横浜市大の齋藤です。よろしくお願いいたします。初めに腰椎椎間板ヘルニアについて、少しお話させていただきます。これは整形外科の病気の中で、一番よく知られた脊椎の病気であり、ここにいらっしゃる方々も皆さんよく御存じかと思います。このヘルニアは、下位腰椎、第4、第5腰椎間の椎間板と第1仙椎との間の、いわゆるL5S1間の椎間板に発生することが大部分で、いわば下位腰椎に特異的に発生する疾患であると。高齢者においては、それ以外の高位に発生することがありますが、頻度的には極めて希な疾患ということになります。先ほど機構からのお話がありましたとおり、その原因としては椎間板の変性、退行変性に起因すると言われております。椎間板の変性は大体20代から始まると言われていますので、発症年齢も大体20代から60代と言われております。
基本的には、椎間板は線維輪と髄核から構成されておりますが、線維輪の亀裂・断裂に伴い、中にある髄核組織が後方に飛び出していくと。そして、飛び出した場所は、ちょうど神経根がある場所が多いということになりますので、そういった意味で腰痛とともに神経症状を呈する疾患ということになります。
神経症状は、神経根の支配領域である知覚の領域、そして神経麻痺を来すという病態になります。治療法ですが、全ての整形外科の疾患はそうなのですが、大体、数か月間のコルセット、あるいは消炎鎮痛剤等の治療を行って経過を観察して、それでも腰痛が改善しない、あるいは痺れ、神経の一部の症状が残存しているような場合には手術ということになります。
手術療法ですが、通常は、かつてはLOVE式ということで、直視下に展開してヘルニアを取るという術式があったわけですが、最近ではどんどん低侵襲化になり、顕微鏡を使ってヘルニアを摘出したり、あるいは内視鏡を用いてヘルニアを摘出(PED)、そのような術式が行われています。基本的な流れとしては、そういった穿刺侵襲をできるだけ低侵襲に行うことが今日の傾向ということになります。と申しますのは、やはり手術を行うと合併症の問題があり、硬膜損傷、神経根の障害、あるいは髄液漏といったような問題が多いということもありますので、これは海外の報告によると、全体の1.13%ぐらいでそういった事象が発生すると言われております。
そういった問題を避けるということもありますので、経皮的に酵素を髄核内に注入して、ヘルニア内の圧を減圧してヘルニアの出っ張りを少し少なくしようと。それによって症状を改善させることを、1964年にスミスという方が考案して行われました。それがキモパパインを用いた治療法であったわけですが、これは異種タンパクですので、アナフィラキシーの問題がかなり話題になり、そしてまた腰痛の増悪を来すような疾患もあったということで、徐々に使用されることがなくなって、今日では、もう臨床の現場では使用されなくなりました。ただ、やはり酵素注入療法は、いわば究極的な低侵襲手術になりますので、特にスポーツ、あるいは重労働をされているような患者さんにとっては、やはり魅力的な治療法なのではないかと考えております。ですから、今後、低侵襲化の流れの中で、この治療法をどのように位置付けるかということなのですが、やはり今後こういった処置は日帰り手術とか、そのようなことも可能にする処置ですので、医療経済の観点からもこういったものを導入することは有益なことではないかと考えております。
もう一つなのですが、この治療法は、椎間板内に薬剤を注入することがこの治療法の成功を位置付ける問題になります。昨今では、椎間板の穿刺が椎間板変性を助長するという考えもありますし、あるいはMRIの解像度がかなり進歩しましたので、MRIを行うようになり、椎間板の変性の評価で椎間板穿刺を行う機会がどんどん減っていることは事実です。ただ、先ほど機構からお話がありましたが、これを行う整形外科の医師がかなり限定されていると。特に日本脊椎脊髄病学会の専門医、あるいは専門医がいる施設で行うことになっておりますので、恐らくそういった専門医の方々はこの手技上には何ら問題がないのではないかと思っております。ですから、この手技的な問題も、施設、あるいは実施する医師が、ある程度限定されているという条件であれば、この治療法は今後、有用な腰椎椎間板ヘルニアの治療法の一翼を担うのではないかと考えております。以上です。
○松井部会長 ありがとうございます。齋藤参考人に最初にお伺いしたいと思うのですが、限られた施設で、限られた経験のある医師、整形外科医等によって行われるならば、これは学会として推奨されるというのがコンセンサスと考えてよろしいのでしょうか。
○齋藤参考人 推奨されるというのはちょっとあれですが、恐らくデータから見ると、下肢痛のデータが中心ですが、かなり症状の改善には期待できる処置であるということが明らかになっておりますので、そういうものを実感すれば、多分この手術はそういった脊椎外科医に魅力的な手術になるのではないかなと思います。
○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の皆様から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 この薬はアメリカで開発中だそうですが、アメリカでは第III相試験でプラセボに対する有意性を示すことができなかったとのことで、それを含めて海外で本剤が承認された国はないとのことですが、本邦が初めてになるのでしょうか。それと、腰椎椎間板ヘルニアは患者さんが非常に多いと思うのですが、対象として日本の試験では四つのタイプのうちの膨隆・突出型、後縦靱帯下脱出型に対して行って、両方とも統計学的に有意な差が認められたとのことですが、少し米国の試験との間に差があるような気がしますし、最終的には後縦靱帯下脱出型に限定して認めるとのことです。そうした経緯について、少し分かりにくい部分がありますので、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。また対象の患者さんが多いので、安易に用いられると頻用・汎用される可能性もある治療法となるのではないかという気がするのです。有効性は別にして、その辺は審査の過程で専門家からも意見等が出たのでしょうか。推定患者数などは余り明らかではないとのことですが、私がはっきりしない理由がよく分からないので、それについても教えていただきたいと思います。
○松井部会長 まず、機構から回答してください。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきましてありがとうございます。機構より説明させていただきます。まず、ヘルニコア椎間板注用1.25単位の承認が日本が初めてなのかという点に関して、御質問いただいたとおり、日本が初めてであり、米国では追加の第III相試験が最近、開始された状況です。欧州については、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇と聞いております。
続きまして、米国臨床試験において有効性が示されなかった理由について、追加で御説明いたします。審査報告書の29ページ、「7.R.2.2 海外第III相試験について」の項を御確認いただければと思います。30ページの表17に国内外の第III相試験の患者背景について記載しております。米国第III相試験の対象患者について、盲検下で投与前のMRI画像の評価を行った結果、画像上明確なヘルニアが認められない、又は別疾患と評価された患者とも20%程度含まれましたが、同様の患者が国内臨床試験では2%程度でした。このように、本剤の投与対象として適切ではない患者として、明確なヘルニアが認められない、又は別疾患と評価された患者が多く含まれたということと、もう一点、先ほど御説明しましたが、膨隆・突出型の患者が国内臨床試験では17.7%だったのに対して、海外臨床試験では57.5%、反対に後縦靱帯下脱出型は、国内臨床試験で80.3%、海外臨床試験では21.7%であり、ヘルニアタイプについても国内外臨床試験でかなり乖離が認められております。これらの要因が有効性の評価に影響を及ぼしたのではないかと考えております。
もう一点、御質問いただきました本剤の推定使用患者数について説明いたします。後縦靱帯下脱出型のヘルニアとか、若しくは保存療法で効果不十分な患者といったところの患者数がはっきり算出できなかったのですが、申請者に確認したところ、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇から、腰椎椎間板ヘルニア患者のうち、後縦靱帯下脱出型の患者が〇〇ということが説明されております。さらに、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇、本剤の投与が見込まれる患者数として2018年度が〇例、2019年度が〇〇例、2020年度が〇〇〇例、2021年度が〇〇〇例、2022年度が〇〇〇例で、それ以降、〇〇〇例前後〇〇〇〇〇〇〇と説明されております。
○松井部会長 齋藤参考人、今の機構側のコメントに対する御意見も含めて御回答いただけますか。
○齋藤参考人 かつては椎間板ヘルニアに、結構手術を行った時代もあったのですが、最近は病態も十分理解できるようになり、例えば脊柱間内に脱出したようなヘルニアのタイプは、次第に消退されることが分かり、より保存的な形で治療を考えるようになったのが現在の状況かと思います。そういった意味で、ヘルニアの手術例がどのぐらいあるかは、先ほどの話では、大体〇〇〇例ぐらいですが、適応としてはもっと少なくなるのかという印象は持っています。
ただ、このデータから見ると、かつてキモパパイン療法を行ったときに、椎間板膨隆型に非常に効果があることが言われた時期もあったわけです。そういった意味で、海外で行われたのは、椎間板膨隆型の頻度が非常に高いというのは、そういった認識が残っていたからではないかと思います。ただ、国内のデータは、ヘルニアのタイプをかなり絞り込んで治療していって、このようなデータを出しておりますので、一応データの信頼度としては日本国内のデータは信頼がおけるのではないかと考えております。
○松井部会長 ありがとうございます。鈴木委員、いかがですか。
○鈴木委員 話は理解いたしましたが、この四つのタイプはどうやって診断するのでしょうか。日本のようにMRIが普及している国はないわけですが、MRIを行ってということになるのか、海外では、どうやって診断しているのか、教えていただけますか。
○齋藤参考人 海外では、脊髄造影とMRIで、CTが画像の補助診断として使われるわけですが、いずれにしても、かなり高額ですので海外では多分MRIを中心として行われているのではないかと考えております。日本は、三つをセットでやりますので、かなり正確に映像でタイプの診断をできるかと思います。
○鈴木委員 国内でMRIというのだったら分かるのですが、海外のMRIはかなり台数が人口当たり少ないですよね、100万人に1台とか。実際には、MRIを使うのはこの程度の疾患といったら失礼ですが、こうした疾患に一般的に使うのは考えにくいと思うのですが。
○齋藤参考人 日本ではいろいろな施設でこういった脊椎の手術が行われますが、海外では、例えばヨーロッパとかは脊椎センターが中心としてやっております。ですから、そういったセンターで、こういった種類の手術をやるのが一般的ですので、日本と海外との治療施設の状況はかなり違うかと思います。
○松井部会長 ありがとうございます。
○鈴木委員 整形の先生のお話とはいつも意見が異なるのですが、ヨーロッパでは手術を集中してやるとおっしゃるけれども、腰椎椎間板ヘルニアは結構ありふれた病気ですから、それを遠方の大病院に行って集中してやるほうがいいのか、日本のように身近な所でできたほうがいいのかは、私は海外のほうがいいというのは疑問に思っているので、今、意見を言わせていただきました。
○齋藤参考人 私自身としては日本が一番いいのではないかと思っていますけれど。
○神田委員 「製造販売後の適正使用」に関連してですが、投与の判断も、技術も難しそうな薬だとお聞きしましたが、参考人からも手技的な問題も含めて、医師が限定されるのであれば問題はないというお話があったかと思います。そのことについて、対策としては、販売当初は納入施設を限定するというように書かれておりますし、施設要件も決めるように、今日の資料を見ますと書いてありましたが、同時に、販売開始半年から1年を目安に適切な情報を提供した上で納入施設を拡大していくこともうたわれております。こういったときに、講習会とか、セミナーを位置付けるということで、54ページにも説明されていますが、拡大のための条件整備は、セミナーとか講習会とかいう中身が何となく見えません。それでないのでお聞きしているのですが、多分講習会やセミナーだけ受ければいいということではないだろうと思いますので、拡大のための条件整備はきちんとなされるのかを確認したいと思います。納入施設を限定して始める割に、拡大が簡単にできてしまうのかということがあったものですから、お聞きします。
○松井部会長 まず医薬品機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただきありがとうございます。機構より説明させていただきます。今回の製販後に投与可能な医師の要件に関して、申請者側に〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇からなるアドバイザリーボードを構成していて、アドバイザリーボードが各学会と交渉しながら要件を決定していく手順を取られております。
御指摘のとおり、医師の要件は、我々としても重要と考えております。医薬品リスク管理計画に適正使用ガイドが記載されており、それを変更する際には機構に相談を受けるようにということになっておりますので、市販後に医師要件を変更する際には、少なくとも機構が確認した上で、必要に応じて専門の先生方とも相談した上で、こういった状況であれば広げてよいかということは検討させていただきます。
施設を拡大する際の要件やセミナーについて、投与手技に関連した事象や投与の過誤又は全体的な有害事象がどの程度発現しているかというデータを確認させていただきます。それに加えて、実際に本剤の投与を行ったことのある先生方から手技のビデオ、実際の手技の習得のための講習、ノウハウの講習などのセミナーを計画されており、これらのセミナー等と、各学会との連携をセットで、本剤の投与可能医師の要件を検討し、その上で最終的に機構に相談に来ていただく手順となっております。
○松井部会長 齋藤参考人、これに何か付け加えることはありますか。
