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2019年3月26日 第7回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」議事録

労働基準局労働関係法課

○日時

平成31年3月26日(火)19:00~21:00

 

○場所

厚生労働省専用第22会議室

○議題

・賃金等請求権の消滅時効の在り方について(意見交換)
・その他

○議事

○岩村座長 それでは、定刻でございますので、ただいまから第7回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を開催することといたしたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、年度末の大変お忙しい中かつ夜遅くにお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、佐藤厚委員が御欠席でございます。
本日の議題でございますけれども、事務局のほうで、これまでの検討会での御意見や労使団体などへのヒアリングを通しまして、賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する各論点を整理した資料を用意いただいております。本日は賃金等請求権の消滅時効の在り方の見直しについて、これまで御議論いただいたところを踏まえて全体を通した意見交換を行いたいと存じます。
まず初めに、お配りいただいた資料の確認を事務局からいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂本課長補佐 それでは、お配りいたしました資料の確認をお願いいたします。
資料としましては、資料1種類、参考資料1種類でございまして、資料につきましては縦置きの紙で「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する主な論点の考え方」と記載したものでございます。参考資料につきましては少し厚いものですが、横置きのもので「消滅時効の在り方に関する検討の参考資料」でございます。その他、座席表をお配りしておりますので、不足がございましたら事務局までお申しつけください。
○岩村座長 ありがとうございました。
資料についてはよろしいでしょうか。
それでは、まず最初に事務局から資料の説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○坂本課長補佐 それでは、資料について説明いたします。基本的には縦置きの「資料」と書かれたものに基づいて説明をしたいと思います。こちらの資料につきましては、各論点につきましてこれまでの検討会における委員の先生方やヒアリング等における議論をまとめたものになります。
まず1ページ目の①の部分でございますが、民法と労働基準法との関係ということで4つほど御意見を記載しております。
まず1つ目の御意見につきましては、民法改正は今回の検討の契機ではありますけれども、あくまで民法と労働基準法は別個のものとして位置づけた上で、労働基準法上の消滅時効関連規定については民法と異ならせることの合理性を議論していけばよく、仮に特別の事情に鑑みて労働基準法の賃金等請求権の消滅時効期間を短くすることに合理性があるのであれば、短くすることもあり得るという考え方という御意見を記載しております。
2つ目のポツでございますけれども、労働基準法の性格としまして最低基準を定めるものであるという趣旨に照らすと、民法よりも短い消滅時効期間を労働者保護を旨とする労働基準法に設定するのは問題であるという考え方の御意見を記載しております。
この関連で少し参考資料を説明させていただきますと、参考資料の4ページをごらんください。現行の労働基準法115条におきます請求権の消滅時効期間について記載しております。表をごらんいただきますと、幾つか種類を分けておりますけれども、一番左側のところで賃金債権(退職手当以外)、災害補償、その他、退職手当。それぞれ現行の労基法115条でいきますと、賃金、災害補償、その他の請求権につきましては2年間の消滅時効、退職手当につきましては昭和63年の改正によりまして5年間となっております。これは民法の消滅時効期間の規定との関連で見ますと、賃金請求権につきましては、民法上、現行では短期消滅時効で1年となっているところを、労基法で2年という形にしております。一方で、退職手当及び災害補償その他の請求権につきましては現行民法によりますと一般債権として10年の消滅時効期間でありますものを、労基法で2年ないし5年としているものでございます。
続きまして、資料に戻りまして①番の続きの部分でございます。3つ目のポツでありますけれども、賃金等請求権の消滅時効期間の検討に当たっては、改正民法の施行期日であります2020年4月1日も念頭に置く必要があるのではないかという御意見でございます。
4つ目でございますけれども、賃金等請求権の消滅時効については仮に見直すとなると企業の実務にも大きな影響を及ぼすということで、多面的な観点から議論を尽くす必要があるのではないか。また仮に賃金等請求権の消滅時効の見直しを行う場合、働き方改革法の施行に伴い生じている企業の労務管理の負担が一層増大するという懸念があるのではないかという御意見でございます。
この関連も、今回参考資料の一番最後に新しい資料を追加しておりまして、参考資料の39ページをごらんいただければと思います。昨年の通常国会で成立しました働き方改革関連法の施行期日につきまして一覧でまとめたものでございます。例えば労働基準法関係で申し上げますと、労働時間の上限規制ですとか年次有給休暇の取得義務につきましては、大企業の場合はいずれも平成31年4月1日、今年の4月から施行される形になっております。32年という形で見ますと、例えば中小企業に係る労働時間の上限規制の部分ですとか、下から2番目のところでパートタイム労働法・労働契約法関係ですけれども、同一労働・同一賃金の大企業の部分が32年4月1日から施行されることになっております。
