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2019年3月28日 第81回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

平成31年3月28日 15時00分~17時00分

 

○場所

厚生労働省 専用第15会議室(12階)



 

○出席者

 

 
菊池部会長、浅野部会長代理、翁委員、小野委員、駒村委員、関委員、永瀬委員、野呂委員、枇杷委員

○議題

(1)公的年金財政状況報告-29年度-について
(2)その他

○議事

 

○山本首席年金数理官 定刻になりましたので、ただいまより第81回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきたいと思います。お手元にタブレットを準備しておりますけれども、今、議事次第が出ているかと思いますが、左上の「社会保障審議会年金数理部会」という青い文字をタップしていただきますと、資料の一覧が出てまいります。
本日、準備しております資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、「公的年金財政状況報告-平成29年度-(案)」ですが、5つに分かれてございまして、資料1-1は表紙、はじめに、委員名簿、目次、要旨。資料1-2は第1章、資料1-3は第2章、資料1-4は第3章、資料1-5は付属資料となってございます。それから、資料2は「公的年金財政状況報告-平成29年度-概要(案)」でございます。よろしいでしょうか。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全委員御出席でございますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
それでは、以後の進行につきましては菊池部会長にお願いいたします。よろしくお願いします。
○菊池部会長 委員の皆様には、御多忙の中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、「公的年金財政状況報告-平成29年度-について」、審議を行いたいと思います。
平成29年度の報告書の作成に当たりましては、委員の皆様に御協力いただき、あらかじめ作業班において作業を行い、本日の資料である報告書(案)を作成いただきました。
それでは、早速ですが、事務局から29年度の報告(案)について、そのポイントとなる点の説明をお願いいたします。大部にわたるので、少し時間を要すると思いますが、よろしくお願いいたします。
○山本首席年金数理官 平成29年度の公的年金財政状況報告(案)について御説明申し上げます。
資料1は報告書の本体に当たる部分でございまして、ご覧のとおりボリュームがございますので、資料2にスライド形式で概要の資料を今回作成してございます。資料2は、厳密に申しますと報告書そのものではないのですが、読み手にわかりやすく伝わりますように、報告書と一体となるようなものとして活用していただくために作成してございます。本日、まずはこの資料2を使いまして、報告書の内容の一部抜粋になりますけれども、御説明申し上げたいと思います。資料2を開いていただきたいと存じます。
表紙がございまして、スライド0というものがございますけれども、これは公的年金財政状況報告についてでございます。
御案内のとおりですが、各制度あるいは各実施機関からの報告に基づいて、専門的観点から横断的に分析・評価を行い、その結果を取りまとめたものであるということです。
この報告書の構成についてですが、スライドの左下にございますように、第1章から第3章までございます。それで、第1章では、公的年金の概要を説明し、第2章では、被保険者、受給権者、財政収支などの現状を確認いたしまして、第3章では、財政検証あるいは財政再計算との比較、将来見通しと実績の乖離状況を確認し、最後に財政状況の評価を行うという構成になってございます。
内容につきまして、以後、スライドで抜粋して説明いたしますけれども、まず、第2章第1節「被保険者の現状及び推移」でございます。
スライドの1番でございますが、ここでは、公的年金の被保険者数の推移につきまして、直近の3年度と、それ以前、平成7年度から5年ごとに数値を示してございます。グラフの灰色の部分が国民年金の1号被保険者と3号被保険者を表示しておりますけれども、こちらは近年減少傾向にございまして、平成29年度においても、それぞれ4.5%、2.1%減少しているということでございました。
他方で、厚生年金被保険者は、青、オレンジ色などで表示しておりますけれども、そちらは近年増加傾向にございまして、平成29年度においても2.1%増加しているところでございます。
なお、厚生年金は、平成28年10月に従業員数501人以上の企業の適用従事者について、週の所定労働時間20時間以上であるなどの要件を満たす短時間労働者に被保険者の適用拡大が行われております。それから、29年4月には、従業員数500人以下の適用事業所においても、労使合意に基づいて短時間労働者に適用可能となっておりまして、その短時間労働者を含んだ数字になっておりますけれども、この短時間労働者を除いても、平成29年度の厚生年金の被保険者数は1.9%増加しているところでございます。
これらを合計しました公的年金全体の被保険者数は、平成29年度6733万人ということで、前年度に比べて0.04%増加しているところでございます。
次のスライドに参りまして、被保険者の年齢分布ですが、一番左端のグラフ、厚生年金計のものと、一番右端には国民年金第3号被保険者がございますけれども、こちらの2つにつきましては、いわゆる団塊ジュニアの世代が属している40歳代後半あたりの割合が大きくなっているということでございます。
それで、左から2つ目のグラフでは、厚生年金のうち、短時間労働者のみを取り出して表示してございます。これをご覧になっていただきますと、男女に違いがありますが、男性は60歳以上が多く、女性では40歳代から60歳代前半が多くなっているところでございます。
それから、その右隣ですが、国民年金第1号被保険者につきましては、学生が多く含まれる20歳代前半が多く、全体の2割強を占めているところでございます。
次のスライドに参りまして、被保険者の年齢分布の変化(厚生年金計)でございます。こちらは、厚生年金の被保険者の年齢構成について、直近の29年度末と5年前、10年前を並べて表示してございます。
男性では、被保険者が最も多い年齢階級は、10年前は35歳~39歳、5年前は40歳~44歳、直近では45歳~49歳にシフトしてございますけれども、このグループは団塊ジュニアの世代が属して、人口が多いところでもございます。
なお、10年前のグラフでは、55歳~59歳に第2のピークがございましたが、これは団塊の世代でして、その引退に伴いまして、このピークは直近では消滅しているところでございます。
また、女性につきましては、40歳以上の被保険者数は年を追うごとに増加しているところでございます。
次のスライド、被保険者の総人口比の変化でございますけれども、これは厚生年金の計についてです。
厚生年金の全体の被保険者の数を、年齢階級別に総人口と比較して何%いるかというものでございますが、男女ともに全ての年齢階級で5年前よりも上昇しています。