○齋藤参考人 日本脊椎脊髄病学会は二階建てあり、脳神経外科と整形外科の脊椎専門医で構成されている学会となります。その中で専門医制度をいち早くつくった学会であり、専門医の取得要件はかなり厳しい、脊椎の手術を数百件以上持っているとか、あるいはいろいろな経験を踏まえて取得されますので、かなり専門性の高い集団であると認識していただいて結構だと思います。そういった人がやることと、あるいは、そういった指導医によって指導を受けた人間がやることでありますので、最初はかなりしっかりとした体制を組めるかと思います。
その後の問題ですが、これをどう拡大していくかに関しては、学会主導とか、先ほど言ったセミナー、講習会、あるいは保存療法セミナーも含めてそうですが、そういったものをしっかり行って、この治療が手技に依存している治療であることを十分認識していただくことです。その辺のことは、日本整形外科学会も含めてそうですが、そういうものは責任を持って対応していくと思っておりますので、余り問題は生じないかと思っております。
○松井部会長 神田委員、よろしいですか。
○武田委員 添付資料1-8の添付文書(案)ですが、そこの欄の一番最後の2枚が添付文書(案)になっていると思うのですが、腰椎椎間板ヘルニア治療剤「ヘルニコア椎間板注用1.25単位」となっています。そこの左側の効能・効果の中に、波線で囲まれた部分があり、「効能・効果に関連する使用上の注意」の(2)で「本剤は異種タンパクであり、再投与によりアナフィラキシー等の副作用が発現する可能性が高くなるため、本剤の投与前に十分な問診を行い、本剤の投与経験がない患者にのみ投与を行うこと」と。要するに、1回しか使えないということですよね。ただ、もし患者さんがどこかで治療を受けて、その後また全然違う医療機関に現れた場合に、本人が言わない限りは分からないわけですよね。そうすると、こういう場合、何か完全に特殊なカードを持たせるとか、そういうことはするのですか。
○松井部会長 ただいまの武田委員の質問に対して。機構から。
○医薬品医療機器総合機構 御質問いただき、ありがとうございます。お手元に配布している「ヘルニコアの治療を受けられる方へ」という水色の資材を確認いただけますか。こちらの最後の10ページですが、今はまだ内容が固まっていないところですが、患者カードを用意する計画とされており、これを配布して、患者さんには医療機関を受診する際にはこれを持ち歩いてくださいということと、あとは、医療機関の医師にもしっかり問診を徹底して、これを持っているのかどうかを確認してから投与するようにということで、再投与を防げるかと考えております。
○松井部会長 よろしいですか。ほかに。我々の任務としては、もちろん手技のこともありますが、安全性、有効性についてもディスカッションしなければならないと思うのですが、特にありませんか。
○森委員 今の御質問に続くのですが、再投与は基本として禁止されているということですので、「禁忌」の事項に「投与歴がある方」というようにはなさらないということでよろしいのでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より説明させていただきます。禁忌に記載している内容は、基本的に安全性の観点で明らかな問題が起きた患者や集団を記載しております。本剤に関しては、再投与に関して経験がないので潜在的なリスクとしてはあるのですが、今のところ禁忌に記載するほどの情報もないので、「効能・効果に関連する症状の注意」に記載しております。申請者としても、今後、再投与の需要があるようでしたら、臨床試験等も実施することも聞いておりますので、その点も踏まえて今後、判断させていただければと思います。
○松井部会長 齋藤参考人、よろしいですか。
○齋藤参考人 データが十分そろっていない点があり、それに関してはなかなか明言することはできないかと思いますが、今後、データを積み重ねていく必要があるのかと考えております。特に、副作用とか、アナフィラキシーの問題とか、その問題に関してはきっちりデータを取っていく必要があるとは考えております。
○松井部会長 ありがとうございます。ほかにありますか。いかがですか。もし、ないようでしたら議決に入ろうと思うのですが、よろしいですか。御異議はないようですので、本議題について、承認を可としてよろしいですか。
御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。齋藤参考人、どうもありがとうございました。それでは議題2に移ります。
○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2-1及び資料2-2、医薬品オルケディア錠1mg、他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
二次性副甲状腺機能亢進症において、副甲状腺ホルモン(PTH)の管理を目的とした薬物治療としては、現在、カルシウム受容体作動薬の経口剤であるシナカルセト塩酸塩や透析回路より投与される注射剤であるエテルカルセチド塩酸塩、あるいは活性型ビタミンD製剤等が個々の患者の状況に応じて選択されています。
本剤は、シナカルセト塩酸塩と同様のカルシウム受容体作動薬の経口剤であり、シナカルセト塩酸塩で課題となっている上部消化管障害の発現頻度を軽減すること等が期待され、開発に至りました。なお、2017年11月現在、海外において本剤が承認されている国はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料12に示す専門委員を指名しております。
以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性に関しては、報告書35ページの表27を御覧ください。血液透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者対象の国内第III相比較試験の主要評価項目である「評価期におけるintact PTH濃度平均値が管理目標値である60pg/mL以上240pg/mL以下を達成した患者割合」について、本剤群のシナカルセト塩酸塩群に対する非劣性が検証されました。報告書40ページの上から2行目を御覧ください。腹膜透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者対象の国内一般臨床試験の主要評価項目である「評価期におけるintact PTH濃度平均値が、管理目標値である60pg/mL以上240pg/mL以下を達成した患者割合」は71.8%であり、血液透析患者と同程度の効果が認められました。以上より、機構は、本剤の有効性は示されたと判断しました。
安全性に関しては、報告書35ページの表28を御覧ください。血液透析下の副甲状腺機能亢進症患者対象の国内第III相比較試験における有害事象の発現状況を示しております。有害事象の発現割合について、シナカルセト塩酸塩群と比較して本剤群における「嘔吐」「悪心」等の上部消化管障害関連事象の発現割合は低く、それ以外の事象についても臨床上問題となる傾向は認められませんでした。報告書40ページ、表39を御覧ください。腹膜透析下の副甲状腺機能亢進症患者対象の国内一般臨床試験における有害事象の発現状況を示しておりますが、臨床上問題となる傾向は認められませんでした。以上より、機構は、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
ただし、上部消化管障害関連事象については、国内第III相比較試験において本剤群ではシナカルセト塩酸塩群よりも発現割合は低いものの、一定の頻度で認められたことから、製造販売後調査等で引き続き情報収集する必要があると考えました。また、国内第III相比較試験や一般臨床試験等において、低カルシウム血症関連事象が一定の頻度で認められたことから、本剤投与中には定期的に血清カルシウム濃度を測定し、低カルシウム血症に十分注意するよう添付文書で注意喚起する必要があると考えました。さらに、低カルシウム血症関連事象について、製造販売後調査で引き続き情報収集する必要があると考えました。
以上、機構での審査の結果、維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症患者に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上です。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。維持透析と申しましたら、血液透析、腹膜透析の指定患者さんが対象となるわけですが、いかがですか。特に御質疑はありませんか。特段の御意見がなければ議決に入ろうと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、議決に入りますが、大森委員、武田委員、森委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
異議のないものと認めます。承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。それでは議題3に移ります。医薬品機構から概要を御説明ください。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題3(資料3-1及び3-2)医薬品ラパリムスゲル0.2%の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。
結節性硬化症は、皮膚、脳、腎臓等全身に過誤腫と呼ばれる良性腫瘍が生じる疾患であり、本邦では難治性疾患克服研究事業の対象疾患に指定されています。
今回の対象となる結節性硬化症に伴う皮膚病変は、主に、顔面の血管線維腫のほか、額や頭部に局面等が認められます。これらの皮膚病変に対する治療法として、レーザー、冷凍凝固術又は外科的治療等が行われていますが、いずれも侵襲性の高い治療法です。
本剤はシロリムスを有効成分とする外用ゲル剤であり、結節性硬化症に伴う皮膚病変に対し非侵襲的な治療が可能となること等が期待され、開発に至りました。なお、本剤は、平成27年10月27日付けで先駆け審査指定制度の対象品目に、同年12月18日付けで希少疾病用医薬品に指定されています。2017年10月現在、海外においてシロリムス外用剤を結節性硬化症に伴う皮膚病変の適応で承認している国はありません。本品目の専門協議では、本日の配付資料12に示します専門委員を指名しております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性に関しては、報告書16ページの表20を御覧ください。血管線維腫を有する結節性硬化症患者を対象とした国内第III相試験の結果ですが、主要評価項目である「投与開始12週後における中央写真判定による血管線維腫の改善度」について、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。以上より、機構は、本剤の有効性は示されたと判断しました。
安全性に関しては、同じ16ページの表21を御覧ください。国内第III相試験における有害事象の発現状況を示しております。有害事象の発現割合について、プラセボ群と比較して本剤群で「皮膚乾燥」及び「そう痒症」の発現割合が高い傾向が認められましたが、いずれも軽度又は中等度であり、投与中止することなく回復したことから、臨床上大きな問題ではないと考えました。以上より、機構は、本剤の安全性は許容可能と判断しました。ただし、国内の治験症例数は限られていることから、製造販売後調査では、全症例を対象に本剤投与時の安全性情報を収集する必要があると考えました。
以上、機構での審査の結果、結節性硬化症に伴う皮膚病変を有する患者に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件及び一定数の症例データが蓄積されるまで、全症例を対象として製造販売後調査を行う旨の承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本品目は希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、製剤は劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議どうぞよろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質疑をお願いします。武田委員、お願いします。
○武田委員 結節性硬化症で腎血管筋脂肪腫を伴うことが多いと思いますが、通常、治療薬としてエベロリムスは適応がありますね。そうすると、例えばこの患者さんがエベロリムスを内服していて、なおかつ、この薬を使うと併用になってしまうのですが、こういうmTORの併用って、私、聞いたことがないので、何か副作用が起こる可能性はあるのでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。機構からお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 mTOR阻害剤との併用につきましては、報告書28ページで議論しております。国内長期投与試験において、mTOR阻害剤であるシロリムスやエベロリムスが併用されておりました。国内長期投与試験において、有害事象の発現割合は、「mTOR阻害剤併用あり」で100%、「併用なし」で96.3%であり、副作用の発現割合は、「mTOR阻害剤併用あり」で71.4%、「併用なし」で72.5%でした。また、有効性につきましては、52週時における中央写真判定による血管線維腫の改善率が、mTOR阻害剤「併用あり」で55.6%、「併用なし」で78.6%でした。国内長期投与試験でmTOR阻害剤が併用されていた症例数は限られていることに留意する必要はありますが、現時点ではmTOR阻害剤併用時の本剤の安全性及び有効性に臨床上大きな問題は認められていません。ただし、mTOR阻害剤が併用されていた症例数は限られていることから、全症例を対象とした製造販売後調査で引き続きmTOR阻害剤併用時における安全性及び有効性について情報収集し、検討したいと考えております。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。大賀委員、お願いします。
