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2018年2月21日 第8回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録

雇用環境・均等局雇用機会均等課

○日時

平成30年2月21日


○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階)


○議題

(1)前回ご指摘いただいた点等について
(2)その他

○議事

○佐藤座長 
 それでは、少し時間が早いですけれども、委員の皆さんおそろいですので、第8回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」を始めさせていただきます。

 皆様、御多忙のところをお集まりいただき、ありがとうございます。

 本日は、久保村委員と岡田委員から御欠席の御連絡をいただいています。きょうは岡田委員の代理として稲尾様に御出席いただいています。


○稲尾委員代理 
 よろしくお願いします。


○佐藤座長 
 早速ですけれども、本日は前回の検討会でこれまでの検討会での議論、論点(案)を出していただいて、御議論いただきましたので、それを踏まえて、さらに整理していただいたものを御用意していただいています。それが議題1で、前回の御指摘をいただいた点を踏まえた論点の整理の案ということです。それについて、まず最初に御説明いただき、御議論していただければと思います。

 それでは、議題1に関連した資料について、事務局から御説明をお願いいたします。


○堀井雇用機会均等課長 
 それでは、私より説明をさせていただきます。

 まず、資料1をごらんいただきたいと思います。前回、論点ということで、パワーハラスメントの防止対策などについて御議論をいただきまして、佐藤座長のほうから、これまで以上に防止対策を進めていくという点で意見が一致している、ただ、どの対策を進めるにしても、大事なのはパワーハラスメントが何かということで、その整理をという話がありましたので、その御指摘も念頭に整理をさせていただいたのが資料1です。

 これは円卓会議のワーキンググループの報告書で示された概念を踏まえまして、これまでいろいろいただいた御意見、そのエッセンスですとか、あるいは裁判例において示された判断なども参考に、この資料1で言いますと左側に「1」「2」「3」と書いてありますが、1~3、いずれをも満たすものを職場におけるパワーハラスメントということで念頭に置いてみてはどうかということです。

 1のところですが、優位性を背景にというところの関連で、「優位性を背景」というところがちょっとわかりにくい、明確化についてということでの御議論もありましたので、優越的な関係に基づいて行われるというふうに書いてございます。その意味するところは、当該行為を受ける労働者が行為者に対して抵抗または拒絶することができない蓋然性が高い関係に基づいて行われるということで考えてはどうかということです。

 そして、右側はその行為の主な例ですが、職務上の地位が上位の者による行為。これが代表的なものということで、多分、実際の現場レベルで見ても割合、数としても多いと思いますが、上位の者による行為。

 2つ目の○が、職務上の上位ということではないのですが、同僚または部下による行為で、例えば当該行為を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難という状況にあるような例。

 3つ目の○は、同僚または部下からの集団による行為などで、物理的に抵抗または拒絶することが困難であると考えられるような例。裁判例でもこのようなものがあったと思いますが、このようなことを例示として挙げています。

 2の「業務の適正な範囲を超えて行われること」については、社会通念に照らして、その行為が明らかに業務上の必要性がない、またはその態様が相当でないということで考えてはどうか。

 その例としては右側にありますような、1つ目は明らかに必要性がない行為。

 2つ目は、業務の目的を大きく逸脱して、手段として不適当な行為。

 3つ目は、例えば行為の回数とか行為者の数とか、さまざまなものがあると思いますが、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超えているような行為。このような例を挙げさせていただいています。

 3の「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」については、1つ目の○ですが、当該行為を受けた者が身体的もしくは精神的に圧力を加えられ負担を感じる、または当該行為により当該行為を受けた者の職場環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じている、そのようなこと。

 2つ目は、やはり何らかの形で措置を職場の中で講じていくということを考えると、一定の客観性が必要なので、これは「平均的な労働者の感じ方」を基準とするということ味でございます。

 そして、そのような身体的もしくは精神的な苦痛、または就業環境が害された例として、右側の4つほど挙げていますが、暴力により傷害を負わせた行為、著しい暴言を吐くなどで、人格を否定した行為、あとは、大声で怒鳴るなどの厳しい叱責を執拗に繰り返して、恐怖を感じた例、そして、長期にわたる無視、能力に見合わない仕事の付与など、就業意欲を低下させる行為。こういったものを例示として挙げています。

 以上が資料1です。

 資料2でございますが、こちらはパワーハラスメント防止の対応策ということで、それらのメリット・デメリット。これは既にこれまでも出させていただいた資料です。それを前回の論点ですとか御意見を踏まえて補足したものということでごらんいただければと思います。

 資料3の部分でございます。こちらは本日お配りさせていただきました参考資料1というものがございますが、こちらの8ページをごらんいただければと思います。前回お出しさせていただいた資料で、事業主が講ずる雇用管理上の措置ということで、例えばウとエについて、どのような措置が考えられるかという論点がございましたけれども、ここで文章として書いていたものをリストアップしたということでございます。

 ですので、またごらんいただきまして、いろいろな補足などもあるかもしれませんが、あわせまして(参考)ということで、例えばこれまでの研究会でもセクシュアルハラスメントなどの行為に対する対応を比較表として出させていただいたこともありましたので、この資料も同じような形で比較可能なようにということで、セクハラ・マタハラにおいて事業主が講じなければならないとされている措置を資料として出させていただいたものでございます。

 資料4は「顧客や取引先からの迷惑行為について」でございます。

 前回、企業ヒアリングをした結果についてまとめたものを出させていただきましたが、その際にいろいろ御議論をいただいて、御意見をいただいた中で、このような行為については、ハラスメント的なことはしてはならないということをやはり周知をしてはどうかとか、ハラスメント的なことをやるというのはどういう状況であっても問題だという御意見もありましたが、ただ、職場のパワーハラスメントという、この検討会の本来の趣旨からしてみると、少し異なったものであるのではないか。別枠として扱ったりしたほうがいいのではないかという御意見もありました。

 ここは労働問題として捉えるべきなのかどうかという御意見もあったと思いますので、そのようなことを踏まえて整理をした紙でございます。

 一つのアプローチとしまして、1つ目の○ですが、使用者が労働契約に伴って負う安全配慮義務の内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所など安全配慮義務が問題となる具体的な状況によって異なる。しかしながら、一般的には、顧客や取引先など外部の者から迷惑行為があった場合でも、事業者は労働者の安全に配慮する必要がある場合があるのではないかということは考えられるのではないかというのが1つ目の○です。

 2つ目の○ですが、これは前回出させていただいた企業のヒアリング結果などから勘案しましても、事業主が、労働者の安全に配慮するために対応が求められる点におきましては、顧客や取引先からの迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性があるということは指摘できるのではないかということがあります。

 3点目の○ですが、しかしながら、顧客や取引先からの迷惑行為への対応は、職場のパワーハラスメントへの対応と次の点で異なるだろうということで、マル1~マル5を挙げさせていただいています。

 マル1としては、職場のパワーハラスメントと比べて実効性のある予防策を講じることは一般的には困難な場合がある。つまり、行為者などの特定をしにくいケースが多いと思われ、そのようなことから、同一の予防策ということであらかじめ準備をするということの困難性を指摘しています。

 マル2は、顧客にはその事業主が策定する就業規則など、要は事業主が司どる規範の影響が及ばない。したがいまして、その対応に実効性が伴わない場合があるのではないか。

 マル3としましては、顧客の要求に応じない、あるいは顧客に対して対応を要求することがそもそも事業の妨げになることがあるという指摘もありました。

 マル4ですが、例えばこれはどちらかというとBtoBの取引先との関係性ということが多いと思いますが、その問題が取引先との商慣行などに由来する場合。これは個別の、個々の事業主ができる範囲での対応ということでは解決につながらない場合があるのではないか。

 マル5としましては、そもそも接客や営業、苦情相談窓口など、これは代表的な例ということで出させていただいていますが、このような顧客等への対応業務には、それ自体に顧客等からの一定程度の注文やクレームへの対応が内在しているということがあると思います。

 そんなことを考えたときに、そのような対応と、それが迷惑行為で、さらにはそういったことに対して何らかのさらなる対応が必要だと求められる局面という、その線引きをどういうふうにしていくかという問題があるかと思います。

 以上のようなことを踏まえて、顧客や取引先からの迷惑行為への対応としてどのような取組みが考えられるかということを御議論いただければと思います。

 私からは以上です。


○佐藤座長 
 どうもありがとうございました。

 きょうはこの前の論点をさらに整理していただいたということですので、資料、データとか法案の、これまでの判例の説明とかとは違うので、事実確認的な質問は特にいいですか。これは何ですかみたいなものはいいですか。