続いて、資料のほうにお戻りいただきまして、②番のところでございます。②番は賃金請求権の消滅時効期間についてでございまして、1つ目のポツは、労働基準法は労働者保護を目的とした法律であることを踏まえると、民法よりも短い消滅時効期間を設けることは問題であるとの考え方もあり、例えば病気休職をした後に解雇された労働者が未払い賃金を請求した場合、既に2年間という時が経過していて時効よって賃金債権が消滅してしまっているといった形で、現行制度下でも具体的な問題が発生していることを考慮する必要があるという御意見でございます。
その下の丸でございますけれども、消滅時効期間の検討に当たりましては、賃金債権が業種を問わず労働者を雇用する全ての企業に共通して関連する債権である、また労働契約という継続的な契約関係に基づいて、大量かつ定期的に労働者によっては長期にわたって発生する債権である賃金債権の特殊性を十分に踏まえる必要があるのではないかという御意見でございます。
続いて、2ページでございます。2ページの一番上は、仮に未払い賃金に関して争いが生じる場合としましては、例えばある業務について指揮命令があったかどうか、労働時間であったのかどうかという点でありまして、この点の確認につきましては、業務指示の有無についてその争いの対象となっている当時の上司に確認する必要がありますけれども、一般的に企業においては人事異動・転勤・退職等でそうした確認が困難である場合が多く、人の記憶が曖昧なこともありまして、正確な記録確認は消滅時効期間が延びるほどに困難になるという考え方を記載しております。実際に民事訴訟になった場合でも、賃金台帳だけでは確認できない部分も実際上は生じているとの御意見で、そうした場合は当事者の証言ですとか付随的な資料の証拠が必要となる場合が多いですけれども、企業側の立証は困難を極めるということで御懸念が示された御意見でございます。
その下の丸ですけれども、本来法律に基づいて支払うべき割増賃金の未払いですとか名ばかり管理職等で割増賃金が未払いになっているような場合に、法令に違反した結果として賃金支払い義務が発生しているのに履行されていないときにもちろん消滅時効の問題が議論になるわけでありますけれども、そうした問題についてはそもそも法令を遵守していれば問題にならないといった考え方もあるのではないかという御意見でございます。
1行あけましてその下です。仮に消滅時効期間が見直された場合、企業の労務管理にも当然影響が出てくると思いますけれども、一定のシステム改修等の負担が発生することが想定される。賃金等請求権の消滅時効期間の見直しに伴いまして、文書の保存年限は現行3年間となっておりますが、こうしたものも延長されることになれば、現行デジタルデータでとっているか紙媒体で保存しているかを問わず、保管コストの負担は相当なものになるという御意見でございます。特に経営基盤の弱い中小・小規模事業者におきましては過大な負担となる可能性があるということを記載しております。
その下ですけれども、消滅時効期間が延長されれば、それに応じて労務管理の企業実務も変わらざるを得ず、トラブルが起きないようにあらかじめ指揮命令の明確化ですとか紛争の抑制に資するような考え方もあるのではないかという記載でございます。「また」以下でございますが、働き方改革法の施行によって企業の労務管理等が増大することが予想されておりますが、そういった動きもある中で、仮に賃金等請求権の消滅時効期間を延長した場合に、企業が労務管理においてどのように対応していくのかという点もあわせて検討していく必要があるのではないかという御意見でございます。
続いて、③番のところです。賃金等請求権の消滅時効の起算点でございますが、こちらはこれまでの現行実務においては労基法115条は客観的起算点を運用上も採用してきているわけですけれども、賃金請求権の消滅時効の起算点について、仮に改正後の民法と異なる起算点を設ける場合には、労働基準法独自の理由が必要となるのではないかというのが1つ目のポツでございます。
2つ目のポツは先ほど紹介したことと若干重複しますけれども、賃金債権は労働契約という継続的な契約関係に基づきまして、大量かつ日々定期的に、労働者によっては長期にわたって発生する債権であるという特殊性も踏まえて検討する必要があるのではないかという御意見です。
この関係も少し参考資料を御紹介しますと、参考資料の12ページをごらんください。法務省のホームページで公表している資料になります。改正後の民法の消滅時効の起算点の考え方を示した資料でございます。改正民法におきましては、新たに主観的起算点を設定しまして、権利行使をすることができることを知ったときから5年間または権利行使することができるとき、客観的起算点から10年間を経過したときは消滅時効によって権利が消滅することにされております。12ページの上半分にありますけれども、法務省で記載をしている資料ですと、例えば売買代金債権ですとか飲食料債権、宿泊料債権などの契約上、契約に基づいて発生する債権については、権利行使をすることができることを知ったときと権利行使をすることができるとき、これが基本的には主観と客観が同一になるというケースとして紹介されております。この場合は主観的起算点と客観的起算点が同じところからスタートしますので、5年と10年のいずれか早いほうということで、5年が経過したときに消滅時効にかかるといった考え方をされております。下半分は詳細な説明は割愛しますけれども、主観的起算点と客観的起算点がずれる場合ということで、例えば消費者ローンの過払い金の返還請求権を例示として挙げられております。
