ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 国立病院WG(第5回)議事録(2019年1月31日)

 
 

2019年1月31日 独立行政法人評価に関する有識者会議 国立病院WG(第5回)議事録

○日時

平成31年1月31日(木) 15:59~17:50

 

○場所

中央労働委員会 労働委員会会館講堂(7階)
 

○出席者

松尾主査、大西構成員、河村構成員、斎藤構成員、髙瀬構成員、田極構成員、富田構成員、亀岡構成員

○議事

 

 

○松尾主査
ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第5回独立行政法人評価に関する有識者会議国立病院WGを開催したいと思います。構成員の皆様におかれましては、本日、大変お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は山口構成員が御欠席されます。亀岡構成員は遅れて来られると伺っております。よろしくお願いします。
それでは早速、進めていきたいと思います。最初に本日の議事について、事務局から説明をしていただきます。
 
○政策評価官室長補佐
御説明の前に、事務局で異動がありましたので御報告させていただきます。政策評価官の中村です。
 
○政策評価官
中村でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
○政策評価官室長補佐
それでは、本日の議事について御説明いたします。初めに、議事次第にある参考資料1~6に関しては、お手元のタブレットに収納してありますので、そちらを御覧ください。本日の議事は、国立病院機構の次期中期目標案及び次期中期計画案についてです。本件についてはタブレットの参考資料1の「独立行政法人評価に関する有識者会議開催要綱」にある3の第4号の「その他一から三までに掲げる事項に関し重要な事項」に該当するものとして、本WGの意見を賜るものです。厚生労働省所管の中期目標管理法人については、厚生労働大臣が中期目標を定め、当該法人は定められた中期目標に基づき中期計画を策定することとされておりますが、法人の中期目標と中期計画は、御意見を頂く上で密接な関係にありますので、本日は中期目標と中期計画について、同時に御議論いただきたいと考えております。
平成31年度からの新たな中期目標及び中期計画の策定に至るまでの流れについて、簡単に御説明いたします。タブレットの参考資料2の一番上の四角い囲みに、「平成30年8~9月、独立行政法人の「業務・組織全般の見直し内容」等を総務省へ提出」とあります。国立病院機構の中期目標期間見込評価書と業務・組織全般の見直し内容については、昨年7月に開催した本WGにおいて皆様から御意見を頂いて、その御意見を踏まえ、厚生労働大臣から総務省独立行政法人評価制度委員会に通知したところです。中ほどの四角い囲みに「平成30年9~12月、総務省独立行政法人評価制度委員会の審議・決定」とありますが、総務省独立行政法人評価制度委員会が、独立行政法人の中期目標期間見込評価書と業務・組織全般の見直し内容について審議した結果を決定いたしました。
決定した内容が、タブレットの参考資料6です。こちらは、総務省側の独立行政法人評価制度委員会が昨年11月29日に、目標策定に向けての考え方を決定したものです。2ページの3の1と2の記載ですけれども、目標の策定に当たって、目標に盛り込むことについて検討していただきたい視点を整理しております。国立病院機構に関しては7ページに「セーフティーネット分野の医療(結核、重症心身障害、筋ジストロフィーを含む精神・筋疾患、心神喪失者等医療観察法に基づく精神科医療、エイズ医療等の他の設置主体では必ずしも実施されないおそれのある医療)に関する専門性・人材面での強みをいかし、引き続き、我が国における中心的な役割を担うとともに、在宅支援を含む医療・福祉の充実・強化を図ることを目標に盛り込んではどうか。また、災害対応時の役割の明確化や災害医療のための人材育成を含め、国や地方との連携を強化し、国の災害医療体制の維持・強化に貢献することを目標に盛り込んではどうか。さらに、法人が有する人的・物的資源、病院ネットワークを最大限活用し、中核的な機関として必要な医療を行い、国の医療政策へ貢献することを明確に目標に盛り込んではどうか。また、こうした役割を果たすため、本部機能の見直し、人事や運営の効率化などに取り組むとともに、経営改善の取組に向け、理事長がリーダーシップを発揮できるマネジメント体制の構築をすることを目標に盛り込んではどうか」という留意事項が示されております。これらを踏まえて作成したのが、本日御議論いただく国立病院機構の次期中期目標と中期計画の案です。
一旦、タブレットの参考資料2に戻ってください。一番下の四角い囲みの「平成30年12月~平成31年3月、独立行政法人の次期中期目標・次期中期計画の策定」は、今後の流れについてまとめております。本日御議論いただく国立病院機構の次期中期目標案については、本日いただく御意見を踏まえ、必要に応じて修正等を行い、2月に厚生労働大臣が総務省独立行政法人評価制度委員会へ送付いたします。その後、2月中に同委員会において審議が行われ、その審議結果に基づいて出される意見を聴いた上で、財務大臣との協議を経て、次期中期目標が確定されることになります。一方、中期計画については、確定された中期目標を基に、国立病院機構が次期中期計画を作成し、同計画について主務大臣である厚生労働大臣が内容を精査し、財務大臣との協議を経て、年度内に認可する予定となっております。事務局からの説明は以上です。
 
