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2017年12月21日 (平成29年12月21日) 平成29年度 第1回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成29年12月21日(木)
13:30~16:30


○場所

エッサム神田ホール2号館 4階大会議室


○議事

○司会者 (高野) それでは、定刻となりましたので、ただいまより「平成29年度第1回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を開催いたします。


  まず初めに、テクノヒル株式会社代表取締役鈴木より御挨拶させていただきます。宜しくお願いいたします。


 


○鈴木 平素はお世話になり、ありがとうございます。


  本日は、12月の師走の大変お忙しい最中、お集まりいただき誠にありがとうございます。


  私ども、平成25年から厚生労働省の有害性評価書の作成の委託事業を受けさせていただきまして、毎年、化学物質の労働現場で使っているものに対する有害性評価書を作成しております。毎年、全3回リスクコミュニケーションを開催して、皆さんから多様な御意見をいただいているのですが、今年度はリスク評価について、ニッケル、ピリジン、メタクリ酸など5物質についてリスク評価を進めておりまして、その後、経皮吸収の問題がございまして、健康障害を生じる恐れのある物質についても経皮ばく露を考慮したリスク評価を、ということで、私どもが委託事業の中でお手伝いさせていただいております。今日、これだけの方が集まっていただいた背景が、酸化チタンにつきまして、昨年度のリスク評価を踏まえて、現在、健康障害防止法の措置を検討しているところで、皆様、色々なお立場の中でこれだけ集まっていただいたと認識しております。特に、今日は先生方だけでなく、日本酸化チタン工業会の方からもパネリストに出ていただきまして、皆様、多方面から色々な御意見をいただきたいと思っております。


特に、酸化チタンは白の顔料として広範囲に使われていまして、皆さんの生活のそばにあるもの。この中で、労働者の健康障害と、皆さんの生活の中でということで、多様な御意見をいただければと思っております。事務局が至らず、今日はこれだけ狭いところに入っていただいて、皆さん、大変窮屈だと思いますが、お時間をいただいている中で御意見いただければと思います。もし御気分が悪くなりましたら、事務局員が参りますので、挙手にてお申し出ください。

  簡単ですが、本日は宜しくお願いいたします。


 


○司会者 (高野) それでは、お手元の資料を確認させていただきます。議事次第1枚、あとステープル留めの基調講演資料1、資料2、各1部ずつ。A4のピンクと水色のアンケート用紙、それぞれ1枚ずつ。こちらのピンクのアンケート用紙につきましては、休憩時間に水色のアンケート用紙は意見交換会終了後に回収させていただきます。あと、はがき大の赤と青のカード、1枚ずつお手元にございますか。資料の不足がある方がいらっしゃいましたら、挙手をお願いいたします。宜しいでしょうか。


  さて、このリスクコミュニケーションですが、働く方の健康障害を防止するために、厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者や化学物質の取扱いをされている方、又、事業者の団体の方との情報共有、意見交換会を行うために実施しているものです。


  厚生労働省から委託を受けまして、私どもテクノヒルが昨年度に引き続き運営を担当しております。私、本日の司会を務めさせていただきます高野と申します。宜しくお願いいたします。


  それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
    まず「リスク評価の結果について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である化学物質のリスク評価検討会で行われた検討内容につきまして、検討会委員でいらっしゃいます早稲田大学名誉教授の名古屋俊士先生に30分程講演いただきます。


  次に「酸化チタン(IV)の健康障害防止措置について」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室長の穴井達也様に40分程講演いただきます。


  以上の基調講演が終わりましたら、一旦20分程の休憩を挟ませていただきます。なお、休憩時間にピンクのアンケート用紙を回収いたします。ピンクのアンケート用紙に、基調講演をお聞きになった御感想、疑問点、御質問などについて御記入いただき、会場内の事務局員へお渡しください。後半の意見交換会は、会場からいただいた意見を踏まえた形で進めてまいります。


  後半の意見交換会では、コーディネーターを長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いし、パネリストとして基調講演の名古屋先生、穴井室長の他、厚生労働省から1名、日本酸化チタン工業会から2名の方にお入りいただいて、疑問点にお答えしていきます。


  意見交換会につきましては、開始から1時間程でピンクのアンケート用紙に御記入いただいた御質問について回答し、その後、30分程会場からの御質問を直接お受けいたします。


  なお、この講演会につきまして、後半の意見交換会を含めて議事録作成のため録音させていただいております。録音の関係上、最後の質疑応答の際はマイクをお渡ししますので、マイクを通して御質問をお願いいたします。


  全体は3時間程を予定しております。


  それでは、最初の基調講演「リスク評価の結果について」を早稲田大学の名古屋先生、どうぞ宜しくお願いいたします。


 


基調講演1


「平成29年度リスク評価の結果について」


 


○名古屋 ただいま御紹介にあずかりました早稲田大学の名古屋と言います。宜しくお願いいたします。持ち時間が短いのに、パワーポイントは50枚ほどあって、かなりハードだと思います。ただ、今回、資料として皆さんに情報提供するということですので、資料を少し飛ばしながら、できるだけ決められた時間でおさめたいと思いますので、資料を持ち帰って見ていただければということで、御容赦願います。そうしましたら、リスク評価ということでお話ししていこうと思っています。


 


(スライド1)


  リスク評価制度というのが、どんな制度の中で行われているかという事についてお話をしていきたいと思います。


 


(スライド2)


  ここにありますように、7万種類ぐらいの化学物質があります。最近、1,000物質ぐらいの新規届出が出てきています。これは、年間100 kgを超える製造又は輸入をしている化学物質です。あと、少量新規化学物質が1万7,000ぐらいで、かなり多くのものが化学物質として登録されてきています。


 


(スライド3)


  ここにありますように、年間1,000物質が新規化学物質として届けられているという年次毎の推移が書いてあります。


 


(スライド4)


  ここは、皆さん御存じのように、化学物質管理の体制ということで、禁止物質があり、かつ許可物質がある。あとは、リスク評価をすることによって、特別規制物質が121という形で増えてきております。この他に、ラベル表示物質、SDS交付義務物質、リスク評価物質が、663物質です。この中から、リスク評価をするリスク評価対象物質を選定することによって、ここに挙がってくるという体制になっておりますという形です。


 


(スライド5)


  では、実際に化学物質対策の方向性ということで、平成18年以降と平成18年以前では若干違いまして、平成18年以前は、そこに書かれていますように、ハザードベースの規制になっている。これは何かというと、労働者に健康障害が発生した化学物質について、いわば疾病が起こったときに初めて、その物質について規制をかけるという、どちらかというと後追い的な規制だったのです。


  それではまずいということで、平成18年からはリスクベースの規制という形になりました。それは、事業者がリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき、自主的な措置を実施しましょうという形と。


  もう一つは、重篤な健康障害のおそれのある物質については、国みずからリスク評価を行い、リスクが高い場合には規制をかけましょうというリスクベースの規制になりました。


 


(スライド6)


  実際、平成18年のときには現在と異なり委員会がまだ1つでして、その1つの委員会の中でリスク評価対象物質の選定やリスク評価も一緒に行っていって、一番最初の委員会では、ホルムアルデヒドを含む5物質を選定し、その5物質についてリスク評価をしました。5種類の決められた物質については、発ガン性などの有害性の情報を集めます。色々最終的にはリスク評価をするための二次評価値としての濃度を決めます。


  もう一つは、実際に報告された事業場に行ってばく露濃度を測定して、そのばく露濃度とリスク評価のために決められた二次評価値の濃度との比較から総合的に判断して健康影響があるかどうかという決定をする。健康影響がなかったら、そのまま終わりますけれども、ある場合には健康障害防止対策の必要な物質であることから、特化則に該当する化学物質と決定して、必要な手続きを行うという流れになっております。


 


(スライド7)


  ここは、先程の有害性のところで、省かせてもらいます。


 


(スライド8)


  現在、平成21年からは、ガイドラインというものができまして、それに従ったリスク評価を行うという形に移ってきています。ここが実際のガイドラインの評価方法です。従来と変わりませんけれども、リスク評価対象物質を選定し、且つ対象物質を決めるのが企画検討会というところです。


  今年はこういう物質がリスク評価対象物質として選ばれたので、そのリスク対象物質に対して、皆さんがリスク対象物質を1年間で500 kg以上製造し、又は取り扱った時には、有害物ばく露作業の報告書を提出してもらいます。そのもらった報告書を元にして、実際にはリスク評価を実施します。


  リスク評価の実施に際しては、有害性の評価がありまして、有害性評価小検討会で一次評価値、二次評価値を決めていただく。あと、報告書を見て、コントロールバンディングしながら、一番ばく露濃度が高いと思われる作業を選定し、その作業について、実際に事業所に行って測定しますよという形になります。その結果をばく露評価小検討会で、ばく露濃度と評価値を用いてリスク評価をします。


 


(スライド9)


  ちょっと先に行って、又戻りますけれども、要するに一次評価値、二次評価値、ここにありますように、見ていただければわかります。一次評価値は、どちらかというと1万人に1人の割合のがんについての濃度を設定している。あと、最近ですと、神経毒や生殖毒性の試験で得られた無毒性量を参考にして算出したものを一次評価値としています。


  二次評価値というのは、労働者が毎日当該物質にばく露された場合でも健康に悪い影響を受けることが無いであろうという濃度として、ACGIHのTWAとか産業衛生学会の許容濃度を使うことが多いです、最終的に規制がかかった化学物質の管理濃度は、リスク評価に用いた二次評価値が管理濃度になっていきます。


 


(スライド8)


  有害性評価小検討会で、一次評価、二次評価を決める。あと、実際にばく露濃度測定をします。そこで、一次評価値より低いところにはリスクが低いですね。一次評価値と二次評価値の間のところには、現時点ではリスクは大丈夫でしょうという事になる。


  二次評価値を超えたときにリスクがあるということになるので、ここになって初めて、詳細リスク評価に移っていきます。多くの場合、ここまででしたら、初期リスク評価で終わってしまって詳細リスク評価へ行きません。実際に二次評価値を超えたものは詳細リスク評価へ行きまして、新たに初期リスクのばく露濃度測定を参考に、再度ばく露濃度測定を実施します。又、色々二次評価値を変えるかどうかの検討も行います。ほとんどの場合はそういった事例はないです。


  但し、ばく露濃度測定の場合は、高かったものについて、もう少し詳しく測定を繰り返す部分と、あるいは報告された事業所の中でまだ測定していなかった部分、そういう作業のものについて、もう一度ばく露濃度測定を行って評価をします。


  そうした中で、ここのところは二次評価値より小さくなるということはなかなかありませんで、ほとんどが二次評価値を超えています。二次評価値を超えた化学物質に対して、多くの場合は要因分析をします。その要因分析をしたときに、物質を扱っているところが、その特定事業場だけの問題なのか、あるいは測定を実施した作業は全ての事業場の作業について共通するのかな。例えばエチルベンゼンなどもそうなのですけれども、ガソリンスタンドとか塗装作業場でエチルベンゼンが取り扱われていたのですけれども、ガソリンスタンドはリスク評価をした結果、ばく露濃度が著しく低かった。一方低く、塗装作業のばく露濃度が一番高かったので、塗装作業だけが規制の対象となったという事例ですけれども、そういう塗装作業は共通性のある作業であるという形で、その塗装作業だけについて規制をかけました。こういう要因分析をしていって規制対象の作業を決めていく形になるかと思います。


 


(スライド9)


  ここは先程言いました。こういう形で、一次評価値、二次評価値があります。


  ばく露の場合、実際に8時間測定をします。


  もう一つ、いっぱい作業場があって作業者がいるときに、ばく露濃度だけで対応できるか。もしかしたら見逃してしまう可能性があってはいけないということで、ガイドラインには、統計的な処理をしていって、ばく露濃度測定した結果を用いて、ばく露濃度を推計することによって、見逃さない形で最大ばく露濃度を求めるという形にしております。そういうことで、実際のばく露濃度の部分と、統計的に求めた区間推定値の2つのばく露濃度の中でどちらが大きいかを比較して大きいほうを最大値として、これを二次評価値と比べて評価しているという形になっております。


 


(スライド10)


  ここは、皆さん御存じのように、オルト-トルイジンで膀胱がんが起こりました。従来ですと、リスク評価の場合、要するに意外と経皮吸収のある化学物質は、ばく露濃度が低かったです。蒸気圧が低かったり、揮発性が低い場合の化学物質はばく露濃度が低かったのですね。そうすると、初期リスクで終わっていた事例がありました。


