- ホーム >
 - 政策について >
 - 審議会・研究会等 >
 - 年金局が実施する検討会等 >
 - 年金広報検討会 >
 - 2022年6月29日 第16回年金広報検討会
 
2022年6月29日 第16回年金広報検討会
年金局
○日時
		令和4年6月29日(水)13:00~15:00
	 
	○場所
		東京都千代田区平河町2-4-2
		全国都市会館 3F 第2会議室(オンライン開催)
	○出席者 (五十音順)
上田 憲一郎(座長)
佐久間 智之(構成員)
樽見 英樹(オブザーバー)
富永 朋信(構成員)
中村 裕一郎(オブザーバー)
原 佳奈子(構成員)
福本 浩樹(オブザーバー)
森下 郁恵(構成員)
山口 真一(構成員)
横尾 良笑(構成員)
○議事
○上田座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第16回「年金広報検討会」を開催いたします。
		皆様、大変お忙しい中、御参加いただき、ありがとうございます。
		今回も、前回同様、オンラインの開催とさせていただいております。
		本日の出欠状況ですが、本日は、太田さん、殿村さん、森オブザーバーより、御欠席の御連絡をいただいております。
		それでは、議事に入る前に、事務局から資料の確認をさせていただきます。
		○菊地係長 年金局年金広報企画室の菊地でございます。
		構成員の皆様には、資料を事前にメールで送付させていただいておりますが、改めて確認させていただきます。
		本日の資料は、議事次第、資料1-1「年金広報検討会開催要綱」、資料1-2「年金広報検討会構成員名簿」、資料2-1「第4回令和の年金広報コンテストの実施について」、資料2-2「第4回令和の年金広報コンテスト募集要項」、資料3-1「伝わる年金広報の在り方」、こちらは山口構成員の提出資料でございます。
		資料3-2「年金広報検討会<ジツケンの活動事例>」、こちらは横尾構成員の提出資料でございます。
		最後に、資料4「年金の「見える化」Webサイト 公的年金シミュレーターの運用状況について」です。
		事務局からは、以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		それでは、カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。
		これより、議事に入りたいと思います。
		本日は、「第4回令和の年金広報コンテストの募集について」、「年金広報のあり方について」、「公的年金シミュレーターの運用状況について」、「その他」、この4つを議題といたします。
		まず、議題4の「その他」からになります。
		人事異動の関係で、年金広報検討会開催要綱の改正がございます。
		資料1について、事務局から御説明をお願いいたします。
		○菊地係長 事務局の菊地でございます。
		それでは、資料1を御説明申し上げます。
		資料1-2をお開きください。
		年金広報検討会構成員名簿でございます。
		年金広報検討会開催要綱の改正ですが、GPIFの森様の役職が審議役から理事に変わることになりました。
		つきましては、開催要綱の別紙の名簿を御覧のように改正させていただくことといたします。
		なお、事務局にも異動がございます。
		岡部年金局総務課長が年金広報企画室長を兼務することになりました。
		事務局からは、以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		それでは、岡部総務課長より御挨拶をお願いいたします。
		○岡部総務課長 昨日付で年金局の総務課長に就任いたしました、岡部でございます。
		よろしくお願いいたします。
		異動前は年金課長でございまして、年金制度の広報、国民に正しく伝わることの大切さを痛感したところであります。
		先生方の御指導をいただきながら、さらに年金広報を充実させていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
		○上田座長 ありがとうございました。
		続いて、議題1の「第4回令和の年金広報コンテストの募集について」に入りたいと思います。
		まず、資料2について、事務局から御説明をお願いいたします。
		○菊地係長 事務局の菊地でございます。
		資料2-1「第4回令和の年金広報コンテストの実施について」について御説明申し上げます。
		資料の2ページを御覧ください。
		第4回令和の年金広報コンテストの開催要項でございます。
		現在、年金広報コンテストに関しましては、ポスター部門及び動画部門の2つの部門で開催しております。
		応募期間に関しましては、6月1日から9月9日までとさせていただいております。
		応募作品の審査手続は、外部委託業者が第1次審査をいたします。
		その後、外部有識者からなる年金広報コンテスト審査会において審査を行い決定していくとこととなります。
		今後の動向は、後日御報告申し上げたいと思います。
		続きまして、資料の3ページをお開きください。
		第4回令和年金広報コンテストの周知・広報活動の状況を御説明申し上げます。
		まず、学校へのアプローチがございます。
		今回は、外部委託事業者から、コンテストの応募実績等がある小・中・高・専門学校・大学の担当者の皆様に、コンテスト周知のチラシを郵送しているところでございます。
		続きまして、後援団体の拡充でございます。
		ポスター部門において小・中学校の部を新設させていただいたことに伴いまして、全国の小・中学校への周知の観点から、新たに3団体から後援をいただくことになりました。
		既存の後援団体に加えまして、全国市町村教育委員会連合会様、全国連合小学校長会様、全日本中学校長会様からの後援をいただいているところでございます。
		続きまして、学校へのアプローチでございますが、学生対話集会の開催校におけるコンテストの案内の実施や、こども霞が関見学デー等におきまして小・中学生を対象とした年金のお話し集会を夏休み期間中に実施させていただき、自由研究の材料をご提供するとともに年金広報コンテストへの参加を促す予定でございます。
		4つ目に、厚生労働省公式ツイッターでの情報発信を行う予定でございます。
		こちらは、開催期間に4回ほど発信させていただく予定でいるところでございます。
		今後とも、積極的な情報発信を行うとともに、応募を促進してまいりたいと考えているところでございます。
		事務局からは、以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		それでは、ただいまの説明について、御意見や御質問がございましたら、お願いいたします。
		皆様から特に御意見や御質問はございませんでしょうか。
		よろしいですか。
		それでは、皆様のほうでもぜひ第4回令和の年金広報コンテストの応募促進について御協力と御支援をお願いできればと思っております。
		それでは、次の議題に行きたいと思います。
		議題3の「年金広報のあり方について」に入ります。
		資料3に入る前に、事務局から御説明をお願いいたします。
		○菊地係長 続きまして、事務局の菊地から御説明申し上げます。
		これまで、年金広報検討会では、年金ポータルをはじめといたしまして、被用者保険適用拡大特設サイト、公的年金シミュレーター、QuizKnock動画、学研まんがなど、様々なコンテンツについて議論を重ねてまいりました。
		皆様の御助言をいただいたこれらのコンテンツは、多くの国民の皆様に御視聴や御利用をいただいております。
		改めまして、御助言をいただきまして、誠にありがとうございます。
		これまでは個別のコンテンツを中心に議論してまいりましたが、これまで以上に魅力的なコンテンツが御提供できるよう、年金制度を俯瞰しつつ多種多様なコンテンツを通底するような周知・広報の在り方について議論することを目的といたしまして、年金制度の広報の在り方について議論をお願いするものでございます。
		今回は、年金広報の課題や在り方について大きな視点から議論を促すことを目的といたしまして、山口構成員から御発表いただきます。
		それとともに、厚生労働省や日本年金機構をはじめとする様々な関係団体様が発行されるパンフレットやリーフレットの内容を充実させるための観点から、横尾構成員から御発表いただきたいと考えております。
		事務局からは、以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		思い起こせば、2019年2月7日に第1回の広報検討会が開かれましてから、今日で16回目になります。
		本検討会は、その間、足かけ3年にわたって、今、菊地さんからもお話がありましたけれども、年金ポータルサイトの作成、動画、まんが、公的年金シミュレーター、様々な年金の施策への提言など、活発に活動してきて、大きな貢献をしてきたのではないかと思っております。
		公的年金シミュレーターの作成が一段落ついたところで、そもそもの年金広報について一度立ち止まって考えてみるいいチャンスではないかと考えております。
		本日は、今、御紹介がありましたように、山口先生、横尾さんから、それぞれ15分程度のプレゼンテーションをしていただいて、その後、検討会の皆様、事務局を交えたフリーディスカッションを30分程度行いたいと考えております。
		それでは、早速ですが、山口先生から御発表をお願いいたします。
		○山口構成員 皆さん、こんにちは。
		ただいま御紹介いただきました、国際大学の山口と申します。
		資料を私から共有させていただきます。
		本日、私からは、「伝わる年金広報の在り方」というタイトルで、15分ほど話題提供をさせていただきます。
		まず、皆さんもよく御存じのとおり、年金制度については、誤解、あるいは、かなり不安といった情報がかなり社会に広まっているということがあります。
		例えば、こんなものがあります。
		世代間不公平論です。
		政策側、政府は、給付と負担の倍率のみに着目した情報は、世代間の連帯の構築の妨げになると注意喚起をしているのですけれども、一方で、いろいろなメディア、ソーシャルメディア、国民の間での会話といった中では、年金払い損とか、世代間格差を強調する情報がかなり流通しております。
		また、ほかの例で言いますと、年金改革議論で、これは最近の例ですけれども、厚生労働大臣が年金制度改革の検討について発言した際に、厚生年金の将来給付を削って基礎年金の水準維持に使うとなると制度の信頼を大きく毀損する可能性があるといったコメント、あるいは、かなり強い批判が盛り上がりました。
		これはあくまでも一例にすぎないわけですけれども、こういった様々な誤解や不安が生じる背景には、主に3つの要因があります。
		1つは、直感的な判断で、国民でもメディアでもこれまでの経験に基づいて直感的に判断するということがかなり一般的に行われます。
		2つ目として、確証バイアスと言われるものです。
		自分の信念に基づいた情報ばかりを集めてしまうバイアスのことでして、こういったことが国民にもメディアにも起こって、例えば、年金にネガティブなイメージを抱いていたら、ネガティブな情報ばかりを集めてしまいがちであるということが言えます。
		最後に、不満や不安の契機とありますけれども、こういった年金に対してのマイナスのイメージを通して、政府全体に対して不安や不満を抱く契機となっているということがあります。
		さらに加えると、年金に対する理解度が低いこともこういったことに拍車をかけています。
		こちらはアンケートの一例ですけれども、例えば、左のグラフを見ると、年金制度の内容について、「ある程度理解している」以上の人は半分しかいないわけですね。
		また、年金制度について詳しく知らない理由という回答を見ると、最も多いものは何から学べばいいか分からないこと、その次が分かりづらい内容の記事が多いことで、皆さんが大変分かりにくいと思っている現状があります。
