ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会> 第9回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録(2018年3月16日)




2018年3月16日 第9回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録

雇用環境・均等局雇用機会均等課

○日時

平成30年3月16日 


○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階)


○議題

(1) 前回ご指摘いただいた事項について
(2) 報告書(案)について

○議事

○佐藤座長

 皆さん御出席ですので、ただいまから第9回職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会を始めさせていただきます。委員の皆様方には、大変お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。なお、事務局の宮川雇用環境・均等局長と成田大臣官房審議官は公務により、途中から出席になりますので、その点を御了解を頂ければと思います。

 本日の議題は2つあります。「報告書()」について議論していただくわけですが、その前に、議題1として前回御指摘いただいた事項について、事務局で資料を御用意していただいていますので、それについて御説明いただいて、その後、報告書()について御検討いただければと思います。それでは、議題1、前回御指摘いただいた事項について、事務局から説明いただければと思います。

 カメラ撮りはここまでということで、よろしくお願いします。

 

○堀井雇用機会均等課長

 それでは、私から資料1と資料2について御説明をさせていただきます。まず、資料1を御覧ください。前回の検討会において、職場のパワーハラスメントの概念について、この資料1で申し上げますと、1つ目の○のマル1マル2マル3の要素を満たすものを、職場のパワーハラスメントということで念頭に置いてはどうかという議論をしていただきました。そして、その点については、大きな異論はなかったと考えております。

 一方で、これが従来から6類型という形で現場で使ってきた考え方とどう関係が整理できるのかというお話がありましたので、用意をさせていただきました。

 この資料12つ目の○なのですが、上記のマル1~マル3を満たす職場のパワーハラスメントの典型的な例ということで、その6類型の行為類型が代表例ということで考えられるわけですが、そうなりますと、このマル1~マル3の要素を満たさないようなケース、一見、外形的には6つの行為類型に該当しそうな行為であっても、マル1~マル3のいずれかの要素を欠く場合、パワハラとこの場合に念頭に置かないケースもあるのではないかということで、下の表の左側は満たすと考えられる代表例、そして右側のほうは満たさないと考えられる例を書かせていただきました。一つ一つの説明は省略をさせていただきますが、実際に裁判例などで問題となった事案なども参考にしながら、当てはめてみたところです。

 ただ、多分いろいろな御指摘、御議論があろうかと思いますし、私どもも作業をやりながら、こういうことを積み重ねて、いろいろやっていくのが、実際の現場で役に立つのかなと思った次第もありますので、委員の皆様方の御意見を頂戴できればと思います。

 続きまして、資料2の説明に移らせていただきます。これも前回の検討会のときに、措置義務の法定という案を考えるとした場合に、どんな法律があるかというようなことを資料としてまとめてほしいという御意見がございました。したがいまして、これまで各委員の皆様方から、前回にかかわらず言及のあった法律を私どものほうで記載をさせていただいています。

 ただ、一般論として、対策を考えるに当たっては、どのようなことを目的にして、何をどのように講ずるかというのがまずあると思いますので、そういったことも踏まえて、これらの法律の目的、主な内容、担保のための措置なども併せて書かせていただきました。法律としては、上から労働基準法、労働安全衛生法、略称になりますが、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働契約法を書かせていただきました。取りあえず資料としてはこのようなものを用意させていただきました。私からは以上です。

 

○佐藤座長

 資料1は前回、資料12枚目ですが、職場のパワーハラスメントについてをどのように概念整理をするのかということで、要素としてマル1マル2マル3は満たすものという御説明があって、皆さんそうだなというお話があったと思います。それとこれまでの円卓会議等で議論した6類型とどう関係するのかということで、一応資料を整理していただいたのが資料1です。資料2は、もし措置義務化するとすれば、現行法で特に言及されたものとの、どのように盛ったらいいかということで、ただ、それぞれの目的の趣旨がありますから、今回、もしやるとすれば、それとの関係でいろいろ議論することになると思いますが、一応、それぞれの法律としてこういうものだというのを御用意していただきました。資料12について御質問、御意見があれば、どなたからでもよろしくお願いいたします。

 

○内村委員

 資料1を見ていて感じたところが、「精神的な攻撃」のマル1~マル3を満たさないと考えられる例について、「上司が担当業務の内容を知らない担当者に対して、業務を適正に進めるために業務内容を把握していくよう強く注意をする」という記述がありますが、なぜ担当業務の内容を知らないのかという背景がよく見えない。例えば、人事異動等で新しい担務になったからまだその仕事に馴染んでいないとか、あるいは採用されたばかりの新人だとかというようなケースもあると思います。

 加えて、場合によっては、上司の指導がうまくいっていないから、業務の内容を知らないというようなケースも考えられるということも含めて、そのために強く注意をするのがセーフというのは、無理があるのではないかと感じました。例えば遅刻とか、あるいは服装の乱れとかルールとかマナーを再三注意したんだけれども、改善できない場合は強く注意するとか、そういったところでまとめていったほうがいいかと思います。以上です。

 

○佐藤座長

 ここは先ほど事務局から説明があったように、まだこれが皆さんで合意できているという意味ではなくて、取りあえず整理してみたものなので、今の御指摘を参考にして改善していただきたいと思います。資料2のほうは、これまで検討会の場で皆さんが言及された法律ということで、もちろん全く新しい法律を作るというのもないわけではなくて、措置決めをするかどうかは議論があるわけですが、均等法からハラスメントを取り出して、全てのハラスメントの対策というのもあるかもしれません。一応そのように整理していただいたということです。よろしいですか。特に資料1については、取りあえずこの3つの要素で整理したときに、6類型との関係で今日は取りあえずということでこのようにということで、これもバージョンアップしていくということになるかと思います。

 それでは、今日のメインの議論になりますが、報告書の案を前回のものよりバージョンアップしていただいていますので、それについて御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

 

○堀井雇用機会均等課長

 それでは、資料3の報告書()についての御説明をさせていただきます。御説明の仕方としまして、資料のページと各ページに行数が振っていますので、合わせて御説明をしたいと思います。全体の流れを通して説明をしたいと思うのですが、1ページ、1行目の「はじめに」は省略をさせていただきますが、本検討会を設立するに至った経緯などが書いてあり、そして1ページの25行目から、現状ということで、いじめ・嫌がらせに関する相談件数など、いわゆる職場のパワーハラスメントをめぐる状況についてのデータなどの紹介をさせていただいています。

 そして、2ページの2行目から、実際にこれは予防・解決に向けた取組状況が今どのようになっているのかというところの事実関係の御紹介です。全体としては企業として52.2%の企業が取組をしているが、企業規模によって、1,000人以上の企業ですと88.4%である一方、99人以下の企業ですと26%と、企業規模によって、職場のパワーハラスメントに対する取組の実施状況が異なっているというようなデータを御紹介させていただいています。

 それでは、どのような要因でパワーハラスメントが発生しているか、この検討会でも御議論いただきましたが、2ページの13行目からです。行為者、そして被害者となる労働者個人の問題、そして職場環境の問題という捉え方という御意見が示されたと思います。それぞれについて、具体的な内容を以下に記載をしてあります。

 実際、ただ、このような予防・解決ということでアプローチをするに当たっての難しさ・課題ということも御議論がありまして、2ページの33行目からです。いろいろな御議論がされた部分ですので、様々な要素から成り立っておりますが、例えば3ページの2行目から、企業規模が小さくなると先ほどの措置がされている割合が低くなるという御紹介もありますが、裏を返すと、そういったところは実態が相対的に把握をされにくくなるのではないかというような難しさ・課題。あとは従業員の認知、周知等の課題等も指摘をされたと思います。そして、1213行目からは、実際に対応している企業の観点から見たときに、独特の困難さがあるという御紹介でございました。その困難さとは何かというところが、例えば30行目の所にありますが、事実関係の確認の難しさ、そして32行目、33行目からありますが、相談対応を担当する人材の育成が不十分であることなどの観点、そしてメンタルヘルスとの絡みで、今の産業保健スタッフなどとの連携の課題、35行目以下に示されているところです。

 同じく38行目からは、中小企業での難しさという指摘もありました。

 しかしながら、4ページの4行目からですが、パワーハラスメント対策に取り組む意義の部分については、委員の皆様方に大きい異論はなく、いろいろな御意見を出していただいたと思います。4行目の所ですが、尊厳、人格、そういったことに関わる許されない行為が職場のパワーハラスメントということ、そして、10行目から企業にとっても、これはデメリットがあるだろうということが指摘をされております。逆に言いますと、このような問題があるパワーハラスメントを防止することで、いろいろな対策を講ずることで、効果が期待され、メリットがあるということを縷々書いています。

 そして、5ページの10行目からですが、今どのようなことがされているかということで、職場のいじめ・嫌がらせに関する円卓会議の提言に基づいて、労使が自主的に取り組むということ、そして、行政としてもそれを支援するという内容が大きく書いてあります。

 そして、6ページの38行目になりますが、今、職場のパワーハラスメントということで、いろいろな行為類型がある中で、現行制度においてでとのような措置が適用され、どのような支援策があるかということが議論されましたが、その内容の紹介をさせていただいています。

 そして7ページの21行目は、セクシュアルハラスメントですとか、ハラスメント対策ということでやっている類似の制度についてもということで、この検討会でも取り上げられましたので、セクシュアルハラスメント、いわゆるマタニティハラスメントの制度についても御紹介させていただいています。

 また、9ページの11行目からは、諸外国でどのような取組をしているかということも議論されましたので、そこも紹介しています。国によっていろいろなやり方があって、様々だと。全くそういった意味で特別な法律がない、あるいは職場ということではなく、一般的な法律でやっている所もありますが、一方でフランス、スウェーデン、ベルギーなどにおいては、職場のパワーハラスメントに着目した法制度があるということでそういったことを紹介させていただいてます。

 続きまして、10ページです。これも前回のパワーハラスメントの概念に関連した部分の記述で、主に前回出させていただいて、御議論いただいた資料を文章化しているという内容です。10ページの39行目から、職場のパワーハラスメントの要素ということで、マル1マル2マル3をともに満たすものと考えたときに、11ページの4行目から、具体的にマル1マル2マル3をブレークダウンして、どのような内容かということです。

 特に11ページの5行目のマル1、優越的な関係に基づいて、これは優位性を背景にということで言っている部分がありますが、それについてはどのようなことかというのが28行目からです。1つ目の要素については、当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高いという関係に基づいて行われること。これを念頭に置いて解釈をしていったほうがいいのではないかということが書いてあります。

