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第5回障害者文化芸術活動推進有識者会議

障害保健福祉部企画課自立支援振興室

                  

○日時
令和4年9月12日(火) 10:00~12:00

○場所
オンライン開催

○議題
(1)関係団体からのヒアリング
  ●アール・ブリュット・パートナーズ熊本
  ●特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン
  ●公益社団法人日本劇団協議会
  ●一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構
  ●認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ
(2)ヒアリングを踏まえた意見交換
(3)その他

○議事
○大城(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長補佐)
定刻になりましたので、ただいまから第5回障害者文化芸術活動推進有識者会議を開催いたします。本日の進行を務めます、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の大城と申します。構成員の皆様方におかれましては、大変ご多忙の中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日も前回と同様に、YouTubeライブによる公開にて開催しております。本日の出欠状況でございますが、配付しております出席者名簿の通りとなります。
なお、本日の資料につきましては、事務局から事前にお送りしております通り、議事次第、出席者名簿、ヒアリング団体提出資料、参考資料1-1、1-2、2-1、2-2、3となっております。続きまして、事務局側の出席者を紹介いたします。文化庁からは小林審議官、地域文化創生本部の髙田事務局長。厚生労働省からは、障害保健福祉部の辺見部長、障害保健福祉部の奥出自立支援振興室長が出席しております。また、オブザーバーとして、内閣府、外務省、文部科学省、経済産業省および国土交通省から担当者に出席いただいております。よろしくお願い申し上げます。
初めに、前回の会議は公務で急遽欠席となった文化庁の小林審議官からご挨拶を申し上げます。小林審議官よろしくお願いいたします。

○小林(文化庁審議官)
よろしくお願いいたします。文化庁審議官の小林と申します。障害者文化芸術活動推進有識者会議の開催にあたりまして、一言ご挨拶申し上げます。前回は急な公務のため急遽欠席となりまして大変失礼いたしました。前回会議より第2期の障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画の策定に向けた本格的な議論を開始したところでございますが、構成員の皆様におかれましては、様々な論点について多くの貴重なご意見をいただいており感謝しております。
本日は様々なお立場で、文化芸術による共生社会の推進に向けて先進的な取り組みを進めておられる5つの団体の皆様から、これまでの取り組みや日頃感じておられる課題、今後の方向性に関するご意見について発表をいただくこととしております。
文化庁といたしましては、厚生労働省をはじめとする関係省庁との連携のもと、第2期計画において示すべき理念や、盛り込むべき具体的な施策などについて、本会議において、さらに議論を深めていきたいと考えております。
構成員の皆様におかれましては、引き続き活発なご議論をいただき、ご意見を賜りますようお願い致します。どうぞよろしくお願いいたします。

○大城(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長補佐)
ありがとうございました。ここからは日比野座長に議事を進めていただきたいと思います。日比野座長、よろしくお願いいたします。

○日比野座長
皆さんおはようございます。本日2回目、限られた時間ですので時間厳守で進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まずは前回の会議を欠席されていた服部構成員から、自己紹介と、第1期における課題などについてご意見を3分ほどでいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○服部構成員
ありがとうございます。初めまして、甲南大学の服部正です。前回、公務のために欠席してしまい申し訳ございませんでした。美術史、芸術学が専門で、現職の前は兵庫県の美術館で20年近く学芸員をしていました。
前回の皆様のご意見をお聞きして、条文の中での「芸術的価値が高い」という言葉に問題があるのではないかというご指摘が何度かありました。私も全く同感ですが、特に問題になるのは、「どのような芸術が、価値が高いのか」という定義の部分ではないかなと思っています。条文では、「専門的な教育に基づかず、人々が本来有する創造性が発揮された文化芸術の作品が、高い評価を受けており、その中心になっているものが障害者による作品である。」とされています。しかし、一般的に考えると、芸術に関心があって、芸術に関連する仕事に就きたいと思う若い人に対しては、美術大学を目指したり、美術の専門学校に行ったりと、むしろ専門的な教育を受けることを勧めるのが普通だと思います。それに対してこの法律では、「障害者は美術の専門的教育を受けない方が良い」と言っているように聞こえます。
ここには大変な差別的発想が潜んでいるのではないでしょうか。それは、障害のある人の作品がアール・ブリュットやアウトサイダーアートの枠組みで評価されることを目指してきたということと深く関係していると思います。確かにアウトサイダーアートやアール・ブリュットは、専門教育を受けてない人の特異な芸術を評価する仕組みですが、そこではなく、普通に美術として評価されることをめざしても良いはずですし、アーティスト全般と協働で活動する場面を増やしていくべきだと思います。それができないのは、教育制度に問題があるのではないかなと思っています。前回、「視覚障害者には東京芸大の入試は難しい」というようなことを広瀬さんが話しておられましたが、多くの美術大学がAO入試などの個性重視型の入試制度を備えていますので、そのようなところに普通に障害のある人が入れるような仕組み作りが目指されるべきではないかなと思っています。
もう一つ、障害のある人の創作活動を支援する仕組みについて、日本の美術館の学芸員の、この分野への全般的な関心の低さというのも大きな問題ではないかなと思っています。学芸員になる人の大半は、美術史や美学、芸術学を大学や大学院で専門に学んでいます。しかし、そのような学科、学部で、芸術と福祉の関係とか、共生社会における芸術の役割などを学べる機会はほとんどありません。学芸員養成課程の必修科目の中にも、共生社会の実現に向けて博物館が果たすべき役割を学ぶための科目はありません。芸術を評価する役割を担っていく若い人たちに対して、共生社会における芸術の意義とか役割を考える機会を充実させていく、ここも急務ではないかなと思っています。私からは、とりあえず以上です。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

○日比野座長
服部構成員、ありがとうございました。それでは議事次第を進め、関係団体等からのヒアリングに入りたいと思います。では、ヒアリングに関して事務局より説明をお願いします。

○大城(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長補佐)
文化庁・厚生労働省では、第2期基本計画の策定に向けて、令和3年度文化庁委託事業などにより、統括団体、先行モデル団体、当事者団体、支援団体などのご協力をいただき、ヒアリングを実施いたしました。参考資料3は、実施したヒアリングの概要を取りまとめたものです。なお、本日の参考資料3は、前回会議の参考資料3に、一般財団法人全日本ろうあ連盟などのご意見を追加したものです。本日実施いたしますヒアリングとあわせて、今後の検討に向けてご参照いただければと存じます。
本日のヒアリングですが、アール・ブリュット パートナーズ 熊本、特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパン、公益社団法人日本劇団協議会、一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構、認定NPO法人クリエイティブサポートレッツの計5団体にご出席いただいています。ヒアリングでは各団体より、それぞれ8分程度で、各団体における取り組み状況や課題、障害者の文化芸術活動の推進についての今後の方向について、ご説明いただきます。各団体からのご説明につきましては、5分経過しましたら、事務局がベルを1回鳴らします。8分経過しましたらベルを2回鳴らしますので、ご説明を終えていただきますようにお願いします。1分以上超過しましたらベルを3回鳴らしますので、ご協力をお願いいたします。また、各団体からの発表の都度、構成員から団体に対する質疑応答の時間を8分程度設けます。こちらにつきましても、ご質問・ご回答ともに、簡潔にしていただきますようご協力をお願いいたします。なお、質疑ではないご意見につきましては、この後の議事次第の(2)でお願いいたします。

