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第6回障害者文化芸術活動推進有識者会議

障害保健福祉部企画課自立支援振興室

                  

○日時
令和4年10月27日(木) 10:00~12:00

○場所
オンライン開催

○議題
(1)「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」の策定に向けた検討について
(2)その他

○議事
○山村(文化庁地域文化創生本部事務局総括・政策研究グループリーダー)
お待たせしました。定刻になりましたので、ただいまから第6回障害者文化芸術活動推進有識者会議を開催します。本日の進行を務めます、文化庁地域文化創生本部の山村と申します。構成員の皆さま方におかれましては、大変ご多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本会議はYouTubeライブによる公開にて開催しています。本日の出席状況ですが、配布しています出席者名簿のとおりとなりますが、小林審議官が急きょ国会対応のため欠席となっています。
なお、本日の資料につきましては、事務局から事前にお送りしていますとおり、議事次第、出席者名簿、資料1、資料2、資料3、尾上構成員、柴田構成員、鈴木構成員からご提出いただいた資料、参考資料1-1、1-2、2-1、2-2、3となっています。
続きまして、事務局側の出席者を紹介します。文化庁からは、地域文化創生本部の髙田事務局長、厚生労働省からは障害保健福祉部の辺見部長、奥出自立支援振興室長が出席しています。また、オブザーバーとして、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省および国土交通省からご担当者に出席いただいています。よろしくお願い申し上げます。
それでは、ここからは日比野座長に議事を進めていただきたいと思います。日比野座長、よろしくお願いします。
 
○日比野座長
皆さん、おはようございます。聞こえていますでしょうか。大変秋のさわやかな日ですけれども、オンライン会議でそれぞれの場所からこの会議を進めていきたいと思います。
では、まずは議事次第に沿って進めていきたいと思います。議事次第1番目、「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画(第2期)」の策定に向けた検討について、になります。こちらを事務局から説明をよろしくお願いします。
 
○髙田(文化庁地域文化創生本部事務局長)
事務局の髙田です。資料1、2の順に説明します。まず今回は、資料1で第2期基本計画の項目案、資料2で第2期基本計画の骨格案をお配りしています。
まずは資料1をご覧ください。障害者文化芸術推進法には、基本理念や11の基本施策が記載されていまして、法律を受けて策定された第1期の基本計画も、これに則した構成となっています。法律の第3条の基本理念を踏まえて第1期の基本計画では第2の「基本方針」が、法律の第9条から第19条の基本施策を踏まえて第1期の計画では第3の「施策の方向性」が立てられています。第2期の基本計画については、こうした法律と基本計画の関係、基本理念の方針などを踏まえて、現行計画の構成、記載内容を基本としつつ、第1期を踏まえた今後の方針や取り組むべき施策を引き続き更新することにしています。
また、現行計画の第5の「おわりに」で検討を行っていくこととなっていました目標などについて、新たに第3として「第2期の基本計画期間における施策の基本的な考え方」を設け、第2期における取り組みに当たって念頭に置くべき目標を定めること、また、進捗を把握する指標を設定することなどを記載しているところです。改めて資料1をご覧ください。「項目案」となっていますが、これは事実上、第2期計画の目次と考えていただければ結構です。そして、第1期からの大きな変更点としては、「第2期基本計画期間における施策の基本的な考え方」を新たに追加するというのが、特に大きなポイントです。
それでは、次に資料2の骨格案のほうをご覧ください。要点を絞って説明します。これまでの会議での構成員の皆さま方からのご意見を踏まえまして、各項目において、第1期計画の内容に対する追加方針事項を打ち出しているという考え方でまとめたものです。
まず「はじめに」のところですけれども、ここは第1期基本計画策定後のことなどについて追記するというような方向で考えています。例えば、東京オリンピック・パラリンピックの開催なども追い風となって取り組みが着実に進んでいるということや、最近義務付けが決まりました障害者差別解消法の改正による、事業者に対する合理的配慮の提供の義務付け、また障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の制定などについて、これまでの流れという形で記載しているところです。また、文化芸術によるウェルビーイングの理念・実現などについても記載するとともに、第1期の基本計画期間において取り組みは進んだものの、依然としてさまざまな課題が存在していることについて記載しているところです。
次の「基本的な方針」につきましては、これは法律に基づいて決められて、それを受けたものですので、ここについては基本的にこのままでいきたいと考えています。
次に、第3、「第2期の基本的な考え方」について、これが今回新たに設けようとしている部分です。ここは特に第2期のポイントと考えていただければと思います。ここでは、まず2025年の大阪・関西万博も見通しながら、共生社会の実現に向けた施策を推進するということを記載したいと思っています。次に、先ほど申し上げました第1期からの宿題事項という形になっていました目標などについて記載しようと考えています。情報保障や環境整備に留意しつつ、障害者による幅広い文化芸術活動を推進する、文化芸術活動の実践の場となる地域における基盤づくりを進めるといった観点で、第2期の取り組みに当たって念頭に置くべき3つの目標を掲げているところです。また、目標ごとに具体的な進捗状況を把握するための指標を精選して設定するということを考えています。この指標につきましては、指標の達成自体を目的とするのではなくて、定量的のみならず定性的な進捗状況も含めて、全体を総合的に判断するというような感じで進めていきたいと思っています。
次に、それぞれの目標についてでございますが、1つ目の目標は、障害者による文化芸術活動のさらなる促進や展開を図ることということです。障害者による文化芸術活動は一定の認知が得られていると思いますけれども、近年の活動状況などはコロナ禍により低くなっているということもありますので、そのようなことを記載しています。
2つ目の目標は、文化施設と福祉施設の連携により、障害者が文化芸術に親しみ、さまざまな活動に参加する機会の充実を図ることということです。計画の周知や文化施設について、人材確保やノウハウの共有について課題がありますので、中間支援団体と連携しつつ、取り組みを進めるというようなことを記載しています。
3ページ目、最後の目標ですが、地域における障害者による文化芸術活動の推進体制の構築を促進するということで、自治体における計画の策定の促進や支援センターのさらなる設置、行政・中間支援団体との連携などがポイントになると考えています。個別の指標イメージについては、それぞれの項目に記載したとおりです。
次に第4「施策の方向性」の改定の考え方ですが、ここにつきましては、各施策の考え方である柱書きの追加などをしていきたいと思っています。また、具体的な各施策については、本資料では第1期の項目を列挙していますが、今後関係省庁と調整して、項目、案文を作成していく予定です。この第2期の計画期間は、令和5年度から令和9年度を予定しています。
柱書きの追加更新事項について幾つかご説明しますと、まず鑑賞につきましては、最初に文化芸術に触れる際のハードルを低くし、障害者が文化芸術に触れる土壌をつくることが大事であることを記載しています。また、4ページ目、(4)の評価等につきましては、文化と福祉の領域を超えて、考え方の整理や言語化について多様な立場から対話や熟議を重ねる重要性について記載しているところです。販売等に係る支援につきましては、対象が作品に限ったものでないことなどを明らかにしています。
また、(9)の人材育成のところでは、文化施設の全国組織における研修や普及支援事業の取り組みなどを検討することを記載しています。
最後に「おわりに」ですけれども、ここでは新しく作る第2期基本計画を受けて、今後の中長期的なやり方をどうしていくのかということについて記載しようと考えているところです。構成員の皆さまから、今日また新たにご意見を頂ければと思っています。
資料3ですけれども、これにつきましては、この会議における構成員の皆さま方の意見を項目ごとに整理したものです。詳しい説明は省略させていただきます。
次に、前回の会議で、文化芸術推進基本計画の検討状況について、どういった議論がなされているのか、情報を共有すべきとのご意見がありました。これについては、今回、参考資料3としまして、文化芸術推進基本計画の検討に当たっての諮問文の概要と、8月から9月にかけて開催された文化審議会の文化政策部会、ここで文化芸術推進基本計画の検討をしているわけですが、ここで行われた関係団体ヒアリングの概要を参考でお付けしているところです。障害者の文化芸術活動の推進につきましては、「障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク」からヒアリングを行ったところであり、その内容なども後ろに添付させていただいているところです。なお、ここで行われた意見募集の結果の公表につきましては、現在、担当課において検討中とのことです。
第2期計画の案文につきましては、今日お示ししました骨格案はいわゆる計画の概要のようなもので、実際の計画はこれに肉付けをしていきます。これにつきまして、皆さまからのご意見を踏まえて、また関係省庁と相談して、次回会議で基本計画案をお示ししたいと考えていますので、今日のご議論をどうぞよろしくお願いします。
 
○日比野座長
ありがとうございました。それでは、ただいまから、事務局からの説明を踏まえて各構成員の皆さまから、資料2の骨格案を中心に名簿順にご意見を頂ければと思います。事前に資料を提出していただいている構成員におかれましては、順番が来ましたら、資料の内容の説明も含めてご発言をよろしくお願いします。
本日、18名の構成員の方々に出席していただいています。一巡した後、出されたご意見に対して挙手によりご発言を頂く時間も取りたいと思いますので、まずはお1人当たり4分ぐらいを目安に、ご発言を頂ければと思います。では、名簿順で行きたいと思います。まず今中構成員、よろしくお願いします。
 
○今中構成員
ありがとうございました。僕からは2点、2ページ目の障害者文化芸術推進法および基本計画の認知なのですけれども、大学で福祉関係の方にお話をしたり地域でお話をしたりするケースが最近はリアルであるのですが、その中でこの法律をご存じの方は、ほぼおられないですね。われわれは当初からやっているので当然なのですけれども、地域の方々や実践をやっている方々に、この法律の存在をまずは知っていただくということがとても大事で、そもそも論なのですけれども、その存在を知った上で、皆さんで意見を交わしていくということが、いの一番に大事であろうと思っています。この周知に関しては、それは書き物なのか、定期的なイベント等なのか、大学での講義なのか分かりませんけれども、その辺を尽力していく必要があるなというのを1点感じます。
もう1点が、5ページ、これもよく皆さんから出るお話ですけれども、(9)番の人材育成等に関してです。ここにも書かれているように、各施設や団体で人材育成をやっていくというのは、僕はこういう会議体に本当に当初から入らせてもらっているのですけれども、現実は難しいです。施設ごとに人材育成をしていくというのは非常に難しいので、ここに書かれているように全国組織による研修等をもっと活発化させていく必要があるなと思います。これも皆さんもご意見は一緒だと思うけれども、この分野は社会福祉だけを論じていても前に進むものではありませんので、現実やそれの周辺のデザインも含めて議論していきたい内容です。特に国公立の5芸大、日比野さんを筆頭に、東京藝大筆頭に5芸大のほうに、この人材育成をしていくカリキュラムのようなもの、今は東京藝大のみでそういうことを活発にやっていただいています。それがあと4つの大学に派生していくような取り組みというのを、ぜひ考えていただきたいなと思います。以上です。
 
