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2019年4月25日 第8回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検 討会」議事録

労働基準局労働関係法課

○日時

平成31年4月25日(木)10:00~12:00

 

○場所

厚生労働省専用第22会議室

○議題

・賃金等請求権の消滅時効の在り方について(意見交換)
・その他

○議事

○坂本課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第8回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を開催いたします。
委員の先生方におかれましては、本日の御多忙も折、お集まりをいただきましてまことにありがとうございます。
本日の委員の先生方の御欠席でございますけれども、鹿野菜穂子委員及び佐藤厚委員が御欠席でございます。
また、岩村正彦委員におかれましては、前回の検討会で御案内をしましたとおり、本年4月1日から兼職ができない中央労働委員会の常勤委員に御就任をされておりますので、本検討会の委員からは退任されることとなっております。
また、今回より東京大学大学院法学政治学研究科教授の山川隆一先生に、本検討会の委員に御就任をいただいているところでございます。
まず初めに、岩村委員が御退任をされ、現時点では座長が不在という形になっておりますので、改めて本検討会の座長についてお諮りをしたいと思います。
本検討会の開催要綱をお手元に配付しておりますけれども、開催要綱の3.運営の(4)の部分におきまして、検討会の座長は参加者の互選により選出するということにしております。この規定に従いまして、座長の選出を行いたいと思います。
座長の選出につきましては、事務局から事前に委員の先生方に御相談させていただきましたとおり、山川委員にお願いをしたいと考えておりますが、それでよろしいでしょうか。
(委員 異議なし)
○坂本課長補佐 ありがとうございます。御賛同をいただきましたので、山川委員に座長をお願いいたします。
それでは、座長に御就任いただきます山川委員より御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山川座長 山川でございます。この検討会は既に7回にわたって開催されて、議論が相当程度進んでいるということで、これまでの議論は一応フォローしたつもりではありますけれども、ニュアンスの差等はまだ把握し切れていない部分もあろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○坂本課長補佐 ありがとうございます。
それから、事務局にも人事異動がございましたので御紹介をさせていただきます。
4月22日付で新たに労働関係法課調査官に着任しました矢野でございます。
○矢野調査官 矢野でございます。よろしくお願いいたします。
○坂本課長補佐 それでは、以降の進行につきましては山川座長にお願いをいたします。
○山川座長 それでは、本日の議題ですが、事務局でこれまでの検討会の議論を踏まえて賃金等請求権の消滅時効に関する在り方についての論点を整理した資料を用意していただきました。本日は、こうした賃金等請求権の消滅時効の在り方の見直しに関する各論点について意見交換を行いたいと思います。
では、初めに事務局からお配りした資料の確認をお願いいたします。
○坂本課長補佐 それでは、お配りしました資料の確認をお願いいたします。
本日は、資料1種類と参考資料1種類の計2種類を配付させていただいております。資料につきましては縦置きの紙でありまして、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する主な論点の整理について」という標題のものでございます。
それから、参考資料につきましては横置きのものでありますけれども、「消滅時効の在り方に関する検討の参考資料」というものでございます。
その他、座席表をお配りしておりますので、不足がございましたら事務局までお申しつけいただければと思います。
○山川座長 よろしいでしょうか。
それでは、早速ですが、事務局から今、御紹介のあった資料の御説明をお願いいたします。
○坂本課長補佐 それでは、縦置きの資料、「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する主な論点の整理について」と記載をした資料につきまして説明をさせていただきます。
前回、3月26日の本検討会におきまして、この主な論点の考え方という資料を配付させていただいております。前回の議論を踏まえまして、事務局のほうでその資料をさらにアップデートする形で、主な論点の整理という形で記載をさせていただいております。項目順に説明申し上げます。
まず1のところでございますが、「民法と労働基準法との関係について」でございます。これまでの議論を踏まえますと、本検討会のテーマであります賃金等請求権の消滅時効の在り方の検討に当たりましては、1つは民法改正の趣旨を尊重し、改正民法と労働基準法を可能な限り合わせるといった考え方と、もう一方で賃金等請求権の特殊性を踏まえまして、民法と労働基準法とは別個のものとして整理するという考え方が御意見としても出ていたかと思いますが、そうした考え方につきましてどう考えるかというところが1つ目でございます。
「※」印のところに記載をしておりますとおり、労働基準法の賃金の請求権の消滅時効期間は現行2年という形になっているわけでございますけれども、こちらにつきましては民法の使用人の給与に係る短期消滅時効の期間であります1年を、労働者保護等の観点から修正する形で2年としております。
一方で、賃金以外の労働基準法の請求権、例えば月給以外ですので退職金ですとか災害補償の請求権が該当してきますけれども、こうしたその他の請求権につきましては、民法の原則としては消滅時効期間は10年という形になっているわけでございますが、労働基準法のほうで2年という消滅時効期間を設定しているという形になっております。
それから、2のところで賃金請求権の消滅時効期間でございます。
まず(1)のところで、賃金請求権の特殊性について記載をしております。考え方が①と②で少し分かれておりますけれども、まず①につきましては国民生活にとって極めて重要な債権であり、労働基準法において賃金全額払いの原則などの各種規制が設けられている。そうしたことに鑑みても、賃金請求権というのは保護の必要性が高い債権であると考えられる。
一方で、②のところでございますが、業種を問わず労働者を雇用する全ての企業に共通する債権でもありまして、また、労働契約という継続的な契約関係に基づいて大量かつ定期的、労働者によっては長期にわたって発生するという特徴もございます。