その次のスライド5番でございますけれども、被保険者数の年齢分布の変化、こちらは国民年金第1号についてでございます。
男女ともに団塊ジュニアの世代がシフトしているということですけれども、そうしたことを除くと、全体的には減少傾向にあるということでございます。特に、55歳~59歳あたりで、その減少傾向が顕著だということでございます。
それから、スライド6番、被保険者の年齢分布の変化、こちらは国民年金第3号被保険者ですが、3号被保険者の場合は99%が女性なので、女性について申し上げますけれども、39歳以下の被保険者の減少が著しいということでございます。
次のスライド7番は、厚生年金の標準報酬月額別被保険者の分布ということでございますけれども、厚生年金計で直近の年度について表示してございます。
男性で最も人数が多いのは、上限に当たる62万円でして、250万人を上回ってございます。このほかにも、26万から30万あたりと41万円にも150万人を上回る規模のピークがあるということでございます。
女性のほうは、22万円にピークがあるということです。
次のスライドに参りまして、8.厚生年金の標準報酬月額別分布です。
先ほどは厚生年金計でご覧いただきましたけれども、一部の共済では、被用者年金が一元化される前は標準報酬制を採用していなかったということがあって、長期の推移を見ることができないので、厚生年金の多くを占めます民間被用者の第1号厚生年金被保険者で、5年前、10年前との比較をご覧いただいております。
平成29年度をご覧いただきますと、男性では、17万円以上の階級で5年前よりも被保険者が増加しております。
女性では、15万円以上の階級で被保険者が増加しているということでございます。
スライドの9番は、標準報酬月額の分布ですが、こちらは第1号厚生年金保険者のうち、短時間労働者を抜き出して標準報酬月額の分布を見たものでございます。直近29年度末では、男女とも11.8万円にピークがございます。前年度との比較でございますけれども、前年度は9.8万円から11万円あたりに集中しておりましたが、分布に変化が見られるところでございます。
続きまして、「受給権者の現状及び推移」ということで、報告書案で言いますと第2章第2節に書かれていることについて申し上げます。
まず、スライドの10番ですが、受給権者の年金総額の推移でございます。
受給権者の年金総額は、グラフをご覧のとおり、長期的には増加するトレンドにあるところでございまして、平成29年度末におきましても、前年度と比べ、1.0%増加してございます。
ただ、平成25年度とか28年度では、厚生年金の男性とか、あるいは共済組合におきまして、報酬比例部分の支給開始年齢がそれぞれ60歳から61歳、あるいは61歳から62歳に引き上げられているということがございます。 それから、25年度ですけれども、国共済・地共済において、恩給期間に係る給付が引き下げられていることもあって、被用者年金では年金総額の増加は抑制されているということでございます。
それから、スライド11番は、老齢・退年相当の受給権者の年齢分布ということでございます。 これは、原則として25年以上の被保険者期間を有する方です。
それで、グラフをご覧になっていただきますと、旧厚生年金・国共済・地共済・私学共済、いずれも60歳代後半の年齢階級の受給権者が最も多くなっているということでございます。ただ、国共済につきましては、年齢階級による人数の差があまりないというのが特徴的なところでございます。
それから、スライド12番は、共済組合の職域加算を除いた老齢・退年相当の平均年金月額の推計でございます。
こちらは、被用者の老齢・退年相当の年金につきまして、平均年金月額を実施機関ごとに比較したものでございます。ただ、共済年金のいわゆる職域加算は除いて、厚生年金に相当する部分のみを推計して比較しているところでございます。
まず、男性でございますけれども、旧厚生年金は16万5668円でありますが、国共済は17万5605円、地共済は18万2198円、私学共済は19万554円ということでして、共済のほうが旧厚生年金よりも6%~15%高い水準にあるということでございます。これは、平均加入期間は旧厚生年金のほうが長いのですけれども、年金額の算定基礎となる標準報酬は共済が高いとか、受給者の年齢構成は、国共済・地共済が旧厚生年金よりも高くなっているということでございまして、結果的に給付乗率が高い方が多くなっていることなどが影響しているということです。
それから、女性につきましても、旧厚生年金10万3026円に対しまして、共済はその1.5倍程度になっているわけでございます。これは、算定基礎となる標準報酬に差があるということと、平均加入期間が共済のほうが旧厚生年金より相当程度長いということが影響しているということでございます。国共済に関しましては、男性同様に、受給者の年齢構成が旧厚生年金より高いということも影響しているということでございます。
それから、スライド13番は、老齢相当の受給権者の年齢階級別の平均年金月額ということでございます。
旧厚生年金の平均年金月額は、受給者全体の平均加入期間は伸びておりますものの、減少傾向にございます。その要因というのは、箱の中に書かれていますように、報酬比例分の給付乗率の引下げ、定額部分の定額単価の引下げ、定額部分の支給開始年齢の引上げ、加給年金の対象者の減少、物価スライド、特例水準の解消といった年金額マイナス改定の影響が考えられるところでございます。
このグラフには、年齢階級別に直近と5年前の平成24年度末の平均年金月額を男女別に表示しておりまして、ご覧のとおり、特に男性は顕著ですけれども、若い世代ほど報酬比例分の給付乗率ですとか、定額単価引下げの影響で年金額が下がってきているということがまずございます。
それから、24年度末から29年度末にかけては、そのほかに特例水準の解消で年金額が下がっている、マイナス改定が行われていることもあって、平均年金月額が下がっているということもございます。
そのほか、一番左、64歳以下のところにありますけれども、定額部分の支給開始年齢を引き上げておりまして、報酬比例部分だけの方もおりまして、それも全体の平均年金額を下げる要因になっているということ。
あと、65歳~69歳のあたりに関係するのですけれども、65歳未満の配偶者がいらっしゃる場合には加給年金がつくわけですけれども、その加給対象となる配偶者が減少していて、加給年金というものがつかなくなっている影響もあると考えられるところでございます。
14ページは、老齢相当の年金月額階級別受給権者数でございます。こちらは、旧厚生年金について表示しておりますけれども、老齢基礎年金を含めた統計で、年金月額の分布を表示しているものでございます。
男性では、17万~20万円あたりがピークでして、女性では8万~11万あたりがピークということでございます。
次が「財政収支の現状」ということで、第2章第3節の抜粋でございます。
スライドの15番をご覧ください。
こちらは、平成29年度の単年度収支状況です。厚生年金計、それから公的年金制度全体の収支状況を示してございますけれども、厚生年金に関して申しますと、平成27年10月に被用者年金が一元化された際には、効率的な事務処理を行う観点から、共済組合を実施機関として活用するということになってございます関係で、厚生年金の財政自体が、厚生年金勘定と実施機関の共済組合の厚生年金保険経理に分かれて管理されておりまして、厚生年金勘定と共済組合の間で厚生年金拠出金あるいは厚生年金交付金というものを拠出あるいは交付することで、財政的に一元化されています。
