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2018年11月21日 第5回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会議事録

○日時

平成30年11月21日(水)13:00~14:51

 

○場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室(12階)

○議題

 ○複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用について

○議事

○岩村座長
 定刻となりましたので、ただいまから第5回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を始めることにいたします。皆様、今日はお忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。それでは、早速、本日の議事に移りたいと存じます。お手元の議事次第を御覧いただきたいと思いますが、本日の議題はそこにありますように、複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用についてとなっております。それではまず、議題に入る前に、前回の検討事項につきまして事務局から説明を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○ 引田課長補佐
 それでは、事務局より御説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。
 1ページ目です。こちらは、JILPT調査における本業と副業の週所定労働時間の合計が20時間以上となる者(371人)について、本業と副業1つ当たりの所定労働時間の一部を合算の対象外とした場合及び合算の対象とする本業又は副業の数を5つ、4つ、3つ、2つまでに  
 それぞれ限定した場合のクロス集計をするとどうなるのかということで、酒井委員から質問を頂いたものです。このうち、今回クロス集計させていただきましたのは、対象外とする時間が、3時間未満、5時間未満に限っております。
本業又は副業のうち、所定労働時間3時間未満のものを対象外とした場合で合算対象とする本業又は副業を5つに限定した場合、365人であり、371人に対する割合は98.4%になります。合算対象とする本業又は副業を2つに限定した場合につきましては、340人であり91.6%となります。また、本業又は副業のうち、所定労働時間が5時間未満のものを対象外とした場合で対象外とする本業、副業を5つに限定した場合、336人であり、371人に対する割合は90.6%になります。対象を2つに限定した場合については318人であり、371人に対する割合は85.7%になります。
 次に3ページを御覧ください。副業の数と年収の関係ということも御質問いただいておりました。こちらの場合、JILPT調査における本業と副業の週所定労働時間の合計20時間以上となる者について、副業の数と年収のクロス集計をしました。
まず個人の収入に対してのクロス集計をしたところ、副業1つ及び2つの者は50万~200万円未満、副業が3つの者は50万~100万円未満、4つの者は150万~250万円の層が多くなっております。
 続いて4ページ目を御覧ください。今度は世帯の収入とのクロス集計したものです。副業1つ及び2つの者は300万~500万円未満、副業が3つの者は200万~250万円未満、300万~700万円未満の層がまた多くなっているところです。事務局からは以上です。

○ 岩村座長
 はい、ありがとうございました。ただいま、事務局のほうから前回の検討事項について、資料1に基づいて御説明いただいたところですが、これについて何か御意見あるいは御質問はありますか。酒井委員どうぞ。

○ 酒井委員
 前回の私からの質問に対して、資料を用意していただいてありがとうございました。クロス集計した場合に、どれくらいの人たちが対象になり得るかということを見ていただいたわけですが、大体、合算対象となる仕事が2つあるいは3つくらい、かつ5時間以上ということで、もう既に90%くらいは捕捉できているということがよく分かりました。
 それから、副業の数と年収の関係についても、このサンプルサイズが非常に小さいということに関しては注意しなければいけないところですが、副業の数が多くなれば、非常に低収入だというようなことは見られないかなというふうに思います。今回用意していただいた2つの資料から、少なくとも合算の対象とする仕事の数を4つ5つにする必要はないのかな、ということが見えてきたかなというふうに思いました。ありがとうございました。