そうしたことを踏まえますと、契約当事者である労働者、使用者双方にとってそれぞれ意味は異なりますけれども、やはり特殊性を有しているのではないかと言えるかと思います。
そうした賃金請求権につきまして、時効制度の趣旨との関係でこうした特殊性をどのように考えるか。時効制度の趣旨につきましては、その下の「※」印で記載をしておりますけれども、長期間継続している事実状態の尊重ですとか、長い年月を経た場合に真実の権利関係の証明が困難になることによる不都合の回避といった時効制度の趣旨があるわけですが、そうしたものとの関係をどう考えるかというところでございます。
それから、「また」以下につきましては、諸外国の時効制度との関係についてどう考えるかというところでございます。
こちらにつきましては、お手数ですが、参考資料の17ページをごらんいただければと思います。参考資料の17ページでは、これまで本検討会でも有識者の先生方からヒアリングをさせていただいた中身をまとめております。諸外国における消滅時効の関係でございますけれども、当然ながら法制度の違いですとか、裁判の仕組みの違いというものがありますので、一概に日本の制度と単純に比較できるわけではございませんけれども、例えばフランスであれば左上のところですが、一般債権の消滅時効については原則5年ということが定められている一方で、その下ですけれども、賃金については労働法において民法の特則として原則3年という形の消滅時効が定められているところでございます。
それからもう一つ御紹介しますと、ドイツにおいては民法において主観的起算点から原則3年、客観的起算点から原則10年という形で、債務者に給付の拒絶権というものが発生するというふうに定められておりますけれども、その下のところにいきまして、賃金については特段、特例というものは設けられていないものの、その下の「・」ですけれども、労働関係に基づいて発生する請求権については労働協約の中で除斥期間という形で、客観的起算点から2~6カ月という形で権利が消滅するということが定められているというのが一般的という形になっております。
それで、資料のほうにお戻りをいただきまして、先ほど1ページ目の2の(1)まで御説明しましたので、次は(2)でございます。「一方」から始まる段落でございますが、いわゆる未払い賃金に関しましては、本来ある業務について指揮命令があったかどうか、労働時間かどうかという点につきましては、書類等の客観的記録で把握することが当然ながら求められるところでございます。
しかしながら、必ずしもこれを把握し切れない場合も現実には生じておりまして、そうした問題がさらに時の経過とともに確認が困難になるという実態がございますけれども、そういう実態について時効制度の趣旨との関係でどのように考えるかという問題でございます。
それから(3)でございますけれども、仮に賃金等請求権に係る消滅時効期間を見直す場合、実態面におけるこうした労働時間の把握、指揮命令の確認の徹底ということにつきましては、制度を見直すことによっていわゆる副次的に従来以上に企業にそうした適切な対応を促すことになるという法的履行の促進効果というものも想定されておりますが、そうした点についてもどう考えるかという点でございます。
それから、「一方」以下で記載しておりますのは、前回の検討会でも御意見をいただきましたけれども、企業におけるシステムの改修ですとか、例えば文書等の保管コスト等の費用が増大することについてどう考えるかという点でございます。
こうした観点につきましては、労使の意見も踏まえて実態論、技術的な問題だけでなく政策論としても整理をしていくことが必要ではないかという点を記載しております。
次に、2ページでございます。
2ページの一番上は(4)で先ほどの続きでありまして、2の(1)~(3)までの点を踏まえまして、労働基準法の消滅時効関連規定の合理性と消滅時効期間の在り方についてどのように整理をするかという点でございます。
それから、3でございますが、次は「賃金等請求権の消滅時効の起算点について」でございます。今回、民法改正がなされまして、従来民法は客観的起算点のみだったわけですけれども、今回新たに主観的起算点というものが創設をされております。
それで、(1)の冒頭の部分で、仮に改正後の民法と異なる起算点を設ける場合には、労働基準法独自の理由が必要になると考えられるが、改正民法において主観的起算点が今回新たに創設された趣旨、これは「※」印のところは下に書いておりますけれども、今回民法において主観的起算点を創設した趣旨といいますのは、民法の使用人の給料に係る短期消滅時効等、これは1年とか2年とか3年と類型ごとに分かれているわけですが、これらを単純に廃止しただけですと、全ての債権の消滅時効期間が一律に10年ということで大幅に長期化をする。そうした場合に、文書の保存費用など、契約に基づく行為の証拠保全のための費用ですとか負担が増加するといった懸念があったことから、単純に客観で10年にするだけではなくて、新たに主観的起算点を創設して、原則的な消滅時効期間については5年程度と、主観的起算点ということで5年程度という形に短くすることが必要と考えられた。
そうした点が、今回主観的起算点を民法で創設した趣旨でありますけれども、そうした趣旨と賃金等請求権に関するこれまでの労働基準法の解釈、運用、これは条文上、明記はしておりませんが、労働基準法上の賃金請求権につきましては客観的起算点ということで解釈・運用してきたわけですが、それをどのように考えるかという点を(1)で記載しております。
それから、(2)でございます。これもこの検討会で御意見は多々ありましたが、賃金等請求権につきましては基本的には主観的起算点と客観的起算点が一致すると思われますけれども、いわゆる「名ばかり管理監督者」の問題など、主観と客観が必ずしも一致しないような具体的なケースについて、その前の2の(1)のところで記載をしております賃金請求権の特殊性も勘案しつつ、どのように考えていくかという問題でございます。
「一方」以下につきましては、先ほど少し御紹介をしましたけれども、今回の改正民法で新設された主観的起算点というものにつきまして、これは新たに設定をされたものですので、では具体的にどういった場合が主観的起算点に当たるのかという解釈につきましては、今後改正民法が施行されて、その後の裁判例の蓄積等に委ねられているということについてもどのように考えるかという記載をしております。
それから4つ目、「年次有給休暇請求権の消滅時効期間について」でございます。年休につきましては、基本的には発生した年の中で取得するということが想定されている仕組みでありまして、未取得分の翌年以降への繰り越しというのは、制度趣旨に鑑みると本来であれば例外的なものではないかと考えております。そうしますと、年次有給休暇請求権の消滅時効期間につきましては、年休の制度趣旨を踏まえ、賃金請求権とは別途の整理が必要なのではないかという記載をしております。