○日比野座長
今中構成員、ありがとうございました。ぜひ全国組織で、研修、人材育成を広めていきたいと思います。ありがとうございます。
では、続きまして、大塚構成員、よろしくお願いします。
 
○大塚構成員
どうもありがとうございます。大塚です。事務局より示していただいた骨格案、ありがとうございます。私は、もうこの線でよいかなと思っています。特に今回は「第1 はじめに」、「第2 基本的な方針」、「第3 基本計画期間における施策の基本的な考え方」ということで、ここで目標を設定しながら、この目標について評価していくと、こういう仕組みを作るというのは妥当だと思っています。
ただ、これは大きな目標なので、個々の基本計画である非常に細かいそれぞれの分野の事柄をどのように入れていくかということが課題かなと思っています。さらに、やはりこの基本的な計画というのは、法律に基づいた施策の実行計画だと思っています。そうすると、今行われているような目標の設定というものと、それから評価、政策評価ということの仕組みを導入するということだと思っていますし、その仕組みをまさに作っていくということだと考えています。
ただ、幾つかの課題があります。1つは、この計画自身が、国が基本的計画を作って地方自治体がこれを実行していく、計画も作って実行していくということなのですけれども、努力目標であるとともに、誰がそれをさまざまな分野においてやっていくか。地方自治体だけではなくて、さまざまな団体、あるいは個人がやるかもしれません。あるいは事業者がやるかもしれません。そういうところが曖昧なので、一体全体この施策を実行するのは誰かということを少し考えながら作っていく必要があると思っています。特に市町村という、地方自治体と書かれているのですけれども、この計画全体における市町村の役割は何なのかなと、それも少し議論する必要があるかと思っています。
それから、もう一つの課題は、評価というとさまざまな評価指標あるいは評価のやり方があります。単に目標を作って結果がどうだったかという業績の評価だけではなくて、やはり総合的な評価、プログラム評価が必要だと思っています。具体的には多分、業績だけではなくて、結果だけではなくてアウトカム、成果は何だったのかと、そういうことが必要になると思います。例えばこの計画が地域共生社会の実現だということであれば、この法律で5年後にいろいろな施策を実行して、どのように共生社会が実現されたか、あるいは「はじめに」も書いてありましたように、個々人のウェルビーイングがどのように向上したかどうかと。こういうことも含めて、量的だけではなくて質的な観点からも把握していく、アウトカム評価ということをしていく必要があると思っています。以上です。
 
○日比野座長
大塚構成員、ありがとうございました。
では、続きまして岡部構成員、よろしくお願いします。
 
○岡部構成員
岡部です。骨格案等の作成、どうもありがとうございました。あまり細かい部分での指摘というよりは、全体を読んだ印象のお話になるかと思います。「はじめに」の部分なのですけれども、法律成立までの背景やこれまでの経緯のところで、とても端的に説明をされていまして、恐らくこういう書き方にはなるだろうなとは思うのですが、やはり東京オリンピック・パラリンピック等の開催も追い風となりというふうなことが代表的には書かれているのですが、もう少し全国の各市民団体など、現場の努力といいますか、活動というのも着実に推進をしてきているということも事実だと思いますので。多分、これを読んでしまうと、大きい、国の関わっている催しでしか推進されていないのかという印象を持たれてしまうと。ただの印象論の話なのですけれども、意外とその辺りは現場の人たちへこういった法律に関心を持っている人たちに少し見ていただけるような工夫というのはしていただいたらよいのかなと思っています。
それに伴ってなのですけれども、例えば2ページの目標イメージの部分ですが、下のほうですね。「文化施設と福祉施設等の連携による障害者が文化芸術に親しみ、様々な活動に参加する機会の充実を図る」ということですが、これも先ほどからご意見が出ていますが、誰がこの活動に取り組むかという部分です。文化施設と福祉施設等の連携というのはもちろんあると思うのですが、後半にも幾つか、例えば企業や市民団体、その他「等」のような記載もありますが、この計画が出てから意外と企業も関心を持っていただいたり、あるいは福祉施設ではない市民団体等も、この活動にどんどん参画をしてきていると思います。そういった部分もあえて言葉にして出すことで、この計画というものが、より市民といいますか、行政側がもちろんする必要もあるのですけれども、自分事として、さまざまな団体、企業等も含めてその気になってもらうというような、何かそういった工夫が必要かなと思っています。
5ページの(10)番、「情報の収集等」のところで、「行政において、文化芸術と障害福祉の担当部署が連携して」という部分ですが、私自身はこの部分が特に、県レベルあるいは市レベルの行政では、この連携が必須だと思っています。事あるごとにお伝えしているのですが、国は、この施策の重要性というのはもちろん理解した中で、横の連携をしつつあると思うのですけれども、まだまだ都道府県レベルでは、文化振興と障害福祉の壁というのは縦割りとしてあると思います。そのため、都道府県内での縦割りで考えると、障害と芸術文化というものの連携、なかなかそれがうまくいかず、もったいないことになっているということを目の当たりにする機会があると思います。この情報の収集に限らないのですけれども、いかに縦割りを超えた連携ができるかというのが、これからの各地方、地域での取り組みのポイントだと思いますので、そういったものがより見えるようにしていただけたらよいのかなと思います。
最後に、先ほどの2ページの目標イメージでお伝えしていたことですが、企業や市民団体と言いましたが、教育機関も非常に関心を持って取り組まれていることを付け加えさせていただきます。私からは以上です。
 
○日比野座長
岡部構成員、ありがとうございました。地方における、まだ文化振興と障害福祉の縦割りがあるというお話。こういったところの連携を進める活動をしていきたいと思います。続きまして、小川構成員、よろしくお願いします。
 
○小川構成員
私は障害者芸術文化活動普及支援事業の連携事務局を担当していて、障害者の芸術文化活動が各都道府県、また、各市区町村にまで浸透していくことを目標に活動を続けています。その上で、現時点では1点指摘しておきたいと思います。
私は、それぞれの地域に活動が浸透しづらい理由をいろいろ考えます。これまでの会議の中でも一部出た意見ですが、趣味や娯楽の拡大という範囲でしか現場に課題が伝わっていないのではないかという危惧を感じるのです。趣味や娯楽の拡大が悪いことではないのですけれども、この計画を通じて私が問題にしたいのは、文化の権利、文化権と人権の問題が根幹にあるということです。文化芸術基本法や障害者文化芸術活動推進法では、文化芸術を創造し享受することが人々の生まれながらの権利だとされています。文化を受け取って創造し、参加し、楽しむこと。つまり、文化的な生活に参加することは人々の権利なのだということが、一般の人にはまだまだ理解されていないところがあります。冒頭の位置付けの部分、それから経緯の部分も大事ですが、その上で「第1 はじめに」の「(3)障害者による文化芸術活動の推進に当たっての意義と課題」の部分にも、これは人権の問題である、文化の権利の問題であるとストレートに書き込むことはできないでしょうか。
私が権利ということをくどくど言うには理由があります。文化芸術基本法には、年齢、障害の有無、経済的な状況または居住する地域にかかわらず、等しく文化芸術を鑑賞し、これに参加し、またはこれを創造することができるような環境の整備をすると記載があります。これはどういうことか。この会議では障害者の文化芸術活動を扱っていますが、この先、高齢者の文化活動、子どもの文化活動、貧困者の、無業者の、へき地のと、射程は広がっていく可能性があるわけです。周縁に置かれた人々へのまなざしを精緻化していくこと、これは待ったなしの状況にこの国はあると、私は考えています。そこでカウントするのは、車いすは障害者だけですという、つまり高齢者の車いすはカウントしません、赤ん坊のベビーカーはカウントしません、では済まなくなると思うのです。今回の会議では障害者に限定された議論になるかもしれませんが、お書きいただいた「第5 おわりに」のところに、「時には障害者の文化芸術の領域を越えて他の分野に波及」、これは大変重要になってくる部分だと思います。芸術文化という本体が仮にあるとして、人権、文化権というコネクターを使って周縁に置かれた人々とつながることで、人は楽しく暮らせる、ウェルビーイングな共生社会づくりにつながるのではないか。その先導役として障害者文化芸術活動推進基本計画はあるのではないか、そのように考えて意見しました。以上です。
 
○日比野座長
小川構成員、ありがとうございます。本当に私もそう思います。障害者がきっかけとなって、本当に多様な社会が築かれるきっかけになっていくのだと思っています。ありがとうございます。続きまして、尾上構成員、よろしくお願いします。
 
