ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会食中毒部会)> 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録(2021年3月22日)

 
 

2021年3月22日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

○日時

令和3年3月22日(月)  10:00~12:00

 

○場所

AP虎ノ門会議室3階J室(WEB会議)

○議事

 

 

○新井食中毒被害情報管理室長補佐 これより、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開会させていただきます。接続に当たりまして、事務局側で不手際がありまして申し訳ございませんでした。本日の司会進行を勤めさせていただきます食品監視安全課食中毒被害情報管理室の新井でございます。よろしくお願いいたします。
 本年度は新型コロナウイルスによる感染拡大防止の観点からオンラインでの開催とさせていただきます。また、本日の内容は、Zoomにて傍聴されている方へ音声配信していることを申し添えさせていただきます。開会に当たりまして、三木食品監視安全課長から御挨拶を申し上げます。
○三木食品監視安全課長 おはようございます。食品監視安全課長の三木でございます。日頃より、委員の皆様には食品衛生行政に御理解、御協力を頂きまして、誠にありがとうございます。また、今日は新規に委員になっていただいた方もいらっしゃいますので、引き続きよろしくお願いいたします。
 また、本日の議題は、令和2年の食中毒の発生状況ということですけれども、幾つか御報告させていただく中で、大分県の中部保健所の小中主任については参考人ということで、後ほど御報告いただきますので、よろしくお願いいたします。
 皆さん御承知のとおり、新型コロナ感染症については、緊急事態宣言が一昨日に解除されたところでございますが、まだまだ予断を許さない状況ということでして、このような開催の形にさせていただいた次第です。
 今日の議題については、主に令和2年の食中毒の発生状況ということで、いろいろ御審議を頂くわけでございますが、コロナの関係で飲食店が閉鎖したり、自粛をしたり、あと手洗いやマスク等によって、感染予防対策というのが、ある意味では徹底されたという状況でございまして、なかなか分析をするのは難しい状況でございますが、本日はいろいろと忌憚のない御意見を頂きまして、今後の食中毒対策につなげていきたいと思っておりますので、本日はよろしくお願いします。
○新井食中毒被害情報管理室長補佐 続きまして、委員の一斉改選がございましたので、議事次第の次に委員名簿がございますので、御覧いただければと思います。
 昨年度及び今般の部会より新規委員に御就任されました方々を御紹介させていただきます。新規委員の方々におかれましては、一言御挨拶いただければと思います。昨年度、新規委員となられました枚方市保健所所長の白井千香委員、お願いいたします。
○白井委員 枚方市保健所の白井です。おはようございます。保健所長会からの立場として参加させていただきます。よろしくお願いいたします。
○新井室長補佐 本年度、新規委員となられました名古屋市健康福祉局健康部食品衛生課課長の北本美代子委員、よろしくお願いします。
○北本委員 おはようございます。名古屋市健康福祉局食品衛生課長の北本でございます。初めて参加させていただきますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
○新井室長補佐 続きまして、事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。令和2年7月に食中毒被害情報管理室長として今川が着任しております。
○今川室長 食中毒被害情報管理室長の今川でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
○新井室長補佐 また、本日、参考人としまして、大分県中部保健所の小中主任に御出席いただいております。
○小中主任 大分県中部保健所の小中と申します。今日はよろしくお願いいたします。
○新井室長補佐 本日の部会につきましては、16名の委員のうち1名の委員、脇田委員から御欠席との御連絡を受けておりますが、15名の御出席を頂いておりますので、薬事・食品衛生審議会の規定に基づきまして、成立していることを御報告いたします。
 また、本日はオンライン会議となりますので、初めにオンライン会議の進め方について御説明させていただきます。円滑な進行のため、次の点につきまして御対応いただければと思います。発言者以外はマイクをミュート設定にしていただき、発言されたい場合はメッセージにて意思をお伝えください。メッセージを確認しましたら、部会長又は事務局より指名いたします。指名された方はミュート設定を解除して御発言いただければと思います。また、お手数ではございますが、発言の冒頭にてお名前を頂ければと思います。発言が終了しましたら、再びミュート設定をお願いいたします。
 では、ここからは議事進行を部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○五十君部会長 早速議事に入りたいと思います。事務局から配布資料の確認をお願いします。
○新井室長補佐 資料を確認させていただきます。議事次第、委員名簿、こちらの配置図があろうかと思います。その後に資料1「令和2年食中毒発生状況(概要版)」、資料2「令和2年食中毒発生状況」、資料3「埼玉県内の学校給食で発生した病原大腸菌による集団食中毒について」、資料4「古いステンレス製やかんで調製した酸性飲料による銅の食中毒について」です。資料の不足等がございましたら、事務局へお電話にて御連絡いただければと思います。
○五十君部会長 議事次第に従って議事を進めます。本日は報告事項が中心となります。まず、令和2年食中毒発生状況の報告について、資料1、資料2に基づいて、御報告をお願いします。事務局から説明をお願いします。
○新井室長補佐 資料1と資料2がございますが、資料2については全体の詳細なデータとなりまして、その中の主なものを資料1に抽出しております。本日は資料1を用いて御説明させていただきます。
 資料1のスライド2、食中毒事件数・患者数の推移(全体)です。令和2年の発生状況については、事件数は887件、患者数は1万4,613人、死亡者数は3人です。下にグラフがありますが、赤の棒グラフが事件数、青の折れ線が患者数となっております。事件数は887件ですが、数字だけを見ると、グラフからも分かるように、直近20年で最も低い数字となっております。患者数については、昨年並みの状況です。
 3枚目のスライドを御覧ください。こちらは全体ではなくて、患者数が2名以上の事例についてまとめたものです。同じように赤い棒グラフが事件数、青の折れ線グラフが患者数です。令和2年については、事件数が452件、患者数が1万4,178人、死亡者数が2人です。事件数に関しては452件で、近年の中でも低い数字となっており、1人事例が多い年になろうかと思います。
 スライド4を御覧ください。こちらは患者数500人以上の事例ということで、大規模食中毒として扱っているものです。3件ありました。1つ目は埼玉県の学校で、給食施設で調理した食事によって起こったものです。病因物質名は病原大腸菌O7H4で、患者数は2,958人です。2つ目が、大田区の仕出し屋で製造された弁当によるもので、毒素原性大腸菌O25(LT産生)で、2,548人というものです。3つ目は山形県の仕出し屋で製造された弁当で、こちらは推定ですが、ノロウイルスGⅡで、559人というものです。このうち、1つ目の埼玉県の事例については、次の議題にて個別に御報告させていただきます。件数的には3件となっております。
 令和元年は大規模食中毒は発生しておりませんでしたが、3件という件数自体は、例年のような発生件数となっております。ただ、患者数が2,000人を超える食中毒は、2012年に広島市の仕出し屋で起きたノロウイルスによるもの以来となっております。
 次に、死者が発生した食中毒事例です。植物性自然毒が2件、動物性自然毒が1件の3件です。1つ目は、鹿児島県でグロリオサの球根の喫食を推定とするものが1件1人、栃木県で種類不明の野生のキノコによるものが1件1人、徳島県で種類不明のフグを原因とするものが1件1人です。また、死亡された方については御高齢の方になりますので、この傾向自体は、これまでと変わるものではないという状況です。
 続いて、スライド5を御覧ください。こちらは年齢階級別の食中毒の患者数について、過去3年間の傾向を見ているものです。分布としては令和2年は青色の棒グラフですが、5歳から9歳、10歳から14歳の患者数が伸びております。こちらは先ほど御説明した埼玉県の学校給食による児童の患者数が増えているといった背景があります。
 スライド6ですが、こちらは全体の月別の発生状況です。これも3か年の傾向を見るというものですが、上段のものが事件数、下段が患者数です。事件数については、令和2年では3月から減少傾向を示しまして、4月、5月のところで大きく減少しており、12月にも減少しております。下段の患者数については、事件数と比例しており、3月、4月、5月と減少しております。また、例年は冬場にノロウイルスが多発するために患者数としては多くなる傾向がありますが、令和2年は患者数が増えていないという状況です。6月と8月の患者数の増は、先ほど御説明した大規模食中毒によるものです。