		さらに、不運なことに、個人もメディアもネガティブな情報が好きだという研究結果も出ています。
		2006年のかなり古い研究で、こちらに書かせていただいたとおり、個人はネガティブな情報を偏重する傾向があって、メディアはネガティブな情報を優先的に報道するという研究成果があります。
		例えば、メディアの報道はネガティブな情報の効果を高める役割を果たしているといった指摘がかなりされておりまして、だからこそ何が求められるかというと、メディアがポジティブなニュースも公平に報道したくなるように、よりバランスの取れた情報の提供を促す、あるいは、インセンティブをうまく設計する、つまり、こちらのポジティブなほうも報道したくなるようなインセンティブ設計まで考えなければいけないのではないかということが指摘されています。
		こんな現状があるわけですが、「伝わる年金広報」に向けて一体どんな施策ができるのかということです。
		ここでは、4つ、ポイントを挙げさせていただいております。
		1つは、認知バイアスを把握する。
		2つ目に、組織的に対処する。
		3つ目に、正確な数字や事実を含めた分かりやすいコミュニケーションを行う。
		最後に、行動変容を促す。
		この4つについて、これから少し詳細を見ていきたいと思います。
		まず、第1に、認知バイアスを把握する。
		ここで今度は3つのバイアスが出てくるのです。
		1つが、確証バイアス、自分の既成概念を肯定する情報を人々やメディアは求めているということですね。
		2つ目が、カバー範囲バイアスで、メディアによって特定の話題が偏って報道されてしまう、つまり、全体ではなくて、特定の話題がすごく偏って報道されてしまう。
		また、精緻化バイアスもありまして、政治家やメディアは、情報の中で、伝わりやすい部分、少し言い方を換えると、センセーショナル、そういったところを選択的に取り上げてしまって、その他の部分を除外してしまうというバイアスがあります。
		こういったバイアスがメディアにも人々にも政治家にもあることを踏まえた上で、バランスの取れた正しい情報を伝えていくことが政府には求められているかと思います。
		2つ目、メディアへの情報提供に組織的に対処することが極めて重要です。
		これは国連の資料を参考に書かせていただいているのですが、まず、1つが、メディアをモニタリングしましょうということです。
		報道されている統計情報の範囲とその情報がどの程度正確に報告されているかということを常にモニタリングしておく。
		これは、どうなっているかという状況把握だけではなくて、自分たちが発信した内容の効果の測定、どれぐらい伝わったかという測定、並びに、これはよくなかったなと、改良につながるということも言えます。
		2つ目、誤った記述への対応です。
		どうしても報道の中で誤ってしまうことはあるわけですよね。
		そういった場合には、メディアに対して公式あるいは非公式に訂正を求めましょうということが強く推奨されています。
		特にこの手引書ではそこを強調されていたのですけれども、これは、メディアとの関係をつくって、逆に関係が強くなるという機会にもなる。
		また、広報担当者の設置も重要です。
		広報担当者の一覧を準備して、特定分野の専門家で、ジャーナリストが直接聞くことができる、連絡を取れる者を指定しておくということです。
		また、メディアトレーニングを受けた広報担当者を育成することも重要かと思います。
		ポイント3、正確な数字や事実を含めた分かりやすいコミュニケーションをしましょう。
		下に例があるのですけれども、左側はイギリスにおける年金受給者の特典に関するインフォグラフィックです。
		こういったインフォグラフィックがいっぱいあるのですけれども、右側は米国社会保険局で配布されている説明キットです。
		こういった非常に分かりやすいイラストを添えた数字と簡潔な言葉で伝えていくことが非常に重要です。
		インフォグラフィックの活用もかなり有効であると。
		情報提供のために国がツールキットを配布する、つまり、メディアがそれをそのまま使えるぐらいのツールキットを配布することも有用です。
		テーマに沿って、情報を全部出すのではなくて、絞って、ファクトと分かりやすいイラストで理解を促すことがここでは重要ということが言えます。
		最後に、行動変容を喚起する。
		どういうことかといいますと、その対象に望ましい行動を促してその成果を測定するキャンペーンの考え方が非常に有効です。
		つまり、ただ単に情報を伝達するのではなくて、それによって人々の行動をしっかり変えることを目的に広報をしましょうということですね。
		この考え方が特にヨーロッパとかだと非常に強いのですけれども、このキャンペーンの企画で意識することは、左下に書いていますが、目的、対象者を洞察すること、戦略とアイデアを考えること、実施して、最後に効果を評価することという一連の流れを意識して実施することが非常に重要かと思います。
		3つ目の箇条書きに書いてありますけれども、この政府のコミュニケーションは、全て、何を達成したいのか、それはどこに当てはまるのかなど、より広範なキャンペーンの文脈で捉えるべきであるということが言えて、それをして始めて業務の影響を評価できるということが言えます。
		また、仮に行動変容が起きなかった場合には、何で起きなかったのかという要因の分析も重要になってきます。
		ここからは少し事例を御紹介したいのですが、例えば、カナダ統計局はこんなことをしています。
		カナダ統計局は、2001年以来、カナダ統計局の公式リリース速報であるThe Dailyをトップページに毎営業日に掲載しています。
		ジャーナリスト向けに、最新ニュースとその裏づけとなる出版物や概念、定義へのリンクを提供しているのですね。
		さらに、過去には、特別なニュースリリースのときに報道関係者を招待して事前に報道内容やストーリーラインの候補を伝達しています。
		つまり、より分かりやすく伝えるという工夫をかなりしているわけですね。
		さらに、現在では、統計リテラシー獲得のためのワークショップやトレーニングを統計局にいる専門家がジャーナリスト向けにやっています。
		また、フィンランド統計局の事例も御紹介します。
		フィンランド統計局所属の専門家にはメディアでの知名度が低くなってきたという問題意識があったようで、2018年にアンケート調査を実施しました。
		その結果、2つのことが分かったのですね。
		1つは、専門家の情報、分野、連絡先などをウェブサイト上で簡単に見つけられるようにするためのアクセス性の向上へのニーズが非常に高い。
		つまり、統計局だけではなくて、統計局の各専門家にどうコンタクトを取ればいいかということもかなり求められている。
		もう一つが、これはフィンランドの事情だと思うのですが、テレビやラジオのジャーナリストから、統計局の発表する内容はいつも午前9時だった、それは重要な時間を逃していますよということを指摘していて、どうやら、フィンランドでは、午前8時ぐらいに情報が出ると、ジャーナリストがキャッチしてそれをすぐに報道しやすいらしいのですね。
		そういったことを受けて、フィンランド統計局では、ウェブサイトを充実させるとともに、午前8時のプレスリリースに変更するといった対応を行いました。
		このように、メディア対応の改善を検討するために、ジャーナリスト向けにアンケート調査をすることも有効と考えられます。
		以上を踏まえまして、これがまとめです。
		まず、分かりやすい情報の提供を心がける。
		インフォグラフィックスなどを用いる。
		計算根拠、データのリンク元、データリリース日まで情報に含めていこう。
		また、ウェブサイトは見やすくデザイン性の高いものにした上で、データを分かりやすくアップしていって、なおかつ、メディアが取り上げやすい時間にリリースする。
		さらに、今後リリースする日や内容を事前に公開していくことでメディアが準備できるということがあります。
		また、メディアの活用しやすいツールキットを提供する。
		制度や統計データに関するワークショップや講座を定期的に実施する。
		メディアへの情報提供に組織的に対応して、特定分野の専門家で直接ジャーナリストが連絡を取れる人を常に指定しておく。
		なおかつ、誤報があったらそれに訂正を求めることも大切である。
		最後、さらに、オピニオンリーダーやインフルエンサーと連携して情報を幅広く正確に伝えることが有効と言えます。
		以上が「伝わる年金広報」の話だったのですが、最後に、最近、フィッシングメールを問題意識としていただきまして、それをどのように改善できるかということをお話しして、終わりにしたいと思います。
		御存じの方も多いかと思うのですが、フィッシング詐欺、フィッシング情報が、コロナ禍にあってとんでもない増加をしております。
		左のグラフを見れば明らかなのですけれども、その中には、官公庁が絡むものもありますし、特別定額給付金のメール、厚生労働省・日本年金機構・ワクチン関係のメールやサイトといった様々なフィッシングサイトやメールがはびこっております。
		こういった中で、海外の事例を参照しながらどのようにすればいいかということをお伝えしたいのですが、まず、そういう意識を喚起するということで、キャンペーンが必要になってきます。
		その中で、この例はいいかなと思いました。
		ターゲットを絞って具体的な対策を伝えている、イギリスのGet Safe Online Weekというものがあります。
		このポイントは、すごく分かりやすいキーワード、この標語でいろいろなテーマを扱っているところでして、毎年、テーマを決めて、インターネットセキュリティー意識向上を啓発するというキャンペーンなのですね。
		常にポイントにしていることは、オンラインを安全に利用するのは自分自身であるということを強調して、だから、みんな、こういうことを学ぼうねということなわけです。
		そのように自主的な知識のアップデートを促している。
		脅威に関する情報や自分自身と企業を守るためのハウツーアドバイスを総合的に提供しています。
		ポイントは、知識獲得のみを目的としないで、ユーモア、専門知識、また、繰り返して伝えるといった説得のテクニックを組み合わせて行動を促すところがポイントだということが言われています。
		さらに、新しいスキルを効果的に伝えて、知識に従った前向きな報道ですね。
		だから、「怖いよね」という話、「どうなってしまうのか」という話だけではなくて、しっかりとポジティブな話を伝えていくことも結構重要だと言われています。
		また、1回この講座あるいはキャンペーンをすると、みんなのリテラシーは上がるのですけれども、それが定着しないという問題も指摘されていますので、それを定着させることや思考を習慣化させるための方策も求められています。
		これはある研究の結果なのですが、政府系のサイバーセキュリティーキャンペーンの統計を取ったものがあります。
		これは欧米とオーストラリアのものです。
		その結果、分かったことが、教育的介入が最も多かったのです。
		パスワードの定期的変更とかを伝えていくという話ですね。
		また、具体的な行動変容の指示も非常に多い。
		米国では、行動のチェックリストを出してチェックをつけてもらうというチェックリスト方式は、私が特に専門としているフェイクニュースのリテラシー向上の啓発とかでも使われているのですけれども、非常に自分ごと化しやすいということで有効かと思います。
		また、社会的影響、対策しないと何が起こるかということを伝えるものが多かった。
		いずれにせよ、こういうことをして、認知の向上だけではなくて、つまり、こんなフィッシングメールがあるので注意しましょうというものは、ありがちなものですけれども、それはあまりよくなくて、そのユーザーが被害から身を守って安全策を向上させる行動変容こそ目的にすべきということが言われていまして、また、その行動変容を促すような最適なプラットフォームの在り方を検討することも大切です。