○ 岩村座長
 はい、ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、本日の議題に関しまして事務局のほうで資料2を御用意いただいております。そこでまず、事務局のほうから、これにつきまして説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。なお資料2は、これから御説明いただきますが、論点が複数ありますので、大きく3つに分けて議論を進めたいというふうに思いますので、事務局もそれを踏まえて御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 田中課長補佐
 雇用保険課課長補佐の田中です。よろしくお願いいたします。資料2に沿いまして御説明させていただきます。
 資料2の1ページ、論点として、保険事故の設定についてどう考えるかです。
 2ページ目、法律の規定そのものですが、雇用保険における求職者給付の保険事故とは何かということです。まず、法律の第1条の部分ですが、雇用保険は、労働者が失業した場合に必要な給付を行うものであるということが規定されていて、4つ目の○ の部分を見ていただくと、基本手当は被保険者が失業した場合に支給するものであるというように規定されているところです。1つ上の○を見ていただくと、法律の第4条において、「失業」とは被保険者が離職をし、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいうと定義されていて、その「離職」とは、1つ上の○ですが、事業主との雇用関係が終了することをいうとされているところです。
 この概念に関して、3ページを御覧いただくと、第3回の検討会で雇用保険における労働者適用の考え方について御説明しましたが、雇用保険の世界では、自らの労働によって生計を維持しているというように考えられる方、その労働を保護の対象とするという考え方に立って、制度発足当初から労働者の考え方を運用若しくは条文の中で定義してきているところです。現行では、週の所定労働時間が20時間以上である方をそもそも雇用保険の適用の対象としていて、同時に、これがまさに自らの労働により生計を維持していると考えられるということなので、20時間を割る方については、取扱要領の右下の赤枠で囲っている部分ですが、20時間未満となることについても、離職として取り扱うというような取扱いになっているところです。これが、現行の求職者給付に係る保険事故の考え方です。
 4ページです。まず、求職者給付の保険事故に係る議論を行う前提として、そもそも適用の基準をどう考えるかということについて、前回御議論いただいているので、それを整理したものです。前回の議論の中で、おおむね2つの考え方を前提に御議論が進んでいたものと承知しています。まず1つ目、合算適用と付けましたが、おそらくマルチジョブホルダーの雇用保険の適用を考える上での最もベーシックな考え方だと思いますが、労働時間を合算して20時間以上となる場合に適用するということを前提にしたときの御意見を記載しています。前回の検討会では、やはり合算方式とした場合に、1つ目の○の部分にあるとおり、A事業所で15時間、B事業所で10時間、これを合算させるとするなら、現行の被保険者がA事業所で20時間、B事業所で5時間である場合、後者の方は合算が行われないので、こういった方とのバランス、給付を行う際のバランスに留意するべきではないかという御意見が多くあったかと承知しています。
 一方、合算しないでマルチジョブホルダーで想定しているような雇用の状態にある方に適用するとした場合に、もう1つ方法として考えられるのではないかという御提案があったのが、基準自体を現行の20時間より引き下げてしまうという方法、これに関する御意見もあったかと承知しています。この考え方については、1つ目の○のとおり、先ほど申し上げたアンバランスを避けつつ適用させるということで、適用基準を下げるということも考えられるのではないかということでしたが、その場合はマルチジョブホルダーのみに適用基準を下げるという選択はオペレーションの観点から難しいと考えられるので、一般的に下げるということが想定されるのではないか。そういった御意見を頂いていたところです。こういった適用の考え方を前提にして、このそれぞれで適用されている方について、ではどのような状態になったら保険事故と考えるかを、5ページ目に整理しています。
 5ページの上の部分に白字で記載させていただいているとおり、適用基準の引下げであれば、現行と考え方が変わらないかと思いますが、合算で適用させる場合については、やはり保険事故をどのように捉えるかというところが問題になってくるのではないかと思っています。まず、上が合算適用と仮定した場合で、マルチジョブホルダーがA事業所に15時間、B事業所に10時間で適用されているという状態を想定して、その後Aを離職し、それぞれ、A事業所は0時間、B事業所は週所定労働時間10時間という状態になってきます。この段階で、適用の要件を満たしていませんので、被保険者資格は喪失するということになるかと思います。つまり、部分離職の状態です。更に、Bを離職すれば、完全に離職をして職がない状態になるということです。この状況で、保険事故を(1)の所で捉えるべきか、完全に離職をする(2)の所で捉えるべきかという論点があろうかと思います。
 参考までに、一般被保険者については、ケースとしてはそんなに多くないと想定されますが、25時間から、仮に週所定労働時間が10時間で固定されるというような状況が確認されるとすれば、その段階で被保険者の要件は満たしていませんので、雇用保険の資格を失うということになる、これに併せて、先ほど申し上げたとおり、20時間を割るということを離職と扱って、この段階で保険事故の発生と見ているという状況です。
 続きまして、基準を引き下げたと仮定した場合、ここでは具体的な数字は前回も出ていませんでしたが、議論のために週所定労働時間を10時間に引き下げたというように仮定を置いています。そうすると、マルチジョブホルダーの方、同じく15時間、10時間で働いている場合に、Aを離職したという場合、まずA事業所は被保険者資格の喪失をしますが、現行の被保険者の取扱いと同じと考えれば、A事業所は資格を喪失して、B事業所がその段階で資格を取得するということになってきます。この状況で、同じようにB事業所で離職をすれば、それぞれ0時間となって、完全に職を失うという状態になってきます。この状況についても、(3)の段階を保険事故と捉えるか、(4)の段階を保険事故と捉えるかというような論点はあろうかと思っています。
 参考までに、一般被保険者で適用基準を引き下げたと考えた場合は、同じく同じ労働時間になるように労働時間を減少させ、更に離職をしたとなると、この段階では週所定労働時間が10時間になった段階で、まだ適用要件を満たしているということになるので、被保険者であり続ける、Cを完全に離職すれば、その段階で保険事故の発生と捉えられるという状況です。このようなことを踏まえて、保険事故の設定をどのように捉えることが考えられるかという論点を提示しています。
 続いて、求職者給付の給付方法についてです。今ほど申し上げたような保険事故の設定で、失業状態になるという保険事故が発生したとすると、では具体的に求職者給付をどのように行うのかという論点が出てきます。7ページを御覧いただくと、現行の雇用保険制度の体系の中で、求職者給付を大きく4つ、被保険者類型ごとに分けていて、(a)の基本手当、(b)の高年齢求職者給付、(c)の短期雇用特例求職者給付、(d)の日雇労働求職者給付です。ざっくりと申し上げると、(a)の基本手当方式に対して、(b)や(c)の一時金で支払う方式というのがあるので、このような現行の給付方式に照らして、マルチジョブホルダーに適用させた場合に、給付方法をどのように考えるかという論点の御提示です。
 まず、現行制度の御説明から入ります。8ページです。こちらの基本手当の概要ですが、御承知のとおり、一般被保険者が離職して失業状態にある場合、4週間ごとにハローワークで失業認定を行った上で、失業している日について支給するという制度になっています。支給要件は飛ばして、具体の給付内容ですが、1つ目の●にあるとおり、基本手当日額を離職日から1年の範囲で所定給付日数分支給するという制度設計になっています。この基本手当日額については、離職前の賃金日額の50~80%で、所得に応じて決定されるところです。こうして、1日当たりの給付額を決めた上で、所定給付日数、何日分支払うかというところについては、離職理由・被保険者期間・年齢により、年齢のマトリックスで決定してくるというところです。
 9ページです。参考までに、基本手当の受給者の実人員を載せていますが、当然受給者の実人員自体は景気変動によって大きく変わってきまして、平成21年度、リーマンの頃には85万であったものが、現行、平成29年度では38万程度まで受給者実人員が落ちている状況です。さらに、基本手当の主要指標として、雇用保険部会等々で議論する際にお示ししているものですが、平成29年度のデータで見ていただくと、当該年度で、基本手当を初めて受給された方については、大体100万人超いるという状況です。その1人1人について、平均の受給日数がおよそ100日、平均の受給日額が5000円弱という状況になっているところです。
 続いて、先ほど失業認定を行った上でと申し上げましたが、具体の基本手当の手続の流れを11ページにお示ししています。こちらも御承知のとおりと思いますが、まず本人が雇用契約を終了して事業所を離職した場合、事業主から資格喪失届と離職証明がハローワークに送付されると。ハローワークで、それを受理・確認した上で、喪失の通知とともに事業主分、本人分の離職票を送付するというような手続になっています。本人に離職票が届いたら、本人がそれを持参した上でハローワークに来庁し、求職登録をします。この求職登録がされた段階で、求職の意思ありということで受給資格決定がされるということになっています。そうすると、御本人に求職活動に入っていただき、28日後、失業認定日と呼んでいますが、ハローワークから指定される日に来庁していただいて、そこで実際に求職活動を行っているかどうかを含めた失業の認定が行われるということです。その失業認定が行われれば、失業している日分について、およそ1週間程度だと思いますが、基本手当が振り込まれるということになってきます。
 こちらが基本的な流れで、その上のほう、図の一番右の部分を見ていただきたいのですが、このように失業認定されている方が、被保険者にならない範囲で労働した場合の取扱いです。この具体に労働された方については、下の点線の四角囲みの(5)の部分ですが、失業中に労働によって収入を得た場合に、失業認定で申告書に収入等を記載して届け出ていただきます。1日の労働時間が4時間以上であれば、そもそも当該日については失業認定されない、4時間未満であれば失業認定された上で、収入に応じて基本手当が減額されるという制度になっています。
 御参考までに、失業認定の記載例の様式を付けさせていただいています。一番上の赤枠の部分、具体的に働いた日にマルを付けていただいて、マルであれば4時間以上ということで失業認定は行わない、バツであれば4時間未満ということで、内職減額の対象になってくるということです。
 続いて、失業認定の考え方について、13ページに載せています。原則として、1つ目の○ にあるとおり、出頭した日から起算して、4週間に1回ずつ失業認定を受けていただけます。原則としては、この認定日に関しては必ず出頭していただく、認定日の変更は原則としてきかないということになっています。参考の所に、失業認定日の変更が認められるケースについては記載させていただいています。
 14ページですが、内職減額の具体的な方法について記載させていただいています。こちらは、基本的にはもともと働いていた賃金日額の80%を超えるような収入が、基本手当と内職による収入である場合には減額をかけるというような発想になっていまして、まさに今ほど申し上げた基本手当プラス基本手当の日額プラス一定の控除額を控除した収入が賃金日額の80%を超える場合には、その超える部分についての減額をかけるというような制度になっています。
 15ページです。一時金方式の代表例として、高年齢求職者給付の概要を載せさせていただきました。御承知のとおり、65歳以上については、平成28年の改正で被保険者として適用されることになっていて、これを高年齢被保険者と呼んでいます。この高年齢被保険者の方が失業した場合に、同様に失業認定を行った上で、失業認定が行われた段階で基本手当日額の一定日数分、下の表にあるとおり、被保険者期間が1年未満であれば30日分、1年以上であれば50日分の給付を一時金として支給するという状況です。
 1ページ飛ばしていただき、17ページです。高年齢求職者給付の手続の流れを書かせていただいています。先ほどの基本手当に比べれば大分簡略化されていて、求職登録を行って受給資格決定をするところまでは同様で、あとは指定日に来庁していただき、その段階で失業認定がされれば高年齢求職者給付の支給が行われ、それをもって本人が自由に求職活動を行うという設計になっています。この考え方を逐条解説から18ページで抜いていて、下線を付けていますが、65歳以上の高年齢者の多様な就業希望に対応して、このような者が失業した場合には一時金という形で支給して、ハローワークにおける職業紹介、職業指導の援助を受けるだけではなく、様々な機会を捉えて本人が随時にフルタイムの普通勤務以外の幅広い職業について求職活動が行えるようにということで設定されているものです。
 続いて、短期特例、それから日雇については御参考までに概要と支給状況を載せていますが、特に短期特例については、基本的には高年齢と一緒なので説明は割愛します。
 最後に、御参考として23ページに、被保険者類型ごとの求職者給付の総額を載せさせていただいています。過去、雇用保険部会で議論されるときには、特に一時金支給の短期や日雇については、給付と負担の倍率の推計等々が出ていますが、現行のそれぞれの被保険者の数に占めるそれぞれの被保険者類型の割合と、それぞれの給付の求職者給付に占める割合を御参考までに記載しています。御承知のとおり、短期雇用や日雇になると、被保険者の数自体はそれほど多くないのですが、求職者給付に占める割合は高くなってきている状況です。
 若干長くなりましたが、一旦ここで切らせていただきたいと思います。