 それでは、資料について皆さんから御意見を伺いたいのですが、一応、こういうふうに3つに分けてやらせていただければと思います。1つは、資料1のパワーハラスメントの定義です。あとは、それを踏まえた上で対応策ということで資料2と資料3。最後に、今、いただいた顧客や取引先からの迷惑行為というふうに順番に分けて議論させていただいて、最後にまた戻ってきて、全体で御意見があればというふうにさせていただければと思います。

 最初に、資料1の職場におけるパワーハラスメントの定義の案です。これは要素と、その説明と、考えられる行為の例。例はこれだけに限られるわけではない例ということなのですけれども、一応、1~3を全て満たした場合ですから、職場でのパワーハラスメントというものは行為者が、これはグループの場合もあると思いますが、優越的な関係に基づいて、かつ業務の適切な範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害するような行為。これがパワーハラスメントという御提案で、それはいわゆる概念規定で、それぞれの要素の説明が「意味」のところです。それを踏まえた例がここに挙げられたということです。

 では、これについて、一応、私の理解はそれでいいですか。


○堀井雇用機会均等課長 
 はい。


○佐藤座長 
 では、杉崎委員、お願いします。


○杉崎委員 
 この資料1についてなのですけれども、今回のこの定義自体、この資料1を一読させていただきまして、特段の違和感もございませんでしたし、先ほど御説明いただいたとおりの定義で妥当であると考えてございます。

 以上です。


○佐藤座長 
 漆原委員、どうぞ。


○漆原委員 
 我々、連合としても、ここに記載されています3つの要素と、その右側に記載されています意味のところについても、特段違和感はありません。

 ただ、ここで記載されている内容と、これまでの6類型との関係性についてはここにいる委員以外にもわかりやすく整理する必要があると思いますので、6類型の中のこの項目は3つの要素のこういう関連から導かれているとか、あるいはこの中との関係がどうなっているかという説明をパワーポイントや文章等で示すとわかりやすいのかなと思っております。


○佐藤座長 
 では、布山委員、どうぞ。


○布山委員 
 すみません。私も確認と意見です。

 まず確認としては、前回も申し上げた部分ですが、個人の受け取り方で業務上必要な指示・注意を不満に感じたとする場合でも業務上の適正な範囲で行われるものはパワーハラスメントに当たらないということがこの資料1の2と、3の「平均的な労働者の感じ方」ということで網羅しているということで考えればいいのかどうかというのが1つです。

 それから、今、漆原委員からの御指摘があったとおり、すでに取組んでいる企業は今のワーキンググループの報告書をもとにきちんと取組んでいるということを踏まえると、6類型だけがということを言っているわけではないのですけれども、多分3の「考えられる行為の主な例」というものが具体的なパワーハラスメントに当たる例示だと思うのですが、そこはこれまでの6類型も参考にしていただいて、それも入れていただくような形にしたほうがわかりやすいのではないかと思います。


○佐藤座長 
 今、もしあれば事務局から、特に最初のところの質問ですね。


○堀井雇用機会均等課長 
 今、いただいた御意見の中で、特に布山委員から2点いただいたと思います。本人の受け取り方の部分については、この検討会での御議論も踏まえてと思いますが、この資料1の3のところの「平均的な労働者の感じ方」という部分を多分どういうふうな形で具体化していくのかというところで、ある程度反映できるところがあるのかなと思っています。

 それと、6類型のところの御指摘も、確かにああいう形の類型はわかりやすいというお話もあり、これまで何回か本検討会でも6類型に関して、基本として、それも維持しつつというお話もありました。したがいまして、例えばこの資料1のような概念的な考え方を示すということになっても、あの6類型が全くなくなるということではないのではないかと考えています。

 一方で、きょうお手元に配付させていただいた参考資料3の6ページをごらんいただければと思います。この参考資料3の6ページは、まさに、お話が出た6類型の関係の部分になります。例えば、この円卓会議の提言の報告の関連で、この6ページの(2)のところで行為類型の説明がある中に、例えば2つ目の○で、判断に資する取り組みなどについて示しておこうという1段落目の次のところで、6類型に該当して、それぞれ「業務の適正な範囲」をどう関係づけるかという考え方があります。

 その中で、例えばマル4とかマル6、あるいはマル2、マル3についてもそうだと思うのですが「業務の適正な範囲を超える」か、あるいは線引きがどうかという部分が、例えば6ページの一番下の段落の「一方」というところでは、必ずしも容易ではない場合があって、こうした行為について何が「業務の適正な範囲を超える」かについては、業種や企業文化の影響を受け、また、具体的な判断について、行為が行われた状況や行為が継続的であるかどうかによっても左右される部分があると考えられるので、各企業・職場で認識をそろえ、その範囲を明確にする取り組みを行うことが望ましいというふうに記述があります。

 それで、ここの考え方自体は確かに各企業・職場で違うだろうと思うのですが、さらにもうちょっと何か具体的に各現場がわかりやすく、そして取り組みができるものを示す。その一助になるような形が今回の資料1のような整理として、このつなぎということでできればということがありますので、もしこういう考え方をベースにということで、さらにまた御意見もあると思いますが、御理解いただければ、このつなぎになるような示し方もするなど、工夫をしてみたいと考えています。


○佐藤座長 
 布山委員の最初の御質問については、基本的に1~3をみんな満たしてということなので、そういう意味では当然、2が落ちていればそうではない。ただ、暴力的な事件を受ければ、それ自体としてはまた別の話ではあるけれどもね。

 ほかにはいかがでしょうか。

 では、中澤委員で、その次に原委員の順番でどうぞ。


○中澤委員 
 資料1で質問です。3の「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」の「意味」の一番下に「平均的な労働者の感じ方」を基準とするということが書かれています。この場合の「平均的な労働者の感じ方」というものは、社内的な面でのいわゆる平均的な労働者なのか、一般的な労働者か、業種においてなのかという質問ですが、いかがでしょうか。


○佐藤座長 
 では、お願いします。


○堀井雇用機会均等課長 
 そこは検討会でも、委員の皆様方にも御意見をいただきたいところだと思うのですが、まず企業の職場の中で通常やっている業務というところもベースにあると思いますし、さらにはもうちょっと幅広く見たほうがいいこともあると思いますので、やはりケースによって違ってくるところはあるようには思いますが、個人の主観だけではないところがベースに来るという考え方が今までの検討会の御意見の中でありましたので、まずそこは基本にしている。そういう意味合いで書いています。


○佐藤座長 
 では、どうぞ。


○中澤委員 
 職場によって、パワハラの基準は多々あろうかと思いますので、そのあたりのことは今言われたようなことがきちんと明確にメッセージできるようなものが必要かと思います。


○佐藤座長 
 では、原委員、どうぞ。


○原委員 
 資料1につきまして、私自身は、この3つの判断要素は従来の判例が重視してきたポイントも踏まえられていて、非常にわかりやすく、適切なものと感じています。

 2点ほど感想を申し上げます。1点目、従来の6類型は、具体的な判断のプロセスを考えていくと、この3つの要素を全て満たすものの典型例が6類型ということになりますので、従来の蓄積を十分活かせるのでは、と感じております。

 もう1点は、実際にパワハラ的な事案に対応するときに非常に使いやすい制度だと思います。といいますのは、判断要素の1~3について、一瞬で、各要素のあり、なしを判断できるわけではないわけです。事案に対応する際は、例えば、要素1と3が満たされている可能性が高いのであれば、要素2について適正な範囲を超えている可能性が高い、といったふうに判断していくことになる。ただ、2について調べてみたら、どうやら業務の範囲内といえるのではないか、ということであれば、また1や3、特に3に戻って、さきほどの「平均的な労働者の感じ方」からすると、パワハラという申し立てはあるけれども、実はパワハラとはいえないのではないか、などと判断することになる。

 この判断要素1~3は、パワハラの申し立てがあったとき、まず1や3が満たされていればパワハラといえる可能性はあって、2について詳細に検討した結果、また3に戻って判断して、パワハラという申し立てがあったけれども、これは違うのだ、といった判断に使えるという意味で、使用者側にとっても非常に有用なものだと思います。


○佐藤座長 
 ほかにはいかがでしょうか。

 では、小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 
 先ほど中澤委員がおっしゃられた「平均的な労働者の感じ方」というところですが、私の意見としては、各企業における差というものを出してしまうと、この企業では許容されるのだけれども、こちらの企業では許容されないという事態も起こりかねないため、一般的にはおかしいと思います。基本的には社会通念に照らして平均的と言えるのがどのレベルなのかという考え方にしていかないとおかしなことになってしまうかなと思いますので、その点意見を申し上げておきます。


○佐藤座長 
 ほかにはいかがでしょうか。

 ここは、一般的には「平均的な労働者の感じ方」という、それは時代とともに変わっていくわけです。それは例えば建設現場に女性が入ってくると、従来はよかったということが、これはパワハラとは別のハラスメントみたいなことが起きていたりするわけなので、そういう意味では時代とともに変わっていくということを踏まえて、ただ、そのときはそのときでそれは判断しなければいけませんね。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。

