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2021年12月24日 第90回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

令和3年12月24日 13時00分~15時00分

 

○場所

全国都市会館 大ホール



 

○出席者

 
翁部会長、浅野部会長代理、小野委員、駒村委員、関委員、永瀬委員、野呂委員、枇杷委員


○議題

(1)令和2年度財政状況について―厚生年金保険(第1号)―
(2)令和2年度財政状況について―国民年金・基礎年金制度―
(3)その他

○議事

 

○鎌田首席年金数理官 では、全員おそろいですので、定刻より若干早いですけれども、ただいまより第90回社会保障審議会年金数理部会を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をお願いします。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか3点ありまして、
 資料1 令和2年度財政状況-厚生年金保険(第1号)-
 資料2 令和2年度財政状況-国民年金・基礎年金制度-
 参考資料としまして、厚生労働省提出資料
の3点でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、山口委員から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
 御出席いただいた委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、駒村委員、関委員、永瀬委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
 また、前回の部会開催以降に事務局の異動がございましたので、御紹介いたします。
 審議官の屋敷でございます。
 総務課長の三好でございます。
 資金運用課長の寺本でございます。
 それでは、以降の進行については、翁部会長にお願いいたします。
○翁部会長 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 社会保障審議会年金数理部会では、年金制度の安定性の確保に関し、毎年度、報告を受けております。
 本日は、令和2年度財政状況について、厚生年金保険(第1号)、国民年金・基礎年金制度の報告を聴取いたします。
 カメラの方がいらっしゃれば、ここで退出をお願いいたします。
(カメラ退出)
○翁部会長 本日は、年金局数理課の佐藤課長と年金局事業企画課調査室の村田室長に御出席いただいております。
 それでは、議題(1)に入りますが、令和2年度の厚生年金保険(第1号)の財政状況について、説明をお願いいたします。
○佐藤数理課長 数理課長でございます。
 まず、資料1の厚生年金の財政状況の説明に入る前に、今回から、財政状況の見通しと実績の比較にあたりまして、変更した点がございまして、それを参考資料にまとめております。ですので、まず、参考資料のほうから御説明させていただきますので、参考資料をご覧ください。
 こちらの変更については、委員の皆様には事前に御相談させていただいた内容になりますけれども、大きく分けて2点ほど変更点があります。
 1つ目が、積立金の平滑化でございます。2ページにありますように、令和元年財政検証のピアレビューや令和元年財政状況報告においても、数理部会で御指摘いただいている事項になります。
 下の財政状況報告の記述でございますけれども、時価評価された積立金は金融市場の短期的な変動を受けやすいことから、長期的な観点から財政を評価する際には、一定期間平滑化した積立金を用いることも考えられると、こういった御指摘をいただいているところであります。
 この御指摘を踏まえて、時価を平滑化した積立金の評価を行い、財政検証との比較において、時価評価に加えて、この平滑化した評価額を追記するということにしたものであります。
 次の3ページご覧ください。こちらは平滑化の考え方をまとめたものであります。
 まず、平滑化の基本的な考え方になりますが、平滑化の基準となる収益を基準収益として設定いただきます。これは比較的変動の小さいものを選ぶということになります。
 その上で、毎年度、基準収益を積立金の評価に反映するとともに、基準収益と時価ベースの収益の差を一定期間かけて解消していきます。すなわち、これは積立金の評価に反映していくということとなります。
 これを言い換えますと、基準収益と時価収益の差が平滑化の対象となりまして、その差を一定期間でならすとともに解消していくということによって、長期的に時価との差を一定の範囲に抑えつつ、平滑化を図るというものであります。
 次に具体的な方法となりますが、企業年金に用いられている収益差平滑化方式をベースにしております。平滑化の期間については、これは時価との差を解消する期間ということにもなるわけですけれども、これは財政検証の間隔として5年間ということとしております。また、基準収益については、過去5年間の時価ベースの平均収益としております。
 その結果、平滑化の対象となりますのは、当年度の時価ベースの収益と過去5年間の平均収益の差ということになります。この差額を5年間かけてならすとともに、5分の1ずつ解消していくということになります。
 次の4ページが、平滑化のイメージを表したものになります。
 下の図をご覧いただきたいと思います。黒い枠線が積立金の時価評価額、青い枠線が平滑化後の評価額を表すということになります。黒い枠線の時価評価額は、下にある元本に、毎年度の収益を積み上げた図となっております。毎年度の時価の収益は、大きく変動いたしますので、この変動の大きさの違いを横幅で表しており、幅の大きい年度と小さい年度があるということになっております。この収益の過去の平均を取ったものが基準収益となりまして、図の上にその幅を表しているというものであります。
 次に、青枠の平滑化後の評価額を見ていただきます。まず左側の前年度の図を見ていただきますと、一番上にある直近の年度の収益を見ていただきますと、基準収益と時価収益の差については、5分の1だけ平滑化後の評価に反映されます。残りの5分の4は反映しないということになっています。さらに、もう一つ下の1年前の収益につきましては、その差額の5分の2が反映で、5分の3が未反映となっておりまして、古い収益になるほど5分の1ずつ未反映が少なくなりまして、反映部分が多くなっていきます。それで、時価評価に近づいていくこととなっております。次の年度になりますと、オレンジの横の矢印の部分になりますけれども、時価収益と基準収益の差の5分の1が反映されるということになっております。
 このように平滑化した評価額を設定することによりまして、長期的には時価評価の動きに連動しつつ、短期的には変動を平滑化するということとしているものであります。
 次の5ページをご覧ください。こちらは企業年金で用いられている平滑化について、その方法を比較しているというものであります。今回採用したものは、マル1の収益差平滑化方式になりますが、それ以外に2つの方法が定められております。
 その違いは、平滑化の対象の設定方法が違うということになります。マル2の時価移動平均方式については、キャピタルゲインが平滑化の対象です。マル3の評価損益平滑化方式は、キャピタルゲインのうち実現していない部分、評価損益が平滑化の対象となるものです。それぞれ特徴があるわけですけれども、マル2の時価移動平均方式は、キャピタルゲインの反映が遅れることになるため、長期的には、評価額が時価より低くなる傾向があります。また、マル3の評価損益平滑化方式は、評価損の実現度合い、つまり、投資行動によりまして評価額が影響を受けると、そういう性質があります。それぞれ特徴があるわけですけれども、この点について、マル1の収益差平滑化方式のほうが優れているのではないかと考えまして、マル1の方式を採用することとしたものであります。
 続きまして、6ページから10ページについては、今回の収益差平滑化方式が時価評価額と比べてどのような推移を示すかというものを表したものになります。赤が収益差平滑化方式で平滑化したもの、青が時価評価額となります。順番に見ていきますと、6ページが当年度の収益となりまして、次の7ページが累積収益となります。次の8ページが、GPIFの積立金の評価額の推移を見たものとなります。続きまして、9ページが厚生年金(共済分を除く)の1号の積立金の評価額を見たもの、次の10ページが国民年金の積立金の評価額を見たものとなります。
 いずれにおきましても、赤の平滑後の評価額のほうは、青の時価評価額に比べまして、短期的な変動は小さくなりつつも、長期的には連動して動いているということが確認できるかと思います。
 続きまして、もう一つの変更点になります。12ページをご覧いただければと思います。
 まず、基礎年金拠出金の比較となります。基礎年金拠出金については、当年度の給付に必要な費用を人数割で厚生年金と国民年金からそれぞれ拠出するというものでありますが、算定に必要な給付費とか被保険者の実績が確定するのは翌年度ということになります。このため、まず当年度についてはどうしているかというと、概算で基礎年金拠出金を支出します。翌年度に実績が確定して確定値が算出できると、この確定値と概算の差額については、翌々年度に精算すると、そういう仕組みになっているということになります。このため、毎年度の決算で計上される支出額は、当年度の概算額に前々年度の精算額を加えたものということになっております。
 財政検証と実績を比較するにあたって、従来は、決算値を用いておりました。つまり、決算値というのは、先ほども言いましたように、当年度の概算額+前々年度の精算ということになるわけですが、これは算定基礎の実績から算出した確定値とは異なることになっております。どうしても概算値は確定値とずれますので、精算額が発生して、その精算額の変動によって決算と確定値の差が一定程度生じていたということであります。このため、財政検証との比較にあたっては、当年度の算定基礎の実績から算定した確定値を実績として用いるように見直すことにしたものであります。
 同様の仕組みは、基礎年金拠出金のほか、厚生年金拠出金や基礎年金交付金、厚生年金交付金、国庫負担、そういったものについても概算精算の仕組みがありますので、同様に、確定値を用いて比較するということになるものであります。
 収支について、このように確定値を用いるということは、まだ支払が行われていない精算分について、収支として認識するということになりますので、すなわち、発生主義の考え方を取るということになります。このため、収支と積立金の整合性を図るという観点から、当年度末時点で発生してないけれども、まだ支払とか収納が終了していないものについては、未払金または過払金として、当年度末の積立金に計上するということにしております。
 続きまして、下の枠の部分の保険料収入になりますが、年金保険料については、保険料を払い過ぎた場合などに、保険料を払い戻す過誤納として扱って、保険料の払戻しの処理を行う仕組みがあります。この払戻しについては、前納の仕組みがある国民年金の通常の事務の中で生じるものであります。
 具体的に申し上げますと、保険料を例えば1年間前納した後に、年度途中で厚生年金の被保険者になったとします。そういった場合については、過誤納として払戻しが行われるということになります。こういった場合は、決算における処理がどうなっているかということですけれども、保険料収入については、払い戻された保険料も含めて、当年度に納付された保険料が計上される一方、当年度に払い戻された保険料については、その他支出に計上されることになっています。そういった中で、財政検証と実績を比較するという場合に、従来は、決算上の保険料をそのまま用いていたわけですけれども、今申し上げた過誤納による払戻しについては、控除して実績を用いて比較するのが適当と考えられるため、このような方法に改めさせてもらえればと思います。
 また、規模は小さいのですが、厚生年金についても同様な仕組みがありますので、同じ取扱いということにしております。
 以上が、今回の変更点となりまして、この2つの変更を踏まえて、実績と財政検証を比較したものが、最後13ページになります。
 資料1や資料2の厚生年金や国民年金の財政状況報告については、この変更を織り込んで作成しているというものであります。
 資料1の厚生年金の財政状況について、御説明に入ります。
 令和2年度の厚生年金の財政状況でございますけれども、年金財政の関係については、例年同じで、私のほうから、受給者と被保険者の実績統計につきましては、隣におります事業企画課の調査室の村田のほうから御説明申し上げます。