続いて、資料にお戻りいただきまして、次は3ページでございます。3ページは起算点の御意見の続きでありまして、例えば管理監督者として扱われてきた労働者につきまして、その地位が事後的に裁判によって否定されて、使用者が労働者に対して過去にさかのぼって割増賃金の未払い分を支払うような場合につきましては、現行の労働基準法のように客観的起算点に統一するよりも、新たに主観的起算点を設けることとした場合、労働者が裁判等においてより多くの未払い金を請求することが可能となり、労働者保護に資するのではないかという考え方を記載しております。
その下は若干毛色の違うものでありますけれども、賃金等請求権については、基本的には主観的起算点と客観的起算点は契約に基づく債権でありますので一致すると思われるが、特に管理監督者の地位の評価が困難である事案などについて、専門家であってもどの時点が主観的起算点に当たるのかを裁判上で立証することは難しく、仮に主観的起算点を導入した場合、これまで客観的起算点ということで安定して行われてきた労務管理に混乱が生じ、無用な紛争を惹起する可能性があることも考慮すべきではないかという御意見でございます。
④でございますが、年次有給休暇請求権の消滅時効期間につきましてですが、1つ目の丸につきましては、そもそも年休は権利が発生した年の中で取得されることが想定されている仕組みでありまして、未取得分の翌年への繰り越しは制度趣旨に鑑みると本来であれば例外的なものである。仮に賃金請求権の消滅時効期間と合わせてこの年休の消滅時効期間も延ばすとした場合、年休そもそもの制度の趣旨の方向と合致しないのではないかという御意見でございます。
その下につきましては同様でありますけれども、仮に年休の消滅時効期間を延ばした場合には、より取得するインセンティブが失われてしまう可能性があるのではないかという御意見でございます。
続いて、⑤番でございます。記録の保存についてでございます。現行3年間とされている文書の保存年限につきましては、紛争解決ですとか監督上の必要性のために設定されておりまして、保存するという目的からは保存期間は長ければ長いほど便利であるという一方で、その分使用者にも負担がかかりますので、そうした点をあわせて一律に3年間の保存義務にされております。義務に違反した場合につきましては罰金ですけれども、罰則も設定されております。記録の保存について検討するに当たりましては、刑事訴訟法におきます公訴時効、これも罰金刑につきましては現行3年とされておりますこととの関係ですとか、記録の保存年限を設定した趣旨等を踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効期間のあり方とあわせて検討することが適当ではないかという御意見をいただいております。
最後、4ページでございます。⑥番と⑦番がありまして、⑥番の付加金でございますけれども、付加金の支払い規定につきましては、もともと賃金等請求権の消滅時効期間と連動したものという位置づけでありまして、現行2年間の除斥期間になっております。また未払い金の支払いを間接的に促す仕組みであることを踏まえますと、その裁判上の請求期間につきましては賃金請求権の消滅時効期間と合わせて検討することが適当ではないかという御意見をいただいております。
最後に、⑦番の施行期日等につきましてでございます。1つ目の丸は、仮に労働基準法115条の規定の改正を行う場合には、民法改正の施行期日である2020年4月1日も念頭に置いて検討を進める必要があるという御意見でございます。
その下は先ほど御紹介したとおり働き方改革法が順次施行しておりますので、それに伴って生じている企業の労務管理の負担が一層増大していくのではないかという実態も踏まえる必要があるのではないかという御意見でございます。
最後、3つ目は経過措置でございます。仮に労基法115条の改正を行った場合に、どの時点の債権から改正法を適用していくのかという点でございますけれども、これも前回お示ししたとおり考え方は2通りあると考えておりまして、1つ目は、今回の改正民法におきます経過措置と同様に、労働契約の締結日を基準にして考える方法でございます。これはもし労基法を改正するとすれば、改正労基法の施行期日より前に締結された労働契約に基づく債権であれば現行の労基法を適用しまして、改正労基法の施行期日より後に締結された労働契約に基づく債権であれば新法を適用するという考え方でございます。②番につきましては改正民法とは異なる経過措置でありますけれども、賃金債権の特殊性を踏まえて賃金等債権の発生日を基準に考えるという考え方でございます。こちらは労働契約の締結日にかかわらず、改正労基法の施行前に発生している賃金債権であれば現行法を適用しつつ、改正労基法の施行期日より後に発生している賃金債権につきましては新法を適用するという考え方でございます。
資料の説明は以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
それでは、これまでの検討会での御議論を踏まえまして、今、事務局から説明がありました賃金等請求権の消滅時効のあり方に関する各論点について御質問あるいは御意見がございましたら御発言いただきたいと思います。いかがでございましょうか。
どうぞ。
〇森戸委員 内容に関係ないことでもいいですか。些末なことで恐縮なのですが、この資料の丸の間が1行あいているところは何か意味があってあいているのですか。
〇岩村座長 では、課長、お願いします。
〇長良課長 資料のつくり方の補足でございますが、特に1ページ目から3ページぐらいまでにかけて間を1行あけているところがございまして、これについてはペアにした論点がある種対立しているような、対立軸のような形で位置づけられるのかなというように事務局側で整理したものでございます。
〇岩村座長 よろしいでしょうか。
〇森戸委員 了解です。