 また戻ってくるということで、それでは一応、皆さん、6類型の関係ということについてはわかりやすくということがありましたけれども、こういう整理でいいのではないかということだと思います。

 それを踏まえた上で、なかなか難しいわけですが、具体的にパワーハラスメント防止のために、企業・事業主にどういう対応をとってもらうのかということで、資料2で一応、ここでは5つの対応策で、それぞれメリット・デメリットを整理いただいています。

 それで、これは例えば一番最後の「社会機運の醸成」については、いずれとも複合的に取り組むと書いてありますけれども、例えば措置義務を選んでもガイドラインもあり得るわけですね。ですから、そういう意味では複合的なのは一番下だけではなくてという理解でいいですか。


○堀井雇用機会均等課長 
 前回の検討会のときも、チャレンジングでありますけれども、理論上はやろうと思ったら全部一緒にできるということなのではないかというご意見もありましたので、そこはありうるとは思います。


○佐藤座長 
 もちろん、一番上から全部とあるけれども、例えば措置義務もというふうにした場合でもガイドラインで、多分、一般的にはこういうものを今までの取り組みで進めましたし、社会的機運ということがあると思います。多分、そこから下は複合的になる可能性は高いかなということで、ただ、どれをメーンに提示し、その上でそれを、例えば措置義務を選んだとすれば、それが進むためには、ほかの取り組みをどうするかということになるかと思います。

 それでは、これについて御意見を伺えればと思います。

 杉崎委員、どうぞ。


○杉崎委員 
 これはたしか前回も発言させていただいたと思うのですが、今回のパワハラ防止自体は非常に重要な取り組みであるということは認識しているところでございますが、前回の資料の中には中小企業の取り組み状況に関するアンケート調査結果などもございまして、こうした現状を踏まえますと、事業主による措置義務を現下の状況で課するということよりは、このガイドラインをもっていろいろな取り組みを明示することですとか、あとは幅広い事例を収集して周知していくということが現下の状況においては現実的な対応なのではないかと考えてございます。


○佐藤座長 
 それと私、資料2と資料3をセットで、資料3も含めてで。

 では、今、とりあえず伺っておけばいいですか。

 小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 
 これも前回申し上げたことと重複する部分はあると思うのですが、改めてということで申し上げます。先ほど杉崎委員がおっしゃられた資料2の4の対応のみを想定した場合、これは前回も原先生もおっしゃられていたことだと思いますが、やはり根拠法令がない中でのガイドラ インのみでの対応ということですと、ここの4番目のところの一番上の○にメリットとして「実情を踏まえた自主的な防止対策が促進される」と書いてあるのですが、私はやはりそうではないと思っていまして、自主的な取り組みの場合は実効性を伴わない可能性が高いのではないかと考えております。

 従って、これまで労側委員から申し上げているとおり、基本的には3番目の事業主の措置義務の法制化と、その上での4つ目の対策。これはセットであろうということを改めて申し上げたいと思います。

 加えて、重要になってくるのは、我々としても法制化した後の現場レベルでの取り組みであり、できるだけ混乱のない形で、かつ円滑に、実効性ある形で進めていくべきだと思っていますので、その意味では法施行までの期間をしっかりと活用して、具体的な措置内容を示すガイドラインのつくり込みをしていく上では、労使も含めた上で検討会なり審議会の場で論議をしっかり交わして、よいものをつくり上げていくことで、できるだけ混乱のないような形で取り組みを進めていく。これが必要ではないかと考えている次第であります。

○佐藤座長 
 ちょっと私、確認しておけばよかったのは、資料3の位置づけは、例えば措置義務を選んだときの企業の制度というふうに、あるいはガイドラインも含めてなのですか。ガイドラインや措置義務の場合の取り組みの案が資料3という理解でいいのですか。資料2と資料3の関係なのです。


○堀井雇用機会均等課長 
 先ほどと同じ説明になりますけれども、本日お配りした参考資料1の8ページでウとエ、つまり措置義務あるいはガイドラインがウとエに該当したものだと思うのですけれども、このウとエについて何らかのことを事業主が講ずる場合、つまり選択肢としてア~オとあって、行為者に着目した対応策なども含めてアからあったわけですけれども、ウとエは事業主に着目して何らかの措置を講じる場合。そういった場合に、どういう取り組みがパワーハラスメントの防止ということで考えられるかということをラインナップしたものです。

 参考資料1の9ページでは、例えば類似のハラスメント、セクシュアルハラスメントではこういうことが今、義務づけられているとか、あるいはパワハラについては円卓会議で7つの取組例があるとか、そういったことを文書で紹介していただけだったものですから、より全体としてラインナップをしたほうがわかりやすいかなという趣旨で書いているものが資料3でございます。


○佐藤座長 
 そういうことを踏まえた上で、ほかにいかがでしょうか。

 中小企業についての議論が出ましたが、では、内村委員、どうぞ。


○内村委員 
 先ほど中澤委員からも杉崎委員からも意見がありましたが、やはり中小企業については、様々な対策を講じるにしても、人手不足といった問題もあるため、部外の相談窓口の設置も含めて何らか政府としては支援をしていくことが必要かと思います。今までのアンケートの結果を見ても、やはりその対策が不十分ではないかと感じます。

 パワハラの要因をなくすという観点では、資料3のマル4の内容が重要だと思います。また、実際にはパワハラ対策は法制化されていませんが、様々な職場がある中で、例えば上司と部下の関係がうまくいっていないところでいいますと、メンタルが原因で休職すると、その上司を異動させる、あるいは本人が職場復帰するときには他の部署に異動させることで、その2人の関係が解消されるといった取り組みを既に講じている企業もあると思います。一方で、どっちが悪いとか、どっちがいいとかと決めつけると、こっちは悪くないのだから絶対異動させないとか、何もしないとかというふうになってくると、なかなか改善が講じられないケースも実際にあります。

 従って、被害者・加害者それぞれにおける具体的で、迅速かつ適切な事後対応方法が明確化されていくと、被害者、加害者、双方ともにこれから注意をしていくような形にはなってくると思います。


○佐藤座長 
 では、原委員、どうぞ。


○原委員 
 意見2点と質問1点の3点、お話しいたします。

 まず意見の1点目は、資料3の案について、非常に妥当な内容であると考えた点です。要は、セクハラ・マタハラと共通している、マル1研修とマル2窓口、それから、マル3起きた場合の対応を3点セットにして、パワハラの場合に特徴的なこととしてマル4を加えたということです。マル4もすぐやりなさいということではなくて、望ましいものとして方向性を示すということですから、マル1~マル3の3点セット+マル4、マル5ということで、非常にやりやすいものであると思います。例えば、取り組みが進んでいる大企業であれば、マル3やマル4をさらに充実させる。先回ありましたアンガーマネジメントなど、さまざまな研修を取り入れるといったこともあるでしょうし、中小企業で対策がまだ進んでいなければ、まずはマル1です。パワハラはだめなのだ、ということを研修などでしっかりやるというところから始められます。このマル1~マル5は、企業の規模や今までの取り組みの蓄積に合った対応ができるということになりそうですから、妥当なまとめではないかと思います。

 意見の2点目は資料2のところです。措置義務の法定か、それともガイドラインかという話がありましたが、私自身は措置義務の法定に賛成です。資料2の措置義務の法定のデメリットの箇所、丸の3つ目ですけれども、定義の明確化については、今回出していただいた資料1というまとめがありますので、この点はある程度払拭されたと考えてよいと思います。また、丸の2つ目の現場の対応につきましても、資料3のように具体的な手引を示して、あとはその企業の実態に合わせた対応を進めてもらうということですから、そこまで懸念として考えなくてもいいのではと思います。

 3点目は質問といいますか、確認したいことです。基本的なことで恐縮ですが、措置義務の法定なしにガイドラインをつくった場合に、このデメリットの丸の2つ目で「行政等による強制力が弱い」とありますけれども、もし措置義務を法定しないままガイドラインを示したときに、やってくれないような企業がいたときに、行政として何か強制的な働きかけですとか、そういうものはできるのでしょうか。事務局に確認したいのですけれども、いかがですか。


○堀井雇用機会均等課長 
 例えばガイドラインを策定して、それに基づいて行政として指導する。こういったものが策定されました、その中に盛り込まれていることはこういったことですということはお示しして、そういった方向性に導くことはできうると思います。

 ただ一方で、法律に根拠があり、例えばセクシュアルハラスメントの措置義務について申し上げると、報告徴収をし、その結果、勧告、従わない場合についての企業名の公表とか、そういったことが法律に根拠がない場合にできるかというと、必ずしもそこは難しい部分もあるのかなとは思います。


