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2018年3月16日 第14回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会

社会・援護局総務課

○日時

平成30年3月16日(木)16:00~18:00

 

○場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター「ホール14A」


○出席者

田中 滋(委員長)
石本 淳也(委員)
井之上 芳雄(委員)
(代理:上原千寿子参考人)
上野谷 加代子(委員)
内田 芳明(委員)
(代理:峯田幸悦参考人)
武居 敏(委員)
西島 善久(委員)
平川 則男(委員)

○議事

 

 

○田中委員長 定刻となりましたので、ただいまから第14回「福祉人材確保専門委員会」を開催します。
委員の皆様方にはおかれましては、お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
初めに、事務局より本日の委員の出席状況について報告をお願いします。
○片桐福祉人材確保対策室長補佐 本日の委員の出欠状況について報告します。本日は、井之上委員、内田委員、川井委員、黒岩委員、高橋委員、堀田委員、森脇委員より御欠席の御連絡をいただいております。
また、井之上委員の代理として、日本介護福祉士養成施設協会理事、上原千寿子参考人。
内田委員の代理として、全国老人福祉施設協議会副会長、峯田幸悦参考人に出席いただいております。
なお、平川委員から、遅れて参加するとの御連絡をいただいております。
また、定塚局長は公務のため遅れて到着予定です。
以上です。
○田中委員長 ありがとうございました。
ただいま御紹介がありました欠席委員の代理として出席されている参考人について、皆様から御承認をとる必要があります。いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○田中委員長 ありがとうございます。
カメラはここまでとさせていただきます。
続いて、資料の確認を事務局からお願いします。
○片桐福祉人材確保対策室長補佐 それでは、お手元の資料について確認をさせていただきます。
本日は、配付資料といたしまして、資料1「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について(案)」。
資料2「「介護福祉士養成課程における教育内容等の見直し」について」。
参考資料1「社会福祉士の現状等(参考資料)」。
参考資料2「福祉人材確保専門委員会における主な意見」。
これらを配付しております。御確認をお願いいたします。
○田中委員長 早速議事に入ります。
前回の委員会では、社会福祉士に関して行ってきた議論のまとめと対応の方向性について、委員の皆様から意見を頂戴しました。本日はその意見を踏まえ、事務局に取りまとめ(案)を作成していただいています。これをもとに議論を行ってまいります。
では、柴田室長より説明をお願いします。
○柴田福祉人材確保対策室長 それでは、資料1に基づいて御説明をさせていただきます。
「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」ということで取りまとめ(案)をまとめさせていただいております。
1ページ目をお開きください。「はじめに」の1つ目の○です。
近年、福祉ニーズの変化等に伴い、社会福祉士の活躍の場は、高齢者支援、障害児・者支援、子ども・子育て支援、生活困窮者支援といった分野のみならず、教育や司法などの様々な分野に拡がってきている。時代やニーズの変化に合わせた各種制度改正が行われているものの、社会福祉士の養成カリキュラムについては、平成19年度に見直しが行われてから10年が経過している。
当専門委員会が平成27年2月25日にとりまとめた「2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~」では、地域包括ケアシステムや生活支援における社会福祉士の役割や効果的な活用について、別途、検討することが求められるとされており、多様化・複雑化する地域の課題に対応できる能力をさらに開発し活用していくため、具体的な役割の明確化や実践力の強化等のための方策の検討が必要である。
一方、平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」では、子ども・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる「地域共生社会」の実現に向けて、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域コミュニティを育成し、福祉などの地域の公的サービスと協働して助け合いながら暮らすことのできる仕組みの構築が掲げられている。
こうした中、社会福祉士には、ソーシャルワークの専門職として、地域共生社会の実現に向け、多様化・複雑化する地域の課題に対応するため、他の専門職や地域住民との協働、福祉分野をはじめとする各施設・機関等との連携といった役割を担っていくことが期待されている。
このため、その養成課程の中で、ソーシャルワークに関する知識や技術、社会保障制度、心理学など、学んだ知識・技術を現場での実践に活かせるよう、より実践的な能力を習得できるような教育カリキュラムを検討するとともに、社会福祉士が地域の中で果たすべき具体的役割を明確化し、関係者に対し、社会福祉士への理解の促進を図るなどの取組が求められている。
当専門委員会では、平成28年12月以降、計5回にわたり、地域共生社会の実現に向けて求められるソーシャルワークの機能やその中で社会福祉士が担うべき役割、多様化・複雑化する地域の課題に対応できる実践力の強化のための方策等について議論を行ってきたところであり、この報告書は、その議論の結果をとりまとめたものである。
2ページをごらんください。総論の「1 社会福祉士の現状について」、1つ目の○です。
社会福祉士は、社会福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって社会福祉に関する相談援助を行うことを業とする名称独占の国家資格である。昭和63年の制度施行から現在に至るまで、約21万人(平成29年12月末現在)が資格を取得している。
社会福祉士の活躍の場は、高齢者支援、障害児・者支援、子ども・子育て支援、生活困窮者支援といった広い分野にわたっており、各種制度において、それぞれの制度趣旨を達成するため、社会福祉士が配置されている。支援対象者のニーズや置かれている環境の違いを考慮しつつ、養成課程で習得したソーシャルワークの知識や技術、社会保障制度や各種制度におけるサービスの知識等を活用し、生活の質(QOL)の向上に向けた支援やウェルビーイングの状態を高めることを目指して相談援助を中心に実践に取り組んでいる。
社会福祉士の主な就労先は、高齢者福祉関係の割合が最も高く43.7%となっている。次いで、障害福祉関係17.3%、医療関係14.7%、地域福祉関係7.4%、児童・母子福祉関係4.8%、行政相談所3.4%となっており、様々な分野で就労している。また、就労先での職種を見ると、相談員・指導員の割合が高く34.0%となっており、次いで、介護支援専門員13.8%、施設長・管理者13.3%、事務職員8.6%、生活支援員6.6%、介護職員(ホームヘルパー含む)6.3%と多様な職種に従事している。
また、生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援事業においても、その主任相談支援員の42.3%(平成29年度)が社会福祉士の有資格者であるなど、多くの社会福祉士が活躍している。
行政分野で働く社会福祉士の資格保有者も増加してきており、福祉事務所における生活保護担当現業員の13.5%、生活保護担当査察指導員の8.7%が社会福祉士の有資格者である。
また教育分野においては、支援が必要な子どもを早期に発見し、関係機関につなぐことができるよう、スクールソーシャルワーカーの役割が重要とされているが、平成27年には、スクールソーシャルワーカーとして雇用した実人数のうち、50%が社会福祉士資格を有している。
さらに、司法分野においては、刑事施設及び少年院の受刑者等の出所後の地域生活支援のために、社会福祉士の活用や相談支援体制の整備等の必要性が指摘されており、平成28年度では、刑事施設において99人、少年院において16人が配置されるなど、社会福祉士の有資格者の配置が増えてきている。
「2 社会福祉士を取り巻く状況の変化について」の1つ目の○からです。
少子高齢化が進展する中で、我が国の社会や地域、人々の意識が変化してきており、高齢単身世帯や高齢夫婦のみの世帯が増加してきており、生活に困窮する高齢者の増加、地域における個人や世帯の孤立化など、これまで家族によって支えられてきた課題を地域社会で支えていくことが求められてきている。