 スライド7を御覧ください。こちらは病因物質別事件数の月別発生状況です。細菌によるものが青色のカラム、ウイルスによるものが赤色のカラムとなります。例年の傾向としては、冬場にウイルスが多く、夏場に細菌が多いという傾向ですが、令和2年については、4月、5月で細菌とウイルスのいずれも減少しておりまして、11月、12月ではウイルスによるものが減少しております。4月、5月は顕著な減少が確認されておりますが、この期間は緊急事態宣言の中でもありまして、そもそも飲食店の利用がなかったという理由などが挙げられると思います。
 スライド8を御覧ください。こちらは病因物質別患者数の月別発生状況です。赤いカラムがウイルス、青いカラムが細菌です。6月と8月に細菌による患者数が増加しておりますが、先ほどの埼玉県と大田区の大規模食中毒の発生により増加しております。
 スライド9、スライド10を御覧ください。スライド9は原因施設別事件数の全体を示しています。スライド10は、その中でも患者2人以上の事例ということで並べています。いずれも飲食店によるものが多いところで、次いで家庭や不明、2人以上の事例ですと、仕出し屋や事業場が多くなるという状況です。
 ここからは並べて見ていただければと思いますが、スライド11、スライド12を御覧ください。原因施設別の患者数です。スライド11が全体で、スライド12は、2人以上の事例で並べております。これも飲食店によるものが半分程度を占めておりまして、次いで仕出し屋によるもの、事業場によるものとなっております。
 スライド13、スライド14は、原因食品別の事件数で、スライド13が全体、スライド14が患者数2人以上となります。見ていただくと分かるように、「その他」というものが多くなっております。その他は何かというところで、下の脚注の「※※」を御覧ください。いずれにも該当しない全ての食品がここに入ってきます。酒精飲料や氷菓等と書いておりますが、多いのは何月何日に食べた食事、何月何日の夕食というように、食品が特定されたわけではないのですが、大雑把に把握されて分かったものが、この分類に当てはまるものとなります。それから複合調理品は、※の所に記載がありますが、コロッケや餃子、あるいは肉と野菜の煮付け等で、2種類以上の原料によって作られたもので、いずれも主となるようなものがなくて、その中で材料のどれが原因か判明しなかったものが入ります。こういった形でグラフが作られておりますが、その他が多く、全体でいけば魚介類、複合調理品が多いという状況です。
 スライド15、スライド16を御覧ください。スライド15が全体で、スライド16が患者2人以上というものです。こちらは原因食品別の患者数になります。これを見ても、その他によるものが6割程度を占めており、次いで複合調理品が多くなっているという状況です。
 スライド17については、病因物質別事件数の推移となります。時系列での経緯が分かるように、折れ線グラフとなっております。病因物質としては主要なものを書いておりますが、御覧いただいたとおり、少しピンク色のものがアニサキス、オレンジ色がカンピロバクター、薄いブルーがノロウイルスとなっております。この3つによる事件数が多く、この傾向自体は変わるものではありませんが、令和2年は、オレンジ色のカンピロダクターと水色のノロウイルスは、件数としてそれぞれ約100件程度減少しているというものです。
 スライド18を御覧ください。こちらは病因物質別患者数の推移です。こちらは、これまでノロウイルスが多く発生しているというものでしたが、令和2年についてはノロウイルスの患者数が減少して、代わりに病原大腸菌の患者数が増加しているという傾向です。こちらは先ほど御説明しました大規模食中毒による患者数が合わせて5,000人を超えるものでしたので、増加しているというものとなっています。
 スライド19、スライド20を並べて御覧いただければと思います。スライド20が2人以上というものです。スライド19の全体で見ますと、一番多いのがアニサキスとなっており、続いてカンピロバクター・ジェジュニ/コリ、続いてノロウイルスの順になっております。患者2人以上を見ると、紫色のアニサキスがずっと少なくなり、ノロウイルス、カンピロバクター・ジェジュニ/コリが7割を占める形になっており、この傾向自体は例年と変わるものではないという状況です。
 スライド21、スライド22を御覧ください。スライド21が全体、スライド22が患者2名以上となっております。病因物質別の患者数、発生状況です。いずれも、その他の病原大腸菌によるものが半分ぐらいを占めており、次いでノロウイルスとウエルシュ菌となっております。病原大腸菌やウエルシュ菌については、事件数が少ない割には患者数が大きくなるところが、1件当たりの患者数が多いことにつながっているかと思います。
 スライド23を御覧ください。こちらは直近4年間の傾向を確認いただくために作ったものです。摂食場所を家庭とする食中毒事件の月別発生状況です。令和2年は青色の棒グラフで、令和2年は外食を控える傾向でしたので、家庭での食事が増えたと思います。食中毒の発生状況としては、確認してみたところ例年と比較して大きく変わらないという状況でした。
 スライド24を御覧ください。こちらは先のスライド9、スライド10において、原因施設として最も多かったものが飲食店でしたので、飲食店における過去4年間の食中毒事件の月別発生状況を比較したものです。青色の棒グラフが令和2年です。発生件数としては、3月から減少しており、特に4月と5月は大幅に減少している形となっております。4月と5月は顕著な減少が確認されておりますが、この期間は緊急事態宣言下というところもあり、飲食店の利用がなかったことなどが理由として考えられます。
 スライド25を御覧ください。こちらは飲食店を原因施設とした食中毒のうち、発生件数の多かったアニサキス、カンピロバクター、ノロウイルスについて、過去4年間の食中毒事件の月別発生状況を示したものです。スライド25はアニサキスです。令和2年は青色の棒グラフです。アニサキスについては特段の目立った変化はなかったと考えております。
 スライド26を御覧ください。同じく、飲食店を原因施設とした食中毒のうち、カンピロバクターの過去4年間の食中毒事件の月別発生状況です。青色の棒グラフが令和2年です。1月や12月も低いのですが、特に4月と5月に顕著な減少が確認されております。
 スライド27を御覧ください。同じく、飲食店を原因施設とした食中毒のうち、ノロウイルスの過去4年間の食中毒事件の月別発生状況のグラフです。青色の棒グラフが令和2年です。3月から減少傾向を示しており、4月と5月においても顕著な減少が確認できております。また、ノロウイルスは例年11月ぐらいから増加傾向にありますが、11月、12月においても増加傾向は認められない状況であったということです。
 スライド28を御覧ください。こちらは感染性胃腸炎の発生状況となります。感染性胃腸炎の発生動向について、感染研が取りまとめを行っていますIASR、病原微生物検出情報を確認させていただいたところ、例年、43週、10月の下旬ぐらいに当たりますが、こちらから検出報告数が増加しておりまして、50週となるところ、こちらは12月の中旬ぐらいになりますが、こちらでピークを迎えているという状況です。よく見ていただきたいのですが、赤色が昨年で、特段のピークが認められず、かつ通年で見ても例年と比較して低い水準であることが分かりました。また、近年のピーク時は約100件から150件の検出報告数でしたが、昨年は多いときでも20件程度という検出報告数であったことが確認されました。このグラフから、全体の感染性胃腸炎の減少もございますので、ノロウイルスによる食中毒も減少しているのではないかと考えております。また、食中毒事件数の減少については、飲食店の利用がなかったこともありますが、新型コロナウイルスの感染予防としての手洗いやうがい、マスクにおける対策というものが少なからず効果があったのではないかと考えております。
 スライド29を御覧ください。令和2年はテイクアウトの食事形態が増えたこともございますので、原因施設を飲食店又は仕出し屋としまして、摂食場所を家庭とする食中毒について発生状況を比較したものです。条件を限定しておりますので、全てがテイクアウトの食中毒には該当しないものもあろうかと思いますが、各年の発生状況を比較したところ、令和2年の当該食中毒の発生は特段多いというものではなかったと思っております。
 参考資料のスライド31を御覧ください。今お伝えしました持ち帰り・宅配食品における食中毒予防として、厚生労働省としては、都道府県等に対して、新たに持ち帰りや宅配等を始める飲食店営業者について、一般的な衛生管理の徹底に加えて、他に注意すべき事項を実施いただくように指導をお願いしております。新たに持ち帰りや宅配サービスを始める飲食店の方に注意喚起のリーフレットなどを作成して、厚生労働省のホームページなどにも公開しております。右側にあるものが、厚生労働省のホームページ等でも現在公開しているものです。
 スライド32を御覧ください。アニサキスの食中毒予防です。こちらも厚生労働省のホームページ等に掲載しております。令和2年もアニサキスの件数が多かったこともあり、令和2年では、毎週金曜に厚生労働省のTwitter等を活用して注意喚起等を行ってきました。
 スライド33を御覧ください。こちらは有毒植物における食中毒予防です。厚生労働省の対応としては、都道府県に対し、一般消費者の方のほか、高齢者施設等を通じた効果的な広報、食品事業者への注意喚起ということで通知を出させていただいております。厚生労働省のホームページなどにも掲載させていただいております。