○日比野座長
ありがとうございました。ではそれではまず1団体目、アール・ブリュット パートナーズ熊本から発表をよろしくお願いいたします。

○三浦(アール・ブリュット・パートナーズ 熊本)
はい、私達の説明資料が添付をされていなかったという手違いがございましたので、チャット上での共有になるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。アール・ブリュット パートナーズ熊本の事務局長を務めます、三浦と申します。ヒアリング団体に選んでいただき大変光栄です。私共の、会長の西島のほうから、「私達はここにとどまらず、全ての人に障害のある人々の芸術を届けて、その価値が認められるまで活動をやめない、進んでいく」と、「これだけは皆様にお伝えしてほしい」と申しております。
私達の活動は、平成26年に発足いたしました。平成27年度より「生(き)の芸術アール・ブリュット展覧会」を開催し、毎年10日余りの期間で、国外の方々も含め平均2,000人の来場者を迎えています。そして、熊本県立美術館との共催により、平成29年度からは、県立美術館本館を会場としてできるようになりました。
展覧会は、通年募集による、県内の障害のある作家らの作品をキュレーターが選考し、会場構成のインスタレーションアーティストと日通などの展示業者による展示を行います。この熊本県、熊本市の後援による展覧会連続開催。そして、官民のオファーやコラボによる熊本県立劇場や、熊本地震の後は、震災仮設住宅の集会所「みんなの家」で移動美術館を行ってきました。この移動美術館が、県内津々浦々、約50ヶ所で行なっています。それから地元の新聞社を中心に、これまで44回の新聞報道、これは告知記事だけではなくて、作家のヒューマンストーリーを含む連載などもしていただき、テレビの報道も17回ありましたので、広く県内に浸透してきています。何しろお金がなかったので、周りの資源を使いながらいろんなことを広報してきたという取り組みです。
そして、展覧会のVol.6は、熊本県の文化協会から、美術分野で一箇所の、熊本県芸術文化祭奨励賞を受賞しております。また、まちづくり団体から震災復興のための街中の展示、それから「誰一人取り残さない啓発イベント」で青年会議所等との連携の企画、あと県の人権フェスティバルでの会場ホテルでの展示など、また廃校を使った地域をテーマとした展示やグッズなどでの連携依頼など、毎年新たな繋がりが生まれています。作品、そして作家への共感と、感動が、障害観の変化を生んでいることを約4,300人の感想にそのことが如実に残されています。活動が障害のある人々の日常を支える環境を勇気づけています。障害のある人々が、生きやすい地域に向かう、芸術で繋がる、地域共生社会づくりに今手応えを感じているところです。
私達の会は発足から多様な分野の人々のネットワークで構成しています。参考資料として役員のメンバー表をつけています。障害者の文化芸術活動の価値を高める推進に向けては、この連携は不可欠な要素と認識しています。美術館の連携に関しては、平成28年の熊本地震で、熊本市内で多くの会場が被災して、熊本市内で展覧会を行えなくなったときに、山鹿市の大正時代の酒蔵で展示しました。そのときに熊本県立美術館長が来館されて活動理念と作品の芸術性の高さを認めていただいて、翌年から熊本城内の県立美術館の本館での展示が実現しました。また、県立美術館にはアール・ブリュット提唱者のジャン・デュビュッフェの石版画が多数収蔵されているご縁で、当時の主任学芸員から「熊本の作家さんたちの作品と一緒に展示をして、デュビュッフェに見守ってもらいましょう」「100年後のアール・ブリュット、きっと喜びますよ」というような言葉もいただきました。その後、3代の館長が中心に全面協力をいただいていて、初回はいろんな相談の中でバリアフリーや車いすのアクセス、それから電動車椅子のアクセス等に関しては、作品搬入路も使いながら改善されています。元々、2005年から障害者の無料鑑賞デーを続けておられる県立美術館で、そのエスコートの確かさみたいなものに私達も感動してきたのですけれども、また、「手で見る美術展」、彫刻を手で見る美術展の支援なども行われています。県美、現美ともに、今年からアートショップで、今回の作家のグッズを少し取り扱っていただくことになりました。日比野館長のご就任にもみんなワクワクしています。
私達の会議や総会には行政を初め、当事者家族、福祉、教育、文化、企業、報道機関などの人々が個人、主に個人で参加をして、様々なアイディアと協力で事業運営を行っています。なお、国際交流としては熊本市がJICAのプログラムの連携団体を要請してこられ、熊本とタイの障害者によるアート展を熊本で開催し、翌年、現地からのリクエストによって、私の方で障害者総合支援法のサービス体系と、芸術文化支援活動をバンコクでプレゼンテーションすることになりました。別刷りの添付しています資料で、地域資源の連携ネットワーク型障害者芸術活動支援モデル熊本方式をフロー図でお示ししています。ここに無数のエピソードがあるんですけれども、このままの形で私達は歩いてきています。ただ、私達が連携している団体は、全ての都道府県にある社会資源なので、推進法の、本当に心を打たれる理念と、それからそれを共有すること、あと、各団体が信頼関係を築けば、全ての地域で展開できるものと信じています。
私達の会は、全ての人が参加しやすいアクセサブルであることを主眼としています。また、連携のキーワードとしては、他を否定しないことと、専門性を重視することと、双方に利益となるように活動しています。
アートに特化した福祉施設ではうちも、事務局を預かる私達もそうではないんですけれども、常時介護と医療的ケアを必要とする方々の施設を運営しながらなんですが、実は知的の施設等で芸術活動をしていた方が、さらに脳梗塞を起こされて、身体的にも不自由になられたときに、「最期まで芸術活動支援をしてほしい」という前の支援者からの要請があって、私どもの施設に入居されている方もいらっしゃいます。その人の絵は、Vol.7のポスターに採用されました。脳梗塞を起こしてからは若干筆圧と画風が変わったんですけれども、さらに、面白い作品を残されています。熊本の人々は作品にもそうなんですけど、作家にものすごく共感していただき、生(き)の芸術というのがですね、ありのままに成熟しています。

○日比野座長
すいません。時間が来ておりますので、たくさんあるかと思いますが。熊本からのヒアリングでした。構成員の方々から何かご意見ありましたら、挙手ボタンを押していただいて発言よろしくお願いいたします。私の方から指名いたします。いかがでしょうか。廣川構成員どうぞ。

○廣川構成員
廣川です。今の活動の話を聞いてとても素晴らしい活動、考え方を持っていらっしゃると思いました。ところで、「新聞に掲載された」というお話でしたが、どのように興味を持ってもらうように促したのかといったことがあれば教えてください。

○日比野座長。
はい、三浦さんお願いします。

○三浦(アール・ブリュット パートナーズ 熊本)
会の立ち上げのときから、私達の会の構成員として報道機関の方たちにも入ってきていただいております。元々、一人の山鹿に住む作家さんの支援から、むしろ新聞社の方と私と話し合ってこの会を立ち上げていったような経緯もあり、非常に作家さんに興味を持たれる報道の方が多いです。奥行きがありますし、また社会の障害者観にアプローチできる取り組みというところも、社会的な価値があるということと、純粋に芸術としても素晴らしいと、みんなを励ます分野だ、ということで取り上げていただいていると思います。実際取材をすると、あまりにも作家さんにもその芸術にも奥行きがあるので、ずいぶん紙幅を割いた、私達が想像するよりも紙幅を割いた記事になるということが多いです。メーリングリストにテレビ局の方も新聞社の方も入っておられるので、常に情報をライブでお届けしております。以上です。

○日比野座長
はい、ありがとうございました。より広く報道されることにより、他の障害の当事者の周りの人たちの理解が深まるということが、実際にあると思います。ありがとうございました。
では、時間が来ましたので、次の団体に移りたいと思います。アール・ブリュット・パートナーズ 熊本の三浦さんどうもありがとうございました。これで退出していただいて大丈夫です。

○三浦(アール・ブリュット・パートナーズ 熊本)
ありがとうございました。

○日比野座長
ありがとうございました。では続きまして、特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパンから発表をお願い致します。

○柴崎(エイブル・アート・ジャパン代表理事)
こんにちは、特定非営利活動法人エイブル・アート・ジャパンの柴崎と申します。本日は団体について、それから実績については事前に資料を提出していますので、省略をさせていただき、NPOの様々な活動のうち、大きく二つの事業から見えてきたこと、そして今、最も期待している活動についてお話をさせていただきます。
初めに、厚生労働省による「障害者文化芸術活動普及支援事業」の可能性と課題についてお話させていただきます。平成30年、すなわち2018年の「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」の施行に先駆けて、2014年に「障害者芸術活動支援モデル事業」が始まりました。このモデル事業の4年間では、大きな社会福祉法人が実践する支援センターもあれば、私達のような大変規模の小さいNPOが実践する活動もありましたが、立場も意見も異なる団体同士の中に、障害のある人たちが芸術文化を支えるためには、どんな施策と中間支援が必要なのか、真摯な議論と実践が積み上げられていったと思っています。ただ、国庫補助事業になってから4年、全国には約40件の支援センターができましたが、国の調査では、残念ながら支援センターの存在はまだまだ認知が乏しく、その機能や充実度にはどうも濃淡が出てきている、ということが指摘されています。そこで、前回の有識者会議の資料では、基本計画の改定に向けて施策の弱点、課題が記載されていましたが、その課題に対して支援センターがどのような役割を果たしているか、具体的に宮城県の支援センターの活動を事例にお話しします。
最初の事例は、「文化施設などへのアクセス改善」という視点です。仙台市では2006年からクラシックフェスティバルを実施しています。3日間で80公演、500曲、約4万人が音楽を楽しむイベントですが、この中に障害児者の参加が大変少ないという分析から、今年初めてリラックス・コンサートが企画されました。私達の支援センターに4月、主催者から電話相談があり、開催までのサポートをしました。ここでリラックス・パフォーマンスとは何かを検証し、また、障害児者が文化芸術活動にアクセスをする際、そこに立ちはだかる物理的な、あるいは心理的な壁を想定し、情報の作り方、コンサート会場の作り方、またクラシック鑑賞に立ちはだかる敷居をぐっと下げて、様々な趣向を凝らしました。例えば、途中入場退場可、イヤーマフをつけて参加してもOKなどです。また、仙台市と宮城県の行政が一体となり、市政だよりへの掲載、教育委員会を通じた支援学級や支援学校の全児童生徒へのチラシの配布などを実施しました。その結果、160人の定員の公演に対し、610人もの応募があり、そのうち2割が障害のある人と家族・支援者でした。当日までに、出演者や舞台関係者とも様々な打ち合わせを行い、当日はコロナ禍ではありましたが、100人を超える2回公演を実現し、様々な障害のある人、ご高齢の人、幼児と親などの多世代の、みんなで楽しむコンサートが実現しました。この活動は、国の定めた11の施策のうち、「鑑賞の機会の拡大」、「文化芸術活動を通じた交流の促進」、「相談体制の整備」、「人材の育成」、「情報の収集」、「関係者の連携協力」などの様々な施策が連続した業務になります。これが支援センターの中間支援の一つの事例です。
次に、「文化と福祉のさらなる連携促進」という視点についてお話をさせていただきます。先週9月9日に、宮城県と仙台市の行政の、文化、福祉、特別支援教育、生涯学習と、NPOの中間支援組織などが一同に会する協力委員会が実施されました。これは、行政の縦割りが壁となり、ある障害児のお子さんの家族の声、すなわち「仙台市在住であるにもかかわらず、県立支援学校の生徒であると、仙台市主催のイベントのチラシなどが届かない」という切実な声から発生したものになります。この委員会を通じて、私達は様々な事業の広報活動を、県と市の違いをこえて、また課と課の違いをこえて実施しています。つい先日の委員会のハイライトは、先ほどお話しした「せんくら・リラックス・コンサート」の取り組みでした。実際のコンサートにも複数の委員が見学に来ていましたので、委員会では、コンサート実現までの舞台裏の話を聞いて、活発な意見交換もありました。以上、二つ、宮城県の支援センターの実際の活動の様子になります。
ここで私がお伝えしたいのは、支援センターは様々な資源を繋げていくネットワークハブですが、今、こうした中間支援としての支援センターの機能は、全国一律ではないということです。これを課題として感じています。実際、全国を七つの圏域にわけて、支援センターを支える「広域センター」がありますが、今できてない施策に対しての協議、又はその視点による支援の仕組みこそが必要であって、ここを見直していく必要があるのではないでしょうか。
もう一つ、文化庁による「鑑賞機会の拡大」として私達の法人が取り組んでいる事業から問題意識をお話します。エイブル・アート・ジャパンでは、1997年から、見えない・見えにくい人たちとの活動、2011年から、聞こえない・聞こえにくい人たちとの活動、そして2017年から、知的障害、精神障害のある人たちとの、鑑賞機会の拡大について取り組んできました。ただ、この活動は、意思のあるミュージアムの人たちとの活動に閉じているということから、より多くの団体や地域に波及しようと考え、令和元年度から文化庁の「障害者による芸術文化活動推進事業」に参加しています。昨年の令和3年度からは、「ミュージアム・アクセス・センター設立準備事業」と名づけまして、これまでの障害者芸術文化活動支援センターの中間支援の仕組みや実践知を、このミュージアムアクセス分野における中間支援の仕組み作りに生かそうと、活動を活発化しているところです。
劇場や音楽堂においては、統括団体、例えば公立文化施設協会のような団体があり、全国の組織が様々な研修やガイドブックをもとに取り組みを始めています。一方、ミュージアムの現場では、統括団体やそれに準じる組織というものが、まだまだ脆弱であり、さらなる協働が必要だと思っています。ここにはミュージアム側の問題だけではなく、教育普及・ラーニングという領域に対しての、社会の関心が高まりはじめたのがようやく最近のことであるということも関係していると思います。現在、国立アートリサーチセンターなどが中心となって、ラーニング部門の強化や社会包摂型のプログラムの普及等について議論がスタートしているようなので、こうした方たちとの協働を進めていきたいと思います。
最後に、総じて感じている問題意識です。特に支援センター事業では、都道府県や自治体によって予算の格差が甚だしいです。また、こうした取り組みの事例や情報は、主に関東や近畿に集中していることが多く、もっともっと地方の優れた活動に着目していただきたいと思います。そして、最後に、期待している活動として、文部科学省の「障害者の生涯学習」の活動に参画していることを挙げさせていただきます。人の身近な暮らしのなかに、文化芸術に関わる視点や機会があって、人々が幸せと感じる状況を作るためには、社会教育や生涯学習からの視点・視座が必要だと考えています。私からの発言は以上です。