○ 岩村座長
 ありがとうございました。それでは、今御説明いただきました保険事故の設定について、それから求職者給付の給付方法につきまして御意見、あるいは御質問がありましたらお願いしたいと思います。
 前回の議論のまとめということで、資料2の4ページの一番最初、適用の基準の問題が保険事故の問題と裏表ですが、そこのまとめがあるわけです。どちらかというと基準自体を引き下げる、例えば週10時間という形に引き下げるということなのかなという議論をしていたと思います。次のページで図式化して示していただいていて、非常に分かりやすいのですが、ここでの考え方、この図で示している考え方というのは、あくまでも保険事故としての失業というものは現在の考え方を前提として考えた場合だという理解ですよね。というのは、ちょっと混ぜ返すと、合算適用でも、それから基準引下げの場合でも、一般被保険者の場合、例えば合算適用でそれまで週所定25時間働いて、C事業所で週25時間働いていたのが契約の変更なり、あるいは一時帰休というような形で週10時間になったというようなケースを考えると、この場合は保険事故、これは保険事故になるというように考えるということなのかな、どうしてここに赤の保険事故が入っているのだろうと思ってしまいますが。

○ 田中課長補佐
 今ほど御指摘いただきました5ページ目の合算適用と仮定した場合の(参考)一般被保険者の部分でございますが、現行、20時間以上で適用なので、おっしゃるとおり、離職をした場合に基本的には給付が行われるものなのですが、雇用保険では、自らの労働によって主に生計を維持しているのであれば適用という考え方に立っており、逆にそれが失われた段階での給付という扱いになっておりますので、週25時間を割った段階、これが当然固定している必要があるのですが、認められる段階での離職として取り扱えるようになっております。ですので、ここがそれに基づいた保険事故、すなわち給付要件を満たす段階となっております。

○ 岩村座長
 そうですね、ありがとうございました。しかし、そうすると、そうか、基準引下げの場合で一般被保険者になると、C事業所で週所定25時間が週所定10時間に変わっても10時間を超えているという前提なので、逆に言うと週所定10時間未満が非適用だという前提になっているので、したがってここのところでは保険事故は発生しないという議論になってしまうでしょうということですね。

○ 酒井委員
 基準引下げの場合には、保険事故のハードルを一部の人にとっては引き上げることになるという理解でよろしいですか。

○ 田中課長補佐
 おっしゃるとおりだと思います。

○ 酒井委員
 そうすると、現行の取扱要領を前提とした上で、適用基準を引き下げて保険事故を認定するとなると、実態の数としてはどうか分からないですが、不利益なほうに変更されるというような人も出てくるということで、そこのところと勘案しなければいけないかなという気がします。マルチジョブホルダーが救われることになったとしても、そこのところを勘案すべきかと思いました。

○ 岩村座長
 おそらく、4ページにある前回までの議論の取りまとめの所にもその点は出ています。ですから、基準引下げで例えば週所定10時間まで下げるというようにすると、一般被保険者のほうは従前だったら保険事故になって受けられたものが、今度は逆に受けられなくなるということになってしまう。それで、マルチジョブホルダーの場合だけ週所定10時間というのはあるのかという議論が前回あって、いや、それは難しいでしょうということからやるとすると、全般的に下げなくてはいけないのではないですかという話だったと思っています。
 ただ、基準引下げというようにした場合に、ここのところがうまく説得力を持って説明できるかというのがちょっと気になるところですね。

○ 中野委員
 前提を確認させていただきたいのですが、我が国の雇用保険制度の場合には、適用の基準のラインと保険事故の発生するラインとは一致しているのが前提だということでよろしいのでしょうか。部分失業を認めていないからだと思いますが、オール・オア・ナッシングになるのが前提だということでよろしいですか。

○ 岩村座長
 そこは事務局、いかがですか。

○ 松本雇用保険課長
 現行制度はそういう考え方で設定しているということでございます。

○ 中野委員
 なので、この基準引下げの場合、一般被保険者の場合だと今までもらえていたものがもらえなくなってしまうということなのですが、週25時間から10時間に変わったとき、週15時間分の労働時間減少に伴う収入の減少は、現行制度の仕組みを前提とするならば保障されない。そのことを変えることまでは考えていないという前提でよろしいのですか。

○ 岩村座長
 考えていないかどうかは必ずしもはっきりしていないようには思いますが。

○ 中野委員
 考える余地も。

○ 岩村座長
 ここでまた検討する課題としてはあるだろうという気はしています。例えば、雇用保険制度の基本手当の趣旨というのは、単純に失業して所得がなくなったからそれを補償するという趣旨ではないというように一般には考えられていて、あくまでも失業して、そのとき、この後の仕事を探すという活動に対して一定の手当を払ってそれを支えるという趣旨のものとして一般には多分理解されていると思います。単純な、消極的な所得補償ということではなくて、むしろ積極的な意味を持ったものというように捉えられているとすると、全くの想定ですけれども、基準を引き下げた場合の一般被保険者についても、25時間から15時間に減ったところでハローワークに行ってもらって、私はこれから少なくなってしまった15時間分について仕事を探しますという形をとることができるかという問題はあります。つまり、従来の失業の場合と同じように求職者登録してもらって、求職活動をちゃんとやっているかどうかを見て、それでという扱いが全く考えられないかというと、おそらく全く考えられないと答えることはちょっと難しいところはあるかと思います。
 というのは、正に、マルチジョブというものを認めるという前提で考えているので、上のA事業所やB事業所で働いていて、Aがなく   
 なったというところで、私は残り15時間分について仕事を探しますという形になる。そうだとすれば、C事業所についても10時間に減ってしまったところで、それではとても大変なので、15時間分の仕事をまた新たに探すのでという行動をむしろ、この場合は取ってくださいねということに多分になるのだと思います。今まではシングルジョブだったのが今度はマルチジョブになるように行動してくださいねと、そういう捉え方というものも観念的にはあり得るだろうと思います。
 逆に、基準引下げの場合だとすると、マルチジョブで15時間なくなってしまったところを、A事業所で15時間あったものがなくなってしまったところで仕事を探してという、それで15時間分のジョブを新たに獲得してという話だとすると、多分(3)で離職だというように捉えてという、これは10時間とリンクして考えるとそういうことになるでしょうと。(4)にしてしまうと、これはむしろ逆にマルチジョブホルダーの場合であっても何も特別扱いはしませんという話だということになります。

○ 渡邊委員
 今の基準引下げを仮定した場合に、マルチジョブホルダーのA事業所、B事業所の中で15時間のほうが適用されていて10時間のほうが喪失されたと。B事業所は10時間が引下げラインだと、なお適用があるので、今の現行制度でいっても20時間と20時間の場合を考えると、(4)となっている所にならないと給付は出ないという仕組みになるので、一般被保険者と保険事故の発生時期が一緒ということになると。(3)の所では出ないという取扱いでしょうか。

○ 松本雇用保険課長
 今と同じような取扱いをするのであれば、正に御指摘のとおりB事業所に適用が移っているということなので、つまり雇用が失われていないという位置付けになるのでありましょうということかと思います。

○ 渡邊委員
 そうすると、基準引下げと仮定したどこのラインかは別にしても、マルチジョブホルダーと一般被保険者の取扱いとしては、ここでは差は生じないという理解でよろしいでしょうか。

