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2018年5月29日 第4回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成30年5月29日(火)10:00~11:30

 

○場所

厚生労働省専用第22会議室

○議題

意見交換

○議事

 

 

○岩村座長 おはようございます。定刻よりは少し早いのですけれども、予定のメンバーが皆様おそろいですので、ただいまから、第4回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を始めることにいたしたいと思います。
委員の皆様方におかれましては、本日も御多忙の中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日でございますけれども、安藤至大委員、それから佐藤厚委員のお二人が御欠席となっております。
本日の議題でございますけれども、第3回検討会で外国法制のヒアリングを行いまして、事務局のほうで、賃金等請求権に関する外国法制についてまとめた資料を整理、用意していただいております。
また、きょうの議論の参考になりますように、これまでの議論につきまして、論点に応じての分類という作業もしていただいているところでございます。
きょうは、こうした資料に基づきまして、賃金等請求権の消滅時効のあり方につきまして、委員の皆様に御議論をいただければと思っております。
それでは、最初に、事務局からお配りいただきました資料の確認をいただきたいと思います。
○猪俣課長補佐 お配りいたしました資料の御確認をお願いいたします。
資料といたしましては、
資料1:賃金請求権に関する外国法制の整理
資料2:賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会におけるヒアリング等を踏まえたこれまでの議論
資料3:消滅時効の在り方に関する検討の補足資料2
参考資料1:消滅時効の在り方に関する検討資料
参考資料2:消滅時効の在り方に関する検討の補足資料1
でございます。
その他、座席表をお配りしております。
不足などございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。
○岩村座長 ありがとうございました。
資料等はよろしいでしょうか。
それでは、早速でございますけれども、事務局のほうから資料についての説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○猪俣課長補佐 では、資料の御説明に入らせていただきます。
まず、資料1をお開きください。
この資料は、前回、第3回の検討会において、フランス、ドイツ、イギリスの賃金についての時効に関するプレゼンを各研究員の方からいただいたものを簡単に表にしてまとめたものでございます。
また、これに加えて、労働政策研究・研修機構に確認したところ、韓国の消滅時効についてもわかったことがありましたので、それも記載しております。
まず、フランスでございますけれども、一般債権の時効期間は原則5年になっているということが定められております。
賃金についてですけれども、これは近年、法改正がなされまして、民法の特則として3年が規定されているということでございます。
また、注で書いてございますけれども、これは裁判の際にどうなるかということですが、「労働契約が解約された場合は、労働契約の解約から遡って3年間分までが請求可能期間となる」ということのようでございます。
続きまして、ドイツでございます。
ドイツでは一般債権の時効期間は、民法で主観的起算点から原則3年、客観的起算点から原則10年で債務者側に給付拒絶権が発生することが定められております。
消滅時効のようなものが定められていると考えていいだろうと。
起算点については今回改正された現行の日本の民法のような構成になっているのではないかということでございます。
ただ、賃金についての扱いでございますが、これは法律ではございませんけれども、労働協約です。
労組と使用者との間で締結している労働協約の中で、除斥期間というものが設けられるパターンがほとんどで、客観的起算点から2~6カ月の間で設定されていることが一般的だということでございました。
この労働協約でございますけれども、かなりの組合員、全体で言うと7割ぐらいが適用されていて、非組合員であったとしても、大体この労働協約が労働契約の中で引用されるような形で適用されているので、大方、ほとんどのドイツの労働者については、この除斥期間が設けられていると言えるのではないかということでございました。
続きまして、イギリスでございます。
イギリスは一般債権の時効期間が1契約関係の訴訟と制定法上の申立てによって違いがありまして、契約関係の訴訟のほうは出訴期限法という法律において、客観的起算点から6年で訴権が消滅するとなっております。
2の制定法上の申立てでございますけれども、これは各制定法において出訴期限が設けられていて、労働関係の制定法上の権利については、大概3カ月の出訴期限が定められているということでございます。
賃金についての取り扱いですけれども、特例というものは特になくて、先ほど申したように、制定法上の申立てとして申し立てられるパターンが圧倒的に多く、客観的起算点から3カ月ということが適用されているようでございます。
賃金未払いが複数回継続している場合については、最後の未払いから3カ月という出訴期限というルールになっているようでございます。
また、韓国でございますが、韓国は民法で、一般の消滅時効については10年と定められていますが、賃金については労働法において特例が定められておりまして、3年という消滅時効が定められているということでございます。
韓国なのですけれども、おめくりいただきまして、注の5をごらんいただければと思いますが、結論としては特例で労働法の中で3年となっておるのですが、JILPTに確認したところ、韓国の民法の中で、短期消滅時効が1年のものと3年のものと、今回改正された日本の民法と同じように、短期消滅時効は複数定められているみたいなのですが、この中で賃金について1年と3年のどちらが適用されているかというのは、韓国の関係省庁の人に話を聞いたら、1年と言っている人もいますし、3年と言っている人もいると、意見が結構ばらばらな状態になっているようなのです。
ただ、いずれにしても、労働法の中では3年と規定されていることは確実のようですので、民法の特例というか、民法よりも労働者保護に厚くして3年にしているのか、それとも、民法の短期消滅時効をそのまま引き写していくような感じで3年にしているのかという若干の違いはあるのですけれども、いずれにしても、民法の大原則の10年からは特例として3年になっていることは間違いないようでございます。
資料1については、以上でございます。
ここで、フランスの関係で、前回、フランスのプレゼンをしていただいた細川先生に対して何点か質問があって、その場で御回答いただいていない点について、事前にメールで回答をいただいたものがありますので、紹介させていただきます。
1つ目は、森戸先生から御質問いただいていたものについてですけれども、労働契約の解約の場合に、訴権の時効とは別に請求範囲については労働契約の解約から3年さかのぼって請求可能になっているということを私が先ほど説明しましたが、この規定については2013年の改正以前も存在したのかという御質問についてですけれども、これは当日も細川先生のほうから御回答したように、2013年の改正によって初めてそのようなものが導入されたようでございます。
2つ目でございますけれども、これは村山総務課長から御質問があった点で、フランスの労働監督官制度についての実態というか、どういう監督指導内容になっているかについてのデータがあるかどうかという話なのですが、2015年のデータによると、処理案件の56%が安全衛生に関する事案で、労働時間・賃金に関する事案は全体の約10%。
賃金はその約3分の1になっているので、全体に占める割合としては3%前後になるのではないかということのようでございます。
追加の質問については、以上でございます。
続きまして、資料2でございますけれども、この資料は第1回に提示させていただいた本検討会の論点について、これまで御質問とかプレゼン、御意見などを簡単に論点に沿って分類してみたということで、きょう、御議論の参考になればいいかなと思ってつくったものでございます。
1の現代の社会経済情勢を踏まえ、労働基準法第115条の対象となる賃金等請求権の消滅時効の期間について、労働者の保護や取引の安全等の観点を踏まえつつ、どのように考えるかという点についてですけれども、1つ目のポツですが、本検討は民法改正を契機としているため、その改正趣旨をできるだけ踏まえて検討するという考え方もあるが、民法と労働基準法を別個のものとして独立させて検討するという考え方もある。
2つ目のポツですけれども、消滅時効期間については、基礎となるのは2年と5年でありますが、それに限らず、さまざまな観点から検討するベきではないかということです。
3つ目のポツですが、労働基準法第115条は、民法の特則として規定されていた。
基礎となる民法の規定が廃止された以上、労働基準法において改めて特則を設けるのであれば、他の債権との関係も踏まえて、それには合理性が必要だということでございます。
4つ目、賃金債権の消滅時効については、現行の2年だと保護に欠ける事案や判例もあるのではないかということです。