○日比野座長
柴崎さんありがとうございました。では構成員の方々から何かご質問ありましたらよろしくお願い致します。挙手ボタンを押してください。はい、小川構成員、お願いいたします。

○小川構成員
アートNPOリンクの小川智紀です。ネットワーク構築や相談支援をはじめ中間支援組織、中間支援団体の意義というものは大変大きいものだと考えます。エイブル・アート・ジャパンの皆さんにおいては人的な部分、あるいは資金的な部分であったり、具体的にはどんな支援が今後あれば、これから少しずつでも、この分野、良くなっていくというふうに考えますか。

○柴崎(エイブル・アート・ジャパン)
私達のNPOは全国の支援センターの中では、年間の予算が3000万から多いときで5000万という本当に非常に小さな組織だと思っています。常勤職員が1名から3名という体制の中で、この8年間、支援センターを担ってきました。予算については、都道府県ごとの財源や事情があることは理解できるのです。しかし、全国の支援センターには同じ役割が課されており、一方、財源は地方で本当に格差があり、それが問題だと思っています。ただ、NPOの立場としては、お金がない、人がいないということに甘んじず、今ないものを自分たちでどう作っていくかという様々な工夫も必要で、そうであるからこそ、行政や企業と協働し、助成金等も自分たちで、工夫し獲得しながら実践を進めてきました。こうした草の根からのセンターの運営スタイルは、ぜひとも全国の中にも、もっともっと広げていきたいと思っています。小さな個人が寄り合い、小さくともさまざまなグループが有機的に組み合わさって活動していくという、こうした活動も大切だと考えているからです。従って、支援センターの職員たちの視野においても、この機関は、今ある社会課題に対してどう振る舞えるのかという、福祉の視野と文化芸術に対する視野の両方が必要で、そのための人材育成が必要だと思っています。ちょっと長くなりましたが以上です。

○日比野座長
ありがとうございました。他に構成員の方々からは。柴崎さんと小川構成員からの回答の中で、ただ単なる行いじゃなくって、考え方というものをより深めていき、広めていくという、その活動はとても重要だと思います。柴崎さんありがとうございました。これで退出いただいて大丈夫です。

○柴崎(エイブル・アート・ジャパン)
ありがとうございました。

○日比野座長
では続きまして、公益社団法人日本劇団協議会からの発表、よろしくお願いいたします。

○福島(日本劇団協議会)
日本劇団協議会専務理事の、福島といいます。私ども「やってみようプロジェクト」の活動につきましてはお手元の資料にありますが、障害者芸術と言っても社会包摂という側面が強く、今、社会になかなか参加し難い、障害を持った方々が社会にどう参加して来られるのか、ということを課題にしたワークショップを全国で行っています。文化庁の事業としては2017年度から始めさせていただいておりますが、それ以前には、実は各劇団がそれぞれに、学校現場であるとか地域の障害者施設であるとか等々の現場の中で、様々なワークショップの蓄積を行ってきたと。ただ、それについての評価がなかなかむずかしく、つまり、その証明をですね、どういう社会的効果があったかということについての評価軸がなかなか定まらない、という問題がありましたものですから、日本劇団協議会としては、全国各地でのワークショップの実践に加えて、それを調査研究という形で様々な評価手法を使って、どのような効果があったかということを証明することで、各自治体なり国なりでの、助成がさらに進展するようにという思いで取り組んでいるものです。実のところ2017年度からですから、2020年からはコロナがあったために、人が集まってはいけないとか等々のことがあり、ワークショップを開催するにしてもなかなか困難なところがありました。ただ、このコロナのおかげで、我々もよくわからなかったところで見えてきたのは、リアルに人々が集まって、身体表現、あるいは言語表現も含めて、それを直に感じるというのかな、見たり聞いたり五感を使ってそれをつかみ取る作業が、非常に人間にとっては大切な要素なんだということです。特に、引きこもりの方であるとか、障害を持っている方とか、様々な条件で社会から疎外されている人々にとっては、それらの活動によってまず心が解放されていくこと、それから表現の方法を知ること、そして言葉の重要性を知っていく中で、人との関わりの仕方など方向性が見えてくるという効果が得られたのではないかというふうに考えているところです。
私達としてはこれらの実践の上で、協議会のこの事業で申し上げれば、特に大きかったのは全国各地のNPOなり社会福祉団体、それから障害者施設等の、施設の団体との協働が一番大きな力になったと思います。いま、当事業のお手元にある資料で言えば、兵庫県小野市での外国人の労働者の方々向けの「にほんごであそぼう」というプログラムが、非常にちょっと特徴的なものとして言われておりますが、外国から来て、ある程度日本語がわかっているつもりだったけれども、小野市で使われている播州弁ではほとんど会話がわからないということから、引きこもり状態になっていた外国人の方々に、現地の国際交流協会と地域の文化施設が一緒になって、開かれた場所を作ることで、外国人相互、そして日本人との交流の場が作られてきているということが大きな成果として言われています。これはまだまだ道半ばかなというふうに思っているところです。僕たちが今までやってきた活動で言えば、やればやるほど地域においてもそれから対象においても、対象の幅も、広がりを持ってくると、それぞれに社会的課題がより明確になるのです。目に見える障害、目に見えない障害様々ありますが、より人々が社会の中で発言をしたり、活動をしていくための場所をつくる、その体制を作るために、私達の活動が大きな力を果たしてきたなということは感じていることなので、ぜひそのことを広げていきたいと思っています。
今年について言えば、この事業についての直接的な問題だけではなくて、これを支える人的な資源育成をどうやって作っていくかということが大きな課題としてありましたものですから、各地でのファシリテーターの育成、等々にも力を入れていきたいというのを今年の課題として掲げているところです。とりあえずの現状についてご報告をすればこのようなことになるかと思います。短めでしたけれども、ご質問の方をいただければと思います。

○日比野座長
ありがとうございました。では構成員の方からご意見ありましたら挙手ボタンよろしくお願いいたします。はい、尾上構成員よろしくお願いいたします。

○尾上構成員
DPI日本会議というところの尾上と申します。どうも貴重な報告ありがとうございました。2点質問がありまして、一つがこのワークショップを通じてですね、得られた知見や繋がりが、皆様の作品や公演ということにどういうふうに影響といいますか効果があったかということをお聞かせ願えればというのが1点。2点目が、障害者差別解消法という法律の改正が去年ありまして、2024年までには合理的配慮が民間事業者も含めて義務づけになります。すなわち芸術分野も義務付けになっていくわけですが、そういった合理的配慮に関する受け止めや、備えというようなこと、どんなふうになっているかということを教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○日比野座長
いかがでしょうか。

○福島(日本劇団協議会)
はい、ありがとうございます。第1点目ですがこれらの活動を通じて我々の芸術創造活動にどのような影響を与えているかということで申し上げれば、直接どう効果があったかというのはなかなか申し上げにくいところではあるのですけれども、私達自身が演劇の持っている表現の幅広さであったり、深さであったりということを再認識していることがあるかなと思います。単に言語的な表現ということではなくて、身体的表現であったり、様々な表現領域がそこにはあるということが一つですね。それと、これはだからもう一つの課題になると思うのですが、今ある差別とも関係しますが、今ある障害者との分断であるとか、社会的な隔絶などの課題をどのように克服していくのかということに向き合う作品作りというのも、一方では各劇団によっては進められているように思っています。地域での協働であるとか、繋がりであるとかということをテーマにした作品作りというのはかなり加盟劇団で進行していると思っています。
それから2つ目のご質問はですね、ちょっとこの事業そのものと直接関係はしないというふうに思っているのですが、多分この委員会にも参加されていると思うんですが廣川さんとか様々なTA-Netの方々ともお話し合いをしながらですね、劇場におけるバリアフリーであるとか、それからあるいは教育機関でのバリアフリーをどうやって実現するかということについての努力を、各劇団がそれぞれに個別に今進めているところだと思います。ただ、現状でいくとバリアフリーを進める努力というのは、かなり主宰劇団であるとか、そこに負担がかかってきているというのが事実であって、例えば障害を持った方々を駅まで迎えに行って劇場までご案内するであるとか、様々な努力がされているのですが、それらについての例えばもう少し公共的な行政なりの支援があれば変わるだろうということと、あとは劇場施設について言えば、まずはその公共文化施設等での改善が作られてということが民間の芸術施設文化施設にも影響を与えていくのではないかなというふうに考えているところです。とりあえずのところですが、十分ではないと思いますけど。

○尾上構成員どうもありがとうございました。

○日比野座長
では、時間が来ましたので次の団体に移りたいと思いますが。柴田構成員すいません、挙手されてましたでしょうか。

○柴田構成員
ありがとうございます。日頃から活動を注目しておりまして、ご発表にありました活動に対して感謝申し上げます。劇団協の取り組みというのは、障害というものを幅広に捉えていらっしゃるということが、非常によくわかりました。ご発表の中で自治体、教育委員会からのサポートが必要だということがあり、私も同感ですが、自治体と教育委員会、公的な機関からのサポートについて、もう少し具体的に教えていただけないでしょうか。また、劇場・音楽堂との連携についてはいかがでしょうか。現状と課題のデータ分析のところでも、劇場・音楽堂の取組が非常に低い割合が示されております。第2期基本計画に向けての非常に重たい課題と感じております。いかがでしょうか。