決算は厚生年金勘定、共済組合に分かれて実施されておりますので、ここでは、これらをまずは制度横断的に整理し、それを取りまとめているということでございます。あわせて、国民年金も含めた公的年金制度全体の財政状況も明らかにしているところでございます。
なお、各制度の決算では、運用損益が収入あるいは支出の中に計上されるわけですが、こちらの報告の中では、公的年金制度では賦課方式を基本とする財政運営が行われているということを踏まえまして、運用損益以外の単年度収支と運用損益に分けた形で整理しているところでございます。
厚生年金に関しましては、あるいは公的年金制度全体でもそうですけれども、制度内あるいは実施機関同士で拠出・交付をしておりますけれども、まとめる段階では、収支の両面から除いて表示するということをしているところでございます。
計数自体はご覧のとおりでございますけれども、厚生年金計につきましては、保険料収入35兆8723億円、国庫・公経済負担は10兆5969億円などとなっておりまして、収入総額では50兆718億円となっております。支出は、給付費が29兆772億円、基礎年金拠出金が20兆526億円などとなっておりまして、支出の総額は49兆3118億円となっているところでございます。これらを差し引きした、運用損益を除いた単年度収支残は7600億円となっているところでございます。
ただ、このかぎ括弧内にございますけれども、こちらは解散厚生年金基金等徴収金を控除したものですが、厚生年金勘定に、解散した厚生年金基金から徴収金が1兆6153億円ございますけれども、それを除きますと、単年度収支残は8553億円のマイナスになっている状況であるということでございます。
それに運用損益11兆3176億円などがございまして、こうしたものを合わせて、年度末積立金は185兆7518億円となっているところでございます。
公的年金制度全体の収支はご覧のとおりでございます。数値の御説明は割愛させていただきたいと存じます。
それから、スライド16番は、今、御説明いたしました単年度収支残ですが、厚生年金計の内訳といいますか、厚生年金勘定、国共済・地共済・私学共済などを模式的にあらわしたものでございます。説明は省略いたします。
次に、17ページは、厚生年金の保険料収入について、増減の要因を分析したものでございます。
厚生年金の保険料収入は、緑囲いにもありますように、厚生年金勘定ですと5.0%、前年度より増えている。ほかの共済でも増えてございますけれども、その要因を下の表にございますような形で分析してございます。
大きなところを申しますと、厚生年金勘定、私学共済では被保険者数の増加によって、それぞれ3.2%、2.0%と増加しているのと、保険料率の要因で1.3%ないし2.6%増えているというものでございます。
保険料率の要因は、厚生年金勘定と共済で若干違っておりますが、厚生年金勘定、つまり第1号厚生年金保険者の保険料率が、29年度に最終保険料の18.3%に到達しておりますので、この年度の引上げは0.118%でございましたけれども、共済はまだ引上げ途上ということでして、この年度は0.354%保険料率が上がっていますので、その違いが出ているということでございます。
それから、18ページは、国民年金の現年度保険料収入の増減要因を分析しております。
29年度をご覧いただきますと、現年度保険料収入は7.3%減少しているところでございますが、その要因として、まず第1号被保険者の減少によって5.5%減少してございます。その下に、保険料免除被保険者数割合とございますけれども、こちらは28年7月に納付猶予対象者が50歳未満まで拡大されたということもありまして、2.6%減少に働いているということでございます。
他方で、保険料月額は1万6260円から1万6490円に上がっておりますので、それで1.6%上がっておりますし、現年度の納付率の上昇によって、2.0%増加しているということでございます。
その他は要因分析の残差でして、こちらも依然として残っているのですけれども、平成26年4月に創設された保険料2年前納の影響などもここに入っているのではないかと考えられるということでございます。
次ですが、「財政収支等の実績と将来見通しとの比較」でございます。ここから第3章の説明に入ってまいりますが、第3章では、平成26年の財政検証の将来見通しと実績というものを比較しまして、その乖離が生じている場合には要因分析を行うということを通じて、現時点の財政状況の評価を行っております。順次御説明していきます。
まず、スライド19は、合計特殊出生率の実績と前提との比較ということで、グラフのとおりでございますが、26年財政検証の前提となった平成24年の人口推計の仮定値と比べますと、29年の実績というのは出生中位の仮定を上回るということでございます。
次の20のスライドは、65歳の平均余命について見たものでございますけれども、男性のほうの実績は、死亡中位の仮定と同水準である。それから、女性につきましては、死亡中位の仮定を下回っているということでございます。
次のスライド21番は、物価上昇率の実績と前提との比較でございます。
29年度の実績でございますけれども、こちらは前年に比べると0.5%上昇しているわけでございます。ただ、財政検証の前提となっておりました経済再生ケース、参考ケースのいずれよりも下回っているということでございます。
それから、スライド22番に行っていただきまして、こちらは実質賃金上昇率の実績と前提との比較でして、実質賃金上昇率とは物価との対比で見た賃金上昇率でございます。
29年度の実績は、財政検証の前提の経済再生ケース、参考ケースを下回っているということでございます。
それから、23ページ、実質的な運用利回りの実績と前提との比較のほうは、29年度の実績は、財政検証の前提となる経済再生ケース、参考ケースを大きく上回っているということでございます。
スライド24番ですけれども、労働力率の実績と前提との比較でございます。
こちらは、平成29年の実績と財政検証の前提となった推計を比べておりますけれども、財政検証の前提となった推計は、2017年が公表されていないということでございまして、2020年と比較してございます。
まず、実績と経済再生ケース、黒い実線と赤の点線を比較していただきますと、男女ともに、一部の年齢階級を除いて、ほぼ実績が推計を下回っているところでございます。特に、男性の60~64歳、女性の30~44歳、50~54歳あたりで、その傾向が顕著ということでございます。一方で、20~24歳の男性と、女性の60歳以上は、実績のほうが推計よりも上回っているということでございます。
参考ケースとの比較、青い点線のほうとの比較で申し上げますと、男性の29歳以下あるいは50歳以上では、実績のほうが推計を上回っていますし、女性のほうは、全ての年齢で実績が推計を上回っているところでございます。
それから、スライド25番、被保険者数の実績と将来見通しとの比較でございます。
厚生年金計の被保険者数、左側ですけれども、星印が実績です。29年度実績と財政検証の将来見通しを比較いたしますと、実績のほうが大きく上回っているということでございます。
他方で、右側の国民年金第1号被保険者につきましては、29年度の実績は将来見通しを大きく下回っているところでございます。