○松尾主査
ただいまの事務局からの説明について、何か御質問、御意見等がありましたら、構成員の皆様方、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。
ないようですので、早速、議事に入りたいと思います。国立病院機構の次期中期目標案及び次期中期計画案についての審議を頂きます。最初に法人所管課から、次期中期目標案について御説明を頂き、その後、法人から次期中期計画案について御説明を頂きます。この2つの説明が終わってから質疑応答をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まず法人所管課から、次期中期目標案について説明をお願いいたします。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
中期目標については、独立行政法人の目標の策定に関する指針に基づき、法人と十分に意思疎通を図りながら、策定作業を進めてきたところです。資料1-1の「第4期中期目標(案)の概要について」に基づいて説明させていただきます。1ページが中期目標の構成です。第1章から第6章までありますが、中期目標の構成については、基本的に第3期と大きな変更はありません。この中期目標の構成の中に青い「重」という印が付いているのが、その目標の事項の重要度が高いものです。そして緑で「難」という印を打っている所が、平成27年度以降に中期目標を作る法人については、中期目標の中に定量的指標を記載することとしており、この指標の難易度が高いものに印を打っています。
2ページが政策体系図です。超高齢化社会を迎える中において、医療と介護の提供体制の整備などが、我が国の喫緊の課題です。このため、厚生労働省としては地域包括ケアシステムの構築などを推進することにしております。2019年度から2023年度の5年間の国立病院機構の第4期は、診療事業、臨床研究事業、教育研修事業という3つの柱により、病院ネットワークを活用しながら、厚生労働省の政策目標の実現を図ることにしております。
3ページが具体的な目標の中身です。1の「診療事業」の(1)医療の提供です。1つは患者満足度の向上に努める、医療事故防止と院内感染対策の標準化、これらの取組の成果の情報発信、チーム医療やクリティカルパスの活用の推進、臨床評価指標の効果的な活用を推進ということで、これらについては重要度が高いという印を打っているわけです。これらの目標は、「安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりの推進」に寄与するという観点から、重要度が高いのではないかと考えているところです。そして指標については、医療の質の向上の実績を測るものとして、1つには特定行為を実施できる看護師の配置数を毎年度、前年度より増加させます。2つ目に、認定看護師などの専門性の高い職種の配置数を毎年度、前年度より増加させます。
4ページが指標の続きです。クリティカルパスの実施割合(クリティカルパス実施病院の新規入院患者数に占める実施割合)を毎年度、前中期目標期間中の最も高い水準であった年度の実績以上にします。平成26~29年度の実績が書いてあります。平成30年度はまだですけれども、現時点で言えば平成28年度の48.6%というのが高い数字で、これを超えるというイメージです。
5ページが診療事業の(2)地域医療への貢献です。1つは地域医療構想実現のために、機能転換や再編成等を検討します。そして地域の医療機関との連携を推進し、介護施設等との入退院時の連携、退院後の在宅医療支援を含めた支援の強化です。これも重要度「高」で、これらの目標については地域包括ケアシステムの構築や地域医療構想の実現という観点から、重要度は高いのではないかと考えています。指標については地域連携や在宅支援の実績を測るものとして、1つには紹介率を毎年度、前中期目標期間中の最も高い水準であった年度の実績以上とする。これを見ても平成29年度は74.2%で高いものですから、これを超えるようなイメージです。そして逆紹介率を毎年度、前中期目標期間中の最も高い水準だった年度の実績以上とします。これも現時点では、平成29年度の61.0%を超えるようなイメージです。
6ページが、訪問看護ステーションをはじめとする訪問看護の延べ利用者数を毎年度、前年度より増加させます。退院困難な入院患者の入退院支援実施件数を毎年度、前年度より増加させます。そしてセーフティーネット分野の病院における短期入所、通所事業の延べ利用者数を毎年度、前中期目標期間中の最も高い水準であった年度の実績以上ということで、これについては難易度が高いという印を付けております。これらの指標は、人口の推移や医師の偏在、患者ニーズなどの地域の実情により、それぞれの地域で異なった連携デザインを構築し、医療を提供していく必要があります。紹介率・逆紹介率などは既に高い水準にありますので、これらを更に向上させていくというのは、難易度が高いのではないかと考えています。
7ページの、診療事業の(3)国の医療政策への貢献です。災害など、国の危機管理に際して求められる医療について、機構のネットワークを活用し、国や地域との連携の強化を行っていただきたいと。3に「DMAT事務局の体制強化など国の災害医療体制の維持・発展に貢献」とあります。これは従来の目標に、新たに追加した項目です。
続いて、セーフティーネット医療の中心的な役割を果たすこと、エイズについては高齢化等、患者個々の状態に応じて適切に対応できるように取組を進めていくこと、国の重要政策のモデル的取組を積極的に実施することとなっております。これも重要度は「高」ですが、これらの目標については今後の大規模災害が予想される中での体制整備とか、セーフティーネット医療の確保という観点から、重要度は高いものと認識しているところです。そして指標については、国の危機管理や医療政策への貢献を測るものとして、1つは災害拠点病院を除くBCP整備済病院数を毎年度、前年度より増加させ、速やかに全病院で整備することとします。災害拠点病院というのは37病院あり、ここはBCPの策定必須ですが、その他の病院は努力義務で、現在は22病院で整備済みですけれども、その他の病院についても御努力いただきたいという趣旨です。
8ページも指標の続きです。後発医薬品の使用割合を毎年度、政府目標の水準を維持しつつ、2023年度に数量ベースで85%とします。政府目標としては、2020年9月までに80%達成という目標があるわけですが、機構においては平成29年度が83.5%ということで、既に達成しております。ですのでこの水準、80%以上を維持していただいて、最終年度の2023年には85%を目指していただきたいということです。
次の「訪問看護ステーションをはじめとする訪問看護」という項目については、再掲ですので説明は省略いたします。これも難易度が高いという印を付けております。これらの指標については、必要な医療を提供しながら、災害の体制整備を行うということが、そもそも難易度が高いですし、後発医薬品の使用割合については既に高い水準にあり、これには医療従事者側と患者側の理解を一層深めるという難しい面がありますので、難易度が高いのだろうと考えています。
続いては2の「臨床研究事業」ということで、9ページです。1つは、病院ネットワークを活用した治験とか、大規模臨床研究に一層取り組んでいただいて、これらに精通する医療従事者を育成します。そして、認定臨床研究審査委員会の適正な運用を図るということです。
それと、電子カルテデータ等から標準化されたデータを収集・分析するデータベースを持っていらっしゃいますが、引き続き運用して臨床疫学研究の推進を図っていただきたいと。また、これも新たに入れた項目ですけれども、外部データベースとの連携や外部機関とのデータ提供に貢献する。そしてゲノム医療などに関する研究とか、新規医薬品開発等の共同研究を推進する、国の医療情報政策のモデル事業を実施するなど、医療のIT化への対応に貢献していただくと。これも重要度「高」という印が付いております。ICTを活用した各種データの標準化などは、国が推進する医療分野の研究開発に貢献するものですので、重要度が高いのだろうと考えております。
指標については、臨床研究事業の実績を測るものとして、英語原著論文掲載数を、毎年、前年より増加させ、2023年までに平成30年の実績に比し、5%増加させる。論文の掲載数の統計の取り方が暦年のために、この項目については年度ではなく、暦年という表現をさせていただいております。これについても難易度が高いという印を付けております。この指標は平成19~29年度までの10年間ですけれども、我が国全体の臨床医学系論文数の増加割合を大幅に超える伸び率で、国立病院機構が増加させてきているわけです。これを更に増加させるのは難易度が高いということです。日本全体の増加率が19.2%で、国立病院機構が89.6%ですから、そこを大幅に超える伸び率ということです。
10ページが3の「教育研修事業」です。1つは、卒前教育を含めた質の高い医療従事者の育成です。そして地域の医療従事者や住民向けの研修、看護師等養成施設の必要に応じた見直し、特定行為に係る看護師の育成、診療看護師など、高度な看護実践能力を持つ看護師を育成する。指標については、教育研修の実績を図るものとして、職種ごとの実習生の延べ受入日数を毎年度、前年度より増加させる。
11ページも指標の続きです。地域の医療従事者を対象とした研修会の開催件数を毎年度、前年度より増加させる。地域住民を対象とした研修会の開催件数も毎年度、前年度より増加させる。そして特定行為の研修の終了者数を毎年度、前年度より増加させる。
12ページが、「業務運営の効率化に関する事項」です。本部機能の見直しなど、理事長がよりリーダーシップを発揮できるマネジメント体制を構築すること、法人の業績等に応じた給与制度を構築すること、そして働き方改革を実現するために、勤務環境改善に取り組むこととなっております。特に医師については勤務負担軽減とか、タスク・シフティングなどの国の方針に基づいた取組を着実に実施していただきたい。それと、人件費比率と委託費比率に留意しつつ、適正な人員配置に努める。医薬品等の共同購入を検証し、より効率的な調達に努めていただきたいと。後発医薬品の採用促進、効率的・効果的な投資を行うと。
中期目標期間を通じての損益計算においては、機構全体として経常収支率100%以上とすることとなっております。括弧書きに書いてある一般管理費の節減に係る目標については、第3期も記載されていたわけですが、これについては現段階で関係省庁と調整中で、検討中とさせていただいております。
13ページが指標です。中期目標期間を通じた損益計算において、機構全体として経常収支率100%以上ということです。これも難易度が高いという印を付けております。この指標については診療報酬改定など、病院経営をめぐる厳しい環境の中で、結核等の不採算医療をやっておられますし、今後とも働き方改革に対応していく必要があり、それらを考慮しますと、難易度が高いのだろうと考えています。
14ページが、「財務内容の改善に関する事項」です。前中期目標期間の繰越欠損金の早期解消、長期借入金の元利償還を確実に行うということです。
最後の15ページが、「その他業務運営に関する重要事項」です。1つは、人事に関する計画です。技能職の一層の削減を図ること、多様で柔軟な働き方を可能とする人事制度を構築すること、内部統制の充実・強化としては、内部監査、各病院におけるリスク管理の取組を推進するとともに、情報セキュリティ監査体制の強化に取り組むこととなっております。情報セキュリティ対策の強化については、職員の対応能力の向上に資する取組を実施し、我が国の医療分野の情報セキュリティ強化に貢献していただきたいと。
最後に広報に関する事項ということで、積極的に広報に努めていただきたいということです。今後、関係省庁とも協議をしながら、目標の策定を進めていきたいと思っております。以上です。
 
