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2018年2月26日 第9回厚生科学審議会結核部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成30年2月26日(月) 13:00~15:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

加藤部会長 中山委員 永野委員 釜萢委員
味澤委員 磯部委員 藤田委員 吉山委員
徳永委員 有馬委員 脇田委員 高参考人

○議題

(1)「結核医療の基準」の一部改正について
(2)結核入国前スクリーニングについて
(3)高齢者の結核対策について
(4)報告事項
    ・結核患者の感染症病床への入院について

○議事

○高倉補佐 ただいまより、「第9回厚生科学審議会結核部会」を開催させていただきます。開会に当たりまして、福田健康局長より御挨拶申し上げます。

○福田局長 健康局長の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。先生方におかれましては、大変御多忙の中お集まりを頂きまして、誠にありがとうございます。また、日頃より結核対策の推進に多大なる御尽力を頂いておりますことを、この場を借りまして、まずもって厚く御礼を申し上げたいと思います。

 先生方の御指導、お力添えによりまして、結核の新規患者登録者数及び罹患率は減少を続けております。直近のデータでございますが、平成28年について申し上げますと、新規登録患者数は17,625名ということになりました。罹患率につきましても、平成28年は13.9となりまして、前年の14.4から0.5ポイント減少しておりますが、いまだ低まん延国と言える状態にはなってございません。厚生労働省といたしましては、2020年までに低まん延国になることを目指しておりますが、目標を達成させるには、これまで以上に対策を加速化する必要がございます。

 本日は、結核医療の基準の一部改定、入国前のスクリーニング、高齢者の結核対策について、御審議を頂く予定といたしてございます。低まん延国家の実現におきましては、高齢者や外国出生者等、ハイリスク層への対策が大変重要でございます。委員の先生方におかれましては、是非、活発な御議論を頂きますようお願いを申し上げまして、簡単ではございますが、冒頭に当たりましての御挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○高倉補佐 次に、委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、南委員、杉本委員より御欠席との御連絡を頂いております。また、中山委員からは少し遅れて出席される旨の御連絡を頂いております。出席人数は10人となっており、過半数を満たしておりますので、会議は成立することを併せて御報告いたします。

 次に、今回より新たに本部会の委員となられました先生を御紹介させていただきます。福岡市早良保健所長永野美紀委員、日本医師会常任理事釜萢敏委員、東京都保健医療公社多摩南部地域病院副院長藤田明委員。どうぞよろしくお願いいたします。また、本日は、参考人としてヤンセンファーマ株式会社臨床開発部感染症・ワクチン疾患領域高忠石様に御出席を頂いております。どうぞよろしくお願いいたします。

 大変申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきますので、御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、この後の議事進行については部会長にお願いします。加藤部会長、よろしくお願いいたします。

○加藤部会長 はい、承知しました。本日も活発な御議論と円滑な進行に御協力をよろしくお願いします。議事に入る前に、まず、これまで部会長代理を務めていただいておりました山岸委員が御退任されましたので、脇田委員に部会長代理をお願いしたことを御報告します。脇田委員、どうぞよろしくお願いします。

 続いて、審議参加に関する遵守事項について、事務局から御報告をお願いします。

○高倉補佐 審議参加について御報告いたします。本日の議題1では、ヤンセンファーマ株式会社のベダキリンについての審議を予定しております。また、ベダキリンの競合品目、競合企業として、大塚製薬株式会社のデラマニドが選定されております。本日御出席いただきました委員及び参考人から、厚生科学審議会結核部会審議参加規程に基づき、これらの品目の製造販売業者からの寄附金・契約金等の受取状況、また、これらの品目の薬事承認の際の申請資料への関与について御申告を頂きました。委員及び参考人からの申告内容については、お手元に配布しておりますので御確認いただければと思います。また、委員等からの申告資料については、厚生労働省のホームページで公表いたしますことを申し添えます。

 本日御出席の委員及び参考人のうち、吉山委員よりベダキリン及びデラマニドの申請資料等の作成に関与されているとの申告がありました。厚生科学審議会結核部会審議参加規程第5条及び第6条に基づきますと、吉山委員は議題1の審議及び議決が行われる間、部会が必要と認めれば退席せずに意見を述べることができますが、議決には加わらないようお願いすることとなります。この取扱いについてお諮りいたします。

○加藤部会長 ただいま、事務局から審議参加について説明がありました。吉山委員については、今、御説明があったとおり、この参加規程によれば退室となりますが、吉山委員は結核の医療について大変造詣が深い方です。お手元の参考資料3に参加規程がありますが、この中の特例、第13条に、「必要であると部会が認めたとき」は、「部会における審議に参加することができる。なお、この場合であっても議決に加わることはできないものとする」という規定を適用し、吉山委員には退室せず意見を述べていただきたいと思いますが、よろしいですか。

                                   (異議なし)

○加藤部会長 ありがとうございました。皆様の御了解が頂けましたので、そのように取扱いたいと思います。次に、事務局から本日の配布資料の確認をお願いします。

○高倉補佐 配布資料一覧に沿って資料の確認をさせていただきます。初めに議事次第、座席図、委員名簿、その後に資料1-11-4、資料24があり、参考資料が15までとなっております。御確認いただきまして、不足等がありましたら事務局までお知らせください。

○加藤部会長 よろしいですか。それでは議事に入ります。本日の進行はお手元の議事次第に沿って進めてまいりますので、よろしくお願いします。議題1、「結核医療の基準」の一部改正についてです。資料1-11-2について事務局から説明いただき、資料1-3を高参考人から、資料1-4を吉山委員から説明をお願いします。それでは事務局からお願いします。

○高倉補佐 事務局より、資料1-11-2について御説明させていただきます。資料1-1を御覧ください。ベダキリンが抗多剤耐性結核薬として、平成301月に薬事承認されたことを受け、結核医療の基準を以下のように改正するものです。

1つ目が、ベダキリンを追加するということ。2つ目が、ベダキリンは抗多剤耐性結核薬であることから、デラマニドと同様の場合に限って使用するということです。3つ目が、その他所要の改正を行うということです。

 具体的な改正のポイントについて、資料1-2の新旧対照表がありますので、御確認いただきたいと思うのですが、そちらの2ページの下のほうに、抗結核薬の中に()としてBDQベダキリンが加わっております。

3ページの上方、()ですが、先ほど申し上げましたように、ベダキリンはデラマニドと同じ抗多剤耐性結核薬ですので、デラマニドと並列の形で()の項目に加えさせていただいております。

 もう1つの改正点は、5ページです。5ページの右列、旧の欄ですが、「潜在性結核感染症の治療における薬剤選択」という項があります。こちらが従来は肺結核に対する化学療法の項目の中に含まれておりました。ですが、本来これは肺結核や肺外結核と並ぶ形で項目として立てるのが妥当であったのではないかという検討の中で、新の案では新たな5番目の項目として、潜在性結核感染症の化学療法ということで、項目の内容の位置を変えたものです。事務局からは以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。潜在性結核感染症の内容は変わらないけれども、基準の中の位置を変えたと、こういう理解でよろしいですね。

○高倉補佐 さようです。

○加藤部会長 ありがとうございました。続いて、高参考人から御説明をお願いします。

○高参考人 先ほど紹介いただきましたヤンセンファーマの高です。それでは早速、資料の説明に入ります。資料1-32ページを御覧ください。サチュロ錠は、一般名をベダキリンフマル酸塩と申します。図のような形の構造を持つ薬剤で、1錠中にベダキリンとして100mgを含有する経口錠です。作用機序は、結核菌のエネルギー生成に必要なATP合成酵素を阻害します。したがって、本剤の特長ではありますが、増殖期にある結核菌のみならず、休眠期にある結核菌においても殺菌作用を示します。この作用機序は、従来の抗結核薬と異なる新しい作用機序を持った薬剤です。

 本剤は、201212月に米国で同じ多剤耐性肺結核を適応症として承認されました。それ以降、今年1月に日本で承認され、日本が52番目の国となりました。

3ページを御覧ください。添付文書に関する情報を整理しています。効能・効果ですが、適応菌種は本剤に感性の結核菌、適応症は多剤耐性肺結核となります。効能・効果に関連する使用上の注意としては、本剤にはQT延長リスクがありますので、それに関する記載を注意として喚起しています。

 また、赤字で囲いました警告ですが、耐性菌発現を防ぐために、本剤においては必要な措置を講ずることが記載されています。具体的には、結核症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で投与し、適正使用に努めること。また、本剤には、デラマニドと同様にResponsible Access Programというプログラムがあります。そのプログラムにおいて、登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関・薬局において、患者も登録し使用することとしております。