それから、(2)のところでありますけれども、仮に年次有給休暇請求権の消滅時効期間を現行より延ばすということをした場合には、現行2年間は繰り越しができるわけですが、さらに延ばすということになりますと、取得のインセンティブという意味ではそれが失われてしまって、年休取得率の向上という政策の方向性にも逆行するという懸念があるのではないか。こうした点につきましては、引き続き労使の意見も踏まえて、これも政策論としても整理することが必要ではないかという記載をしております。
それから、5のところでございます。こちらにつきましては、これまでの検討会で詳細な議論をしていただいていなかったかもしれませんけれども、災害補償の請求権の関係でございます。
まず(1)の部分でありまして、労働基準法の災害補償の請求権の消滅時効期間でございます。これは現行2年ですけれども、一般的に考えて業務上の負傷・疾病を負った労働者が2年間、災害補償の請求をしないケースというのは考えにくいのではないかということを記載しております。
それから、(2)のところでございますけれども、災害補償の請求権と、民法の損害賠償権との関係でございますが、こちらにつきましては参考資料の33ページをごらんいただければと思います。こちらでは労基法の条文を記載しております。
33ページの一番下に、労働基準法の84条という条文を記載しております。「他の法律との関係」という見出しでございまして、少し読み上げますと、「この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行われるべきである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。」
2項で、「使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。」という規定がございます。
このように、基準法上の災害補償請求権につきましては、労災保険ですとか民法の損害賠償とも一種の関係の整理の規定が置かれているということでございます。
資料のほうにお戻りいただきますと、2ページの一番下、これは民法の損害賠償請求権との関係について記載をしておりますけれども、仮に先ほど御紹介した労働基準法の84条の規定がなければ、一応理論上は基準法に基づく災害補償の請求権と、民法の損害賠償請求というのは同時に請求することもできるわけでございますが、2つともそれぞれ要件が違いますので、その違いについて少し見てみます。
例えば、民法上の不法行為に対する損害賠償請求権については加害者の故意・過失というものが要件とされていて、その消滅時効期間については主観的起算点から3年間、今回民法が改正をされまして来年の4月以降につきましては不法行為のうち人の生命または身体を害するものについてはこれが5年間という形で改正されております。
そういった形で、民法の場合は主観的起算点から3年で、故意・過失が必要ということになっておりますが、労働基準法上の災害補償請求権については使用者は無過失責任を負うということになっておりますので、責任の範囲は少し広い形になっております。そうしたことが、法律関係の早期確定という観点から、消滅時効期間の在り方にも影響するのではないかということを(2)のところで記載しております。
続いて3ページでございますけれども、災害補償請求権との関係の続きでございますが、仮に災害補償請求権の消滅時効期間を見直す場合につきましては、先ほど御紹介したとおり、これは労災保険とも非常に密接に連携をしておりますので、労災保険の短期給付につきましても消滅時効期間をどうするか。また、そうした場合に他の労働保険、社会保険との給付との関係ですとか、併給調整というものをどう考えるかという問題でございます。
この点につきましては、参考資料の39、40ページで、先に40ページをごらんいただければと思います。
40ページにおきましては、労働保険、社会保険の関係法令におきます給付の消滅時効期間を記載しております。それで、短期給付につきましては2年間の消滅時効期間とされている一方、長期給付があるものについては5年という形になっております。
それで、先ほど申し上げた労災保険の短期給付の消滅時効期間を、仮に基準法の災害補償請求権とあわせて見直すということをした場合には、こうした他の社会保険、労働保険に対する影響といったものもどう考えるかというところでございます。
それから、ページが戻って恐縮ですが、39ページのところは条文を記載しております。健康保険法と国民年金法を記載しておりまして、例えば健康保険のほうであれば被保険者に係る療養の給付ですとか、その他もろもろの給付の支給につきましては、3行目の冒頭の部分ですが、同一の疾病、負傷または死亡について労災保険法等に基づく、相当する給付を受けることができる場合には行わないということで、労災のほうが優先をするという形で給付の調整がなされております。
国民年金につきましても、障害基礎年金の部分がまさに労災保険の相当給付と調整をするという形になっておりますので、このように考えますと、消滅時効期間の在り方を考える上でも、こういう併給調整が法令上もなされているということをどのように考えるかという点も論点になるのではないかと考えております。
それから、資料にお戻りいただきまして6の部分でございます。6は記録の保存の関係でございますけれども、労働者名簿や賃金台帳等の記録の保存の規定につきましては、紛争解決や監督上の必要性といった観点から設定をされておりまして、保存の目的というものを重視すればその期間は長いほど便利でありますけれども、使用者の負担という点もあわせて考えまして、現行では一律に3年間という義務が課されております。この義務に違反した場合については、罰金という形で罰則も設定されているというものでございます。
記録の保存の期間について検討するに当たりましては、刑事訴訟法に規定されています公訴時効、これは罰金刑であれば現行3年ということでありますけれども、そうしたものとの関係ですとか、記録の保存年限に関する規定の趣旨を踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効期間の在り方とあわせて検討することについてどのように考えるかという論点でございます。
それから、7でございますけれども、付加金の関係でございます。付加金の支払い規定につきましては、賃金等請求権の規定と連動したものと現行位置づけられておりまして、また、未払金の支払いを間接的に促す仕組みであるといった趣旨も踏まえまして、その請求期間については賃金等請求権を消滅時効期間とあわせて検討することについてどのように考えるかという論点でございます。