 これも例年と同様になりますけれども、本日は、厚生年金保険の第1号被保険者に係る分になりますので、いわゆる旧厚生年金の範囲での御報告ということになります。
 では、資料1の1ページ、収支状況をご覧いただければと思います。平成28年度から令和2年度まで時系列で並んでおりますけれども、一番右の令和2年度の欄をご覧いただきたいと思います。最初に、収入総額になりますが、基本的に、積立金の運用については、時価ベースで整理しておりますので、ここでは、[時価ベース]の数値を見ていただきたいと思います。そうすると、収入総額は82兆9,193億円になっておりまして、令和2年度につきましては、[時価ベース]の運用収入が大きくプラスとなったということで、前年度の収入総額に比べて107.8%増と倍増しているということであります。
 主な収入の内訳になります。まず保険料ですが、32兆612億円になりまして、前年度に比べて5,585億円、率にして1.7%の減であります。この要因は、コロナ禍において、被保険者数については、前年に比べて0.4%増加したのですけれども、1人あたりの総報酬額が0.6%ほど減少したということがあります。それに加えまして、新型コロナウイルス感染症の対策として、保険料納付が困難な事業所におきまして、納付猶予特例の制度の活用が進みました。そういったことが影響しているというものであります。
 次に国庫負担でありますが、10兆1,335億円で、前年度に比べて1,073億円の増となっております。また、運用収入でありますけれども、これは[時価ベース]で見ていただきますと、今年度は35兆6,837億円と、大きなプラスになっている一方、前年度はマイナス7兆8,605億円でしたので、前年度に比べて大きく増加しているというところであります。
 なお、(再掲)で、年金積立金管理運用独立行政法人納付金が1兆4,000億円となっておりますが、これは令和元年度末までの累積運用収益の中から納付されたということでありまして、歳入に不足がある場合、納付が行われるということになっております。
 続きまして、基礎年金交付金が3,633億円となっております。
 その2つ下の段に、厚生年金拠出金収入4兆4,667億円があります。これは平成27年10月の被用者年金一元化によりまして、各実施機関の積立金や標準報酬等の負担能力に応じて厚生年金勘定に拠出することとなったものということであります。おおむね、28年度以降、4兆円台半ばで推移しているというものであります。
 以下、収入欄については、職域等費用納付金647億円、解散厚生年金等徴収金550億円、独立行政法人福祉医療機構納付金が712億円、その他201億円となっております。
 なお、積立金より受入につきましては、これも28年度以降と同様ですけれども、令和2年度においてもなかったということであります。これは資金繰りのために、歳入が不足する場合には、必要に応じて積立金から受け入れるということでありますけれども、令和2年度につきましては、GPIFからの納付金があったと。これで十分足りたということで、必要がなかったため受入を行っていないというものであります。
 続きまして、支出総額となりますが、48兆1,367億円となりまして、2,748億円の増となっております。このうち給付費は23兆9,047億円で、対前年度601億円の増です。基礎年金拠出金が19兆4,257億円で、対前年度で2,328億円の増となっております。
 基礎年金拠出金につきましては、被用者年金一元化で、基礎年金制度導入時に、3号被保険者となった者が国民年金に任意加入していたときの積立金、いわゆる妻積みと呼ばれるものでありますけれども、これを活用していくということになっております。その額が厚生年金保険(第1号)では約1,300億円あるわけですけれども、これを控除した額がここに計上されているということになります。
 さらに、被用者年金一元化により、27年度から実施機関が行う厚生年金の保険給付に要する費用のために、厚生年金交付金が交付されているということになりまして、これが4兆6,031億円。これも、厚生年金拠出金と同様、4兆円台半ばで推移しているということであります。
 全体として、収支残は、[時価ベース]で見ますと、34兆7,825億円となっております。以上を踏まえまして、年度末の積立金の[時価ベース]の額がどうなっているかと申しますと、184兆1,927億円となっておりまして、前年に比べて34兆8,031億円の増となっております。この増額部分につきましては、先ほどの時価ベースの収支差引残をベースに、これに収支残のすぐ下にあります業務勘定から積立金への繰入206億円を足したものということになり、これが実質的な収支残となりまして、積立金の変化を表すものとなります。
 最後に、積立金の運用利回りになりますが、[時価ベース]で23.96%ということで、これは市場運用開始以降最大となっているところであります。
 収支状況は、以上であります。
○村田調査室長 事業企画課調査室長の村田でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは、受給権者と被保険者の実績統計に関してご説明いたします。
 まず、2ページをご覧ください。こちらは給付状況に関する資料になります。平成27年10月より、被用者年金制度が一元化されておりますけれども、この給付状況の資料では、厚生年金保険(第1号)に係る数値を計上しておりまして、一元化によって新たに厚生年金保険に含まれることになりました国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、日本私立学校振興・共済事業団の情報は含んでいないということに御留意いただければと思います。
 また、特記事項の4に記載しておりますけれども、新法の老齢厚生年金のうち、旧法の老齢年金に相当するものは「老齢相当」に、それ以外のものは「通老相当・25年未満」に計上しております。
 平成29年8月から受給資格期間の短縮によりまして、受給資格期間が10年以上25年未満の方も新たに年金の受給権が発生しましたけれども、このような方々は、「通老相当・25年未満」のところに計上されております。
 まず、厚生年金保険の受給権者数でございますが、令和3年3月末の欄、こちらが令和2年度末の数値になりますけれども、この一番上の段をご覧いただきますと、受給権者数は全体で3,768万4,000人となっております。前年度に比べまして、32万9,000人、0.9%の増加となってございます。このうち、「老齢相当」が1,610万人で、前年度と比べまして、0.7%の増加、「通老相当・25年未満」が1,490万1,000人で、1.0%の増加という状況でございます。
 年金総額につきましては、1つ下の2段目になりますけれども、こちらは厚生年金の年金総額ですので、基礎年金分が含まれておりません。令和2年度末の年金総額は、受給権者全体で26兆4,886億円でありまして、これは前年度と比べて0.2%の増加となってございます。このうち、「老齢相当」が17兆6,759億円で0.1%の減少、また、「通老相当・25年未満」については、1.3%の増加となっております。
 この「老齢相当」の年金総額が減少した要因でございますけれども、1階部分込みで支給されている旧法の受給権者が抜ける一方で、2階部分であります報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権者が入ってくると、そういったことによりまして、令和2年度の年金総額は減少したと考えております。
 続きまして、3ページをご覧ください。こちらは、繰上げ支給及び繰下げ支給の状況でございます。まず、平成29年度より、繰下げの判定を精緻化しておりまして、本来と繰下げの分類を変更しております。そのため、平成29年度以降の数値は、従来の数値と直接比較することができなくなってございますので、統計表でもその趣旨が明確となりますように、平成29年度末以降の数値を記載させていただきまして、右のほうに平成28年度末の数値を参考表という形で分離してお示ししてございます。
 数字を見ていきますと、令和3年3月末の繰上げ支給の老齢厚生年金受給権者数は12万8,000人となってございます。一方、繰下げ支給の老齢厚生年金受給権者数は、令和3年3月末で26万8,000人となっております。また、老齢厚生年金の繰上げ制度は、報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴って導入されておりますが、平成30年度に女性の報酬比例部分の支給開始年齢が61歳に引き上げられましたために、平成31年3月末のところから、女性の繰上げ支給の欄に数値の計上がされ始めているということでございます。
 また、特記事項の2をご覧ください。令和2年度末時点で70歳の方の繰下げ率は1.6%となっております。これは、令和元年度の財政状況を御報告した際に、新しく入ってくる世代の繰上げ・繰下げの状況についての議論があったことを踏まえて追記させていただいております。当方で検討いたしましたところ、新規裁定者の数値につきましては、その年に繰上げの対象となる世代と繰下げの対象となる世代が異なるために、各世代の人数規模による影響を受けてしまいますので、繰上げ・繰下げの状況を適正に評価することが難しくなっております。そこで、同一集団の中で、コホート的に繰上げ・繰下げの状況を見たほうが適切と考えまして、新規裁定者ではなく、受給開始時期の選択が終了した年度末時点で70歳の方の新法老齢厚生年金の受給権者の状況について見ております。
 なお、令和2年度末において70歳の方は、昭和25年度生まれの方になりますので、まだ繰上げ制度の対象とはなっておりません。
続きまして、4ページをご覧ください。こちらは、老齢年金受給権者の平均年金月額等についてでございます。男女合計の「老齢相当」の老齢年金の平均年金月額は、一番上の段にありますように、令和3年3月末で9万1,489円となっておりまして、前年度に比べて0.8%の減少となってございます。
 こちらは、厚生年金分のみの平均年金月額に係る動きになりますので、2ページでも御説明しましたように、1階込みで支給される旧法の受給権者が抜ける一方で、2階のみの受給権者が入ってくることで、構造的に減少しているものになります。この額に老齢基礎年金月額を加算した平均年金月額をご覧いただきますと、3段下の欄にございますが、14万4,366円となっております。こちらが基礎年金分まで含めた平均年金月額でございまして、前年度に比べて0.1%の増加となってございます。
 続きまして、5ページは、新規裁定者に関する資料でございます。新規裁定者の年金は、基本的には、特別支給の老齢厚生年金ということになりますので、定額部分のない報酬比例部分のみの年金となってございます。
 令和2年度の加入期間が20年以上の新規裁定者の平均年金月額は8万3,104円となってございます。前年度と比べて8.5%の増加となっております。また、男性の平均年金月額については、5.5%減少しております。
 こちらについてですけれども、男性の報酬比例部分の支給開始年齢は、令和元年度に63歳に引き上げられたことにより、令和元年度の男性の新規裁定の受給権者に占める定額部分を持たない特別支給の老齢厚生年金の受給権者の割合が少なくなりまして、平均年金月額が高い船員・坑内員の受給権者とか、基礎年金も含めて繰上げを選択している受給権者等の割合が増加したために、平均年金月額が高くなっています。令和2年度は、その反動で5.5%の減少となったものです。
 また、男女計の平均年金月額が8.5%増加したのは、男女構成の変化によるものです。といいますのは、令和元年度は、男性の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げによって、男性の割合が例年より低かったので、金額の高い方が少ない状況だったのですが、令和2年度は、通常と同じ規模に戻って、平均年金月額の高い男性の割合が高まったということで、こういった結果になっていると思われます。
 次に6ページから8ページでございますが、こちらは、「老齢相当」の老齢年金につきまして、給付状況を詳細に見たものでございます。特に60代前半につきましては、各歳別のデータとなっておりまして、支給開始年齢の引上げの状況が見て取れる形でお示ししております。厚生年金の支給開始年齢の引上げに関しましては、報酬比例部分の引上げの影響と定額部分の引き上げの影響の2種類がございます。支給開始年齢の引上げは、先に定額部分が引き上げられた後に報酬比例部分が引き上げられることから、報酬比例部分が引き上げられると、それより下の年齢では、基本的には繰上げを選択している場合を除いて、受給権者がいなくなることになります。