		最後に事例を挙げて終わりにしたいのですけれども、こちらはヨーロッパの事例です。
		欧州サイバーセキュリティー機構は、サイバーセキュリティーを喚起するキャンペーンを展開していて、毎年10月の1か月間でやっています。
		EU加盟国は、共通の広報素材やメッセージを利用することができます。
		2021年には、サイバーセキュリティーへの認知・リスクと行動変容への理解向上が目的で、これは大変話題になったらしいのですけれども、ソーシャルメディアをかなり使っています。
		フェイスブック、ツイッター、ユーチューブを組み合わせてリーチを拡大して、動画やインフォグラフィックを使ったり、ゲーミフィケーションやヒントを盛り込んだSNS投稿をしたり、あるいは、ハッシュタグで工夫をしたり、こういった様々な戦略で社会全体に広めているようです。
		以上です。
		御清聴、ありがとうございました。
		○上田座長 山口先生、どうもありがとうございました。
		続きまして、横尾さんから発表をお願いいたします。
		○横尾構成員 どうぞよろしくお願いいたします。
		年金の広報に関しては、一番初め、10年以上前からずっと関わらせていただきまして、いろいろな団体さんのいろいろな取組があって、いろいろな成果を拝見してきました。
		その中で、これを知っていたらもっと根本的にいろいろなことがよくなるだろうなとか、この情報を知っていたらもっとうまくいくだろうなと思う知識は、日々、たくさんあります。
		それは15分だと伝えられないので、今日は個別具体的な話まではいけないのですけれども、私たちの専門としているところは、実際の利用者を見るということです。
		皆さんにも意識と無意識の問題があります。
		皆さんが今取り組めるものは、見えているところ、意識できているところですけれども、人間は意識していないところが96%あると言われていまして、そこの部分に結構大きな問題が隠れていたりします。
		見えている部分はすごく改善されているのです。
		見えていないところに割と改善できずに残っている部分がすごく多くて、そっちをやったほうがすごく成果が出たりするという私たち独自のやり方がありまして、今日はそこのところをどんなふうにやっているかということを岡村から発表させていただきたいと思っています。
		使いやすいとか、分かりやすいとか、単に人の感じ方の問題だと捉えていると、どうしても皆さんの無意識の部分が変わっていきません。
		リテラシーがそろっているわけではなくて、これはこうやったらいい、あれはこうやったらいいという具体的なやり方を聞いてそれをどんどんやっているだけなので、ベースとしてのロジックをきちんと持てていない。
		そうすると、積み重なっていくわけではなくて、ばらばらとやっている状態になっていると思うのですね。
		これを変えるために、使いやすさをロジックで見えるようにしていくことができると、すごく発展すると思います。
		特に皆さんは、官庁に入られて、今なされている仕事をするに当たって、学校で勉強も多分できて、公務員試験にも受かってそちらに行っているので、ロジックにさえ落とすことができれば、自分たちの得意なやり方でどんどん進めていけるのではないかと思います。
		そこのリテラシーという部分を強化していくといいのかなと思います。
		岡村にパスします。
		○岡村CEO パスされました、実利用者研究機構の岡村と申します。
		よろしくお願いいたします。
		私は、まさに現場の最前線に立っておりますので、現場のお話を伝えさせていただければいいのかなと思っております。
		私は、横尾と一緒に10年ほど前の年金の分かりやすい情報発信のときから参加させていただいて、勝手にメンバーの一人だと思っております。
		よろしくお願いいたします。
		早速、実利用者視点の広報についてお話しさせていただきます。
		さっきもありましたけれども、15分という限られた時間ですので、話せる内容を絞ってお話ししたいと思います。
		簡単に、ジツケンの紹介だけさせていただきます。
		団体の紹介です。
		特定非営利活動法人の実利用者研究機構と申します。
		6年ほど前は「日本ユニバーサルデザイン研究機構」という名前でやっておりました。
		今は漢字もとても多いので、略称「ジツケン」、実験ではなくジツケンと言っております。
		設立は2000年6月で大分時間もたつのですが、何をやっているのかというと、いろいろとやっていますが、提供者向けのUDと書いてあります。
		これが結構特徴的なので、お伝えさせていただきます。
		「ユニバーサルデザイン」という言葉は多分御参加されている方はみんな御存じだと思います。
		今、小学校や中学校でも義務教育の中で教えている内容ですが、ユニバーサルデザインに利用者向けのユニバーサルデザインと提供者向けのユニバーサルデザインがあることを御存じですかという質問をすると、知らなかったという人が結構多いのですね。
		多分10人中8人ぐらいが知らなかったと言います。
		違いは何ですかと言われたら、世の中に出ている情報、ウェブ、本、テレビ、メディア、手に入れられるユニバーサルデザインの情報は、ほぼ間違いなく全て利用者向けのUDの情報です。
		提供者向けのUDの情報とは何ですかと。
		基本的には、表に出ないで、いろいろな企業がユーザビリティーやユーザーエクスペリエンスで使っていますよという話でございます。
		そこの専門機関ということでやっている団体でございます。
		次です。
		ジツケンがやってきたことです。
		物とありますが、物は、製品、サービス、空間、情報、コミュニケーション、デザイン、提供者が提供するものということで言っています。
		この物を利用する際のユーザビリティーと体系的な多様性の研究実績を基に、20年以上、900社8万人以上の企業や自治体向けに、監修、改善指導、教育実習、研修を実施してきた特定非営利活動法人の研究機関でございます。
		設立者でございます。
		皆さんも御存じの横尾でございますが、紹介させていただきます。
		名前を「良笑」と申します。
		出身地は北海道生まれで、東京、イギリス、カナダ育ちでございます。
		慶應義塾大学に17歳で初めて入ったという経歴とか、問題解決のプロとしていろいろなことをやっておりますけれども、いろいろとありますが、ユニバーサルデザイン教育の日本の第一人者であり、利用者の使いやすさ・分かりやすさの改善の専門家として活躍をしております。
		次は、私の自己紹介でございます。
		私は、岡村正昭でございます。
		出身地は福岡県、博多とんこつラーメン育ちでございます。
		大学卒業後、いろいろとやらせていただきましたが、今やっていることは、実利用者研究機構のCEOとして、企業や自治体向けの研修、講演、改善指導を実施しております。
		中でも、今回のテーマにもなっております民間の保険のいろいろな使いやすさ・分かりやすさの話、金融関係その他、化粧品、製薬会社、医療関係、いろいろなことをやらせていただいております。
		実利用者研究機構でありますが、団体名称にもなっております「実利用者」とは何ですかとたまに聞かれるので、説明しておきます。
		「実利用者」は「実際の利用者」の略で使っています。
		何で実際の利用者とわざわざ言うのですかという質問を受けるので、説明しておきます。
		基本的に、提供する側の皆様は、もちろん、利用する側、利用者、お客様を考えて、ものづくりをされていると思います。
		利用者に対して、こうすれば伝わるかな、こうすれば分かるかな、こうすれば損しないかな、こうすれば喜んでくれるかなと考えてものづくりとかをされていると思うのですけれども、想像している利用者と実際の利用者がぴったり一緒だったら、これは顧客満足度100というか、文句一つないなどという状態にもなりますよねという話です。
		でも、実際問題、蓋を開ければそうではないですよねという話であります。
		なぜか。
		実際の利用者と、想像している利用者、想定の利用者とにギャップがあるからという話です。
		我々としては、どこまでいっても実際の利用者の利用状況を、ジツケン式メソッドの視点から、実利用者行動観察調査を行って、製品、印刷物、サービス、施設等を改善するということをやっております。
		ジツケン式メソッドとは何ですかと聞かれるのですけれども、時間が足りないので、ちょっとだけ説明しますけれども、5個あります。
		多様性対応リテラシー、誤認・誤使用防止設計学、直感的利用設計学、心身負荷低減設計学、実利用者行動観察学という5つのオリジナルの学問をつくりまして、それを基にいろいろなものを改善しています。
		このジツケン新メソッドなのですけれども、なぜかアメリカのハーバード大学がジツケン式メソッドを見つけたらしくて、わざわざ日本に来て勉強して帰ったということもあります。
		ハーバード大学生は、非常に賢い方々が多かったですね。
		大学生といっても、多分卒業後はみんなビジネスをやるのだろうなという感じの質問ばかりが多かった印象がありますね。
		このジツケン式メソッドを使って、いろいろな企業の、使いにくいものを使いやすくする、分かりにくいものを分かりやすくする、伝わっていないものを伝えやすくするということをやっております。
		商品は、保険に限らずですけれども、保険の商品も多いのですね。
		そこの専門知識を教えているカリキュラムが、全国の大学、専門学校、短大とかにも入っております。
		UDコーディネーター資格、その知識を教えていいという資格ですね。
		研修資格。
		ありがたいことに、今は民間の保険事業の推奨資格になっているところも非常に多いです。
		推奨資格ということは、受けて自分の成績が上がったり、受けなさいということになってきたりします。
		印刷会社さんは、ほとんどの企業に有資格者がいて、半分以上が有資格者というところまで増えております。
		駆け足で申し訳ございませんが、今回のテーマでございます。
		「年金広報のあり方について」ということでお題をいただいておりますので、少しお話しさせていただきます。
		事前にどんなことが知りたいのかということでお伺いして、御質問いただきました。
		こちらでございます。
		利用者視点で使いやすい広報物の制作のために具体的な取り組み方を教えてほしい的な御質問だったと思うのですけれども、民間の保険会社も、金融系もそうですけれども、たくさん同じような御質問を受けます。
		使いやすいツール、使いやすいパンフレット、使いやすい状況をつくりたい、できれば具体的に教えてください、考え方よりも具体的に教えてくださいと言われるのですけれども、そこに対して、ジツケンというか、私が本当に言っていることをお伝えします。
		まず、言うのはこちらです。
		まずは実際の利用者を観察しましょうという話をします。
		実際の利用者が、何が分かりにくいと思って、もっと言うと、何で読まないかとか、何が伝わらないかとか、観察すれば具体的に分かりますよという話です。
		観察したら分かるのですよと答えを言ってしまっているのですけれども、「いや、観察は難しいのですよ」と言う方がいます。
		そこに対して言うことは、観察ができないのであれば、実際の利用者の知見と実績のある企業や団体の考え方や在り方を学んで習得しましょうと言っています。
		ここがポイントです。
		具体的な取り組み方を聞いている間は、間違いなくやり方を聞いていると思ってください。
		やり方は、幾ら聞いても、真似したところで、成果が出る・出ないで終わりです。
		基本的には出にくいと考えたほうがいいと思います。
		考え方がポイントです。
		しっかりと実績を出して効果を出しているところは、どういう考え方で利用者対応をやっているのか、どういう考え方で利用者に伝わる広報物をつくっているのか、その在り方をしっかり学んだ上で実践していくことから始めないと、枝葉のような取り組み方、フォントやカラーとやっても難しい話であって、事例を御紹介させていただきます。
		こちらでございます。
		かんぽ生命保険さんという保険会社であります。
