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2018年10月23日 第2回障害者文化芸術活動推進有識者会議

障害保健福祉部企画課自立支援振興室

○日時

平成30年10月23日(火) 13:00~16:00

 

○場所

TKPガーデンシティPREMIUM神保町プレミアムガーデン

 

○議題

(1)新構成員の自己紹介およびご意見等
(2)関係団体からのヒアリング
(3)その他



 

○議事 

 

○青柴調査役 若干定刻から時間は過ぎましたけれども、ただいまから、第2回「障害者文化芸術活動推進有識者会議」を開催いたしたいと思います。
事務局の文化庁地域文化創生本部の青柴と申します。本日は、よろしくお願いいたします。申しわけございませんが、座って失礼させていただきます。
構成員の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日も前回と同様、東京と京都をテレビ会議でつなぎまして、構成員の方々につきましても、双方の会場から御参加いただいております。
なお、本日の出欠についてですけれども、保坂構成員、岡部委員から欠席の旨の御連絡をいただいております。なお、出席者の皆様につきましては、席上に配付しております配席図のほうで御確認いただきますよう、お願いいたします。
最初に、事務連絡といたしまして、若干組織改編と要綱改正について御報告させていただきたいと思います。
まず、10月1日付で新・文化庁に向けた組織改編が行われまして、本会議の文化庁側の事務局が、芸術文化課から京都にございます文化庁地域文化創生本部のほうへ変更となりました。
これに伴いまして人事異動がありまして、藤原にかわりまして、10月1日付で文化庁の審議官に就任いたしました杉浦が担当させていただくことになっております。なお、杉浦につきましては、本日、まことに申しわけないのですけれども、公務により途中で退席させていただきますことを御了承のほどよろしくお願いいたします。
次に、組織改編に伴いまして、障害者文化芸術活動推進会議、いわゆる関係省庁連絡会議、あとは障害者文化芸術活動推進有識者会議、障害者による文化芸術活動の推進に関する国の基本計画案作成のためのワーキンググループの各設置要綱が修正されまして、また、10月16日付で障害者文化芸術活動推進会議の申し合わせのうち、文部科学省の構成員が変更となっております。これらにつきましては、後ほど確認させていただきますお手元の資料1から3になっていますので、後ほど御確認のほどをよろしくお願いいたします。
また、本有識者会議につきましては、新たに川崎市市民文化局オリンピック・パラリンピック推進室の原様に構成員に御就任いただいておりますので、御報告いたします。原様につきましては、後ほど自己紹介をお願いしたいと考えております。
では、若干前後になりましたけれども、議事に先立ちまして、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元の資料をごらんください。
まず、上から配席図、続きまして、出席者名簿、議事次第、資料、参考資料1から3、机上配付のみと書かれました資料及び今回の各ヒアリング団体様からいただいている資料という形になっております。
以上、お手元にございますでしょうか。もし不足がございましたら、挙手いただきましたら、事務局のほうから不足分をお手元に持っていかせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
なお、本日の参加いただいておりますヒアリング団体様につきましても、前回の会議でお諮りしました各団体様に加えまして、文部科学省設置法の一部改正により「芸術に関する教育事務」が文部科学省から文化庁に移管されまして、教育現場における芸術教育を文化庁が担うことになったことを勘案しまして、東京都教育庁様に新たにお願いしておるところでございます。こちらにつきましてもよろしくお願いいたします。
では、マスコミの方がいらっしゃるかどうかはわからないのですけれども、いらっしゃいましたら、カメラ撮影はここまでとなっております。恐れ入りますけれども、カメラ撮影のみの方はここで御退室いただきます。書いていただくことには全然問題ありませんので、カメラのみ退室いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 
 
○本田上席調査役 恐れ入ります。東京会場からですが、本日、手話通訳の方がおいでになっていますので、ぜひ少しゆっくり目に、大きなはっきりとしたお声でお願いできたらと思っておりますので、会場の皆様もどうぞ御協力をお願いいたします。
 
 
○青柴調査役 申しわけございません。もう少しゆっくり話させていただきますので、よろしくお願いいたします。すみません。
では、ここからの議事運営につきましては、座長である本郷先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
 
○本郷座長 それでは、議事次第に沿って進めさせていただきます。
まず、新たに構成員に御就任いただいた原構成員に、自己紹介及び御意見を伺いたいと思います。原構成員、よろしくお願いいたします。
 
 
○原構成員 皆さん、こんにちは。ただいま御紹介をいただきました、川崎市のオリンピック・パラリンピック推進室の原と申します。今回から、こうした会議に参加させていただくことを大変光栄に思っている次第でございます。
川崎市の取り組みという前に、私の自己紹介ということで、前職は福祉事務所長をやらせていただきました。その前に、川崎市の市民ミュージアムという美術館・博物館の館長を3年ほどやらせていただいていますので、文化芸術には少し携わった経験があるということでございます。
川崎市としましては、本日の配付資料の中に「かわさきパラムーブメント第2期推進ビジョン」というA4の冊子がございます。東京2020オリンピック・パラリンピックを契機に、誰もが生き生きと暮らしやすいまちづくりをするということで、今回、第2期ビジョンで9つのレガシーを形成させていただいておりますけれども、20ページにはレガシーの1つとして文化芸術にかかわるレガシーを掲載しておりまして、目指す状態という、山で例えれば頂をここに置きたいということで、ここに向けて今、2合目、3合目をどのようにしていくかというような議論を、市民の人たちを巻き込んで議論させていただいております。
その後ろに冊子を配らせていただいていますけれども、行政計画は誰も読んでいただけないので、市民と対話しやすい、わかりやすい表現で書かせていただいておりまして、これに基づいて9つのレガシー形成をそれぞれのステークホルダーと議論させていただいております。そうした中で、今回のこの法律ができて、こういう会議に参加させていただくわけですけれども、もともと文化芸術の基本法があって、新たにこの法律が制定されたということがございますので、これが相乗効果をもたらして、障害のある方々だけではなくて、誰もが文化芸術に親しめる環境とか、それがきちんと評価される環境ができればと思っておりますので、微力ながら何かありましたら御意見させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それと、最後にこの冊子の右下にQRコードがあります。これはQRトランスレーターといって、普通のスマホでQRコードを読んでいただければと思いますけれども、今、14カ国語で、クラウド上で翻訳をさせていただいていますし、8カ国で音声案内をさせていただいておりますので、多言語の冊子をつくらなくて済むように、新たにこういうものも導入しておりますので、ぜひ一度試していただければと思います。どうもありがとうございます。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
本日は、8団体の皆さんから、各団体の取り組みや、「障害者による文化芸術活動の推進」に関する御意見を伺い、それをもとに意見交換をしたいと思います。各団体10分程度御発表いただき、その後、質疑応答の時間を設けたいと思います。なお、最初の4団体が終了した時点で10分程度の休憩をとりたいと考えております。
では、五十音順で東京、京都双方でお願いしたいと思います。ただし、視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ様から、時間の制約があると伺っていますので、最初にお願いしたいと思います。
視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ様、お願いします。
 
 
○視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ 御紹介いただきました、視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップという団体を運営しております、代表の林健太と申します。よろしくお願いします。
ちょっと時間の制約があるものですから、私がトップバッターということでやらせていただきたいと思います。私は、法律の専門的な言葉とかは余り知らないものですから、基本的には現場で考えてきた言葉によって、きょうは皆さんにいろいろお伝えしたいと思いますので、御容赦ください。
まず、私が活動している団体の実態についてなのですが、視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップという団体名で活動しております。ここで言う視覚障害者というのは、全盲と言われる見えない人から少し見える弱視の人までを含んでおります。ここで言う美術鑑賞というのは、一般的には美術鑑賞というものは目で見て楽しむものと思われておりますが、視覚障害者の人の中にも美術鑑賞という経験はあるのであろうと。いろいろな言葉であったり、身体的コミュニケーションであったり、外部からいろいろな情報を取り入れてイメージをつくり上げる鑑賞も美術鑑賞であると考えております。
「視覚障害者とつくる」ということで、「とつくる」という部分も大事だと思っておりまして、これは視覚障害者当事者のためだけの場ではなく、多くのマジョリティーである目の見える人、晴眼者といいますが、晴眼者ももちろん含んだワークショップである。視覚障害者と晴眼者が助ける、助けられるという関係ではなく、ともに何かを共有したり、伝え合ったりすることはできるだろうかということを考える場なのです。支援する場というよりは、ともに考え、探求する場だと思って活動しております。
この団体は2012年から発足しておりまして、丸6年たちました。今、7年目なのですが、毎月1回ぐらいのペースで全国の美術館とか学校とか、主に国内で、関東が多いのですが、そうしたところに出向いて鑑賞プログラムを行っています。先月、初めて海外に呼ばれることがありまして、ロシアのモスクワで開かれた国際カンファレンス、「視覚障害者の美術館での経験とは」というタイトルで3日間カンファレンスがある。そういうすごくニッチなテーマで3日間、世界中から実践者や研究者が集まってカンファレンスが開かれておりまして、そこに行ってきたりもしました。
これまでの開催回数は121回で、13都府県、38カ所のミュージアムや学校でプログラムを行っております。なので、1カ所で何回か継続して行っているというところもあります。延べ参加者数なのですが、1、696名のうち360名が全盲か弱視の視覚障害者、約2~3割ぐらいなのですね。この人数を見ていてわかるように、視覚障害者のほうが少ない。晴眼者のほうが多い。なので、先ほども言いましたが、視覚障害者だけを、障害当事者、マイノリティーだけを対象にしているのではなく、ここではマジョリティーも対象にしているということで、マイノリティーとマジョリティーの関係性、どのような関係が持ち得るのか、どのような軋轢が生まれるのかということも含めて、その関係を考える場でもあるということをちょっと強調しておきたいと思います。
主な協働先は、いわゆる公立の美術館といったところが多いです。ちょっと読み上げることは割愛いたします。
では、一体どういうプログラムをしているのかということなのですが、一番基本的な形としては、特徴が3つありまして、視覚障害者と晴眼者が複数で鑑賞する。複数でというところがポイントになっています。
それから、視覚障害者スタッフと晴眼者スタッフがコンビでナビゲーターを務める。これは晴眼者が主導するのではなく、視覚障害者が主導するのでもなく、コンビのキャッチボールそのものをその場の推進力にしたいというか、そういうことで、コンビでナビゲーターを務めるという方法をとっております。
最後に3点目なのですが、見えることと、見えないことを言葉にするという、つまり、言葉とか会話そのもの媒介にして鑑賞していくというスタイルをとっております。では、この見えることと、見えないことを言葉にするというのはどういうことかというのは、なぜこういう回りくどい方法をとっているかというと、何も言わないと、見える人と見えない人がその場にいたときに、見える人が説明するという機能というか目的、ミッションが自動的に生まれてしまうことが多いのです。そうしたミッションを一旦ちょっと横に置いて、まずは何が言葉にできるかというところ、すごくシンプルなところから始めるということで、見えること、つまり、色、形、大きさ、モチーフなどを言葉にしてみましょうと。それから、見えないことというのは、印象とか感想、解釈とか、言葉にしなければほかの人には見えないことという意味で見えないことと言っていますが、この2つを言葉にしながら、その作品や空間や場所の魅力を発見していこうというワークショップです。
この3つの特徴が基本的な特徴なのですが、こうしたプログラムをいろいろな場所でやっております。ここでは、つまり、作品についての情報、いわゆる作品の説明とか解説といった情報だけではなく、自分以外の他者の見方とか経験とか感情とか、主観とか、そういうものも全部含めて共同で見るという行為をつくり上げる場であると考えています。
こうした方法をとることによって、どのような関係が生まれるかというと、視覚障害者と晴眼者の役割が固定化した一方的な関係ではなく、つまり、説明する側とされる側がいつも同じという関係ではなく、役割が常にどんどんスイッチしていくような、お互いに影響をし合うような関係をつくりたいと考えて、このような語りの場をつくっています。
その結果、何が発見されるのかといいますと、一般的に固定的な関係の中では、ニーズとか支援は既に決まっている。これが必要であるからこれを提供するのだということが決まっているのですが、こうした流動的な関係の中では、実は支援だと思っていたものが支援ではなかった。役立つと思って発した言葉が全然相手に伝わらなかった。おもしろくない、わかりにくいということもよくある。逆に、何の気なしに発した言葉がすごくたくさんの情報を伝える言葉であったというのは、相手に届いてみて初めてわかることだったりもするのです。なので、この流動的な関係をつくることによって、ニーズとか支援の方法が後から発見される。文脈が後から発見されるという場をつくりたくて、こうした流動的な場をつくっています。
関係性を考えたい、考える場が欲しくてこういうものをつくっているのですが、そもそも何でそうしたことを考えたかといいますと、ちょっと歴史を振り返ってみたいのですが、今回、この法律について、私が必要だと思っていることは、鑑賞機会の拡大ということがうたわれておりますが、鑑賞機会を拡大する前に、鑑賞とはそもそも何かということを一旦考えたほうがいいと思うのです。きょうここにいる皆さんが、例えば休みの日に美術館に行こうといったときに、大多数の人は、何も考えずに、無意識に不安とか危険とかを感じなく美術館に行って、展覧会を見て帰ってくることができると思うのです。それは目が見えるという点で、その人たちはマジョリティーに含まれている。あなたたちのためにつくられた社会のシステムの中にあなたたちがいるから、不安や危険を感じずに美術館に行けているのだということだと思うのです。
きょうこの会場にも多分いらっしゃると思いますが、少数の何らかのマイノリティーの属性を持った人は、美術館に行くとか電車に乗るということに、危険とか不安とかを感じることが多い。つまり、こうした鑑賞とは何かということを考えるときに、当事者にとってどうかということだけではなくて、今まで長い時間をかけてつくられたマジョリティーにとっての社会の仕組みとか、美術館とか美術史は、まさに目の見える人たちがつくり上げてきたものですから、マジョリティーのためにつくられた、マジョリティーによってつくられたシステムそのものを改めて見直すことが必要なのではないかと考えております。
視覚障害者の美術鑑賞の歴史の始まりというものにも端的にあらわれているのですが、実は、日本では1984年にギャラリーTOMという小さな美術館で、彫刻とかをさわる鑑賞ということが始まったのです。そこから、視覚障害者の美術鑑賞は日本で始まったと言われています。そのときに、開館とあわせてスローガンが設けられているのですが「ぼくたち盲人もロダンを見る権利がある」というスローガンとともに開館した美術館なのです。そこから少しおくれて名古屋のボランティア団体、ガイドボランティアによる言葉による鑑賞が始まったのですが、ここでも「モディリアニのおさげ髪の少女がみたい」というある視覚障害者の言葉から活動が始まった。
つまり、この初期の時代は「権利の時代」です。権利を獲得するための活動。つまり、社会運動の側面がすごく強かった。その社会運動の特徴は、運動の目的が個人の経験より優先されることが多いということなのです。だから、さわったからどういう鑑賞が得られたかということよりも、視覚障害者が美術に触れているという象徴性というか、彫刻をさわるというのはすごく原始的で即物的で、象徴的なものがこの最初期に広まったという一因があるのではないかと考えております。
しばらくして、1990年代の後半から2000年代になって、少しずつ鑑賞の形が変わってきます。言葉を使った鑑賞ではあるのですが、ここでは晴眼者がガイドボランティアを務めるという役割を固定化せずに、一般の市民同士が集まって言葉による鑑賞を行うという、通称MARと呼ばれる市民団体のグループが、全国のいろいろな場所で見える人と見えない人で言葉による鑑賞を行った。ここから少し新しい、双方向であったり、一緒に楽しく見る仲間として参加者が集う場というものができ始めたという経緯があります。
これはよく見ると、つまり、最初は権利を担保するための時代であった。後半、2000年代に入ってからは個人の経験はどのようなものが生まれるのかという経験について焦点を当てた活動がふえてきたと考えられると思います。さらに言うと、ここでのマジョリティーである目の見える人たちの立ち会い方も、最初は親だったり支援者が主導して始めた社会運動的な側面を持った活動だったのですが、後半、2000年代に入ってからは、目の見える人も自分たちの見る経験を顧みるということがこのプログラムの中に含まれてくるようになるのです。ただ単に一緒に楽しむということは、つまり、自分たちが何を見ているのか、何を見ていないのかという、鑑賞をするという経験を顧みる活動になってきた。これは恐らく障害というものが個人モデルから社会モデルに変わってきたということと関係しているのではないかと。障害というのは個人の中にあるものではなくて、社会の中にあらわれるものだという考え方の推移と視覚障害者の美術鑑賞の質の変化は関係しているのではないかと私は考えております。
こうして、視覚障害者の鑑賞というものは、つまり、社会運動に強く影響されたりとかして、個人の経験はちょっと優先度が下がってしまうという状況はよくあるわけです。それ以外にも、例えば障害とか芸術文化というのは、歴史的な要請、例えば政治的な駆け引きであったり、ある利益のためにであったり、個人の経験というものがないがしろにされてしまうことはよくあることだと思うのです。なので、いま一度鑑賞とは何か、バリアとは何か、説明とは何か、そもそもこうした言葉自体がマジョリティーによってつくられてきた言葉であることから、いま一度この意味のずれやすい言葉も含めて、社会のシステムを、マジョリティーを振り返るということも含めて考えていくことが必要なのではないかと思っております。
済みません。ちょっと過ぎてしまいました。以上です。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ただいまの御発表について、御質問、御意見等を皆様方からいただきたいと思います。いかがでしょうか。
野澤構成員お願いします。
 