最後に8の施行期日等でございますけれども、まず(1)の部分につきましては資料冒頭の1のところとも連動しますが、労基法を民法に合わせるような考え方とするのか、民法とは別個のものだという形で整理をするのか。そうした関係性にも照らして、仮に見直しをする場合に施行期日をどう考えるかという問題でございます。
(2)の部分はやや実態のところでございますけれども、働き方改革関連法が現在施行、今後も順次施行していく。そうした状況も踏まえまして、企業の労務管理の負担が一層増大していくような実態についてどう考えるかという点でございます。
最後に(3)でございますけれども、仮に消滅時効期間を見直すとした場合に、改正法の施行期日以後のどの債権から適用するのかといった問題について経過措置を置く必要がございます。
この経過措置につきましては、①②と2種類ございまして、1つ目は民法改正の経過措置に倣うような形で労働契約の締結日を基準にして考える。労働契約の締結日が改正法の施行前か、後かということで新法、旧法の適用を分ける考え方でございます。
それから、②につきましては賃金請求権の特殊性等も踏まえまして、賃金等の債権の発生日を基準に考える。これが改正法の施行日前か、後かで消滅時効期間に差を設けるという形でございます。
このいずれかの方法が考えられるところでありますけれども、この経過措置を考えるに当たっても民法と労働基準法との関係をどのように考えるのか、あとは②の賃金請求権消滅時効期間の在り方というものをどのように考えるかといった点も踏まえて御検討をいただければと思っております。
ちょっと長くなりましたけれども、資料の説明は以上でございます。
○山川座長 ありがとうございます。
それでは、これまでの検討会での議論も踏まえまして、以上説明をいただきました各論点につきまして御質問や御意見がありましたらお願いいたします。どうぞ。
○森戸委員 御説明ありがとうございます。
いろいろコメントはなくもないんですが、きょうの会の目標というか、これについていろいろ細かい法的な論点も含め、意見なり確認なりをしたい放題していいんですかという質問です。
○山川座長 特に議論の中身で制約をすることは私からはないと思いますので、御自由に発言いただければと思います。
○森戸委員 きょう、何かこれをまとめたりするのかなと思いまして、そういうことではないんですか。
○山川座長 どうぞ、課長。
○長良課長 本日お出しした資料は、これまでの議論の蓄積もございますので、それを事務局のほうで整理をしたというものでございます。そういう意味では、これまでの御議論としてこういう形でまとめてみたのですが、その内容についていろいろ齟齬があるところとか、不足しているところとか、あるいはそれぞれの論点についてコメントなどがあればいただければということでございます。これ自体を資料として何かまとめるというような性質のものではございません。
○山川座長 よろしいでしょうか。
では、お願いします。
○森戸委員 では、幾つか最初にコメントさせていただきます。
いっぱいあることはあるんですけれども、まず表現ぶりは細かいことなんですが、1のところで「民法と労働基準法を可能な限り併せる考え方」と書いてあって、何をあわせるのかというのを明確にしたほうがいいかなと思いました。
それから、2の(1)の②のところで、これはちょっと内容にも入りますけれども、諸外国の時効制度との関係についてどうか考えるか。関係は別にないという答えだと思うんですけれども、ただ、関係はないが、参考にすべき点があるかという意味でもちろん書かれているんだと思いますが、既に研究会でも、ここでも議論が出たかもしれませんが、座長もかわられたので改めてもう一回蒸し返しみたいになって恐縮ですが、諸外国は割と民法で一般債権の原則よりも労働債権のほうを短くしている例も多くて、ドイツなどは協約でかなり短くしているというお話をここでも説明を受けました。
それで、確認ですけれども、日本では現行法も含め、いわば労基法の時効は強行規定という言葉でいいのかどうか知らないですが、それより短い時効を就業規則とか協約とか契約で設定することはできないというふうに理解されていて、今後もそういうことなんだ、つまり、もし時効が5年になったときに協約とかで、でもうちの会社の賃金請求は3年だと定めるのはだめだという理解でいいのか。
ここで、やはり諸外国を参考にと言っている以上、ドイツではこういうことができていますよねという資料が出ているわけだから、日本ではどうなんですかというのは一応気になるところだし、2年だから余り気にしなかったけれども、5年になったら何か短くできないんですかというニーズはあるかもしれないので、当たり前みたいなことかもしれないですが、その点は一応確認させていただけたらと思うのですが、それはいかがですか。
○山川座長 その点、いかがでしょうか。
○坂本課長補佐 事務局の認識としましては、これは労働基準法に設定されている権利でございまして、同じく労働基準法の13条に、この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約については無効とした上で、無効となった部分は法律で定める基準によるという規定がございますので、個々の契約で、例えば現行2年ですけれども、1年間の消滅時効にするというものを定めたとしても、その部分は無効となって法律の規定に従って2年となるので、その考え方につきましては特段規定を置かない限りは今後も継続されるというふうに考えております。
○森戸委員 時効は労働条件なのかという話かもしれませんけれども、そういうことで理解されているし、そういうことだということで理解しました。その点、ありがとうございました。
○山川座長 ほかにもしありましたら、続けてでも結構ですが。
○森戸委員 小出しにしますので。
○山川座長 では、ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
水島委員、お願いします。
○水島委員 御説明ありがとうございました。
5の災害補償の(2)では民法不法行為との比較、そして(3)で労災保険の短期給付及び労働保険・社会保険の給付との比較となっています。これらも非常に重要な論点ですが、やはり一番影響があるのは労働基準法の災害補償請求権と労災保険の給付のところで、そこがずれてしまうと、労基法上の災害補償の使用者責任の担保が労災保険法でなされているというところが果たせなくなってしまいます。この点を1項目挙げていただく必要があるのではないかと思いました。以上です。
○山川座長 それは、何かございますか。よろしいでしょうか。もっともな御指摘かと思いますが。
○坂本課長補佐 次回以降の資料の作成に当たりまして、検討させていただきます。