 また、先ほどの効能・効果の使用上の注意に書かれたQT延長リスクに合わせて、本剤の投与開始前及び投与中は定期的に心電図等の検査を行い、リスクとベネフィットを考慮して投与を慎重に判断するという警告をさせていただいております。また、本剤の禁忌は、本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者とさせていただいております。

4ページを御覧ください。本剤の用法・用量です。最初の2週間は、ベダキリンとして11400mg、すなわち本剤サチュロ錠4錠を食直後に経口投与いたします。3週目以降は、1200mg、すなわち本剤2錠を週3回、48時間以上の間隔をあけて同じく食直後に経口投与します。用法・用量に関連する使用上の注意にも記載しておりますが、耐性菌の発現を防ぐために、本剤は感受性を有する既存の抗結核薬3剤以上に上乗せして併用していただきます。

 また、同じく用法・用量に関連する使用上の注意にも記載しておりますが、本剤の投与期間は原則として6か月です。これは海外で承認されている用法・用量が24週間と規定されていることから、このような記載にさせていただいていますが、実際に日本で行いました臨床試験において、24週を超える投与を許容した試験を行っております。その中で5例ほど24週を超える投与はありましたが、極めて限られた例数のデータしかありませんので、24週を超える使用の際には、リスクベネフィットを考慮して投与の継続を慎重に判断していただくことになります。

5ページを御覧ください。使用上の注意に関する情報です。慎重投与として、QT延長リスクに絡み、QT延長のある患者、QT延長を起こしやすい下に示した6項目に該当するような患者、QT延長を起こすことが知られている薬剤等を服用している患者に対する注意喚起をさせていただいております。

 また、重要な基本的注意といたしまして、本剤の投与に関するQT延長に関して、先ほども述べましたとおり、本剤投与開始前及び本剤投与中は、定期的に心電図及び電解質の検査を行い、異常が認められた場合には適切な処置を行うことという注意喚起をさせていただいております。もう1つ、2番目として、肝機能障害が現れることがありますので、本剤投与中は定期的に肝機能検査を行い、同じく異常が認められた場合には、適切な処置を行うことの注意喚起をさせていただいています。

6ページを御覧ください。最初に申しました本剤の特長に関する微生物学的な検討です。増殖期及び休眠期の標準株を用い、ベダキリンと代表的な抗結核薬であるイソニアジドを作用させて、生菌数を測定しました。図に示したように、ベダキリンの場合には、休眠期及び増殖期のいずれの菌に対しても生菌数を減少させておりますが、イソニアジドでは、増殖期では殺菌作用を示したが、休眠期にある標準株に対しては殺菌作用を示しませんでした。

7ページを御覧ください。こちらは、国内外の臨床分離株に対するベダキリンの最小発育阻止濃度を調べた結果です。日本国内で20122015年の間に分離された臨床分離株59株を用いて測定した結果のMIC90 は、通常の多剤耐性菌、超多剤耐性菌を含め、いずれも0.06μg/mLでした。

 もう1点、海外の臨床試験で分離された同じく多剤耐性結核菌276株での成績です。こちらも通常の多剤耐性結核、pre-超多剤耐性結核、超多剤耐性結核、いずれに対しても確認をしておりますが、MIC90 の値は0.12μg/mLでした。いずれの株に対しても有効だったことが確認されております。

8ページを御覧ください。ベダキリンの薬物動態に関するまとめです。外国人の健康成人に対して、本剤の反復投与を行ったときの14日目の最高血中濃度到達時間(tmax)は、約5時間でした。そのときに測定した血中半減期は約170時間でした。ただ、実際の臨床の場では、長く飲みますと、ベダキリンは細胞内に一旦取り込まれて、リン脂質と複合体を形成すると考えられています。ですので、実際に患者を対象として行った臨床試験で測定された血漿中ベダキリン濃度の終末相における消失半減期は、5.5か月と非常に長いものでした。

 ベダキリンは食事の影響を受け、食直後投与時のバイオアベイラビリティーは絶食投与時の約2倍です。ですので、効果を得るために本剤の用法・用量では、食直後投与を採用しております。

 たん白結合率は99%以上でした。

 本剤の主要代謝酵素はCYP3A4です。ですから、この中には示していませんが、中等度又は強力なCYP3A4誘導作用を有する薬剤、例えば結核で使われるリファブチンのような薬剤と一緒に飲みますと、本剤の代謝が促進され、血中濃度低下の恐れがありますので、これは添付文書上の併用注意の欄に記載しております。

 主要代謝物はベダキリンのN-モノ脱メチル化されたM2という物質です。M2の抗マイコバクテリウム活性は、ベダキリンに比して約6分の14分の1程度と低いものです。

 ベダキリン及びM2は尿中にはほとんど排泄されず、同じく患者対象で行った臨床試験で採取した糞便検体で確認しますと、投与量の約7585%が未変化体として糞便中に検出されました。

9ページをお願いします。これから数ページにわたって実際に行いました臨床試験の成績を示します。海外では、C208と言われるプラセボを対照として行った、2つのステージからなる検証試験を実施しました。また、C209というオープン試験ではありますが、こちらは既治療の多剤耐性結核、超多剤耐性結核まで含めた、より実臨床に近い想定で行った臨床試験です。国内では1つ、TBC2001と書いてありますが、同じく未治療・既治療の多剤耐性結核を含めてオープン試験を実施しています。

10ページを御覧ください。有効性に関する結果です。本剤の有効性に関して、主要評価としてMGITを用い喀痰培養陰性化までの時間を評価いたしました。プラセボを対照としたC208試験のステージ2において、本剤を24週間投与した結果ですが、喀痰培養陰性化までの時間の中央値はプラセボ群では125日でした。それに比べて本剤群では83日と統計学的に有意な短縮が認められました。また、24週時点での喀痰培養陰性化率も、プラセボ群の57.6%に対して、本剤群では78.3%と統計学的な有意差が認められております。

C209試験では、培養陰性化までの時間の中央値は57日でした。24週時点での喀痰培養陰性化率は79.5%で、これは非常に高いものでした。また、国内では、例数が極めて少数ではありますが、喀痰培養陰性化までの時間は4例で、いずれも14日若しくは15日で陰性化しており、4例中4例とも全て陰性化しております。

11ページを御覧ください。耐性菌の種類別での陰性化率を示しました。通常のMDR-TBに対する陰性化率は73%、Pre-XDR-TBに対しても71%とほぼ同じ成績を示しました。また、陰性化が比較的困難な超多剤耐性の結核菌に対しても62%という非常に高い陰性化率を示しております。

12ページを御覧ください。副作用です。こちらは国内の添付文書に記載している情報を抜粋しております。国内試験では、先ほど言いました例数が非常に少ないですが、6例中3例に副作用が認められております。ただ、懸念されていましたQT延長に関する副作用は、一応この6例では認められませんでしたが、肝機能異常が1例で報告されました。海外臨床試験では、先ほどの208試験、209試験で2つの試験を合わせた成績ですが、全体として335例中166(49.6)で何らかの副作用が報告されています。発現割合が高かったのは、悪心、関節痛、頭痛及び嘔吐でした。また、先ほどからの使用上の注意、いろいろな所で注意喚起をさせていただいているQT延長と肝機能障害については、重大な副作用として集計しています。QT延長に関しては、全体で2.7%で報告されました。肝機能障害に関しては、肝機能障害という事象自体は発現していませんが、ASTALTなど、関連するトランスアミナーゼの上昇が、下の表に書いてあるとおり5%以上、実際は8.7%で報告されております。

13ページを御覧ください。心電図異常に関する概要をまとめました。国内外試験において、本剤の曝露量または投与期間とQTcFの延長に直接的な関連は認められませんでした。ただし、プラセボ群と比較して本剤群においてQTcFの延長例が多く認められております。また、QT延長は認められておりますが、トルサード ド ポアント等の重篤な心血管系有害事象は1例も発生しませんでした。

 臨床試験の中では、450ms480ms以下のQTcFの延長は、海外の臨床試験において15%、国内臨床試験では6例中2例で報告されています。また、480ms500ms以上の延長は、海外試験で1.8%、国内試験でも1例報告されています。500msを超えるような値は、海外で併合成績で2例、国内試験で1例報告されました。また、ベースラインからの変化量で見ますと、30ms以上60ms以下の変動が海外試験で41.5%、国内試験では6例中4例で報告されました。60ms超の変動は、海外臨床試験で5.8%、国内試験では認められませんでした。有害事象として報告されたQT延長は、海外臨床試験では9(2.7)、先ほどの数字です。国内では1例です。QT延長ではないですが、関連する事象として失神が1例報告されています。ただ、この1例は軽度で、試験担当医師は治験薬との関連性を否定しております。