○大賀委員 添付文書(案)の薬物動態の所で、成人と小児の血中濃度の検出件数と濃度自体が出ていますけれども、今の御質問の項目にも関係すると思いますが、3歳以上の子に使っていくときに年齢別で血中濃度の変動というか、そういうリスクがあったのでしょうか。これを見ると、あまりないのかなという印象ですが。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 臨床試験の症例数が限られていますが、年齢別の血中濃度について、現時点で薬物動態に異なる傾向は認められておりません。
○松井部会長 認められていない。
○医薬品医療機器総合機構 はい、認められておりません。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
○森委員 本製剤の使用の目安のことを確認したいのですが、遺伝的な疾患に伴う皮膚病変ということで、有効な患者さんについては、基本、継続使用するという前提で製剤化されているということでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の効果が持続し、有害事象・副作用等の発現に問題がなければ、本剤は継続投与されると考えます。
○森委員 そうしますと、長期の成績、1年までされていますが、もっと年余にわたって使用継続することがあり得るということですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森委員 分かりました。
○今井委員 先ほどの大賀先生の質問と関連するのですが、これは分子量が900を超しているので、通常、きれいな皮膚だとほとんど入らないサイズだし、拡散係数から言ってもほとんど皮膚中を移動しない薬だと思います。最初は皮膚に障害があるので結構、薬が浸透していくと思いますが、ある程度治り始めてからは、大人と小児で皮膚透過性が随分違うのではないかと思います。差がありませんというよりは、小さなお子さんに関しては皮膚の厚さとかも全然違ってきますから、透過性が違うという面でケアしていただいたほうが、安全性の面でいいかなと思いますけど、いかがでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 成人と小児の有害事象の発現状況については、報告書25ページ表38に記載しております。報告書25ページの表38に、長期投与試験における小児と成人の有害事象の時期別の発現割合を示していますが、小児で特段、成人と比較して、投与期間の長期化に伴う有害事象の発現割合の増加等は認められていません。
○今井委員 小児の年齢層というか、そのポピュレーションで随分違うのではないかと思います。例えば3歳から5歳までだけで集めるとか、そういう年齢層では、ちょっと危なくないですかということです。小児と言っても結構な年齢までありますので、そこのポピュレーションが問題だと思います。
○医薬品医療機器総合機構 実施した臨床試験において、小児においても安全性に特段問題は認められませんでした。ただし、臨床試験における症例数は限られておりますので、現時点では年齢別の安全性の差異について結論を導くことは難しいと考えます。年齢別で安全性に差異が認められないか、またケアが必要かどうかは全症例を対象とした製造販売後調査で情報収集を行い、引き続き検討したいと思います。
○松井部会長 他にいかがですか。私から1つ。患者さんの投与開始前と投与12週後の写真の出た補足資料がありますけど、この真ん中の所を見ますと、重症化すると鼻閉塞や出血を伴って、患者のQOLを大きく損なうと書いてあります。これは、そうしますと、この塗布は単に美容的な意味だけでなく、鼻閉塞や出血に対しても効果があると考えていいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 重症化すると鼻閉塞や出血等で、患者のQOLを大きく損なうことがあるため、軽症の段階から本剤を投与することになると考えます。
○松井部会長 効く可能性があると。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。
○赤羽委員 ほかのmTOR阻害剤と併用した際の副作用に関しては、件数は特に増えていないということではあったのですが、一貫して、例えば口内炎などの発現が本薬剤では副作用としてあると思います。ほかのmTOR阻害剤と併用した場合に、例えばそういう口内炎の発現事象が増えるかどうか。あるいは、それが小児と大人でどうかといったことに関して、もしデータがありましたら教えていただきたいのですが。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の口内炎の発現状況について、報告書16ページ表21を御覧ください。第III相比較試験における有害事象の発現状況を示しております。第III相比較試験ではmTOR阻害剤は併用されていませんが、本剤の口内炎の発現割合は3.3%であるのに対し、プラセボは6.3%であり、本剤で口内炎が増加する傾向は認められませんでした。
続いて、mTOR阻害剤が併用されていた国内長期投与試験における有害事象の発現状況については、報告書18ページ表25を御覧ください。国内長期投与試験における口内炎の発現状況は10.6%でした。mTOR阻害剤の併用により口内炎等のmTOR阻害剤で特徴的な副作用が増加する傾向があるかは今後も製造販売後調査において引き続き検討していきたいと考えています。
○松井部会長 いかがですか。
○赤羽委員 ありがとうございます。18ページの表25の第III相試験から移行例の所ですと、プラセボと本剤の間で口内炎の発症率が違うようなのですが、これは、どのように解釈すればよろしいのでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 国内長期投与試験における口内炎の発現割合について、本剤移行例で23.3%、プラセボ移行例で0%でした。mTOR阻害剤併用による影響なのかあるいは本剤を長期で使ったことによる影響なのかは、各群の症例数が30例程度と限られておりますので現時点で結論付けることは難しいと考えます。
○松井部会長 ほかにございますか。今の委員の先生方からの重要な懸念は、mTOR阻害剤の投与例だとか、小児、小児と言っても年齢別の検討、それから長期投与例による弊害がまだデータが不足であり、それは引き続き提供してほしいというのが、委員の先生方の御意見だったと思います。その点を含めまして議決に入ろうと思いますが、よろしいでしょうか。武田委員、どうぞ。
○武田委員 添付文書(案)で、用法・用量の所に1日あたりの最大塗布量については、以下の表を目安にすること。
○松井部会長 添付文書の何ページでしょうか。
○武田委員 添付文書(案)の2ページです。真ん中辺に用法・用量と書いてあり、通常、1日2回、患部に適量を塗布する。1日あたりの最大塗布量については、以下の表を目安にすることと、かなり年齢で詳しく書いていますね。これは、患者さんは簡単にこれで分かるのですか。要するに、多分、チューブに入っているものでしょうけど。
○医薬品医療機器総合機構 チューブからどのくらいの長さのゲルを出して塗布すれば良いかは資材で情報提供する予定です。資材では、実寸大の写真を掲載しまして、例えば塗布量400mgはゲル1cmであることなどを情報提供しようと考えています。
○松井部会長 よろしいですか。
○武田委員 多分、最初は、小さいお子さんの場合はお母さんが塗ると思います。ある程度年齢がいくと、恐らく自分で管理するようになると、学校で塗ったり、そうすると非常に量がアバウトになるのではないかと思いますが、その辺は大丈夫でしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 本剤が適切に塗布できるよう指導を徹底したいと思います。
○武田委員 私、小児科医ではないのですが、小児の患者さんを診ていますけど、学校でどういうふうに薬を飲んでいるか非常に分かりにくいですね。飲まない子もいるので、その辺の管理をきちっと親が見るとか、そういうふうにしておかないと駄目なのではないでしょうか。特に長期にわたって下手するとmTORの併用を行うので、そうするとおかしなことが起こるかもしれませんね。
○医薬品医療機器総合機構 本剤の用法・用量は、朝と夜1日2回ですので、学校で塗布することは基本的には想定されないように思います。患者自身で本剤の塗布が適切にできない小児には保護者の監視下のもとで塗布するよう指導し、患者自分で塗布することが可能になったら適切に本剤を使用できるよう患者に指導するように資材等で対応したいと思います。
○松井部会長 それは担当医が、薬剤を全部、ある一定の容器を使い果たしたときに、また追加処方するわけですから、そういう機会を捉えて指導すると。武田委員の御指摘は非常に重要なことだと思います。それは是非、やっていただきたいと思います。よろしいですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい。御指摘を踏まえまして、適切に使用できるよう資材等で対応できないかを検討したいと思います。ありがとうございました。
○松井部会長 ほかにございますか。ないようでしたら、議決に入ろうと思います。本議題につきまして承認を可として、よろしいですか。
御異議がないようですので承認を可として、薬事分科会に報告いたします。それでは、議題4に移ります。議題4につきまして、医薬品医療機器総合機構から概要を御説明ください。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題4、資料4、医薬品スージャヌ配合錠の製造販売承認の可否等について機構より御説明申し上げます。
本剤は、DPP-4阻害薬のシタグリプチンリン酸塩水和物と、SGLT2阻害薬のイプラグリフロジン L-プロリンを有効成分とする糖尿病治療薬の配合剤です。2型糖尿病の治療では、1剤で効果が不十分な場合、作用機序が異なる薬剤を併用することは一般的であり、イプラグリフロジンについては、DPP-4阻害剤で効果が不十分な場合の併用療法が、既に承認されています。なお、本配合剤は、2017年12月現在、海外のいずれの国・地域においても承認されていません。本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本配合剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性については、審査報告書7ページの表3を御覧ください。イプラグリフロジンで効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、シタグリプチンを併用投与するP842試験が実施され、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、イプラグリフロジン単独投与に対するシタグリプチン併用投与の優越性が示されました。
また、審査報告書9ページの表6を御覧ください。シタグリプチンで効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、イプラグリフロジンを併用投与するP843試験が実施され、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、シタグリプチン単独投与に対するイプラグリフロジン併用投与の優越性が示されました。長期投与時の有効性については、審査報告書11ページの図1に示しますように、P849試験において、52週まで効果の持続性が確認されております。
安全性につきましては、審査報告書14ページからを御覧ください。審査報告書14ページ以降の「7.R.2 安全性について」の項にお示ししますように、審査報告書15ページの表13及び表14にお示しした国内臨床試験における有害事象の発現状況、また、審査報告17ページの表16にお示ししました、シタグリプチン及びイプラグリフロジンの特定使用成績調査における有害事象の発現状況、国内の市販後の安全性情報等を検討した結果、各単剤投与時と同様の注意喚起等が適切になされれば、安全性は許容可能と判断いたしました。
続きまして、医療用配合剤の承認要件への該当性に関しましては、審査報告書19~20ページを御覧ください。「7.R.3 本配合剤の配合意義及び臨床的位置付けについて」の項に記載のとおり、シタグリプチンとイプラグリフロジンの併用療法に一定の臨床的有用性が認められ、当該併用療法と生物学的に同等とされる本配合剤の配合意義の科学的合理性は示されており、また、患者の利便性についても、服薬アドヒアランス等の向上が期待できると判断いたしました。
以上の審査の結果、本配合剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本配合剤の再審査期間は4年、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から、御質問、御意見をお願いします。いかがですか。
○川上委員 教えていただければと思います。それぞれ単剤ですと、1日1回50mgで、効果不十分のときには100mgまで、それぞれ増量が可能だと思いますけれども、この配合剤については、そういった使い方はしてはいけないということでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明申し上げます。御指摘のとおり、本配合剤については単剤50mgで効果不十分な場合に、本配合剤に切り替える。若しくは既に両剤50mg同士で十分に安定している場合に、本配合剤に切り替えるということになっています。
○川上委員 分かりました。
○松井部会長 いいですか。併用期間は設けない。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。併用期間は特に設定しておりません。
○松井部会長 設けない。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○松井部会長 いかがですか。森委員、お願いします。
○森委員 副作用に関する確認事項を1点、お願いいたします。18ページの特定使用成績調査(高齢者)で、シタグリプチン50mgとイプラグリフロジン50mgの併用例に関する重篤な有害事象28例のうちに、皮膚の薬疹/丘疹/全身性そう痒症の方が1例、未回復というふうになっているのですが、この症例に生じた皮膚の副作用というのは、今回の配合錠の添付文書にある重篤な有害事象に記載されている皮膚の記載と、特に超えたものでないと理解してよろしいでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 医薬品機構よりお答えいたします。先生の御指摘のとおり、スーグラ錠の販売当初に高齢者の方中心に皮膚の事象が認められたということで、当初は特定された重要なリスクとは考えていなかったようですが、その後の解析において説明がなされております。重篤な皮膚疾患の副作用は11例に認められましたが、そのうち薬疹及び全身性皮疹、全身性そう痒症が2件ということですが、スティーブンス・ジョンソンや中毒性皮膚壊死症の報告はなかったという記載があります。