○森戸委員 今の点で、私もいいですか。同じ意見で、恐らく水島先生もそうだと思うんですけれども、5の(1)のところで「業務上の負傷・疾病を負った労働者が2年間請求しないというケースは考えにくいが」ということだけが理由みたいになっているので、これを書くともちろんけが、病気が大変なものならば、それは普通は請求するけれども、余りこれだけが理由だと、賃金だって2年間請求しないことは余りないでしょうとも言えてしまうので、ここだけ災害補償は特殊ですよという話は、むしろその後のところのほかの社会保険の関係もそうだし、ここがずれると労災保険が事故で消滅して、災害補償が後ろ3年残ってしまうというような話はやはりおかしいよねというほうが、より重要な話だという気が私もしました。
○山川座長 では、そこは次回以降の資料の整理のときによろしくお願いします。ほかにありましたらどうぞ。
では、安藤委員お願いします。
○安藤委員 今、森戸委員からあった災害補償の1つ目の2年間請求しないケースは考えにくいという話ですけれども、賃金債権の場合、それも特に短期的な雇用関係ではなく、長期的な雇用関係の場合、2年間だと請求しづらいというようなことがあり得るのだということですね。例えば労災でけがをしたなどトラブルがあったのに請求しないということは考えにくいけれども、時間外労働について認識の違いがあっても、それを今の段階で強く訴えたら関係がまずくなるというようなことを考えて判断を先送りして、離職時に訴え出るということはあり得るわけです。どちらかというと賃金債権についてなぜこの2年間請求しないということが起こり得るのかということを丁寧に立論するほうが有益な論の立て方かと感じました。以上です。
○山川座長 賃金請求権についてのということですね。ありがとうございます。
どうぞ、水島委員。
○水島委員 今、安藤委員がおっしゃったことはもっともだと思うんですけれども、負傷型の場合はおっしゃるとおりなのですが、例えばハラスメントを受けて精神的な症状が出たような場合でありますと、業務上であるということを隠したまま健康保険を利用することがあるとは思います。
○山川座長 ありがとうございます。事務局からは、その点は何かございますか。特によろしいですか。
では、どうぞ。
○尾崎労災管理課長補佐 労災保険課ですけれども、おっしゃるとおりだと思います。
○森戸委員 ほかの点もいいですか。
○山川座長 どうぞ。
○森戸委員 今度はまたちょっと違う話というか、表現ぶりかもしれませんけれども、2の(3)の最後とか、それから4の(2)の最後に「政策論としても整理することが必要ではないか」と出てきますが、これはどういう意味か。
一応、今やっているのも政策論かなと思っていたのですけれども、政策論というのは「労使の意見も踏まえ」というところにかかっているのだろうと思うのですが、ほかのそういうふうにまとまっていないところの中で、一定の項目だけ政策論として整理するというのはどういう意味ですか。余り聞いてはいけないことを聞いていたら謝りますけれども、もうちょっと教えていただけたらと思います。
○山川座長 どうぞ、長良課長。
○長良課長 開催要綱を席上配布資料としてお出ししているのですけれども、検討事項の中で我々の整理としてこういう検討会の検討事項を記載している部分でございますが、労働基準法第115条における賃金等請求権の消滅時効の在り方について、法技術的、実務的な論点整理を行うという整理をしていたところです。
それで、本検討会の議論において、これまで法技術的、実務的な論点の整理以外の御意見も多数いただいておりますので、そういったものについても本検討会での直接的な守備範囲ではもしかしたらないかもしれないけれども、そういった観点も含めて整理をしていくことが必要ではないかという趣旨で、そういう記載をさせていただいたところでございます。
○山川座長 よろしいでしょうか。
○森戸委員 はい。
○山川座長 ほかはいかがでしょうか。
今、課長のおっしゃった点はこの検討会のターゲットともある意味ではかかわっていて、政策論的なこともいわば完全にここで結論を出すのか、あるいは労政審等で最終的には議論につなげていくようなものなのか。そういう点にもかかわりがあるということでしょうか。
○長良課長 おっしゃるとおりかと思います。もちろん、本検討会の開催の契機といたしまして、労働政策審議会のほうで労使双方からこういう検討の場を設けて多面的な検証をすべきだという御議論があったことを踏まえて、本検討会を開催しているということでございます。
一方で、そういう意味では本検討会の検討の範囲というものと労政審との関係というのは、ぎりぎり言えばおっしゃるようにある程度の線引きがあったほうがよいのかもしれませんが、いろいろ本検討会でもヒアリングをやったり、実態論も労使を初めとしてお聞きをしたり、委員の先生方からも先ほど申し上げた法技術的な論点にとどまらない御意見もいただいているところでございますので、そういったものを一つの形として検討会として整理するというのもあり得ることだと思います。
もちろん、本検討会自体が労政審のある種の付託を受けて行っているということもございますので、最終的には労政審での議論を経て総合的に判断をされていくものだというように考えてございます。
○山川座長 ありがとうございます。この(3)に書かれているような政策的考慮についても議論しておくというような感じになるということでしょうか。
どうぞ、ほかにありましたら御自由にお願いします。
では、安藤委員どうぞ。
○安藤委員 2点確認なんですけれども、今回どちらかというと新しく出てきたものは5番の話だけという理解でよろしいのですかというのがまず1点目ですが、いかがでしょうか。
○坂本課長補佐 5につきましても従前から論点には入れていたんですけれども、少し詳し目に記載をしているのはこの部分だけかと思います。
○安藤委員 ありがとうございます。
あとは、例えばヒアリング等で労使の意見も聞いた中で意見が割れているものもあれば、意見の方向が一致しているものもあったと思いますけれども、例えば4番の有給休暇請求権の消滅時効の話というのは、労使どちらもこのインセンティブ論に立脚して引き延ばすことはふさわしくないのではないかという形で意見が合わさっていたと思いますので、ここについては(2)の最後の「労使の意見も踏まえ、政策論として整理する」というのは、ここはある程度方向性が見えているのではないかと思うのですが、どの点についてはここの検討会での議論、または労政審の形で意見を聞いたわけではなくて、来ていただいた方の意見というふうにも捉えることができるわけですが、話を聞いた中で労使の意見が一致している方向の論点と、ここではまだまだ乖離がある論点を整理しておくことは、この後の別の会議体への議論が続いていく上でも有益だと思うので、そういう整理の仕方もあるのかなと感じました。これは、感想です。
○山川座長 ありがとうございます。今の点は、この資料と、それから報告書の整理の仕方にもかかわってくるかと思いますが、何かございますか。