5つ目ですけれども、労働基準法第115条については、刑罰法規との関連性も考慮した上で検討すべきとの意見もあるが、まずは民事上の債権として検討し、その後、刑罰法規との関連性も考慮するという順序ではないかということでございます。
2つ目の論点は起算点です。
起算点については、第115条の規定は、これまで「権利を行使できるときから」と解釈・運用されてきたと考えられるが、今般の民法改正を踏まえてどのように考えるかということでございます。
1つ目のポツですけれども、労基法を含む、各法律における時効の起算点は民法に基づいている。
民法改正前は客観的起算点のみだったため議論の余地はなかったが、今回の民法改正により事項の起算点は2つになったので、それを受けて、労働基準法においても議論の余地はあるのではないか。
2つ目のポツですが、契約に基づく債権については、主観的起算点と客観的起算点が一致すると考えられており、その限りでは客観的起算点のみで足りるが、契約に基づくものであっても、主観的起算点が客観的起算点より遅れる場合があるので、そのときにどうするかという問題はある。
今回検討する労働基準法上の債権において、そのようなことがあり得るのかということも考えていく必要がある。
3つ目のポツですが、民法改正で設けられた、主観的起算点「知ったときから」の意味は専門家でないとわかりにくい。
世の中に混乱を生じさせる可能性がある。
4つ目のポツですけれども、消滅時効の客観的起算点の解釈について、通説では確かに「法律上の障害がなくなった時」という解釈がとられてきたが、今日では違う解釈も存在し、判例においても法律上の障害がなくなっただけではなく、権利行使の期待可能性を考慮するものも現れており、昔よりは射程が狭くなっている。
3つ目の論点ですが、年次有給休暇請求権の消滅時効(繰越期間)について、年次有給休暇の取得促進の観点を踏まえつつ、どのように考えるかという論点でございます。
1つ目のポツですが、年休に関しては、正社員だけではなく非正社員についての実態も踏まえることで、年休取得促進の観点も踏まえた検討ができるのではないかと。
2つ目ですが、年休取得促進の観点だけではなく、そもそも年休の繰り越しが、消滅時効という制度であることを念頭に置いて検討すべきということです。
続きまして、3ページ目でございます。
4つ目の論点でございますが、その他の関連規定で、書類の保存期間と付加金の2つがメインの論点になると思いますが、これについて、賃金等請求権の消滅時効期間のあり方を踏まえて、どのように考えるかという論点でございます。
1つ目のポツですが、賃金以外の請求権については、特別の理由がなければ賃金請求権に連動させて考えればよい。
まずは賃金請求権について議論を深めて、その後、他の場合や特別な考慮が必要かもしれない年休の議論をしていけばよい。
2つ目のポツですが、記録の保存に関して、残業の有無が争われる場合、残業を行ったと訴える労働者に立証責任があるが、使用者にとっても一定程度の負担があるということです。
最後に、これはもともと論点としては掲げていない5 その他に当たりますけれども、1つ目のポツですが、仮に法改正をするということになった場合には、施行日と、これは後で論点になってきましたが、経過措置についても検討する必要があるのではないかということです。
経過措置は施行日の前後で2つの考え方があって、施行日前に締結した契約に基づくものについては前の規定を適用するか、あるいは施行日前に発生した賃金については前の規定を適用するという2つの考え方があったと思いますが、この論点についても検討する必要があるということです。
2つ目のポツですけれども、労働基準法における賃金等請求権の消滅時効が改正される場合に、例えば労働者災害補償保険法等、労働基準法に関連する法律にも影響があることから、検討に当たり、影響の大きさを考慮すべきであるということでございます。
資料2については、以上でございます。
続きまして、資料3でございますけれども、今、資料1で外国法制の御説明をしましたが、やはりフランス、ドイツ、イギリスともに、各国その国の実情、実態に応じたような形で、賃金については特例を定めていたりとか、違う扱いをしていたりということが多いと考えられますので、日本においても実際、最後に改正することになれば、そのような実態をよく踏まえていく必要があるのではないかと思いまして、資料3について、参考として資料をつけさせていただきました。
1ページ目と2ページ目は第1回の資料の中でつけたものを再掲したものでございまして、1ページ目は監督指導による賃金不払い残業の是正結果の推移でございます。
2ページ目は賃金等に関する訴訟です。
民事紛争についての割合ということで、賃金についてはかなり多いという状況にあると思います。
3ページ目でございますけれども、労働紛争解決システムです。
日本の労働紛争解決システムの全体像を示した資料でございます。
まず、一番上でさまざまな苦情とか個別紛争が発生して、下にどんどんいくわけなのですが、大きく分けると、裁判外紛争解決システムとしてADRの仕組みと、実際の裁判となりまして、まず、ADRとして代表的なのは、右側に労働局のあっせんというものがありまして、申請件数が5,000件というような数で推移しているということです。
それよりは数は多くないのですけれども、労働委員会とか、あと、これは都道府県の労政主管部局で、東京都の労政主管部局などは1番数が多いのですが、ここでもあっせんとかをやっていたりしますし、法テラスや弁護士・社労士等に相談して、民間ADRとして処理しているものもあるというものでございます。
さらに、その下にいきまして、司法分野に入っていきますけれども、労働審判制度として処理されているものもかなり多いということでございます。これは民事訴訟には至らないけれども、裁判官が入って解決していくという仕組みでございますが、これが近年かなり利用されている状況でございます。
それでも、なお解決しなかったりとか、本訴のほうでしっかりとした判決を受けたいという方については、民事訴訟で最後は処理をしていくという構造になっておりまして、今、日本における労働紛争の解決システムの全体像としては、以上のような形になりますので、今回の御議論の参考になればと思いつけさせていただきました。
私から、資料の説明は以上でございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
これまで、この検討会では、第2回と第3回に労使の弁護士の方、それから、有識者の方々に、実務や外国法制についてヒアリングを行ってきたところでございます。
外国におきましては、今、事務局からの説明にもありましたように、賃金等請求権の時効につきまして、各国それぞれの事情に応じて異なる取り扱いをしていることがわかったと思いますし、日本におきましても、賃金等の請求権の消滅時効のあり方を考えるに当たっては、未払い残業であるとか労働紛争解決システムの実情などを踏まえる必要があるかとも思います。
そこで、この場でこうした点についても改めて御議論をいただければと考えております。
これまでの検討会を踏まえまして、賃金等請求権等の消滅時効の各論点について、御質問や御意見がございましたら、御発言をいただきたいと思います。どなたからでも結構ですので、よろしくお願いいたします。
論点としては、資料2が一応事務局のほうで整理していただいて、これまでの議論もまとめていただいているというものかと思います。
では、水島委員、どうぞ。
○水島委員 まず、1に関して、これは民法と労働基準法の関係をどのように捉えるかという問題と理解しているのですが、1つ目のポツで民法改正を契機としているので、改正趣旨をできるだけ踏まえて検討する。私はこの考え方が3つ目のポツに引き継がれていると思います。
民法の特則であるから、民法の規定を前提として、民法の規定が廃止された以上、新しい民法の規定を踏まえて検討しなければいけない。
だから、原則は民法に従うのであって、特に理由がある場合には特則を設けるという理解ではないかと思っています。
他方、1つ目のポツに戻りますが、民法と労働基準法を別個のものとして独立させて検討する。
こちらの考え方でいきますと、民法が変わったからといって当然に労働基準法も変えることには直ちにならず、しかし、民法が変更されたので、そのことを踏まえて労働基準法の変更の必要があるかどうかを検討する。
要は、前者であれば当然に変更を前提として考えなければいけないし、後者であれば、民法の変更を踏まえてどうなのかというように、立場が大きく変わるように思います。
初めのほうで、鹿野先生から前者の御意見があったように受けとめていたのですけれども、労働法の側からしますと、本当にそうなのかということについて違和感というか、ちょっと疑問があるところです。
そうなりますと、事務局でおまとめいただきました、資料2の最後の「その他」の最後のポツは、私からしますと、1に関係するところであって、つまり、1の1つ目のポツで民法と労働基準法を別個のものとして独立させて検討するという流れの中で、労働基準法と深く関連する法律については連動することになるのではないか、1 のほうで検討すべきことではないかと思いました。
民法と労働基準法の関係について、民法を改正した場合にどう変わるのかということをいろいろ考えていたのですけれども、民法第627条の解約の2週間が変わって、例えば2カ月になった。
それで労働基準法20条が変わるというのは、ちょっと変な例ですけれども、それはわかるのですが、しかし、雇用の章ではなく、民法の一般的な規定が直ちに労働基準法に影響するのかどうなのかがよくわからないところです。