○松井部会長 いかがですか。
○森委員 症状が遷延されているという可能性があるのですが、特にDIHSを疑っているのではないと理解していいでしょうか。
○松井部会長 今、何とおっしゃいましたか、質問。
○森委員 DIHSですね。Drug Induced Hypersensitivity Syndromeのことですが、もっと長期的に遷延する、HHV-6の再活性化を伴うような皮膚障害の可能性は除外されていると理解していいでしょうか。以上、質問です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。今回の報告症例に関しては、DIHSということであれば、そのようにきっちりと報告として上がって来ますので、そういうふうに報告されていないという点では、そこまでには至っていないということかと思います。
○森委員 未回復という現状なのですね。
○医薬品医療機器総合機構 現状としては、そうです。
○松井部会長 鈴木委員、どうぞ。
○鈴木委員 配合錠の投与ですけど、以前にもかなり配合錠はありましたが、単剤同士をある程度使って併用期間があって安定している場合とか、そのような話になっていなかったかという気がしますけれども、今回、そうした要件はないというのですが、ある程度、統一したほうがいいと思いますが、いかがでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。問題になったのは3剤の併用のときだったと思いますけれども。
○医薬品医療機器総合機構 御質問、ありがとうございます。今回の先ほど御説明申し上げた臨床試験の中で、一方の単剤で効果不十分な患者さんに対し、もう一方の単剤を上乗せして有効性・安全性に問題ないということの結果が得られていますので、単剤からの切り替えも可能というふうに判断しています。
○鈴木委員 そうすると、3剤以上は一定の併用期間が必要だけど、2剤までは構わないというのが統一見解ということですか。
○医薬品医療機器総合機構 はい、御指摘のとおりです。
○松井部会長 いや、統一見解というのは、この部会で出した3剤併用について。ですから、それにあまり大きく矛盾するようなことは、おかしいと思いますけど。2剤併用の場合におきましても。
○事務局 事務局よりお答えさせていただきます。これまでの2剤配合のものと3剤配合のものが、糖尿病であるとか高血圧のお薬等、他のものも種類がございますけれども、これまでの状況といたしましては、それぞれ2剤を配合している場合には片方のものを使っていて、もう一つ追加が必要と判断される場合に、その二つを飲むか、一つを配合剤に変えるかという使い方ということで、これまで承認をしてきている状況でございます。御指摘いただきましたように、3剤混ざっているものに関して言うと、先生から御指摘いただきましたように、高血圧のお薬で一つ承認がありますけれども、そちらに関しては三つ成分があるということで、それぞれ三つを使っていた方が切り替えるという承認をしている状況になっています。今回のものに関してもこれまでのものと同様でございまして、二つまでということになっていますと、片方を使っていただていた方で、もう1つプラスをするというときに、この配合剤を使っても、2剤をそれぞれ飲んでもいいのではないかと考えているという現状です。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○鈴木委員 そのように決めたということであれば、それでやってみたらよろしいと思います。
○松井部会長 ほかにございますか。特に御発言はありませんか。それでは議決に入ろうと思いますが、大森委員、杉委員、武田委員、森委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議ないものと認めます。承認を可として、薬事分科会に報告いたします。それでは、議題5に移ります。機構から説明してください。
○医薬品医療機器総合機構 それでは議題5、資料5、医薬品ガラフォルドカプセル123mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明します。本剤の適応対象であるファブリー病は、リソソーム酵素であるα-ガラクトシダーゼAをコードするGLA遺伝子の変異により、α-ガラクトシダーゼAの活性が低下し、α-ガラクトシダーゼAの基質であるグロボトリアオシルセラミド(以下、「GL-3」)が蓄積することにより、腎障害、心筋症、脳血管障害等の組織障害をもたらすX染色体連鎖性遺伝疾患です。本剤は、GL-3の末端ガラクトース類似体であり、一部の変異型α-ガラクトシダーゼAに結合し、リソソームへの輸送を促進して、α-ガラクトシダーゼA活性を上昇させる薬理学的シャペロンとして作用する経口剤です。ファブリー病のGLA遺伝子変異は、現時点で900種類以上が確認されており、本剤に対する反応性のある遺伝子型と反応性のない遺伝子型が存在することが判明しております。
本邦におけるファブリー病の患者数は約315~1,061例と推定されており、本剤は、「ファブリー病」を予定する効能・効果として、希少疾病医薬品に指定されています。現在、ファブリー病の治療薬として、酵素補充療法用製剤であるアガルシダーゼ ベータ(遺伝子組換え)及びアガルシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)が承認されています。海外において、本剤は2016年5月に欧州で承認され、2017年12月時点で世界36か国で承認されており、米国では審査中とされております。本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。
有効性については、審査報告書の47ページの表27を御覧ください。酵素補充療法で治療中の日本人を含むファブリー病患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目とされた本剤に反応性のあるGLA遺伝子変異を有する被験者集団における投与18か月時までの糸球体ろ過量の年間変化量について、酵素補充療法継続群に対して、事前に規定した同等性の基準を満たすことが確認されました。日本人症例数は6例と少数例でしたが、日本人集団における糸球体ろ過量の年間変化量について、全集団と大きな違いは認められませんでした。また、酵素補充療法で未治療のファブリー病患者について、審査報告書51ページの表34を御覧ください。本剤に反応性のあるGLA遺伝子変異を有する被験者集団における腎間質毛細血管あたりのGL-3封入体数の変化量について検討した結果、投与6か月時までにプラセボ群で変化が認められなかったのに対し本剤群で減少が認められ、プラセボ群についても本剤に切り換えた6か月後に同程度の減少が認められました。以上の臨床試験成績を総合し、本剤の有効性は示されたと解釈して差し支えないと判断しました。
安全性については、審査報告書の58ページ以降を御覧ください。審査報告書の58ページ以降の「7.R.3安全性について」に示したように、臨床試験における有害事象や副作用の発現状況について検討した結果、最も多く発現した事象は頭痛であり、臨床的に問題となるリスクは認められていないことから、本剤の安全性は許容可能と判断しました。
以上の国内外の臨床試験成績により、本剤に反応性のあるGLA遺伝子変異を有するファブリー病患者における有効性及び安全性が確認されたことから、効能・効果は「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」とすることが適切であると判断しました。また、本剤の投与開始に先立ち、GLA遺伝子変異の本剤に対する反応性を確認する必要がある旨を注意喚起するとともに、各GLA遺伝子変異の本剤に対する反応性の有無については、情報提供資材及びウェブサイト等を通じて、医療現場に適時適切な情報提供を行うこととしております。
なお、国内での治験症例は極めて限られていることから、製造販売後、再審査期間中の全投与症例を対象に使用成績調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
以上のとおり、機構での審査の結果、「ミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断しました。
本剤は、希少疾病用医薬品であり、再審査期間は10年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いします。
○松井部会長 それでは、委員の先生方から御質疑をお願いします。
○石川委員 確認ですが、有効性の所で、47ページのeGFRにおいて有効であったというお話ですが、そのほかに、例えば心機能とか酵素活性の回復とか、そういったことにおいてはどうだったのか、そこは教えていただけますか。
○医薬品医療機器総合機構 同じく47ページの表28を見ていただければと思います。最初に心機能に関連してですが、上から3番目の所で、左室重量係数を指標として、心機能の評価をしております。こちらについて、本剤群では-6.58、ERT群では-2.02という結果が得られておりまして、同等あるいは少し良いような結果が得られているというところです。
また、その1つ下の所におきまして、α-ガラクトシダーゼA酵素活性についても検討しておりまして、こちらは酵素補充療法からの切り換えの試験になりますので、ある程度ベースラインにおける酵素活性が維持されている、あるいは本剤群においてはやや上昇しているような結果が得られているということです。
○石川委員 これは統計的に有意な上昇とか改善ということを言ってよろしいのですか。それとも、eGFRだけが統計的に優位だったのか、そこを教えてください。
○医薬品医療機器総合機構 まず、左室心筋重量係数に関しては、ERT群に対して有意な結果であった。酵素活性については、少し確認の時間を頂戴できればと思います。
○石川委員 それともう1つ、そういう集団の方がおっしゃっていた今までの薬で効きにくいジェノタイプというか、これまでの既存の薬では効きにくい遺伝子型の方がおられるわけですよね。そういう方がどれぐらい含まれていたのかということです。
○医薬品医療機器総合機構 まず、既存の酵素補充療法製剤ですが、基本的に欠損、あるいは活性が低下している酵素を補充するというコンセプトになりますので、遺伝子型によるというよりは、足りない人に補充をするというコンセプトのものになります。
一方で本剤については、薬理学的シャペロンということで、例えば大きく蛋白構造が欠損しているような遺伝子多型の方には効かないということが想定されますが、構造に依存するというよりも、多型ごとに反応性の有無を確認して、今、ファブリー病患者さんで報告されている遺伝多型の約4割の方に本剤が反応性のあることが分かっておりますので、その患者さんが本剤の投与対象になり得るということになります。
また、酵素補充療法製剤については、隔週に点滴静脈内投与が必要な薬剤になりますので、経口投与の製剤で隔日投与が可能になるという点や、酵素補充療法製剤では抗体産生で効果の減弱があるような患者さんや、注入時反応等を起こしてしまうような患者さんで、遺伝子型が本剤に反応性があるということであれば、ファブリー病治療における新たな選択肢になると考えております。
○松井部会長 よろしいですか。もしあれば追加してください。
○石川委員 しつこいのですが、4割ぐらいの人が、この薬に有効性はあるということで、その4割というのは患者さんの全体の4割ぐらいが、この薬の有効性は期待できると。そうしたときに対象の方は、そういう4割ぐらいの方だけが集まった治験ですか。
○医薬品医療機器総合機構 今、御説明した有効性の結果については、市販後に投与対象となる遺伝子型の被験者での結果です。
○松井部会長 ほかにいかがですか。
○大賀委員 ジェノタイプは、特異的に対象とされたということですよね。そうすると、従来の製剤で効かなかった人を対象にしたような、何かそういうスタディは全然ないわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 ございません。
○大賀委員 何で、そういう質問をしたかと言いますと、先ほどeGFRの話が出ましたが、心筋に対しては従来の薬剤の反応性については十分な効果が得られていないところです。ですから、症状に関してはそういう差がありますので、適用の対象を今回は非常に絞っていますが、将来的には、今回の対象とした患者さんの例えば心筋の回復とか、そういったものが良くなってくると、これからまた拡大ということになったりするのでしょうか。現在、使っている薬で効かない人は、というよりも、これには遺伝子型を確定すれば投与してもいいということになるわけですね。
○医薬品医療機器総合機構 今、おっしゃっていただいたとおりの御理解でよいと思います。
○大賀委員 そうすると、投与者がみな遺伝子の型を検査するということですね。
○医薬品医療機器総合機構 そうです。
○大賀委員 そのときに、それが正しいというか、効く遺伝子型かどうかという判断を、添付文書では、この会社の専用Webサイトの情報でということになっておりますが。それに関しては、ジェノタイプのデータというのは、時とともに変わったりすると思うのですが、それに関してはどのように判断されていますか?この会社が適宜変えていくわけですよね。添付文書というのは、そもそもあることが起こったときに改訂していくわけですが、時とともに連続性をもって、この対象は変わっていくと理解してよろしいのですか。
○医薬品医療機器総合機構 御理解のとおりで、更新する情報がありますので、また900種類以上、今後も増えるであろうということで、添付文書内で情報提供するというのは困難ですので、企業が作成する情報提供資材及びウェブサイト等において当該情報を提供するとともに、その更新や改訂に当たっては、機構にも定期的に報告が来るような体制で管理をしております。
○大賀委員 そのときに、1社から来るこの情報だけで、そのときに機構としては、このデータが変わるたびにチェックをされるということですか?ジェノタイプの情報が変わるたびに、機構としては向こうから報告を受けて、それを監査するということになりますか?