26ページは、受給者数についての比較ですが、こちらは星印の実績が財政検証の将来見通しを、厚生年金計ではやや上回っております。
他方で、基礎年金につきましては、実績が見通しをやや下回っているということでございます。
それから、スライド27番に参りまして、保険料収入につきまして実績と将来見通しを比較しております。この先、経済前提につきまして、財政検証ではケースAからHまで8通りあったのですが、本報告(案)では、ケースC、E、Gを例にとって分析しているところでございます。それを棒グラフでこのスライドでは表示してございます。
比較しますと、厚生年金計では、実績が見通しを上回っているということでございます。これは、被保険者数の実績が将来見通しを大きく上回っていることによるものでございます。
一方で、国民年金の保険料収入につきましては、将来見通しを下回っております。これは、被保険者数が将来見通しを大きく下回っていることによるものでございます。
次に、スライド28番は、給付費について比較したものでございます。
29年度の実績が、厚生年金計で見ますと見通しを下回っているということでございます。
国民年金につきましては、実績のほうが上回っておりますが、こちらは付加年金など年金改定率による影響を受けないものが含まれているということに留意する必要があるということでございます。
次の29ページは、基礎年金拠出金について実績と見通しを比較してございます。
厚生年金計につきましては、実績のほうが見通しを上回っております。これは、拠出金の単価そのものは実績のほうが下回っていたのですが、基礎年金拠出金の算定対象者数、つまり被保険者数ですけれども、そちらの実績が将来見通しを上回っていたということで、基礎年金拠出金では実績のほうが上回っているということでございます。
他方で、国民年金は、単価も下回り、算定対象者数も下回っているということで、拠出金も実績のほうが下回っているということでございました。
それから、スライド30番は、積立金について実績と将来見通しを比べておりますが、29年度の実績は、厚生年金計、国民年金いずれにおきましても、実績のほうが財政検証の見通しを上回っているということでございます。
この積立金の乖離につきましては、次の節でその要因を分析しているところでございます。
スライド31番に移っていただきたいのですけれども、ここでは乖離の分析の手法について書いてございます。
29年度末における乖離を、まず発生した年度ごとに分解いたしまして、平成27年度から29年度の各年度の乖離につきましては、さらに名目運用利回りの乖離による寄与と、運用損益以外の乖離による寄与というものに分解し、さらにそれぞれ詳細な要因に分解しているということでございます。
まず、32ページ、発生年度別の乖離状況をご覧になっていただきますと、厚生年金・国民年金、いずれにおきましても、26年度末時点の乖離の影響が大きいのですが、それ以外も、28年、29年度の発生の寄与もプラスになっているということでございました。
このうち、29年度に発生したものは厚生年金計ですと9.14兆円、国民年金勘定ですと0.26兆円ですが、これを分解しているものがスライド33番、34番です。まずスライド33番は、厚生年金計について、29年度発生分の乖離の要因分析をしてございます。
ご覧のとおりですが、その多くは、名目運用利回りの乖離によるものでございまして、財政検証では2.6あるいは2.1%と仮定しておりましたところ、実際には6.4%であったということでございまして、6.35~6.96兆円の乖離が生じているということでございます。
そのほかにも、被保険者数の乖離によるものも大きくございまして、財政検証では3960万人ないし3830万人と見込んでおりましたのが、実際には4360万人ということでございまして、保険料収入が増加し、基礎年金拠出金の増加を差し引いても2.81~3.75兆円の乖離が生じているということでございました。
次のスライド34番では、国民年金について同様の分析をしてございますけれども、全体で29年度に0.26~0.32兆円の乖離が生じておりますが、その多くは名目運用利回りの乖離によるものでして、0.28~0.32兆円でございました。
そのほか、こちらも被保険者数の乖離による影響が多くございまして、財政検証では1670万人から1750万人と見込んでおりましたところ、実際には1510万人だったわけでございまして、保険料収入は減少するのですが、それ以上に基礎年金拠出金が減少しているということで、0.08から0.09兆円の寄与があったということでございました。
最後、スライド35番は、厚生年金の財政状況の評価ということでございます。
今、ご覧いただきました積立金の乖離分析そのものは、積立金について比較を行ったものでございますけれども、このスライド35番では、さらに賃金上昇率、物価上昇率について実績が判明している部分を補正しまして、評価の基準となる積立金額を算出し、それと実績との対比を行っているということでございます。
結果は、例えばケースCですと、積立金実績199.1兆円に対し、評価の基準となる積立金が157.4兆円でしたので、差し引き41.7兆円、差があったということでございました。厚生年金の財政の均衡は、積立金だけではなくて、将来の保険料収入などと合わせた財源の全体で図っておりますので、この差の部分を財源の全体と対比を行っておりまして、財源全体が、ケースCの場合ですと1515兆円ということでしたが、それと対比すると2.8%ということでございました。
ケースE、Gでは、それぞれ2.9%、3.0%となっていたということでございます。
ただ、財源に余裕が生じたとしても、それが給付水準に反映されるのは、マクロ経済スライド適用期間の終了以降となりますので、それまでの間に実績と財政検証の乖離がまた生じたりすれば、こうした乖離があったとしても、実際には給付水準の改善に結びつかないこともあり得るので、年金財政への影響につきましては、今後も継続的に注視していく必要があるというのが1つ目でございます。
それから、ボックスの2つ目の○でございますけれども、今回の報告書(案)では定量的な分析を行ってございませんけれども、年金数理部会としては、マクロ経済スライドの機能が足下で発揮されないといったことですとか、あるいは国民年金第1号被保険者が減少し、厚生年金被保険者となる傾向の進みぐあいによって、将来の給付水準にどのような影響が及ぶのかといった観点からも、毎年の財政運営の動向を注視していきたいというのが2点目でございます。
それから、3つ目の○ですけれども、いずれにいたしましても、年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等、いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきであるということでございました。
以上が平成29年度報告書における厚生年金の財政的な評価となっているわけでございます。
概要は以上でございますけれども、ここで報告書(案)の本文に関しまして補足を申し上げます。29年度のこの報告書(案)そのものは、26年財政検証との乖離状況を確認するという意味では、平成27年度、28年度、つまり昨年度、一昨年度の報告書と一連のものではあるということでございますので、基本的には28年度の報告書をベースに時点更新というものを行っておりまして、さらに、説明ぶりの改善あるいは分析の充実ということを行っているところでございます。この説明ぶりの改善や分析の充実に関して、昨年度の報告書からの主な変更点について補足いたします。