○ 松本雇用保険課長
 はい、今の考え方を維持するのであれば。

○ 渡邊委員
 もう一方の合算適用と仮定した場合、マルチジョブホルダーの場合はA事業所を離職した(1)の所で給付をするかどうか、保険事故と捉えるかどうかというのが、最初の議論として存在しているという、そういう理解でよろしいですか。

○ 松本雇用保険課長
 そうです。

○ 岩村座長
 ちょっと待って下さい、今の議論がよく分からなかったのですが。もう一度言ってくれますか、基準引下げの場合は。

○ 渡邊委員
 基準引下げの場合、現行制度の取扱いで行くと、マルチジョブホルダーだろうが一般被保険者だろうが、取扱いというか保険事故の発生時期は変わらない。マルチジョブホルダーは(3)では生じずに(4)になりますので、下のC事業所の場合と同じ時期に発生になりますよねと、そういう意味では取扱いに差はないということになります。
 上の場合はマルチジョブホルダーに関して、(1)の所で保険事故の発生と捉えるのか、(2)の所で発生と捉えるのかというところで取扱いを決定することができるというか、どう取扱うのかというところが論点になっているという理解でよろしいのかということです。

○ 岩村座長
 はい、分かりました。ただ、逆に言うと、基準引下げの場合に現行の取扱いをそのまま維持するという話になると、結局、マルチジョブホルダーの場合に2つの事業所に適用するということの意味は実はほとんどないということになると思います。やはり、そういう意味では真ん中の所のA事業所が0時間で、B事業所が所定で10時間というところで、B事業所に適用があったとしてもなおA事業所が0時間だから、そこで失業したというように考えないと、現在とは結局余り変わらないということにおそらくなる。ただ、そういうように捉えてしまうと、今度はC事業所とのバランスが合わなくなってしまうということなのです。

○ 中野委員
 合算適用のほうで、(1)と(2)のどちらを保険事故とするか、一応議論の余地はあるだろうとは思いますが、仮に(2)のほうだとすると、(1)のA事業所を離職した時点で被保険者資格は失っていて、その後、B事業所での雇用がどのぐらい続くか分かりませんが、保険事故である離職が発生するまでにタイムラグが生じることになる。そうすると、支給要件として被保険者期間が絡んでくるならば、(2)の時点を保険事故とすると支給が非常に制限されてしまう可能性があるのかなと思います。また、被保険者資格を失った後の期間をどう管理をするのかという問題もあります。

○ 岩村座長
 被保険者期間を失った後にもう一度得たとき、前と後ろを通算できるのには制限があるので、制限できる期間を超えてしまってからBを離職したとなると、そもそも受給要件を満たさなくなる可能性があるので、もらえない。(2)の所を保険事故に考えると、そもそもそこの時点でB事業所のジョブを失ったとしても手当はもらえないとなってしまう可能性があるというのは、そこは今、中野委員がおっしゃったとおりだと思います。

○ 渡邊委員
 合算適用と仮定した場合の時間数が15時間と10時間で分かれているので、一般被保険者との比較で(1)の所を保険事故としても差が生じないように考えられますが、時間数の割合がもっと極端に違う場合に差が出てくるのかなと思っています。例えばA事業所のほうを20時間、B事業所を5時間というような形にした場合で、B事業所の5時間を喪失したといった場合にどう考えるのか。C事業所の場合でも、契約変更で5時間の減という状況になると20時間ですから、まだ保険事故が発生していない。ですが、マルチジョブホルダーの方は5時間の方では離職は離職だというように考えると保険事故の発生と見ることが可能になってくる。そういった場合に保険事故をどこで捉えるかということで、違いが出てくる可能性があるということでしょうか。

○ 田中課長補佐
 ちょっと、お答えになっているかどうか定かではないのですが、1点だけまず補足させていただきます。今ほど委員がおっしゃった25時間のケース、20時間、5時間のケースで仮に考えるとするのであれば、そのケースはまずA事業所で一般被保険になっておりますので、5時間のほうを離職するということに関しては現行、雇用保険の世界とは関係がないということになります。

○ 渡邊委員
 すみません。失念していました。

○ 田中課長補佐
 ただ、少し議論を補足するのであれば、20時間を仮に1時間落として19時間、6時間というケースで考えるとすると、御指摘のような議論は当てはまろうかと思います。ただ、そのケース、19時間、6時間の状態で、仮に6時間を全て失うということになりますと適用要件から外れてまいりますので、ほぼ上のA事業所、B事業所の15時間、10時間のケースと同様で議論が可能かと思います。

○ 岩村座長
 ありがとうございます。もう1つ、給付方法の問題があるのですが、そちらも併せて御議論いただければと思います。

○ 酒井委員
 基本手当方式、すなわち失業認定を繰り返していって給付日数を決めるという方式か一時金かという議論でいくとすると、最初に確認しておきたいことがあります。今、一時金方式の例としては高年齢者求職者給付が挙げられていますが、一時金を採用すると、この高年齢者求職者給付の例にのっとる形になるという理解でよいでしょうか。例えば基本手当ですと失業というか、再就職のしにくさに応じて、すなわち年齢とかによって給付日数が変わるという設定を設けていますけれども、一時金の場合はもうそういうことはあり得ないというように考えないといけないのでしょうか。それとも、一時金の場合も年齢ごとに差を付けるといったこともあり得るということなのでしょうか。

○ 岩村座長
 事務局、いかがでしょうか。

○ 田中課長補佐
 検討会での御議論だと思いますが、そういった選択肢も可能かというように考えております。

○ 酒井委員
 はい、分かりました。

○ 岩村座長
 ほかにいかがでしょうか。基本手当方式でやったときには、マルチジョブを前提にすると内職減額が掛かるところがおそらく一番難しいのです。適用基準を下げた場合で仮に議論したとして、基本手当が出ますよと、失業を先ほどの例えば(3)を前提にして議論したとき、基本手当がA事業所のほうを失業したということで出せるとしても、B事業所のほうが残っているので、内職減額が掛かってしまう。こういう問題がどうしても発生するというところが、基本手当方式の場合の一番頭の痛いところだと思います。

○ 中野委員
 事務局にお伺いしたいのですが、基本手当方式の場合、失業認定が4週間に1回指定された日に行われる、認定日の変更は不可ということなのですが、実務ではハローワークの方が一方的に認定日を指定しているのですか。例えばマルチジョブホルダーの方の場合、現にお仕事が続いているので、仕事の都合で指定日にハローワークに伺うことができないということも起こると思います。認定日をハローワークのほうが完全に一方的に決めてしまっているのか、そこに何か事情を融通するような余地はあるのかという点を聞かせてください。

○ 岩村座長
 いかがでしょうか。

○ 田中課長補佐
 現行の取扱いということを前提に申し上げますが、失業認定の関係については、13ページで資料を示させていただいております。まず、法律上、そもそも4週間に1回来なければならないと規定されておりまして、それに基づいてハローワークから指定日は指定させていただいております。
 そもそもの考え方として、失業認定につきましては、ハローワークが指定した日に来ることができるということが、ある意味その方が失業していること、求職活動を行っていることの確認そのものですので、条文上も明確に出頭というように書かれております。その考え方を前提にいたしまして、例えば基本手当を受けられている方が何らか内職なりで働いていようが、原則としてはその認定日に来ていただくこと、出頭していただくことが求められております。そういった意味で、失業認定について別段の定めとして認定日の変更が認められるケースというのは、考え方によっては限定的に列挙されているというのが現状の取扱いでございます。