 6ページは、男女計の数値ですが、男性と女性でスケジュールがずれておりますので、7ページ、8ページの男女別の数値をご覧いただきたいのですが、まずは、報酬比例部分の支給開始年齢の引上げの影響について御説明いたします。
 7ページの男性の62歳の欄のところの平成31年3月末と令和2年3月末の欄、それから、次のページで恐縮ですが、8ページの女性の60歳のところの平成30年3月末と平成31年3月末の欄のところをご覧いただきたいと思います。これらの箇所では、いずれも受給権者数が大幅に減少して、平均年金月額が大幅に増加しております。
 8ページの女性の場合で申し上げますと、平成30年度に報酬比例部分の支給開始年齢が61歳に引き上げられたために、60歳の受給権者が減少し、60歳の者は繰上げしている方となっております。繰上げをされる方は、同時に基礎年金も一緒に繰り上げることになっておりますので、同時に繰り上げられる基礎年金部分も合わせた年金額となることから、2階のみのほかの年齢の水準に比べると、平均年金月額が上昇しているものと考えられます。
 7ページの男性についても、令和元年度に報酬比例部分の支給開始年齢が63歳に引き上げられたことで、62歳の受給権者数が減少したことに加えて、年金額が比較的高い坑内員や船員の受給権者が含まれていることなども影響して、平均年金月額が上昇しております。
 次に、定額部分の支給開始年齢の引上げについてですけれども、8ページの女性のところの64歳の欄、平成30年3月末と平成31年3月末の欄をご覧ください。この箇所で、平均年金月額が大幅に減ってございますが、こちらは、定額部分の支給開始年齢の引上げによって、報酬比例部分のみの年金となったために平均年金月額が低下しているものです。
 続きまして、9ページは、「老齢相当」の老齢年金受給権者の年齢構成でございます。令和2年度末は、いわゆる団塊の世代、昭和22年から24年生まれの方が、71歳から73歳になっているということで、そうしたこともございまして、70歳から75歳のところの構成割合が26.2%と、ほかの年齢階級と比べて大きくなっている状況でございます。
 次に10ページは、老齢年金受給権者の年金月額の分布を示したものでございます。この年金月額は、基礎年金月額を含んだ金額になっております。左側の「老齢相当」のところを見ていただきますと、男女計の平均年金月額が14.4万円ですけれども、分布を見ますと、10万円前後の階級が最も多いことが見て取れると思います。
 一方で、右側の「通老相当・25年未満」の分布を見ていただきますと、平均年金月額は6.1万円でございまして、「老齢相当」と比較して低い金額水準のところに分布していることが見て取れます。
 次に11ページからは、被保険者の状況でございます。被保険者の統計につきましては、被用者年金一元化後は、第1号厚生年金被保険者、いわゆる元からの厚生年金の部分に係る数値を計上しております。
 まず、被保険者数ですが、令和3年3月末、令和2年度末でございますけれども、こちらは4,047万2,000人となっておりまして、前年度に比べて9万8,000人、0.2%の増加となってございます。女性の伸びは、1.2%の増加となっているものの、例年よりも鈍化しております。一方、男性は0.4%の減少となっております。
 被保険者の平均年齢は、男性が44.9歳、女性が43.0歳、男女計で44.1歳となっております。男女計では、前年度に比べて0.2歳上昇したという状況でございます。
 次に、下の囲みの中段ぐらいのところにあるのですけれども、「標準報酬総額〈総報酬ベース〉(年度累計)」の数値を見ていただきたいのですが、こちらにつきましては、179兆9,640億円となっておりまして、前年度に比べて0.2%の減少でございます。
 1人当たりの標準報酬額の総報酬ベースの月額ですけれども、こちらは一番下の欄にございますが、男性が42万2,355円、女性が28万3,471円、男女計で36万8,684円となっておりまして、男女計では、前年度に比べ0.6%の減少となってございます。
 また、平成28年10月から厚生年金保険の適用拡大が行われて、一定の要件を満たす短時間労働者の方が加入の対象となっておりますけれども、こちらについては(再掲)としております。令和3年3月末において、短時間労働者の被保険者数を見ますと、53万人となっておりまして、前年度に比べて5万8,000人、12.3%の増加となってございます。
 なお、平成29年4月から、従業員数が500人以下の会社で働く方も、労使で合意がなされれば社会保険に加入できるようになりましたが、そのような任意加入の被保険者は、特記事項のところに記載しておりますように、令和3年3月末現在で1万人となっております。
 また、短時間労働者の被保険者の平均年齢は50.2歳となっておりまして、前年度に比べて0.2歳上昇したという状況でございます。
 それから、特記事項に、70歳以上で老齢厚生年金とか老齢基礎年金等の老齢給付や退職給付の受給権がないために、任意で厚生年金保険に加入しています高齢任意加入の被保険者数をお示ししております。この高齢任意加入の被保険者数は、令和3年3月末現在で536人となっております。こちらは、令和元年度の財政状況を御報告した際に、70歳以上の被保険者数が知りたいという御意見があったことを踏まえて、追記させていただいたものでございます。
 12ページからは、被保険者の分布でございます。上段が被保険者全体の分布、下段が短時間労働者の分布になっております。こちらも男性・女性別にご覧いただきたいのですけれども、まず、13ページの男性について、上段の分布を見ていただきますと、こちらは、45歳以上50歳未満の人数が最も多くなっておりまして、14.5%でございます。ここをピークとした山の形になっております。
 一方、下段の短時間労働者の(再掲)を見ていただきますと、60歳以上65歳未満、65歳以上のところの人数が多くなっておりまして、高齢層にピークがあることが分かります。
 続いて、女性の分布でございますが、こちらは14ページでございますけれども、まず上段の分布を見ていただきますと、女性の場合は、ピークになる場所が2か所ございまして、1つは25歳以上30歳未満のところの12.0%、もう一つは45歳以上50歳未満のところの13.9%となっておりまして、いわゆるM字カーブの形、山が2つある形となっております。こちらの分布の傾向につきましては、従来とは変わりないということでございます。
 一方、下段の短時間労働者の(再掲)を見ていただきますと、50歳以上55歳未満のところが14.7%と最も多くなっておりまして、ここをピークとした山の形になっております。
 15ページは、標準報酬月額別の被保険者の分布でございます。令和2年の9月から標準報酬月額の上限が改定されたことを踏まえまして、標準報酬月額65万円の等級を追加してございます。左側が被保険者全体の分布、右側が短時間労働者の(再掲)になっております。まず男性につきましては、一番多いのが65万円の等級でございまして、こちらが全体の8.4%を占めております。次に多いのが26万円、28万円、30万円辺りのところでございまして、それぞれ6.8%、6.4%、6.7%と、6%台となってございます。女性につきましては、その右隣の列でございますけれども、22万円のところが最も多く、10.1%、その前後のところが8%台ということで多くなってございます。
 次に、右側の短時間労働者の標準報酬月額の分布を見ていただきますと、男性のピークが11.8万円、女性のピークも11.8万円と、等級の低いところに山ができていることが見て取れます。
○佐藤数理課長 続きまして、16ページの積立金の運用状況についてであります。こちらは、1号厚生年金の資産の状況になります。まず、上の表の右が、令和2年度末の積立金184兆1,927億円の資産構成割合となっておりますが、預託金が4.4%、市場運用分が95.6%、財投債が0%となっております。
 特記事項にも記載させていただきましたが、財投債につきましては、令和3年1月末に、会計区分を満期保有目的債券から、売買目的有価証券に変更しておりまして、令和2年度中に全てを売却したことになっております。
 次に、下の表ですが、資産区分別の内訳となりまして、国内債券が22.5%、国内株式が24.3%、外国債券が24.3%、外国株式が24.6%、短期資産が4.4%となっております。
 続きまして、17ページ、財政検証における将来見通しとの比較ということになります。初めに御説明したとおり、今回から財政検証ベースの実績につきましては、基礎年金拠出金等は、決算値ではなくて確定値を用いるというなどの見直しを行っております。また、年度末積立金については、時価評価に加えて、平滑化後の評価額を括弧書きで記載するということにしております。
 また、財政検証と比較するためですけれども、収支の範囲を財政検証にそろえて実績を作成しております。これに関しては、昨年までと同様の取扱いとなっておりまして、具体的には、特別会計の実績に厚生年金基金の代行を加えて、収入・支出と積立金を作成するということを行っております。また、国庫負担繰延額の3.8兆円を積立金に加えるということをしております。さらに、基礎年金交付金を収入・支出の両面から控除いたしまして、基礎年金勘定との会計上のやりとりを相殺するというようなことを行っております。こういった方法により、財政検証ベースの実績を作成しております。詳しい作成方法については、特記事項に記載させていただいております。
 将来見通しについては、令和元年財政検証との比較になりますが、旧厚生年金の実績と比較する(第1号厚生年金と比較する)ということですので、将来見通しについても、共済分を除いて、1号厚生年金のみの数値として掲載しております。
 また、令和元年財政検証は、幅の広い経済前提を設定して、複数の財政見通しをつくっておりまして、ここではケースⅠとケースⅢ、ケースⅤの3つの数値を掲載しておりますが、いずれもおおむね同じぐらいの数値となっているところであります。
 将来推計については、真ん中のケースⅢで数字を申し上げさせていただきますが、まず保険料収入を見ていただきますと、令和元年財政検証では32.5兆円見込んでいるところですが、実績は32.1兆円ということで、0.4兆円程度実績のほうが少なくなっております。この差の要因につきましては、被保険者数は見通しよりも多いものの、1人あたりの総報酬が見通しより低かったことに加えまして、先ほど収支状況のところでも説明しましたが、納付猶予特例の影響もあるというものかと思います。
 次に、国庫負担でありますが、実績・将来見通しともに9.8兆円となっております。被用者年金一元化に伴って導入されました厚生年金拠出金については、将来見通しは4.6兆円と見込んだところが、実績は4.5兆円。運用収益については、将来見通しは2.9兆円と見込んだところを、実績では時価ベースで37.2兆円となっております。違いの要因は、見通しの名目利回り1.7%に対して、実績は23.96%と高かったということであります。
 支出の欄についてですが、まず合計でございますけれども、将来見通しは48.2兆円に対して、実績は47.6兆円となっております。内訳は、給付費が将来見通し24.3兆円に対して、実績が23.9兆円、基礎年金拠出金が、将来見通しは19.0兆円に対して、実績が18.9兆円。厚生年金交付金が、将来見通し・実績ともに4.7兆円となっているところであります。
 年度末積立金につきましては、将来見通しで173.1兆円と見込んでおりましたものが、実績では、時価評価額が197.7兆円と。平滑化後の評価額が183.3兆円となっておりまして、いずれの評価で見ても、実績が将来見通しを上回っているというところであります。
 続きまして、18ページ、被保険者数と受給者数の比較でございます。将来推計については、こちらは「労働参加が進むケース」で数字を申し上げますと、一番左の欄から、被保険者数につきましては、実績のほうが約75万人多くなっているということであります。左から2つ目の欄、受給権者数は、逆に、実績のほうが小さくなっております。内訳については、「老齢相当」は実績のほうが多いですが、「通老相当」「障害年金」「遺族年金」は、実績のほうが小さくなっているというところであります。