○福島(日本劇団協議会)
第2点の方から申し上げれば、私どもは先ほど申し上げましたようにこの主催ワークショップ事業等々について言えば、地域のNPOであるとか障害者施設との提携がまず第1にありました。そこで、ある実践をしながら、その場に各地の劇場・音楽堂の方々に来ていただいて、そこでもう一つ先を作っていけないかということを今模索しているところです。具体的に言えば、さいたま市の若者自立支援施設でのプログラムでは彩の国さいたま芸術劇場の方に来ていただいて、また、今回小野市で実施する公開ワークショップにも彩の国の方に行っていただいて、一緒に共同作業を進めていく、またそこから全国各地の劇場・音楽堂との提携ができればいいかなと考えているところです。
教育委員会ないしそういうところとどういうサポートがということでいうと、一番大きなことは多分「マッチング」ではないかなという気はするんですね。つまり、各地域には地域の社会的課題がそれぞれあって、先ほどの、例えば外国人労働者であるとか、あるいは引きこもりの問題であったりとか、街が非常に荒廃していっている問題であるとか、様々な課題があると思うのですが、それは行政の方でつかめる話なので、それを芸術団体と、あるいはその地域のNPOなり、あるいは、さっき言った通り法人で組織なり何なりとですね、そこでマッチングしてある場を作っていくということについてのサポートが一番重要じゃないかなと私は考えているところです。

○柴田構成員
ありがとうございます。

○日比野座長
では福島さんありがとうございます。それでは退出していただいて結構です。ありがとうございました。

○福島(日本劇団協議会)
ありがとうございました。

○日比野座長
では続きまして一般社団法人日本障害者舞台芸術協働機構からの発表、よろしくお願いいたします。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
日本障害者舞台芸術協働機構の南部と申します。どうぞよろしくお願いします。私どもの団体では、障害のある人の鑑賞を支援していくサービス、これをデザインすることによって誰もが文化芸術を楽しめる環境の創出をしていくことを目的に活動しています。特に、そのことをデザインしていける人材育成ということを実現できれば、ということを目的に活動しております。
我々の団体で取り組んでいる事業の内容は、大きく4つにわかれています。
一つ目は具体的に「鑑賞支援サービスとは」というようなことを伝えていく研修事業になります。研修事業では基礎的な研修から技術研修に至るまでの、実践に繋がるようなことを目的に、研修を各地で実施させていただいております。
二つ目は、モニター事業になります。このモニター事業は、民間企業等と連携して新しいサービスを普及していくことを目的に実施しております。具体的に申し上げますと、2020年から2021年にかけて全3回に渡って「多言語字幕」を実現していけるタブレット字幕のシステムを民間企業が開発したのですけれども、そのモニターになっていただける劇場や劇団、それから民間プロモート会社さんを対象に募集をかけて、実際に公演等で使用していただくということを実施しました。手を挙げていただいた劇場をいくつかご紹介させていただきますと、知立市文化会館、四日市市文化会館、島根県民会館、穂の国とよはし芸術劇場など。それから関西ですと、ロームシアター京都なんかも手を挙げていただいて、モニター事業にご協力をいただきました。その劇場の声をもとにメーカーの方でフィードバックを集めて、よりよい改善、実践に繋がるようなサービスにブラッシュアップしていくことを間に入ってご協力させていただいたという事業になっております。
三つ目は、公演事業になります。この公演事業は様々な劇場が取り組む公演事業に鑑賞サービスを提供する、または鑑賞サービス付きの事業を主催として実施していくということを実施しております。具体的には、先日、KAAT神奈川芸術劇場が取り組まれた事業なんかにも、字幕サービスを提供させていただきました。
四つ目は、調査研究というとちょっとおこがましいんですけれども、当事者ニーズを集めるというような活動を実施しております。これまで、私どもだけだと、「視覚障害のある若者たちの鑑賞・スポーツの観戦状況とニーズ」というようなことを調査させていただきました。そのほか、公文協や国際障害者交流センター ビッグ・アイ、それからOpen Arts Networkなんかと協力させていただき、調査に関わらせていただきました。大きな調査とは別に、小さな声も拾いたいということで、大阪には北と南に視覚障害の支援学校があり、それから聴覚障害の支援学校があるのですけれども、そういったところに足を運ばせていただいて、具体的に先生や生徒の皆さんの声を聞いてみたり。それから、聴覚障害の当事者の方々のコミュニティとの意見交換であったりとか、座談会レベルなのですけれども、「一体どういうところに困っているのか、どういうふうなニーズがあるのか」ということをお聞かせいただいたりしております。
そのような事業に取り組む中で、個人的な意見にはなってしまうのですけれども、私自身が感じている課題、それから障害者と文化芸術の推進に向けて今後の方向性について意見を申し上げますと、現状フォーマットの改革が必要なのかなと感じております。これは、一つは創作側の意識という部分です。(創作者たちは)障害のある人たちを鑑賞者として想定しているのだろうかというようなところに疑問を感じているのですけれども、この改革というのは必要なのではないかなと(思います)。つまり演出家等は、既存のお客様に対して非常にこだわった照明や音響はつくっていくのですが、字幕や音声ガイドという部分には作品創作の時間的隙間、コスト的な隙間等々、様々な理由でなかなか直接的に関与していくのが難しいというのが現状なのですけれども、ここの現状のフォーマットというものの見直しというのは必要なんじゃないかと(思います)。
それから二つ目は、舞台技術というフォーマットに鑑賞支援サービスというものを含んでいく必要があるのではないかと(思います)。これはどういうことかと申し上げますと、音響や照明という舞台技術がありますが、「これらの目的は一体何なのでしょうか」ということを舞台技術者たちに質問させていただいたときの明確な答えは、それは「鑑賞者の想像を支援する」という目的であることを教えていただいたのですけれども、もしそのことが明確な答えなのであれば、鑑賞支援サービスは、まさに舞台技術ではないでしょうかと私は考えています。つまり、視覚に障害のある人のための音声ガイド、それから聴覚に障害のある人たちの字幕サービスは、障害のある人たちの想像を支援するためにあるのです。ここの、現状フォーマットの改革というものは必要なのではないか(と思います)。ただ現状としては、スケジュール的、スペース的、予算的な余地がないというのが現状なのかなというふうにも感じております。それから劇場の制作スタッフにおきましては、障害のある人たちも参加できる環境作りというものをアートマネジメントとして捉えていく必要があるのではないかなと感じております。
ただ、この人たちを育成していくという部分では、単純にはなかなかいかないのかなとも感じています。それは私自身が都市部の劇場に関わらせていただく一方、地方の劇場にも多く関わらせていただいたのですけれども、やはり地域格差というものはあるのかなと感じたときに、地域によって劇場や舞台芸術事情は様々であるというところが現実として見えてきています。そこで、どういった人材をどのようにして育成していくのかというのは、非常に様々になってしまうのかなと感じています。
それから次はですね、障害者にとっての文化の土壌作りというものも必要になってくるのかなと感じています。つまり「障害者を鑑賞者として育成していく」というような取り組みも必要なのかなと。障害者差別解消法以降、様々なところで「誰もが参加できる環境作り」というものが進んでは行ったんですけれども、彼ら自身が劇場に足を運んだ経験がない、もしくは非常に少ない中で、「字幕がついたから、ぜひチケットを買ってください」というように切り出してもですね、劇場で芸術鑑賞することが自分にとってどのような影響があるのかということを知らない人たちには、まずはそのことを伝え、そして体験していただく機会なんかも必要になってくるのではないかなと感じています。
最後に、感じているところは予算的な課題、問題になります。公演全体に対する予算の援助というものは存在するのかなと思うんですけれども、鑑賞支援サービスを実施していくとなったときに、その部分を補助してくれるような予算というものがあれば、(字幕や音声ガイドといった鑑賞支援サービスを)もう少し導入していくところというのは増えるのではないかな、というふうに感じております。
以上、私どもの団体の活動、それから活動を通じて私自身が感じている課題と今後の方向性について説明させていただきました。ありがとうございます。

○日比野座長
南部さんありがとうございました。構成員の方々からご意見ありましたら挙手ボタンをお願いいたします。では広瀬構成員、お願いいたします。

○広瀬構成員
はい、国立民族学博物館の広瀬です。僕自身、全盲の視覚障害者なので、こういう鑑賞支援が広がっているということを実感していますし、地道な取り組みをしてくださっていることには敬意とともに、感謝をお伝えしたいと思います。
それで非常に幼稚な質問といいますか、素朴な疑問なのですが、団体のお名前の英訳が、Japan Disability Performing Arts Collaborativeになっていて。僕はそんなに英語に強くないですけど、Disability Performing Artsというのは若干英語表現として不自然だと思うんですね。お話を伺う限りでは、Performing Arts Collaborative for the disabledとかPerforming Arts for the Disabledってするのが英語的な表現かなと思うんですが、最後のお話を聞いていて、現状のフォーマットを変えていく、パフォーミングアーツそのものを変えていくという意気込みであえてそのDisability Performing Artsというふうに名乗っておられるのか、その辺をお聞きしたいと思います。それでちょっと個人的な意見も含めますけど、現状フォーマットを変えていくという、もちろんその字幕や音声ガイドというのがその「想像を刺激する」というご指摘はその通りだと思うのですけど、さらにその先を言えば字幕とか音声ガイドがなくても、もしかすると聴覚や視覚障害の人が一緒に楽しめる、そういうパフォーミングアーツが創造されるなら、それは本当の意味でのDisability発のDisability Performing Artsと言えるのかもしれないというふうに個人的には考えます。この辺の英語名称について少しご意見をお聞かせください。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
広瀬さん、ありがとうございます。広瀬さん以上に、想像を絶するぐらい僕が英語をわかっていないのが課題かなとは思うのですけれども、今後ちょっと勉強して、名前というものの意義も見つめ直していきたいなと思います。
もう一つ聞かれていました、最終的な目標としては字幕であったりとか音声ガイドがなくても一緒に鑑賞できるという環境が望まれるのではないかというような意見があったかと思ったのですけれども、そういうものも、もちろん必要だと感じておりますし、そうでないものも、やはり障害のある人たちが、鑑賞できる、理解できるような取り組みというのは、不断に続けていく必要があるのかなと私自身は思っております。