○医薬品医療機器総合機構 委員の御質問は、更新されたデータの担保をどのようにするかという御質問かと思いますが、その件に関しては、これはあくまでジェノタイプが分かった段階で、企業が持っている、きちんとした系と考えていますが、反応があるかないかをvitroで確認をして、反応性の判断の閾値が決まっていますので、その閾値に従って、ある意味ではそこから先が機械的にイエスかノーか表に付け加えられていくという形になっております。
その件に関して、私どもは最初の審査の段階ではそれが妥当かどうかの検討は行っていますが、今後新たに付け加えられる情報に関して言えば、そのバリデートされた系が変わらない限りは、それをある意味では信じていくというか、その調子でいくということに尽きると考えております。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにありますか。
○山田委員 添付文書(案)の4ページに、副作用のことが記載されておりまして、特に頭痛や浮動性めまいの発現頻度が高いようですが、その発現時期とか重症度に関するデータはどこかで見ることができるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の16ページを御覧ください。こちらで「4.R.1」として、「本薬の脳内蓄積性に対する影響について」という項を立てておりますが、こちらの3段落目の所で、中枢神経系の有害事象の発現状況について議論をさせていただいております。こちらにおきましては2つの第III相臨床試験において、いずれも本剤群で高い傾向が認められておりますが、最も多く認められた事象というのは、やはり頭痛でした。
また、これらの事象のうち重篤な有害事象や、投与中心に至った有害事象というのは認められておりませんで、頭痛に関しても重症度はいずれも軽度、又は中等度で管理可能な事象であったということを確認しております。いずれの試験も、継続して長期投与を実施しておりますが、この中枢神経系の有害事象について長期投与によって発現が上昇するような傾向は認められていないということは確認しております。
○山田委員 発現時期と言いますか、服用開始後どれぐらいで出るかという情報はあるのですか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 投与後、例えばどれぐらいの経過時間で発現したのかというところについては、現時点で情報を持ち合わせておりません。
○山田委員 指導する際に、そういう情報があると、患者さんに説明しやすいかと思います。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。申請者とも相談をして、可能な方策があるかということを検討させていただきます。ありがとうございます。
○森委員 このファブリー病は、女性の方の発症も、まれにあるかと思いますが、専門協議の中では、この薬剤を女性の方にどのように活用していくか、そういったディスカッションはあったのですか。
○医薬品医療機器総合機構 今回、実施された2つの第III相試験におきましては、男性女性にかかわらず、ファブリー病と診断された患者さんを対象に実施しておりまして、男女を含めた形で有効性、安全性が確認されているということで、女性の患者さんにおかれましても、本剤に反応性のある遺伝子型を有するのであれば投与対象とされると考えております。
○森委員 女性の発症者の方は、基本、lyonizationの影響で、表現型は男性よりも比較的軽症の可能性もありますが、表現型が軽い場合でも、この薬剤の対象になるといった御判断であるのか。それとも、一定の重症度を満たす方に使うべきかという御意見はあったのですか。そこは確認したいのですが、いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。重要な課題と認識しておりますが、今の段階で、このようなクライテリアを起こした場合にどういう対象になる、ならないという形の試験成績はありません。今後、データを集積した段階では、だんだんとそういうものが増えてきて、こういう所は一つのクライテリアということが学会の動きとして出てくる可能性はあると考えております。
○森委員 確認ですが、臨床的にファブリー病と確定していることが普通の条件ですが、症状の重さは問わないという理解でよろしいのですね。ありがとうございました。
○松井部会長 ほかにはありますか。
○医薬品医療機器総合機構 もしよろしければ、先ほど石川先生から御質問を頂いた件について御回答させていただきます。審査報告書の47ページの表28について、先ほど御説明させていただきましたが、すみません、説明に不備がありまして、左室重量係数については、本剤群においてベースラインからの有意な低下が認められており、ERT群では有意な低下は認められなかったということで、群間での比較ではありませんでしたので訂正させていただきます。また、酵素活性については、現時点で統計解析の結果を持ち合わせておりませんでしたので、御報告させていただきます。
○松井部会長 よろしいですか。ほかにありませんか。
○神田委員 お聞きすることもないかなとは思いますが、使い勝手の所で、用法・用量に関連する使用上の注意の所で、食事の2時間前後は避けることは良いと思いますが、次の忘れてしまった場合に、予定時刻よりも12時間以内だったら飲んで、それを過ぎてしまったら、例えば10時と決めたら、決めた時間に飲みなさいということが注意に書かれておりますが。少しややこしいかなという気もして、例えば、忘れてしまった場合、気が付いたときに服用して、その時間を、また次の決められた飲む時間にしたほうが、私は分かりやすいのではないかと。12時間過ぎたかどうかなということもありまして、例えば、12時間にこだわると、1回忘れて12時間過ぎてしまって、13時間になってしまうと飲まないわけで、次の飲むところまでだと48時間も空いてしまうわけですよね。前に飲んでから、24時間後に飲むのを忘れてしまって、次に飲むのが48時間後になるのですよね。計算違いますか。だとすると、すごく空いてしまうのではないかと思ったのです。それだったらば、やはり空き過ぎると思います。それでも良いのか、そちらを選ぶのか、やはり気付いたときに飲んで、また次は24時間を決められた時間と自分の中で解釈して、回転させていくほうが良いのではないかと気がしたのですが、どうなのでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 すみません、私が正確に理解できているかというところがあるのですが、まず、この薬剤は2日に1回投与する薬剤です。また、食事の前後2時間を避けて、かつなるべく原則、毎回投与時刻を一定にということで、かなり服用方法については複雑になっております。当初、欧州承認時におきましては、飲み忘れた場合には同日中であればその日のうちに服用して、その後は計画されていた予定の服用日に服用するという方策が取られておりました。まず、同日内であれば気付いた時点で服用したとされていたことに関しては、もともと例えば就寝前に飲まれていた患者さんでは、服用のチャンスが少ないというところを考えたようで、どれぐらいであれば空けるべき投与間隔を確保した上で、なるべく投与のチャンスを増やせるかということを申請者のほうで検討した結果、今、このような注意喚起になっております。
また、本剤は薬効の発現におきまして、投与間隔を維持することが比較的重要な薬剤となっております。飲み忘れに気付いた時点で飲んで、その時点から再度隔日投与になるような飲み方、そういう方策もあり得るのではないかということを機構としても考えて、申請者の考えも確認したところですが、服用の起点をずらすことで、かえって患者さんの混乱を生じる可能性もあるのではないかということで、適切な服用方法等を守っていただくという観点からも、飲み忘れ時の対応については現在の方策が分かりやすいのではないかということで、このような案に至っております。すみません、御質問の趣旨と異なる回答であったら、またお聞きいただければと思います。
○神田委員 分かりました。何が分かりやすいというか、守りやすいかということは個人差があるとは思いますが、私の場合そう思ったものですから、おっしゃるような提案が徹底できればいいとは思いますが、間隔が空き過ぎるよりも、できるだけ間隔の差が少なくするためには、私が思った方法のほうが良いのかなと思ったものですから申し上げました。こだわりませんが、ありがとうございました。
○医薬品医療機器総合機構 御意見ありがとうございます。
○松井部会長 ほかにありませんか。よろしいですか。もしよろしければ議決に入ろうと思います。大森委員と森委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいですか。
御異議がないと認めますので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。それでは議題6に移ります。議題6について、医薬品機構から概要を御説明ください。
○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品シグニフォーLAR筋注用キット10mgほかの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は、ソマトスタチンアナログであるパシレオチドパモ酸塩を有効成分とする、4週ごとに1回、筋肉内に投与する注射剤です。2016年9月に、本剤20mg、40mg及び60mgが「先端巨大症及び下垂体性巨人症」を適応として、本邦で既に承認されております。
本薬は、シクロヘキサペプチドのソマトスタチンアナログであり、ヒトソマトスタチン受容体への結合を介して内因性のソマトスタチンと同様に副腎皮質刺激ホルモン(以下、「ACTH」)の分泌を抑制いたします。本申請の効能・効果でありますクッシング病は、良性下垂体腺腫からACTHが過剰に分泌されることによって副腎が刺激され、その結果、コルチゾールが過剰に分泌されることによって、慢性的に高コルチゾール血症を呈する疾患となります。本邦におけるクッシング病の患者数は約450例程度と推察されていて、本剤は希少疾病用医薬品に指定されているところです。
本剤の海外における承認状況については、クッシング病に対して、欧州では2017年9月に承認されており、米国では2017年12月現在、審査中とされております。本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書の12ページの表5を御覧ください。日本人を含むクッシング病患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目とされた投与4か月後の増量の有無を考慮しない場合の投与7か月後における平均尿中遊離コルチゾールについて、基準値上限以下となった被験者の割合である奏効率については、いずれの用量群においても95%信頼区間の下限値が事前に規定した閾値を超える結果が認められました。また、同じく審査報告書12ページの表6に示したように、本剤の投与によって、平均尿中遊離コルチゾール、血漿中ACTH濃度及び血清コルチゾール濃度は、本剤投与1か月後から減少が認められ、投与12か月後まで、ベースラインより低下する傾向が認められました。日本人症例数については11例と少数例でしたが、一定の奏効例が認められ、審査報告書13ページの表8に示すように、個別症例ごとに検討した結果、本剤の投与によって平均尿中遊離コルチゾール、血漿中ACTH濃度及び血清コルチゾール濃度はベースラインよりも低下する傾向が認められました。以上の臨床試験成績を踏まえ、本剤の有効性は示されたと解釈して差し支えないものと判断いたしました。
安全性については、審査報告書の17ページから御覧ください。審査報告書17ページ以降の「7.R.2安全性について」に示したように、臨床試験における有害事象や副作用の発現状況、並びに血糖関連事象等の個別の事象について検討した結果、発現が認められた事象についてはおおむね既知の事象であり、既承認効能と同様に適切な注意喚起等がなされれば、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。
なお、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全投与症例を対象に使用成績調査を実施して本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講ずる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。