 
○野澤構成員 毎日新聞の野澤と申します。私自身は知的な障害を持った人たちへのわかりやすい情報保障とかいうものについて取り組んでいるのですけれども、今の御発表は大変興味深く聞かせていただきました。何を言葉にするか、どうやって見るかのところで、見えないことを言うわけですね。これは何といいますか、ナビゲーターの方の価値観が介入してしまうというか、そんな気もするのですが、そのあたりは何か議論があるのでしょうか。
 
 
○視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ ナビゲーターというのは、我々スタッフということですか。
 
 
○野澤構成員 そうですね。一緒に行って説明する方ですね。
 
 
○視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ しゃべるのは参加者の人たちもしゃべってもらいます。ただ、やはりスタッフの意図というのは確実に介在しますし、結構意図的にその場を設計しているのです。その意図は何かというと、見える人が見えない人に説明できる、説明するもの、できるもの、その言葉が必ず役に立つものという前提をそもそも取り払いたい。説明というミッションを負ってしまうと、出てくる言葉がすごく限られてしまうのです。明確な言葉だったり、適切、簡潔な言葉しか出てこない。不確かで曖昧な言葉がすごく流通しづらい場になってしまうので、でも、美術を見るときは、明確な言葉にむしろならないもののことのほうが多いので、そうした無意識だったり、曖昧だったり、不確かな言葉が流通するような意図を持って、その場でナビゲーターをやっています。
 
 
○野澤構成員 そういうやり方は、林さんたちの団体のオリジナルなものですか。それとも、もう既にいろいろな国内外でそういう活動をしている方たちの間で、ある程度そういうことは広まっているのでしょうか。
 
 
○視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ 目の見える人と見えない人が一緒に鑑賞するという形式としては、国内では1990年代から様々なグループが活動を始めています。名古屋の「アートな美」というボランティアグループ、東京の「MAR」という市民団体、京都の「ミュージアムアクセスビュー」というグループなどです。美術館では森美術館や水戸美術館、横浜美術館などがすでにそうした実践を行っています。それぞれすごく似たような形式をとっているのですが、記録を見る限り、方法や目的は時代によって場所によって、少しづつ違っておりますので、つまり私達の活動もそれらの先行世代の実践に影響を受け継いだり改変しているので私たちのオリジナルとは言えないと思います。あとはこの間、海外でのカンファレンスに参加した時にアジア、アメリカ、ヨーロッパの実践者の発表を幾つかお聞きしました。その多くはオーディオディスクリプション(音声解説)や触察モデル、を使ったものであり、私たちのようなリアルタイムな会話や語りを媒介にした実践は少ないようでした。それから、晴眼者が支援者としてではなく、晴眼者が参加者として集うプログラムもほとんどなくて、そこは海外の人からすごくおもしろがられました。
 
 
○野澤構成員 もう一つ、かつて視覚障害の団体の方に聞いたのですけれども、会員さんにアンケートをしたら、月に1回は映画館で映画を楽しむという人が4割いるということだったのですが、映画とかはされていないのですか。
 
 
○視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ 私は主に美術館の場が多いので、きょうはその話だけだったのですが、視覚障害者向けの映画の音声ガイドは結構広まっていますし、これもおもしろいことに1990年代の半ばぐらいから世界的に広がってきたもので、映画の音声ガイドというものは、割と全国的につくられるようになってきているそうです。
ロシアの劇場の人に聞いたのですが、ロシアでは映画とか演劇には音声ガイドが、大学の授業でオーディオディスクリプション(音声解説)についての授業があるぐらいで広まっているが、美術館の中ではなぜかそうしたものができないということを言っていましたね。
 
 
○野澤構成員 どうもありがとうございました。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。
ほかにどうしてもという方はいらっしゃいますか。よろしいですか。
では、続いてArts & Law様にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
 
○Arts & Law 本日は、お招きいただいてありがとうございます。弁護士をしている水野と申します。
Arts & Lawという団体は、アーティストやクリエーターに対して、弁護士などの専門家が無料で法律相談に乗るというようなことを主なサービスとして、もう10年以上活動してきている任意団体になります。今回、この話にお誘いいただいたときに、団体内で、こういう今回の法律に関するテーマでいろいろ相談が来ているかどうかを調査したところ、余りうちの団体にはそういう仕事というか、そういう相談を受け入れている実績がそんなにないということで、私はその団体の理事をしておるのですけれども、私が個人の弁護士としての本業の仕事で、幾つか福祉法人のアーティストの展示・販売とか、あとは福祉施設の入居者から生まれてくるデザインをプロダクト化していくようなことを幾つかの案件で経験したことがありましたので、私が参った次第です。
今回、この1枚紙の表裏で2ページある「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律第13条に関する提言」というペーパーをごらんいただきたいのですけれども、きょう呼んでいただいたのはArts & Lawという団体での名義なのですが、私が個人というか、事務所を経営しておりまして、シティライツ法律事務所という名義になってしまっていますが、読みかえていただければと思います。
13条に絞った提案をさせていただきたいと思うのですが、13条というのは国や地方公共団体が、障害のある方が創造した作品に関して、そういった障害のある方の権利を保護する必要な施策をしていかなければいけないと、講ずるものとするというような規定になっていますが、一言で私の提案をお伝えしますと、保護だけでいいのかと。やはり保護を強めることが利用というものを逆に阻害してしまう可能性がある。保護と利用の適切なバランスを図っていくべきではないかというのが私の提案の趣旨になります。なので、権利保護を最重視する立場からすると、ひょっとすると怒られてしまう御提案になるのかもしれませんが、少しお話しさせていただければと思います。
主に13条で念頭に置かれている権利は、作品の所有権とかあとは著作権、場合によっては個人情報とかプライバシーの権利とか、そういったものが入ってくるのかなと考えております。
一つずつ進めていきますと、第1のところで、所有権については、例えば入居の同意書とかに特別な規定が入っていない限り、障害がある方がその施設の中でつくられた作品の所有権は、結構判断するのが難しくて、民法の規定が適用されるのですけれども、いわゆる動産の附合という規定で、幾つかケース・バイ・ケースで所有者が変わります。例えば材料を提供した側に所有権が行く場合もありますし、その障害のある方が非常に芸術的価値の高い加工を行ったといったときには、価値の高さによって障害のある方のほうに所有権が移る場合もあります。なので、入居同意書とか、あとは個別の契約がないと、所有権の所在は結構曖昧になりやすいのです。そういう問題が1つあります。
著作権については、特別な契約がない限り、作品を制作した障害のある方のほうに著作権、あとは著作者人格権という人格権が帰属することになります。
第3のところで、その他の権利として、いろいろな権利があり得るとは思うのですけれども、ここでは、私は個人情報やプライバシー、肖像権あたりを配慮する必要があるのではないかということで記載しております。
そういったところ、そういう権利の保護を図るために、13条を見ると、関連する制度についての普及啓発、これらの権利に係る契約の締結等と、わざわざ契約の締結というものがしっかり明記されているわけなのですけれども、ここで現状はどうなっているかという私の少ない経験で、そういった障害のある方の作品の制作または利活用といったところに力を入れていらっしゃる福祉施設、福祉法人の方々の幾つかの経験を見ると、そういう力を入れているところであっても、やはり施設側のスタッフ、施設側のこういう細かい権利に関する知識不足とか、あとはそもそも入居同意書や契約書が交わされていないケースを割と見ましたし、契約があったとしてもしっかり書かれていないみたいなケースも拝見しました。
最近では、こういったところをしっかりやっていかないといけないという意識を持たれている施設の方もいらっしゃって、個別に契約を交わしているケースなどもありましたけれども、一方で、最初の段階で当然施設側に権利が移っていると考えてしまっているようなところもあったりとか、いろいろ曖昧なケースがありました。
2ページ目のほうにいきますけれども、こういった所有権とか著作権の権利の所在が曖昧になったり複雑化しているということは、権利の保護を図る点からすれば、著作権法は基本的にはクリエーター重視にできておりますので、少なくともクリエーターの著作権に関しては保護されるという状況が担保され得るわけなのですが、それを社会に開いていく、利活用していく。利活用と言うとちょっと語弊があるかもしれないのですけれども、幅広く社会に出していく、広めていくといったことですが、そういったときに、ある程度施設側に判断や裁量を委ねるような形が契約などで担保できないかということで、私の仕事が出てくる。私はそういう依頼を受けて仕事をしてきました。
今回、13条の次の条項には、13条は権利の保護を図る強目の規定になっているのですが、14条は、一方で、芸術上価値が高い作品の販売に関する支援という形で、まさに作品の社会普及を支援していくという、一見相反するような規定が13条、14条に置かれています。私は、きょうの御提案は13条の規定を14条の中、視点から読み込むということ。そういった御提案とも考えられるのかなとは思います。
では、私は、こういう入居同意書とか契約をどのようにしたらいいのか考えているかといいますと、ここには異論があるとは思いますが、可能な限り障害のある方の権利を保護しつつ、一定の範囲内で施設の側に権限を与えるといった契約を交わしていくことが望ましいのではないかということで考えております。
2ページ目に大きな●が3つ並んでいますけれども、このあたりで私見を書いておりまして、所有権は、材料を提供しているのが施設側だったりもするので、民法の規定のとおりということもあり得ますが、財産的要素が強い面もありますので、施設側に帰属させるという方針があり得るのではないかと。それで施設側にいろいろ展示や販売に関してイニシアチブを与えるというようなこと。著作権については、やはり人格的な要素、人格権もありますので、障害のある方のほうに帰属させる。ここはやはりパターナリスティックな法定代理人の見解も非常に重要視されるところではあると思いますけれども、一旦障害のある方に帰属させる。ただし、施設側にできるだけ、可能な限り広い無償の利用許諾、ライセンスを帰属させるというか、利用許諾をさせた上で、何かそこから還元される売り上げだったり利益みたいなものは障害のある方に一定還元するというような仕組みができると望ましいのではないかと思います。
あともう一点、重要な3つ目の点になるのですが、いずれの権利も、やはりそれは嫌だという障害のある方の意思または法定代理人の意思は尊重されるべきだと思っておりまして、オプトアウトという考え方があって、取り下げ、そうではないことを認めるということです。そういう意思表示があった場合には違う考慮があってもいい。そういう制度をしっかり契約の中または同意書、契約書の中に入れておくべきというように考えています。
なお以下はちょっと難しい論点になって、これは実際に私も仕事の中で悩んだところになるのですけれども、施設側から障害のある方に還元をしていきたい。そういう要望がある施設はすごく多かったのですが、そんなにたくさんはないのですが、還元をどうするかということなのですが、まず、やはりこういう仕組みをやっていく施設側のいろいろなさまざまな人的・経済的コストがありますので、これはやはり重視しなければいけないと思いました。なので、売り上げベースというよりは、いろいろな経費を引いた上で利益が残った場合に還元を初めてするという形でいたし方ないのではないかと個人的には思いました。
また、還元する場合に施設側からニーズが出てきたこととして、その作品をつくった当人、障害のある方の当人にだけ帰属させる、還元するのではなくて、そのチームとか、そこにいらっしゃるみんなに還元していきたいというニーズも一定数ありました。ここのところは、私は正直、どちらがよいのかということは意見を持てませんでした。なので、皆さんから御意見を聞いてみたいと思った次第です。
もう一つ、ここに書いていない論点としては、著作権は御存じのとおり著作財産権という財産的側面と、譲渡できない人格的権利、著作者人格権というものがあるのですが、よくこういった議論になるときに、著作者人格権の不行使というものを契約の中に入れる。行使しないという、譲渡はできないけれども行使しないという規定を入れたりするのですが、これを今回の法律が想定するような場面で入れるべきか、入れないほうがいいべきかというのは、14条との兼ね合いでも結構難しい論点になるかなと思います。もちろん人格権の不行使特約を入れるということになると、権利保護の観点からは遠のきます。一方で、14条、人格権の不行使の特約が入っていないと、利活用の制限になる場面はあり得るのかなと。どちらをどの割合で重視していくのかということは、今後の議論が必要なのではないかと思いました。
最後、第5ですけれども、指針の作成及び公表、その他必要な施策を講ずるものとするとなっております。まさにガイドラインの作成・公表などが今後予定されていると思うのですが、ここに関しての私の提言は、現場のリソースとかリテラシーがこの分野でとても高いことは期待すべきことではないと思いますので、いろいろな施設を見たところ、最初の施設入居同意書みたいな形とか契約に関して、そこに著作権に関する規定を入れることが多かったので、そこを余り負担のない形で施設側に盛り込めるような、そういう条項案みたいなもののひな形のようなものがあると、よりエグゼキューションされやすいかなというように私は思った次第です。
私からは、以上になります。ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
予定の時間もありますが、1名だけでも御質問があれば、お願いします。
 