○日比野座長
はい、ありがとうございました。では続きまして、尾上構成員、お願いいたします。

○尾上構成員
DPI尾上です。非常に明確な、クリアな課題提起ありがとうございました。先ほども質問いたしましたが、2024年までに障害者差別解消法の改正法が施行されて、合理的配慮の義務付けということが民間事業者にもなされることになります。
特に劇場とか舞台関係者の方の間でも、合理的配慮ということについての受け止めであったり、あるいはこれから第2期の障害者文化芸術の計画の中では当然この障害者差別解消法改正の実施の時期も含まれますので、劇場やそういったところで、合理的配慮やバリアフリーを進めていくためにどういったことをこの計画に盛り込んだらいいか、もう少しヒントをいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
いろんなところに足を運ばせていただく機会をいただいているのですけども、現状として2016年度に施行された障害者差別解消法を存じないという劇場職員さんもたくさんいらっしゃるというのは現実です。やっていかなければならないと思っている地方職員、スタッフの方はたくさんいらっしゃるんですけれども、情報においても地方格差というのは発生しているのかなと思います。つまり、「何かをやっていかないと駄目だ」という意識はあっても、「何をやっていけばいいんだろう」というようなところの第一歩を踏み出せていないというところがあると思います。その中で、なぜその事が進んでいかないのかというところを考えたときに、一つは法整備があっても、それが地方の条例として明確に反映されていなかったりとか。それからもう一つ、これはちょっと比較になるかどうかわからないんですが、ある時、テレビ番組に字幕を付けていらっしゃる業界の方たちとお話をさせていただいたときに、テレビの字幕普及率は80%以上ということを教えていただいたときに、「どうして劇場はこれほど進まないのか、どうしてそこまでテレビの業界は字幕が進んだんですか」と質問しました。「それは罰則があったからだ」という明確な答えを教えていただきました。罰則があった。つまり「字幕をつけていかないと放送権を取り上げられてしまうので、業界全体としてつけていくという取り組みをしました」というような話があったんですけれども、罰則がいいかどうかは別として、劇場がもう少し積極的に取り組んでいくための起爆剤的なものが何か必要なのかなと感じております。

○尾上構成員
どうも、ありがとうございました。

○日比野座長
ではもう一人廣川構成員、お願いいたします。

○廣川構成員
どうぞ、最初に柴田先生が手を挙げられていたので。

○日比野座長
失礼しました。柴田構成員、お願いいたします。

○柴田構成員
すみません。ありがとうございます。柴田でございます。ご発表ありがとうございました。南部さんにはいろいろ日頃から劇場・音楽堂の支援をしていただいて、本当にありがとうございます、助かっております。現状と課題にもありました通り、劇場・音楽堂で障害者を支援する文化芸術活動が少し停滞しているというか、あまり進んでいないという残念な結果も、承知しておるのですけれども。ただ我が国における劇場・音楽堂はその約8割が鑑賞事業を中心に行っている劇場がほとんどなんですね。つきましては、中小規模館における舞台芸術鑑賞サービスについて、いったい何が支障になっているのか、もう少し具体的に教えていただきたいのです。現場で実践されている南部さんから見てどのような課題がありますか。予算の課題のご指摘は最もですが、それ以外に、何をもってすれば、もっと劇場・音楽堂が、しかも鑑賞事業中心の約8割の中小規模館が、この鑑賞サービスに進んでいくことができるのだろうかということを伺いたいです。よろしくお願いします。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
これも、僕自身が経験した上での回答になってしまいますけれども、一つは舞台技術というフォーマットに組み込んでいく方法かなと感じています。つまり、鑑賞事業や貸館しか行っていない劇場でも、劇場の技術打ち合わせは必ずやっており、そこで音響、照明、舞台というような技術的な打ち合わせをするんですが、そこで劇場側から、鑑賞支援の字幕であったりとか、音声ガイドであったりとか、ヒアリングループであったりとか、あるいは舞台手話というものを提案していける、その一覧(=付帯設備サービス)の中にしっかりと明記されている、つまりスタンダードにしていくというところが必要なのかなと思います。

○日比野座長
はい、ありがとうございました。廣川構成員、お願いいたします。

○廣川構成員
よろしいですか。ありがとうございます、廣川です。来場者を増やすということが課題というお話がありましたけれども、もしかしたら実際にサポートをやっても、来られる人数が少なかったり、ということがあるので、なかなか続けていくのがちょっと厳しい面というのがあるのかもしれませんよね。来場数を増やさなくてはいけないのか、そうではなくて、とにかく1人2人でもとにかく来場される方を尊重してサポートをしていくのか。つまり、コスト的に費用対効果というものも課題になっていると思うのですが、そこに適するかどうか。障害者の観劇する権利ということを考えると、数に関わらず支援をするということが当然だと思うのですけれども、とにかく集客を目的としてサポートをつけたけど実際には来ない、というようなことを現場としてはどのようにお考えでしょうか。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
そうですね、劇場によっては、そこの部分をちょっと勘違いしているところはあると思います。字幕を付けたので、20人も30人も来るのではないか、字幕機を30台用意しようというような意気込みで事業に取り組まれるところもあるんですけれども、(はじめから)そんなたくさんの方が来るというようなことは(なかなか難しいかもしれません)。会館としての費用対効果を求められている部分がゼロではないというところだとは感じております。
一方で、誰も来なかったというのもよろしくないのではないのかなと。そこはどういった課題が潜んでいたのだろうというのは検証していく必要があるのかなと(思います)。つまり、情報の発信の方法なのか、それとも発信した情報の内容に問題があったのか、そういったことを検証しながら、来ていただけるようにするにはどうすればいいのかというのも課題かもわかりません。一方で、「情報が届いたけれども、行かない」というような方たちもたくさんいらっしゃるというのは現状としてあるのかなと(思います)。そのために私が課題で挙げたのが「障害のある人たちも、鑑賞者として育成していく」というような取り組みです。これは私よりも廣川さんの方がよくご存知かもわからないのですけれども、イギリスでは1990年の後半ぐらいから、アーツマーケティングという考え方がスタートして、鑑賞者として育成していこうというような取り組みがあったのですけれども。そういった中に障害のある人たちは漏れていたのではないのかなと考えます。それこそ柴崎さんが過去に公文教のハンドブックで(アーツマーケティングについて)書かれていたのを私も読ませていただいたんですけれども、その当時、その中に障害のある人たちは漏れていたのではないのかなと私は思います。障害のある人たちを含めたアーツマーケティング、鑑賞者としての育成というものが必要なのではないのかなというふうに考えております。

○日比野座長
はい、南部さんありがとうございますはい、鑑賞者の育成というのが大変インパクトのある言葉でした。ありがとうございました。南部さんはこれで退席していただいて結構です。ありがとうございました。

○南部(日本障害者舞台芸術協働機構)
ありがとうございました。

○日比野座長
では、最後のグループになります。認定NPO法人クリエイティブサポートレッツの発表をよろしくお願いいたします。

○久保田翠(クリエイティブサポートレッツ)
認定NPO法人クリエイティブサポートレッツの久保田翠です。聞こえてますでしょうか。ではよろしくお願いいたします。私どもは、資料の方もお渡しさせていただいているのですけども、そもそも2000年から始まりましたアートNPO法人が、現在障害福祉施設を運営しているというような形です。「表現未満、」という事業を2016年から行っている、資料の方にも書いてありますが、誰もが持っている自分を表す方法としての表現を大切にしていこうと・・・。すいません、ちょっと今日は施設から参加させていただいているので、周りがざわざわと音が聞こえるかもしれませんが、これが障害者施設なので、すいませんが、聞こえにくいところご了解ください。障害福祉施設を運営している本当に小さなNPOです。登録利用者さんが70名でスタッフが35名ほどの施設なのですが、そこからいろいろな活動をしていてそれが「表現未満、」という活動にも繋がったのですけど、それが2017年度芸術選奨文部科学大臣新人賞をいただいたりとか、2020年度に静岡県文化奨励賞をいただいたりということで、どちらかというと「新しいアート」というような分野でご評価をいただいているという団体です。2番目の「たけし文化センター」という事業ですけども、実は私、障害のある子供がおりまして、かなり重度の知的障害の息子がいます。元々東京芸大を卒業した人間なのですけども、要するに息子と私が社会から周縁化してしまって、自分たちが生きるために場所をつくらなければいけないと言って始まったのが、当法人です。ですので、私はアートを、「作品づくり」とかそういうことではなくて、自分がそこを拠り所にして生きながらえたという経験があるので、「文化芸術というのはそもそもそういうことができるものだ」というふうに考えています。また、アートというのはアーティストがその役割を担っているのかもしれませんが、「既存の価値観を壊してくれる人」というふうに思っています。ですので、「障害者の人たちが作品を作る」ということではなく、私どもは「彼らの存在自体を社会に繋げることによって社会が変化していくだろう」ということを思っていて、それをアート活動として行っているという団体です。「たけし文化センター」は中心市街地、本当に浜松市の中心市街地に3階建ての建物を建てて、そこを「文化センター」という名前で、障害者福祉施設も入っております。これは全部自前でやっております。重度、ここはかなり重い障害区分が5、6の生活介護の事業所で、そこが地域の文化創造発信拠点を目指すということでやっている事業です。で、3ページ目の「タイムトラベル100時間ツアー」は、一般の方々がここにきて一泊二日過ごすとか、その次の「GO! GO! たけぶん! 」という事業は教育、障害者ではなくて普通の小学生がここに来て、校外学習として行うとか、あとは障害のある方がいろいろ、小中高に出講するというか授業をしに行くみたいなこともやっています。それから「たけしと生活研究会」というのは、ここのビルに、シェアハウスとゲストハウスがありまして、それはグループホームでも入所施設でもなく、完全に個人でやっているんですけど、障害のある方も住んでいるし、それから一般の方も住んでいるし、それから普通の方がゲストハウスとして利用する、というちょっと変わった場所なんですが、それも「生活」というところを考えると、これは障害者の問題だけではないので、私たちは「障害の人たちが生活するってどういうことだろう」、「いろんな人たちと共に住むってどういうことだろう」ということを、実践を通して研究しています。6ページ目にもありますように、「まちづくりを考えたら福祉にたどり着いた」という事業を今行っていて、私どもの障害福祉施設が中心市街地にあるということで、ここの周りの一般の方々とまちづくりについて議論を始めています。「まちづくり」というのはどういうことかというと、「ウェルビーイング」とか「SDGs」というふうに言われていますが、そういう人たちも包括しながら、まちをどうやって作っていったらいいかということを私達側から投げかけてやり始めるとか、また文化庁(障害者等による文化芸術活動推進事業)で応援していただいているように、アートプロジェクトを行うとか、そういうことをやっています。
で、私が三点ほどご提案なのですが、希望なのですけども、この会議が、「新しい芸術を創造する」という視点をぜひ持っていただきたいと思います。それは私が芸術選奨をいただいたということもありますが、要するに「障害者の芸術活動が、新しい芸術を作り上げていくかもしれない」という可能性があると思っています。ですので、そこのところまで、波及した政策であってほしいなと思います。
それから、「福祉を変える」。私も障害福祉施設を12年ほど運営しているんですけども、その中で、やはり福祉施設の様々な問題点というのもあると思います。そこにアートとか文化とか芸術が入り込むことによって、そこを攪拌する、みたいなことが起こると思っているので、もっともっとそういうことをやりながら、障害自体、福祉施設自体を変えていくということです。福祉は障害者の、対象の人たちをケアしてればいいというものではなくて、私どももそうですし、今日ご参加の皆さんもそうですけども、いろんなことができるところだと思っています。だからそういうことを、障害福祉施設および福祉施設の方々が始めたら、本当に社会が変わると思っているので、何かそういうところまで及んでいく政策であってほしいと思っています。
それから、これは私達の切なる望みなんですが、共生社会を実現していくためには、やっぱり「障害者がどういう役割を果たすのだろうか」ということを、もう少し明確にうたっていただきたいなと思っています。いい作品を作るというのは、同じ障害者の中でも、選ばれた人たち、だと思っています。芸術というのは、選ばれた人たちの優れた作品を世に出していくという側面もありますが、やはり人々が、私のように、「もう死にそうになっている人たちが、アートを通して生きながらえていける」というのは、本当に文化芸術の力だと思います。ですから、そういうものを、障害者芸術の中に包括されていますから、そういうことをもっともっと上に上げていくというようなことが大切なのではないかなと。できればですね、福祉関係者およびいろんな方々の「文化度」が、この障害者芸術活動に触れて、上がっていく、それには多分思想とか哲学とかそういったものも、教えていくのかわからないですけど、やっていくということをやらないともったいないなと思っております。ありがとうございました。