〇岩村座長 今の事務局の御説明を伺っていると、きょう用意していただいている資料はどちらかというと相対立する考え方を並べて整理していただいたようなものかなと思いました。そういうことで途中で1行あいているところがあるという趣旨ですね。ありがとうございます。
では、水島委員、どうぞ。
〇水島委員 1つ質問させていただきたいのですが、②の1つ目で労働側がおっしゃっていた具体例に、解雇後に未払い賃金を請求した場合とあるのですが、この未払い賃金の内容は具体的にどのようなものか教えていただけますでしょうか。
〇岩村座長 いかがでしょうか。
〇坂本課長補佐 直ちに確認ができないのですけれども、一般的には労働時間をもとに計算したら本来払われるべきであった賃金が払われていなかったという、その理由がどういったことで払われていなかったのかは、今すぐは確認できておりません。
〇水島委員 ありがとうございます。
〇岩村座長 ありがとうございます。
御質問でも御意見でもどうぞ。
鹿野委員、どうぞ。
〇鹿野委員 本日何を発言していいのかわかっていないところもあるのですが、整理としてはヒアリングを含めて今まで出された考え方を整理していただいたということで、各論点についてこのような考え方があったなということで異論があるわけではありません。それについて改めて意見を述べるということは、本日はいかがな。
〇岩村座長 私の理解では、この検討会をやってまいりまして取りまとめということを考えたときに、この後は労政審での議論ということになる、その後、さらに立法化ということになればその先の議論もあるわけなのですが、そのときに想定される論点についてこの検討会である程度御意見を頂戴できればというのが恐らくきょうのこの論点の整理の1つの趣旨かなと理解しております。ですので対立する論点という形できょう整理していただいていますので、自分としてはこう考えるという御意見を率直におっしゃっていただければそれでよろしいかなと思います。よろしいでしょうか。
〇鹿野委員 わかりました。
それでは、意見ということで、まず①番については先ほど事務局から御説明があったような経緯で、民法の1年の時効期間について、労基法で労働者保護の観点からそれを延ばすような形で2年の期間が設けられていたという昔の経緯があるわけですが、これも繰り返しになりますけれども、やはり民法でこれが5年10年となったときに、民法の規定より随分短い期間を設けることの合理性が果たしてあるのだろうかということでここで検討してきたわけですけれども、私の感想ということで言いますと、必ずしも説得力のある合理性が伺えなかったかなと思っているところです。労基法が刑事的な側面も持った法律であるというようなこともヒアリングで随分お聞きしましたけれども、刑事時効と同じ法律に基づくものであっても、刑事時効と民事上の請求権の時効とを区別することはつくりとしては十分あり得るわけです。労基法が刑事的な制裁を要している部分があるからといって、民事時効をそれに合わせて短くしなければいけないということは必ずしも合理的ではないと私自身は考えました。そういうことで合理性があるのかなという、私は民法ですので、労働法のいろいろな状況とかもお聞きして合理性の有無を私なりに考えてみようと思ってはいたのですが、それは今までのところではなかなか伺えなかったかなという印象を持っております。
ただ、1つ上げるとすると、従来2年でやってきたところをいきなり延ばすところについて、事業者側の負担をどういう形で軽減できるかということはある程度の配慮は必要なのかなとも思っているところです。
ただ、もう一方で、ここにも書かれていますように、民法改正の施行期日がいよいよ来年の4月1日と迫ってきたところでありまして、そこの段階に至ってもこの問題がまだ不透明なままというのはやはり余りよろしくないのではないか。改正するにしても施行期日をこれに合わせることができるかどうかはまた別の問題なのですけれども、そこの段階まで不透明なままというのは労使双方にとって望ましいことではないのではないかなと気がしているところです。
今、とりあえず①だけ言ったのですけれども、以下は後で。
〇岩村座長 どうぞ続けておっしゃってください。
〇鹿野委員 ②に関してはもう既に①で申し上げたところと関連するのですが、②③に関して民法上の規定は主観的起算点から5年、客観的起算点から10年というところなのですが、これに関しましてそれと同じように主観・客観の起算点をとって5年10年とするような考え方も1つはあり得るかもしれませんけれども、ただこれもここでお聞きしている限りにおいては、極めて例外的な場合は除いて、恐らく主観的起算点と客観的起算点というか、権利を行使することができるときとそれを知ったときはほぼ一致しているだろうということも伺いました。
もう一つは、2ページの一番下にも書いてありますように、賃金債権についてはかなり大量的な形で債権の時効が問題となる可能性もある。もちろん労働者が多人数だからといって、同様に時効が問題になるかというと常にそうというわけではないかもしれませんけれども、だけれども同じような原因によって多数の労働者との関係で同じように債権の時効が問題となる可能性もあるのではないか。そのようなときに万が一の可能性として主観的起算点と客観的起算点がずれている可能性を一々チェックするのは紛争の早期解決というような観点からいっても余り望ましくないかもしれないと思いまして、今までお聞きした限りにおいては、客観的起算点は恐らくは主観的起算点と一致しているだろうという前提の上で客観的起算点から5年というあたりが穏当なのかなという印象を私自身は受けているところであります。