○原委員 
 そうしますと、ざっくり言うと、お願いベースということになりますか。


○堀井雇用機会均等課長 
 ただ、そのお願いも、あくまでガイドラインという形で一定程度、例えば審議会などでの議論を経たものとなりますから、その内容は多分いろんな色合いといいますか、意味づけはあるかとは思います。


○原委員 
 確かに、大企業であればすでにやっていますし、今後もどんどんやっていくでしょうし、ということはありますけれども、「やれない」も含めて、「やらない」企業が出たときに、強制力という意味では、弱いというよりは、強制力が「ない」と明記すべき話なのかもしれません。その辺はいろいろな御判断があったかもしれませんが、4番目のガイドラインの明示に関しては、強制力の面で3番目の措置義務の法定と大きな違いがあるということは今、確認できたかと思います。

 私からは以上なのですけれども、資料3をもう一度ご覧いただきますと、パワハラを禁止するとか、パワハラがあった企業に多額の罰金を科するとか、そういった話ではなくて、研修なり相談窓口なりをやっていきましょうということですよね。もちろん、法律で義務を書くことは重みがあることなのかもしれませんが、その書き込む義務の内容が研修や相談窓口であるといったことは、使用者側として負担を考えるときに、どこまで大きい負担なのでしょうか。これが明確な禁止であるとか、多額の罰金であるとかいうことであれば、また話は別かもしれませんが、そうではない、ということも踏まえて議論を進めていけるといいのではと感じます。 


○佐藤座長 
 ほかにいかがでしょうか。

 では、稲尾さん、どうぞ。


○稲尾委員代理 
 済みません。本日、岡田の代理の稲尾と申します。

 私は、この資料2を改めて拝見して、もし、このような形で措置義務みたいな形になった場合に、むしろ中小企業はいろいろ対策を打ちやすくなるのかなというふうに私は感じました。というのは、最近、私どもの企業さんのお問い合わせでも、中小さんが結構多いのです。100人以下の企業さんでも何とかしたいということで言われるのですが、なさっている方が結構ポジションの高い方で、自分もかつて上の人たちから暴言、ここに資料1で書いてあるような著しい暴言みたいなもので指導を受けてきた。それが自分たちのマネジメントの世代になって、何でだめなのだというときに、それを抑止することがなかなか難しい。

 それに関しては、やはりいろいろそれに対してメンタルダウンがあったりとか、生産性が落ちるということがだんだんデータでわかってきている。アンケート結果などでもわかってきていることもあるので、それをもとに今、こういうガイドラインからも一歩進んだ、こういう措置義務のようなものがあるのですというところで、むしろきちんと抑止がかかるという意味では、中小のほうがもしかしたら助かるのかなという、私の中の実感があります。

 ただ、それに対して、やらないからといって、すごく不利を受けるのかというところに関しては、逆に言いますと、今、大企業さんなんかで進んでいるところは既に運用ベースでも措置義務レベルのことはやっているところもたくさんありまして、それほど影響がないのかなとも感じておりますので、むしろ中小企業のほうをサポートする意味で、このあたりは有効になるのかなという印象があります。

 以上です。


○佐藤座長 
 では、杉崎委員、お願いします。


○杉崎委員 
 ただいまの御意見について、そういった御意見があるのも理解できるところではございます。

 しかしながら、この資料2の上段から2つ目のところの最高裁判例などにより定着した規範がないといったことですとか、先ほどの資料1の中にも社会通念に照らしてであるとか「平均的な労働者の感じ方」を基準とするというところからしますと、まずはガイドラインによって事例を積み上げて、いろいろな取り組みを周知していくのが現実的な対応かと思います。


○佐藤座長 
 では、稲尾さん、どうぞ。


○稲尾委員代理 
 今、杉崎委員がおっしゃっていただいたように「平均的な労働者の感じ方」みたいなところは、まだちょっと曖昧さが残る部分なのかなというふうにも私も思っております。ただ、セクシュアルハラスメントが今、これで運用されていることを考えると、それほど違わないのかなと感じるところが1つあります。

 もう一つは中小さんで、私ども実はなかなか予算の関係でお手伝いができないときに、今、厚労省さんでやっている、いわゆる「あかるい職場応援団」のホームページの御紹介をすることもかなりあるのです。動画があったり、研修資料があったり、あるいは対策マニュアルがあったりとか、そういうことで随分広く認知がされているのではないかということと、実は私、そちらのほうの企画委員もやらせていただいているのですけれども、その企画委員会の中で、マニュアルのダウンロード数がなかなか落ちないで、ずっと一定数維持されて、ずっとダウンロードされ続けているという報告をたしか受けたことがありまして、ということは、どんどんそういう情報をとりに行っているような時代になっているということは、かなりそういう意味では社会的通念みたいなものは浸透しているのかなというふうには今、感じております。


○佐藤座長 
 漆原委員、どうぞ。


○漆原委員 
 今のところに関連しまして、一番下の社会機運がポイントになると思っておりまして、単にガイドラインを出すだけではなくて、もちろん、国としても厚生労働省以外の省庁も含めて、社会機運の醸成に取り組むことが望ましいと思います。もちろん、我々、労働組合も職場でパワハラ予防に関する機運の醸成の取り組みは積極的にやっていきたいと思っておりますし、これがセットになっていれば、全体の意識が高まり、どういうものが平均的なのかということの社会的な考え方についても、ある程度方向性がついていくのではないかと考えています。


○佐藤座長 
 ほかにはいかがでしょうか。

 では、内藤委員、どうぞ。


○内藤委員 
 恐れ入ります。

 ただいまの諸委員の御意見の中で、杉崎委員が恐らくは、この資料2において最高裁判例などにより定着した規範がないということを大変気に病んでいらしたように思いましたのですが、その点については下級審裁判例などをこの検討会でも随分取り上げられたように、そして漆原委員等、皆様がおっしゃったように、それはある意味ではどこかに明確な線が引けるものではないにしても、多くの方々が既にパワーハラスメントということは、ある意味ではやってはならない行為であるという、そういった社会的機運はもう盛り上がりつつあると思うのです。そういう中で、例えばかつてセクシュアルハラスメントについて、いろいろな形でガイドラインが入り、法制化といいますか、そういった裁判例が出てきた。その流れを見ておりますと、既に何もないところからつくるわけではないと私は思うのです。

 そういたしますと、これはむしろ事業主による措置義務というものを法定する。ただ、それは例えば法定化された途端に罰則がかかるとか、そういったものではなく、ある程度の段階的実施もできますし、かつそれがあることによってガイドラインも一層、有効に働き得ると思いますので、むしろ事業主による措置義務あたりまでは何とか法定化することを提言し、その上でガイドライン等とのいわば総合的な効果ということを願う。そのほうがより有効なやり方ではないかと思われます。

 大変申しわけないのですが、恐らく中小企業の方々が気に病まれるのは、何か罰則規定がかかってくるとか、そういった点なのでございましょうか。それとも、失礼な表現ですが、コストが非常に増すのではないかということでいらっしゃいましょうか。もしコストとかということであれば、むしろセクシュアルハラスメントあるいはこの資料3の次にございましたように、セクハラもしくは俗にマタニティーハラスメントと呼ばれている育児休業・介護休業等に関するところの施策は多くの企業で既に取り入れなければならないところだと思うのです。そうしますと、それとの整合性を考えると、ゼロから、無からつくるのではないと思うのですが、そのあたりはいかがでございましょうか。お考え合わせいただければと思います。


○佐藤座長 
 では、もしあれば、安藤委員、どうぞ。


○安藤委員 
 今、内藤委員がおっしゃったことに関連して、私たち教育の現場から感じ取っていることで言いますと、パワハラという言葉自体が本当の意味で浸透しているのかというと、恐らく言葉を知っている人はかなり多いのかなと思いつつも、では、本当のところ、パワハラとは一体何なのかと聞いたときに、よくわからないという答えが恐らく実は圧倒的なのかなと。わからないから何かコストがかかってしまうのではないかとか、わからないから何か罰則を受けてしまうのではないかとか、そういったところのほうが実は大きいのかなと。

 ちょっと古いデータになって恐縮なのですけれども、私たちが独自にとった調査で、怒っている側と怒られている側でパワハラはどう意識が違いますかという、インターネットで調査を2年前にやったのです。そのときに、ざっくり言ってしまうと、怒っている側が怒りながら、ああ、これはパワハラかもと思っている確率が大体16.7%に対して、怒られている側が、これはパワハラじゃないかと思っている確率が53.8%だったのです。ここでいうパワハラは、それが本当にパワハラかどうかはさておいて、自分がそう思うかどうか。そうなりますと、やはり労使で意識が違ってしまっている。

 その違いの原因はそもそも、パワハラという定義がよくわかっていないというのが、どうも言葉としては広まってはいるものの、よくわからないことに対する恐怖感みたいなものが大きいのかなというのはちょっと感じます。