こうした社会状況の変化により、既存の制度では対応が難しい様々な課題が顕在化しつつある。例えば、制度が対象としていない生活課題への対応や複合的な課題を抱える世帯への対応、外部からは見えづらい個人や世帯が内在的に抱えている課題への対応など、ニーズの多様化・複雑化に伴って対応が困難となるケースや、社会保障分野だけでなく、教育分野や司法分野などの多様な分野においても対応が必要な課題が顕在化してきている。
例えば、教育分野においては、いじめ、不登校、児童虐待、性同一性障害等のいわゆる「性的マイノリティ」など、児童生徒が抱える問題への対応が必要となっており、社会福祉等の専門的な知識・技術を用いて児童生徒の置かれた様々な環境に働きかけて支援を行うといった教育相談体制の整備が進められており、学校においてソーシャルワークを担うスクールソーシャルワーカーの重要性が高まっている。
司法分野においては、刑事施設及び少年院における受刑者等について、高齢化の進展や障害を有する者の増加により、矯正施設内での日常生活の支援や、出所後に活用できる各種社会福祉制度の紹介や利用手続きの支援などへの対応が必要となっており、社会復帰に向けた支援の体制整備が進められている。
また、様々な課題に適切に対応していくにあたっては、福祉職のみならず、医師、看護師、保健師などの医療職やスクールカウンセラーなどの心理職などとも連携していく必要があり、以前にも増して多職種と連携・協働する必要性が高まっている。
このような中で、生活困窮者自立支援制度の創設をはじめとする各種制度改正が行われてきたところであり、「ニッポン一億総活躍プラン」では、「地域共生社会」の実現に向け、複合化・複雑化した課題を受け止める市町村における総合的な相談支援体制づくりや、住民に身近な圏域で、住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制づくりなどの対応の方向性が掲げられている。
このような状況を踏まえると、ソーシャルワークの専門職である社会福祉士には、地域住民等とも協働しつつ、多職種と連携しながら、課題を抱えた個人や世帯への包括的な支援のみならず、顕在化していない課題への対応といった役割も担っていくことが求められる。
地域共生社会の実現に向けた各地での取組を見ると、社会福祉士が中心となって、地域住民等と協働して地域のニーズを把握し、多職種・多機関との連携を図りながら問題解決に取り組み、必要な支援のコーディネートや地域住民が主体的に取り組んでいる活動の支援等を行っている事例もあり、ソーシャルワークの機能を発揮する人材である社会福祉士が活躍することで、地域づくりの推進が図られている。
また、「社会福祉法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第21号)により、社会福祉法人の「地域における公益的な取組」の実施に関する責務規定が創設され、社会福祉法人は、今後とも、社会福祉事業の中心的な担い手としての役割だけでなく、他の主体では対応が困難な福祉ニーズに対応していくことが求められている。そうした中で、社会福祉法人に所属する社会福祉士は、ソーシャルワークの機能を発揮し、地域の福祉ニーズを把握し、既存資源の活用や資源の開発を行う役割を担うことが期待される。
さらに、社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書(平成29年12月15日)においても、「現在進められている社会福祉士養成課程の見直し、職能団体による現任者研修の状況なども踏まえながら、自立相談支援機関の相談支援員に社会福祉士などの資格を求めることについても、検討を行うべき」とされている。
「3 社会福祉士が担う今後の主な役割」です。
人々が様々な生活課題を抱えながらも住み慣れた地域で自分らしく暮らしていけるよう、地域の住民や多様な主体が支え合い、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、そして、地域を共に創っていく「地域共生社会」の実現に向けて、①複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や②地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築を進めていくことが求められており、それらの体制の構築を推進していくに当たっては、社会福祉士がソーシャルワークの機能を発揮することが期待されている。
①複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制とは、福祉のみならず、医療、保健、雇用・就労、住まい、司法、商業、工業、農林水産業、防犯・防災、環境、教育、まちおこし、多文化共生など、多様な分野の支援関係機関が連携し、地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制とも連動しつつ、必要な支援を包括的に提供するとともに、既存のサービスでは対応が難しい課題等について、必要に応じて新たな社会資源を創出していく体制である。
この体制の構築に当たり、社会福祉士には、アウトリーチなどにより個人やその世帯全体の生活課題を把握するとともに、分野別、年齢別に縦割りとなっている支援を多分野・多職種が連携して当事者中心の「丸ごと」の支援とし、地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制づくりと連動して、必要な支援を包括的に提供していくためのコーディネートを担うことが求められる。
また、②地域住民等が主体的に地域課題を把握し、解決を試みる体制とは、多機能協働による包括的な相談支援体制と連携を図り、地域住民等が、地域福祉を推進する主体及び地域社会の構成員として、近隣住民による見守りや日常の地域活動の中で身近な圏域に存在する多種多様な地域課題や表出されにくいニーズに気づき、行政や専門機関とともにその解決に向けてそれぞれの経験や特性等を踏まえて支援を行う体制である。
この体制の構築に当たっては、地域住民だけではなく、社会福祉法人や医療法人、ボランティア、特定非営利活動法人(NPO法人)、教育機関、地元に根付いた商店や企業等の主体も地域社会の構成員であるという意識を持ち、連携して取組を進めることが必要である。
こうした中で、社会福祉士には、地域住民に伴走しつつ、地域住民等と信頼関係を築き、他の専門職や関係者と協働し、地域のアセスメントを行うこと、地域住民が自分の強みに気づき、前向きな気持ちややる気を引き出すためのエンパワメントを支援し、強みを発揮する場面や活動の機会を発見・創出すること、グループ・組織等の立ち上げや立ち上げ後の支援、拠点となる場づくり、ネットワーキングなどを通じて地域住民の活動支援や関係者との連絡調整を行うこと等の役割を果たすことが求められる。
また、社会福祉士には、個別の相談援助のほか、自殺防止対策、成年後見制度の利用支援、虐待防止対策、矯正施設退所者の地域定着支援、依存症対策、社会的孤立や排除への対応、災害時の支援、多文化共生など、幅広いニーズに対応するとともに、教育分野におけるスクールソーシャルワークなど、様々な分野においてソーシャルワークの機能を発揮していく役割を果たすことが求められる。
「4 対応の方向性」です。
地域共生社会の実現に向けて求められる、複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築に必要なソーシャルワークの機能を社会福祉士が担うために必要な実践能力を明らかにし、その能力を身につけることができるよう、社会福祉士の養成カリキュラム等の見直しを検討すべきである(各論1)。
地域共生社会の実現に向けて、その担い手となる社会福祉士の育成に当たっては、職能団体、養成団体、事業者、行政、地域住民等の地域の関係者が連携・協働して学び合い、地域の実情を踏まえて取り組むことが重要である。このため、職能団体や養成団体等が中心となって地域でソーシャルワークの機能が発揮されるような取組の推進を検討すべきである(各論2)。
社会福祉士の地域共生社会の実現に向けた活動状況等を職能団体が中心となって把握するとともに、社会福祉士が果たしている役割や成果の「見える化」を図り、国民や関係者の理解を促進する方策を検討すべきである(各論3)。
続いて各論です。
「1 社会福祉士の養成について」の1つ目の○です。
社会福祉士は、地域共生社会の実現に向けて求められる複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制及び地域住民等が主体的に地域課題を把握して解決を試みる体制の構築やその後の運営推進において中核的な役割を担うとともに、新たに生じるニーズに対応するため、ソーシャルワーク機能を発揮できる実践能力を身につけておく必要がある。