○日比野座長
久保田さんありがとうございました。では、構成員の方々から質問、ご意見を、挙手ボタンでお願いいたします。今中構成員お願いいたします。

○今中構成員
アトリエ・インカーブ今中です。ご発言ありがとうございました。その中の「GO! GO! たけぶん! 」探検隊は小学校四年生を招かれてやられているということなんですけども、特にその大学とか高校生とか我々訴求する場面があったんですけどね、小学生はとても大事だと僕は思っていまして、インカーブでも最近、アーティストが出前事業で小学校に行くケースが多いんですよ。久保田さんのところで、小学校4年生の子たちからどういう意見が挙がっていますか。

○久保田(クリエイティブサポートレッツ)
まず、小学校の普通の人たちは重度の知的障害の人たちに会ったことがないです。ですので、まずここの施設に来て、「大人なのに寝転がっている」とか、「大人なのによだれたらしている」とか、「大人なのに仕事しないのか」、そういうふうに聞いてきます。それでいいと思います。学校の先生になるべく、何も言わないというか、あまり仕切らないでいただく、こちらで仕切らせていただくというふうにして、生々しい体験をしていただいています。

○今中構成員
もう忌憚のない意見がたくさん出るんですね。例えば、差別的な用語は、出てくる場合があるんですね。そうしたときに、いかがですか、やはりそのアーティストの方々の精神的な負担とか、そういうのは出ませんか。

○久保田(クリエイティブサポートレッツ)
ないですね。そこまで、うちは軽い方がいないので、要するにそういう差別というか、そういうものも多少ありますが、悪意があるわけではないので、ということと、それから、それを怖がっていたら何もできない。そこが、やっぱり文化芸術、アートに起因している要因だと思うんですけど、とにかく良いことも悪いこともあります。だけどそれを含めて私達はとにかく「彼らの姿を伝えたい」と思っているので、そこはチャレンジしていくしか無いと思っています。

○日比野座長
ありがとうございました。吉野構成員お願いいたします。

○吉野構成員
愛知大学の吉野です。とても貴重な発表ありがとうございました。最後に紹介されていたオン・ライン・クロスロード、私も伺わせていただいて、とても開かれた場になっていたし、良い意味で混沌とした場になっていて、とってもいろんな可能性を感じました。「まちづくりを考えたら福祉にたどり着いた」でやってみた。これが確か1回目ですよね。1回目をやってみられて、次に繋がる、どんな可能性や反応といったものを感じられているのかということを、もう少し伺いたいなと思います。それを伺うことが、多分この会議でこれから先、新しい方針を打ち立てていくときにも何らかヒントになるのでは、と思うんですね。あと、それと関連してもう一つ、「障害福祉と文化」ということだけではなく、その地域の外国籍の方のことにも触れていろいろされていたかと思うので、そんなこともどんなふうに繋げていらっしゃるのかな、というのも、さっき別の団体の話でもそういった広がりのある社会包摂の話が出ていたと思うので、そういったこととも私たちの方で関連付けていく、ヒントになるんじゃないかと思うので、教えていただけたらと思います。

○久保田(クリエイティブサポートレッツ)
ありがとうございます。中心市街地に20年間塩漬けにされていたみたいな、1,400坪の空き地が街中のど真ん中にありまして、そこが20年間ほぼ開かない状態になっていたんですけど、昨年度、文化庁のご支援をいただいて、それを開けて、何をやったかというと、ひたすら、障害の人たちが遊びに行ける場所を作ったというところなんですね。施設が歩いて5分のところにありますから、まあ1週間ぐらい、そこにとにかく滞在する、みたいなことをやりました。アーティストももちろん入っていただいていろいろやるんですけど、要するに、私達は一応「地権者」なんですね、だから、まちに対して結構物を言えるということと、それから、やっぱりコロナを迎えて、街の様相がだいぶ変わってきたものですから、その中でいろいろな方々が、まちづくりに対して指針をなくしている、今、産業だけでどうにかなるということはないってわかってきているので、そうした中でどうしていったらいいだろうかというのを皆さんが考え始めた。で、その中で障害の人たちがここで営み、また街に出てきて、ただ、のんびり、のんべんだらりといるだけで、何か場を作っている、みたいなことがやっぱりすごく衝撃的だった。価値観や、障害に対する、人の見方も変わったし、それと同時に街の見方も変わったということがありました。なので、少しずつ少しずつ街が変わり始めたかもしれない。1年目なのでまだわかりませんけど、今年度も一応やらせていただきます。そうやって、福祉施設ができることは結構あるんじゃないか、福祉施設と言うかアートができることというのは相当あるなというのを感じていて、福祉施設ってありがたいことに、場所を持てる、場所があるということと、それからスタッフがいる、利用者がいる。これはすごく大きいことですね。これがあるからこそ、街の人も信用してくれる。今まで既存の福祉施設だと、何かこう、ずっとそこで作業しているみたいなイメージがあるんだけど、私達はどんどん街に出てしまって、「皆さんと仲良くなりたいんです」というふうにどんどんむしろ積極的に知り合いを作ろうとしているというところで、「障害者はそういうことしたいんだ」みたいなこととか「そういう人たちも包括するってどういうことなんだろうか」ということを考えてくださっている。浜松は外国籍の方も多くいらっしゃるので、そういった意味では「共生社会」というとこですね、障害者だけが共生社会ではないので、いろんな人たちがいるという場を作るのに一番、障害の人たちから基準に作り始めると、誰でも入れる場所になるということなので、今、外国籍の方々そうたくさんメニューないですけど、一緒にやったりもしています。

○吉野構成員
ありがとうございます。

○日比野座長
はい、では小川構成員お願いいたします。

○小川構成員
時間がないので取り下げます。

○日比野座長
では四元構成員、お願いいたします。

○四元構成員
手短に質問させていただきます。大変臨場感のあるお話で、共感しながら伺いました。ありがとうございました。先ほどの発表の中で、「共生社会の実現に向けた、障害のある方の果たす役割」というお話があったかと思いますが、そこについてもう少し詳しくお話を聞きたいなと思いました。よろしくお願いします。

○久保田(クリエイティブサポートレッツ)
共生社会を望んでいるのは私達です。つまり、私達はどちらかというと排除されちゃう側なんですよね。常にやっぱり何だかんだ言ってもまだ差別はありますし、あっという間に排除されます。だからそれを、排除されない、自分たちが幸せに生きるためには、共生社会って絶対必要なんですよ。だから、どうやったらそれが作れるかというふうに考えると、まず自分たちの身をさらして、要するに色んな人たちにまず知ってもらうというところからまず始まり、一緒に何かをやるってことを始めない限り、いっこうに…。時代が変われば、あっという間に吹き飛ばされるというのはわかっているので、そういった意味で「共生社会は、障害者から」という部分もありますし、あとはですね、今、障害者だけじゃないと思います。困っている人って相当います。うちは精神障害の方も実は来ているので、そういう方々もたくさんいます。そういう困りごとを抱えている人は障害者だけではなくたくさんいらっしゃるんだから、「文化芸術がその人たちのために働かなくて何なんだ」ということをすごく思います。そういう人たちも包括できるから文化芸術は素晴らしいのですよね。そういう施策というかそういうことを「障害者文化芸術活動だからそれは関係ない」じゃなくて、そういうことを包括しながら芸術活動をやっていく。一つ言わせていただければ、これは障害者芸術の芸術活動だけの問題ではなく、芸術全般の問題だとは思いますけど。そういうところです。