もし、民法の債権法一般に通じるような条文の変更で、労働基準法に変更を及ぼすようなものはほかにはないかと思うのですけれども、もしほかの例があったら教えていただければと思います。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 今の最後の御質問にお答えすることになるのかどうかわからないのですが、私が、この資料2でいうと1の3ポツ目の趣旨の発言をしたことにつき御指摘いただきました。
確かにそういう面があったとは思うのですが、私の発言の趣旨は、民法が主観的起算点から5年になったので、賃金等請求権についても5年にしなければならないといったものではありません。
従来が民法の規定の特則として、労基法の時効期間が定められていたということであるなら、民法それ自体がそのような、いわゆる短期消滅時効の一連の規定を削除したことを踏まえて、改めて労基法がこのままでいいのかということについて検討をしなければならないということであります。
そして、そのままというわけでは必ずしもないと申しましたのは、労働分野の特別な事情があり得るかもしれないので、その特別の事情に鑑みて、これを一般の債権より短くすることに合理性があるのだということであれば、それはそういうこともあるかもしれないという趣旨でした。そういう含みを持った発言をしたつもりです。
ですから、1 の1番目のポツは、出発点が違うというか、別個のものとして捉えるということから出発するように見えますが、結局はそれでも民法の改正とかも考慮しながらということになるのでしょうから、行き着くところはそれほど大きくは変わらないのではないかとは思うのです。そのようなイメージでおります。
民法全体、民法の一般的な規定が変わったというだけではないか、特に雇用に関して変えたというわけではないではないかという御指摘もありました。
確かにそのとおりなのですけれども、ただ、先ほども言いましたように、民法の時効の中で、1年、2年、3年とかなり数多く置かれていたところの短期消滅時効の規定を基本的には削除したという、その趣旨は一応踏まえていただければと考えていたところです。
○岩村座長 ありがとうございます。
水島委員、どうぞ。
○水島委員 鹿野委員、ありがとうございます。
御説明を伺ってクリアになったのですが、鹿野委員がおっしゃった1つ目のポツで、スタートは違いますがそれほど変わらないと受けとめたのですが、ただ、私としては、1つ目のポツについて、前者をとるならば、労働基準法で時効期間を短くすることの合理性の問題だと思うのです。
しかし、後者であれば、短くすることの合理性ではなくて、異ならせることの合理性だと思いますので、意味合いが違ってくるのではないかと。
民法を前提とするのか、あるいは民法が5年ということを参考にしつつ、それと異なる定めをするか、という違いはあるのではないかと思います。
ありがとうございました。
○岩村座長 ありがとうございます。
伺っていて、事の実質はそれほど変わらないのかなと思って聞いていました。
いずれにしろ、この検討会で検討しなければいけなくなった状況というのは、基本的にまず、第一に民法の改正があって、消滅時効の起算点と、それから、消滅時効の期間がかなり大きくというか、変わった。
とりわけ、従来であれば民法の中に雇用の関係については短期消滅時効があってというのが、今度は短期消滅時効がなくなってしまって、かつ、起算点も主観的起算点を入れ、主観的起算点の場合には消滅時効の期間が5年となっているような状況になった。
いわばそういう民法の動きがあった中で、労基法がある意味、今までは説明としては民法の短期消滅時効の特則として、一般の賃金、月例賃金については2年、退職金については5年という特則があったものを、この民法の消滅時効の短期消滅時効がなくなり、主観的起算点でかつ5年ということにむしろ集約されてしまったことを受けて、では、労働基準法などの時効の起算点とか、消滅時効の長さをどうしましょうかという話なので、そこのところはもし民法と違う定めをするということであれば、では、要するに、その定めをすることが民法と違うということについて、それをどう理由づけるのかという話に結局のところ集約されるのだろうと思うのですね。
具体的にはどういう問題についてどういう理由づけをするかというと、仮に現行法の月例賃金等について2年を維持するという話になれば、それは結局のところ民法の一般原則よりも短いものを定めるということをどう正当化するかという話になるので、余りそこは変わらないのかなという気がいたします。
それは私のコメントですが、もし何かあれば。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 今の点は確かに水島委員がおっしゃったように、この1 の最初のポツを素直に読めば、ある意味どちらで出発するかで大分議論の方向が決まってしまうというか、原則、やはりどちらに立証責任があるか、どちらにデフォルトがあるかみたいな話ですけれども、もう原則は5年なのだから短くするには相当な理由がなければいけないというところを議論するのか、それとも、別の話だから、労働法として何年ならいいのかというところを出発点にするのかというのは、そのように分けると、それをどっちにするかで議論の方向はすごく違ってしまう気がするのです。
最終的には同じ話になるかなという意味では、私も基本的には岩村座長とか鹿野先生がおっしゃったような立場なのかなと思うのですが、それは多分、事が時効なので、ほかのことだったらわからないのですが、結局、もちろんもとは民法より短くしたということだったのでしょうけれども、それでずっとこの2年でやってきたという実態があるから、それでそれなりに労働法のルールもできてしまっているということがあるので、それはそれで重要なことだと思うので、結局議論としては全体としてどうするかということに集約されるのかなという印象を持っています。
逆に言うと、余り1 の1ポツで、どちらからスタートするかを決めようとすると、むしろそこが結論を左右してしまうような気もするので、ちょっとラフかもしれませんけれども、そこは広く議論はしていいのかなと思いました。
それは同じことなので感想みたいな話です。
その関係で、民法の改正を踏まえてどうするかということを決める上で、勝手に2のところに行ってしまうのですけれども、結局そうすると、いろいろなところに波及するのですが、2年なのか5年なのか、それとも、違うのがいいのかということを考えるときに、やはり2 の話ですね。
第115条はどういうものだと考えるのかというところを、一応ちゃんと確認しないと議論が始められないというか、特に民法のほうの起算点の話がいろいろ変わった点があるから、これまで「権利を行使できるときから」と解釈・運用されてきたと考えられるというのであるとして、これはこれからも、今後この2年が仮に5年になろうが、ほかの年数になろうが変わらないということで議論していくのか、それとも、何かそれ以外の、起算点のことも踏み込んだ話をしていくのかということが、そうすると、より根本的な改正みたいに、ただ2という数字を書きかえるか書きかえないかという話だけではなくなる気がするのですけれども、そこはどう議論をしていったらいいのかなという疑問があるのです。
要するに、2はどうなのですかということを言っているだけなのですが、2 の1ポツの議論の余地はあるというところなのでしょうけれども、この2 の解釈というのはそのままですよという前提で話をしていていいのですか。そこが一番疑問というか、どう考えたらいいのかなと思っているところなのです。
○岩村座長 ありがとうございます。
そこは1の話と結局は同じかなと思っています。
つまり、今回の民法改正によって新しく立てられたルールと、ざくっと言うと労基法との関係で、それは結局民法と労基法の関係という話なのだと思いますが、それをどう考えるかということだと思うのです。
そして、私の理解では、多分、民法の今回の消滅時効の改正は、単に消滅時効の期間の問題だけではなく、やはり消滅時効の起算点も含めての全体としての改正だと思います。
そうだとすると、基準法の賃金の消滅時効を考えるにしても、消滅時効の期間だけを議論して、それとは別に起算点を議論するというようにはならないのかなと。
やはり、それは消滅時効の起算点とセットで、消滅時効の期間の長さを考えるということかなと私は思います。
両者を切り離してばらばらにするというのは、民法の改正の動きともマッチしないだろうとは思っています。
○森戸委員 ありがとうございます。
それは本来そうあるべきだと思うのですが、余計な、一委員が心配することではないのだと思うのですけれども、議論としては非常に有益ですが、話が本格的になり過ぎて大変かなとか思ったりしたのです。
○岩村座長 それはあるかもしれませんが、他方で、起算点の問題について、民法と違ったルールを維持する、あるいは採用するということになると、余計難しいような気がするのです。
いずれにしろ、それは最終的には労働基準法なり、要するに、賃金債権と他の民法の一般の規定が適用される債権との違いとか、そういったものをどう考えるかという、そこに最終的には尽きるのだとは思います。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 今、まさに座長が言ってくださったように、これは3年とか5年とか2年とか、そういう数字だけの問題ではありません。