○長良課長 おっしゃるとおりかと思いますので、ヒアリングなどで意見が比較的一致しているところと、意見に関して乖離がある部分というのを少し峻別するような形で、今後論点の整理を進めさせていただければと思います。
○山川座長 あとは、今、安藤先生からお話のあった前半の点ですが、先ほど水島先生からもお話のあったとおり、使用者の損害賠償責任等の免責への影響というのは、ある意味、具体的な考慮すべき点が出てくるかと思いますので、この資料なのか、あるいは報告書の中なのかわかりませんけれども、ここを変えるとこのような点を検討する必要がさらに生じるといったことも書き込んだほうが、これまで余りこの点は議論されていなかったということでしたので、さらに具体的な点も書いていただけると、どこに書くかというのはまた別ですが、わかりやすくなるかと思いますので、よろしくお願いします。
○安藤委員 最後の8番の「施行期日等について」の(3)ですけれども、ここでこれまでも何回か議論に出たように、既に締結された労働契約に関しては、仮に消滅時効が2年から延長されることになった場合の話ですが、従前の期間が利用され、新たに契約されたものについては延長された場合にはそちらに従うというのが①で、②はそうではないというものですけれども、これについて今回の開催要綱には「法技術的な論点整理」とあるわけですが、これは①ではなく②にするのは可能かといえば可能なのですか。
これは、ほかの法律でこういう形で②に相当するような形での経過措置というか、適用のされ方をしている先例があるのか。そして、もしなくてもこれは可能なのかということについて教えていただけますか。
○山川座長 どうぞ、どちらからでも結構です。
○長良課長 技術的には、①②いずれも可能かと考えております。それで、こちらで以前御紹介をしました退職金の消滅時効期間につきましては、昭和63年の法改正で従前の2年から5年に延ばしたことがございますが、その際の経過措置は②の形を使っているということでございます。
一方で、契約の締結日をベースとするというのが今回の民法改正の整理の仕方ということでございますので、その点は並列して今、記載をさせていただいているところでございます。
○森戸委員 今の安藤委員の質問は、退職金の先例は重要だと思うのですが、今回の民法改正で民法の考え方は今、御紹介になったけれども、何かほかの法律で時効とかを見直したときに、基本は契約ベースなのかと思うんですが、②みたいなやり方をとったものもあるんですかとか、そういうことがどちらかといえば重点だったかなと思うのですが、そういうのはないということですか。
○坂本課長補佐 済みません。その点は、追って確認をさせていただきたいと思います。
○森戸委員 でも、民法自体は①なんですよね。
○坂本課長補佐 はい。
○山川座長 今の点ですが、民法の経過措置の中に①に相当する規定ということでしたか、それとも個別法、整備法でということでしたか。
○坂本課長補佐 こちらは、参考資料に民法の一部改正法の条文を入れていまして、ページでいうと38ページでございます。こちらは整備法ではなくて民法一部改正法の附則でございますけれども、38ページの下に附則の10条という規定がございます。それで、「時効に関する経過措置」という見出しで、括弧書きは後ほど説明しますけれども、「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の援用」と書いてあるのですが、4項で消滅時効の期間もありますので、これについては「なお従前の例による」。
それで、1項の「債権が生じた場合」の後に括弧書きがありまして、「施行日以降に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む」という形になっておりますので、民法も前回鹿野先生がたしかおっしゃったかと思いますけれども、原則的には債権の発生日をとりつつも、その債権が契約とか法律行為に基づいて発生している場合については、その法律行為の時点が施行日の前か後かというもので見ていくという形でございます。
それで、賃金債権につきましても当然、契約に基づいて発生する債権でありますので、考え方としてはまさにこの附則の10条の括弧の中を使いまして、民法と同じにするのであれば法律行為である労働契約の締結日が施行日の前か後かというところでございます。
○山川座長 ありがとうございます。
今の点は、退職金の改正のときとの関係では、これは私のコメントになってしまうかもしれませんけれども、退職金というのは原因である法律行為が労働契約であるとすると、入社のときに退職金債権が発生しているというふうに考えるかどうかという問題にかかわってくるのかなと思います。
一般的には、退職金というのは退職時に発生するという見解が多いのかもしれませんが、そういうことで労働契約の場合は債権というものを一体どう考えるか。賃金債権についても具体的債権と抽象的債権があって、差し押さえなどの対象になるのは将来にわたる債権ですけれども、具体的に裁判所に請求できる支分権と言われるものは労働によって発生する。
しかし、それは法律行為によって発生するものではないからどう考えるのかとか、いろんな論点はあるかと思いますけれども、この原因である法律行為は労働契約の締結という整理でよろしいわけでしょうか。多分、それしかないんじゃないかと思いますが。
○坂本課長補佐 そのような理解でございます。
○森戸委員 余り細かい議論をする場じゃないかもしれませんが、今のお話でよろしいですか。
退職金債権は確かに契約締結時に発生していないだろうと考えるのが一般的かと思うんですけれども、20年後の賃金債権は発生しているんですか。
○山川座長 それが、まさに論点になるということですね。
だんだん細かい法技術的な論点になりますけれども、先ほど言いましたように例えば債権差し押さえなどをするときは将来にわたる賃金債権は差し押さえできますので、抽象的な債権は労働しなくても発生しているということになるんですね。
しかし、裁判上は将来の賃金債権の請求はできませんから、賃金債権というものも2つあるということになって、政策的なことを考えるとどちらで捉えていくかということかと思います。売買代金債権の場合は契約によって直ちに発生して、あとは期限がついているかどうかという問題で、売買契約と労働契約では違ってくるということかと思います。
ちょっと細かい話にもなりましたが、ほかにありましたらどうぞ。
では、長良課長どうぞ。
○長良課長 事務局から御質問のような形で大変恐縮なのですけれども、私どもの理解としては改正の民法の経過措置につきましては、ただいま坂本のほうが説明したとおりの経過措置規定になっておりまして、これについては何か契約類型によって区別をしたりしているものではなく、一律で実は設けられているものでございます。
