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2018年3月27日 第10回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録

雇用環境・均等局雇用機会均等課

○日時

平成30年3月27日


○場所

厚生労働省共用第7会議室(中央合同庁舎5号館6階)


○議題

報告書(案)について

○議事

○佐藤座長 

少し時間が早いですが、ただいまから第10回職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会を開催させていただきます。委員の皆様方には、大変御多忙のところ、御参集いただき、誠にありがとうございます。川上委員は、所用により11時半頃までと伺っております。本日は、牧原厚生労働副大臣にも御出席いただいております。最初に、牧原副大臣に一言御挨拶を頂ければと思います。


○牧原厚生労働副大臣 

おはようございます。厚生労働副大臣の牧原でございます。今日は、これまで9回にわたって、大変精力的に御議論を頂いたことについて、まずは委員の皆様に感謝を申し上げさせていただきたいと思います。この会議は、平成29328日に、働き方改革実現会議において決定された実行計画を踏まえて、昨年5月から開催されているものでございまして、今日まで、大変精力的に御議論を頂いたと承知をしています。職場のパワーハラスメントは、働く方の尊厳や人格を傷付け、職場環境を悪化させるものでございまして、あってはならないことです。その防止策というのは、極めて重要なテーマです。そういうことから、これまで検討会に御議論を頂いた委員の皆様へ、改めて感謝を申し上げたい。そして、また御議論を拝聴させていただくため、本日出席をさせていただきました。本日も、現場の労使双方の皆様が一致して、職場のパワーハラスメント防止対策を、現状よりも前に進められるよう、検討会の取りまとめに向けた御議論をお願い申し上げまして、冒頭の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。


○佐藤座長 

本日の議題は、報告書()についてです。前回委員の皆さんに御議論いただいた内容を踏まえて修正した報告書()ができていますので、それについて事務局から御説明いただいて、その後、委員の皆さんから自由に御議論いただければと思います。それでは、説明をお願いいたします。


○堀井雇用機会均等課長 

それでは御説明をさせていただきます。まず初めに本日、配布をさせていただいた資料ですが、検討会の報告書()、参考資料()2つ配布をさせていただいております。参考資料()につきましては、これまで御議論、御検討いただいた際に配布させていただいた資料などを中心に、ピックアップしたものです。また、安藤委員と岡田委員からプレゼンテーションをしていただいた際に、貴重な参考になる資料も頂きましたので、そういったものも入れさせていただいております。これは微調整をして、最終的な報告書の後ろに付けさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、報告書()について、私から御説明させていただきます。前回の検討会、そしてこの後委員の皆様方から、修正について、いろいろな御示唆を頂いた点を中心に、修正をした点を御説明をし、それからまとめの所を説明をします。

 まず報告書()1ページ目、34行目、調査につきまして平成24年度に引き続きということで明確化しております。

2ページ20行目。これは社会的ルールやマナーを欠いた言動が一部には見られることもあるのではないかということで修正をしております。

 そして3ページ目、28行目ですが、行為者と被害を訴える相談者の人間関係、地位、業務の状況などが千差万別であることから、パワーハラスメントに該当するか否かの判断が難しいとの意見も示されたということで修正をし、言葉のつなぎを「さらに」ということで修正しています。

5ページですが、これは30行目で、円卓会議の報告書の注意書きとして記載しているところを追記するという御意見を踏まえての修正です。

 細かいところの修正は省略させていただきますが、8ページの22行目からということで、ハラスメントは育児休業、介護休業取得などに伴うハラスメントも規定しておりますので、そういったことで文言上の修正をいたしました。

12ページです。これは、前回のときに御質問がありまして、それでその御質問の回答部分を明確化したということで、12ページの38行目、「逸脱し」の次に「または」ということで追記をさせていただいております。

 次に13ページです。2行目から、「業種、業態、職務、当該事案に至る経緯や状況などによって、業務の適正な範囲が異なるとの意見が示された。具体的には業務上の指導や注意について、職務内容が危険を伴う業務であるか、通常のオフィスワークであるか、また、注意の対象となる労働者が、新人かベテランかによって、業務の適正な範囲に含まれるかどうかが変わることが考えられることから、労使が判断するに当たっては異なる事例の収集、更なる事例の収集が必要ではないかとの意見が示された」という部分を追加をしております。

14ページの18行目、「ただし、平均的な労働者の感じ方について、業種、業態等によって異なることが考えられることから、まだ共通認識が十分に形成されるとは言えない状況であり、更なる事例の収集が必要ではないかとの意見が示された」という点について追記をしています。

 そして、15ページです。これは行為類型との関係で出された御意見を追記しています。15ページの4行目からですが、「ただし、このような場合であっても」というのは、つまりパワハラに当たらないとされる場合です。「このような場合であっても、何らの対応も必要ないということではなく、事案に応じて適切な対応が講じられることが、職場環境の改善に必要なことがあるとの意見が示された」と追記しています。

 同じページの22行目ですが、これは、出されていた例についての御指摘がありました。「遅刻や服装の乱れなど、社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、再三注意してもそれが改善されない部下に対して、上司が強く注意をする」、このようなことが分かりやすいのではないかという御示唆を踏まえての修正です。

 また、同様に実際の事案なども含めて、より分かりやすくという御意見がありまして、15ページの29行目、幹部というのを自身ということで修正をし、社員というのも新入社員というようなことが分かりやすいのではないかということで修正をしています。

 そして16ページの37行目からですが、「これらの取組については、理念的に並立し得るという意見や、複合的に取り組み得るものがあるという点が示された」。特にマル3の取組を実施すれば、マル4マル5の取組を複合的に実施するという意見や、マル4の取組を実施すれば、マル5の取組を複合的に実施するという意見が示されたということに加えまして、「さらに、これらの選択肢を含め、セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントも含めた総合的なハラスメント防止法を創設することも将来的には検討に値するのではないかという意見も示された」ということを追加をしています。

 そして同じく17ページの20行目からですが、これはマル1の選択肢についてですが、「一方、中長期的には検討に値するという意見も示された」。その後の23行目ですが、足下の対策として、すぐに実名にするべきという意見は示されなかったということで、「これを支持する」ということを修正をしています。

 続きまして18ページです。これも事業者に対する措置義務の部分で幾つか修正をしていますが、特に14行目から15行目。講ずべき措置とは別の規定の仕方を工夫することにより、先進的な取組や、特定の業態向けの取組を含めた幅広い取組を推奨できるのではないかという意見があったということを追記をしています。

 次に19ページになりますが、これはマル4のガイドラインについてです。16行目は、行政等による強制力が弱いので、取組が進まない懸念があるという御意見が示されたということを追記をしています。

 そして19ページの28行目です。これは、そもそも職場内で指導とは言っても暴力などが行われた場合、悪質な行為は刑法違反になる。また、パワーハラスメントということでされたことは民法上の不法行為などで実際に裁判にもなっているので、そういったことも併せて周知をすべきという御意見があったのを追記しています。そして実態の把握が必要だろうということで、職場のパワーハラスメント防止対策の効果を分析すべきという御意見があったことを追記をさせていただいています。

 そして20ページの26行目です。従業員のアンケート調査、ヒアリングを実施することが効果的だという御意見があったことを追記をしています。

 続きまして、22ページの29行目になります。被害者、その関係者に対する報復を目的とした行為をしてはならない旨の行為者への伝達、いろいろな形のやり方があると思いますが、そもそも行為をした人への伝達や、意識、行動の改善が必要だろうという御意見を頂きまして、それを追記しています。また、そのような措置は行為者の人権にも配慮をしつつ、実施をすることなどが想定されている部分も追記をしています。

 続きまして24ページです。ここはパワーハラスメント発生要因へのプローチ、望ましい事例ということで書いてあります。

 そして24ページの4行目、20行目、マル1マル2ということで、コミュニケーションと組織全体の職場環境の改善というアプローチで書いていたのですが、コミュニケーションということでまとめたほうが分かりやすいのではという御指摘でまとめています。そして、マル1とマル2のどちらを先にするかというところで御議論もあったと思いますが、取りあえず企業に対する調査などで、コミュニケーションを重視しているというデータがありましたので、マル1マル2という順番にさせていただいています。