○尾上構成員
DPI日本会議の尾上です。ありがとうございます。別紙で出している意見を読み上げるのではなく、それと重なる内容になりますが、先ほど頂いた骨格案に対する意見を申し上げたいと思います。
まず1つ目なのですけれども、ついこの8月にジュネーブで、国連の障害者権利条約の対日審査がありました。私もそちらのほうに参加をしましたけれども、日本政府に対する総括所見の中の肯定的側面ということで高く評価をしている項目の中の一つに、実はこの障害者文化芸術推進基本法制定が挙げられています。国際社会からはきちんと評価されているのにもかかわらず、先ほどからのお話のあるとおり、国内での認識の低さ、取り組みの弱さがある。このギャップをどう埋めていくのかというのが、非常に重要ではないかというのをまず思います。そういう意味で、国際的にも評価されているということをしっかり書いた上で、国内的にどう実施していくかという課題意識のようなことを書いていただけないかなというのが1点です。
2点目が、「はじめに」の基本計画の位置付けのところに障害者差別解消法の改正による合理的配慮の義務付けや、あるいは情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法の制定ということを書いていただいてはいるのですけれども、いわば経過的に紹介するだけではなくて、この第3の「基本的な考え方」の中に合理的配慮やアクセシビリティの確保、推進ということを一つの項目として、やはり入れるべきではないか。ぜひ、入れていただきたいと思います。そして、基本的な考え方に加えて、そのことは第4の「施策の方向性」で、できる限り各項目に対応した形で、合理的配慮やアクセシビリティをどう確保していくのかといったことを意識した、この「施策の方向性」を充実していただきたいということです。これが2点目です。
3点目です。「第2期の基本計画期間における施策の基本的な考え方」の冒頭に、2025年の大阪・関西万博に関して、紹介といいますか、それを「見通して」というふうに書いていただいています。これに対応した形の施策の方向性として、この大阪・関西万博を日本における障害者文化芸術の取り組みの社会への発信の機会として積極的に活かしていく。そういった積極的な位置付けや施策の方向性ということを書き込んでいただけないかなと思います。それが3点目です。
そして、4点目です。障害当事者の参画に関しましては、現行の骨格案で言うと3ページの「地域における推進体制の構築」のところで、地方公共団体の計画策定のところでは書かれているのですけれども、よりもっと具体的な、例えばプログラムを作ったり、鑑賞機会を提供する。その時に、その準備の過程から当事者と一緒に相談をしながらというように、より具体的な場面で当事者参画をつくることが、やはり重要だと思うのです。そのことも記載を頂けないかなと思います。この地方公共団体の計画の中で、特に学校教育の中での取り組みということの重要性、子ども時代から障害者文化芸術や、あるいはバリアフリー映画、バリアフリー演劇、そういったものに触れていくことは非常に大事だと思うのです。先ほど申しました国連の総括所見の中では、障害のある者とない者が共に学ぶインクルーシブ教育を推進しなさいということが言われています。障害のある者、ない者、小さな時から一緒にこういったことに親しんでいく、そういったことが重要ではないか。学校教育における障害者文化芸術や合理的配慮、アクセシビリティが確保された文化芸術を楽しむということを推進していくといったことも書き込んでいただければなと思います。以上です。
 
○日比野座長
尾上構成員、ありがとうございました。では、続きまして、熊谷構成員、よろしくお願いします。
 
○熊谷構成員
岐阜県障害福祉課の熊谷です。私のほうからは2点、お話をさせていただきます。
1点目は、障害者芸術文化活動の促進に向けた地方自治体の予算の確保についてです。骨格案第3、「施策の基本的な考え方」の中に、先ほどもご説明ありましたけれども、地域における推進体制の構築が盛り込まれています。地方公共団体としましては、この計画の策定などをしながら施策を進めていく必要があるかと思いますけれども、そうした中で、やはり国からの財政的な支援というのが不可欠ではないかと考えます。中でも、本県では令和6年に全国障害者芸術・文化祭を開催しますけれども、その全国障害者芸術・文化祭の開催等については、開催県のみならず、全国での取り組みの促進に関わっていく機会になるのではないかと考えています。
そうした中で、先般公表されました国のほうの令和5年度の予算の概算要求の資料によりますと、この全国障害者芸術・文化祭のサテライト事業、サテライト開催事業につきまして、従来、地域生活支援促進事業ということで特別枠に位置付けられていた事業でしたけれども、これについては創設から5年経過して取り組みが定着したと考えられるということで、いわゆる一般的な地域生活支援事業に移行するという形の内容となっています。これにつきましては、特別枠のものから一般の事業に移行するという形になりまして、本県では、この特別枠のサテライト事業、令和元年度から活用しまして、本県で行います障害者芸術文化活動の年間のメインイベントを開催してきています。本県、令和6年の開催の全国障害者芸術・文化祭の際には、ぜひ全国の多くの都道府県にもこの事業を活用していただいて、連携して盛り上がっていかないかと考えていたところですけれども、これが特別枠から外されるということは、これまでの形から少し後退してしまうのではないかと考えています。
現在、県全体の財政状況も非常に厳しい状況でして、われわれとしましても障害者文化芸術に関する予算の確保というのが大変厳しい中で、国の特別枠に位置付けられているという形になっていることは大変重要です。これについては、他の都道府県でも同様ではないかと考えています。できましたら、このサテライト開催事業を従来どおりの特別枠での事業継続がされないものかと考えています。
それも含めまして、今回、第2期計画の骨格案のほうでは施策の目標を設定するということでして、その目標設定について着実な成果を上げていくというためには、このサテライト開催事業のように地方公共団体での財政的な位置付けというのを明確にしていくことが必要ではないかと考えます。この計画の中においては、国としての財政支援をできるだけ明確に具体的に記載してあると、非常に進めやすいのではないかと考えます。
2点目は、障害者差別解消法との関係です。こちらは基本計画の位置付けの中に、障害者差別解消法や、先ほど障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法について盛り込まれるということでした。施策の基本的な考え方の中にも、障害の特性に配慮した情報保障や環境整備に留意するということが書かれていますけれども、実際に各自治体や文化施設で、この差別解消法に基づく合理的配慮の提供などに取り組んでいくためには、全国的な好事例やノウハウを共有していくことが必要ではないかと考えます。この差別解消法の改正によりまして、民間企業にも合理的配慮の提供が義務化されるということですので、具体的に障害者の芸術文化の鑑賞の場面でも、改めてさまざまな課題が出てくるのではないかと考えています。
最近、当県のほうでも、人工呼吸器を着けた方がクラシックコンサートを鑑賞するという場面の中で、他の来場者の方との配慮に非常に苦慮したというような事例がありました。こういった事例、その時には関わりませんでしたけれども、県のほうには差別解消に関する相談機関がありまして、そういったところと連携して対応していくということが非常に重要ではないかと考えています。次期計画におきましては、本県で申しますと障がい者差別解消支援センターという相談機関がありますけれども、そういった相談機関との連携をする、あるいは文化施設に合理的配慮の好事例やノウハウの周知をするというようなことが、具体的な施策として盛り込まれるといいのではないかと考えます。以上です。
 
○日比野座長
熊谷構成員、ありがとうございました。予算のお話、県の中でも努力されていると思いますけれども、国からの継続的な予算措置というのが、やはりまだまだ必要かと思います。令和6年、全国障害者芸術・文化祭が岐阜県でありますので、その辺りもしっかりと皆さまと考えていきたいと思います。ありがとうございました。では、続きまして、柴田構成員、よろしくお願いします。
 
○柴田構成員
柴田です。よろしくお願いします。骨格案をどうもありがとうございました。私は意見をペーパーで出していますので、それを中心に発表させていただきます。盛り込みについては①から⑧まであるのですけれども、大きく分けて3つに集約されます。
1つ目は、地方自治の中に障害者の文化芸術活動を明確に位置付けるということ。2つ目は、地域社会から障害者の文化芸術活動を捉え直すこと。そして、社会関係資本、つながりというものを重要視するということです。3つ目は人材育成。支える側の人材と支援者を増強することが必要ではないかということで、①から⑧までまとめさせていただきました。
全体としては社会開発という視点がとても重要ではないかということを、ヒアリングの団体の方々のご意見を伺って感じました。単体ではなくて地域社会全体で、横断的なチームで支える仕組みが必要だと思います。コレクティブ・インパクトという手法があるのですけれども、これは社会関係資本の増強で、つながりの連鎖といわれています。コレクティブ・インパクトというのは、地域社会の課題について、文化芸術に限らず、社会を構成する人々によって共通アジェンダを導き出して、計画当初から評価を導入するとともに、相互に補完し合い継続的なコミュニケーションから信頼関係を構築して、伴走支援する場づくりを行うこととされています。これは、成果、アウトカム、ソーシャルインパクトをどのように実証するかということに発展していく可能性があると思っています。
それから、劇団協議会のご発表の中から、障害の概念を幅広く捉えることも必要ではないか、生きづらさを感じている方々への対応も必要かというご発言がありました。これも継続的に審議していく必要性があると思いますが、本基本計画につきましては障害者文化芸術推進法に基づいたものですので、範囲を超えるものであるということで、承知しています。
地方自治の中にどのように障害者の文化芸術活動を位置付けるか。地域ではまだまだ障害者文化芸術推進条例のような制定数が少ないため、地方自治の中に明確に位置付けられていないということが分かりました。条例化を推進することや、せめて総合計画への盛り込みをお願いしていただくよう、行政や議員への働き掛けは必要かと思っています。また、行政機関の横断的な会議の場の設置も必要だと思っていますし、自治体、教育委員会のバックボーンサポートの仕組みを、第2期基本計画には盛り込みたいと考えます。ただ、計画への盛り込みにつきましては、地方自治の本旨に抵触しないよう書きぶりを考える必要があるかと思っています。財源の確保が課題となっているのですけれども、財源措置の根拠がないため、予算計画に反映しづらくなっていると思います。地方交付税制度の算定根拠に障害者の文化芸術活動を位置付けるということはできないでしょうか。
広報戦略です。広報活動の強化が急務と思っています。チラシさえ配布されていなかった仙台市の事例は、非常に残念でした。決定的な広報不足と言わざるを得ません。また、配布する側と受け取る側に齟齬(そご)があるとすれば、広報戦略の欠如と言えると思います。全国民への周知の徹底が必要かと思います。次に、共生社会を育む学校教育の必要性を痛切に感じました。学校教育の中にぜひ、誰も孤立させない社会形成は幼少の頃からその意識や考え方を学ぶ機会をつくる必要があるということを基本計画に盛り込むことが必要かと思います。
次に、劇場・音楽堂の支援メニューの強化が急務と思います。劇場・音楽堂での取り組みが少ないことを再認識しました。全国津々浦々に助言、アドバイスを行っている身としましては、実施の想定をはるかに見誤っていたという感じです。ただ、一方では、劇場・音楽堂での障害者の文化芸術活動を推進するに当たって、複雑な現状も垣間見えます。それは、地方自治の視点からは指定管理者制度です。現場の視点からは、日本障害者舞台芸術協働機構からのご意見を踏まえて、実際の技術、舞台技術サービスのメニューの中に組み入れてスタンダードな支援にすること、これが必要かと思います。個々の劇場・音楽堂でその取り組みが困難なのであれば、統括団体などの支援メニューを新設する必要があるのではないかと思います。
続きまして、統括団体と支援センターの機能強化というのは急務で必須と思っています。支援者と活動者をコーディネートするマッチング機能の必要性の指摘がありました。ばらばらになっている支援メニューを統合していくということで、支援センターの強化はできないものでしょうか。また、助成事業については新規の助成メニューを新設することも必要なのですけれども、もっと身近なところでの見直しも必要と思っています。つまり、助成対象経費の拡充です。ろう者と聴者とで活動を行っている芸術団体からは、手話通訳者経費のことを伺いました。稽古では出演者1人に対して1人の手話通訳者が必要で、最低でも複数名の確保が必要ということであります。創造活動に関わるサポートする人材費用ですね。もっと必要な経費はあると思っています。障害者の方々にとって使い勝手が良いものにしなくてはいけないと思っています。時間が超過していますので、また後半で発言をさせていただければと思っています。
 