あとちょっととばして⑦番の施行期日等についてということで、仮に労基法の115条の規定を改正することになったときに、その適用対象たる債権をどうするのかということが問題となろうかと思います。民法自体の改正の経過措置の考え方は、4ページの一番下の①でも書かれておりますように、労働契約の締結日を基準にするような考え方がとられているところです。それは債権の時効に関して、当事者は時効の対象であるところの債権が生じた時点における法律が適用されるだろうと予測し、期待するのが通常である。だから債権発生時が適用の基準時になるのだという考え方がまず大前提としてありまして、その上で契約に基づく債権はどうなるかというと、結局それは契約時になりますよというような考え方がとられているところであります。
ただ、これについては賃金債権等についてどう考えるのかというのは私はいまだに定見を持っているわけではないのですが、1つ特別な施行期日についての②のような考え方をとることもあり得るのではないかとは思っておりまして、それは第1にやはり契約に基づく債権といっても労働契約の場合はかなり長期にわたって同じ使用者との間で労働契約を締結した上での労働をしているということが、全てにおいてではないでしょうけれども、かなり多いであろうという点の特殊性と、もう一点上げるとすると、民法でも債権の発生時と一律にしているわけではありませんで、例えば経過措置において不法行為による損害賠償請求権も債権の一種ですけれども、それについては被害者保護という観点から、その時点で従来の時効が完成していない以上、新法を適用するというような考え方がとられているところです。それは従来の除斥期間を時効にしたというところもそうですし、人身等の被害を受けたときの損害賠償に関する督促を改正民法では置いたのですが、そのような規定に関しても被害者保護という考え方を優先させるのだということで特別な経過措置を置いているところです。それと同じように言えるのかどうかというのはまた検討する必要があるのですが、ただヒントとしてはここでやはり労働者の保護を考えた場合に、民法の一般的な債権とは違った考え方もあり得るかもしれないとも考えているところです。
とりあえず以上です。
〇岩村座長 ありがとうございました。
ほかにはいかがでしょうか。
では、安藤委員、どうぞ。
〇安藤委員 ありがとうございます。私は①の1つ目のポツのところにあるとおり、「消滅時効期間を短くすることに合理性があるのであれば」というお話は非常に納得できる内容かなと思っております。また①の最後のポツのところの「多面的な観点から議論を尽くす必要がある」というのもそのとおりだと思います。企業実務または労働慣行等に大きな影響がありますので、きっちり考えないといけないというのはそのとおりだと思います。
その観点から②の2枚目の3番目4番目あたりです。これまで経営基盤の弱い小規模事業者にとって過大な負担になるデータの保管であるとか、またこれは私も発言した論点だと思いますけれども、ルールが変われば企業における行動も変わるだろうという点です。これらについてはヒアリング等も通じて、この検討会の中でも具体的に例えば記録の保存にどのくらいの金額がかかるか等の、仮の数字ですけれども、そういうものが提示されたこともございました。こういうものについてここに出ているような小規模事業者で仮に民法に合わせて5年になったときにどれくらいのコストがかかるのかであったり、またその次のお話としてある労務管理の企業実務がどう変わるのか、ルールが仮に変わったとして、変わった後のそのもとで企業行動がどう変わるのかということもしっかり検討した上で、このルールのどちらを、どちらと2択でもないのかもしれないのですが、考える必要があります。現時点では両論併記のような形になっていますが、まさにここに書いてある多面的な観点から議論を尽くすというところで、ここにある程度具体的な数字が見えるような形になるまで検討しないといけないのかなと感じております。この検討会の射程というか、範囲がどこまでなのか、この論点出しをするところまでなのか、それともどちらのほうがふさわしいというような結論についてまで報告書に書くのであったら、まさに具体的な数字であったり、負担であったりについてもさらなる検討が必要かなと個人的に考えております。
以上です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
報告書のあり方で少しコメントがありましたけれども、その点で事務局はどのように現時点ではお考えかというのがもしあればお話しいただければと思います。
では、課長、お願いします。
〇長良課長 報告書といいますか、検討会の取りまとめの姿に関して、こちらとして今時点でかっちりとしたことを何か整理しているものではございませんので、今、安藤委員がおっしゃったような観点も検討の俎上に入れるという考え方もあり得るとは思っております。なのでそのあたりも含めてまたいろいろと御相談をさせていただければと思っています。
〇岩村座長 では、鹿野委員、どうぞ。
〇鹿野委員 安藤委員から多角的な観点から検討しなければならないという御指摘がありまして、それはまさにそのとおりであるとは思っているのですが、私はこの数字が果たして簡単に出せるものなのかどうかがよくわかっておりませんで、もちろん目に見えるような形で負担がこれくらい増大しましてとかいうのが速やかに出せるのであれば、そういうものがあったほうがよりわかりやすいとは思うのですが、だけれども一方で、その数字が明確に出せないと意思決定はできないということなのかどうかについては若干疑問も持っているところです。先ほど言いましたように、来年の4月1日から、あとちょうど1年後に民法の改正法が施行されるときにおいて、もう何年か先ということにはならないのかもしれませんけれども、それが明確な形で出せるまでは一切決められないということになると、それはいかがかなという気が、今後の進め方についてそういう印象を持ちました。もちろん私は既に厚労省とかが持っていらっしゃるようなデータ等からそういう数字が出せるのかどうかということについて余り承知しておりませんので、それを除いた仮想です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