 最後のページ、14ページを御覧ください。もう1つ特記すべき情報として、その他の注意欄に臨床試験で認められた死亡例の不均衡について説明させていただきます。添付文書の中には、その他の注意として黒枠で囲んでいる部分、「海外臨床試験(試験期間120)において、死亡例が本剤投与開始例で12.7(10/79)、プラセボ投与開始例で3.7(3/81)に認められた」という注意書きを記載させていただいております。この内容は、本邦に限らず海外の添付文書にも記載されている内容です。

 これら、ここで報告された13例の詳細について、下の表でまとめました。実際に本剤治験薬投与中には1例、アルコール中毒で死亡が確認されていますが、この事象を含めて全ての死亡例に関して、治験薬との関連性は否定されています。

 なお、臨床試験とは別に、WHO20142016年において南アフリカで行った大規模コホート研究の成績を報告しています。約25,000例のデータを用いているものですが、その中でベダキリンを含む治療レジメンが行われた症例が1,556例ありました。実際にその中で死亡例は7.6%でした。一方、ベダキリンを含まない他剤で行われた治療レジメンが行われた23,539例における死亡率は、18.2%という高い報告もあります。これらのことも、その他必要な情報として提供させていただきました。以上、簡単ではありますが、サチュロの説明を終わります。

○加藤部会長 ありがとうございました。続いて、吉山委員より御説明をお願いいたします。

○吉山委員 結核病学会治療委員会では、このベダキリンが新たに抗結核薬として承認されるに当たり、新たな結核薬の使用における指針を定める必要があるということで、結核病学会治療委員会で検討いたしました資料が資料1-4のとおりです。ただ、まだアメリカでも承認されてから現在で5年ということで使用数が少ないこともあり、ここの一番最後に書きましたけれども、まだ使用経験が不足なのでいろいろ不十分な情報があるということで、今後更に情報が集まりましたら指針も改定していく必要があると記載しております。

1ページの背景は飛ばして、薬剤の概要につきましては、ただいま説明があったとおりですので、これも割愛いたします。

 次のページの3のベダキリン併用における多剤耐性肺結核の治療の原則については、ベダキリンはどういうときに使うかということについての原則的なことを記載しています。結核の治療においては、1剤治療で治療するとその薬が耐性化して治療が失敗しますので、感受性薬剤を3剤以上、可能であれば4剤ないし5剤用いることを原則としています。現在のところ、結核薬としての順位付けというのは結核医療の適用のほうでありますけれども、多剤耐性結核に承認されたベダキリンについては先般承認されたデラマニドと同じですが、まだ使用経験が少ないということで、そのリストの中では一番下のほうに位置されています。

 多剤耐性結核の治療の原則としては、上のほうにある薬剤から使用していき、耐性である、あるいは副作用がある、あるいは合併症があるなどによって使用できない薬を除外して、4剤ないし5剤、最低3剤以上使用するというのが、多剤耐性結核の使用の原則となります。ですので、ベダキリンにおいては、既存薬剤で使用できる薬が十分にある場合については対象となりません。5剤以上の使用が可能である場合にベダキリンを使うかどうかについては、実を言うとこれによって治療成績が良くなるか悪くなるかについて情報がありませんので、否定するものではない、ただ推奨もしていないということになります。一方、1剤若しくは2剤しか併用できる薬がない場合については、逆に使用を否定するものではないけれども、耐性化の危険を考慮して慎重な扱いを要すると記載しております。

 ベダキリンとデラマニドが多剤耐性肺結核に対する医薬品として承認されていますけれども、いずれを用いるかということについてのコメントが3(5)、このページの右側の下のほうにあります。結核病学会においてはどちらを推奨するということは特にありませんが、有害事象を勘案して検討する必要があるということです。ベダキリンとデラマニドの併用について、先ほど既存薬剤が1剤ないし2剤と少ない場合どうするかということについて、その場合にベダキリンとデラマニドを併用すれば、新たな既存薬剤としての1剤目2剤目が使えるかということについての結核病学会の見解ですけれども、これにつきましては治験における経験がありませんが、実際には各国で使用されており、その情報が集積されつつあるということなので、これを否定はしませんが慎重な扱いを要すると、情報が足りないため慎重な扱いを要すると記載しております。

 次ページの4、適正使用のための条件です。ただいま申しました原則に基づいてベダキリンを使用するに当たっては、どのような条件の下で使うかという手続を記載したものです。使用できる医療機関に関する条件を定める、これが4.1.です。個々の症例についてベダキリンを使ってよいかどうかを判断する、これは4.2.に記載しています。これについては先ほど説明があったとおり、レスポンシブルアクセスプログラム適正使用であるかどうかを保証、検討する委員会を設けて判断のシステムを作成する予定であると記載されています。また、この薬については、1度許可すると6か月間を原則としていますけれども、最後まで使用していいかということについては、副作用の発生状況や薬の有効性などを判断するために、3か月の時点で再検討すると記載しております。

 また、6か月を超える治療についてですけれども、これについても治験では経験が限られているということから、確かに有害事象が増える可能性についても検討が必要です。一方で治療失敗の危険が高い症例において、長く使用することによって治癒の可能性を増やすことができる症例が存在することも事実ですので、6か月を超える場合については禁忌とはしない、その時点で再度専門家が検討するということを結核病学会では推奨しております。以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。ただいまの参考人及び事務局の説明に対して、何か御意見はございますか。では私からですが、小児の使用についてはどのような考えになっていますか。

○吉山委員 結核病学会の参考資料1-43ページ目、左側の上のほうの3行目です。「小児の使用については、添付文書では低出生体重児、新生児、乳児、幼児に対する安全性は確立していないことから、症例ごとの判断が必要となるであろう」と記載しています。これは禁忌とはしない、必要があれば使用することを検討する。全症例個々に検討するわけですが、慎重な扱いを要するけれども禁忌とはしないと考えております。

○加藤部会長 ありがとうございました。高参考人はこれについて、何か御意見はございますか。

○高参考人 本剤は錠剤ですので、飲める年齢の方はやはり限られているかと思います。一方、海外では今、もう少し小さい子供用の製剤を含めて臨床試験を実施していますので、数年後になるかと思いますけれども、小児への使用に対する何らかの提言はできる可能性はあるかとは一応思っています。

○加藤部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。

○有馬委員 大阪市の有馬です。この薬は食直後に飲むということになっていたようですけれども、患者さんのいろいろな生活の背景の中で、ちょっと時間が空いてしまう場合がはっきりしているような患者さんに対しては、余りお勧めすることはできないのでしょうか。

○高参考人 一番効果が確実に出る、必要とする血中濃度になるのはやはり食直後、それからせいぜい少し遅れた程度かと思いますので、やはりそういう時間に飲んでいただけると。ただ、当然3食ありますので、ケースバイケースでもしかしたら同じように昼食後に飲むとか、夕食後に飲む、そのパターンは逆に言えば患者さんと相談できるかと思います。

○有馬委員 分かりました、ありがとうございます。

○加藤部会長 吉山委員、どうぞ。

○吉山委員 有馬委員の御指摘は、DOTSを保健所で行っている場合にその時間が合わないのではないかということを御考慮されているのではないかと推察しますけれども、その場合は直前に何かを食べて、お腹をいっぱいにしたところで飲んでもらうとか、その辺の工夫を保健所のほうで検討していただければ幸いかと考えます。

○有馬委員 分かりました、ありがとうございます。DOTSに来られる患者さんというのはお昼を食べた後で来られますので、その場合はしっかり食べることが必要ですか?少しお腹に入ればいいということですね。分かりました。

○加藤部会長 ほかにございますか。

○徳永委員 結核病学会が作成された指針の中に、6か月以上続いて菌の陽性化が続く場合にベダキリンの薬剤感受性試験を行うことが必要と書いてあるのですけれども、これは具体的にどこで、会社に依頼するのかあるいは結核研究所に依頼すればできるのか、その辺は決まっているのでしょうか。

○高参考人 まず、先ほどの適格性確認というかRAPシステムの中で、感受性試験に関する培地や方法も会社側から提供していますので、投与される医療機関から要望があれば、そちらのほうに感受性検査用のプレートや方法を含めて、情報を提供できるシステムを備えております。

○加藤部会長 ほかにございますか。

○味澤委員 QT延長で定期的にと書いてあるのですけれども、非常に曖昧なのですが、目安として大体どのぐらいですか。しかも最初の2週間は連続で行って、あとは週に3回みたいですけれども、どこら辺まで1か月おきに見なければいけないとかといったデータはそもそもあるのでしょうか。