 次に24ページの35行目の中小企業の所ですが、これは39行目から、中小企業の限られた体制の中で、パワハラをどう判断するか、あるいはノウハウ、専門知識が必要だという御意見がありましたので、そこを踏まえての修正にしています。

 そして、27ページですが、12行目の所で、名前を付けて周知をするということが有効ではないかという話があったときに、前回、カスタマーハラスメントということ、あるいはクレーマーハラスメントという言及がありましたので、追記をさせていただきました。また、ここの部分につきましては、順番を変えて15行目から顧客や取引先からの過大な要求という部分については、従業員の負荷が多くなる、パワハラの背景にある部分について、一人一人が顧客や取引先の立場となる場合も含めて、職場の内外を問わず、他者に対して著しい迷惑行為、関与してはいけないという社会認識の形成が重要という御意見があったことを追記をしています。

 そして、27ページの30行目、まとめの部分になります。まとめの部分につきましては、特に34行目になりますが、これまで幅広く御議論いただいた中で、円卓会議の提言に基づいて今取組をされているわけですが、これは具体的には企業、労働組合、労働者一人一人の自主的な取組がベースになっております。それに対して、厚生労働省は現在、予算事業でその取組の促進を行っていますが、そのような現状の取組よりも、パワハラの防止対策を前に進めるべきだということで一致をしたと記載しています。

 次の38行目です。また、業務上の指導、訓練、教育とかそういったこととの線引き、この点についての難しさは、かなりこの検討会でも議論がされました。39行目ですが、現場で労使が対応すべき職場のパワハラの内容ですとか、取り組む事項を明確化するもの、こういったものが必要だ、こういったことについても御異論はなかったということを記載しています。

 そして、28ページの3行目からですが、具体的な対応策についてということで、これは記述の4(2)のマル1からマル5まで、複数の案が議論されて、メリット、デメリットが議論されました。特に6行目からですが、これらの案につきましては、議論の中にそれぞれ並立をし得る取組があるだろう、複合的に取り組むものがあるだろうという御意見や、また、時間差というのでしょうか、まずは足下、次に中長期的なというような形の段階的な取組、そのような御意見も出たという御紹介をさせていただいています。

 その次の9行目ですが、そのいろいろな御意見の中でも、まずは4(2)のマル3ということで、事業主に対する措置義務を中心に検討を進めることが望ましいという意見が多く示されたということを記載をしています。詳細な説明は省略させていただきますが、既に報告書の本体にも書かれているように、既にあるハラスメントの取組と複合的、総合的に取り組むことなどの効果に加えまして、事業主として取り組むべき具体的内容を明確化されることで、様々なメリットがあるということが示されたことを記載しています。

 ただ、この案につきましては、紛争が生じたというよりも、まずは紛争にならない取組をすることが大事ではないかという御意見があったり、あとは措置義務に対する懸念ということで、これも詳細な説明は省略をさせていただきますが、そもそもパワハラとは何ぞやという部分で、職場が萎縮する、認識のずれで摩擦が生じる、そういったことが懸念されるという御意見。少なくとも次の34行目のローマ数字1、38行目のローマ数字2の論点については、共通認識を持つ必要があるという御意見があったということを記載しております。34行目のこのローマ数字1ですが、これは先ほどの報告書の本体でも御説明したように、業務の適正な範囲というか、平均的な労働者が一体何かというのが、業種、業態、職務、当該事案に至る経緯や状況などの違うようなケースがあるのではないか。これは一体どういうものか。そして、38行目から中小企業の場合です。中小企業の場合は、大企業に加えて、対応が困難な部分があり、そのような場合においても、パワハラの予防、解決に向けての対応、あるいはそういったことにどのような支援が必要かという点です。

 そして29ページの3行目ですが、このような議論がありましたので、まずは4(2)のマル4の案ということで、事業主による一定の対応措置をカイドラインで明示をすると。ガイドラインであることで、今よりも一歩進めていくという御意見が示されました。また、この御意見に対しては、6行目にあるように、この明示だけでは行政等による強制力が弱いということから、取組が進まない懸念があるという御意見が示されました。

 このような意見を踏まえて、今後は労働政策審議会において、これらの複数の対応案について、そして、現場で労使が対応をするべき職場のパワハラの内容や取り組む事項を明確化するためのものの具体的な内容について、これは28ページの38行目から記載されていものですが、その明確化されるものについて、議論・検討が進められて、厚生労働省において所要の措置が講じられることが適正であると。ただし、この検討を進めるためには、御意見として、懸念として示された上記ローマ数字1とローマ数字2ですが、この論点について、厚生労働省において関係者の協力の下で具体例の収集・分析を鋭意行うことが求められるという記載でございます。

 次の29ページの17行目、これは顧客等からの悪質なクレームについてですが、顧客や取引先などの暴力や悪質なクレームなどの著しい迷惑行為については、労働者に大きなストレスを与える悪質なものがあり、無視できない状況にあるという問題が明らかになったと。このような行為については、事業主が労働者の安全に配慮するために、何らかの対応に取り組むことが必要とされているのではないかという御意見が示されました。一方で、職場のパワハラの検討会ということで、ここの検討会で御議論いただいたいろいろな論点などとの関係性を見たときに、相違点が一定あるという議論もされて、そのような相違点を踏まえれば、事前に行為者が予見できない場合に、予防が難しいなどの論点が示されました。したがって、業種や職種ごとの対応とか、状況に個別性が高いということも、一定の事実であるということになっていると思います。このため、顧客や取引先からの著しい迷惑行為について、事業主に取組を求めること、そして社会全体の気運醸成の対応を進める。こういったことを考えると、パワハラ等の相違点も踏まえつつ、関係者の協力の下、更なる実態把握を行った上で、具体的な議論を深めていくことが必要であるとしております。私からは以上です。


○佐藤座長 

どうもありがとうございました。これまで9回、検討会で御議論いただき、今日は10回目ということで、それを報告書にまとめていただいています。検討会ですので前回も少し議論がありましたように、労使、研究者、それぞれの立場から自由に御議論いただいて、合意できるところは合意するような形でまとめ、それぞれ御意見が違えば、それはそれとしてきちっと整理することが大事なことだと思います。そういう趣旨でまとめも書いていただいているかと思います。そういう意味で全体について、今日、できれば、まとめの報告書が作れればいいと思いますので、これまでのまとめのところ、それぞれ自由に御意見を伺えればと思います。いかがですか。どうぞ。


○漆原委員 

まず質問が1点ございます。20ページのマル1の所、26行目ですけれども、ここだけ労働者ではなくて従業員になっていますが、これはアンケート調査を実施する際に範囲が労働者より広いとか、そうした意図があるのかどうかについてお伺いしたいと思います。


○堀井雇用機会均等課長 

特にそのような意図がありませんので、もし差し支えなければどちらかに統一する。分かりやすいほうに統一することにさせていただきたいと思います。


○佐藤座長 

一般的に企業内で労働者は使わないですね。普通、社内ではね。社員とか従業員とか、社員が一般的かもわからないですが、それは検討させていただきます。深い意味はなくて自社の社員ということだと思います。ほかに、どうぞ。


○小保方委員

まとめに入る前の所で、16ページから17ページにかけて「総合的なハラスメント防止法を創設することも将来的には検討に値する」と、この旨が追記されたこと自体は歓迎したいと思っています。これは、これまでも検討会の中で申し上げてきたとおりですけれども、職場におけるハラスメントが多様化している実態があるということです。それから、これも言ってきているとおりですが、今回、スポットが当たっているパワハラに限らず、業務の適正な範囲を超えてなされる身体的、精神的な苦痛を与える行為あるいは職場環境を害する行為というのは、本来的にはあまねく避けられるべき行為であるということです。また、実際に今回の報告書でも盛り込まれているとおり、企業におけるハラスメント対策は種々のハラスメント防止に向けて一体的に取り組んでいく。こういうことが望まれている。実際に取組が進んでいる企業においては一体的な取組がなされている。こういったことを踏まえると、一人一人が安心して働くことができる職場環境の構築に向けては、本来は、いじめ、嫌がらせ全般をスコープとしたハラスメント法の施行があるべきであると思っていて、これは中期的な検討の視点として、是非、堅持していただければと思います。よろしくお願いいたします。