 
○大塚構成員 上智大学の大塚と申します。ありがとうございました。
権利保護の推進は非常に重要な視点、項目だと思っております。それで、例えば重度の知的障害、非常に重い方について、さまざまな判断にかなりの支援が必要な方たちですが、ここにも代理人の話が出てきましたけれども、既に成年後見制度を積極的にこの分野において使っている事例、そして、今後、成年後見制度をどう取り扱うということで、本人の権利保護をするために積極的に使っていくべきか、あるいは使うに当たってのいろいろな課題があったりということをもし御見解があったらお願いいたします。
 
 
○Arts & Law ありがとうございます。
この分野に関して、私が接した事例の中では、成年後見制度を活用されている方はいまだ出会ったことがありません。ただ、おっしゃるように、この分野でそういう専門家を、成年後見制度を使って活用されると、あるいは施設単位とかで活用されるみたいなことは、それは多いに検討できる話だと思いますので、非常に示唆に富むお話だと思いました。
 
 
○大塚構成員 ありがとうございます。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
続きまして、特定非営利活動法人STスポット横浜様、お願いします。
○認定NPO法人STスポット横浜(小川) 認定特定非営利活動法人STスポット横浜、理事長の小川智紀と事務局長の田中真実でお話しします。
私たちは、1987年から地域の文化芸術機関、アートNPOとして活動を続けています。アートの持つ力を現代社会に生かすことをミッションに掲げ、現代演劇やコンテンポラリーダンスを中心とした劇場運営と並行し、地域コミュニティーに向けた文化芸術活動を展開する地域連携事業部でも多くの活動を行っています。
私たちで企画制作を行う事業実施、運営の活動だけではなく、事業のモデルづくりや人材育成、助成金の交付や調査研究も行っています。本日は、こういった中間支援団体としての観点からお話しします。
 
 
○認定NPO法人STスポット横浜(田中) 私たちがこれまで取り組んできた障害者の文化芸術活動に関する取り組みは、大きく3つあります。1つ目は、学校での取り組みです。横浜市内の小・中、特別支援学校などで、芸術家による鑑賞型・体験型の授業を実施しています。横浜市の負担金による「横浜市芸術文化教育プラットフォーム事業」と文化庁の「文化芸術による子供の育成事業」のコミュニケーション能力向上事業と芸術家の派遣事業を一体的に実施しています。今年度は横浜市内142校で取り組みを行う予定ですけれども、そのうち特別支援学校が8校、特別支援学級での取り組みも同じく8校となります。10年前に比べると、学校の要望に応じる形で取り組み校数は大きく増加しています。
最近では、特別支援学級での芸術系の授業をどのように運営していったらいいか困っていらっしゃる先生方も多いということで、先生向けの実践講座なども開催してきました。特徴的な取り組みとしては、視覚障害児童・生徒とのダンス創作であったり、重度重複障害児童・生徒との音楽創作などを実施してきました。
2つ目は、地域での取り組みです。横浜で活動する民間の文化芸術団体に対して、助成金を交付するとともに、活動の広報やネットワークづくりの支援を行っています。横浜市の負担金をもとに今年度は市内27団体をサポートしています。このうち福祉サービスを行う団体が中核となった取り組みが4事業、事業の中で障害者対象企画がある取り組みが9事業となっています。ここ数年の大きな流れとして、地域に根差した文化活動を行う際には、福祉施設等の協力が不可欠になりつつあるという点が指摘できます。
自治体全域を対象とした公立文化施設だけでは、障害者の文化芸術活動を初めとした多様性のある活動を支えることが難しく、地域ないしは小地域をイメージした活動が福祉分野の活動と結びついています。特徴的な取り組みとしては、就労継続支援B型作業所のパン屋さんによる演劇創作、地域生活支援拠点での精神障害当事者による美術展などが挙げられます。
これまで取り組んできた活動のうちの3点目は、障害福祉分野での取り組みです。神奈川県内の福祉サービス事業所で、芸術家と障害者がともに作品創作を行っています。今年度は県内の身体、知的、精神障害者を対象とする取り組みを8施設で実施しています。この事業では、障害者との芸術活動の可能性を考えるレクチャーや調査研究もあわせて行っており、将来的には地域の文化施設と福祉施設の連携につなげるのが狙いです。
平成27年度から、文化庁戦略的芸術文化創造推進事業の一環として実施し、現在は神奈川県の県民活動の基金からの財源で活動を続けています。特徴的な取り組みとしては、重度重複障害者とのダンス、精神障害当事者のバンドの活動の支援などが挙げられます。この事業に取り組むに当たって調査研究を行いましたが、福祉サービス事業所での芸術活動の希望が大変高いことがわかりました。
例えば横浜市内の障害福祉施設に、実際に「福祉施設へ芸術家が出向き、ワークショップ型の創作・表現活動を行うことができる場合、貴施設での実施を希望しますか」と尋ねたところ、回答全体の3分の1に当たる111施設が「はい」と答えています。取り組みを続ける中で、芸術家が出向くことを希望する施設はふえ続けています。それぞれの福祉施設職員からは、こういった取り組みをずっとやりたかった、障害特性から劇場やホールへ出かけるのは難しいので、ぜひ継続して取り組んでほしいという声が寄せられています。その一方で、文化芸術の関連施設の協力体制は不足していて、課題が残っています。
 
 
○認定NPO法人STスポット横浜(小川) それでは、ここからは障害者の文化芸術活動において必要だと思われる施策についてお話しします。
(1)地方公共団体の計画と関係者の連携協力についてです。まずは基盤をつくってください。障害者の文化芸術活動を推進するに当たって、地方公共団体では、福祉セクションのみの問題と捉える傾向が強い現状があります。本来は地域の文化行政もこの施策の責任を持つものと考えられますが、実際は、文化施設の管理に集中する傾向が強く、どうしても総合的な体制になりにくいのが現状です。今回策定する障害者の文化芸術活動推進に関する基本計画の計画期間を、文化芸術活動推進基本計画とあわせ、以後はこれらを一体的・相補的に計画していくことが必要だと考えます。地方公共団体において障害者の文化芸術活動に関する基本計画を策定する際は、文化と福祉を初めとした複数の所管が協働して施策を推進することが重要です。地方公共団体での事業推進体制においては、複数の担当課による協定を締結するよう求めるなど、このための体制づくりを国レベルで担保することが必要だと考えます。
(2)創造の機会の拡大について、委員の皆さんと厚生労働省の皆さん、ぜひ聞いてください。これまでの福祉施設で行われてきた地味な取り組みに光を当ててください。障害者が日常的に利用する障害福祉サービス事業所では、既に文化芸術活動が取り組まれています。これら小規模な活動の支援を行うことが大変重要です。一方で、劇場・音楽堂や博物館等の施設は自治体全体をカバーする傾向が強く、地域性の捉えが大きく異なり、規模の小さい活動まで目が届かない場合があります。障害者総合支援法第5条7では、「生活介護」における「創作的活動又は生産活動の機会の提供」が示されています。このうち「創作的活動」を文化芸術活動として捉え、重視する必要があると考えます。また、厚生労働省の地域生活支援事業実施要綱で都道府県事業・市町村事業としてそれぞれ示された「社会参加支援」としての「芸術文化活動振興」も重要です。この2点をつなぎ施策を展開するため、劇場・音楽堂や博物館等にとどまらず、地域の公立文化施設や特別支援学校、福祉サービス事業所、アートNPOなど、地域の実情に応じて取り組みの実施主体として活動できる環境整備が必要です。
(3)人材の育成等について、特にこれは文化庁の皆さん、御検討ください。近年トップレベルの劇場・音楽堂、博物館等以上に、地域の文化施設に求められるものは大きくなっていますが、文化芸術活動に関する企画または制作を行う者に対しての人材育成の機会は乏しいのが現状です。福祉分野を初めとした地域の文化資源をコーディネートする人材養成の機会も少ないです。あわせて、福祉分野での専門的見地から施策を検討する人材も必要不可欠です。「世界に羽ばたく新進芸術家等の人材育成」と並行して「地域に根ざした文化芸術活動に関する企画者・制作者の人材育成」が重要であり、その枠内で地域の障害者の文化芸術活動を持続的に支える人材を養成することが必要です。あわせて福祉領域においても、個別のニーズに応じた日中活動のプログラム提供を保障するために、職員の専門性の向上、ないしは専門職員配置を検討する必要があります。
(4)文化芸術の鑑賞の機会の拡大について、主に劇場・音楽堂等の音楽、演劇、ダンス分野の公演事業においては、不随意に声が出る障害特性を持った人が、鑑賞の機会を奪われがちです。全ての人に、バランスのとれた鑑賞機会を提供するため、舞台手話通訳の整備を初め、文化芸術へのアクセス手段の多様化を望みます。重度障害、精神障害、発達障害など鑑賞の機会から阻害される可能性の大きい障害特性のある人たちに、特段の機会の確保が重要です。
(5)相談体制の整備等・情報の収集等について、障害者による文化芸術活動は地域の中で散発的に行われていて、地域における全体像が見えず、資源の偏りが大きいのが実情です。人材や資金、情報をつなぎ、調査研究から事業の企画・運営、相談支援などをまとめて行う中間支援機能が必要です。
(6)評価について、障害者による文化芸術活動の推進に関して、地方自治体で施策を講じるに当たっては、多主体の参画が必要となります。そのため、評価方法も多様になります。「幅広い作品等の価値」を認め、「その評価によって分断や差別が生ずることのないよう十分留意」し、地方自治体に対して性急に個別の活動の評価を求めないようにすることが必要です。また、先ほど示した「生活介護」における「創作的活動」と、「社会参加支援」としての「芸術文化活動振興」は質的に異なるため、評価方法などを分けて検討することが必要だと考えます。
以上です。ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
それでは、御意見、御質問はございませんでしょうか。
今中構成員、お願いします。
 
 
○今中構成員 アトリエインカーブの今中です。ご発表には「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」に対する論点が明確に出ていて非常に分かりやすかったです。
その中で、特に大切だと思った点が、3つあります。1つ目は2ページの中段に書かれている、地方公共団体における福祉と文化の連携です。私も大阪府で「障がい者の芸術表現」の委員会に籍を置いているのですが、どうしても福祉が前に出てしまって、文化がおくれがちです。福祉と文化の両輪を同時に動かしていかなければならないというご意見に同感です。
2つ目は、3ページ目の上段、括弧書きの中の、専門職員の配置を検討する必要があるとのご意見、私も100%同感です。この分野では福祉の専門職が畑違いの文化芸術をさも専門職のような顔で語ってしまうケースが散見されます。専門職でない人が専門を語るところに違和感を覚えます。このような体制が続く限り「障害者文化芸術活動」は「障害者の枠」から出ることはないでしょう。常勤正規職員として芸術家やデザイナーを雇用できるシステム作りが急務です。彼らを身分保障の少ない非正規職員や外部スタッフとして扱う限りクオリティの高い福祉と文化の両輪を作ることは出来ません。
そこで厚生労働省の方々にお願いです。福祉と文化の両輪を目指すなら「文化芸術の専門職加算」を検討していただけないでしょうか?福祉と文化を両輪とする職員や文化芸術に特化した専門職を雇用した場合は加算をしていただきたい。これは厚生労働省だけではなく文化庁にも協働してもらいたい事案ですが。当然、彼らのクオリティを評価する基準を作る手立てはいりますが、そうすることによってはじめて施設内で「障害者文化芸術活動」のまっとうな議論ができるはずです。
最後に3ページ目の最後の段の「生活介護」における「創作的活動」と「社会参加支援」における「芸術文化活動振興」は質が違うというご意見。それもおっしゃるとおりだと思います。評価軸も丁寧に見ていく必要があると思います。
 
 

○本郷座長 ありがとうございました。
それでは、廣川構成員、お願いします。
 
 
○廣川構成員 今、お話された意見と本当に同意見です。1つ御質問させていただきたいと思います。ページは2ページ目、上段のほうですが、これからもワークショップの形をとることを希望しますかというようなアンケートを出して、その答えに「はい」が33%、「いいえ」が58%という、「いいえ」と答えた方たちの団体の理由がわかりますか。おわかりになるでしょうか。私の想像では、やりたいけれども環境がよくない、例えば負担が大きいというような理由で、本当はやりたいのだけれども今はできないということなのか、それとも、全く興味がないというのか、そのあたりをわかる範囲でお答えいただければと思います。
 
 
○本郷座長 お願いします。
 
 
○認定NPO法人STスポット横浜(田中) 御質問ありがとうございます。
「いいえ」とお答えいただいた施設の中で、今、廣川さんがおっしゃったとおり、予算がないことや、時間の余裕がないという理由が大半を占めていた印象があります。加えて、既に自分たちの施設で実施を十分しているので、これ以上は今のところ外から受ける必要はありませんというところもありましたので、草の根的な活動をしているところもたくさんあるように思いました。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。
 