○高参考人 臨床試験においては、最初の2週間に取って、4週間、1か月ごとという形で、全て取っています。日本の添付文書では定期的と書いてありますけれども、国によっては1か月に1回程度という形で書いている所もあります。通常の来院ですと、もし1か月に1回されている場合であれば、そのときに見ていただくのがよろしいかと思います。

○味澤委員 1か月に1回取るというのはかなり頻回なので、どこかにそういうサジェスチョンは記載があったほうがいいような気がします。

○高参考人 ありがとうございます。添付文書の記載はそうなっていますけれども、実際に配布する使用上の注意の解説書であるとか、インタビューホームには海外での試験の状況とかも踏まえて、こういう頻度で測りましたというような情報は記載しております。

○吉山委員 結核病学会の1ページの右側の一番下から5行目です。肝機能検査及び心電図検査は、使用中少なくとも月1回以上と記載していますので、使用中は少なくとも月1回ということで考えております。

○加藤部会長 非常にクリアに記載があったということかと思いますけれども、よろしいですか。ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。吉山委員、基本的にはデラマニドと同じような位置付けと、同じような使用法と考えてよろしいですか。

○吉山委員 位置付けとしては同じです。

○加藤部会長 ほかは、よろしいでしょうか。意見はほぼ出し尽くされたようですし、特段問題とされるような御意見もないということです。議題1の内容について事務局の提案のように、部会として承認をしたということでまとめたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

                                   (異議なし)

○加藤部会長 ありがとうございました。それでは、本議題につきましては承認ということにさせていただきます。

 議題2、結核の入国前スクリーニングに移ります。資料2について、事務局から説明をお願いいたします。

○高倉補佐 事務局より御説明いたします。資料21ページを御覧ください。外国生まれの結核患者数は増加傾向にあり、平成28年の新規結核患者数の中で外国出生者の方は1,338名ということで、過去最高の値になっています。特に、多数に感染させる可能性の高い若年層においての増加傾向が顕著です。高まん延国出生者が日本滞在中に発症するケース、あるいはそこから集団感染等を起こすケースというものが見受けられている状況です。外国からの入国者への結核対策として、主要先進国の多くは、条件や方法は国によってかなり異なりますが、高まん延国からの入国例や長期滞在をする方に対して、入国前のスクリーニングを実施しております。入国した直後に行う国もあります。

 今回、机上配布資料があると思いますけれども、こちらも御確認いただきたいのですが、海外諸国における結核入国前スクリーニング対象国等の設定について表にまとめてあります。こちらは細部までの確認が不十分が所もありますので、机上配布資料とさせていただきましたが、御覧になっていただくと、そもそも罹患率、WHOが毎年公表している罹患率によって、対象とする国を設定している国もありますし、こういう罹患率等を参照しながら特定の国をもう指定しているという国もあります。あるいは査証の種類にもよりますけれども、全ての国を対象にして、とにかく永住ビザや6か月以上とか、そういう方に対しては国を問わずにスクリーニングを求めているといった国もあります。この入国前スクリーニングの対象は各国で行われていますけれども、この方法というように定まった単一の方法はないのが現状です。

 資料2に戻っていただいて4番目ですけれども、出入国管理及び難民認定法、いわゆる入管法において結核を含む二類感染症の患者は上陸できないこととされています。また、ビザの原則的発給基準というのが右下に示してありますけれども、こちらにおいても入管法第5条に該当する場合は発給できないということになっています。

 そこで今回、我々は外国出生者の結核患者が国内で増加しているという状況を踏まえて、入国前のスクリーニングを実施する。先ほども御説明申し上げたように、入管法及びビザの発給基準に照らし合わせると、本来はビザが発給できない状況にありましたが、こちらの部分を具体的に確認する仕組みがなかったということで、2ページ以降に示すような案のとおりの運用ができるような形で、入国前のスクリーニングが実施できないかということで、現在関係省庁と調整や協議を行っているところです。

2ページを簡単に説明いたしますと、まず対象とする国を設定しないといけないことになります。近年の日本における外国出生者の結核患者の出身国、表の中に上位6か国を示していますけれども、罹患率で申し上げると一番低い中国で64、一番高いフィリピンは554ということでかなりの幅があります。先ほどの机上配布資料にもありましたように、おおむねですが、30代から5060代ぐらいの罹患率が境目になっている国が多いという状況です。日本における患者数の多い出身国に関しては、どれもそのような値以上のものであるということです。暫定的ではありますけれども、罹患率50を仮の閾値として、これ以上の国について対象とするという方針で考えているところです。

 対象とする国は今申し上げたようなことでして、2番目の対象者については、現在日本に入国する場合のビザの発給は90日以内が短期滞在、90日を超える場合が長期滞在ということで種類が非常に細かく分かれています。長期滞在の最短の期間というのが3か月を超えるという状況にありますので、長期滞在を対象にする方向で考えているところです。ビザの発給数は年間538万件ありますが、その多くが短期滞在で、観光等の短期の方を含めて全ての方に入国前スクリーニングを実施するのは現実的ではありませんので、先ほど示したような罹患率及び長期滞在をスクリーニング実施の対象にしたいと考えております。

 実際にスクリーニングを行う上では、スクリーニング検査の質を確保することが大変重要になってまいりまして、これも各国がいろいろな工夫というか仕組みを持っています。現時点で我々が想定している案としては、当該国の国立病院等と書きましたが、国立か私立かは問いませんけれども、一定の水準を満たすであろう国を検査の医療機関という形で日本国政府が指定して、その医療機関において結核非罹患証明書あるいは結核治癒証明書ないし結核感染性の消失した証明書といったものを発行していただき、それをビザの発給の際の審査に用いるという方法です。検査の内容につきましては、実際に医師が診察及び胸部レントゲン検査、X線検査を実施し、結核の疑いがある者に対して喀痰検査を追加で行うという方式で考えております。

 次ページに今の案の流れ図が示してありますけれども、暫定的に罹患率50以上の結核高罹患率国出生の方がビザを申請する際、長期滞在であった場合には指定クリニックを事前に受診しないといけないということで、そちらで病歴、理学所見や胸部X線検査等で結核を疑って、場合によっては喀痰検査を行うということです。結核発病がなければ、その場合は非罹患証明書、結核を仮に発病している場合には治療を行って、結核の感染性が消失したあるいは結核の治癒といったものが証明されたという証明書を作成いただき、それでもってビザを発給するという方式です。

 次に少し参考のページを付けてありますが、参考3を御覧ください。現時点でのあくまでたたき台としてのイメージですけれども、結核非罹患証明書あるいは結核治癒ないし結核感染性消失の証明書の案です。このような形で、近年増加傾向にある外国出生者の結核感染の国内での発症及びそれに伴うまん延を防止するために、結核の入国前スクリーニングについて、こちらで案を考えまして、関係省庁と協議を進めているところですので、これについて御意見等がありましたら伺いたいと考えている次第です。事務局からは以上です。

○加藤部会長 ただいま、入国前スクリーニングについて対象国、対象者、検査医療機関、検査内容について御説明いただきました。ただいまの説明について御意見を頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

○永野委員 福岡市早良保健所の永野です。全国保健所長会からは、毎年厚生労働省様のほうに保健所行政に関して御検討いただきたいことということで、要望書を出させていただいております。その中で、昨年6月も第二類感染症の患者さんの入国に関する御対応と、高まん延国からの入国の方に関するスクリーニングに関して御検討をということでお願いをしており、このように具体的な形で案が提示されたことに、まずは本当に感謝を申し上げたいと思っております。

 ちょっと教えていただきたいことがあります。やはり何よりも大切なのは質を保つことだと思いますけれども、主にこの上位6か国で8割ということですが、当市でも外国の方の発症は大変増えていまして、多くの国はこの6か国なのですけれども、ポツンポツンとかなりばらけていて、この体制ができた国から順番に始めていくようなイメージで捉えてよろしいのでしょうか。全部高まん延国でこのシステムを作り上げていくというのはなかなか難しいかと思うので、ちょっと教えていただければと思います。

○加藤部会長 事務局、お願いいたします。

○高倉補佐 今、永野委員がおっしゃったように、いろいろな設定をしないといけないことですので、全ての対象国が一度に開始できればそれが理想だとは思いますけれども、そうなってくると導入に大変時間が掛かる形になってまいります。具体的には、そういう交渉は厚生労働省が直接行うものではありませんので、私から具体的なところは申し上げることができないのではありますけれども、こちらの資料で説明させていただいたように多い所から、その設定ができた所から順次始めていく方向で、我々は提案というか、そういう形を現在のところは考えております。

