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2020年12月25日 第86回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

令和2年12月25日 10時00分~12時00分

 

○場所

全国都市会館 大ホール



 

○出席者

 
菊池部会長、浅野部会長代理、翁委員、小野委員、駒村委員、関委員、永瀬委員、野呂委員、枇杷委員


○議題

(1)令和元年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)について
(2)その他

○議事

 

○山本首席年金数理官 おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆さんおそろいのようですので、ただいまより第86回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日、ペーパーレス開催ということで、傍聴者の方はウェブサイトからダウンロードしていただくということでございますけれども、本日、準備をしております資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、まず資料1として「厚生労働省追加提出資料」でございます。
 それから、資料2「令和元(2019)年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)(案)」でございまして、これは全部で7分冊になっておりまして、資料2-1「表紙、委員名簿、目次」、資料2-2「第1章」、資料2-3「第2章」、資料2-4「第3章」、資料2-5「第4章」、資料2-6「第5章」、資料2-7「付属資料」ということでございます。
 あと、資料3といたしまして、「令和元(2019)年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)について(案)」という横長のものでございます。
 それと、参考資料「第85回年金数理部会の追加質問とそれに対する回答」でございます。
 以上が準備している資料でございます。不備等はございませんでしょうか。
 なお、参考資料につきましては、前回の年金数理部会におきまして、ヒアリング後にお気づきになった事項を事務局に提出いただくことになっておりましたけれども、いただきました質問とそれに対する回答をまとめたものということでございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について報告をいたします。
 本日は全委員御出席でございますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、関委員につきましては、画面に映っておりますとおり、オンラインでの御参加でございます。
 それでは、以後の進行につきましては、菊池部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○菊池部会長 皆さん、おはようございます。
 この師走の年末の折に、皆様には御多忙の折、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 当部会では、公的年金制度の安定性の確保の観点から、財政検証時における検証(ピアレビュー)を行うこととされており、前回の部会では、令和元年財政検証についてヒアリングを行ったところであります。
 その後、委員の皆様の御協力、御指導の下、作業班において分析や報告書の起草などの作業を行ってまいりました。
 本日は、御案内のとおり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大という状況ではございますが、この作業班で作成した報告書案に基づいた審議という非常に重要な節目でございますので、基本的には対面で行わせていただくことにした次第でございます。ありがとうございます。
 カメラ等はございませんね。
 それでは、進めてまいります。
 かねて、年金数理部会では、基礎年金のマクロ経済スライドによる給付水準調整期間の長期化に対して問題意識を持ってまいりました。前回のピアレビューでも、今後の適切な対応が強く望まれるという指摘がなされております。
 また、9月に開催した前回の部会のヒアリングにおきましても、委員から、基礎年金水準の引上げに向けてどのような政策が考えられるのかという趣旨の質問をいただいております。そこで、この点に関連して、追加の報告があるということですので、報告書案の審議に先立って、これを聞くということといたします。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○山内数理課長 数理課長でございます。
 お手元のタブレットの04、資料1「厚生労働省追加提出資料」を開いていただきますと、最初に資料1と書いた表紙がありまして、その次に白紙が入っておりまして、その次に追加試算と書いたページがあるかと思います。この資料について御説明をいたします。
 まず、追加試算と書いたページでございますが、囲みの中に書いておりますけれども、1つ目の○に書いてあるとおり、今、部会長からもお話がございましたけれども、基礎年金水準の低下に関する問題意識ということがございましたので、この年金数理部会における検討に資するために、2019年の財政検証をベースとして行って御報告するものであります。
 基本的な考え方といたしましては、次の2つ目の○に書いておりますが、(1)として、まず、2019年の財政検証公表後、2020年の年金改正法が成立しましたので、これを反映した現行制度に係る将来見通しを作成するということでございます。
 (2)として、また、将来の基礎年金水準の低下という課題でございますけれども、2004年の年金改正時の財政再計算では一致しておりました基礎年金と厚生年金の報酬比例部分のマクロ経済スライドの調整期間が、その後の財政検証では基礎年金の調整期間が長くなって報酬比例との乖離が大きくなることから生じていますので、基礎年金と報酬比例の調整期間が2004年改正時のように一致したらどうなるかということについての試算を実施したということでございます。
 (3)として、さらに(2)に加えまして、2019年財政検証のオプション試算において、基礎年金水準の上昇に効果が大きいことが確認されました基礎年金の保険料拠出期間を延長して45年加入とした場合の試算を実施したということでございます。
 次のスライドでございますが、右下にページ番号をつけてございまして、このページで申し上げて1ページでございますが、これは今、基本的な考え方を申し上げた追加試算の内容を書いているということでございます。
 一番上の現行制度からその下ですけれども、追加試算のマル1というのが、現在の基礎年金40年加入を前提として、基礎年金と報酬比例との調整期間を一致させた場合ということでございまして、追加試算のマル2マル3が、追加試算マル1に加えて基礎年金を45年加入とした場合で、追加試算マル2のほうが、2019年財政検証のオプション試算でも示しておりましたが、加入期間延長となる60歳から64歳の期間に係る基礎年金の給付に現在の40年加入の場合と同じように2分の1の国庫負担がある場合ということでありまして、追加試算のマル3が、延長期間に係る給付、基礎年金給付に国庫負担がなく、延長期間分の60歳から64歳分の基礎年金は2分の1国庫負担相当分も含めて全て保険料で賄う場合ということであります。
 追加試算マル1のところに書いておりますけれども、基礎年金と報酬比例の調整期間を一致させるためには、国民年金と厚生年金の財政が基礎年金拠出金の仕組みでつながっているということがございますので、基礎年金拠出金の仕組みの見直しが行われるということを念頭に置いてはいるわけなのですけれども、今回の追加試算では、基礎年金拠出金の仕組みについて具体的にどのような見直しを行うかということを仮定しているわけではございません。
 注1に書いていますとおり、国民年金と厚生年金とを合わせて見て、基礎年金と報酬比例に同じようにマクロ経済スライドの調整を行っていって、おおむね100年間の収支均衡、つまり国民年金と厚生年金とを合わせて見て、おおむね100年後に給付費1年分程度の積立金の保有となるような基礎年金や報酬比例の給付費の見通しと、国民年金と厚生年金とを合わせた収支見通しを作成しているということでございます。
 それから、注2に書いていますけれども、基礎年金と報酬比例の調整期間の一致、国民年金と厚生年金とを合わせておおむね100年後に給付費1年分程度の積立金を保有という枠組みで考えれば、基礎年金拠出金の仕組みの見直しがどのようなものであったとしても、給付と負担への影響は変わらないということでございます。
 注3でございますけれども、追加試算マル2とマル3の45年加入は、2027年度以降、60歳に達する方から45年加入に延長と仮定をしました。
 それから、注4でございますが、人口、経済等の試算の基礎数値については、2019年財政検証と同じと仮定したということを書いております。
 次の2ページ目が、試算の結果をまとめた全体像ということになっておりまして、今回の試算は、人口については出生中位、死亡中位、経済前提については経済成長と労働参加が進むケースのうち、比較的慎重なケースIIIと、それから、経済成長と労働参加が一定程度進むケースのうち、比較的慎重なケースVについて行っております。
 このページの中ほどから下のほうに数字を整理して書いておりますけれども、これを御覧いただきますと、まず、一番左側ですけれども、2019年度の足元の所得代替率が、これは財政検証でもお示ししていたとおり、61.7%でございます。これはその右側に、現行制度の場合、ケースIIIで51.0%、ケースVで44.7%まで調整される見通しとなるということでございます。
 この現行制度につきましては、2019年の財政検証では、ケースIIIで調整期間終了後の所得代替率50.8%と示しておりました。それから、2020年の制度改正の際は、制度改正で所得代替率が0.2%ポイント程度上昇の見込みということを申し上げておりましたが、この50.8と大体0.2を足して51.0%という、そういうことに対応しているということでございます。
 さらに、その右の追加試算マル1が、現行と同様に基礎年金40年加入で、基礎年金と報酬比例の調整期間を一致させた場合ということでございますが、ケースIIIで55.6%、ケースVで50.0%と、現行から上昇すると。
 内訳をその下に、比例と基礎というふうに書いておりますけれども、基礎年金が大きく上昇するという見通しとなっております。
 その右側の追加試算マル2でございますが、これは追加試算マル1に加えまして、基礎年金45年加入、加入期間が延長となった部分に国庫負担がある場合ということでございまして、厚生年金に45年加入した場合ということで見ておりますが、ケースIIIで62.5%、ケースVで56.2%と、追加試算マル1の代替率に対して、8分の9倍ぐらいの値となっています。
 囲みの中に40年加入分の数値を示しておりますけれども、これは追加試算マル1と基本的に同程度ということになります。
 一番右の追加試算マル3でございますが、これは追加試算マル1に加えて基礎年金45年加入、加入期間が延長となった部分に国庫負担がない場合ということでございますが、追加試算マル2に比べると、加入期間延長分の基礎年金給付費を全て保険料財源で賄うということになりますので、基礎年金も報酬比例も代替率が若干低めとはなっていますけれども、それでも厚生年金に45年加入した場合で見れば、ケースIIIで60.5%、ケースVで53.8%ということになっております。