 
○廣川構成員 ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 鈴木構成員、お願いします。
 
 
○鈴木構成員 鑑賞の機会のところで1つお伺いしたいのですけれども、特に不随意運動とかで声が出たりするなどで、特段の機会の確保ということではうちもやっているのですが、鑑賞の機会だけではなくて、鑑賞のルールを学ぶということも含めてやっています。STスポットさんのほうで、具体的にどのように活動をされているか、少しお話しいただけたらと思います。
 
 
○認定NPO法人STスポット横浜(田中) ありがとうございます。
STスポット自体は大変小さい劇場でして、40人ぐらい入ってしまうといっぱいのようなところなので、障害のある方のアクセスそのものに、私たちの施設自体がなかなか応えられていないところはあると思います。いらっしゃった際にはフラットな床でほとんど段差等もないので、来ていただいた方の状況にあわせて対応していくという形でとらせていただいています。
私たちの団体でおつき合いがある公立文化施設の皆さん、地域の文化施設の皆さんは、館の運営でいっぱいになっているところがとても多くて、アクセスの部分を含めていろいろな障害のある方と対応するノウハウそのものを学ぶ機会がなかなかないというのが非常に課題だと捉えています。私たちのほうでもレクチャーなどを組んでいるのですが、まだ手が回っていないというのが実情です。
 
 
○鈴木構成員 ありがとうございます。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
続きまして、特定非営利活動法人芸術家と子どもたち様、お願いします。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち NPO法人芸術家と子どもたちの堤と申します。東京で活動しておりまして、専門的に子供たちを対象としたアーティストワークショップをコーディネートしている団体になります。
資料は緑のカラーのA4横の資料になります。障害児のいる場にアーティストが行く活動ということで、私どもでやっている学校の特別支援学級や特別支援学校等でのワークショップの実践のお話を少しさせていただきます。
ページをめくっていただきまして、私どもの勝手に名づけたプロジェクトの名前なのですが、エイジアス・プロジェクトというものがあり、2000年にスタートしております。これは子供たちがいる場ということで、小学校、中学校、保育園、幼稚園などにアーティストを連れていって、そこでアーティストのワークショップを実施するという活動です。昨年度までの実績ですが、これまでに950カ所、4万800人の子供たちが体験しております。
2017年度に関しては、そこに書いてありますように92カ所で延べ361日間のワークショップを実施しているということで、1年間で3、300人余りの子供たちがエイジアスのワークショップを体験しているということになります。各学校や保育園等には、少ない場合は1日、長い場合は10日間を超えてアーティストが通う、というような実施もございます。
芸術ジャンルとしては、ダンス、音楽、美術、演劇の主に4分野になります。そのエイジアスの中で、障害児を対象とした展開ということで、そこに書かせていただいております。まず、小中学校の通常級の中に、発達障害等の児童がいます。文科省さんの調査によると、通常級の中の6.5%ぐらいは発達障害ではないかと疑われる児童・生徒がいるということですので、30人、40人の1学級ですとクラスに2~3人いるという形です。彼らがエイジアスのワークショップでは非常にいい表現をして、生き生きとした活動をしてくれたりしています。
小中学校の特別支援学級、これは固定級と通級教室の両方がございますが、そこでの授業に私どもは力を入れてやっております。昨年度の実績はそこに書いてあるとおりです。特別支援学級の固定級と、通常級との交流及び共同学習授業も、数は少ないですが、昨年度、一昨年度と1校ずつやっております。知的障害の固定級の子供たちが通常級の子供たちと一緒になってアーティストのワークショップを授業の中で受けるというような形です。
また、特別支援学校での授業、こちらも今年度、2校で実施中でございます。知的障害及び重度重複障害の子供たちに対して実施しております。ダンスのワークショップを現在やっているところでございます。
それから、障害児入所施設でのワークショップも、これも数は少ないのですが、2015年度から青梅市の施設のほうで継続して3年、今年度も続けて実施しております。こちらの施設に暮らす知的障害あるいは情緒障害の子供たちを対象に、重度の子もいますし軽度の子もいるのですが、やはりダンスのワークショップを展開しております。
最近、児童養護施設でのワークショップをここ7~8年私どもは力を入れてやっているのですが、この児童養護施設の中には発達障害であるとか愛着障害等の子供たちが一定程度います。その子供たちも含み、施設でのワークショップも展開しているところです。
また、取り組みの多様化ということで、このようなエイジアスのワークショップですが、近年は長期間のワークショップが少し増えてきております。同じ学校や施設に半年とか通年同じアーティストが通い、あるいは年度を越えて数年間、継続してプロジェクトを実施していくというようなもので、障害児の場合は特に継続してやるということが大事かなと思っております。また、ワークショップの成果発表、特に長い期間通った学校等では、オリジナルの舞台作品を創作して、学校行事等で発表することも多くなっております。
次のページに行きまして、障害児とアーティストの出会いの場づくりということですが、エイジアスの特徴を5つ書きました。まず、アーティストが子供のいる場、子供の日常の場のほうに行く活動であるということ、ワークショップであるということ、それから、アーティストと担当の先生あるいは施設の職員が共同で、協力し合いながらワークショップを進めていくということ。4番目として、コンテンポラリーの、同時代の新たな表現・価値を生み出すアーティストを起用しているということがございます。また、5つ目として、コーディネーター、すなわち私どもの団体のスタッフがアートと、教育・福祉等双方に精通するように専門性を養って、これらのプロジェクトを支えていくというような形になっております。
アート/アーティストが得意とすることということで、ここに3つ主に挙げました。まず、身体、体に関するアプローチがアーティストは得意なのではないか。2番目として、ものの見方を変えたり既成概念を疑ったり、異なる価値観・表現を認める、リテラシーや他者理解につながるようなワークをやってくれるという特徴があります。それから、子供たちの自己肯定感を高めるということで、教員とは違った視点で子供の表現に注目し、そういう小さな成功体験を積み重ねるワークを提供できるのではないかと思っていて、これら3つのことは、つまり、子供たちがリアルに本当だと思える機会を提供できているのかなと思っております。
影響・効果としては、子供たちの自己肯定感、自尊感情、自己表現力の向上ということ。それから、他者とのコミュニケーションや関係づくりの質的な向上が見られます。特に言語以外の、音楽や身体表現による他者との即興的なやりとりをする場合が多いのですが、そういう即興的なやりとりは個々の違いを認め合いつつ、共同で何かを生み出す喜びを味わう貴重な体験となっていると思います。さらに、障害のある子供たちだけではなくて、そこに一緒に参加する障害のない、もしくはグレーゾーンの子供たちに対する影響は、言うまでもなく大きいですし、参加アーティストや担当の先生、施設の職員などへの影響も大きいかと思われます。
最後のページに3としまして、今回の障害児の文化芸術活動の推進において必要なこと、期待することを羅列させてもらいました。まず、教育や福祉の現場、障害児がまさに学んで生活している場での活動をもっと促進していくということを期待したいと思います。それから、ハード面よりも人と人との交流・コミュニケーションを重視した活動を促進したい。ダンスや音楽等のパフォーミングアーツ分野での共同創作とか、あるいは即興的な表現のやりとりをする機会をもっと促進できたらなと思っております。また、アートやアート作品というよりも、アーティストという専門的な能力を持った人材、アーティストを介在させるという活動をより促進させたらどうだろうかと思っております。
それから、知的障害・発達障害の子供たちの活動を促進するということで書きました。ゆっくりな発達であるとか、でこぼこのある発達、刺激に対する別な回路による反応がある子だったり、こだわりがある子だったり、そういう子の表現・創作活動は、こういう活動にとっては障害にならないというか、負とはならず、むしろ独創的な個性を持つ子供たちでありますので、彼らに寄り添って共感するということが大事かなと思います。特に多くの自閉症児と学校や施設で会うのですけれども、彼らは感覚が鋭敏で独特な他者とのかかわり合い方をしたり、革新的な発想をするなど、文化芸術活動においてはアーティストを初め創作に携わる人には大いに学ぶべきところがあると思うので、脳科学者などの研究者とも連携しながら、当事者の行動や言葉に謙虚に耳を傾けて、彼らの活動や彼らのワークショップを推進していく環境を整備したらどうかと考えております。
つまり、“創造性”というアートにとっては大事な要素が自閉症児とのワークショップの中で焦点化され、クリエーティビティーはどこから来るのか、ということを考えさせられ、非常に勉強になる。我々がワークショップに立ち合っていてそのようなことがよくあります。
あと、美術やデザイン分野での障害者・障害児の作品を世の中に発信することも大事ですけれども、創作のプロセスとかその人となりをもっと発信していけたらと思っております。また、障害の有無を超えたインクルーシブな活動の推進、そのためには言語に頼らない、身体や音楽などによる表現活動をともに楽しむということから相互の理解を深めることが効果的と思われます。
最後に、コーディネーターに対する支援とその育成ということで、障害児の文化芸術活動とか、あるいはインクルーシブな活動を推進するためには、学校や障害児施設とアーティストとを橋渡しするコーディネーター、すなわちアートと教育や福祉の分野双方に精通して調整能力を有した人材を支援し、彼らを育成することが肝要だと思われます。
以上です。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
御質問、御意見等はございませんか。
田端構成員、お願いします。
 
 
○田端構成員 社会福祉法人グローの田端です。発表ありがとうございました。
2000年から活動をされているということで、最初にこのプログラムに参加された方はもう成人されていると思うのですけれども、子供のころにこの活動に参加しての効用も書いてあるのですが、大人になってから、やはりこの活動があったから、表現方法を持っているからいろいろなことを乗り越えられたとか、データ的なものはないと思うのですが、聞こえてきていることがあったら教えていただきたいと思います。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち そのあたりは、我々も実は、エイジアスのワークショップを受けた子が大人になってどうなっているのかということはとても興味があるのですが、なかなかそれを調査するのは難しい。追跡調査はできてはおりません。ただ、今、やっている活動はどれもボランティアさんとかに手伝ってもらうことがあるのですが、そういうボランティアとしてエイジアスをかつて体験した人が関わってくれたりということはございます。
また、エイジアスのワークショップを知ったことで障害のある子供とのアーティストワークショップに興味を持った学生さんとかがリサーチに私どもの団体に来たりということは、最近よく見受けられます。
 
 
○本郷座長 ありがとうございます。
田端構成員、よろしいですか。
 
 
○田端構成員 ありがとうございます。
○本郷座長 では、廣川構成員、お願いします。
 
 
○廣川構成員 ワークショップの対象の場所なのですけれども、特別支援学校は2校だけというふうにお話があったのですが、2校だけというのはなぜでしょうか。人数が少ないからということでしょうか。また、もし問題があるのであれば、私は、個人的にも特別支援学校等にワークショップで活動が必要だと思っております。この数が少ないという理由は、わかる範囲で結構でございますので、教えてください。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち 明確にその理由が何かということはなかなかわかりません。推測しますと、私どもは東京都内で活動しているのですが、まず、数の問題として特別支援学級のほうがずっと数が多くて、特別支援学校は数が少ないので、希望の調査をするのですが、手を挙げるところが少ないということがあるかと思います。
あとはちょっと特別支援学校の先生に聞いた話ですと、先生方が学年で動いていて、学年の担任の先生が特別支援学校の場合は多いので、そこの調整をして、こういうプロジェクトに申し込むという形になる。その調整になかなか時間がかかってしまうというようなことも聞いたことがございます。ただ、先ほどのSTスポットさんの横浜市では結構特別支援学校をやっていらっしゃるようなので、ニーズとしては都内でもあるのに、まだ掘り起こせていないのかなというふうに感じています。
 
 
○廣川構成員 ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。
柴田構成員、少し短目にお願いします。
 
 
○柴田構成員 わかりました。御発表ありがとうございました。
コーディネーターに対する支援とその育成というのは非常に重要なことだと思っております。この20年来の活動において、育成するということはすでに活動の中に組み込まれているのですけれども、育成した人を雇用に結びつけていく。その確保についてどういったことが壁になっているのか。また、これからそれをどのように解決していけば、コーディネーター人材の雇用に結びつけていけるのか。そのことをお話しいただけますか。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち 明確な解決策はなかなか思い当たらないのですけれども、まず、こういうコーディネーターの仕事は裏方の仕事になるので、表に見えにくいということがあって、私どもの団体のコーディネーターも数人という形でやっているのですが、雇用として、これを仕事としてやっていくというのが、正直難しく、例えば私どもの団体が給与をふんだんに払っていくということはできない状態で、数はふやしたいけれども雇えないという状況がございます。
ですから、アーティストももちろん育成するのは大事ですが、そういう橋渡し役、コーディネーターも育成するためにはそれなりの対価が必要になって、それを認めていくという制度がより必要になってくるのかなと思っております。育成としてはOJTというか、一緒に回って経験のある者がない者に現場でノウハウを伝えていくということがあるので、即席に数をふやすということは難しいかもしれないのですが、でも、ニーズが、現場があれば人は育っていくかなと思っております。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。
京都会場のほうもよろしいでしょうか。
中島諒人構成員、お願いします。
 
 
○中島諒人構成員 中島です。大変興味深い話をありがとうございました。
最後のペーパーで、○の下から3つ目で、創作プロセスや人をもっと発信したいということで、これは障害者アートに限らずこういうことはいろいろな場面で、美術展などでもされることがあるかなとは思うのですけれども、とりわけ障害のある方のアートだと、確かにプロセスとか人に対する着目は重要な点になるかなということも思います。法律の中では、どうしてもこの点が現状だと抜け落ちているのかなと思うのですけれども、この創作プロセスや人をもっと発信するために必要だと思われることはどんなことがあるかをお聞きできますか。
 
 
○本郷座長 よろしくお願いします。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち 例えば作品をつくっていく過程のワークショップの現場は非常におもしろいことが起こっていて、その瞬間、瞬間で障害のある子供たちがいろいろな表現をしたり、いろいろなやりとりを他の子たちとやっているのですけれども、それを記録にとって公開するのも難しかったり、その辺のプライバシーとの兼ね合いも十分配慮しながら、でも、やはりその過程は何かしら伝えていくということが、それは我々コーディネーターの仕事でもあるのですが、何か地道にやっていくしかないのかなと思っております。
 