今回の民法の改正は、起算点とセットにしており、5年という期間だけをとると、一般の債権について、従来よりとても短くなったという感じを持たれるかもしれませんけれども、実際には、従来の客観的起算点から10年という規定は残した上で、主観的な起算点から5年という規定を新たに設けたということです。
その主観的な起算点は、認識した時からということですから、5年というのは、実質的な権利行使の期間が5年間は保障されているというような意味合いもあるわけです。
ということで、労働基準法でも、そういう二重期間の考え方をとるべきではないかと民法の立場からは思うのですが、ただ、先日の御指摘の中では、この賃金等請求権に関して、果たして別個に設けることの実質的な意味合いがあるのかというような疑問も出されたように伺いましたし、それと主観的起算点のわかりにくさという御指摘が、今回のまとめにも載せられているようにあったと思います。
ただし、わかりにくさという点については、それはここだけの話ではありません。いずれにしても、一般の債権について知った時ということの解釈が蓄積されていくことになるでしょうし、ここだけでわかりにくいからだめだというような話には直ちにならないだろうと思っているところです。
あとは、客観的起算点と別に主観的起算点を設けることについて、本当に不要なのか。
それとも、可能性としてはそこがずれる可能性も残っており別個の規定を設ける必要が出てくるのかということだろうと思っております。
○岩村座長 今の1と2の問題との関係で言うと、結局のところ、民法と労基法の関係をどう考えるかということになっていて、先ほどの水島先生の御質問の中で、民法の雇用に関する規定ではなくて、総則的、一般的な規定が動いたことで労基法に影響が及んだことがあるのかという御質問。
さっき私もちょっと考えたのですが、そもそも総則的な規定が動いたことがないので、余り例がないのではないかと。
だから、そこのところは余り詰めて考えるのは難しいかなという気はしますね。
だから、今の段階では、あるともないとも明確には言えないのかなという気はします。
もう一つは、やはり民法と労基法との関係でということになると、いわば労働関係のそういう賃金関係の規定をどのように見るのかということと関係していて、そうなると、これから先のさまざまな今後の、例えば審議会とかそういったところでのレベルの議論を考えると、ヒアリングで出てきた各国の法制をどう理解してどう位置づけるのかということがもう一つ重要なポイントかなと思っていまして、できれば、その辺について委員の先生方のコメントがもしあれば頂戴しておくと、今後議論していく上でも、あるいはこの検討会から後のさまざまなステップにおける議論においても有益かなという気がしますので、コメントなりがあればと思います。
例えば、水島先生はドイツにお詳しいので、ドイツはどうでしょうというようなことにもなるわけでありますけれども。
○水島委員 ドイツは、前回山本研究員からお話がありましたように、労働協約で決めている部分が多いので、余り日本法の参考にならないのですが。
今回、資料1を御作成いただいた感想ですけれども、必ずしも一般債権の時効期間と賃金が一致していないということがわかりまして、そのこともあって、先ほどの民法と労基法の関係という疑問がより生じたということです。
参考にならないような意見で済みません。
○岩村座長 ありがとうございます。
私も、少なくともドイツについては結局のところ、協約の世界で事実上みんな完結してしまっていて、要するに、協約でつくった権利なので、もうこれは協約で決めればいいでしょうという考え方だと思うので、ドイツの議論をそのまま日本に持ってくるのはちょっと難しいかなと思っていたところであります。
それから、イギリスも、これもやはりイギリス法独特の、特にコモンローあるいはエクイティーと、それから、制定法上の権利とがかなりはっきり分かれていて、制定法上の権利は制定法がつくっているので、それは制定法が決めればいいでしょうという考え方。
かつ、そこに紛争解決機関の、一般裁判所等の関係での特殊性も関係していて、こういう整理になっているのかなと思って聞いていました。
そうすると、これもまた、なかなか日本にそのまま持ってくるという議論ではないなと思います。
問題はフランスで、ただ、フランスもちょっと違うと思うのは、訴権の消滅という考え方をとっているので、フランスはドイツみたいに一般の請求権という構成ととらずに、非常にある意味古い形に近い訴権という考え方をとっているので、したがって、裁判所に持ち込めるのがいつまでかという発想で物事を考えているので、これもまたすぐに日本に持ってくるということでもないのかなという気がしました。
特にフランスの場合は、個別労働紛争はまず労働審判所ということになるので、紛争解決機関そのものも違うというような部分もあるかなという気もしていたところです。
韓国はどちらかというと、先ほどの事務局の御説明を聞くと、日本の労基法と同じような考え方なのかなと。
民法の消滅時効をどう理解するかにせよ、1年だというのであれば有利にしているし、3年だという短期消滅時効だったら同じものを定めているということなので、これもそれほど日本の議論に大きな影響を及ぼすものでもないのかなという気はしていました。
ただ、先ほど水島先生がおっしゃったように、フランス、ドイツ、イギリスを見ると、何となく賃金の消滅時効なり、それに等しいものというのは、一般の民法よりは短く定めているよねというふうに見えることは見えるかなと思ったのです。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 海外の全体を見て、本当に感想みたいになりますけれども、要するに、余り共通の理屈はないのかなと、すごく混沌としたなというのが正直な印象です。
フランスは比較的最近に改正があった影響とか、社会の感じ方とか、そういうものは興味がありますが、ただ、少なくとも報告いただいた中では別にこれが大議論になったということでもなさそうだったので、ある意味これはこういう制度だということになれば、実務はそれなりにそれに沿って動いている。
つまり、ドイツの協約は日本の協約とは違うかもしれないですけれども、それにしても、2カ月とか6カ月と言われれば、2カ月か6カ月の間に何とかしようと思う。
それで実務は動いているのだろうと、いろいろ理屈は違うけれども、どこの国でもそれなりに問題なく動いているのかなという印象です。
だから、日本の場合も、今は理念ということでやっていて、短くするということはないのでしょうけれども、これが長くするのかとかという話になったときに、やはりそのときの影響というのですか、どういうことがあり得るのかということはやはり考えなければいけないのだろうと思います。
他方で、でも、それは長くなったらなったで実務は対応するでしょうということも言えるから、余りそれだけで決められないのだろうと思いましたけれども、海外の制度、だからやはり、日本において、ちゃんとさっきの起算点の話もかかわるのですが、賃金なりについて未払いとかそういう問題があるときに、ちゃんとそれを持っていく場所であったり、機会がちゃんとあることがむしろ大事なのだろうと。
逆に、そういうルートが整っていれば、こう言っては何ですけれども、決め事なので、何年と決まればそれに沿って実務は動くということかなと。
それは各国によってさまざまだということを勉強した。
そのような印象で捉えています。
○岩村座長 ありがとうございます。
あともう一点つけ加えるとすると、少なくともフランスとドイツは個別紛争の数のレベルが日本と桁が違うというのはもう一つ大きな要素かなと思います。
賃金紛争がどのぐらいあるかというのはまた別途だと思いますけれども、そもそもの個別紛争の裁判所なり労働審判所とかそういったところに行くデフォルトの数が、はるかに桁が違うので、その点は日本と非常に大きく状況が違うところだという気はします。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 私は前回欠席したので、残念ながら直接は海外の興味深い御報告を聞くことはできなかったのですが、前回の資料をいただいたり、あるいはきょうまとめて資料1をつけていただいたりというところを拝見する限りは、確かに一般の債権の消滅時効とはまた別の定めがされている国が多いのだということがうかがえました。
ただ、先ほど、これも座長がまとめてくださったように、各国それぞれと日本とでは周辺の事情に違いもありえますので、外国がこうだから日本でこのようにと、直ちに倣うわけにもいかないように思えます。
フランスは一見ちょっと似ているようにも見え、しかも、フランスは原則の5年の時効が最近になって3年になったところがどうしてなのだろうと興味深いところもあります。
ですが、これも時効と言っても、フランスでは訴権の消滅として解釈されてきたということでありました。
請求権自体が消滅するということではなくて、訴権の消滅ということであれば、その訴えを裁判所に提起し、あるいは紛争解決の機関に対して申し立てる期間としてどれぐらいが適切なのかが問題になります。
そうすると、そういう紛争の数とか、あるいはその紛争解決機関が紛争解決にかけるコストというようなことを一方で考え、他方で、どの程度の期間があれば、請求する側でも裁判所等における権利行使を実質的にすることが期待できるかというような考慮があって、その期間が設けられているのではないでしょうか。
これは想像に過ぎませんけれども、そのように思うところです。
ですから、まず、日本においては、訴権の消滅というわけではないということに留意する必要があります。