ソーシャルワークの機能としては、権利擁護・代弁・エンパワメント、支持・援助、仲介・調整・組織化、社会資源開発・社会開発などが挙げられるが、それらの体制の構築や運営を推進していくに当たっては、次のような具体的なソーシャルワークの機能が相互に補完し合いながら発揮される必要がある。
複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制を構築するために求められるソーシャルワークの機能としては、地域において支援が必要な個人や世帯及び表出されていないニーズの発見、地域全体で解決が求められている課題の発見、相談者が抱える課題を包括的に理解するための社会的・心理的・身体的・経済的・文化的側面のアセスメント、相談者個人、世帯並びに個人と世帯を取り巻く集団や地域のアセスメント、アセスメントを踏まえた課題解決やニーズの充足及び適切な社会資源への仲介・調整、相談者個人への支援を中心とした分野横断的な支援体制及び地域づくり、必要なサービスや社会資源が存在しない又は機能しない場合における新たな社会資源の開発や施策の改善の提案、地域特性、社会資源、地域住民の意識等を把握するための地域アセスメント及び評価、地域全体の課題を解決するための業種横断的な社会資源との関係形成及び地域づくり、包括的な相談支援体制に求められる価値、知識、技術に関する情報や認識の共有化、包括的な相談支援体制を構成するメンバーの組織化及びそれぞれの機能や役割の整理・調整、相談者の権利を擁護し、意思を尊重する支援や方法等の整備、包括的な相談支援体制を担う人材の育成に向けた意識の醸成。
地域住民等が主体的に地域課題を把握し、解決を試みる体制をつくるために求められるソーシャルワークの機能としては、潜在的なニーズを抱える人の把握、発見、ソーシャルワーカー自身が地域社会の一員であるということの意識化と実践化、地域特性、社会資源、地域住民の意識等の把握、個人、世帯、地域の福祉課題に対する関心や問題意識の醸成、理解の促進、福祉課題の普遍化、地域住民が支え手と受け手に分かれることなく役割を担うという意識の醸成と機会の創出、地域住民のエンパワメント(住民が自身の強みや力に気付き、発揮することへの支援)、住民主体の地域課題解決体制の立ち上げ支援並びに立ち上げ後の運営等の助言・支援、住民主体の地域課題解決体制を構成するメンバーとなる住民や団体等の間の連絡・調整、地域住民や地域の公私の社会資源との関係形成、見守りの仕組みや新たな社会資源をつくるための提案、「包括的な相談支援体制」と「住民主体の地域課題解決体制」との関係性や役割等に関する理解の促進。
地域共生社会の実現を推進し、新たな福祉ニーズに対応するためには、これらのソーシャルワーク機能の発揮が必要であり、ソーシャルワークの専門職である社会福祉士が、その役割を担っていけるような実践能力を習得する必要があることから、現行のカリキュラムを見直し、内容の充実を図っていく必要がある。
また、社会福祉士の実践能力を高めていくためには、カリキュラムの見直しの中で、実践能力を養うための機会である実習や演習を充実させるとともに、教員が新カリキュラムを展開していくための研修や教員・実習指導者の要件等について検討する必要がある。
なお、社会福祉協議会及び地域包括支援センター等における相談援助業務を担当する職員について、地域への取組を十分に担えていない現状もあるとの調査結果から、社会福祉士が期待される役割を担っていくには、養成カリキュラム等も含めて教育の見直しを進めていく必要があるとの意見があった。
(1)養成カリキュラムの内容の充実です。
社会福祉士養成課程におけるカリキュラムについては、平成19年度に行われた見直しから10年が経過しており、人口構造の変化(人口減少・少子高齢化)、働き方の変化(非正規の増加、共働き世帯の増加)、家族構造の変化(核家族化、独居高齢者の増加)、地域のつながりの希薄化、国際化といった社会的・地域的な変化だけではなく、人々の意識の変化といった内面的な変化も含め、社会状況等が変化してきている。
こうした状況の変化に伴い、例えば、医療や介護の分野においては、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制である「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。
一方、地域福祉の分野においては、地域共生社会の実現に向けて、地域福祉の推進の理念に、地域住民等は、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える様々な分野にわたる地域生活課題を把握し、その解決に資する支援を行う関係機関との連携等によりその解決を図ることが追加されるなど、介護保険法や社会福祉法等の改正のほか、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を図るため、生活困窮者に対する新たな支援制度である生活困窮者自立支援制度など、各制度の改正や制度の創設などが行われている。
また、地域力強化検討会における中間とりまとめ(平成28年12月26日)において、「「我が事・丸ごと」を実現するためには、制度横断的な知識を有し、アセスメントの力、支援計画の策定・評価、関係者の連携・調整・資源開発までできるような、包括的な相談支援を担える人材育成に取り組むべき」とされており、「ソーシャルワーカーの養成や配置等については、国家資格として現在の養成カリキュラムの見直しも含めて検討すべき」ともされている。
こうしたことを踏まえると、現在の社会福祉士養成課程におけるカリキュラムについて、社会状況等の移り変わりや制度改正等を踏まえた内容に充実していくための見直しが必要である。
見直しに当たっては、地域共生社会の実現に向けて複合化・複雑化した課題を受け止める多機関の協働による包括的な相談支援体制や地域住民等が主体的に地域課題を把握し解決を試みる体制の構築が重要であることを踏まえ、ソーシャルワークの専門職として、これらの体制を構築するために必要となる実践能力を習得できる内容とすべきである。
具体的には、社会福祉士が、個人及びその世帯が抱える課題への支援を中心として、分野横断的・業種横断的な関係者との関係形成や協働体制を構築し、それぞれの強みを発見して活用していくため、コーディネーションや連携、ファシリテーション、プレゼンテーション、ネゴシエーション(交渉)、社会資源開発・社会開発などを行うとともに、地域の中で中核的な役割を担える能力を習得できる内容とすべきである。
また、自殺防止対策、成年後見制度の利用支援、虐待防止対策、矯正施設退所者の地域定着支援、依存症対策、社会的孤立や排除への対応、災害時の支援、多文化共生などの場面においても、社会福祉士に期待がされており、ソーシャルワークの基本を習得することを土台として幅広い福祉ニーズに対応できるようにするための実践能力を習得できる内容とすべきである。
この点については、ニーズの多様化に合わせて科目を積み上げたり、科目を細分化したりするということではなく、社会福祉士として身につけておくべき普遍的な知識・技術は何かという観点から整理が必要との意見があった。
(2)実習及び演習の充実です。
実践能力を有する社会福祉士の養成に当たっては、各分野の知識とソーシャルワークの知識・技術とを統合して実践できるようにするため、実習及び演習形態による学習が重要となる。
実習は、厚生労働省が指定する施設及び事業(以下「実習施設」という。)において実施することとされており、実習先の多くは特別養護老人ホーム、障害者支援施設、児童養護施設等の入所施設となっている。実習では、実習指導者から、個別の相談援助に加え、多職種連携、アウトリーチ、ネットワーキング、社会資源の活用・調整・開発等について、具体的かつ実際的に理解し実践的な技術等を体得するために指導を受けることが目的であるが、現状を見ると、実習生の準備状況や習熟度等の違いはあるものの、それらを実習プログラムに十分に組み込むことができておらず、職場の業務内容の学習に留まっている場合もあるとの指摘がある。
一方、今日求められている人材は、複合化・複雑化した個人や世帯の課題を適切に把握し、現状のサービスでは解決できていない問題や潜在的なニーズに対応するために多職種・多機関と連携や交渉を行い、支援をコーディネートしながら課題を解決できるだけでなく、課題の解決に向けて地域に必要な社会資源を開発できる実践能力を有する人材であり、こうした人材を実習を通して養成していく必要がある。
また、演習は、地域福祉の基盤整備と開発に関する科目やサービスに関する科目などとの関連性を視野に入れて、具体的な事例を用いて専門的援助技術を実践的に習得することをねらいとしている。
この専門的援助技術について、総合的かつ実践的に習得するためには、講義で学習したその理論や知識について、演習を通じて活用方法等を実践的に習得し、実習において利用者の状況に合わせた知識・技術の適切な活用や実践上の課題の発見など、「講義-演習-実習」の学習の循環を作り、確実にソーシャルワーク専門職である社会福祉士に必要な実践力を習得できるようにしていくべきとの指摘がある。