 スライド34を御覧ください。こちらは植物性自然毒による患者数の、年齢別の発生状況をグラフとしたものです。患者数としては70歳以上の方が多いというところと、死者も70歳以上の方が多いということで、御高齢の方に多く発生しておりますので、先ほどのリーフレット等も高齢者の方を対象に注意喚起等を行っているというものです。
 スライド35を御覧ください。こちらは過去10年間と、令和2年に発生した有毒植物の件数等を示しています。令和2年ですと、スイセンによるものが事件数、患者数ともに多かったという結果となっております。
 スライド36を御覧ください。こちらは毒キノコにおける食中毒予防です。先ほどの有毒植物と同様に、都道府県等に対して、一般の方と食品関係者の方に注意喚起を実施いただくように通知をするだけではなくて、農林水産省等に依頼して、関係団体を通じて注意を呼び掛けていただいております。
 スライド37を御覧ください。毒キノコの食中毒の発生状況で、平成23年から令和2年と令和2年の数を出しております。令和2年は、ツキヨタケが比較的多く発生したということとなっております。
 スライド38を御覧ください。毒キノコによる食中毒の件数と患者数の推移です。令和2年も発生しておりますが、発生は9月と10月が非常に多くなっており、件数と患者数としては、例年と同様の数が発生していたという状況です。事務局からの報告は以上です。
○五十君部会長 御説明ありがとうございました。令和2年の食中毒の発生情況について解説を頂きました。全体としまして、コロナの影響もありまして、食中毒事件数はかなり少なかった年ということです。患者数につきましては、若干少なめなのですが、大規模食中毒が3例、特に2,500人を超えるという大型の食中毒が2例発生しておりますので、患者数はそれを考慮しますと、やはり少なかったという状況であると思います。
 内訳につきましては、例年とほぼ変わらない状況であると思いますが、特にノロウイルスにつきましては、昨年の終わりから今年にかけて少ない状況であるという御報告であったと思います。埼玉県の大規模食中毒事例につきましては、この後、議題2において個別に報告があるようです。ただいまの事務局の御説明に関しまして、御質問等がございましたらお願いしたいと思います。Webからの参加で、御発言希望の方はチャットを入れていただけますでしょうか。大西委員ですか。大西委員、お願いいたします。
○大西委員 鈴鹿医療科学大学の大西ですが、詳細な御説明をいただき、ありがとうございました。1つ教えていただきたいのですが、よろしいでしょうか。フグ食中毒で1人亡くなっておられますが、それの詳細って分かりますか。例えば、自分で釣って自分で調理して食べた、あるいはどこかのお店で調理したものを食べた、そういうことは分かりますでしょうか。
○五十君部会長 事務局、分かりますでしょうか。
○新井室長補佐 御質問ありがとうございます。今般の事例につきましては、御自分で調理等を行って喫食されたものとなりまして、お店等での喫食ではないということを確認しております。
○大西委員 分かりました。ありがとうございます。
○五十君部会長 そのほかはございますか。砂川委員、お願いいたします。
○砂川委員 感染研の砂川です。詳細な御報告ありがとうございます。ノロウイルスについては、例年と違う動向というのを去年の今頃からずっと見てきたわけなのですが、2020年の暮頃からいわゆる患者のほうの発生動向の中で、0歳とか1歳とか、そういう年齢層の低い、特に保育園児を中心とする集団発生の報告が全国的にあちこちから聞こえてくるようになりまして、私が把握しているところでは、例えば北海道では富良野であったり旭川であったり、山形県の庄内であったり熊本県の有明であったり、こういったところで結構そういった情報が保健所単位で聞こえてきて、患者の発生どころとしてはちょっと注目していました。
 恐らくは、人人感染の接触感染がベースの情報になるのかとは思ってはいたのですが、特に食中毒の情報としては、何というのか、そういった辺りの情報は余り出てきていないというような感じで考えてよろしいでしょうか。
○五十君部会長 事務局、分かりますでしょうか。
○新井室長補佐 御質問ありがとうございます。今、砂川委員がおっしゃっていただいたように、食中毒としまして完全にないわけではございませんが、件数としても少なくなっております。また食中毒事件発生時には保健所を通じまして調査の報告を確認させていただいておりますが、そこに何らかの共通性があるとか、そういったものというのも現状確認できていない状況でございます。
○砂川委員 ありがとうございます。そうすると、恐らく保育所で発生したということで、主には接触感染がメインの事例が出ていた時期があったというようなことかと理解しました。ありがとうございました。
○五十君部会長 何か追加はございますか。今、お手を挙げている白井委員、少々お待ちください。今のノロウイルスにつきまして、砂川委員、ほかに追加はございますか。
○砂川委員 すみません、もう1点ちょっと気になっていたのが、乳幼児、それから少し乳児、幼児の年齢であるということと、いわゆる消毒薬の使い方が今かなりアルコールに人々の目が行きがちなので、そういった辺りも注意喚起というか、こういった点でも重要だと思って気になっていたので、それで。
○新井室長補佐 砂川委員、すみません。声が途切れてしまいまして。
○五十君部会長 インターネットの情況が悪いようです。マイクはミュートになっておりませんが、砂川委員。フリーズしてしまったようですね。では、今のコメントにございましたように、ノロウイルスの場合はアルコールが余り効かないという特色があるわけで、その点を御心配されていたということかと思います。事務局、追加はありますか。
○今川室長 事務局の今川でございます。砂川委員、どうもありがとうございます。ノロウイルスにつきまして、年が明けて1月、2月、3月、今3月ですが、若干、食中毒の事例というのは把握していますので、今、令和2年の食中毒の集計ですが、その令和3年に入ってから若干、御指摘のように食中毒事例が、もしかしたら少しあるかもしれません。それから手洗いの関係の消毒薬の話は、この部会の一番最後に若干ちょっと、事務局から御報告申し上げたいことがございますが、今後、少し調査をしたいということを御報告申し上げたいと思います。それは一番最後に申し上げたいと思います。以上です。
○五十君部会長 砂川委員、接続できましたでしょうか。今の内容は伝わりましたでしょうか。
○砂川委員 すみません、ちょっと私の回線の問題があったようでした、すみません。
○五十君部会長 消毒剤につきましては、後でまた説明がございますので、またそのときに御確認ください。それでは、白井委員に質問を回したいと思います。白井委員どうぞ。
○白井委員 ありがとうございます。白井です。お持ち帰りとか、宅配、いわゆるデリバリーの食中毒予防についても啓発いただいて、ありがとうございます。確かに、この期間については、今年度、特にお持ち帰りの方が多いのですが、その中でも事業者さんがきちんと啓発というか、注意をしていても、利用者さんのほうが、はいと言いながら次の日に食べたりとかということもあって、実際に私どものところでも食中毒ではないかというような事例があったのですが、もちろん件数は少ないし、家庭なので被害は少ないのですが、その場合、責任というか、どこまでのことを問えるのかということを、実際、注意をしていただいたりということもありましたので、処分には至らなかったというような判断をしたのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
○五十君部会長 これは課長からお願いできますか。
○三木課長 白井委員、ありがとうございます。デリバリーとか宅配については、コロナの関係で飲食店が閉まってしまうということもあって、いろいろ飲食店さんのほうでも生き残りを掛けていろいろな業態にチャレンジするということで、そこは各保健所で弾力的にお認めいただければということで、通知も5月に出させていただいたというような経緯がございます。
 今、白井委員がおっしゃられたように、その注意喚起の中で、これ31枚目のスライドの中でもリーフレットのものが右側にありますが、一番最後の所、一番下の所に「速やかに食べるようにお知らせをしてください」とあるように、口頭で伝えたり、何時間以内に、どのぐらいで食べてくださいというようなことをメモで入れていただいたりということをお願いしているというわけです。必ずしも、委員がおっしゃられたように、食べる側のほうの利用者のほうに、ある程度の非があるのかなという場合には、当然、責任というのは総合的に見て勘案していただければいいとは思いますし、通常は飲食店であれば出して提供したものはすぐ食べるというようなものが原則になりますので、その辺りは疫学的な調査も含めて総合的な判断ということが必要ではないかというように思っております。
 最近では、デリバリー、持ち帰りというか、食ロスの関係で、やはり食べ残してしまったものを持ち帰りましょうという運動も始まって、いろいろ盛んになってきておりますし、その辺り食中毒の原因とならないかというのは懸念があるところですので、行政側としてはできる限り注意喚起をしていくというようなことしか仕方がないのかというように思っておりますし、そういった喫食時間等も含めて、総合的な判断ということで責任がどこにあるのか、事業者にあるのか、消費者側にあるのかということで、御判断いただければというように思っております。よろしくお願いいたします。