○松尾主査
それでは、機構のほうから、次期中期計画についてお願いします。
 
○国立病院機構理事長
国立病院機構理事長の楠岡です。本日はどうぞよろしくお願いします。資料については、資料1-2が概要、資料2-2が中期計画(案)、資料3-2が第3期と第4期の中期計画新旧対照表となっております。中期計画(案)については、先ほど厚生労働省から御説明がありました中期目標(案)を達成するために、国立病院機構が具体的に取り組むべき内容としております。また中期目標の達成を測る定量指標については、中期目標(案)で定められた指標と同一の内容としております。まず、私のほうから中期計画(案)の策定に当たっての基本的な考え方を記載した前文について御説明して、その後、佐々木企画経営部長から中期計画(案)の具体的な内容について御説明します。
資料1-2の2ページの前文を御覧ください。内容を説明するために、前文とは少し順番は異なっておりますが御了承ください。国立病院機構では、全国的な病院ネットワークを活用しながら、診療・臨床研究・教育研修を一体的に提供してきたこれまでの業務実績を踏まえ、引き続き、結核、重症心身障害、筋ジストロフィーを含む神経筋難病、心身喪失者等の医療観察法に基づく精神科医療、エイズ医療等の他の設置主体では必ずしも実施されないおそれのあるセーフティネットの分野の医療や、災害、新型インフルエンザ発生時など、国の危機管理に際して求められる医療などを着実に実施してまいります。また我が国では、少子高齢化が急速に進み、2025年にはいわゆる団塊の世代が75歳以上となる超高齢社会を迎える中で、国は医療、介護、予防等が切れ目なく提供できる地域での体制、地域包括ケアシステムの構築を推進しております。2025年に目指すべき医療提供体制の実現については、各都道府県で地域医療構想を策定するとともに、地域医療構想調整会議において検討が進められているところです。
我々として、国立病院機構の独立行政法人化後のこれまでの歩みを振り返りますと、新たな法人として歩みを始めた第1期中期計画期間を「創成期」、法人の自主性・自立性を発揮して様々な経営効率化に取り組み成果を上げた第2期中期計画期間を「成長期」、組織体制や投資方針等の見直しを図った第3期中期計画期間を「調整期」と捉えることができます。第1期から第3期までは、法人自らの足元を固め、地域における国立病院機構の役割を明確にし、連携を図ることを中心とした業務運営を行ってまいりました。次期中期計画期間においては、より国の政策に沿って国立病院機構としての役割を果たし、更なる社会貢献に努めてまいりたいと思います。
このため、国立病院機構では、2019年度から2023年度までの次期中期計画期間を、地域包括ケアシステムの構築及び地域医療構想の実現に向けて法人の政策実施機能の最大化を図るという観点から、「変革期」と位置付け、2040年をも視野に入れた業務運営を行うこととしております。具体的には、国立病院機構が有する人的・物的資源を地域で最大限にいかしながら、地域包括ケアシステムの構築や地域医療構想の実現に向け、地域の医療需要の変化に自主的に適応することで、病院が実施したい医療から、病院の機能に応じて地域から求められる医療への転換を図ります。また拡大する介護・福祉ニーズに対応するために、在宅医療との連携を強め、「治す医療」から「治し、生活を支える医療」への転換を図りたいと思っております。国立病院機構では、次期中期計画期間において、このような変革を行い、地域医療に一層貢献していくこととしております。
こうした取組を支えるため、国立病院機構の果たすべき役割・業務実績を反映した機動性・柔軟性のある運営への見直しを進めてまいります。特に経営面では、近年の厳しい医療経営環境の中で、法人全体として経営の健全性を保ち、国立病院機構の機能を維持し、質の高い医療を提供していくため、経営改善に向けた不断の取組を進めてまいります。中期計画(案)の前文の説明は以上です。詳細については、企画経営部長より説明を申し上げます。
 
○国立病院機構企画経営部長
国立病院機構企画経営部長の佐々木と申します。よろしくお願いします。中期計画の内容については、基本的には厚生労働省から御説明がありました中期目標に沿った内容としておりますが、その中で具体的な方策を計画の中で追記している点について、資料1-2の概要に沿って、ポイントを絞って補足的に説明させていただきます。
3ページを御覧ください。診療事業の(1)医療の提供については、患者満足度調査の結果に基づいてPDCAを展開し、患者の満足度の向上に努めることなどを引き続き記載するとともに、新たな記載としては、高度な専門性、知識・技能を有する専門・認定看護師、専門・認定薬剤師等のメディカルスタッフの育成・配置を促進すること。臨床評価指標の効果的な活用として、機構で蓄積された診療データを活用した臨床評価指標の新規項目の開発・見直しを行うとともに、特に重点的に取り組むべき指標を選定して、臨床評価指標を活用したPDCAサイクルによる継続的な医療の質の改善を促進することなどを記載しております。
4ページです。診療事業の(2)地域医療への貢献については、新たな記載として、地域の医療需要の変化に自主的に取り組み、必要な機能を維持しながら、必要に応じて地域ニーズを踏まえた機能転換や再編等も検討していくこと。紹介・逆紹介により他の医療機関との連携を図るとともに、入退院時支援や資産の有効活用などにより、他の医療機関のみならず、介護・福祉施設との連携を強化することなどを記載しております。
5ページです。診療事業の(3)国の医療政策への貢献については、災害など、国の危機管理に際して中核的な機関としての機能を充実・強化するとともに、発災時に必要な医療を確実に提供すること、セーフティネット分野の医療について引き続き我が国の中心的な役割を果たすことなどを引き続き記載しています。新たな記載として、災害拠点病院以外の病院についてもBCPを速やかに整備すること、重症心身障害児者等の患者の特性を踏まえた災害時の広域搬送等に関する検討を進めることなどを記載しております。
6ページです。臨床研究事業については、病院ネットワークを活用した迅速で質の高い治験や、EBM推進のための大規模臨床研究を実施することなどを引き続き記載するとともに、新たな記載として、先ほど来、国から御説明がありましたが、国の医療情報政策のモデル事業に積極的に貢献することなどを記載しております。
7ページです。教育研修事業については、機構の特色をいかした臨床研修プログラムやキャリパス制度により、質の高い医療従事者の育成を行うとともに、地域の医療従事者や地域住民に向けた研修などを実施することなどを引き続き記載するとともに、新たな記載内容としては、平成30年4月から開始された新専門医制度における研修プログラムの充実や、国立病院機構独自の取組である診療看護師、看護管理者の育成など、質の高い医療従事者の育成を行うことなどを記載しております。
8ページです。業務運営の効率化に関する目標を達成するために取るべき措置については、新たな記載として、理事長が一層リーダーシップを発揮できるマネジメント体制を構築すること。法人の業績等に応じた機動性・柔軟性のある給与制度の構築に取り組むこと、働き方改革への適切な対応として、タスク・シフティングの推進や労働時間をより確実かつ効果的に把握・管理するための取組も行い、医師の長時間労働の見直しを含め、職員全体の勤務環境改善を進めるとともに、労働法制の遵守の徹底を図ること。経営的には、中期目標期間の5年間を通じた損益計算において、国立病院機構全体として経常収支率100%以上を目指すことなどを記載しております。
10ページです。財務内容の改善に関する目標を達成するためにとるべき措置として、予算、収支計画、資金計画などについては、計画の記載事項となっておりますが、現在、関係省庁と調整しているところですので、こちらは検討中とさせていただいております。次期中期計画(案)の説明は以上です。
 
○松尾主査
ただいま説明がありました次期中期目標(案)、次期中期計画(案)について御質問、御意見を伺いたいと思いますが、それに先立ちまして、本日、欠席しておられる山口構成員から意見が提出されております。事務局から紹介をお願いします。
 
○政策評価官室長補佐
山口構成員からの御意見書を1枚お手元の机上に配布しております。国立病院機構の在宅医療の支援、後発医療品の使用等の意見を頂いております。以上です。
 
○松尾主査
構成員の皆様から御質問、御意見等を頂きたいと思います。順不同でやりたいのですが、意見を頂いて関連質問、関連意見がある場合は、それを優先して発言していただくことにします。
私から、一番最初に全般的な事項について質問をしたいと思います。中期目標(案)と計画(案)を読ませていただきまして、今、説明いただいたのですが、まず、これは計画(案)の中では、2040年を頭に置いて、来期が変革期になるので、そういったことを頭に置いてやりたいというお話だったのです。ただし、2040年というのは、今から大分先ですし、しかも今社会が例のデジタルトランスフォーメーションとか、国のほうではソサエティ5.0をやりましょうと。これは医療だけではなく、医療以外の分野のデータも全部包括的にビッグデータとしてつかまえてやっていきましょうということで、非常に壮大な計画が国にある中で、この国立病院機構、最後に経営の話が出て、赤字を出さないようにという話はあったのですが、それはそれとして、国策病院でもあると。そうすると、当然、将来の日本社会が非常に大きく変貌する中で、どういうふうな役割を果たすのか。特に目標を立てるところで個別の目標は立っているのですが、大きな目標として、むしろこれは計画のほうで非常に壮大なことが書いてありますが、所轄官庁の計画のほうで、もう少し大きなビジョンを最初に持っていただきたいなと。多分、持っておられるのだと思いますが、それを明確に書いていただくということ。
それと、国の他省庁も含めて、今、ソサエティ5.0の実現のために相当な努力というか、いろいろな計画を立ててやられている中で、それとの連携みたいなものを、一言、すぐに次の5年でできるわけではないですが、そういったところを示して目標として置いていただかないと、機構としては、それにがっつり組んでやっていこうという計画がなかなか立っていかないと思います。その辺りのところをまずお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。これは所轄官庁と機構のほうと両方です。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
ありがとうございます。先生がおっしゃるように、2040年に向けた視点がないのではないかという点ですが、確かに団塊ジュニア世代が高齢者となりまして、生産年齢人口の減少を招く、いわゆる2040年問題でありますが、ここは医療の現場で限られた人材でも回っていくようにするためには、1つは健康寿命を延ばすことが必要であると考えております。もう1つは、医療の現場でテクノロジーをフル活用して、人手に代わるようにしていかなければいけないのではないかと考えているところです。
1つは、健康寿命を延ばすことについては、この目標の中にも入れてありますが、ゲノム医療や再生医療に関する研究、治験や新規医薬品開発の共同研究というものが将来的には資することになるのではないかと考えております。また、テクノロジーについては、医療ビッグデータ解析が進みまして、効率的な医療を提供できるという可能性も生まれてくるのであろうと思っております。さらに、臨床評価指標における医療標準化についても、効率的な医療の提供に資するのではないかと考えておりますそういう観点からも、将来的には対応できていくのではないかと考えているところです。
 