 続きまして、19ページからは、財政指標の比較になります。19ページは、年金扶養比率、つまり、何人の被保険者で1人の受給者を支えるかという比率になりますが、実績といたしましては、上の表の一番左の欄の令和2年度を見ていただきますと、2.63ですが、財政検証としては、下の表の一番左の欄の令和2年度は2.65であったところであります。これは、見通しと比べて、実績のほうは、被保険者数も多くなっていますが、老齢相当の受給者数のほうがより多くなったということで、年金扶養比率は実績のほうがやや小さくなっているというところであります。
 最後となりますが、20ページが積立比率の比較となっております。上の表の財政検証ベースの実績は、令和2年度につきましては、初めに説明しましたとおり、基礎年金拠出金等の見直しを反映したものとなっておりますし、平滑化後の評価額を記載することとしております。
 なお、積立比率につきましては、前年度の積立金が当年度の国庫負担を除く実質的な収支の何年分に相当するかというものを表すものでありますため、令和2年度の積立金比率は、令和元年末の積立金を基に計算することになっております。このため、令和2年度の好調な運用実績は反映されていないことに御留意いただければと思います。
 上の表の一番左の欄の令和2年度実績を見ていただきますと、時価評価額で4.9、平滑化後の評価額で5.2となっているところであります。
 財政検証の見通しでは、下の表の一番左、ケースⅠ、Ⅲ、Ⅴと同じになっておりますが、令和2年度は5.1となっておりまして、時価評価で見ると実績のほうが低くなっているということですが、平滑化後では実績のほうが高くなっているところであります。
 説明は以上となります。ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関しまして、何か御質問等がございましたら、お願いします。
 それでは、お願いいたします。
○野呂委員 御説明ありがとうございました。
 11ページでしたか、短期労働者の加入の件につきまして、コロナで飲食業等の労働時間等の制約が大きいと聞いていたので、今回のこの12.3%という伸び方はやや意外な気がしました。短時間労働者の加入が増加することにつきましては、1つは、賃金や労働時間が延びて、条件に該当する方が増えたというケースと、もう1つは、これまで加入要件を満たしていながら加入していなかった方が、強制か任意かは別にしまして、今年度新たに加入したケースという、両方があるかと思いますが、今回のこの増え方については、どちらかといえば、コロナなどで短期労働者の条件がよくない中で、どういう要因だったかということについて、教えてもらえないでしょうか。
○村田調査室長 厚生年金保険の短時間労働者の被保険者が、コロナ禍にあっても大きく伸びているということですが、まず、厚年全体を見ますと、そもそも厚生年金保険の被保険者につきまして、20歳から59歳のところの人口が減少している中でも、これまで、就業形態の変化とか、女性の就業参加とか、あるいは高齢者雇用の増加とか、適用拡大、それから、日本年金機構の加入指導による適用促進などで、これまで増加傾向にございました。令和2年度は、確かに新型コロナウイルスの影響によって、就労環境が厳しかった中にあったものの、厚生年金保険(1号)の被保険者は0.2%の増加。普段に比べては鈍化したものの増加でした。短時間労働者についても12.3%の増加となったところです。
 参考までに、ほかの統計で、総務省の労働力調査を見ますと、パート、アルバイトの雇用者の数は確かに減少しているのですけれども、厚生年金保険の短時間労働者の適用には一定の要件がございまして、企業の規模とか、標準報酬の額とか、そういったことがあって、就労の性質が多分異なっていると考えられまして、そういった方々は全体の動きとはちょっと異なる動きをしたのかなと考えております。
○野呂委員 おそらく年金事務所からの働きかけなども随分効果はあったのではないかと思います。来年からは、さらに小規模な団体につきましても、適用拡大となることから、状況としては一層厳しいと思いますので、また、そうした小規模団体への対応とか見通しとかについても、今でなくても結構ですけれども、教えていただきたいと思っております。
○岡部年金課長 年金課長でございます。
 短時間労働者の適用拡大は、来年、2022年10月と2024年10月、2段階で、フルタイム労働者が100人超、それから50人超と、段階的に拡大をしていくところであります。
 まず、そもそも2段階、かなり時間をかけて拡大をするということで、事業主にとっては負担増の部分もありますので、時間をかけて用意していただくということで、施行期間をかなり長く取っているというところでございます。
 一方で、円滑な施行に向けまして、特に、だんだん中規模・小規模の企業に適用拡大するということで、その事業主に対する支援は非常に大事だと思っていまして、例えば、中小企業庁の補助金でございますが、ものづくり補助金、IT導入補助金、こちらのメニューの中に適用拡大対象になる事業所というもので、ポイントの加算をしていただいているというところでございます。それから、雇用保険を財源とする助成金の中のキャリアアップ助成金につきましても、積極的に適用拡大に対応していただく事業主に、労働者ごとに補助をするメニューも加えたところでございます。
 さらに、実際の現場で適用拡大の意義について、特に、実際の短時間労働者に理解していただくことが、速やかな施行、円滑な施行に極めて大事だと考えていますので、社会保険労務士等の専門家の派遣事業というのも実施しております。これは年金機構の現場単位で行っておりますので、かなり広く行えるものだと考えております。
 特に、人事管理の見直しをこの機にされる事業主も非常に多いと思いますので、前向きに適用拡大に取り組んでいただけるように、我々も力強く支援を丁寧にしていきたいと考えております。
 以上です。
○翁部会長 御説明ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 枇杷委員、お願いいたします。
○枇杷委員 御説明ありがとうございました。
 2つちょっとお伺いしたいのですけれども、1つは、今、野呂委員の御質問とも関連するのですけれども、短時間ではなくて、全体としての被保険者の動きについて、前年よりは少し鈍化しているというのでしょうか、そういう御説明があったのですけれども、もう少し具体的に、こういう事象があったので、このような部分でこういう影響が出ているというような御説明をいただければというのが1点でございます。
 それから、もう一点は、財投債の部分ですかね、そこの部分について、今回、満期保有から売買目的というふうに変更されたというところの理由を少し御説明いただければと思います。
 以上です。
○村田調査室長 1つ目の被保険者全体の伸びが増加した要因をもう少し詳しくということですけれども、定量的に分かるところと分からないところがあるので、分かるところだけ申しますと、まず、高齢者雇用で60歳以上の被保険者数がどれぐらい増加したかというのを見ますと、令和2年度は昨年度に比べまして、大体8万8,000人ぐらいの増加になっているので、高齢者雇用の増加で8万8,000人程度は増えています。
 それから、日本年金機構の加入指導による適用促進はかなり大きくて23万2,000人ほど、こちら機構の努力で被保険者の数が増加したと。
 それから、短時間労働者の増加につきましては、今回の資料でも分かりますように、5万8,000人の増加ということで、それらが増加の要因になっておりまして、それと、コロナとかほかの諸々の要因が重なって、最終的には、ここでお示ししたような伸びに落ち着いたということではないかと思います。
○鎌田首席年金数理官 財投債の件ですけれども、私から簡単に説明して、もし、何かあったら寺本課長から補足していただければと思いますが、たしか資金運用部会で、GPIFの法人評価をしていた際に、植田CIOの発言によると、財投債は、残りは六、七年物、若干マイナス金利だったということで、マイナス金利ということは、元本まで、満期持ってしまうと100円になってしまうのですけれども、今売れば、100.何円で売れてしまうので、それは被保険者のためを考えて、今、売りますという発言をしていたかと思います。GPIFの中でも、きちんと経営委員会にも上げて、了承をいただいている。監査法人の意見を聞いた上で、そういう手続を踏んでいるということで、了承いただいていたかと思います。
 もし、何か補足があれば、お願いします。
○寺本資金運用課長 今の説明の御認識で、そのとおりであると思っております。
 この財投債につきましては、国庫納付、寄託金償還が必要だったところで、他の資産と比較して利回りの低い財投債を優先的に売却しているところでございます。
○翁部会長 小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。1点だけ質問させてください。
 冒頭、保険料収入が少し減ったということの要因の1つとして、新型コロナウイルスに伴って、納付猶予特例制度のためというような御指摘があったと思うのですけれども、この納付猶予した金額は、具体的に把握されていらっしゃるのでしょうかということ。
 といいますのは、これは17ページの財政検証との比較のところを発生ベースでやるとすれば、令和2年度に帰属する、まだ保険料収入としては入ってないのだけれども、この年の収入とすべきものというのが、もし実数として分かっているのであれば、そのあたりは調整して発生ベースにしたほうがいいのかなというようなことを思ったのですけれども、ちょっと実態をよく把握してないので、そのあたりをちょっと教えていただきたいということです。
○翁部会長 御説明お願いいたします。
○佐藤数理課長 すみません。ちょっと正確な数字ではないのですが、令和2年度中に納付猶予特例の許可を行った保険料、これは厚生年金保険料だけではなく健康保険料なども入っているのですけれども、その金額全体で9,737億円となっておりまして、令和3年9月末時点で納付済みになったのが4,978億円という規模感であります。
○小野委員 ということは、令和3年度中に令和2年度分として入ってきた金額は、例えば、来年の財政状況報告の際には、何らかの調整をされるというような感じになりますでしょうか。
○佐藤数理課長 この納付猶予特例制度ですけれども、事業収入が前年同期に比べて20%以上減少した事業主に対して、申請によりまして、無担保かつ延滞金なしで厚生年金保険料等の納付を1年間猶予するという仕組みであります。
ですから、もし令和2年度に猶予された保険料が令和3年度に納付されたということになりますと、令和3年度の保険料収入として入ってくることになるということであります。
○小野委員 ということは、保険料の収入をもってして、その対象となる被保険者の年金額の積み増しとして反映されるというような理解でよろしいということですね。
○佐藤数理課長 年金額については、納付猶予されても、加入期間としては年金の記録としてきちんと残りますので、会社が万一倒産などして払えなくなったとしても、年金としては支払われるということになります。保険料が遅れて入ってきたときは、翌年の保険料収入として計算上は反映されると、そういう仕組みになってございます。
○小野委員 とすると、発生ベースで資産と債務といいますか、これを比較するときに、若干そごが出てくるように思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
○佐藤数理課長 この点は、申し訳ありませんが、発生ベースでは数字が把握できていないところでありまして、その納付猶予特例で翌年に繰り越された保険料は、令和2年分の保険料はちょっと少なくなってしまって、令和3年分が多くなると、そういうことになります。そのあたりの数字をきちんと把握することについては、検討課題とさせていただければと思います。
○小野委員 承知しました。
○翁部会長 ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。
 オンラインで参加されている先生方、いかがですか。
 特にございませんか。
○永瀬委員 1つは、厚生年金加入者が増えているという点です。高齢者が8万8,000人で、また機構の努力で23万2,000人が加入した、というところです。この23万2,000人はかなり多いと思うのですけれども、どういったタイプの人たちが新たに入ってきたと思ったらよろしいのでしょうか。
○村田調査室長 すみません。事業部門のほうで、日本年金機構でやっていることなので、私、あまり詳しく知らないのですけれども、そもそも厚生年金に本来適用になるような事業所で漏れているようなところとかがまだありまして、税の情報とかそういったものを使って、可能性があるようなところに調査に入って、厚生年金の適用であれば、事業所ごと適用していくといったことで、そこにいる被保険者が一緒に加入されると。だから、どちらかというと適用事業所のほうを適正に適用していくと、そういった事業の中から出てきたものと思われます。