以上のとおり、機構での審査の結果、「クッシング病」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であり、再審査期間は10年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないものと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。
○武田委員 審査報告書の13ページの表6で、「主な副次評価項目の結果」というのがあります。この中の血清コルチゾール濃度です。日本人も、全集団も、30mg群では前後に余り差がなさそうに見えます。特に日本人の場合は例数が少ないのもあるのですけれども、30mg投与で血清コルチゾールには多分、差はないです。これは、どう解釈したらよろしいのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。先生の御指摘のとおり、日本人の30mgは審査報告書の13ページの表6の一番右のカラムだと思いますが、おっしゃるとおり、ベースラインと投与12か月後では、あまり変化は認められていないというところです。投与1か月後は-38.7nmol/Lということで、血清コルチゾール濃度が低下していますが、先生が御指摘のように、30mgの症例数は日本人4例とかなり少ない症例数であったということも留意する必要があると思います。また、血清コルチゾール濃度というのはストレスによる影響や日内変動も認められております。一方で、主要評価項目は、尿中のコルチゾールをベースとした奏効率としており、mUFCという数回測定した24時間蓄尿サンプルから平均の尿中遊離コルチゾールを算出して指標としています。その推移が12ページの表6にありますが、日本人の30mgの4例はマイナスということで、尿中のコルチゾール濃度は低下が認められているような状況です。
○松井部会長 今の回答でよろしいですか。
○武田委員 はい、大丈夫です。
○松井部会長 他にはいかがでしょうか。
○佐藤委員 今の点と関係するかもしれません。審査報告書の2ページを見ると、既に承認されている先端巨大症などの場合には、通常これこれ、「その後は」という書かれ方をしています。今回御提案の用法・用量は通常こうこうで、「なお」と書いてあって、「その後」とは書いていないのですが、これは初回から患者さんの状況に応じて増量するという趣旨なのでしょうか。
というのは、36ページを読むと、どうもそうではなさそうな気もするのです。既存の用法・用量と違った、「その後」という文言を使わなかったことについて説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。先生のコメントについては、先端巨大症の用法・用量と、クッシング病の用法・用量の一部記載が違うと。「その後」と「なお」の所の違いについての御質問と理解いたしました。先端巨大症については、本剤40mgを4週間毎に3か月間投与する。3か月のその後というところで、その後は患者の状態に応じて用量を20mg単位で適宜減増すると、試験成績もそのような形だったので、そのような用法・用量にしております。
一方、クッシング病の場合については、先端巨大症のように3か月間、この薬を投与してくださいというものではなくて、まず開始用量は10mgを4週(約1か月)投与して、あとは患者の状態に応じて適宜増減できるというふうにさせていただいております。大きくは、先端巨大症は「3か月間まずは投与してください」というところがありましたので、そのような文言とさせていただいております。
○佐藤委員 通常の理解として、「なお」という書き方をしても、「その後」と同じ意味だということであれば了解いたしました。
○松井部会長 他にはいかがでしょうか。
○森委員 添付文書の確認を一点お願いします。添付文書(案)の3ページに記載されている重大な副作用の所で、「高血糖、糖尿病の発症又は増悪」とあります。頻度が63.4%というのは、先端巨大症か、クッシング病のどちらのデータによるものでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 これは、統合されております。
○森委員 統合した結果、この63.4%ということで理解してよろしいのですね。
○医薬品医療機器総合機構 はい。
○森委員 分かりました。
○医薬品医療機器総合機構 それぞれについては、その上の所です。例えばクッシング病患者さんの場合、副作用として高血糖が46.7%、上の先端巨大症の場合は、糖尿病発症の副作用が24.2%などとそれぞれ記載させていただきました。
○松井部会長 よろしいですか。
○森委員 大丈夫です。
○松井部会長 武田委員どうぞ。
○武田委員 従来薬品と違う作用機序のステロイド合成酵素阻害の機序、メトピロンとか、オペプリムとか、デソパンという競合品目があります。一応、今回の薬を使って、もしも血中ACTHとかコルチゾールが正常化しない場合は、こういう薬を使わないといけなくなりますよね。その場合に、併用したデータはないようですけれども。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。本試験で実施された国際共同第III相試験については、そういった薬剤を使用している患者はウォッシュアウト又は除外されております。現状では、併用されたデータは持ち合わせていないということです。製販後調査では、そういった併用薬の状況も集めるようにしたいと思いますが、この試験成績から言うと、単剤で使用して、コルチゾールの濃度を見ることが想定され、それにプラスして併用されると、本剤でも低コルチゾール血症も認められておりますので、まずは単剤で使用されるのかと考えております。
○松井部会長 他にはいかがですか。
○今井委員 この製剤は、パモ酸という余り見かけない塩が使われています。海外で皮下投与に使われているのはアスパラギン酸塩ということなのに、今回、何となく安全性が良くないような、ナフタレン骨格の塩にされているのはなぜかということ。それが、例えば、マイクロスフェアを作るときに、どうしても有機溶剤に溶かすために、この塩でなければいけなかったとか。普通の塩にされていなかった理由を聞きたいのです。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。パモ酸塩というのは、そもそも徐放というところもあってパモ酸塩が使われております。先生がおっしゃるように、海外の皮下投与製剤は1日2回投与なので、パモ酸塩は使用されておりません。
○今井委員 海外の製剤は皮下投与なので、徐放にしていないからですね。これを徐放にした方法というのは、マイクロスフェアにして徐放にしているのであって、塩にして徐放にしているわけでは決してないので、そこのところはちょっと考えが違うのではないかと思います。
○松井部会長 考えが違うとおっしゃいますのは。
○今井委員 徐放性製剤にする方法として、マイクロスフェアを利用しているのであって、塩でもって徐放しているわけではないですよね。そのスフェアの中に封じ込めることが、徐放の製剤を作っているということであって、その中に入れる塩類のところまで考えないと徐放にならないということなのでしょうか。
○松井部会長 いかがですか。
○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。速放性製剤に関しては、アスパラギン酸塩が使われております。徐放性製剤を開発されるに当たって、原薬としても徐放性製剤に適したものということでパモ酸塩を選んだ上で、製剤化の技術としてマイクロスフェアで徐放の技術をプラス加えて本剤を開発しているという経緯があります。
○今井委員 しつこくて、すみませんけれども、その塩を選ばれたときに、他の塩のデータもいろいろあった上で、このパモ酸を選ばれたのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 開発の経緯としては、最初はアスパラギン酸塩で開発をされていたのですけれども、やはり徐放性製剤を作るに当たって、幾つか塩を、恐らく企業が検討していて、パモ酸が一番適切だということで、徐放性製剤の開発に関してはパモ酸塩が用いられているということになります。
○今井委員 普通の脂肪酸とか、もう少し体に良さそうな塩を使われたらよかったのではないかと思います。
○奥田部会長代理 パモ酸自身は、時々その塩は使われているものです。時々出てきます。
○松井部会長 他にありますか。特にないようでしたら議決に入ります。大森委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて議決は御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。それでは、議題7に移ります。機構より説明をお願いします。
○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料7、医薬品アジレクト錠1mg等について、医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。本剤はラサギリンメシル酸塩を有効成分とするパーキンソン病の治療薬になります。本剤はドパミンを分解する酵素であるモノアミンオキシダーゼB型(以降MAO-B)を阻害し、シナプス間隙のドパミン濃度を高めることにより、パーキンソン病の症状改善をもたらします。今般、国内外の臨床試験成績等を基に「パーキンソン病」を申請効能・効果として、製造販売承認申請されております。なお本剤は2017年10月現在、50以上の国又は地域で承認されております。本品目の審査に関して、専門委員として資料12に記載されております委員を指名しております。
本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書32ページの表18を御覧ください。本開発では、類薬と同様に、レボドパ併用の進行期パーキンソン病患者を対象とした試験と、レボドパ非併用の早期パーキンソン病患者を対象とした試験がそれぞれ実施されております。レボドパ併用のパーキンソン病患者に対する本剤の開発は、海外試験の成績を日本人に外挿するブリッジング戦略に基づくものであり、本剤1mg群の有効性が検証された海外第III相試験(122試験と記載しております)の成績を日本人に外挿するために、本剤1mg群及び0.5mg群が設定されたもう1つの海外第III相試験(133試験)をブリッジング対象試験とし、ウエアリングオフ症状を伴うレボドパ併用のパーキンソン病患者を対象とした国内第II/第III相試験(CCT-002試験)が実施されております。
CCT-002試験の結果について御説明いたします。審査報告書36ページの表23を御覧ください。本試験では、主要評価項目として、1日当たりの平均オフ時間が評価項目として設定されております。この平均オフ時間については、パーキンソン病の標準治療薬として位置付けられているレボドパの薬効が消失した時間を示しております。この平均オフ時間について、国内第II/第III相試験では、本剤1mg群及び0.5mg群で、ともにプラセボと比較して統計学的に有意な改善が認められております。また、プラセボ群との群間差は本剤0.5mg群よりも1mg群で大きい傾向を示しております。審査報告書39ページの表28を御覧ください。ブリッジング対象試験である本剤1mg群及び0.5mg群が設定された133試験(海外第III相試験)においても、表28に示しますように、国内第II/第III相試験と同様の結果が示されております。以上の結果から、両試験成績は類似していると判断できるため、審査報告書40ページから41ページ「7.3.2」項に示しております海外第III相試験122試験の成績を日本人に外挿することが可能であると判断しております。
また、レボドパ非併用のパーキンソン病患者を対象とした国内第III相試験において、審査報告書32ページの表19に示すように、主要評価項目であるMDS-UPDRS PartII+III合計スコアについて、本剤1mg群でプラセボ群と比較して有意な改善が認められております。この評価指標については、パーキンソン病で主な症状である運動症状、パーキンソン病の症状である固縮等の運動症状を評価するための指標で国際的に使われているものです。以上のウエアリングオフ症状を伴うレボドパ併用患者及びレボドパを併用していないパーキンソン病患者を対象とした試験成績から、日本人のレボドパ非併用及び併用のパーキンソン病患者における有効性は示されていると判断しております。