こうしたことを踏まえると、社会福祉士として求められる実践能力を習得するため、実習及び演習に関する内容の充実や実施方法の見直しを行う必要がある。
具体的には、現場での学習及びそれに資する教育の機会や時間を増やすため、講義・演習・実習の充実を検討するとともに、アウトリーチ、ネットワーキング、社会資源の活用・調整・開発に関する実践能力を習得し、実際に活用できるようにするための教育内容について検討を行う必要がある。
この点に関して、アクティブラーニングの教育方法の活用や海外のソーシャルワークも含めたフィールドワークなど、実践的なカリキュラムに見直すべきとの意見があった。
この点に関して、演習については、現場におけるソーシャルワークの実践事例を学ぶ重要な機会であることから、演習のさらなる充実を図るため、現任の社会福祉士の演習への参加や現場で演習を行う機会の確保など、現任の社会福祉士を演習において積極的に活用していくことが有効ではないかとの意見があった。
実習に関しては、現行の「相談援助実習」を基幹的なソーシャルワーク実習として位置付けるなど、実習科目の時間数の増加とともに、総合的、段階的かつ多様な実習教育が行えるよう検討すべきとの意見があった。
実習時間数の見直しに当たっては、働きながら資格取得を目指す者、精神保健福祉士や介護福祉士等の他の国家資格を同時並行して取得を目指す者への配慮など、過度な負担が掛からないよう配慮することも必要である。
また、働きながら資格取得を目指す者のインセンティブを損なわないためにも、一般養成施設等の養成課程の総時間である1200時間の範囲内で実習を充実させる配慮も必要である。
なお、現在、検討が進められている保健医療福祉の専門人材に係る新たな共通基礎課程に関して、「「地域共生社会」の実現に向けて(当面の改革工程)」(平成29年2月7日厚生労働省「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部)において、「保健医療福祉の専門人材について、対人支援を行う専門資格を通じた新たな共通基礎課程の創設を検討する。平成29年度に共通基礎課程の検討に着手し、各専門課程の検討を経て、平成33年度を目処に新たな共通基礎課程の実施を目指す。」とされていることも踏まえて検討すべきである。
また、実習施設の範囲については、実務経験ルートとして実習の履修免除が適用される施設等の範囲と比較すると、現状では、実習施設の範囲の方が、履修免除が適用される施設等の範囲よりも狭くなっており、例えば、都道府県社会福祉協議会、教育機関(スクールソーシャルワーカー)、地域生活定着支援センター等は、実務経験ルートとして実習の履修免除が適用される施設であるが、実習施設としては認められていない。
一方、社会福祉士が様々な場面で相談援助の実務に従事している現状を鑑みると、実習施設の範囲を実務経験ルートとして実習の履修免除が適用される施設等と同じ範囲に拡げ、より多様な施設等で相談援助の実習が可能となるよう、その範囲を見直すべきとの指摘があり、実習施設の範囲の拡大について検討を行う必要がある。
この点について、特定非営利活動法人(NPO法人)等が行っている既存の法制度やサービスでは解決が難しい複合化・複雑化するニーズに対応している事業においても実習が可能となるよう検討すべきとの意見があった。
なお、地域共生社会の実現に向けて、包括的な相談支援体制の構築が求められていることを踏まえると、現状において複合化・複雑化した課題を受け止め、関係機関と連携して包括的な支援を実施するとともに、必要に応じて新たな社会資源の開発に取り組んでいる生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関での実習について、実践能力を習得する上でその意義を十分に認識しておく必要がある。
また、実習施設の範囲の拡大の検討に併せて、実習指導の方法についても見直しが必要である。
近年の実習を見ると、社会福祉士の地域貢献や地方創生を視野に入れ、中山間地域や離島といった人材の確保や育成が困難な地域において、地域住民等との連携を実践的に学び、個人、世帯、地域のアセスメントを行うとともに、地域に必要な社会資源を検討し、その開発を行うなど、地域において包括的な支援の実践を学ぶ実習にモデル的に取り組んでいる例もある。
また、先進的な取組を行っている地域の実習施設での実習や、卒業後のUターン就職を見据えた出身地(地元)の実習施設での実習など、現在通っている学校(養成校)から遠方の地域の実習施設で実習を行う場合もある。
一方で、実習先は、実習を担当する教員が、実習施設を訪問して学生の指導を行う巡回指導が可能な範囲で選定するとともに、少なくとも週1回以上の定期的な巡回指導を対面で行うこととされていることから、このような実習の形態が拡がっていかないという課題がある。
この巡回指導については、実習を担当する教員が学生だけでなく実習指導者と密に連絡調整を行い、学生の実習状況や心身の状況等を把握して個別指導を十分に行うとともに、実習指導者との面談を通じて実習プログラムの遂行状況や実習生の評価の確認等を行っているが、現在では、対面による実習指導と同等に行えるICT等を活用した指導も可能と考えられる。技術革新等の今日的状況を踏まえて、実習指導の方法を見直し、様々な地域の実習施設で実習が可能となるよう検討を行う必要がある。
なお、実習指導及び演習教育に関して、ソーシャルワークを総合的かつ実践的に指導するため、「社会福祉士実習演習担当教員講習会」及び「社会福祉士実習指導者講習会」の見直しや充実も必要であるとの意見があった。
「2 地域全体での社会福祉士育成のための取組について」です。
現在、社会福祉士の育成は、職能団体、養成団体、事業者団体が中心となって進めているが、地域共生社会の実現に向けて必要となる包括的な相談支援体制及び住民主体の地域課題解決体制を構築し、対象者の属性に関わりなく、複合化・複雑化した課題に対応できる社会福祉士を育成するためには、職能団体、養成団体、事業者団体が協働して社会福祉士の育成に取り組むだけでなく、行政、地域住民など、地域の様々な立場や分野の関係者が連携・協働して学び合いや活動の機会を設けていくことが重要である。
地域共生社会を実現するためには、支え手側と受け手側に分かれるのではなく、地域のあらゆる住民が役割を持ち、支え合いながら、自分らしく活躍できる地域づくりを推進することも重要とされている。
こうした観点からも、職能団体や養成団体等が中心となり、現任の社会福祉士が、地域において、他の専門職や地域住民等と協働してソーシャルワークに関する知識・技術や実践事例等を学び合い、それぞれの力を合わせながら実践能力を向上させることができるような場づくりを推進することが必要である。
また、そのような場を活用することは、実習教育の充実や教員・実習指導者の資質向上にも資すると考えられる。
この点については、社会福祉士の養成教育における「実習」と社会福祉法人の「地域における公益的な取組」を協働で展開することにより、養成校の資源(教員・学生・施設)を活用しつつ、現任の社会福祉士にとっては、実習指導者として所属組織の承認のもと、実習生とともに地域における公益的な活動に取り組むことができ、実習生にとっては、社会福祉法人が果たすべき地域アセスメントの方法等を学ぶことが可能となり、「地域に強い」社会福祉士の育成・養成につながることに加え、法人側にとっても学生が社会福祉法人に就職しようとする動機付けにつながるなど、相乗効果が期待できるとの意見があった。
また、現任の社会福祉士の学び直しに関して、所属組織において、職場の職務に加え、社会福祉士が地域に関わることについての理解が必要、実習生の受入れや国家資格取得後の現任研修の強化等については、所属組織によるサポート体制の充実が必要、現任社会福祉士の育成には、就労先の事業所(雇用者)が社会福祉士の自己研鑽の意義を理解し、スーパービジョンへの理解が重要といった意見があった。
こうした意見も踏まえ、職能団体や事業者団体が協力しつつ、経営者等への働きかけを通じて、所属組織による理解を促していく取組が必要である。
なお、社会状況の変化やニーズの多様化・複雑化に伴い、社会福祉士の活躍の分野は拡がってきており、実践力を向上させていくためには、資格取得後の不断の自己研鑽が必要である。一方で、社会福祉士は、同一の職場に配置される人数が少ないため、OJTが難しいという実態もある。この点も含めて、職能団体が中心となって取り組んでいる認定社会福祉士制度を活用することが考えられる。
また、社会福祉施設等で働く現任の社会福祉士については、所属先の専従要件があるものの、社会福祉施設等の職員が取り組む地域活動について、利用者の自立等に資するものである場合、サービスの提供に従事する時間として取り扱うこととされている。
さらに、地域づくりに資する事業について、介護保険制度の地域支援事業や子ども・子育て支援制度の地域子育て支援拠点事業など、複数の事業を一体的に実施する場合、ある事業の担当職員が別の事業の対象者に支援を提供することも可能であり、その実施に要する費用を按分することも可能とされている。