 追加試算のポイントはおおむね以上でございまして、以下は関連の資料となります。
 3ページでございますけれども、この追加試算における国民年金と厚生年金とを合わせて見た積立比率の変化を見たものでございます。横軸が年度になっています。積立比率なので、前年度末の積立金を当年度の支出から国庫負担を除いたもので割った数値ということになりますので、財政検証でおおむね100年後に1年程度を見る際の積立度合いに比べると若干大きい値になっていますが、動き方といいますか傾向というのはこのようになっているということでございます。
 左側がケースIIIで、右側がケースVでございます。黒い実線が現行制度でございますが、基礎年金と報酬比例の調整期間を一致させることで報酬比例の調整期間が延長されるということなので、基礎年金と報酬比例、公的年金制度全体で見た場合ということでございますが、早期に給付水準の調整が進み、さらに、基礎年金45年加入の場合には、60歳から64歳の国民年金の保険料収入が増加するという効果も加わりまして、足元の積立比率が上昇すると。そして、これを将来活用することで、将来の給付水準が確保されるという図を示しております。
 それから、4ページと5ページでございますけれども、これらは賃金水準別に見た年金月額と所得代替率を見たものでございまして、現行、それから、追加試算マル1、マル2、マル3のいずれの場合でも調整が終了している2046年度、これはケースIIIで作成をしております。いずれのページの図も、横軸が2046年度の賃金水準を物価で2019年度の価格に割り戻した額でありまして、大きい文字で書いているのが世帯2人の場合、そしてその下に括弧で1人当たりの額で見た場合、さらにその下に、対応する2019年度の賃金水準を示しております。
 横軸の右端が、2046年水準で238万円と表示をされていますけれども、これはおおむね共働きの場合の標準報酬の上限ということになっていますので、モデル年金の計算の基礎となっているような片働きの世帯は、この図の中ほどから左のほうにのみ該当するということになります。
 中ほどから右のほうに該当するのは共働き世帯でありますとか単身世帯に限られるということになります。
 グラフでございますが、赤いグラフが夫婦2人の年金月額で、緑が所得代替率で、実線が現行、点線が追加試算となります。現行でも試算のほうでも、世帯の賃金水準が上昇すると年金額が上昇する一方で、基礎年金部分は所得再分配効果を有するということでありまして、所得代替率は低下するという構造となっています。
 4ページを御覧いただきますと、縦に青い棒が2本書かれておりますけれども、左側がモデル年金に該当する賃金水準でありまして、現行及び追加試算マル1のほうが、年金額、所得代替率ともに上昇しているということでございます。
 右側の青い棒が、現行と追加試算マル1との年金額や所得代替率が一致する賃金水準でありますけれども、世帯で見る場合には2046年水準で198万円、それから、1人当たりで見る場合は99万円ということになりまして、モデル年金に該当する水準の3.4倍ということになっています。
 そして、これより右では、現行より追加試算マル1のほうが、年金額、所得代替率が低下しますが、この図の全体を見ますと、賃金水準がモデル年金の3.4倍未満の世帯、ほとんどの世帯と言ってよいと思うのですが、ほとんどの世帯で現行より追加試算マル1のほうが年金額、所得代替率が上昇する見通しとなっております。
 5ページ目も同様に見ることができますが、追加試算マル2では全ての賃金水準で現行よりも年金額、所得代替率が上昇いたします。
 追加試算マル3では、賃金水準がモデル年金の3.2倍未満の世帯、これもやはりほとんどの世帯と言えると思うのですが、現行より追加試算マル3のほうが年金額、所得代替率が上昇する見通しとなるということでございます。
 6ページと7ページは、参考までに基礎年金と報酬比例のマクロ経済スライド調整期間の一致が意味することなどを示しております。
 6ページ目でございますが、右側のほうに、緑の長方形の基礎年金とピンクの三角形の厚生年金報酬比例の図を書いておりますけれども、2019年財政検証の段では、基礎年金と報酬比例との調整期間が異なるということですので、基礎年金と報酬比例のバランスが偏るというところ、下のほうですが、両者の調整期間を一致させるとバランスが維持されるということを示しております。
 7ページでございますが、調整期間の一致による効果を示しております。
 上のほうの図のマル1にあるとおり、厚生年金は基礎年金部分での所得再分配の機能を持っているわけでございますけれども、基礎年金の水準がより低下するということは、この所得再分配機能が低下するということになります。調整期間一致で基礎年金と報酬比例のバランスを保つことができれば、この所得再分配機能の確保によいということが言えるということかと思います。
 それから、下のマル2でございますが、公的年金を支える財源として、保険料と国庫負担があるわけでございますけれども、国庫負担は基礎年金の2分の1となっていますので、基礎年金の水準の低下は、公的年金制度全体とした場合に国庫負担が相対的に少なくなるといいますか、財源全体が少し少なくなることにつながります。調整期間を一致するということができれば、基礎年金と報酬比例のバランスを保つことができればということでございますが、公的年金全体とした場合の国庫負担の低下につながることを防ぐといいますか、トータルの給付を賄う財源が少なくなることを防ぐことができるという図を示しております。
 この2つの効果があることで、一部のかなりの高所得層を除き、先ほどの4ページ、5ページで御覧いただいたとおりでございますが、年金水準の低下を防ぐことにつながっているということになります。
 最後に8ページでございます。
 これも参考でございますが、現在の年金を受給されている方々がどのような制度に参加してこられたかということを示しておりますが、新たに受給権を得られるくらいの現在65歳の方で見た場合でございますが、1号期間ということで国民年金のみに参加していたという方は黄色く塗っておりますけれども、3.6%程度ということになっておりまして、ほとんどの方は2号や3号の期間を有していて、厚生年金に参加したことがあるという状況を示しております。
 なお、9ページ以下は今回の財政見通しなどをお示ししています。現行については国民年金と厚生年金それぞれの、それから、追加試算マル1、マル2、マル3については、国民年金と厚生年金とを合わせた財政見通しをお示ししているということでございます。
 追加試算に関する御説明は以上でございます。
 続きまして、2つの御報告をさせていただきたいと思います。
 1つ目は、財政検証につきましては、いつもその詳細をまとめた報告書、私たちは数理レポートと呼んでいますが、これを作成、公表しておりますけれども、令和元年財政検証につきましても作成をいたしまして、本日、厚生労働省ホームページに掲載して公表しております。内容的には、9月以降、この年金数理部会で御説明してきたとおりのことを詳しく冊子にまとめているということでございます。
 2つ目ですが、昨年8月27日に公表しまして、同年の12月23日の当部会に御報告いたしました令和元年財政検証と同時に行いましたオプション試算の中の参考試算の一部に数字の誤りがございました。
 具体的には、委員の先生方のお手元には「正誤」ということでお配りしておりますけれども、参考試算として平成28年改正法による年金額改定ルールの効果を見た試算を行っていたわけなのですが、このうち、経済前提でいうとケースVの代替率につきまして、賃金変動に合わせて改定する考え方の徹底について、現行の場合、代替率45.3%、仮に見直しを行わなかった場合は42.5%、改正効果プラス2.8%としていましたが、正しくは現行45.0%、仮に見直しを行わなかった場合42.1%、改正効果はプラス2.9%。それから、マクロ経済スライドのキャリーオーバーにつきまして、現行45.3%、仮に見直しを行わなかった場合、2068年度に国民年金の積立金がなくなって、仮にマクロ経済スライドがフル発動された場合には代替率が48.1%ということにしておりましたけれども、正しくは現行45.0%、仮に見直しを行わなかった場合の国民年金の積立金がなくなる年度は2065年、それから、仮にマクロ経済スライドがフル発動された場合には48.0%ということでありました。
 影響のある資料は、昨年12月23日の資料で申し上げれば、参考資料2-1の26ページ、27ページ、29ページの一部となるケースVの欄、それから、参考資料2-2のうち、この詳細結果に当たる102ページから104ページ、111ページから113ページ、120ページから122ページと、129ページから131ページということになります。
 誤りが生じた要因でございますけれども、この参考試算の作成に用いた経済前提のうち、ケースVの国民年金の足元10年間の運用利回りの仮定として、令和元年7月の内閣府の中長期試算に準拠した数値を用いるべきところ、その1つ前の平成31年1月の中長期試算に準拠した数値を用いていたということでございます。
 以上、おわびして訂正をいたします。
 なお、その財政検証及びオプション試算に関しましては、昨年12月23日の資料と同じ資料や、基礎データ、プログラムなどを厚労省ホームページに掲載していますが、本日、今申し上げた修正箇所を修正しまして、併せて、昨年12月23日の当年金数理部会の資料、昨年8月27日の年金部会の資料についても修正を行うこととしております。
 また、財政検証本体とかオプション試算AやBやその組合せ、それから、今回御報告する追加試算には影響はないこと、それから、本日、先ほど御報告したホームページで公表している詳細結果レポートは修正後のもので作成しているということを併せて御報告いたします。
 御報告は以上でございまして、私からは以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に関しまして、委員の皆様から御発言がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
 野呂委員、お願いします。
○野呂委員 御説明ありがとうございました。
 まず、今回追加試算された問題、基礎年金が減っていくことへの様々な対応ということについては非常に大事な問題かと思いますし、今回試算の前提となっているような対応も含めて、今後検討を進めるべきものであって、基本的にはこういう対応をしていくことについては賛成という立場の上ですけれども、ちょっと感想といいますか、2点申し上げたいと思います。
 例えば、今回御説明いただきました3ページの積立比率を見てみますと、2030年を過ぎたところでは積立比率が非常に上がっているということは、その分、給付には逆の影響が出ている、すなわち給付が減っているかと思います。そういう意味では4ページ、5ページに書かれています現行制度における給付あるいは所得代替率と、それから、見直し後、試算後ものでほとんどの年齢層で上がっているわけですけれども、これは2046年という、マクロ経済スライドの適用が1階部分も2階部分も終わった後の、いわば定常状態で見たからではないかと思いまして、もっと前の2030年頃で見れば、国庫負担が増えたとしても現制度よりももっと減っているのではないかと思います。そのほか、高所得層の所得代替率への影響なども含めて、もう少しデメリットといいますか、国民にとってちょっと痛みになるところもしっかり試算して検討していくということが要るのではないかと思います。