 続きまして12ページです。2行目の業務の適正な範囲を越えて行われること、ここについてもいろいろな御意見が出ていたと思います。ここについては、裁判例などで争われた場合に、やはり総合的な判断で非常にいろいろな考え方も示されている部分なのですが、23行目で社会通念に照らし、当該行為が明らかに業務上の必要性がない、又は態様が相当でないものということで考えてはどうかということで、類例を出させていただいています。

 そして、12ページの34行目、3つ目の要素ということで身体的若しくは精神的な苦痛を与える、就業環境を害することという関連の記述があります。ここにつきましては、13ページの26行目になりますが、当該行為を受けたものが、身体的若しくは精神的に圧力を加えられ負担と感じること、又は当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、その能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること、このようなことを意味したものということで捉えて解釈をしてはどうだろうか。そしてまた、33行目ですが、その解釈に当たって、平均的な労働者の感じ方を基準としてはどうか、そのようなことが盛り込まれております。

 続きまして14ページの2行目、どのような行為が該当するかという具体例のところです。この27行目からは、本日お出しをしました資料1を書かせていただいています。ただ、先ほど内村委員からも御意見を頂いたり、そこは議論がより深まっていく可能性もありますので、そうしましたら、ここの部分の類例は変更するという思いで、事務局としては書いておりますが、説明としては省略させていただきます。

 そして15ページの36行目からですが、パワーハラスメント防止対策の強化のための対策ということで、次の16ページの4行目から、マル1からマル5という案が議論されて、それぞれ10行目以下、メリット、デメリットが議論された内容を書かせていただいております。この議論の内容は、これまでの議論を頂いた内容を要約したり、あるいは様々なファクトを入れさせていただいておりますので、詳細については省略をさせていただきます。

 そして18ページの36行目、例えば(2)の部分で言いますとマル3マル4ということで、事業主が何らかの措置を講ずる、これが法律上根拠がある、あるいはそうではない形でやるといった場合において、例えばどういうことが対応策として効果的か、あるいはどのような取組がされているのか、そういったことを踏まえて何が効果的かということで、前回項目を配布させていただいたものを文章にしたものです。

 例えば19ページの12行目からありますが、事業主が方針などを明確化、周知・啓発をする。あるいは36行目、相談などに適切に対応するために必要な体制の整備をする。あるいは20ページの34行目ですが、発生をしてしまった場合の事後の迅速・適切な対応を行う。そして21ページの30行目からですが、今までの対応と併せて、パワーハラスメントという行為に着目して、例えば33行目にあるのは、プライバシーの保護ということを併せて行う。そして次の22ページの6行目ですが、その相談や事実関係の調査への協力を理由として、不利益取扱いをすることを禁止をする、そういったことを周知をするということがあったと思います。

 そして22ページの19行目からですが、パワーハラスメントという行為の特色に鑑みたときに、このようなことも望ましい取組として挙げられるのではないかということを、次に記載をしています。

 具体的には22ページの31行目ですが、パワーハラスメントの行為者、加害者、いろいろな形で実際現場でコンサルティングなどをされている方々と、企業の現場の方々の御意見などを踏まえますと、行為をした人もあらかじめ自分自身がこういうことをするとパワハラだとか、あるいはコミュニケーションや、感情のコントロールなどが分かっていればいいような事例もあるというお話もありましたので、いわゆる行為者、あるいは被害を受けた方、そういった方々についての研修などが指摘をされたと思います。

 そして23ページの1行目ですが、職場環境というアプローチが必要なのではないかという御議論があったかと思います。そうなりますと、いわゆる行為者の方の周りを取り巻く環境というのを見ても、ノルマが過大であったりとか、長時間労働があったりだとか、そういった職場の余裕のなさというのもあるのではないかという御指摘がありましたので、そういったことに対応したアプローチを23ページの1行目から書かせていただいています。

 そして、23ページの15行目ですが、中小企業ということで議論がされました。特に中小企業については、いろいろな制約があって、対応策が取りにくい、そういったことに着目して、どのような支援があり得るかというのを整理をさせていただいております。

 そして24ページの12行目です。顧客ですとか、取引先からの迷惑行為ということで、前回も資料に出させていただいた内容を文章化をしています。顧客、取引先からの迷惑行為につきましては、23行目ですが、本当に著しい迷惑行為、迷惑行為という次元を既に越えている行為もあるという御意見もありまして、そういったものにつきましては、例えば23行目にありますように、安全配慮義務が使用者にはあって、ただ、その安全配慮義務というのはケースバイケースで一率にこれというのはなかなか決め難いものではありますが、そういうことに鑑みると、一般的には本当に悪質な迷惑行為があったときに、事業者が労働者の心身の健康も含めて、生命、身体などの安全に配慮すると、こういう場合もあるのではないかと、そのようなことが指摘をされています。ただ、一方で、こちらの検討会では職場のパワーハラスメントということで議論されているわけですが、職場のパワーハラスメントと併せて考えても、例えば24ページの35行目から25ページの4行目のような違いがあるのではないか。したがって、全く同じに捉えられない部分があるのではないかと指摘されております。

 そのようなことから、先ほどの点に合わせまして、25ページの29行目ですが、個別の事業主だけでできること、個別の労使だけでできることというのも限界があるので、業種、職種、そういった横断的な形での団体、労働組合、そして関係省庁などと連携して、社会的な機運を盛り上げていくと。ハラスメントということ自体、それはあってはならないことなので、そういうアプローチでやっていくということも重要なのではないかという御指摘があったと思います。

 そして顧客、取引先からの迷惑行為については、複数の委員の方が重要な課題ではあると。ちょっと別枠のような形で書いたほうがいいという御指摘がありましたので、その御意見を踏まえた形で、今この検討会のここの部分に書かせていただきました。

 最後の6、まとめの所ですが、この部分につきましては、前回からもいろいろ御意見があって、今日の御意見も踏まえて書いていくとイメージしています。私からは以上です。

 

○佐藤座長

 これまでに御提案いただいたものを具体的な文書にしていただいたということで、一番議論が多い所は多分4以降かなとは思うのですが、取りあえず「はじめに」、現状、あとは先ほど御説明のあった職場のパワーハラスメントの概念を整理して、大きく123までの所で御質問なり御意見があればお願いいたします。

 

○小保方委員

2ページのマル3の中の19行目から21行目の受け手の問題が記載されている所です。これは過去の検討会を振り返ると、例えば1月の検討会において岡田委員などが発言された内容をベースに記載されているものと認識していますが、それ自体を否定しているものではないという前提で、この記載だけを見たときにちょっと気になる点として申し伝えたいところがあります。

1つは、「労働者全般」という記載です。この労働者全般という言葉を素直に読むと、あたかも労働者が皆そうであるという誤認を与えると思うので、記載を見直されたほうがいいのではないかというのが1点です。あとは労働者側の問題としてストレス耐性、依存体質、責任転嫁体質、社会的ルールやマナーの欠除等々、少し刺激的な言葉が並んでいるかなと認識しているのですけれども、恐らくここで言いたいのは、労働者側の態度であるとか言動というのが上司を怒らせる一因にもなっている背景もあるということを残しておきたいという趣旨だと認識しているので、仮にそういうことがあったとしても本来は適正な指導を行うべきであるので、書くこと自体も少し疑問なのですが、仮に書くとしても少し表現を和らげて、受け手の問題として例えば社会的なルールやマナーを欠いた言動や行動など、改善の余地があるケースが一部には見られるというぐらいの書きぶりにされるのがよろしいのではないかと思いますので、意見として申し上げます。

 

○佐藤座長

 その点は、そのほうがいいかなという気がするのですが、いかがですか。それでは今のように、「はじめに」、現状、それでパワーハラスメントの概念については先ほどもちょっと説明がありましたので、3までの所で御質問なり御意見を、もちろん3について、行為例については先ほど内村委員からも御意見がありましたように、そこはもちろん皆さんの御意見を頂いて直していくという前提でです。

 

○野川委員

 表記の間違いを1か所、事前に頂いた資料では3か所あったのですけれども、1か所だけ残っていました。14ページの20行目、職場のパワーハラスメントに当たる行為として整理することとするのはどうか。「と」が抜けている、それが1つ。

 

○堀井雇用機会均等課長

 すみません、ありがとうございました。

 

○野川委員

 あとは、具体的な内容について書かれていることや実質的なことについてはまた別途ということですか。

 

○佐藤座長

 はい。

 

○野川委員

 では、そのときにまた申し上げます。

 

○佐藤座長

 そこは大事な点ですけれども、今日少し全体を議論したいので時間があればやりたいと思います。

 

○中澤委員

 P.1の28行目で、都道府県労働局における職場のいじめ・嫌がらせに関する相談(必ずしもパワーハラスメントとは言えない事案も含む)は、増加傾向にあるということで始まっているわけですが、この必ずしもパワーハラスメントとは言えない事案も含むという注釈は、P.2マル2の取組状況の所についても同様に記載するべきではないでしょうか。つまり、パワーハラスメントの定義がはっきりしていないので、今ここで議論をしているわけですので、マル2も同様にパワーハラスメントとは言えない事案も含む調査として説明しているということでよろしいのでしょうか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 今、中澤委員から御指摘があったのは、1ページの28行目の所だと思います。これは都道府県労働局の個別労働紛争の相談事案を記載していますので、いじめ・嫌がらせという形で相談があっても、それが本来のいじめ・嫌がらせでなかったケースも想定できますし、あるいは今ですと円卓会議のワーキングの報告書の概念に該当しないというものもあり得ると思います。ただ、細かく何件というところは分かりません。今御指摘のあった2ページ以降の2行目の実態調査の結果によればという所については、実態調査を実施するときに職場のパワーハラスメントの円卓会議の定義を示した上で調査票を組んでいますので、記載をしてくださった方については措置を実施してどういったことをやっているかというときに、念頭にあるのは「職場のパワーハラスメント」だということは言えるのではないかと思います。

 ただ、調査の中身は非常に多岐にわたっておりまして、例えば相談を受けた結果がどうだったかとか、そういう相談を受けた件数の中にいわゆる職場のパワーハラスメントの概念等6類型に該当しないものもある可能性はあるのですが、調査自体は定義を明確化して聞いていましたので、この2ページ以降については、そこのところはあえて記載はしていないという整理にしております。

 