このような柔軟な取扱いを通じて、社会福祉士が地域活動を積極的に取り組めるよう、環境を整えていくことも重要である。
行政分野における社会福祉士の育成に関して、福祉事務所における社会福祉士の資格を持つ生活保護担当現業員や査察指導員の割合は増えてきているものの、福祉事務所職員のさらなるケースワークの能力向上等に向けて、社会福祉士の資格の取得促進や有資格者の活用を進めることが必要である。
14ページに行きまして、「3 社会福祉士の役割等に関する理解の促進について」です。
社会福祉士が果たしている役割や活動等については、養成団体や職能団体等が中心となって周知を行っているが、社会福祉士は多様な施設・機関において様々な職種や職名で勤務し、ソーシャルワーク以外の業務も行っている場合もある等の理由から、社会福祉士の専門性や役割が分かりにくいものになっているのではないかとの指摘がある。
また、地域共生社会の実現に向け、自治体において地域住民や行政等との協働による包括的支援体制の推進が求められており、自治体において社会福祉士が果たしている役割等の実態把握を行う必要があるとの指摘もある。
社会福祉士の実態把握を行うことにより、社会福祉士の専門性や果たしている役割が明らかになることで、所属組織において社会福祉士を任用することの意義が高まり、社会福祉士の活動に対する理解も進むものと考えられる。また、行政機関においても、社会福祉士の専門性への理解が深まることによって、その任用や資格の取得が促進されるものと考えられる。
このため、社会福祉士が果たしている役割や成果等の「見える化」を図り、国民の理解をより一層促進するため、職能団体が中心となって、多様な分野の施設・機関等において実践している社会福祉士の業務実態や所属組織におけるサポート体制などの実践環境等を把握すべきである。
「おわりに」です。
社会福祉士の資格制度については、昭和63年に創設され、これまでに約21万人が資格を取得している。社会福祉士の養成カリキュラムについては、平成19年度に見直され、平成21年度より施行されているところであるが、社会状況はこの10年間で更なる変容を遂げている。
当委員会では、今後、政府が目指す地域共生社会の実現に向けて、ソーシャルワークの専門職として社会福祉士に必要な実践能力を身につけ、その役割を担えるよう、この10年間における制度改正の推移等も考慮しつつ、養成カリキュラムの見直しや現任の社会福祉士の実践能力の向上、社会福祉士に対する理解促進に向けて必要な取組を検討してきたところであり、国においては、このとりまとめの内容を踏まえて、必要な対応をすべきである。
説明は以上でございます。
○田中委員長 長文の読み上げ、ありがとうございました。
では、この取りまとめ案について、皆様から御意見を伺います。
西島委員、お願いします。
○西島委員 日本社会福祉士会の西島です。
私からは、今までの5回の議論を通じて、実践者の立場から、特に3つのことを評価させていただきたいと思っております。1つ目としては、地域共生社会の実現に向けて、ソーシャルワークの重要性が明確になったことです。2つ目としては、ソーシャルワーク専門職として社会福祉士の位置づけが明確になったことです。3つ目としては、社会福祉士がソーシャルワーク専門職として地域共生社会の実現に向けた中核的な役割を担う必要性が明確になったことです。今後もこうした社会状況の変化を踏まえまして、適宜、社会福祉士の役割等について、継続的に検討が行われることを要望したいと考えております。
さて、本日の報告書案を踏まえまして、速やかにカリキュラム改正の検討を開始する必要があると考えております。また、社会福祉士の養成と育成は一体的なものです。報告書案の具現化に向けた養成カリキュラムの具体的な検討に、私たちも積極的に協力してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
その上で、特に4つの事項について検討に加えていただけたらと思っておりますので、発言させていただきます。
まず1つ目は、養成課程の時間数ですが、今回、いろいろ情勢が変化した中で、実践力を高める社会福祉士を養成するということですので、そこの強化という部分があるのですが、一方では、現実に働きながら社会福祉士の資格を目指している者もいますので、検討に当たっては、少しそのあたりを配慮いただけたらありがたいと考えております。
2つ目ですが、実習施設の範囲。この拡大と指導方法の見直しから、社会福祉士実習指導者講習会について見直しと充実が必要と考えておりますので、カリキュラムの見直しと同時に、こちらも御検討いただきたいと考えております。
3つ目ですが、社会福祉士の役割や成果等の見える化の必要性から、実践内容を言語化・ビジュアル化する能力の向上と、指定科目のうち相談援助の基盤と専門職、相談援助の理論と方法、相談援助演習、相談援助実習指導、相談援助実習における相談援助という、この文言をソーシャルワークに改め充実を図ることも検討していただけたらと考えております。
4つ目ですが、特に実習の受け入れや現任の社会福祉士の学び直しについては、所属先の専従要件等がございます。これについては所属組織の理解とサポート体制が不可欠と考えておりますので、よろしくお願いいたします。
また、効果的・効率的な実践能力の強化からスーパービジョンへの理解と体制整備の促進、認定社会福祉士制度の活用も検討に加えていただけたらと考えております。
結びになりますが、この報告書の14ページの3つ目の○について読み上げます。
社会福祉士の実態把握を行うことにより、社会福祉士の専門性や果たしている役割が明らかになることで、所属組織において社会福祉士を任用することの意義が高まり、社会福祉士の活動に対する理解も進むものと考えられる。また、行政機関においても、社会福祉士の専門性への理解が深まることによって、その任用や資格の取得が促進されるものと考えられる。
このように記載されておりますように、私たちとしましても、関係者の皆様と連携・協働し、多様な分野の施設・機関等において実践している社会福祉士の業務実態や所属組織におけるサポート体制などの実践環境等を把握し、社会福祉士の役割等に対する理解の促進を図ってまいりたいと考えております。
私からの発言は以上になります。よろしくお願いいたします。
○田中委員長 ありがとうございました。
報告書のその先について、さまざまな観点から御意見を頂戴しました。ありがとうございます。
上野谷委員、どうぞ。
○上野谷委員 ソーシャルワーク教育学校連盟、上野谷でございます。
委員の多くの意見をこのような形で非常に適切にまとめていただいた、その御努力に感謝をいたします。
その上で、少し気になるところを指摘し、そしてお願いもしたいと思います。
1つは6ページの2つ目の○です。社会福祉士が果たしている役割や成果の「見える化」。これは最後の14ページにも出てくるわけで、この「見える化」というのはかなり難しい。「見せる化」といいましょうか「見える化」といいますか、見たい人には見えるのですけれども、なかなかこの社会福祉士の業界というのは、見せない、また、見えてはいけない個人情報やそういった事柄にかかわるものですから、非常に見えにくいわけです。それにしても、やはり見える化の努力を私ども養成校あるいは経営協も含めて努力をしていかねばならないと思っております。
広報を通じまして、今、ソーシャルワーカー図鑑など、私どものホームページを見ていただきましたら、さまざまな活躍する若手ソーシャルワーカーを登場させたり、いろいろな努力はさせていただいているのですが、ここはまた、どうぞごらんいただきたいと思います。
それから就職等も、経営協の今回の就職フェアでしたか、後でまた補足をお願いしたいのですが、非常に今までと違う広報をしているということで、「見える化」には努力をしてまいりたいと思っております。
それから10ページの4つ目の○です。今、西島委員からも「配慮問題」がございました。しかし、この4つ目の○で「配慮」が3つも出てくるわけです。なかなか、こういう報告書に「配慮」が3つも出てきますと、何かいろいろお願い事があったのかと、逆に国民が感じてもよくないと思いますので、2つぐらいで文章を整理されたほうがいいのではないかと思っております。
ただ、この間も申し上げましたように、配慮しつつも、今は決意し前進せねばならない時期なのです。ですから、教員の側ももちろんこれ以上しんどいことはしたくない。経営者側も、まあ今でいいのではないかとなってしまいますと、日本国として人材養成はできないということになろうかと思いますし、るる、今、御説明がありましたように、これだけ複雑な、これだけ多様な課題を解決していこうという、今までのこの委員会の流れを見ますと、もちろん配慮はせねばならないわけですけれども、何とか工夫しながら、これは実習時間もふやす、そしてカリキュラムも統合したり工夫をするということが必要だろうと、あえて申し上げたいと思っております。