 それから、もう一つですけれども、やはり基礎年金部分が増えて所得移転効果が増えるということは、高所得層につきましては負担が増えるといいますか、不利になる面もあると思うのですけれども、年金制度改革でも審議されていますように、そういうところにつきましては自助、公助、共助のトータルで考えていく必要があると思います。高所得者に対しては、自助の部分を一層バックアップするということで、所得移転による負担をカバーする等、これは数理の問題ではないかも分かりませんけれども、公的年金と私的年金をセットで考えていただくようなで、そうした対策も併せて考えていただくと、全般として納得されやすいのではないかなと感じました。
 以上、両方とも感想でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。御意見として承っておきたいと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 永瀬委員、お願いします。
○永瀬委員 6ページの図について質問があります。右側の図と左側の図の比較が示されており、<バランスの偏り>と説明があって、報酬比例年金と基礎年金とのバランスが悪い、すなわち基礎年金が下がって報酬比例が上がるような問題の図示になっております。ただ、この図は示されている数値を反映しない図と思います。具体的な数値を見ると、現在の基礎年金の代替率が36.4%で、報酬比例が25.3%です。一方、ケースIIIですと基礎年金は将来時点で26.2%と、現状の3分の2か4分の3ぐらいに下がります一方、報酬比例については24.6%と若干下がるという説明となっているます。
しかしながら、提示されている図は、こうした現実をかなりゆがめて示すものとなっており、面積では、報酬比例部分が今の予想より大きい図となっています。しかしその面積はもっと小さいのではないかと。つまり、将来的に基礎年金が大きく下がるという図は理解できるのですけれども、他方で、報酬比例がここで示されている図のように大きく増えるというのは、パーセント表示からはそうは思ませんものです。この図との対応を考えると修正が必要なのではないかと思います。
 それから、その下の新しいオプションの推計による図ですと、基礎年金と報酬比例がほぼ同じようになっています。確かに基礎年金は、この40年加入ケース、ケースIIIですと36.4%から32.9%とほぼ横ばいと示され理解できるのですが、報酬比例は25.3%が22.6%と上の図よりももっと三角の報酬比例部分が小さくなるというオプションなのではないかなと。この左側の数字を右に入れてみるとそう思うのですけれども、それでよろしいのでしょうか、この点、確認したいと思います。
○菊池部会長 よろしくお願いします。
○山内数理課長 6ページの右側の図なのですが、概念図といいますか、イメージを、基礎年金と報酬比例部分の比率といいますか、トータルの所得代替率に対する比率、構成割合みたいなイメージで書いているのでこのような図になっているのですけれども、基本的には年金制度全体としてマクロ経済スライドで調整をしていくので、その影響というのは基礎年金部分についても報酬比例部分についても当然あると。
 他方で、現在の仕組みですと基礎年金が大きく低下をする一方で、厚生年金の報酬比例部分のほうは基礎年金拠出金の負担が若干小さくなっていくのでそれほどは下がらない影響などもあるといったようなことで、このような概念図を書いているということでございます。なので、数字を厳格に当てはめると、真ん中のほうの現行の報酬比例部分の大きさがもうちょっとどうなのみたいなそういう話はあるのかもしれません。
 他方で、その一致した場合というのは、全体の年金代替率の中での基礎年金部分と報酬比例部分の比率といいますか、構成割合というのは大体維持されますというのを、下の図で表現をしているということでございます。左と右で当然、左の現行のほうが代替率としては全体としては若干大きめなので、ちょっと見方として御指摘のような面というのはあるのかもしれません。すみません、そういうことでございます。
○永瀬委員 それではやはり国民に分かりにくいのでこの図は修正していただきたいと思います。全体には代替率が下がる事実が分かるようにしていただきたいです。しかし、バランスについて、上のケースだと基礎年金が大きく下がるけれども、下のケースだとどのみち両方とも全体には代替率が下がるとはいえ基礎年金はほぼ保持されて、報酬比例が現行よりは下がるという実態を示す図としていただきたいと思います。この図は今日初めて拝見したのですけれども、報酬比例部分の四角の大きさにはかなり違和感がありましたので検討してくさい。
 その上で、今回の試算についての私の意見を申し上げますと、基礎年金が下がるということは多くの人が懸念していたことであり、それに対する一つの解決策を提示しているという意味で、意味がある試算であると思います。
 しかしながら、2000年の頃でしたか、女性と年金検討会という厚生労働省の局長の下で開かれた会議の委員をしておりました。それ以降、女性と年金はどうあるべきかということをずっと考えてまいりました。そこで女性の年金という視点から意見を申し上げます。
2000年当時、第3号被保険者制度に対して女性自身が違和感を持っていました。そして多くの委員が集まり、マスコミにも取り上げられ、いろいろな案が出たけれども、結局なかなかいい案がなかったわけで、当時はそれがどれも通らなかったと。
 そして、成果として僅かに離婚後の年金分割だけが2004年改正で認められたという結果だったのが当時の改正です。その後、雇用が急速に劣化していきまして、第3号被保険者という身分が女性にとって、当時と比べて、権利がある人にとっては老後の年金を拡充する重要性が増したという側面もあります。しかしその一方で第3号被保険者や第2号被保険者という身分にならない第1号、つまり非正規で仕事を始め、仕事を続けるシングル女性は男性よりは女性のほうが多く、しかもその後も非正規の人が増え、かつ、結婚も減っています。さらに夫の賃金が低いので第3号を抜け出して低賃金で1号や2号で働く女性も増えている中で、女性の年金は低いものとなっています。このように大きく労働市場や家族形成が変化していく中において、今回のこの提案。これは第3号がいる世帯、モデル年金世帯における給付の拡充を非常に重視していますが、それはやや視野が狭いと思います。
 というのは厚生労働省も、2016年10月以来、パートの厚生年金への適用拡大をずっと進めてきて、今回の改正で今後一層すすむことが決まりました。改正は非正規労働者が正規の仲間入りをする、被用者の仲間入りをするという意味でとても重要な政策なのではないかと私は思ってきました。しかし一方で、パートの主力を占める主婦にとっては、第3号の恩典がなくなり第2号として社会保険料を支払う選択でもあります。今回の提案は、第3号部分の給付を上げて、そして被用者が支払う保険料に対応する報酬比例部分の給付を下げるというものである。主婦パートの年金加入の推進という視点からは矛盾があるものとなります。
 今回の案は、また将来の基礎年金額が上がることで、自動的に税金の投入が(税金のあてがあるわけではないですが)増える、だから年金が増えるという案です。一つのオプションとして意味のある試算と思いますけれども、女性の現役期の働き方と将来年金という視点でも検討する必要があると思います。主婦は、社会保険料を払わずに基礎年金が得られるメリットがあることから、第3号被保険者にとどまるよう就業調整をしたりもしてきました。そして企業も最低賃金近傍でパートを雇うことをしてきたのです。パートが低賃金にとどまり、そうしたパート労働者が増えることで、日本全体の賃金も上昇しない圧力となる。このことを考えますと、今まであった矛盾が、ある意味ではそこに対する検討がないままにモデル年金というのを100年続けるという視点になっている点において問題があると思います。
 具体的には、老後の年金は女性は少し良くなるかもしれませんけれども、現在の働き方として、主婦層の就業調整が起きる、社会保険料を払いたくなくなる。それから、非正規の低賃金という状況の改善への視点に欠ける。現在の働き方に年金制度は大きな影響を与えますので、そういった意味において、今回示された試算は一つの重要な試算だとは思いますけれども、しかしモデル年金だけを視野においている点で狭いのではないかと。すなわち、働き方が大きく変わって女性の働き方も大きく変わって、家族形成もすごく沈滞してしまっている。つまり、第3号という形での家族形成というのはなかなかできてきていないという中において100年先の年金を考える上では、もう少し広い視点で異なる試算も考えていただけると私はいいのかなと。私のこれまでの2000年からずっと女性と年金の在り方というのを考えてきた上で、このことは申し上げたいと思います。
 以上、意見でございます。
○菊池部会長 何か事務局からありますか。どうぞ。
○山内数理課長 ちょっと細かい話で恐縮なのですが、6ページの図のお話ですけれども、先ほど代替率で申し上げれば調整されるのでみたいなお話はしたわけなのですが、これは異時点間の給付の水準を比較するというのはなかなか難しい話があって、実際にその実質額で比べるとそんなに変わらないとか、そういう見方は当然あり得るわけなので、そこは先ほど委員から御指摘いただいた点などを含めて、誤解のないようにきちんと説明していくということで考えていきたいと思います。
 それから、もう一つ御指摘をいただきました働き方とかそういったことと、年金の関係でございますが、4ページや5ページの図というのは、これまでもいろいろなところで御説明を申し上げてきましたけれども、年金水準を測る物差しとして、このようなモデル年金というのが一応規定されておりますので、それでこれまでも比較してきましたし、今回もそのような形で比較をさせていただいているということでございます。
 ただ、他方で基礎年金の所得再分配効果というのは、2号被保険者も含めて、それから、2号被保険者のいろいろな働き方も含めて皆さんに共通するものなので、その水準が上がるということは、あらゆる方というか厚生年金に加入する多くの皆さんの代替率といいますか、年金水準にプラスの効果が生じるという面があるということはこれまでも御説明してきたということなので、いろいろな角度から、今回はこういう試算をお出ししましたけれども、当然いろいろ、今、御指摘いただいたような課題も含めて、いろいろな世帯がある中でどういう年金水準で考えていくかというのはこれまでも課題でしたし、これからもよく考えていくべき課題だということでは認識はしているということでございます。
○菊池部会長 これは試算の出し方ということにも関わりますけれども、今、数理課長からもお話があったように、これをこういう形にするのかどうかは分かりませんけれども、制度論、法令改正を伴っていくものでもあるので、今の委員が御指摘の視点は重要なものとして受け止めていただいて、今後に生かしていただくということにしていただき、また、この試算は、この後議論しますピアレビューの中でもどういった形で生かせるかというのを少し考えてみたいと思いますので、補論として扱うという部分もありますので、またそこで少し議論させていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
○永瀬委員 一つだけよろしいですか。
○菊池部会長 どうぞ。