○佐藤座長

 ですから、1ページの所はもう少し丁寧に書いてもいいかも分かりませんけれども、取りあえず相談があった段階のなので、結果的にそうならないものも含まれている。2以降は、それとはちょっと別の話なので、ここは取組をしているかどうかとか、発生要因の分析とかという話ですので、ここはマル1だけできちんと書いておけば触れなくても平気だと思います。

 

○内村委員

 今の意見とも若干関連するかもしれないのですけれども、14ページの(3)に、いわゆるパワハラに該当する行為の例という所があります。今までの論議の中で6つの行為類型ということが全体の中ではある程度確認できているかと思いますが、13行目には、裁判例を見てもパワハラの態様は多様であり、その判断に当たっては総合的な判断も必要だという記載の上で、22行目辺りから、マル1~マル3までの要素のいずれかを欠く場合であれば、職場のパワーハラスメントには当たらない場合があることに留意する必要があるという表現について、マル1~マル3に該当しなければセーフですという形に読み取れてしまうのではないかと思います。マル1~マル3に該当しないからといっても駄目な場合もあるというような、実際グレーゾーンという場合があることを表現しておいたほうがいいのではないかと思います。

 

○佐藤座長

 ここは先ほど資料1で、これまでも一応基本的にはマル1マル2マル3を満たす場合を典型的な例と言っているので、これまでもほかの法律もそうですが100%そこでカバーできるかどうかというのは実際に起きてみないと分からないということで、典型的な例は3つを満たすという整理だと思いますが、それでどうですか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 ちょっと書き方は工夫をしてみたいと思います。主に念頭に置くべきものについて分かりやすいものがあったほうがという御意見でマル1マル2マル3という御了解を頂いていますので、ただその部分の表現の仕方とか、特に21行目から23行目の所は、また書き方を考えて御相談をさせていただきたいと思います。

 

○布山委員

 今の定義の所に関連してですけれども、前回の議論ではここに示されているマル1~マル3を満たしているものをパワーハラスメントとしましょうということで、特段どなたからも御意見はなかったと思いますし、私もそう思っています。今御指摘した所は、そうでないと何もやらなくていいのかというところに結び付くのであれば、もちろんそうではないと思っていますが、定義を書く所はやはり明確にしておいたほうがいいかと思います。何をもってハラスメントなのかという議論をしているのに、余り曖昧な要素を残しておくと今後難しいと思っていますので、そのような意味でここにそのように明記されたのかと私は理解していました。

 

○内村委員

 言いたかったのは、そうではない場合でも適切な対応が求められるというような記述を入れたほうが良いということです。

 

○佐藤座長

 分かります。

 

○堀井雇用機会均等課長

 今の両委員の御指摘を踏まえた形でちょっとまた直してみますので、またそこは改めてと思います。

 

○佐藤座長

 人事管理上、何もしなくていいというふうにならないようにということ、それはそうだと思います。

 

○岡田委員

 併せて資料1の満たさない例というのがあるのですけれども、これもやはり先ほどもう少し検討したほうがいいということでしたが、精神的なところは特にかなり多くありますので、これはかなりいろいろな例を出してやらないと結構ここで満たさないということになってしまうと思いますので、たくさん出した上でどれかを選んでいただいたほうがいいかと。その次の人間関係からの切り離しも、かなり微妙なところがあるかと思っています。

 

○佐藤座長

 これは少し、多分きちんと議論しなければいけないので、今日だけでは済みそうもないので、皆さんここはきちんとやらなければいけないというのもあれだと思います。3までの所はよろしいですか。もちろん議論しないという意味ではなくて、取りあえずです。

5はちょっと後にして4の所ですけれども、ちょっとその前に確認で、15ページからが4です。ここでは一応、防止対策についてこれまでどういう考え方があるかということを整理し、16ページのマル1マル2マル3マル4マル5というように整理して、それについて(2)でずっと書いていただいていて、私がちょっと聞きたいのは(3)なのですが、(3)(2)の、どのように取るかによって(3)の中のものが違って、この(3)の位置付けは、ちょっとここを説明していただけますか。

 

○堀井雇用機会均等課長

(3)の位置付けは、先ほどの繰り返しになるかもしれませんけれども、(2)のマル3とマル4つまりページで言うと17ページの8行目と40行目、この対策を講ずる、つまり事業主が何らかの措置を講ずるとした場合にどういったことがあり得るのか。それは今、既に取組を行っている企業の取組例から参考になるものを見てみようということを資料としてお出しして議論した回があったと思いますので、そのときの議論の集約のようなイメージで作っております。そのときはリストとして、例えばセクシュアルハラスメントなどにおいて企業が講じている措置を参考に、こういったことがあり得るのではないかという資料でしたけれども、そこを文章化しているという位置付けになっています。したがって、そういう意味でマル1からマル5までとは異質なのですが、ここの部分はちょっと各論が入ってきているという形になっています。

 

○佐藤座長

17ページのマル3あるいはマル4で、もちろんそれはどちらかによって中身が最終的には違うかも分かりませんけれども。

 

○堀井雇用機会均等課長

 議論はあり得ると思います。

 

○佐藤座長

 マル3マル4の取組例として(3)があるという理解ですね。

 

○堀井雇用機会均等課長

 はい。

 

○佐藤座長

 これはちょっと分かりにくいので、そういう趣旨ですね。だそうですので、そういうことを踏まえた上で御意見を伺えればと思います。その上で(5)は、どういう取組にするかどうかは別として、(5)の所は中小企業にということで、またここは特出しで書かれているということですね。そういう構成のようです。もう1つは、16ページの先ほどのに戻りますけれどもマル1マル2マル3マル4とあるガイドラインで明示というのは現状とは違うという趣旨でいいので、現状のままというのはマル5ですか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 マル5という御意見があったと思います。

 

○佐藤座長

 でいいのですね、そういうことですね。一応マル4というのは、今のマニュアルによる取組よりは一歩進むという意味でのマル4ですね。

 

○堀井雇用機会均等課長

 そういうものがあります。

 

○佐藤座長

 一応そういうことを踏まえた上で、どう書かれているかだけの整理なので、それを踏まえて御意見を伺うほうが混乱がないかと思います。ではどこからでもいいので、4について御意見を伺えればと思います。

 

○漆原委員

2点あります。16ページの(2)のマル1の一番最後の所、27行目です。ここには、「これを支持する意見は示されなかった」という記載となっていますが、資料1の際に座長からも話がありましたとおり、連合としてはあらゆるハラスメントに対応できるような基本法というものがあれば望ましいと考えていますが、その一方でこの検討会については年度内にとりまとめを行う必要があります。加えて、「いじめ・嫌がらせ」から「パワーハラスメント」に特化するということで、方向性を収斂してきました。このマル1についても、パワーハラスメントを減少させていくための予防措置として効果がある可能性もあり、それを否定するものではありませんし、支持をしていないわけではありません。そういう意味では、中長期的よりも直近ということの対応として、連合としてもマル3マル4マル5を支持するという発言をしたということです。

 もう一点は、23ページの中小企業に対する支援についてです。我々としても規模の小さい所でどのように対策を講じるかについては、なかなか難しい面もあると感じますが、だからといって何もしなくていいということでもないと思っています。例えば、発生したとしても被害者の逃げ場がなかったり、あるいは異動の対策が難しいことは十分承知しています。

 その上で何をするかというと、例えば障害者の施策で言えば、相談窓口の設置や増設に伴う補助金や助成金がも考えられるでしょうし、「障害者雇用支援マーク」という名刺に付けられるようなマーク等積極的に活用して広報をしていく、あるいは周知をしていくということも考えられるのではないかと思っています。

 ただ、何も支援策、助成金といったこともなくて対策が進まないということがあるとすれば、それはやはり何らかの対応が必要ではないかと思います。周知広報や機運の醸成について言えば、この6月のILO総会でも暴力とハラスメントに関する協議も行われると聞いていますので、そうした協議の実施など、世界的な動きに連動しつつ、機運を高めていくような報告書にしていただければと思っています。

 

○佐藤座長

 ほかにはいかがですか。

 

○小保方委員

 幾つかあります。まず16ページのマル1やマル2の所ですけれども、先ほど漆原さんがおっしゃったとおり、直近についてというお話で言うとマル3マル4マル5が優先だということだと思います。マル1やマル2について、これは過去の検討会でも申し上げているのですけれども、記載のとおりマル1で言えば刑法違反に該当する可能性があるとか、あるいはマル2についても損害賠償請求というのは現状でも受け得るということを周知していくこと自体が防止、抑止効果が一定程度あり得るということをできれば記載頂いた上で、対策の中でもしっかりと周知をしていくことを御検討いただければというのが1点です。

18ページのマル4に関連する記載の所ですけれども、例えばマル4の6行目に書かれている先進的な取組や幅広い取組を推奨できること、あるいは効果の高いものを収集・啓発するという記載があるのですが、これは必ずしもマル4を取らずしても、マル3を取った場合においても法律で課すだけではなくて記載のとおり指針を示すことになっていますので、指針の書きぶりによっては先ほど申し上げたような、要するに必須でやることはこういうことだけれども、それだけではなくてより幅広いあるいは先進的な取組をやっていってほしいというような書きぶりを工夫することによって、マル4に書かれているメリットというのはマル3を取った場合においても取り得ると理解しているので、その辺はちょっと含んでいただければと思います。

 同じ所の15行目で、デメリットとして行政等による強制力も弱いことが指摘されている部分ですけれども、それであるがゆえに取組が進まない懸念があるというところまで明確に書いていただきたいと思います。

 最後に22ページですが、これはマル1とマル2にコミュニケーションに関するくだりがそれぞれ分かれて書かれているのが少し分かりにくいと思っていて、コミュニケーション関連をくくって書いていただいて、それ以外の適正な業務目標の設定だとか、長時間労働の是正という記載分けにしたほうがよろしいのではないかと思います。以上です。

 

○佐藤座長

 今のマル3マル4マル5の所の関係なのですけれども、もしマル3をやればマル4マル5もやることになるだろう。マル4であればマル5もやるという感じの組合せだと思うので、そういう意味ではマル3をやれば当然マル4みたいなのが入るという、ちょっと理解の仕方も多分そういう話だと思うので、一応それぞれその趣旨で多分分けて書いていただいているのかと思います。ですので、マル4をやればマル3にも入るからという話にはなかなかなりにくくて、これまでの意見の分かれるところで言うと、マル3をやればマル4マル5も多分やることになるだろうし、マル3をやらずにマル4マル5もあるだろうという話だと思います。どう選ぶかはこれからですけれども、ここの書き方としてということでいいですか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 はい。

 