		今回配付している資料はたくさんの保険会社さんが載っていると思いますが、全部を紹介していたら多分時間が80時間以上かかるので、かんぽさんだけお話しさせていただきます。
		かんぽさんは、皆さん、御存じだと思います。
		郵便局の保険会社さんですね。
		郵政が民営化されましたので、民間の保険会社としては最大規模かと思います。
		お話をお伺いしたら、御契約者、つまり、お客様が2000万人ぐらいいると伺っております。
		かんぽさんで、ここに、保険業界初、かんぽ生命保険ご契約ハンドブックが実利用者ユニバーサルデザイン認証取得と書いてありますが、説明が必要なので、御説明します。
		まずは、かんぽ生命保険さんは、我々が運用している実利用者ユニバーサルデザイン認証を取得した第1号だったので、いろいろウェブや新聞等にも載りました。
		説明しますが、左下がかんぽ生命保険さんが毎年御契約者の方に送る紙のリーフレットで、「ご契約ハンドブック」という名前です。
		これを送っています。
		我々の認証を取得する前の話をします。
		前の話です。
		どういう状態だったか。
		毎年、御契約者にこれを送るのですけれども、自社調査によると、どうやら2人に1人以上は読まないで捨てているらしいということが分かったらしいのです。
		お客様のために送っているのに、読まないで捨てているらしいと。
		かんぽさんもショックを受けて、何とかしたいと思って、もちろん改善します。
		フォントをUDフォントにしようとか、フォントを変えよう、カラーをUDにしよう、色を変えよう、写真を載せよう、イラストを載せよう、グラフを載せよう、図を載せようとやりました。
		効果が出なかったのですね。
		出ない中で、我々の実利用者ユニバーサルデザイン認証にチャレンジしていただきました。
		我々の運営している認証制度は特徴があります。
		一般的な認証制度だと、恐らく皆さんがイメージしやすいほうの話でいうと、例えば、対象物があったら、専門家という方が評価して、評価がよかったものが認証を取ったり、専門家という方がそれを見て評価して、赤字が出て、赤字を修正して、ちゃんと修正できたら評価をもらって認証取得という流れが多いです。
		我々は、そういった認証制度とは違う認証制度をやっています。
		評価型の認証制度に対して、プロセス型という制度を取っています。
		何をするかといったら、我々がやることは、実際に対象物を利用者に使ってもらいます。
		使ってもらって、意見は聞きません。
		アンケートも取りません。
		どうするのか。
		使ってもらっている様子を、行動観察調査といって、提供先、クライアントと、制作会社と一緒に観察をします。
		観察をすると、今までのところ、ほぼ99%以上の割合で、想定外の使い方、想定外の理解の仕方が見つかります。
		見つかるのですね。
		見つかったら、そこからその課題に対して改善アプローチを行って、アプローチを行ったものを世の中に出すという一連の流れ、一連のプロセスを実施した者に対して与えるものが、我々の実利用者ユニバーサルデザイン認証でございます。
		プロセス型は、評価はしないで、そのプロセスを踏んだということです。
		我々は、マークだけが欲しいのですという会社は全部断っています。
		一緒に商品をよくしたい、商品のクオリティーを上げたいというところは、お仕事を受けています。
		このプロセス型の認証をやると、どういう効果が出るか。
		かんぽさんが第1号認証で、想定外の課題が見つかったので、改善して、出しました。
		ちなみに、かんぽさんの一番の想定外は、読んでもらうためにつくっているのに、読まれないで捨てられるということですよね。
		そこに関してちゃんと観察調査をしたら、原因が見つかってきました。
		見つかってきたので、解決課題として改善をして、世の中に出す。
		そしたら、何とコールセンターがパンクしてしまったのですね。
		今まで読まなかった人が一気に読み始めるようになったので、コールセンターがパンクということで、かんぽさんからは喜びの悲鳴ということで御連絡をいただきましたが、それもあって、ほぼ毎年、かんぽさんはこの認証にチャレンジして、物をよくするということを繰り返されております。
		次でございます。
		御質問その2でいただいたものがこちらです。
		年金広報コンテンツの中から、具体的に、より伝えやすくするためにはどのような取組をすると受け手である利用者が使いやすくなるのかという観点からの改善策という御質問をいただいたので、お話しさせていただきます。
		ここも、具体的により使いやすくと書いてありますけれども、いつもジツケンが保険会社さんにお伝えすることはこちらでございます。
		何のために改善するのか、もっと言うと、課題が何なのかも含めて明確にすることからスタートという話です。
		いきなり使いやすくしたい、いきなり分かりやすくしたいという話は、そもそも成り立ちませんよという話です。
		分かりやすくすることは、何のためなのか。
		何でかというと、次でございます。
		使いやすさがゴールではないのですよという話をいつもしています。
		あくまで目的を達成するための手段ですよという話です。
		プロジェクトの目的が、使いやすくしたい、分かりやすくしたいという話になった瞬間に、経験則上、そのプロジェクトは大体頓挫します。
		そうではなくて、目的がそもそも何なのか、読んでもらうことなのか、読んで理解してもらうことなのか、読んで行動してもらうことなのか、その目的を達成する上で課題になっている使いにくさや分かりにくさの不便の解消をするための使いやすさにしましょうという話なのですね。
		あくまで手段ですよという話でございます。
		まずは、提供者側である皆様が自分たちで課題を発見できるようになるまでは、リテラシーを身につけることから始めたほうがいいと思っています。
		リテラシーがない状態で幾ら専門家の方にお話を聞いても、残念ながら理解ができません。
		「そうなんだ」とその瞬間は思っても、その次がないのです。
		応用ができないという話です。
		まずは、自分たちのリテラシーを身につけることから始めてみる。
		その点でお伝えしますが、多様な実利用者、実際の利用者が、自分が思ったとおりの使い方や自分が思ったとおりの理解の仕方、でも、ちゃんと目的を達成できるようにすることが提供者の使命なのですよという話をいつもしています。
		民間の企業にもいつもしています。
		その使命を果たすために、利用者のことを理解し、利用者の考え方、利用者の特性をちゃんと知って、ものづくりを一緒によくしていくということをやっております。
		事例を御紹介させていただきますが、保険の話ばかりすると、皆さん、それはどうのこうのと、制約条件や広報物の話ばかりになってしまうので、違う種類になります。
		ファンケル化粧品さんの商品です。
		新商品、ビューティブーケスキンケアの容器・包材設計監修と書いてありますけれども、新商品と言いつつも、これは今の定番商品です。
		昨年、リニューアル改善をしましたので、定番で右肩上がりに今も売れている商品です。
		我々ジツケンの監修が入りました。
		監修は、専門知識を持った機関が入るという話なのですけれども、このときの御依頼事項は、高齢の女性向けの知見を監修で入れてほしいということで、我々が入りました。
		もちろんファンケルさんは中身をつくるスペシャリストですので、高齢の女性の肌には一番いい中身の溶剤はつくったのですけれども、外見です。
		いわゆるパッケージといわれる部分、使用方法、形、パンフレットといったものに対して、我々が入りました。
		高齢者向けの対応と言われた瞬間に、皆さん、高齢者対応だったら、すぐに、文字を大きくしよう、持ちやすくしよう、軽くしようという話ばかりが出てくるのですけれども、残念ながらそんなことをやったって経済効果は出ませんよという話です。
		我々が何をしているのか。
		いろいろなことをやったのですけれども、1個だけ言っていい事例があるので、お伝えします。
		その事例は、ここに書いています。
		使う順番を大きく番号表示していますと書いてあります。
		特徴的なことが、商品の一個一個に番号が振ってあります。
		1、2、3、4と、使う順番なので、そのとおりに使えばいいよという話なのですが、秘密があります。
		このファンケルさんの化粧品に限らず、高齢の女性が化粧品を使う利用状況を分析すると、結構「あるある」があるのですね。
		何かというと、一度買った化粧品がありますね。
		それを使ってみて、結構肌にいいなと思って、また同じ商品をお店に買いに行ったら、違う商品を買って帰ってしまう高齢の女性は結構多いという話なのですね。
		何でだろうと思う方もいると思いますが、そもそも化粧品をちゃんと分析すると、メーカー名があって、その下に商品名があるのですけれども、商品名は大体横文字や片仮名英語が多くないですかという話ですね。
		なおかつ、それだけ覚えたとしても、その下に、化粧水なのか、化粧美容液なのか、美容乳液なのかというフルネームの名前もあります。
		そういった名前を完全に覚えていないお客様が行って、「たしか赤い入れ物の化粧品で、化粧水よ」と言ったら、いろいろなパッケージの似たようなものが出てきますよねという話です。
		例えば、「青い瓶」などと言っても、青い瓶もめちゃくちゃ出てきます。
		そういう中で、店員さんに、これは同じように乾燥肌に効いて、もちもちして、容量も多いですよと言われたら、そっちを買ってしまうという人も結構いる中で、ファンケルさんのこの商品は、例えば、この「3」と書いてある3番を使っていて、残りが少なくなりましたら、電話して「赤の3番を下さい」と言ったら3番が届きますという話です。
		何が言いたいのか。
		ちゃんと利用者のことを勉強するということは、利用者が、購入から、使用から、捨てるまでとか、リピートをするまでの全体の流れの利用状況の中で、どういう特性だったら課題になるのかということをちゃんと洗い出すという話です。
		例えば、自分たちで、化粧品と違うかもしれませんが、年金の話だったら、年金に興味がある人・ない人、知識が高い人・高くない人、そもそもITリテラシーが高い人・高くない人、初心者・熟練者といった特性から、全体の広報の利用状況、伝わる状況を見て、そこからスタートになりますという話ですね。
		そういうことで、時間も短いので、最後でございます。
		ジツケンが目指すものということで、言葉を紹介させていただきます。
		私たちが目指すのは、例えば、魚を獲れない人に魚は与えるのではなく、また、魚の獲り方を教える人でもない。
		さらには、魚の獲り方を指導できる人を育てるのでもなく、今求められているのは、その人たちにもできる魚の獲り方を編み出せる人を育てて、活躍するための仕組みを提供するということです。
		これは、うちの実利用者研究機構創設者の横尾良笑が言っている言葉でございます。
		こう紹介するといなくなった人みたいですけれども、今もいます。
		そういうことで、実利用者研究機構は、使いやすさ・分かりやすさの実現、提供者向けのUDの実現に向けて実践していく提供者を応援している団体です。
		答えを求めるのではなくて、答えを導き出せるスキルを身につけたい方は、お気軽に何でも御相談いただければお答えしていきたいと思っています。
		ジツケンから、現場の最前線、私からの話としては、そこから始めてみてはという話でございました。
		御清聴、ありがとうございました。
		○横尾構成員 ありがとうございます。
		私から先にお配りしている資料に皆さんが目を通されているかどうか分からないのですけれども、今岡村が言っていた話が保険業界でなぜこんなにはやっているのかということを考えてみていただきたいのです。
		ずっと保険のことで悩んで、いろいろなことをやって、本当にいろいろな調査や海外からのいろいろな知見を入れて、外資の企業さんも含めていろいろな企業さんが本気でいろいろなことをやってきて、最終的にうちにたどり着いて、これを何度もリピートをしてきて、認証を取っているものは、皆さんに、事例としてプロセスや成果について公開しておりますので、御紹介できますけれども、もちろん認証を取らずに来ているものもたくさんあるわけです。