○永野委員 ありがとうございます。

○加藤部会長 相手側の健診施設につきましては、例えばアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド等々はパネルフィジスシャンと言いまして、健診機関の団体があって、そこで研修や精度管理をやっていますので、例えばそういう組織と一緒にやるという選択はあると思います。ただ、今事務局からも説明があったように、それ以外にも交渉しなければいけないことがあるということですから、すぐにそれができるということではないでしょうけれども、そういった選択肢のどれを選んでいくかということなのかと思います。

○有馬委員 大阪市の有馬です。2点ほどお聞きしたいと思います。1点は、この健診の対象に小児も含まれるのかということ、もう1点は、長期、日本人が高まん延国で滞在をしていた場合、そういう方もこの健診の対象になるのか、この2点をお教えいただきたいと思います。

○加藤部会長 はい、事務局お願いします。

○高倉補佐 小児も対象になります。後半の日本国籍、あるいは対象ではない国の国籍で、高まん延国に長期滞在されていた方というのは、現行ではできない形になりますので対象にはなりません。要するに、ビザの発給のときという、今回の仕組みの導入ですので、それに該当しない場合は、残念ながら対象にはできないということになろうかと思います。

○有馬委員 その場合は、日本に帰って来られてからの健診の勧奨など、そういうものはお考えでしょうか。

○加藤部会長 事務局どうぞ。

○高倉補佐 今回、導入しようとしている、ここの枠の中では有馬委員がおっしゃったようなところは外れてしまいますし、先ほど永野委員からも御指摘がありましたように、全ての高まん延国を同時に対象にすることもできません。ですので、そういったハイリスクの方、そういう国の出生あるいはそこに滞在の長かった方に関しては、例えば、住民登録などで確認いただく形の中で、健診の対象にするなどといった対応を考えていただくのが、少なくとも現時点では現実的ではないかと考えております。

○三宅課長 今言ったように、出入国管理法で外国人対象なのです。ですから、そういう日本人の方もやったほうがいいのかという話と、もし、やるのだったら、正に、そういうハイリスクの方は健康診断を自治体でやることになっていますので、ある程度、我々のほうで少し話し合って通知を出すと、その自治体はやりやすくなるのか、それとも、自分たちで勝手にできるからいいよというのか、その辺を少し教えていただけると。

○有馬委員 是非とも、通知を頂きましたら健診対象として選定しやすくなりますので、そのような通知を出していただけたら、とても有り難いです。

○三宅課長 実際、問題になってるんですか。23年外国に行った方で高まん延国に行った日本人が帰って来たら健診だというのは、やったらいいのかというのは分からないのですが。

○有馬委員 統計上、そのような方が何人いるかというのは分からないのが現実ですけれども、やはり、高まん延国にいたんだということで不安を抱かれていらっしゃる方というのは、住民の方から声を聞いたりすることはあります。

 そういう方に出会ったときには、健診を勧めたりはするのですが、全然そのような状態ではなく普段の生活に流されてしまうと、忘れ去られてしまったときに発病されているかもしれませんので、そのような方は、日本自体がまだまだ中まん延国という状況でもありますので、健診の勧奨ということでは、必要になるのではと思っております。

○永野委員 すみません、そこで少し教えていただきたいのですが、今の結核の統計では、外国籍ではなく、外国から来られてた方という形になっていると思うのですが、そこで、すみません、これは私が聞くことではないのですが、統計上は、日本国籍か外国籍かという区別はできないできないですよね。

○加藤部会長 これは以前、外国籍と書いていたんです。しかし、ヨーロッパの国などほとんど外国出生と書いています。日本のことを考えてみても、国籍ではどこに居住しているか分からず、日本の国籍を持っているけれども、実際はそちらの国に長くいたという人たちもいますので、合理的な考え方をして外国出生者と、こういう言い方をしています。

 ついでに、日本で外国に行っていた人が本当に対象かということも、多分、議論が必要です。私自身もフィリピンに3年住んでおり、従業員がいましたが、きちんと健診して結核がないと確認するといったことで、仕事上も結核のリスクの高い人たちと接する機会は、かなり限られています。住んでいただけで、本当にリスクになるかどうかというのは、やはりきちんと考えなくてはいけなくて、健康診断は一方で人権に対する問題がありますから、やはり、その辺をよく考えた上で、対象を考えていく必要があると思います。

○永野委員 当市では、私自身が1例経験したのは、日本国籍の方ですけれども、日本人の親と外国の方との間に生まれて、幼少期をそちらで過ごされましたが、日本人として来られたという方の場合は、やはりビザはないということで、10代で発症された方がいらっしゃったことはあります。それが非常にレアケースなのか分からないと思い、データとしてあれば、通知も出しやすいのでしょうけれども、ない場合はなかなか難しいかなと思いました。

○有馬委員 実は、この意見は大阪府から頂きました。大阪府として、こういう意見が出たということは、そういう事例があったから出たのではないかと思っているのですが、そういう意味では、会社で海外に出るという方が多いのならば、職域での健診というものを徹底させていくということで、発見させていくことはできると思います。そういう所に少しお声を添えていただけたら、雇い主としても健診を勧めやすいということもあるかとは思います。

○加藤部会長 ほかにありますか。

○徳永委員 今のことに関連してですが、どちらかの親御さんがこういった高まん延国出身の方で、日本国籍の子供のケースで修学年齢であれば、学校健診で入国した時点で、なるべく早期に一度健診対象になるので、その部分はいいと思うのです。

1つは、修学前のお子さんですね、保育園や幼稚園の対象になるお子さんに関しては、健診の対象にはなかなかならないかもしれないので、そこの部分に関しては何らかの方策があると、集団生活をするお子さんになりますから、そこを考えていただけるといいのかなとは思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

○三宅課長 そうしましたら、もし、住民票で外国に2年以上いた人が住民登録で自分の市に来たときに、住民登録をする部署が保健所に連絡をして健診をやってくださいと、そういうことが実際の自治体ではできるということでいいのですね。まず、システムとしてはできるのですか。

○有馬委員 はい、大阪市の場合はできます。

○永野委員 多分、保健関係で来ているのが先生と私と、市型の保健所が来ていますので、そこはすみません。県型になると、市町村からの入国情報は。

○有馬委員 少し難しいところがあるのかも分からないのですけれども。

○永野委員 難しいかもしれないですね。

○有馬委員 情報を流す手立てを持っておけば、できる可能性はあると思います。大阪市の場合は、保健福祉センターで健診をしていて、そこの住民票登録の所とは同じ庁舎の中にありますので、情報としてはすぐ入って来て健診ができるというスタイルにはなります。

 ですけれども、県型というところになっていきますと、健診をしている場が違う場所になるということ、住民登録をしている所が全く離れた所になってくると、その情報をどのように突合させて健診という状況につなげていくかという、そこには問題が出てくるかも分かりませんが、自治体の中でそれは考えていただけるのではないかと思うのです。やはり、外から入って来られた方の結核を、できるだけ早く発見させていくという方策なので、外国人対象だけではなく、長期滞在していた方には、それだけのリスクがあるということで伝えていただけたら、ある一定は御了解いただけるのではないかと思います。

○加藤部会長 少し整理しなくてはいけないと思うのですが、住民登録等々の健診についてということですが、これは基本的に、感染症法の中での規定を使うことになりますが、ここは健診の実施義務は市町村のはずです。市町村なので県側の保健所は直接関与しないはずですね。一応、確認ということで。健康診断自体は市の事業、市町村がやるべきことなのです。ほかにありますか。

○藤田委員 よろしいでしょうか。入国前スクリーニングということで、証明書が発行されると、入国後、周りの人も安心するとは思うのですが、実際、資料に書いていない、ある国からの留学生で、健診は受けて大丈夫だったけれども、入国後に結核、それも多剤耐性結核を発病したという事例を経験したことがあります。その患者さんはきちんと健診も受けたのに、何で発病してしまったのだろうという発言も聞かれたのです。

 ですから、証明書が発行されたから、もう安心だということには必ずしもならない、入国後の健診、既に日本語学校などでは、かなりそういった健診が勧められているとは思いますが、やはり入国して1年以内ぐらいが発病のリスクも高いと言われていますので、

 入国前スクリーニングというのは、かなり新しい対策としては必要なことだとは、もちろん思いますが、それで証明書が出ているから大丈夫ということにならないこともあると思います。したがって、入国後の健診、あるいは健診という言葉を使わないのかもしれませんが、何らかのそういった早期発見というのも、引き続き対策が必要かなと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。事務局は何かコメントありますか。よろしいですか。

○高倉補佐 今、藤田委員がおっしゃいましたように、健診というのは、あくまでワンポイントだけのことに過ぎませんので、特に結核という疾患の特性上は、入国前スクリーニングのときには、異常がない、あるいは見つけられるレベルにはなかったにもかかわらずというケースは必ず生じると思います。