○国立病院機構理事長
2040年にどのような状況になるかというのは、まだまだ分からないところがあるわけですが、明らかに2020年から2040年のトレンドというのは、2000年から2020年のトレンドとは全く逆方向に動いていくような状況、その中で先生から御指摘されたようなゲノム医療が進むとか、ITが進む、あるいはビッグデータをどういうふうに活かすかというように、今までとは違った観点からの取組も必要になってくるところがあるかと思います。我々としては、中期目標にそれが具体化されるよりも前に、機構の体質として、将来、今後の方向性を見据えて変革ができるように準備をしていこうという考え方です。それから、現在、我々の中でできることで、例えば電子カルテデータを集めてリアルワールドデータを構成することによって、他のビッグデータとはまた異なる観点から、今後の研究とか、あるいは厚生労働施策へのデータ提供に協力するとか、従来の機構の寄与とは少し違ったところでも寄与していきたい。そういうところを含んで2040年を見据えたとしております。
また、経営面におきましても、従来のように拡大すれば必ず経営的に成功するという時代ではなく、むしろ縮小に対してどのように対応するかが重要な観点になるかと思っておりますので、そういうことも含めて、今後、体質も変えていかなければならない。そういうような点も含めて、第4期中期計画を変革期と位置付け、対応していきたいと考えているところです。
 
○松尾主査
私は科学技術の必ずしも進歩だけではなくて、恐らく人口は減るのですが、過疎化とか、昔のバブルのときは例えば山の上に1人住んでいても、電気や水道は必ず通って恩恵は受けられたのですが、今はもうそういう時代ではなくなった。医療はましてやもっとそうであるということです。申し上げたいのは、もちろん先端的なテクノロジーを取り入れてやるというのも1つの方法で、これは重要です。もう1つは、これは誤解していただいてはいけないのは、法人の統合とかそういう話ではなくて、国立病院機構というのはやはり政策医療の中心的な存在であるので、是非、地域医療を考えるときには、機構だけでなくて、ほかの公的な医療機関とか、自治体とかを含んだ形の未来型の地域医療の実現のリーダーシップを取っていただきたいと。そのためにはビジョンが必要ですので、それに沿ってやっていくという、一つそういう問題の大きな立て方をして、その上で次の5年間はどんな時期なのかということを明確にしていただくのが非常にいいかなと思います。かつ、未来型の医療を作るところは、私個人としては、それは財務省に言うと怒られるかもしれませんが、これは少々赤字が出てもいいと、将来取り戻せばいいので、そこも全部引っくるめて黒字にしますというのはなかなか大変なので、そこをもっと明確に出す必要があるのではないかという気もしていますので、是非、よろしくお願いします。
 
○河村構成員
関連してお尋ねしたいと思います。前文のところで、地域の話が大分ウエイトが高まったような書き方をされた印象を受けております。これからの時代は介護や福祉のニーズが高まるのは当然だと思います。このワーキングの直接な担当ではないと思いますが、私はJCHOのほうのワーキングに入っている関係もあり、国として2040年を見据えたときに、今日、お話を伺っていると、国立病院機構さんとJCHOさんと傘下にある病院の規模も違うことは承知しておりますが、向かっている方向がだんだんもしかしたら近寄ってくるような感じになるのかなという印象を受けたのです。お立場からすると、そうではないという面もおありなのかなと思いますが、その辺りを国のほうとして、また機構側としてどうお考えになっているか伺えればと思います。
 
○医政局医療経営支援課長
おっしゃるとおり、先生は両方出られていますので、よく御存じかと思います。JCHOはまず地域医療を補完する法人という形で独立行政法人化されてスタートしております。一方、国立病院機構は主としてセーフティネット系の医療を中心としてスタートした機構ということです。ただ、世の中で求められているのは、地域医療単位で見た場合は、地域包括ケアの実現ということが求められているわけですので、その観点から言うと、JCHOもNHOも同様に一定の役割を求められる。ただ、トータルで見た場合はNHOの場合はセーフティネット分野を中心に担っていただくという点で、JCHOとは一線を画すところかと理解しております。
 
○国立病院機構理事長
国立病院機構の任務の責務の第一は、セーフティネット系医療であって、セーフティネット系の医療の場合は、通常の地域医療よりもより広範囲の地域をカバーせざるを得ないような状況にある一方、病院の立地として、セーフティネット医療をやりながらもその地域においてある程度の規模を持つ病院としてはNHOの病院しかないというケースもありますので、そういう場合は、当然のことながらその地域の付託を受けて、ある程度他の医療も提供していく。ただ、その場合には必ずしも医師が十分であるとか、診療体制が十分であるとは限りませんので、できる範囲において地域の中のそういう部分を担当していきたいと考えております。
一方、病院がたくさんある所では機能分担ということがこれからは問題になっていくかと思いますが、これに関しては、地域医療構想の中で示された役割を担う。ここにも書いてありますが、今までは病院がやりたいということでやってきたわけですが、そうではなくて、地域医療構想の中でこの役割をと指定された所を中心に今後は変えていきたいと考えております。
 
○松尾主査
その他、全般的なことでどうぞ。
 
○斎藤構成員
これを拝見いたしまして、厚労省の目標、それから機構のお書きになった計画の両方ともすばらしい内容のもので、これは中期計画という範囲のものではなくて、どちらかというと、どこに向かっていくべきかという国立病院機構のビジョン、目指すべきところが書かれているような印象を受けました。ところが、5か年の中期計画という枠組みとなりますと、何かそこにギャップがあるような気がします。これから団塊の世代が後期高齢者になってくると、かなり人口動態で大きな変革が出てきて、社会的にも大きく変わってくる、それこそ変革の時期だろうと思われます。その辺りを踏まえてお考えになっているのは分かるのですが、厚労省のほうで指標としてお使いになっているのが、今までのもので前年よりも上回るという連続的な形での見方をしています。変革のときには非連続的な動きを見鋸えていかなければいけないと思いますが、そのときに連続的な、前年よりもというような縛りがあると、機構としては計画を立てづらいのではないかという印象を持ちました。
毎年の計画ではなくて、5年という中期の計画を立てるときには、これから世の中は何が起きるのか、それに向かってどういう使命を果たせるのか、5年計画であればビジョンではなくて実際に実現可能なことを考えなければいけない。その辺りのことをもう少し、私のような素人が見ても分かるような形に落とし込んでいただけたらと思います。
 
○髙瀬構成員
私も同じような意見で、基本的に次の5年間ということで設定して、新たな段階に入るわけです。この指標の取り方が、これまでと同じような取り方になっていて非常に気になったところです。これは厚労省の問題かもしれませんが、例えば医師の働き方改革というのが、今、随分問題になっていますが、そこのところで新たな指標を作って、例えば勤務時間をこれからどうしていくのかとか、そういう新たな指標とか、あるいは総務省のほうで、業務の電子化に関する目標というのがあるのですが、それは組織の中の電子化という意味と、あるいは患者に向けての電子化の両方あると思うのです。例えばクレジットの決済率を何パーセントにするとか、新たな目標を幾つか作ったほうがいいと思いますが、その辺はどうでしょうか。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
この目標と指標については、冒頭でも言いましたとおり、機構と十分に相談しながらやってきたわけですが、先生の御指摘のところも検討させていただきたいと思います。
 