○佐藤座長 

ほかには、いかがでしょうか。


○布山委員 

単純に質問ですが、12ページの38行目です。この間の議論で、一緒に書くのではなく目的と2つ分けるようにということでしたので、「または」と入っていること自体に異論はないですが、こうして見ると、手段というのは具体的にどのようなことをイメージして言われていたのか、御質問させていただきたいと思います。


○上田雇用機会均等課長補佐 

業務上の手段ということだと思いますが、要は業務遂行のための手段、例えば毎日何か書類を作るとか、どこかに集まってミーティングする。そういう日々の業務の手段が不適当、やりすぎであるということを想定しています。


○布山委員 

これは業務遂行上、不適当な行為ということですか。イメージが非常に分かりづらいので、書き分けたこと自体について申しあげるのではないですが、文言が変えられるのでしたら、もう少し分かりやすくしたほうが良いのではないかと思ったのが1つです。続けて質問させていただいて、よろしいですか。


○佐藤座長 

どうぞ。


○布山委員 

20ページの25行目辺りです。「事業主の方針の明確化、周知・啓発」の中の例示として挙げられている部分で、防止の効果を高めるためには、発生の原因や背景の理解を深めることが重要で、このため、その前にある所を参照した上で、「企業ごとにハラスメントの発生の状況や、その原因や背景を分析することが必要」と書いています。ここで言う「分析」というのは、どのようなことをイメージしているのでしょうか。


○堀井雇用機会均等課長 

例えばパワーハラスメントについて、これまでの御議論の中で示された特色として、なかなか表面立ってパワーハラスメントがあるかどうか分からないとか、あるいは、こういう職場はパワーハラスメントが起きやすいのではないかとか、いろいろそういう御示唆がありました。したがって、その実態を把握するためにまず素材を集め、その素材の結果を見た上で、どのような要因があるかというのを正に分析する。その分析結果を踏まえて対策につなげていく。そういうイメージになっています。


○布山委員 

恐らく事業主が実際に行っていくことを例示として挙げているのだと思います。どういう形にせよ、これがガイドライン的なものということで考えているのだと思います。そうであれば、まずは発生状況を把握するということがあり、もし何もない場合にはそれでいいという話ではなく、例えばアンケートを取ってみたら、そこの職場は非常に乱暴な言葉遣いをすることが通常になっていて、それが新人にとってみれば非常にストレスになるというようなことであれば、ここで書くのは原因となり得るという話なのではないかと思います。それをきちんと確認した上で、例えばアサーション研修をするとか、何かもう少し全体的に呼び掛けるというのがあるのだと思います。

 また、発生状況を見て実際に起こっているのではないかというときには、この原因や背景は、後ろの実際に発生したときの取組の所で書く話なのではないかと思います。これが何か混在してしまっていて、その上、それを分析という言葉を使っているので、実際に企業が取組むときに何をやるのかよく分からないと思っています。中身そのものでなく、もう少しきちんと書き分けたほうがいいのではないかと思いました。


○佐藤座長 

今のは20ページのマル1の後半、アンケートの少し上辺りの所ですね。これが事業主の方針等の明確化、周知・啓発という所からすると、ここに入りにくいということですね。


○布山委員 

そうです。実際にやらなければいけない部分に書かなければいけない所も入っているのではないでしょうか。そうすると、明確化、周知・啓発の所でやることだけでないかと思います。むしろ状況把握をしなければいけないというのが、ここでの話ではないかという気がします。


○佐藤座長 

多分、そうですね。よくあるのは、人事がパワーハラスメントの対策をしなければいけないと言うと、経営トップは「そんなこと、うちで起きていないんじゃない」となる。まずはきちんと調べてみる。多分、そこですね。取り組んできているのであれば課題の分析なので、その辺、円卓会議でそう書かれていたと思いますから検討させていただきます。

12ページの38行目、先ほど布山委員が言われた所で、これは前回の議論でこういうふうにしたのですが、考えてみると、ここだけ「または」は変な感じですね。「業務の目的を大きく逸脱した行為」、改行して、「業務遂行手段として不適当な行為」を分けたほうがいい。何でここだけ「または」になっているのか。実はこれは別な話なのでしょう。だから「または」にしたのですね。ちょっと検討させていただきます。ほかに、いいですか。原委員、どうぞ。


○原委員 

24ページですが、マル1コミュニケーションとマル2長時間労働のどちらを先に書くかというと、私はマル1とマル2の順番は入れ替えるべきだと思います。確かに各企業レベルではコミュニケーションに関心が向くというのは理解できます。しかし、パワハラの問題というのは社会全体で考えるべきだということ,そして,働き方改革の中心部分においては、長時間労働の是正が重要な課題であるということからすると、ここはマル1とマル2の順番は入れ替えるべきだと思いますので、御検討ください。


○布山委員 

原先生のおっしゃっている意図もよく分かるのですが、ただ、長時間労働がない所でハラスメントがないわけではないので、大きい話からしないと企業として取り組むときに、すんなり落ちないのではないかという意味で、私はこのままのほうがいいと思っています。


○佐藤座長 

確かに働き方改革の中で出てきたとき、背景はあったにしても、もう少し広く全体で見れば長時間労働のない職場でもパワーハラスメントがあるのも事実で、11対応というわけではない。そういう意味でマル1のほうが全ての企業がやるということ。その中で長時間労働があればマル2もやるということになると思うので、そういうふうに考えれば今のままでもいい。ただ、今回の議論であればマル1という議論もあり得ると思いますが、その辺はいかがですか。


○岡田委員 

私も原委員の意見に賛成で、コミュニケーションと言っても逆に分かりにくくて、それをやること自体が結構問題になったりすることもあったりします。職場というのは外部のいろいろな圧力とかその構造の中で、どこかに力が寄っていくことで起きているということが結構あると思いますから、まずこっちからして、それをちゃんと運用していくときに何が必要かというと、良好なコミュニケーションが必要だということになるのではないかと思います。コミュニケーションと言うと、何か現場で片付けなさいみたいなことになりかねなくて、経営の責任ではないみたいなことになってしまいますので、その辺りは、構造として変えていくのだというところが分かりやすいのではないかと思います。


○布山委員 

24ページの8行目辺りに書いてあるのは、風通しの良い職場環境整備ということなのだと思いますので、コミュニケーションと書いてあるからおかしいのであれば、企業がやるべきは、まず風通しの良い職場環境づくりなのではないでしょうか。労働時間のほうを先にという意見を別に否定するわけではないのですが、大きい話から書かないと。時間の話が先ということではないのではないかと思います。それだけが引っ掛かって先ほどから申し上げています。


○岡田委員 

これは多分、時間だけの話ではないのだと思います。適正な業務目標の設定といったところが結構影響していることで、時間という、その1つのことについて言っていることではないと思います。それから、風通しの良い職場というのはよく出てきますが、それってどういう職場なのか、非常に分かりにくいのではないかという感じがいたします。順番のことですが、一応、そちらのほうがもっと重要かなと思います。


○佐藤座長 

私はそれよりも、「主な例として」と言うと、どっちかやればいいみたいになるから、「主な例として」は取ってしまって、「次のような事項が考えられる」としておくと両方ともという趣旨で、そうすればマル1とマル2という順番でもいいのかもしれない。今のだと、どっちかやればみたいな感じにも読めてしまうので、どうですか。「主な例として」を取ってしまう。そういう意味で私は両方大事だと思うので、折衷案的な話ですけど、いかがでしょうか。両方大事だよということをメッセージで出すということ。ほかには、どうぞ。