		皆さん、今、聞いて、「ふーん」と思ってあまりぴんとこなかった方とすごくぴんときた方といらっしゃると思うのです。
		保険以外のところもたくさんありますけれども、特に保険業界がこのプロセスを用いた認証制度とこれによる改善に物すごく意欲的で、いろいろなところが申し込んで、はやっているのはどうしてなのか。
		保険毎日新聞でも、かなり大きな記事で、トップページというか、一番初めのページにも写真入りで紹介されるほどに大きく取り上げられて、皆さんは同じ保険業界と言われたら嫌なのかどうか分からないですけれども、そこがポイントだと思うのですよ。
		そこがうまく伝わったか、伝わっていないか、15分だとぎりぎりのところかなとは思うのですけれども、この後にディスカッションもあるということなので、また議論を深められたらと思います。
		以上です。
		○上田座長 山口先生からも、横尾さんと岡村さんからも、大変中身の濃い御発表をいただいたと思っております。
		どうもありがとうございました。
		それでは、ただいまの、山口先生、横尾さんと岡村さんの御発表に関しまして、皆様から、御感想、コメント、御質問などを承りたいと思います。
		本日は、オブザーバー、事務局も入りましてフリーディスカッションという設定になっておりますので、皆様からぜひフランクに活発な御議論をいただけたらと思います。
		御発言のある方は、お願いいたします。
		どうぞお願いします。
		○富永構成員 富永です。
		山口先生のお話も、横尾さんと岡村さんのお話も、非常に勉強になるところが多くて、こういった話は実際にやってみることが一番大事なのでしょうね。
		バイアスを理解した上でコミュニケーションをするとか、ユーザーを観察して、観察を基に改善ポイントを見つけるみたいな話は、ふだんやっている業務と全然違う文脈のことなので、どのようにやってみたらいいか分からないとか、全然ルーチンにはまらないとか、いろいろなバリアがあると思うのです。
		でも、そこでバリアがあるから先送りみたいな話をすると、せっかく有識者にいろいろと教えてもらってこういう会議をやっているということの意味がなくなってしまいますので、現場でコミュニケーションの設計をされている方には今日聞いた話をどうやったらふだんのルーチンにビルトインできるかということをちゃんと考えていただいて、見よう見まねでも下手くそな形でもいいので、まずはやってみていただいて、だんだんそれが行われる形にしていくというか、洗練された形に昇華していくということの実施をぜひしてみていただきたいと思います。
		それは本当に今日からやってほしいなと思う次第です。
		以上です。
		○上田座長 ありがとうございました。
		ほかに、皆様、いかがでしょうか。
		お願いいたします。
		○佐久間構成員 山口先生のお話と岡村さんと横尾さんのお話は、私も広報をやっている中で、学びになって、すてきなお時間をありがとうございました。
		僕は、18年、三芳町で公務員を実地でやっていて、そのときに税務課と介護保険の担当をやっていたのですけれども、今の2人の話を聞いていて、そのときのことをすごく思い出しました。
		そのときに僕が感じたことは、いろいろな住民の方に対応させていただくと、リテラシーも様々ですし、理解度も様々なので、結構いろいろな方がいらっしゃるという前提で広報をしていかなくてはいけないということをすごく思いながら当時もやっていましたし、お話を聞きながらそれを思い返しました。
		広報担当としてやっていたときに大事にしていたことは、先ほどお二人からもお話があったのですけれども、広報はやるための目的ではなくて手段であるというところはすごく重要で、かつ、行動変容につなげるための手段として広報する必要が絶対的にあると思うのですよね。
		その広報をする上で、僕はいつも広報と広聴は表裏一体かなと思っていて、岡村さんのユーザーが使ったというところでいうと、自治体職員からいうと、窓口業務に出ている担当者は広聴できると、ユーザーではないですけれども、住民の方のもっと手前のところで、業務を行っている地方自治体の市町村の窓口担当職員は多分すごく住民が知りたい情報や住民が分からないところがすぐ分かると思うのです。
		だから、提案ではないですけれども、もし厚労省でできるのであれば、1回、市町村に、例えば、年金のどういうことで窓口に来る住民が多いのですかとか、どういうところが分かりにくいという声があるのですかということで、広聴という形で、かつ、それは、国民に対してのアンケートではなくて、厚労省から照会みたいなものをかけて、全国でばっとやるということはありかなと、お二人のお話を聞いていて、思いました。
		その広聴を生かして、広報をして、行動変容につなげるための施策を今後は考えていくと、すごく質の高いものができるのではないかと、お二人の意見を聞きながら、2年前までやっていた公務員の経験がよみがえって、こんなことができないかなということで、思い返していました。
		以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		私も、佐久間さんと、全く同じようなことを感じておりました。
		横尾さんと岡村さんの観察という話をお伺いしたときに、年金でいったらどうなるのかなと。
		受給者に対しては、佐久間さんがおっしゃったように、市町村の窓口あるいは年金事務所で窓口に来られる方が観察対象になるのかなと思うのですけれども、支える側の現役世代の観察はどこでやったらいいのかなとか、あるいは、将来世代ということで、例えば、学生だったら、若い人だったら、学校、横尾さんもおやりになっていらっしゃると先ほど御紹介がありましたけれども、今、年金広報企画室でもやっていらっしゃる学生との対話が非常に有力なツールになるのかなと思ってお聞きしていました。
		そうすると、学生や受給者はいろいろと対応できるのですけれども、現役世代はどうしたらいいのかなという辺りは、横尾さんや岡村さんにお考えをお聞きできたらと思いました。
		そういうことを感じました。
		ほかは、皆さん、いかがでしょうか。
		森下さん、どうぞ。
		今日は、フリーディスカッションですので、皆さん、どんどん御発言なさってください。
		○森下構成員 ありがとうございました。
		大変勉強になるお話で、学ばせていただきました。
		今日は、2019年から続いてきたこちらの検討会の一つの区切りで、大きな話をしていくという趣旨だったと思うので、私もいろいろと振り返ってみたのですが、もともと年金の広報に関しては結構炎上をしてきた経緯などもあって、炎上するのではないか、揚げ足を取られるのではないかと気にしているという前提が初期からあったかと思っています。
		山口先生の今日のお話からも、2000年代でしたけれども、ネガティブな情報は力を持ちやすいというデータもあって、多分それも質は違えど今も続いているのかなと思います。
		ただ、そこを守っていくみたいな考え方の議論だけだと、これからは足りないかなと私も思いまして、これだと批判を集めるのではないかという意見を結構私も言ってきてはいたのですけれども、そうではない見方で、よく守りと攻めみたいな話はありますけれども、守りではない部分をどのように持っていくかということは、これからの長期的な視野として大事なのではないかと思いました。
		企業の情報発信も、本来は企業が一方的に言いたいことを言っていて、それが人々に有益になっているのかどうかというところはあまり検証されてこなかったのですけれども、ブランドの発信をいかに客観性のある有益な情報にしていくかみたいな議論もこの10年ほどずっとあります。
		年金の情報も同じで、さっき佐久間さんがおっしゃっていました行動変容につなげるような情報として届けることは、いろいろな選択肢があるのではないかと思います。
		それは、これまで、まんがだったり、動画だったり、いろいろとつくってこられて、実績もできてきているので、今後、あまり守りばかりにいかないような意見交換をしていくことは、一つ、自分でも課題かと思いました。
		以上です。
		○上田座長 ありがとうございました。
		私も、3年間を振り返ってみると、厚生労働省の方がいろいろと一生懸命やっているのにうまく伝わっていないなということを非常に感じておりました。
		ただ、特に年金の場合、うまく伝えることと同時に正確に伝えなければいけないということが使命として非常に大きくて、この2つの両立をどう図っていくかが非常に難しいところかなと、振り返ってみると感じております。
		ほかは、皆さん、いかがでしょうか。
		ここまで出た御意見に対して、横尾さんあるいは山口先生でもし何かコメントがあれば、いかがですか。
		○横尾構成員 フリーディスカッションということで、皆様に身に余るすばらしいコメントをいただいて、ありがとうございました。
		せっかくなので、先ほどの上田座長からの御質問もお答えしたいと思うのですけれども、私は、今回の15分の発表は、年金広報なぞなぞをつくって、いろいろと考えたのですけれども、15分では無理だったので、結局、岡村がいいプレゼンをしますので、そっちに振ったのですけれども、なぞなぞを言ってみたいなと思います。
		佐久間委員と富永委員がおっしゃっていて、かつ、山口委員もおっしゃっていましたし、今、森下委員ももちろんおっしゃっていたのですけれども、行動変容という話が出てきて、皆さん、正しいことを言っているので、聞いているほうは「そうか、そうか」と思っていると思うのですけれども、根本がずれていると、この話が戻ってしまうのですよ。
		なぞなぞの話をします。
		例えば、あなたは年金繰上げ・繰下げ受給の広報サイトの担当者となりました。
		ユーザー調査の計画・発注・管理を担当します。
		事業者からは、A案とB案という2つの案が出ています。
		皆さんは、その担当者として、どういう調査を企画・設計してやりますかというなぞなぞをつくってきたのです。
		このなぞなぞの意図は、皆さん、答えにくいと思うので、私が回答したいと思います。
		それをやったときに、この話をしてくださっている専門家の方々はみんな分かっているのだけれども、どうしてもA案とB案を比べて「分かりやすい」と言われたページを採用してしまうのですよ。
		「A案とB案を読んでいただいて、どっちのほうが分かりやすかったですか」、「A案のほうが分かりやすかったです」と、質問事項はもっといろいろあるのですけれども、ユーザーが、「こっちのほうが好感を持てる」、「分かりやすい」と言ったページを結構採用してしまうのですよ。
		つまり、根本のリテラシーがないから、一個一個は入るのだけれども、入ったら出ていってしまうというか、どういうことが答えかというと、年金の繰上げ・繰下げ受給のページを見て「分かりやすい」と言ったページを見た人が本当に分かっているかどうかというと、結構違う場合が多いのです。
		地図などだと、本当に如実に出るのです。
		地図の調査などをすると、A案とB案で9割型が「分かりやすい」と言った地図のほうを出すと、みんなが迷う、本当は分かりにくい場所にあるのに分かりやすい場所にあるかのように見えてしまっているだけだったということは結構あるのですね。
		本当に分かりやすいということは、分かりやすいと評価されることではなくて、年金の繰上げ・繰下げ受給を自分がやるべきか、やるとしたら、自分の意図としては繰上げをしたほうがいい・繰下げをしたほうがいいという判断がつくようになることがゴールだと思うのです。
		これが認知の変容ですよね。
		それを実際に行動できる、そこからリンクで自分でたどっていける、必要な手続をやっていけるということが、行動変容ですよね。
		これが、専門家の方、皆さんがおっしゃっている行動変容の話なのですよ。
		でも、そのベーシックなリテラシーがないと、結局やる段になっていきなり戻ってしまうという現象が起きます。