続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書36ページの表24、また審査報告書33ページの表20を御覧ください。国内で実施された2つの臨床試験における主な有害事象の発現状況を検討したところ、パーキンソン病治療薬に特徴的なジスキネジア等がプラセボ群と比較して、本剤群で多く認められております。これらの事象について、審査報告書50ページ以降で詳細に検討を行いました。検討の結果、認められた事象はMAO-B阻害薬に特徴的な有害事象であり、その多くは軽度及び中等度であったことから、添付文書において類薬と同様の注意喚起を行うことで、臨床上大きな問題となることはないと判断しております。
以上のような有効性、安全性に関する検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断しております。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
なお、事前に奥田委員より、本薬の有効成分であるラサギリンメシル酸塩の製造工程に関して、出発物質として〇〇〇〇〇〇〇〇及び〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇が設定された理由及び海外の出発物質の状況について御質問を頂いております。
この点について、出発物質に含まれる不純物に関する検討結果及びその検討結果をもとに出発物質中の不純物の管理を行うことで原薬の不純物を管理する管理戦略が立てられていること、並びに海外でも同じ化合物が出発物質として設定されていることなどを回答させていただき、御了解いただいております。
また、提出された申請資料に誤記載がありましたので、審査報告書を訂正させていただきます。審査報告書3ページの「2.2.1製剤及び処方並びに製剤設計」の項を御覧ください。本項の2文目に、本剤に含まれる添加物として「アルファー化デンプン」と記載されておりますが、正しくは「部分アルファー化デンプン」となりますので修正させていただきます。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。
○大森委員 添付文書に関して御質問いたします。添付文書の5ページの左の列に「併用禁忌」「使用しないこと」と一覧表になっています。この表の下のほうには、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」以下、その範囲に入る薬の全てを挙げているのですけれども、三環系抗うつ薬と四環系抗うつ薬は一つだけ挙げて、あとは「等」と、アミトリプチリン塩酸塩等と、マプロチリン塩酸塩等ということで、省略されています。ところが、左のページの「禁忌」で、「次の患者には投与しないこと」のほうは、きちんと三環系抗うつ薬を、アミトリプチリン塩酸塩、アモキサピン、イミプラミン塩酸塩と具体的に名前を挙げています。
右のほうの表で、これは非常に重要な禁忌ですから、やはり「等」というようにして省略してしまわないで、全て挙げるのが適切ではないかと思うのですけれども、ここは一つだけ挙げて「等」として、あとは省略してしまった理由は、何かあるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。先生の御指摘のように、禁忌には全ての薬剤が書いてありますので、併用禁忌も同じように対応させていただきたいと思います。
○大森委員 よろしくお願いいたします。もう一つ、この表には商品名も書いてあるのですが、これはどうでしょうか、ちょっと珍しいことのような気がするのです。例えば、アミトリプチリン塩酸塩の所はトリプタノールとか、それぞれ薬の一般名と、それに対応する商品名が書いてあります。余り、こういうことはないような気がするのですが、何か訳があるのですか。
○医薬品医療機器総合機構 今、安全対策部門に確認いたしましたが、併用禁忌の項については、代表的な販売名一つを書くようにしているところですので、他の品目についても同様の対応になっていくかと思います。
○大森委員 そうですか。添付文書は、そもそもこのようになっていましたか。
○医薬品医療機器総合機構 今後、全ての品目についてこういう記載になっていくと考えております。
○大森委員 そうですか、それは何か訳があるのですか。なぜ私がお伺いするかというと、今はそれぞれの薬、ジェネリックを含めると多数の製剤があるわけです。そのうちの1つを挙げるという意味がよく分からないのです。
○医薬品医療機器総合機構 先般公示された薬物相互作用ガイドライン案では、併用禁忌のものは全ての一般名と、あとは代表的な販売名を記載するということになっております。恐らく分かりやすいようにという趣旨で、そういう表記法になっているのかと認識しております。
○大森委員 分かりやすいかどうかは、かえって一つだけが出てきて、他が出てこないのはどうだろうかという気がするので、何か議論の余地のありそうな話だと感じます。
 
○医薬品医療機器総合機構 確認をしました。今は分かりやすいようにということで、相互作用、併用薬の記載について、その記載の見直しをやって最終案を出して、それをパブリックコメント中という状況だと思います。ただ趣旨としては、成分だけ出しても分かりにくい人がいるのではないかということで、代表的なものを出せばイメージしやすいのだということで、こういう記載になっているのだということです。
○大森委員 はい。もう少しお伺いします。例えばこの表の中の一番下に、ノルアドレナリン、セロトニン作動性抗うつ薬のミルタザピンというのがあります。ミルタダピンは一般名です。そして、レメロンというのが商品名になります。ここは、2つの製薬会社が同時に薬を出したので、レメロンのほかにリフレックスという薬もあって、恐らく半々で売れていると思うのです。そういう人はいないとは思うのですけれども、レメロンだけが駄目で、リフレックスはいいのかというふうな解釈も起こり得るので、一つを挙げるのは少し心配なのです。もし挙げるとしたら、ここに「等」を入れないと、おかしくないかと思うのです。
○松井部会長 これは、今ここで議論して、有効性のある結論が出てくるとは思えないので、この次までに見解を出していただけないでしょうか。
○医薬品審査管理課長 今、御指摘いただいたような、一つの販売名を代表として入れる云々のところについては、一度こちらのほうで整理をさせていただきたいと思います。特に、今回の品目について、どうするかというのを整理をして、先生方と御相談もさせていただきながら決めたいと思います。
 
 
○松井部会長 委員の先生方、それでよろしいでしょうか。
○鈴木委員 商品名はあったほうがいいと思います。別に1個ではないというのは皆さん分かっているでしょう。「等」は入れてもいいと思いますけれども、できるだけ分かりやすくしていただいたほうがいいと思います。
○松井部会長 それでいいですね、次回までに見解を報告してください。他にありますか。
○武田委員 素人なので変な質問かもしれません。同効薬のセレギリンの取扱いの所を見ると。
○松井部会長 何ページですか。
○武田委員 ここには書いていないのですけれども、ネットで見ると、同じMAO-B阻害薬のセレギリンという競合薬ですよね。この取扱上注意で「覚せい剤取締法により、本剤の交付を受けた患者は、第三者に本剤を譲り渡すことは禁じられている」と書いてあるのですが、これは同じMAO-B阻害薬なのですけれども、取扱いが全く違うのでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、法律上の取扱いは全く別のものになります。セレギリンについては、その構造にアンフェタミン骨格を有する化合物であったことや、非臨床試験の結果等から覚せい剤原料として指定されております。本剤については、厚生労働省の監視指導・麻薬対策課と協議の上、覚醒剤原料には該当しないとの結論に至っております。
○武田委員 ありがとうございました。
○松井部会長 他にはいかがですか。
○石川委員 確認なのですけれども、今回の申請は、1mgだけが申請されているという理解でよろしいのでしょうか。0.5mgは入っていないと。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。製剤の規格としては0.5mgと1mgの両方が申請されております。その理由として、臨床推奨用量は1mgだと考えているのですが、一部の特殊な患者さん、高齢者とか低体重、あとは軽度の肝機能障害患者さん等では、薬物動態の観点とか、安全性の観点で低い用量から始めるほうがいいだろうという結果が得られております。通常用量としては1mgと設定しておりますけれども、そういう特殊患者さんで0.5mgが必要になるため、今回0.5mgも同時に申請されているということになります。
○石川委員 1mgのほうが、ジスキネジアが副作用のときに多くて、それで0.5mgがもしレボドパ併用群のときに、39ページのように、もし0.5mgで有効なのであれば、そちらのほうが副作用が少なくて、十分有効になるという可能性もあるのではないかと読んだのです。むしろ、1mgと規定するよりは、副作用が少なくて有効な人がいる。しばしばそういうことは日常臨床で経験するのですけれども、これはどうでしょうか。
○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり高用量にした場合に、ジスキネジアが増えるというところはそうなのですが、そこについては有効性の観点から見た場合には、やはり1mgのほうが有効性が高いという結果が得られております。今回の臨床試験の中では、検証された用量としては1mgのみとなっております。したがって、臨床推奨用量として0.5mgを設定することは適切ではないというような状況になっております。
○石川委員 これは、例えば、表28の0.5mgの有効性は確認できなかったということですか。
○医薬品医療機器総合機構 表28において0.5mgで認められている0.49という差については、プラセボ群との比較では有意な差があります。ただその一方で、国内第II/第III相試験と海外第III相試験は、両方で0.5mg、1mgという2用量で試験を行った結果、リスクベネフィットバランスの観点から1mgがいいだろうと判断されました。もう1つの海外第III相試験で、1mgの検討が行われた結果、1mgで有効性が認められて、安全性も許容可能であったということから、その有効性が再現性をもって示され、1mgの有効性が検証されたとお伝えさせていただきました。
○松井部会長 その点について他の先生方もよろしいですか。他にはいかがですか。
○山田委員 添付文書の4ページの重要な基本的注意の(3)の表現です。病的賭博のことの記載があります。これは大森先生が御専門だと思います。この病的賭博という表現は、DSM-5では、ギャンブル障害とか、Behavioral addictionというほうに分類されたように思うのです。衝動性制御障害というこの表現についても、このままでよろしいでしょうか。念のための確認です。
○医薬品医療機器総合機構 御質問ありがとうございます。こちらの衝動制御障害の記載については、パーキンソン病治療薬全体で統一した記載にしている状況です。今後、先生がおっしゃったように言葉の定義の変更に伴って必要となった場合には、全薬まとめて修正することになるかと思います。
○松井部会長 まとめてですね。
○医薬品医療機器総合機構 そのようにさせていただければと思います。
○松井部会長 他にはよろしいですか。それでは議決に入ります。武田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。それでは、議題8に移ります。機構より報告をお願いします。
○事務局 議題8、資料No.8、タウリンを希少疾病療薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料8の2つ目のタブ、「評価報告書」のタブをお開きください。報告書1ページの中段を御覧ください。申請者は「大正製薬株式会社」、予定される効能・効果は「MELASにおける脳卒中様発作の再発抑制」となります。まず、1ページの1.対象患者数について御説明いたします。MELASは指定難病であるミトコンドリア病の病型の1つであり、脳卒中様発作を特徴とします。平成26年度にミトコンドリア病に対し特定疾患医療受給者証の交付を受けた件数は、1,439件であり、本邦では、2001年のミトコンドリア病患者調査において、MELAS患者は全ミトコンドリア病患者のうち31.4%であったと報告があります。以上より、5万人未満という基準を満たしているものと考えております。