○中澤委員 

まとめについて、28ページの13行目以降です。措置を取ることによって、事業主については、積極的な経営とか人事政策を展開することも可能になると書いてありますが、これは方向性ではなくて示された意見だと思います。そういう意味でここの記載をするのであれば、事業主の措置の事項の所に、こういう意見があったと書くべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。


○内村委員 

私もまとめの所で、今、中澤委員がおっしゃった所と同じ部分ですが、ここは重要だと思っています。今回のまとめというのは、第1回から第9回までの全体の流れも含めて、どういったことが大方の方向性だったのかを示すものであり、今、中澤委員の発言もそうですけれども、大方は事業主に措置義務をということが、最終的な流れとして大きかったように私は思います。労使で意見が割れるというようなイメージもあるのですが、最終的に専門家の先生方も含めて、全体的なまとめとしては措置義務の方向だったと思います。本来であればもう少しその部分を明確に出していただければと私は個人的に思いました。

 加えて、野川委員がおっしゃったように、余りここで労使がガツガツやるというよりは、きちんとまとめて、こんな意見があったということを踏まえて、次の労政審議会の中できちんと議論していただきたいのです。この検討会と同じ議論が審議会でされないようにしていただきたいというのが正直な気持ちです。白か黒か、これがパワハラか、パワハラでないかという決着をつけるかということよりも、テーマにあるように職場のパワハラをどうやって防止していくのか。その観点をメインに考えた形で、まとめに持っていければと思っています。そういう意味では、措置義務の所で言うと少し不満があります。この記載だと、もう少し検討を進めていって分析し、ガイドラインでまとめるように見えてしまうように思いました。以上です。


○佐藤座長 

ほかには、いかがですか。


○小保方委員 

私もまとめの部分で質問させていただきたい。事務局に質問がありまして大きく3点です。先ほどから出てきている、まとめのローマ数字1とローマ数字2の位置付けの所ですが。


○佐藤座長 

28ページの下ですね。


○小保方委員 

そうです。28ページの下のローマ数字1とローマ数字2についてです。この2つの課題を明確にクリアにしていくことが、措置義務を法制化する上での前提条件のようにも見えなくはないのですけれども、法制化の前提条件として記載しているわけではなくて、あくまでもそういう意見が示されたという事実を記載している。そういう意見を踏まえて、法制化していく上で検討を要する視点として記載をしていると、こういう理解でよろしいかというのが1点目です。

 特にローマ数字1の部分については、どのような場合が「業務の適正な範囲」に該当するのか。あるいは「平均的な労働者」の感じ方はどのようなものか。これについてはどれだけ検討を重ねたとしても、一定程度のグレーな部分は残るのではないかと認識していて、以前の検討会の中で座長もおっしゃっていたと思いますが、その整理というのは時代の流れに応じて変わり得るものという前提があるのだと思います。そういう点を踏まえると、今後のローマ数字1の検討に当たって、どのぐらいの時間軸で検討されていくことをお考えになっているのか。それをお聞きしたいというのが2点目です。

 さらに言うと、あくまでも業務上の指導とパワハラとの線引きを明確にクリアにしていくということを意味しているわけではなくて、無用な混乱を少なくするために、本報告書の中でも示されている例示などを可能な限り分かりやすくしていく。こういうことを意図しているという理解でよろしいか。この3点を確認させていただきたい。


○堀井雇用機会均等課長 

今まで、お三方の委員から頂いた質問全体にお答えするような形にしたいと思います。そもそも事務局としてこのまとめの部分を作成した趣旨というのは、極力、これまで9回にわたって御議論いただいたところのエッセンスを、なるべくまとめたいということで作っています。したがって事務局としての意図というよりは、エッセンスを、いかに最大公約数というか、まとめるかという観点があるというのが1つです。

 そのような観点からしますと、前の所のメリット、デメリットの違いというお話がありましたが、確かに一部重複しているような部分はあるのですけれども、基本的には、このまとめの部分で全体のエッセンスが入っている。つまり、前の所の報告書の本体で入っていないような大所高所の御意見とか幅広い御意見、そういったところが28ページの所に入り、かつ、ただ、前の所でも入っていた、措置義務の所で言うと類似の取組と複合的、総合的に取り組み得るだろうと。そういった所は前の部分でも入っていましたので、そこを最大公約数的にまとめた形にしています。

 もう1つは、小保方委員から御指摘があった点で3点ぐらいありましたけれども、確かにここの検討会の場でもセクシュアルハラスメントとの違いで議論がされたのが、日常業務の指導とか、あるいは業務指示との関連性の部分で、ここが分かりにくいとか、ここはどうかというお話があったと思います。正に今日、当日でもここの部分について分かりにくいという御指摘を頂いたぐらいですから、多分、そこの所は明確に線を引いて限定列挙のような形で書くのは難しいのではないかと、そのような御発言もこれまであったと思いますので、明確にクリアすることが必要かどうかという3点目の御質問については、今までの検討会の御意見としても、そこまでは難しいのではないかというところが総意になるのではないかと思っています。

 ただ、一方で、円卓会議のワーキングの報告書の中では、例えば業務の適正な範囲を超えるという部分については業種とかでも違うので、現場で認識をそろえてという形になっていたのですが、そういった形だと混乱があるだろうと。そのような御指摘が前回も頂いた部分だと思いますので、28ページの34行目と38行目は、特に前回頂いた御指摘をエッセンスでまとめるとすると、こういう感じかなというところを書かせていただいたものなので。極力、そういった部分については、明らかにすることが求められているということで書かせていただいています。したがって、この検討会の取りまとめをしていただいた後に、いろいろな方々の協力も得て厚生労働省として把握し、どのぐらいの時間軸が掛かるかという部分にも関わってきますが、例えば27ページの39行目にありますように、刑法犯に該当するとか不法行為に該当するといったもので、個別の単独法がない今の現状でも、明らかにおかしいだろうというものを合わせて周知していく。そういったものについては、この検討会の中でも、これがパワハラかどうかというところについてのご異論は大きくなかったと思います。ただ、それを現場に落とし込んでいくとなったときに、27ページの39行目のようなものは必要だという御意見かと認識しましたので、そこの部分をある程度まとめて、私たちとしても事例を収集してという御指摘もありましたので収集し、次の議論につなげていくということなのかなと思っています。前提でとそういう話というよりは、そこの部分が必要だという検討会のお気持ちを感じましたので、そういう形で書かせていただいたということです。


○小保方委員 

先ほどの御回答を理解したという前提ですが、一番懸念しているのは、おっしゃったようにこの中でも論議があったとおり、どれだけ検討したとしても、分かりやすさは深まっていくと思いますが、明確にクリアになるということはなかなか厳しくて、一定のグレーゾーンであったりとか、あるいは総合判断の余地、これは最終的には残ってくると思います。したがって、今後の検討の中で絶対に避けなければいけない方向性として、ローマ数字1の課題が明確にクリアにならないから法制化に向けては時期尚早で、更なる事例の積み重ねが必要であると。このような結論づけは避けるべきだと思います。それはなぜかと言うと、更なる事例の積み重ねというのは、すなわち新しい被害を生んでいくということに他ならないのではないかと考えるので、今、既に起こってしまっているものを十分に調査分析した上で、できるだけ分かりやすさを出して展開をしていく。その前提で、これは、これまで申し上げてきているとおり文言に反映してほしいということではなく、そういう一定のグレーゾーンが残る中で更なる被害を生むことなく、取り分け使用者側の皆さんも懸念されていたような、例えば適正な業務遂行であったり人材育成に支障を来さないようにする。この両方を成し得ていくためには、まずはきちんと法制化することが必要だと思っていますし、その上で今回、改めて整理した考え方や要素、それから、これから分かりやすさを考えていく点、こういうものを参考にしながら、しっかりと労使で研修あるいはセミナーを通じて周知啓発を繰り返しやっていく。こういうことでできる限りグレーゾーンをなくしていき、先ほど申し上げたパワハラの被害をなくす。こうした取り組みによって、適正な業務遂行、あるいは人材育成にも支障を来さずに、、パワハラによる被害をなくしていことができるのではないかと思っています。是非、その視点で、今後、検討を続けていっていただきたいと思います。