○国立病院機構副理事長
少し補足をさせていただきます。先ほど斎藤先生も言われたように、大きな方向性も結構意識しながら書きました。5年の計画ということですので、現実の処理もしていかなければいけないと考えています。その中で、指標として考えたときに、ある程度一定の水準を維持する。例えば人口構造でどんどん減っている地域では、同じ医療需要にならないわけです。そういう中で地域に求められるものについてどう維持するのかということが非常に大事なので、今回は維持という目標もあえて入れさせていただいております。一方、やはり質を上げていくということで増やさなければいけないものもあります。日々医療をやっている限りにおいては連続性も意識をしなければいけない。
先ほど松尾先生からもありましたように、我々は、他の公的医療機関とか、自治体病院とかと比べて、それぞれ地域も場所も違いますし、環境も違います。広く日本の医療機関ということを考えたときに、医療法人が7割を占めておりますが、最後は3割のゾーンと言いましょうか、これら公的な医療機関を1つのグループとみなして最後のセーフティネット機能を持つ医療グループだと我々は思っております。そういう機能を維持できるようにしていくことが2040年を見据えた上で必要ではないかと思っております。なかなか新規で奇抜なことはすぐにはできないのですが、まずきちんとやることと、今回、様々な実験場的なスタイルで、臨床研究においても、医療においても、我々は国策の先陣としてやっていく、そういうところがやれるのではないかということで、今後とも定性的に果たしていければいいと思っております。
 
○松尾主査
総論のところはこれぐらいにしておきたいのですが、コメントとして、今おっしゃったように、医療は非連続にパンと変えるとこれは大きな影響が出るので、どなたか医療経済学者の方が言われましたが、やはり目標に向かって、ある程度スピード感は大事ですが、ゆっくりカーブを切っていくのが大事だと聞いて、私もそのとおりだと思います。
今、私が話をさせていただいたのは、これは国立病院機構で日本の医療のことを全部考えるというのは無理な話で、これは国がきちんと政策を明確にした上で、国立病院機構の役割はこうで、そこでこういう目標でいくのですというのを明確にしてもらうと、恐らく、機構のほうはやりやすいのではないか。大きなものも全部作って、自分たちで全部やるというのは当然無理な話なので、是非、その辺りは所管官庁にお願いしたいと思います。
それでは、総論はまた後で出るかもしれませんが、ここから先は個別の課題について御意見を頂きたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いします。いかがですか。
 
○髙瀬構成員
個別の話ですが、重要度、難易度があって、それぞれ位置付けがありますが、例えば、診療事業の(1)医療の提供、これは重要度が「高」になっていますが、ここに書いてある内容というのは、医療機関であれば当然どこでもやらなければいけないようなことなので、重要度とするのはどうかなと思いますが、その辺はどうでしょうか。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
確かに他の医療機関でも当たり前だというお話がありますが、重要度を付けた意味合いというのは、冒頭でも申し上げましたが、これから超高齢化社会を迎えるに当たって、地域包括ケアのシステム、地域医療構想という重要課題があるわけで、その中でも医療の提供は基礎的な部分ですので、ここは重要度は高いのだろうと考えているところです。
 
○田極構成員
今の御指摘と関連するのですけれども、私は逆に、教育研修事業に重要度が「高」ではないというところが非常に気になりました。というのは、今まで国立病院機構では、教育研修も非常に熱心に取り組まれていて、臨床の現場で教育もしっかりやっていくのはなかなか難しいことなのですが、そこをしっかりと時間を掛けながら体制も作って熱心に取り組んでいらっしゃったところについては、私自身は非常に評価しております。そこについて、残念ながら今回、重要度に高が付いていないところが、逆に現場の方々が教育についてはそれほど重要ではないというメッセージとして受け取られないかといったところについて、ちょっと懸念を持ちました。これについて、お考えをお聞かせいただければと思います。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
教育事業は、事業の柱の1つでもありますので、決して重要度が低いというわけではありません。ただ、それ以上に地域医療構想とか臨床研究の推進というのは、先ほどの2025年の話、2040年のお話もありましたように、喫緊の医療課題ということではやはりこちらのほうが重要度が上回るということで、メリハリを付ける意味合いで設定を外したというところです。
 
○田極構成員
そこについてなのですけれども、やはり医療の質を確保する、また向上させるという点で、教育研修はやはり重要な所だと思います。今、重要度が低いということではないという御意見をお聞きしましたが、引き続き現場の方々が一生懸命に教育研修に取り組んで、結果的に質の高い医療を提供して、地域の方々、住民が安心して医療を受けられるようにという所の取組は、これからもしっかりやっていただけたらと思っています。
 
○松尾主査
ありがとうございます。
 
○斎藤構成員
IT化についてのコメントです。IT化というと非常に広範ですが、昨今、ITというと何か余り高度な、先進的なイメージがなくなってきてしまったような気がいたします。医師の働き方改革が取り上げられている今、ITの中でもAIを利用して診療に資すれば、とても効果があると思いますが、AIを利用するにはデータベースをなるべく早く教え込まなければいけない。ということは、1、2年は当然掛かるわけで、中期計画の所でITに加えて、もう少しAIということを具体的にお書きいただけたらいいなと思いました。
 
○松尾主査
では、お願いいたします。
 
○国立病院機構理事長
我々もAIの重要性は強く認識しておりますし、特に医療のような分野においては、AIの活躍する場は多いと考えています。ただ、御指摘のように、AIとして物が動き出すためには莫大なデータが必要です。そういう意味では、画像とか比較的多く蓄積されているものに関しては、AIは進んでいくと思いますし、そこで製品化されるものも出てきておりますので、そういうものは積極的に取り込んでいきたいと思っています。しかし、どの分野においてAIを適用させるかという方向性に関しては、我々もどれぐらいデータを集めればAIとして動かすことができるかという予測がなかなか付いていません。
それから、今はAIの専門家と一緒に仕事をするというか、共同で何かを行う体制がまだできておりませんので、これは次期中期計画の中で、早くそういう体制ができるようにはしていきたいと思っております。ただ、我々の所では、今、電子カルテ等のデータを標準化して集めることをしていますけれども、医療現場の情報は、御承知のとおり粒度がまちまちのものが雑多ある中で、AI等に使えるデータがどの程度あるかということは、専門的な方々と一緒に仕事をしないとなかなか分からないところがあります。我々としては、まだそこまでの余裕が持てないし、自前でそれを確立するのはとても難しいと思っておりますので、しかるべき時期に、そういう専門家と一緒に作業、あるいは共同の研究とか開発は進めていきたいと考えております。
 
○河村構成員
話がちょっと戻ってしまうのですけれども、目標の設定の所です。今回、独法通則法が改正されて最初の国立病院機構の目標だと思うのですけれども、重要度とか難易度とか、あと優先度もあると思うのですが、そういうのが付いたと。一応、通則法の枠組みを踏まえた上で考えなければいけない部分があると思うのですが、重要度、もちろんやっていらっしゃる仕事はどれも重要で、その中でメリハリをというのが通則法の考え方にも合いますし、私は理解できます。
ただ、念のためというか、ちょっと心配なところもあってお尋ねしますが、今回の通則法の枠組みで重要度を付けると、重要度の付いている項目の評価をやっていくときに、もしも目標が達成できないと、重要であるにもかかわらず達成できないということで、機構全体の評価に影響してしまうという、そういう通則法の枠組みになっていると思います。重要度と難易度が一緒に付いている所は余りそういう心配はないかなと、もともと目標が高いというところで難易度が少し考慮されることがあると思います。1の(1)医療の提供の所が重要度だけということになっていますので、そのようなことはないのかなと思いますけれども、万が一のことがあったときに大丈夫かなというところもあって、そこら辺をちょっと1つお尋ねしたいと思います。
ただ、厚労省で掲げられている具体的な目標は、既に高い水準にいっているということもあって、控えめという言葉は適当ではないかもしれませんけれども、毎年度、配置数を前年度より増加させるという形で置いていらっしゃるので、大丈夫なのかなという気もします。ただ、目標をこういう形で設定されるのは、もちろん良いと思うのですが、今度は計画の段階でもう少しブレイクダウンした目標の掲げ方があってもいいのかなと。病院が141おありになって、こういうすごくスキルの高い看護師さんを配置されている141の病院ごとのばらつきがどうなっているのかは存じ上げておりませんけれども、そういったところで各病院によってそれぞれニーズが違うのかもしれませんが、もうちょっと計画のベースの所でブレイクダウンした目標を掲げておいてもいいのかなという気もいたします。この2点はいかがでしょうか。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
計画の所は、法人側でより詳細に計画を立てていただけるものであろうと思っております。お尋ねの、例えば(1)医療の提供で、重要度があって難易度がないという所ですけれども、この指標で、1つは特定行為を実施できる看護師数とか専門性の高い職種の配置数、こういうものを増やしていくということは、今も機構として取り組んでいるところです。クリティカルパスの実施割合についても、今後も伸びていく伸び代がまだあると考えているものですから、そこについては難易度は高くないのであろうと判断したところです。
 