資料1-2、第1章の7ページでございます。この報告書では「厚生年金」という用語につきまして、一元化前の厚生年金と一元化後の厚生年金の意味が違うわけですけれども、その辺、混在しないようにということで用語の使い方について整理しております。それに関して、7ページに用語の取扱いという表の形で改めて整理を掲載させていただいております。
それから、資料の10ページには、公的年金の資金の流れの全体像の図表を追加してございます。従来から部分的に取り上げた図表を載せておりましたけれども、全体像がわかるようにということで、この図を追加してございます。
それから、第2章の87~98ページにかけて、平均年金月額に関する分析・説明がございますけれども、このあたりの分析を充実してございます。具体的には、89ページに新法の65歳以上の平均年金月額の推移という表がございますけれども、比較しやすい部分、制度改正の影響などを受けにくい部分というか、新法の65歳以上の平均年金月額を取り出した推移を加えるとともに、先ほどスライドでもご覧いただきましたけれども、98ページにありますような形で、5年前の年齢階級別の年金月額の比較というものを行っております。
そうしたことを踏まえまして、95ページに平均年金月額が減少している要因について書いてございます。こちらにつきましても、②とか④にありますけれども、前年度版から、定額部分の定額単価の引下げですとか、加給年金の対象者の減少といった要因をつけ加えているところでございます。
それから、同じ章の99ページに年金月額の分布というものを加えております。こちらは、今年度初めて入れたものでございます。
101ページ以降、グラフの形で整理してございますけれども、この表をご覧になるに当たっては幾つかの留意点があって、その点を99ページに整理してございます。旧厚生年金には基礎年金を含んでおりますけれども、共済には含んでいないとか、旧厚生年金と共済の両方受給している場合には、両方に重複して計上されているといった留意点が書かれているということでございます。
それから、140ページは、各実施機関別の資産構成ですけれども、ここ3年間の推移をグラフで整理しているところでございます。これは、昨年ございませんでしたが、今年度に加えておりまして、これに関して、139ページのパラグラフ2-3-43に、被用者年金一元化後の3年間でも変化していると記載しております。
それから、第3章、190ページからですけれども、こちらは受給者数について、将来見通しと実績を比較しておりますけれども、具体的には192ページ、国家公務員共済と地方公務員共済は分けておりませんでしたけれども、将来見通しについて、29年度には分けたものを出していただいたので、分けた比較も追加しています。
それから、234ページ以降、先ほど御説明いたしました、最後の厚生年金の財政状況に係る評価のところでございますけれども、具体的には236ページをご覧になっていただきますと、先ほどもご覧いただきましたけれども、評価の基準となる積立金と実績を比べております。昨年度の報告ですと、④と⑤を比較するのですが、この比率をとって積立金を2割以上多く有しているといった表記をしてございました。同時に、年金給付の財源は、積立金から得られる財源が1割程度だということも補足して、昨年までは全体での振れは2%ぐらいということを示していたのですけれども、本年度の報告書では、直接的に財源全体と対比する形に修正してございます。
最後に、詳細には御説明いたしませんけれども、付属資料の長期時系列表というものがございますが、263ページ以降、例えば被保険者数といったものにつきまして、これまで男女合計の長期時系列表を記載しておりましたが、一部、男女別の統計も加えさせていただいているところでございます。
そのほかにも変更点ございますけれども、本日は報告書(案)の全文を配付しておりますので、口頭での説明は以上にさせていただきたいと存じます。
事務局からの説明は以上でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
この報告書(案)に至るまで、多数回にわたる作業班を開催いたしまして、そこで作業を積み重ねてまいりました。ただいまの御説明ございましたように、基本的には28年度版を踏襲しながらも、さまざまな改善を加えているということでございます。事務局のほうも随分きめ細かく見ていただいて御努力いただきましたが、何より委員の皆様がさまざまな建設的な御意見をお出しくださいまして、それを踏まえて事務局のほうで、この案にしていただいたということでございます。
それでは、ただいまの説明、報告書(案)に関しまして、この内容について御意見、あるいは報告書全体に関して、何でも結構でございますので、委員の皆様から御発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。
翁委員、お願いします。
○翁委員 もう何度も会議でいろいろなコメントを皆様がなさって、きめ細かく答えていただいて、今回の報告書ができていると思いますので、去年より、さらに大変改善されたと思っております。全体として、被用者の方がふえているので、その結果として保険料収入が好調だというのはプラス要因であるのと積立金につきましても、運用環境は比較的よかったということもあって、これも材料としてはよいわけでございます。しかし、前者のほうは、これからだんだん働き手が減っていく中で、現在はこういうふうに短期労働者も含めて保険財政のほうにプラスには寄与してきておりますけれども、長期的に見れば、これから人が減っていくというところがございますので、この傾向もちゃんとしっかり見ていく必要があると思っておりますし、また、積立金についても、日本銀行がETFを買い続けており、そういう形で、環境としてはかなりプラスの方向で今、来ておりますけれども、長期的に見れば、これがずっと続くとも限らないということかと思っております。
したがまいましてこの報告書にも書いてあるとおり、年金財政の影響というのは長期的にしっかり見ていかなければなりませんので、今回、比較的プラスの材料が多うございますが、今後ともかなりいろいろな見えている人口動態の動きとか金融の動きとかをしっかり見ながら、年金財政全体としては長期的にしっかりと厳密に見ていく必要があると感じております。
○菊池部会長 ありがとうございます。
御意見ということで承りたいと思いますが、何せ大部の報告書(案)でございますので、翁委員のように、委員の皆様から報告書の読み方というか、そういう部分も我々から発信する必要もあると思いますので、ありがとうございます。ぜひ、委員の皆様から、引き続き御意見なり何なりいただければと思います。いかがでしょうか。
どうぞ、野呂委員。
○野呂委員 まず、細かい話で大変恐縮ですが、御説明はなかったのですけれども、事前に読ませていただきまして、資料1-1の要旨の4ページ目、上から8行目から9行目の「また」以降に、賃金上昇率が乖離したことによる寄与は、いずれのケースでもマイナスになっているということがあります。