 
○中島諒人構成員 ありがとうございました。
つまり、今、話題になっているコーディネーターという仕事の方の専門性の中に、恐らくそういうプロセスを記録していくということも入っていくのかなという感じを私自身は思っております。ありがとうございます。
 
 
○特定非営利活動法人芸術家と子どもたち ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
それでは、ここで10分ほど休憩にいたします。予定よりも10分ぐらいおくれていますが、このまま続けたいと思います。よろしくお願いします。
ただいまから10分です。よろしくお願いします。
 
 
 
(休 憩)
 
 
 
○本郷座長 それでは、引き続き開催させていただきます。
初めに、社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園)の福森様、お願いいたします。
 
 
○社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園) 私は、問題提起とか提案というより、活動報告を中心に当法人の考え方について話をしたいと思っております。
事務局のほうから、音楽活動を中心にということでしたので、ほかの活動については資料に目を通していただいて、音楽活動についてお話をさせていただきたいと思います。途中、VTRがありますので、そこで5分ぐらいお楽しみいただければということでお願いいたします。
しょうぶ学園は鹿児島市にありまして、1973年に開設し、既に45年が過ぎております。下のほうに簡単に10年ごとの流れを書いておりますけれども、指導、訓練という時代から始まりまして、1983年から1985年ごろ、工房というクラフトの商品づくりを始めました。これはオリジナルなもので下請を排除するという一つの活動の転換であります。1993年ごろから芸術活動を推進し、ちょうど障害者芸術文化協会なども発足した頃です。当法人も団体としてこのころからアートに何となく興味を持たれ始めたころではなかろうかと思います。
10年後の2003年にキャンパスの改築がありまして「衣食住+コミュニケーション」というテーマでレストランとかそば屋とか、パン屋を施設の中につくりまして、コミュニティーの方々が中に入ってくるという、施設を社会化するというような活動を10年。2013年ごろからは障害者ということよりも人間ということに関してテーマが少しずつ移ってまいりまして、今までは18歳以上の障害者を対象とした支援事業だったのですが、現在、子供のための施設づくり、ゼロ歳からの事業に取り組むということで、現在建築中でございます。そこでは「しょうぶ芸術文化センター」と称しまして、200名ほどの客席の劇場を併設いたしまして、多機能事業所を建設しているところであります。
特徴的なところは、活動全般の中で、やはり障害というテーマよりも人間というテーマに移り変わったということがここで一番お話ししたいポイントなのではなかろうかと思うわけであります。障害というテーマといいますと、やはり障害と健常という狭間をなくすということに疑問を持っておりまして、人間として全てが共通事項ですから、そういう視点に立てないものかということで日ごろ考えております。
次のページにプログラムがありますが、作品が制作の途中から私たち職員のコーディネートによってクラフトに転換するものもあれば、そのままアートとして保存されていくもの、本人の意思を確認することはなかなか難しいこの状況の中で、作品ができていくという日々でございます。
その中でもプロジェクトが2つありまして、プロジェクトと称しているだけなのですけれども、「nui project」、「nui」というのは縫うということですね。刺しゅうのグループで、こちらは1990年ごろから、自由にひたすら縫うと。そういうテーマの中で行っているプロジェクトであります。
本日はその次の「otto & orabu」という音楽ユニットについてお話いたしますが、2001年から約18年続けております、民族楽器を中心に形成したパーカッショングループでありまして、テーマは、ずれということで、頑強にずれる、パワーのある音、弱い音、不規則な音、それぞれ演奏する人が違うから、その個性をイメージ素材としてアレンジアップしてつくる音。純粋に楽しくセッションすることによって、心地よい不ぞろいの音として生まれ変わり、意外性のある新しいコラボレーションを目指しています。コラボレーションについては最後に説明したいと思っております。あと、職員によりますボイスグループがありまして、鹿児島弁で「おらぶ」というのは「叫ぶ」という意味なのですが、それとジョイントいたしまして「otto & orabu」というグループでございます。
とりあえず、クラフト、アート、音楽、全てが同じ発想なのですね。いわゆる障害を持つ方々から生まれる行為の結果といいますか、アートと言われたり作品と言われたりがありますけれども、その行為を、その素材をそのまま生かすということが基本になって、クラフトはやっております。ですから、例えば「nui」で縮んだ刺しゅうをしたものの、その縮んだ素材をいかにスタッフがそれを料理するかという話なので、修正はかけないわけなのです。素材としてクラフトの場合は、ここではコラボと言っていますけれども、ミックスしていく。通常の場合は、素材自体に対して要望をこちらから伝えて、それに対して障害を持つ方がその要望に応えるというあり方。これは労働だと私は思っているわけなのです。
創作というものは、あくまでもゼロから発信しなければならないわけでありまして、しょうぶ学園では、我々スタッフがどちらかというと労働者であります。ですから、我々スタッフは表現者であるとともに、彼らの素材を料理する労働者である。そういう結果がクラフトという形になります。しかし、労働をしなくてもいいもの、その旬の素材をそのまま食べればおいしいもの、料理ができないものに関してはアートの領域に入っていくという考え方なので、どちらかというと「otto & orabu」というのはクラフトの世界です。彼らのずれる音、その素材を料理しながら、我々とミックスしていくというのがテーマです。共鳴する不ぞろいな音というコンセプトが書いてございますけれども、参考にしていただければと。
それでは、VTRをお願いいたします。

(動画上映)

○社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園) いいですか。


○本郷座長 京都会場の確認をお願いします。


○青柴調査役 京都は終わっています。


○本郷座長 それでは、お願いします。


○社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園) 少し時間がないみたいなのですけれども、最後のページに「小数をデザインする」と書いてあるのですが、要は、整数で物事を見ていくと間に小数点が無数にある。その無数にある小数点を引っ張り込むというか、社会の中に、活動に、創作に引き込むという発想を書いているわけでありまして、どうしても我々はデザインというものを整数化したがるので、1の次は2だと、2の次は3だと、その間に無数にある可能性について、小数点に非常に興味を持っているわけでございます。小数点というのは、やはりおもしろいもので、割り切れないことが多いものですから、共鳴というのがこのバンドの特徴なのですけれども、どちらかというとコラボレーションとか共有というよりも、最近は共鳴というキーワードのほうがしっくりくるなと思っております。共鳴というのは辞書で引くと、一つの音が鳴ると、横にあるもう一つの音が鳴り響く、つまり、お互いが反応するわけなのですね。それと同時に、国語的に訳すと、共感するとかいうものが類義語に出てくるのですけれども、どちらかというと響き合うというのが非常に私はしっくりしています。
私は音楽ができないのですけれども、ドという音は、一つの音があって、もう一つの音と共鳴すると違う音を奏でるわけでありまして、そこには思いがけない音ができる。それは意図的につくると和音になるのですけれども、和音にない和音ができる。そういうところに行くと、普通の人が見えないところに行けるような感覚が生まれる。それも一つの芸術であり、創造の境地なのですね。コラボレーションという言葉が、簡単に言いますと共同作業といったり、お互いの価値観や目的がある程度近いところにある方々によるものではないかということを考えていたので、むしろ自閉症やそういう特別の障害を持つ方々が、我々の意味、価値観、目的、共有物と少し違うところに魅力があるわけでありまして、そういう方々と我々スタッフが勝手にコラボレーションと言うよりも、むしろ共鳴しているといったほうがいいのではないでしょうか。
障害を持つ人たちの意思が我々の目的や価値と一致しているかというと、どちらかというと離れています。それでも、響き合うことはできるというようなところに一つのテーマがありまして、文章の中ではミックスと使ったりマッチングと使ったりしているのですけれども、どうしてもこちらの意図するところから彼らの素材とマッチングしたり、あるいはアート、手をつけないとしてもそれを額装して美術館に飾っていくという行為そのものの関係性はある。どちらかが優位に立つことではなくて、やはり共鳴していることではないのかなというのが、きょうは音楽活動がテーマでしたので、そのような言葉にまとめさせていただきたいと思います。
それとチラシをコピーして先ほどお配りしましたのがちょっと宣伝なのですけれども、4日後に坂田明トリオとセッションをやることになっております。これは学園の庭でやるのですけれども、ちょっと宣伝のために、以上です。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ただいまの御発表について、御質問、御意見等はございますか。
今中構成員、お願いします。
 
 
○今中構成員 今中です。よろしくお願いいたします。
共鳴するときのスタッフは、そもそも音楽の専門性とか専門領域を学んだということはあえて必要ないですか?ありますか?
 
 
○社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園) あったりなかったりですね。バンドのために職員を採用していないので、たまたまピアノが弾ける人がバンドでピアノをやっていたりしますけれども、遊び程度でギターのコードがちょっと弾けるという方もいるし、ある程度知識があって私のかわりに若干音符を書いてくれているという人はいます。
 
 
○今中構成員 例えば生活介護のサービスとして提供するときは、主となる生活介護の職務の上に音楽活動とか絵画活動という仕事をオンしていくわけですね。それは、業務過多になりませんか?一方でそのような活動に対して加算があったほうが活動は充実するのではないかと私は思うのでが、いかがでしょうか?
 
 
○社会福祉法人太陽会(しょうぶ学園) おっしゃるとおりです。創意工夫しかないという教えを長い間聞いてきたので、うちにはデザイン企画室というものをつくっているのですけれども、全部支援員で構成しております。法人全体でうちは利用者が160人ぐらいなのですが、定数プラス何十人という方々を、人件費はかなり苦労しつつ雇用しているので、アートやデザイン専門の職員が、最低5人は必要ですね。
 
 
○今中構成員 私も同意見です。「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」のなかで私の最大の関心事は人材育成です。福祉と文化の両輪を携えた人材を作っていくというのがポイントだと思います。車輪が片方だけ、あるいは左右大きさの異なる車輪では脱輪します。この新法を正確に動かすことはできません。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
続きまして、特定非営利活動法人DANCE BOX神戸様、京都会場からよろしくお願いします。
 
 
○NPO法人DANCE BOX DANCE BOXの大谷です。どうぞよろしくお願いします。一応資料をお配りしているのですが、本当にざっくりとしか書いていないので、余り参考になさらなくてもいいかと思います。
DANCE BOXは1996年、今から22年前なのですけれども、コンテンポラリーダンスのアーティストを中心に、新しいダンスの創造環境を皆でつくっていこうということが目的でスタートしています。ですので、障害者のアート、芸術とつながっていくということからスタートはしていませんが、コンテンポラリーダンスというのは既存の表現にとらわれないというような考え方が、障害のある人のアートとも結果的につながっていくことになったのかと思っております。
具体的には2001年に、きょういらっしゃっていますけれども、堺のビッグアイの障害者芸術・文化オープンカレッジというものがありまして、これのダンスコースのコーディネートを始めることになりました。そういうことが始まることで、他の地域からもいろいろな障害のある人たちとの共同ということで、ディレクションやコーディネートを頼まれるということが、例えば奈良県の十津川村にある障害者支援施設「こだまの里」というところで、インドネシアの振り付け家ダンサーのマルティヌス・ミロトによるダンスワークショップをしたり、あるいは2004年には振り付け家と音楽家と美術家がその施設に一定の期間滞在して、いわゆるレジデント型のワークショップを通じて利用者さん、介護士さん、看護師さんとダンス作品の制作をしたりもしていました。
ビッグアイでのワークショップは毎年継続していたのですが、どうしても新しい人が来られるので、それほど極端に内容を変えることはできないのですね。でも、リピーターの人は、またことしも似たようなことをやっているねと、そういう不満が上がってきます。その中で、では、どうしようということで、どうしたらいいかということを聞いたら、作品をつくりたいと。作品づくりをやりたいのだという人がいたのです。では、どういう作品かと言ったら、うん、と。「障害者のダンス作品」というよりも「ダンス作品」だと。「障害者の」が取れて「ダンス作品」として通用するような作品がつくれないものかなという提案があったのです。
おもしろいと思って、そこで、循環プロジェクトというものをスタートさせました。それが2008年、障害のある、ないを超えて新しい身体表現を生み出す試み、障害をマイナスと捉えるのではなく独自性と考え、多様な方向から創造性を引き出して、ダンスの可能性、表現の可能性を未来に向けて切り開く試みということで、音楽とダンスと美術のナビゲーター3人を選んで、ずっと参加者の人たちと触れさせていくわけです。とにかくこれはナビゲーターといっても、導かないですね。聞くという、対話をして、何をしたいのか、その人が持っている表現への可能性をいかに引き出していくか。そうしないと、健常者のまねをしても全然おもしろくないよということを言うわけですね。みんなよく頑張ったね、健常者のように一生懸命やって頑張ってよかったねというような作品はつくらないぞみたいな話をお互いにしていて、「≒2(にあいこーるのじじょう)」というものが、結構難産でしたけれどもできました。
この作品は2008年4月の初演後、東京、松山、神奈川、兵庫県の三田と6カ所を巡演して、ある意味、私は障害者のダンスという枠組みを超えられたなと思っています。新しいコンテンポラリーダンスの作品として、例えば東京の世田谷美術館とか神奈川の桜美林大学とかが選んでくれたのは、それこそ日本を代表するコンテンポラリーダンスの単体の作品を選んでいた枠組みで、この循環プロジェクトを選んでくれたということもあって、幾分「障害者の」というところが取れて「ダンス作品」としての評価をいただけたのかなと思っています。
その後、この循環プロジェクトは2009年、ベルリンにある障害者とそうではない人が組織するThikwaというグループがあるのですが、そことコラボレーションを始めました。2011年、Art Theater dB Kobe、DANCE BOXが今、運営している劇場と滋賀での公演、2012年にベルリン・京都での公演を実施。神戸公演では客席を舞台に音や映像でも実験的な試みがなされて、ここは立命館大学との連携があって、立命館大学でそういう新しい映像や音響を研究している院生の人たちと協力して、総合演出は砂連尾理さんがしました。
その後なのですけれども、DANCE BOXの事業として大きなことを何かしているということは、今、休憩している感じなのですね。Thikwaとの共同作業は2年後ぐらいには再スタートする予定ですけれども、では、何もやっていないかというとそうではなくて、これは個人的になのですが、東京であったコラボ・シアター・フェスティバルの総合ディレクターをやったりとか、たんぽぽの家さんでやっている鹿の劇場のディレクションをやったりとか、あるいは国内ダンス留学@神戸というものをやっていまして、去年までで6期、約70名、80名ぐらいの卒業生が出ているのですが、その人たちが福祉の現場でも働ける。そういう人たちはアーティストとしての活動がもちろんメーンなのですけれども、福祉の現場でも仕事をするというようなことが起こっています。
障害者の文化芸術活動の推進において必要だと思われる施策について、これは本当に思いつくまま書いたのですけれども、障害者が健常者とともに芸術文化活動を継続できる施設の設置、劇場やリハーサルスタジオ、ギャラリー、工房、会議室、食堂があることが望ましい。先ほどもお話しいたしましたベルリンのThikwaがそうなのですね。劇場があって、スタジオがあって、工房があって、ギャラリーがあって、何よりもいいのは食堂があるということなのです。一緒に朝から稽古をしていて、お昼御飯を一緒に食べる。「縁食(えんしょく)」という言葉があるのですが、食が縁を結んでいるということもあって、稽古をしているだけではなくて、一緒に食卓を囲むというような環境が、食堂があることによって実現する。そういう施設が欲しいなと。
「美術に限らず」とちょっと書いたのですけれども、先ほど法律の話で、あの法律は恐らく障害者の美術ということを想定していて、舞台芸術というのはあの法律の中に余り当てはまらないような気がしたのです。舞台芸術を継続的に活動できる経済的な保証制度、制度ではないほうがいいのかもしれないのですけれども、保証をどうしていったらいいのかということ。
それから、質の高い芸術作品を生み出すための指導者の育成。例えば障害者とダンスのワークショップをして、非常に上手な人もいるのですけれども、上手だけではだめなのです。おもしろい人がいないとだめだと。ということは、アーティストとしての才能があって、そういうワークショップの現場でもおもしろいことができるという人の人材の育成が必要かなと思います。
それから、障害者、健常者がともに協働して作品制作ができる環境の設置。
5つ目が国内外の障害者が競演・交流できるフェスティバル等の開催。
障害者が滞在制作できる施設の設置。
医師、看護師、弁護士等、福祉の現場で活動する人への芸術文化に対するワークショップの実施。これは必ずDANCE BOXがライブをする場合は、その施設のお医者さんや看護師、介護士にも参加をしてもらいます。そのことでアーティストがある施設でワークショップをするということが継続的になかなかできない現状ですから、そうすると、その事業が終わった後に、その現場におられる介護士や看護師さんがそういう事業を継続できるだけのノウハウを手に入れているということが大事かなと思っています。
ちょっと五月雨的にずらっと並べたのですけれども、私のほうからは以上です。
 