○野川委員

 今、小保方委員も指摘された22ページの(4)のマル1とマル2ですが、このマル1とマル2は順番を替えるべきだと思います。この検討会が開催される発端は、働き方改革における長時間労働是正の一環としてこういうことも考えられるというふうに出発しているので、マル2こそがやはりまず最初に出てくるべきであって、マル1はそのための周辺的な対策になると思います。どうしても順番で重要度の相違が印象付けられますので、マル1とマル2は逆にしたほうがよろしいかと思います。

 

○岡田委員

13ページの33行の所で、判断するに当たって「平均的な労働者の感じ方」というのがありますけれども、これは結構言い訳になっているところがあって、うちの業界ではこれは普通なのだとか、何かそれを感じている人がおかしいような言い方をするケースが結構あるので、ちょっとセクシュアルハラスメントとは違ってこれは除いたほうがいいのではないかと。特に上に、看過できない程度の支障が生じているということですから、これはなくてもいいのではないかというのが1つ思うところです。これは、風土的なことでかなり関係してきてしまっているようなところです。

 それから38行の所です。「大声で怒鳴るなどの厳しい叱責を執拗に繰り返し」とありますが、私が感じているのは、大声で怒鳴るタイプというのもありますけれども、執拗というのが結構、大声では怒鳴らないけれども執拗にやっている、それが両方そろわないとみたいに見えてしまうので、かなりこれは重要な所であるので、ちょっと別にして改めてその執拗、大声で怒鳴らないにしても執拗なというのは入れたほうがいいのかというところです、例示の所です。

 問題が発生した事後対応です。そこの所で21ページの13行目、行為者に対する対応の適正な実施ということですが、いろいろなことをされていいと思うのですけれども、最も大事なのは行為者自身がかなりストレスを受けているというか、そうなっている要因があると思いますので、再発防止のためにもこれはかなり除去をするということを考えていかないとまずいかということで、行為者そのものが行為を起こしているストレスの除去ということを入れていただくといいかと思います。

 これに伴って行う措置ということで、22ページの6行目に、事実確認をしたときに協力などを理由とした不利益取扱いの禁止とかと書いてありますが、協力だけではなくてもう1つ項目立てをするのかもしれませんけれども、報復行為を怖がって言えないということがありますので、相談したことによる報復行為を禁止するのだということをかなり明確に示すことによって相談もできやすくなると思いますので、それを別に立てていただくといいかと思っております。以上です。

 

○川上委員

 ちょっと別の話になりますけれども、もし入れていただけたらということがあって、1つ提案があります。これまでこの会では発言をしていないので、ちょっと突飛かもしれませんが、結論から言うとパワーハラスメントの継続的な実態調査というものをすべきだというのをこの報告書のどこかに入れていただきたいということです。これまで第1回からいろいろな資料を見せていただいて、労働局への相談件数や、あるいは労災認定の件数、それから行政による調査で相談件数の調査をされております。また労働組合等を中心として、個別の調査等も幾つかありますが、申し出た件数だけでこれからの対策の効果が進んでいるかどうかを把握するのは、かなり困難だと思います。申し出ない方もいらっしゃいますし、また意識が上がれば申し出る方も増えますので、実際に効果が進んでいるかどうかを把握するのは難しくなりますし、個別の調査は経年的な変化を追えませんので、ここは行政が中心となってパワーハラスメントの実態調査を継続的に行って、状況の変化と対策の効果を評価するという趣旨のものを対策の1つに入れていただけたらというのが提案です。ちょっとどこに入るか少し私も悩んだのですが、今の説明だと恐らくマル5でしたかね、意識の醸成の所のどこかに入れていただいて、対策の1つの類型としていただくのが一番適切かと思っているところです。

 

○佐藤座長

 私も入れることは賛成なのですけれども、一応1ページの34行目の所にある厚労省が実施した平成28年とありますが、これは継続的にやっているもので、企業調査と個人調査、だからこの労働局のとは別の話なので。

 

○川上委員

 これは個人調査もありましたか。相談件数のカウントだけではなかったのですか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 平成24年と平成28年の実態調査は相談件数とは別のものですので、この検討会の結果も踏まえて更に施策を展開していくに当たっては、ここでなされた議論なども調査の内容に加味しつつやっていくことはあるかもしれませんが、いずれにしても実態を把握し続けるのは大事だという御趣旨は受け止めましたので、ちょっと埋め方は工夫をしますけれども、報告書に何らかの形で盛り込みたいと思います。

 

○佐藤座長

 読む人は、今みたいに誤解があるといけないので、労働局への相談は1ページの27からで、34からは実態調査の話がずっと、これは過去2回やって、比較可能なように企業調査と個人調査でやっています。

 

○川上委員

 すみません、恐らく今回のパワーハラスメントの定義を使って調査をするということかと思いますが、その点も少し考慮いただけると。

 

○佐藤座長

 そうですね、そういうことになれば、政策効果を見るということは当然大事ですので。

 

○岡田委員

 調査という続きなのですけれども、どこかに入っているのか私がちょっと見過ごしているかもしれませんが、企業の対応としてもやはり実態がどうなっているかというような、企業の中でもアンケートをするとかといったことで実態を把握するという、予防策としてそういうものもあり得るかと、どこかに入れていただければと思います。

 

○佐藤座長

 多分それは円卓会議のでも入っていたからあるのではないかと思いますが、取組の中には、ちょっと確認いたします。多分やるとすれば、18ページの(3)の中だと思います。それぞれの企業でこのようなことがあるというのは、実態把握というのはマニュアルでもずっと書かれていたので、それはどこかにあるのかと。

 

○原委員

23ページですけれども、どのような対策を打ち出すにしても、中小企業に対する手厚い支援が重要かと思います。その際に(5)の記述を更に充実化させるために、中小企業で対策が進まないのは何が一番の要因かということを、是非中澤委員をはじめ使用者側の委員の方にお聞きできればと思いますが、例えばどうしてもそういう必要性が認識されていない問題があるのか、それともやはり金銭的な問題なのか、そういった何が力点なのかということが明らかになれば(5)の記述をより充実したものにできるのではないかと思いますので、是非御意見を伺えれば幸いなのですけれども、いかがでしょうか。もちろん様々な要因がありますので、中小といっても一くくりにはできないかもしれませんが、中小企業で取組が進まないということは何が確認しておくべき要因なのかということで、お考えがあれば是非お願いいたします。

 

○杉崎委員

 中小企業の今の御指摘については、いろいろな要因があるかとは思います。1つにはマンパワー不足、人員の不足。あといろいろなノウハウの不足といったことが考えられるかと思います。中小小規模事業者に至っては、非常に少ない人数で仕事を回しているのが現実です。例えば、管理系の総務部門の責任者の方が、総務・人事・労務、いろいろ1人で何役もこなさなければいけないというのが現場の実態ですので、マンパワー、ノウハウの不足が挙げられるかと思います。

 

○佐藤座長

 中小企業の所を少しどうするかで、現行法で例えば均等法等々、例えばセクシュアルハラスメントなどをやらなければいけないことは中小企業もかかっているわけです。ですから、それはやらなければいけない。そのことと、今度はパワーハラスメント個有の難しさがあるかどうかというのも結構大事かと思います。

 

○杉崎委員

 その点については、前回の会議でも、今回の報告書の1617ページにマル1マル2マル3、いわゆる法律で規定するというものがあります。ガイドラインを策定して、それを周知していくのが現実的という立場を取っております。今回のパワハラについては暴行などの悪質なケースについて、既存の刑法違反で該当する可能性が非常に高いという一方で、そうではないケースについては業務上の適正な指導との線引きが非常に難しいです。さらに今回基準となっている平均的な労働者の感じ方自体が、先ほども御発言があったと思いますが、業種や職種の特性によって異なるということもあるかと思います。

 前回の会議で、業務上の指導をパワハラと感じるかどうかの受け止め自体が、管理監督者と労働者とで違うという御発言もありました。具体的にどのような行為がパワハラに当たるのかという判断が難しいということもありますし、従業員の方にパワハラの被害を訴えられた場合の事実関係の認定も難しいということで、企業の担当者の方が対応に苦慮しているという意見もありました。

 ですので、パワハラに関する共通認識が形成されているとはなかなか言い難いという中で、仮に法律に規定するということであれば、社会全体で納得性のある認識や基準が共有されて、それが確立されていない限り、取り分け、先ほどの中小企業についてはマンパワーはじめ、経営資源が豊富ではなく、あと十分なノウハウや知見を持ち合わせていないということで、特に中小企業の現場では大いに混乱が起きるのではないかと考えております。ですので、このガイドラインを策定して周知していくことが現実的ということです。

 あとパワハラに該当するかどうかの具体例の蓄積が十分とは言えないと考えております。現場で混乱を生じさせないためにも、関係者が納得できる事例を積み重ねていくことが現実的ではないかと考えております。以上です。

 

○佐藤座長

 今の御説明では、措置義務化は難しいという理由と、特に中小企業の場合はというのは、そこはいかがですか。一般的、大企業も含めて措置義務化する上でいろいろ難しい一線があるという御説明と、特に中小企業はその辺はどういうふうにお考えですか。中小企業もねと言ったときに。

 

○杉崎委員

 先ほどから申し上げていますが、中小企業はマンパワーやノウハウが非常に限られているところと、そもそもこれは中小企業だけの問題ではなく、労働者の平均的な感じ方を基準とするという、適切な表現かどうか分かりませんが、非常に曖昧なところが残っていることからすると、大企業、中小企業ともになかなか業務の線引きが難しいというのは、大企業、中小企業両方当てはまりますし、取り分け中小は経営資源、ノウハウ、知見が十分でない中で、法律に規定されると現場で混乱が起きるのではないか、中小企業の人事担当者や経営者がなかなか対応に苦慮するケースがあるのではないかと考えます。

 

○岡田委員

 質問ですが、そういう意味で大企業が取り組んできたプロセスで言うと、こういう行為は駄目ですよというのは周知徹底してきたというのが今の段階だと思います。それは分かったけれども、どうしていいか分からないということで、やり方が分からないからいらだちもあって、それでハラスメント行為をしてしまうということで、今、割と言われているのはコミュニケーションやマネジメント教育をしっかりすれば減っていくでしょうというところですが、中小企業の場合、今はそこのところもまだ全然、この行為は駄目だということの周知徹底をもう少ししなければいけないという段階と考えていいのですか。その行為自体が、パワーハラスメントのような行為がまだ共通認識を持たれていないから、更にこのことをきちんと駄目なことなのだということを周知徹底するという段階なのか、あるいはやり方が分からなくて困ってしまっているのだということですか。