○佐藤座長 
 ほかにはいかがでしょうか。

 では、野川委員、どうぞ。


○野川委員 
 座長、5分下さい。

 私は、資料2に関しては、ベストは2番目の損害賠償の根拠規定の法定だと思いますが、現段階では3番目の事業主による措置義務の法定であるということを3つの理由を挙げて申し上げたいと思います。

 第1は、この検討会のミッションに関してです。既に以前に円卓会議において、パワーハラスメントについての一定の定義が示され、また、具体的な6つの類型も提示され、提言という形で世に出された。これに対して現在、もう一度パワハラの検討会という形で政府のミッションを受けて、この検討会が今、議論を行っているという場合に、以前の提言の段階にとどまるような内容の報告書を出すことが許されるのは、以前の提言において、それが十分に機能し、あるいはそれによって一定の沈静化が図られている。パワーハラスメントについてはかなり悪化も防がれている場合だけです。

 考えていただきたいのですが、例えば会社でハラスメントについての苦情が非常に多くなったので、会社の中に検討会をつくって、今後そういうことがないようにするにはどうしたらいいかということについて、この円卓会議のような定義や提言が行われたとしましょう。ところが、それが悪化して、むしろ非常に深刻な状態になった。そこで社長の命令によって、新たに検討会が会社の中につくられた場合に、深刻度が増し、非常に悪化しているにもかかわらず以前の状況で出された提言と同じものを出したら、会社のお金を使って何をやっているのだと言われるのではないでしょうか。さらに、この検討会は会社のお金どころでない。国民の税金を使って行われています。そういう観点からすれば、前回と同じような内容のものを出すことはあり得ない。

 第2に、企業からして、私はこの3番目の措置義務の法定は、皆さんからも出ましたが、極めて有益であろうと思います。それは皆さんとは違う観点から1つお話ししますと、例えば単なるガイドラインや指針等で示されたことを守っている、あるいはそれに配慮しているということは、裁判所の目から見ますと、特にこれは取り上げるに足らない事情なのです。

 例えばあの6つの内容について、一定の配慮をしています。だから、会社は今回起こったパワハラについては特に責任がありませんということは通りにくい。しかし、セクハラでもそうですが、法律上、このような義務を講じることが義務づけられている内容を充足していますということであれば、パワハラを行った本人に対する責任はいざ知らず、会社に対する責任は非常に認められにくくなる。これは間違いありません。違法性はそこでかなりの程度、阻却され得る。

 したがって、企業としては非常に見通しのあるリスク管理を十分に踏まえた人事がそれ以後、可能になる。逆に言えば、単なるガイドライン等で済ませていれば、今後もふえていくパワハラに関する法的な訴訟であったり、あるいは労働審判への申し立てであったりした場合に何が起こるか。会社がどのように責任を問われるか。常に不測のリスクを抱えながら経営をしていかなければいけないことをそれでよしとする経営者はいないであろうと思います。

 経営者にとっては、この措置義務はその意味で極めて効率的で、リスクに対応し得る内容であろうと思いますし、中小企業に関しては、先ほどからあるように、例えば一定の猶予措置や緩和措置もあり得るでしょう。特別な支援もあり得るでしょう。それは本質的な問題ではない。

 3番目に、労働者にとって、このような措置義務がきちんと明示され、それが整えられている企業がブラック企業ではないということで、安心してそこで働くことができ、十分に企業に貢献し、生き生きとした就労を可能にすると思います。

 ただ、最後に1つ問題は、どのように法制化するかです。例えばセクハラの場合、措置義務を講じるような規定が設けられたのは均等法があって、本当は均等法とあの規定はちょっとなじまないのですが、何とか埋め込めた。それをどうするのか。労働契約法か、労働安全衛生法か、あるいは別途政策的な法をつくるのかということについては検討の余地があるので、私は次回はむしろ、措置義務を講じることを踏まえて、どのように具体的な方法での、この検討会としての提言をするかということに行ったほうが生産的ではないかと思います。

 以上です。


○佐藤座長 
 ほかにございますか。

 川上委員、どうぞ。


○川上委員 
 済みません。今の議論と少し別のことですが、資料3のほうにマル4のパワーハラスメントの原因等を解消する取り組みとして、相談窓口と産業保健スタッフなどとの連携を入れていただいてありがとうございます。

 ただ、このあたり、私が十分これまで発言できていないので、ちょっと中身が薄いといいますか、ちょっとイメージがつきにくいと思いますので、少しだけ補足させていただいて、議事録に残したり、あるいは資料5のほうに入れていただければと思います。

 4点あると思っていますが、1つはパワーハラスメントに対する対応策の中で、産業医や産業保健専門職の役割を記載する、明確化するということが各事業所の体制の中で役割を明確にすることがあるかと思います。

 2つ目は、ここに書いてあるように、メインとなる相談窓口との連携があるかと思います。

 3つ目に、産業医や産業保健専門職がすべきこと、留意すべきこと、やってはいけないことなどの整理があって、それがマニュアル化されることが望ましいと思います。

 4点目は、それを周知したり、あるいは産業医、産業保健専門職に教育研修をするということかと思っていまして、この点はこれまでの私の発言が不足しておりましたので、ここで追加させていただければと思います。


○佐藤座長 
 ほかにはございますか。

 では、稲尾さん、どうぞ。


○稲尾委員代理 
 済みません。先ほどもちょっと発言の中に「平均的な労働者の感じ方」の基準というところをずっと私は今も考えていたのですけれども、多分、感じ方だけが基準なのではなくて、具体的な事実ベースを明確にするところがポイントなのではないかなと思っています。

 そのときに、例えば資料1の1や2で書いてある上下関係のパワーのバランスがどうなのかとか、あるいは2の3つ目の○に書いてある回数とか内容とか、そういうものが具体的になった上で、それが本当に社会的通念上どうなのかという事実ベースのところも結構入れていかないと、本当の意味で企業が判断するときには難しいだろうなと思いましたので、ちょっとつけ加えをさせていただきました。


○佐藤座長 
 では、布山委員、どうぞ。


○布山委員 
 その件であわせて、同じ職場の人たちが見たときにどう判断するかというのもあるのではないかと思います。

 先ほどのどういう対応策にするかということについて、資料3のマル1~マル3の部分は、既に企業では、セクシュアルハラスメントだから相談に乗るだとか、いわゆる育児休業に関するハラスメントだから相談に乗るということではなく、全体的に見ているので、事実上、これは行っているのだと思います。

 もう一つ、先ほど裁判になったらというお話がありましたけれども、ここで議論しなければいけないのは、裁判になったらではなくて、裁判にならないように企業の労使でどう行うかということではないでしょうか。今、少なくとも自主的に企業が取組んでいいて、その中で何をするかということを考えるとなると、先ほどの資料1のように定義を明確化した上でどのように判断するかということがわかれば、取り組みやすいのではないでしょうか。そういう意味でのガイドラインをまず出すということは、ワーキングの報告書をもとに今取組んでいることよりも少なくとも一歩進んでいるのではないかという意味合いで、まずは法律の根拠に伴わなくても、ガイドラインをきちんと出すということで実質的に取り組むことが必要なのかなということでこれまで主張していたと思いますので、もう一度改めて言わせていただきます。


○佐藤座長 
 どうぞ。


○野川委員 
 裁判になるか、ならないかの問題ではなくて、ルールとしてどれくらいきちんと守られるべきかという問題なのです。ガイドラインを守ったとしても、先ほど申し上げたように、それが破られてパワハラは起こりますから、起こるから、こうやって苦情が出てきますし、裁判例も出ているのです。起こったときには、そのリスクを管理することが極めて難しいですと言っているのです。

 企業はコスト感覚で経営をしておられると思います。そのためには、法的にオーソライズされた措置をきちんとやっているということほどコスト管理になる対応はないのではないでしょうかということです。


○佐藤座長 
 内村委員、どうぞ。


○内村委員 
 先ほど野川委員がおっしゃったように、今回のミッションというものはしっかり頭に入れておくべきだなと。

 私が言いたいことは先ほど全部、野川委員が言っていただいたので、もう多くは申しませんが、第1回目の検討会の際に私が言ったのは、ここの資料3のマル4のところに「コミュニケーションの円滑化のための研修等の実施」という項目があるのですけれども、いろんな相談を受けていると、こういうふうにされているのだけれども、パワハラでしょうか、パワハラではないでしょうかかという判断を一方的に相談者からの中身を聞いて問われるケースがあるのです。

 実は最終的にどう言うかといいますと、まずはあなたの考えを伝えてくださいというふうに言います。つまり、風通しが悪いといいますか、コミュニケーションが不足しているところで言えば、こうした措置についてはしっかりやっていくべきだと思います。