○永瀬委員 この基礎年金の上昇というのは全ての2号にとってプラスであるとおっしゃって、それはそうだと思うのですけれども、やはり3号のいる2号世帯と、3号のいない2号世帯とでは、3号のいる2号世帯にとっては2人分の上昇になって、報酬比例は下がるけれども2人分の上昇になる。しかし、3号のいない2号にとっては報酬比例が下がって基礎年金部分が上昇になると。再分配が拡大するという方向は私はいいことだと思うのですけれども、その辺について差があることが、特に3号だったパートの人がパートとして適用拡大されるときにどういうことを考えるのかということ、つまり、ルールを決めれば、得になるよう人も企業も仕事の時間で調整ができるので、どういうことを考えるのかということはよく考えて検討し、労働市場への視点を持つ制度設計にすべきだと考えます。
 あと、この4ページ、5ページは今までも示してきたということはそのとおりなのですけれども、私は今までも、やはり600万円の年収で妻が無業の世帯と、夫300万円妻300万円の就業の世帯は賃金が同じだから年金が同じであれば、公平という前提に合意できません。やはり夫が600万円の就業で妻が無業であり、妻が働こうと思えば働けるけれども、働かないほうの家族の効用が高いので働かないことを選んでいる世帯の厚生の水準は、夫婦両方が合計で倍の労働時間働いてようやく世帯で同じ収入水準を達成している世帯と比べると、より豊かだと思います。ただし、そこが例えば子育てをしているなど働けない事情、働けないけれどもケアなど重要な無償労働に関わっており時間がないということであれば、これは国民全体で社会保険料拠出を配慮することは国民の支持を得られるだろうと思います。例えば、一人親世帯であっても、1号であってもそうした事情は考慮すべきことだと私は思います。
 しかし、そうではなくて、昔、男性1人のモデル年金が「夫婦2人分」という前提であり、1985年改正で当時の「夫婦2人分」より下げないと定めたから、今もってなお第3号であれば59歳まで社会保険料免除できるという制度。そして今や様々な人から構成される第2号から全員で第3号への給付を拠出するという制度が、本当に女性にとって、100年後の女性の働き方にとって本当にいいものなのか疑問を持ちます。それからあと、国民全体で子育てを支えるとかケア活動を支えるという社会保障の在り方として、1号も含めてすべきなのではないか、ということ。私もそろそろ、この研究をしていて非常に長い時間がたちましたので、大変僭越ではございますけれども、意見として申し上げたいと思いました。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 ほかにはいかがでしょうか。
 小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
 年金数理部会という場ですので、数理的な観点からだけお話をしたいと思います。
 私もこういう試算があったらいいなと思っていたところですので、この結果については非常に納得感があるということとともに、非常に好ましい結果が出てきていると感じます。
 ただ一方で、ここから離れてこれを実現するための政策手段だとか合意形成だとか、こういったことに関しては決して易しい話ではないだろうなと思います。年金数理部会の委員としては、今後決定されるような仕組みの中で、これが年金の財政の中にどのように影響していくかという観点で引き続き関わっていきたいと思います。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 前半部分の追加試算の部分と、それから、今回のピアレビュー全体についてのコメントがあるのですけれども、取りあえず今は追加試算のところの議論ですので、ピアレビュー全体に対する評価は私自身の見解はちょっと時間もかかりますので後に回して、取りあえず追加試算の部分だけコメントしたいと思います。
 マクロ経済スライドが基礎年金に長くかかってしまうという問題点、これは年金部会でも私も大変重要な点であると指摘しました。年金部会では私自身の論考は発表しませんでしたけれども、2019年9月に、同時停止をした場合の状況というのを推計しましたら、新聞に論考を掲載しました。その推計では、代替率の変化という意味では同じ結果になると確認しました。具体的にそれをやるためには基礎年金をめぐる厚生年金、国民年金の両方の積立金の扱いを工夫しなければいけないということになります。具体的に言うと、財政調整か統合かというアイデアがあるのではないかと思います。
 その後、年金部会においても一部の委員から、本当に積立金の統合みたいなアイデアはあるのかという議論があったのですけれども、そこは議論が深まらなかったと思います。いずれにしても、基礎年金の低下、しかもこれは財政構造上の問題による低下は恐らく重要であるという問題意識があったのだろうと思います。我々年金関係者の中でも、あるいは国会の中でもそういう議論があったと記憶しています。そういう意味では、今回、きちんと同時停止の効果を見ていただいた試算が公表されたというのは大変重要な意義があると思います。
 一方で、今まで議論があったように、永瀬委員の3号のお話、女性と年金の話はもう女性と検討会から20年もたったので懐かしい話でありましたけれども、永瀬委員や、あるいは野呂委員がおっしゃったような基礎年金の低下をどう評価するのかという点で、例えば、自助へのさらなるアクセスとか、あるいは厚生年金の加入インセンティブに与える影響というのはあるだろうと。いう見方もあるとは思います
 ただ、社会保障全体を見ていて、私は生活保護のほうにも関わり、障害者のほうにも関わっているわけですけれども、日本の基礎年金というのは所得保障の中核を占めていますので、ここがずるずると下がっていくことになると、障害者福祉も生活保護にも甚大な影響を与えるということになりますので、やはり基礎年金の低下を抑えていくという目標は極めて重要、プライオリティーの高いものだと思っていますので、今日の追加推計は極めて価値のある、今後、具体的な政策議論をする手がかりになるのだろうと思いました。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 私も生活保護、障害福祉に少し関わらせていただいている中で、やはり基礎年金の重要性という所得保障の根幹というのは、確かにその御認識は共有させていただくところであります。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この件に関してはひとまずここで締めさせていただきたいと思います。
 続きまして、報告書案につきましての審議を行いたいと存じます。事務局から説明をお願いいたします。
○山本首席年金数理官 私から報告書案につきまして御説明申し上げます。
 報告書案につきましては本日配付しております資料2のとおりでございまして、これは4回の作業班におきまして委員参画の下で起草したものでございまして、委員の皆さんには御覧いただいているということもございますので、資料2につきましては配付をもって説明に代えさせていただきたいと思います。
 本日の説明では、その一部を抜粋集約しました資料3に基づいて説明を進めさせていただきたいと存じます。
 表紙をおめくりいただきまして、2ページでございます。ピアレビューにつきましてですが、年金数理部会では公的年金の安定性の確保に関して検証を行うということでございまして、これに対応するものでして、平成16年、平成21年、平成26年に続く4回目のものということでございます。
 3ページですけれども、本報告書の構成は全部で第1章から第5章までございます。
 第1章は令和元年財政検証の結果ということでございまして、概要の確認に加えましてこれまでの財政検証の比較ですとか、あるいは財政検証に含まれる不確実性と感応度分析といった形のものも含まれるものでございます。
 第2章は本部会の安定性の確保に関わるところですけれども、公的年金制度の安定性について記述した章です。
 第3章は将来見通しの作成過程ということでございますが、公的年金制度の安定性について見る際には将来見通しに依拠しますので、その作成過程についても検証を行っていると。その結果が3章でございます。
 第4章は、財政検証の結果がどのように開示されているのかという、そういった点で見たものでございます。
 最後に、第5章として今後の財政検証に向けて、提言といったことが書かれているという、そのような構成になっているところでございます。
 続きまして、4ページは、第1章につきましての要旨を書いたものでございます。この詳細の分析は多数ございまして、これにつきましては後ほど15ページ以降で御覧いただくということにいたしますが、まず、ここではまとめの部分ということでございまして、これまでの検証結果の比較という意味では、令和元年財政検証では、前提については平成26年のときと比べまして出生率が向上し、労働参加が高まっているといったことがありましたし、実質賃金上昇率は若干低下しているなど、そういったことがあったと。
 結果として、2つ目のポツにありますけれども、公的年金被保険者数は上方シフトし、そのうち厚生年金被保険者の割合は上方シフトしているが、1号被保険者と3号被保険者は下方シフトしているなどのこともありまして、給付費について将来的には被保険者数の変化に伴って上方シフトしているということでございますが、足元の約20年間において賃金と比較した相対的な給付水準の上昇に伴って上方シフトが見られると。そのようなことが見られているということでございます。
 それから、下半分にございますとおり、財政検証結果に含まれる不確実性と感応度分析についてもしておりますけれども、ここではその留意点といいますか、結果に関する留意点ということで書いておりますけれども、財政検証結果はいろいろ前提を変えたりして見ているのですが、それについて所得代替率を見ると、変化する部分の多くは基礎年金部分から生じると。財政がよくなっても基礎年金がまず大きくよくなり、財政が悪くなったら基礎年金のほうが大きく悪くなるという結果が見られたということですが、この理由として2つ考えられるということです。
 一つは、基礎年金の給付水準が先に決まって、その後、報酬比例部分の給付水準が決まる仕組みになっているということ。
 それから、基礎年金の給付水準が遠い将来まで続くということで、遠い将来の給付規模が小さいところで財政効果を得るためにより多くの調整をしなければならないなど、そのようなことが分かったと。そういうことが書かれているところでございます。
 それから、5ページの第2章ですが、公的年金の安定性ということでございまして、まず、評価の視点がここに書いてございますけれども、「持続可能性と給付の十分性が、将来にわたり、ともに保たれている状況にあること」と定義した上で、持続可能性、給付の十分性それぞれについて確認をしているということでございます。
 評価の結果ですけれども、持続可能性については人口や経済のところに影響されるのですが、財政均衡を確保する観点から深刻な状況に陥るのは、経済環境がケースVIのように著しく低迷する場合であるということです。
 それから、給付の十分性に関しては、所得代替率50%を基準とすれば、今後の社会経済情勢次第であると言えるということでございます。
 この基礎年金における今後の給付水準調整の程度が、厚生年金の報酬比例部分に比べて大きいことにも引き続き懸念が残るといったことも書いてございます。将来の給付水準調整の程度が、低所得者層ほど大きくなると見込まれるといったことで、今後、低所得者層での給付の十分性が懸念されるといったことが書かれているところでございます。
 それから、6ページにつきましては、将来見通しの作成過程ということでございまして、大きく分けると3つです。
 1つ目の枠は、データの十分性及び信頼性の評価ということでございます。
 評価結果について申しますと、報告を受けた範囲においては、使用されたデータは公的年金の実態を的確に反映するものとして、関連性のあるデータソースから適時適切に集計されといったことが書かれておりまして、また、適切に加工・補正・補完等が行われているといったことでございました。