○日比野座長
ありがとうございました。障害者文化芸術だけに限らず、芸術全般の大きな基点になる考え方、ご意見だと感じました。久保田さんの思想哲学をも踏まえたような提案ができる、そんなものに我々のこの委員会にしていきたいと思います。久保田さん、施設の中から、文化施設からの中継ありがとうございました。これで退席していただいて大丈夫です。ありがとうございました。
本日のヒアリング5団体が以上になります。このあと12時までの時間で、皆さんの意見交換をしていきたいと思います。では最後の久保田さんの意見の中にあった、この委員会の中でどのような施策を作っていく、対応していくのか、広義にわたるような話ができればなとは思いますが、構成員の方々からまだご意見言われてない方から中心に、挙手していただければ、指名していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
では先程取り下げてしまった小川構成員よろしくお願いします。

○小川構成員
ありがとうございます。アートNPOリンク小川です。ヒアリングでお話いただいた団体の皆さんの意見、大変貴重なものでした。そのうえで2点ほど意見申し上げます。
まず、「様々な団体が意見を出しながら計画を進めていく」というこの、進捗の共有方法は大変重要なものだと思います。私達の障害者文化芸術活動推進有識者会議というのは、今年2022年に再始動するまで4年間会議が開かれなかった時期がありました。コロナ禍による社会変動であったり、障害者の情報アクセス法が成立したり、パラリンピックの開催であったりと、大きな出来事がありましたが、時宜にかなった計画の進捗確認が、これまで十分にできなかったきらいがあります。今回の計画ができた後もせめて、1年に一度は、有識者会議などで進捗のモニタリングができれば良いと考えます。
もう一点です。先般、国連の障害者権利委員会は、障害者権利条約対日審査を行って、日本国政府に勧告を出しました。障害者の芸術文化活動に関する法制化は、肯定的な評価がありました。その一方で、分離教育の中止なども指摘しています。私もインペアメント文化を大切にしつつ、インクルーシブ教育、共生社会の推進というものを願っています。その上で考えますと、私達の計画の検討と並行する形で、文化庁の文化審議会文化政策部会は、文化芸術推進基本計画の第2期の案を作っているところです。これは「健常者版」といえるかもしれません。今すぐではありませんが、5年先、あるいはもう少し先、将来的な統合を見据えた連携が必要だと考えます。先日まで、文化芸術推進基本計画改定に向けた意見募集が広く一般に対して行われていました。この中には私達の計画作りに役立つ意見も含まれていると思われます。まず文化庁の皆さんには、私達の会議にも十分な情報提供をお願いしたいと考えます。以上です。

○日比野座長
はい、ありがとうございました。他に構成員の方々、長津構成員お願いいたします。

○長津構成員
九州大学の長津です。ヒアリングをお聞きして三つ思ったことと、一つ、事務局の皆さんにお伺いしたいと思うことがありまして、発言させていただきます。
質問については、先ほどの小川さんのお話と重なるんですけれども、本日5団体のヒアリングということで、ご準備いただいて大変刺激をいただいたのですけども、この5団体というのを、どういった趣旨で選ばれたのかということを、ご説明いただければというふうに思います。個人的には退席なさらず、最後のディスカッションのときにも残っていただくと、より良かったんじゃないかなというふうにも思っております。
あと、ヒアリングを通じて感じたこととしましては3点ございまして、一つは打ち上げ花火的なイベントも大事ですけれども、仕組みを作っていくことの大切さを感じました。文化施設であったりとか、厚労省の支援センターのような中間支援のあり方であるとか、様々なお話の中から、人材育成の重要性が語られました。また、鑑賞サポートであるとか、こういった分野で活動していくための予算の仕組み作りということの示唆も大きかったと思います。そういった仕組みについて、積極的に提案していく計画にしていかねばというふうに思ったところです。
二つ目が、障害のある人以外の社会包摂的な取り組みへの領域横断性です。これは第1期の基本計画のときにも議論がなされていたよう思うのですが、外国の方ですとか、ひきこもりの方、不登校の方など様々な社会的課題に対して、この「障害のある人の文化芸術活動」を支援していく上では、既に支援がなされているところだと思います。現実、私も関わらせていただいております、文化庁の委託事業の審査に当たっても、採択されている団体のうちのいくつかは、障害のある人を主な対象とした事業ではなく、広く共生社会に資するものになっていますし、公募要項の上でもそのように位置付けられていたと思います。このような、障害のある人以外の社会包摂的な取り組みに対してこの計画の中でどう取り扱っていくか、また今後どのようにこうした取り組みの基盤となるようなものをつくっていくことができるかということは検討していくべきなのじゃないかなと思いました。
三つ目は、先ほど広瀬先生がおっしゃったDisability発のDisability Artという言葉が非常に私は印象に残りました。また、それは久保田さんがおっしゃった「新しい芸術の創造」ということと近いかなと思うんですけども、障害のある人が関わることで、どのように新しい文化芸術活動が生まれていくのか、そこにある価値というものはどういうものなのかということをもっと議論をしていって、そこも計画に盛り込んでいくような、そういう視点があるといいのかなというふうに思いました。以上です。もし、先ほどの質問にご回答いただけるようでしたらお願いいたします。

○日比野座長
長津構成員ありがとうございました。1点目の、5団体を選んだことについては事務局の方でお願いいたします。

○山村(文化庁地域文化創生本部事務局総括・政策研究グループリーダー)
今回のヒアリング団体を選ばせていただいた理由でございますが、前回の会議でも資料として、第1期計画期間における課題や現状の取組状況をお示しいたしました。その中で、文化施設の取り組みや、支援センターの取り組みについて課題が示されておりますし、交流活動、人材育成、普及啓発といった、いくつかのキーワードが出ていました。前回会議で皆様からいただいたご意見なども踏まえて、そのようなキーワードについて語っていただける方、かつ美術館・博物館や、劇場・音楽堂などのバランスも考えて、なるべく幅広い視点でこれらのテーマについてお話しいただける方ということで選ばせていただいたところです。

○日比野座長
ありがとうございました。では他の構成員の方々からご意見ありましたら。津田構成員お願いいたします。

○津田構成員
はい、津田と申します。よろしくお願いいたします。今日の五つの報告、すごく刺激になりました。全体を通してですね、やはり共生社会とか社会的包摂とか、そういった言葉が出てきていることが、とても印象に残っています。障害のある方たちが文化芸術の領域から排除されてきたということをどう克服していくか、というような意識が共通して働いているかというふうに思います。問題は、この共生社会を作っていく、あるいは社会的包摂を支援していくための文化芸術活動の促進というのは、どういうふうな形があり得るのか、ということかと思うんですけども、最後のレッツさんの、ケアとアートが合わさることによって変革を目指すというような話をされていて、そこら辺にヒントがあるのかなというふうにも思ったりもしました。つまり、「ケア」と「アート」ってそれぞれの枠組みを持っていたものを、連携することによってその枠組みを変えていくというような力があるのではないかなというようなことだというふうに思いました。これは、文部科学省の学びの方、生涯学習の方についても言えることだと思うんですけども、そういういわゆる縦割りの中で、別々にやられていたことが一緒になって目指していくことによって、何か内部的な変化が起こっていくことが期待できるんじゃないか、そういう方向で、共生社会とか社会的包摂というものが、実現していくんじゃないかなということを感じました。この連携というのも、合理的にテリトリーも守りながらやっていくのではなくて、それぞれ内部的な変化を起こしていくことを目指すような枠組みができないかな、ということです。それを考えていたときに、オーストラリアの事例でいうと、進捗がですね、障害のある方たちがいかに包摂されていくかということが、数値化されて表現されるような報告書が出ているのはご存知の方も多いと思います。日本の文化庁が出している調査研究の報告書の例を見せていただくと、「社会的包摂」とか「共生社会」という言葉がほぼ出てこないような状況であります。文化庁のメインストリームの政策の変化ということも進めていかないといけないのじゃないかという、その辺の関係ですよね。この辺、僕自身も勉強不足のところがあるんですけども、意識しなくちゃいけないところかなというふうに思いました。とりあえず以上です。

○日比野座長
ありがとうございました。では続きまして広瀬構成員お願いいたします。

○広瀬構成員
民族学博物館、広瀬です。五つのお話を聞かせてもらって、個人的にはやはり一番最後の久保田さんのお話がすごく印象に残りまして、質問に答える中で、無意識の中で「私達」という言葉を使われていて、「この人は当事者なんだな」というふうに改めて確認しました。それに引き付けて申し上げると、非常にやっぱり五つの団体は先進的だし、斬新な試みをしていると思うんですけど、やっぱりお話を聞いていると、障害当事者がどれだけその企画に、主体的に積極的に参画しているのか、という部分が気になりました。おそらく、この会議の委員の方は否定されると思うんですけど、やっぱりこう、ややもすると支援する側と支援される側、障害者と健常者、そして実例を挙げて恐縮ですけど、熊本の方の発表なんかも悪気なくというか無意識の内なんでしょうけど、その「アール・ブリュットを全ての人に見せる」って、だから「見せる側とその対象者」みたいな、そういう構図がまだやっぱりあるのかなと。やっぱりそういう「被支援」「支援」という枠を打ち破っていくというのがこの障害者芸術推進の最終目標だと思います。誤解されないように言うと、nothing about us without usはその通りなんだけど、当事者じゃないとできないとか当事者が関わっていないからこのプロジェクトは駄目なんだってことではなくて、やっぱり如何に久保田さんのような当事者マインドを持った人が関わるか、ということが大切なんだと思います。
それでこの会議で僕はずっと多分同じことを言い続けると思うんですけど、冒頭に服部先生の方からその人材育成の話があって、僕もやっぱり自分がこう関わる部分として一番関心があるのは、人材育成で、もちろん施設の現場とかで実践的に人材育成されるというのもありますけど、やはり我々博物館で働く立場からすると、学芸員養成というのがやっぱりすごく気になる部分で、服部先生がご指摘したように、こういうアクセシビリティとかその障害者芸術に関する授業というのをきちんとその学芸員課程に位置づけるということと、もう一つ僕の立場から言うと、障害当事者がいかにその学芸員資格を取れるか。現状、もちろん欠格条項というのがなくなって、視覚障害とか聴覚障害の人も制度的にその学芸員資格は履修できるんですけど、実際に僕の周りでも学芸員資格を履修したけど実習の受け入れ先がないと、博物館美術館は忙しくてなかなかその重度障害者の実習を受け入れる場面がないと言って、その資格取得を断念するなんて話がまだありますので、やはりその障害当事者が学芸員資格をきちんと取れるような体制作りということも、考えていくということが大事だと思います。
あと、余談というかほとんど関係ない話になりますが、熊本の方の発表の中で、「障害者対象の無料観覧日」という話がちらっと出ていて、僕は常々これが気になっていて、これは「鑑賞機会」ということとも関わることですけど、多くの博物館、うちの民博もそうですけど、「障害者割引、介助者割引」というのが当たり前にされていて、うちの場合は障害者手帳があるとその本人と介助者が無料になるわけです。僕も当事者ですから正直「無料で入れたらラッキー」みたいなところはあるんですけど、冷静に考えると、これだけアクセシビリティに対する配慮がなされ、鑑賞機会を拡充する取り組みがされているのに、一般の健常者がお金を払って入るところが、障害者は無料、あるいは半額というのは、やっぱりある意味半人前扱いという部分があって、こういうところもですね、「きちんとした設備配慮をしているから、障害者も健常者と同じお金を取るんだ」とか、あるいは半額とか無料ってことにこだわらずに、うちが現状やっているサービスは健常者の4分の3ぐらいは楽しんでいただけるだけのものを整えていますから4分の3の入館料をいただきますとかですね、何かそういう意識が、障害者だと無料だ、半額だとかという、機械的に決めるんじゃなくて、もう少し内容に即して。究極の理想はさっき申し上げたように「障害者割引なんかない」ということを目指していくというのが、鑑賞機会の拡充の最終ゴールなんじゃないかなと思います。以上です。