  ただ、そのときに経皮吸収のある化学物質については、必ず手袋とか、色々な形で自主的に管理しなさいという事を報告書は書くことで終わらせていて、それについて評価しないで初期リスクで終わってしまったのですけれども、今回、そういう問題が起こりましたので、ここにあります様に、平成28年以降については、経皮吸収のある化学物質については、リスク評価の際、初期リスクで低かったものについても詳細リスクまで持っていく。ただ、その判断方法はこれから検討していきます。リスクの高いものは従来どおりですが、そういう形で持っていく形になるかと思います。


 


(スライド11)


  そういう形の中で、従来と違って、ばく露濃度は低いけれども、経皮吸収があるものについては、健康障害のおそれがある化学物質ですので、そうした化学物質について新たにリスク評価を決めましょうという形で、先程言いましたように、初期リスクで終わらずに詳細リスクへ持っていく。但し、残念ながら、定量的な方法がまだ開発されていなくて、定性的なリスク評価につきまして、来月、もう一度、リスク評価検討会の中でどういうふうにしていったらいいかということをこれから検討していきます。


 


(スライド12)


  次に、今年の報告になります。


 


(スライド13)


  ここは概要ですので、ここをご一読いただければ、私の話すことは何もありません。この通りになっております。ここだけは後で見ていただいて、どういう過程を経て評価が行われているかということについて、ちょっとだけ説明していこうと思います。


 


(スライド14)


  先程からお話ししていますように、二次評価値があって、それに対してばく露濃度を測定しました。後で出てきますけれども、ばく露濃度の場合は、先程言ったように実際のばく露濃度と、それから統計処理したばく露濃度の中で、どちらかのばく露濃度で高い方の値が最大ばく露になりますので、この場合は最大ばく露が1.5ですから、二次評価値と比べて小さい。


  もう一つは、ここが最初に大事ですと言いましたように、経皮吸収がないということがありますので、この場合はばく露濃度だけでリスク評価が出来て、最大ばく露濃度からリスクが低いと考えられます。


 


(スライド15)


  この辺は情報ですので、省かせてください。皆さんが後で見ていただければ結構かと思います。


 


(スライド16)


  ここも有害性の評価という中で、発がん性とか反復毒性とか、色々書いてありますので、見ていただければと思います。


 


(スライド17)


  それから、ここもそうですね。一次評価値が、ないですよね。どうしてないのかというと、ここを見ていただければ。二次評価値は、ACGIHの値をとって、その値を二次評価値として使いましたということになっております。


 


(スライド18)


  実際、ここで見ていただきたいのは、13事業場で59人に対してばく露濃度測定しました。個人ばく露としては、1.10が一番高かった。但し、色々な事業場があって、リスク評価できなかったところに対して統計的処理をしました。そうしたときに、区間推定の中で一番高かったのは1.5です。そうすると、こことここを比べたときに最大値はこちらをとりますよ。1.5という濃度が最大値で、それと二次評価値を比べてリスク評価しています。細かいところは申しわけありません。


 


(スライド19)


  実際にばく露濃度を並べてみて、一番高かった人が1.10です。こういう評価では二次評価値を超えていなかった。でも、これに比べると、先程の推定値のほうが高かったので、推定値を最大ばく露として評価しましたという形になるかと思います。


 


(スライド20)


  ここは読むこともないと思いますが、最大ばく露は、先程言いました1.5で、二次評価値を下回っております。


  もう一つは、経皮吸収の勧告はされていません。この場合、ばく露だけによるリスク評価としては低いので、今回は初期リスク評価で終わって、詳細リスク評価まで持っていきませんという結論になりました。


  あとは、そういうことを言いながら、こういう疾病がありますので、こういうことを注意しながら自主的な管理を行ってくださいということをつけ加えて終わっています。


 


(スライド21)


  次の二塩化酸化ジルコニウムにつきましても同じです。先程と同じ二次評価値が5 mg/m3です。最大ばく露は0.067です。先程と比べますと著しく低いですから、初期リスクで終わるかどうか。但し、経皮吸収の勧告値がありませんので、初期リスクで終わろうという形になると思います。


 


(スライド22)


  ここは、申しわけありませんけれども、時間の関係で省かせてもらいたいと思います。輸入量とか、色々な情報です。


 


(スライド23)


  それから、ここは発がん性とか急性毒なのかどうかという形の情報があります。


 


(スライド24)


  次のところは、ばく露濃度評価のための評価濃度の選定ですから、ACGIHの値があって、許容濃度はありません。一次評価値も無しで設定しておりません。二次評価値として0.5とし、ACGIHの値を採用したという形です。


 


(スライド25)


  実際のばく露調査の結果はこれですね。6事業場で9人の労働者に対してばく露濃度を測定しました。0.022が実際のばく露でした。区間推定値を推定すると、0.067。では、こちらが高いので、ばく露濃度としては一番高いのは0.067です。それと、先程言った二次評価値を比較する形になるかと思います。


 


(スライド26)


  実際にばく露したところを見ていただけるとわかりますけれども、一番高かったのは0.022です。これは二次評価値に比べて著しく低いですね。当然、区間推定値もこれより低かった。


 


(スライド27)


  結果的には、ここに書かれていますように、二塩化酸化ジルコニウムを取り扱っているところは、最大値が0.067です。二次評価値を大きく下回っています。当該物質につきましては、経皮吸収の勧告はありませんし、リスクは低いと判断されましたので、詳細リスクに行かずに初期リスク評価として、この物質は終わりました。


  但し、先程からお話しましたように、このようなものがありますから、是非そのようなことに注意しながら、リスク評価を行いながら、自主的管理をきちんとしてくださいという形かと思います。


 


(スライド28)


  次が金属ニッケルです。粉状ニッケルにつきましては、今まで規制がかかっています。今度は金属ニッケルではどうなのかということで初期リスクを評価しました。二次評価値としては、ACGIHの値1.5を使いました。実際のばく露濃度は0.68。あと、推計がありますけれども、区間推定値は0.63ですので二次評価値の1.5に比べて低いですし、当然、経皮吸収はありません。


  ただ、ここに溶接作業におけるデータが不足していると書いてありますけれども、後で出てきますけれども、このときに一番高かったばく露濃度の0.68というのはエアーガウジング作業です。ガウジングの作業は、御存じのようにエアーで噴いていますので、作業者の向こう側に局排装置があって、それに向かってエアーガウジングを行うので、ばく露は意外と低かったねということがあります。


  それと同時に、エアーガウジング以外に溶接の場合には、ニッケル及びニッケル合金とかステンレス、そういった形の溶接棒を用いて溶接を行うと、ニッケルがヒュームという形が出てくる。特に溶接の場合は熱気流がありますから、ばく露が高くなるはずです。ところで、届け出のときに、年間500 kg以上、取り扱っているところは報告義務が有るのですが、溶接の場合は年間500 kg以上、取り扱うのは難しいので、報告が溶接業界から多分、出されていないのだと思います。でも、作業を考えると、溶接はガウジングに比べると無視できない。それを見逃してはいけないということで、溶接のデータがないということがあったので、今回の場合は中間報告という形になりました。


  特に溶接の場合は、先程言いましたニッケル合金とステンレスがあるので、私たちの研究で実際に溶接現場測定するとニッケル合金が一番高いですから、そこでリスク評価しておけば、それより高い溶接作業はないので、そこでリスク評価しておけばイレギュラーがないだろうということで、この後にニッケル合金の溶接作業のばく露濃度測定をしてもらって、それをあわせて評価するという形に今回はしてあります。そのために今回は、中間報告です。


 


(スライド29)


  ここはよろしいですね。先程と同じ、情報という形。


 


(スライド30)


  これもそうですね。ヒトに対して発がん性がどうかという判断。


 


(スライド31)


  実際には、ACGIHは1.5 mg。産衛は1 mg。粉じんの場合、こちらの1.5を採用しました。二次評価としては、ACGIHを採用しました。


 


(スライド32)


  実際は、7事業場で23人に対しまして、これは先程言ったように、エアーガウジングで0.68が最大。区間推定しましても0.63で、ばく露濃度が一番高いので、最大値として取り扱いましたよという形になるかと思います。


 


(スライド33)


  実際見ていただけるとわかりますように、突出して、エアーガウジング作業が、1作業しか測定していませんでしたが、0.68。それに比べると、もしかしたら作業形態を考えると、ばく露濃度は溶接作業のほうが高いのかな。特にニッケルは高いのかな。そこを見逃してしまって初期リスクで終わってしまうのは、委員会としてもちょっと心苦しいところであります。こういう事があるので形溶接の作業を初期リスク評価測定に入れて、ばく露濃度がどのくらいの値になるかわかりませんけれども、その値を参考にしてニッケルの初期リスクを行うと言うことになりました。


 


(スライド34)


  ここにその通り、書いてあります。最大値が0.68で、1.5に比べて低いですけれども、経皮吸収はない。普通ですと、このままの状況でいきますと初期リスク評価で終わるのですけれども、ここにありますように、明らかにヒューム等が発生することが見込まれる溶接作業に関しては、データが不足しており、広くばく露調査を実施して、ニッケル合金についてリスク評価をもう一度やる必要がありますという、今回は中間報告という形で、溶接が出てきたときに再評価しましょうという形になりました。


 


(スライド35)


  ここはピリジンです。ピリジンにつきましては1 ppmが二次評価値。実際には、最大ばく露が2.9。それから、経皮吸収はありませんでしたけれども、最大ばく露が二次評価値を超えているということで詳細リスク評価に行くことになりました。


 


(スライド36)


  ここは、先程と同じで省かせていただきます。申しわけありません。


 


(スライド37)


  発がんとか、そういう情報はここに書いてありますので、ぜひ見ていただければと思います。


 


(スライド38)


  リスク評価のところは、ACGIHが1で、2004年に出しています。これを使って二次評価は1に、又ここに出てきているのは一次評価値ですが、参考という形になる。二次評価値の方がこれから先大切になります。


 


(スライド39)


  ここで見ていただけるとわかりますように、6事業場で8人の労働者に対して、0.94という値が出てきます。統計処理したときに区間推定が2.9です。ということは、最大ばく露濃度が二次評価値を超えている部分があります。


 


(スライド40)


  実際のデータは、見ていただければわかります。突出している人がいらっしゃって、二次評価値を超えています。


 


(スライド41)


  最終的には、ピリジンにつきましては、最大ばく露が2.9でした。二次評価値の1 ppmを上回っておりますので、これに対しては、同じような作業。ここに書いてありますように、一番ばく露したのはドラム缶の充填作業ですね。又同じ作業と、もう一つは、低かったのだけれども、他の作業場が漏れているかどうかというのがありますので、そこでもう一度詳細リスク評価するときには、漏れている作業についての測定も行う。


  それから、もう一つ、この作業が特にここだけ高いのかどうか。もう一度、同じ作業を他の事業場で測定してみて、そして相対的に評価して、詳細リスクの中で評価していきましょう。もしそれが超えるようでしたら、化学物質の健康障害防止措置に係わる検討会に行くことになるかと思います。


 


(スライド42)


  最後になりました。メタクリル酸です。これは、産業衛生学会の許容濃度が二次評価値の2 ppmです。ばく露濃度が0.37。ここにありますように、今回は経皮吸収がありませんでしたので、この場合は初期リスク評価で終わる。


 


(スライド43)


  ここは、先程と同じように省かせていただきます。


 


(スライド44)


  ここにありますように、ACGIHと産業衛生、同じ値でしたので、2 ppmが二次評価値になりました。


 


(スライド46)


  ここを見ていただくと、10事業場の12人で個人ばく露濃度の最大値が0.24でした。区間推定が0.37で最大値としては0.37ですから、0.37を二次評価値と比較する形になります。


 


(スライド47)


  見ていただけると、0.24という高い作業者の方がいらっしゃいます。


 


(スライド48)


  これに比べると著しく低い。区間推定値である最大値も0.37ということで、2 ppmに比べて低い。経皮吸収はありませんから、先程お話ししましたように、これは初期リスク評価で終わる。自主的な管理をしてくださいという形になるかと思います。


 


(スライド49)


  最初のリスク評価は、ホルムアルデヒドから始まって、ずっと進んできまして、今年はこれがリスク評価対象物質になりましたので、来年1月から12月まで、この物質を500  kg以上製造し、又は取り扱っている事業場は再来年の1月から3月の間に報告書を出していただいて、それからその報告書を参考にリスク評価を始めます。こういう物質を持っていらっしゃる会社の方は、注意して見ていただければいいかなと思います。


  ちょっとパワーポイントが多かったので、早口で聞きにくかったことがあるかと思います。資料が充実していますので、その資料を見ていただければ大丈夫かなと思います。私の説明はこれで終わりたいと思います。


  どうもありがとうございました。(拍手)


 


○司会者 (高野) 名古屋先生、御講演ありがとうございました。


 


基調講演2


「酸化チタン(IV)の健康障害防止措置について」


 


○司会者 (高野) 続きまして、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室の穴井室長に「酸化チタン(IV)の健康障害防止措置について」、御講演いただきます。