 また、データについて、整合性及び合理性の確認など適切な管理が行われていると考えられるということでございます。
 7ページは、設定された仮定(前提)の適切性ということでございまして、これも評価結果を申し上げますと、設定された仮定(前提)は、社会経済等の現状及び将来見通しを作成する期間にわたる傾向は考慮されており、これらの間に特段の不整合は見当たらなかったといったことでございます。
 それから、以下に書いてございますのは5章の提言にも関わりますので、これはそちらのほうで紹介させていただきたいと存じます。
 それから、8ページに参りまして、3つ目の視点が推計方法(数理モデル)の適切性の評価ということでございまして、これも評価結果としましては、推計方法は財政検証の目的や法令等の要請に即したものであると考えられるということでございます。報告を受けた範囲において推計方法は適切であるということでございました。
 ただ、積立金額の取り方については、長期的な観点で攪乱要因になり得ることに留意が必要であるということでございます。
 それから、9ページは第4章、情報開示の適切性ということでございます。
 評価結果の点につきましては、公表資料は財政検証の目的に照らして十分な内容であるという評価でございましたけれども、理解のしやすさ等に関してはここに書かれているとおりの評価となってございます。これも5章に関連することでございますので、後の提言案のほうで説明させていただきます。
 10ページは第5章、今後の財政検証に向けてということでして、提言が記載されております。
 まず(1)でございますけれども、基礎年金の給付水準の長期化に伴う基礎年金水準の低下への対応について引き続き検討が必要であるということでございます。
 将来の給付水準を引き上げるための考慮要素を単純に列挙すると、「国民年金の保険料水準」「足元の基礎年金の水準」を別にすれば、「国民年金・厚生年金の被保険者の範囲」「基礎年金の拠出期間」「基礎年金拠出金の負担のあり方」があり得るということでございます。
 このうちの一部は、令和元年のオプション試算でも試算結果が示されておりますし、また、今回のピアレビュー、先ほどの説明を聞きましたけれども、試算が報告されているといったこともございます。
 これに関しまして、先ほど2章のところで申し上げていませんけれども、お聞きしました内容につきましては、第2章の資料2-3の119ページから121ページに補論という形で追加試算の概要を掲載しておりますことを補足させていただきますが、そういったものが報告されたということでございます。
 ここでの提言としては、制度の在り方を検討する上で有用と考えられる試算を幅広く提示しつつ制度改正に向けた合意形成を図り、公的年金が持続可能性と給付の十分性を兼ね備えたものとなるよう取り組むべきであるということです。
 その次ですけれども、これは先ほどの永瀬委員の意見にも関連する部分でございますけれども、そうした試算を示す際には、制度を改正することによる給付や負担の変化について、世帯や就労が多様であることにも留意しながら詳細な分析を示すべきであるといったことも書いているところでございます。
 続きまして(2)は、性別、世代別、年金額階級別の分布推計、将来の年金額の分布ということでございますけれども、我が国の公的年金制度の給付水準が低下していく見通しがある中で、今後の政策を検討し、あるいは政策の効果を確認するためにも、年金額の分布推計は極めて重要と考えられるということで、迅速な取組を期待したいといったことでございます。
 以下、推計の手法などについて記載をしている部分がありますが、今は説明を割愛させていただきます。
 それから、11ページの(3)でございますが、経済前提の設定に関するさらなる研究・検討ということでございます。
 経済前提につきまして幅広い設定がなされているところではありますけれども、実質賃金上昇率の実績と近年の財政検証での前提に乖離が生じて、それによって給付費の推計にも乖離が生じていると。これは後で申し上げますけれども、給付費の推計にも乖離が生じていることを踏まえれば、実質賃金上昇率がさらに低水準である前提の追加も検討すべきであるといったこと。
 それから、次に、長期の運用利回りの設定においてGPIFの実績を使っている部分がございますけれども、実績をそのまま用いるのではなくて、当時の基本ポートフォリオと今後の基本ポートフォリオの相違を補正するといったことも検討するべきであるといったことがございました。
 それから、なお書きとして、これは社会保障審議会年金部会年金財政における経済前提に関する専門委員会で、高齢化等に伴い将来のTFP、全要素生産性上昇率の低下の可能性を指摘する意見がございまして、足元の低下傾向に留意しつつ、今後の推移を注視していく必要があるといった報告がなされておりますといったこともあるということで、これらの点も含めて経済前提の設定に関しては、今後も研究・検討を行っていくことが望まれるということでございます。
 次の(4)でございますけれども、積立金の初期値の設定方法ということでございまして、将来見通しの出発点となる積立金について、時価に基づく一時点の実績、令和元年の場合は2017年度末の実績でしたけれども、それを参照しているため、金融経済情勢の変動による影響を受けやすいということでして、このことが長期的な観点で財政を評価する上での攪乱要因にならないように、一定期間の時価の平滑化を行う評価方法などとするなど、マクロ経済スライドの最終年度の決定にふさわしいものとなるような工夫が必要であるといったことでございます。
 それから、次の(5)につきましては、推計方法について改善が望まれるといったことでございます。
 それから、次の12ページに参りまして、確率的将来見通しでございます。
 これにつきましては、これまでのピアレビューでも確率的将来見通しの検討というのが提言されてまいりましたけれども、令和元年財政検証でも課題が多いといった見解が示されているということでございます。こうした経緯を踏まえて、確率的見通しについて詳細な検討を行ったということでございまして、将来の趨勢に関して確率変動させるような実用的な方法は見当たらず、また、結果の妥当性を評価または判断することは難しいと考えられることから、現状の技術の下での確率的将来見通しを財政検証で作成・公表することを前提とした提言を引き続き行うことに対しては、現時点では慎重にならざるを得ないという結論に至っているということでございます。
 しかしながら、この技術に関しましては、将来的な進歩の可能性といったこともございますので、継続的に調査研究が必要といったことがあると考えられるということです。
 それから、前提がランダムに推移する試算というのは、不確実性の程度を把握する参考にはなり得るということで、財政検証の検証においては有益と考えられるということでございます。
 そして、令和元年財政検証では、経済前提が6通り設定されておりまして、その基礎となった全要素生産性上昇率の過去の発現頻度を示す取組が行われておりますけれども、こういった取組も拡充して、将来の事象の起こりやすさの程度の推測に資する情報を蓄積することも大切であるということでございます。
 (7)につきましては、マクロ経済スライドの最終年度の決定方法ということで、これは前回のピアレビューでもあったことと同様の指摘がされているということでございます。
 続きまして、13ページの「(8)情報開示の方法や内容を分かり易くする工夫」でございます。
 将来の給付水準につきまして、賃金の対比である所得代替率で見れば低下しますが、物価で割り戻した年金額はほとんど低下しないと。一方で低下し一方で低下しないということについて、一般の者にとっては理解が必ずしも容易ではないということなのですが、これらの指標はいずれも固有の情報価値を有しているのですが、複数の指標を利用する場合にはそれぞれの指標の持つ意味や両者の関係などを丁寧に説明していくことも大切であるということでございます。
 2つ目にありますとおり、今のような現象が起こっているのは、将来の現役世代の賃金での購買力が上昇する見通しとなっているからですけれども、公的年金の将来見通しは超長期に及ぶということで、現在と将来では社会経済環境は大きく異なっていて、異時点間の数値の比較というのを実感の持てる形で表現することが重要であり、そうした観点から公表内容を分かりやすくする工夫が望まれるということでございます。
 次の(9)は、有限均衡方式の特性についての説明でございます。
 これは、前回のピアレビューでも、有限均衡方式の特性について正確に周知されるべきという指摘がございましたけれども、前回想定されておりましたことは、財政均衡期間の終了年度が財政検証ごとに5年延びていくことによって、それ以前の終了年度の積立度合いを高めるため給付調整が進んでいくと。それによって所得代替率の見通しが低下していくという指摘があったわけです。そういった点がまだないということ。
 あと、本報告書の分析からは、出生率が高まるといったことによって、給付費の見通しは60年以上のタイムラグをもって上方シフトするということなのですが、保険料収入のほうは20年後以降に上方シフトしていると考えられまして、有限均衡方式という限られた100年間という中で見ると、保険料の変化と給付費の変化が対応していないと考えられるということで、こうした点も含めて有限均衡方式の特性については適切に説明されるべきであるというふうにしております。
 それから、14ページでございますけれども、(10)は前回の財政検証からの変動要因分析ということでして、今回、財政検証でプラスマイナスの影響が示されていますが、それに加えて要素ごとの定量的な影響を具体的に示すことが極めて重要で、これが財政検証時に示されることが望まれるといった提言でございます。これがなされれば、先ほど説明しました「有限均衡方式の特性についての説明」への対応にもなり得ると考えられるということでございます。
 (11)は実施体制でございますけれども、これにつきましてはこれまで行ってきたことを実施するだけでなく、前述の提言事項を実現できるような体制とすべきであるといったことが書かれております。
 (12)のその他ということですが、第3章で幾つか指摘されていることについて、それらへの対応が必要ということで、御覧のとおりのことが指摘されているということでございます。
 以上が提言ということでございまして、報告書の構成としてはおおむね以上のとおりなのですけれども、あと、第1章、第2章に多数の分析資料を入れておりまして、ちょっと時間の都合で全部は紹介できませんけれども、その点を幾つか紹介させていただきたいと思います。
 まず、24ページは、厚生年金の被保険者数の将来見通しを、平成16年の財政再計算、平成21年の財政検証、平成26年の財政検証、令和元年の財政検証でどのような見通しになっているかを比較したものでございまして、回を重ねるごとにおおむね上方シフトしていることが分かるかと思います。
 25ページに参りまして、今回、平成26年の財政検証から令和元年にかけてだけではありますけれども、厚生年金の被保険者数の見通しの変化の要因というものを分析しております。この黒い実線は大体500万人前後で上方シフトしているということを表しておりますけれども、なぜこの500万人前後が上方シフトしているかという要因を示しているのがこのグラフでございます。近い将来のところではグレーで表示しておりますけれども、雇用者に占める厚生年金被保険者数の割合が変わったという影響が大きくなっておりまして、遠い将来、これは出生率なんかを含めますけれども、「人口の前提の変更及び実績との相違」といった影響が大きくなっているということがここから分かるということでございます。