○日比野座長
柴田構成員、ありがとうございます。大変具体的に的確にまとめていただいていました。また後半のところで、いろいろご意見いただければと思います。ありがとうございます。では、続きまして、島構成員、よろしくお願いします。
 
○島構成員
よろしくお願いします。大阪にあります国立国際美術館の館長をしています。この会議には今年から初めて参加していまして、これで3回目になるものですから、長年これに関わってこられた構成員の方々などの積極的なご提言をお聞きしていますと、本当に認識を新たにするところがたくさんあります。美術館で何ができるのかということを、やはりいろいろなお話をお聞きしながら考えています。今回の基本的な計画、また、法律をこれから作っていくということですけれども、その方向性と美術館の実際の現場―美術館だけではありません。いろいろな文化施設、劇場もそうですけれども、そういった現場でそれをどう落とし込んでいくのかという具体的なところが、なかなか見えにくいといいますか。ただ、もちろん美術館は、例えば服部構成員がかつて所属されておられた兵庫県立美術館などでは、彫刻に直接、視覚障害者の方が触れる、あるいは一般の方も触れることができる、そういう場を設定しています。もちろん日比野座長が関わっておられる岐阜県美術館あるいは熊本市現代美術館、それから、保坂構成員の関わっておられる滋賀県立美術館など、全国各地の美術館でこうした取り組みは継続的にやっています。少しずつは形になってきているのですけれども、やはり現場の学芸員、私も含めてですけれども、職員のこうした活動への認識はまだまだ不足しているのではないかなというのが実感です。
また、アクセシビリティということがよくいわれますけれども、これの拡充あるいは向上、これも非常に重要ではないかなと感じています。美術館でも、できるだけ多言語の解説や音声ガイドなど活用していますけれども、それもまだまだ不十分ではないかなと思います。もちろん予算的なものがないと、なかなかそれも実現できないわけです。あとはアクセシビリティでは、例えば駅から美術館やイベント会場までの誘導といったものなども、案外忘れられているところではないかなと思います。
さまざまな活動がこれから展開されていく、あるいは美術館で意識的に取り組んでいかなければいけないと思っていますけれども、例えば手話の講習会一つ取っても、これまで行われたことがほとんどありません。そういったことも含めて、美術館の現場において意識的に取り組んでいけたらいいのではないかなと思っています。以上です。
 
○日比野座長
島構成員、ありがとうございました。各美術館でいろいろ取り組みがされていると思います。美術館の機能をより多く知ってもらう、アートコミュニケーターという活動もありますけれども、それをまた、より多様性、アクセシビリティというところで広げていくというものも、これから美術館の中でも活発にしていければなと私も思っています。ありがとうございました。続きまして、鈴木構成員、よろしくお願いします。
 
○鈴木構成員
骨格案をありがとうございました。皆さんにほとんど言っていただいていたのですが、少し重なる部分もありますが、私のほうで幾つか発言させていただきます。
岡部構成員からもありました、「文化施設と福祉施設等の連携による障害者が文化芸術に親しみ~」という2番のところですが、ここはやはり教育機関や医療機関、福祉団体、民間企業、NPOなど、施設だけではなくて幅広く捉えたほうが、より広く広がるのではないかと思いました。
それと「地方」に関しても、岡部構成員のほうからご意見がありましたように、大阪も一つの地方なのですが、文化と福祉というところで自治体のほうでは連携とはいえ、なかなかうまくつながりができないなど、横断的な活動は難しいこともありますので、この辺りも何か計画の中で具体的な盛り込みがあるといいのかなと思っています。
次に「情報」に関してです。障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法に関して皆さんからもご意見がありましたが、情報収集や相談のところに書かれていますけれども、「情報発信」というところはもう少し具体的な発信方法多様にあったほうがいい。障害のある人が情報を受信するためにひつような支援や配慮などに関しては、まだまだ現状進んでいません。せっかくいろいろな事業が、ここ数年活発に行われている中で、情報が受け取れてなくて参加できないということもよく聞きますので、この情報の発信方法についても、この中で具体的に示したほうがいいのではないかと思いました。
次に人材育成に関してです。これも他の構成員の方から出ましたが、将来の人材を育成していく学校教育という中で、教育の中で「障害」に関してや、障害のある人の文化芸術活動に関する教育というのは必要になってくるのではないかと思っています。
また、地方についてですが、「多様な人材の育成」となっていますが、具体的に多様な人材育成とはどういう人材をイメージされているかというのが、この計画を見ただけでは分かりづらいと思います。例えば芸術関連団体と福祉団体、支援、をつなぐ、つなぎ手を育成するなど、具体的にどのような人材が必要なのかというところも示されるほうがいいと思いました。
この人材育成の流れでいきますと、私の経験上、が劇場や芸術団体の現場では、障害のある人が利用できる、参加できる環境づくりにおいて、その支援方法や事業の企画内容に困っていていますので、芸術、福祉、双方のノウハウを持ち、コーディネート、アドバイスできる人材が求められていると思います。そのような人材を育成する研修制度などをつくり、制度化というか、標準化していけるような取り組みがあったほうがいいのではないかと思いました。以上です。
 
○日比野座長
どうもありがとうございました。では、続きまして、津田構成員、よろしくお願いします。
 
○津田構成員
津田と申します。私からは、連携と情報という2つの話をさせていただきたいと思います。
1つ目の「連携」なのですけれども、これも両方とも皆さんおっしゃっていただいたことの屋上屋を重ねるような話になると思います。連携についてですが、社会の成熟に伴って、個々人が充実した人生を送ることができる活動の選択肢として、文化芸術活動の機会が創出されてきているのは、とても重要なことだと思います。そのためには、それぞれの地域にある社会資源を活性化させていくという、こういう観点が最も重要だと思います。殊更、行政をはじめとした社会資源のセクショナリズムが、有効な社会資源の活性化を阻んでいるように思います。その観点から、社会福祉、社会教育、生涯学習、学校との具体的な連携施策が提案できなければいけないと考えています。今回の基本計画では、計画策定を通してというところに活路を見いだすという立て付けになっているように読めますが、計画がさらなる縦割りを促進するということがないような、さらなる具体的な連携の提案が背後になければいけないかなと思います。これが連携についての意見です。
もう一つは「情報」についてなのですけれども、いま鈴木さんがちょうどご発言いただいたことを私も考えて感じていたところです。アウトスタンディングな実践の情報というのは、一般によく流通するようになっていると思います。ところが、個々人が、地域で生活している個々の人が活動の選択肢を増やしていくような情報発信ができているかというと、そうではないと思います。具体的な情報収集や発信の在り方を構想していく必要があるのではないかと思っています。
一昨年だったか、私のほうでまとめた、今チャットのほうに流させていただきますけれども、こういうアプリ(事務局注:障害者文化芸術活動実践 (https://jubilant-giants-6314.glideapp.io/dl/d0a5f4 ))を、情報を収集して発信するアプリを試験的に運用しようと思ったことがあります。協力者を募ったのですけれども、ほぼ反応がなかったということがありました。何かこういう具体的な工夫ということを、背後に議論しながら進めていく必要があるかなと思います。
また、いただいている資料の中に情報のところで書かれているので「障害福祉との連携」が強調されていますというのがありますけれども、生涯学習のほうとの連携もぜひ視野に入れていただきたいと思います。地域によってはかなり生涯学習のという文脈で、障害のある方たちの文化芸術活動が盛んに行われているということも加えておきたいと思います。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございました。続きまして、長津構成員、よろしくお願いします。
 