第二に、そうは言っても、日本でも紛争解決コストはある程度は考慮する必要があるのかもしれません。
けれども、その際、この点でも外国とは事情が違うところもあるでしょうし、ADRも含めた紛争解決機関に対して、申し立て、あるいは権利を行使することの容易さというようなことについても、考慮をする必要があるのではないかと考える次第です。
○岩村座長 ありがとうございます。
仮の議論として、民法の時効については、時効期間だけを考えたときに、5年になったけれども、労基法で労働関係、賃金債権については、それとは違う規律を消滅時効期間について維持するとすれば、それを根拠づけるものは、どんなものがあるのでしょうか。思考実験はやっておかないと、これもまた今後の議論にとって重要なので、もしその辺について、御意見、コメントがあればと思いますが、いかがでございましょうか。
では、水島委員、どうぞ。
○水島委員 ありがとうございます。
そもそもの質問も関連していたのですれども、民法よりも短く定めることの合理性を言うときには、今は問題がないから、現状を変えるべきではないといった議論は使えないと思ったのです。
しかし、民法と異なることの合理性で考えるのであれば、現在、それが通用していて、変更しないことが社会に混乱を招かない、ということは理由として言えるのではないかと思います。
○岩村座長 それは一つなのですが、他方で、一番問題になるのは、法曹の方々からのヒアリングで、労側の方もおっしゃっていたように、現状を維持する、そのほうが安定するという話も一方でありつつ、しかし、一般は5年になっているのに、なぜ賃金だけ2年なのだというところが結局はそこが焦点になるのだと思うのですね。
先ほどの最初の議論に戻ってしまうのですが、結局同じではないかというのが、どうしてもそこの議論はせざるを得なくなってしまうということなので、一般は5年なのに賃金については2年というのがいいのだと、あるいは2年にすべきなのだということを支える論拠としてはどんなものがあるのかというのは考えておいたほうがいいかなということなのです。
○森戸委員 それはだから、答えにはならないのだけれども、そうすると、諸外国は何で一般より短くしているのかというと、先ほど座長がおっしゃったように、ちょっと紛争の数が多いから、そんな長いことやれないよというのはあるのかなと。
ただ、そうすると、日本は多い少ないと簡単に少ないと言ってはいけないのかもしれないけれども、そこまで個別紛争処理機関に紛争が来過ぎてパンクしているわけではないよねということがある。
あとは、もう一つは、なくなってしまいましたけれども、短期消滅時効を民法が設けていたときの、1年のものの理屈が民法であったわけですよね。
だから、それと同じことを、なお労働分野については言えるのだというのを復活させるのかというと、でも、そういうのはやめようと民法で決まったわけだからということが出てきて、水島委員がおっしゃったように、現に今、2年でやってきて、それなりにそれを前提に動いているという以外に、理屈でというのはなかなか、ただ、それは大きな理屈だと思うのですけれどもね。先ほど申し上げたように、時効という制度だから、2年と決まればそれに基づいて動くものだから、これは5年になれば5年を前提に動くのだろうと思うので、ただ、今、それでやっているという以外に、余り理論的な、それこそ民法が昔何で1年だったかという話をもう一回持ち出すぐらいしかないような気がするのです。
○岩村座長 いや、恐らく森戸先生がおっしゃるようなことかなとは思うのですが、多分、労働の賃金債権の特質を考えたときには、これはもちろん基準法の規制もあって、毎月少なくとも1回、定期的に払わなくてはいけないと。
したがって、1年という期間、仮に通年で見た場合も毎月払うので、少なくとも支払期が12回来る。
それごとに結局時効の起算が順次始まっていくという方法になり、書くことになり、かつ、これはもう全く企業の規模に依存しますけれども、小さい企業であれば、毎月の従業員に支払うべき賃金の支払い数はそんなに多くないかもしれないけれども、事業所の規模が大きくなっていくと、場合によっては数百人というレベルでもって、同一の期日に賃金を大量に支給しなければいけないというのが、恐らく月例賃金について見たときの一つの特質かもしれないという気はするのです。
ただ、一般債権でもそういったものは実はあるので、そうすると、それは必ずしも絶対的なものではないのかもしれないですね。
労働債権、賃金を見たときの一つの大きな特徴はそこにあるかなとは思うのですが、定期金払いでしかも毎月でという、だけれども、それはしかし一般債権でもないかと言われると、やはりあるよねという話になってしまうので。
○森戸委員 でも、それはまさに、民法が雇い人の給料について1年の短期消滅時効をつくっていたのはそういう理屈なのではないですか。
○岩村座長 そうだと思います。
○森戸委員 でも、民法は別にそれはもうそういう理屈はないと言ったわけではなくて、労働分野については、民法改正で、そこはある意味労働法のほうに委ねますと言ったわけだから、それは同じ理屈、ある程度似た理屈があってもいいと思うし、今、座長がおっしゃったことは、それはそのとおりだと思うので、でも、逆に言うとそれしかないのかなと。
民法の先生がどう考えるかはわからないのですけれども。今の、賃金だけではないだろう、ほかの債権もあるではないかという話はいかがなのですか。
○鹿野委員 典型的にあらわれるのは賃金でしょうけれども、抽象的な可能性としては、契約上の債権としてほかのものもそういう事態はあり得るのだろうと思います。
民法の改正審議の際には、労働法の賃金等については、労働法分野でもう既に労基法の特則があったわけだから、そちらで検討してくださいということになったわけなのですが、一般的に言うと、3年、2年、1年の短期消滅時効については、例えば職業別でいろいろと時効の期間が短く定められており、それは日常的な債権で、証拠を保存することが困難であるからとか、いろいろな理由が従来から言われていたけれども、果たしてそれが少なくとも今日の社会において合理性があるのだろうかということが非常に疑問視されていました。
しかも、賃金等の労働債権については、特別法の世界ですから別ですが、民法の1年、2年、3年の債権の短期時効の規定については、その適用の限界が曖昧だということも手伝って、実際に規定はあるけれども、どこまでこれが実質的に機能しているのかということもはっきりしないという指摘もあり、単に複雑化を招くだけではないかという批判もありました。そういう従来からの批判もあって、今回、これが一挙に廃止されたという事情がございました。
先ほども申しましたように、全体としてはそういうことなのですが、ただ、各分野における各種の債権について、特別な事情があるというときについては、従来も特別法の定めはあったわけですし、今後それをどうするかということについては、その各分野において、さらに検討をしてほしいということで、とりあえず委ねられたのではないかと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
一般に消滅時効を認めるものの一つとしては、要するに支払い記録とかそういったものの保存期間と非常に密接に結びついているということで、ですから、今までは労基法の世界であれば2年の消滅時効なので、月例賃金の書類については、支払い記録は最低でも2年間は保存しなくてはいけないということだったのが、仮に今度5年になれば、最低5年は保存しなくてはいけないということにはなるだろうということなのだと思うのです。
ただ、昔、民法ができたころと非常に違っているのは、ほとんどが今はもうみんな電子データで保存するようになっていて、紙媒体で保存すること自体がだんだん少なくなってきている。
紙媒体自体は非常に場所をとるという問題が当然あったのですが、それもだんだん今、そういう問題ではなくなってきているというのもあるのかなということです。
もう一つ、恐らく議論になり得るとすると、法曹の先生方のヒアリングのときに出てきた、要するに、賃金の未払いが争われたときの証拠方法に難しさがあるのだという議論もあったところで、つまり、単に支払い記録だけをとっておいたのでは必ずしも抗弁にならないというようなことが訴訟の場面ではあるので、そういうお話もあったところなのですが、それはいかがなのでしょうね。
それはしかし、労働関係に特有ではないような気がするのです。
つまり、相手方が別の主張をしてきたときに、こちら側として抗弁の方法が実はないというのはしょっちゅうある話のような気もするので。
○鹿野委員 まさにそれは立証の問題でして、一般的には先ほど座長がおっしゃったように、明治時代に民法がつくられたときとは証拠の保存方法が違うでしょうということで、紙を大量にとっておかなければいけないということでは必ずしもないという観点から、短期時効の合理性は乏しいとする意見もありました。
そうすると、今の点について、賃金等請求権についてだけ立証が非常に困難になるのかというと、それはそうではないのではないかとも思います。
確かに、2年が5年になったら、その分だけちゃんと注意して証拠をとっておかなければいけないということは言えるとは思います。
だけれども、それは今もおっしゃったように、この債権だけの問題ではないのであって、それがここでの短期時効を正当化する理由にはなりにくいのではないかと個人的には思っています。
○岩村座長 ありがとうございます。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 繰り返しになるのですけれども、私はやはり論点の2ですね。