○白井委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 最近、SDGsの関係で、賞味期限間近のものをどうするかなど、食品衛生の考え方と少し相反するようなことも出てきており、難しい問題に今後なっていくのかと思います。その辺はまた行政側で、検討していただくことになるかと思います。御発言ありがとうございました。それでは工藤委員、お願いいたします。
○工藤委員 国立衛研の工藤です。厚生労働省の方の御説明ありがとうございます。私は、4ページ目の患者数500人以上の食中毒事例の所について少しお聞きしたいのですが、2番の太田区で仕出し屋さんによるお弁当の配送で、摂食者が3万7,441人とかなり大規模な仕出し弁当屋だと思うのですが、こちらで患者数が2,548名ということになっております。これはやはり配送地域によって、食中毒が発生した所と発生していない所との偏りがあるのかということと、その中の食材の中でどういったものが共通であったのかについて、もしお分かりでしたら御説明いただければと思います。よろしくお願いします。
○五十君部会長 事務局、お願いいたします。
○新井室長補佐 御質問ありがとうございます。少し概要等を私のほうから述べさせていただきます。こちらは、令和2年8月に太田区の施設が調製した弁当のおかずを原因とした、毒素原性大腸菌O25による食中毒となっております。今般、調査の結果としましては、原因食品の特定には至らなかったとなっておりますが、各原材料や工程につきまして汚染調査を実施しましたところ、生野菜の洗浄消毒についてしっかり決められた定めに応じた対応を取っていなかったというようなところが1つありまして、病因物質を十分に除去できなかった可能性が考えられております。
 大きな点としましては、独立した衛生管理体制が考築されていなかったというところもございまして、今般の事例を受けまして、そういった体制を構築して、自社での食品検査やHACCPプランの構築等を行っております。先ほど御質問のありました地域についてですが、ここは、かなり大きな大規模調理施設になっております。お弁当を作っているのですが、地域としまして、どこが特定的に多かったというような報告はなかったかと思います。先ほど申し上げたように、弁当のおかずというところにあろうかと思いますが、特定までは至れなかった事例となっております。以上でございます。
○五十君部会長 よろしいでしょうか。
○工藤委員 すみません、もう1点お聞きしたいのですが、よろしいですか。
○五十君部会長 はい、時間もなくなってきましたので、端的にお願いします。
○工藤委員 毒素原性と書いてありますが、腸管毒素原性というのは正式名称でしょうか。その辺りは、後で御確認いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○五十君部会長 事務局で、後ほど確認させていただきたいと思います。それでは、次は上間委員からお願いしたいと思います。
○上間委員 もしもし、国衛研の上間です。聞こえますか。
○五十君部会長 はい、聞こえています。
○上間委員 アニサキスについて、発生状況は家でなのか、飲食店でなのか、年齢別の発生状況というのは、何か資料等はありますか。
○五十君部会長 事務局、すぐに出ますか。
○新井室長補佐 令和2年につきまして、原因施設別、アニサキスに限って確認させていただきましたところ、一番多いのは不明となっております。続きまして、飲食店、家庭、販売店というところになりまして、この4つが大きなところとなっております。推移としましては、販売店によるものが前年と比べると少し減少していますが、不明であったり、飲食店、家庭というのは少しずつですが増加しているというような傾向です。年齢別について先ほど御質問を頂きましたが、ちょっと手元にそういうような資料を準備していないので、お答えできずにおります。申し訳ございません。
○五十君部会長 よろしいでしょうか。
○上間委員 それぞれのパーセントって、大体分かりますか。
○新井室長補佐 すみません、パーセンテージは出していないのですが、全体で申し上げますと、令和2年はアニサキスの総件数が386件ありまして、半分ぐらいに当たる152件が不明となっております。家庭と飲食店につきましては、それぞれ大体90件程度となっております。すみません、ちょっと詳細な資料までは、今、手元で分かるのがこの程度となっております。
○五十君部会長 よろしいでしょうか。
○上間委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 それではもう1件、北本委員から御質問を受けたいと思います。よろしくお願いします。
○北本委員 すみません、よろしくお願いします。私も、アニサキスについてですが、主な原因食品としましては、やはりサバが大半を占めておりますでしょうか。少し前はサンマが大量で、多いという年もあったと思いますが、もし分かれば教えてください。
○五十君部会長 事務局、分かりますか。
○新井室長補佐 はい、まず原因食品となるものの中で、例えばサバだけ食べるとかアジだけを食べるということは、なかなかないこともありまして、食べた食品に、サバやアジ、イカを含むとか、そういったことがありますが、一応、基本としては、一番多かったのが、不明というものです。様々なものを食べておりますが、どれを食べてこれになったかということが分からないというものが不明となっておりまして、148件でした。
 続いて多かったのが、サバで86件、続いてアジが36件、続いてカツオが12件となっております。先ほども申し上げましたように、原因魚種がだぶっている場合がありますが、それぞれの魚種の記載があったものは、このようなものが代表的なものとなります。
○五十君部会長 よろしいですか。
○北本委員 ありがとうございます。
○五十君部会長 多くの主要な食中毒の原因が減った中で、このところアニサキスが3年ほど前から事件数が多いという状況で、今後、注意が必要であると思います。御発言ありがとうございました。
 それでは、時間もなくなってまいりましたので、次の議題に移らせていただきます。2番目は、埼玉県内の学校給食で発生した病原大腸菌による集団食中毒について、資料3に基づき、御報告をお願いします。食中毒事例は埼玉県の事例となりますが、業務多忙により、本日、出席が難しいということですので、事務局から御説明をお願いいたします。
○新井室長補佐 では、資料3に基づいて御説明いたします。2ページからです。事件の概要ですが、本事案は、昨年6月に埼玉県八潮市内の15校全ての公立小中学校で発生した集団食中毒です。患者は児童生徒、教職員等を合わせて2,958人。主症状は、水様性の下痢や軟便、腹痛でした。入院した児童生徒は数名いたものの、別の疾患等によるものであり、重症者及び死者等はいませんでした。原因食品は、6月26日(金曜日)の学校給食で提供された海藻サラダで、検査により、患者便と同じ病原大腸菌O7:H4が検出されております。
 3ページ目です。探知情報ですが、事件は、6月28日(日曜日)午前、市内の医療機関から管轄保健所に、6月27日から28日にかけて、市内複数の小中学校の児童生徒の受診が急増していて、多くが腹痛や下痢を訴えているという通報により探知しております。この段階で、学校給食との関連が疑われたため、市教育委員会には給食停止の検討、学校単位で患者等の把握、疫学調査や検便の実施の協力要請を行っております。
 4ページ目です。八潮市では、給食調理施設に学校給食調理を委託していて、委託業者が運営する弁当製造施設Tは市内15校全てに提供しております。弁当形式による給食の調理を行う学校給食センターとして機能しておりました。また、当該施設は、1日当たり市内の学校給食7,000食に加えて、事業所や幼稚園向けの弁当1万7,000食の調製も行う大量調理施設でした。
5ページ目です。日時と経過ですが、探知の翌日の6月29日(月曜日)から、学校でアンケート調査を行い、全喫食者6,922名の約半数に当たる3,453名から、腹痛や下痢症状のある有症者としての申告がありました。6月29日月曜日、八潮市は学校給食の提供を停止しました。6月30日火曜日、患者や調理事業者の便、検食等を回収して検査を開始しました。患者便は患者数が非常に多かったことから、特定の学校や学年等に偏らないように考慮して迅速な開始を優先して実施しております。7月1日水曜日には原因が調査中であること、事業所や幼稚園向けの弁当も、学校給食と同じ調理設備を使用していることなどから施設全体の営業の自粛に入りました。
 6ページ目です。7月2日(木曜日)の時点で、患者12名の便から腸管凝集付着性大腸菌耐熱性エンテロトキシン1をコードする病原性関連遺伝子astAを持つ大腸菌が検出され、疫学調査により、患者の共通食が6月26日(金曜日)に提供された学校給食に限定されたことなどから、病原大腸菌による食中毒と断定して、営業停止処分と公表を行っております。同日の6月26日(金曜日)の献立は、鶏肉の唐揚げ、ツナじゃが、海藻サラダ、みそ汁、白飯及び牛乳でしたが、海藻サラダについては未加熱の食材があることが判明しており、当初から原因食材として疑われておりました。7月6日(月曜日)ですが、検食の海藻サラダから病原大腸菌が検出されました。7月13日(月曜日)、検食の海藻サラダから検出された病原大腸菌の血清型がO7:H4であることが判明しました。
 7ページ目です。症例定義ですが、6月26日(金曜日)の給食を喫食しており、喫食後2時間以上を経過して腹痛又は下痢を呈していることが調査票から確認できた者としております。前述のアンケートでの有症者は3,453名ではありましたが、調査表の作成に協力いただいた方を症例定義に掛けると、最終的に患者は2,958名となっております。なお、事業所や幼稚園向け弁当では海藻サラダを提供しておらず、有症者はおりませんでした。