○永瀬委員 ありがとうございます。
 もう一つ、繰上げ支給と繰下げ支給ですけれども、3ページのところにあったかなと思うのですが、これは合計で、繰上げが2万6,000人で、繰下げで4万6,000人、この人数はあまり変化がないと思ってよろしいのでしょうか。
○村田調査室長 こちらにお示ししておりますのは受給権者全体の数でございますので、既に繰上げ・繰下げになっている方で、例えば高齢になって失権されるというような方が抜けていって、新しく繰上げ・繰下げの方が入ってくることになりますので、全体で見たときにはそれほど大きくは動かないというような性質のものになっております。
○永瀬委員 分かりました。ありがとうございました。何となくちょっと人数が増えているような印象があるのですけれども、それは高齢者が増えているからと、そう思ったらよろしいのですね。
○村田調査室長 繰上げ・繰下げの人数がどうなるかということは、去年まで繰上げ・繰下げだった方の抜けと、新しく受給権者になる方でどれぐらい入ってくるかということなので、たくさん新規で入って来られれば、繰上げの選択率が別に高まったということではなくても増えてくる。それは全体としての数なので、そういうことになっているかと思います。率としては、繰上げ率とかは、年々、新しく入られるような方の率は下がっている傾向にあると考えられますが、全体の人数ベースで見るとこういった形になっているということです。
○永瀬委員 ありがとうございます。
○翁部会長 それでは、駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 これは、さっき野呂さんのところで議論があったかどうか、ちょっと聞き逃してしまったのですけれども、11ページの短時間の標準賞与のところの去年と今年の部分が大分増えていて、90%増、倍近くなっているのは、これは何か情報が入っているのでしょうか。コロナの中でこんなに賞与が増えたというのはちょっと驚いたので、お願いします。
○村田調査室長 短時間労働者の標準賞与総額が大幅に伸びているということでございますが、大きく3つ要因がございまして、まずは、厚生年金保険(1号)の短時間労働者の被保険者が、先ほど見たように、令和2年度末で12.3%の増加となっていることですね。
 それから、2つ目に、それに加えまして、年度末現在における短時間労働者の年間標準賞与の支払状況を見ますと、令和元年度に賞与が支給された方の割合は約37%だったのですけれども、令和2年度は約56%と、支給される方の割合が増加しております。
 3つ目として、さらに、標準賞与額の1回当たりの平均を見ますと、令和2年度では9.8%の増加となっておりまして、この3つ合わせて、短時間労働者の標準賞与総額が90.3%の増加となったものと考えております。
 背景としましては、令和2年の4月から、同一労働同一賃金というのが施行されておりまして、その取組の一環として、短時間労働者への賞与の支給が増えた可能性があるのではないかと考えております。
○駒村委員 ありがとうございます。分かりました。
○永瀬委員 それに関連して、ちょっと伺ってよろしいですか。
○翁部会長 お願いします。
○永瀬委員 たしか今年の年金数理部会の報告書が出たときに、この3年間ぐらいで短時間雇用者の賃金分布が、最初の2016年には8.8万円ぐらいにピークがあったのが、それがだんだん年々ちょっと右に動いていって厚みが増しているのですが、それに対して1時間当たりの時給が増えたのか、それとも、労働時間が増える傾向があるのかのどちらなのだろうかと質問をしたところ、次回調べてくださるといったような回答をいただいた気がするのですけれども、これについてはいかがでしょうか。
 これはこの会議でうかがったのかそれほど定かではないですが、たしか、年金数理部会の報告書の中で非常に注目された短時間雇用者の賃金分布の図がありました。月額の標準報酬額のピーク2016年10月はが8.8万円であったのが、だんだん十四、五万ぐらいのところも増えていったということがわかっています。今、ボーナスの支給に加えて金額そのものが上がったことを教えていただいた。一方で、標準報酬月額が上がった人たちが増えていることはわかっているのですが、それは労働時間が増えたのか、それとも時給そのものがより一人前に扱われるようになったのかどちらなのだろうかということを伺ったかと思いますがこれはどうなのでしょうか。
○村田調査室長 すみません。標準賞与に関しては、年金のデータで標準賞与額というのを取っておりますので、先ほど言ったような分析が可能なのですけれども、もともとの標準報酬に対して、単価がどれぐらいかとか、労働時間がどれぐらいだったかといったことは、年金のデータのほうからはたどることができませんので、私どものほうから分析するのはちょっと難しいかなと。ほかの労働統計とかを勘案しなければと思うのですが、手元にそういった資料もないので、申し訳ございません。
○永瀬委員 分かりました。ちなみに、短時間労働者の定義は、20時間以上何時間未満の方を言うのですか。
○岡部年金課長 年金課長です。
 短時間労働者の定義は法律で決まっていまして、通常の労働者の労働時間の4分の3未満の方で20時間以上の人です。なので、一般的には20時間から30時間の間の人というふうに理解していただければと思います。
○永瀬委員 ありがとうございます。
 私は、サラリーマンの妻の社会保険料が免除される130万の壁がなくなれば、パート労働者の賃金が上がるだろうということをずっと論文で書いてきたので、短時間雇用者の社会保険加入の義務化で、これが起きたのではないかなと思いまして、時給があがったのかどうかを知りたいなと思ったものですから、質問したのですが、労働統計を取らなくては分からないと、そういうことですね。分かりました。ありがとうございます。
○翁部会長 ありがとうございます。
 ほか、いかがでしょうか。
 関委員、お願いいたします。
○関委員 先ほどの繰上げと繰下げについて、もう少し教えていただければと思うのですけれども、今、繰下げを進めようとしている中で、どれぐらい抜けていく人の関係で、どのぐらい繰下率が高まったとか、それから、何歳ぐらいまで繰り下げているとか、そういった数字みたいなものが分かるものはありますでしょうか。これまでとは変化が少しあるか。どのぐらい、どんな変化があるかどうかというところです。
○村田調査室長 先ほど見た資料は、受給権者全体だったので、ちょっと動きが分かりにくいと思いますので、備考欄に示した年度末に70歳になった方を見たときの繰下げ率がどうなったかということを申し上げますと、年度末70歳の繰下げ率は、平成28年度が1.0%、29年度が1.2%、30年度が1.2%、令和元年度が1.5%、令和2年度が1.6%ということで、若干ではありますけれども、繰下げ率は緩く上昇しているかなという形になっております。
○関委員 今年も含めてもう少し詳しく分かったりはするのでしょうか。今、分からなくても大丈夫なのですけれども。
○村田調査室長 詳しくというのは、何歳から繰り下げているとか、そういった意味でございますか。
○関委員 そうですね。
○村田調査室長 令和2年度の細かいデータがまだ作業中でまとまっていないので、令和元年度でお話しさせていただきたいのですが、先ほど、新規裁定者で見るのはあまりよくないというお話をしたばかりで恐縮ですが、新規裁定者のデータしか持ち合わせがないので、人口の影響を若干受けるということはお含みおきいただいた上で申しますと、新規裁定者の令和元年度を見ますと、男女計で、特老厚を除いたところを総数とした場合に、繰上げが全部で17.4%ですけれども、そのうち60歳からもらい始めた方が11.7%、61歳からが4.0%、62歳からが1.6%となっています。ただ、厚生年金の繰上げ制度は、報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに伴って導入されたものなので、男性だったら平成25年度、女性だったら平成30年度からしか表れてきていないような、そういった数値になりますので、63歳とか64歳はまだ誰も出てきてない。そんな状況になっています。
 それから、繰下げにつきましては、全体で特老厚を除いた総数に対して3.4%ですけれども、66歳が0.9%、67歳が0.7%、68歳が0.3%、69歳が0.3%、70歳が1.3%ということで、一応70歳のところと66歳のところが多いのかなと。先ほど申しましたように、人口の影響を若干受けているので、数字のあまり細かいところは見ないでいただきたいのですけれども、傾向としては、66歳と70歳のところに山があるのかなと、そういったようになっております。
○関委員 ありがとうございます。
 今回は、まだ具体的にそれほど分からないということですけれども、繰下げについては、少しずつという感じでしょうか。
○村田調査室長 決して減っているわけではなくて、じりじり増加しているように見受けられますけれども、まだ今後の状況とかも見ていかないとと思いますので、今後の動きを見ていきたいと思います。
○関委員 ありがとうございます。
○翁部会長 浅野委員、お願いします。
○浅野部会長代理 それでは、3点ほど質問をさせていただきます。
 1点目が11ページで、被保険者数が、男性について減少しているのですけれども、この表を見る中では初めての現象ですけれども、これはコロナの影響などによる一時的なものなのか。何か別の要因があるのか。何かお分かりになることがあれば、教えていただければと思います。
 2点目が18ページに行っていただきまして、「通老相当」の受給者が見通しと実績で、実績のほうが93.8%と、こういう年金開始の関係というのは、1年、2年でこれだけずれるのはちょっとどうなのかなと感じていまして、何かシミュレーションで問題があるとか、前提の置き方に何か課題があるとか、そのような点を教えていただければと思います。
 最後が、今回の御報告では、1つポイントは、コロナの影響だと思うのですけれども、コロナについて、年金財政に与える影響は、この報告書を見る限りでは限定的というか、そういう認識でいいのかどうか。逆に、どういうふうに評価されているのかというのを教えていただければと思います。
○村田調査室長 では、1点目について、私のほうからお答えさせていただきますと、被保険者数、今回、男性が減っているということですが、こちらはどうしてかということを考えてみますと、まず、厚生年金全体につきましては、先ほども言いましたように、適用拡大とか、女性の就労参加とか、高齢者雇用が進む、あるいは機構の指導と、そういったもので年々増加していくといったような状況の中にありまして、令和2年度は、コロナ禍であっても、女子は被保険者数が増加したもののその伸びが鈍化したような形になっています。
 女子のほうを先に見ますと、女子の被保険者数の伸び率の29年度末、30年度末、令和元年度末までの流れを見ると、3.2%、2.9%、2.5%と、高い水準で推移していたものが、令和2年度末では1.2%ということになりまして、全ての要因が新型コロナウイルス感染症によるものとは言えないのですけれども、数値としては、伸び率が1.3ポイント程度低下した、鈍化したという形になっています。
 男子のほうを見ますと、男子の被保険者数の伸びについて、令和2年度末に0.4%と減少していますが、令和元年度末の伸びが0.76%ありましたので、それと比べると1.1ポイント程度の数値が下がったということで、女子はもとの伸びが高いので微増だったのですけれども、男子はもとの伸びが女子よりもちょっと低かったのでマイナスになってしまったというところはありますが、どちらも被保険者数の伸び率が抑制されたという動きから出てきたものと考えています。
 こちらの状況が今後どうなるかということですが、これからどんなふうになっていくかというのは、今の時点では予想できませんので、これが一時的なものなのか、今後続くかということは、今後の統計のデータの動きを見ながら、注視してまいりたいと思います。
○佐藤数理課長 18ページの「通老相当」の話ですが、「老齢相当」と「通老相当」の判定については、シミュレーション上ちょっと課題があると認識しております。というのは、シミュレーションにおいては、共済期間と厚生年金期間、つまり、1号、2号、3号、4号厚年期間を、それぞれ別々に計算しております。ですから、この「通老」とか「老齢」の判定についても、1号厚年だったら、1号厚年の期間だけで20年超えるか超えないかで判定しているということになります。