		そうすると、積み重なっていかない。
		何がしたいかよく分からないけれども、ずっとダイエット商品を買いあさっては太っていくみたいな状況ではないのですけれども、基軸がないからなかなか積み上がっていかないという問題が結構あるのかなと。
		掛け算と割り算と足し算と引き算が分かっていなくて、1個1個の2足す2は幾つなのだと暗記していっているところが結構あるのかなと思うのです。
		私は、個人的には、リテラシーを皆が上げていくということは必要だと思っています。
		それによって委員の方々が言っていることが本当に身にしみていろいろなふうに分かっていくのではないかなと思ったので、皆さんのそういうお話を聞くたびに、私はそれを伝えたいなといつも思ってきたので、それを言ってしまいました。
		実際にどういう調査をするかということに関して、上田座長からの御質問があったので、それに併せて答えたいと思います。
		私たちは、提供者のやる調査の妥当性を上げる、現場価値を上げるということに特化して、物すごい数の調査の調査をしてきたのです。
		いろいろな方がやっている、ユーザー調査、ユーザビリティー調査です。
		私自身もヒューマンエラーや認知科学といったものはもちろん勉強もしていましたし、自分で研究もして論文を書いたのですけれども、そういう知識もあった上で、いろいろな検証をしていった結果、こういうことに気をつけて調査するといい結果が出るということをまとめた紙を皆さんに渡しています。
		実利用者ユニバーサルデザインのところでつらつらと書いてある内容が結構参考になるかと思っています。
		具体的には、おっしゃるように、働く世代が一番大事ですよね。
		モニターの方を集めることが非常に困難です。
		これは、特殊なユーザーを集められるところを見つけるとか、自分でリクルーティングをできるようになるしか方法がないのかなと。
		私たちも、500万円以上するオーディオセットの調査をしたことがあるのですけれども、500万円以上するオーディオセットを買う人はかなり限られているのですよ。
		普通の人はそんな高額なものを買わないから、それを買う人の求めているニーズは違うわけですので、本物の利用者をちゃんと見つける。
		その上で大事なことは、何を自分たちがしたいのかという自分たちの部分の方針をきちんと決めることですよね。
		その人たちに年金に価値があると思ってもらいたいのか。
		年金など払わなくていいと勘違いしている人の誤解を解きたいのか。
		iDeCoや繰上げ受給や繰下げ受給といういろいろなものがあるから、そういったものを使いこなせるようになってもらいたいのか。
		年金広報を自らしてくれるようになってもらいたいのか。
		「年金はこういう価値があってね、僕はこれをすごくいいことだと思うんだよ」と。
		外国人みたいな口調になっているのですが、カナダ人は高校生とかでもそのように厚生労働省さんに代わって年金にいかなる価値があるかというプレゼンテーションをできるのですよね。
		そういうところを目指すのか。
		要は、どういう姿を目指すのかによって違ってくると思うので、それに合わせて人をピックアップすることとか、どうしても事業者の人は自分たちの案がよかったと言いたいところがあるから、調査をするという目的のためのことは別途入れる必要が私はあると思います。
		要は、その事業者の人にやらせると、自分たちのものもう一回やり直さなくてはいけないという話になってしまうので、それは違ってきますよね。
		言いたいことはたくさんあるのですけれども、本当にそういう貴重な機会があったときに、厚労省さんもそうですし、年金のほかの各種団体の方もそうなのですけれども、事業者だけではなくてその団体の人が立ち会うことが非常に重要なことになってきます。
		なぜかというと、勘違いしていることは、分かりにくい状態のままなのは、皆さん、事業者のせいだと思っているところもあるかもしれないのですけれども、発注者による部分が最終的には100%です。
		私たちは、決裁者が出席しないのだったらうちはプロジェクトをやらないと断るぐらいです。
		要は、間違った、分かりにくいものが、ずっと出たままになっている、必ず採用し続けられているということは、その採用している人たちにそれでいいように見えているということなのですよね。
		だから、その辺のみんなでよくしていこうという意識が必要かと思いました。
		すみません。
		長くなりました。
		失礼します。
		○上田座長 ありがとうございました。
		山口先生は、今までの皆さんの御意見で何かコメントはございますか。
		○山口構成員 ありがとうございます。
		私は、こういうお話をして、皆さんからそれに対して反応をいただいて、今後、どうやっていくのかなと気になったところでして、結構具体的な話がいろいろと出たと思いますので、どちらかというと、私にフィードバックをいただいたというよりは、恐らく厚生労働省さんにいろいろなフィードバックがあったのかなと思っております。
		今、私から何かということは特になくて、事務局からのレスポンスが何かあれば、ぜひ聞きたいなと思っているところです。
		以上です。
		ありがとうございます。
		○上田座長 ありがとうございます。
		原さん。
		○原構成員 山口先生、横尾先生、いろいろとありがとうございました。
		私も、長くなりそうなので、短めにしますけれども、年金の教育、広報、金融機関さん向け研修など、ずっと携わってきて、まず、山口先生に御発表いただいたところで、森下構成員とも重なるところがあるのですけれども、先生の御研究のメディアに対してのいろいろな対策がすごく大事だということは、過去の経験においても、私も実感しているところです。
		今では、少しずつよくなってきているのではないかと思っているところでございます。
		また、外国の例がそのまま日本に当てはまるかというと、もちろん当てはまる例もありますが、なかなか当てはまらない部分、それは日本独自の年金制度というところでありうると思います。
		良いところは取り入れ、日本らしさを活かすところをどうするかというところで、やっていかなければいけないと思います。
		社会保障教育がなかなかできていなかったので、公的年金に対する人々の思いがまだ統一されていないというか、過度の期待をしている方もいらっしゃるし、全くそうでない方もいらっしゃるかもしれない。
		ただ、そういった意味では、最近では、例えば、年金は保険ですよという部分が大分広まってきたり、誤解も少しずつ解けてきたりということがあるのではないかと感じています。
		そういった中で、もちろん防衛策も大切ですが、どんどん積極的にこちらからの情報発信をしていくことは非常に重要だと思います。
		年代ごとに年金に対する思いは違いますので、そういった意味では、年代別というのがベストなのですけれどもそれも大変かとは思います。
		分かりやすかったのは、前回の取組みの中で、QuizKnockさんの若い方、10代や20代に向けたというものは非常に分かりやすい例でした。
		一方で、50代などに向けては、いろいろな制度改正に関して、その内容をしっかりと伝えていかなければいけないものもあると思います。
		私は年金制度の内容的なところをどうしても考えてしまうのですけれども、そういったものをいろいろな媒体でやっていく。
		積極的にどんどん発信していくことが大切なことかと思います。
		そういった意味では、今度のWEBシミュレーションもそうですし、いろいろなことを発信していくことが大事だと思います。
		もう一点、いろいろな現場で、年金の専門家と言われる人の中にもまだきちんと年金のあらゆる面を知り得ていない方も、いらっしゃるように感じられる場面に時々遭遇します。
		つまりは、現場で年金の情報を発信する担い手の方ですね。
		例えば、企業の方もそうですし、担当者、人事の方、独立している方、それぞれいろいろな方に情報の発信者になっていただくにはどうしたらいいかという部分も含めて、特に改正時などはそうだと思うのですけれども、本当にいろいろと多面的に考えていかなければいけないと思います。
		私からは、どんどん積極的に発信していくというところで、もちろんネガティブな炎上をしないようにというところは必要かと思うのですけれども、10年前に比べると、今はそういうものを割としやすい環境になっているのではないかと思っておりますので、そういったことをどんどん考えていかなければならないのではと思っております。
		以上です。
		○上田座長 ありがとうございました。
		私も、先ほど、横尾さんのお話を聞いていて、自分の大学での授業を振り返って反省していたのです。
		私は、専門が確定拠出年金なので、学生たちに資産運用のリスクの計算やポートフォリオの組み方や確定拠出型年金の制度の話をするのですけれども、考えてみると、目的は、学生に100点を取らせるとか、Aを取らせるということではなくて、DCをやったほうがいいのかどうか判断できる力をつけるとか、あるいは、自分でちゃんと投資を行うことが最終目的だったんだなと、今、振り返って反省していたのです。
		ただ、僕のゼミ生たちも1回調べてくれたことがあるのですけれども、教育という観点で見ると、例えば、高校の教科書を調べてみると、財政の問題は結構ページ数を割いているのに、年金のページ数は本当に少ないのですよね。
		こういう辺りも、若年層への基本的なリテラシーを厚くしていくには考えていかなければいけないところなのではないかと感じました。
		事務局から、もし何かあれば、コメントをお願いします。
		○菊地係長 山口先生、横尾先生におかれましては、大変すばらしい発表をいただき、ありがとうございます。
		また、構成員の皆様におかれましては、活発な御議論をいただき、ありがとうございます。
		まず、山口先生からのコメントでございますが、御指摘にもございましたとおり、諸外国においては、イギリスのOASISモデルと言われているモデルをはじめとして、様々な年金広報モデルが存在します。
		特にスウェーデンやフィンランドなど北欧諸国では、広報戦略の体系に立って、どのような方にどのような情報を発信していくのかということを整理して広報を実施していると承知しております。
		その上で、インフォグラフィックスとかの事例をいただいたのですけれども、例えば、学生対話集会のツールであるパワーポイントは、従来より使われている年金局の制度説明資料を全面的にインフォグラフィックスにし、教育用コンテンツとして使用しております。
		これまでの間、様々な学校で活用しておりますが、学生の皆さまから「非常に分かりやすい」と評価していただけております。
		また、学生対話集会を受講された方のアンケート調査を通じて学生の皆さんが、学生対話集会を受講し、どのような点を御理解いただいて、どのような点をさらに考えなければいけないのかというコメントを毎回寄せていただくなど、自分ごと化をしていただけるような動きにつながっているのかと考えています。
		また、横尾さんに御指摘いただいたようなツールの効果検証に関しましては、これまで被用者保険適用拡大特設サイトや公的年金シミュレーターなど様々なコンテンツをつくってまいりましたが、それらの制作過程において、実際の利用者がどのようなところに困られているのか、我々が何も御質問・ご案内をせずに利用者調査を実施し改善点を把握し改善した上でリリースしております。
		例えば、パンフレットの素案をお見せして、どのような点で理解に詰まってしまうのか、広報物の表現としてどのような問いかけ、表現でご説明するとご理解いただけないのかなど、様々な観点から利用者モニター調査を実施し、リリースする前に改善すべき点は改善した上でリリースしております。
		このようにつくられているコンテンツは長らくご愛用いただけるコンテンツとなります。
		特に、10年前に、年金広報検討会の前身となる公的年金の分かりやすい情報発信モデル事業制作したコンテンツも含めて、長らく皆様方にご愛用いいただけるようなコンテンツに昇華していくため、今後も、利用者である国民の皆様の視点に立って広報物がつくれるような努力をしてまいりたいと考えております。