 
○本郷座長 ありがとうございます。
それでは、ただいまの発表に対する御発言、御意見はありますか。
森田構成員お願いします。
 
 
○森田構成員 森田かずよと申します。私はDANCE BOXに育てていただいたダンサーの一人ですので、一つ追加として言いたいことが、私は2008年の循環プロジェクトからDANCE BOXにお世話になっていますが、実はその一歩前なのですね。もともとはコンテンポラリーダンスの育成ということで、Dance Circusという、コンテンポラリーダンサーが一つ舞台を、ソロだったりグループだったりで出せる場所というのが劇場とともにあって、私はまず、そこで一人でソロのダンスを出しました。それは障害とか、健常とかが全く私はなくて、初めてのダンスの場所がそこだったので、そこでまずは作品を出すことができて、そして、障害者というよりも、そこの後で、ダンサーとして、アーティストとして講評がもらえたということが、私はすごくよかったことだったと思っているのです。
その後、循環プロジェクトを通して、あれは障害のある人、ない人というプロジェクトの名前がつきましたが、それでも、やはりダンサーとして、アーティストとして私はここで何をするのですか、自分はそこで何をやりますかということをずっと突きつけていただいた場所だったから続けてこられたし、その後も作品を出すということの自信と怖さと、両方を教えていただいた場所だったと思うのです。そういう場所は非常に貴重だなと私は思っています。
 
 
○本郷座長 森田構成員、ありがとうございました。
 
 
○NPO法人DANCE BOX 森田さんが初めて、今お話ししていただいたあれに出ていただいたときに、本当に私は普通でしたね。特別なことではなくて、障害がある、ないということでなく、普通に表現者としてだめなところはだめだと言ったと思いますし、それに普通につき合っていく感覚というのは、実はとても大事だと思っています。
 
 
○本郷座長 ありがとうございます。ほかに御意見はございますか。ありがとうございました。
それでは、引き続き東京都教育庁様、お願いします。
 
 
○東京都教育庁 よろしくお願いいたします。東京都教育庁指導部主任指導主事 原島と申します。
教育庁の指導部は、教育委員会の中でも学校の指導の内容を扱う部署でございまして、今回、本部署が推進している特別支援学校の芸術教育の推進充実事業について御説明をさせていただきます。
東京都では、特別支援教育推進計画を平成16年に作成いたしました。そこから第一次実施計画、第二次実施計画がありまして、平成22年に第三次実施計画が策定、実施されました。その第三次実施計画から、特別支援学校の芸術教育の充実事業は、継続して行われてきている事業でございます。
資料をご覧ください。平成23年から芸術系大学の学生等の方に、特別支援学校に年間5回から多いところですと10回ぐらい、継続して美術、図工の授業等に入っていただいて、子供たちにいろいろな素材の扱い方やいろいろな手法を教えていただき、それを教員も学んできました。推進校として3校当てまして、3年間継続してやっていただいています。
東京都に特別支援学校が57校ございますけれども、視覚障害も聴覚障害も、肢体不自由も知的障害の4つの障害種別で延べ9校が実施校となりました。この事業には、東京藝術大学の美術部に全面的に御協力いただきまして、学生あるいは講師の先生に携わっていただいております。それぞれの素材とか技法とか、さまざまなことを継続して教えていただくことで、美術や図画工作の授業にも新たなものが吹き込まれてきて、その中で一人一人の子供たちの芸術、美術に対する興味、関心がきちんと高まってくることが指定校の報告書にあります。これらの学校が推進校となって周りの学校に対して成果を見せていくことや、美術教育の教員の研修会等で広がっていく中で、東京都の特別支援学校の美術教育が充実してきたと考えています。
推進校の作品は、東京都の公立学校美術展覧会の一部として、上野にある東京都美術館で、資料の右側写真のように、小中学校の選ばれた作品と並んで展示されることで、さらに、児童生徒の制作意欲も高めてまいりました。
資料を1枚めくってください。事業を展開する中で、子供たちの意欲が育ってくるところと、その中に芸術的なセンスとしてきらっと光る子供たちが見えてくるようになります。東京都の特別支援学校の子供たちの作品を見せる作品展には、総合文化祭美術展と公立学校美術展覧会があります。多くの児童生徒の作品が展示されます。しかし、そのきらっと光る子供たちの作品をもっとしっかり都民の人たちに鑑賞していただきたい、作者の障害のあるなしに関わらず、その作品がそこにあるだけで芸術なのだということをわかってもらいたいという趣旨で、資料にあります「東京都特別支援学校アートプロジェクト展」を始めました。
特別支援学校の中に在籍するすぐれた才能を引き出し、美術活動を通して都民に障害者に対する理解を促進するための美術展として企画をしております。本格的な美術展としての照明をはじめとして、美術品を扱う業者に委託して美術展を開催しています。この事業にも、東京藝術大学の美術部の協力を得て、美術展を開催してます。
今回で4回目になりまして、当初は都立特別支援学校だけで作品募集をしておりましたが、今回は都内の公立、国立、私立の特別支援学校も作品応募を依頼し、本年度の応募作品が956点となりました。この956点の中から審査を経て50作品を展示するというような美術展でございます。平成29年度は15日間で2、638人という来場者がありました。場所は、伊藤忠商事株式会社の共催により伊藤忠青山アートスクエアで行っています。来館者の方々からは、アンケートにより、非常に高い評価を受けるとともに、作品そのものから衝撃を受けたというようなコメントもいただいているところです。
また、この作品展示を一回で終わらせるのはもったいないので、次年度に1年前のアートプロジェクト展の作品の一部を、都内のいろいろな施設で展示していく事業が資料の下にあるアートキャラバン展です。都の施設の中で、都庁内のギャラリー、都立の2か所の図書館、東京都の都庁外の部署のビルでも展示をし、より多くの方にこれらの作品を見ていただくために開催しています。資料下の写真にあるように、アートキャラバン展もアートプロジェクト展と同様に、美術品として見ていただけるような展示を行っている事業です。
これらの事業の期待する効果は、資料の次ページにあります。都教育委員会として、「障害のある児童・生徒の社会参加・自立の拡大」につながって欲しいと考えています。具体的には、特別支援学校に通う児童・生徒の芸術的な才能の発掘と育成が、一つの視点になっています。将来、アートプロジェクト展への出品者から一般的な美術展に入選したり、この芸術的な能力を生かした就労をしたりするのではないか。そういう期待があります。
別の視点として、特別支援学校に通う子供たちの表現力の向上があります。本当に一人一人が潜在的に持っていた表現力が開花してくるようなところが見られます。資料の右にある作品の帽子は、視覚障害の生徒の作品で、帽子をかぶったということが実感できるようにたくさんの鈴がつけてあるのです。こういった一人一人の感覚を表現するような作品も見られるところです。こういった評価を通して、やはり人とかかわりが広がりますので、コミュニケーション能力の向上が図れるのではないかと考えています。
更には、地域生活の拡充という視点があります。美術活動の好きな方は、余暇活動として、生活の潤いにつながっていってほしい。卒業後もそういったことを通して社会との接点を持って地域の美術サークルなどに参加してくれることが望ましいと思います。
東京都教育委員会では、東京都特別支援教育推進計画・第三次実施計画を受けまして、平成29年3月に東京都特別支援教育推進計画(第二期)・第一次実施計画に入りました。その基本理念は「共生社会の実現に向け、障害のある幼児・児童・生徒の自立を目指し、一人一人の能力を最大限に伸長して、社会に参加・貢献できる人間の育成」です。この貢献という言葉は、無理な労働を強いるという意味ではないです。障害のある人々が何らかの形で社会とつながっており、その生きる姿が周囲の人々に様々な形で良い影響を及ぼしている。そういったことも含めて貢献という言葉にしております。
この理念の下に、東京都は事業を継続して進めて参ります。今後とも芸術系の大学との連携を図りながら、特別支援学校の芸術教育、美術教育について研究・開発をさらに進めて事業改善を図って参ります。
それから、アートプロジェクト展については、特別支援学校の児童・生徒が審査されて、自信を持つという経験は貴重であり、子供たちが自分を発見して、すぐれた才能を発揮してもらえるきっかけになる展覧会として継続して実施いたします。また、アートプロジェクト展の作品を、さらに多くの人たちに見ていただきたいということで、特別支援学校のスクールバスの車体に、作品の写真を掲載したラッピングバスを運行するといった活動もしています。さらに、質の高い作品集をつくって各美術館等にもお送りして見ていただくようにしています。
何よりも豊かな人間性と創造力を子供たちに持っていただきたいですし、芸術というところに対して自由に発想して取り組んでもらえるようにしていきたいと考えています。
障害による文化芸術活動の推進に関する法律により、本当に多くの特別支援学校の児童・生徒が在学中から専門家による指導を受けられて、美術活動への興味関心を高めて、その中で何人かでも才能を発揮する環境が整うということに期待しています。また、卒業後も生涯にわたって楽しいからやり続けたいということができるように、関係機関や企業等と連携して仕組みづくりを進めていきたいと考えています。
以上でございます。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ただいまの発表について、御質問、御意見はございますか。
 
 
○中島隆信構成員 慶應義塾大学の中島です。やられていること自体は、別に特に問題があると思わないのですが、2つお聞きしたいことがあります。1つはこのアートプロジェクト展と専門家による指導は普通校でもやられているのかということ。もう一つは、国立大学は国立大学法人なので、国立大学のリソースを東京都の支援学校の生徒の教育に使うということの是非です。国立大学は基本的には日本全体の教育に貢献するという使命もあるかと思うのですけれども、地の利を生かしたことかもしれませんが、東京都の生徒さんにかなり独占的に使っていらっしゃるということについては何かお考えはあるのでしょうか。この2点です。
 
 
○東京都教育庁 ありがとうございます。
後半の東京藝術大学の施策に関して、さまざまなことをされているので、ほかの県の子供たちも教えに行っていたり、ほかの市や近隣の子供たちに対して違ういろいろな事業も行っていることをお聞きしていますので、この特別支援学校のアートプロジェクト展だけということではないと理解しています。
1点目は申しわけありません。どういう御質問でしたか。
 
 
○中島隆信構成員 アートプロジェクト展の実施は伊藤忠の協力も受けているということですが、全てのほかの、特別支援学校ではない学校についてもやられているのかということです。
あと、後半のほうですが、東京芸大の学生が実際に行って美術の指導をしているということも全ての都道府県でやっているという理解でよろしいのですか。東京都と同じレベルで、それを全ての都道府県でこの学生さんたちがやっているという理解でいいのですか。
 
 
○東京都教育庁 美術学部の学生さんがどの程度されているか、私のほうは把握しておりませんが、その方々と話をすると、近隣の県ともさまざまな交流あるいは研究協力みたいな形でされているというのはお聞きしています。
それから、あくまでアートプロジェクト展は特別支援学校のものですので、特別支援学校だけで開催していて、ほかの区市町村立の小中学校などは、先ほどの公立学校美術展覧会というものがありまして、それも都美術館で飾られる。そういう美術展はございます。
 
 
○中島隆信構成員 どうして普通校で東京都の予算を使ってやらないのですか。なぜ特別支援学校だけを対象にするのですか。
 
 
○東京都教育庁 東京都立特別支援学校で始めて、特別支援学校のアートプロジェクトとして始めていますので、これは例えば市区町村それぞれ。
 
 
○中島隆信構成員 都立高校です。
 
 
○東京都教育庁 都立高校ですか。
 
 
○中島隆信構成員 そうです。都立高です。
 
 
○東京都教育庁 都立高等学校は高等学校で、高等学校の美術の専門のそういう会があって、そこで芸術展をされているのです。高文連というものです。
 
 
○中島隆信構成員 要するに、私が言いたいのは、こういうプロジェクトはいいプロジェクトなのですけれども、全ての学校共通にイコールフッティングでやられているかということです。それを教育庁がちゃんと検証しているかということだけです。
 