 

○杉崎委員

 これは調査をやったわけではないので、私が中小企業の現場の方といろいろ会話する中で申し上げる発言ですが、例えば、今までの資料にも出ていたとおりですが、パワハラとしていわゆる真っ黒なケースについては、大企業の方も中小企業の方も、これは明らかにパワハラですというところとか、刑法で罰される対象ですという御認識はあるかと思います。

 しかし、今回パワハラについては平均的な労働者の感じ方や、業務上の厳しい指導との線引きが難しいというところで、果たして、例えば厳しい指導の行為がパワハラに当たるのかどうかというのは、大企業、中小企業を問わず判断に迷う部分は非常にあると言えるかと思います。取り分け、中小企業については、事例として1人で何役もこなさなければいけないということで、なかなかノウハウはないということで、果たしてパワハラにこれが該当するのかどうか判断に迷うケースが多いのではないかと思います。

 

○岡田委員

 そういう意味で言うと、ある程度マネジメントの仕方と言うのでしょうか、やり方をもう少し教えていくような、パワハラであるとかないとか、どっちみち曖昧なわけですから、きちんとしたマネジメントの仕方を教えるだけで、どうやって指導したらいいかとなるだけではなく、指導方法を展開していくのが方策としてあるのではないかと思います。

 

○杉崎委員

 そういう意味においては、法で規定するとか、ガイドラインの話とは別に、報告書では中小企業に対する支援の23ページでお書きいただいておりますが、例えば、コンサルティングを実施するとか、研修を実施するという支援策というのは非常に有効かつ有意義ではないかとは思います。

 

○布山委員

 今、中小企業の話になっていますが、全体ということでもよろしいですか。

 

○佐藤座長

 はい、どうぞ。

 

○布山委員

 冒頭の「はじめに」に書いてある記述だけではなく、そもそももっとシンプルに言っても、多様な人材が生き生き働ける職場作りという意味で、企業はパワハラの防止に取り組むのは当然だと思っております。優秀な人材が流出したり、あるいは生産性の低下ももちろんありますし、企業活動や国際競争力という観点からも、防止策が重要な課題であると認識しているのはもちろんです。これは中小企業や大企業といった規模に関わらず、そのように思っていることはまず認識しております。

 これまでの発言と繰り返しになって申し訳ないのですが、申し上げて入れていただきたい所が入っていない部分もあるので、再度申し上げます。

 パワハラの防止について、大企業はある程度セクハラやほかのハラスメントの並びで取り組んでいると思います。その中で課題になっているのは、これまでもずっと議論になっているように、その事案がパワハラに該当するか否かの判断が、ほかのハラスメントに比べると非常に難しいということです。厚労省の円卓会議のワーキングの報告書の定義、概念、あるいは6類型に沿って判断したときに、暴力行為のように身体的なハラスメント、攻撃というところについては分かりやすいので、従業員全体に認知が非常に進んでいると思います。ただ、過大な要求や過小な要求と言われる部分については、判断が難しい面があるというのが実状です。それは相談者と行為者と言われる方々の人間関係や、その方々の地位や業務の状況等が千差万別であることが1つあると思います。

 それから、当事者同士の言い分や、あるいは受け止めが大きく異なることが2つ目にあると思います。さらに目撃証言や客観的な証拠がないと、より難しいというのが今の現状だと思っています。

 パワーハラスメントという言葉の認知度が高まる一方で、相談者にとって不快な行為、あるいは納得できないことを全てパワーハラスメントだと言って捉えてしまう、そういう本人の受け止め方を判断基準として訴える事例も出てきていると聞いております。

 そうした行動はこれまでも申し上げたとおり、上司の方からの適正な指示や指導ということまでも逡巡させてしまって、人材育成という観点からも大きな影響があるのではないかと懸念しているところです。

 また、周囲の従業員から、あの人はもしかしてパワーハラスメントを受けているのではないかという相談があって、それを確認してみると、本人は指導の範疇だと思っている場合もあります。そのように周囲と当事者との受け止め方に温度差がある場合も判断が難しいと聞いております。

 このように、何がパワハラに該当するのか各企業が判断し切れない状況の中で、御主張されている措置義務という形で、いきなり法律として課すのは、働きやすい職場環境を作るどころか、かえって企業現場の混乱も生じ兼ねないのではないかと懸念していることから、これまでも法的根拠のないガイドラインでもいいのではないかと申しあげております。その法的根拠のないガイドラインの中で、行政は何も指導ができないのかと言うと、前回原先生から御質問があったと思いますが、厚労省からの御回答は、できないわけではないということなので、まずはそういう形で進めることもあるのではないかと思います。

 また、実際に取り組んでいる企業から伺った中で、必ずしも今の6類型や定義に合致をしない場合や、パワハラの行為の有無を判断、断言するに至らない場合でも柔軟に対応することで、多くの問題解決をされているということです。

 状況が千差万別の中で、措置義務をこと細かに逆に設定してしまうと、そういう実質的な紛争の予防や解決に向けた対応の自由度も低下させるのではないかと懸念しているところです。今、申し上げた点から、法律等によって具体的な内容を縛るのではなく、企業労使が紛争の解決や防止に自主的に取り組めるようなものは、これまで法的根拠のないガイドラインと私たちは申し上げていたと思いますが、それを厚生労働省が示していただいて、併せて実際に取り組んでいる所の好事例も展開しながら、それぞれの実状に即した形で柔軟な問題解決を促していくべきではないかと思っています。

 その際に、パワーハラスメントが発生する背景は、業種、業態はもとより、各企業によって異なり、一律的な対応は困難だと思っていますし、具体的にどのような行為がパワハラに該当するかは事案ごとに異なるのではないかと思います。また柔軟な対応で解決を図られるという事例もあるのですから、厚労省が示すものはあくまでも対象とするパワハラの内容と、その防止と発生した事後対応に関するような概括的な記載にとどめて、個別のケースにおいて、企業が実状に応じた対応、柔軟な解決策を講じる余地も残していただきたいと思います。

 その中で、資料1のパワハラの概念について、先ほども少し発言させていただきましたが、マル1~マル3を全て満たすものをパワーハラスメントの概念とすると整理をされたと思います。この中で、やはり入れていただきたいのは、過度な行為に対して、厳正に対処することを明確にするというのは当然あると思います。

 その一方で、誤った理解によって不要なトラブルを起こさないように、業務の適正な範囲にある指導は、受け手の意に反してもパワハラではないことをきちんと明記していただきたいと思います。

 その上で、この3要素については企業側だけではなく、従業員の方々も含めて共通認識を持てるように更なる例示が必要ではないかと思います。今日出していただいた例示が、確かに誤解を招くような表現もあると思いますので、これはもう一度考えていただくに当たって、業種、業態、職務、その他、その事案に至る経緯や状況によっても、例えば「業務の適正な範囲」も異なるのではないかと思いますので、更なる事例、具体例が必要かと思います。業務上の必要な指導や注意が、例えば危険を伴う業務と、オフィスで座って仕事をしている業務と果たして同じなのかどうか、あるいは注意をした相手が、新人なのかベテランなのか、それによってもバリエーションはあると思います。そういうことを事例としてできるだけ挙げていただきたいと思います。特に危険な所の業務に就いていて、ちょうど立っている所に何か物が落ちそうになって、危ないから注意する場合は、言葉は荒くなると思いますが、それをもって暴言と言うのかどうかというところも少し議論が必要かと思います。

 また、平均的な労働者についても、時と場合によって平均が異なるような気もしていますので、単純に平均的な労働者ということではなく、それが具体的にどのようなのかということも、事例として挙げていただければと思います。事例を挙げていただく中で、それに書かれてあるものだけがパワハラだとは私も言っているわけではないので、ただ、労使が判断するときに事例は数多くあったほうがいいので、それを収集していただきたいと思います。

 先ほどから話題に上がっていた、平成28年度のパワーハラスメントの発生状況について、いじめ・嫌がらせに関する相談が7万件とあります。これは全てがパワーハラスメントに該当する事案ではないと思いますが、今回示した定義にのっとって整理すると少し事例として出せるのかと思います。ただ、そう言いますと、そこまでデータとして残っていませんとよく言われますので、そうでしたら、4月から行ってくださいということです。12か月で7万件ということは、結局、1か月単位、平均ということではないですが、それなりの件数があると思いますので、その中で、まずパワハラではないことが完全に分かるようなもの、この3つの中でどのように対応するかという部分を少し例示として示すことも、1つの手法としてあるかと思います。もちろん、ヒアリングなり、いろいろな所で聞いていただくということもあると思いますが、相談の中からも例示として拾えるものがあれば拾っていただきたいと思います。すみません、長くなりましたが以上です。

 

○小保方委員

 今、おっしゃられたとおりで、布山さんも冒頭でおっしゃっていただきましたが、パワハラ防止に取り組むのは当然という認識という理解でいいのですよね。パワハラがこれだけ社会問題化している今、判断が難しいとか、あるいは人材育成に支障を来す可能性があるから防止に取り組まないということではないということですね。むしろ、先ほど座長もおっしゃったとおり、これは、マル3を取った場合にはマル4も取ることになるとおっしゃったのですよね。すなわちマル4だけだろうがマル3とマル4だろうが、やることは一緒だということだと思います。しかし、私は話を聞いていると、判断の難しさとか、人材育成に支障を来す可能性があるので、マル4だけにして、やらなくてもいいという猶予を残してほしいと言っているように聞こえてしまうのが、極めて残念でならないわけです。もうここまで問題になっている以上は、腹をくくって、労使協調でしっかりと法制化をした上で、やるべきことをやっていくというスタンスがやはり必要ではないかと思います。

 労働者側としても、一部には適正な指導であるにもかかわらず、そこを勘違いして、パワハラだと言っているケースがある。すなわち人材育成に支障を来すようなケースは事実としてあると思います。それはなぜ起こるかと言うと、マネージャー側も労働者側も含めて、労使ともに前提となる正しい知識がないことが問題になっていると思います。前提となる正しい知識を身に付けていく上では、今、整理をしている内容や、布山さんも御提言としておっしゃられた例示の部分を、しっかり研修等を通じて共通認識として持った上で、線引きが曖昧な所を極力、最後までクリアにはならないとは思いますが、極力クリアにして、人材育成はしっかりとやっていくし、起こしてはいけないものは起こさない。こういう社会をしっかりと作り上げていくことが必要ではないかと思いますので、意見として申し上げました。

 