		以上でございます。
		○上田座長 ありがとうございました。
		もう少々お時間がございますので、まだコメントをおっしゃっていない方がもしいらっしゃいましたら、あるいは、追加でコメントがあれば、お願いいたします。
		○横尾構成員 今日は、15分ということで、結構省いた内容がたくさんありまして、私のところは全部省いたわけなのですけれども、私は本気で年金広報を応援しておりまして、どうやったらいいかなということで、私の経験上、体験することが本当にすごく大事なことなので、今日来ている構成員の皆様にも一緒に体験していただけたらと思ったことがあります。
		私たちは盲点のエリアということで「盲野」と呼んでいるのですけれども、盲点になっていると、こんなにもずっと改善しないんだと。
		逆に、盲点になっているところに気がついた瞬間に、こんなにも自分たちのやっている仕事や生活やいろいろなものが変わって、自信を持って、それこそ、楽しくもなるし、自己肯定感も上がるし、本当に働いている人にとっても効果があるというか、本人にとっても効果があるのだということを体験していただきたいと思って考えたワークショップみたいなものが1つあります。
		前段が多いのですけれども、私は、結構頭がいいということになったのですが、もともと知的障害児として10歳まで扱われてきた経緯がありまして、知的障害からいきなり勉強ができるようなったみたいなことが10歳ぐらいのときにあって、そうすると、周りの人から、「どうやったんだ」とか、「何かあいつはすごいぞ」みたいなことになって、死ぬほど相談を受けるようになりまして、休み時間には長蛇の列ができるぐらい、大人も含めて子供たちからいろいろな相談を受けて、解決できないと「解決できなかったんだけど」と次の日にまた来るわけですね。
		毎日、教室でまた会いますから。
		そうやって確実に人の問題を解決する方法をずっと訓練していく人生を送ってきて、先ほどのようなことにもつながっているのです。
		いろいろとあるので、体験のほうにすぐ行きたいと思います。
		年金広報全体は複雑でたくさんあるので、お伝えしなければいけないことは本当にたくさんあるのです。
		短期間では無理なので、皆さんの身近な例で、今日から1か月以内に皆さんの生活が変わるのではないかということの体験を1個させていただきたいと思います。
		「そもそも問題」と呼んでいるのですけれども、この中にも片づけられない方はいらっしゃいませんか。
		片づけられないとか、家が何となく散らかっているとか、もしくは、家族が散らかすとか、職場に散らかしがちな人がいるということで、自分か周りかは別として、散らかす方を見かけることがあると思うのですね。
		それがずっと問題として続いていると思うのです。
		ここで問題なのですけれども、部屋が散らかる原因は何だと思いますか。
		○森下構成員 物を捨てられないとかではないですか。
		○横尾構成員 物を捨てられない以外とかは。
		○上田座長 優先順位がつけられない。
		○横尾構成員 ありがとうございます。
		答えていただけて、うれしいです。
		ほかによく出るものは、忙しいとか、面倒くさいとか、子供たちのことが出るのですけれども、それは全部違うのですよ。
		どういうことかというと、優先順位をつけなければいけない状況はもう散らかっていますよね。
		物が捨てられなくて困っている状態は既に散らかっているのですよ。
		それは散らかった後の話なのです。
		つまり、原因がありますよね。
		結果が出て、それに対する対処法なのですよね。
		その対処法をやることが難しい理由がたくさんあるのですよ。
		多分優先順位をつけなければいけないことが毎日変わってくるとか、いろいろなものを持ってくるとか、物を捨てたいのだけれども、もしかしたらしばらくしたときになかったら困るかもしれないから、取っておかなければいけない事情があるとか、それは変えられないですよね。
		でも、本当の理由が分かると、変えられます。
		本当の理由を言うと、取りあえず置くからです。
		これは、観察をすると、ほとんどの人は見つけられます。
		例えば、先ほどのユーザーも、帰ってきて、ソファの上に服を取りあえず置いてしまうのですよ。
		これをまずは発見することが大事ですということが観察の話。
		次に、さっきの心身負荷軽減設計とか、直感的利用設計とか、いろいろなものがあるのですけれども、取りあえずソファに服を置いてしまう方とか、結構いませんか。
		家族とか、誰かが置いていくとか、積み重なっていったりしませんか。
		それはなぜだと思いますか。
		答えを言ってしまうのですが、取りあえず置くということをどうやって解消するか。
		原因は、忙しいからとか、いろいろなことになっていますよね。
		この後は、原因ではないです。
		原因と解決する方法は視点が違うのですよ。
		解決する方法はビジョンに向かっていかなければいけないわけなのですけれども、これはこれでやり方があるわけですね。
		スキップで行きます。
		うなずいていただいた方もいたので、ソファの上にどんどん物を置いていってしまうという人は、どう解決するかというと、例えば、ハンガーにかけることが正解だとしたら、ソファに置くよりもハンガーにかけるほうが楽な場所に置くのですよ。
		楽にするのです。
		何で今まで改善しなかったのか。
		何でこんなに正しいことに気がつかなかったのか。
		人間の行動の9割は無意識なのですよ。
		捨てる、捨てられていない、優先順位がつけられていないということは意識しているけれども、無意識にどんどん散らかっているのです。
		気がついたら散らかっていませんか。
		散らかっている瞬間は目撃していないのですよ。
		自分がやっているのに、もしくは、家族がやっているのに、散らかっている瞬間は意外と目撃できていないのですね。
		だから、もちろん見る視点も必要なのですけれども、今みたいに、楽にする。
		ティッシュをとにかくいろいろなテーブルとかに置いていってしまう人がいて、それを回収するの嫌だという人もいるのですけれども、そのティッシュを取りあえず置く場所に、例えば、ごみ箱が置いてあったら、そっちに捨てるかもしれないですよね。
		アクション数や部屋の場所をうまくコーディネートすると、疲れたと思って帰ってきて、気がついたら、片づいていると。
		疲れているときほど無意識に行動するので、気がついたら家がぴかぴかになっていたみたいなことになったりします。
		例えば、取りあえず正しい場所に置くようにする、取りあえず置くというときにそこが正しい場所にするということをやるだけで、かなり変わります。
		解決の仕方の方法はいろいろな方向性があるので、そこに絞ると分からなくなる人もいます。
		例えば、ADHD傾向の人などは、私が独自研究した結果、差異が分かり過ぎるので、女性の服で、上着とズボンとかがあったときに、スカートみたいなものがあると、上なのか下なのかよく分からない、どこにしまっていいか分からなくて、取りあえず置いてしまう。
		チラシとか、捨てていいのかよく分からなくて、捨ててしまうとか、いろいろなことがあるのです。
		問題は、捨てないことではなくて、整理した・できていないというか、取り出せないことなのですよね。
		ADHD傾向がある人は、差異が分かり過ぎることと、もう一個、特徴を観察によって見つけたのですけれども、時系列にすごく強い。
		時系列に強いので、例えば、勉強するときも、国語、算数、理科、社会と分けないで、1冊のノートに全部書いてみるように言うのですよ。
		「3か月前のこの日の国語の時間のノートを見せて」と言ったら、ADHDの子はぱっと開けるのです。
		普通の人に比べて、時系列にすごく強い。
		服も、使った順に置く。
		チラシや書類なども全部使った順や来た順に取りあえず整理してしまえば、必要なときに出せるのですね。
		このように世界がどんどん変わっていくということで、今日、聞いて、「ふーん」と思っていても、皆さん、多分1か月以内にこの知識を生かすことがきっとあると思います。
		もう一個、気がついていただきたいことは、何年も片づけられなかったのではないかということなのですよ。
		何年もずっと、要は、優先順位をつけるためのことは多分いろいろなことをやってこられたはずだし、捨てるためのことも、例えば、断捨離の本を読んでやる気を出すとか、分からないですけれども、1年たったら何とかとか、いろいろなことを聞いて、いろいろなことを実践するのだけれども、途中で続かなくなっているはずなのですよね。
		例えば、分かりにくいということは問題だし、何よりも、年金は国自体の信頼によって運営されているわけですので、信頼は物すごく大事なのです。
		不信感があると、すごく嫌ではないですか。
		嫌だという気持ちがあるものを人間は自然と回避するのですよね。
		自然と回避して、自然と改善を無意識にしていくので、通常だと、自動的になくなるのです。
		問題だという認識を持たないまま、その問題は解消されていくのです。
		ただ、問題だという認識を持っている、持てているということは、多分登る山が間違っているということなのです。
		要は、捨てられるように頑張ろうとか、分からないですけれども、取りあえず置く場所を正しい位置にしようということに比べると、登る山が間違っているのです。
		年金に関してはそういうところが必ずあるので、年金に関してそういうものが見つかったら、皆さん、晴れやかな気持ちで自信を持って仕事ができるようになって、すごく楽しくなると思いますので、ぜひどこかでそういう機会が持てたらすごくいいのではないかと思います。
		すみません。
		長くなりました。
		○上田座長 ありがとうございました。
		今日は、オブザーバーの皆様からも御発言をお願いしております。
		樽見さん、お願いいたします。
		○樽見副理事長 日本年金機構です。
		今日の話は大変勉強になりましたが、感想めいたことが多くなるかもしれませんが、簡単に触れたいと思います。
		まず、山口先生の資料の中で、メディアあるいは個人はネガティブな情報を好むという話があって、これはなるほどと思いましたし、それで随分苦労したなと個人的にも思いました。
		ただ、考えてみると、ネガティブな情報を、例えば、マスコミが報道するということは、ある意味、健全で、みんなポジティブな報道しかしない国はおかしな国だと思いますし、個人も何か心配なことがあればそれについて知りたいということは、ある意味、非常に健全なことではないかと思います。
		そういう中で、我々がやるべきは、例えば、5000万件の持ち主の分からない記録がありますと言ったら、それで年金制度はもう駄目だとみんなが思ってしまうのではなくて、その5000万件とはどんな記録で、それをどのように解決していくことによって正しい年金制度ができるのかと国民の方が考えるような、言わばリテラシーを高めることが我々のゴールではないかと思ったのです。
		もう一つ、結論は同じになってくるのですが、先ほどの岡村さんのプレゼンの中で、利用者がちゃんと目的を達成できるようにすることが提供者の使命だという御報告がされました。
		これも年金記録問題のときに言われたことを図らずも思い出してしまったのですが、「年金は申請主義だ、申請しないともらえないと言うけれども、受給者がちゃんと申請できるようにすることが社会保険庁の使命だ。
		今までそれをサボってきたではないか」とさんざん言われたことを思い出しました。
		結局、それをきちんとやってもらうために、例えば、ターンアラウンドのお知らせをするとか、定期便を送るとか、そんなことをやってきたわけです。
		そうすると、それで分かっていただける方は分かっていただけることと同時に、それをより正確に分かっていただくためにはどうしたらいいかという課題が一つ出てくることと、その送られた本人は、それなりに「そうか」と思っても、「しかし、年金制度はどうも危ないらしいしな」と思うということで、さっきの大きな意味での年金リテラシーが改めて問われる事態が個々人の方にお知らせをすればするほど顕在化するというギャップがあると、私は感じています。