  それでは、穴井室長、宜しくお願いいたします。


○穴井 改めまして、皆さん、こんにちは。ただいま紹介にあずかりました厚生労働省化学物質評価室長の穴井です。昨年も講演しましたけれども、今年は150人ぐらい来られて満杯で、先程司会の方がおっしゃっていた通り、酸化チタンのことについて、皆さん、とても関心があるのだろうなと思っております。措置検討会を開催した際には、傍聴をされていらっしゃる方も多いのではないかと思いますが、過去、どういうふうにしてリスク評価をやって、今、どういう検討がされているのかということについて、今日はお話ししたいと思います。


 


(スライド2)


  まず、酸化チタンの検討経緯について、1枚スライドを作っています。酸化チタンがリスク評価の対象物質になったのは、平成21年度にばく露作業報告の対象物質になって、そこから調査がスタートしています。なぜ選ばれたかといいますと、後でも出てきますけれども、国際がん研究機関で、ヒトに対して発がんの可能性がある2Bというグループに丁度なったころです。それで、リスク評価が始まったという経緯があります。


  色々書いてありますけれども、その後、先程名古屋先生が説明された通り、有害性の調査とばく露の実態調査を踏まえて、ばく露が二次評価値を上回ったのでリスクが高いと最終的に判断されたのですけれども、これも後程説明します。


 


(スライド4)


  リスク評価です。これが基本データですけれども、現在でも酸化チタンについては、粉じん則で粉状の酸化チタンを袋詰めにする場所における作業については規制されていますが、特化則ではまだ規制されていないということです。


  ご覧になっていただくように、色々な場所で使われて、非常に幅広な分野に日常生活で使われている物質であるということ。これは、皆さんのほうが御存じだと思います。


 


(スライド6)


  有害性ですけれども、先程も言いました通り、酸化チタンにつきましては、国際がん研究機関でヒトに対する発がんの可能性がある、2Bというクラスになっています。これがなったのが、正式には2010年です。2Bというのは、ヒトへの根拠は確実ではないけれども、動物実験で確実な証拠があるというクラスになっているということです。最近の情報ですと、今年の6月、EUでカテゴリー2に認定されました。カテゴリー2というのは、IARCで言うと2B相当ということで、EUでもヒトに対する発がんの可能性があるというランクになったということがありました。


 


(スライド5)


  これは酸化チタン協会さんの資料を借りてつくったものですけれども、酸化チタンにはルチル型とアナタース型、それに対するナノとナノ以外。しかも、それごとに表面処理があるものと、表面処理がないものと、大きく分けて8種類あると言われているのですが、我々がリスク評価するときは、ナノとナノ以外という2種類でしました。これはなぜかというと、世界的にルチル型とアナタース型を分けてリスク評価をしたり、基準を決めているところはありませんし、世界的に見ても、ナノとナノ以外と分ける、あるいは全く分けないというのが標準なので、我々はそれに従ってリスク評価をやっているということです。


 


(スライド7)


  まずは、ナノ粒子のリスク評価です。許容濃度としては、産衛学会とACGIHがありますけれども、低いほうの日本産衛学会の0.3 mg/m3というのが酸化チタンの基準としています。これはなぜかというと、ACGIHの値は酸化チタン全体のもので、ナノに特化していないので、こちらのデータをとって二次評価値にしてあるということです。


 


(スライド8)


  これがばく露実態で、実際問題として、個人ばく露が一番多かったのが1.64 mg/m3。区間推定1.3ですから、こちら側の数値をとって、いずれにしても、先程の0.3よりも上回っているということで、リスクが高いという話になっています。


 


(スライド9)


  具体的にグラフにするとこういうふうになっていまして、ここが二次評価値で、これよりかなり上回っているところがある。上回っているところは何かというと、具体的にはナノ粒子の充填・袋詰め作業について、高いばく露が検出されたということで、粉末状の酸化チタンの充填・袋詰めはリスクが高いという結論になりました。


 


(スライド10)


  これは、今、言った結論です。二次評価値を上回っているので、リスクは高いということです。


 


(スライド11)


  次がナノ粒子を除く、ナノ粒子以外の結果です。ナノ粒子以外については、基準値として産衛学会の2種粉じんの吸入性粉じんのデータを二次評価値としています。


 


(スライド12)


  これも測定の結果です。個人ばく露の最大値が3.1で、区間推定が1.4ということです。


 


(スライド13)


  結果として、これをグラフにすると、ここが二次基準値で、これだけオーバーしている、基準値を超えている。ここは何かといいますと、粉体塗装作業になっていまして、こういうふうにばく露が高いところが出ているということで、ナノ粒子以外についてもリスクが高いという結論になっています。


 


(スライド14)


  これはまとめですね。個人ばく露濃度が二次評価値を上回っているので、リスクが高い。これは粉体塗装を行っている事業場に共通する問題と考えられたというまとめになっています。


 


(スライド15)


  ナノとナノ以外をあわせて整理した文言がここに書いてありますけれども、酸化チタンは、吸入による健康障害のおそれがあると考えられているので、高いリスクがある作業工程に共通して確認されていることから、何らかの措置が必要かどうかという検討が必要ではないかということ。


  それで、検討における留意事項としては、ナノ粒子については充填・袋詰め、ナノ以外の粉体塗装作業において、二次評価値を超えることに留意してやりましょうということ。


  それから、ここは測定方法の話ですけれども、ナノ粒子とそれ以外の粒子の区別がつけられないという問題がある。これは、仮に規制がかかったときに、現場でどう運用するかという問題になろうかと思います。こういう課題もありますという整理になっています。


 


(スライド16)


  それから、これは参考ですけれども、現在、バイオアッセイ研究センターという、吸入での長期発がん試験ができる唯一の研究機関ですけれども、そこで今年度から、酸化チタンのナノ粒子のアナターゼ型で、しかも表面処理なしのものですけれども、吸入試験の発がん試験が始まっている。これの結論が出るのは32年度以降ということで、かなり後になりますけれども、こういう実験も今、吸入でやっているということです。


 


(スライド17)


  それでは、措置の検討状況について、お話ししたいと思います。


 


(スライド18)


  まず、措置検討会は一体何をするところでしょうかという基本的な話ですけれども、整理してみました。先程もお話がありました通り、健康障害のおそれのある有害物質については、色々なばく露とか有害性の情報に基づいてリスク評価を行います。これはなぜかというと、先程も言いました通り、事後的な対策ではなくて、事前にリスクを評価して防止しましょうという観点からリスク評価をやるわけです。リスクの程度に応じて、特化則とか、そういう規制を行うようなリスク管理を講じる必要があるだろうということで、こういうことについて検討する。


  それから、化学物質のリスク評価は科学的・中立的に行う。これは、あくまでもリスク評価というのは、誰々さんが困るからとか、誰々さんが何とか言っているからということは一切関係なくて、科学的データからちゃんとリスク評価をやります。但し、特別則等による規制については、対策の実現可能性等を考慮して導入する。これはどういうことかというと、幾ら正論であっても、現場で対応しようがないような規制をかけても意味がないからです。


  だから、当然実効性のある規制をかけないと意味がないので、その点も考慮して規制するときにはやりますということで、まず、こういうことの要否、要るかどうかということと、もし規制する場合には、実現可能性も考慮して、適切な、現場の労働者の健康障害防止になるような形で実現するようなことを検討する場が措置検討会という場です。


 


(スライド19)


  酸化チタンの当面のスケジュールとして、今年、色々な関係団体へのアンケートを行いまして、その結果をある程度取りまとめました。それと、関係団体へのヒアリングを行っているところです。


  現在、終わったところは、ここに書いてある酸化チタン工業会と印刷インキ工業連合会。塗装協同組合連合会、パウダーコーティング協同組合、塗料工業会。それから、溶接協会、化粧品工業連合会、ビジネス機械・情報システム産業協会。これだけの団体についてヒアリングの希望がございましたので、ヒアリングをやりました。


  酸化チタン工業会につきましては、もう一回ヒアリングを行ってほしいという要望がございますので、多分年明けになろうかと思いますけれども、ヒアリングをやることになります。その他、もし仮に今後ヒアリングを受けたいと希望される団体さんがあれば、当然受けます。


  その前にいただいているアンケートの調査結果と、このヒアリングを行った内容から論点を整理します。その論点を今後、委員の皆様方に議論していただくということで、今の進捗状況から、結論は来年度以降になろうかなと思っています。


 


(スライド20)


  ここからは、今までヒアリングを3回程やっていますけれども、どういったことが意見として出されているか、エッセンスだけ抽出してみましたので、それを御紹介したいと思います。


  まず、業界団体共通におっしゃっていること、1つ目、規制については、高ばく露量でリスクの高い工程・作業に限定してほしい。これは当たり前のことのような感じがしますけれども、網羅的にかけるのではなくて、ちゃんとこういうところをはっきりさせて、規制をかけるのだったらそういうふうにしてほしいという意見だと受けとめています。


  2番目は、どちらかというと要望というか、官民挙げての課題というか、そういった問題だと受けとめていますけれども、仮に酸化チタンが特化則の対象になった場合に、消費者に悪い印象を与えて風評被害が出るのではないか。


  これを色々な方がおっしゃるのですけれども、酸化チタンというのは、食品とか衣料品とか化粧品に使われていますが、食品や医薬品は口から入れるものです。化粧品は肌に塗り込むもので、この酸化チタンの先程述べた発がん性があるという有害性というのは、ラットやマウスの肺に吸入させた結果の発がん性なのですね。ですから、口から摂取したり、肌に塗って発がん性があるという動物実験データはないわけです。


  したがって、酸化チタンを仮に特化則で規制したとしても、食べたり、肌に塗ったりしても害があるわけではないのですが、発がん物質だということを言われると風評被害が出るということらしいですが、そういうことがあるので、もし仮に規制するとなったら、行政からの情報発信には細心の注意をしてくださいという意見です。


  これは、人情的にはすごくわかりますが、だからといって規制しないでくれというのは、それだけでは多分だめだと思います。ここは情報リテラシー、化学物質リテラシーの問題というか、そういう問題と私どもは受けとめています。化学物質というのは、一般の人は、毒性があるか、毒性がないかという二分法みたいなことで考えていて、一旦発がん性があると言ったら、それは悪いもの。規制がなければいいものという思考をしがちなので、こういうことが出てくると思うのですけれども、これは長期的には、学校教育とか、こういったコミュニケーションの場で正しい情報を伝えていくというのが優等生の回答だと思います。


  短期的には、仮に規制することになった場合でも、先程言いましたように、口から摂取したり、肌に塗るだけでは害がないということを丁寧に外部に発信していく他ないのではないか。それは、行政の責任はもちろんありますけれども、業界の皆さん方も一生懸命になってもらわないと、これについては永遠のイタチごっこみたいな話で解決しない問題だと思っていますので、それは一緒に協力してやらなければいけない。当面は、こういったことは商売上起こると、皆さんに被害があるというのは人情的にはわかりますので、できるだけそういう悪影響がないように、情報を出すことについては気をつけていきたいというのが我々の認識です。


  それから、以下は個別業界の話です。印刷・インキ関係では樹脂等に分散した状態で酸化チタンが出てこないので、規制対象外が妥当ではないかという話です。樹脂状に分散した状態、この1つ前に三酸化二アンチモンという物質を規制しましたが、そのときも樹脂等に分散した粒子は、出てくるのか、出てこないのかということ、適用除外にするか、しないかということを検討した覚えがありますけれども、それと似たような議論になるだろうなと思っています。


  本当に出ないというデータがあれば適用除外になるかもしれませんし、乾燥したりすると酸化チタンが出てくるという話になると、又話が違うのかなということで、データ次第かなと思っています。


 


(スライド21)


  それから、国際がん研究機関で評価された酸化チタンは未処理の酸化チタンであり、表面処理した塗料用チタンとは異なります。これは、IARCの動物実験で発がん性があるという実験は、確かに表面処理をしていない酸化チタンの実験結果であることは事実です。逆に言うと、表面処理したチタンを使って動物実験をした、有害性がどうこうというデータは、我々は聞いたことがない。多分、あっても世の中に公表されていないと思います。ないのかもしれませんけれども、ないので、表面処理した酸化チタンをどういうふうに見るのかというのは、今後の大きな一つの検討課題かなと思います。


  それから、2番目、粉体塗料は、幾重にもコーティングされていて、酸化チタン特有のリスクは非常に小さい。ここも上と似たような話で、コーティングされているから、酸化チタン直接ではないので毒性が極めて低いし、露出しないということ。先程と一緒ですね。樹脂でコーティングされているからと、先程申し上げた通りです。この表面処理した酸化チタンをどういうふうに捉えるかによって、結論が変わってくる。