 一方、実績のほうは、一元化前は同じような形だったのですけれども、一元化後は、1号から4号まで全部通算して20年あるかどうかという判定になっておりまして、そういうことから、どうしてもシミュレーションのほうが「通老」が多くて、実績のほうが「老齢」が多いという傾向があるということです。
 それと、シミュレーションのほうは、さらには、「通老」については、いわゆる受給資格期間10年というのを見ずに、全て年金を発生させるということにしていますので、そういった観点からも、実績より「通老」は増えるというところはあると思います。このあたりは、課題だと認識しております。まず、そもそも実績から、1号から4号厚年まで通算した個人別の記録は現在取れていないという状況なので、そこをどうやって入手するかということを検討して、シミュレーションについても、何ができるかというのを今後考えていきたいと思っているところであります。
 コロナの影響というお話がありましたが、厚生年金だけでなく国民年金にも言えると思うのですけれども、令和元年度と令和2年度の財政状況は、やはりコロナの感染の影響を受けていると思っております。特に運用実績が、令和元年度は、大きく年度末に向けて落ち込んだのに対して、令和2年度は株式の非常に大幅な上昇によって運用利回りが大きく上がったということがあります。
 一方、賃金については、令和2年度は、1人あたり総報酬の伸びはマイナス0.6%ということで低下することで、マイナスの影響があるということであります。今回の報告の外になるのかもしれませんけれども、例えば合計特殊出生率を見ますと、これがコロナの影響なのかどうかはちょっと難しいところですけれども、令和2年度の実績は1.34となっており、将来推計人口の見通しを下回っているというようなことで、そのような影響があるというところであります。
 ただ、年金財政は、社会の一時的な変動ではなくて、長期にわたる動向が重要ですので、このコロナによって生じた影響は、一時的なものなのか、それともコロナ後の社会にも影響を与えるのかどうかと、そういったことが重要だと考えております。そういう視点を持ちながら、今後の動向を注視していきたいと考えているところであります。
○村田調査室長 すみません。先ほどの追加でちょっとよろしいでしょうか。
 先ほどの厚生年金保険の被保険者の伸び率が鈍化したという話をしたときに、一点言おうと思っていて、言い忘れてしまったのですけれども、実は、地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律が、令和2年4月1日から改正されて、施行されておりまして、臨時的な任用職員とか、会計年度任用職員のうちの一定の要件を満たす方が、地方公務員共済組合の組合員の資格を取得するというように、制度が変わっておりまして、これで、多分、厚年(1号)のところから主に厚年(3号)ですね、地共済のほうに人が移っているといったことがあって、それが厚年(1号)を見たときに、低下している原因の一つではないかと考えています。
 ちなみに、厚生年金保険の2~4号の人数の動きを昨年度と比較してみますと、まだ速報値ですが、令和元年度で3共済合わせて450万人だったものが、令和2年度には466万人ということで、そこで、端数は分からないのですけれども、16万人程度増加していますので、そこの動きは、厚年の被保険者の伸びが低かったところに若干影響していると思いますが、こちらの影響については、一時的な動きと考えられ、来年度以降は小さいのではないかと思います。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、以上で厚生年金保険についての報告の聴取を終わります。
 続いて、議題(2)に入りますが、令和2年度の国民年金・基礎年金制度の財政状況について、御説明をお願いいたします。
○佐藤数理課長 数理課長でございます。
 それでは、資料2の1ページ、収支状況をご覧いただければと思います。まず、基礎年金勘定の収支状況になりますが、一番右側の令和2年度の収入総額を見ていただきますと、26兆3,630億円と。前年に比べて7,565億円の増です。一方、支出の総額については、24兆5,106億円となりまして、前年度に比べて3,259億円の増となっているということであります。その結果、収支残が1兆8,523億円ということになりまして、前年度に比べて4,306億円の増であります。
 基礎年金勘定につきましては、収入の大部分が基礎年金拠出金になっております。また、積立金より受入の中には、先ほど、厚生年金のところでも触れましたいわゆる妻積みというもの。被用者年金一元化によって、基礎年金拠出金の軽減に活用されているとされた部分も含まれています。ここで受け入れられたものは、基礎年金拠出金が軽減されているという関係になっているところであります。
 支出については、基礎年金給付金の本来分、これは昭和60年改正の新法給付というものにあたりますが、それが23兆8,053億円となっておりまして、前年に比べて4,701億円、2.0%の伸び。一方、旧法の基礎年金に相当する基礎年金交付金につきましては7,050億円となっておりまして、前年度に比べて1,441億円の減となっております。
 下から3段目の基礎年金拠出金算定対象数をご覧いただきますと、これは20~60歳の被保険者で、1号については保険料を納付している人ということになりますが、これが5,450万人になりまして、前年度に比べて20万5,000人、0.4%の減となっております。
 さらに、一番下の段、1人あたりの拠出金、これは拠出金単価のうち国庫負担を除く保険料相当額になりますが、これが月額1万8,411円ということになりまして、前年度に比べて314円上昇しているというところであります。
 この金額は、国民年金保険料の月額1万6,540円より高くなっているということでありますが、これはどういうことを意味しているかというと、すなわち基礎年金拠出金を国民年金保険料だけでは賄うことができないということを意味しておりまして、つまり、積立金を活用している状況にあることを示しているものであります。
 続きまして、2ページの基礎年金の制度別給付状況と負担状況です。こちらは、初めにも説明したとおり、基礎年金拠出金は概算値と確定値というものがありまして、決算は、概算+年度の精算となっていますが、この表については確定値で整理しているというところであります。
 注2に記載しておりますけれども、先ほどから説明しております基礎年金拠出金軽減のために積立金から受け入れる部分、いわゆる妻積みについては、控除する前の数値となっておりまして、控除額を括弧書きにして再掲しているところであります。
 上の表ですけれども、基礎年金給付金の本来分、いわゆる新法分が23兆7,979億円で、旧法の基礎年金相当給付費が6,742億円と。その両者を合計したものが基礎年金給付となりまして、24兆4,721億円となっております。
 それから、下の表に移って、一番右側の数字が先ほど述べました基礎年金給付の数字になっておりますが、そこからその隣の特別国庫負担3,906億円を差し引いたものが基礎年金拠出金の24兆815億円になります。これを各制度が、拠出金算定対象者数に応じて分担するということになっております。
 続きまして、3ページ、国民年金勘定の収支状況を見ていただきたいと思います。令和2年度の欄を見ていただきますと、時価ベースの収入総額が5兆6,286億円となっておりまして、このうち保険料が1兆3,365億円。前年度に比べて93億円の減、率にして0.7%の減少となっているところです。
 国民年金保険料につきましては、納付率の上昇という増要因がありますが、被保険者数が減少したこと、特に免除者数が増加したことによって、納付対象者が減ったという要因によって、結果として減少していると見ております。
 国庫負担は1兆8,308億円で、前年度に比べて624億円、3.5%の増となっております。これは、下の支出の欄の基礎年金拠出金に対応しておりまして、拠出金は令和2年度が3兆1,928億円と、前年度に比べて1,159億円、3.8%の増となっているところであります。
 収入に戻っていただきますと、時価ベースの運用収入が2兆489億円で、前年度に比べて2兆5,085億円の大幅な増加となっております。再掲が、令和元年度末までの累積運用収入の中から納付された年金積立金管理運用独立行政法人納付金となっておりまして、1,818億円となっております。
 続きまして、支出総額のほうに行きますと、3兆6,604億円となっておりまして、収支残が時価ベースで1兆9,683億円となっております。この収支残に、その下にある業務勘定から積立金への繰入52億円を足しまして、収入欄にありました積立金からの受入1,707億円を控除したものが、時価ベースで見た積立金の増加額となりまして、前年度との比較の欄にある1兆8,028億円となります。この金額の積立金が増加して、令和2年度末の積立金は、時価ベースが10兆3,259億円となっているところであります。
 最後に、名目運用利回りですが、24.39%となっているところであります。
 続きまして、4ページは御参考となりますが、3ページの保険料収入の内訳になりまして、現年度保険料と過年度保険料別に見たものになります。(再掲)の前年度保険料の欄については、いわゆる2年前納に加えて1年前納とか半年前納、また1か月前納といったものがありますが、こういったものを全て含めたものの計上となっているところであります。
 収支状況は以上であります。
○村田調査室長 続きまして、5ページをご覧ください。こちらは給付状況についての資料でございます。掲載しております数値は、新法の基礎年金と旧法の国民年金を合計したものとなっておりまして、被用者年金のいわゆるみなし基礎年金に係る部分は含まれてございません。
 まず、受給権者数でございますが、令和3年3月末は、合計で3,660万4,000人となっておりまして、前年度に比べて31万6,000人、0.9%の増加となってございます。このうち、「老齢年金・25年以上」は3,328万2,000人となっておりまして、0.9%の増加でございます。「通算老齢年金・25年未満」につきましては、令和3年3月末で93万8,000人、前年度に比べて0.7%の減少となってございます。
 年金総額につきましては、1つ下の段のところになりますが、令和3年3月末で24兆7,137億円となっておりまして、前年度に比べて3,467億円、1.4%の増加となっております。この大部分を占めております「老齢年金・25年以上」について見ますと、令和3年3月末で22兆4,660億円、前年度に比べて1.4%の増加となってございます。
 続きまして、6ページでございます。こちらは繰上げ支給・繰下げ支給の状況についての資料でございます。まず、繰上げ支給の男女合計の受給権者数ですけれども、令和3年3月末で400万4,000人となっておりまして、前年度に比べて15万8,000人、3.8%の減少となってございます。近年の状況を見ますと、減少傾向で推移してございます。
 一方、繰下げ支給の受給権者数は、令和3年3月末で55万3,000人となっておりまして、前年度に比べて6万人、12.3%の増加となってございます。
 また、特記事項をご覧ください。令和2年度末時点で70歳の基礎のみの老齢基礎年金受給権者の繰上げ率は16.8%、繰下げ率は2.6%となっております。厚生年金の資料の説明の繰り返しになって恐縮ですが、もう一度御説明しますと、令和元年度の財政状況を報告した際に、新しく入ってくる世代の繰上げ・繰下げの状況についての議論があったことを踏まえて追記させていただいたものでございます。先ほど申しましたように、新規裁定者については、繰上げ・繰下げの状況を適正に評価することが難しくなっておりますので、同じ集団の中でのコホート的に見た繰上げ・繰下げの状況を見たほうが適切だと考えまして、受給開始時期の選択が終了した年度末時点で70歳の新法の老齢基礎年金の受給権者について見てございます。
 続きまして、7ページでございます。こちらは、上段と下段に分かれてございますけれども、上段につきましては、老齢年金受給権者の平均年金月額とか、あるいは平均加入期間について見たものでございます。男女合計の「老齢年金・25年以上」の平均年金月額は、令和3年3月末で5万6,252円となっておりまして、前年度に比べて306円、0.5%の増加となってございます。この増加の要因でございますけれども、令和2年度は、年金額の改定がプラス0.2%であったこと、それから、平均加入期間が延びていること、そういったことから平均年金月額が増加したということでございます。