○ 岩村座長
 今のところは結構、場合によっては難しい問題です。今議論しているのは25時間とか、そういう人たちを前提にしているから、どちらかというとパートタイムの人です。週の間3日間、あるいは4日間働いているけれども1日当たりの就労時間が4時間とか、そういった人を念頭に置いて議論しています。しかし、マルチジョブホルダーはフルタイムで、それにもう1つ何か兼業しているケースもあり得るとすると、その場合で兼業していたほうを失業したとき、4週間に1回、来られるかというとフルタイムだと難しいですよね。

○ 中野委員
 フルタイムだと多分、一般被保険者ではないでしょうか。

○ 酒井委員
 要は週5日働いているとか、そういうことですね。

○ 岩村座長
 そういうことですね。その場合は結局、年休を取って来るかということになる。

○ 中野委員
 そうですね、仕事を休まなければ。

○ 渡邊委員
 実務上は、認定日の変更というのは、かなり狭い範囲でしか認められないという取扱いに今はなっているということでよろしいでしょうか。資料の13ページに『失業の認定について別段の定め』として記載されているかと思うのですが、最後の部分に、「準ずるものであって社会通念上やむを得ないと認められるもの」というような範囲というのは、ほとんどないと解しておいてよろしいのでしょうか。

○ 田中課長補佐
 まず、認定日の変更が認められるものにつきましては、ここに列記されておりまして、最後の社会通念上認められるものも、確か限定列挙されていたと。要はバスケットクローズ的に読める規定は確か置いていなかったのではないかと記憶しています。もちろん、このそれぞれに該当するかどうかということで多少疑義があって、ハローワークで判断されるケースはあると思いますが、原則的には限定列挙で記載をされているものでございます。

○ 渡邊委員
 これに関して、マルチジョブホルダーを適用範囲に加えるということで、この部分に変更を加えようとか、そういうことは基本考えないでというようなことでよろしいのでしょうか。

○ 酒井委員
 マルチジョブホルダーに限っては認定日の変更の基準を緩くするといったような。

○ 渡邊委員
 そうです。マルチジョブホルダーの方は、他で勤務を継続していることがあるので、その勤務を考慮してというような可能性を認めるのかということです。

○ 田中課長補佐
 まさにこの検討会の場での御議論かと思います。酒井委員がおっしゃられたとおり、現行の一般被保険者で、先ほど申し上げた失業認定の趣旨に照らして認めていない世界をどこまで認めるかというところは、論点にはなろうかと思います。

○ 岩村座長
 要するに、先ほど事務局からもちょっと説明があったように、求職活動をちゃんとやっていますねと、要するに失業状態が続いていますねということを担保する仕組みなので、緩くしてしまうと法の趣旨にかなった適用なり運用というものができなくなる可能性もあるわけです。緩めるとしても、そんなに大幅には緩められないのではないかという気はします。例えば、先ほど言ったようにパートタイムの人はまだしも、週5日勤務のフルタイムの人だと、およそ来るのは無理なのでという話になりかねなくて、もうハローワークに行かなくてもいいからという議論にしてしまうのかというと、それはさすがに無理でしょうということだと思います。では、そういう人たちは2か月に1回でいいのかというと、それも何か、なぜその人たちだけがということになるだろうし。ほかにいかがでしょうか。ほかの話題もあるので、この辺りでよろしければ次に進めたいと思います。ありがとうございます。
 次に進むということで、まず事務局からまた資料の説明をお願いしたいと思います。

○ 田中課長補佐
 事務局です。
 続きまして、資料の24ページ、賃金日額の算定についてです。若干議論が細かくなってきますが、25ページの冒頭の四角囲みのとおり、雇用保険の求職者給付は、原則、基本手当日額の一定日数分が支給されるという仕組みの制度です。基本手当日額自体は、賃金日額の50~80%、賃金の高さに応じて決定されます。このような設定になっていますので賃金日額をどのように算定するかというところが、1日当たりの給付額の算定に結びついてきます。この賃金日額の決定自体は3つ目の●にありますとおり、受給資格決定時の被保険者期間として算定された期間の、最後の6月の賃金総額を180で除す形で算定されるもので、こちらは事業主にそれぞれ離職票という形で算定していただいたものに基づき、ハローワークで計算しております。下に賃金日額算定までの流れを示しています。先ほど離職証明書の提出のところを簡単に申し上げましたが、この離職証明書の提出のところで実際には必要な添付書類を添えた上で、事業主から出していただき、それに基づいてハローワークが離職票を発行して、御本人がハローワークに来庁するということになっています。
 御参考までに26ページに、具体的にどういう計算をするのかを様式の例として挙げております。離職日から遡り、それぞれの期間で基礎日数が何日あるのか、その基礎日数を満たしているところの賃金を事業主に書いていただき、該当する6月部分について足し上げて180で除すというような作業をハローワークで行っています。
 この賃金日額の算定で論点になってきますのが、27ページの一番上の冒頭白字の部分です。『基準引下げ』の場合には、賃金日額の算定・求職者給付の支給は、原則、現行と変える必要はないかと考えられますが、一方の『合算適用』の場合は、そもそも複数の事業所で賃金が払われていますので、この賃金日額をどの雇用関係に基づいて計算するかというところが、そのまま給付額の部分にはねてきます。
 具体的に合算適用と仮定した場合、先ほどの保険事故の設定の部分の例をそのまま引いてきていますが、(1)で保険事故と見た場合は、この段階で喪失、かつ受給資格決定ということになるわけですけれども、賃金日額をA事業所、B事業所それぞれどちらで計算するのかというところが論点になってきます。賃金日額を合算させると仮定した場合は、まず事務としてはそれぞれの事業所から離職証明書をハローワークに提出いただき、それぞれの離職証明書上の計算された6月分の賃金をハローワークで計算をして、1日当たりの賃金額を算出します。実際はこれほど簡単な計算にはなりませんが、極めて簡略化して申し上げれば、それぞれ各月、X円、Y円の賃金が払われているとすると、X+Yに6を掛けて180で割る、簡略化するとこのような計算になろうかと考えています。
一方、賃金日額を合算させない場合は、当然離職をした、保険事故の引き金を引いたほうの事業所の賃金でカウントすることになろうかと考えられますので、このケースではA事業所が離職証明書をハローワークに提出するということで、現行とほぼ同様の取扱いでの賃金日額の計算になろうかと考えています。
 検討課題をそれぞれ書いておりますが、まず、合算させる場合の検討課題としては、離職証明書の提出を双方の事業主に求める、A事業所の場合には、当然労働者が離職をしているので、議論としては考えやすいのですが、特にB事業所の場合は実際には離職をしていない状態ですので、そういう事業所についても離職票の提出を求める、このことが事務上どの程度の負担になるか。また、ハローワークでそれを取りまとめて合算して計算することになってきますので、それも事務負担として実施可能かどうか、検討課題になってこようかと思っています。(2)は一般被保険者とのバランスです。合算適用の場合は常々、一般被保険者で合算されないことと給付の面でバランスを失するのではないかといった御意見が出ておりますが、例えば先ほど出た20時間5時間の方で言えば、20時間の方を離職したとしても5時間分の賃金については賃金日額に合算されませんので、15時間10時間について合算して25時間分で賃金を計算してしまうと、バランスを失するのではないかといったことが、この賃金日額を合算させた場合に問題として生じてくるのではないかと考えられます。(3)の雇用が継続するB事業所の賃金の扱いというのは、先ほど申し上げた事務負担の部分とセットの内容かと思っています。
 逆に賃金日額を合算させない場合にどのような検討課題が出てくるかです。このケースの場合には、15時間10時間のケースで見れば、10時間分の賃金でしか給付額が計算されないということになってきますので、賃金日額、給付のベースになる額が相当程度低くなってしまうということをどう考えるか、という問題が発生してこようかと思われます。ただ、一般被保険者の場合であれば必ず20時間を超えた賃金で計算されてきますし、マルチジョブホルダーを前提する限りにおいては、それぞれの事業所では20時間を超えないことが前提になっていますので、逆に給付単価という意味では一般被保険者を超えることがないという制度設計にはなろうかと考えられます。御参考までに、過去に適用拡大を行って、短時間の方を対象としたときに、どういった給付設計で特例を設けたのかという話、これは第3回の検討会で御説明しておりますので、その資料を添付しております。賃金日額の算定に係る現行の説明は以上です。
 続いて、もう1つのテーマを御説明いたします。自己都合離職についてです。30ページ以降に資料を載せていますが、31ページ、先ほど御説明したとおり、基本手当はそもそも被保険者が失業した場合において支給するという取扱いになっており、その失業が自己都合離職であるのか、それとも倒産解雇であるのか、離職理由のところは問うていません。一方、被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された重責解雇の場合、又は自己の都合により退職した場合には、3か月の給付制限が掛かることになっています。この自己都合離職の取扱いを検討する上での御参考に、32ページに現行、自己都合離職の支給決定がどのぐらいあるのかをお示しております。基本手当の受給資格決定自体は、当然景気状況によって変動してきますが、自己都合離職についてはおおむね一定で過去、推移してきているという状況です。ここで一旦切らせていただきます。