確かに下の図表3を見てみますと、賃金上昇率のB2017-2のところなどはマイナスとなっているのですけれども、もうちょっと下にも賃金上昇率の乖離のところがありまして、給付費等の変動などはプラスになっているので、このところの賃金上昇率の乖離は、このB2017-2を指しているかと思いますけれども、具体的に差し示されたほうが読み手に誤解がないのではないかと思います。些細なことですけれども、意見でございます。
○菊池部会長 きょう、できれば確定したいので、具体的にこういう表現でというものがあれば教えてもらいたいのですが。
○野呂委員 そうしたら、名目運用利回りの中の賃金上昇率であることを明示する等、賃金上昇率が下の表のどれを指しているかということを明示すればどうかと思います。
○菊池部会長 いかがでしょうか。
○山本首席年金数理官 御指摘のとおり、賃金上昇率による乖離というのは、名目運用利回りだけではなくて、運用損益以外のところにも保険料収入の変動ということもございます。ここで言っているのは、名目運用利回りの中の話ですので、野呂委員の御指摘のように、名目運用利回りの乖離のうち、賃金上昇率が乖離したことによる寄与とか、そのような表現にしたほうが明確になるのかなという気はいたしました。
○菊池部会長 この点、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。これは、本文のほうも必要に応じて、同じ表現を使っていれば。
○山本首席年金数理官 いえ、本文のほうは、名目運用利回りの乖離の話と、下のほうの話、両方別々に書いてございまして、そちらは影響ないと思います。
○菊池部会長 わかりました。それでは、今の御意見のような形で修文させていただきます。
はい。
○野呂委員 よろしくお願いします。
それとは別ですが、今回、去年との連続性を重視しつつ、いろいろ新しいデータを追加いただきました。私もこういう作業を初めてやらせていただく中で、今も御紹介ありました全体の資金の流れの表が資料1-2の10ページの図表1-2-2などは初めて入れていただきました。こういう流れかなということで、大変理解しやすくなったと思います。
改めてこの図表を見てみますと、国共済・地共済・私学共済の流れが、一元化の関係か、非常に複雑になっておりまして、来年度以降の課題として、もう一段ビジュアルといいますか、頭にすっと入ってくるような、線が非常に多いところも含めて工夫できたら、より分かりやすくなるものと思います。これは来年に向けた感想でございます。
○菊池部会長 ありがとうございます。
この部分は、野呂委員の御指摘も踏まえて、今回初めて入れたものだと思います。今後の宿題ということで、引き続き工夫していただくということでいかがでしょうか。よろしいですか。
○山本首席年金数理官 今の点につきましては、もともと複雑なところもございまして、大変苦労して、今回、図をつくり上げたところでございますけれども、また御指導いただきながら、さらに工夫を重ねていきたいと思います。
○菊池部会長 ほかにいかがでしょうか。
小野委員、お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
いろいろ議論している間にきめ細かい対応をしていただきまして、たいへんありがとうございました。
私が御指摘申し上げたいのは、今回、初めて資料2をつくっていただいたということです。財政状況報告自体、これだけの大部なものですので、一般の方々が全部読むというわけにはいかないという意味では、こういった資料が公的年金の運営に関する一般とのコミュニケーションのツールとしては非常に有効かと思っております。こういった資料をつくっていただいたことに関しては、非常に意味が大きいのではないかと思います。それが1点です。
正直申しまして、私、新任だったものですから、いろいろ拝見しながら、私自身も勉強になったということがありまして、それについても御礼申し上げたいと思います。
それで、来年以降、今年予定されております財政検証に対するピアレビュー、これはおそらく再来年ぐらいになるのではないかと思います。それとの関係で、年金数理部会としては年金制度の安定性や公平性を重要なテーマとして掲げておりますので、勉強させていただいたことも踏まえながら、被用者年金の一元化を達成した後の安定性や公平性の意味することが何かということを考えつつ、将来に向かって取り組んでいきたいと考えております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
今、今後のピアレビューの話も少し出ましたが、今後のことにも関係しますけれども、何か。
○山本首席年金数理官 ピアレビューにつきましては、財政検証をピアレビューするのは年金数理部会の重要なミッションでございまして、本年、財政検証が予定されていますが、それが出た後に年金数理部会でも活動することになるかと思います。ただ、具体的な日程につきましては、また後ほど御案内させていただくような形にしたいと思います。
○菊池部会長 来年度、4月の新年度からピアレビューに向けた活動というか、作業が始まっていく。
○山本首席年金数理官 まだ財政検証そのものが出ておりませんので、それが出た後にということになるかと思います。
○菊池部会長 いかがでしょうか。
永瀬委員。
○永瀬委員 今回、委員として初めて参加させていただきました。さまざまな数値データ、全体像を見ることができましてこの機会を感謝しています。
先ほども御指摘がありましたけれども、新法65歳以上の平均年金月額を見ると、ここ10年ほどの間に2万から3万円ぐらい、男性の平均年金額は下がっているということが数値ではっきり示されました。それから、厚生年金加入が進むと、将来の基礎年金の下落を抑制する効果があるということは前回の財政検証で示されていますが、ここ数年で厚生年金への加入が進んだという前向きの数値も見ることができました。さらに、短時間雇用者に対しての年金加入が予想以上に進んだといった変化も、統計で示されました。
年金は、高齢期の生活に非常に大きくかかわりますので、今回は平均値だけでなく、年金の分布データが出てまいりまして良かったと思います。望むらくは夫婦単位で見てどうなのかということ。これも今後は資料として見てみたいと思います。これから先の年金の見通しがどうなっていくのかを考えるのに重要な報告書です。
また、付属資料の中に、-これはワークショップの中で申し上げたことですけれども-、遺族年金の時系列がなかったので、今後こういった資料もあります良いと思います。この資料は多くの研究者が参考にできる貴重な時系列資料が入っておりますので、そういったものも入れていただきたいと思っておるところです。
事務局の方には、緻密に対応いただきまして、よかったと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
最後に永瀬委員からございましたように、遺族年金、ほかに作業班では障害年金とついて出ていましたけれども、そこの部分が必要ではないかという今後に向けた課題として出されたところです。今後に向けてということで。
○山本首席年金数理官 遺族年金の統計は、これまで年金数理部会でとったことがなくて、共済でどの程度とれるか、交渉が必要な部分もありますので、事務局のほうで実施機関のほうとよく相談して、永瀬委員の御指摘にできる限り添えるように努力してみたいと思います。
○菊池部会長 よろしくお願いします。
ほかにいかがでしょうか。
枇杷委員、お願いします。