 下段につきましては、新規裁定者についての資料でございます。まず、男女計の「老齢年金・25年以上」に係る新規裁定者の老齢年金平均加入期間を見ますと、令和2年度で420月となっておりまして、前年度に比べて3月の増加となってございます。また、平均年金月額は5万4,421円で、前年度に比べて507円の増加となっております。
 続きまして、8ページは、老齢年金受給権者の年齢構成でございます。男女合計で見ますと、最も割合が多いのが、70歳以上75歳未満の26.9%、次いで、65歳以上70歳未満の20.6%となってございます。平均年齢は、男性が75.9歳、女性が77.5歳、男女計で76.8歳となっております。前年度末では、男女計で76.5歳でしたので、プラス0.3歳の上昇ということで、若干ではございますけれども、年齢構成は高いほうにシフトしているという状況でございます。
 続きまして、9ページは、老齢年金受給権者の年金月額の分布でございます。上段が受給権者全体に関する分布で、下のほうが、いわゆる基礎のみの受給権者に関する分布になっています。さらに、それぞれについて、左側が「老齢年金・25年以上」、右側が「通算老齢年金・25年未満」の分布を示しております。
 まず、左上の受給権者全体について、「老齢年金・25年以上」の分布を見ていきますと、年金月額が6~7万円の階級が44.6%と最も多くなっております。一方、右側の「通算老齢年金・25年未満」の分布を見ますと、比較的低い水準の金額階級のところの割合が高くなってございます。
 10ページは、被保険者の状況でございます。まず、被保険者数でございますけれども、第1号被保険者数は、引き続き減少傾向が続いておりまして、令和3年3月末現在で1,449万5,000人となっており、前年度に比べて3万9,000人、0.3%の減少となってございます。第3号被保険者につきましては、令和3年3月末で793万人となっておりまして、前年度に比べて27万3,000人、3.3%の減少となってございます。
 被保険者の平均年齢は、令和3年3月末で、第1号被保険者が39.3歳、第3号被保険者が45.1歳となってございます。
 免除等の状況につきましては、一番下の段にお示ししておりますけれども、令和3年3月末の免除者数につきましては、前年度に比べますと、申請全額免除者や納付猶予者の人数が大きく増加している状況でございます。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によって収入が減少して、国民年金の免除相当程度まで所得の低下が見込まれるという方について、臨時特例措置として、簡易な手続によって国民年金保険料を免除・猶予するといった取扱いをしていることによる影響もあるものと考えております。
 次に11ページは、第1号被保険者の分布でございます。一番右の割合の欄をご覧いただきますと、最も多いのが、20歳以上25歳未満のところの23.6%となっております。国民年金第1号被保険者には、自営業の方とか無職の方等、いろいろな方がいらっしゃいますけれども、この20歳以上25歳未満の年齢層は学生の方が多く、そういったことでウェイトが大きくなっているということでございます。
 12ページと13ページは、今見た第1号被保険者の分布を男女別に見たものでございますので、説明は割愛させていただきます。
 続いて、14ページからが第3号被保険者の分布でございます。第3号被保険者につきましては、最も多いのが45歳以上50歳未満のところの20.1%となってございます。ここをピークとして山のような形となっております。
 15ページと16ページは、今見た分布を男女別に見たものでございますので、こちらの説明は割愛いたします。
 17ページですが、こちらは国民年金保険料の納付状況を年齢階級別に見たものでございます。特記事項にも記載しておりますけれども、納付状況の途中経過を示すものとして、現年度納付率、過年度1年目納付率がございますけれども、最終的な納付状況を見るための指標としては、最終納付率が適切だと考えております。直近の結果を見ますと、一番上の段を見ていただきますと、平成30年度分保険料の最終納付率が77.2%でございまして、これは8年連続で上昇しております。統計を取り始めた平成14年度以降で最高の水準となってございます。
 それから、下の段に、年齢階級別の最終納付率をお示ししておりまして、括弧内に年齢階級別の現年度納付率をお示ししております。どちらもおおむね年齢階級が高くなるにつれて、納付率が上昇する傾向が見て取れます。なお、20歳以上25歳未満のところの納付率が、その次の25歳以上30歳未満の納付率よりも高くなっておりますけれども、こちらは、20代前半は主に学生さんが中心となっていると考えられまして、学生納付特例によって保険料の納付の猶予を受けていたり、あるいは本人に代わって親御さんが保険料を負担しているケース等も多いといったことも影響して、次の階級に比べて納付率が高くなっているものと思っております。
○佐藤数理課長 続きまして、18ページをご覧ください。国民年金の資産構成割合となります。上の表の右側が、令和2年度末の積立金10兆3,259億円の資産構成割合となります。預託金が3.3%、市場運用分が96.7%、財投債が0%となっており、運用利回りは24.39%となってございます。先ほど厚生年金でも説明しましたが、財投債については、令和2年度のうちに全てを売却しているというところであります。
 また、下の表の右側、資産区分別の内訳は、国内債券が22.8%、国内株式が24.5%、外国債券が24.6%、外国株式が24.8%、短期資産が3.3%となっております。
 続いて、19ページ、財政検証における将来見通しとの比較となります。収支状況との比較となります。厚生年金でも御説明しましたが、今年度から、財政検証ベースの実績の作成方法については見直しておりまして、確定値を用いるといったことや積立金については平準化後の評価額は追加していることを行っております。
 また、厚生年金と同様国民年金に関しましても、将来見通しとベースをそろえる必要があるということがありますので、従来と同様に、国庫負担繰延分2.4兆円を積立金に加えるといったことや、基礎年金交付金を収支両面から控除するといったことによって、財政検証ベースの実績値を作成しているところであります。詳しくは、一番下の特記事項に記載しております。
 この実績と将来見通しを比べますと、将来推計については、ケースⅢで数字を申し上げますと、保険料収入は将来見通し・実績ともに1.29兆円となっているところであります。国庫負担については、将来見通し1.88兆円と見込んでいたものが、実績では1.86兆円。右側の基礎年金拠出金に対応しておりますが、この基礎年金拠出金については、将来見通し3.31兆円、見込んでいたものが実績では3.28兆円となって、これに伴って、国庫負担も見通しより実績のほうが少なくなっているところであります。運用収入は、見通しが0.19兆円と見込んでいるものを、実績では2.05兆円となっております。給付費につきましては、将来見通し・実績ともに0.10兆円となっているところであります。
 収支残につきましては、将来見通しではマイナス0.09兆円と見込んでおりましたが、実績では、運用収入が大きかったことから1.77兆円と、大きなプラスとなっております。
 年度末積立金は、将来見通しでは11.35兆円と見込んでいたものですが、実績では、時価評価額が12.45兆円、平滑化後の評価額が11.64兆円となっておりまして、いずれも実績が将来見通しを上回っているところであります。
続きまして、20ページが国民年金の被保険者数と基礎年金の受給者数の比較となります。実績と将来見通しをご覧いただきますと、被保険者数の合計は将来見通しに比べて実績のほうが小さくなっております。受給者数については、合計は将来見通しと実績の間に大きな差はないというところでありますが、内訳を見ますと、老齢と遺族は実績のほうが少ない一方、障害については実績のほうが多いということになっております。
 続きまして、21ページからの財政指標の比較となりますが、21ページが国民年金基礎年金の全体の年金扶養比率となります。令和2年度の数値は、実績は上の表の一番左側ですが、1.91、将来見通しは下の表のいずれのケースにおいても1.91となっておりまして、同じ値となっているところであります。
 続きまして、22ページになりますけれども、こちらは国民年金勘定の保険料比率になります。これは国庫負担を除く実質的な支出に対して保険料収入がどの程度を示しているかというものでありまして、100を下回ると運用収入や積立金の元本を活用しているということになるものであります。これらの表につきましても、厚生年金で説明したとおり、基礎年金拠出金等については、確定値を用いるということを行っております。
 令和2年度の数値を見ていただきますと、実績は上の表の左側の数字で85.2、将来見通しは下の表のケースⅠ・ケースⅢで85.0、ケースⅤで84.9となっておりますが、将来見通しと比べると、実績のほうが少し高めとなっているわけですが、いずれについても100を下回っているということでありますので、積立金を活用するという状況になっているところであります。
 続きまして、23ページが国民年金勘定の収支比率になります。こちらは、保険料収入と運用収入を合算した収入に対する実質的な支出の割合であります。運用収入は分母に入っておりますので、時価の変動の影響を受けまして、大きく実績数値が変動しているところであります。
 令和2年度の数値は、実績は上の表の左側の数値で45.3となっておりますが、将来見通しは下の表のケースⅠ・ケースⅢで102.5、ケースⅤは102.6となっており、実績のほうが小さくなっているところであります。
 最後となりますが、24ページが、国民年金勘定の積立比率となっておりまして、こちらも確定値を用いるとか、時価評価額に加えて平準化後の評価を各期に加えるということを行っております。また、厚生年金でも御説明しましたけれども、これは前年度末積立金を基準に算出するものでありますので、令和2年度の運用実績は反映されていないものになります。
 令和2年度の実績は、上の表の左側の数値で、時価評価で7.1、平滑化後の評価で7.4となっているのに対して、将来見通しは、下の表のケースⅠ・ケースⅢで7.5、ケースⅤは7.4となっておりまして、実績の方が、ケースⅠ・ケースⅢと比べますと少し低くなっているところであります。
 財政検証における将来見通しとの比較は、以上になります。
 私からは以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
 時間を5分か10分くらい延長になるかもしれませんが、よろしいでしょうか。すみません。
 それでは、今の説明について何か御質問がありましたら、お願いいたします。
 駒村委員、お願いします。
○駒村委員 すみません。15時ジャストから次の会議が始まってしまうので、ちょっと早目に退出するかもしれません。
 細かい話ですけれども、11~13ページにかけて、これは去年も御質問したのかもしれませんけれども、特に65の枠のところですけれども、スペースと0が入っているのとあるのですね。スペースと0が入っているのは一体何が違うのか。スペースは理屈上存在しないということなのかなのですけれども、場所によってはそういうような表記にもなってないので、スペースになっている部分と0の部分は何が違うのかというのをちょっと確認したいなと思います。
 それから、14~16ページで、ちょっと細かい話はやめておいて、40年以上というのは理屈上ないのだと思うので、そうすると、から(~)ではなくて、ジャスト40と書いたほうがいいのではないかなと思いました。すみません、ちょっと細かいところですけれども、表記について気になったところだけ確認しました。
 すみません。ちょっと前に出るかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、御回答をお願いいたします。
○村田調査室長 表記ですけれども、0というのは全く本当にないという意味ではなくて、一応数字がありまして、500人未満なので0になっているというのが0でございます。空欄になっているのは、全く数字がないということで、区別して書かせていただいております。
 表記の「40~」をどうするかということについては、来年度以降、少し検討させていただきたいと思います。
○駒村委員 ありがとうございます。
 だとすれば、今の一言をどこかに注に入れておかないといけないのかなと思います。どこかに入っていればいいのですけれども、結構です。分かりました。ありがとうございます。
○翁部会長 ちょっと具体を検討いただければと思います。
 ほかはいかがでしょうか。
 野呂委員、お願いします。