 いずれにしても、円卓会議がスタートしたときのワーキンググループの開催の趣旨は、労使、有識者及び政府による検討を行うためでした。そして、今回の検討会はパワハラをなくしていくため、もう一度強化をしてくださいというミッションだということなので、先ほどから言われている、確かにガイドラインをしっかり示すことによって、一歩は前進するかもしれないけれども、今、これだけパワハラの相談がふえている現実からすれば、3歩ぐらい先に進めていかないといけないと個人的には思います。

 以上です。


○佐藤座長 
 では、小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 
 私も内村委員がおっしゃったとおりで、これだけ社会問題化しているときにどこまで踏み込むべきかという判断はやはり大きいと思っているので、今こそしっかりと法制化すべきだと思っていますし、先ほど布山委員がおっしゃった資料3のマル1~マル3のところは大体やっているというところはあったと思うのですけれども、まず事実としてデータベースに基づけば、ここに出ていた資料上、何らかの措置を講じていない、何もやっていないところは約半数あるという、この事実はあると思っていますので、そこに対して手を打っていくのはマストです。

 それから、マル1~マル3のところはやっているという、これはおおむね事実だとは思うものの、その中身がどれだけ実効性あるものとしてワークしているかという視点はしっかりと、これは労使で目線を合わせながら精査していく必要はあるかなと思っていまして、やはりパワハラの被害を一つでも減らしていく、起こさないようにするために、しっかりと義務化した上でやるべきことをやっていくという歩みを進めていかなければいけないのではないかなと思っていますので、最後に申し上げておきます。


○佐藤座長 
 では、杉崎委員、どうぞ。


○杉崎委員 
 先ほど布山委員から御発言がありましたが、私もこの布山委員の発言に賛同させていただきます。

 その上で、今、議論がなされておりますけれども、先ほど申し上げた資料1の社会通念に照らしてであるとか、あとは「平均的な労働者の感じ方」を基準とするというところが非常に大事かなと思っております。先ほど安藤委員からもございましたが、使用者側の感じ方と労働者側の感じ方でも随分違うといったこともあるかと思います。また、今の各企業のいろんな取り組み状況を踏まえた上でも、やはりガイドラインで明示して、いろいろな事例を積み重ねていくことが大事なのではないかと考えます。


○佐藤座長 
 どうぞ。


○漆原委員 
 連合としてはやはり資料2の措置義務とガイドラインと最後の社会機運の醸成というものをセットでやっていくことが重要であると思っております。確かに杉崎委員のおっしゃられた「感じ方の違い」が労使で違うことは当然あるかもしれませんが、それはセクハラでも「やった側」と「やられた側」で違いがあるのと同じとも言えます。議論を積み重ねることも必要ですが、措置義務が課されれば、それにより社会機運を盛り上げることにもつながりますので、ぜひそうした形で議論をお願いしたいと思います。

 あと、措置義務として考えた場合も、どこの法律のどの部分をどのように修正するかによっても社会的なインパクトが当然違いますし、効果も違ってきますので、これを年度内にまとめることを想定したら、この中に、もしこうやったら、こういう効果があるということも資料として出していただければと考えています。


○佐藤座長 
 では、中澤委員、どうぞ。


○中澤委員 
 私も布山委員と同じ考え方です。さまざまな概念で中小というものを捉えておられると思います。究極の場合というのは社長と従業員が1人というケースもあるわけでございまして、そのような事業者も含めた上で措置を講ずるのは対応の限界がございます。配置転換もできないような状況も当然あるわけです。

 もう一点は、前回岡田委員がプレゼンしていただいた中に、被害者側の要因というものも御説明がありました。これはすごく大きなファクターであると思いまして、最終的には資料1のパワハラの定義、これは被害者側に立った形でのものの考え方ですね。ある意味、被害者側の中にパワハラの要因も若干あるという御指摘が前回の研究会の中であったわけでして、そういった観点も含めた上で定義づけ的なものも考えるべきであろうと思いますし、先ほど言われましたように、非常に抽象的な面がかなりございます。つまり、それぞれの事案ごとに状況が異なってくると思いますので、そういう面からいきますと、ガイドラインあるいは事例の提供がまず必要なのではないか。A社の事例はB社の好事例にはならない場合もあろうかと思いますし、そういったきめの細かい情報発信がまず必要なのではないかと思っております。


○佐藤座長 
 では、原委員、どうぞ。


○原委員 
 今の「被害者側の要因」ですとか、あるいは「平均的な労働者の感じ方」が問題となるのは、資料1の判断要素3のところかと思います。判断要素の3だけ切り取って判断するわけではなく、あくまでも判断要素1~3全部なのですよね。例えば判断要素1、2がろくに満たされていないのに本人がパワハラだと言ったとしても、それはおかしいと逆に言えるわけです。この資料1は全体として見るもので、判断要素1~3は相互に影響があるのだと見ていただければ、平均的な感じ方の点がよくわからない、とはならないのではないかなと思います。これが1点です。

 もう1点は、この検討会として、実際できるかどうかは別として、例えば法制化をすべきだという提言を出すこと自体、大きな前進になると思うのです。この検討会で全てを決定できるわけではもちろんありませんので、「検討会としてはこうだ」という立場を示すこと自体が社会に大きな影響を与え得る、ということも踏まえて考えていくべきだと思います。


○佐藤座長 
 大体、この論点で御意見を出していただいて、いいですか。

 最後に座長というよりは、人事管理の専門家として、先のことも踏まえて、そっちで見るかどうかはわかりませんけれども、もし資料3のようなことを事業主に取り組んでくださいということになった場合、ぜひお願いしたいのは、これは法律でどうなるかは別なのですが、既にセクハラとかマタハラのものがありますね。それで、役所の中は部局が別ですから、そうするとパワハラのこういうことをやってください、セクハラはこういうことをやってという、別々に出てくるのですよ。それで、受ける企業は1つなので、やはりハラスメント対策をちゃんとやっていけば、別にパワハラだけをやれ、セクハラだけをやれ、マタハラだけをやれなどということはないので、これは先の話なのですけれども、やはりハラスメント対策としてまとめていただかないと、企業は取り組めないのではないか。それは中小に絡んでも、そういう意味ではぜひパワーハラスメントだけ取り組むわけではないと思うので、広い意味ではセクハラ・マタハラも含めて、職場でハラスメントが起きないような、あるいは起きたら対応ということになるので、それは先の話ですけれども、そういうことが大事ですとどこかに書いておいてください。

 もう一つは、中小企業の話は多分、資料3が出てきたときに、中小企業は全てやらなければいけないと思う。つまり、これはセットでやらなければいけないというふうに提示するのか、あるいは少なくともこれとこれみたいな提示の仕方があると思いますので、それは少し議論していったほうがいいかなと思います。特にパワーハラスメントの場合、これは事後対応が結構難しいのですよ。専門的な知識も必要なので、例えば100人とか50人の企業でやれるかどうかということはあると思いますので、全部社内でということをやらないとだめなのか。例えば労働局との連携というものはあると思いますけれども、少なくとも就業規則にそういうことを書かなければだめだろう。その辺はこれからの議論かなと思います。

 それでは、一応、ここは御意見を出していただいているということで、それを踏まえて次に整理していただくことにしたいと思います。

 もう一つ、職場のパワーハラスメントという定義からすると外れるかもわかりませんけれども、顧客や取引先からの迷惑行為が事実あるのはありますね。これの対応をどうしていくかということについて、資料4で幾つか論点を整理していただいていますので、これについて御意見を伺えればと思います。

 どうぞ。


○浜田委員 
 ありがとうございます。

 顧客といいますか、一部の悪質な消費者と取引先からの迷惑行為ということですけれども、資料4に示していただきましたように、1つ目の○にも書いてあるとおりだと思うのですが、労働契約法に定められている配慮すべき内容については、業種や職場環境によって当然異なることはあるかと思いますが、働く人たちの生命や健康を危険から保護しなければならないという安全配慮義務を負っています。

 ただ、現行法における事業所に課せられている安全配慮義務には、一部の悪質な消費者や取引先からの迷惑行為から従業員を守り、必要な対策を講じることも当然に含まれているという意識が本当に今あるかどうかというところは意識づけが必要になるかと思いますので、前回、漆原委員等から発言があったかと思いますけれども、これは厚労省だけではなくて、経済産業省や国交省もしくは消費者庁など、関係省庁とも積極的に連携を図っていただければと思っております。

 同時に、一日の仕事が終わってしまえば私たち働く者自身も消費者であり、ユーザーの立場に戻るということもありますので、それを踏まえれば企業はみずからの従業員がそういうハラスメントを起こすような行為者になり得ることも考えて、企業規模にかかわらず、企業による自社の社員へのそういうハラスメント的なことは防止していこうというための教育が重要になってくるのではないかと思っております。