そして、「なお」というところがあるのですが、ここはちょっと違うことになりますので、○をつけられたほうがいいのではないかと。これは実習時間にも関係するかもしれませんが、むしろ本体科目との関連ですので、ちょっとここは○をつけられたらという気持ちがしております。
そして、全体としまして、先ほど西島委員もおっしゃいましたように、カリキュラム検討会の設置を早急に、年度が改まりましたらすぐにでもしていただきたい。それは大学等養成校の側から言いますと、養成校内の整備をせねばなりません。今、大学ではカリキュラムポリシーというものをつくらねばなりませんし、あるいは実習施設や指導者の確保、それから教員の確保も含めて、私が聞いている範囲では、学部編成、学科編成をしたいという大学等からのお問い合わせもございます。そうしますと、これは早く文科省とも協議せねばならない事項になりますので、ぜひともカリキュラムの検討会の設置を早急にしていただき、各養成校がいい人材を養成できる環境を整えていただきたい、そういう意味からもお願いをしたいと思います。できれば、今日回答をいただけたらと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
それから、14ページの「おわりに」でございます。本当によく書いていただいているわけで、2つ目の○などは見直しをしようという方向性で、国においてこの取りまとめの内容を踏まえて、必要な対応をすべきであると書いていただいております。
ただ、前回の改正のときは、国会での附帯決議があったということもありますが、5年後に見直しというように年度を区切っていたわけですね。私は、それは現状では余りよくないと思っているわけであります。それはなぜかというと、非常に早い法改正をどんどんしていかれる厚労省の今のお立場、そして先ほどのヒューマンサービスにおける共通科目の問題等々も出てきますので、何年と区切る必要はございませんが、ただ、必要に応じて早急に見直しの検討に入るべきであるというニュアンスを少し加えていただきますと、それぞれの養成校も経営協も、それぞれ次へ向けて準備をされるだろうと思いますので、お願いをしたいと思っております。
以上でございます。
○田中委員長 文言については後で触れますが、お二人の委員から、直ちにカリキュラム検討を始める決意があるかという質問がありましたが、いかがでしょうか。
○柴田福祉人材確保対策室長 今の御指摘を踏まえて、この報告書をこの場で取りまとめていただけるのであれば、それを踏まえて速やかに、事務的な手続もありますけれども立ち上げていきたいと思っています。
○田中委員長 引き続き御協力をお願いすることになりますが、よろしくお願いいたします。
武居委員、お願いいたします。
○武居委員 今、上野谷委員から、見せる化、見える化の話が出ましたので、少しそれに関連したお話をさせていただきたいと思います。
以前にも少しお話ししたかもしれませんが、私ども社会福祉にかかわる者は皆、いいことは控え目にやるべきだというのが今までの一般的な考え方ではなかったかと思います。いいことはひっそりやっていれば、いつか人が認めてくれるのではないかというのが、どうも今までの風潮としてあったのではないかと思います。しかしながら、やはりそれだけでは今の世の中で十分社会的に認められにくい。なおかつ、やっていることを正しく評価してもらうために、我々としては正しい情報を提供していくべきだと考えますので、まさに社会福祉についても、やっていることをよく知ってもらい、理解をしてもらうという努力は、我々の業界、それから学校関係者、もちろん当事者自身がやっていくべきではないかと思います。
今、お話がありましたので、先般、14日ですけれども、人材の確保がなかなか難しいという中で、やはり若い人たちに、社会福祉に働く人たちは格好いいのだと思っていただけるような努力を我々としてもしていくべきではないかということで、名前はちょっと聞きにくい部分はあるかもしれませんが、社会福祉ヒーローズというイベントをいたしました。マスコミ関係の方や学生諸君にも来ていただきまして、若い人からは比較的好評を得たのではないかと思っています。
我々の経営協の仕事としてやったわけですが、経営協の中でも、年齢の高い方はちょっと眉をひそめて、そこにそんなに金をかけてやるのかというようなところもちょっとありましたけれども、やはりイメージを変えて、社会福祉士の仕事につくことが、これからの世の中にとっても必要だし、そのことは格好いいのだということを知っていただくような努力は、ますます必要になるのではないかと。そういう意味で、社会福祉士についても十分世の中に知っていただくような努力がこれからもさらに必要になるのではないかと思います。
お話をいただきましたので、ちょっと補足をさせていただきました。以上です。
○田中委員長 事例の紹介もありがとうございました。
石本委員、どうぞ。
○石本委員 私からは2点。1点目は、この報告書を見ての、あくまで私の個人的な印象というか、役割をというところでまとめられた報告書ですが、医療ソーシャルワークについて触れられるというか、そこが何か出てくる場面がちょっと少ないような気がしたという印象があったということが一点。
それから、これを踏まえてカリキュラムが見直されていくということで、先般、介護士のほうはそれでまとまったわけですが、社会福祉士もということで。従前のカリキュラムで基本的なソーシャルワークの学びということは、それは引き続き踏まえつつも、新しい時代の中で出てきたニーズに対応するような部分もさらに強化するというか、充実させていくのだというような理解でよろしいのかどうかということを一点、確認させていただきたい。要は、大きく抜本的に何かごっそり変えてしまうというわけではないのかどうかというところを確認したいのですけれども。
○田中委員長 御質問にお答えください。
○柴田福祉人材確保対策室長 今、石本委員がおっしゃっていただいたように、従来のカリキュラムを礎として、今回、状況の変化等々、社会のニーズも変わっておりますので、それを加え、変化に対応したものにしていくということでございます。おっしゃったとおりです。
○石本委員 ありがとうございます。
○田中委員長 平川委員、どうぞ。
○平川委員 前回、社会の変化に対応した形でのソーシャルワークの役割が高まっているということに関して、その辺の趣旨を受けとめていただいて記載されているなと思いました。ありがとうございました。
やはり高齢化、単身化がさらに進む中で、支援の社会化ということがさらに求められているということから言うと、ソーシャルワークは専門職であるし、社会福祉士という役割は本当に高まっているのではないかと思います。ただ、今までも発言がありましたけれども、それをどう見える化するのかということが大きな課題かと思います。社会福祉士という資格を保持しているという点についての評価は高かったので、一定程度、社会的には理解されつつあるのかなと思いますが、ある意味、質の高い仕事ができる可能性があるという意味合いで資格の保持ということが見られているのかなと思います。もう少し、社会福祉士という資格を持っていることによる、その効果というところまで見える化していくのが本当はいいのかなと思います。いろいろ考えたのですが、では、具体的にどうやるのかとなると、なかなか難しい面があるかと思います。
例えば対人サービスであれば、保育士であればアメリカのいろいろな研究があって、保育士の資格を持っている、もしくは優秀な教育を受けた保育士が子どもに与える影響といった研究結果もあるわけです。もしくは介護福祉士であれば、これは介護保険制度の中でさまざまな質問問題ということが問われておりまして、そういう研究成果が積み重ねられてきているのかなと思います。ただ、社会福祉士に関しては、相談援助という関係上、率直に言って、アウトカム評価のようなところはなかなか難しい面があると思います。しかし、何らかの形で社会福祉士という資格を保持していることによる、より前向きな影響等が検証できれば、本当によりよいものがもっともっと高まっていくのではないかと思っています。前回も言いましたけれども、診療報酬や介護報酬改定の要件の中に、社会福祉士は今回もふえましたので、さらにそれがもう一歩広がっていくのではないかと考えているところであります。
それから、先ほど武居委員がおっしゃったように、イメージ戦略も重要かなと思います。実は社会福祉士ではないのですが、連合に加盟しているUAゼンセンというところで、「ケアニン」という映画をつくらせていただきまして、介護福祉士の話ですけれども、すばらしい仕事なのだというようなイメージ戦略を、連合としても、ただ単に給料が安いということだけ言うのではなくて、やりがいのある仕事なのだということをちゃんと前向きに行っていこうと考えておりまして、今、転換をしているところでありますので、社会福祉においても、先ほど言ったように社会的な役割が高まっているということがありますので、そういうイメージ的なところも改善していくということが重要かと思っているところであります。
以上でございます。