○堀井雇用機会均等課長 

ありがとうございます。1点だけ。事例の積み重ねをするように、もっと事例があったほうがいいという御指摘は何回もこの検討会で頂きましたので、事務局として受け止めるべきだと思っていますが、1つ、その事例と言うときの中身として、実際にパワーハラスメントが起きて被害に遭った方で、こういうケースがあったと、そういう事例もあると思いますが、必ずしもそれだけでなく、どういう業務の仕方、指示の仕方とか訓練をしているか、そういったこともあると思っています。悲惨なパワーハラスメントの事案が起こるというのは、厚生労働省としてもあってはならないことだと思いますので、その事例の積み重ねを待ってということだけではなく、この取組を進めるに当たっての参考例を集めるというのも、あり得ると個人的には思っていますので、そこはまた皆様方のお話もいろいろ伺いながら、やっていきたいと思っています。


○杉崎委員 

28ページの34行目のローマ数字1の所ですが、今、各委員からもいろいろな御発言がありましたけれども、かねてから何をもってパワハラかという「平均的な労働者」の感じ方とか、あと、「業務の適正な範囲」というものが1つの基準になってくる。これまでの会議でも、労使で業務上の指導に対する感じ方も違う旨の御発言もありました。あと、前回の会議で久保村委員からもいろいろな御発言があったところですので、34行目から始まるローマ数字1について共通認識を持つべきであると書いてありますけれども、これは非常に大事なことであると思います。あと、具体例の積み重ねについても非常に大事であると思います。ここは法律による措置義務化とガイドラインで意見が割れているところですが、いろいろな具体例を厚生労働省のほうでリサーチしていただき、こういった事例をいろいろ積み重ねていくのは非常に大事な作業なのではないかと思います。

 もう一点、20ページの26行目で、「従業員にアンケート調査やヒアリングを実施すること等により」という所ですが、これまでも労働者の皆様の感じ方と、管理・監督者、事業主の感じ方の違いに関する発言もありましたので、ヒアリングやアンケートについては事業主や管理・監督者にも実施していくことが、全体像の把握にとっては非常に有効で大事なことだと考えています。以上です。


○野川委員 

まとめの最後のほうに、労働政策審議会において議論、検討が進められ、所要の措置が講じられることが適当であると書いてありますので、労働政策審議会において検討されるべき内容について私から要望を述べたいと思います。

 今までの議論で、ずっと若干の違和感を感じていたのは、このパワーハラスメントに対してどう予防するかという議論は、例えば、これから女性活躍推進法を作りましょうとか、あるいは昔であれば週48時間制を週40時間制にしましょうとか、そういうときの議論とは全く異なるということが十分に共有されていないのではないか。例えば、これから女活法を作りましょうというのであれば、現在、女性がどういうように企業の中で活躍しているのか。あるいは、それを妨げている事情は何なのかといったことを十分に調査し、それを踏まえて、できることから始めましょうということになるでしょう。そして、例えば2020何年かから具体的な措置をしていくことになるでしょう。あるいは48時間制でやってきたのを40時間制にするのであれば、中小企業がいきなりするのは難しいから、段取りをもって徐々に進めていきましょうということになるでしょう。

 今回の問題はそうではない。将来、実現すべき事態をどう進めていくかではなくて、現在、現に生じていて、かつ深刻度を増しているこの現実に、どう対処するかを議論してきたのです。よろしいでしょうか。したがって、ここで示される対応措置は将来に向けての工程表やプランニングではなくて、今、現実に起こっている事態に対する具体的な処方箋であるべきなのです。ここまでよろしいでしょうか。

 したがって、何人かの方からはガイドラインをまず設けて、法的な措置義務はまだ時期尚早であるというような御意見が出ましたが、そういう御意見が違和感をもたらすのは、それだと、今、起こっている事態に対する処方箋にならない。例えばガイドラインで法的義務ではないとすれば、こういうことをやりましょう、それをお勧めしますと行政が一生懸命啓発活動する。それを聞いた、ある中小企業の意識の高い専務が「うちでもやりましょう」と言ったら、社長が「うちはまだ早いよ。パワハラって言ったって、みんなよく分かっていないんだし」と言って、やらないということは当然できます。ところが、措置義務ということになれば、社長が何と言おうと、専務が何と考えても、義務だからやらざるを得ない。しようがない、よく分かってはいないが、就業規則に「パワーハラスメントをした者は懲戒にする」とか、あるいは相談窓口をとにかく設けようと、これは義務だからせざるを得ない。この両方の職場に同じようにパワハラは起こります。よろしいでしょうか。「まだ、うちは十分な準備が整っていないから、こういった相談窓口は早い」と言っているとパワハラが待ってくれるでしょうか。待ちません。同じように起こります。

 さて、そこで両方の職場でパワハラが起こって事業主が責任を問われたとする。その場合、その責任について、「まだ、うちは人材も十分でないし理解も進んでいないので、パワハラについての準備はしていません」と言うと、責任が軽減されるとお思いですか。一切、軽減はされません。むしろそういうことであれば、事業主のパワハラが起こらないようにしようとする配慮義務が著しく欠けたとして、かえって大きな責任を問われることもある。

 そこで、この措置義務を講じていたらどうか。もちろん、講じていたからといって責任を問われないということは決してありませんが、何もしていない、それもガイドラインが示されたのに先送りにしていた場合に比べれば、それより大きな責任を問われることはない。よろしいでしょうか。少なくともそれ以下です。つまり、このパワハラについて措置義務を講じるというのは、今、起こっている事態への処方箋として、少なくとも労働者にとっては、「そうか、ちゃんと就業規則にパワハラはいけないと書いてくれるんだ。ちゃんと相談窓口を設けているんだ」となれば、それだけでも、今、パワハラに遭っている労働者にとっては、これで一歩進んだということになる。

 それから、パワハラをいけないと言われても、どうしていいか分からないという企業主、取り分け中小企業に対しては、これは1つの救済手段なのです。つまり、出発点が明確になるのです。社内で議論があってどうにもなりませんではなく、まずこれをやりましょうと義務付けることで一も二もなくやることになる。そこを出発点として、では実際に起こるパワハラをどう判断したらいいかということを、次の問題として検討していくことになる。したがって、この措置義務を講じるというのは、正に現在ある事態についての処方箋としての意味を持つ意見であるということを御理解いただきたいし、今後、もし労政審議会に行ったら、その労政審では処方箋の作成という意識、つまり緊迫感と切迫感を持って、今、起こっている事態について対応する。将来起こることに対する準備ではないのです。今、起こっている事態に対する対応だということの切迫感を持った議論がなされるように、私としては期待したいと思います。


○佐藤座長 

労政審で、そういう趣旨で議論してほしいということで伺っております。ほかには、どうぞ。


○布山委員 

緊迫感、切迫感ということについては、別にそれを持ち合わせてないということではなく、それをどうするかということで議論してきたと私たちも思っています。前回、企業が法的整備がなくても今取組んでる中で問題点、課題になっている点を申し上げて、それが懸念事項だと申し上げました。結局、法的整備をすることによって企業が取組むことになったときに、先ほど小保方さんがおっしゃっていたとおり最終的なクリアは難しく、恐らくいろいろなバリエーションがあると思います。だから例示をもっと出してくださいとお願いしました。いろいろなものを皆が積み上げないと、これが本当にパワハラになるのかどうかというのが、今、実際に取り組んでいる企業でも難しいということを踏まえて申し上げました。

 懸念事項を申し上げた中で、これはクリアになるのではないかという御意見は恐らくなかったと思いますし、その問題意識というのは皆さんお持ちだと思いますので、それをきちんと取組んでくださいということです。何年もかけて事例を集めてくださいと私も申しあげているつもりはありません。ただ、それがクリアになっていない中で、今、すぐやることと言ったら、法律ということに根拠がなくても、まずはきちんと企業ができるようなガイドライン的なものを作ってくださいというお願いをしたのです。