○国立病院機構副理事長
今、御質問いただいた、例えば専門の人数を徐々に増やしていくことについては、一応これは全体として見ているので、逆に細分化してしまうとなかなか厳しいものがあると思います。私どもは141病院あり、非常に多様な病院グループであるのが1つの特徴です。今後、専門性を高めていく等、人員を配置するというのは、まずは全体として増やしていくほうが、いろいろやりやすく、お示ししやすいのではないかと思います。病院群を急性期とか精神単科とかというように細分化すると、それぞれの目標が難しくなりますので、変革期としては全体としての底上げを図る形での数字にさせていただこうかと思っております。
ただ、いろいろ調べる中においては、今、先生が言われたようにサブの目標の考え方として検討していきたいと思っています。
 
○国立病院機構理事長
特定行為を実施できる看護師の配置とか、専門性の高い職種の配置という形においては、計画をブレイクダウンしたほうがという御意見なのですが、そういう専門性の高い職種というのは、じっとしていて湧いてくる話ではなく、まずはそういうものになりたいという動機付けを職員の中からして、その方にしかるべき研修を受けていただいて、それも研修を受ければ即なれるものではなくて、一定の資格試験等協会等が行うものを通っていただいて、初めて専門性のある職種ということで配置ができます。この数値というのは、ある意味そういうプロセスの最終的なアウトカム的な数値で、それを増やそうということになると、かなりいろいろなことを努力しないといけない。他施設で養成された方を引っ張ってくるという話では決してありませんので、そういうところも含めて、計画にはそこまでブレイクダウンしては書いておりませんけれども、目標としてそのような数値を上げるという以上は、そういうプロセスも全部含めてやろうという意味というふうにお取りいただいたらと思います。
 
○松尾主査
よろしいですか。関連して、ちょっと嫌みな質問になるのですが、毎年度、前年度より増加と。それから、先ほどの難易度ですが、難易度は多分、目標をどこに置くかで難しかったり易しかったりするということです。そのときに、毎年度、前年より増加というのは、0.1%でも増加だし10%でも増加ということで、難易度を判断するのは極めて難しいと。そうすると、今のお話ですと、少なくとも横ばいであれば相当よいのだということで取っていいわけですか。要するに、毎年度、前年より増加というのは、目標として随分あるのですよね。これは非常に曖昧だなと、最初に見たときインプレッションとしてそう思ったのですが。
 
○国立病院機構理事長
今申し上げたように、やはりいろいろな条件の中で増加を図っていく形なので、例えば初期の頃はなかなか増えないけれども、そういうプロセスの結果として後半において急速に増える可能性もありますし、逆に、そういう資格を取った人が辞めてしまうということで減少するリスクもあります。そういうものを含めて具体的数値として何パーセント増やすとかというのはなかなか難しいので、相対的に前年度よりも増やすという書き方にしているというところです。
 
○大西構成員
いろいろありがとうございます。今のお話にもちょっと関係するかもしれないのですけれども、業務運営の効率化に関する事項という所にいろいろな項目があります。この辺りは定性的な表現になっておりますけれども、非常に重要なことが書かれているように感じます。例えば、2つ目にある「法人の業績等に応じた給与制度を構築すること」。141の病院が機構の中にありますから、恐らくいろいろな成績を上げている所、苦労されている所があると思いますが、そういった所に対してそれぞれにインセンティブなりモチベーションを持ってもらうために、こういう業績等に応じた給与制度を構築するというようにされているのだろうと思うのですが、これに向かって、もう少しかみ砕いた目標というか、計画を少しお話いただくことができないだろうか、それが1つ目です。
もう1つは、これも大きなテーマだと思うのですが、3つ目にあります「働き方改革を実現するため・・・」とありまして、特にタスク・シフティングの推進等と書いておられます。先ほどの特定看護師のお話もそうでしょうし、専門人材もそうだと思うのですけれども、これについては多分、向こう5年間の中で一番大きな変革のテーマになるものかと思います。これについても、もう少しかみ砕いた目標なり計画なりにしていただけるかどうかということについて、お尋ねしたいと思います。
 
○医政局医療経営支援課医療・研究開発独立行政法人管理室長
法人の業績等に応じた給与制度の構築という所のお尋ねであったかと思います。先生がおっしゃったように、国立病院機構の給与制度というのは、基本的には国の給与制度をベースとして設計されているということで、良い面もあるのですけれども、悪い面としては硬直的側面が強いこともあります。そうすると、今後5年間を見たときに、必ずしもその機動性であるとか柔軟性がある制度になっていないということもありまして、法人側で計画を具体的に立てられていくと思いますけれども、目標の趣旨としては、法人とか病院の運営状況、あるいは職員の業績、こういうことを適切に反映した制度を作っていただきたいという趣旨です。
 
○国立病院機構副理事長
私どもは独立行政法人化したときには国家公務員であり、平成27年からは非公務員化をしました。当然、その時代、時代に応じていろいろ見直しは掛けてきております。
例えば、年俸制を取り入れました。国とは違う役職、例えば院長とかそういった方々に年俸制を取り入れて、きちんとインセンティブが働くようにするとか、ドクター、看護師、コメディカルが働いておられますので、そういう方々が更に働きやすい手当等を工夫してきています。今回、更に給与制度をいろいろ考えろという目標をいただきますので、経営としても右肩上がりで医療費が伸びるという時代でもない中で、どうやってやっていったらよいのかということについては私どももこれからしっかり考えて、具体的なものは考えていきたいと思っております。
働き方については、国のほうでも、特にドクターの働き方について争点になっております。そういう中で、やはり技術職としてどう自己を磨くのかという話と、一方それが労働者としてどう医療を提供していくのか、いろいろ悩みながらやっておられるところだと思います。大事なことは、勤務環境を改善していかなければ更なる良い医療は提供できないだろうと思っております。
そうすると、医師から看護師・コメディカルへ、あるいは看護師からコメディカルへ、コメディカル、更にはいわゆる事務職へという全体の仕事の進め方と役割分担の見直しをこれからやっていかなければいけないのではないかと思います。国の方向性をしっかり受け止めながら、そして勤務環境を良くしながら更に良い医療を目指すということで、できる限りタスク・シフティングについても現場で話合いをしながら、我々もフィードバックしながら進めていきたいと考えております。
 
○松尾主査
今の所で、例えば計画案の8ページを見ますと、目標が左の枠に書いてあって右のやや広めの枠に計画の内容が書いてあって、左に書いてある文章と右に書いてある文章は一緒なのですよね。目標と計画が一緒で、今の質問と関連して、これは計画とは言えないのではないかと。目標がそのまま書いてあるので、これは具体的にどのように達成するのかというところをこれから是非書いていただければと思います。ここはやはり、左と右が一緒だとまずいのではないですか。
 
○国立病院機構副理事長
書いてある目標の内容が大きな方向性ですので、それを踏まえて、細目は、例えば、独法通則法上は給与体系であれば、国家公務員、民間、業績ときちんと3つのポイントで判断しなさいと言われておりますし、医療事業である特性をどう考えるかということになります。何か一方的に決まるわけではありませんので、今、主査が言われましたように、そこはしっかりこの5年の期間の中で具体化していきたいと思います。
 
○松尾主査
そうですね。だから、今期と来期でもう改革をして、これを堅持すべきものとか、やったけれどもうまくいかないので、これから変えるべきものとか、その辺が明確にされればよいのではないかなと思いますので、よろしくお願いいたします。ほかにいかがですか。
 