 そうした取り組みを通じてカスタマーハラスメントの撲滅に向けた社会的機運を国や企業、そして労働者ももちろん一緒になってやるべきではないかということで、きょうは事例で1枚だけチラシを入れさせていただきましたけれども、これは私が所属しておりますUAゼンセンが労働組合の組合員に配付しているものでございます。いろいろ悪質なものがあるねというところもありますが、一番右下を見ていただきたいのですけれども、でも、自分もやっているかもしれないから、自分たちの行動も振り返りましょうというふうに運動としては進めております。こういうことは働く側からも必要かなと思いますので、事業者だけに頼るのではなくて、事業者も国も、社会的機運というものはそういう様々な立場から運動していくのが必要かなと思いますので、そういう取り組みがいいのではないかと考えております。

 以上です。


○佐藤座長 
 顧客にも働いている人はなるわけですからという、そういう取り組みを既にやられているというお話です。

 ほかにはございますか。

 では、小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 
 先ほど来、話が出ている措置の具体的内容を検討していくにあたってというところなのですけれども、私は基本的には、やはり社会通念上許されない顧客であるとか取引先からの行為について、最初から措置の内容を検討していく上での対象外としてしまうのはいかがなものかなと思っていて、例えば具体的な措置の内容を想定したときに、できることには限界があるのは事実だと思うのですけれども、できることは何かという視点でもう少し広く対象に入れられないかという検討を今後していくべきではないかなと思っています。

 例えば相談窓口の対象範囲をどうしていくのかという点で、別にそれは職場内に限る視点は必ずしも必要ではないと思いますし、あるいは方針などを企業で掲げる際に、あらゆる迷惑行為であるとかハラスメントには反対しますという旨を記載して対外的にオープンするであるとか、あるいはUAゼンセンさんのチラシの右下にも載っているように、自社の従業員に、しないようにするという教育を行うとか、いろんなやり方はあるかなと思うので、入り口から切り離すのは避けるべきではないかなということを申し上げたいと思います。


○佐藤座長 
 ほかにはございますか。

 布山委員、どうぞ。


○布山委員 
 顧客にかかわらずだと思うのですけれども、先ほどちょうどいい事例としてチラシをいただいたので、やはり自分たちの行動については、企業が教育するのだという観点だけではないと思っていまして、まずは労働組合の方も含めて、自分たちがきちんと考えましょうということがあるのだと思います。

 あと、これは労働法の範疇ではないのですが、報告をまとめるに当たってはやはり重要な観点ではないかと思ったのが、ハラスメントの防止には良好な人間関係が重要であると思っておりまして、それはまず、今は職場の話をしていますけれども、ただ、社会全体でお互いを尊重し合うという、当たり前のこととはいえ、実は小学生からいじめなんかがあることを考えると、個人の人格を否定することがあってはならないという当たり前のことを本当に国民一人一人が考える、そういう子供のころからの教育も必要ではないかと思っています。もちろん、事業主がどうこうという話ではなく、その前の段階からまずは必要なこともやはりあるのではないかと思っています。

 それと、すみません、先ほどの資料3のところで言い忘れたコミュニケーションの部分についてですが、では企業が、措置義務にせよ、ガイドラインだけにせよ、何かしら対策を打つときに、コミュニケーションを図るような能力を高めるような研修は何だろうとなったときに、やはりなかなか自前で何かすることが難しいということを考えると、これは厚労省といいますか、行政の支援が必要であると思っています。このテキストを使えば各企業、どんな規模でも、ある程度の研修ができますというテキストをつくるとか、そういう具体的な支援の方が助成金とかよりもいいのではないかと思いましたので、発言させていただきました。


○佐藤座長 
 また資料4のところで言いますと、現行の安全配慮義務でカバーできる部分で、ただ、それを超える部分もある。

 問題なのは、いわゆる職場のハラスメント、さっき議論したようなことでカバーしてやれるかどうか。これは皆さん、誰もこんな問題がないなどとは言っていなくて、対応が必要なのは皆さんわかるのですが、これを事業主にやってくださいというふうにやれるかどうかだけだと思うのです。

 ですから、この問題があるのはあるし、これをなくしていくのに取り組みはしなければならないのですけれども、これをどうするかですね。今やれる部分については当然、企業にやってもらわなければいけないのですが、そういう話だと思います。

 内藤委員、どうぞ。


○内藤委員 
 この問題が直接的な労働者と使用者との間の問題ではないということは座長のおっしゃったとおりなのですが、私は小保方委員のおっしゃったことに賛成でございます。と申しますのも、これは例えば、この資料4の1番目の○に書いてあるように、確かに安全配慮義務の問題というふうになる。そういうふうに捉えられる事案も非常にあると思うのです。ただ、それと同時に、この3番目の○にあるように、これはなかなか顧客に対して、例えば労働者であれば就業規則等、あるいは懲戒権をもって何らかの形でサンクションをかけることもできますけれども、顧客に対してサンクションというのは結構難しいかもしれません。

 ただ、これは私、医療関係ではございませんが、最近、病院などへ参りますと、いわゆるそういった迷惑行為については、当病院はかたくお断りをしますという形で、ポスターのアピールにすぎないと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、使用者側としてはそういう姿勢を示すことができるのではないかとも思うのです。そう考えますと、例えばひどい場合には、ある労働者が何か対応に非常に苦慮しているような場合には、それを例えば配置転換するとか、他の方と差しかえるとか、少なくとも使用者側が対応できるものもあると思いますので、これは今回の報告書から外してしまうのではなく、別枠とか別項目でも結構ですから、使用者としてはこういう対応も必要とされているという形で盛り込んではいかがかと思うのですが、それを入れておきませんと、逆に使用者は一切、顧客に対しては、顧客に何か迷惑行為を受けている労働者に対して何もしなくていいという印象を与えてしまうのは問題があるかなという気がいたしております。

 以上です。


○佐藤座長 
 今ので少し整理すると、1つは職場のパワーハラスメントについての定義なり、それを事業で進める上で、先ほど出たような中でどうするかということの話と、そこにいわゆる顧客や取引先を入れてしまうのか。そうではなくて、これを切り離して一切取り上げないというのもあるのですけれども、もう一つは、それとは別に、確かに実際働いている職場で起きているので、それをいわゆる職場のハラスメントと別ですね。ですから「迷惑行為」と書かれていますけれども、これについて現行の事業主が安全配慮義務をやらなければいけない部分。それを超える部分は社会的にとかと書くという、3つあるわけです。

 ですから、非常に限定的に書く。一切、書かない。でも、ハラスメントと別に書く。ハラスメントの中に入れるというのもあります。ですから、職場のハラスメントのところへ入れてしまうというのもありますし、切り離して別に取り組みを書く。もう一つは、一切書かない。だから、3つあるということだと思います。

 私の感じとしては、皆さんの御意見は、小保方委員は入れたらという話だったのが、一応、別に書くという感じの意見が今までは強かったかなと思っていまして、入れないというわけではないのかなと思っています。

 どうぞ。


○内藤委員 
 申しわけありません。行為の類型としては、対使用者とか労働者という、労使関係のものからちょっと外れる。行為者がいかんせん、第三者であるという部分はあると思うのですが、使用者側の対応としては、そこは私自身も実は迷っておりますが、行為類型のところで例として挙げられていたものがあったかと思うのです。

 例えばのお話ですが、パワーハラスメントとは何かという行為類型の中に、例えばこういう場合もパワハラとしてするのか否かというところで分離する必要性はもちろんあるのだろうと思うのです。ただ、考えられる行為。この定義の問題ではなく、対応策のところで、例えば第三者からの行為に対してもかくかくしかじかということは、もしガイドライン等をつくるとしたら入れられるのではないかと思ったのです。

 ですから、今、座長が御提案のとおり、この行為類型として定義から始めたときに、第三者からの行為もまた、この職場におけるパワーハラスメントであるという形で資料1の中に入れるかといえば別枠になるのかなと私は思いますが、ただ、別枠にしたとしても、企業側の対応としての何かガイドラインを出すとしたら、その中に含める必要があるのではないか。そんなふうに考えているのです。


○佐藤座長 
 小保方委員、どうぞ。


○小保方委員 
 私も、まず企業側の対応としてのガイドラインを出すときに盛り込んで見せていくべきで、これは必要だと思うのです。

 その上で、いわゆる資料1のところに入れ込んで考えるか、別物とみなすかというのは両方ともとり得ると思っていまして、「意味」や「考えられる行為の主な例」を冷静に読んでいくと、別にこれは職場内に限定していない形でも大体読めると思いますし、特に行為の主な例というものを見ていただければ、2番目に書いてある3つ目の○とか、3番目に書いてある1つ目から3つ目の○の例で言うと、これは取引先からのものであろうと読めるということだと思うのです。