 もちろん、法律に基づかないので、強制力は法律に基づいたガイドラインよりも確かに弱いかもしれませんが、それで指導ができないかというと、別にそのようなことはないと思いますし、労働法関係の根拠に基づかないガイドラインでも、むしろ、これでやるんだと指導されていることが実態としてあると思います。法的整備がないと何も進まないという点については、今でも取組んでいるという企業の話を聞く限り、そういうことはないのではないかと思います。ただ、今のワーキングの報告書の中では確かに弱いので、一歩進めましょうという形でガイドラインを作ったらどうかという提案をした次第です。


○浜田委員 

私が所属するUAゼンセンは、中小企業が実は圧倒的に多くて、本当に中小零細の企業がたくさんあります。実際にその職場に行くと、組合なので、従業員ともよく話すのですけれども、社長のほうが本当に従業員のことを思ってくださっているというのは、ひしひしと伝わってきます。子供のようにかわいがっていらっしゃるのだなということ、どうやったら従業員の環境をよくしていくかを考えていらっしゃるというのは、十分我々も認識しています。ただ、そういう経営者にとって、ガイドラインというのが必要ないということは決してないです。しかしながら、最初に事務局が提示していただいたアンケートの中にも、中小がなかなかハラスメントの対策が進んでいないという実態があるということを考えれば、何かしなければいけないのだというときに、「社長、これ、法律ですから」と言ったほうが、社長は、「そうか、じゃあ、それは優先的にやらなければいけないのだ」と認識してくださるのは、そちらのほうが断然強いというか、「社長、これ、法律でこうなったのです」という説明をするほうが、すごく理解していただけるのを実感として、ほかの法律についても持っております。次年度以降、労政審議会に議論の場が移りますので、野川先生と重なってしまうことになるかもしれませんけれども、まとめにも記載されている措置義務によるメリットも十分に加味した上で議論を進めていただきたいと思っております。以上です。


○杉崎委員 

先ほど、布山委員からいろいろ御発言があったことについて賛同しております。全くそのとおりだと思っております。いろいろな御意見があるのは、これまでの会議でも承知しておりますが、28ページ目の22行目から始まっている記載内容について、正にこのとおりであるかと思っております。

 あと、これまでも発言させていただきましたが、「パワハラ」に該当するか否かの判断に非常に曖昧な部分が残っている中で、まずは現実的な対応として、ガイドラインが適当なのではないかという考えを改めて強調したいと思います。以上です。


○佐藤座長 

ありがとうございます。ほかにありますでしょうか。


○内村委員 

今まで何度か申し上げているので、繰り返しになりますが、私がここにいるのは、今、連合東京の労働相談の担当として、パワハラに限らず、多くの労働相談を受けています。東京都の労働情報相談センターでも、東京労働局でも、いずれにしてもパワハラの問題というのは増加をしています。今回の開催要綱の中にも、相談件数が増加している職場のパワーハラスメントが大きな問題となっているというところがやはり出発点だということを何度も申し上げています。ただ、先ほどから言われている、これがパワハラかどうかという相談もあります。「こういうことをされているのだけれども、これは、私はパワハラを受けているのでしょうか。」といった相談です。セクハラも同様の相談があります。最終的に微妙なものは、これは裁判などでないと分からない事例もあり、どうしてもグレーゾーンのようなものはありますし、その1つの文言だけとらまえて、パワハラかどうかというのは、その前後のやりとりもありますので、判断が難しい。

 だから、職場で解決していかなければいけないということも含めて、今回の報告書にも入っています。これは事業主だけではなくて、当然「労使」という言葉も入っていますが、当然労使で取り組むことが重要です。先ほど野川委員がおっしゃったとおり、既にたくさん問題が起こっているので、前にも言いましたが、12歩ではなく、3歩ぐらい進めていく必要があります。パワハラの増加に歯止めをかけるという方向性についてしっかりまとめて、次の労政審で検討していただきたい。ここが基本だと思っております。以上です。


○佐藤座長 

どうぞ、漆原委員。


○漆原委員 

今の内村委員の意見にも近いかもしれませんが、今、こうしている間にもパワハラで苦労している、苦しんでいる人たちがいるということだけではなくて、不幸にして自殺されてしまったとか、また、その家族の方もこの検討会の報告書の仕上がりに、多分、関心がおありだろうと思っております。先ほどあったとおり、パワハラの共通認識についても、確かに議論する上では必要なのかもしれないかとは思いますが、正に今、パワハラで悩んでいる方にとっては、平均的な労働者の感じ方や、そのことについての共通認識を得るために、これ以上時間をかけず、今すぐパワハラをなくしてほしいというのが、多分、正直なところなのだと思っております。

 そこで、事務局におかれましては、パワハラが原因で亡くなられた労働者や、その御家族の気持ちも酌んでいただいて、可及的速やかに事例の分析など実施するとともに、新年度の早い段階から審議会を開催して、分析結果や、ここでの議論の趨勢を審議会の議論につないでいただいて、その上でパワハラをなくすための方策、あるいは制度について、できるだけ早く結論を出すようにお願いいたします。


○佐藤座長 

いいですか。まとめの前に細かいところも含めて御確認ですが、12ページの38行目の所は、「業務の目的を大きく逸脱した行為」、改行して、「業務遂行手段として不適切な行為」と2つに分ける。そうさせていただいて、もし問題があるというときは言ってください。あと、20ページの26行目は、全体とのバランスで、「従業員に」を「労働者に」としましょう。ここで趣旨は、企業の中であれば社員ということなので、行政が調査するようなものは労働者でいいと思いますが、そういうことは多分分かると思います。今回の報告書ではそういうところを確認していただいて、「労働者に」とします。その上の所は最初の出発点ですから、「パワーハラスメントの状況等を」でその原因、背景は後で追加してあるので、落としてしまって、「状況等を分析すること」で、まずは入口のところはこれでいいのではないか。もちろん分析しますけれども。ここは位置として悪いので。

 あと、24ページの所は、順序はこのままで、ただし、1行目の終わりから2行目の「主な例として」を取る。両方を当然やってもらうような形にさせていただければと思います。前半の細かい点は、その辺かと思います。

 あと、まとめのところは、基本的には27ページの最初に書いていただいたように、それぞれ委員の方が、今よりも当然進める、今もパワハラは起きているということで、進めることは大事なのです。ただ、そのためには幾つか課題があるので、それももちろん課題があっても法制ができるということもあれば、まずはガイドラインということで。課題があることについては共通認識だと思います。ガイドライン規定はできているわけです。具体的にそれがどういうものに当てはまるかは幾つかあって、確かに100%、明確にはできないということは多分、いろいろな方の御意見ですが、どの辺の範囲までかはある程度もうちょっと絞ってほしいという人と、今でもやれるというところの意見の違いがあるのかなと思います。そういう意味では、明確化の範囲はもちろん違いますが、ただ、今のままでやれるという方と、もう少し必要だという方が多少違ったのかなと思います。そういう意味では、明確化する必要がある。

 その上で、ここに書いてありますように現行、行われているパワハラの予防の取組をどう進めるかについて、大きく2つの考え方が出ていて、それぞれプラスがあるという方と、いやいや、マイナスもあるという議論がある中で、そういうことを少しまとめていただいているのかなと思います。もちろんここでどちらか1つというのはあれですけれども、ここに書いてあるように、措置義務について望ましいという意見が多く見られたというような形で、ここでの議論を踏まえたような書き方もさせていただいているのかなと思います。その上で、ここではそういう意味では、専門家の立場からある意見をまとめるということで、これを踏まえて、更に早急に労政審で議論して、1歩進めるということで、そのときの議論の進め方についても、野川委員はじめ、皆さんから御意見を出していただきたいと思います。

 ということで、一応、これを皆さんの趣旨でどう直すか、私は取りあえず、今日の御意見を踏まえて、前半のところは直させていただいて、まとめのところは、趣旨についてどう変えるかはあると思いますが、取りあえず、こういう形でまとめさせていただくということでいかがでしょうか。