 
○東京都教育庁 お答えしますか。
 
 
○本郷座長 御質問に対して答えられる範囲で構いませんので答えていただけたらと思います。よろしいですか。
 
 
○東京都教育庁 私が存じているのは、今言ったように、高文連とかそれぞれの研究団体でこういう美術展はされている。その中で、特別支援学校のアートプロジェクトに対してはこういうことでやれるようにしたということです。
 
 
○中島隆信構成員 わかりました。つまり、それは要するに、横串を刺して検討しているのではなくて、かなり個別性が高いということでいいのですね。
 
 
○本郷座長 よろしいですか。
 
 
○東京都教育庁 結構でございます。
 
 
○本郷座長 ありがとうございます。
ほかに御質問は。高橋構成員お願いします。
 
 
○高橋構成員 新潟県の高橋です。今の御質問にちょっと似ているかもしれないのですが、特別支援学校の生徒さんの芸術性の高い作品を見つけ出したり評価したりして、その子供たちにとってとても意味のある事業ではないかと思うのですけれども、芸術関係の分野は同時に一つの社会を構成しているいろいろな人が一緒にできることの一つではないかと考えているのですが、そういった意味で、展覧会という意味ではなく、例えば一般の学校との芸術的な面での交流とか、そういった事業は何かなさっているのか。あるいはそういうことに対してどのようなお考えでしょうか。
 
 
○本郷座長 お願いします。
 
 
○東京都教育庁 美術のほうの裾野を広げる事業としては、休日などに特別支援学校の美術室とか図工室を使って自由な芸術活動をしてもらって、そこに近隣の学校の生徒とも一緒にできるような、そういった事業も展開しています。
 
 
○本郷座長 高橋構成員よろしいですか。
廣川構成員お願いします。
 
 
○廣川構成員 企画の内容は大変すばらしかったと思います。それとともに、現場の先生方の負担というところもちょっと気になるところがあるのですが、いろいろなことをやっていらっしゃるということは、恐らく現場の先生方も一生懸命努力をされている。その努力も大きいと思うのですが、そのあたりのフォローといいますか、特別にもう一人雇用しているのか、人材の面等についてお答えいただければと思います。
 
 
○東京都教育庁 派遣事業としては、美術の先生がやる授業に芸術家の人が入っていただいていますので、負担がかかるというよりは、お手伝いして、助言してという形になります。美術展の開催そのものは、これは全く全部業者です。よろしいでしょうか。
 
 
○廣川構成員 業者というお話をされたのですね。
 
 
○東京都教育庁 はい。
 
 
○廣川構成員 ありがとうございます。済みません。質問を変えます。そういう活動をするときに現場でいろいろな調整等が必要になると思うのですけれども、お話を伺うと、実際の指導は学生、専門の方にいらしていただいてやっているように思うのですが、もう一方で、現場での調整等があると思うのです。そのあたりの負担もかなりあるのではないかと想像するのですが、そのあたりのフォローについてお聞きしたいと思ったのです。
 
 
○東京都教育庁 わかりました。これも23年からやっていますので、最初のころは現場にそういう専門家が入ると先生の負担になるというのは声としても聞かれていました。ですが、3年間同じところに行っていただきますので、比較的そこがスムーズに回り始めると、美術の先生に対する負担はそんなにないと聞いています。
 
 
○廣川構成員 わかりました。ありがとうございます。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
京都の会場の中島構成員お願いします。
 
 
○中島諒人構成員 中島です。特別支援学校の設置義務は都道府県にあって、障害のある人と芸術の関係をより豊かにしていこうとしたときに、特別支援学校における芸術教育の役割はすごく大きいのではないかと思うのです。それで、今、お示しいただいたことは非常に魅力的だなと私も感じました。それで御経験を踏まえてなのですが、これはとりあえず美術についてのということなのですけれども、もちろんアートは美術だけではなくていろいろな分野があってなのですが、特別支援教育という場面において、御経験の中でその法律を通じてよりサポートされるべきことというのは、どういうことがあるとお感じなのか。少し総論的な話になるのですが、今は人的なサポートという形がすごく大きい核だったかなと思うのですけれども、総論として法律的にどういうサポートがあると特別支援学校においてありがたいかということをお聞かせいただければと思うのです。
 
 
○東京都教育庁 このアートを通しての最後にお話ししたところですけれども、子供たちの生涯学習の部分は引き続きやっていけると、子供たちが興味を持ったことが続けられるというのが非常に大きいと思います。そのためには、在学中からも興味をもったことができるような場所があると、それは子供たちの本当に興味関心がつながるものとして非常にいいことだなと考えています。
 
 
○中島諒人構成員 そうすると、やはり人的なサポートがすごく、多くのアーティストが、多様なアーティストが入るということが意味があるのではないかとお考えだということですか。
 
 
○東京都教育庁 人としても多分、そのようなことはあれば、それはありがたいと思いますし、ただ、場所としても恐らくあるのかなとは思います。
 
 
○中島諒人構成員 なるほど。わかりました。ありがとうございます。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。時間も来ていますので、次に移らせていただきます。よろしいですか。
それでは、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会様、お願いします。
 
 
○公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 通称芸団協と言っております。米屋と申します。芸団協についての説明は簡単にレジュメに記しましたので割愛させていただきます。
障害者の文化芸術活動といいましても、私どもは劇場やホールあるいは芸術団体のスタッフの研修の一環でセミナーの題材にしたりとか、学校へのアウトリーチ活動の一環で特別支援学校や養護学校に出向いたりというようなことはございますけれども、障害者と芸術に特化して活動しているわけではありませんで、組織としてこうした課題に特別議論をしているというわけでもございません。ですので、きょうの私の発言も、さまざまなそういった実演芸術関係者と交流がある立場から、障害と芸術というところでどんなことを感じているかということの個人的な見解でして、組織としてこうしていこうというようなことではないということをまずはお断りしておきたいと思います。
障害者の文化芸術活動の推進は、文化政策の理念の根本にもございますので、もちろん推進していかなければと思うのですけれども、ただ、そういった活動の奨励がプロになる、職業化するというプロセスの一つのように位置づけられて障害者芸術というくくり方をするのだとしたら、少なくとも実演芸術の分野では、それでいいのだろうかといいますか、少々違和感を覚えます。というのも、日本では古くは平安時代から、盲人に琵琶や管弦を習わせて官位を与えていたということがあって、江戸時代には盲人の職業組織が整備されまして、当時の音楽の主流である箏曲とか地唄三絃とか、そういったものを習得させて、演奏家というのは盲人の主たる職業となっていたという歴史がございます。
ですので、日本の音楽の一部は聴覚的なことがすぐれていた盲人の音楽家によって確立された部分もあると言えるわけなのですけれども、明治に入ってそうした職業団体はなくなりました。現在も目の不自由な方で演奏家として活躍されている方はいらっしゃるのですが、現在では、障害があろうとなかろうと、人を感動させられるだけの技能、表現力を持っている方が職業的なプロの芸術家としてやっていらっしゃるわけですので、障害があるのに演奏家としてすばらしいという言い方をするのはかえって失礼といいますか、そういった区別をすること自体が何かはばかられると感じるわけでございます。
日本には音大が40以上もありまして、毎年数千人の卒業生が出ていきます。こういう方々の中で音楽を仕事にするのは全員ではありませんし、ましてや演奏家として自立していくというのはほんの一握りです。大変な競争がございますので、少しばかりトレーニングの機会をふやしたからといって、それが職業的な音楽家になれるかといったら、そんな易しいものではございません。そうした中で、障害者芸術というふうにくくるのが適切なのかどうかというのは、少なくともプロの実演芸術の分野ではふさわしくないと思うのです。
とはいうものの、実際に何らかの障害を持ちながらプロの実演芸術家として活動していらっしゃる方は、演奏家以外にも多々いらっしゃいます。当方の調査では、一般にプロの実演家は、自分の技能の向上のために日ごろからトレーニングに多くの時間を費やしています。障害を持った方々が実演家としてやっていこうとすると、そうしたトレーニング、稽古に少なからぬ困難を抱えていらっしゃると聞いております。そういうハンディをカバーするような支援策は必要ではないかと思っております。きょうは後ほど、私が言うよりも、当事者のお一人でありますデフ・パペットシアター・ひとみの方に来ていただいておりますので、後ほど聞いていただければと思います。
職業化するということではなくて、文化芸術活動全般という中で、生活の中の楽しみの一部、生涯学習の一部として鑑賞したり体験したりということになりますと話は全然別でして、今日、そういった実演芸術の鑑賞・体験の拠点として劇場・音楽堂などの整備が進められているわけですが、公立文化施設に関しては、ハード面ではバリアフリー化がだんだん進んできていると思います。ところが、民間の劇場やホールには、小規模なものがすごくたくさんございまして、ハード面でのバリアフリーは徹底しておりません。東京には小劇場やライブハウスが非常に多くありますが、車椅子が入れないところも多々ございます。演劇の公演が見たいという御要望をいただいても、車椅子の方はお断りするしかないというようなお話も聞いたことがあります。そういったハード面でのバリアフリーが実現していなくても、それでも、マンパワーでカバーするということはよく行われております。目が不自由な方に対して特別な説明をしたり、プログラムの音読をお渡ししたりというように、特別なサービスを提供している事例はかなり以前から行われております。
今でも上演中の劇場の最寄りの駅まで視覚障害者の方をお迎えに行って観劇してもらっているというようなことも結構行われています。この有識者会議の構成員のお一人の廣川さんが所属されているTA-netさんの活動で、そういった障害をお持ちの方に、鑑賞できるように情報保障の提供の仕方の工夫などの取り組みが重ねられてきていますので、そうしたことの認知は実演芸術の制作に携わるスタッフの中にも徐々に知られてきているようには思います。
しかし、こういうサポートをしている劇団や音楽集団の方々にお話を聞きますと、余りそれを公言していないとおっしゃるのですね。ただでさえぎりぎりのマンパワーで運営しているところに、そうしたサービスを必要とする方が複数いらっしゃったら、もう対応し切れなくなるので、ひっそりとやっているというような言い方をされます。劇場も芸術団体も、芸術の創造と提供を続けていくためのリソースがぎりぎりで、そのしわ寄せが最低限の人数で、不十分な報酬で運営せざるを得ないという状況を生んでおりますので、そこにプラスアルファでこうしたサービスを提供してくれと言われると、なかなか難しいのではないかと。ですので、芸術団体がそうしたマンパワーのゆとりを持てるようになるのが理想なのですけれども、まずはそうした障害を持った観客、聴衆への追加的なサービスが臨機応変にできるような支援の制度設計が一つ必要ではないかと思っております。
最後に、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律の成立に際して、どう考えたらよいのか、ちょっと疑問に思っていることが1点ございます。ここで言う障害者とは一体どの範囲の方々のことを言うのか。障害者手帳を持っている方だけが障害者なのか、文化芸術基本法にはあらゆる人々が文化芸術活動に参加できるようにということをうたっているわけで、私ども芸術を提供する側としては、あらゆる人々にプラスアルファのサービスをしながらも届けたいと思っているわけなのですが、そうしたときに、例えば社会的な障害者という呼び方がいいのか、震災や犯罪の被害者でPTSDを抱えているとか、引きこもりがちであるとか、そうした方々、社会包摂ということが課題になっておりますけれども、そこと障害者へのサービスがどこかで区切られてしまうのかということに、ちょっとした懸念を持っております。
社会的弱者という言い方が適切かどうかわかりませんけれども、芸術はそうした少数者に寄り添えるものとしてありたいと考えておりますので、この法律のせいで制度が整っていって、何か障害者の範囲というものが狭められてしまうとしたら、ちょっと残念なことなのかなと思いますので、文化芸術基本法の理念にのっとって、柔軟な対応が求められるのではないかということがございます。
では、具体的にデフ・パペットシアターの方々に御発言いただきたいと思います。
 
 
○本郷座長 それでは、デフ・パペットシアター様のほうからお願いいたします。
 
 
○(公財)現代人形劇センター 私は、現代人形劇センターの松澤と申します。
私が劇団のほうの説明をいたしまして、デフ・パペットシアターの代表の善岡には聾者がプロの人形劇の役者として活動している立場から発言してもらいたいと思います。

デフ・パペットシアターは、現代人形劇センターが企画運営するプロの人形劇団です。私ども現代人形劇センターは、昔々に「ひょっこりひょうたん島」をやっておりました人形劇団ひとみ座が公益的な仕事をするために作った財団法人で、デフ・パペットシアターは1980年設立です。設立趣旨を、ここだけは読み上げます。
「人形劇をより広め、より高め、人形劇に対する社会的・文化的要素に応える一つの方向として聾者と聴者が協同する劇団を設立する。
聾者の表現力を生かした、視覚に訴える作品をつくることで、人形劇に新しい表現を開きたい。そのためには職業化が必要と考える。聾者と聴者が協同する人形劇団としては、単に活動分野を広げるだけではなく、常につくる作品に高い水準を求めるという自覚と責任を持つ意味でも、職業化が必須と考える。
また、聾者の表現活動への参加全般の活性化に寄与したい。」
大変高邁な思いを持って作りました。ここでもおわかりのように、基本的に人形劇のために作りました団体で、聾者のため、障害者のためということではございません。ただ、聾者が一緒に活動しているということで、聾者とのつながりは非常に大きいです。
観客は、人形劇なのですが、大人が大体8、子供が2という割合です。そのうち聾者は平均すると2割程度です。ということは、聞こえる大人の観客がほとんどだということです。
作品制作に関しましても聾者、聴者ということは余り意識しないで作っております。2018年2月に第14回目の作品となる「河の童」という作品をつくったのですけれども、大体2年から4年に1回新しい作品を作っております。
ここにありますように、多くの聾のスタッフの方と一緒に作品を作っております。作品をつくる場合の経費は、助成金や協賛金を必死で集めます。ただ、全額をそこで調達することはできませんので、その後の公演で補填をしていくというような形です。
私どもはプロの劇団なのですが、どういう公演形態をとっているかといいますと、中心になっているのが実行委員会形式というもので、全国で、今までに650地域ぐらいに実行委員会を組織して、公演を主催していただくという形でやっております。
そのほかには依頼公演、助成公演、文化庁の委託事業の学校での上演・ワークショップというようなものが国内公演の中心です。言葉にあまり頼っていないということもありまして、海外公演も13回ございます。
1年で大体どんな活動をしているかといいますと、先ほど挙げました実行委員会による公演が20回から30回、これはほとんど地方公演です。主催公演は1年に1回あるかないかぐらいです。依頼公演、これはワークショップや講演も含めて30~40回、文化庁委託の学校上演・ワークショップが50回前後というような割合です。
下に2枚写真がございますが、左側の「河の童」は、先ほど原さんからもお話がありましたが、川崎市に共催していただきまして、今年2月に初演を迎えました。隣は聾学校で音のワークショップ、聾学校では大変評判がよくて、聾の子供たちは決して音楽が嫌いでもないし、やりたくないわけでもないし、とても楽しんでやりますので、音のワークショップはここ30年ぐらい前から始めているのですが、聾学校では人気のプログラムです。
では、善岡から、実際にどういうことなのかをお話ししたいと思います。
 