2年なのか5年なのかという話は、それが今の2年、あるいは5年がどういう意味なのかということがわからないと議論にできなくて、今まではこう書いてあるから何となく裁判でそれなりに解釈されてやってきたけれども、ここで議論する以上、これを仮に5年にしようという結論を出すにせよ、2年でいいではないかという結論にせよ、それはどういう意味か。
つまり、第115条でいう時効によって消滅するというのがどういう意味かということを共通に理解して、それは例えば名ばかり管理職みたいな訴訟のときはこういうことになり得ますよとかいうことをある程度前提として議論しないといけないのかなと思って、だから、2 の論点が先というか、一緒なのでしょうけれども、これをどうするのか。
これはだから、結論的には別にほとんど変わらないでしょうという契約、賃金の場合は余り主観的も客観的も変わらないでしょうというのは基本はそうだと思うのですが、やはり例の名ばかり管理職の後からのとかということは何か議論がある気がして、そういうものをどう考えるかということをある程度詰めないと、議論が先に行けない気がするのですね。
つまり、これも仮にですけれども、2年のままでもいいと。それは毎月もらっているものはもらえていなければすぐわかるし、でも、実は名ばかり管理職でしたとわかったとかいうのは、それは最初から2年で切られると、もしかしたら不当かもしれないねと。
だったら主観的起算点のほうでもうちょっと配慮してあげればいいではないかとか、それは条文上の配慮なのか解釈の配慮なのかわかりませんが、何かそういうことがすごく議論に影響する気がして、いじるか、いじらないかを決める以上、この時効によって消滅するとはどういう意味かということがある程度確定しないと議論できないのかなと思っているのですけれども、それはいかがですか。
○岩村座長 実はもう一つ、起算点の議論をしようとお願いしようと思っていたところに、今、まさに森戸委員が発言していただいたとおりで、通常の支払いが行われている限りにおいては、恐らく消滅時効は余り問題ではなくて、もし労働関係の特殊性がある程度あるとすれば、今、おっしゃったような、例えば名ばかり管理職の問題であるとか、それから、今、話題ではありますけれども、裁量労働制になっていると思っていたら、裁量労働制が違法で、実は裁量労働制ではなくて、通常の第36条、第37条に基づいて、ちゃんとした割増賃が支払われなければいけないというケースだったということが出てくるというのは、労働事件の特徴としては一つあるかなと。
その場合に、時効の起算点というのが一体どこからになるかというのは、この問題についての一つの大きな論点になるかなと思うのです。
今までだと、権利の行使が可能になったときからだと一般的には考えていて、ただ、それでいってしまうと、例えば名ばかり管理職の場合だと、抽象的には、管理職と言われた時点で名ばかりだったら、最初からもう権利の行使は可能だったはずだということになってしまうので、客観的には権利の行使が可能だということになるので、そこは時効の起算点ということになるのか。
それは裁判例はどうでしたか。
どうぞ、お願いします。
○猪俣課長補佐 回答になっていないのですが、その点は裁判例を結構調べたのですけれども、我々の探し方もまだ不十分かもしれないのですが、その点が論点になっている余りいい裁判例、あるいは裁判所の判断みたいなものはちょっと見つかっていないというところでございますので、起算点の話につきましては、参考資料2は第2回でつけた資料でございますけれども、これをもとにしていただきまして、どういうケースがあり得るかとか、あるいは先ほど座長がおっしゃったような、どういう解釈をしていくかというのを、ここで解釈を確定させるというのはなかなか難しいとは思うのですが、どういうことが想定し得るのかということはある程度裁判例もない中で想像しながら議論していくしかないのかなと我々として思っているところでございます。
○岩村座長 ありがとうございます。
多分、訴訟を起こしたときには、そこからさかのぼっても2年までしかいかないとかということだと、起算点そのものが恐らく問題にならないということなのだと思うのです。
今、森戸委員が発言されようとしたのだと思うのですが。
○森戸委員 ただ、実際上は多分2年分しか請求していないのかなと思ったというのが1つ。
そういう特に解釈で昔の分を訴えたとかいうことをそもそもしていないのかなと思ったのが1つと、あとは権利を行使できるときからというのは、よく考えたら、基準としていつからいつまで権利を行使できるのかと考えているのに、この基準は余り意味があるのかなと思った。
「知ったときから」と違う、先ほど座長がおっしゃったような権利を行使できるというのは、実はできたのだというのも含むとすると、保護にはちょっと欠ける部分があるような気がしました。
名ばかりのときは特にそうですけれども、あとはこういうものもあるのですか。
勤めているから、ずっと会社にいるから、何かもらっていないものがあるのだけれども、会社に言えないなとかいうのはあるかなと思ったのですが、それはもちろん言っていたら切りがないのですけれどもね。
それも一応労働関係の特殊性としてはあり得るのかなと思ったのですけれども、意味がわかりますか。
実際はこの手当をもらっていないぞと思っていたけれども言えないではないかと、それは言えないのがおかしいといえばそれまでなのだけれども、雇用がある以上、何か文句を言えないということはやはりあると思うので、だから5年がいいとは言いませんが、そういう事情も特質として一つあるのかなとはちょっと思いました。
○岩村座長 ありがとうございます。
多分、名ばかり管理職の例は法律上の障害がなくなったときは、一般的には例えば停止条件がついているとか、そういった場合を想定した議論だと思うのですが、そういう意味では非常に客観的に考えるので、恐らくは名ばかり管理職の例であれば、そもそも名ばかり管理職になった時点で、残業代を取らなくてはいけない、払わなくてはいけないはずだったということに恐らくはなるのだろうと思います。
ただ、権利行使の期待可能性というのをもし入れてくるとすれば、自分が名ばかり管理職だというのがわかったというのがどこかの時点であったとすると、そこから消滅時効が進行するという考え方というのもとり得なくはないかもしれないですね。
○森戸委員 だから、その話を、本当は名ばかり管理職について2年分しか取れないのはおかしいから、5年分を取れるようにすべきだという議論はある意味ちょっとゆがんでいて、それは2年か5年の問題ではなくて、本当は起算点をどうするかという話かもしれないということですね。
だから、そこはやはり一緒に議論しないと、結局年数の問題よりそちらのほうが実際上は大事かなと思ったのは、繰り返しですけれども、そういうことです。
○岩村座長 その議論の前提とすると、例えば名ばかり管理職の例をとると、時効の起算点が「知ったときから」だとすると、自分は名ばかり管理職だと知ったときからなるのか。
○森戸委員 そうすると物すごい後でも。
○岩村座長 鹿野委員、どうぞ。
民法の専門家に聞いたほうがいいと思う。
○鹿野委員 民法では主観的起算点と客観的起算点の二重の期間がありますが、これはいずれか先に到来した時点で、もう権利行使はできなくなるということなのです。
ですから、通常は知ったときから何年ぐらいの権利行使の期間を保障するのが妥当かということと、それが余りにも遅くになったときのことも考えて、客観的起算点から何年ということもあわせて考えなければいけないということだろうと思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
だから、例えば、違法な裁量労働などというのも、恐らくは協定ができていて、あなたは対象者ですと言われていてというようなケースを考えると、多分もし知ったときからということになれば、その協定自体が違法なものでというところから恐らく起算になるのだろうという、直感的にはそういう気がするのです。
水島委員、どうぞ。
○水島委員 座長がおっしゃった、例えば名ばかり管理職の場合に、明らかに名ばかり管理職が違法であるような場合は、名ばかり管理職についたときでいいと思いますけれども、それがグレーなときはどうなのか。
先ほどの協定もそうですが、当初は有効と思われたものが実際は要件を満たしていなかったようなときにどの時点で判断するのか、働いた時点なのか、無効とわかった時点なのか。
判決が確定して、でも、判決が確定すると周りのほかの労働者にも影響しますよね。そこの時点なのかと。
主観的起算点「知ったときから」の意味は専門家でないとわかりにくいとありますが、恐らく労働法学者でもわからない、難しいと思います。
○岩村座長 難しいと思います。意見が分かれる可能性はあると思います。
○森戸委員 この議論は大事だと思いつつ、他方で、それは本当は第41条だとか裁量労働のほうでちゃんとすればいい話だろうという気もしてくるので、難しいですね。
時効で全部解決しようという話では。
○岩村座長 いや、それは違うと思います。
○森戸委員 そうは言ってないのですけれども、自分で言っていて思ってきたので、そこの兼ね合いが難しいなと。
無視はできないけれども、余り時効の決め方をうまくして、この話を解決しようというのもまた本末転倒だなと自分で思いました。
○岩村座長 ありがとうございました。