○ 岩村座長
 ただいま御説明いただきました2つのポイント、賃金日額の算定について、それから自己都合離職の扱いについての御意見、あるいは御質問があればお出しいただければと思います。賃金日額については、合算適用を前提にすると、賃金日額を合算させる場合でも、合算させない場合でもそれぞれいろいろ問題があり、現行の取扱いを前提とする限りは問題が発生するということかと思います。例えば賃金日額を合算させる場合であっても、賃金日額を結局A事業所とB事業所、つまり失業していないB事業所も含めて計算してしまうということになるので、確かに給付は課題になるのですが、それはしかしB事業所からもらっている賃金との調整をうまくやれば、そこは今、仕組みはないけれども、そういう仕組みを入れれば問題がないのではないかという、そういう議論というのもあり得るのかもしれないですね。今までの内職の取扱いとは違うものを導入するということはあるかもしれません。そうすると一般被保険者とのバランスを取ることも仕組みとしては可能だけれども、B事業所に失業してないにもかかわらず書類を出せというのは、やはりちょっと何か、なかなか納得を得にくいかなという気はします。

○ 渡邊委員
 ただ、その場合も結局資格喪失届は必要になるのですよね。

○ 岩村座長
 そういうことにはなります。

○ 渡邊委員
 離職証明書は出さないけれども、資格喪失届は出してくれということになるので。

○ 岩村座長
 そういうことにはなりますね。

○ 中野委員
 なので、資格喪失届を作成するのと離職票を作成するのとで、どの程度事業主側の事務負担の差があるのかという程度問題にはなるのかなと思います。ただ、先ほどの岩村先生の御発言でもありましたが、結局合算させるにしてもB事業所との賃金の二重払いにならないようにする調整は必要だということかと思います。ですので、それを合算しないという形で行うのか、合算した上で現在払われている賃金を控除するというような形にするのかということだと思います。

○ 岩村座長
 そうなのですが、B事業所からすると確かにB事業所の資格も合算適用の場合だと喪失するのですが、B事業所としては別に御本人の離職という事実があったわけでは何もないのです。いわば御本人の離職という事実があったわけではなくて、御本人がAを離職した結果として、Bにとばっちりが飛んできて、それで資格がなくなるのでという。そういうところが今まではなかった状態なので、その辺を御理解頂けるのかどうかということかという気がします。しかし、適用を合算しておいて賃金日額を合算させないというのは、論理的に整合するものですか。

○ 渡邊委員
 保険料負担との関係でいっても、保険料を今まで拠出していた分が給付につながらないといったような視点もあるので、合算させないといったような場合に、その点もどう考えるのかというのは問題になるのかと。

○ 岩村座長
 その点はあるでしょうね。つまり結局のところ、B事業所で負担していた保険料の部分は全然、生きないということにはなると。しかしそれは合算適用にしてしまったからということで、御納得いただくしかないのではないでしょうか。保険料負担について、労働者側はいいけれども、事業主側がどうかなというのはあるかもしれないですね。多分、合算させない場合は、論点として出ている雇用が継続するB事業所の賃金をどう取り扱うかという問題があって、今の内職の取扱いをすると、場合によっては給付自体が全然出なくなってしまうことになるので、上の合算させる場合でも調整の問題というように捉えるとすると、やはり今の取扱いとは違うものを考えないといけないと、そういうことになります。

○ 酒井委員
 その意味で言うと、賃金日額を合算させない場合の問題点として、給付額が小さくなる可能性があるとおっしゃっていましたけれども、それも別の取扱いをする以上は、その掛け率を変え得るという選択肢も場合によってはあるのではないかと、低くなりすぎないように掛け率を調整するということもあり得るのではないかと思うのです。

○ 岩村座長
 ただ、多分そうなると、パートというのを念頭に置いてしまうと、それもあるのですが、先に言ったように週5日のフルタイムで兼業というのを考えると、今度は逆に過大な給付になってしまう可能性がありますよね。

○ 酒井委員
 そうですね、確かに。

○ 岩村座長
 それとマルチジョブのところだけ給付率を変えるというのが説明しづらいというのが、どうしても出てきますね。そうすると一般的に給付率を変えるという話になって。
 自己都合離職はいかがでしょうか。私が勝手に進めて申し訳ないです、別に給付のほうに戻っていただいても結構ですが。

○ 渡邊委員
 これは自己都合離職の場合、マルチジョブホルダーに関しては、異なる取扱いを設定すべきだという問題提起と理解してよろしいのでしょうか。

○ 松本雇用保険課長
 これは前回までの御議論の中で、労働時間の通算は本人以外にできないという場合に、保険として逆選択の問題が起こり得るという御指摘を既に頂いているところです。そうした問題がある中で、その給付の在り方を考えるときに、この自己都合離職というところを考慮する必要があるかどうか、有りや無しやという論点提示です。

○ 岩村座長
 他方で、マルチジョブホルダーの場合の、例えば2つの職を持っているというケースを考えたときに、そういう人たちの1つの事業所で離職が発生するといったときの、その離職原因についての実証的なデータはあるのでしょうか。つまり一般のフルタイムの人とマルチジョブの人とで、離職の理由についての傾向の違いとかいうようなものが分かる実証データというのは何かあるのですかね。

○ 田中課長補佐
 少し検証させていただきたいと思いますが、おそらくマルチジョブホルダーに限ってという形では、ないのではないかと思います。ただ、一方、つまるところマルチジョブホルダーの方々は通常、正におっしゃられるパートとか有期の方々が多いと考えられますので、その方々がどのような辞め方をしているのかというのは、もしかしたらデータとしてはあるかもしれません。ただ、雇用保険で言うところの自己都合離職は、正に自分の意思で辞めるという意味に当たりますので、そういったところまで取っているものは、おそらくないのではないかと思います。一般の契約期間の満了という意味であれば、通常の自己都合離職という取扱いとは、またちょっと雇用保険の世界では異にします。

○ 岩村座長
 例えばこの雇用保険業務統計で、労働時間の長さ別で取っているとか、例えば20~30時間の人と30~40時間の人とか、週当たりの労働時間別で集計ができるかとか、そういうことはありますか、ないですか。

○ 松本雇用保険課長
 大変申し訳ないですけれども、雇用保険のデータは入職したときの所定労働時間をノーエビデンスで取っているデータなので、有意な情報にはならないと思います。

○ 岩村座長
 ならないのですね。

○ 中野委員
 資料の31ページで御説明を頂いているのは、基本手当方式の場合の自己都合離職の給付制限で、その場合には一定期間支給が制限されるということですが、例えば仮に一時金払いの方法を取った場合には、給付制限はどのような形になり得るのでしょうか。やはり例えば3か月支給が遅れるような形になるのですか。