では、課長、お願いします。
〇長良課長 先ほどの補足で申し上げますと、第1回の検討会の資料1に開催要項をつけております。こちらでは、検討事項といたしましては労働基準法第115条における賃金等請求権の消滅時効のあり方について法技術的・実務的な論点整理を行うという形で整理しております。したがいまして、安藤委員がおっしゃるような実務的な論点整理の中にいろいろなコスト面の検討を行うことも開催要項上は可能だということでございます。
一方で、安藤委員がおっしゃるようなコストの問題は大部分実は使用者団体からの御意見だったかと思います。そうなってくると労働政策審議会とのすみ分けの問題もございますので、そのあたりにつきまして委員の御意見なども伺いながら、何かしらの検討会としてのまとめを行う際にはその前提についても整理した上で取りまとめていければと考えております。
以上です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
では、水島委員、どうぞ。
〇水島委員 ありがとうございます。
まず①に関しましては鹿野委員、安藤委員がおっしゃったように民法とは異ならせることの合理性の議論が必要になると思います。これまでの議論では民法と異ならせることの合理性について、確たるものは出てこなかったように私も思いますけれども、労働法の側からいいますと、民法に合わせることの必要性がどこにあるのかというところはもう少し考える必要があるのかなと思いました。2年から5年に変わりますと影響が大きいこと、また本日事務局から御紹介がありましたように、現行でも全ての面で民法より有利な形で設計されているわけではないこと、あるいは③の起算点にかかわりますけれども、賃金等請求権では主観的起算点と客観的起算点を一致させるべきではないかということは、結局のところ民法との違いを認めていくわけで、突き詰めていきますとなぜ労働基準法全体が民法に合わせなければいけないのかという問題になると思います。
しかしながら、他方でこの状態をずるずると続けることは得策ではなく、鹿野委員もおっしゃったように民法改正の施行期日の段階ではどのようなものになるのかということを明らかにすべきと考えております。不透明なまま事態をこのままにしておくのは望ましくないと考えます。そうなりますと私も民法と合わせることの必要性が本当にあるのか、いろいろ申し上げましたが、恐らく結局は民法に合わせる方向に行くのが合理的ではないかと思っておりますけれども、どこまで民法に従って、またどの部分で労働基準法の独自性、特色を残さなければいけないかを整理して検討していくことになるのではないかと思いました。
その際ですが、鹿野委員から不法行為で被害者保護の観点からの特則が置かれているといった御教示がありましたが、労働基準法ではどのような観点から例外的な部分を設けるのかということになるのかなと思いました。
以上です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
では、森戸委員、どうぞ。
〇森戸委員 まず①については、結局出発点が民法のほうが原則で、それと違う合理的な理由を積極的に立証できなければ民法に合わせるのが筋でしょうと考えるのか、それとも逆に水島委員がおっしゃったように労働基準法で今2年なのを5年にしなければいけない理由は何かとどちらを出発点で考えるかで全然話は違うのですけれども、だからどこから議論するかという話なのでしょうが、素直に考えると民法が5年になるということで、なお労基法が2年にしておくべき積極的・合理的な理由とか特別な理由が何かあったかというのはまさにこの検討会でいろいろやってきたのでしょうが、確かにそれだと実務上厳しいよね、大変だという話はもちろんありましたが、必ずしもそれほど合理的な、これは2年でないとまずいねというのは出てこなかったような気は私もしています。これは私が検討会で前に言いましたが、5年3年4年ではだめなのかという決めごとみたいなところもあるのでなかなか理由づけは難しいですけれども、もし民法が5年でなぜこれと違うのですかという出発点で考えると、それを積極的に裏づけるようなものが出た感じはなかったかなと思います。何よりも安藤委員がおっしゃった実務上どういう対応コストがかかるのかということは大事ですけれども、これも既に皆さん御指摘がありましたが、検討会は検討会だから、検討会があって労政審があって決まるのでしょうけれども、その結論が民法施行まで1年になろうとしているのに出ていないことが一番実務上の対応を混乱させている気がしますので、本当はもっと早くここでも労政審でも議論して決めないといけないのではないか。それがむしろ実務上一番困っているのではないかと、そちらのほうが心配な、それが一番コストというか、対応を大変にしてしまっているような気がしています。それが一番思うことです。だから早急に話を進めなければいけないのではないかと思います。
最後の⑦についても一言だけ、経過措置というか、仮に5年にした場合の話でしょうけれども、どこから適用するかという話で①が上に書いてあるのですが、私の感じだと②が賃金債権の特殊性と書いてありますが、同じことなのでしょうが、大卒とか高卒とか新卒で結んで30年も40年も続くかもしれない労働契約で、それこそ不完備契約とかそういうふうに呼ばれるように、長期的で継続的で内容が常に変わり得る契約なので、確かに契約を結んだときはこのときに結んでいて、これから何十年か定期的に賃金債権が発生するよということはもちろん織り込まれた契約なのだけれども、他方でむしろ契約としては日々働いて、今月働いてこの給料、今月働いてこの給料ということがずっと続いていく、その中身も変わっていく、労働義務の中身も賃金債権の中身も変わっていく契約なので、私としては②のほうがより自然な、労働契約の特殊性がある気がいたします。実務家の先生とかと話すと、経営側の先生でも①だと同じ会社でも時効がずれてきて、結構大変なことになるのではないかという意見を割と聞くのですけれども、それはそれでおいておくとしても、私は理論的にもといいますか、労働契約の特殊性からすると②のほうが自然な、労働契約はそういうものではないかなと、ちょっと感覚で申しわけないのですけれども、そういう印象も持っております。もちろん絶対的にどっちという、明確に支持というわけではないですが、賃金債権の特殊性、言いかえれば労働契約の特殊性が、労働契約のイメージにより合うのはどっちかなと考えたときに、そういう意見を持ったことを一言申し上げておきます。