別に時効でもって、今、議論している問題を解決しようということではなく、思考実験として一番出てきそうなものかなということでちょっと取り上げて議論しているということであります。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 確かに先ほどの限界事例のようなケースだと、「知った時」を基準とする起算点を設けるとすると、結局解釈の幅があるから、裁判所の解釈が出るまではわからないではないか、あるいは専門家でないとわかりにくいではないかというような御指摘もあるかもしれません。
けれども、これもこのような賃金等請求権だけの問題ではありませんで、だから、それをこの賃金等請求権を特別に定めることの正当な理由と言うことには、必ずしもならないのではないかという気がしております。
○岩村座長 ありがとうございます。
今の名ばかり管理職とか、裁量労働の問題も、一方では法解釈の問題でもあり、事実認定の問題でもあるので、ただ、それは言い出すと一般の債権についても同じようなものが当然発生するということは、私もそれはそうだろうなと思います。
あと、3 の年休はいかがでございましょうか。
○森戸委員 これは感想ですけれども、年休については労側の弁護士の先生方も、意見が違いはあるかもしれないがとおっしゃいつつ、たしか2年でいいとおっしゃっていましたね。
すごく印象的だったのです。だから、本来は、年休はどんどん消化してもらうべきものだということだと思うのですが、それを言い出すと、賃金だって本来どんどん先に払ってもらうべきでしょうと言えば同じかなとも思いました。
感想です。
○岩村座長 ありがとうございます。
やはり年休の場合は、ちょっと賃金の問題とは違っていて、年休制度そのものが本来は当該の年に20日なら20日とりましょうと。
今、政策的にも消化率を70%まで上げましょうと言いつつ40%ぐらいでずっととまっているという状態ではあるわけで、その1つの背景には、いろいろな要因がありますけれども、繰り越しが認められるというのがあって、繰越分を確保しつつ、年休をある程度消化する。
バッファーは残した上で年休を消化していくという慣行が大体根づいてしまっているというところから来ているので、それはどうでしょうね。
例えば5年とすると、みんなもっとためるようになるのか。
5年たつと100日になるので。
どうぞ。
○猪俣課長補佐 以前も見ていただきましたけれども、一応参考資料1で、年休を残す理由としては、病気や急な用事のために残しておく必要があるというのが一番多いという状況でございますので、繰越期間を延ばした場合に、こういった労働者の実態から見てどういう影響があるかということかなとは思います。
○岩村座長 ありがとうございます。
おっしゃるとおりで、通常は病気とか何かそういうものに備えてみんな残しているということなのですが、それを5年にすると、もっとみんなためるようになるのか、使うようになるのか。
○森戸委員 余りまともに働いている、毎日規則正しく働いている人が議論していないから、正直なところ、お役所の人に聞いたほうがいいかもしれない。
○岩村座長 多分、お役所の人はとても発言しにくいと思うので。
○森戸委員 多分、年休をとったことがないような人で議論をしても余り意味がないですよね。
○岩村座長 確かに、それはそうだと思います。
どうぞ。
○猪俣課長補佐 私でよろしければ、私は実際、普通の労働者ですけれども、正直に言うと、それほど年休を取得できているわけではないので、繰越期間が変わったから残しておこうとか残しておかないとかという状態にはないですね。
これは霞が関の役人だったら大概そういう感じではないかなという気がします。
繰越期間が延びる、延びないという感じではなくて、そもそも余り取得ができていない状況かなというところなので、そこは余り影響しないかなというところではあります。
○森戸委員 ただ、後で何かあったときに、どかんと言えるというのはありますよね。
○猪俣課長補佐 それはあるかもしれません。
○森戸委員 それは結果であって。
○岩村座長 最小限の病休や何かのためのバッファーをとっておいて、その後、その他30日まとめてどんととってしまうという行動に多くの人がなるかどうかですよね。
今、課長がお手を挙げた。
○藤枝課長 実態というよりは、これは前も申し上げたのですが、政策の方向性としては、もう御案内の、今、御審議いただいている労基法の改正においても、これまで年休は請求権という形で、今、見ていただいた資料にも、職場の雰囲気でなかなかとりづらいというような意見もまだまだある中で、一定程度、10日以上付与される場合について、そのうちの少なくとも5日については、使用者のほうで、労働者の意見を尊重した上でですが、5日を付与してもらう。
ある意味、少しパラドックスを変えて、できるだけその年に付与された年休日数を消化していただく、そういう方向性を今回の法改正でも打ち出そうとしていますので、座長がおっしゃっていたように、できるだけ与えられたその年に取得していただく、しっかり休んでいただくという方向性であることは間違いないので、そことの兼ね合いをどう考えるかというのはあると思っています。
○岩村座長 ありがとうございます。
どうだろうね。
日本の人は、3年分ぐらいため込んでおいて、必要なバッファーだけ残して、30日とって海外で1カ月過ごしてきますなどは、なかなか。
○森戸委員 もうやめてやるとか思えばありますよね。
○岩村座長 それはあるね。
だけれども、なかなか日本の企業の中でそれをやるというのは。
○森戸委員 一般にはないかなと。
○岩村座長 ないだろうね。
世代が変わってきているとだんだん違ってきているけれども、なかなか難しいかなと。それを奨励するというのも何か変なような感じがするので、むしろ、今、課長がおっしゃったように、できるだけ年内で計画的に消化してくださいねという方向のほうが政策的には適切なのだろうという気はしますね。
○森戸委員 では、やはり政策的に、本来はもうその年にちゃんと消化してもらうべきものだということが、例えば延ばさないなら延ばさないことを正当化するということですか。
○岩村座長 恐らくそういうことになるのですかね。
○森戸委員 それは非常に強い政策的な要請だと考えるということですか。
○岩村座長 もしそうであれば、そういうふうに考えてということで、年休についての消滅時効のところは変えないという説明になるのかと思いますが。
○森戸委員 今さらで申しわけないのだけれども、3の2つ目のポツの「そもそも年休の繰越が、消滅時効という制度であること」というのはどういう意味ですか。
○岩村座長 これはあれでしょう。
結局2年という消滅時効ということになっているので、初年度で取得した分が直ちに権利として消滅するわけではなく、もう1年は残りますよねと。
実際上、年休の繰越制度と言われているものは、結局それを言っているのですよねという意味だと思います。
○森戸委員 そういう意味ですか。
細かい話になりますが、時効と言っているけれども、年休権の時効の中断というものはないですよね。
賃金は正式に請求すれば時効が中断すると思うのですけれども、でも年休は、これはやはり本当は除斥期間的というのかな。
この休暇は2年で絶対なくなるのですよね。
済みません、余り関係ない話だから、論点提示でいいのですけれども。
○岩村座長 今までは全然議論されてはいないですけれどもね。
ただ、中断といった場合には、少なくとも権利の請求をすると。それも普通は、民法上は単純によこせと言うだけではだめだというか、いろいろなあれはあるにしても、ただ、年休権がもし労働者の請求のみで成立するのだということであれば、そうすると、年休そのものは成立してしまうので。
当該日に。
○森戸委員 結局、時効という制度で処理しているけれども、いろいろ賃金とは大分違う話だなということの一つのあらわれだと思うのです。
○岩村座長 恐らく性格は違うだろうと思います。
ありがとうございます。
○森戸委員 余計なことを済みません。
○岩村座長 あと、最後に「その他」は、付加金の問題というものもヒアリングでは出てきたところで、未払い賃金があって、当然、労働者側からすると、条文上でひっかかるものについては付加金の請求もしてくるということになり、裁判所の裁量ですけれども、最大で倍額までいくということになる。
これが今までの2年ではなくて5年ということになると、場合によっては付加金の額は相当膨らむということが起こることになるのです。
○森戸委員 これも決め方だとは思うのですけれども、付加金というのはそもそも絶対に2倍だということが原則なのですか。
やはりそれは2倍賠償的なものだという趣旨だと書いてあるのですか。
○岩村座長 あれは一応裁判所の裁量で額は決まっている。
最大は2倍です。
○森戸委員 そうなのですけれども、最大が2倍というのは、つまり、もし5年になったら、それも5年分の2倍だというのがデフォルトのルールだということなのですかという質問なのです。
○岩村座長 いや、それはもし場合によっては、付加金はさすがに5年にすると大き過ぎるというのだったら、立法政策としてはそこのところは変えるというのはあるのかもしれないけれども、なかなか結びつけて議論すること自体は非常に難しいかなという気はします。
他方で、額をどうするかは裁判所の裁量なので、だから、5年となったときに、どの額まで付加金を認めるかというのは、それは裁判所が決めればいい話なのだから、我々の議論することではないよねという整理の仕方もあるのだろうという気はします。
○森戸委員 それはそれでいい気がします。
○岩村座長 あとは、先ほど水島先生が指摘された、「その他」のポツの2番目、関連する法律にある規定という話になるわけですけれども、災害補償が若干厄介で、第115条には災害補償の時効も入っていたのでしたか。
○猪俣課長補佐 入っております。