○布山委員

 今、おっしゃった内容について、経団連の会員企業は、今まで議論したようなことは少なくとも取組んでいると思います。もちろん、パワハラの定義がはっきりしないからトラブルになることはありますが、パワハラ防止の取組みが法律を根拠にしてないから行うつもりがないとは一切思っておりません。逆に今でもすでに取組んでいると思っています。

 これは大企業だけが取組めばいいという問題ではなく、すべからく全体ということを考えると、中小企業の中でそこまでいく段階にないのであれば、まずはきちんとガイドラインで示した中で、まず第1歩として進めていくこともあるのではないかというのが当初から申しあげている私の主張です。

 また、先ほど何回か御指摘があった望ましい取組の例の2223ページについては、個人的な話から入るのではなく、職場環境から書いたほうが自然に読めるのかと思います。特に23ページの10行目の「また」以下の所がまずは必要かと思います。コミュニケーションというのは1人だけの話ではないので、結局、相手があることですから、全体としてどういうふうにコミュニケーションを活性化するか、風通しのいい職場を作るかということがまずはあって、その中でほかの所の部分の環境の所があり、それから個人の話かと思いますので、ここは私も順番を変えたほうがいいかと思います。以上です。

 

○佐藤座長

 ここは別に審議会ではなく、労使というわけではないにしても、割合、経営サイドの方は比較的措置義務については、現状では、企業が取り組む上でハードルがあるのではないかという御意見で、もちろん企業としてパワーハラスメントの防止は、当然やらなくてもいけないと思っていますと、他方で現状の円卓会議等でのマニュアルだけだとまだ不十分で、もう少しパワーハラスメントの概念を明確化し、企業が社内で対策に取り組みやすくするし、そういう意味で、パワハラ防止もやりますし、人材育成もちゃんとやれて、従業員も含めて誤解がないように、そういうものを作るということには、多分ガイドラインと言われていた中身には賛成だということかと伺っていて思いました。

 ですから、現状で良いというわけではないということで、ガイドラインは今以上に、資料1で出したように概念を少し明確化するとか、どういう取組をしていくかとか、従業員にも分かりやすくすることはやっていく必要があるという御意見だったかと思います。

 あと措置義務化については、中小企業にという話でしたが、これは確かにどういう措置義務化にするかにもよるかと思います。そこは確かに従来のセクシュアルハラスメントに比べて、パワハラのほうはいろいろ現状を把握する上でも大変なのは事実です。それは確かにあるので、それぞれが違う意見を、そういう専門的なことをやる人がいないかどうかというのは事実だと思います。ですから、措置義務と言ったときもどうするかということでもあるかなとは思います。

 

○野川委員

 布山委員の3分の1の時間でちゃんとお話します。やはり私ももう一度3つぐらいの理由で措置義務というのが適切であると、報告書の最後に書くべきだと思います。まとめの所が空いているのは、一定の方向性を示さなければいけない所なので、十分な御意見を皆さんから伺って、次回、恐らく案を出されるということで参考に申し上げます。

 まず、法的な根拠のないガイドラインは今もあるのです。典型的なものの1つが、平成28年の会社変動に関するガイドラインです。事業譲渡とか、合併とかについて、その折の労働者の地位の変動や労働条件について、あれは実は会社法でもなく、労働契約承継法でもなく、具体的な実定法の根拠はないのです。そういうガイドラインだと、これは私が使用者側の弁護士の方からよく聞くことですが、非常に企業として困るということです。つまり、裏付けや土台がありませんから、具体的に書いてあることをどこまでどのようにすればいいのか自体が分からない。実際に問題が起こったときに、そういう裏付けや土台がないガイドラインはなかなか機能しにくいのです。

 ですから、そこでいろいろなことを決めたとしても、それが効果をもたらすことが保障されるためには、このガイドラインは、例えばセクハラについてもガイドラインがあります、それから、先ほどの会社分割の場合の労働者の地位の変動についても細かいガイドラインがあるのは、これはこの法律の実施要領です、義務の履行に当たってこうするのですよ、という具体的なガイドラインですということであれば、なるほど、これを着実にやっていこうということになりますが、それがないガイドラインは、それに反したらどうなるのかということについて実は法的な裏付けが全くありません。そのような意味で、やはりガイドラインを実効性のあるものにするためにも法的な裏付けが必要だということです。それが第1です。

 第2に、この検討会で、もしガイドラインで済ますということが中心的な内容として示されると、世の中に対しても、中小企業に対してもネガティブなメッセージを与えます。恐らく報道は、パワハラ検討会10回の議論、「大山鳴動鼠一匹」という表題の新聞記事が世を賑わすでしょう。そして、結局、何をやっていたのだということになる。前回申し上げましたが、これは税金でやっているのです。その内容がそういうもので果たして社会が納得するかということが1つです。

 これは先ほどもどなたかおっしゃられたように、中小企業にとっては、既に円卓会議で、具体的にいろいろとパワハラはこう定義したらいいのではないか、こういうことはいけないのではないかということが示されているので、そこからせいぜいガイドラインを作りましょうというところまでいくことになると、中小企業はしばらくはパワハラは気にしなくてもいいのだと、そういうメッセージを与えかねない。実際には、中小企業が大企業よりパワハラが起こる可能性が少ないということはあり得ません。そして、パワハラが起こったときに問題になり、法的な争いになれば、中小企業なので今回は責任を免除しますということは言ってもらえません。中小企業であるということは、例えば安全配慮義務についても、それから民法上の違法性についても、特に免責事由にはなっていないのです。だとすると、中小企業がそういうネガティブなメッセージを受け止めかねないような内容の報告書になると、今後パワハラは中小企業でも起こりますので、そのときに生じるいろいろな争いについて、大変困った立場に中小企業は置かれることになりかねないことが第2です。

3番目は、措置義務という内容は、先ほどもどなたかから出ましたが、中小企業を含めて企業に何らかの窮屈な行為規範を課するものではないのです。むしろ、支援のための制度です。例えば、まずは窓口を設置しましょう。責任者を置きましょう。そして、こういうような形で、できるなら研修もやりましょう、就業規則にもパワハラはいけませんと書きましょうということです。これは具体的にどうしたらいいのかということ自体が、実はガイドラインで検討すべきことなのです。

 先ほど申し上げたように、このときのガイドラインの検討は、もしこれが審議会に行ったら、非常に有益なものになるだろうと思います。つまり、何の法律の裏付けもないところでガイドラインを作ることになりました、審議会で検討しましょうと言ったら、その審議会はかなり不毛な議論になるおそれがある。なぜなら、法的な裏付けは土台がありませんから、一番極端から一番極端までの意見が自由に出せるということになるわけです。つまり、そのガイドラインは、これをやったら暴行罪になるよとか、名誉毀損罪になるよということをいっぱい書きましょうというような、つまりマル1からマル5までの中のマル1に限りなく近いガイドラインを作ったらいいではないですかという意見を出してもいいわけです。それに対して、精神訓話で済ませましょうと。パワハラはいけないということをみんなで確認しましょうねでいいではないかという対極の主張もできるわけで、こんな議論のやり取りはとても不毛です。

 しかし、措置義務というのは、マル2とマル4の間に弾力的ないろいろな幅を持たせることができる制度です。つまり、例えば措置義務の中で相談窓口を設置することになったら、具体的にその窓口をどう設置し、そこで何をやるのか。これはガイドラインになる。そのガイドラインの中で、マル2に近くすることもできます。例えば、これは労使の代表がそこに関与すべきである。労使協定を作って、そこで作るべきであるということになってきますとマル2に近くなる。そうではなくて、窓口を作りますと。しかし、その具体的な運用等はそれぞれの使用者の裁量に任せるということではどうでしょうと。これだと、そういうことではどうでしょうかと議論になるのです。つまり、マル3の措置義務を設置することによって、そこから必要になるガイドラインについての議論は、マル2からマル4の間の範囲で納まり、非常に議論の品質がいわば保障されることになると思います。

 その意味でも、まずはやるべきことはこうですよと。パワハラがいけないことはみんな知っているわけだから、パワハラがなくなるような具体的な仕組みについて、恐らくいろいろな企業が分からない。それを明確にする。これはまず相談窓口ですとか、まずは就業規則に書くとか、その中身についてガイドラインに弾力的に運用することは可能ですので、そういう意味での実効性のある形にするのは、これを受けてもし審議会が設けられれば、その審議会の議論の品質が少なくとも最低限保障されるのは措置義務の義務付けであると思いますので、恐らくそこで前も申し上げましたが、法制化するとしたらハラスメント防止法みたいなものが、本当はできれば、漆原委員もおっしゃったように一番良いのですが、確かにそこでの検討は必要になると思いますが、それはこの検討会の後の議論になっていのかと思います。

 

○佐藤座長

 今日はいろいろ御意見を伺ったほうがいいですね。

 

○杉崎委員

 ガイドラインについてですが、先ほど来御発言がありましたが、ガイドラインであっても、ガイドラインの根拠で行政指導ができるということもありますし、決してパワハラ防止に向けた取組についてのネガティブなメッセージ、後向きであることは当てはまらないと思います。

 このガイドラインを厚生労働省が策定し、広く周知することによってパワハラ防止に向けた社会全体の機運醸成にも確実につながると思いますし、各企業における取組の促進にもつながると思いますので、このガイドラインについてはネガティブということではなくて、各会の取組にも非常に効果があるものと考えます。

 

○久保村委員

 今、起きているパワハラの実例をお話したいと思います。私どもの企業の中で、全従業員が40人ぐらいの店舗があります。その中に、昨年11月に入社した短時間の契約社員の方がいらっしゃいました。その方より、店長と同僚社員からパワハラを受けたということの訴えがありました。ヘルプラインに相談電話が入り、また会社の人事室長宛てにも手紙が来ました。その方は適応障害の診断書と共に休職に入るという内容が書かれてありました。また併せて労災を申請したいと。適応障害によって、労災が認められた場合、私ども企業にとっては非常に大きな問題になりますので、慎重に調査をしておりました。よくよく聞いてみますと、その方の仕事ぶりについて調査したところ、手を抜くようなところがあったり、フラフラしているようなことがあったので、それを同僚が注意しました。すると、その方が逆に悪態をついてきたというようなことがあり、それを見かねた店長が注意をしました。そうした内容に関して、「それはパワハラだ」ということで、本人が訴えていたことが分かりました。