○野呂委員 まず1つは、来年に向けてのお願いで、6ページ目の繰上げと繰下げの話ですけれども、確かに、70歳になってから振り返るというやり方は分かりやすいと言えば分かりやすいのですが、情報としては遅いと思います。さらに、これが間もなく75歳まで繰り下げられるようになると、さらにデータとして遅くなると思うので、年齢構成の変化とか、支給開始年齢の引き上げによって歪つになっているところは、何か割り切りって補正してでも、今、まさに65歳を迎えた人がどういう選択をしているかということを分かるようにしないと、データとしてあまり意味がないのかなと思います。やり方も含めて、今日ここで回答をいただくというよりも、来年に向けて検討いただけたらなと思います。
 質問は、免除と納付率の関係のところで、10ページでしたか、コロナの影響でというお話でしたけれども、例えば、申請全額免除者などの人数がものすごく増えておりまして、免除者が1号被保険者全体の25%を超えるという状況になっております。このこと自体も非常に重い問題だと思うのですけれども、今回、特に申請全額免除者が非常に増えたことについて、その中でコロナの影響によると推定されるものがどれだけかが分かるかどうか。このことは免除者の増加がコロナに起因した一過性のものなのか、それとも構造的な問題なのかという意味で、重要ではないかと思っています。
 2つ目の質問は、1号被保険者から法定免除や申請免除、その他免除の人数を引きますと、1号被保険者の数から免除者を引いた後の、保険料を支払う可能性のある人は、実は令和2年から令和3年にかけて30万人ほど減っていまして、割合にして3~4%減っているということになります。この減り方も大きいのですが、その割には、保険料収入があまり減っていないのは、どういう理由なのかという疑問です。どういう被保険者が免除になったかという、その構造にもよると思うのですけれども。
 3点目が、そのように免除者が増えている中で、学生も学費支払が困難になっていると言われるにも関わらず、学生の免除者については、むしろ減っているというところが不思議だというところです。
 最後は、納付率のところで、納付率が上がったということなのですけれども、先ほど申し上げましたように、1号被保険者から免除の人を除いた納付可能性のある被保険者については、30万人ぐらい減っているという中で、納付率が上がっているのは、そもそも免除者が増えたからではないかという点です。実際に納付している人については、率で見ても減っているのではないかということも疑問になってきまして、例えばですが、分母・分子から、法定とか全額免除者の人数を引かずに割り算した納付率を見たら、実際は下がっているのではないかという疑問もあります。これもここで即答していただくのは難しいかもわかりませんけれども、知りたいところです。
 以上でございます。
○翁部会長 お答えできる部分だけでも結構ですので。
○村田調査室長 すみません。たくさん御質問があったので、全部捉え切れているかは分からないのですけれども、まず、質問ではなかったのですが、最初に、繰上げ・繰下げの状況を、65歳で把握できないかみたいなお話があったかと思うのですけれども、我々は業務統計で把握していますので、65歳に到達した人のうちで、統計で捉えることができるのは、あくまで裁定された方に限られてしまいます。そのため、その対象となるのが繰上げの請求を行った方と、65歳ジャストで本来支給の請求を行った方となってしまいますので、繰下げとか、まだ請求されてない方とかいうのは数字で捉えることができません。
 なので、65歳時点で繰上げとか繰下げの率を見ようと思っても、一部の人だけの偏った数字になってしまうので、適切ではないのではないかと考えておりまして、そういったこともあって、受給開始時期の選択が終了して、全てのデータが出切った、年度末時点で70歳の受給権者について見ているといったものでございます。
 次に、免除者が増えた影響について、コロナとかどんなふうになっているかというお話かと思います。申請全額免除者の増加につきましては、その増加に占める新型コロナウイルス感染症の影響を定量的にお示しすることはかなり困難なのですけれども、事業管理部会という別の部会の資料によりますと、「国民年金保険料の免除に係る臨時特例措置」に関しまして、令和2年5月1日から、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少して、当年中の所得の見込みが国民年金保険料の免除等に該当する水準になったと見込まれるという方につきまして、国民年金保険料の免除を特例的に適用されることになったと思いますが、そちらのほうの申請が、令和3年3月末までに約32万件の承認をしているということでございます。ただし、この件数の中には、この特例がなかったとしても、普通に免除になったような方も含まれていると考えられますので、そういった点には留意いただきたいと思います。そのぐらいしかお答えできる数字がございません。
 続きまして、保険料収入の減少が0.7%というのが少な過ぎるのではないかというようなお話だったかと思います。こちらは、保険料収入といいますのは、当年度中に保険料として入ってきた金額でございますので、ここには当年度の保険料だけではなくて、次年度以降の将来の保険料とか、あるいは過去の分の保険料も含まれてしまっていて、複数年度にまたがるものとなっています。それなので、年度末の免除とか猶予を除いた被保険者の人数という単年度の数値と動きを単純に比較することがちょっと困難ではないかと思っています。
 定量的に評価するのは難しいのですけれども、定性的に見ますと、免除や猶予を除いた被保険者の人数は減少しているのですが、納付率のほうが上昇しておりますので、その人数の減少率に比べて保険料収入の減少率は抑えられる方向に働いているかと思います。
 それから、前納のほうで、2年前納というのがあるのですけれども、2年前納の制度が平成26年度に開始されているので、偶数年度の利用が奇数年度に比べて多くなる、何かジグザグになっているというような事象がございます。今年度は偶数年度でございますので、保険料収入が本来の数字より高めに出る年ということで、保険料収入の減少が抑えられたと考えています。
 さらに、追納のほうで、今年度は追納もちょっと増加しておりまして、例年に比べて多くなっておりますので、それも保険料収入が増加する方向に寄与していると考えておりまして、想定される以上に保険料の減少幅は小さかったということなのではないかと思っております。
 次に、学生の納付特例が減っているのはなぜかというお尋ねがあったかと思います。こちらは、文部科学省でやっております学校基本調査によりますと、ターゲットとなる年齢に限ったデータはわからないのですが、令和2年度の大学の学生数が約290万人ということで、前年度から約3,000人程度減少しているということで、大学の学生数が減少しているということも、学生の納付特例の減少に若干寄与したものと考えています。
 それから、こちらは御参考になるのですけれども、事業管理部会の資料によりますと、国民年金の確実な適用の実施に向けまして、令和元年の10月から、20歳に到達した方について、届出ではなくて、全員職権で適用するような制度に移行しております。それを踏まえて、事務手続として、最初に加入のお知らせと同時に納付書も一緒に送付するといった形で、事務処理が変更されています。こちらの事務処理の変更の影響も、学生納付特例ではなくて、きちんと納付していただくという、そういった流れになるような、学生納付特例の減少にちょっと影響があるかもしれないし、ないかもしれないということで、どこまで影響があるかは分からないのですけれども、参考情報として、こういったことがあったということをお伝えしたいと思います。
 最後に、納付率について、免除の影響とかもあるので、もっといろいろなほかのものとかを出したほうがいいのではないかというお尋ねがあったかと思います。
 そもそも今回の納付率は、現年度で2.2ポイント上昇しているのですけれども、そちらを分析したものがございますが、令和元年度から令和2年度にかけましては、現年度納付率が69.3%から71.5%に2.24ポイント上昇しているのですけれども、これを被保険者の属性で寄与を分析いたしますと、2年間引き続き1号被保険者であった方、両年度ともいらっしゃった方の納付率が上昇しておりまして、その影響が1.74ポイントとなっておりまして、大部分を説明できる状況にあります。
 なお、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて、先ほど申したように、特例的に簡易な手続で免除や納付猶予を行ったということなどもあって、令和元年度から2年度にかけて、全額免除や猶予者の数は増加しておりますけれども、こちらの免除・猶予の増減がどれぐらい影響があったかということを分析しますと、1.39ポイントぐらい増加要因になっています。あと、その残り、新規に資格取得した方とか喪失した方など、出入りによる影響がマイナス0.89ポイントということでありまして、免除の影響もあるものの、一番大きいのは、両年度とも、引き続き1号被保険者であった方の納付率が高まったことによる影響だと思います。
○野呂委員 初めのお願いにつきましては、全数調査による基礎統計でお示しいただくというよりも、推計を入れた加工統計でもできないかということで御検討をお願いしたいのですが、それも難しいということでしょうか。
○村田調査室長 少なくとも年金制度で取れるデータが、受給権の裁定を行った方のデータだけになるので、まだ裁定されていない方が今後どのように動くか、どれぐらいの方がいらっしゃるかもありますけれども、本来支給のほうを選択されるのか、繰下げ支給を選択されるのかというのは、そこは裁定時にならないと分からないということなので、加工してやるのも難しいかなと思っております。
○岡部年金課長 すみません、ちょっと補足させてもらいますと、年金の受給を、今、本来支給というのがありましたけれども、年金を65歳からもらうことを70歳辺りで選択することもできます。例えば70歳の時点で65歳から本来額を受給するという選択をされた場合には、5年分の年金を一時金として受けた後に、本来の額を受けるというのがあるので、言ってみれば、70歳にならないと、繰下げなのか本来受給なのか分からないということで、このへんがかなり不確実性があるのだということを説明しているものでございます。
○野呂委員 具体的な方法について、ここで議論をしてもすぐには結論が出ないと思いますが、ただ、今のままではデータとしてはやや古いと思うので、何か工夫があればいいのだが、という意見があったことをご理解いただきたいと思います。
○翁部会長 ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。
 よろしいですか。
 浅野委員、よろしいですか。
○浅野部会長代理 先ほど、コロナの影響はどうだという話についてはコメントをいただいたのですけれども、運用は、コロナの影響かどうかというのは、正直分からないというか、かなり遠いかなと思うのですけれども、もう少し直接的なコロナの影響はあるのではないのかなと思うので、それについて何かまとめておいたほうがいいのではないかなと思います。もちろん、それで一喜一憂するものではないということは十分分かりますけれども、それは、国民はやはり気になるところではないかなと思いますので、そういった御検討をお願いいたします。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、以上で、国民年金・基礎年金制度についての報告の聴取を終わります。
 なお、今後、審議の過程でいろいろな疑問とか出てくる可能性がございますので、そのときは、事務局を通じて照会させていただきますので、御協力をいただきますようにお願いいたします。
 最後に、事務局から連絡があればお願いいたします。
○鎌田首席年金数理官 本日は、長時間にわたりありがとうございます。
 次回の第91回年金数理部会は、来年1月7日(金)の13時から、本日と同じく、全国都市会館大ホールにて開催いたします。議題は、国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済それぞれの令和2年度財政状況について、その他を予定しております。
 以上です。
○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、第90回年金数理部会は、これにて終了いたします。どうもありがとうございました。

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