次に、「2.医療上の必要性について」の1ページ下段から御説明をいたします。MELASはミトコンドリアのデオキシリボ核酸における転移リボ核酸遺伝子領域の点変異によって発症するとされており、急激な意識障害等の脳卒中様発作及び痙攣発作が1年間に平均9.36回認められたとの報告があります。また、本邦で実施された疫学調査では、死亡に至った患者の割合は20.8%であり、診断から死亡までの期間(平均値)は7.3年であったとの報告もあり、死亡に至らない場合も、寝たきり又は脳血管性認知症に至ることが多いとされています。
本邦の診療マニュアルにおいて、MELASに対する治療として、脳卒中様発作の急性期には、L-アルギニン、フリーラジカル補捉剤が投与されている旨や、一部の患者で随伴して認められる糖尿病、心伝導障害、代謝性アシドーシス等の症状には対症療法が行われている旨が記載されていますが、本邦でミトコンドリア病に関連する適応を有する薬剤はございません。
本剤の作用機序は明確になっていないものの、ミトコンドリアに作用することにより、MELASにおける脳卒中様発作の抑制作用を示すと考えられており、医師主導治験として実施された国内第III相試験において本剤の有効性が示唆される試験成績が確認されています。以上より、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
最後に2ページの下段からの「3.開発の可能性について」御説明いたします。本剤は医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと判断され、2017年に厚生労働省から開発要請を行い、医師主導治験として国内第III相試験が実施されています。60%の患者において、本剤投与開始後52週間の脳卒中様発作回数が0回であり、脳卒中様発作回数の減少が示唆されています。以上より、本剤の開発の可能性は高いと考えております。したがって、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほど、お願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質議をお願いいたします。特に御指摘はございませんか。はい、森委員。
○森委員 補足というか、コメントですが、MELASの患者さんのtRNA-Leu(UUR)は、この3243変異を含む遺伝子変異によって、東京大学の先生方の研究で、そのトランスファーRNAのアンチコドンにあるタウリン修飾が欠損している現象は確認されていますので、タウリンの経口的な摂取が有効かもしれないという仮説は以前から指摘されていまして、今回のこの治験で一定の成果が得られているというふうに理解しています。以上です。コメントです。
○松井部会長 コメントですね。ほかにありますか。もしなければ議決に入ろうかと思いますがよろしいですか。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として、薬事分科会に報告いたします。それでは、報告事項に移ります。よろしくお願いします。
○事務局 それでは事務局より報告事項についてまとめて御説明をさせていただきます。初めに、報告事項の議題1、ワンパル1号輸液及び同2号輸液の製造販売承認について、御説明させていただきます。資料No.9を御覧ください。本剤は、中心静脈栄養(TPN)用の糖、電解質、アミノ酸、ビタミン及び微量元素製剤を一剤化した製剤であり、TPNに用いられる希少承認製剤の処方を基本とした上で、一部の成分について近年改訂された欧米のガイドライン等にする準拠するよう変更し、また、既承認のTPN製剤よりも少ない投与液量で1日の所要栄養量を補給可能な設計とした類似処方医療用配合剤です。
今般、TPN療法の適応となる消化器術後患者を対象とした臨床試験成績等に基づき、エイワイファーマ株式会社より製造販売承認申請がなされました。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を既承認TPN製剤と同様「経口、経腸管栄養補給が不能又は不十分で、経中心静脈栄養に頼らざるを得ない場合の水分、電解質、アミノ酸、カロリー、ビタミン、亜鉛、鉄、銅、マンガン及びヨウ素の補給」の効能・効果で承認して差し支えないと判断いたしました。
続きまして、報告事項の議題2「医療用医薬品の再審査結果について」御報告いたします。資料番号は、10-1~10-21で、これらは医薬品再審査確認等結果通知書となっておりますので、まとめて報告をいたします。
初めに、資料10-1は、一般的名称は「トラマドール塩酸塩」、販売名は「トラマールOD錠25mgほか1規格」のもの。資料10-2は、一般的名称は「タフルプロスト」、販売名は「タプロス点眼液0.0015%ほか1規格」のもの。資料10-3は、一般的名称は「バクロフェン」、販売名は「ギャバロン髄注0.005%ほか2規格」のもの。資料10-4は、一般的名称は「リスペリドン」、販売名は「リスパダール コンスタ筋注用25mgほか2規格」のもの。資料10-5は、一般的名称は「エノキサパリンナトリウム」、販売名は「クレキサン皮下注キット2000IU」のもの。資料10-6は、一般的名称は「イルベサルタン」、販売名は「イルベタン錠50mgほか2規格、及びアバプロ錠50mgほか2規格」のもの。資料10-7は、一般的名称は「ロクロニウム臭化物」、販売名は「エスラックス静注25mg/2.5mLほか1規格」のもの。資料10-8は、一般的名称は「アルピプラゾール」、販売名は「エビリファイ散1%ほか8規格」のもの。資料10-9は、一般的名称は「インターフェロンベータ-1a(遺伝子組換え)」、販売名は「アボネックス筋注用シリンジ30μgほか1規格」のもの。資料10-10は、一般的名称は「ジアゾキシド」、販売名は「ジアゾキシドカプセル25mg「NSD」」のもの。資料10-11は、一般的名称は「イルベサルタン及びアムロジピンベシル酸塩」、販売名は「アイミクス配合錠LDほか1規格」のもの。資料10-12は、一般的名称は「シナカルセト塩酸塩」、販売名は「レグパラ錠12.5mgほか2規格」のもの。資料10-13は、一般的名称は「モンテプラーゼ(遺伝子組換え)」、販売名は「クリアクター静注用40万ほか2規格」のもの。資料10-14は、一般的称は「ホリトロピン アルファ(遺伝子組換え)」、販売名は「ゴナールエフ皮下注用75ほか4規格」のもの。資料10-15は、一般的名称は「アミオダロン塩酸塩」、販売名は「アンカロン注150」のもの。資料10-16は、一般的名称は「アダパレン」、販売名は「ディフェリンゲル0.1%」のもの。資料10-17は、一般的名称は「レボブピバカイン塩酸塩」、販売名は「ポプスカイン0.75%注75mg/10mLほか5規格」のもの。資料10-18は、一般的名称は「レボブピバカイン塩酸塩」、販売名は「ポプスカイン0.25%注25mg/10mLほか3規格」のもの。資料10-19は、一般的名称は「ミグリトール」、販売名は「セイブル錠25mgほか4規格」のもの。資料10-20は、一般的名称は「ジエノゲスト」、販売名は「ディナゲスト錠1mgほか1規格」のもの。資料10-21は、一般的名称は「アルグリコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)」、販売名は「マイオザイム点滴静注用50mg」のものとなっております。
これらの品目について、製造販売後の特定使用成績調査、使用成績調査、製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。
報告事項に関する事務局からの御説明は、以上となります。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問等ありましたらお願いいたします。
○杉委員 ちょっと細かいことですが、10-15の「アミオダロン塩酸塩」の添付文書のところに、併用禁忌と併用注意というのがございます。併用注意の所の一番上に、シルデナフィルと載っており、レパチオだと思うのですが、これは併用注意で、私もいいと思うのです。ところが、多分、昨年ですけれども、レパチオの申請のときに、これはアミオダロンとの併用禁忌になっておりまして、そのときに質問させていただいた経緯がございます。今回は禁忌になっていなくて併用注意で、本当は私としては併用注意のほうでいいとは思うのですが、整合性がとれないのではないかと思うのです。どうなのでしょうか。
○松井部会長 いかがでしょうか。先生は、併用注意でいいとおっしゃる。
○杉委員 前のときは、私は併用注意でいいのではないかと言ったのですが、皆さんのほうでこれは禁忌ですと言われた経緯があります。そうすると、肺高血圧症の方でも心室性不整脈がかなり出ますので、アミオダロンを使いたいという要望があるのですが、禁忌になりますと、薬剤師さんは、「これは駄目です」ということになってしまいます。本当は併用注意がいいのですが、でも整合性がとれていないのですよね、これだと。そこをどうされますかということです。
○審査第二部長 機構よりお答えいたします。先生がおっしゃる点については、以前、この部会の場でも話題になりました。その後、現状のままでいいというようなお話をさせていただいたところです。一方、アンカロン注は非常に危機的な状況で使うものですから、その順番を考えますと、このシルデナフィル、バルデナフィルを使っているときに、重篤なものが起きたときに、アンカロンを使えないかというところを考えると、使えるというか、使わなければいけないのだろうなというところがあります。ですので、今回、これについては、このような、要するに再審査では現状のままでいいというようなことになっております。先生がおっしゃる点については、そちらの整合性について考えなければいけないなと思いますので、ちょっと改めて、両者を考えて適切に対応したいと思います。どうもありがとうございました。
○杉委員 ありがとうございました。
○事務局 すみません、事務局からお答えさせていただきます。先生に御指摘いただきましたように、アミオダロンとシルデナフィルの併用なのですが、アミオダロンの錠剤については併用禁忌となっています。こちらの注射のほうに関しては併用注意となっております。そちらに関しては、やはり錠剤が飲める方と、注射を使わなければならない危機的状況において、禁止とするのか、慎重に使うことであればいいのかという、使う対象の患者が違うということで、注意喚起が分かれている状況ですので、そういった意味で差が付いているという状況になっております。
○杉委員 事態は多分、注射と錠剤の違いだろうとは思っていましたが、注射を使うということは緊急時ですよね。それが終わった後の予防のためにも、経口は使うと思うのですが、いかがでしょうか。
○審査第二部長 先生のおっしゃる、そこのところは使うことがあるだろうと思います。ただ、その使う期間というのが、恐らく危機的状況を脱するまでというときに、シルデナフィル、バルデナフィルをどうするかということについては、ちょっと個々の判断もあるかなとは思いますので、先ほど申しましたように、何かできないかということについては今後、検討させていただきます。ありがとうございました。
○松井部会長 禁忌か、それとも注意かは、大いに違うところですから、是非、前向きに検討して報告 していただきたいと思います。よろしゅうございますか。ほかに、特にございませんでしょうか。それでは報告事項については、今のことを含めて御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上なのですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 はい、次回の部会は4月27日金曜日、午後5時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは本日は長時間にわたりまして御苦労様でした。これで終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
( 了 )
 
 

 

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)

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