○田中委員長 さまざまな視点から御意見をありがとうございました。
峯田参考人、お願いします。
○峯田参考人 全国老人福祉施設協議会副会長の峯田でございます。
私の個人的な意見ということになるかと思いますけれども、例えば社会福祉士の資格を持っていれば、例えば特別養護老人ホームの虐待の対応がスムーズにいくとか、措置入所であるとか、成年後見の養成を受けているとか、そういう知識のある人だとスムーズに受けられるのですね。定員を超えてもいられるよとか、そういう知識もあるし、どうやったら後見制度を活用できるか、任意後見なり、いろいろなこともできる。ですから、見える化をするのであれば、そういう社会福祉士の資格を持っているといい。権利擁護というのは別かなと常に思っていますので、そういう人がいると、そこには虐待は起きないとか、それは見える化できるわけです。そういうものを数字にきちんとあらわして、虐待の問題があるところは社会福祉士の人がいるのかというようなことを全部調査していただけるという方法もあるだろうと思います。
それから、またとんでもない質問をするわけですけれども、今、介護支援専門員、主任ケアマネジャー、主任介護支援専門員というのは居宅のほうの管理者にならないと、経過措置でありますよね。では、特別養護老人ホームの生活相談員というのは社会福祉士となっているのかというと、まだなっていない。逆に言うと、見える化ではなくて、こういう資格をきちんとやりますよというように位置づけをするためのカリキュラムをつくっていくとか、そういうことがこの委員会なのかなと思っています。
ですから、この前も話したように、例えば管理職であるとか施設長の資格の問題ですね。今、逆に言うと社会福祉主事あたりでもできますけれども、こういうものはやはり国家資格であるとか社会福祉士であるとか、そういうことも検討したらいいのではないかというぐらいの気持ちで管理職、スーパーバイズをやる人間にきちんとした国家資格の人を配置するとか、そういうことは見える化ではなくて、もっときちんとやれば見えるのです。ただ、やらないだけであって。だから、先ほど石本先生も言ったように、MSWあたりは社会福祉士があれば加算がつきますから、どんどん入れますよね。あとは包括だって、社会福祉士のほうになりたいという人はいっぱいいる。それは何かというと、若い学生も資格があってみんなからきちんと見られるわけです。誰でもいいよねというところに魅力があるわけがないのです。ですから、きちんとそういうことを入れていって、みんなでやるというように、この委員会の中でぜひ議論していただけるとありがたいなと。
最後にまた余計なことを言いましたけれども、そういうことをぜひ進めていただけるとありがたいと思っております。以上でございます。
○田中委員長 こちらも今後の方向について言っていただきました。ありがとうございます。
上原参考人、どうぞ。
○上原参考人 これが最終報告で、多分これまでの議論がたくさんあって、これがまとまっていると思いますし、また、今日はあくまでも参考人なのですが、さらにカリキュラムの検討や今後御検討いただきたいという点が幾つかあります。
1つは複合化・複雑化した課題ということが何度も何度も語られたのですが、そういう意味ではアセスメント力といったときに、実はその問題がリアルに見えていないと、アセスメントはできないと私は思っています。でも、実は、1980年代以降、今の生活問題というのは見えづらくなってきていて、そこがきちんと分析されていないと思っています。特に私は社会福祉から介護のほうへ移りながら、二股をかけてやってきたのですが、介護問題で見ると、私は農林漁業型の社会のああいう支援体制から、サラリーマンの世代になったときに、もともと家族が持っていた、あるいは親族が持っていた、あるいは地域の共同作業が多い産業形態ですから、そのつながりの中で支えられてきた日本の介護が、サラリーマンというのは会社との契約なので、どこにいるかはわかりませんよね。地域というものに関しては、寝るだけになってしまって、ほとんど地域にはいないという現実の中での今の地域だと思うのです。そのあたりのところをきちんと分析しないと、地域といっても昔のイメージのままの地域というものがあるし、今は圧倒的に地域で活動している年齢の高い方たちというのは、昔のイメージでやろうとされるのだけれども、実際には私も地域のいろいろな審議会に出ているのですけれども、サラリーマン層はほとんどそこに参加してこないという現実の中で、一体どのように地域の中で支えていくのか。特に住民主体ということで、主体的に地域の課題を把握して解決していくといったときに、見えるものと見えないものというか、もっと見なければいけないものがあるのですが、なかなか地域といったときに、いろいろな立場の方がいる。特に今、地域の活動に参加している方たちというのは年齢が高いので、全然若い人が入ってこないという思いなのですが、サラリーマンはなかなかそこに入ることが困難という状況の中で、どのように地域活動をしていくのかというあたりは、やはりとても課題だと思うのです。その辺を丁寧にしておかないと、なかなか地域の共生社会といっても、私は社会福祉を教えている立場として、本当にそこをリアルに描きながらどう動くかというときに、本当に課題が重いなと、逆に思っています。
今、特に今回の特色で、いいなとは思うのですが、援助する人だけではなくて当事者もそこに入ってくる。あるいはその地域で働いている人たちも参加してくる。ただ、今日のお話の中だと、社会福祉法人は出てくるのですが、また、行政と社協も多分入ってくるでしょうけれども、そこだけで本当にいいのか。私は尾道とかそういうところでも地域活動をやっているのですが、そこで生活支援の新たな人を広げるというときに、従来の人ではなくて誰がいるのかと考えたら、行政の定年退職者と造船会社の定年退職者を全部その介護の研修に呼んで、生活支援サポーター養成をやろうというようにしないと、まさに企業も巻き込んでやっていかないと、多分、社会福祉法人だけでは踏ん張り切れないだろうと思うのです。そういうところも含めて、もう少しイメージをしないといけないかなと、一つは思っています。
それから、見える化のところについても、従来の専門性というのは、多分、見えるのが狭く深くなのですね。それが社会福祉士とか介護士の専門性というのは、その人を主体にして、その人を主人公にして、いかに生活のところを総合的に支えるかという、総合力みたいな専門性で、多分、余りそういう専門性というのは、なかなか行政でお話をしてもわかっていただけないところがあるのです。そういう、いわば新しい専門性みたいな、狭く深くではない、その人を主役にした総合力というのでしょうか、そのあたりのところでもう少し専門性というものを、私たち自身も語っていかないと、なかなか見えづらい。
ですから、例えば事例なども、私は看護や医療の事例は見たらわかるのですが、福祉系の事例というのは、総合的な視点で描いていくので、結構お話しするのに時間がかかったり、示すのが難しかったりします。事例集もいろいろ書いているのですが、相当多面的に書いていくので、そういうあたりも本当にもうちょっと積み重ねをしていかないといけないかなと思っています。
あとは、新たな分野に社会福祉士が出てくるということが、今、現実としてすごくあると思うのですが、ただ、問題は、そこに行っても雇用条件がきちんとしていないので、仕事としてなかなか自立できない。このあたり、広げていくのは大事なのですが、一方できちんとした雇用条件がないと、本当に働けないのですね。スクールソーシャルワーカーでも、本当にそれだけでは食べていけなかったり、刑務官にしても時期を設定されていたり。最近、大阪あたりでは福祉事務所であっても期間限定の雇用の仕方ですよね。あれでは絶対に活動はできないと思うので、その辺の雇用条件もセットでぜひ御検討いただけるような問題提起をしていただけたらありがたいということです。
それから最後に、社会福祉士及び介護福祉士法という法律なので、この2つは人の暮らしに関して、いわば両方ともその人を主人公にしながらやっていく仕事です。社会福祉士というのは複雑な相談をきちんと受けながら、その人の暮らしの全体像をきちんと描きながら、生活条件を整える、基盤づくりも含めてやっていく仕事ですし、介護福祉士は人の暮らしの中に直接入って支えながら、何が必要なのかというところを、むしろ外に向かって問題提起していく。ほかの専門職というのは、やはりピンポイントでかかわるのですよね。生活丸ごとではないのです。ほかの専門職のそれぞれのお立場からの助言も、本来であれば介護福祉士というのは生活の場で、その人らしい暮らしの中に織り込んでいくという、そういう人が1人いると、ピンポイントの支援が生きていくというか、そのあたりで生活を支えるというのは本当に幅広いし、その人が主体なのです。ほかの専門職は、どちらかというと、どうしても専門職の主導が多いのですが、この人が主役で、なおかつ生活の枠組み全体を見ながら、それも大枠で見るのと直接入って見るのとが、いかに連携しながらやっていくかというのが、この社会福祉士及び介護福祉士法の意味だと思っています。