 今お話ありましたが、大手でも人手不足は現場感で否めません。3日ぐらいまで春闘で団体交渉を労働組合とやっておりましたが、春闘でも人手不足の解消や、労働環境の改善という要求に対して、会社としてもベアに応じたり、長時間労働是正のために勤務間インターバル規制も導入を検討しています。勤務間インターバルに関しては、実は現場感は抵抗感が非常に強いです。終業から始業までの間に一定の時間を設けるという主旨ですが、人手不足の現場においてはこれは厳しいという抵抗感が強く、まずは周知をしていきましょうという話になっています。

 簡単に周知といっても、現場下においてはなかなか伝わらないのが現状でして、このパワーハラスメントにおいても同じです。会社ではパワーハラスメントは企業の損害に結びつきますよとさんざん言っておりますが、現場では実際に言葉は分っていても、、強く言わなければならない時があるのが現実です。それをもって、パワハラだ、精神疾患を発症しましたということで言われてしまうと、企業としては何も動けないのです。まずは周知ということがまだまだできていないのも実態ですし、それは大企業においても、中小企業においても同じだと思います。

 したがって、私はこのマル4、今までお話ありましたがガイドラインで、まずは国のほうから明示していただいて、それを周知していく。周知していくのには時間が掛かります。非常に時間は掛かるので、まずはガイドラインからお願いしていきたいというのが、現場の意見です。本当に現場ではいろいろな問題が起きていますし、事件は現場で起きておりますので、それは御理解いただきたいと思います。

 

○原委員

 私から、大きく2点申し上げたいと思うのです。1つ目は、資料1を御覧ください。措置義務化、措置義務を設けるにしても、ガイドラインを設けるにしても、パワハラかどうかの判断が難しいというのは変わらないわけです。また、そのパワハラの判断が難しいというのは、先ほどから皆様御指摘のように、非常に問題を難しくしていることは事実かと思います。そのために資料1で挙げるようなマル1~マル3の判断要素を広く周知していくこと、これは会社側だけではなくて、働く人、一人一人がこういったことを分かっていることが望ましいわけです。それによって不当な訴え、でっち上げのような訴えを抑止していくこともあるかと思います。ですから、パワハラの判断が、認定が個別の事案について難しいというのはどういう対応策でも変わりませんので、並行してこの資料1にある、報告書にももちろんございますが、このマル1~マル3の判断要素を強く広めていくことが重要かと思います。

 そこで、細かいところ一点、資料1ですが、マル3とマル2を御覧ください。これ、上から順にマル1マル2マル3とチェックしていけば、自動的にパワハラと判断できるようなチェックシートではないわけです。具体的に当てはまるかどうかの評価の作業が、どの事案でも必要になってきます。例えばマル3を御覧いただくと、苦痛であるとか、害するといったときに、法的な意味で対応すべき、放っておけない、つまり違法といえるような苦痛なのか、就業環境を害するといえるのか、この判断が重要です。例えば法的に見過ごせない苦痛を与えたにもかかわらず、マル2適正な範囲だからOKというわけにはならないわけです。つまり何が言いたいかといいますと、このマル2マル3の関係は、マル2に当たるからマル3が正当化されるという話では全くありません。そうではなくて、マル3にあるような許されない苦痛になっているのかとか、そういったことを判断するときの手掛かりとしてマル2があるわけです。つまりマル3と言われたら、マル2かどうかを判断する。どうやら適正な範囲を超えていそうだということになれば、マル3、これは許されない苦痛で、パワハラと言っていいのではないかという形で、順序立てて判断することができるわけですから、この資料1にあるマル1マル2マル3は企業側、特に先ほどから判断する側として難しい、マンパワーが足りないという話がありますが、そういったところを補う1つの道具、ツールとして使うことができると言えるかと思います。

 もう一点は、ではどういう対策がいいかということです。これは、先ほど野川委員がお話されたことで法的な観点は尽きているかと思いますが、個別の裁判例を見ていますと、結局は人格を害しているかということが大きなポイントになっていることは、繰り返し申し上げてまいりました。人格を侵害する、言ってみれば違法なパワハラかどうかを判断する際にセクハラと比較しますと、例えばセクハラについては措置義務がございます。セクハラで求められている措置義務を果たしているから、セクハラの事案が発生したけれども企業に責任はありませんというような判決はないのです。ですが実際問題としては、措置義務ということと、措置義務で求められている内容と、企業が果たすべき法的な責任、つまり安全配慮義務に基づいて会社側が果たすべき法的な責任、取るべき内容というのは相当程度重なっていることは事実です。ですから、パワハラについてもこういったことをきちんとやっていれば、もしトラブルになって、それが裁判になったとしても、会社側として堂々と反論できる。法的にきちんとやるべきこと、安全配慮義務であれ、不法行為法上の注意義務であれ、法的義務を尽くしたことが言える、そういった材料になるわけです。そうしますと、措置義務をすることによってちょっとやりにくい面が出てくる。そういったことも理解できないではないのですが、逆に措置義務という形でも、強制的であっても、やってくださいということを求める。やってもらったほうが、何かあったときに会社側としても法的責任を負わないような、そういった反論が堂々とできる。そういった環境ができるわけなのです。そうしますと、ガイドラインで置いておくよりも、より法的な義務ということで措置義務にすることが望ましいように思われます。

 考えてみますと、報告書の原案の18ページ以降を見ていただきますと、この18ページ以降に(3)の考えられるものが載っています。(3)にあるようなことをやるという意味では、ガイドラインも措置義務も全く同じで、繰り返し今日も出てまいりました。ですから、そこはもう強制的であっても、企業にやってもらうことが、最初は様々な困難があるかもしれませんが、資料1にあるようなパワハラの判断要素をきちんと示していくことを通して、会社側に将来的に法的な、リーガルなリスクを負わないで済むような、軽減するようなそういった環境を提供できることにもなるわけですので、ここは報告書として措置義務ということを柱に考えていただくのが良いと思います。以上です。

 

○安藤委員

 「はじめに」の一番最初のところですが、そもそもこの報告書を書くに当たって、パワハラが駄目ですよというのはもちろんそうなのです。では、例えば今の、これまでの議論ですとマル3なのかマル4なのかとかという話があるのですが。そもそも「はじめに」の6行目からですか。結局なぜこれをやっているのかというと、パワーハラスメントは職場全体の生産性や意欲の低下などの影響とか、企業イメージの悪化とか、経営上大きな損失につながりますよ、だからやるのですよなので、今回のこのパワハラとにかく駄目ですよ、ではどうするかにしても、それを実現した後の次というか、もっと遠い先で経営上大きな利益になればいいのか、それが目的なのか。あるいは労働者をどうにかしたいというのが目的なのか。その辺が、この「はじめに」だとどちらなのだろうというのを、個人的には思いました。

 

○野川委員

 先ほど座長が、この場は審議会ではないというふうにおっしゃいましたけれども、それに関連して申し上げたいのは、この場には労働側に属する方も、使用者側に属する方もおられますが、審議会ではありませんのでね。ここは労使の利害調整をすることは主たる目的ではない。審議会ですと、いろいろなテーマについてある議論をして、結局最後に出てきたものを見ると、大山鳴動鼠一匹であったということもあり得るのは、結局労使の落とし処はここだったんだなということでそうなりがちなのです。しかし、ここの検討会の場はそれはやはり適切ではない。この検討会の場で、本当に私たちに望まれているのは労使それぞれであってもその知見を生かして、この場では立場としては自由な立場で、一番あり得るべき解決策は何なのかを知恵を出し合って決める、そういう場なのです。自由ですから、いろいろなお立場の意見はいいのですが、特定の立場の意見を言うことがこの場では求められているのではないのです。だから、「私はこのサイドだからこの意見で行くんだ」と言うのは、審議会で是非存分におやりになっていただきたい。ここでは、そこから離れた自由な立場で、知恵を出し合った結論を出すように努力をすることが、全員に同じように求められていると思います。その点では我田引水になりますが、原委員も私も内藤委員も、研究者という立場は実はこれは学者風情でありまして。もうこいつらは好き勝手なことを言っているのだと、そのとおりです。ですが、もし言えるとすれば労働側にも、使用者側にも立ってないのです。我々がこのパワーハラスメントの検討会で目指しているのは、理にかなった最も適切妥当な解決は何なのかなと、そういうことで考えていて、サイドの利害関係というものを一応横に置いた考えというものを示すことができる。その立場では原委員も内藤委員も私も、基本的に一致していると、そういうことは申し上げておきたいと思います。そういう場の検討会の結論としてどういうものであるべきかということを次回が最後になるかもしれませんが、もう一度真剣に考えたいと思います。

 

○佐藤座長

 もう一回ありますから、取りあえず今日御意見を伺って。

 

○内藤委員

 ただいま野川先生が全て代弁のをしてくださったのですが、先ほど安藤委員から御意見があったように、「はじめに」のところで、まず企業利益というようなことを全面にお出しになるよりは、むしろこれは将来的には漆原委員おっしゃったように、ある意味ではそれが何年後に実現するかどうかはともかくとして、全般的なハラスメントあるいはそれこそが労働の現場におけるところの雇用の均等というものを目指していくのだ、その方向にある過渡期として、我々は何を出すべきかという話が前提だったのだろうと思っております。

 そう考えたときに、先ほど1案から5案まであって、1案を決して否定しているのではないのだと、連合側でおっしゃいましたが、正しくいずれそういった方向に進めるために、まずここで何をするべきかということを我々議論をするべきだと思うのです。そういったことから考えますと、先ほど来事業団体のほうから、幾つも使用者側委員のほうからお話がございました。これは野川委員のお言葉を借りれば、学者風情が考えるからかもしれませんが、例えばセクシュアルハラスメント等に関しては既に対応しなければならない。そういったことが少なくとも総務あるいは人事労務で知見が出来ているのだろうと思うのです。それに対して、例えばの話ですが、では措置義務を設定されたとして何を措置するのだろうかとなったときに、これは先ほど原委員がおっしゃったように、18ページ以降の、例えばの話ですが就業規則なり何なりに事業者が方針というものを明確化しておくこと、何らかの形で文書なり何なりを出しておくこと、あるいは相談窓口を作ること。こういった全般的な対応を求められているのだと思うのです。そうしますと、この雇用機会均等法のほうでセクシュアルハラスメント等に対しての対応を既にしているということを前提とするならば、それほど新しいものをいきなり作るわけではないようにも思われるのです。そう考えますと、より一歩前進させるためには何らかの形で措置義務化いたしまして、措置義務化すればそれだけに厚生労働省の側からガイドラインは当然示されましょうし、かつ、またそれに対して企業内でどういう対応をすればよいかということも明らかになってくると思うのです。