○亀岡構成員
遅れて来て、すみませんでした。私からは、効率的な運営のほうについてです。1つは、第4期中期目標の概要についての13ページに「中期目標期間を通じた損益計算において、機構全体として経常収支率を100%以上とすること」と書かれています。さらにその下に、難易度が高いということで大変難しいと書かれております。もう1つは先ほどの計画のほうで10ページに書かれているわけですが、これを見ると、中期目標として定めた「業務運営の効率化に関する目標を達成するためにとるべき措置」の取組を着実に実施することで財務内容の改善を図り、その後に、「繰越欠損金を減らす」となっています。経常収支が100%やっとのような状況において、繰越欠損金をどのようにしてどんどん減らしていくのでしょうか。もし、繰越欠損金を減らしていく中期計画があるのであれば通常は毎年何パーセントづつ減少させて行き、その結果、中期計画を達成できるとなるのでしょうが、そうではなく最後の年に急に達成できるという計画のようにも見えます。
例えば、借入れの返済だと毎年計画があるように、当然、欠損金を最後に何パーセントという目標よりも、本来ならば通常、毎年こういう形でして最終的にはこうなるのだと言うと思うのですが、その辺と借入金の償還との関係について、どのように財源を考えられているのかということと、今お話をさせていただいた経常収支率100%を目指すところで、目指すということは100%は大変だというところの中において、繰越欠損をどのように減らしていこうとされているのかについて、もう少し具体的にお話いただけませんか。
 
○国立病院機構副理事長
指標といたしましては、経常収支率100%以上にしなさいということですので、私どもは100%で終わろうと考えているわけではありません。繰越欠損金は今期、第3期で生じておりますので、これはきちんと返していかなければいけないと考えております。したがって、単年度ごとの目標が大事になって、機械的に私どもの事業体が毎年何パーセント成長するとするのはなかなか難しいと思っております。
診療報酬改定も、今年度改定があったのですけれども、これは2年ごとに改定されますので、次は平成32年とか34年とかと、この中期期間中にも2回ぐらいあります。結構厳しい改定もあると思いますので、そこはそのときの改定を見ながら、しっかり毎年度、毎年度の中で解消に努める努力をしていくということではないかと思っております。毎年度の年度計画の中でしっかりと折り込みながら、実現できたかどうかを見ながら解消を図っていきたいと思っております。
我々は公経済負担とか他律的に決まるものもあるので、もちろんそれらも折り込んだことをやっていかなければいけないということですので、そういう意味では100%以上というのをベースライン、最低目標にしながら、各年度で具体的にやっていきたいと思っていますので、今、毎年幾つずつということは、ちょっと御容赦いただきたい。当然、約定ですから、長期借入金は、財投から借りておりますので、この1~3期まではきちんと毎年度お返ししてきたということがあります。こういったことを折り込みながら、全体のキャッシュの目標も考えながらやっていきたいと思っております。
 
○松尾主査
よろしいですか。
 
○亀岡構成員
先ほどからおっしゃっている経常収支100%以上というのはすばらしいと思うのですが、ここ数年を見ると達成されていないので、私は達成していないことが悪いとは思っていないのです。私は、むしろ達成するのは本当は大変ではないのかと逆に思っているので、今お聞きした次第であります。よろしくお願いいたします。
 
○松尾主査
こう書かざるを得ないというのもあって、私が言うのも何ですが。ほかにいかがですか。
 
○河村構成員
1の診療事業の(2)地域医療への貢献の所でお尋ねいたします。目標のほうだと5ページで、計画のほうは4ページだと思うのですが、これも計画の所でいうと、目標と計画を同じように書いてある所ではあります。「個々の病院について、医療機能、医療需要、経営状況等を総合的に分析した上で、機能転換や再編成等を検討すること」と目標にあって、同じような感じで計画でもお書きになっていらっしゃいます。国立病院機構として、もう1~3期とやってこられて、独法に転換された頃は再編成をたくさんなさっていたと思うのですけれども、今は割と病院の数としては横ばいというか落ち着いていらっしゃると思います。今回この中期計画を伺うときに、2040年も見据えた変革期というお話もあったものですから、機能転換は本当に大変なことだと思いますけれども、再編成等々どのようにお考えでいらっしゃるのか。最近は割と静かな感じでいらしたと思うのですけれども、そこを何か改めて踏み込まれるようなお考えとかがおありなのかどうか、少し御説明いただけると有り難いです。
 
○国立病院機構副理事長
直前でもありましたけれども、地域医療構想で弘前の地域の中の医療機能を変えなければいけないということで、弘前市立病院と私どもの弘前病院とが一体化するということでまとまり、昨年、協定を結びました。その根本は、青森県の地域医療構想に沿った形でやっております。現在、地域医療構想も全国で協議へ進んでいますが、その中で、各地域でどういうオファーがあるのかないのかということを折り込みながら、まずそういう構想にできるだけ沿う形で我々も参画していきたいと考えております。
この協議は公的、私ども、それから民間医療機関の皆さんで協議をしている最中ですので、そこで何かしらの提案を受けたらきちんと前向きに、何ができて何ができないのかということも明らかにしながら検討していきたいと思っております。地域によっては、もっと機能をこういうふうに充実してほしいという意見が出れば、我々にできることがあれば当然折り込んでいかなければいけないと思います。そういう意味で、地域では慢性期が足らない、回復期が足らないとなれば、国立病院の中でそういうリハ機能が非常に強い所では、それはもっと受けていこうと検討することもあると思います。あるいは、訪問看護を是非やってもらいたいということであれば、そういうことも機能に付加していこうとかという形で検討します。そういう意味では地域医療構想を踏まえながら、我々に何ができるかを真摯に受け止めて、対応を考えたいという趣旨です。そういう議論の中で、地域で病院の再編の議論が起こってくれば、それにはしっかり我々がどういう役割を果たせるのかということで参画、議論をしていきたいと思っております。
 
○松尾主査
よろしいですか。ほかに。
 
○田極構成員
同じく地域医療への貢献のところでお伺いしたいところがございます。目標の6ページのところで「退院困難な入院患者の入退院支援実施件数を、毎年度、前年度より増加させる」というのがあって、指標のところですが、過去の実績で、退院困難な入院患者の入退院支援実施件数は、29年度は、もう11万件を超えていると。こういった指標を使われた場合に、そもそも退院困難な入院患者というのは、患者数自体が増えているのかどうかも分かりにくい中で、入退院支援の実施件数だけが評価指標として上がっているときに、非常に評価が難しいのではないかなというところで、これはどういう位置付けで指標に入れられたのかをまずお伺いしたいと思います。
 
○国立病院機構副理事長
退院困難な入院患者さんということについては、国全体として地域包括ケアを進めていることに関わります。現在、厚生労働省の考え方などをいろいろ見ておりますと、地域包括ケアというのは高齢者に限らないということで、高齢者、障害者、児童、あるいは様々含めて地域で暮らせるようにしていこうということで、診療報酬上もそういう評価が進んでいます。その中で、診療報酬上で言われていますのは、例えば悪性腫瘍、あるいは認知症ですとか、誤嚥性肺炎とか、呼吸器感染症など、そういったものであるとか、緊急入院ですとか、あるいは、要介護状態であっても、例えば認定を受けていらっしゃらないという方もいらっしゃいます。そういう方も支援しなければいけないのではないか。つまり、介護保険制度と医療保険制度の連携をどうするのかとかいうことです。
虐待の問題というのが昨今非常に出ておりまして、当然、医療機関については、原因が分からないあざを発見したらそういうものはちゃんと通報しなければいけないとか、そういう義務もございますし、虐待は決して子供に限らないで、高齢者、障害者、つまり我々の全病院に関わることであるのです。そういう意味で、退院困難な方々がたくさんいらっしゃいますので、長年セーフテイネットをやってきた私どもとしてはきちんと役割を果たしていかなければいけないのではないかと思います。これは私どものやるべき政策の1つであるし、診療報酬上、今申し上げたようなものについての入退院支援加算というような一定の指標がございますので、まずはそれで数値化もアウトカムも出せるのではないかということで、これを選ばせていただいたということです。
 
○田極構成員
アウトカムという意味では、退院困難な入院患者で退院支援が必要な人が分母であって、その人たちに対して100%という形が、必要な人に対して必要な支援をしたということで、本来アウトカムとして評価できるのではないかなというのが私の質問の趣旨でした。
確かに診療報酬上の項目であるので、指標としてとりやすいというのは非常に理解できるのですが、その辺りはできればよりアウトカムに近い指標のほうがいいのではないかということ。それと、それが難しい場合は、評価する際に、例えば退院困難な入院患者がそもそも何人ぐらいいるのかなどを参考指標として御提示いただいたほうが、そもそも増加しているのかどうかも分かるので、そういう形のほうがいいのではないかというのが感想です。
 