  それから、粉体塗料の粒径は平均30 μから50 μで、細かい粒子はほとんどない。細かい粒子がほとんどないので、肺の中にはほとんど入らないという話なのかもしれませんけれども、これは又後程議論したいと思います。


 


(スライド22)


  それから、化粧品の関係で、独自に作業環境測定を行った結果は、二次評価値を超えませんでした。それから、50年以上の化粧品製造現場において、ばく露による労働者の健康被害は発生していない。国際競争の観点からもあって、化粧品については適用除外してほしいという意見が化粧品の関係から出されています。ここは、自主的に測定されてデータも出されているので、それを委員の方々がどう判断されるかという話です。


  50年以上、化粧品の労働者に健康被害が発生していない。これは、どう判断するかというのはちょっと難しいかなと思います。本当に発生していないのかという証明は難しいので、引退された方が死病で、仮に何かになっていたのを追跡調査しているわけではないので、これは状況証拠としては受けとめますけれども、真実としてとるかどうかは、我々はちょっと判断できないかなと思っています。ただ、環境測定のデータについては、有効なデータとして使われるのではないかという感覚は持っています。


  次、溶接の関係です。溶接棒やフラックスにはチタンが入っているけれども、溶接ヒュームには酸化チタンが発生しない。粉じん則によってやっている。溶接については、酸化チタンは発生しないし、粉じん則によってばく露する可能性もないので、適用除外としてほしい。酸化チタンが発生しないのであれば、多分除外されることになるのだろうと思いますが、それが事実かどうか、データ的にそうなのであればそうなるのかなと思いますけれども、データ次第かなと思います。


  それから、酸化チタンを含有するトナーから酸化チタンが離脱してばく露する可能性は、さまざまな試験により著しく低い。印刷、コピー等で使用する作業。これは、多分、職場などでコピーとか印刷する場まで規制するのはおかしいという意見だと思いますけれども、その通りかなと。さまざまな試験によってデータがちゃんと出ているとヒアリングでお聞きしていますので、そのデータが確かなものであれば、そういうふうに判断されるのかなと思いますけれども、これは酸化チタンが単離しないかどうかということがキーだろうなと思います。


 


(スライド23)


  ここからは、そういった意見に対して、専門委員の方からどういった意見が出ているかという話です。業界の意見は、表面処理がさまざまあって、影響も異なるので、「酸化チタン」一括りで規制するのはどうかなという御意見があった。


  それについて、さっき8種類ありましたけれども、それぞれの毒性についてデータがあるのでしょうか。それから、コーティングしていると言うけれども、酸化チタンの表面積の全てをカバーしているのでしょうか。あるいは、そのコーティングというのは、ヒトの体内に入ったときは剥がれ落ちないのかという質問が委員のほうから出ています。これについては、酸化チタン工業会さんのほうで実験されたり、データを集めたりされていると聞いていますので、次回のヒアリングのときにお答えがあるのではないかと我々は期待しています。


  それから、ほとんどの業界の方は、ばく露はほとんどないのだとおっしゃっていますが、製品のライフサイクルを通じて、本当に粉じんの発散はないのでしょうかというのが、委員の皆さんから業界に対する質問です。本当にばく露することはないのですかという問いかけです。


 


(スライド24)


  それから、先程粉体塗料は粒子が大きいという話がありましたけれども、実際に空気中の粒子をはかってみると、吸入性粒子というのは結構漂っているというのが測定するとわかる。大きいからほとんどばく露しないと言うけれども、実際はかるとこういうことが出てくるので、環境中のデータがあれば出してほしいという意見です。


  ここにありますように、措置検討会の委員からの意見は、データがあれば、データとして出してほしい。科学的に議論する場なので、心情的に言われても検討しようがないので、客観的なデータがあればちゃんと出してくださいということが結論ですけれども、こういった状況が今の措置検討会の状況となっています。


 


(スライド25)


  ここは参考ですけれども、酸化チタンの前に規制した物質を4つ程書いてありまして、それにかかった検討期間です。三酸化ニアンチモンは1年ぐらいの検討を経て規制になっているということです。具体的に製造している事業場も委員の皆さんに視察してもらったりしていますけれども、そういったことも含めて1年ぐらいかかって規制まで行っている。


  又、それぞれの物質に適用除外の分野がありまして、アンチモンの場合ですと、樹脂等により固形化された物を取り扱う業務は、粒子が出てこないので、もともと規制から外しましょうという分野があります。こういった分野が、仮に規制になっても、酸化チタンにもあり得るだろうなと予想はしています。


 


(スライド26)


  これは、仮に規制することになったときのステップです。今、健康障害防止検討会をやっているわけです。パブリックコメントと逆になっていますけれども、今日、リスクコミュニケーションをやって、普通ですと障害措置検討会をやって結論が出て、我々で特化則の原案をつくってパブリックコメントをかけて、審議会にかけて、公布・施行というのが、もし規制になった場合の標準的な流れでやっていきますということになります。


  したがいまして、皆様方が意見を出せるのは、健康障害防止措置検討会などでヒアリングの場で意見を言っていただくとか、ヒアリングでなくても、検討の場で意見をどうしても述べたいというのであれば、来ていただいて述べてもらっても構わない。措置検討会の場で意見を出すことができるのと。あとは、パブリックコメントの際に意見を出す機会が又あります。


  簡単ですけれども、以上で私の説明を終わらせていただきます。


  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)


 


○司会者 (高野) 穴井室長ありがとうございました。


  それでは、ここで20分程の休憩時間をとらせていただきます。後半の意見交換会は、予定より5分繰り上げまして、2時55分から開始する予定でございます。お手元のピンクのアンケート用紙に御質問などをお書き添えいただき、こちらの時計で2時40分ごろまでに御記入いただいて、会場におります事務局員にお渡しいただくか、事務局員が回収に参りますので、挙手にてお伝えください。


  又、御入場の際に受付票は御提示のみとお伝えさせていただいた方につきまして、大変お手数ですが、お手元にまだ受付票がございましたら、出入り口におります事務局員へ御提出をお願いいたします。


  それでは、休憩時間とさせていただきます。


 


(  休 憩  )


 


意見交換


 


○司会者 (高野) それでは、お時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。


  コーディネーターは、先程御紹介いたしました長崎大学広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いしております。


  又、パネリストに、基調講演を行っていただきました早稲田大学名誉教授の名古屋俊士先生と厚生労働省化学物質対策課化学物質評価室長の穴井達也様、又、同省化学物質評価室長補佐の平川秀樹様、日本酸化チタン工業会から奥田雅朗様、岡田瑞穂様に御出席いただいております。


  予定では、4時ごろまで、あらかじめ会場からいただきました御質問について、先生方から御回答いただきたいと思います。


  それでは、堀口先生、宜しくお願いいたします。


 


○堀口 皆さん、たくさんの御質問をありがとうございます。時間が余りないので、皆さんの御質問に沿って進めさせていただきたいと思います。おおむねリスク評価の御質問をたくさんいただいておりますので、名古屋先生のほうからたくさん補足していただくことになるかなと思っております。


  まず、一次評価値と二次評価値の関係がわかりませんでした。名古屋先生の資料に、一次評価値は1万人に1人の割合でがんが発生するであろうと推測される値、二次評価値は健康に悪影響を受けることがないであろうとある中で、一次評価値のほうが低くなることが理解できなかったというところで、一次評価値と二次評価値の関係について、先生、御説明をお願いします。


 


○名古屋 そこに書いてありますように、二次評価値というのは、労働者が毎日、当該物質にばく露した場合に、これに起因して疾病が起こることがないであろうと推測される濃度のことで、これはACGIHのTWAとか日本産業衛生学会の許容濃度として決められているものを二次評価値として使っています。


  一次評価値は、発ガン性を考慮して評価する場合に用いる評価値です。発がん性について、どのぐらいリスクがある物質なのかということで、該当する化学物質に起因して1万人に1人の割合でガンが発生するであろうと推測される濃度又は試験で得られた無毒性量から産出された値です。


  あくまでも参考値という形で、最終的に皆さんが参考にするのは二次評価値という形で、もしかしたら初期リスクではなくて、詳細リスクで有害性有りと判断され、健康障害防止措置検討会で特化物になり、管理濃度委員会で管理濃度を決める様なときには、それが管理濃度として取り扱われる濃度という形ですので、二次評価値だけ見ていただければいいかなと思います。


 


○平川 一次評価値、二次評価値につきましては、行政のほうでリスク評価検討会、リスク評価書を書くときに考え方というものをあらかじめ示しておりまして、まず一次評価値については、労働者が勤労生涯を通じて週40時間、当該物質にばく露した場合に、それ以下のばく露については、健康障害に係るリスクが低いと判断する濃度ということで示しております。


  又、二次評価値でございますけれども、リスク評価書のほうでは、労働者が勤労生涯を通じて週40時間、当該物質にばく露した場合にも、当該ばく露に起因して労働者に健康に悪影響を受けることがないであろうと推測される濃度で、これを超える場合はリスク低減措置が必要という形で示しています。これらにつきましては、原則として日本産業衛生学会の許容濃度、又はACGIHのばく露限界値を採用しているということになります。


  管理濃度、基本的には同じような考え方になっておりますけれども、これにつきましては、管理濃度等検討会で別途議論の上、この二次評価値にならなかった例もあるやに承知しております。例えば、リフラクトーセラミックファイバーについては、今回、ここで二次評価値でない数字が指定されるということでございます。


 


○堀口 あと、資料で、メタクリル酸の評価ばく露に関して、46ページでは0.608が最大になっていますけれども、47ページでは0.24となっているのですけれどもという。


 


○名古屋 多分、資料のほうが間違っていまして、0.68と直さなければいけない。申しわけありません。これは多分間違っていると思います。


 


○堀口 では、御指摘ありがとうございました。


  それから、別紙ですけれども、バイオアッセイ研究センターでの長期発がん性試験で、なぜ未処理の酸化チタンなのでしょうか。処理した発がん試験の計画はないのでしょうか。


 


○穴井 現在のところ、表面処理された長期発がん試験の計画はありませんが、将来的にはあり得ます。なぜ表面処理しているものができないかといいますと、その研究所の能力的に1年に1物質しかできないので、並行してやろうと思ってもできない実態にあります。


 


○堀口 という事情もありつつですけれども、そのバイオアッセイ研究センターの試験について御意見とかをいただいているので、読み上げますが、試験の内容について、どのような条件で、特に吸引摂取させる量について試験を実施しているのか、定量的な情報が欲しかったですという御意見と。


  バイオアッセイ研究センターの長期発がん試験について、ラットとマウスに週5日、1日6時間、2年間吸入の実験スキームの妥当性は? 人間の吸入にそのまま当てはまるのでしょうか。人間にすれば、どの程度吸入したことになるのでしょうかという御質問です。


 


○平川 今、お話のありました試験の条件設定についてということでございますけれども、OECDのテストガイドライン等で定められている試験手法に基づきまして行っております。濃度設定につきましても、2年間投与して、動物がその期間生き続けられる濃度というものを設定して、現在、試験をしていると承知しております。


 


○堀口 OECDのテストガイドラインは、特に労働安全衛生法以外の、例えば食品のリスク評価などについても、それに沿ってやっているところでございます。


  平成29年度リスク評価の結果についてのばく露評価結果で、経皮吸収の勧告なしとあったが、勧告を行う基準はあるのでしょうか。その根拠とともに教えていただければと思います。


 


○穴井 これは、我々が勧告ありとしているのは、ACGIHか日本産衛学会かどちらかで勧告ありとしたものをありとしているのですが、いずれの機関につきましても独自で設定した理由というものを毎回出しています。そこで、どういった理由から経皮吸収のマークをつけるかという理由がちゃんと書いてありますので、それが確からしいと我々も判断しているということです。


 


○堀口 酸化チタンに関しては、吸入による発がん性が挙げられていますけれども、世界的に見て、ラットなどによる反復経口毒性試験の結果から、ヒトに対するどのような有害性の可能性があるか教えてください。特定標的臓器も含めと書いてあります。


 


○穴井 酸化チタンについては、最終的には肺がんになったというデータが出たということです。


 


○堀口 リスク評価について、ナノ粒子とそれ以外の粒子の区別がつけられないのに、ナノ粒子とそれ以外の粒子で、それぞれリスク評価できるのはなぜでしょうか。


 


○平川 これにつきましては、ナノ粒子を取り扱っていると報告を受けたところについては、ナノ粒子を取り扱っている事業場ということで現場の調査に行っています。ナノ粒子以外についても同様です。


 


○堀口 アナターゼ型の発がん試験の実施は、IARCがルチル型での報告をしているからですか。又、表面処理の有無については、ナノ及びナノ以外でデータ評価はされているのでしょうか。発がん性の評価はされているのでしょうかという御質問です。


 