 8ページ目です。患者の発生状況、学校別です。学校別に見ると、市内15校の小中学校全てにおいて患者が発生しており、発症率は33.6%~57%の範囲となっており、一部の学校に偏っているような状況はありませんでした。
 9ページ目です。患者の発生状況、学年別です。小学1年~中学3年までの学年別で集計したところ、発症率は小学2年生が35.1%と最も低く、小学6年生が55.4%で最も高くなっております。学年別の患者発生に顕著な差は見られませんでした。また、男女別の患者発生についても、ほぼ同程度の患者数となっております。
 10ページ目です。患者の発生状況、学校・学年別です。学校別-学年別の発症率を棒グラフで示すと、最も低い所で20%台、高い所で70%台でしたが、どの学校、どの学年でも患者の発生は認められております。
 11ページ目、患者の発生状況(症状)です。症状別に見ると、下痢と腹痛が主症状、下痢の性状として水様性下痢が最も多かったとなっております。
 12ページ目、患者の発生状況(潜伏時間)です。患者の潜伏時間を見ると、中央値23.5時間をピークとする一方性を示していて、最短は2時間で、最長は115時間、平均値は29.2時間でした。
 13ページ目です。喫食状況ですが、喫食調査により、患者の共通食は6月26日金曜日に限定されたため、その日の献立を統計処理したところ、特定メニューの原因食品としての絞り込みには至りませんでした。その要因としては、おかずごとに紙製カップに盛り付けられていて、1人分ずつプレート型の皿に盛り合わされているものの、完全には分離されておらず、おかず同士の接触によるコンタミネーションの可能性があったためです。メニューの特定が難しかったものと想定されました。
 14ページ目です。施設状況ですが、施設の構造につきましては、作業室は使用目的に応じた面積を有していて、床や壁、天井などの材質も、今回の食中毒の原因となるような問題はなく、各作業室は整理、整頓されていて、清掃も定期的に行われておりました。給水は上水道で受水槽があり、給排水の状況に特に問題はありませんでした。学校給食と事業所用の食材は別々に管理されていて、学校給食専用の盛り付けライン、食器洗浄ラインはありましたが、下処理、加熱調理室、炊飯盛付け室などは、各作業室や冷蔵庫など、設備や器具は共用されておりました。また、直近1か月間において、従業員による体調不良者はおりませんでした。
 16ページ目です。作業工程です。資料のとおりですが、全てのメニューにおいて下処理が前日に行われて、それらを仕込冷蔵庫で一晩保管して、提供当日に湯調やボイル等の加熱処理が行われて、プレート形の容器等に1人分ずつ盛り付けられているという状況です。
 17ページ目です。海藻サラダは、カットわかめ、海藻ミックス、芯取りキャベツ、人参、冷凍コーンの5種類の材料を調味混合したものとなっております。このうち、芯取りキャベツ、人参、冷凍コーンは当日にボイルをされておりますが、カットわかめと海藻ミックスは一つの回転釜で前日の午前中に約60分間水戻しをし、水切りした後に一晩冷蔵保管し、当日は加熱せずに他の材料と混合されております。また、この冷蔵庫は扉の開放時間が長く、2日間の庫内温度の記録は、最大で17.6℃、また10℃を超える時間帯が約12時間あったものと推定されました。この混合盛付け工程の室温は、20℃程度の環境で行われています。更に、配送車への積込みは10時から始まっていることから、配送開始から喫食まで最大2時間半以上が経過しておりました。
 18ページ目です。検査状況ですが、患者便については19検体中14検体から、大腸菌astA保有のものです。後にO7:H4と判明しておりますが、こちらを検出しております。従業員検便からは菌は検出されませんでした。ウイルス検査も同時に実施しましたが、ウイルスを含む各ウイルスは全て陰性でした。
 19ページ目です。原材料の遡り調査ですが、検食の海藻サラダからastA保有の大腸菌が検出されたことを受けて、海藻サラダに用いられたカットわかめ、海藻ミックス、芯取りキャベツ、人参、冷凍コーン及びドレッシングの遡り調査を実施しましたが、流通先での有症苦情は確認されておりません。海藻ミックスは、カットわかめ、茎わかめ、赤杉のり、白木耳、青杉のり、白キリンサイから成る6種類の海藻乾草品を混合したもので、本事案の後に納入元の販売業者が行った自主検査では、一般細菌数が2.0×10と高めでした。そこで、当該製品の加工者が海藻別に検査を行ったところ、赤杉のりから大腸菌が1.1×10を検出されております。このため、加工者を所管するX県と埼玉県で行政検査を実施した結果、同一ロットに相当する保管品の赤杉のりからもastA保有の大腸菌O7:H4が検出されました。下の枠の中ですが、赤杉のりの加工及び流通経路は、チリで採取し紫外線殺菌等が行われて、2017年に輸入後、国内でカットを行い、2019年に加工者に出荷したものとなっております。加工者は、2020年に他の海藻乾燥品と混合して海藻ミックスとして出荷し、販売者は生食用と認識した上で加工日から1年を賞味期限として表示を行い、6月に弁当製造施設Tに納品されております。納品された当該品の外装に作り方が書かれていて、水戻し後は強めに水気を絞り、お皿に盛り付けドレッシングをかけて食べる旨の記載がありました。なお、赤杉のりの同一ロット品につきましても、有症苦情は確認できておりませんので、赤杉のりが大腸菌に汚染された原因については不明となっております。
 20ページです。最終検査結果です。検査結果をまとめると次のとおりとなります。検食の海藻サラダと、その原材料の一部である赤杉のりから同様の菌を検出し、それぞれの分離菌株を比較したところ、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)のパターンが患者便のものと一致しております。また、国立感染症研究所において、astA陽性の大腸菌O7:H4が5株。患者由来が2株と海藻サラダ由来が1株、赤杉のり由来が2株の全5株ですが、こちらにつきまして、全ゲノム配列を用いたSNP解析が実施されております。解析の結果として、患者由来2株と海藻サラダ由来1株はともにSNPなしのもので、この3株と赤杉のり由来1株については最大1か所のSNPのみを検出していて、SNP解析レベルで、これら5株は全て同一由来であることを示唆する結果となっております。
 21ページです。行政判断としては、当該施設は飲食店営業の許可を受けて学校給食の受託調理などを行っていたため、食品衛生法第55条に基づき、7月2日(木曜日)から3日間の営業停止処分を行っております。食中毒については、資料に記載した理由から総合的に判断しております。処分時点では、原因食品は、ひとまず6月26日(金曜日)に提供した給食と判断して、その後の検食の検査結果などから最終的に海藻サラダと断定しております。営業停止期間中、調理従事者に衛生教育を行うとともに、施設や調理器具の洗浄・消毒等の指導を実施しました。その後も再発防止対策のため、加熱調理の徹底や食品の保管・管理、調理工程の記録などについて、6回にわたり立ち入りするなどの継続的な指導を行い、10月19日(月曜日)に業者から改善報告書が提出されて、11月26日(木曜日)に改善を確認しております。
 22ページです。考察となりますが、食中毒に至ったと推定される要因は、1点目としては、原材料のもともとの汚染が考えられました。海藻サラダの材料の遡り調査を通じて、加工者が保管する赤杉のりと検食から検出された株のPFGEパターンが患者便のものと一致して、SNP解析でも全て同一由来とみなせる解析結果であったことから、原材料由来の汚染の可能性が考えられました。ただし、他の流通先において、同様の苦情が寄せられなかったこと、また、当該病原体の病原性についても詳細が判明していなかったことから、原材料の汚染が直接的な原因であると判断することは難しい状況でした。
 2点目の要因は、調理工程上の問題です。赤杉のりは海藻の乾燥品で、大腸菌O7:H4の菌量は定量できないほど僅かな量であったことから、調理工程における菌の増殖が推定されました。先ほどの調理工程のとおり、海藻ミックスは前日に水戻しが行われ、水切りしながら一晩冷蔵保管されておりましたが、冷蔵庫の扉の開放時間が長くて、温度管理記録では最大で17.6℃、庫内温度が高かったことが分かっております。更に当日は、加熱処理が行われないまま、湿度20℃程度の作業場で2、3時間程度をかけて調味、混合や盛付けなどが行われており、こうした過程で菌の増殖が起きたものと考えられました。
 3点目の要因として考えられるものとしては、調理後の取扱いです。1人分ずつ盛り付けたおかずは、10時から学校ごと、クラスごとにコンテナ台車に積込みが始まり、10時13分を過ぎた頃から順次、7台の配送車で配送されて10時26分~11時40分までの間に各学校に到着していました。学校到着後は、業者が各クラスの廊下の配膳台に分配しており、その間は常温で取り扱われております。学校によって、給食開始時間は12時~13時と幅がありますが、長い場合は2時間以上常温で保管されていたことも菌の増殖につながったものと考えられました。
23ページ目です。再発防止策です。当該業者の再発防止策によると、加熱調理の徹底が重要と考えられたため、検証実験に基づき、調理工程の見直しを図るよう指導した結果、前日調理の中止、加熱調理の徹底等の改善措置が図られました。