○国立病院機構副理事長
補足で説明いたします。虐待というものが世の中にどれだけあるかという数字がなかなか難しいのと、要介護認定というのも地域でどれだけあるかというので、何パーセントそれが発生しているかとかというような指標は、なかなか正直取りにくいと思います。実際にアウトカムという言い方はしましたが、きちんと対応していく、どれだけ対応しているか、入ってこられた患者さんに対してどう対応するかというところで、今回は取り上げさせていただいていますが、なかなか日本全体でそういう人がどれだけいるのかとか、例えば誤嚥性肺炎がどれだけいるのかというのは、分母がなかなかつかみにくいので、今回はこういう結果を出させていただいています。
 
○田極構成員
恐らく退院困難な入院患者をスクリーニングする際に、スクリーニングシートがあると思うので、そういったところである程度は把握できるのかなとは思うのですが、実際問題として把握が難しい患者さんもいるというのはとても理解できます。
あともう1点ですが、先ほど悪性腫瘍の患者とか、そういったことで退院困難な患者さんということをおっしゃっていたのですが、これから非常に高齢化していく中で、働きながら治療も受けているという患者さんも増えてくるといったところで、労働者健康安全機構などが得意とするところかもしれないのですが、地域の中で高齢になっても働く方がいて、病気を持った方が働いていると。そういったところに対しても、やはりニーズがこれから増えていくところだと思いますので、タスク・シフティングという意味でも医師が全部とか、看護師の方が全部というのも難しいと思いますので、産業医との連携などもできるような、患者の相談窓口といったところの対応もきちんとしていただけるといいのかなとは思いました。これはコメントです。
ちょっと確認させていただきたいところが8ページの後発医薬品のところです。こちらの指標としましては「後発医薬品の使用割合を、毎年度、政府目標の水準を維持しつつ、2023年度に数量ベースで85%とする」となっているのですが、これは「85%以上」ではなくて、「85%」と言い切ったところがまず1点気になったところと、国のほうでも2020年9月までに80%以上という目標で、それ以上のことはまだ今は挙げられていない中で、かなりチャレンジングな85%という数値だとは思っています。これは141病院の中で、また地域差も、病院ごとの特性によっても多分かなり差があるのではないかと思いますので、この辺りも、今どのように把握されていて、全体のどういうところにテコ入れしながら、85%を達成しようとされているのか、お伺いしたいことがあります。
また、書き方として、指標のところで「後発医薬品の採用率」となっているのですが、これは採用率ではなくて、使用割合ということでよろしいでしょうか。何か「採用率」というと、医薬品の採用をしている品目数なり、数量ベースとは書いてあるのですが、ちょっと言葉の使い方が使用なのか、採用なのかといったところが、若干揃っていないのかなと思いましたので、お伺いしたいと思います。
 
○国立病院機構副理事長
「採用」のところの表現はまた整理いたしたいと思います。私どもが考えておりますのは、新薬が出るとか出ないとかで、結構変動もあるだろうというので、永遠に右肩上がりにはなかなかなりにくく、維持が難しいだろうと考えております。かなり高めの目標ではあると思います。新薬が出たらそちらにシフトすることもあるだろうとは思っておりますので、そういう意味ではまずは85%ということですが、当然、以上になるかどうかというのは、少なくとも85%は維持するぞという考え方です。変動があったときのことも考えまして、このようなことにさせていただいております。
 
○田極構成員
目指すところが85%というところだという理解でよろしいでしょうか。以上ではなくて、85%を目標に。
 
○国立病院機構副理事長
多分、維持することがかなり大変ではないかというふうに正直思うということです。
 
○田極構成員
ということですね。
 
○松尾主査
5時45分まで、あと数分ということで、一言、最後に言いたいという方がおられたら、是非。よろしいですか。
細かい点なのですが、私から1点。この目標の案の9ページの指標で、英語論文、これはちょっと前にも言ったのですが、論文掲載数を毎年、前年よりも増加させると、それで5%増やすとあるのですが、これはもう理事長先生などもよく御存じのように、最近、ハゲタカジャーナルとか、ハゲタカ学会というのがいっぱいあって、結構日本の我々の大学も含めて有名大学の研究者が投稿して、自分の実績を増やしているというのがあって、大問題になっているのです。
そのことと、それから国立病院機構なので、できればここの論文は余り基礎的なものではなくて、やはり臨床的な論文をしっかりしていく。中でも重要なのは私は2つあると思っています。1つは治験等にかかわる臨床研究論文です。これは日本では圧倒的に弱いと言われています。病院機構はそういうネットワークを持っておられて、そして治験も非常にたくさんやっておられるので、こういった論文の質というか、中身です。それともう1つ私が重要だと思うのは、これは大学病院でもそうですが、若いドクターに、是非、ケースレポートで、英語論文をどんどん書いていただきたい。この2つはすごく機構にとって重要ではないかと思います。これは単に何でもいいから書いて出せみたいな話ではなくて、中身を少し検討していただく。これは前にも申し上げたのですが、是非、よろしくお願いします。
 
○国立病院機構理事長
理想からすればインパクトファクターが付いているジャーナルであるとか、あるいはMEDLINEとかに掲載されているジャーナルというような形で、より絞り込んだほうがいいとは思うのですが、現状、なかなかそれは難しいところがあります。英語論文としておりますが、英語なら何でもいいというわけではなくて、一定の基準、ネット検索ができる範囲に入っているようなものを拾い上げるということで、一応そこの基準は設けております。
論文内容も、今まではどちらかというと観察研究が多かったわけですが、最近、介入研究もかなり増えてきておりますし、全ての論文でインパクトファクターが付いているわけではありませんが、インパクトファクターの付いているジャーナルについては、平均値が2.7という数値が出ております。ですから、決して質としても低いものではありません。これに関しましては、今後、どういうような水準にもっていくか、もちろん少しずつハードルを上げていく必要はあるかと思いますが、現状においては今言ったようなところを水準にして、カウントしていきたいと考えております。
 
○松尾主査
ありがとうございました。そのほかにありますか。もしないようでしたら。今日、いつもと同じように大変活発に御議論いただきました。ちょっと進行役の不手際で、議論が深まったかどうか疑問ですが、本当に御協力をありがとうございました。それでは、御意見を伺うのはこれぐらいにしまして、最後に、所管課及び法人のほうから一言ずつお願いいたします。
 
○医政局医療経営支援課長
医療経営支援課長でございます。本日はお忙しいところを、活発な御議論を頂きまして、ありがとうございました。国立病院機構の次期中期目標、それから次期中期計画については、本日頂戴いたしました御意見等を踏まえまして、今後、総務省、財務省といった関係省庁とも調整させていただいた上で進めていくことになりますが、国立病院機構におかれましては、引き続き、セーフティネット分野の医療でありますとか、災害医療を着実に実施していただきたいと考えております。併せて、地域医療構想の実現、それから地域包括ケアシステムの構築、こういった厚生労働省の政策目標を達成していただくためにも、国立病院機構にもお力添えいただきたいと思っております。本日は貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。今後、先ほど申し上げました段取りに従って、中期目標、中期計画の策定に取り組んでまいりたいと思います。改めまして、本日はありがとうございました。
 
○国立病院機構理事長
本日は長時間にわたりまして、第4期の中期目標案並びに中期計画案について御審議いただき、誠にありがとうございます。御審議いただきました中期目標案と中期計画案は、当機構における重要な業務運営の指針となるものです。第4期においても、この中期目標案、中期計画案に基づき、国立病院機構が有する人的・物的資源、病院ネットワークを最大限活用しながら、国の政策や環境の変化などに適切に対応し、国立病院機構のミッションである診療、臨床研究、教育研修等の業務を行うことにより、国民の健康に重大な影響のある疾病に関する医療等であって、国の医療政策として機構が担うべきものの向上を図り、もって公衆衛生の向上、増進に寄与する、このミッションを着実に果たしていく所存でございます。
有識者会議の委員の皆様方には、当機構の業務運営について、今後とも御指導御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。本日はどうもありがとうございました。
 
○松尾主査
どうもありがとうございました。以上で、本日の議事を終了したいと思います。最後に事務局からアナウンスをお願いします。
 
○政策評価官室長補佐
今後の流れについては、会議の冒頭に参考資料にて御説明しましたとおりでございます。確定しました中期目標と中期計画については、構成員の皆様にお送りいたします。最後に構成員の皆様の中で、本日配布した資料の送付を御希望される場合には、机上にそのままにして御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは、以上です。
 
○松尾主査
これで本日の会議は終了とさせていただきます。お忙しいところを御出席いただき、また、大変熱心な御議論を頂きました。ありがとうございました。

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 国立病院WG(第5回)議事録(2019年1月31日)

ページの先頭へ戻る