 1番目のところだけ優位性というものが何なのかというところで、いわゆる優越的地位にある関係というものを例の中に入れれば織り込んで読むことも私は可能だと思っていまして、ただ、そこに強いこだわりがあるかというと、どちらかというと打ち手のところでスルーはしないように考えていったほうがいいのではないかということと、含めるか、含めないかはどっちのほうがよりわかりやすいかという視点で考えていったほうがいいかなと思っています。


○佐藤座長 
 まずは資料4の、基本的には事業主からすれば雇用関係のない人なので、そういう意味では労働法の枠内でというわけにはいかないわけですよ。ですから、そういう意味では対応策のところで事業主にやれというところの根拠が書きにくいところがありますね。別に相手に対して何かやれるわけではないですね。事後対応はもちろんやれますけれども、ですから、そこは書き方がかなり違うのではないかなというのが多分、これまでのここでの整理だと思います。

 原委員、どうぞ。


○原委員 
 私は、職場のパワーハラスメントとは全くの別枠にして、ただ、報告書に盛り込むことは重要だ、と感じました。資料4の最後、取り組みのところですけれども、こういう問題を社会にアピールしていくときに、言葉の持つ意味は小さくはないと思っておりまして、カスタマーハラスメントという言葉をまず流行らせることが大事だと思うのです。

 といいますのは、例えば学校で起きた、誰かが誰かを殴ったという事件を、暴行傷害と呼ぶのか、いじめと呼ぶのかで大分印象が違うと思うのです。同じように、クレームと言うと、それは聞かなければいけないものみたいなイメージがありますよね。そうではなくて、よいクレームもあるけれども、やはりやってはいけないハラスメントもあるのだということを示すことが、意識を変えることにつながっていく。将来的には何らかの法律での措置が必要になるかもしれませんが、今回はあくまでも職場のパワハラをまず強く防止していくことをやろう。それで、今後の布石として、将来的にこのカスタマーハラスメントをなくしていくための第一歩として言葉を示そう、ということです。

 この資料にある、要は自分が従業員のときにハラスメントを受けたから自分もやってしまうという負の連鎖ではなくて、自分も受けないし、自分もしない。そういったプラスの循環になっていくようにするためには、まずはカスタマーハラスメントという言葉を流行らせるところから行くのがいいかなと思います。


○佐藤座長 
 それはいいかもしれませんね。確かに、それは大事ですね。

 野川委員、どうぞ。


○野川委員 
 原委員の御意見によると、カスハラというのですか。カスハラはちょっとはやるかどうか、わからないですけれどもね。

 それはともかくとして、皆さんから出ているように、私もパワハラの一環としてのカスタマーハラスメントの防止ということはあると思います。それは特定の顧客からのハラスメントが十分に予見される場合に、それをあえて利用して、部下に対して抑圧的な、あるいは罰則的な行為を示す場合です。

 例えば私にもいろんな生命保険会社の外交員の方が接触してこられて、自宅のメールボックスに郵便ではなくて、直接に入れてくるのです。プレゼントとかで、係が決まっているのですよ。そうすると、そういう非常に濃密な関係を顧客との間に築くことが事業の一つであるような会社において、明らかに非常に問題のある顧客であることが十分にわかっている顧客に気の弱い、この人をそれにつければ参ってくるだろうということを予測してやるようないじめで、それを業務命令でやることができますから、そうなるとパワハラです。

 そのように、特定の顧客からのハラスメントが予見できるような場合に、それをあえて、あるいはうっかりしても、過失でもいいですけれども、そうさせるような行為はパワーハラスメントの一環に含まれると思うのですが、それ以外の不特定の予見不可能な顧客からのいろいろな対応を事業主に避けることを義務づけるというのは、これはなかなか難しいと思うので、極めて限定的なところでは今回の検討会でも対応可能だというところから始めたらよろしいのではないかと思います。


○佐藤座長 
 では、安藤委員、どうぞ。


○安藤委員 
 ありがとうございます。

 私はハラスメントがハラスメントを生む可能性を考えた場合に、別枠でも何でもいいので、入れておいたほうがいいのかなと思います。ハラスメントがハラスメントを生むというのは恐らく2つあって、まさにUAゼンセンさんのチラシにもあるとおり、ハラスメントされている人たちがほかの会社に行ってカスタマーハラスメントみたいなことをしてしまうというのが恐らく1つ。

 もう一つは、例えば極端な話、クレームを受けたとして、向こうの都合で夜11時に謝罪に来いといった場合に、では、それを行かなければいけないのですかといった場合に、クレームだからといって行ったところ、これは過大な要求ではないのかというふうに使用者側が言われてしまう。そうすると、ハラスメントがハラスメントを生んでしまうことにもなりかねないので、そういう意味でも何らかの形で、皆さんもそうだと思うのですが、どういう形かわからないのですが、入れておくのが必要なのかなとは思います。


○佐藤座長 
 では、川上委員、お願いします。


○川上委員 
 私も顧客や取引先からの迷惑行為については非常に大事だと思うので、何らかの形で残すことに賛成ですが、今のパワーハラスメントの議論とは少し違うような印象も持っています。

 いろんな議論が出たので、いまだ私もうまく全体像をつかめていませんが、産業保健から見ると2つに分かれていて、1つは安全配慮義務の問題と考えますと、顧客や取引先からの迷惑行為という有害暴露が労働者に対して十分予見される場合には、それに対して労働者に周知をし、それに対応した教育訓練を提供し、そして安全措置のための例えば張り紙をするとか、2人制にするとか、あるいは防犯ベルをつけるとか、そういった対応ができていて、あと、何かあったときには相談対応みたいな、そういう産業保健の中で整理できる部分も一つあるかなと思います。ただし先ほどから議論が出ているように、顧客自体の行動を変えていくという国民的な運動、流れをつくったり、あるいは啓発したりというのは、今、申し上げた流れではできないので、また別のつくり方をしなければいけないかなと思いました。


○佐藤座長 
 布山委員、どうぞ。


○布山委員
 基本的には、これまでの議論どおり、職場の範囲にとどめるということだと思いますけれども、ただ、この件を何もしなくていいとはもちろん思っておりません。そうすると、資料4のマル3、マル4は、企業としてどうしてもできようがないのですが、例えば消費者の教育とか、やはり一人一人がそこは考えなければいけないのだということを言うことによって、企業がマル3やマル4をしやすくなるようにすることは歓迎できることなので、そういう形でまとめられればなと思います。


○佐藤座長
 いかがですか。

 確かに原委員が言われたように、別に取り上げるというときに、名前のつけるのは結構大事かもしれませんね。カスタマーハラスメントで、これは社会運動も含めて、多分、それをやるとセクハラ、パワハラが減ることにもプラスになるかなという気がします。

 この点はいかがですか。大体、皆さん、これは取り上げたほうがいいと。ただ一応、これは職場のハラスメントとは別でという、ただ、これは特にそういう意味では企業だけではなく、組合も、あるいは働く人、一人一人も含めた人が理解して、こういうことが起きないようにすることは大事だろうということですね。この辺で整理していただくと。

 そうしましたら、最初の資料1からのほうで戻って、もし言い残したことがあれば伺っておきますが、いかがでしょうか。

 取り組みではいろいろ意見が分かれている部分もありますけれども、一応、皆さんの御意見を出していただいたということで、きょうはいいですか。

 どうぞ。


○原委員
 もしなければ、1点だけ、先ほど野川委員もおっしゃっていたのですが、資料2の対応策で、措置義務の法定ということを考えるときに、次回検討するときには、具体的に、例えば何法に盛り込むべきだというところまで言わないとなかなかイメージしにくいと思うので、事の性質からすると本質的には労働契約法なのでしょうけれども、行政の取り組みとして対応が難しい、行政が対応できないということであれば、労働安全衛生法ですとか、あるいは労働基準法だっていいと思うのです。

 例えば、労基署による取り締まりなどとは全く切り離されているところにある解雇権濫用法理も、一時的でしたけれども、労基法に盛り込まれていた時代もあったわけです。そういうことを考えると、何もなければ労基法に押し込むとか、いろいろな選択肢を含めて、具体的に法定するときに何法に盛り込むとか、そういったこともちょっと考えていただけるとありがたいと思いました。


○佐藤座長
 報告書に盛り込むということで議論を喚起することもあるみたいです。

 それでは、きょうは皆さん、きょうのテーマについて御意見を出していただけたということで、議論はここまでということで、事務局から次回の日程等の御連絡について御説明いただければと思います。


○上田雇用機会均等課長補佐
 本日はありがとうございました。

 次回の日程は、詳細が決まり次第、また改めて連絡させていただくこととしたいと思います。

 また、議事録について、毎度お願いしておりますけれども、お送りさせていただきますので、御確認をお願いできればと思います。

 以上でございます。


○佐藤座長
 それでは、どうもありがとうございました。本日はここまでとさせていただきます。


(了)

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