 24ページです。これまで海藻サラダは、カットわかめと海藻ミックスを前日に約60分間水戻しをして、水切り後に一晩冷蔵保管し、当日は加熱せずに他の材料と混合していましたが、当日に98℃で5分以上という条件で湯戻しをして、冷却後に混合するように工程を変更しております。また工程管理は、大量調理施設衛生管理マニュアルの遵守を基本として、原材料の受入れ、下処理、加熱調理及び調理済みの食品の取扱い等の各工程における温度管理及び記録の徹底を指導した結果、作業工程表の作成と責任者による作業記録の確認が行えるように改善されました。
 25ページです。次に、学校給食を提供する八潮市の対策です。これまで長年にわたり、市が献立と栄養を担当していて、当該業者に調理と日常的な衛生管理を全面的に任せることが両者の共通認識となっておりました。本来ならば、市が委託先の衛生管理について監督すべき立場でしたが、そのような認識をしっかり持っていなかったことが結果的に、前日調理等が経常的に行われていた原因につながったものと考えられます。今後、市は委託先に対して、第三者機関による衛生チェックの実施、市職員による巡視などにより学校給食衛生管理基準等に基づいて、適切な衛生管理が行われているかどうかを把握することといたしました。再発防止に向けた埼玉県の取組としては、学校給食や大量調理施設などを対象に衛生講習会を実施し、本事例を共有して、衛生管理の更なる改善・向上を目指して、助言や指導を行っていくこととしています。また、保健所の監視体制につきまして、市町村によって学校給食の実施方法や衛生管理状況に特色があるので、そういった部分を考慮して、施設の規模や実態に見合った指導が行き届くように運用を図っていくこととしています。
 26ページ目です。埼玉県の調査です。これまでに乾燥海藻の衛生管理が問題となった事例は少ないことから、今回の事例を契機に、知見の乏しい部分に着目した埼玉県の取組を参考までに御紹介いたします。一般的に市販されている乾燥海藻には、水戻しだけで喫食可能なものの表示が多く、加熱を行わないために細菌汚染の実態等に関する調査研究を計画しております。まず、赤杉のりなどの乾燥海藻自体の細菌汚染の実態を調査して、次に、水戻しした菌数の増減を確認、衛生的な取扱いの重要性について検討したいと考えております。更に、水戻し後の温度や時間等による大腸菌の消長についても検査して、水戻し後の衛生管理の想定も検討することを予定しております。
 最後の27ページです。今後の課題ですが、学校給食を安全に提供するために、提供施設は大量調理施設衛生管理マニュアルの遵守に加えて、文部科学省が所管する学校給食衛生管理基準の遵守も求められております。現状、市町村ごとの提供方法や衛生管理状況の実態というのは、なかなか把握が難しいところです。そのため、本事案を通じて衛生部局は、県教育局や市町村教育委員会など教育関係部局との更なる連携、協力を図りながら、給食調理施設の規模や衛生管理の実態に応じた効果的な監視指導を実施していくことの重要性が改めて認識されております。
 すみません。長くなりましたが、ここまでが埼玉県からの報告事項となっております。これを受けて、厚生労働省として、今般、大規模食中毒における汚染原因というものが大量調理施設衛生管理マニュアルの遵守ができていなかったというところが一番の要因と考えております。本年の6月には、HACCPの法施行等も控えていて、引き続き定められた規定を守るなどの監視指導の徹底が必要と考えております。また、厚労省としては、今般の事例を受けて、学校給食施設において衛生管理の維持には食品衛生部局だけではなく、教育関連部局との一層の連携というものが重要と考えておりますので、現場での連携や協力が円滑に行えるように必要に応じて文部科学省とも連携して対応してまいりたいと考えております。以上です。
○五十君部会長 詳しい御説明ありがとうございました。事務局から御説明がありましたので、細かいところは、担当した埼玉県の方が不在のため、必ずしもお答えできないこともあると思いますが、この件に関しまして御質問、御意見を受付けたいと思います
最初に私から、資料19ページのチリ産の赤杉のりの大腸菌群の値が10レベルというのは、乾燥品で10検出しているのですか。解説にあったかもしれませんが、これは大腸菌群のレベルで、大腸菌については情報はありましたでしょうか。もし分かれば教えていただきたいと思います。
○新井室長補佐 御質問ありがとうございます。まずは、乾燥レベル等につきましては、すみません。ちょっと確認していたのですが失念してしまって申し訳ありません。あとは大腸菌についての報告は受けていなかったかと思います。
○五十君部会長 ありがとうございました。乾燥品で10というのは非常に特殊な例という印象を受けましたが。
 そのほかに、委員の先生から御質問等があればチャットでも良いのでお願いしたいと思います。いかがでしょうか、よろしいですか。樒柑委員どうぞ。
○樒柑委員 鹿児島県の樒柑と言います。よろしくお願いいたします。改善策の中で、「お湯戻し98℃5分以上」という表示があるのですが、これは中心部を測定するということではなく、お湯自体の温度確認をして改善をしなければならないということだったのか、その98℃5分以上という根拠が、もしありましたら教えていただければと思うのですが。
○五十君部会長 事務局、分かりましたらお願いします。
○新井室長補佐 御質問ありがとうございます。申し訳ありませんが、根拠という所を私どものほうで確認は取っておりませんが、こちらは中心ではなく、恐らく98℃の中に5分以上漬け込んで、本来は水戻しだったものを、お湯戻しするということの改善かと思っています。
○五十君部会長 よろしいですか。それでは工藤委員、御質問がありましたらお願いします。
○工藤委員 質問ということではないのですが、このastA遺伝子陽性の大腸菌の病原性について、比較的、何かいろいろなタイミングで検出される大腸菌ですので、病原性はないのではないかという専門家の御意見をよく聞くのですが、今回、明らかにこのような大規模食中毒を起こすような大腸菌になるということが認識されたということで、非常に大きな意味のある食中毒の報告ではないかと思います。また、こういったものが、世界的にも重要なものであるので、埼玉県の先生は今日いらっしゃいませんが、もし可能でしたら、どこかに御報告されるとよいのではないかと思います。以上です。
○五十君部会長 そうですね、貴重な事例であると思いますので、是非、埼玉県の担当者から論文として情報公開をしていただくことをお願いしたいと思います。御意見ありがとうございました。ほかにはありますか、よろしいですか。
 それでは、次の報告事項として、古いステンレス製のやかんで調製した酸性飲料による銅の食中毒についてです。資料4に基づいて御報告をお願いいたします。参考人である大分県より御発言を願いたいと思います。よろしくお願いします。
○小中主任 大分県中部保健所の小中と申します。古いステンレス製やかんで調製した酸性飲料による銅の食中毒について報告いたします。よろしくお願いいたします。
 資料のスライド2から、事件の概要について御説明いたします。事件の概要はスライド2から4までとなります。令和2年7月6日、管内の福祉施設から当保健所宛てに、「当施設で調製したイオンドリンクを喫食した施設利用者が嘔吐・嘔気症状を呈している」という旨の届出があり、当保健所は調査を開始しました。ここでイオンドリンクとは、水分や電解質を補給するための酸性飲料のことです。
 スライド3です。原因施設は高齢者福祉施設、以下A施設であり、摂食者数は1グループのみの13名で、13名中13名が症状を呈しました。喫食してから約1時間経過してから喫食した順番に吐き気、嘔吐、下痢などの食中毒症状を呈しました。
 スライド4です。調査の結果、共通食はイオンドリンクのみであり、A施設が調製した自家製イオンドリンクから1L当たり200mgの銅が検出され、イオンドリンク中の銅による食中毒と断定しました。
 スライド5を御覧ください。A施設でイオンドリンクの調製に使用したやかんはステンレス製であり、約10年前に購入されたものでした。通常、湯冷まし用に使用していたとのことで、やかんを確認したところ、内部に黒ずみが一部見られましたが、液面の高さまで洗浄したようにきれいな状態になっていました。このやかんを用いて溶出試験を行ったところ、微量の銅が検出されました。
 スライド6に、イオンドリンクの作り方をまとめています。沸騰して冷却し、粉末のイオンドリンクを直接やかんに投入して撹拌し、溶解させます。通常は、プラスチック製の容器に入れて作るところですが、事件当日のみ、やかんに直接粉末のイオンドリンクを投入して作ったとのことでした。
 スライド7に、やかんと粉末イオンドリンクの調査結果を示します。イオンドリンクの調製に用いたやかんは、鉄、クロム、ニッケルから構成されるステンレス製やかんであり、ステンレスには材質によって銅を含むものもありますが、今回のやかんは銅を含まない種類の材質でした。また、粉末イオンドリンクには様々なイオンが含まれていますが、こちらも銅は含まれていませんでした。
 スライド8に、イオンドリンクの残品を示しています。本来の色と比べて、青い溶液となっていました。粉末イオンドリンクの食品表示には、使用上の注意として、「金属容器は使用しないでください」と、表示されていました。
 銅の摂取と毒性について、スライド9にて説明します。急性銅中毒は、約10mgの2価銅イオンを摂取した場合に発症します。本事例で、患者1人当たり約20mgの銅を摂取したと推定されます。また、水道法による銅の水質基準は1L当たり1mg以下となっています。