それで、賃金債権については今、座長がおっしゃったように基本権と支分権のような整理があるということで、そういう意味で若干特殊なのかなという議論もあるかとは思うのですが、例えば賃金債権以外でこのような債権の中で基本権、支分権のような2つの債権を想定しないといけないようなケースが何かほかにあったら御教示いただければと思うのですが、いかがでしょうか。
○山川座長 民法がこのように整理したというのはそのとおりで、問題は政策論としての労基法ではどうするかというお話だというのが前提になりますけれども、賃貸借の賃料請求権についても同じようなことが言えるかもしれないなという感じはします。賃貸借契約によって抽象的な賃料請求権が発生して、具体的な賃料請求権となるのは対象物を利用可能に置いた状態により発生するという整理だったと思いますが、民法ではさっき申しましたとおり、恐らくそれも含めてこのような経過措置になっているのかなと思います。その辺の議論までフォローしておりませんが、ほかはいかがでしょうか。
私からいろいろ質問するようで恐縮なんですけれども、これは普通の民法上の債権と労働基準法上の賃金債権の違いとしては、監督署の役割というものが出てくる。刑罰法規だからというのもありますし、監督署が法の実現を行うということで、それとの関係で民法の時効ですと実体法上の権利の消滅という構成をとりますので、時効の援用というものがあるのですが、監督署がこれにかかわる場合、時効の援用というのはどうなるのかということです。細部までフォローし切れていないかもしれませんが、この点は既に検討会で紹介されたでしょうか。
○坂本課長補佐 明示的にこの検討会で御議論いただいた記憶はございませんが、労働基準法等のコンメンタール等によりますと、あくまでも民法の特別法として労基法は定められていて、労基法上は時効の援用とか中断については特段の規定を置いていないので、そういう場合は民法が一般法として適用されるという理解かと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかにありましたら、どうぞよろしくお願いします。
○森戸委員 私はないんですけれども、情報提供として、岩村前座長は座長だけれども、自分の意見を結構おっしゃっていたので、ぜひ山川座長もキャラクターの違いは承知しておりますが、いろいろ言ってもいいのではないかと思ったという感想です。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。進行方法についても、御教示をいただきました。
特にさっきの監督の役割というのをどう考えるかというのは実務上ちょっと出てくるかなと、あとは公訴時効が3年になっているという点とか、非常に考えることはたくさんあるなという感じはしたところです。
森戸先生のお勧めに従って、個人的な感想を言うとそのくらいなのですが、あとは3の(2)のところで主観的起算点の解釈については今後の裁判例の蓄積に委ねられている。それはそのとおりなんですけれども、客観的解釈の起算点についても下級審判例が多かったと思います。要するに、権利を行使し得るときというのは一体どういう場合なのか、そういう点についても判例の展開はあったかと思います。直接、検討の対象に関連することではないかもしれませんけれども、つまり客観的起算点の解釈によって硬直的な結果となるのを防ぐ。多分、そういう観点からいろんな適用の在り方がなされていったのではないかというふうに記憶しています。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 これは事務局に教えていただきたいんですけれども、現時点で事務局がまだ調査が足りていないというか、まだまだ検討が必要だと思っている論点にどういうものがあるのかということを教えていただけないかと思います。
個人的にはこれまで何回か同じような発言をしておりますけれども、仮に期間を変えたときに何が起こるのかということが大事なものであって、年次有給休暇の消滅時効については仮に期間を延ばしたとすると人々の行動がこう変わるだろう。これは、政策論としてふさわしい方向ではないので引き延ばす必要はないのではないかというような立論をされていたわけです。また例えば2の(2)で未払い賃金についてのお話で、客観的記録により労働時間を把握することが求められるが、把握し切れない場合があるというのは、あくまでもこれまでの指揮命令のやり方の話です。口頭で「これをやっておいてよ」というような指示があった場合には、それはいつまでという指示があったのかとか、それが仕事に入るのか、入らないのか。労働者側が自分である意味、勝手に合格点が出ている書類をさらにブラッシュアップした。これは労働時間なのかどうかというような話はあり得ると思うのですが、今回仮に消滅時効の在り方を整理して、長くした場合に人々の行動がどう変わるのか。
例えば、全ての指揮命令はメール等で記録が残るような形で出すように変わるのではないかとか、変化するはずです。ここに書いてあるような、時の経過とともに確認が困難になるというのも、担当の上司が配置転換されたとか、退職してしまったとか、こういうことをいろいろこれまで想定するものとしてお話しいただいたわけですが、恐らくルールが変わったら、より明確に記録を残す形で実務が変わってくるだろう。
そのことを踏まえた上ででも、事後的な把握が難しいという懸念が残るのかどうかなどを検討する必要があるだろうということをこれまで発言してきたわけですが、事務局のほうで今の時点で大体延長するか、それとも現行にするか、またその他について、考え方は整理されていると思われている論点と、まだまだ検討が不十分だと思われている論点がもし整理されているようだったら、教えていただけますか。
どちらかというと、まだ不十分だと思うものについて考えたほうが有益かと思いますので、よろしくお願いします。
○山川座長 ありがとうございます。重要な御指摘かと思いますが、事務局のほうでこれからもし改正した場合の影響等についてさらに検討を要すると思われる点は何かありますか。
○長良課長 今おっしゃった点で申し上げますと、そういう意味では余りこれまで議論していなかった災害補償の部分が、もしそういう御意見がお伺いできればと思うところでございます。
あとは、これは事務局から先生方へもし御知見があればということなのですが、これもほとんど議論していないのですが、7番の付加金のところでございます。付加金のところは、裁判上の請求の期間として今2年という定めを置いておりますが、ここについては「賃金等請求権の消滅時効期間と合わせて検討することについてどう考えるか」ということで、比較的現行の規定ぶりからパラレルに整理をしているのですけれども、実態と申し上げますか、付加金の裁判などの実態がもしあるのであれば、そういう御知見をお伺いできれば整理にも役立つかなという気がしておりますので、そういった点についてもしあればお願いしたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。災害補償の点は、先ほど水島委員もおっしゃられたかと思いますが、仮に災害補償請求権の時効が労災保険よりも長くなった場合には、その免責の期間にずれが生じるということで、労災保険の目的との関係でどうなるのか。