○岩村座長 労働基準法上の権利だから、入っているのだよね。
だから、5年とすると、労基法上の災害補償の権利も消滅時効は5年ということになる。
○猪俣課長補佐 最初の資料でも、前に参考資料1のほうでも説明させていただきましたけれども、労基法上の請求権というか債権は二十何種類ぐらいありまして、災害補償はそのかなり大きいグループを占めているわけなのですが、そういった一つ一つの債権について、今回、基本的に利便性とかの観点から賃金に合わせるのか、それとも、今、年休の御議論をいただきましたけれども、そういったような形で別個にそれぞれ考えていくのかというのは、一つ大きい論点としてあるかなと思っております。
○岩村座長 ただ、基本的な考え方として、それを左右するかどうかはともかくとしても、例えば、休業補償などというのは賃金のかわりなので、そうだとすると、要するに、本体の変わる前の賃金の消滅時効は5年なのに、休業補償に変わった途端に2年になるというのが、ちょっと説明がつかない。
難しいという気がするので、休業補償が2年でなくて5年になってしまうとすると、労災保険給付の休業補償給付の短期消滅時効で2年になっているので、そことのバランスをどうするかという問題は当然出てくるということになりますね。
水島委員、どうぞ。
○水島委員 私は、そこは当然合わせていかなければいけないと思いますが、結構煩瑣な作業な感じがいたします。
施行日も合わせなければいけないと思いますので、連動して検討しなければいけないかと思っています。
○岩村座長 ありがとうございます。
そうなると話がだんだん大きくなって、労災保険給付のところが消滅時効5年になると、厚生年金が2年とかというのとどうするのだという問題が実は出てきかねないところがあるのです。
特に、障害補償給付とかあの辺だと、ケースによっては労災保険給付と障害年金とが重複で、併給調整しますけれども、両方支払われているというときに、通常は余り問題にならないのですが、消滅時効期間というのが形式的には違ってくる。
記録の問題とか何かが出てくるわけですが、そうでなければほとんど問題になりませんけれども、法形式上は違うものが並ぶという形にはなってしまうということになりますね。
余計な話ですが、退職手当の5年はいいのだよね。
○森戸委員 いいというのは、仮に賃金が延びたらもっと延ばせという話ですか。
○岩村座長 そういう話ではないと理解はしているのだけれども。
○森戸委員 それも決め事なのでしょうけれどもね。
そっちはもともとの、いわば民法とかのルールに合っていた、今度の、結果的には先に5年になっていたということなのですか。
○岩村座長 退職手当について言えば、もともと短期消滅時効というルールがあったわけでは多分ないのかな。適用があったのかな。
○森戸委員 それは民法上の給料とはみなしていないのかな。
○岩村座長 それを5年というのは、逆に言うと、一般債権の従来のあれからすると短くはしていたということになる。
それは法曹の先生方のヒアリングの中でも出てきた話ですね。
○森戸委員 本当は、それは10年にするかという議論もあり得るわけですね。
○岩村座長 その議論が塞がれているとは思いませんが、ただ、この際10年となるのかというと、そこはどうなのでしょうということではあると思います。
鹿野委員、どうぞ。
○鹿野委員 先ほどの話に戻ってしまうのですが、仮に5年としたらというときのイメージが、先ほど森戸委員から何度も御指摘にあったように、いつからの5年と考えるのかということによっても実質的な意味が変わってくるので、確認させてください。
こうすればいいという趣旨ではないのですが、例えば、権利を行使することができる時から5年として、ただ、主観的な起算点からの期間を、それより短く3年と定めるというようなたてつけも可能なのですか。
ただ、それがいいかどうかというのがまさに大問題でありますが。
○森戸委員 私もそれはあり得るのではないかなと思いましたけれども。
○岩村座長 民法の議論でも結局、要するに、主観的に権利を行使できるということを知っているのであれば、それはやればいいだけですよねというのが結局、5年という消滅時効期間を置いたという理由であるとすると、労働債権についても同じような考え方というのは当然あり得るわけですけれども、他方で、やはり先ほどの議論に戻ってしまって、例えば客観的起算点を5年にするとすれば、そこでもう既に一般法とは差が出てしまうということになるし、それから、主観的起算点を導入して、それが例えば3年とか2年とするとすれば、それもまた一般法とは差が出てしまうということ自体も変わらないので、そうすると、なぜそこが違うのかという、とりわけ短くすることについての説明というのをどうつけるかというのは、やはり要求されるということにはなるのですね。
○鹿野委員 ただ、先ほどの具体的な、名ばかり管理職とかの事例も含めて、幾つかの具体例を前提として検討する際に、何年ぐらいあれば権利行使の期間として十分であり、一応現実的にも権利行使の機会が保障されていると言えるかというイメージが、起算点によって違ってくるかと思って発言をした次第です。
それと、一言追加しますと、実は今回の民法の改正で、時効制度は、期間とか起算点だけが変わったわけではなくて、先ほど出てきた中断とか停止というところも変わりました。
言葉のうえで、中断が更新になって、停止というものが完成猶予になったということもあるのですが、それだけではありません。
権利を行使したということだけでは、従来に言う中断は生じず、従来に言う停止、つまり完成猶予の状態になる。
そして、権利の存在についての確証が得られたときに、従来に言う中断、つまり、完成猶予になるという形になったのです。
これは、ここの議論の中心論点からすると端っこの問題かもしれませんけれども、先ほど言葉が出てきたので一言申し上げました。
○岩村座長 ありがとうございます。
新しい法律に頭が余りついていっていないので、大変勉強になります。
このほかに何か、事務局のほうはいかがですか。
もしできればきょうこの点をもう少し議論してほしいということが何かあればですが。
○猪俣課長補佐 先ほど私がちょっとお話ししましたが、これは最後の話になるとは思うのですけれども、水島先生から最初に御質問いただいて出てきた論点でございますが、経過措置について、最後の最後でどうするかというのはかなり重要な点になってくるような気もいたしますので、その点をどうお考えかお聞かせ頂けるとありがたいです。
○岩村座長 座長が最初に言うのも何だけれども、請求権の発生時期というと、そもそもいつ発生したのだという厄介な話になるような気もするので、一番簡単なのは契約の時期で見るというのが簡単なのではないかという気はします。
森戸委員、どうぞ。
○森戸委員 では、契約の時期。
○岩村座長 いつこういう当該雇用契約を締結したか。
○森戸委員 では、もう40、30年前に会社に入った人は2年のままということですね。
○岩村座長 そうなってしまうと思うけれども、もちろん、賃金の発生時期で変えるというのもあるとは思うのですが、そうすると、場合によってはいつ発生したかどうか自体が問題になる可能性もあって。
簡単なのは、契約の締結時期というのは一つかなという気はします。
そうなると、結構長い間併存状態になって企業の管理が非常に難しいというのがあるので、それであれば、請求権の発生時期という賃金の支払期とかそういうもので見てしまうのでもいいかなと思います。
ただ、そうすると、同一人について、2つの時効期間が併存するということにもなるのですね。
民法はどうしたのですか。
○猪俣課長補佐 契約時期です。
○岩村座長 契約時期だよね。
○鹿野委員 民法の改正の附則のところで、以前に紹介していただいたと思うのですが。
○猪俣課長補佐 参考資料2の6ページ目ですけれども、これは民法の一部を改正する法律の附則第10条の経過措置の規定でございまして、これは契約ですね。
契約時期で分けていると解釈されているということでございます。
○岩村座長 ありがとうございました。
大体きょうの議論はこのくらいかなと思います。
今後は、この検討会として議論の整理を少し進めていくことにしたいと思っていますけれども、その前に、仮に消滅時効に関する規定を修正した場合の実務を実際に行う労使にも意見を聞いておいたほうがよいかなと考えるところでございます。
ですので、この検討会の中で、労使からも御意見を伺う機会を設定してはどうかと考えておりますけれども、それでよろしいでしょうか。
(委員首肯)
○岩村座長 ありがとうございます。
それでは、事務局のほうでその点については御検討いただければと思います。
大体きょう予定していた事項についての議論はできたように思いますので、きょうの検討会はここまでとさせていただきたいと思います。
いろいろと御意見をいただきまして、ありがとうございます。
最後に、次回の日程等につきまして、事務局から御連絡をいただければと思います。
○猪俣課長補佐 次回、第5回の検討会の日程については、現在調整中でございます。確定次第、開催場所とあわせまして、追って御連絡いたします。
○岩村座長 ありがとうございます。
それでは、これをもちまして、第4回「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」を終了させていただきたいと思います。
きょうはお忙しい中、また水島先生には遠方からお集まりをいただきまして、まことにありがとうございました。

 

 

 

(了)

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