○長津構成員
こんにちは。九州大学の長津です。今回この有識者への資料提供が非常に直前だったので、私自身も含めて十分に検討できていない部分もあると思います。私が一員でもあるOpen Arts Networkという団体からの提言を手掛かりに、11月4日に舞台芸術関係の障害者による文化芸術活動の取り組みについての今後を考える座談会を、日本文化政策学会の主催で実施します。チャットと画面上のQRコードで詳細を示していますので(事務局注:https://www.jacpr.jp/news/2841/ )、お時間があります方はぜひご参加いただければと思います。それでは、意見を時間の許す限り、5つほど述べられればと思っています。
1つ目は、まず資料1の第3、「施策の基本的な考え方」についてです。「障害者による幅広い文化芸術活動の更なる促進・展開」ということと「障害者が文化芸術に親しみ、様々な活動に参加する機会の充実」という項目が、見出しの題目だけ見ると同じことを言っているのではないかなと思いました。もっと具体的に、1つ目の目標については、鑑賞・創造・発表等の機会拡大を文化庁や厚生労働省の支援によって行うということを指して、2つ目の目標については、文化施設、福祉施設、また、鈴木構成員や岡部構成員がおっしゃったとおり、多様なセクターの専門家同士の連携、これを促進していくような取り組みとして明確に切り分けて位置付けたほうが、評価もしやすいのではないかなと思います。
2つ目です。同様に資料2の2ページについて、法や基本計画の認知状況を評価指標とするということが挙がっていますけれども、これを指標にするというのは少し違うのではないかなと思いました。基本計画の存在を知られることが、連携が進んでいるということを評価する項目に本当になるのでしょうか。もう少し実質的に、連携が起こっている状況を、量的・質的に評価していく方法というのを検討できないかと感じました。
3つ目です。続いて資料2の3ページにあります「鑑賞の機会の拡大」について、子どもたちが文化芸術を鑑賞する機会の拡大について述べられていますけれども、具体的にはこれは、例えば文化庁における「文化芸術による子供育成推進事業-ユニバーサル公演事業」を指すのではないかと思います。こちらの支援事業を見ると、多くの実演家団体が関わっているのがうかがえるのですが、この団体のジャンルや表現手法の広がりがさらに求められていくのではないかと思います。芸術的のみならず、鑑賞サポートの質、これらを向上させていくことや、鑑賞サポートがあるからこそ魅力的な公演やワークショップ、これを提案できるような、ユニバーサルな公演を行っていくことができる実演団体、これをしっかり育成していくことが求められるのではないかと思います。
続いて資料2の4ページにあります「創造の機会の拡大」についてなのですが、こちらは正直、もう少し踏み込んだ推進体制を構築できないでしょうか。具体的には、東京オリンピック・パラリンピックを超えてプロとして活躍する障害のあるアーティストがどの程度増えたのでしょうかというと、まだまだ可能性があるのではないかなと思います。国内外で障害のあるアーティストの活躍の場が期待される現在、障害のあるアーティストの共同制作やアーティスト育成の機会、これはさらに充実していく必要があると思います。もちろん、このことは障害のある人に特化しない問題ですが、活動するための障壁が障害のある人にとっていまだ数多いため、このことを乗り越えるための芸術・福祉双方からの具体的な施策が求められるのではないかなと思いました。
5つ目です。続けて資料2の6ページ、「おわりに」に関しまして、小川構成員からもありましたとおり、主に文化庁が主導した取り組みになるのかなと思うのですけれども、障害のある人の表現活動のみを射程に入れた議論を、他の分野、高齢者の分野、子どもの分野、LGBTの分野など、他の分野に、どのように、いつのタイミングから、具体的に広げていくのか、ビジョンを明記していただきたいと感じました。私からは以上です。
 
○日比野座長
長津構成員、ありがとうございます。事務局から提出されたものに対して、具体的にご意見いただきました。ありがとうございました。続きまして、服部構成員、よろしくお願いします。
 
○服部構成員
よろしくお願いします。以前から問題になっているように、障害者の芸術上価値が高い作品として、専門的な教育に基づかないものを評価して、健常者とは異なる判断基準で障害者の文化芸術活動と健常者の文化芸術活動を分断するような社会は、不健全であると言わざるを得ません。今回は法律の改正が議論されているわけではありませんので、第1期基本計画と同様に、基本計画の中でこの点を改めていくことが重要だと思います。
その観点からすると、「施策の方向性」の「(2)創造の機会の拡大」において、支援学校卒業後の進路保障に配慮していただけたらと思います。美術大学等の専門教育機関の門戸を開く取り組みや、地域に障害者が参加しやすい美術教室やダンス教室・音楽教室などがあること、また、多くの障害者支援事業所が専門的な文化芸術活動に取り組めるような補助金の仕組みがあるなど、支援学校卒業後に文化芸術活動に本格的に取り組みたい方々、専門的な技術を身に着けたい方々の受け皿を増やしていく取り組みが必要だと思います。
(2)の「創造の機会の拡大」では、「コーディネートする学芸員や劇場スタッフの育成も重要」と書かれていますが、先に申し上げた分断が顕著なのがこの領域ではないかと思っています。基本的な考え方の(1)では、「社会において一定の認知が得られつつある」と書かれていますが、キュレーターや劇場ディレクターなどの文化芸術セクターの人たちの認知度が逆に低いのではないか。あるいは、認知していてもそこから距離を置こうとしている人や他人事だと思っている人が多いのではないかという印象もあります。そのような職業に就こうとする人たちへの教育も重要ですし、現にその職にある人たちの意識改革も重要です。
加えて、公共の施設においてはアクセシビリティ担当のような専門職を配置することも大切です。少し古い話ですが、2010年にたまたま滞在していたロンドンで、視覚障害者の美術館への関わり方を考える会議、「In Touch with Art 2010」というのに出席する機会がありました。そこでは、イギリスに限らず、ヨーロッパやアメリカから博物館のアクセシビリティ部門、これは博物館が子どもや障害者や外国人などのさまざまな来館者にとって使いやすい場所であるようにコーディネートするための部署なのですけれども、その担当者や教育部門の担当者など、約150人が出席して活発な議論が行われていました。残念ながら、日本から参加している博物館はありませんでした。近年は少しは改善されているとは思いますが、アクセシビリティ部門を設けて専門のスタッフを配置している美術館、博物館、劇場は、あまり多くはないのではないかと思います。この点でも改善が望まれます。
もう一つ、障害者と健常者の文化活動の切れ目のない接続という意味では、「施策の方向性」の「(6)芸術上価値が高い作品等の販売等に係る支援」も気になります。販売ということですので、主に美術作品を想定されているのではないかと思うのですが、現代のアートシーンでは、作品を売って生計を立てるという古いスタイルのアーティストばかりではありません。地域のアートイベントや美術館の展覧会などでその場限りの作品を作ったり、ワークショップを企画したり、あるいは文化的な助成金制度の枠組みの中で活動しているというようなスタイルのアーティストも多いのではないでしょうか。
そのような状況の中で、障害者の創作に対してのみ独立して販売できる作品だけを想定する、つまり額縁に収まる絵や台座に乗る立体物にそれを閉じ込めてしまう、限定してしまうというのではなく、一般のアーティストとの共同を促進して、コレクティブとしてアートイベントや展覧会に参加する、ワークショップの開催に協力して謝金を得るなど、アーティストとの距離を縮めて、障害のある人が現代のアートシーンの中で収入を得られるようになるための取り組みというのも必要ではないかと思っています。それは、障害者の作品だけを集めた展覧会を繰り返すだけでは不十分であるということでもあります。私からは以上です。ありがとうございます。
 
○日比野座長
ありがとうございます。そうですよね。絵画・彫刻だけではなく、本当に現代アート、いろいろなものを起こすようなアート作品も作家の中ではたくさんありますので、そういう分野での障害者の参加と障害者アーティストの参加というものも、やはり十分視野に入れた計画にしていくべきだと私も思います。ありがとうございました。続きまして、廣川構成員、よろしくお願いします。
 
○廣川構成員
NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワークの代表の廣川麻子と申します。よろしくお願いします。ただ今皆さま方のご意見を拝聴して、全くそのとおりだと思いました。同じような意見を私も持っています。内容を深めて話すことができるというのが、とても素晴らしくなったなと感じています。
さて、私は聞こえない者としての意見を述べさせていただきたいと思います。まず手話に関してですけれども、「手話」という文言が載っていない。手話も含めた計画というのを考えられているとは思うのですけれども、一般的な人がこれを見た時に、手話という文言が入っていないと、それはもう関係ない、手話はまた別物のようなイメージに捉えられてしまう、誤解を受けてしまうかなという懸念があります。皆さまは当然ご存じだとは思うのですけれども、今、全国各地で手話言語条例、というのが増えてきています。それを今後、国家法として、手話言語法として立ち上がる可能性があります。そういったことを含めて、手話についての文言をはっきりと計画の中に加えていただきたいと考えています。
ただ、その前には、皆さんとの議論も確かに必要です。それをまずはキーワードとして入れてほしいということを、まずお伝えしたいです。手話を通して文化芸術活動の実践が行われています。手話通訳を通して、または手話そのものの表現活動が行われているというメッセージも伝えられるということです。また、手話通訳の問題やろう俳優、ろう者アーティストといった、彼らの活動の範囲を広げることにも関わってくるのではないかなと考えています。
それともう一点、2025年の大阪・関西万博のお話がありました。2025年にデフリンピックも開催されます。それも併せて載せていただけるといいなと思います。デフリンピックを通して、手話やろう者または難聴者に関わる、それに対する活動や文化、表現、そうしたものも広がっていくといいと思っているので、社会に対する理解につながるように、そこを含めていただきたいと思います。一般の方々に、手話やろう者のことを認知していただくきっかけになると思っています。
また、最近ではドラマがありますよね。ドラマの中で手話が表現されている、ろう者が出ているドラマというのもあります。そのドラマを見て、聞こえる人たちが「手話って何だろう」と、興味を持っている人たちがどうも増えているようです。実際にろう者と会った時に、例えば筆談をする、身振りで何とか伝えるなど、そういった場面も実際に見ることが増えました。似たような形で、もっとこうした活動を通して社会に変化を起こせればいいなと考えています。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございました。手話をきっかけにして、ろう文化というのがあるというのを私も廣川さんから教わったことですので。ただ手話は伝達手段ということだけではなく、一つの表現としてという捉え方というものを、しっかり意識して反映させていければと私も思います。ありがとうございました。続きまして、広瀬構成員、よろしくお願いします。
 