○枇杷委員 ほとんど感想みたいなことになってしまいますけれども、恐縮でございます。
最初に、今回の作業でいろいろなことを申し上げたのを、非常に迅速・適切に対応いただいたということで、大変感謝を申し上げたいと思います。
それから、いろいろな作業等を通じて、私も初めてこういうものをやって、公的年金の詳細のところを勉強させていただいたというのは、非常に有意義だったかなと思っております。特に、いろいろな経済の要素が、結果としてどういう影響を財政に与えているのかということをかなり緻密に分析されているということ。これは、非常に大きなところだと思いますし、国民に対しても、ある程度その辺はアピールといいますか、説明していったほうがいいのかなということを作業しながら思ったという次第でございます。
それで、説明のところで、スライドのバージョンを今回はおつくりいただいたので、非常にわかりやすくなったかなと思った次第ではありますが、本当の一般の国民の方からすると、まだまだボリュームとしてはあるかなと思っておりまして、説明の方法を工夫するという話ではむしろなくて、制度そのものの仕組みとか、それからどうしても専門用語が大変多うございますので、その辺を本当は変えていくほうがむしろ本質なのかなということを、この作業をしながらちょっと思った次第でございます。年金数理部会のミッションということでは多分ないと思いますけれども、感想としては、そういうことを思ったということです。
もう一つは、先ほどのデータの話で、これはとれる、とれないという部分があったわけですけれども、複数の運営主体で共通的に、整合的にデータをとっていくということは非常に大きな課題なのかなと思っておりますので、この辺は長期の課題ではありますし、場合によってはお金、予算もかかる話だと思うので、なかなか大変だと思うのですが、一応、一言だけ申し上げておきたいということでございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員、お願いします。
○駒村委員 事務局も非常に大変な作業をやっていただきまして、ありがとうございます。
もうさんざん議論した整理ですので、特に加える部分はありませんけれども、私が以前から非常に注目していた概要の13ページの年齢階級別の平均年金額、男女でどういう動向になっているのか。この13ページの図は、去年なかった図でありますけれども、加入期間が伸びているにもかかわらず、平均額が落ちているということを非常にわかりやすく説明していただいているなと思います。
本文は、このままの図ではないのですけれども、本文の説明をこの1枚の図絵に入れていただいて、給付乗率、単価の変更、支給開始年齢の引上げ、加給年金の対象、物価スライドと。いわゆる年金財政の給付をコントロールするさまざまなツールを、過去どういうふうに動かしてきたのか。それが今、どうきいてきているのかというのが1枚の図絵でわかるようになっているので、大変有意義な絵だと思っています。これは、学生にも年金の給付のパラメータを動かすと、こういうタイムラグでこうなっていくというのを説明する図としては、大変いい図ではないかと思っています。
この中にいろいろ工夫されたものが入っていますので、なるべく多くの方に、この図だけではなくて、見ていただきたいなと思いますので、年金局としても、いろいろなところでこの図を引用したり、議論のときに使っていただきたいなと。年金部会のほうにも、幾つかの図は資料として提供していただきたいなと思います。
よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 という御要望を含めてのご発言でございました。よろしいですね。ありがとうございました。
関委員、お願いします。
○関委員 私も感想になります。細かい、いろいろな作業をどうもありがとうございました。
ほかの方と同じような感想なのですけれども、前回に引き続き担当させていただいて、私のように細かい理解が難しい者にとって、図表がふえたことは、制度の理解にとても役立つと思いました。最初に御説明のあった10ページもそうですし、48ページ目以降の被保険者の年齢分布のところで男性と女性を切り分けたり、国共済と地共済を分けて140ページで検討した点などで、細かいグラフをつくっていただき、非常に読みやすくなったと思いました。
また、今、ほかの方々もおっしゃったように、資料2ができたことで、よりいろいろな制度がわかりやすく説明されていると思いました。これは、適切なことかどうかよくわからないのですけれども、来年度に向けてということで意見です。駒村委員がおっしゃったように、この中には、本文には入っていない図が幾つかありまして、本文の内容が非常にわかりやすくまとめられています。そういった図を本文に入れてもいいのではないかと少し思いました。今回ではなくて、次に向けてですが、こういったまとまった図というのはすごくインパクトがあるという感想を持ちました。
今回、新しい委員の方が何人も参加され、こういった作業に新しい方が入られると、いろいろな視点でいろいろな御意見が出て、内容の記述もより良いものになっていくということを感じました。最後のまとめの第3章の、例えば237ページあたりにも図表が入りましたし、説明も詳細になって、私自身、勉強になりました。どうもありがとうございました。
○菊池部会長 ありがとうございました。
浅野部会長代理、お願いします。
○浅野部会長代理 今回、平成29年度の公的年金財政状況報告について、取りまとめが行われましたけれども、平成28年度の報告書に比べまして、今、皆さんから出ておりますように、記述内容がより平易に、また充実し、分析についても、新たな分析を試みるなどしまして、さらに、これもさっきから話題に出ております、新たに視覚的に訴えられる概要が作成された。一般の方にもとっつきやすいものを作成して公表するということは、現時点でのベストエフォートということで、大変評価できるのではないかなと思っております。
その前提ではあるのですが、今後の議論につなげるものとして、2点ほどコメントさせていただきたいと思います。
1点目が、第78回の年金数理部会でも指摘させていただいた、データの精度と信頼性ということについてであります。今回の報告書では、第1章のパラグラフ1-1-3で、本報告書では、実施機関の責任により作成されたデータを基にして厚生年金全体の財政状況を取りまとめたと記載いただいております。これは、各実施機関のヒアリングの際に、データの精度や信頼性を確認させていただいたものでありますけれども、典型的な御回答としては、全数統計を使用しており、標本統計ではないということ。それから、前年比などでハイレベルなチェックをしているという御回答だったかと思います。
これにつきまして、もととなるデータの精度と信頼性というものは全ての基本ですので、今日的な視点で言いますと、例えばデータを確認・承認する体制の構築や、全数統計であっても、それを検証する手法の確立、その手法の妥当性の確認ということが、今後、望まれるのではないかなと思います。
それから、2点目が、財政状況の評価についてであります。この年金数理部会の役割は、年金制度の安定性確保の観点から、現状の財政状況がどのようになっているかというのを検証するのが最大の役割の一つということでありますが、今回の報告書では、公的年金全体の給付現価に対して、積立金の実績値と将来の見通しの金額との差額がどの程度の割合になっているかということで、これは第3章のパラグラフ3-5-12にありますように、2.8~3.0%のプラスという評価をしております。