○ 田中課長補佐
 おっしゃるとおりです。一時金でも自己都合離職であれば3か月間給付しないという期間が設けられます。

○ 中野委員
 3か月たつと一時金が払われるのですね。

○ 岩村座長
 一般論としては、おそらく一般被保険者とマルチジョブホルダーとで、雇用保険法で言っているところの自己都合離職について、扱いを別にする理由というのは余りないようには思うのです、それを覆すような何か、やはり違うのだというデータがあるのだったら、そこは考えないといけないという気はするのですが。だから、代替指標としてはパートとか有期の人のデータがあればということかなという気はします。

○ 松本雇用保険課長
 理由で取ったものはないのですが、前回か前々回に、確か酒井先生からの御指摘で、短時間の人の離職率とか在職期間がどうかというのは御提供したことがあったかと思います。それは理由として、自己都合離職だけではなくて、解雇とか期間満了も含むものではありますけれども、傾向的に短時間である場合には離職率が高く、かつ在職期間が短いというデータは顕著に出ていたかと思います。

○ 岩村座長
 ただそこは代替指標になるかというと、ややそれだけだと難しくて、というのは期間が、パートとかの人は結構有期なので、そうすると期間満了というのがそこにどうしても入り込んでしまう。だから、その意味での離職が多いというのは、それは事の性質上しょうがないということになってしまうかなという気はするのです。

○ 渡邊委員
 先ほど自己都合離職の場合に、マルチジョブホルダーに関しては逆選択防止の観点が必要ではないかというようなお話があったかと思うのですけれども、一般被保険者と同じように、自分の意思で辞めた場合には、3か月の待機期間を置くということを超えて、ある意味、逆選択防止の観点から不支給にするという、そこまで必要なのかということに関してはいかがですか。

○ 松本雇用保険課長
 そこについて御議論を頂くということですので。

○ 渡邊委員
 そうすると3か月の待機期間は比較的長いと思いますし、マルチジョブホルダーの場合には、離職と就職の期間が短いというお話があったかと思いますので、不支給にまでする必要もないように思います。一般的には、通常の自己都合離職の取扱いの3か月というようなスパンを置けば、対処できるのではないのかなという気はいたしました。

○ 岩村座長
 ですから先ほど私も申し上げたように、マルチジョブホルダーの人が、今の一般被保険者と離職行動が違うという話になれば、とりわけ雇用保険法の意味でいう自己都合離職というところが一般の人とは違うという何かデータがあると、今の取扱いとは違うものを考えるということになるのだと思いますが、それが必ずしもデータ上、今はないということだと、現行の取扱いをそのまま持ってくるということになるのかなと思ってはいます。

○ 中野委員
 マルチジョブホルダーも、一般被保険者と同じように、強制適用、強制加入ということであればそれでいいのかなと思うのですが、確か前回までの議論で、いろいろ難しいのではないかという話もあったと思います。任意適用になるような場合にも同じように考えてよろしいのですか。

○ 岩村座長
 それはまた議論が元に戻って、つまり雇用保険で任意適用というのが考えられるかという、その問題になってしまうので。私は雇用保険で任意適用を考えるのはちょっと想定しにくいと思っており、そこの議論はどうなのかなとは思います。

○ 中野委員
 そうですね。だから強制適用を前提にするならば、特段のデータがない限り、一般被保険者と区別をすることは余り考えられないと。

○ 岩村座長
 ということだと思うのですが。多分そういうデータ自体をおそらく取ること自体も非常に難しいでしょうし、正にこの制度が始まってくればハローワークでデータは取れるようになるのでしょうけれども、現時点では取りようがないのだと思います。
 よろしいでしょうか。それでは、残っている求職者給付以外の給付について、事務局から御説明いただきます。

○ 田中課長補佐
 事務局です。
 資料の33ページ以降の求職者給付以外の給付について、御説明させていただきます。資料の34ページを見ていただくと、論点になってくるかと思われる給付が、全体の失業等給付の中で教育訓練給付、それから雇用継続給付です。例えば基本手当の残日数を一時金として支払う再就職手当などは、基本手当方式で考えなければ、そもそも想定されない給付ですので、そういったものを除いて、被保険者の類型によって給付されるか、されないかということが検討の俎上に載せ得るものとして、教育訓練給付と雇用継続給付の2つが考えられます。これらについて、現行の被保険者類型別に支給状況がどうなっているのかというのを示した表です。
 教育訓練給付については、現行は一般と高年齢については支給の対象としておりますが、平成10年の制度発足当初から短期特例と日雇については対象としていないというところです。
 一方、雇用継続給付については、現行、一般と高年齢被保険者に関しては、高年齢雇用継続給付は当然対象が65歳未満になりますので、65歳以上を想定する高年齢被保険者は対象とされませんが、それ以外については原則給付の対象となっております。同じく、短期特例と日雇については、そもそもこちらの給付は雇用継続を目的とする給付ですので、季節的労働若しくは日雇のように、短期の一定期間の契約、離職を繰り返すような被保険者類型にはなじまないということで、給付対象とはなっていないところです。
 続いて、35ページ以降に今ほど申し上げた給付の概要を付けさせていただいておりますので、簡単に御説明申し上げます。教育訓練給付には、現行の一般教育訓練給付と平成26年に創設された専門実践教育訓練給付がございます。35ページの一般教育訓練給付は、在職者又は離職1年以内の方、妊娠、出産、育児等で教育訓練給付の対象期間を延長された方は最大20年以内の方が、厚労大臣が指定する訓練を受講した場合に、訓練費用の一定額を支給するものです。現行の給付内容としては、受講費用の20%、上限10万円というところです。
 36ページの専門実践教育訓練給付ですが、中長期的なキャリア形成に資する訓練ということで、厚生労働大臣から指定されたものを受講した場合には受講費用の50%、更に訓練終了後、資格取得、就職した場合には受講費用の20%が出るということで、最大7割の受講費用が給付される制度です。
 続いて、37ページの高年齢雇用継続給付です。冒頭の四角囲みにあるとおり、60歳以上65歳未満の労働者であって、60歳以後の各月に支払われる賃金が原則として60歳時点の賃金の75%未満となった状態で雇用を継続する方に支給されるものです。支給要件といたしましては、被保険者期間が5年以上、給付内容は、65歳以後の各月の賃金の15%、賃金の額によっては一定の逓減を加えたパーセンテージで支給されるということです。もともと60歳以降の方が雇用継続等で賃金が低下した場合を想定して設けられた制度ですが、参考に基本的な事務のフロー、イメージを書かせていただいております。おおむね60歳になられた方に関しては、この時点の賃金と比較して給付を決定するということになってまいりますので、まず60歳になられた時点で60歳時点の賃金日額をハローワークに提出いただきます。それ以降、例えばこの例では、継続雇用に切り替わった段階で賃金が下がれば、60歳時点より賃金が大幅に低下していれば、25%以上、低下していれば、その下がった各月について、各月ごとに支給の申請をすると。これは2か月に1回の支給申請で給付が行われるという制度になっています。
 38ページが育児休業給付です。こちらは、育介法上の育児休業を取得された方について支給されるものです。現行は労働者が、1歳若しくは1歳を超えても休業が必要と認められる場合には最長で2歳ですが、その子を養育するための育児休業を行う場合に支給されるものです。支給要件については、育児休業の開始前の2年間に、被保険者期間が12か月以上あることです。給付内容は、平成26年の改正で拡充されておりますが、休業開始から6か月までは休業開始前賃金の67%相当額、それ以降は50%ということになっています。参考までに、育児休業については、具体的にマルチの方が取得をするとどうなるかというイメージを書かせていただいております。相互で取得をするケースから、一方で雇用継続をしてA事業所のみで育介法上の要件を満たして取得するケース等も想定されるというところです。
 同じく、育介法上の介護休業について支給をされるのが介護休業給付です。概ね育児休業給付と同様ですが、基本的には介護休業として対象家族1人について3回、通算で93日までが限度というところが異なっているところです。簡単ではありますが、求職者給付以外の給付についての説明は以上です。