○穴井 IARCのデータにしても、表面処理あり、なしとか、アナターゼ型、ルチル型ごとの結果として出しているわけではありません。


 


○堀口 はい。


 


○奥田 関連いたしまして、IARCが酸化チタンを発がん区分2Bとしておりますのは、ルチル型のナノ以外の酸化チタンの未処理。それと、ルチルとアナターゼの混晶であるP25を用いた試験をした結果、非常に高濃度のばく露、250 mg/m3の2年間のばく露で発がん、細胞がんがあったということから2Bになっております。


  バイオアッセイのほうでやっていらっしゃるのは、250 mgのばく露量が本当に高いか、適切かどうかという問題もありますけれども、日本でナノに関するデータが少ないという中で、とっておく必要がある。一番有害性が高いのではないかというナノ以外よりもナノ、ナノでもルチルよりアナターゼ。ですから、一番有害性が高いのではないかというところを選んでやっていると承知しております。


 


○堀口 あと、名古屋先生の講演のパワーポイントで、産業衛生学会やACGIHの経皮に関する勧告がないものは、検討した結果、問題がないものと、検討していないものの2種類があるのではないでしょうか。このうち、検討していないもので勧告なしの品目については、勧告なしだから検討を打ち切るという考え方に疑問があります。潜在リスクが残ります。よって、検討していないものについては、検討会で経皮有害性試験の実施を含めて判断すべきではないでしょうか。


 


○平川 これまでのリスク評価につきましては、経気道ばく露による健康障害の観点から行っておりました。


  平成27年に膀胱がん事案が発生しました。この原因として、オルト-トルイジンの経皮吸収の蓋然性が高いということでございましたので、経皮吸収による健康障害を防止するための対策を今後やっていきたいという趣旨でございます。


  確かに、勧告がされていないものに関し、検討した結果、問題がないものと、検討していないものがあるとの御指摘は理解いたしますが、我々としても出ている情報を踏まえて、その前提のもとに経皮吸収についても留意して対策を講じる必要があると考えております。


 


○堀口 水分散された酸化チタンが乾燥された場合のリスク評価について、又は乾燥工程と書いてありますが、どの程度議論が進んでいるのかを知りたい。


  アナターゼ型酸化チタンから発生するラジカルについては、リスク評価される予定はあるのでしょうか。


 


○穴井 乾いた場合の議論というのは、これから措置検討会の場で、そういった場合については措置する必要があるのか、ないのかという議論を当然やっていくことになろうかと思います。


  リスク評価自体は一応終わっているので、もう一回やるということは考えていませんが、ラジカルについてはどういうふうな措置をとる必要があるのか、ないかという議論は当然あるかと思います。


 


○堀口 もうちょっと大きな話になっているのですけれども、新規届け出のとき、どの程度リスク評価を行うのでしょうか。二次評価後では、労働者に対して手おくれになる物質も出てくるのではないでしょうか。酸化チタンのIARCのデータは、妥当なのでしょうか。どれだけ内容を調査・検討したのでしょうか。バイオアッセイの結果が出てからでも遅くないのではないでしょうかという御意見です。


  名古屋先生、いかがですか。


 


○名古屋 ちょっと言われていることがわからないですけれども、今、私たちがそうした情報として頼れるところはACGIHのTWAの値と日本産業衛生学会の許容濃度が一番ですから、そこの提案理由書には、どういう理由でこういう濃度にしたのかを動物実験をした時の濃度や、疫学調査を実施して得られた時の濃度の詳細が記入されていて、最終的にこうした濃度になりましたと記載されているので、そこが一番信頼性があるので、それを使うと思います。


  あと、バイオアッセイの結果が出てきたときに、例えばインジウムのときのように、インジウムはもともと濃度が0.1だったのですが、ACGIHのTWAの値が0.01だったので、二次評価値の値を0.01にしようと言っていたのですけれども、リスク評価の過程でバイオアッセイの長期発がん性試験結果の報告があり、その報告の値が確か0.0003 mgでした。かなり厳しい値が出てきたので、それをリスク評価の委員会では、二次評価値に決めましょうということがあったのですけれども、もしかして検討の途中でバイオアッセイの研究が出てきて、その値が今、私たちが考えている濃度の低いところになったときには、再度検討会を開くのではないかと思います。これは私の意見ですよ。そうした濃度に関する情報が出てこないと何とも言えません。


  現時点で最も頼れるのは、ACGIHと許容濃度委員会から出てくる、きちんとした濃度に関する提案理由報告書に基づいて委員の先生方が議論して決められているということです。それしか言えません。


 


○奥田 ちょっとコメントですけれども、IARCのばく露濃度、10、50、250 mg/m3のばく露濃度でラットが2年間ばく露されて、250 mg/m3でばく露されたラットにだけ細胞がんが出たということ。50 mg/m3以下は出ておりません。ですから、その妥当性の検証というのは、今回のリスク評価のスキームの中では、私の知っている限りではやっていなかったかと思います。あくまでもIARCが2Bで発がんの疑いがあると。


  このバイオアッセイで今やっている濃度は、これはよくわかりませんけれども、動物が2年間やっても死なない程度の適切な濃度でやっているはずですし、産業界としては、バイオアッセイの結果も反映して結論を出してほしいと。バイオアッセイは、2年間始まる前にばく露濃度を決めるために予備試験を当然やっています。それらも色々な学会などで発表されていると思いますので、その辺も注視しております。


 


○堀口 ありがとうございます。


  酸化チタンについて、IARCの分類のもとになった動物の発がん性は、コーティングされていない酸化チタンでのみ影響されていると思うが、防止措置の対象としてコーティングの有無は考慮しないのでしょうか。


 


○穴井 先程、説明したつもりだったのですが、コーティングしている酸化チタンの動物実験データがない状態です。コーティングしていないデータはあるということなので、今後、その措置検討の場で、コーティングしている酸化チタンはどういう措置をとるべきなのか、とらないべきなのか。とるとしたら、どういうことをするべきなのかということが、今後、話し合われるということです。


 


○奥田 コーティングのあり、なしの議論がこれから進みます。日本酸化チタン工業会は、第1回目のヒアリングを受けました。そのときに、従来のアンチモンとかRCFと違いまして、表面処理しているものを扱うのは初めてなのです。ですから、酸化チタンは、ここに書いてあるように非常にバリエーションがたくさんあるという、理解促進のためにヒアリングを1回追加していただいています。ですから、1回目は理解促進をさせていただいたと。


  アンチモンはアンチモンで、1対1に対応するけれども、酸化チタンは酸化チタンというだけで1対1に対応しません。リスクのハザードが高かったIARCの2Bは、未処理酸化チタンです。第1回目のヒアリングで、私ども、実際のばく露評価をした対象物は、コーティングがあったのか、無かったのかという調査の宿題を受けておりますので、2回目以降のところで実際の対象物は何だったかというところも明らかにした上での今後の議論を進めていっていただきたいと思っております。


 


○岡田 一般的に表面処理ということで、今、お話させていただいておりますけれども、実際の表面処理というのは、酸化チタンの表面に珪素とかアルミニウムといったものの水酸化物を表面にコーティングする。場合によっては、一部有機物も使っている。そういったコーティングをしているものを、これは製造の過程で中和反応により析出させるのですが、そういったもので酸化チタンの表面が覆われている。それが表面処理というコーティングということで御理解いただきたいと思います。


 


○堀口 ありがとうございます。


  酸化チタンは、種類によって粒径が大きく異なりますが、粒径サイズによるリスク評価はどのように考えればよいのでしょうか。最近、酸化チタンにナノ銀を担持したハイブリッド光触媒が使われていると聞きますが、ナノ銀単位の毒性リスクと酸化チタンと組み合わせたときの毒性リスクは、どのように評価したらよいのでしょうか。


 


○名古屋 多分、今年からカーボンブラックとナノ銀についてはリスク評価が始まりますので、今後のことはまだ考えていません。酸化チタン以外としては、カーボンブラックとナノ銀とフラーレンというものをリスク評価しましょうという形になっています。もともとナノカーボンチューブから始まったリスク評価ですが、ナノカーボンチューブは、先程言いましたように、年間500 kgは使っておりませんので、リスク評価はしない。ただ、発がん物質ですから、各自のところで測定してリスク評価しなさいという形です。


  それから、大きいものと小さいものが分けられるかということですが、先程お話がありましたように、原材料としてナノ粒子を扱っているものは当然ナノ粒子として扱います。それから、ナノ以外で扱っているものはナノ以外で扱う事になっています。ただ、ナノ粒子とナノ以外の粒子が混合して使っている現場があるときにどうするか、これから議論が始まるのですけれども、私どもでは私たちはたまたまナノ域を測定できる相対濃度計とそうでない相対濃度計の2種の相対濃度計をメーカーと共同で開発していまして、そろそろナノを測定対象とする相対測定器が市販されます。


  そうすると、その2種類の相対濃度計を持ってナノの現場に行ったときに、ナノとナノでないもののどれぐらいの比があるのか。従来の研究ですと、ナノ域を測定できる相対濃度計とそうでない相対濃度計の測定値の比か2.5倍以上の場合は、ナノの現場として評価したらどうでしょうか。それより低かったら、それはナノ以外のものを扱っている現場として評価したらどうでしょうかという形になります。それは、測定器ができてきて、現場に行ってみて、初めて分けられるのですけれども、そうでないときには、ナノとナノでないものを混合したときにどう評価するかは、これから議論することだと思っています。よろしいでしょうか。


 


○堀口 化粧品やトナーの製造時にはかる作業などは、ばく露が低いとの評価でよいのでしょうか。コーティングされた酸化チタンの毒性は低いと言ってよいのでしょうか。吸入後もコーティングは剥がれないのでしょうか。


 


○穴井 データとしては、ナノの酸化チタンの充填・袋詰めのところにリスクが高いということが出ていることは事実なので、少なくともコーティングしていない酸化チタンの充填・袋詰めについては、かなり怪しいというか、リスクが高いのではないかと今のところ考えられているのではないかと思います。最終結論ではありませんけれども、そういう意見が強いということはたしかだと思います。


  問題は、コーティングしているものを計量したりするときはどうなるかというのは、今後の議論だと思いますし、コーティングが剥がれるかどうかというのは、今、酸化チタン工業会さんのほうでデータをとっている最中だとお聞きしています。


 


○堀口 ブース内を塗装器が吹きつけをする作業では、ばく露リスクが少ないと考えますが、規制の対象になりますかという規制の話になっていますが、ばく露量が少ないと考えますがというところです。


 


○平川 ブース内の作業というのは、局所排気装置等のばく露防止対策がそもそも講じられているところでの作業と理解しております。特定化学物質における健康障害防止対策においては、ブースを設けるといった発散抑制対策を講じるよう指導をしてきているところです。ですので、そういった対策をしたら適用除外になるということではなくて、そういった対策を講じていただくというのが、特定化学物質障害予防規則の基本的な考え方でございます。


  適用除外ということで、先程穴井室長から説明がありましたような、どういった業務を対象にするか、どういった形状のものを対象にするかというものを、今、適用除外という形で設けておりますので、どういった形で今後、酸化チタン適用除外を設けていくかというのは、まさにヒアリング等を行っていって、業務、どういった形状のものということを今、検討しているところでございます。


 


○堀口 ナノ粒子と判定する粒子径のしきい値について、数値は幾らが想定されているのでしょうか。前提となっている測定法について教えてくださいということです。


 


○平川 平成21年のナノマテリアルの通達で示されているナノの考え方としては、大きさを示す3次元のうち少なくとも一つの次元が約 1 nm~100 nmであるものと言われております。


 


○堀口 液相合成などで粉体状態を経由しない製造の場合は、全てスラリー状態での取り扱いの場合はどうなるのでしょうか。さまざまな取り扱い形態がありますが、それを適用除外というやり方で網羅できるのでしょうか。


 


○平川 このスラリー化の考え方につきましては、前回、三酸化二アンチモンの際に、湿潤化された状態の取り扱いということで、スラリー化した場合については、局所排気装置を設けなくてよいという考え方を新たに取り入れたところでございます。


 


○堀口 それから、酸化チタンを評価する際に、世界の標準でナノ、ナノ以外の分類しかないと話がありましたが、今回は多用途の酸化チタンだから、このように詳細評価になっていると思われます。他の化学物質も複合材料、表面処理などで評価の実態を正確に評価できないものがある可能性はないのでしょうか。


 


○穴井 先程奥田さんがおっしゃった通り、表面処理をされている粒子を取り扱うのは、これが初めてのケースです。ですので、これが前例となって、後の物質に影響を与える可能性は十分あると思っています。複合されたものとか、どうしていくのかというのは、今後の検討課題なのかなと思います。


 


○堀口 それから、酸化チタンの経皮吸収、経口摂取によるリスクは全くないと言えるのですか。


 