以上です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
では、安藤委員、どうぞ。
〇安藤委員 鹿野委員、水島委員からあったような民法の改正のタイミングに合わせるというか、そこまでに明らかにするということは私も必要だと思っております。当然いたずらに引き延ばそうという観点から多面的な検討が必要だと言っているわけではないわけでして、ただし私の理解ですと、労働法の改正は社会的なインパクトも大きいので、多くの場合まずは努力義務から始まって、大企業に適用され、中小には猶予があったりして、それで日本全体の企業、労使関係に適用されていくというステップを踏むことが多い中、詳細な検討を余りしないままに全ての企業に一律に適用する2020年に駆け込むような形はやはり問題があるだろうと思っての発言でありました。そういうわけで私が申し上げたかった多面的な観点から議論をというのは、ゆっくり議論をしようというわけではなくて、早急に議論しなければ、検討をどんどん進めていかないといけないのではないかというお話でした。
なぜかといいますと、例えば保管コストについての実際の数字は忘れてしまいましたが、数千万円みたいな数字でしたか、何か使用者団体の方から御意見はあったかと思いますが、これはうがった見方をすれば、できれば長くしてほしくない使用者団体の立場から大き目に言っている可能性もあるわけです。その観点から独自の立場からきちんと数字を検討することが非常に大事であり、粗いものでもいいので、どのくらいの規模感、オーダーなのかということをある程度見た上でこれくらいのことが想定されます、それでやったほうがいいやらないほうがいいみたいな議論をしたほうがいいのではないかと、そこがすっぽり数字とかが抜け落ちたまま、例えば期間を短くすることに合理性があるとは我々は感じられなかったという結論だけだと、ではどういう検討をしたのですかという疑問が当然に湧くだろうと思っての発言でした。
以上です。
〇岩村座長 ありがとうございます。
コストの面は確かに1つのポイントではあるのですが、他方でコストがかかるからそれはやめておこうと考えるのか、それともコストがかかるけれどもこれはやらなくてはいけないと考えるのかという、やはりそこのところの基本的な考え方の問題はあるように思います。もちろんそれは結局のところ議論している問題の重要性とかいったものによっても左右されることだと思います。今回のケースについていろいろ考えなければいけないのは、先ほど事務局からも紹介がありましたけれども、働き方改革関係の法改正が今後順次施行されていく中で、当然企業側も人事労務関係のシステムの改変であるといったことをこれからやっていかなければいけないときに、それと一緒にやれるタイミングでこちらもやるのか、それはさておきということでこちらはもう独自路線で行きますということにするのか、その辺も多分関係してくることだと思います。私も素人ですが、普通考えれば他のシステムの改変と合わせてやってしまったほうがコスト的には当然その分ある程度は安くなるでしょう。他方で改変点が大きくなるのでその分膨らむという点はありますけれども、一緒にやったほうが恐らく比較的安く上がるのかなとは思います。その辺のいろいろなこととの関係でコストの問題は考えなければいけないのかなと思います。
もう一つ、確かに消滅時効をどうするかという問題はいろいろな側面を考えなければいけないということで、それはそのとおりかなと思うのですが、これは私の思うところですけれども、特に使用者側が言っているような賃金債権の特殊性としての大量にかつ継続的に定期的に発生していく点について、ではきょう挙がっているような各論点との関係でどう考えるのかというところが恐らく一番の大きなポイントなのだろうという気がしています。ですから例えば民法に合わせると考えたときに、賃金債権に絞っていえば、では主観的起算点を入れるのか、それとも客観的起算点だけにするのかというのもそこに関係してくることだと思いますし、それからもともと問題となるケースが一般的な賃金の未払いというよりはよく議論になったような残業代であるとか管理監督者という問題が絡んでくるというその辺も、ではそのときに各論点との関係でそこのところをどう考えるのかというのが問題になっている。今までは、それをある意味各論点ごとにばらばらにしつつ議論してきたのですけれども、最終的には全体としてどうそれを総合的にまとめて、どちらの方向に結論を持っていくのかということなのかなと考えています。ですから例えば客観的起算点に統一して、かつそうすると民法との関係でいえば、それを民法よりは短いけれども5年としておけば、未払い賃金の残業代の場合のようなときに主観的起算点を入れることによって起算点が揺れ動くようなことは逆になくなります。そういう意味では当事者間における法律関係の安定性は比較的早くもたらされることにはなるでしょう。したがって、最終的に経過措置をどうするかというところについても同じことかなと私は思っていて、済みません、森戸さんとは意見が違うのだけれども、どちらかというといわゆる賃金の基本権みたいなものが発生する契約締結時ということで合わせて起算点が揺れ動かないようにしておくほうが経過措置としても安定的なのではないかという気がしています。ただ、企業実務としては確かにばらばらにやると非常に大変なので、現実的には全労働者についてシステムとしては同じにしてしまうことになるのだろうと思うのですけれども、それはそれで企業がそれぞれ考えてやればいいことだと思いますから、そこまでをおもんぱかってこちらで考える必要はないのかなとは思っております。