水島先生、そういうことでよろしかったでしょうか。目的が十分達成されなくなってしまうのではないかということも含めてかと思いますが、そういう議論ですが、改めてそのあたりも御検討いただければと思います。
付加金については、法律の先生方からということになるかと思いますが、いかがでしょうか。
○水島委員 付加金についてですが、もちろん個人的な意見ですけれども、現行制度が連動したものと位置づけられていますので、賃金請求金の消滅時効期間と合わせる方向での検討になろうと思います。
そうした場合に、付加金の額が非常に多額になるという御指摘はありますが、付加金は、必ず同一額の付加金の支払いを命じなければいけないものではなく、命ずることができるというものですし、付加金を請求した事案において常に付加金の支払いが命じられているわけでもないことから、多大な使用者側の負担になるという御懸念はそれほど当てはまらないのではないかと私は思っております。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
どうぞ、森戸委員。
○森戸委員 私も同じ意見でして、連動させないということになると、要は損害賠償ではないけれども、特にこういう場合は最大2倍払わせるべきだろうという趣旨だったとすれば、連動させないと、またそれはそれで付加金とは何かという別な議論をしなければいけないのかなという気もしますので、普通に考えれば連動させていくのかなと思います。
それで、実際は水島先生がおっしゃったように、そもそも今でも絶対命じられるわけではないのと、ちょっと希望的観測というわけでもないですけれども、裁判官の裁量である程度、金額の全体の妥当性みたいなものを見る幅の問題なので、そこはうまく裁判官が判断してくれるんじゃないかと思ってはいるのですが、でも、その幅が広がれば理論的には物すごい額にはなり得るので、余りそういうふうなことを期待してはいけないのかもしれないですけれども、基本は水島委員がおっしゃったように私も思います。
○山川座長 付加金に関して、どういう場合に全額かとか、払わない、ゼロかというのももちろんあるんですけれども、その点は最高裁でも明確には言っていないかと思いますし、下級審でもそれほど明確なものがあるわけではないのですが、単純な感想としては割増賃金の場合の労働時間該当性等について争われた場合が多い。
このように使用者が判断してもやむを得なかったであろうというような事情があると、全額の支払は命じないということになりますし、逆に意図的というか、悪質な法違反であると全額の支払いを命じるとか、その中間をどう考えるかはいろいろあるのですけれども、そういう形かなと思いますが、ちょっと簡単過ぎる整理かもしれませんので、法律の先生方から何か異議がありましたらお話しいただきたいかと思います。
検討がさらに必要と思われるのは、今の2点くらいということでしょうか。では、お願いします。
○長良課長 先ほどの安藤委員のお話しとも若干関連をしているのですけれども、もう一点、実は労働時間の把握、あるいは企業のコストという意味で申し上げますと、6番の記録の保存の在り方とも関連してくるのかなと考えてございます。
それで、6番の記録の保存の今のまとめ方は、最初の3行は現行の制度趣旨を書いたものでございますが、保存については労働基準法上の使用者に係る義務規定でございますということで、刑事訴訟法の公訴時効との関係や、現行制度の趣旨を踏まえつつ、在り方とあわせて検討することについてどう考えるかという形で、これまでの議論を踏まえてこういうまとめ方をしておりますが、先ほどの安藤委員の御意見などを仮にこの記録の保存との兼ね合いで整理する場合、今のこの書きぶりで十分なのか、あるいはもう少しこういった論点も付加すべきだというようなことがあれば、御見解をお伺いできればありがたいと思います。
○山川座長 コスト負担等も含めてということでしょうか。
安藤委員、何かございますか。
○安藤委員 これは前回も発言した内容でありますが、これまで出てきたコストについてのお話というのは、ある一例について数千万などというような数字でしたか、数字は忘れてしまいましたが、1つ例が挙げられただけでありまして、実際問題、この記録の保存に現行で3年間の保存義務があるわけですが、これに対して大手企業だったら、または中小企業だったら、場合によってはたくさんの人の登録を受けている派遣企業だったら、どのように管理をしていて、どのくらい費用がかかっているのか等、現行の3年の場合についての実績はあるわけですから、それについて把握しておくことが有益なのではないかと個人的には思っております。
最近、私も研究室が狭いためスキャナーを買いまして、山積みになっている資料を片端からスキャンしてデータ化してしまう。そうすると、部屋がすっきりするということで、デジタル化してしまえばかなり片がつくということも考えられますし、もしかしたらそれだと証拠としての能力が落ちるのか、落ちないのか等も少し気になるのですが、実際問題、企業がどのように実態として管理をしているのか、そしてどのくらいのコストを負担しているのか。これについては、調べておくと有益なのかなと感じております。以上です。
○山川座長 ありがとうございます。ヒアリング等というよりも、これは可能でしたら何か検討していただければと思いますが、よろしいでしょうか。
それ以外に、何かございますでしょうか。
では、本日の資料については以上のような御意見をいただいたということでよろしいでしょうか。
それでは、定刻よりも少し早目ですが、この資料に関しての議論はここまでにさせていただきたいと思います。
次回の日程等について、事務局から説明をお願いいたします。
○坂本課長補佐 次回、第9回の検討会の日程につきましては現在調整中でございますので、確定次第、御連絡を差し上げたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。ほかに特段ございませんでしたら、これで第8回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を終了いたします。
本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございました。

 



 

 

 

(了)

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