○穴井 酸化チタンの経口の実験については、害があるというデータは、今のところ我々は承知していません。医薬品とか食品については、我々が所管している法律とは別の法律できちんと試験されて安全性が確認されているはずですので、経口から摂取する分については安全であると国は考えています。


 


○堀口 現状では、製造現場で印刷や塗装を行う場合は、酸化チタンのばく露が十分考えられるとの見込みでしょうか。事務所などで複写機を使用する際には、酸化チタンばく露の対策は不要となる見込みと考えてよいのでしょうか。


 


○穴井 今のところ、団体ヒアリングした時点ですが、団体がおっしゃるには、その団体を含めてばく露の試験をしたところ、いわゆる基準値以下の極めて微量しか出てこないので安全ではないかというデータをいただいていますので、その結果をもとに今後議論していくことになると思っています。


 


○堀口 酸化チタンの特化則規制について、規制対象候補として発がん性評価、IARC、2Bのみで措置検討会にヒアリング聴取した各団体からの意見に対する、その根拠となるデータをもとに検討するとのことであるが、検討会独自の調査は今後、行う予定がありますか。


 


○穴井 検討会というか、検討会の前のリスク評価の場面で検討したということで、その結論を受けて、今、措置検討会を開いているということですので、措置検討会として何かをやるということは、今のところはありません。


 


○堀口 化学工業団体からのヒアリングの要望はないのでしょうか。コンデンサーなどの原料として、酸化チタンの使用量が多くなる企業もあると思うのですが。


 


○穴井 今のところは、スライドでお示しした団体しかヒアリング希望は出ておりません。


 


○堀口 ちょっと休憩して、別の質問に行っていいですか。浮遊性粒子のオーバーロードと思える結果を二次評価値とするのはどう考えるのですか。酸化チタンの特徴なのでしょうか。


 


○穴井 ナノの酸化チタンの二次評価値は、たしか日本産衛学会のデータをとっていたと思いますが、産衛学会はオーバーロードのデータは採用せずに、もっと短い期間の動物実験から推定したデータをもとに二次評価値を勧告していて、それを我々は採用したということです。


 


○堀口 表面処理あるいは樹脂などでコーティングされた酸化チタンの評価は、具体的にどのように行われますか。コーティングされた酸化チタンの発がん性データは少ないと思います。


 


○穴井 コーティングされているもののデータがないので、これからそういう粒子についてはどういうふうに考えていくべきなのかということを検討していただくということになろうかと思います。


 


○堀口 ヒアリングを受けて理解いただいたと思いますが、コーティングされた酸化チタンの有害性評価が一番先決ではないでしょうか。コーティングが脱落するケースや完全コーティングされているか否かは、二の次であると思います。専門委員の方から、コーティングされた酸化チタンの有害性に対する言及が少ないのはなぜなのでしょうか。


 


○穴井 今のところの考え方は、データがあるのは非処理酸化チタンであるので、コーティングされているものが外れないかどうかというのが、データがあるところに持っていくためには、そこが一番議論になるところだと思いますので、我々は今そこをやっているということです。委員の皆さんがどう考えているかは、私にはちょっとわかりません。


 


○堀口 風評被害の件が幾つかありました。風評被害の件、化学物質リテラシーの言及がありましたが、その通りで、現状としては、化学教育体制について文科省に働きかけるべきだが、いかがでしょうか。特に、リスクアセスメントを自主的に行えとするならば、なおさらのことという御意見。私が回答してもいいですか。


  済みません、風評被害というか、リスクコミュニケーションをやっているので。普通に本が売っていると思いますけれども、関谷直也先生という方が風評被害について一般書をまとめられております。それで、風評被害というのは、最初、その問題に関連する人たちが、こういうことが起こるのではないかということを想像することによって、まず発生するということを言われています。


  今日、IARCの2Bというお話がありましたが、例えば2年前には加工肉でがんになりますという報道があったりしましたが、それに関して、2年間ずっとそれを言われ続けるようなことも現状ではなくなってきているということからすると、今日、ここにお集まりの皆様は、その酸化チタンを扱っている業界の方々なので、自分事として、多分、頭の100%がその話になっていると思いますけれども、そうでない人たちは、いつ、この情報を手に入れるかということが最初のポイントになると思います。


  なので、変に皆さんのほうから風評被害が出ると言っていることが風評被害につながってしまうので、その言葉を使わないように、懸念していることを厚生労働省などに伝えることはとても重要なことですけれども、自分たちのほうからその言葉を使って風評被害を発生させないことも必要かと思います。


  文部科学省に関しては、色々な省庁がそれぞれ申し入れをしていると思います。工業会とか団体さんとして文科省に行かれることも、もちろんそれは積極的な行動であろうかと思います。私が経験している一つの成功事例は、団体さんとお役所さんが一緒になって文部科学省に行かれたものがありまして、それに関しては、副読本や教科書で結構取り入れられていたりします。


  なので、実際にその措置や規制がされるときは、されてしまう側とする側かもしれませんけれども、おっしゃる通り、化学物質に対するリテラシーを上げたいという気持ちはみんな一緒だと思いますので、どうぞそのときには措置をする側とされる側と一緒になって、文部科学省のほうをお訪ねするようにしていただければ、他の業界についても、それが又一歩の踏み出しになるかなと思いますので、ぜひ宜しくお願いいたします。


 


○奥田 丁寧な解説ありがとうございました。


  特に私ども、一番懸念していますのは、特化則で例えば酸化チタンが指定されるとなると、特定化学物質の第2類特別管理物質と、先程も出ていましたけれども、では、特定化学物質とは何なのかというのをヤフーなどで検索したら、ウィキペディアに出てきます。少量のばく露でがんを誘発する物質となっています。ですから、一番懸念していますのは、酸化チタンががんを誘発する物質なのだということを一般消費者なりマスコミが、そのように理解してしまうのが困ります。


  先程、医薬品・食品は別なところで所管していますからという話ですけれども、酸化チタンという物質自体が少量のばく露で発がんしますと。では、それが医薬品・食品に配合されて食べて大丈夫か。


  ですから、一番心配するのは、その物質が指定するに値するのかどうなのかということです。そのリスクが高いからということですが、今日何度もフロアから御質問がありますけれども、オーバーロードのラットのデータの信憑性はどうなのか。又、ばく露測定の実態に関しては、1回目のヒアリングの宿題で、本当にばく露測定したものの中身がコーティングしたものか、していないものかというところを今、調査しております。ですから、そういうところも含めて、これからの措置検討会の中で色々御議論いただきたいと思っております。


 


○岡田 風評とか、今、奥田のほうから話がありましたけれども、私ども、酸化チタンを一番つくっているところですから、製作者側からそういうことを発信しても、ちょっと理解が得にくいところもございます。確かに、IARCの分類というのは、同量を比較して発がん性の強さというよりも、根拠の強さで決まっているものです。ですから、喫煙は明らかに喫煙者のほうが肺がんの発生率が高いからとか、そういうことで1という分類です。ただ、たばこを吸った人が全部がんになって死ぬわけでも当然ないと。肉の話も、ハム、ソーセージもそうだと思います。ですから、その辺は各業界団体が一致協力して啓蒙していくしかないかなと思っています。


 


○堀口 ありがとうございます。


  リスクアセスメントのところだと思うのですけれども、御丁寧に1枚いただいております。酸化チタンについて、ばく露量が多い上位8つのデータは全て粉体塗装作業であった。特に、粉体塗装でばく露量が多いのは、2人作業した作業場に限定していると思われます。このケースは、一般的ではなく、レアのケースと認識しています。通常の粉体塗装をしているラインと異なるため、特殊のケースと考えてよいでしょうか。


  平成22、23年度実施したばく露測定結果、4人中、二次評価値1 mg/m3を超えたのは3名であった。残り1名は、局所排気が有効に作用し、個人ばく露量が少なかったと報告されています。ブースの形式、局所排気の位置、作業形態によっても、個人ばく露量が異なると考えます。補助的な粉体塗料の補充、塗装作業の作業者のばく露量が少なくなっています。平成27年度実施ばく露測定結果において、一般的な粉体塗装でのばく露量が少ないことが報告されているのですけれども、というところです。


  2人作業している作業場は、全て同じ作業場で、塗装ブースの局所排気設備が故障し、換気が不十分のデータも含まれています。ブース設備入れかえで作業環境が改善していると考えていますが、同じ作業場のデータをとっているのはどうしてでしょうか。N事業所とQ事業所は同じ会社であり、平成23年度に使用していた粉体ブースの局所ファンの調子が悪かった。平成25年に局所排気装置を交換した。今までの下方吸引から横型の吸引の外づけに変更しました。その結果、個人ばく露量が約3分の1に減少しました。2日連続での作業のため、作業のなれもあり、個人ばく露量が0.4 μg/m3以下まで大幅に減少しています。


  2人作業でも、作業する位置、風下に立たない、塗装のかけ合いをしない箇所などや、排気風速、排気装置増設などの検討で、さらに個人ばく露を減らすことは可能と考えます。もう一度、ばく露測定していただくことは可能でしょうか。粉体塗装ブース内は、狭い。粉じん測定等の作業環境測定ができません。作業環境測定困難な場合、今後、個人ばく露測定の予定でしょうか。


 


○名古屋 今のところ、多分測定させていただいたところの人の話ではないかと思います。ただ、塗装といっても、それぞれの会社で塗装の仕方が違うので、そこだけが特異的に低かったら、他はいいかということにはならないと思います。そうした現場で測定を行ってみると、塗装作業のところでは対策をしたら低くなる可能性はあるけれども、他のの作業場は違うかもしれないという形になると、塗装作業という形で規制をかけていかないとだめでしょう。要するに、日本にある全ての塗装作業のところを見ているわけではありませんから、そこの中でイレギュラーしてばく露の高い人が出てくるといけないので、塗装作業というもので規制をかけるしかなくなってくるのかなと思います。


  逆に、規制物質に関して、ご自宅で塗装がかかってしまったときに、こうした対策を取ることによって、良い成果が得られたと言う事例があればどう対策されるか。そういうことを応用していって、ばく露しないような自主的な対策を取るときのがとれるという参考になるかと思います。そうした良い事例があるからといって、塗装作業を外すことができるかというと、それは多分できないと私は思っています。


 


○堀口 ありがとうございます。


  データがないため、判断がつかないような場合は、懸念ありとして規制を行う方針なのでしょうか。


 


○穴井 それは、データ次第だと思います。データがあるのだけれども、そこはペンディングにしたほうがいいという判断をする場合もありますし、ないので、やめたほうがいいという話もありますし、ないけれども、安全性を見込んでやりましょうという判断をされるときもありますので、そこは今あるデータと各委員さんの今までの経験とか、他の物質の経験とかも組み合わせた判断の議論の上で、どういう方向になるかということは決まっていくのではなかろうかと思います。


 


○堀口 リスク評価は、データがないからこうします、あるからこうしますと簡単に決めているわけではなく、検討会の専門の先生方の御議論を踏まえて、どのようにデータを扱うかというところから議論し、決めているというところで、名古屋先生、それでよろしいですかね。はい。


  あと、提出されたデータは国で検証されるのでしょうかという御質問があるのですけれどもね。


 


○穴井 検証というのは、もう一回同じところを国ではかるのかとか、あるいは同じ実験をするのかという意味ですかね。多分、我々が現実問題としてやれるのは、その実験をどういう条件でやった、どういう手法を使ってやったかというのをきちんとお聞きして、それが科学的な方法にちゃんとのっとって、信頼性があるかどうかということを専門家の方々に判断していただいて、そのデータは信頼性に足るから採用しましょう、あるいは採用しませんということが議論されることになると考えています。


 


○堀口 リスクアセスメントの手順についてということで、ライフサイクルの話も幾つか質問が来ているのですけれども、安衛法における化学物質のリスクアセスメントについては、有害物ばく露作業報告で、現時点においての使用に基づいて事業者からの報告を求めるため、例えば平成30年報告物質の硝酸のように、過去にアクリル繊維の紡糸溶媒として多量に使用され、硝酸ミストや複製物として精製した酸化窒素にばく露した労働者が多数いるような場合でも、現時点で使用をやめていればばく露実態調査の対象にならず、リスク評価の際に考慮されることはないと思います。


  このように、過去の労働者ばく露や該当者の健康障害の有無を事業者側がある程度把握していると思われるようなケースでは、過去の使用についても調査することはできないでしょうか。


  あと、化学物質をそのライフサイクルを通じて管理していくのであれば、各ステージにおいて、おのおの異なる法令・基準等で化学物質を規制するのではなく、包括的に、例えばEU REACHのような法令を検討すべきではないでしょうかというお話が出ているのですけれども、それについて名古屋先生、何かコメントありますか。個人のコメントで結構です。