		そういう意味で、先ほど座長がおっしゃったように、うまく伝えることと正確に伝えることの両立がなかなか難しいということなのですが、そこのターゲット、リテラシーの深度というのでしょうか、個々人の方に、あなたの状態はこういうことで、こういう手続をしていただくと、こういういいことがありますということをお伝えすることと、そもそも年金制度はこういう構造になっていて、例えば、何人ぐらいの情報の間違いがあったということは全体に対してどういう意味があるのかとか、より大きな構造としては何が問題なのかとか、それをよくするためにはどうしたらいいかとか、そうした非常に大きなリテラシーという意味での知識を高めることと、いろいろなレベルを分けて具体的に考えていくことが必要ではないかと感じました。
		これは横尾先生のおっしゃった話に関連するのですが、保険で何でこれほどジツケンのこういうものが重宝されるか、人気があるかということと、山口先生の資料ですと、4ページですかね、これは公的年金ですが、年金制度について何から学べばいいか分からないという人が4割いるということは、僕は同じことを言っているのではないかと感じています。
		結局、ある意味、深さが非常に深くて、個々人の方についてどうこうということとそれが全体としてどうなのかということのレベルが、非常に高いところから低いところまであるものですから、ある程度のことが分かってもそれが全体を分かったことになるのかどうかは分からないという問題があります。
		そこをどう分かりやすく伝えるのか。
		それぞれのレベルに応じて、正確さと的確な理解を求めることの兼ね合いは違ってくるのかなと思いました。
		すみません。
		いろいろと申し上げましたが、そういうことを思いました。
		さらに、例えば、いろいろ観察をするということについて、今の私のところで言いますと、例えば、年金事務所、あるいは、年金事務所に相談に来られる方、コールセンターの方のデータみたいなもので使えるところもあるのだろうなと改めて思いましたので、これからも、いろいろと御指導を賜りながら、また年金局とも一緒になって、生かせるデータは生かして使えるようにということを思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
		○上田座長 ありがとうございました。
		それでは、お時間も迫ってまいりましたので、フリーディスカッションはこの辺りにいたしたいと思います。
		本日は、皆様から大変貴重な御意見を多々いただきまして、ありがとうございました。
		年金広報の在り方につきましては、年金の理解を深めるためにも非常に重要な取組かと思いますので、これからも皆様と力を合わせて年金広報に取り組んでいきたいと思っております。
		続きまして、議題4の「公的年金シミュレーターの運用状況について」に入りたいと思います。
		資料4について、事務局から御説明をお願いいたします。
		○菊地係長 事務局、年金広報企画室の菊地でございます。
		資料4「年金の「見える化」Webサイト 公的年金シミュレーターの運用状況について」を御説明申し上げます。
		2ページ目を御覧ください。
		公的年金シミュレーターの概要でございますが、公的年金シミュレーターは、皆様方からの御助言も賜りまして開発を進めた結果、令和4年4月25日に公開させていただきました。
		現在は試用運転として実施しており、本年度中に本格稼働予定でございます。
		今後、利用状況や運用状況等を踏まえまして、ユーザーエクスペリエンスを向上するための改善を考えていきたいと考えております。
		続きまして、3ページ目をお開きください。
		公的年金シミュレーターは、従来、デジタル社会の実現に向けた重点計画等々に記載されてございましたが、今般、6月7日の閣議決定により、新資本主義及び経済財政運営と改革の基本方針にも記載されましたので、御報告を申し上げます。
		資料の4ページ目をお開きください。
		公的年金シミュレーターの利用状況でございますが、公的年金シミュレーターへのアクセス件数は、試験運用中のところでございますが、非常に順調に伸びています。
		公開2か月で、全体で約48万回アクセスがございました。
		個別に見ていきますと、トップページの生年月日を入力するページが約27万件、実際に試算までたどり着いた方が約19万件でございまして、順調に伸びてきている状況でございます。
		今後も、順調なアクセス件数の伸びが予想されるものでございます。
		5ページ目をお開きください。
		公的年金シミュレーターのアクセスでございますが、端末の約85%がモバイル端末によるものでございます。
		今回、公的年金シミュレーターは、皆様方に御相談を差し上げたとおり、モバイルファーストに特化したデザインであり、これらの効果が出ているものと考えられています。
		一方、インターネットエクスプローラーとか、一部保証対象外になっているものからのアクセスもございまして、トップページから試算画面へ移行せず離脱していると考えられるところでございます。
		次のページをお開きください。
		これまで、公的年金シミュレーターに関しましては、試験運用をやっている最中でございます。
		現在、民間事業者との連携については、CSVで保存できるようにし、保存データを民間事業者が運営するアプリ等において取り込むことによって民間アプリとの連携できるような構造になっています。
		この点を詳細にご説明いたします。
		資料7ページ目、CSVについての連携でございます。
		令和3年度においては、社会保険システム連絡協議会様に対して行政協力を依頼させていただきまして、実証実験を行いました。
		その結果、CSVファイルは問題なく読み込め、CSVの仕様をウェブサイト上で公開することは民間連携を進める上で有用だと言われています。
		CSV形式で保存できることは便利だと言われている一方、CSVを用いた民間アプリとの使い勝手がよくないのではないかということも御指摘いただいたところでございます。
		今後、まずは、民間アプリ等においてCSVデータが取り込めるよう、CSVに収録されている年金額試算のデータの配列を示したレイアウトを厚生労働省ホームページにおいて公開させていただく予定でございます。
		これが公開された後、社会保険システム連絡協議会様やそのほかの様々な関係者に、CSVに関する連携についての働きかけを行っていきたいと考えているところでございます。
		最後に、8ページ目をお開きください。
		CSV以外に関する民間アプリとの連携方策は、これらの公的年金シミュレーターと民間アプリとの連携を促進する上で重要な観点と考えられております。
		そこで、昨年度の結果を踏まえまして、今年度はより効果的な連携方策の在り方を検証するため、引き続き民間事業者との運用実験を行っていきたいと考えております。
		運用実験の一つとして、公的年金シミュレーターのソースコードの提供でございます。
		公的年金シミュレーターのソースコード(プログラム)を将来的にオープンソース化することを目的といたしまして、民間事業者に公的年金シミュレーターのソースコードを更改し、改変していただいて自社アプリに取り込めるようにしていこうというものでございます。
		ソースコードを提供する方式の課題として、例えば、毎年度の年金額改定をはじめとする頻繁に行われる公的年金シミュレーターのアップデートへの対応、民間事業者様でソースコードを改編して民間アプリに掲載し、適切な試算結果を表示することができるか。
		その他に、公的年金シミュレーターと民間アプリとの責任分界点に関する課題があると考えています。
		そのほかにも、API連携等々の技術論はあるのですけれども、まずは、公的年金シミュレーターのオープンソースの著作権は厚生労働省が保有しております。
		API連携等による民間アプリとの連携については、サーバー開発等の長期的な作業を必要とするため、まずは、公的年金シミュレーターのオープンソース化について検討していきたいと考えています。
		今後の対応は、高度な連携方策となることから様々な業種の民間事業者にお願いしたいと考えております。
		実際に運用実験をする際には、我々が保有しているサービス処理仕様書や公的年金シミュレーターのソースコードを提供し、連携方策の実現可能性の検証を引き続き行ってまいりたいと思っています。
		最終的には、今年度中に検証結果を取りまとめることを目指して、進めていきたいと考えております。
		事務局からは、以上でございます。
		○上田座長 御説明をありがとうございました。
		それでは、皆様から、ただいまの御説明について、御意見や御質問等がございましたら、お願いいたします。
		よろしいでしょうか。
		アクセス件数はかなり多いですね。
		○菊地係長 おかげさまで、多数のアクセスをいただいているところでございます。
		○上田座長 大変関心を持っていただいているのかなと思って、今、御説明を聞いていました。
		原さん、どうぞ。
		○原構成員
		3ページにもあったように、公的年金シミュレーターは今後の展開が期待されているものかと思いますけれども、最後、8ページのところに、民間事業者との連携の進め方ということで、例1、例2、課題ということがいろいろと書かれていたと思います。
		責任分界点というのですかね、難しい言葉ですけれども、課題の中では明確化をクリアすることがすごく重要ではないかと思っています。
		もちろん、そういったことをクリアしながら、慎重にするところは慎重にしていただきながらということで、進めていっていただきたいと思っております。
		また、提供するところは提供するということですね。
		増えていますということですが、もっと増えていただいて、若い方にも気軽にこういったものを使っていただく。
		特に、若い方々に使っていただいて、民間事業者を利用する際に自分でシミュレーションしたものを持っていって、利用者側からのアプローチ、自分でシミュレーションをしたものを自分で活用してどういう将来設計をしようかといった、逆の展開といいますか、利用者から民間事業者に行くような到達点もぜひ目指していただきたいなと思います。
		若い方に使っていただくことが一番いいと思います。
		大学生においても今後のライフプランを入れられるようになっていますので、そのためにはどういうことが必要かということも同時に検討していただきたいと思います。
		そこでまたさっきの議論になってしまうのですけれども、教育や広報も必要かと思いますので、もちろん課題もクリアにしながら民間事業者との連携を進めていただいて、同時並行で、今度は、利用者がもっと増えていって、若い方にも使っていただいて、自分が民間の金融機関に行くときにそれを持っていくなどして、上乗せの部分を考えていくときに、まず、公的年金があるんだというところをしっかり把握したうえで、いろいろと検討していただけたらと思っております。
		以上です。
		○上田座長 ほかに、皆様から御意見はございますでしょうか。
		責任の分担というか、ここは結構肝になるところですね。
		皆様から、特にはよろしいですか。
		分かりました。
		それでは、議題4につきましては、これで終わりにしたいと思います。
		そのほか、構成員の皆様から何かございますでしょうか。
		よろしいですか。
		それでは、事務局から御連絡をお願いいたします。
		○菊地係長 本日は、皆様方、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございました。
		次回の日程に関しましては、後日、事務局から御案内させていただきたいと思います。
		○上田座長 ありがとうございました。
		本日の議題は全て終了いたしましたので、本日の会議はこれで終了いたしたいと思います。
		皆様、お忙しい中、御参加をありがとうございました。