 そういう外国からの感染者の日本での発症ということに関しては、今回、我々が考えている入国前スクリーニングでは、いろいろな漏れや問題があるというのは、こちらとしても重々承知はしているところですが、1つ何らかのチェックするということは、今までなかった部分ですので、その可能性の高いところを端から始めるということで、それ以外の点に関しては、まだ引き続き、皆様方の御意見を進めながら検討していかなければならないと考えております。

○加藤部会長 ありがとうございました。引き続き検討していただくということでよろしくお願いします。

○釜萢委員 今日の机上資料で、諸外国で既に結核入国前スクリーニングをやっているという事例が出ていますが、これらは、もうかなり完全に実施できているのか、あるいは、こういう枠組みはできたけれども、実際にはまだ完全ではないなど、その辺の情報がありましたら、もう少し教えていただけますか。

○加藤部会長 はい、釜萢委員ありがとうございます。どちらが答えたらいいですか。事務局からどうぞ。

○高倉補佐 加藤部会長のほうが御存じかもしれませんが、国によって割と最近に導入された国もあり、国別に担当の方から直接話を聞かないと細部は分からないことではあると思います。

 ただ、先ほど加藤部会長が少し御紹介されたような、比較的洗練された仕組みを持っていて、そこに登録・加盟をしている国においては、制度の高いものができていると思いますけれども、そうでない国ももちろんありますし、そうしますと、検査や診断の質といったものが、ある程度ばらつくというのは、そういう前提でそもそも考えざるを得ないと思っております。仮に、日本においてこういう仕組みが導入されたとしても、その証明書の質の確認などの作業も恐らく必要でしょうし、安定するには時間が掛かるだろうと予想しております。

○加藤部会長 若干補足しますと、私も研究として結核入国前スクリーニングを実際、各国でどうやっているかということを現地にも見に行っているのですが、オーストラリアの場合は、自分たちで独自でシステムを作っていて、デジタル撮影の結果をすぐシドニーの入国管理局で見られるといったシステムが導入されており、そういったシステムによって、かなりかっちりとした精度管理ができています。

 これは、すぐには導入できないかもしれませんが、場合によっては必要かと思います。そのシステムの中では、本当にパスポートと来た人と両方の写真を撮って突合すると、つまり替え玉を無くすという、こういうかなり厳密なシステムを持っていますので、そういったことも同じように導入できるかということも、将来において検討していただく1つの課題かなと思います。

○三宅課長 少なくとも、多分、先ほど加藤部会長もおっしゃったように、質の担保、その国、その国において、どの医療機関でも全部の医療機関がいいというわけには、ちょっといかないのではないかと、そうすると、やはり質についてある程度保証された医療機関を選ばなければいけないということで、今少し大使館でも動いてもらっているわけです。 どの各国の医療機関なら質が保証されているかというのは、オーストラリアとか、米国を中心に少し情報交換をやっているみたいなので、その辺の情報をうまく使えないかなというのを、外務省の人とは話しているところではあります。そういう意味では、ある程度、何でもありではないのだろうというのが我々の考え方です。

○有馬委員 2点ほどお願いがあるのです。確かにこの入国前スクリーニング、とてもすばらしい制度を勧めていっていただくようになっているのですが、多分、かなり時間が掛かると思うのです。今現在、大阪市で困っているのは、本当に難治性の結核の患者さんが、そういう国から来て、きちんと治療せずにまた帰ってまた来るという出入りや、日本で外国の方が発見され、また中途半端になって自国に帰るというようなことで、そのような患者さんへの対応がとても困っております。ですので、こういう外務省の方とのやり取りや、向こうの確たる病院の制度が分かってくる中で、是非とも、そういう超多剤耐性や途中で結核治療を中断しそうな方が自国に帰る場合は、何か紹介状などのやり取りで確実に治していけるような、仕組みのようなものがあったら、とてもいいなということが1点です。

 大阪市も日本語学校などでの健診も勧めており、そこでの結核の患者さんが発見されてきてはいます。日本に研修で来られた方もそうなのですが、結核の患者さんが発生したときに、DOTSの協力がきちんとしていただけない、保険の問題もあるのか、治療がうまくいかないというケースがあり、何かそういう企業や日本語学校に手引きなどのようなものが出せないのかなというのが、すごく大阪の中で外国人に対して結核対策をしていく上で困っているところがあります。その点、何かできないでしょうか。この2点です。

○加藤部会長 御指摘のシステムについては、実はWHOでもいろいろな問題があって検討しているところです。簡単ではないのは、その国を先に紹会しても、その国内での紹会システムがきちんと確立していない国が結構あるのです。ですから、去年もWHOの結核対策会議でも結構議論になったのですが、受け入れて紹会システムやりますよと言える国と、いや言えませんという国が両方あるのです。ですから、なかなか国際間だけの話だけではない問題があるということを踏まえながら、WHOレベルでも検討しているというのが現状だと思います。

 今日はスクリーニングが議題ですが、治療の継続についても、今後、大事な問題ということで、私どもも研究として少しやっておりますし、情報提供できるようにしていきたいと思います。ほかにありますか。

 対象国は罹患率50以上ということですが、これは、なかなか難しい問題で、これは50でいいかどうかというのは、先ほど事務局の説明がありましたが、ほかのスクリーニングとの検討ということも必要と思います。ちなみに、今、文部科学省で「予防できる感染症に関する手引き」を改定しているのですが、こちらではWHOhigh-burden国の中で一番罹患率が低いのがブラジルですから、スクリーニングの対象者はそれより高い国に居住歴のある者と規定しております。少しここは微妙な問題ですが、文部科学省と少し違いが生じるという問題もあると思います。現場が混乱するかもしれいということで、ここについては、もう少し検討を詰めていく必要があるのかなと思います。また、健診は人権問題という背景がありますから、ここはしっかり説明できるようなことは極めて大事だと思っています。何かこれについて皆さん御意見はありますか。

○釜萢委員 今、加藤部会長がおっしゃったことは、私もとても大事だと思います。学校圏というか、学校医をやっておりますと、文科省が定めたhigh-burden国が示されているわけですから、そこと整合が取れないと非常に困るなと感じました。

○高倉補佐 罹患率が仮に50だとしても、100か国以上ありますので、40以上でもそこの差は10か国ぐらい、110120か国ぐらいトータルでありますので、罹患率がこれぐらい高いので、スクリーニングは受けているはずだという、そういう形にはなかなか到達しないだろうと考えている次第です。

 一方で、今、加藤部会長がおっしゃったように、高負荷国、high-burden国というのをWHOが、ある意味リストを全世界に公表しており、そういった国を対象に今後進めていく中で、漏れないようにという、そういう配慮はしていきたいと考えております。

○加藤部会長 はい、ありがとうございました。ほかはありますか。私から確認なのですが、この流れ図の中で、「感染性消失・治癒証明」とあるのですが、この「・」は「又は」ということでよろしいですか。

○高倉補佐 はい、さようです。

○加藤部会長 結核の場合、治癒となると非常に長いので、感染性がないのに入って来られないというのは、これまた、差別につながりかねない問題ですので、そこはしっかりと、ほかの国に説明できるようにする必要があるので、よろしくお願いします。ほかにありますでしょうか。

 将来的な課題としては、レントゲンでいいかどうかと、幾つかのヨーロッパの国では既に、感染を検査し積極的に潜在結核感染症を治療という検討している国もありますので、これも検討課題として、今後、残さなければいけない問題だと思います。ほかにありますか。それでは、議論が尽されているようですので、基本的には検討までには幾つか残っておりますが、基本的な方向として、この部会として了承したいと思いますが、よろしいでしょうか。

                                   (異議なし)

○加藤部会長 議論になった部分については事務局で再度検討いただき、私のほうで確認させていただきたいと思います。ありがとうございました。

 続いて、議題3、高齢者の結核対策について議論を進めたいと思います。資料3について事務局から説明をお願いいたします。

○高倉補佐 資料3、高齢者の結核対策についてです。現状としては、80歳以上の高齢者が国内の新規結核登録患者数の約40%を占めます。資料3の右に年齢層別の罹患率を示しておりますが、80歳以上の方は罹患率が60を超えているという状況です。更に結核の統計、年報を見ますと、高齢者層において塗抹陽性で見つかる、いわゆる感染性の状態になってしまって見つかるという方の割合も比較的高いという状況です。