 


○名古屋 いや、これは、多分私たちではなくて行政の判断だと思いますので。


 


○平川 有害物ばく露作業報告につきましては、前年に告示で指定された物質について、その翌年の1月から12月に、年間500 kg製造・輸入されている事業場から、その翌年1月から3月の間に報告いただくことになっています。したがいまして、直近のばく露に関する状況を調査し、そこで大量のばく露をしている可能性があるところに対して、ばく露実態調査を行っているところです。有害物ばく露作業報告を提出していないところであっても、リスク評価検討会の中で、さらにリスクが高いと思われる別の作業等があれば、有害物ばく露作業報告の提出の有無にかかわらず、調査に赴くというのは、可能性としてございます。


 


  次の御質問は、化学関係の法律を包括的にできないかという御質問であったかと思いますけれども、現時点では、それぞれ対象とする領域が違うところについては、それぞれの法律や所管事務の範囲内で対応方をしているということで御理解いただければと思います。


 


○堀口 化学物質対策の方向性の中で、平成18年度以降はリスクベースと説明されていますが、酸化チタンは0.3 mg/m3、これは単位の話ですけれども、という単位であり、ばく露が考慮されていないのはなぜでしょうか。BODの単位としては、mg/kg/dayとなるべきと考えますが、という単位についての御質問です。


 


○穴井 我々、ACGIHか日本産業衛生学会の許容濃度を採用しているわけですけれども、そこの数値が1 m3当たり、ナノですと0.3 mgということで、働いている環境がこの濃度と比べて高いのか低いのかということでリスク評価をやっているという仕組みなのです。


 


○A氏 日本化粧品工業連合会の畑尾と申します。私が質問したかったことは、今の濃度だけだと、例えばその作業を1日中、先程のお話ですと8時間ずっと続けて、週40時間の作業をされたときにばく露があるということで検討されていると思うのですけれども、例えば0.3 mg/m3ではなくて、それの30倍の10 mg/m3でも、1日作業は5分しかやらない場合というのは、実質的には96分の1にしなければならないということになるので、実際には3分の1以下のばく露にしかならないのですね。


  そういうものを作業工程として規制をかけることになってしまうと、その人が本当にばく露された量を考慮されないで、濃度だけで規制がかかってしまうと、残り7時間55分扱っていないところでも、その工程が入っているだけで、全てその作業場が規制されてしまうというのは、余り適切ではないように感じたので、そのばく露ということでお話しました。


 


○堀口 なので、加えて吸入毒性のリスクアセスメントの考え方をお聞かせくださいということです。


 


○平川 化学物質の健康障害防止対策については、基本的には作業環境管理というものを第一にしておりますので、特定化学物質に指定されているような粉じん等の発散について、場の管理としての良否を判断するための基準として管理濃度という数字を定めております。


 


○A氏 要するに、リスク評価になっていないということですね。先程の説明だとリスク評価ということだったのですけれども、リスク評価という場合は、ある特定の工程の条件だけではなくて、全体としてのばく露を考えないといけないと思います。


 


○平川 リスク評価における二次評価値と、管理濃度は、数字の根拠となる情報源としてはほぼ同じなのですけれども、リスク評価においては、個人が一定の長時間に二次評価値相当の粉じん量を吸うか吸わないかということで、評価をしているところです。


 


○A氏 規制をかけるときには、リスク評価ということを平成18年からやっていらっしゃるということなので、ぜひリスク評価を基準にしてやっていただければと思います。


  宜しくお願いします。


 


○堀口 名古屋先生、何かありますか。


 


○名古屋 今回のリスク評価というのは、あくまでも8時間働いているときにどのぐらいばく露していますかということで、短い時間ははかっていないのです。それに規制がかかった場合で、作業環境管理のための作業環境測定になってくると、B測定という測定により、短時間ばく露を評価するという形も入ってきますので、実際に起こるときは大丈夫だと思う。ただ、今回の場合の評価というのは、8時間でどのぐらいばく露しているかということを基本に評価しましょうという形になっていますから、短時間は申し訳ありませんけれども、評価していないということです。


  ただ、実際になってくると、短時間を評価する方法はありますので、それは心配しなくても大丈夫だと思います。


 


○堀口 宜しいですか。他の物質のときも同じような御質問があったかと思います。濃度が非常に高いのだけれども、その作業は1日で5分しかないという、別の物質でも同じ質問が出ていたかと思います。


  あと、一度対象物質となった後に対象外となることはありますかという御質問です。


 


○穴井 それは、今まではありませんし、余程科学的知見をひっくり返すような新事実があらわれない限りは、恐らくないと思います。


 


○堀口 あと、スケジュールを聞いているものがありまして、酸化チタンのこれまでの措置検討会の議論を踏まえて、いつごろまでに結論を出される見込みでしょうか。


 


○穴井 これから論点整理を、先程から色々問題点が出されていると思いますけれども、その点をピックアップして主に議論していくと思います。それがどのぐらいかかるかという話なのですが、これは想像がつかない。来年度のどこまでかかるかというのは、我々は判断がつかないです。データがない部分も含めて、どういうふうな判断をしていくのかというのは、議論してみないと、どのぐらいかかるのかというのはわからない状況です。


 


○堀口 なので、特にいつまでと決めているわけではなくということですね。


 


○穴井 こちらでデッドラインを決めて、ここまでに必ず結論を出すとしてやっているわけではありません。


 


○堀口 はい。


 


○奥田 済みません。今回、第1回のヒアリングでも色々御指摘あった、表面処理のあり、なしも含めて、先程、一度、特化則で特定化学物質と指定されると取り消せないのかというのは、余程のことがないと取り消せませんと。ですから、酸化チタンを特化則に指定するのがいいのかどうなのかということは、酸化チタン工業会も必要なデータがあれば喜んで提供いたしますので、慎重にお願いしたいと思います。


 


○堀口 それから、穴井室長から、ECHAの酸化チタンの情報、カテゴリー2をお話されましたが、日本で規制を考える場合、海外の規制情報はどの程度参考にするのでしょうか。


 


○穴井 規制しているか、していないかというのは、当然参考にします。それから、どのレベルで、どういう濃度で規制しているとか、そういうことは当然参考にさせてもらいますし、そういうデータが先進国で多ければ多い程、参考になるということだと思っています。


 


○奥田 室長の御説明の中で、欧州で酸化チタンの発がん分類区分が2に答申されたという話がございましたけれども、これはまだ途中経過でございます。最終決定までにはステップが3つあります。今回は第2ステップのリスク評価委員会が区分2の吸入で発がんの懸念があるということにしております。次、欧州の場合、欧州委員会が最終判断しますから、まだ最終決定ではございません。というところを1つ、コメントとさせていただきます。


 


○名古屋 あと、先程ありましたように、欧州とかのデータを参考にしないのかという話。管理濃度委員会では、従来、平成26年までは、どちらかというと許容濃度とACGIHの値のどちらかの値を管理濃度として採用しなさいと決めていたのですけれども、26年からは新しい情報も加味して、管理濃度を決定するという形になりました。リフラクトリーセラミックスは、もともと二次評価値の0.2ファイバーが管理濃度として決められていたのですけれども、ドイツ、ヨーロッパの情報を入手して見ると、0.5とか0.3という濃度を用いている事例がありました。


  そこで、生態影響などの情報が掲載されているデータを全部医学系の先生方に読んでいただいたら、0.2のデータよりも0.3のデータのほうが新しくて、きちんとしているという検討結果だったので、二次評価値である0.2を管理濃度として決めていたのですけれども、ドイツのデータが一番最新で、且つ正しい値だということで、管理濃度を0.3と決めましたので、決してよそを蔑ろにしているわけではなくて、データの整合性と新しい情報と、その出てきている情報がちゃんとしているかどうかを判断して、今は、管理濃度を決めるという形に新しく変わっておりますということをつけ加えておきます。


 


○堀口 リスク評価対象物質の選考基準がございましたら教えてほしいとあるのですけれども、資料になかったですか。ありましたね。三角形の。


 


○名古屋 従来ですと、先程から言いましたように、発がん物質1から始まって、2Bという形でしたけれども、最終的にその辺が終わっておりますので、最近は49ページにありますが、初期のときには発がん性物質という形で、その中の1から2Bという形になります。リフラクトリーが一番最後かなと思っていましたけれども、他にありましたけれども、その他に発がん性とか生殖毒性、神経毒という形のものを入れております。それから、24年にはナノが出てきまして、そういう形で発がん性ばかりではなくて、生殖毒性とか神経毒という形もだんだん入ってくる。


  これは企画検討会でやっております。オープンですので、どういうものが議論されているかなというのは、今年はどのようにして3物質が決まったか、来年はどうするかがわかりますので、ぜひ企画検討会にも皆さん参加されて聞いていただけると、将来どういうものが規制されるかがわかると思います。ぜひ参加していただければありがたいと思っております。


 


○堀口 今回のような粉体状態に限定した規制対象物質に関しては、樹脂などでコーティングされ、拡散のおそれのない状態の製品となった場合、SDSへの記載は必要ないと考えてよいでしょうか。


 


○平川 今のSDSに関する質問につきましては、2月2日に第2回のリスクコミュニケーションを行う予定でございます。大阪は2月16日、SDSについて意見交換を行う予定にしておりますので、できればそちらのほうでというところでございます。



 


○堀口 ということなので、皆さん、参加して情報を仕入れていただければと思います。


  たくさん御意見と御質問をいただいて、大分読み上がっていて、先生方のお答えの中にその答えがあるのではないかと想像できたりして整理しているのですけれども、残りの時間が20分ちょっとあるので、どうしても言っておきたい、又はこの質問が読まれていない、今までの情報を仕入れた上で、新たな質問がありますという方がおられましたら、挙手をしていただいて、当てますので、特に所属など言っていただかなくて結構ですので、御質問いただければと思います。


  何々について入りますか、入りませんかという御質問に関しては、まだ議論中ということだったので、特に取り上げておりません。ということで、全体的なお話でも結構なので、御質問がある方、手を挙げていただければと思います。


  どうぞ。


 


○B氏 バイオアッセイの話がありましたけれども、時間も設備の能力もあって、一品種しか今、できないという御説明がありました。では、この後、表面処理したものをかけるという計画があるのか、ないのか、そのあたりをお聞きしたいと思います。


 


○堀口 お願いします。


 


○穴井 バイオアッセイセンターでやる物質について、行政の方で勝手に決めているわけではなくて、発がんとか物質について、検討会、ワーキンググループという専門家の会合の中で、どういった物質が適当ですかというのをかけて決めています。酸化チタンだけが発がん物質ではないので、発がん物質がいっぱいあるので、他の物質もやらなければいけないということですので、すぐに今の酸化チタンの試験の後にコーティングしている酸化チタンができるかというと、なかなか難しいかもしれません。


 


○B氏 わかりました。どうもありがとうございました。


 


○堀口 よろしいですか。


  他に御質問ないですか。


  そちらの方。


 


○C氏 これまでコーティングした酸化チタンと、色々な質問が出ましたけれども、GHS分類からいきますと、基本的に混合物の判定の仕方が出ています。それからいくと、考え方としては、混合物はある割合であれば、全て酸化チタンの有害性をもとに分類されてしまうわけです。ただ、問題なのは、基本的にはこれは液体のもの、あるいはガス状のものをやっていますので、固体特有の有害性というものは形状維持があるということが専門家の先生からも言われています。これは、単純にこれまでのGHS分類のやり方にはそぐわないものが出てきているのですね。


  ですので、この辺は実際に自分たちのコーティングした材料に関して安全性に自信があれば、自分たちが例えば業界でデータをとって示せばいいと思うのです。基本的な考え方は、GHS分類ということで国際的な考え方はできていますけれども、それはあくまでも、あるデータのもとでやっていることですので、自分たちがみずからデータを出せばいいわけですよ。それは何も否定されていませんから。ですので、その辺を踏まえて、必要であればどんどんデータをとられて、こういうデータなので大丈夫ですよということを世の中に公表していけば宜しいのではないかと思います。


 


○奥田 御指摘ありがとうございます。


  もっともなところかと思っております。酸化チタンの未処理、コーティングを含めて、AMES試験や皮膚刺激試験など必要最低限のデータをとっています。又、海外の論文などでも、コーティングのあり、なしで肺の炎症をエンドポイントに置いたデータを集めたりしております。酸化チタン工業会のホームページでは酸化チタンの安全性に関する情報公開を行っていますし、今回ご指摘の件に関しても必要に応じて、順次公開していきたいと思っております。


 


○堀口 他にありますか。


 はい。


 


○D氏 2点あるのですけれども、1点目は、本日の意見交換会は、厚生労働省から酸化チタンに対する措置の案みたいなものが提示されて、それに対する意見交換なのかなと思ったのですが、経過の説明はあったのですが、措置の案は提示されなかったですね。先程の話では、いつ結論が出るかわからないというお話だったのですが、2月の意見交換会でも措置の案というのは提示されないという理解でしょうか。