 そういったことを考えますと、私は決してその措置義務化というものが過度な負担、あるいはいきなり濫訴、訴訟が乱発するような状況を招くとは思えないのです。確かに、先ほど来何人かの委員からお話がありましたように、個人的な資質の問題として訴える方々はいらっしゃると思うのです。現行制度であったとしても、例えば民法90条を使うなり何なりで訴えを起こすことは可能であるわけなのです。そう考えますと、いきなりここで措置義務化したから濫訴を招いたということは起こり得ませんし、現行の総務あるいは労務人事というものをいかようにでも使うことができるのではないか。そう考えるので、これは決して現実味のない理想論だけではないと考えております。長くなりましたが、私は何度も申し上げるように、措置義務化ということを目指したいと思っております。

 

○佐藤座長

 この1ページのところの「はじめに」は、基本は初めの4行です。それで、「また」ということなので。どうぞ。

 

○堀井雇用機会均等課長

 今座長がおっしゃったところは、過去の検討会の議論の場で、ここは何を目的としてやるのかというときに、まず初めに、労働者の尊厳とか人格、こういったものを傷つけることがないということが第一義的に来るだろう。そういう御指摘があったので、そこを踏まえて、1ページの2行目のところにまず記載をし、それから6行目のところで「また」ということで記載をさせていただいているということです。したがって、過去の議論でも出ていた話をそのまま書いているということです。安藤委員御指摘の点については、そういったことで、この文章では入れたつもりですが、もし仮に具体的に何か更に修正をということであったら、御指摘をいただきたいと思います。

 もう一点、事務局から先ほど確認をし損ねた部分があるのです。報告書の修正という観点で、幾つか確認をしたいところがあります。岡田委員御指摘のあった修正という部分で、2点あったところです。「報復」というところ、つまり不利益な取扱いのところを別にして、「報復」というのを入れてほしいという御指摘がありましたが、報復という言葉はもうちょっと具体的に、ブレイクダウンして教えていただければと思いました。あと、平均的な労働者の感じ方のところについては、削除したほうがいいのではないかという御意見もありました。ただ、ここは一方で、平均的な労働者の感じ方を入れてくださいという御意見が過去においてあったので、事務局としては入れています。ここについてどうするかというお考えをもう一回、委員間でお話をしていただければと思います。以上二点を、すみません。

 

○岡田委員

2点目の平均的な労働者については、これは私の意見なので、皆さん方でしていただければいいと思います。私の感じとしては、それが1つの結構言い訳になっている。うちはこうなんだとか、うちの会社ではもうこれ当たり前というようなこと、結構使われる方が多いので、そこの観点から、ここは入れなくても問題ないのではないかという感じです。

 それから、先ほどの22ページ目の相談・事実確認の所、これは窓口がやるべきこととして不利益扱いをしてはいけませんよということを言っていると思うのですね。

 もう1つは窓口がやるべきこととして、行為者に対してきちんと。相談を申し出た人に対して執拗にまず探索し始めるわけです。誰がやったの、言ったのかとか。それから、お前が言ったんだろうとか、その後の更にハラスメントが厳しくなってしまうケースが結構あります、相談したことによって。だから、行為者に対して、誰かが相談してきた後にそういう行為、相談した人に更に厳しく圧力を加えるとか、お前が悪いとか、そういうようなこと、更にひどくなるケースが結構あるので、そのことをやってはいけませんということを別に書いたらどうだろうかということです。

 

○堀井雇用機会均等課長

 分かりました。バワハラの連鎖のような、そういうイメージを今伺っていてもしました。そこはブレイクダウンするときに、ちょっと参考にさせていただきたいと思います。

 

○野川委員

12ページのマル2の業務の適正な範囲を超えて行われることについて、29行目から32行目まで、3つありますね。この2番目、「業務の目的を大きく逸脱し、手段として不適当な行為」というのは“and”で結ばれているのか“or”で結ばれているのかを明確にしてほしい。つまり“and”で結ばれているとなると、ちょっと適切ではない。つまり、業務の目的を逸脱し、かつ手段として不適当な行為がパワハラで、どちらか一方ではそうではないという読み方になるのです、これだと。もし、そういう趣旨だとしたら、やはりそういう挙げ方自体が不適切ですね。つまり、これが業務の目的を大きく逸脱し、もしくは手段として不適当な行為であれば、これは“or”になるので、分かりやすいのですが。このままだと“and”になる。“and”になると、業務の目的はそれほどは逸脱していないが手段としては不適当だと、こういう行為はパワハラにならない。こういうことになるので、そこを直してください。

 

○佐藤座長

 はい。

 

○原委員

 先ほどの平均的な労働者の感じ方なのですが、要するに、何をやっても大丈夫なタフな人とか、それから精神的に不安定で何か言われたことを100倍に抱える、こういった人は除くということだと思うのです。要は、だから平均的な労働者の感じ方の前のところに、「業種業態などを問わず」とか、企業規模等々に関係なく平均を取るのだと、そういったことを一言入れるだけで大分誤解が減るような気がしますので、「平均的な労働者」の前のところに、その業種業態、企業規模等を問わず平均を取っているのだ、そういったことを入れていただくだけで、ぐっと誤解が減るような気がしました、御参考までに。

 

○佐藤座長

 岡田委員が言われたところは、これが平均的だと言ったとき、それは平均的ではないと言えばいいだけの話であって。だから、それはここで書いたからそういうふうに言えるということはないと思うので。逆に書いておいたほうがいいと思うのです、そこね。

 

○岡田委員

 原先生がおっしゃったような、そういう「問わず」ということを入れていただけると。かなりそれが理由になっているところがあると思いますので。

 

○浜田委員

 最後に2425ページで今まで申し上げておりました取引先等のことが書かれております。なかなか意見の相違といいますか、対処の仕方であるとか職場の捉え方の違いがあり、本筋には入らないというところは少しどうかというところもなくはないのですが、報告書の上できちんとこのように今後につながる内容の記載をしていただいたことは、非常に歓迎したいと思っております。その中で、提案なのですが、最後の25ページの27行目に、カスタマーハラスメントなどの名前を付けて周知・啓発をという記載がございます。今後の議論での参考にしていただければと思いますが、カスタマーや顧客というのは、我々流通業で働く者からしてみると、顧客というのはどちらかというとお得意様というイメージを持っています。もう1つ、最初に我々の調査を御提示したときに申し上げたのですが、クレームというものは基本的には悪いものだとは決して思っておりません、大事なお声だと思って受け取っております。幾つか事例として、例えば同じクレームに近い言葉で、「クレーマー」だと「クレーマーハラスメント」だと何かしっくりくる。言葉の定義は考えていただければいいのですが、カスタマーハラスメントという言葉と、もう1つ何か違う言葉も幾つか挙げて、あと2つぐらい挙げていただいたほうが有り難いなというところです。

 

○佐藤座長

 カスタマーの起こすハラスメントで、カスタマーの全体を言っているわけではないのですね、別に。

 

○浜田委員

 はい。

 

○佐藤座長

 分かりました。

 

○堀井雇用機会均等課長

 そこはなかなか事務局で考えにくいので、ちょっと委員の方々で御意見をいただければと思う部分です。別に、今この場でというわけではありませんが。

 

○佐藤座長

5のところの御意見を伺っていなかったので、企業が安全配慮義務的にやらなければいけないことは、もちろんあるのです。かなり広い範囲なので、これは企業だけというわけではなくて。これはかなり社会的に、あるいは組合も含めて取り組んでいくようなというもので。その必要性は皆さんあるだろうと言われていたので。5として、最後に別に書かせていただきました。

 

○岡田委員

 そこに付け加えてなのですが、このクレーマーという個人が与える悪影響もあると思うのですが、社内でハラスメントが起こっている背景に、やはりお客さんと言われる人の過度な要求、圧力というのが社内でハラスメントを起こしている大きな要因になっていると思うのです。ですから、折角社会的な機運を作っていこうということであったらば、特定の個人だけでなく、企業としてもやはり取引先に過度な要求をしてというようなことは、なくしていくことによって職場内のハラスメントが減っていくというようなことも付け加えればいいのではないかという気がします。

 

○佐藤座長

 若干25ページのところ、その辺のことは書いていただいているのですが。社会的にこういうことが広まっていけば、当然社内でのパワーハラスメントも良くないことですよと、それは相互に関係することではあるので。また、社内であるから外でということもありますからね。そういう意味では、これは取り上げるのもいいことかと思うのですが。

 

○布山委員

 先ほどのことが気になりました。平均的な労働者のところで、業種や業態を問わずというように入れていいのか、あるいはその業種業態で違いがあるのかどうか。各企業となると、おっしゃるとおり今まで御指摘いただいた、うちの会社ではというような話になるかもしれませんが、本当に業種や業態やほかの要素のところで違うのか、同じなのか。これは少し具体例として調べていただきたいと思います。

 

○原委員

 今のお話ですが、少なくとも裁判例を見る限り、こういう業界だから厳しくてもいいんだ,という判示はないわけなので。

 

○佐藤座長

 皆さん、それぞれの専門を踏まえて御意見を伺ったというふうに、野川委員の御意見はありましたが、そういうふうに議論していただいたと思います。今日はまだまだ、基本的にはパワーハラスメントをなくしていく取組を、企業ももちろん組合もやっていただくとなりますが、それはやっていく必要があるだろうということで、皆さんそういう御意見です。

 では、どう進めるかということで、今より一歩進めるときのやり方です。そのときに法律的な背景も踏まえてなのか。一歩進めるときに、やはり現状の円卓会議でやってきたようなマニュアルだけでは不十分だ。あるいは企業がやりにくいということで、もう少し今回資料1で出していただいたような中身を明確化し、取組について、特に中小企業などであれば支援があるようなということでは、皆さん御了解いただいたかと思います。その次どうするかについては、研究者のサイドはこう思われているという御意見も伺いましたので、その辺を踏まえて少しまた次の機会に議論していくような資料を作るようにしたいと思います。取りあえず今日はここまででよろしいですか。では、事務局から連絡事項があればお願いします。

 

○上田雇用機会均等課長補佐

 本日はありがとうございました。次回の日程については、詳細が決まりましたら御連絡させていただきます。議事録についても送らせていただきますので確認をお願いできればと思います。以上です。

 

○佐藤座長

どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 雇用環境・均等局が実施する検討会等> 職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会> 第9回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録(2018年3月16日)

ページの先頭へ戻る