 スライド10を御覧ください。当保健所は、過去に発生した金属の溶出による食中毒と比較し、銅の由来を分析しました。東京都の場合は素材がステンレス製でしたが、容器に銅が含まれており、容器から銅が溶出して起きた食中毒でした。岡山県の場合は、古いアルミニウム製のやかんに乳酸菌飲料を入れたことで銅中毒が起きた事例であり、アルミニウムと水道水中の銅が置換反応を起こし、内壁に蓄積した銅がクエン酸や乳酸などの有機酸で溶出したと推定されました。
 大分県で発生した事例では、やかんの素材はステンレス製であり、銅は含まれておりませんでした。イオンドリンクのpHは約4であり、銅濃度は定量下限値以下で、銅は含まれていませんでした。施設内で実際にやかんに入れた水道水中の銅は、1L当たり0.06mgと水質基準値以内であり、A施設で作ることもあった玄米茶中の銅濃度も微々たるものでした。
 スライド11になります。本事例においても、水道水中の微量な銅がステンレスに含まれる鉄と置換反応を起こして内壁に蓄積し、酸性のイオンドリンクを加えたことで銅が溶出したと仮説を立てました。また、この仮説を証明するため、岡山県の事例を参考に検証及び再現実験を行いました。
 スライドの12では、仮説における置換反応について確認します。鉄と銅を比較すると、鉄のほうがイオン化傾向が大きいため、銅イオンを含む水溶液に鉄を浸漬させると、イオン化傾向の小さい銅が析出する置換反応が起こります。
 スライド13に、実験の種類と目的をまとめています。実験①では、やかんの内面に銅やその他の金属が付着しているかを確認するため、やかん内側の付着物の分析を行いました。実験②では、A施設と同じ手順でイオンドリンクを調製したときに銅が溶出するかを確認するために古いやかんによる再現実験を行いました。実験③では、ステンレス鋼に銅が付着するか、やかんの材質であるステンレス鋼を腐食させ、銅の付着が起こるかという検証実験を行いました。
 実験に使用した検体一覧をスライド14に示しています。管内の高齢者福祉施設、C施設、M施設の2施設から、長年使用していたやかんの提供を受けて実験に使用しました。対照としてA施設のやかんと同じメーカーで同じ材質のやかんを用意しました。やかんは全部で4つで、やかんi、iiについては、ステンレスの材質は不明でしたが、やかんiii、ivについては、A施設と同じ種類のステンレスが使われていることが分かりました。
 実験①の様子をスライド15に説明しています。古いやかんの内面に銅やその他金属が付着しているかを確認するために、内面を削り、X線分析顕微鏡で分析を行いました。スライド16に、対照やかんと、やかんivの付着物のX線分析解析結果を示しています。やかんⅳの付着物の黒い部分を分析にかけると、2つの銅ピークが検出され、付着物に銅が含まれていることが確認できました。実験①の結果をスライド17にまとめています。2施設ともにやかん付着物から銅が検出されました。
 スライド18から、実験②について説明します。A施設と同じ方法でイオンドリンクを調製しました。スライド19は、イオンドリンク調製後の対照とやかんivの写真です。対照と比べると、やかんivはイオンドリンク本来の黄色と違う青緑色に変色していました。また、時間が経過するにつれ青緑色が濃くなっていきました。
 実験②の結果をスライド20にまとめています。古いやかんで作ったイオンドリンクから1L当たり4mgから21mgの高濃度の銅が検出されました。スライドには表示しておりませんが、再現実験後のやかん内面を観察したところ、A施設のやかんのように黒い付着物を洗浄したようなきれいな状態になっていました。
 スライド21から実験③について説明します。未使用のステンレス鋼の表面には保護膜が形成されるため、金属の置換反応は起きにくいことから、意図的にステンレスを短期間で腐食させ、ステンレスに銅の付着が起こるかを検証しました。手法は、ステンレス鋼を高温、かつ塩化物イオンの存在下において孔食が発生する報告を参考にしました。
 スライド22及びスライド23は、ステンレス鋼の保護膜と腐食について説明した資料となります。まず、スライド22ですが、ステンレス鋼には保護膜があり、不動態皮膜を形成し、錆びの発生を防止しています。
 スライド23になります。塩化物イオンと不動態皮膜中の酸素原子が置換し、金属塩化物となって、水に溶解しやすくなることで腐食が発生します。腐食した部分で鉄が置換反応を起こしやすい条件となります。
 スライドの24番を御覧ください。塩化物イオン存在下で、ステンレス板に腐食が発生するかどうかの比較を行いました。銅標準液のみの場合では腐食は見られず、塩化物イオンを加えた銅標準液の場合では腐食が見られました。
 スライド25は、腐食の発生したステンレス板の拡大写真になります。無数の穴があき、孔食が発生したことが推察されました。
 スライド26に、実験③のX線解析の結果を示しています。銅標準液に浸したステンレス板から銅が検出され、腐食したステンレス板に銅が置換反応を起こして付着したことがうかがえました。また、資料に記載しておりませんが、塩化物イオンを添加せず、銅標準液のみに浸したステンレス板からは銅が検出されませんでした。
 考察をスライド27に示します。実験①及び②の結果から、A施設以外のステンレス製の古いやかん内にも銅が付着しており、酸性飲料中に溶け出して食中毒が起こる危険性が確認されました。実験③により、塩化物イオンの存在下では、ステンレス(鉄)でも置換反応による銅の付着が確認されたため、仮説が正しいことが推察されました。
 A施設と他施設のイオンドリンク中の銅濃度は約10倍差があったため、更なる検証が必要と考えております。
 まとめをスライド28に示します。本事件は、銅を含まない素材のやかんから高濃度の銅が溶出したため、当初は非常に特殊な事件と捉えていました。しかし、今回の検証を通じ、どこの施設においても起こり得ることが分かりました。今後は、マスコミ等を通じての広報のほかに、関係機関と連携を取りながら定期的に注意喚起に努める所存です。以上で、報告を終わります。ありがとうございました。
○五十君部会長 大分県の小中主任、どうもありがとうございました。ただいまの大分県からの御説明に関しまして、御質問、御意見がございましたらお願いします。いかがですか。珍しいケースだったこと、本来、銅を含まないようなステンレスで起こったこと、そしてステンレスはよく使われている容器ですので、非常に興味深い事例だと思います。それでは工藤委員、お願いします。
○工藤委員 すみません、19ページの写真を見ますと、かなり色が付いているように見えるのですが、その福祉施設では、色が分かりにくいような御事情とかがあったのでしょうか。
○小中主任 御質問ありがとうございます。福祉施設のA施設で、やかんの色に気付かなかったのかどうかということなのですけれども、まず施設の利用者の方で別の器を使ったり、色付きのコップに注ぎ分けたことが、ちょっと気付きにくかったことの1つかなと思っております。
 もう一点は、施設側の職員、作る側の職員ですが、イオンドリンクを調製した際に、本来のイオンドリンクはりんご味だったのですけれども、青りんご味とちょっと勘違いしていたところがあって、その色味にちょっと気付かなかったかなというところが考えられております。
○五十君部会長 よろしいですか。それでは、続いて尾島委員、お願いできますか。
○尾島委員 とても興味深い事例について徹底的に検証されて、すばらしい報告だと思いました。特異な事例ですので、場合によっては故意のものではないかとか、そんなことも思うのかもしれないですが、置換反応ではないかということに思い至ったのは、どういうことで、そのように考えられたのでしょうか。
○小中主任 御質問ありがとうございます。まず、この置換反応に思い至ったのは、幾つかあるのですけれども、まず、過去の事例で、岡山県の事例を参考にしたことと、あと、今回ですが、過去の事例と違って、ステンレスの保護膜もあって、置換反応が起こるとは考えにくい事例でしたが、それに対して腐食が起きて、そこに保護膜が破綻してしまって、銅が置換し、蓄積するのではないかということは、ほかの大学と言いますか、金属に対して、かなり研究をされている研究機関から少し参考の話を頂きまして、そこで少し検証して実験したところ、銅が付着していたことが確認できましたので、置換反応というものが原因ではないかというような結論に至りました。
○尾島委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 それでは、続きまして雨宮委員、いかがですか。
○雨宮委員 詳しい御報告、ありがとうございました。最後に、今後の注意喚起に努めるというところなのですけれども、具体的に、こういったことで注意喚起しますというのが、もし決まっていることがあれば教えていただきたいです。
○小中主任 御質問ありがとうございます。まだ、注意喚起について、いろいろ練っている段階ではあるのですけれども、まず1つ、当管内で行っていこうとしていることは、今回の事例を見て、管内の高齢者福祉施設に対してアンケートを実施しております。その内容が今回の事例のことについて、まだ古いやかんを使っているか、そういったアンケートを実施しまして、そこで管内の一つの情報網を得たと思っております。今後、また定期的な食中毒に関することや、化学物質だけではなく、菌も含めて、そういったネットワークといいますか、情報網を活用して啓発できるのではないかと考えております。
○雨宮委員 ありがとうございました。
○五十君部会長 これは、この事例に留まらない可能性もあります。事務局から追加のコメントを頂けますか。