○広瀬構成員
国立民族学博物館、広瀬です。よろしくお願いします。最初にお断りですけれども、すみません、僕は資料の読み込みが不十分で、建設的なコメント、具体的なコメントというより、印象、感想という感じになるかと思いますが、ご了承ください。総論2点、各論3点、お話ししたいと思います。
まず総論の部分で、もう既にいろいろな構成員からも出ましたけれども、2点申し上げます。
1つは、本有識者会議はもちろん障害者による文化芸術活動の推進なわけですけれども、一方で、日本語の曖昧さを生かしてではないですけれども、障害者による推進というふうな解釈もしてみたいと思っています。具体的に言うと当事者参画ということですけれども、もっと明確に、障害当事者がこの文化芸術活動を推進する主役であるのだと、障害者による推進であるのだというような色が、随所にもう少し出てもいいのかなと感じました。
それから、この文化芸術活動ですけれども、障害者による文化芸術活動というのは別に特別なものではありません。これも一部の構成員から出ましたけれども、文化芸術活動の本質を問い直すきっかけや文化芸術活動の幅を広げていく、そのきっかけづくりとして障害者があるのだと。ですから、何か文化芸術活動の全体を変えていく取り組みなのだと、そういう色というのももう少し総論部分で出てくればいいのかなと感じました。
次に各論3つ、これは過去の懇談会でも僕自身が何度か申し上げていることと重なります。それから、今回の有識者会議での議論の枠から外れる部分もあるのかもしれないですけれども、やはり報告書等で明記していただく、努力目標でもいいので明記していただくのは重要なものだと思ってお話をします。
まず1つ目は、学校教育のことです。これは2つに分かれますけれども、最初は特別支援教育の図工美術教育の充実・拡充ということです。これは視覚障害の立場から言うと、現状まだ、僕が盲学校で学んでいた1980年代と変わらないのですけれども、美術の点字による教科書、触る教科書が発行されていないと。もちろん他の教科は教科書が点字で発行されているわけですけれども、美術においてはいまだに点字の教科書がないと、そういう状況です。教科書がないことの利点というのも、もちろんあるのですけれども、やはり教科書がないということが象徴するように、非常に支援教育における図工美術教育の状況というのはシニカルで、その辺を、やはり人材育成という面でもしっかり拡充していくということが大事だと思います。
それから、インクルーシブ教育の面での美術図工教育においても、実はこれは意外と盲点になっています。大学進学という面ではかなり実績が積み重ねられていますけれども、図工美術や体育において、では、インクルーシブの学校に入って、健常児のクラスに入った障害児がどういう教育を受けているかというのは、意外と調査がされていないし、結構お寒い状況になっていると思います。ですから、そういうインクルーシブ教育の推進というのは既に国際的な潮流になっていますけれども、そういう中で特に図工美術教育の中で、マイノリティーにどういうケアがされるのかという辺りも、きちんと拡充、チェックしていかなければいけない部分だと思います。
それから、第2点目、これは大学における学芸員課程の充実ということです。これも2つありますが、障害当事者の博物館実習等の受け入れ先をしっかり確保していくということと、健常者側に対しては、障害者アートの学習というものを、学芸員養成課程のカリキュラムに入れ込んでいくということがあると思います。
最後、3点目です。これも過去の懇談会で申し上げましたけれども、美術芸術系の大学の門戸開放ということです。これも人材育成ということですけれども、2つあります。1つは、障害当事者、具体的には視覚障害を想定していますけれども、そういう障害当事者が美術芸術系の大学に入学できる、そういう入試制度というのを改革していくというのが1つ。
それから、骨子の中でも触れられていましたけれども、やはり美術芸術系の大学が障害者アートの研究であり、調査の拠点にならないといけないので、そういう障害者アートを扱う専門の講座の開設ということを美術芸術系の大学には望みたいということです。以上、主に人材育成の面になりますけれども、3点、具体的な提案としてお話ししました。以上です。
 
○日比野座長
広瀬構成員、ありがとうございました。支援学校の教材の不足、点字の美術の教材がない、そして、芸大、美大の入試、門戸の開放への挑戦など、とても重要な意見だと思います。ありがとうございました。続きまして、保坂構成員、よろしくお願いします。
 
○保坂構成員
保坂です。よろしくお願いします。第1期の反省に立ってという立場も重要だと思うのですけれども、一方で、第2期なので、どうすればもっと加速できるか、ブレークスルーを起こせるかを考えるのも大事だと思います。そのために何が必要か、今2点を挙げたいと思います。
1つは専門的人材の活用について、骨格案第3の2や3などで中間支援団体について書かれているのですけれども、中間支援団体の活動の活性化も重要なのですが、一方で大事なことは、拠点となるような、あるいはモデルとなるような文化施設の能力を、2期目において一気に高めていくことではないかと思います。その時の課題は、島さんや日比野さんからアートコミュニケーターの話があり、服部さんからアクセシビリティ担当の話がありましたけれども、そうした適切な人材、多様な人材をどう活用、採用していけるかどうかです。
今、特に地方公共団体では、学芸員資格や教員免許を持っていないと博物館では専門職として採用できない人事制度になっているところがほとんどです。ただ、推進法の理念に基づくならば、例えば社会福祉士を持っている人や、あるいは資格がなくても経験がある人を、専門職として採用できるような環境を整備していかないといけないと思います。
もう一つ、広瀬さんからも指摘がありましたけれども、当事者をこの推進の主体にどう位置付けるかが重要だと思うのです。滋賀県立美術館では、今期から協議会のメンバーに視覚障害者に入ってもらうのですけれども、今ジェンダーバランスは定着していますが、そうした意識改革が運営側に必要だと思います。
2点目は、利用の促進の無料化についてです。骨格案第3の(2)、第4の(1)などで鑑賞機会の拡大について触れられていますけれども、どうしてもそこで書かれているのは、人や施設が頑張ろうとなってしまっていると。ですが、それではやはりブレークスルーは起きないと思います。それを起こすためには制度の変更をする必要があるのではないかと考えています。
具体的には、当事者だけではなくてサポートする人の利用を無料化すること。どういうことかというと、今、自治体によっては介助者の利用の無料化は等級で制限をつけているところが少なくありません。その場合は、1種A、1級に限定しているところが多いのですけれども、等級の認定方法に課題があることが指摘されているように、この制限というのは極めて非合理的だと言わざるを得ません。
一方で、国立系の施設は基本的に、介助者は障害者の等級にかかわらず無料ですし、日本科学未来館の場合には手話通訳者は無料という、そういう積極的にしているような事例もあります。そうした基準が地方に反映されるようなムードを力強くつくってほしいと。本来、改正博物館法の中でそうしたものが言及されているべきかと思ったのですけれども、博物館法の説明資料の中では、今の博物館が有料化していることを、どちらかというと擁護するような書かれ方をしていたのです。本来であれば、この基本計画あるいは推進法の理念に基づくならば、そこには無料化すべき案件があるというところまで踏み込むべきだったのではないかと思っています。以上になります。
 
○日比野座長
ありがとうございます。第2期はブレークスルーをしていかなくてはいけない。同じように頑張りましょうということではなく、そのためのポイントを頂きました。ありがとうございました。では、続きまして、森田構成員、よろしくお願いします。
 
○森田構成員
森田です。よろしくお願いします。骨格案の作成、ありがとうございました。それぞれの構成員の方がお話しされていることに大きくうなずくことが多いです。
まず「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーを受け継ぎ」とありましたが、このレガシーとは一体何だったのか、という問いです。各それぞれ皆さん思い浮かぶことが、違うかもしれません。例えば事業数の増加だったのか、鑑賞機会の拡大だったのか。それは一体何なのか、そのイメージや評価というものを少し明記していくのもいいのかもしれません。この計画自体がどこに向かっていっているのかというのがより分かりやすくなるかと思います。
「創造の機会の拡大」、これは長津構成員からもおっしゃっていただいたように、もう少し具体的な施策があるといいかなと思います。文化芸術に親しんだことのない障害のある人に対しての支援の必要性ももちろんありますが、今現在活動する、障害のある表現者たちが抱えている困難というのも実は多々あります。人によっては介助が必要になる場合もあります。そして、今活動する障害のある表現者たちが次のビジョンを描くことに対しても支援が必要ではないかと私は考えます。
相談体制のことについても、非常に、何かこれを拝見していると、支援センターに任せていることがとても多いなと感じます。普及支援事業を支援センターのみで賄うというのは、非常に今の状態では難しく、負担が大きいのではないかなと思います。地域のことを支援センターのみに任せればいいと思っていらっしるように伺えます。
他の構成員もおっしゃっているように、また、私も何度もこの会議などで申し上げていることと重複しますが、やはり人材育成においても障害当事者の介入ということが、より必要になってくるかと思います。現在、地方観光交通バリアフリーでは、当事者介入というのは非常に盛んになっている印象ですが、文化施設ではそういう試みはあまり耳にしません。その試みを期待します。
この施策自体、「障害者の」と言っている、この「障害」という言葉の範疇はとても広く、どの障害に対してどんな支援を行っていくのか。大きく捉える部分、細分化する部分、両面が必要です。障害名などを特定するということは、非常にデリケートな問題ではありますが、もう少し細かく設定してもいいのかなと考えます。以上です。
 
○日比野座長
森田構成員、ありがとうございました。では、続きまして、吉野構成員、よろしくお願いします。
 
○吉野構成員
愛知大学の吉野です。よろしくお願いします。
まず骨格案1ページの「はじめに」の(3)の2つ目の項目の2行目のところなのですけれども、「文化・福祉・教育等関連分野の縦割り」のところに、ぜひ就労という言葉も入れて、文化・福祉・教育・就労等としていただきたいです。この会議での以前の私の発言を――資料3の5ページの「芸術上価値が高い作品等の販売等」のところと、そのすぐ下の「相談体制の整備等」のところに記載していただいていますが、この就労に関わる課題というのは、今回の骨格案の「基本的な考え方」にも書かれている「共生社会の実現」というのを、先ほど小川さんも言われていた趣味や娯楽だけではない範囲で、この先に目指す上で非常に重要なことの一つではないかと思っています。
また、この就労に関わる以前の提案については、先ほどの文化庁の方の説明で、作品の販売だけではないことを入れたというふうに言われたのですが、それを伺うまで、どう書かれているのかよく分かりませんでした。このままでは、まだ分かりにくいように思います。もう少し具体的に、作品の販売だけではない多様な経済活動、つまり文化芸術の仕事、就労を可能にする支援について書くことを考えていただけないでしょうか。
これは一つの例なのですが、最近、私の長年の友人であるダンスアーティストがALSになりました。この話は、ご本人の許可を得てしています。それで、徐々に車いすでの生活になってきています。つまり、身体に障害がある状態ですね。この方が、今後も本人が望み、できる限り長くアーティストとしての仕事を続けたいと思った時に、仕事を行う現場に行くための移動手段、その場で必要なコミュニケーションのサポート、仕事中に必要な医療ケアなど、その仕事を可能にする、仕事にアクセスする支援制度が、現状はほとんどないのではないでしょうか。生まれた時からの障害がある場合でも事故や病気による障害でも、どちらの場合でも芸術の仕事を通しての社会参加が可能であり、その能力や才能を生かす権利が公的な支援制度により保障されるのも、共生社会の実現において必要なことではないでしょうか。また、その方はもともと、障害のある人たちや高齢者とのワークショップなど、社会包摂につながる芸術の活動を長く続けています。その分野で、現在のご自分の状況だからこそ、できることがあるとも考えていらっしゃいます。
例えば英国にはAccess To Workという制度があり、そちらのホームページにこのような説明が書かれています。「障害や身体的または精神的な健康状態が原因で、仕事を得ることや継続することが困難な場合の支援を行います。それぞれの必要性に沿った支援を受けることができます。以下のようなことについて、申請が可能です。仕事のために必要な実用的なサポート、仕事のために必要なメンタル面のアドバイス、就職活動の面接でのコミュニケーションサポートに必要な費用」といったことが書かれていて、特にここにある実用的なサポートには、仕事のための移動に関わるさまざまな経費とか手話通訳などのコミュニケーションに関わる人的な経費も含まれています。英国の場合、これは文化芸術に限らず就労全般のアクセスについての制度なので、日本で同様には無理なのかもしれませんが、障害のある方が文化芸術の仕事をする上で、このような公的な支援、環境整備なしに、骨格案の5ページ(6)にあるような「障害者の文化芸術活動を多様な経済活動に」つなげるというのは難しいのではないでしょうか。この「経済活動」というのは別に企業などだけではなくて、障害のある人たち個人のということも入っているわけですよね。であるならば、もう少し踏み込んだ方針を立てていく必要があると思います。
それから、別の部分ですけれども、骨格案2ページの(2)と3ページの(3)、こちらについても、どちらもそれぞれ連携についての重要性が書かれているのに、目標イメージの米印の指標の部分では、連携がどのくらいどのようにされたか測ることについては全く触れられていないので、それも必要ではないかと思いました。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございました。評価指標についてもう少し具体的にとお話しいただきました。ありがとうございました。続きまして、最後になります。四元構成員、よろしくお願いします。
 