 
○本郷座長 お願いします。
 
 
○デフ・パペットシアター・ひとみ デフ・パペットシアター・ひとみの代表をしております善岡と申します。もともと人形劇に大変興味があったか。いいえ、そうではないのです。芝居についても余り興味はなかったのですけれども、聴覚障害者です。生まれは北海道で、小さな小樽の町です。健聴の小学校に通いました。その小学校の近く、歩いて10分ぐらいのところに聾学校がありました。お互いに接点がなくて、手話も大変珍しいことで、聞こえる友達がそんなことを言っていました。そうですね。手話って珍しいねと私たちもしゃべっていました。お互い接点があれば手話などはそんなにめずらしいことではないのに、お互い接点もなく成長いたしました。
大人になった、社会人になったときは、テレビで手話のドラマが大変ブームのときでした。でも、聞こえない人にとっては、字幕が余り出てこなかったということと、手話以外の聞こえる人たちとのしゃべっているところがよくわからなかったということで、自分たちで映画をつくろうということになりました。それで自主上映会をやりました。その映画を見た人たちから、非常におもしろいと言っていただいて、それをきっかけにデフ・パペットシアターに入ったらどうかというふうなお誘いを受けたのがきっかけです。入る前に、私は劇団のことも全く知らなかったので、一回劇場のほうに見に行こうと思って、東京会場に参りました。
手話のできない聞こえる友達と一緒に行って、大変緊張して入りますと、聞こえないお客様、聞こえるお客様、それから、見えない方もいらして、車椅子の方もいらっしゃいました。外国の方もいらっしゃって、音声セリフの全くない人形劇でした。目で見てわかる表現で、大変私も感動いたしました。その芝居が終わった後、見えない方が、目が見えないので人形をさわらせてくださいと言って、さわったイメージをつかまれていました。そうか、そういうやり方もあるのだということがわかりました。私たちの時代は、舞台のメンバーを見ているだけではなく、お客様全体を見て感動する、感動を受けたわけです。それで劇団に入ろうと決めました。
その後の活動は、先ほど松澤さんのほうからお話がありました、全国のいろいろなところに公演に参りました。公演は実行委員会方式で、公演を決めてもらって、私たちがそこに行くということです。日本から離れた小さな島で公演をするということもあり、その島の中で、手話サークルがありました。手話サークルがあるのですけれども、聞こえない人がいないということで、小さな島だからいないだろうと思って、手話サークルのほうから、私たちの公演を呼んでいただきまして、公演が終わった後、聞こえないお年寄りの方が、すごくおもしろかったと言ってきてくれたのです。
島の中に手話サークルがある。そこは聞こえない人がいないだろうと思ってサークルをやっていたのに、聞こえないお年を召した方がいらっしゃるということがわかりました。そういう話を聞いて、私たちの公演を見るために、聞こえないお客様が来てくださった。聞こえない人はいないだろうと思っていた手話サークルの人たちも、私たちの公演をきっかけにそこでお互い出会い、私たちの人形劇のお芝居を通して、聞こえない方と手話サークルが出会うきっかけができたということを、その瞬間を見たときに、私たちの芝居の活動は、もしかしたら大きく日本を変えるかもしれないとも思いました。そういう活動がいろいろありました。それで魅力を感じて、今もずっと続けております。
時間も余りないですね。では、このぐらいで、以上で終わりにしたいと思います。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
現代人形劇センター様、どうぞ。
 
 
○(公財)現代人形劇センター 申しわけございません。もう一点だけ、善岡が言わなかったので、稽古の件なのですけれども、皆さんが想像できないと思うのでちょっと申し上げるのですが、普通の稽古ですと、演出家が、ちょっと何々君、何とかでと言ったら、幕の後ろにいてもわかりましたと言って出てこられるのですが、聾者が幕の後ろにいて、演出家が善岡君、何とかと言っても彼には聞こえませんので、誰か聞こえる人が行って、呼んでこなくてはいけないのです。
また、人形を持っているときに、聞こえる人でしたら、演出家にこうやればいいのですかとか、ここは何とかでと人形を持って話ができるのですけれども、彼らの場合、一旦人形を置いて、手話で話をして、それを通訳が訳してと、非常に時間がかかります。もっとおかしいことは、彼らは聞こえませんから、何かの用事があって部屋から出ていこうとするときに、その人に用事があると、私たちは走って追いかけなければいけない。幾ら叫んでも聞こえないので追いかけていくというような、稽古は非常に時間がかかるし、そういうちょっとしたことの積み重ねで聾者にも聴者にもフラストレーションがたまって、大変な稽古です。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ただいまの芸団協のお三方の御発言、御発表に対しまして、御質問、御意見はございますか。
柴田構成員お願いします。
 
 
○柴田構成員 御発表ありがとうございました。
芸団協さんにお伺いしたいのですけれども、障害者の文化芸術活動に関する実態調査、アーティストであるとか文化活動者でありますとか、その人材や活動の実態調査は芸団協さんの中で行っていらっしゃるのかどうか。これは要望に近いことですが、どれだけの活動者の方々がいらっしゃって、どのような活動をされているのか、そのベースとなるエビデンスは、とられておりますか?その情報が余りにも足らないのではないかと感じております。
この有識者会議の前身の懇談会のときにも御意見が出たのですが、どちらかというと、現代アートに関しては非常に活発なのだけれども、実演芸術に関しては、活動に元気がないという指摘が出ました。これから障害者の文化芸術活動を考えるときに、実演芸術部門をもう少し活発化していかないといけないという方向性が出ておりました。御意見がありましたら、お願いいたします。
 
 
○公益社団法人日本芸能実演家団体協議会 まず、最初の御質問では、そういった調査は今までしたことがありません。先ほど申しましたように、障害者を持っている実演家というようなくくり方をすることは、かえって失礼というような気もしますので、個々人に対してそういった調査をしたことはございません。ただ、カンパニーに関してですと、きょう来ていただいたデフ・パペットシアターさんとか、私どもの傘下ではないのですけれども、劇団態変さんであるとか、あとは個人でもやっていらっしゃるダンサーの方とかいう固有名詞は幾つかわかっているので、そういったところは活動しているねということは、関係者の中では共有しているという状況です。
ただし、やはり何をもって障害と言うかということにも関係しますけれども、デリケートな問題を含んでおりますので、そういった調査はやり方も含めてとても難しいかなということは今まで感じてきていることです。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。ほかに御質問は。廣川構成員お願いします。
 
 
○廣川構成員 デフ・パペットシアターの方にお聞きいたします。先ほど手話通訳というお話がありましたけれども、実際にほかの聞こえる健聴者の集団と比べて負担に感じている部分、例えば人材とか、資金の部分等について負担に感じているところ。もしそういう制度として支援してほしい部分があれば、何かお話をお聞かせいただければと思います。
 
 
○(公財)現代人形劇センター まず、手話の通訳に関してなのですが、レジュメにも書いたのですが、稽古のときには必ず手話通訳が必要になります。しかし舞台や、人形劇を知っている人でないと通訳ができないという面がありまして、ひとみ座でも手話ができる人がいますので、その人に頼んだりすることもありますが、普通はメンバーが、役者が自分の役をやりながら通訳をやっています。私たちはここは非常に問題だと思っているのですが、専門の通訳の方がいいかというと、なかなかそこが難しいと思います。ですから、解決方法としては、やはり私たちメンバーが手話をしながら時間をかけてやっていくということではないかと思います。
時間をかけるということは、稽古ですから、その間、収入がなくなるわけですから、何か支援があったら嬉しいです。でも、稽古代を出してくださいということではなくて、公演数がふえて、それによって稽古時間が長くとれることが理想です。では、ふえるためにはどうしたらいいのかというと、劇団への直接的な支援の他に、劇場とか鑑賞団体の側にも支援していただいて、彼らが本当に呼びたい劇団を、その助成金を使って呼ぶ、私たち創造団体はそれに応えられるものを作っていくということではないかと思います。
 
 
○廣川構成員 ありがとうございました。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ほかに何か御意見は、ありませんか。森田構成員お願いします。
 
 
○森田構成員 話を蒸し返すようで済みません。障害者の芸術というのは、私も実はすごくひっかかっていて、ここに書いていらっしゃるように、芸術上の評価に障害の有無は加味されないものというのは、私はそのとおりだと思うのですけれども、だからといって、いないことにしないでほしいのです。そこが私はすごく気になっていて、よく毎年のように話題になるのが、では、映像で障害のある役者は見ますかというと、やはりほとんど見かけないのですね。これはやはり、もういないものとして、健常者の中でその社会はでき上がっているのです。私も何回か映画のワークショップに行くと、こういう役はやれるかもしれないけれども、職業的には無理だよねと堂々と言われたことが何度かあるのです。
そう言われてしまうと、もう何も言いようがなかったのですね。それをどうしたら社会は変わるのだろうかと思って、ずっと、私はダンサーと役者をやっているので、そう思っています。特に演劇をやる現場になると、それが如実に出ます。そういうことが1つ。
多分、もともと健常者の実演家自体が仕事にならないというのも事実だと思っていて、私は小劇場の役者にたくさん友人がいますので、どんなに苦しい生活をしてみんな頑張っているかを知っています。なので、結局障害者のアーティストを守ることではなく、アーティストを守ること。全体を守ることが障害のあるアーティストにつながっていかないといけないのですけれども、それが今はすごく分断して語られているので、そこはもう何かずっと平行線になるような気はしてしまいます。なので、障害者ももちろん、何が障害者かというのは語らなければいけない問題なのですが、だからといってそこの問題をなしにはしてほしくないです。そして、施設とか劇団とかに所属しているとまだ存在をわかっていただきやすいのですが、一アーティストになると全く姿が見えません。実はいます。いますけれども、本当にいないことになります。なので、これは調査してほしいなと実は思っています。どれだけの人がいるか。障害のあるプロダクションがことし、この間でき上がりました。ただ、これも2020のあおりだけでできていて、結局2020関連のイベントに出ているということだけなので、結局その後はどうなるのかなと思って、私も中にいる人なので言いにくいのですけれども、結局障害のある人がどう能力を生かしてとか、いろいろなことも含めてプロとしてやっていくということの現実をもう少し広く見ていただきたいということ。
やはり知的の障害のある人と精神の障害のある人、施設にいる人、施設ではない人というと、多分、すごく支援の仕方が違ってくるのだと思います。それをこの一個の現場で、特に舞台芸術と美術をまぜてという法律を話し合っていることは、全体としてはいいことかもしれないけれども、多分、個々の細かいことになっていくと、もう少し深い話につなげていくことをしていければと思っています。
以上です。
 
 
○本郷座長 よろしいでしょうか。時間も来ているところなのですが、まだ御発言のない構成員の方がいらっしゃいましたら、京都会場とこちらの会場どちらでも構いませんので、御発言、御質問等お願いします。
京都会場の重光構成員、いかがですか。
 
 
○重光構成員 時間もありませんので、また次回以降でお願いしたいと思います。
 
 
○本郷座長 ありがとうございました。
ほかにまだ御発言されていない方はいらっしゃいますか。ありがとうございました。
それでは、時間も参りましたので、本日はここまでとしたいと思います。
事務局から事務連絡があればお願いいたします。
 
 
○青柴調査役 本日は、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。
今後ですけれども、第1回目、第2回目にいただきました御意見を踏まえまして、計画案の作成に入ってまいりたいと考えております。
今後ですが、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律第7条の規定に基づきまして、1つ目としましては、各省庁の取り組みや有識者の意見等の整理及び取りまとめ、2つ目としまして、基本計画案を作成するために必要な業務、これらを行っていただくために、要綱のように設置されます障害者による文化芸術活動の推進に関する国の基本計画案作成のためのワーキンググループ、いわゆるワーキンググループのほうで11月から12月にかけまして3回程度議論いただきまして、原案の作成に入っていきたいと思っております。
作成につきましては、机上配付しております資料なのですけれども、机上配付のみと右肩に書いてある資料に基づきまして、今後、議論を進めてまいりたいと考えております。イメージとしましては、これまでの法律成立の背景や経緯、関連法との関係、課題等に関しまして「はじめに」から、後半に書いてあります基本的な方針、3つの方針なのですけれども、障害者の文化芸術活動の幅広い促進、障害者による芸術上の価値が高い作品等の創造に対する支援の強化、3つ目としまして地域における障害者の作品等の発表、交流の促進により、心豊かに暮らすことのできる住みよい地域社会の実現。これらの方針を踏まえまして、今日いただきました御議論等を踏まえまして、具体的な施策の目標及びその達成時期、最後に、今後の長期的な視点を目指すという意味で「おわりに」という構成から入っていきたいと思っております。
これらの案につきましては、次回の有識者会議を12月18日火曜日の10時から12時で予定しておりまして、こちらのほうでまた御意見をお諮りしたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
事務局からの事務連絡としては以上でございます。
なお、今日は長時間にわたって御議論いただいているのですけれども、もしまだ意見等が十分に御発言できてない場合等もあると思いますので、机上に御意見記入用紙を置いております。こちらに御意見を書いていただきまして、事務局に提出いただきますと、それもまた御意見として採用させていただきますし、今後、2~3日以内ぐらいであればメール等で御意見をいただきましてもそれを今回の御意見として捉えさせていただきますので、その旨もよろしくお願いしたいと思っています。
それでは、長時間にわたりまして御意見をいただきまして、ありがとうございました。
本日は以上でございます。どうもありがとうございました。
 
 
○本郷座長 それでは、これで終了とさせていただきます。ありがとうございました。
 

 

 

 

—— 了 ——

 

 

 

 

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