そのあたりは介護福祉士教育の中でももっと語らなければいけないのですが、社会福祉士のお仕事を検討するときにも、介護福祉士との連携を考えないといけない。今回は連携ということが特に強調されていますので、まずは社会福祉士と介護福祉士の意味ある連携がどこまでできるかというあたりは、ぜひまたカリキュラムの中でも御検討いただければと思います。
以上です。
○田中委員長 まさしくこの報告書の後、どのように社会が考えるべきかと言っていただきました。ありがとうございます。
今まで皆さんから意見がありました。何か事務局から答えることはおありですか。
○柴田福祉人材確保対策室長 多数の意見をいただいていますので、御指摘を踏まえて、技術的に修正する部分は修正をしていきたいと思います。
今、上原委員がおっしゃっていた、社会福祉士だけではという話があったと思います。それについては5ページで、座長からの御指摘を踏まえながら、この3つ目の○のところ、「この体制の構築に当たっては」というところですけれども、地域住民だけではなく、社会福祉法人や医療法人、ボランティア、特定非営利活動法人(NPO法人)、教育機関、地元に根付いた商店や企業等の主体というところで、多様な方がかかわって、こういうものをつくっていくのだということは記載させていただきますので、我々もその気持ちは一緒だということを申し添えたいと思います。
○田中委員長 ありがとうございます。
住民票を持つ人だけが地域を支える存在ではないという認識ですね。
ほかにはよろしいですか。
一わたり御発言いただきましたが、この取りまとめ案そのものについては、皆さん、大筋で賛成していただいたと感じます。もちろん文言の修正はあるかもしれませんが、むしろこの報告書を受けて、その後、役所は何をすべきか、そして関係者、教育者は、さらに社会福祉分野の向上のために何をすべきかという、決意に近い御発言が多かったと感じました。
本日いただいた取りまとめ案の、内容というよりは文言ですけれども、その修正につきましては、取り扱いを私に御一任ください。後日、修正したものを委員の皆様に御確認いただくことになります。その上で、それを専門委員会の取りまとめとする予定でございます。そういう扱いでよろしいでしょうか。
○上野谷委員 今、座長からのお話がございましたように、本当にいいまとめをしていただき、私たちソ教連としましても今まで以上に覚悟を持って養成に取り組んでいきたいと思っております。
ただし、一つだけ。
座長、これが最後ですよね。
○田中委員長 そうです。
○上野谷委員 最後に、少し。前回の改正ではカリキュラムの見直しに関する委員会と同時に、国家試験のあり方の委員会をつくっていただいたわけです。昨日、国家試験の合格発表がございまして、本委員会とは直接関係ないマターではございますが、残念ながら合格基準点が150点満点中99点と、今までにない点数でした。普通は6割、90点でやっておりましたので、その結果に少し驚いたわけでございます。委員の方々は余り詳しくないかもしれませんが、合格率は30.2%と、いつも20%台の後半ぐらいを走っているわけですが、各保育士あるいは看護師その他の専門職に比べて非常に低い合格率で頑張っているわけです。それだけの資質を求められているとも考えてまいりましたが、今回は学生諸氏に関しては、それこそインセンティブを損なうのではないか。99点というのは、今までにない状況です。ですから、合格率から逆算したのではないかと。難易度を調整するというのはありますが、しかし、公表しておりますのは大体6割ということになっておりますので、自治体に既に就職が決まっていた人、それから社会福祉協議会に決まっていた人も全部、就職が取り消しになっているわけです。そういう意味では、養成校としましても非常に残念な結果です。
これは厚労とはちょっと関係ないところの話になりますので、お聞きいただきたいということなのですが、そういう状況の中で、ことしは特に受験料ももとに戻ったという意味で倍以上に上がっております。学生諸氏におきましては、養成校の人たちにしても必死で勉強していい成績を上げたと私は思っております。ですから、素直にいい成績だったらそのまま合格率を上げていただきたかったという素朴な思いです。そして、今、学生あるいは養成校出身の方々から、ソーシャルワーク教育学校連盟に、どういう状況なのだ、回答しろというお問い合わせが多いものですから、昨日、白澤会長談話という形でホームページに掲載させていただきました。組織としてはこれをやっておきませんと、組織の維持にかかわるものですから、一度ごらんいただきまして、各委員の方々には今後応援をしていただきたいと。今、福祉人材はとても大事なときでございます。受験生がもう来年から受けてくれないということにならないように、私どもも努力してまいりますけれども、ぜひ、関係機関の中で、国家試験のあり方に関する検討会を設置していただきたい。これはどこに言えばいいのか、私もよくわかっていないのでありますが、これをお願いするのは試験センターのほうでしょうか、厚労にお願いする筋ではない感じはするのですが、お聞きいただいて、それぞれ非公式にでも、どうぞお伝えいただきたいと思っております。
先生、ありがとうございます。最後までしゃべらせていただきましたこと、感謝申し上げます。
○田中委員長 いえ、いえ。問題提起として承りました。ありがとうございます。
ほかに、よろしいでしょうか。
では、これにて取りまとめに関する審議は終了いたします。
社会福祉士に関する議論も終わったので、この委員会での議論も一区切りいたしました。
ここで定塚局長より御挨拶を頂戴いたします。
○定塚社会・援護局長 本日は私、大変遅れて参りまして、皆様方の御意見をお聞きすることがほとんどできなかったことを、まず、おわびを申し上げたいと思います。
後ほど、ほかの出席者から皆様方の思い、将来に向けてのお話もあったという座長のお言葉でございますので、しっかりと私のほうもまた聞かせていただきたいと思います。
改めまして、この間、大変長期にわたりまして御議論をいただきまして、本当にお忙しい中、ありがとうございました。
その結果として、昨年10月には介護についての報告書をお取りまとめいただいて、それに引き続いて今般、社会福祉士に関しての取りまとめをいただいたということに、深くお礼を申し上げたいと思います。
今回の社会福祉士のあり方の検討は、ほぼ10年ぶりに議論をいただいたということでございまして、これからカリキュラムの改定ということにも反映をしていくわけでございますけれども、それのみならず、まさに今日も多分出たのだろうと思いますけれども、未来に向けてのソーシャルワークのあり方ということについても、さまざまな御意見をいただいてきたかなというように受けとめをしております。
本当にこの10年の間で、社会福祉士をめぐる諸情勢も変わってまいりましたし、いろいろな制度についても改正を重ねてきた。直近では地域共生社会づくりということで、従来からの各分野の制度だけでは賄い切れないような谷間に落ちる人たち、あるいは包括的な支援をしていく必要性のある方々への支援をしっかり進めていかなくてはならないという、社会福祉法の改正もございました。
こうした動きを踏まえてのソーシャルワーク、社会福祉士のあり方というものを今回きちんと皆様方に御議論いただいたのではないかとも思っておりますし、また、社会福祉士だけではなく、先ほどもございましたけれども、介護福祉士あるいはそのほかの専門職としっかり連携をしながら専門職の方々あるいは地域の方々と行政がしっかりタッグを組んで、福祉あるいは地域づくりということを進めていくのだという道筋の御議論をいただいたのではないかとも思っております。
こうしたことを踏まえまして、これから厚生労働省において具体的な見直しに着手してまいりたいと思っていますけれども、それのみならず、将来に向けての議論を我々のほうもしていきたいと思いますし、また皆様方から折に触れ、いろいろな意見をいただくという機会もあろうかと思います。
これからも、我々行政とともに、それぞれのお立場で地域のソーシャルワーク、地域づくりというものを担っていただければと思っておりますので、どうぞ今後ともよろしくお願いいたしますということを申し上げつつ、お礼の御挨拶とさせていただきたいと思います。どうも本当にありがとうございました。
○田中委員長 局長、ありがとうございました。
今後、この取りまとめに基づいて必要な対応が進むことを期待しております。
委員の皆様からは、専門的な内容について積極的に御意見を頂戴いたしました。
また、前向きな議論を展開していただいたことにも深く感謝申し上げます。
まだもう一度、文言の修正が入ったものを確認いただくプロセスが残っておりますが、それについても協力をお願いいたします。
本日の専門委員会はこれにて終了いたします。
皆様には、御多忙のところをお集まりいただき、まことにありがとうございました。

 

(了)

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