○四元構成員
よろしくお願いします。京都市文化芸術企画課の四元と申します。骨格案のご提示、ありがとうございました。地方自治体の財政につきましては、岐阜県、熊谷構成員からありましたので私からは詳しく申し上げませんが、自治体を通じてお願いしたいことですので、よろしくお願いします。その他2点、申し上げます。
第1回目の会議でも申し上げましたけれども、京都市では若手芸術家の支援団体であるHAPSという団体と連携し、文化芸術による共生社会実現に向けた基盤づくり事業を実施しています。本事業では、障害のある方に限らず、高齢者や子どもたち、そういった施設利用者やLGBTQをはじめ社会的に生きづらさを抱えた方が、文化芸術活動、アートプロジェクトに参画することで普段の生活では得られないさまざまな経験を積み、地域や社会との接点を増やしていく。そういうことにつなげ発信することで社会のほうにも気付きを与え、障壁を少しずつでも減らしていけるような取り組み、課題解決に至らないまでも困難の緩和につなげるような取り組みを進めているところです。
その中で重要な役割を果たしているのは、相談窓口の設置ではないかと思っています。相談窓口は、アートと福祉や子育て支援、教育の現場をつなぐような機能を持つものであり、障害のある方による幅広い文化芸術活動の推進に寄与できるものと思っています。
新型コロナの初年度であります2020年度に、HAPSの運営する相談窓口(Social Work / Art Conference)が京都市内の社会福祉施設にアンケートを取りました。障害のある方の施設のうち、文化芸術活動に取り組んでいるがコロナの影響で現在は中止しているという施設が46%でした。
一方、まだ取り組んでいないが今後取り組みたいが18%、取り組んでいないが35%でした。半数以上がまだ取り組んでいないような状況でした。
そうしたところに、文化芸術活動に取り組む上でどのような支援が必要ですかという設問をしたところ、芸術家や文化団体の紹介、コーディネートが46%、続いて文化芸術活動の企画立案や取り組みへの伴走型の支援というのが38%でした。
「施策の方向性」、(1)に記載いただいています「障害者による幅広い文化芸術活動の推進」のためには、「(8)相談体制の整備等」が非常に重要ではないかと思っています。障害者芸術文化活動支援センターにおける相談体制の整備等が示されていますが、支援センターの体制強化ということはもちろんですが、センター以外でも、文化芸術関係の中間支援団体や地域アーツカウンシルなど、多様な主体で対応できる体制の整備を目指していくことも重要なのではないかと思いました。これらは障害者の文化芸術活動だけを取り扱っている主体ではありません。さまざまな文化芸術活動、文化芸術領域を横断的に対象としているものであり、他の分野の取り組みの参照、連携などによる新たな視点が得られるということも、そういう可能性があるのではと思いました。
もう一点です。こちらも第1回の会議でもお話ししたことですが、障害のある方等による文化芸術活動を推進する上で、評価基準、キュレーションの手法が一般化、共有化されていないのでは、障害のある方の文化芸術活動に関わる学芸員さん、職員さん、情報共有をさらに進める必要があるのでは、そのような課題を申し上げました。
この間、幾つかの公立美術館の学芸員さんや教育普及の担当職員さんのお話をお伺いする機会がありました。いずれも先進的な取り組みを進めておられる館の皆さんでしたが、それぞれの先進的な取り組みやノウハウ、また、個々が抱えておられる悩みなどを共有する場や横のつながりというのが、やはり不足しているのではという印象を持ちました。(3)にあります「作品等の発表の機会の確保」のためには、(4)に記載のあります「作品等の評価等」、また、「(9)人材の育成等」の取り組みは重要だと考えます。こうした取り組みの中では、中長期的な視点を持っていただき、公立美術館の学芸員の人材教育とともに障害のある方等による文化芸術活動の評価基準やキュレーションの手法の蓄積をしていくことを意識し、取り組んでいくということが必要なのではと感じています。以上です。
 
○日比野座長
四元構成員、ありがとうございました。
以上、皆さまから骨格案に関してご意見いただきました。より具体的に、この言葉を入れたほうがいいのではないか、少し似ているところがあるのでもう少し整理したほうがいいのではないかなど、いろいろご意見いただきました。事務局のほうから各構成員から頂いていた意見に対してお答え、そして、さらに何かもう少し詳しくお伺いしたいということがありましたら、事務局のほうからよろしくお願いします。
 
○髙田(文化庁地域文化創成本部)
事務局です。本日頂いた意見については、可能な限り新しい計画案に盛り込むという形で、今回少し資料の提供が遅れましたけれども、できるだけ早く皆さまにもう一度お示しして、その上で次回の会議に諮っていきたいと考えています。その中で予算的なところにつきましては、必ずしもお約束できないような部分もあるかと思いますけれども、そこはできるだけ表現を工夫して、われわれとしてもできるだけそういった方向で取り組んでまいりたいと思っています。
また、初めにご紹介したらよかったかと思うのですけれども、実は文化功労者に、たんぽぽの家の播磨さんが選出されました。そのような形で障害者文化芸術の認知も進んでいるということかと思いますので、そのようなこともこの第2期計画の推進に活用できればと思っているところです。
 
○日比野座長
ありがとうございました。広報の話もありましたし、周知の話もありました。構成員の皆さんから頂いたご意見が骨格の中に本当に的確に全て入っていくと、よりいいものになっていくというのは確実だと思います。
1期を踏まえての第2期の役割。残り20分ぐらいありますので、4分の中では言い切れなかったこと、そして他の構成員から聞いた上で何かまたいろいろ、互いに言いたいこと、尋ねたいことがありましたら、そういう時間を取りたいと思います。挙手で頂ければと思いますので、いかがでしょうか、皆さん。挙手ボタン、リアクションボタンを頂ければ。広瀬構成員が一番早かったかな。広瀬さん、よろしくお願いします。
 
○広瀬構成員
さまつなことかもしれないですけれども、保坂先生のご発言の中で、別にけんかを売るわけではないのですけれども、いろいろな意見があるということを明記していただくことも大事かなと思って、少し発言します。これは前回の時も僕はさらっと触れたのですけれども、ミュージアムに入る際の障害者、介助者が無料になるということについてです。やはり理想論かもしれないですけれども、僕は、これだけ国としても推進活動をしていますし、実際、美術館・博物館でもいろいろな取り組みがされているわけですから、博物館全体を無料化するという議論は横に置いておいて、いわゆる健常者がお金を払って入るのであれば、やはり障害者、介助者も有料であるべきだと。それが理想だと思います。そのような、お金を払って入る、それだけ楽しめる環境を整えていくというのが筋だと思います。
もちろん、介助者の扱いはどうなるのだ、介助者が必要な場合があるのだというのですけれども、それはやはり別の考え方で、年金制度や通訳・介助者制度を充実させるという方向でカバーしていくものです。やはり美術館・博物館の考え方としては、健常者に対してお金を取るのであれば、障害者、介助者からもお金を取る。ただし、その分きちんと楽しめる環境は整備すると考えるのが、僕はやはり目指すべき理想だと思っています。
この点は恐らくいろいろな議論があるし、ご意見もあると思うので、ここで結論を出すことではもちろんないですけれども、そういう意見があったということを記録として残していただければと思います。以上です。
 