 31ページまで飛んでいただきまして、厚生年金の給付費についてもやはり同じように要因の分析をしているところでございます。ただ、ここで言う厚生年金の給付費というのは、あくまでも賃金で割り戻した2004年度価格ということでございまして、名目額ではございません。それについて変化の要因を分析しております。
 このうちの青い部分、オレンジの部分、灰色の部分というのは、先ほどの被保険者と同じようなものを表しておりますけれども、被保険者数の上方シフト要因ということで挙がっている部分があるということですが、被保険者数よりも遅れる形で給付費が上方シフトしている要因となっております。
 もう一つは、紫で表示しておりますけれども、経済前提が変わったこと、そうしたことによる影響というのがございまして、これにつきましては2040年頃まではおおむね上方シフトする要因になっておりますして、それ以降は下方シフトの要因となっておりますけれども、これにつきましては、既裁定者の年金額改定率の相違によるところが大きいということでございます。
 33ページにも基礎年金給付費について同じような分析をしておりますけれども、基本的に同じ、色で表示していることは同じですけれども、青い人口の前提だとか、グレーの被保険者数割合というのは将来的には高いほうに行っておりますけれども、これは国民年金の財政が改善してマクロ経済スライドが緩やかにする効果というのも入っているところではございます。紫の部分が2040年まで上方シフトの要因になっているのは厚生年金と同じ理由でございまして、以後大きく下方シフトしている点は厚生年金と違うわけですけれども、これにつきましてはマクロ経済スライドによる給付調整が進むことになるためということでございます。
 今の紫の部分で見ていただきましたように、給付費について特徴的な動きをしておりますので、34ページ以降に掲載しておりますけれども、その給付費が上方シフトになっている要因の背景といいますか、それに関連して財政見通しの中で給付水準がどうなっているのかを考察しているところでございます。
 給付水準が上がったり下がったりするのですが、その分析した要因としては3つありまして、マクロ経済スライドの効果の変化ですね。マクロ経済スライドが効きにくくなっているとかそういったことも含まれますが、それがマル1です。
 マル2が、既裁定者の年金額を物価で改定するということなのですが、その物価と賃金の差の部分がどうなっているかによって若干その影響があるということです。
 マル3が、マクロ経済スライド適用前の年金額の水準の変化ということで、これはマクロ経済スライドに関わりなく、年金額の改定のルールに起因するところですけれども、そういった3つの要因に分けて分析をしております。
 その結果、基礎年金の例だけ紹介いたしますが、35ページのとおりでございまして、左側のグラフが新規裁定者の年金額水準の分析、右側が既裁定者で、2004年度に受給権を得ていた者を念頭に置いていますけれども、その分析でございます。
 左側の新規裁定者の場合は、青で示しましたようなマクロ経済スライド適用前の年金額の水準というのもありますけれども、どちらかというと黄色で示しましたマクロ経済スライドによる効果の変化といったほうが大きくなっているということでございます。
 右側も、それぞれの要因から一定の寄与が認められるわけですけれども、比較的大きいものは既裁定者の年金額を物価上昇率で改定する効果の変化というのが大きくなっているということが分かったということです。
 あと、若干項目だけの紹介になってしまうかもしれませんが、45ページです。こちらには、感応度分析といったものを新たに付け加えております。このページは経済前提ですね、物価上昇率、賃金上昇率、運用利回りの例でございますけれども、こうした率が機械的に、例えば、0.5ポイント上昇あるいは低下したときに所得代替率がどう変化するのかといったところを見るといった手法ですけれども、そういったものを加えておりまして、例えば、実質賃金上昇率が0.5ポイント上昇すれば、所得代替率は1.7ポイント以上上昇すると。0.5ポイント低下すれば所得代替率は3.1ポイント低下するといったことなどが分かっているということです。
 以下のページに、ほかの項目についても感応度分析は加えているということです。
 あともう一点だけ。52ページに入れておりますのが給付費のGDP比ということでございますが、ここでは給付費や国庫負担、国庫・公経済負担について、日本のGDPに対する比率というのを、これまでの財政検証の結果と比較対比する形で掲載をしているということでございます。
 53ページ、基礎年金給付費のGDP比というのを見ておりますけれども、マクロ経済スライドの効果などもありまして、財政検証を追うごとに下方シフトがついているということが分かるということでございます。
 54ページに、国庫・公経済負担のGDP比も掲載しておりますが、基本的にはこれは基礎年金給付費の2分の1ということで、基礎年金と連動した動きがあるということでございますが、御覧のような結果になっているといったことでございます。こうしたような分析を新たにするということを1章、2章ではしているということでございます。
 以上、ちょっと雑駁な説明でございますけれども、報告書についての概要を御説明させていただきました。よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 これまで作業班で検討を進めてまいりまして、委員の皆様からは様々な御意見等をお出しいただいております。また、本日の部会に至るまでも個別に追加の御質問をいただき、それに事務局が応答をさせていただくという形で進めてまいりまして、大方の御了解はいただいているものと認識してございますけれども、この報告書案に対しましてさらに御意見等がございましたら、あるいは御感想でも結構ですので、今日取りまとめさせていただきたいと思っておりますので、できれば委員全員の方から御発言をお願いできればと思います。いかがでしょうか。どなたからでも結構でございます。
 駒村委員、お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
 報告書案についてはこれでよろしいかと思います。やはり少し難しい部分はどうしても残るかなと思います。167ページ、第5章の表示方式です。物価と賃金で評価する点については本当に丁寧に説明をしないと、物価で割り引いた年金の購買力という、今買えるものの組み合わせを将来も買えるのかという意味での購買力と、それとは別に賃金での購買力という2つの購買力があって、賃金が上昇して、社会が豊かになっていけばよりいろいろなもの、新しい機能を持った商品などが買える社会になる。ある種、賃金で評価した相対的な意味での購買力という2つの購買力がある中でその価値をどう評価するかとが重要です。年金というのは所得代替率を一つの目安にしていると、賃金上昇の購買力に比較するとやはり代替率は下がってくるというのが、そこをどこまで抑えるかというのは、この50%を目標にしているという点になります。ここをちゃんとうまく伝えておかないといけない点かなと思いました。
 そして、先ほどの追加試算のところで、小野委員が、この追加試算で出てきた課題をどう世の中に伝えていくのか、正当化していくのかというお話があったわけですけれども、まさにそのとおりだと思います。1985年に基礎年金ができて40年加入になり、まもなく40年になります。制度が移行期から完成期に向かい、基礎年金はまさに1号、2号、3号の全員の所得を保障する制度になった。振り返ると、1985年から約20年たった2004年にマクロ経済スライドが導入されて、国民年金、厚生年金がそれぞれ有限均衡方式の中で保険料を固定して給付の目標を立てて積立金1年分を100年後にもという形で財政構造を変えたわけです。
 しかしながら、そのときは国民年金、厚生年金、当時は共済年金とばらばらに財政を閉じるという構造になっていたわけです。
 しかしながら、当然ながら人が移動するわけでありますし、国民年金と厚生年金だと経済変動に対する調整のメカニズムが違うわけです。1985年に導入された基礎年金拠出金というフローの調整だけで財政を閉じてしまっていたのに、有限均衡方式という形で資産と債務のバランスを確認するというのは、やはり構造上ちょっと無理があったのではないかと思います。報告書にもありますけれども、その後、国共済、地共済同士のこの間の財政調整などをやって、そういう部分での安定化というのは図られていたわけですけれども、厚年と国年の間のメカニズムのより違う部分については十分な調整が出てなかった。それが基礎年金のスライドの長期化という副作用として出てきているということだと思うのです。
 今年は2020年でこういう議論ができているわけでありますけれども、次の2025年は基礎年金成立して、40年で、私も菊池先生も同じ世代ですけれども、まさに基礎年金で40年間カバーされた世代がゴールを迎える。40年の折り返しの2004年改革のときに、やっておけばよかった基礎年金への拠出金の財源構成の見直し、すなわち共通年金となった基礎年金の積立金みたいな発想がもっと早くあったほうがよかったのかもしれないと思います。
このことによって、恐らく、年金財政のレジリエンスというのでしょうか、復元力が向上する。ばらばらで閉じているよりは安定性が増すと思います。基礎年金の給付水準が維持できれば、働き方やあるいは所得保障についての安定性、これも社会のレジリエンスに貢献できると。
 それから、積立金の一部を共通化することによって経済変動に対しての安定性、これもレジリエンスです。要するにポストコロナではどういう状況になるか分からない。この次の財政検証はかなり難しいものも出てくると思います。積立金の部分的な共有化という選択肢を今回議論して、あとはそれをどう説明して、理解してもらうのかが重要になると思います。基礎年金というのがいろいろな働き方をして動いている中の共通ファンドであるという性格を持ったものだという発想を正当化、根拠づけるためのエビデンスとか、そういったものを用意していかなくてはいけない。
 先ほど事務局から、追加資料の8ページに、基礎年金しかない人というのはごく僅かですという話をされましたけれども、世代ごとに1号、2号、3号の期間のバランスがどう変化してきているのかというのも分析する必要があります。そのためには今回報告書に出しているように、年金機構の加入データを実際にパネル化して追跡するとか、そういう形で分析する必要があるだろうと思います。
 あと、ポストコロナの社会では、積立金が社会経済へのレジリエンスに今度は逆に貢献するという可能性もある。そういう議論をやっている国もありますし、中央銀行がそういう関わり方をしている、年金積立金がそういう関わり方をしている国も出てきている。サステナブルファイナンスに関わる話ですけれども、そういう積立金がどうあるべきなのかというのは少し、この部会の場ではないですけれども、年金制度全体として考えるところはあるのではないかと思います。どうしてもその手前の年金財政検証だけを見ていくと、タイムホライズンの悲劇というか、その見ている人、関わっている人の時間的視野が違うのでなかなかその議論が深まらないかもしれませんけれども、これはもしかしたら大きな政府の方向変化なのかもしれません。
 いずれにしても、今日の追加試算は基礎年金の水準を維持するという意味では新しい選択肢、今までになかった選択肢が提示されて、そういうのも含めた非常に充実したピアレビューだったかなと思います。ピアレビューはこれまであまり注目していただけなかったのですけれども、ぜひこの機会に議論のスタートラインに立って、次の5年をめどに視野に入れながら議論のテーマにしてもらいたいなと思いました。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 1点目は特にないですかね。購買力云々というのは特によろしいですか。