○岡田委員 

経験的な話ですが、先ほどから出ていた措置義務を課すといろいろな指導が躊躇されるとか、上司と部下の認識のずれがあることが問題だと言うのですが、実際、私はいろいろな教育を経験している中で、企業の中で規程を設けて、きちんとやりましょうということで進んだときに、教育を受けたり何かすることによって認識が一致してくるということもあります。そういう意味で言うと、ここは懸念材料があるにせよ、措置義務を課して、そのときに、もしかしたら起こるかもしれない、こういう懸念をもっとクリアしていくようにやっていきましょうと、順番として両者を並べてしまうのではなく、この方向でいきましょうというように、もう一歩踏み込んだ上で、実際的には、方針を決めたりとか、法律ができたりすれば、もっと課題はクリアしやすくなるし、現実にはいい方向にいくと思いますので、もうちょっと一歩踏み込んだ形にされたほうがいいかと私は思います。


○原委員 

今の点に関連して、まとめのところですけれども、私の理想は、繰り返し述べておりますように、措置義務の法制化が是非とも必要であって、ただし、それに時間がかかる場合のいわば「つなぎ」の措置としてはガイドラインもあり得るという、シンプルで分かりやすい報告書にできれば一番だと思います。義務の形で強制的に措置を取ってもらうことは,労働者だけではなく、使用者にとってもプラスになるのだということは、先ほど野川委員がおっしゃったとおりかと思います。ただ、法律かガイドラインかでまとまらないまま単純な両論併記というのはよくないですし、また、仮に「つなぎ」としてガイドラインを作っても、それで一段落して法制化への歩みが止まってしまっては、もっと問題かな,という気もいたします。

 そこで検討会の議論を振り返ってみると、法律であれ、ガイドラインであれ、研修や窓口対応などの取組みをやっていこうという点では、合意ができているわけです。ただし、パワハラが何かまだ分かりにくい、パワハラの理解が足りない、という声がある。といいますか、法制化に関する否定的な意見は、要は「まだ早い」という1点に尽きると言えると思います。そうであるならば、報告書28ページの下のほうから、29ページの真ん中にかけて、今後、具体例の収集・分析を鋭意行うという、特に29ページの1415行目をご覧ください。今後、こういう具体例の収集・分析を行うというまとめの部分は、まさに措置義務の法制化への布石、つまり準備であるというように理解できるとも思うのです。大事なことは、ガイドラインを作って安心するのではなくて、できるだけ速やかに法律で措置義務を定めることです。その実現のために,具体例の収集・分析を一層進めて、「まだ早い」という懸念を解消して、法律の根拠がないガイドラインを「つなぎ」に用いることなく、一直線に法制化を目指し得るような、そういった議論が今後できるような報告書にしておくことが重要だと思います。

 ですので、例えば報告書29ページの1215行目の辺りに、「こういったことを通して、措置義務の法制化の実現を目指す」と一言入れていただければいいのですが、それは恐らく難しいかと思います。とはいっても,パワハラは、まさに今現在も、人命に関わる問題が起きている、すぐの対応が必要な問題ですし、また例えば、今の子供たちが大きくなるまでという、中長期的な視点でも対応が必要な問題です。ですから、もし報告書に入れるのは難しいとしても、労政審にバトンを渡すにあたって、検討会の議論として、これは将来の法制化への布石、準備というような位置付けもあり得るのだ,ということを議論に残しておきたいので、発言いたしました。


○佐藤座長 

分かりました。布山委員、どうぞ。


○布山委員 

先ほどの研修の話で申しあげれば、私が事例に出した会社は、きちんと研修も行っている会社で、その中で、やはり相談窓口でそういうことがあるということですので、懸念事項として申し上げたということが1つです。

 また、先ほど原委員がおっしゃったとおり、きちんと周知して、窓口を作って対応するというスキーム自体を、当初から反対しているわけではありません。しかし、それがどうあれ、例えば、単なるガイドラインというように言われていますけれども、その形であっても進めばよろしいのではないかと思っており、法的整備ではないと進められないということを前提に考えている御意見と、ガイドラインでも、それが明確になれば進むのではないかという意見で分かれているだけなのではないかと思っていますので、それで進まなければその次のというのがあるのかもしれませんが、今の段階でそこまでというのは、今ある懸念事項を、まずクリアにするということかと思っています。


○野川委員 

いいですか。今の段階は非常に深刻な段階なのです。その認識を共有したいと思うのです。パワハラと言っても、この程度だったらまだ今後ガイドラインでやっていけるのではないのというのに対して、まず措置義務を義務付けると、やることが企業ははっきり分かるでしょと。そうすると出発点になるでしょと言っているので、そこで企業にパワハラとは何か、このグレーゾーンはどうするかというのを考えろとか、そういうことは全然言っていないわけです。今、喫緊にやるべきことはこういうことですよと示すということです。それがやはり、どうも議論としては、将来40時間制労働時間を実現するにはまずここからやっていかなければと、それは拙速ですよという議論の場合と同じように進んでいるので、それは違うと申し上げたのです。だから、もちろん布山委員のおっしゃっていることも分かるので、原委員もおっしゃったように、ガイドラインというのをつなぎにして法制化ということもあるけれども、でも、将来、この検討会を顧みて、あのときの検討会でこういうような方向性が示され、それで労政審が早急に対応したので、現在パワーハラスメントは、西暦2015年に比べれば劇的に減りましたというようになることがやはり重要だと思いますので、その方向で、是非、労政審での検討をお願いしたいと思います。


○佐藤座長 

はい。次は、小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 

本当に、時間軸の問題だと思うのです。布山さんがおっしゃったとおり、何年も掛けてというものではないということだと思いますし、まずはガイドラインでやって、それで進まなければ法制化をする、こういう悠長なことを言っていられない話だと思うのです。ですので、何年も掛けてやるのではなくて、もう少し事例を調査分析して分かりやすくさせる、これ自体は、全く否定していません。ですので、それは恐らく、数箇月でしっかりと成し得て、形を整えて、法制化をし、しっかりとやるべきことをやっていく、この繰り返しの中で使用者側が懸念されていることが段々クリアになってくるのではないかということをずっと申し上げている。この時間軸の目線がそろえばいいと思います。まずガイドラインにして、数年掛けて、懸念がクリアになってから法制化と。もしこのステップを踏んだとしたら、起こるのは、ガイドラインにしてやはり対策が進まず、被害が減らないから法制化だと。こうなったときには、被害者がやはり増えているという状態なので、そうしてはいけないということだけは言いたいということです。


○佐藤座長 

では、杉崎委員、どうぞ。


○杉崎委員 

非常に意見が割れているところだと思いますが、要するに時間軸の話もそうなのですけれども、今回のパワハラについては、業務上の厳しい指導等との線引きが非常に分かりづらい、曖昧であるということも非常に大事なポイントであるかと思います。

 前回の会議でも申し上げましたが、取り分け中小企業の場合だと、ノウハウだとか、あとはマンパワーが非常に限られている、経営資源が非常に限られているのが実態です。中小企業では、例えば1人の方が総務と労務をやって、1人で何役もこなしているのが実態であります。そうした中で、今、パワハラかどうかの線引きが難しい中で、仮に法律によって措置義務が課されて係争などになると、パワハラ防止は大事というのは重々認識していますけれども、中小企業にとっては負担が非常に大きいというのは事実としてあるかと思います。したがって、各企業は現状、自主的な取組で、パワハラ防止をやっていますけれども、まずは1歩進めて、ガイドラインの策定が中小企業の実情からしても現実的だと思います。


○野川委員 

よろしいですか。杉崎委員に、では、1つ御質問します。先ほど申し上げたように、ガイドラインを設けましょうと言っても、それは義務ではないのですから拒否できる。その結果、パワハラが起こったとします。措置義務を設けましょうと言ったら、それは否定できない。したがって、とにかく措置義務を設けます。ところで、どちらの場合でもパワハラが起これば、必ず企業は責任を問われます。措置義務ではなく、ガイドラインという意見を通したために、起こったパワハラについて企業が責任を問われれば、そこでは恐らく数百万円の損害賠償が科される。杉崎委員、それを負担する御覚悟はおありですか。