○日比野座長
広瀬構成員、ありがとうございます。前回もその意見を伺っていた記憶があります。ありがとうございました。では、柴田構成員。
 
○柴田構成員
ありがとうございます。柴田です。皆さんのご意見をお伺いして、本当に納得するところが多かったです。1つは、やはり当事者である障害を持つ方々の意見を多様に取り入れること、考え方を尊敬するということが非常に必要かと思いました。
それから、政策評価につきまして、目標と指標を設定するということでありますけれども、現実を見てみますと、政策評価は目標を達成しているのですけれども、創造現場や実際に働いている方々のその現場、地域社会があまり変わっていないという、そういう現場も認められます。政策評価を達成するとともに皆さんの活動が改善していっている、見直されている、良くなっているというような視点は、やはり必ず押さえておかなければいけないことです。政策評価が達成されたことによって現場も活性化しているという、地域社会、現場の変化ですね。そういうことも指標の一つに、これは定性的なものになるかと思います。定性的な指標も一つ入れておかないと、政策評価だけ独り歩きしてしまうような状況になるかと思います。指標の設定には、注意が必要かと思いました。
それから、先ほど少し時間がなくて言えなかったことが2点ばかりありまして、1つは個別のことです。障害を持つ方々との意見交換をする中で積極的な意見としては、DXを使って海外展開をしたいという芸術団体やアーティストがおられます。海外戦略を目途に、DXを活用した新しい価値の創出ということも必要なのではないかと。これは現場からの意見です。
次に、皆さんのご意見は実に多様でありまして、この第2期の計画でどれだけそれが反映されて実現可能なのかということを少し思いました。この基本計画というのは単なるお題目ではないわけですから、計画策定後、この基本計画の巻末に、計画的にその内容が実現されていくようなロードマップを。作成することが必要なのではないかと思います。この事業については何年までに、この事業については5年を目途になど、それで達成されない長期的な目標もあると思うのです。が、それを恐れずに記載しておくことが必要と思います。未達成については、第3期に継続審議して継続的な事業を行うことや改善、見直しして実施することができるようなロードマップが必要です。やはり、この基本計画を国民と共有する観点、当事者の方々と現場の方々と共有する観点は非常に必要だと思うのです。ロードマップについては、作成する必要性を充分に感じています。
それから、座長にお願いです。今、文化政策部会で第2期の文化芸術推進基本計画が審議中です。既にご発言されて積極的にご意見を述べられているということは存じ上げているのですけれども、何とぞこの議論のプロセスも含めて文化政策部会でご発言いただいて、その推進基本計画にも障害者の文化芸術活動の重要性について、また、この有識者会議の意見が多様に反映されますように、ぜひご尽力いただきたいと思っています。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございます。はい、文化政策部会も同時に進行していますので、今日の活発な意見をきちんと、そちらのほうにも反映させられるように意見を述べていきたいと思います。ありがとうございます。柴田構成員の提出していただいた資料の中で、大変参考になるような情報もたくさんあります。またいろいろ教えていただければと思います。
 
○柴田構成員
よろしくお願いします。
 
○日比野座長
ありがとうございました。では、尾上構成員、よろしくお願いします。
 
○尾上構成員
尾上です。ありがとうございます。チャットでも紹介させていただいたのですけれども(事務局注:「森田構成員がおっしゃっておられた「オリパラのレガシー」の内容を押さえていくことはとても重要だと同感しながら聴きました。レガシーの一つにIPCアクセシビリティガイドが知られたこと、特に、その基本原則アクセシビリティとインクルージョンの原則に基づいて施策や取り組みが進められたことは押さえて起きたいと思います。その原則の中で公平の中には障害の有無に関わらず同じ水準の体験、同じ水準のサービスを提供するということや、尊厳の重要性が記されています。以下、PDFのリンクを共有致します。https://www.parasports.or.jp/paralympic/what/pdf/ipc_accessibility_guide_ja2.pdf 」)、森田構成員が言われた東京オリパラのレガシーということに関してです。オリパラのレガシーをより具体的に記していくということが大事だなと、非常に同感しながら聞いていました。
その一つにパラリンピックの国際委員会、IPCが2013年にまとめましたアクセシビリティガイドラインの中には、アクセシビリティとインクルージョンの基本原則というのがあります。基本原則で、例えば公平ということで言いますと、全ての人が障害の有無に関係なく同じ体験あるいは同じ水準のサービスを受けられるようにする。あるいは、利用者が誰であっても尊厳が守られなければならないということが、はっきりと書かれているのです。
まだまだ、日本の劇場や音楽堂・映画館というと、例えば私は車いすの立場から言いますと、一番前の端っこ、見にくく音響的にも決して良くない場所で、その1カ所しか選べないということが往々にしてあるのです。これは、誰かを責めるというより現在の水準として指摘させて頂きます。
このIPCのアクセシビリティガイドには、さまざまなエリアで選択できるようにしなければならない、あるいは価格設定も、いわばそれぞれの懐事情に応じて選べるようにしなければならないということが書かれているわけです。これは現実に、例えば車いすでS席を買って、買ったのだけれども、「いや、車いす席は後ろの2階席しかありませんから」と誘導されて、S席のチケット分は差額があるのに払い戻しはされない。あるいは、ご本人はあえてもう車いすから移乗してでも、やはり自分のS席で見たいと言っても、「いや、車いす席に行ってください」というような形で、自分の望む座席で鑑賞を楽しむことができないという水準にあります。これは公平や尊厳という、その原則に日本の水準を持っていかなければいけないということに気付かせてくれたのが、オリパラのレガシーだと思うのです。ぜひその点を記載していただければと思います。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございました。廣川構成員、よろしくお願いします。
 
○廣川構成員
事業者という言葉がありますが、それももう少し具体的に出したほうがいいと思います。現状では公的な場所という言い方で進んでいますけれども、それだと運営会社や民間の事業者や、そうした会社等は省かれてしまうことになってしまいます。難聴者がそれを見たいというような例えば民間会社がある、芝居をしている団体がある、そこに申し込んでいくと断られてしまうという現状がまだまだあります。そのために、言葉をもう少し具体的に表現すればいいのではないかと思います。例えば公的、民間関係なく、それに含まれる団体など。以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございました。続きまして、鈴木構成員、お願いします。
 
○鈴木構成員
すみません。今日資料を提出させていただいていますので、それの説明だけなのですが。ここの有識者の中のメンバーで、吉野さん、長津さん、廣川さん、森田さん、私ほか、こういった障害のある方の文化芸術活動の支援や推進の実践者、研究者、調査をしてきたメンバーが集まったOpen Arts Networkというところで、まさにこの基本計画の第2期の政策提言を作成しました。
今回、A4、1枚程度ということで要約版しか出していないのですが、私たちのホームページに具体的な提言のほうを、冊子化していますのでPDFでダウンロードもできます(事務局注:https://openartsnetwork.jp/wp/wp-content/uploads/2022/10/OAN_teigen.pdf )ので、ぜひ皆さんにご一読いただけたらと思います。また、先ほど長津さんからもありました、11月4日には日本文化政策学会の、この提言についていろいろな側面から議論するというシンポジウムがありますので、こちらのほうもぜひご視聴いただけたらと思います。よろしくお願いします。
 
○日比野座長
ありがとうございます。では、保坂構成員、よろしくお願いします。
 
○保坂構成員
岡部構成員から、東京オリンピック・パラリンピックが追い風になってというところが、いささか現場レベルのものの評価をされてないのではという指摘がありましたが、僕もそれは非常に同感です。それと同じ観点に立つと、骨格の第3のところで2025年の万博の話が書いてあるのですけれども、ここの表記についてももう少し、それだけを見通すのではなくて、もう少し広い観点に立つことも重要ではないかと思いました。と同時に、万博も2030年のSDGsのゴールを目指しているというところであるので、中期計画は2025年までではあるのですけれども、もう少しその先も見通す――見通すという言葉を使うのであれば、さらにその先についても書いていいのではないかと思いました。
さらに、その万博は、今度の万博はサイバー万博のようなものを考えているようですけれども、いわゆる、先ほどDXの話も出ましたが、国立の施設を例えばメタバースの空間の中につくって、そこで演劇のショーケースをつくる、いろいろなインスタレーション、プロジェクトのショーケースをつくるなど。先ほどブレークスルーという言葉を使わせていただきましたけれども、新しい動きというものをつくっていくということも可能ではないかと思っています。いきなりな発言になるのですけれども、以上です。
 
○日比野座長
ありがとうございます。では、時間が来ましたので、皆さまからのご意見もちょうどいい区切りかと。ここまでとさせていただきます。
本日の意見、本当に障害者の会議をきっかけとした会議でありますけれども、多様な社会を目指す上で、ここで議論されているものが社会の中で実施されることが、これがまさしくウェルビーイングな社会につながっていく気付きになるのは間違いないと思っています。さまざまな、高齢化社会や今の義務教育の中での、美術に限らずコミュニケーションの在り方などという場合に、やはり社会の中で教わっていく部分、そこに多様な考え方、価値、背景を持った人たちと接する場というのが、これは障害者のこの会議からの方向性だけではなく、日本のより豊かな感性、より豊かな社会を開発していくという部分では、とても重要なことであると思います。
ブレークスルーという言葉もありましたけれども、世の中が、社会がブレークスルーしていく、今潮目の時代だと思っています。ここでの会議の皆さんの意見が、やはり現実的な当事者としての本当に具体的な一つ一つの事例がありますので、それをしっかり、先ほども柴田構成員からも言われましたけれども、文化政策の大きなフレームの中でしっかり生かしていきたいと思います。
あと評価、予算という部分もしっかり定量化して、それが中央の中での展開、そして民間との、先ほどDXという話もありましたけれども、いろいろな技術との連携、それの機会として大阪万博というのもあると思いますし、東京オリンピック・パラリンピックのレガシーというものをしっかりつなげていけるようにしていく、とても重要な時期、ポイントだと思っています。
この会議でも、第2期のところでも、しっかりそのようなことを視野に入れた基本計画を作って、この会議の関係者だけでなく、広く社会に発信できるようなものにしていければと感じました。ありがとうございました。
では、予定の時間となりましたので、ご意見の発言はここまでとします。追加のご意見がありましたら、11月2日までに事務局までメール等でご連絡よろしくお願いします。次回の会議は今年度最後となりますが、第2期基本計画の素案、案文についてご議論いただきたいと考えていますので、よろしくお願いします。
では、最後の議事、「その他」について、事務局から説明をよろしくお願いします。
 
○山村(文化庁地域文化創成本部事務局総括・政策研究グループリーダー)
ありがとうございました。次回、第7回の有識者会議につきましては、既にご案内をさせていただいていますとおり、12月19日、月曜日10時からオンラインにて開催させていただきます。よろしくお願いします。
 
○日比野座長
ありがとうございました。では、本日はこれまでとします。それでは、事務局のほうに進行をお返しします。
 
○山村(文化庁地域文化創成本部事務局総括・政策研究グループリーダー)
ありがとうございました。日比野座長、本日は円滑な進行をいただき、また、構成員の皆さまにおかれましては貴重なご意見を今回もいただきまして、誠にありがとうございました。次回も、お忙しい中恐縮ですが、どうぞよろしくお願いします。本日はこれで閉会とします。ありがとうございました。
 

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