○山本首席年金数理官 はい。
○菊池部会長 どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。
 枇杷委員、お願いします。
○枇杷委員 御説明ありがとうございました。それから、今回、非常にたくさんの分析とビジュアルにも大分苦労をされて、非常に分かりやすく情報量の多い結果になったのかなと思います。
 私として特によかったなと思うのは、このピアレビューのクライテリアです。これをかなり具体的に今回お示しいただいたので、ピアレビューしているというこの年金数理部会の役割も、より具体的に国民の皆さんが理解できる方向になっているのではないかというところです。そこは非常にいいところだなと感じております。
 今後の課題の中で報告書の中にも書いてあることと若干重複はするのですけれども、特に私としてここは大事かなと思うところを申し上げたいと思います。
 制度論は恐らくほかの方からもコメントがたくさんあると思いますので、そうではない部分なのですけれども、一つは、データの信頼性ですとかデータの入手の網羅性という辺りです。この辺はまだやはり少し課題はあるのかなと思っております。この辺はなかなか手間がかかるという部分とか時間がかかるという部分も含めて、今、世の中はDX、デジタルトランスフォーメーションという流れもありますので、こういう流れなんかに乗っていきながら、より幅広いデータを適時取っていけるような体制を引き続き構築していただきたいと思いますし、シミュレーションのバリエーションを増やすということも、これは御担当者のスキルアップとか体制の向上も含めてなのですけれども、ぜひ引き続き取り組んでいただけたらいいと思います。
 もう一点だけなのですけれども、情報開示の在り方で、そういう意味では非常にたくさんの情報が入ったので政策を考える方とか、研究をされる方にとってはかなりいい方向になっているという一面で、やはりボリュームはそれだけ増えているので、読者のカテゴリーごとに見たときに、特に若い世代で年金にまだあまり関心がない方が漠然と年金は大丈夫かなという不安をやはり持っているということに対してどう答えるかということについていうと、まだ工夫の余地があるのかなと思っております。
 なので、入門編とか一般編とか詳細編みたいな形で、今回そういう意味でパワーポイントは一般編みたいなイメージのものになるのかなと思いますけれども、より簡単なものというか入門編的なものが何かあるとよりそういう意味ではいいのかなと思いますし、その入門編の中ではお一人お一人の国民の人が自分の問題に置き換えて考えられるような見せ方みたいなものが何かできるといいかなと思います。そういう意味では、例えば、自分の属性を入れて自分のアプリみたいなもので自分の年金額がどう推移していくのかみたいなことまでを結びつけて見られると、非常に関心は高められるかなと思いました。
 いずれにしましても大変御苦労いただきまして、いいものができたなと思っております。どうもありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 最後のほうの御指摘との関係で、作業班の中でも、最近出していない年金白書みたいなそういったものでPRしていくのもいいのではないかという御意見も複数の委員からお寄せいただいていたなということを思い出した次第でございます。ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 それでは、野呂委員、お願いします。
○野呂委員 検討の途中過程では新しい取組や非常に複雑な分析が次々出てきて、正直言ってどうなるかなと私も思ったのですけれども、非常にすっきりと、しかも分かりやすくまとまって、いいピアレビューかなと思います。
 そういうことで、修正というよりも次回も含めた将来に向けてということで、今あえて申し上げますと、この要約版といいますか、資料3のパワーポイントでいきますと、45ページに感応度分析ということで、どの要素がどれだけ変化したらどれだけ影響があるかという、これはある意味では新しい取組かと思うのですけれども、年金財政の構造が非常によく分かるといいますか、興味深いと思いまして、ぜひ次回ピアレビューでも続けてほしいと思います。もし次回のピアレビューでも行うのであれば、今回はケースⅢでやったのですけれども、もうちょっと複数な、例えば、今回でいうケースVのようなものでやっても意味があるかな、非常に面白いかなと思います。
 2つ目が、14ページの将来に向けた提言の(12)の3つ目のポツですけれども、要するに出生率のところで、ここに書かれているとおりだと思うのですけれども、報道によりますと、コロナの関係で来年度の出生数は極端に下がるような話もありまして、年金財政に与える影響も極めて大きいと思います。今後ここはかなり丁寧なウオッチングが要るかなと痛感いたしました。
 最後はちょっとしつこいですけれども、10ページの今回の追加試算のところです。まとめを見ましたら(1)の一番下のポツのところで、一番最後のところに、今後詳細な分析ということが書かれており、同じことを言って申し訳ないのですけれども、今回の追加試算にあったような対応は、全体としてはメリットが大きいと思うのですけれども、痛みの伴うところもしっかり開示していただく中で、公助・共助・自助のトータルでの対応ということを検討する素材としていただきたいというのが最後でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
 若干身内的な発言になってしまって恐縮なのですけれども、今回は数理モデルの適正性というのを評価して、それを肯定的に評価した上で実際にその数理モデルを使っていろいろな作業をしていただいて、その結果として感応度分析があったりとか、変動要因分析があったりとか、事務局の皆さん方の作業負担が非常に重かったのだろうと思うのですけれども、こういったことをやっていただいたと。その結果として、今後のことを考える上でもある程度の勘どころといいますか、こういったものが得られたということがメリットとして感じております。そういう意味では、今回のピアレビューは非常に新機軸を打ち立てたという意味では、非常に肯定的に評価しておりますし、事務局の皆さんにはお礼を申し上げたいと思います。
 そして、議論の中で、ここから先は私の感想、思ったことなのですけれども、私どもは確率とか統計とかを扱う世界に身を置く者なのですけれども、その中ではやはり標本の取り方、標本というのは非常に重要だと思います。標本というのは同じ条件の下で取得しなければいけないというのが前提になるわけなのですけれども、なかなかそれは無理だということなので、例えば、時間の経過というのを無視した形で繰り返し試行を行ったり、そういう形で標本を取っているということなのだろうと思います。これは自然科学の分野ですと、この標本というのは基本的には受け入れられるケースがかなりあると思うのですけれども、経済学を中心としました社会科学系ではなかなかこの標本が受け入れられないケース、素直に肯定できないケースというのもあるのではないのかなと。
 と申しますのは、例えば、年次で標本を取りましたといった場合に、時間の経過によって社会とか経済の構造が変わったりといったことがあるので、必ずしも同条件で標本を取れるということにはなっていないわけです。大ざっぱに言うと、それを承知の上で標本を集めてモデルをつくるということをやっているわけなので、できた標本、確率モデルなり何なりというものは金融工学の世界ではそれなりに評価する必要があると思うのですけれども、基本となる標本というのがそういった背景があるという意味では、そのモデルの中にあるようなモデルを使った議論というのもある程度謙虚にやっていただいたほうがよろしいかなということを思いました。
 以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 翁委員、お願いします。
○翁委員 私も非常に充実した内容のピアレビューになっていると思います。10ページから財政検証に向けた提言が12項目指摘されていますけれども、いずれも非常に重要な指摘がよく整理されて書かれていると思います。
 特に私は、「(1)基礎年金の給付水準調整期間の長期化への適切な対応」についてしっかりこれからさらに分析して、先ほど小野委員からも御発言がありましたけれども、どういう実現ができるのかということをさらに検討していくことが大事だと思っております。
 その際、先ほど永瀬委員からも御指摘がありましたけれども、やはり世帯も就労も本当に多様化しておりますので、モデル年金ということにこだわらず、様々な就労形態、様々な世帯を考えながらこういった議論をしていくことは極めて重要だと思っております。
 分析につきましては、皆様がおっしゃいましたように、感応度分析とか変動要因分析とか非常に充実していて、興味深い結果が出ていて、大変に価値があると思っております。
 また、これは2019年の段階ですが、やはり足元からいろいろなことが変わってきていて、年金は長期ではございますけれども、出生率とか様々な影響を及ぼすという可能性もあると思いますので、この点も御指摘がございましたけれども、やはりしっかりとこれから検証に当たって考えていくことが大事だと思っております。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 いかがでしょうか。
 関委員、よろしければいかがでしょうか。
○関委員 作業班での議論を盛り込んで大部な資料をおまとめくださり、事務局に御礼申し上げます。皆様の御発言にもありましたとおり、充実した内容になっていると思っております。
 本日、追加資料が提示されましたので、それについて少し意見を述べます。
 基礎年金の給付水準を維持していくことは、所得保障制度全体においてとても重要なことです。この点、モデル世帯の年金についてのみ見る形だと、第3号をめぐる課題などが見えづらいという御意見もそのとおりだと思っております。ここで重要なのは、国民や専門家が課題を把握して議論しやすいよう様々な可能性を示すことではないでしょうか。そこで、今回は追加試算について取りまとめていただいたような形で提示する形でよいと思います。その上で、将来に向けた課題として、本日ご説明もありました資料3の10ページにあるように、モデル世帯以外についてもきめ細かく設定し検証してほしいという提言を、十分、今後加味していただく形としていただければと考えております。
 あともう一点、枇杷委員からも御発言がありましたように、私自身も今回、難しくて分かりづらいところが見えてきましたが、いろいろな人たちにとって分かりやすいような資料という点を今後も考えて提示していくことが重要なのではないかと思います。どうもありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 永瀬委員、いかがでしょうか。
○永瀬委員 先ほどちょっと長々とお話をしてしまいましたけれども、まず、事務局が丁寧にこれを検討されてきたことには敬意を表します。また、今回の試算も一つの新しい選択肢を示したものとして意義があると思います。
 その上で、ただし、これから先のことを考えていきますと、やはりモデル年金の問題を指摘します。モデル年金という、対象者がどんどん縮小しているような世帯についてのみをターゲット世帯として示すような財政検証に在り方は変えていく必要があるだろうと。