 現在、自治体では65歳以上の住民に対する定期健診が行われております。資料の3ページの参考の所に、結核に関する健康診断と平成27年度の発見の実績というものを示しております。下の黄色で囲みました60歳以上の住民に対する定期健診です。発見率は極めて低い状況にとどまっているのが現状です。これらの課題を踏まえて、資料31ページ目の下にありますが、80歳以上の高齢の方に対する健診を強化する。健診を強化すると書きましたが、問題意識としてはハイリスク層、罹患の高い年齢層に対して、早期発見するという方策が必要だろうということで、2ページ目のように、結核対策の方向性の案を事務局で考えているところです。

 大きく2つありまして、1番目が定期健診における健診受診率の向上ということです。現在、自治体で行われている健診が勧奨の方法を、こちらの中で対象とされる個人に対するメッセージとして、個別に勧奨するということを何かできないかということです。ここに例として書いてありますが、例えば、後期高齢者医療保険は毎年更新されるわけですが、その場合の通知、案内の中に個別健診の受診を勧奨するような何か資料を入れるといったような、既存の何らかの方法と連携することによって、比較的費用をかけずに勧奨ができるのではないかということです。

2番目は、健診を受けることのできる機会を増加させるということです。80歳以上の方は実際に医療機関にかかっておられる方がかなり多いと予想されます。こちらも自治体によりましては、いわゆる結核健診を集団健診ではなく、個別の医療機関と契約するような形で、いわゆる個別健診で行っている自治体もたくさんあります。集団健診と個別健診と両方やっている自治体、あるいは集団健診をやめて、個別健診のみにしているという自治体もあります。これらの自治体を幾つか調査、聴き取りをしますと、個別健診をされている自治体は比較的受診率が良い。両方やられている所では、医療機関の受診を選択されているといったことがありますので、多くの自治体で個別健診ができるように推進できないかということです。個別健診のもう1つの良い点は、健診を受けられる医療機関に、そこを受診する方に健診を受けるようにということの、その場での勧奨ということもあります。今、個別健診を行っている自治体では、医師会等を介して契約されている所も複数あります。そうしますと、管内の医療機関を受診される多くの方に対して、受診を勧奨することができるのではないか。そのことで、受診率の向上もそうですし、医療機関そのものに対する結核早期発見の動機付けにもなるのではないかと考えております。

3番目、これまで積極的にターゲットにしていたわけではない80歳以上の高齢の方というところを、今回新たに受診の勧奨の対象にするということを考えますと、動機付けが必要だと。今まで純粋に個人の健康のための健診というのと少し動機付けの違う形でのメッセージを出す形で勧奨ができないかと考えております。

 資料の下のほうですが、高齢者施設や介護サービスの利用者に対する健診ということです。こちらは医療機関以外、あるいは保健福祉施設等に入所されている方等に関しては、受診の機会があるのかも分かりませんが、通所サービスあるいは訪問などの介護サービスの利用者に対しても、受診の確認や勧奨ができないかということです。入所施設に関しては、既に法律で定められておりますので行っているわけですが、通所サービスや訪問等のサービスの利用者に対して新たに義務を課すというのは、法令でまたひとつかなり慎重にならないといけないというのがあります。具体的には、こういうサービスを利用する機会を通して、医療機関あるいは自治体等が行っている集団健診、いずれでも構いませんが、受診の勧奨を行っていただく。こちらも先ほどの医療機関における個別健診の推進と同じように、これらのことを通じて、実際の受診率の向上もそうですし、介護サービス事業者に対する結核の早期発見への意識付けができないかということを考えております。今、御説明差し上げたような方法で、高齢者80歳以上に特に焦点を当てて、健診の受診を勧奨する。それを通して、健診を受ける対象の方及び医療機関あるいは介護サービスの方々に、結核の早期発見に少し意識を傾けていただけないかと考えております。事務局からは以上です。

○加藤部会長 ただいまの御説明ですが、住民健診の発見は0.003%、10万人やって3人程度ということになりますから、1人の患者さんを発見するのに34,000人の健診が必要ということですので、もう少し効率を上げる必要が背景にあるということです。ただいまの事務局の御説明について御意見を頂きたいと思います。

○永野委員 大きな流れとして、よりリスクの高い年齢層に重点的に絞って健診をやるという方向性に関しては賛成をしております。データとしての確認ですが、市町村が行う結核の定期健診というのは、おおむね受診率としたら、全国を押し並べてだと2割ぐらいになるのですか。

○高倉補佐 こちらに関しては、いわゆる正確なところは分からないのですが、施設入所者等を含む65歳以上人口を分母に算出しますと、全国で大体18%ぐらいです。

○永野委員 そのぐらいですよね。これは私どももデータを出している側なのであれですが、実は80歳以上で何人受けているかというのは分からないので、確かに罹患率から言えば80歳以上が妥当かなと思いますが、その前の年齢層はどうなのかなというところで、どうしても80歳以上でそもそも受けていらっしゃる方を抽出するのが難しいので、そこのところは、やはり対象年齢を考えるときに難しいのだろうなと思いながらこのデータを見させていただきました。どうしろということではなく、難しいだろうなと思いました。

 確認をしたかったのが、市町村及び特別区が実施をしている定期の結核の健診は、自治体によって違うのかもしれませんが、当市がそうですが、肺がん・結核健診という位置付けで行われているのではないかと思います。

 これはマスコミ等々の情報で聞き及んだので正しくないかもしれませんが、がん検診のほうは積極的な勧奨をする年齢を、むしろ高齢者のほうは外すみたいな話をニュース等で聞きまして、決して上限を決めるのではなくて、積極的な勧奨をする年限は上のほうが外れる議論を聞きましたので、肺がん・結核健診の肺がんのほうでは、80歳以上はもしかして外れることがあるのですかという確認です。

○高倉補佐 そちらに関しては、こちらでは分かりません。今、永野委員が御指摘されたように、肺がん検診と結核健診、いわば兼ねる形と申しますか、肺がん検診としてレントゲンを撮られており、結核健診を兼ねているとしてカウントされているものがかなり多いというのは、こちらも認識しております。

 目的が、結核とがんと受診勧奨の考え方も違うのは当然のことだと思いますので、今までの肺がん、あるいは生活習慣病等を中心にした勧奨とは少し違った勧奨の仕方を、いずれにせよ考えなければならないと認識しております。

○永野委員 大変ですね。住民の方にお伝えするときに肺がん・結核健診と言ったとしても、何をするかというときは、胸のX線写真というか、胸のレントゲン写真を撮って痰の検査をする検査ですよという、ざっくりとしたお話ですることが多いです。結核健診は特にこちらの年齢にしていただきたいですが、肺がん検診はここまでの年齢でというのはとても混乱するので、何かここの場で言うことではないとは思いますが、肺がん検診の推奨の年齢が余り低くなると、自治体としてはやりづらいなと思いました。この部会での議論ではないことは重々承知の上です。

○加藤部会長 三宅課長、どうぞ。

○三宅課長 その辺は正に教えていただきたいところもあるのですが、ただ、肺がん検診と結核健診は別のものです。ですから、それを一緒にやられる自治体は、そのほうが効率的ですからそうすべきだと思いますが、それで混乱があるというのは私には分からないのです。まず、健康診断というのは、正にがんを見つけるための肺がん検診、それはそれでしっかりその対象年齢はあります。一方で我々が今教えていただきたいと思っているのは、もしかしたら、正にそういう混乱があるからこそ、高齢者の方には、私は十分生きたから健康診断なんていらないや。もしかしたら、自治体の方もそういうふうに肺がんと結核を混ぜて、高齢者の方にわざわざお勧めしていないのではないかと。いや、違うだろうと。結核というのは高齢者にこそ多いし、それは自分のためだけではなくて、自分の子供、お孫さん、社会の方々のためにやっていただくので、是非とも高齢者の方に結核健診として受けていただきたいと、しっかり我々は言うべきだし、そういうふうに彼らにモチベーションを作ってあげたい。そのために今回受診勧奨時に伝えるべき内容として少し書かせていただいたのですが、それは混乱するのではなく、その混乱を正に区別して、それをお知らせすべきではないかというのが、今回の1つの大きなメッセージですが、その辺はいかがですか。

○永野委員 もちろんおっしゃるとおり、きちんと区別して、高齢者の方は結核健診ということで受診をしてくださいねと言うのは、それが筋であることはよく分かります。制度を作ることや、お話をする相手が医師会の先生の場合は何の問題もないと思います。住民の方に対しては、受診行動自体は胸のX線写真を撮ってということになりますので、肺がん・結核健診を合同でやっている自治体は目的に合わせた形でうまく説明させていただければと思います。別々にされている所は何の問題もないと思います。