○杉崎委員 

ただ今の野川委員の御発言につきましては、私個人の覚悟を問う趣旨のものであり、本検討会で議論すべき範囲から外れていると思いますので、返答はいたしかねます。


○野川委員 

私が言っているのは、パワハラは今起こっているということです。


○杉崎委員

はい。


○野川委員 

起こっているときにガイドラインを守りましょうねで、でも、いや、うちは、杉崎委員がおっしゃったとおり、中小企業で負担が大きいので守れませんと言うと、責任が軽減されるかというと、それはないということは、御自覚されているのでしょうか。それで、損害賠償請求されれば、取られることになる。もし、それがこの検討会で杉崎委員のおっしゃったような意見が通ったためにそうなったとしたら、責任を問われますよ。


○杉崎委員 

いや、先生の御意見を拝聴し、私もパワハラ防止に向けた取組の重要性は理解しているところであります。しかし、中小企業等の実態を踏まえ、現実的な対応を考えると、先ほどのとおり、線引きが非常に曖昧であることを考慮すべきと思います。

 それと、ガイドラインについては、確かに法律による措置義務よりも、効力が弱いという点はあるのかもしれませんが、ガイドラインを制定されることで、こういうケースがパワハラに該当します、したがって、各企業においては、パワハラ防止の取組を進めてくださいという、一定の効果は私は期待できると思います。なので、いろいろな要素を考慮すると、現実的には、ガイドラインから進めるのが適当なのではないかと思っております。決して、私はパワハラ防止の取組は、軽んずるべきものではないと思っています。非常にこれは大事なことだと十分に認識した上で、発言していることを御理解いただきたいと思います。


○佐藤座長 

布山委員、どうぞ。


○布山委員 

野川先生からは、労使の立場をと言われましたけれども、私どもの会員に聞いたところ、セクハラや育児、妊娠・出産等に関する防止措置の法的整備があるので、パワーハラスメントに対しても基本的には同じスキームに乗せて実際は取組んでいます。新たに法的な整備ということがもし一部の企業で難しいのであれば、まずはガイドラインのような形で出せばよいのではないかと思っています。法的整備のところで一体的に進めるということが書いてありますが、単なるガイドラインでも、今あるセクハラなどのスキームに併せてパワハラの相談をすれば、同じスキームに乗るのではないかと思っており、そういう意味でも、実際に取組んでいる企業からすると、法的整備がないと進まないというところが、本当にそうなのかどうかというのはあるのではないかと思っています。


○原委員 

措置義務についてですが、これは今までの議論ではあまり出てこなかったのですけれども、例えば義務にグラデーションを付けるという選択肢があるのだ、ということを労政審へのバトンに入れておきたいと思います。例えば、研修の実施は絶対的な義務にして、相談窓口における事後の適切な対応は努力義務にする,といったように,グラデーションをかけるということです。いくらパワハラの概念が不明確だと言っても、基礎的な研修さえできません、やりませんでは話が通りません。これまでの検討会で,措置義務というのは基本的に研修と窓口と事後対応の3点セットで扱われています。実は,措置の中でもこの措置は難しいとか、この措置はやりやすい,といった議論は一切出ていないのです。言い換えれば、分けなくてもいいということが示されたようにも思われるのですが、そうはいっても、企業によって負担感があるということであれば、少し細かい話にはなりますけれども、まず最低限、パワハラはいけないのだということを従業員、そして、管理職に対する研修として絶対にやらせる。その後の具体的な対応は、まずは「努力義務」にしておいて、いろいろなサポートをして、いずれ「努力」を取っ払って「義務」とするといった具体的な進め方もあり得ると思います。そういったことも、ここでは議論をされていたのだということを、次のバトンにつなげればいいのかと思った次第です。


○野川委員 

今の原委員の御意見に補足です。就業規則にパワハラはいけない、パワハラを行った者は懲戒にすると書くことが、どういう中小企業の負担になるのでしょう。私には分からない。ここで言う措置義務といっても、別にお金が掛かることはないのです。それからエネルギーもそれほどかかるわけではない。費用対効果というのを考えていただきたい。そこでちゃんとやるべきことをやっていれば、それをやっても生じたパワハラについての企業の責任について、一定の予見可能性を持つこともできます。そして、原委員がおっしゃったように、私ももちろん、それを含んで言ったつもりですが、全部を一挙に100%というやり方ではなくて、枠組みとして措置義務を設けて、措置義務の具体的な内容にはグラデーションをかけることはできる。ただ、必要なのは、途方に暮れている地方中小企業が、分かった、これをやれ、はい、分かりました。これとこれをやりました。こういう状態をつくりましょうと、それは、別にお金もエネルギーもかからない、そこから出発しましょうということです。具体的な考えは今、言ったように、いろいろなグラデーションをこれから検討していけばよろしいのではないでしょうか。


○佐藤座長 

今の点で、20ページの(3)は、(2)のマル3やマル4の対応策案の中で講じる場合に、具体的な内容の例として挙げられています。ですから、措置義務を取る場合も、ここで全てやれと書いてあるわけではなくて、私は趣旨的には、この中から議論して全部やることになるかも分かりませんし、一部ということは、議論すると、私はそういう趣旨で、ここに書かれているのだろうと思います。その辺は分かるようにすることはあるかと思いますが、一応、趣旨はそういうことだろうと思います。

 それでは、基本的にこのようにさせていただきましたけれども、2729ページのまとめの骨子は基本的には変えない。ただ、皆さんが言われた精神、よく分かります。この後、できるだけ早く進めるということです。進めるにつながるような議論を、現状、かなり深刻な事態があるので改善する必要があるということを認識した上で、労政審でいきたいということが分かるような精神をどこかに入れるようなことを付け加えさせていただくことを事務局と相談させていただくということで、骨子は変えずに、このまとめにさせていただくことで、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは、そのようにさせていただければと思います。ありがとうございます。

 では、最後に、牧原厚生労働副大臣から、一言お願いできればと思います。


○牧原厚生労働副大臣

佐藤座長はじめ各委員の皆様、私は初めてこの検討会の議論を聞かせていただきました。改めて、感謝と、そして重い議論について、重く受け止めさせていただきたいと思います。

 私自身も97年に弁護士になりまして、当時、セクハラが初めて雇用均等法に配慮義務として入った年でした。あの頃から、ようやく一人一人の受け止め側の思いをどのように法律化していくかということが取られてきた時代だったと私は思います。人間は、この世に生を受けて、たった1つしかない命、たった1つしかない人生です。そのことがパワハラ等によって失われたり、あるいは、損なわれたりしてはいけないという共通の思いを今日は感じましたし、このことは共通の土台だと思います。

 先日ある発言で謝罪したことがあったのですが、要は、言っている側は、全然罪がない、これは正当な業務だと思っている。しかし、受け止め側は、非常につらい思いをして、精神や、あるいは健康を害するという場合があり得るということなのです。こういう認識のずれという問題は確かにあるのかもしれない。しかし、私はこういう問題も含めて、カスタマーハラスメントという問題もありましたが、社会全体が、やはりお互いの人格や人権を尊重して、そして、たった1つしかない人生であり、たった1つしかない命であるということを尊重し合う、そういう社会をつくっていかなければいけないということが改めて大事だと思いました。

 この検討会の議論が表に出て、こういうことが議論されているのだと、出ること自体がそういう社会情勢をつくっていくことになると思っております。今後、厚生労働省としても、本検討会の議論を大変重く受け止めて、労政審での議論に向けて準備をしてまいりたいと考えております。本日は、誠にありがとうございました。


○佐藤座長 

 どうもありがとうございました。それでは、本日をもちまして、職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会を終わらせていただきたいと思います。10回にわたり活発に御議論を頂きまして、ありがとうございました。これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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