 特に、先ほどの164ページのところに、山本さんや事務局の方が私の意見を反映して加えてくださったところがあるとしても、まだ不充分と考えます。世帯状況や就労の多様性、さらに近年はその多様性がまた一段と高まっているという現実があるということを踏まえて、詳細な分析を示して、年金制度が、社会保険料の支払いや働く意欲といったインセンティブ構造に対応したものであるのか、また老後の安心を可能な限り実現するという性格をもっているかどうか、今後の在り方について方向性を検討する必要があるのではないかと思います。
 それから、これから性別、世代別、年齢階級別の分布推計をするというお話しがありましたが、それは本当に意義深いことだと思います。これまでは世帯、個人ということが議論されてきたとはいえ、実は世帯レベルでの、公的年金給付を見るためのデータがないと聞いたように思います。また世帯は重要ですが、その後には、一人一人の長い老後期があります。一人一人の老後期というところも含め、就業履歴と年金給付とを見ながら、現実にどういうふうに各世代で年金の給付分布が変わっているのか(というのは給付率が変化しています)、そしてどう就業履歴が変わっているのか(正社員が減ったり、女性が働きに出たり、シングルが増えたりしています)、それを見ると、ある程度将来の推測もできます。
現実に長い就業履歴がある割にはかなり低い給付しか得られない世帯があるとすれば、そうした世帯については給付の仕組みを再考するなどの対応も必要なのかもしれません。現実にどのような年金分布が将来予想されるのかということを踏まえつつ、モデル年金だけではないところで、20年後ぐらいの年金給付分布の世界を予測することができたら、多くの国民にとってとても有益な情報なのではないかなと思います。
 以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 浅野部会長代理、いかがでしょうか。
○浅野部会長代理 令和元年の財政検証に関するピアレビューレポートが完成いたしましたけれども、我が国の年金制度の持続可能性などについて、給付水準や財政の安定性のそれぞれの面から新規に分析が行われ、将来に向けて新たな示唆を与えるようなものになっておりまして、大いに評価できるのではないかなと思います。
 例えば、第1章では、前回の財政検証からの被保険者数、給付費等の変化の要因分析、また、平成16年財政再計算に対する今回の財政検証における年金額の水準の変化と、その変化の要因分析がなされております。
 また、第2章では、総合費用率と保険料率の関係が出生率の前提によってどう異なるかを示されているなどしておりまして、いずれもこれまでの環境変化とか政策の実行による年金制度や財政への影響が示されておりまして、今後の政策決定における参考になるのではないかなと思います。
 また、第2章には、本日追加で御報告がありました追加試算の言及もありまして、追加試算の内容、結果については、私自身にとっては目からうろこというようなもので、非常に意義深いなと思います。これが記載されて、今後、先ほど野呂委員からもありましたように、メリット、デメリットをしっかり整理していただいて議論が深まるといいなと思います。
 そして、第5章では、ピアレビューを実施した結果において、各委員から年金制度や年金財政に関する率直な意見が提言の形で記載されておりまして、いずれもそれぞれの御専門の立場からの非常に重要な指摘でありますので、この点も従前に比べて充実した点ではないかなと思います。
 これまでも財政検証実施主体の各機関におきましては、年金数理部会の提言に対しまして真摯に御対応いただいているものと思いますが、今回の提言についてはなお一層積極的な御対応をお願いしたいと思います。
 その中で、今回、確率論的将来見通しに関する提言は行っておりませんが、これは報告書にもあるように、公的年金の財政検証が国民への公表を前提にしているという位置づけにおいて、確率論的将来見通しが技術面の課題、また、結果に対する評価についての説明責任などの観点から時期尚早として慎重な対応を図ったものであり、これについては十分理解できるかなと思います。
 一方で、ピアレビューの過程において、本報告書の参考資料にも添付されているように、一部の前提を確率的に動かした試算を実施しており、研究、検討の第一歩として、意義深いものであると思います。引き続き、こうした研究、検討が着実に実施されることが重要ではないかなと思います。
 また、もともとは公的年金の財政の超長期の不確実性をどのように表すかという点に帰着する問題であり、現在のように複数シナリオを用いてその不確実性を表しているとすれば、30通りのケースについて、どの程度の示現確率かを示すことが望まれるのではないかなと思います。しかし、それ自体も現時点では難しいということで、今回はTFP上昇率の過去の発生頻度を示す取組が行われております。これも不確実性を表す第一歩として評価はできると思います。しかし、これもあくまで第一歩ということですので、報告書の記載のとおり、リスクや深く不確実性を表すことについて、今後さらなる工夫や検討、改善を望みたいと思います。
 私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 これで一通りの御意見を伺いましたけれども、少し言い残したとかそういう追加の御発言はございますでしょうか。
 永瀬委員、どうぞ。
○永瀬委員 さっき、一人になったときの長い老後の年金ということを申し上げましたけれども、特に女性が単身で得ている年金額が、遺族年金であるのか、それとも、生涯シングルで自身が保険料を納めて得た年金なのか、その人たちがどういう年金金額の分布なのかを見る必要があります。また、女性が結婚していた場合、自分自身で第2号の年金を積み立てていたとしても、夫の死後は、ちょうど自身の年金分だけ遺族年金がカットされる場合がほとんどなのですが、そのようにカットされている人はどのくらいの割合か、そして得ている年金はどのくらいなのか、そして、こうした給付の仕組みが老後の年金、どちらかというと女性は長い老後があるわけで、そこがどんなふうになっているかということもなどぜひデータで示していただければ非常に有益だろうと思います。
 そして、そういうことを分析してみると、多分、雇用の在り方への政策にも跳ね返ってくると思います。つまり日本はすごく男女の賃金格差が大きい国として国際的にもいろいろと言われていますけれども、どうしてそういうことになっているのか、というのを見ることが重要です。そうすると、現役の働き方に対する労働政策の在り方の検討に大きく跳ね返ってくる可能性のある非常に重要な資料となると思います。ぜひその辺を明らかにしていただきたいなと思います。よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。ございませんでしょうか。ありがとうございます。
 皆様の御意見を総合いたしますと、おおむね御了解をいただいたと思っております。
 ただ一点、資料3の10ページの(1)の最後のポツです。本文でいいますと、164ページの(1)の最後の2行になりますけれども、最初にも永瀬委員から御意見、御発言がございましたが、ただいまも翁委員、関委員から少し御意見があり、そこでは「世帯や就労が多様であることにも留意しながら」とありますが、もう少し記述を工夫したほうがいいかなと感じたのが一点です。
 それから、なかなか表現は難しいですけれども、野呂委員からは痛みを伴う部分を含めてというお話があり、浅野委員からはメリット、デメリット両面というお話がありまして、この辺りも少し工夫をしてこの部分に入れ込んではどうかと思いました。といっても、この場で修文作業をするわけにはいきませんので、皆様に御了解いただけるようであれば部会長預かりにさせていただいて、事務局と文言を調整させていただき、またそれを委員にお諮りをして、それで確定させるという形にさせていただければと思うのですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(首肯する委員あり)
○菊池部会長 ありがとうございます。
 それでは、どこまでどういう表現で入れるかというものもありますので、そこは私が責任を持って事務局と調整させていただきますのでよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 これをもちまして、令和元年財政検証に基づく公的年金制度財政検証ピアレビューについての審議を終了いたします。
 ここに至るまで各委員の皆様から非常に建設的、専門的な御意見を多数いただき、それを盛り込んだ非常にいい報告書が仕上がったと思います。
 また、この報告書の準備作業に当たってくださった事務局の本当に頑張りというか、委員の皆様からも御発言いただきましたが、たとえば確率的将来見通しの件は先送りしてきたという部分があって、それにあえて取り組んでいただいたという面もありますし、今回の補論という形で示唆を盛り込んでいただいたという部分も含めて、山本さんはじめ事務局の皆さまに非常に頑張っていただいて感謝申し上げる次第であります。
 それでは、最後に、高橋年金局長から御発言をお願いできればと存じます。
○高橋年金局長 数理部会の委員の皆様、部会長をはじめ皆様方には非常に精力的な御議論をいただきまして、本日、ピアレビューの報告書をおまとめいただきまして、誠にありがとうございます。
 これまでの財政検証との比較でございますとか、変化の要因分析、感応度分析でございますとか、年金財政の状況や構造の理解を深めるために、大変充実した報告書にしていただいたと考えてございます。
 また、基礎年金の水準低下の問題につきましても、その要因ですとか分析をしていただき、また本日、追加試算の部分も盛り込んでいただきまして、委員の御意見でもありましたように、このピアレビューが次の財政検証や、それを受けた次の制度改正に向けたスタート地点にまさになるように、そのようにしていきたいと考えております。
 ピアレビュー報告書で御提言をいただいた事項を踏まえまして、今後、年金局として検討を深めてまいりたいと考えてございます。この1年間、大変ありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
 それでは、事務局から御連絡をお願いいたします。
○山本首席年金数理官 今後の日程等につきましては改めて御連絡を申し上げます。
 事務局からの連絡は以上でございます。
○菊池部会長 私、部会長を4年間務めさせていただきまして、その間の4年間、あるいは2年間、先生方には大変お世話になりましてどうもありがとうございました。
 とりわけ、私は年金数理に明るくない者として、浅野部会長代理にはいろいろサポートをしていただきまして本当に心より感謝申し上げます。
 これからさらに、今年は年金改正があったばかりですけれども、恐らく5年後の改正に向けて、また数理部会の役割というのも高まっていくと思いますので、今後の年金数理部会の発展と充実した議論を期待したいと存じます。どうもありがとうございました。
 それでは、今日はこれで終わりたいと思います。どうかよいお年をお迎えください。
                                                                                                  

                                                                                       (了)

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