○三宅課長 正に何の行為をするかなんてどうでもよくて、何のためにやるかというのをお伝えすべきではないかというのが、今回の我々の視点です。

○加藤部会長 一部の自治体では、肺がん検診で見るからということで結核健診をやめている所もあるのです。ここは明確に、今、課長が御説明されたようなメッセージをもって、ちゃんと結核健診をやってくださいよというのは非常に大事なメッセージかと思います。

 もう1つ、最初の受診率ですが、これは実は今の法律の中では、対象者が市町村が必要と認める者と書いてありまして、この心は、ほかの例えばかかり付けの先生がいるとかで、レントゲンを撮る機会がある人は対象に入っていないのです。ですから、受診率を出すときには、分母の計算は必ずしも簡単ではないのです。そういう意味では、なかなか数値が出にくいというのも、もう1つあると思います。一応、補足です。

○有馬委員 大阪市の有馬です。先ほどの議論の部分で、大阪市はやはり罹患率が高いので、肺がん検診と結核健診は別にしています。結核健診に関しては、特定健診とセットにしたり、そういう工夫をして、住民の方にモチベーションを上げてもらって受診していただくことは必要になると思います。そこに多分、自治体によっては予算の問題も出てきているかとは思います。確かに課長がおっしゃるように、何の健診をしているのかということを、やはり、保健師などが啓発することがとても大切ではないかと思います。

 今回、私は手を挙げさせていただいたのは、大阪の場合、高齢者の結核も多いし、施設に入所した方が発症すると、若いヘルパーさんや職員が感染、発病することがあって、健診だけではなくて、職員に対する啓発をして、早く発見するということも同時に進めているのです。是非とも通所施設、健診がなかなか義務化でないという状況であるならば、何かライセンスを取るときとか、何かそういうときに高齢者と接点があるということで、結核の特徴、特に咳とかそういうのではなくて、体重が減るとか、別の症状で発症することで気付くことがあり、そんなことも職員の人たちに啓発をするというのも、何らかの形で伝えていただくのが1点です。

 今、高齢者だけでもなく、全て大体、結核は医療機関受診で発見する場合が多いです。今回の健診の部分においても、是非とも医師会、お医者さんのほうにもこういう健診が大事なんだよということでお伝えしていただくことで、お医者さんのほうから、健診が余り実施できないような状況にアプローチをしていただいて、高齢者の健診がスムーズに進めるような状況にしていただけたら有り難いと思いますが。

○加藤部会長 あらゆる機会を通して、患者発見の健診の重要性を訴える必要があるという御意見をありがとうございました。

○藤田委員 追加的な発言になるかと思います。高齢者は発見の遅れも多いということがあると思います。80歳以上では全結核中の塗抹陽性の肺結核、その比率が44%ぐらいということで、ほかの年齢層と比べても一番高いのです。ですから、発見の遅れということもあるのでしょうが、それだけ感染性が高いということがあると思います。

 もう一方で、健診というのは基本的にはもちろん胸部X線撮影になると思いますが、実際、80歳代、90歳代となってきますと、胸部X線もなかなか読影が難しいという現状があります。その場合、菌の検査をするということも、一方で診断につながる場合もあります。その健診という中にも、読影が少し困難な場合、菌の検査をすることも、健診をする必要性のメッセージの中にも加えてもよろしいのかなとは思います。

○加藤部会長 菌検査ですよね。健診の中に加えるということになると、若干ハードルが高い部分もあるのかもしれませんが、対象を選ぶ必要があるということだと思います。

○藤田委員 もちろん全例ということではなくて、X線健診が困難な場合でもX線だけではなくて、少し菌検査もサポートしていただけるような趣旨です。

○高倉補佐 今、皆様から御指摘がありましたように、特に高齢者でも80歳以上になりますと、レントゲンが撮りにくい方は実際にたくさんおられるとは思います。全ての方を喀痰検査の対象にするというのも、これはこれでまた現実的ではありませんので、レントゲンを撮るのが困難な場合にということで、何らか条件ではないですが、こういう場合には喀痰検査でも可という形になる方向で考えたいとは思います。

○加藤部会長 健康診断の中は、広い意味での患者発見の考え方をどうするかという中では、菌検査は極めて大事というのは御指摘のとおりかと思います。ほかにありますか。

○釜萢委員 先ほど有馬委員からお話が出て、医師会のほうもしっかりその意識を高めてという御指摘がありまして、大変有り難く存じます。

 市町村、あるいは特別区が実施している健診については、年度が変わるたびに行政が医師会に対して、次年度はこういう方向で、こういう方針で実施してほしいというお話を頂く機会があります。ですから、今回の厚労省からこういう方針が出されることは、メッセージとして非常に大事で、力強いものだろうと思います。これを市町村までしっかり伝達し、医師会も高齢者の結核健診に対して力を入れていこうと感じた次第です。

○加藤部会長 前向きなコメントをありがとうございました。ほかはありますか。

○中山委員 高齢者の方で普通にかかり付けのお医者さんに通っている場合に、肺炎かもしれない、風邪かもしれないというときにレントゲンを撮ることはありますよね。先ほどの母数との関係で、かかり付けの所で普通にレントゲンを撮っている場合は、こういう健診対象から外れるのですか。

○高倉補佐 これは基本的には必要と認める、認めないという話なので、それでもって必要でないと認めるか、認めないかは、その自治体の判断ということにはなろうかとは思います。

○加藤部会長 背景を言いますと、少し前に写真を撮ったのですが、健診でまた撮るというのは余り合理的ではない。極端に言うとそういう考え方です。極端と言うか、非常に分かりやすく申し上げるとそういうことです。

○中山委員 そうすると、患者側から言いますと、かかり付けのお医者さんがいる場合にはそのお医者さんと相談をして受けるなり、受けないなりを決めればいいということですか。

○加藤部会長 誰が答えるのが一番良いでしょうか。

○高倉補佐 あくまで、現時点での想定ですが、仮にかかり付けの方に何らかが必要か、必要でないというものをある意味判断していただくとなると、それはそれで1つ負荷にもなるでしょうし、かかり付けの医師の主観にかなり依存してしまいます。そうしますと、例えば何箇月以内にレントゲンを撮ったなどといったような、ある程度具体的なところで仮に要、不要の境を作る場合には、そうせざるを得ないだろうと考えてはおります。

○加藤部会長 ほかに御意見はありますか。よろしいですか。皆様から御意見を頂きましたので、議題3については特に異議がないということで、部会として了承したということでまとめたいと思いますが、よろしいですか。

                                    (異議なし)

○加藤部会長 ありがとうございました。ただいまのとおり、部会として了承したことにさせていただきます。続きまして、報告事項に移ります。資料4について事務局から報告をお願いします。

○高倉補佐 資料4は、年度内に発出する通知の案文で、まだ発出はされてはおりませんが、こちらの内容及び通知を発出することに関する御報告です。

 これは平成29年の地方分権に関わる提案に関する対応方針ということで、感染症の患者に対する医療の規定に基づく事務の対応についてということです。これは要するに結核の患者さんが入院をさせられる病床はどこかということに関するものです。従来から、原則として結核病床に入院させるという運用がされておりましたが、必要に応じて感染症病床、あるいはそのほかの病床に入院させるというのは可能であったところです。今般、2ページにあるような地方分権改革に関する提案募集の中で、複数の自治体から提案があった内容について、結核患者が感染症病床に入院することが可能であることを、厚生労働省より改めて通知を出し対応することが決定されました。

 資料4の下のほうに書いてありますが、医療法施行規則においては、同室に入院させることにより病毒感染の危険のある患者を他の種の患者と同室に入院させないこととありますが、要するに、結核で感染性のある患者さんを、ほかの患者さんと同室にしないということです。医療法上はこれが遵守できている場合において、感染症病床に入院させることが可能であるということになります。ただ、これでは院内感染、施設内感染の防止という観点が含まれておりませんので、その下にただし書きとして、結核患者を感染症病床に入院させる際の病室につきましては、空気感染に対応する病床であることを付記しております。

 第二種の感染症指定医療機関の感染症病床は、必ずしも空気感染に対応していない所もありますので、そういう所は今回対象ではなくて、空気感染に対応できる設備を持った所に関して入院させることが可能であると。これは入院させなければならないということではなく、あくまで可能であるということを、改めて通知で発出するということです。事務局の報告事項は以上です。

○加藤部会長 ただいまの報告について御質問等はありますか。よろしいですか。それでは、以上をもちまして、本日予定した全ての議題が終了しましたので、閉会とさせていただきます。事務局から補足すべきことはありますか。

○高倉補佐 次回の開催については、日程調整の上、改めて御連絡差し上げますので、どうぞよろしくお願いします。事務局からは以上です。

○加藤部会長 これをもちまして、第9回結核部会を終了させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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