これ自体、御説明にもありましたように、昨年度までの積立金の将来見通しとの比較をしていたこと等を考えると、制度全体で比較しているという点で前進ではないかなと思います。一方で、この2.8~3.0という、現時点での余裕度がどの程度のものなのかというのは、実は言及できていないということであります。この点についても、第3章のパラグラフ3-1-1で、深度ある分析を行うためには、それぞれの要素で生じた乖離が年金財政全体にどの程度の影響を生じさせるのか把握することが望まれると記載いただきました。
これは何を言っているかといいますと、感応度分析やストレステストの必要性について言っているということだと思います。現在実施中であります財政検証においても、ぜひともこうしたものが必要であるのではないかなと思います。その感応度分析やストレステストの結果があって初めて、現時点での余裕度である2.8~3%のプラスというものが持つ意味が明確になってくるのではないかなと思います。とりわけ、年金資産の運用は、今、株式など市場連動性のあるリスク性資産の投資ウエートが大きくなっておりますので、この必要性というのは増しているのではないかなと考えております。
以上、今後の課題ということで2点ほどコメントさせていただきました。
以上です。
○菊池部会長 浅野部会長代理から貴重なコメント、ありがとうございます。
事務局から何かございますか。
○山本首席年金数理官 今、2点、今後の課題ということで御指摘いただきまして、1つ目は、データの精度を確保していく。特に、共済とか複数の機関でデータを扱って、それを集計していくということですので、本当に条件が合った集計がなされているかどうか、そのあたりも含めてあるのだろうと思います。このあたり、年金数理部会では、出てきたデータを前提としてきたのですけれども、出てきたデータ自体が正しいかどうかというのは、年金数理部会ではこれまで見てこなかった部分でもございます。
昨年11月の年金数理部会で、浅野委員からデータの精度について御指摘をいただいて、ヒアリングの段階ではデータの精度というか、データガバナンスのあたりについて聞くということまではできていないところでございます。これはまた、委員の先生方とも御相談になるかもしれませんけれども、どのように聞く必要があるのかというあたりもよく相談させていただきたいと存じます。
もう一点ですけれども、今回、2.8%~3%プラスということで、その余裕がどの程度のものなのかということでございまして、これまで年金数理部会の乖離の分析をしてきた中で、偶然かもしれませんけれども、財政検証と実績を比べると、積立金がプラスになることが多かったものですから、そのプラスがどれだけ影響があるものかまでは踏み込んでこなかったということもございます。けれども、いずれマイナスになるような事態になったときに、そのマイナスというのはそのまま見過ごしていいのかどうかとか、そのあたりもよく判断しないといけない時期が来るかもしれませんので、おっしゃるようなストレステストのようなものも1つ参考になるかもしれないと思います。
そういった点、今後の課題として、事務局で研究させていただきたいと思います。
○菊池部会長 ありがとうございます。
一通り、委員の皆様から御意見賜った次第でございますが、よろしいでしょうか。
それでは、一部、野呂委員から御指摘ありました点につきまして、趣旨は明確ですので、ここで修文を読み上げることはあえてせずに、事務局と私のほうに一任していただいてよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、これをもちまして、本部会の29年度報告とさせていただきます。
全体を通しまして、何かほかにコメントなどございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、最後に年金局木下局長からコメントいただけるとのことです。よろしくお願いいたします。
○木下年金局長 ありがとうございます。与党の会議がございまして、遅れまして本当に申しわけございませんでした。
今回、平成29年度の公的年金財政報告書をこうして取りまとめをいただきまして、本当にありがとうございます。私が就任してから2回目の報告書の作成になります。昨年から分析の充実と、それからどうやって一般の方々に理解していただけるか、見える化ということで、図表もかなり駆使してお示しして、それを先生方にご検討いただいて良いものにし、今回さらに進化した形での報告書にまとめることができました。本当にありがとうございます。
これまでも、この部会とは別に作業班を5回ほどお願いして、精力的に時間をかけてご検討いただきました。本当にありがとうございます。本日も、遅れて参って、先生方の御意見を十分にお聞きしているわけではありませんけれども、さまざまな財政の分析手法等につきまして論点を挙げていただきまして、また、本日も先ほど代理のほうからご指摘がございましたように、分析手法につきまして、さらに踏み込んだ形で次の報告に向けて議論しなければいけないという御提案もいただきましたので、我々としても、それをしっかり受けとめて対応したいと思っております。引き続き先生方にも御協力をお願いしたいと思っております。
また、この部会の検討状況につきまして、1月30日に年金部会のほうに御報告しました。財政検証につきまして、実際の公的年金の財政が具体的にどういう状況に置かれているのかという現状を踏まえてレビューするのがこの部会でありますけれども、そうした取り組みと、いわゆる年金部会での制度の全体につきましての議論との連携というものが、これからも非常に大事になってまいります。ことしは、平成21年、26年、31年と、3回目の財政検証を迎えますので、これまでの御議論なども我々、十分頭に置きまして財政検証を始めているところでございますので、しっかりと対応したいと思っております。
先生方におかれましては、引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
○菊池部会長 どうもありがとうございます。
それでは、事務局から今後の日程等につきまして、お願いいたします。
○山本首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整の上、御連絡を申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上です。
○菊池部会長 それでは、ここまで長きにわたって、報告書(案)の作成につきまして、委員の皆様に御協力いただきまして、本当にありがとうございました。
それでは、本日はこれで終了したいと存じます。どうもありがとうございました。

                                                                                                    

                                                                                      

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