○日比野座長
ありがとうございました。では服部構成員お願いいたします。

○服部構成員
短くお話したいと思います。先進的な団体の大変興味深い事例をお聞かせいただいて刺激になりました。ありがとうございました。ただ、いくつかの団体さんがおっしゃったような障害のある方の作品を通じて「新しい芸術の可能性」ということについて、その場合の「古い芸術」って何なんだろうか、何を想定しておられるのかなというところが気になります。今や、社会の課題とどう向き合うかというのは現代アートの非常に中心的な課題で、多くのアーティストが社会問題とどう向き合っていくかということを考えていますし、LGBTの問題なんかも非常に主要な問題になっています。その中で例えば、アール・ブリュットという言葉について、デュビュッフェの作品と同時に展示するというような話がありましたけれども、デュビュッフェは70年前の人で、その作品をもって新しい芸術というふうなことはやっぱり言えないわけですよね。どうしてもそのような古いものを想定してしまうと、額縁の中とか、台座の上とかに障害のある人の表現を閉じ込めてしまう、場合によってはあるいは舞台の上に、障害のある人の表現活動を閉じ込めてしまうところがあって、もうちょっと、現代の表現の多様性というところを、全体として見ていく必要があるのかなということを今日の話を聞きながら思いました。以上です。

○日比野座長
それでは続きまして吉野構成員お願いいたします。

○吉野構成員
愛知大学の吉野です。先ほど長津先生が、人材育成や中間支援の、仕組み作りがこれから大事なんじゃないかっておっしゃっていたことと、それから小川構成員からも出ていた、文化芸術基本法の方も今同じようなタイミングで次の基本方針を作っていく会議が進められているようなので、そちらの情報共有もあった方がいいんじゃないかという、この両方をお聞きして思ったことです。いま愛知県の文化芸術振興の条例の次の方針を作る会議にも委員で出ているのですが、文化芸術基本法と、こちらの私達が関わっている法律とがいま別々に会議が進められているけれども、地方自治体の場合は、文化芸術全般と、障害のある方や共生に関する文化芸術、のように別々に条例ができているのではなく、県や市の文化条例の中にその部分も含められて議論されていることがまだ多いと思うんですね。なので、私達も情報共有をしながらこの方針を作っていくというのは大事なんじゃないかなと、実際に地方自治体の方でも関わっていてまず思ったところです。
同時に、やはり、なるべく具体的な方針をこれから打ち立てていかないと、ここまでいろいろ頑張ってきている人たちを後押ししていく、先ほどの、例えば人材育成とか中間支援の仕組み作りとか、そういったものを後押ししていくのに、ちょっと弱い。第1期よりも2期の方が、より具体的な施策というか方針を作っていく必要があると思います。先ほど南部さんが言われていたような、「テレビの字幕は罰則があったからかなり広がった」という話がありましたけど、罰則がいいかどうかは別としてですが、やはり具体的な後押しになるような方針を作っていかないといけない。各自治体の中で内部の理解や議会の理解を得て予算を承認させることを頑張ろうとする人たちの後押しに、ぼんやりとした方針だと繋がらないので、そこ意識した形で作れるといいと思いました。
同時にまた各地方自治体で文化条例を整備したり、もしくはそれをもとにいろいろな制度を組んでいこうとするときに、その場に当事者の方が決定権のある立場で関わっていけるようにすること、それも今回の方針の中で、できるだけ具体的にしていけるといいなというふうに思いました。

○日比野座長
ありがとうございました。岡部構成員お願いいたします。

○岡部構成員
一般財団法人たんぽぽの家の岡部です。本日、いろんなご意見を聞きながら、またこの会議に出るたびに私自身も考えなければいけないことがたくさんあると思いました。まず一つ目はこの会議、議論自体が、全方向的に議論をしていくべきなのかというのが、少し確認をしたい部分ではあります。今日、聞いた中でも、基本的に芸術的価値についての議論や革新性の話もあれば、柴崎さんがおっしゃっていたように、まだ、それぞれの地域でできていないこと、マイナスなものをゼロにしていくという議論、あるいは1か2あるものをさらに新しくというもので、かなり幅広い議論が必要になります。ただ、必要だと思いながら、その先をどう我々が議論していくべきなのか、それぞれの分野や課題に対し、持っている専門性をより集めて意見を出していくべきなのか、あるいはこのまま全方向的にやっていく方が意味があるのかというのが、私自身もあまり考えられてはいません。
もう一つは障害のある人たちの社会的な情勢も変わってきていると思うことがありまして、共有したいと思います。ちょうど1週間前に毎日新聞の朝刊で、割と大きく出ていたんですが、「障害者大量退職時代」という記事ですね。70年代80年代に企業に一般就労した障害のある人たちがどんどん退職をしていく時代になっている。記事自体は、企業側が障害者の法定雇用率の達成という意味で困っているという話ではあったんですが、この記事の裏には、大量に退職して、またそれぞれの次の人生を生きていく障害のある人たちの姿があるわけです。その人たちが残りの人生をどう豊かに生きていくかという視点で、そこに芸術文化は何ができるかということは、考えていかなければいけないことだと思います。私自身が障害者福祉施設に近い立場におり、障害のある人たちと一緒に居るということもあるのですが、障害、健常の垣根をこえて、高齢化あるいは重度化の中で、地域の中で、あるいは生活の中で表現を楽しむのを支えるか、これはニーズとしても増えていくのではないかと思っています。そういった意味で本日、南部さんがおっしゃった「マッチング」というのは一つのキーワードになると思っておりまして、既に様々な活動を取り組んでいる地域の方々がいらっしゃると思うんですが、どうそれらをマッチングしていくか。マッチングすること自体が創造的、あるいは革新的なことになることもあると思います。その辺り、私自身が見えてない部分を含めて議論していきたい、と思いました。ありがとうございました。

○日比野座長
岡部構成員ありがとうございました。ではちょっと時間が迫ってまいりましたが、保坂構成員、久保構成員の2名のご意見をいただいて一度締めたいと思いますので、ではまず保坂構成員よろしくお願いいたします。

○保坂構成員
後日意見を送ります。

○日比野座長
では保坂構成員のご意見は後日またテキストでいただくということで進めさせていただきます。では久保構成員お願いいたします。

○久保構成員
ありがとうございます。最後の久保田さんのお話、すごく、私、そうだなと思って共感を覚えました。障害者の文化芸術が、共生社会の推進役になるのではないかということもおっしゃっていたかなというふうに思います。国連の障害者の権利条約の先日ありました審査ですけれども、障害者の病院とか入所施設からの地域移行に対する、その地域の共生社会ですね、地域で生きていくための共生社会への予算配分を見直しなさい、みたいなことも言われていたかなというふうに思っていますので、そんなことを考えると、私達、今まで生涯学習だとか共生社会だとか、障害者の文化芸術だとか、いま流行りと言ったら変ですけれども、SDGsとかいろんなことがそれぞれのところでやっていますけれども、それを繋げて一緒にやっていく考え方が必要かなと思いました。具体的に、どうやっていけば、一緒に繋がってやっていけるのかということも含めてですね、まだまだ障害者文化芸術のことも浸透していないことがありますので、それをどう繋げて、そして皆さんに知っていただくことがまず大事ですし、地域を変えていくという力にそこからなっていくのだろうなというふうに、今日、皆さんのお話を聞いて感じたところでありますので、何か私達は障害者団体でございますので、障害者団体で一緒にできることがあればというふうに思っております。どうぞよろしくお願いします。

○日比野座長
ありがとうございました。では本日の皆さんのご意見などを踏まえまして、また次に繋げていきたいと思います。特に岡部構成員の方からありました、どの方向で進めていくのか、何かもうちょっと事務局の方と整理しまして進めていきたいと思います。いずれにしましてもヒアリングそして構成員の方々から貴重なご意見、どれも一つずつとても意義のあるご意見をいただきまして、実のある時間が過ごせていると思っております。ありがとうございました。では議事次第2はこれで終了いたします。
続きまして議題「その他」について、事務局の方からよろしくお願いいたします。

○大城(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長補佐)
1点お詫びでございます。冒頭に発表いただいたアール・ブリュット パートナーズ 熊本の資料でございますが、手違いで予定していた資料と異なるものになっておりました。後ほど、有識者の皆様には改めて資料を送付させていただくとともに、あわせて文化庁・厚労省のホームページの掲載資料を差し替えさせていただきます。
次に、次回の日程でございますが、第6回の有識者会議につきましては、既にご案内させていただきました通り、10月27日木曜日10時からオンラインにて開催する予定です。以上です。

○日比野座長
はい、ありがとうございました。以上で議事次第は終了いたします。では進行を事務局の方にお戻しいたします。

○大城(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室長補佐)
日比野座長、本日は、円滑な進行をいただき、また、構成員の皆様には貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。

○日比野座長
どうもお疲れさまでした。

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