○新井室長補佐 厚生労働省では、今般の、この銅食中毒を受けまして、昨年7月に発生した件を踏まえて、地方自治体宛てに金属性容器の使用方法による食中毒発生防止の注意喚起というものを通知発出させていただいております。また、本日の報告を踏まえまして、今般の事例を踏まえますと、今後も発生する可能性というのは、やはり否定できないところもございますので、厚生労働省では、ツイッター等を用いまして一般消費者の方にも分かるやすいように注意喚起をしてまいりたいと考えております。以上でございます。
○五十君部会長 事務局からこれまでの対応につきまして、また現在進んでいる対応につきまして御報告がありました。それでは続きまして調委員、いかがですか。
○調委員 実は、我々の所でも平成29年に、かなり似たような事例がありました。それは、お子さんの児童クラブで30人ぐらいが、やかんの、やはりスポーツドリンクを調製して、30人が飲んで5人ぐらいが発症されたと。銅の分析をしたのですけれども、食中毒を起こすような濃度はなかったということで、食中毒事例としては扱わなかったのですが、やはり、実はこういうことが結構起きているのではないかと思いましたので、是非、注意喚起をお願いしたいと思います。
 そのときは食中毒事例としなかったこともありまして、ここまで詳細な追及というのはしていなくて、なぜ、やかんから銅が出たのかということは、今回説明を聞きまして非常によく分かったと思っています。特殊な事例というように片付けないで、注意喚起をしていただくということは必要だと思います。ありがとうございました。
○五十君部会長 追加コメントをありがとうございました。それでは上間委員、いかがですか。
○上間委員 聞こえますか。
○五十君部会長 はい。ちょっと音声が途切れ途切れぎみです。
○上間委員 今、調先生も言われたように、非常に多く発生している可能性があると思いますので、金属性のやかんは注意してくださいというよりは、例えば樹脂性の容器で作製しているとか、使っても大丈夫な材質とかをアナウンスするほうがはっきり伝わるのではないかと思うので、注意喚起はそういう方向でやるほうがいいのではないかなと思いました。以上です。
○小中主任 ありがとうございます。確かに、今回の作る人間も、今まで本来はプラスチック製のもので作っていたものを急に、やかんでやってしまってというところもあったので、使う容器についても、一般消費者の方にも分かりやすく情報提供していくのがいいのではないかなと、私も思っております。ありがとうございます。
○五十君部会長 コメントをありがとうございました。それでは北本委員、どうぞ。
○北本委員 すみません、お時間のないところ。実は、この事例の報告を厚労省のほうから頂いた後、たまたま名古屋市のほうで教育委員会の給食関係の会合がございました。そういった所で情報提供したところ、やはり学校の校長先生が非常に興味を持たれまして、学校であったり保育園であったりスポーツクラブであったり、特に夏場に運動クラブをやったりする所は、やかんでまとめて、こういったスポーツドリンクを作られているケースもあるようです。やはり、こういった高齢者施設のみならず、先ほどの文科省さんとかも含めて、幅広く周知といいますか、情報提供の周知をしていく必要があるのかなというのを感じました。以上でございます。
○五十君部会長 ありがとうございました。先ほどのコメントにありましたように、認知されていない事例がある可能性がございますので、今後その点について、厚労省のからも積極的に情報伝達していただくよう、よろしくお願いします。
 それでは、次の議題に移ってもよろしいでしょうか。続いての議題としましては、(3)その他となりますが、事務局より御報告はありますか。
○小野澤HACCP推進室長補佐 事務局のほうから、先ほどお話がありましたように、手洗いの消毒剤の今後の方向性について御報告がございます。今後の厚労省の方針や検討内容について、口頭での御報告をさせていただきたいと思います。
 現在、大量調理施設衛生管理マニュアルについては、大規模食中毒対策等についての別添として示されておりまして、多くの集団給食等で利用されております。そこで、その調理マニュアルについては食中毒を予防するために調理改定における重要管理事項を示しているものでございます。先ほど話題にもありましたように、昨今、新型コロナウイルス感染症の拡大に際しまして、手洗い、消毒剤について非常に注目を浴びております。この大量調理マニュアルの手洗いについては、現在は石鹸による手洗い、消毒用アルコールによる消毒という形で、物質が2物質ほど記載されております。ここに記載される物質につきましては、一定の効果や効能が保証されている必要がありますが、昨今は様々な手指用の消毒剤が市場に流通されている状況です。このような状況を踏まえまして、現在国内で消毒剤として流通や販売されているもの、そのほか手指消毒に関する有効性が期待されるものについて、この大量調理施設衛生管理マニュアルへの記載が可能かなどについて、今後、科学的な評価を行う予定としております。
 具体的な検証の内容としましては、現在マニュアルに記載されている石鹸や消毒用アルコール以外の剤について、手指の消毒剤として食品の施設で使う場合に食中毒菌の汚染の低減効果があるのか、そういった内容について情報等を収集し、整理していくこととしております。今後、その検証内容がまとまりました際には、大量調理施設マニュアルの改正などについても検討していきたいと考えております。改正を行う際には、今後、食中毒部会などについても、その方向性を御報告させていただきたいと考えております。以上、口頭での御報告となります。よろしくお願いいたします。
○五十君部会長 事務局、ありがとうございました。ただいま御発言のありましたように、科学的データによる検証をされていくということですが、この件に関しまして、何か御質問、御意見等はございますか。この方向性でよろしいですか。大西委員、どうぞ。
○大西委員 すみません、大西です。今、食中毒菌とおっしゃいましたが、ウイルスに対する効果は、どう検証されるのですか。
○小野澤室長補佐 大変失礼いたしました。食中毒菌「等」という形で。
○大西委員 なるほど。
○小野澤室長補佐 そういう形で検討させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。
○大西委員 「等」の中には当然ウイルスが入っていると考えてよろしいですか。
○小野澤室長補佐 そのように考えております。
○大西委員 分かりました。ありがとうございます。
○五十君部会長 御指摘ありがとうございました。そのほかにございますか。亀井委員、お願いします。
○亀井委員 聞こえていますでしょうか。
○五十君部会長 はい、大丈夫です。
○亀井委員 亀井でございます。今日はいろいろ貴重な発表を伺うことができ、ありがとうございました。今の「その他」のところで、食中毒を予防するための大規模調理施設衛生管理マニュアルですか、これについて、特に手指消毒のところを見直されるということでしたけれども、今回の新型コロナの関係で、他省庁で「こういったものがいいよ」というような御提示などもあるようですので、是非、ほかで検討されている対象も、今回の見直しの対象としていただいて、皆様方に広く理解していただけるようになればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。
○五十君部会長 事務局、何か。
○小野澤室長補佐 御意見ありがとうございます。参考とさせていただきたいと存じます。ありがとうございます。
○五十君部会長 それでは、ほかにございませんか。よろしいですか。それでは、大量調理施設マニュアルは非常に重要なマニュアルですので、こちらを科学的データによりまして、いろいろな検証をしていくということでお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは以上で、本日予定しておりました議題がほぼ完了しました。全ての議題を振り返りまして言い忘れたことや、御質問、御意見等がございましたら受け付けたいと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。その他、事務局からは何かございますか。事務局、お願いいたします。
○新井室長補佐 今後の部会の開催状況について、お知らせさせていただきます。例年、食中毒部会は年度末に開催させていただきまして、前年の食中毒発生状況の報告をさせていただいておりますけれども、先ほど報告もありましたとおり、大量調理施設衛生管理マニュアルの手洗いに関する検証、こちらについて報告事項がまとまりましたら年度末を待たずに、年度の途中でも本部会を開催することがございますので、その際には改めて御連絡させていただきます。以上でございます。
○五十君部会長 皆さん。覚悟しておいてくださいということかなと思います。それでは、ほかには事務局からございませんか。皆さんもよろしいでしょうか。
 それでは本日の食中毒部会は、これで終了させていただきたいと思います。Web併用という、いつもと違う状況で、若干トラブルもございました点、失礼いたしました。長時間にわたる活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。それでは皆さん、どうもありがとうございました。

 

 

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会食中毒部会)> 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録(2021年3月22日)

ページの先頭へ戻る