他方でそのほかもいろいろありました。年休はどうするのだときょう出ていましたが、それは多分賃金とは違う方向に当然行くでしょう。その他労働災害の災害補償請求権をどうするかという問題もある。しかし、それも賃金と本当に同じと考えられるのか、労災保険制度とのバランスをどうするのかという論点が他方であるので、それぞれの労基法上出てくる請求権ごとにその性質を考えながら決めていくことになるのかなと思っております。
済みません、長くしゃべりました。
ほかには何かございますでしょうか。
森戸委員、どうぞ。
〇森戸委員 経過措置の提案は意見が座長と違うのはわかりましたけれども、そうすると今のお話は仮に5年にしたとしても、これは今の2年からものすごく延びた、経営側としては大変な話でしょうと。確かに大変な話なのですが、そう見えるというか、そうなのだけれども、他方で民法ぞろいかというと、民法はそもそも客観10年主観5年ですよね。紛争の迅速な解決とかの観点で、そこはむしろ民法より短くしているのだよということになると、そういう意味では総合的に、だから言い方は変ですけれども、民法と並びだったら10年分のところを5年ですよというふうに言えなくもない、経営側の人に民法ぞろいよりは労働法的なことを考えてしたのですよということも言える。それから、年休なんかも別扱いしようかという話になっているし、経過措置もとか、だからトータルで見ればそれなりに労働法的な検討をされたとも言えるのかなという感じで聞いていたのです。
〇岩村座長 うまくまとめていただいてありがとうございます。基本的にはそういうことかなと思っています。
〇森戸委員 そういう意味では民法の半分ですよとも言えるわけです。
〇岩村座長 そういう側面はあります。ですから、この検討会でのこれまでの議論の流れは、純粋に今回の民法改正をそのまま取り込んだものにしているわけではない。他方で労基法よりは長くするということ自体は事実、確かであるということだと思います。その上で今、申し上げたように、主観的な要素を入れたりすると残業代の場合などのところでいろいろ不安定なものが出てくるので、起算点については客観的な起算点をとるということで、また経過規定についても契約締結日をとることによって早期に、なるべく早く安定させましょうというものもそこで取り込んでいるということかなという理解であるということです。
ほかにどうでしょうか。
では、お願いします。
〇坂本課長補佐 先ほど御質問をいただいておりました病気休職をした後の解雇の関係ですけれども、議事録を確認しましたところ、平成30年2月に開催した第2回の本検討会におきまして古川弁護士から御説明がありまして、読み上げさせていただきますけれども、会社の業務が原因で病気になった、だけれども労災の支給がない状態、そして休業していて賃金が払われていない、それで3年経過したときに休職期間満了ということで退職せざるを得なくなって解雇された、そうしますと最初の休業を始めてから3年を経過していますので、賃金請求権というよりはもしかしたら休業補償の関係かもしれませんが、3年経過していますので時効にかかって請求権が消滅してしまうという御相談を現実的にも受けているという旨の御発言をいただいております。
〇岩村座長 ありがとうございました。
水島委員、よろしいでしょうか。
〇水島委員 はい。
〇岩村座長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでございましょうか。
事務局のほうで何かありますか。よろしいですか。
特にほかになければ、時間が早いですけれども、きょうはこのあたりまでということにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(委員首肯)
〇岩村座長 ありがとうございます。
それでは、今、事務局にもお伺いしたところ、特に追加してないということでありますので、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
最後に、次回の日程などにつきまして事務局から御説明いただきたいと思います。お願いいたします。
〇坂本課長補佐 次回第8回の検討会につきましては、現在、調整中でございますけれども、新年度が明けた4月以降、日程等が確定次第、御連絡させていただきます。
〇坂口局長 済みません、こちらでお時間をいただきまして一言皆様への御報告と御礼の御挨拶でございます。
これまで座長を続けていただきました岩村座長におかれましては4月から兼職ができない中央労働委員会の常勤委員になられる御予定のため、今回をもってこの検討会の委員を御退任されることとなりました。後任の委員につきましては、現在、事務局で調整をしております。岩村座長におかれましては、この検討会の発足の一昨年の12月以降本日に至るまで論点の整理等に大変御尽力いただきまして、まことにありがとうございました。大変お世話になりました。ありがとうございます。
〇岩村座長 局長、大変御丁寧なお言葉をまことにありがとうございます。
それでは、これをもちまして第7回「「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を終了させていただきたいと思います。
きょうは夜遅くまでお忙しい中を大変ありがとうございました。

 



 

 

 

(了)

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