 


○穴井 現状では、措置の案は提示されないと考えていただいて結構です。


 


○D氏 ありがとうございます。


  もう一点ですが、今回の産業界のヒアリングで、酸化チタンの処理品と未処理品ではリスクが違う、ハザードが違うという意見が多数出ているかと思うのですが、これは本来、措置の検討の段階でやるべきではなくて、リスク評価、ハザード評価の段階で議論するべき問題かと思うのですが、そのリスク評価の段階で産業界から意見を聞くとか、そういうことというのはないのでしょうか。


 


○穴井 一番初めにリスク評価を始めたときに、今日も来られている奥田さんが委員会に出られて発言されたことはあります。ということで、別に業界の方を排除しているということはなかったと考えております。


 


○D氏 わかりました。ありがとうございます。


 


○堀口 よろしいですか。つけ加えることも大丈夫ですか。はい。


  他にありますか。大丈夫ですか。では、読み上げていきます。


 自動車補修工程として、酸化チタンを含む塗膜をサンディングする工程があります。粉体塗料とは異なり、細かい粒子が浮遊する可能性は高い。基本的に特化則の対象となった場合でも、吸入対策用の保護具、マスクなどを着用していれば取り扱いは可能でしょうか。


 


○穴井 今、話を聞いた限りでは、どういうことをやっているのかよくわからないので、具体的に教えていただかないと検討のしようもないので、もしそういうことがあるのであれば、後で教えてください。


 


○堀口 では、質問された方は後程宜しくお願いいたします。


  ヒアリングから適用除外となるためのデータとは、具体的にどのような値となっているのでしょうか。


 


○穴井 粒子が基本的に大気中に出なければ呼吸しようがないので、ほとんどそういうことがないと言うに足るデータであれば、委員会の方で採択されるのではないかと事務局のほうでは思います。


 


○堀口 何か御質問、ないですか。


  はい。


 


○奥田 もし私の認識が間違っていたら、正していただいたら結構なのですけれども、先程御質問があった、酸化チタンがもし措置になったときのアイデア、私は個人的には、三酸化二アンチモンが一つの前例になるとは思っております。何が前例かといいましたら、三酸化ニアンチモンもIARC、2Bで、酸化チタンも2B。ですから、最終的には酸化チタンが、今日申しましたように、特定化学物質の第2類特別管理物質に指定される。それを1%以上含んだ製品とか中間体を製造、取り扱う事業所が対象になる。そこから除外するためには、各事業所でのばく露実態が低いですというデータを出さないと除外にならない。


  アンチモンの場合は、マスターバッチなどでマトリックスに固定化された場合はデータを出して、ばく露が低いから除外された。それ以外は除外されておりません。ですから、うちは出ないと言っているだけでは、多分除外されません。マトリックスに固定化された場合はその工程が、アンチモンで除外されたのだったら、マトリックスの中のアンチモンがチタンに代わっただけならこれも同様ではないかというのは、又これからの議論になるのではないかと思っております。


 


○堀口 御要望が幾つかあるので、読み上げます。


  リスクアセスメント実施結果に基づき、どのような対策を打ち、その結果、ばく露がどの程度抑制されたかの事例集を見られるデータベースの構築をお願いしたいという御要望がありますが、見られますか。


 


○平川 御質問の回答になるかはわかりませんが、職場のあんぜんサイトの「見える安全活動コンクール」のところで、粉じんなどの発散抑制の事例があれば、そうしたものは活用できるかもしれません。


  何か他にそういった事例とかが出ているサイトとかを御紹介できる方、もしいらっしゃいましたら、御発言等、この場で結構ですので、お願いできますでしょうか。


 


○堀口 どうですか、皆さん。何か参考にしているサイトとかありますでしょうか。特に思い浮かばない。自分だけの秘密にしておこうとか。


  SDSを見ると、局排設置を記載しているものがあるが、必須なのか、推奨なのか、わからない場合があります。安全サイドで考えると設置すべきだが、適切な措置なのか、過度な措置となっていないでしょうかという御意見です。SDSを見ると、局排設置を記載しているものがあるが、必須なのか推奨なのかわからない場合がある。


 


○E氏 リスクアセスメントの手法を色々普及している立場から言いますと、それこそみずから考えないといけないことなのです。リスクアセスメントをやって、その結果、どうなのか。対策を打って、その結果がどうなのかということを考えていく。但し、危ないものに関しては法の規制がかかっているということなのですね。それを自分たちが危ないか、危なくないかということを人に聞いても仕方ないわけですよ。何のためにやっているかというと、リスクアセスメントのためにやっているわけではないのですね。


  それをやった結果に基づいて、労働者の健康障害はどうやって防止するかということを考えるということが基本なので、第12次労働災害防止計画以下に色々書かれていますけれども、化学物質に関しては色々な物質を扱っているわけですよ。規制だけでは追いつかないので、日本化学工業協会でも進めていますけれども、レスポンシブルケアという考え方で自主活動、この両立で行きましょうということになっているわけですよ。これは、世界の潮流なわけです。


  なぜそういうことをやっているかというと、規制だけで労働者の健康障害を防止できるわけでもありませんし、爆発火災も全部抑えられるわけではないのですよ。自分たちが扱っている物質の性質を理解してリスクアセスメントをやって、その結果、問題があれば適切な防止措置を打つということが基本なので、そういうことを考えていただきたいと思います。


  ところが、こういうことを私は進めたいのですが、上流側はできるのですが、下流側は法律を守るか、守らないかしかできないのです。ですので、私が先程意見を言いましたように、色々な物質に関して具体的に打った対策を、共通の作業とかがいっぱいありますので、それを皆さんが参考にしていただけるように是非していただきたいということです。


 


○堀口 ありがとうございます。意見交換会にも参加していただいて、情報がもっとやりとりできるようになればと思っていますけれどもね。


  他に御質問とかありませんか。大丈夫ですか。どうぞ。


 


○F氏 1点だけいいですか。今日は酸化チタンが主役だったので遠慮していたのですけれども、吸入ばく露を中心に考えてきたばく露評価ですけれども、今後は経皮ばく露も当然入ってくる。経皮ばく露の国としての今後の色々なテーマがあると思うので、もし、今日、皆さんにお聞かせ願える範囲があれば、どんな進め方を今後していくのかということをちょっと知りたいと思います。


 


○堀口 お願いします。


 


○穴井 経皮ばく露の問題が当然あるわけですから、それを問題のあるものを規制する必要がありますけれども、そのためにリスクベースでやるという話なので、リスク評価しなければいけない。では、リスク評価するためには、最低限どういう事実をつかまなければいけないかというのが多分最初にあるだろうと思います。それが物理的な方法として、どういうものがあるのか、化学的な方法として、どういうものがあるのかというのを、これから専門家の皆さんで議論していかなければいけない。


  その事実をつかむに当たっては、当然、現場に行って、どういう行動をとっているか、観察とかヒアリングということも大事になっていくだろうと思っています。事実をつかむためにどういう手法を使えばいいのかということをこれから議論していただき、その上で、どのぐらいの事実があれば、これはリスクが高いとか低いという判断をしていただくのかなと。抽象的な話で申しわけないですけれども、そういうことを今、思っています。


 


○F氏 過去に吸入ばく露のハザードを中心の評価が終わっている物質がかなりあって、一方で経皮ばく露の情報がないために、そこはひどい言い方をするとずっと見ずに来ているのですけれども、過去に評価した物質も、経皮ばく露に関して言うと、ハザードの高いものから順番に選んでいって、再評価という考え方でよろしいですか。


 


○穴井 そのつもりでいます。経気道でリスクが低くて、リスク評価を打ち切った物質についても、改めて経皮があると思われるものについては再評価するというつもりでいます。


 


○F氏 エンドポイントはがんが中心ですか。


 


○穴井 そういうことになろうかと思います。


 


○堀口 御要望として、調査する事業所と対象者数が少ないように思う。統計的にたどっているデータ数を検討してほしいという御要望があります。


 


○名古屋 リスクガイドラインを見てくれればわかりますけれども、物すごくいっぱい工場がある中で、どのぐらいの規模のときにはどのぐらいの測定作業場が必要ですよ。それに対して、何人のばく露評価をしなさいと決められていますので、必ずその人数よりは上の人数を扱っています。


  ただ、1つ難しいのは、事業場から120人の作業者いると報告が来ているから、120人の人が全部測定させてくれるかというと、そんなことはありませんで、ほとんどの事業場で測定のお願いを断ってくる。測定を担当しているところは、例えば20事業場がありまして、その事業場に聞き取りに行ったところが全部測定させてくれるかというと、10事業場が欲しいのだけれども、4事業場ぐらいしかないというのが幾らでもあるのです。


  こういうところを粘り強くお願いしていって、なるべく決められたガイドラインの数を集めているというのが現状です。だから、現場の協力がなかなか得られていないので、これだけのデータを集めるのは物すごく大変だなということを理解していただければありがたいかなと思います。


 


○堀口 他に御質問ないですか。大丈夫ですか。


  あと、先日公表された厚労省の通達、タルク、ポリ塩化ビニルなどの粉じん対策について、文章を読んだだけではわかりにくいという御指摘がありましたので、対象物質は何か、それについて何をしなければいけないのか。SDSに明記しなければいけないのか。通達に対しての義務があるのか、読んだだけではわかりにくかったということのようです。一応、申し伝えました。


  あと、酸化チタンのように単一物質でないもののリスク評価をどのように進めていくのか、議論する必要があると考えます。又、カーボンブラックのように不純物の影響がハザード評価に含まれていると推定されるもの。特に、最近はppm単位まで不純物が下がってきていますが、過去のハザード情報が使えないと考えられます。このように物質のあり方が異なっているものの扱いはどのように考えますかという、過渡期に来ているような気がしているのですけれども、今の段階でお願いします。


 


○穴井 確かに、色々な物質が、カーボンブラックはリスク評価対象物質になっていますが、非常に苦労しています。そういう不純物があって、どういうふうに毒性を見積もるかという話になりますので、その辺についてはもうちょっと知見を深めたり、最新データを集めなければいけないのかなと思ってはおります。


 


○堀口 他、ないですか。大丈夫ですか。何かコメントをお願いします。


 


○奥田 特定のものに対してのコメントを言うわけではないのですけれども、今回、日本酸化チタン工業会として初めて登壇させていただきました。酸化チタンは非常に幅広い業種で、お使いいただいておりますが、今回、こういった形で措置の検討会の対象物質となっております。


  皆様からすると、川上の酸化チタンメーカー、工業会として、どう考えて、どうしようとしているのかというところが、もし見えにくいということでございましたら、工業会のホームページをご覧ください。色々情報発信しております。安全性に関する情報発信、又GHS区分に対する考え方、そして、今日も一部御説明しましたように、IARCのデータに対するコメント。又、どうしていきたいのかというところも、先程御質問がありましたように、これからどんどん情報発信していきますので、日本酸化チタン工業会のホームページを又ご覧いただけましたら幸いでございます。


 


○堀口 一言お願いします。


 


○岡田 酸化チタン工業会としましても、そのような形で、IARCの今の判断についても一定の見解を持っております。ただ、リスクコミュニケーションのこういった場ですから、経験則とか、そういうことで判断できないもので、あくまで客観的な科学的な事実に基づいて進めていかなければいけないと。これは、当然のことだと思いますし、そのために必要なデータというのもチタン工業会の中でも検討しているところでございます。


  先程もちょっと申しましたけれども、風評とかリテラシーというものは、先程穴井室長様が説明された、まさにその通りだとは思います。ただ、酸化チタンの製造メーカーですので、強い説得力、あるとは思うのですけれども、私どもだけではなくて、各業界で協力してやっていきたいと思いますので、宜しくお願いします。


 


○堀口 ありがとうございます。


  厚労省の方から何かありますか。特に。名古屋先生も大丈夫ですか。はい。


  それでは、お時間になりましたので、本日の意見交換はこれにて終了させていただきたいと思います。


  皆様、色々と御意見いただき、ありがとうございました。ちゃんと見ていただくようにいたしますので、今日読み上げられなかった方も安心してお帰りください。どうもありがとうございました。(拍手)


 


○司会者 (高野) 先生方、ありがとうございました。


  以上で「平成29年度第1回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を終了いたします。皆様、御参加ありがとうございました。


  なお、今後の参考のため、できましたら水色のアンケート用紙に御記入いただき、会場出口の事務局員にお渡しいただければと存じます。又、お配りいたしました赤と青のカードは、出入り口を出まして右手のトレイへ御返却ください。


  本日はありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室
電話03(5253)1111(内線5511)

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