○ 岩村座長
 それでは、今御説明いただいた求職者給付以外の給付に関して、御意見あるいは御質問がありましたらお出しください。

○ 酒井委員
 38ページの資料で、マルチジョブホルダーの場合の育児休業取得のイメージということだったのですけれども、A事業所のほうで育児休業取得ということを前提にして、B事業所のほうは就業継続しているということなので、週10時間は働いている。週10時間の給料はもらっていて、育児休業給付ももらっているということになると、やはり一般被保険者の場合は、基本的に週1時間でも働いていたら原則、育児休業給付は支給されないかと思いますので、バランスを欠くことになるのではないかという気がするのですが。

○ 岩村座長
 私もそう思います。結局、育児休業給付は根っこが育児・介護休業法なのですが、育介休法の方はもともとマルチジョブホルダーを想定していない法律なのです。ですから、1事業所で働いている場合だけを想定して作っているので、この図で言うと38ページの右下のC事業所で時短の就業継続というケースは、育休の対象にはなってこないという発想になってしまっているのです。したがって、当然これは育休にはならないので、給付も出せないという構造になっていると。
 逆に言うと、実はそのすぐ上にあるA事業所で育児休業を取得して、B事業所で就業継続というケースについても、育児休業給付を出そうという話になると、根っこを変えてもらわないと多分難しいのかなという気はちょっとしています。だから、育児休業法のほうもマルチジョブホルダーのスタイルに合わせた形での育児休業というものを構想するのかどうかという、そういうことなのだろうと思います。

○ 酒井委員
 あるいは、雇用保険のほうの育児休業給付に関しては、完全にA事業所でもB事業所でも0時間になったときに、初めて育児休業給付が認められるということもあり得るのではないかと思ったのですが、それは何か問題ありますか。

○ 岩村座長
 それは多分、こちら側の要件設定の問題であろうとは思います。

○ 中野委員
 介護休業給付にもおそらく同じことが言えて、育児・介護休業法とつながっている以上はそちらに合わせて、マルチジョブホルダーの場合は、複数の事業所全てで休業を取得しないと介護休業給付が支給されないということになるのかなと思います。もしマルチジョブホルダーについて、1つの事業所で就業を継続していても給付をするということであれば、育児・介護休業法と切り離すことが必要であろうと。でも、そうすると今度は、一般被保険者でフルタイムで働いている人が時短になった場合とのバランスという問題が出てきてしまうのかなと思います。

○ 岩村座長
 誤解のないように言っておくと、育児・介護休業法は一応、1事業所で働いていることを想定していると言っていますけれども、別にA事業所で育児休業を取得すること自体は法律上では妨げられないので取ることは可能なのです。しかし、マルチジョブホルダーを想定して何か考えているかというと、余り考えていないということだと思います。もともとの法律の趣旨は、多分フルタイムで5日間就労の人が育児休業を取って、男性であれ女性であれその間子供を見るという、つまり、労働から完全に解放されて、その間育児をするというのがイメージとしてあるので、それが根っこにあると考えざるを得ないかなと思っています。

○ 渡邊委員
 1つ質問をしてよろしいですか。マルチジョブホルダーの方がA事業所のほうでは育休を取得できたけれども、Bのほうは育児休業を取得する要件を満たしていないと、だからこそ就業を継続せざるを得ないという状況のときに、B事業所を辞めたといった場合はA事業所に関しての育休の給付はもらえるという、そういうような理解なのでしょうか。

○ 岩村座長
 それも、どうするかをここで考えろという話なのだと思います。

○ 中野委員
 基本手当と育児休業給付と、どちらが優先されるのかということですよね。

○ 渡邊委員
 そうですね。

○ 田中課長補佐
 検討会で御議論いただくべき内容かとは思います。まず、出ていた議論としては、正に先ほど御指摘が出ていたとおり、1つの事業所で働かれている方に関しては、基本的には育児休業と認められるためには、就労していないということが前提だと。だからこそ、事業主サイドも取らせなければならないという形になるわけです。つまり、部分的に就労して一定程度お金を稼ぎながら、かつ育児で休業する、会社のほうを休む、さらにそこに対して給付が出るという設計は、現行は認められていないところではありますので、そことのバランスをどう考えるかというところになってくるかと思います。

○ 岩村座長
 ただ、ここから先は立法政策の問題になるのだけれども、マルチジョブホルダーの場合は、結局育児だ介護だということからこういう形でのマルチジョブホルダーというのがあるとすると、実は育児の都合上A事業所は取りあえず育児休業を取得して、1年間は就労しないと、しかし、B事業所のほうは就業を継続しますと。こういうのは、正にそういうタイプのマルチジョブホルダーだからこそ取る行動である可能性が高くて、そこに給付が出ないというのは、ちょっとやはり立法の立て付けとしては余り良くない気はします。ちょっとやはりこれは、根っこのほうを考えてもらわないと、という気はするのだけれども。だから、時短での就業継続というのを、むしろ育児休業法のほうで、部分的な育児休業とか、何かそういった観点で整理してくれると、やりやすいということではあろうかと思います。

○ 渡邊委員
 今の育児・介護休業法の規定を前提として考えると、先ほどの就業継続を断念した場合の取扱いは正にここで議論して、基本手当のほうにいくのか育児休業として扱うのか、それを考えてくださいということですか。

○ 岩村座長
 ということになると思います。つまりその場合、要するに育児を理由として離職する、例えば契約の更新をしないというようなときに、それを自己都合離職だというように扱うのかという問題であろうし、それを基本手当であれ一時金であれカバーするのかという問題でもあるでしょう。そうすると今度は、A事業所で介護休業を取得している、あるいは育児休業を取得していて、そこで給付が出て、さらにB事業所のほうも就労を断念したということで離職になって、それに更に手当が出るということになる。そうなると、育児休業給付と、あるいは介護休業給付と基本手当なり一時金との併給の状態というのをどう考えるかという、もう1つ別の論点が出てくるだろうと。

○ 中野委員
 ただ、一方の事業所での就業を断念した場合、この例であれば週の所定労働時間の合計が25時間を下回るので、被保険者資格の喪失になりますよね。そうすると、今の育児休業給付や介護休業給付は、被保険者であることが前提となっているので、一方の就労を断念して被保険者資格を喪失した場合、育児・介護休業給付は支給できなくなりますか。

○ 松本雇用保険課長
 今の整理を申し上げれば、被保険者が休業したときに給付がされるので、そういう意味で、20時間を下回ったならば被保険者でないということであれば給付が出ないというのは、今の制度を前提とする論理的帰結かとは思います。

○ 岩村座長
 具体的にそういう形で給付を打ち切った例というのはあるのですか。

○ 松本雇用保険課長
 いや、今は合算するということが発生しないので。

○ 岩村座長
 でも、育児休業を取っていたのだけれども、途中で結局もう無理だというので辞めてしまったといったときは、そうするとそこで育児休業給付も打切りになるということですね。

○ 松本雇用保険課長
 もちろんです。

○ 渡邊委員
 今の制度の前提でいくと、育児休業を取得しているけれども被保険者資格が喪失されるので、育児休業給付は支給されなくなると。そうすると、離職のほうを捉えてこちらに基本手当なり一時金なりを支給するかというと、今度は基本手当としては労働の意思及び能力があるというような要件が掛かってくるので、育児を理由にして休んでいるということになると、基本手当のほうの要件を満たさなくなるということになりますか。

○ 岩村座長
 育児はOKだったのではないですか。

○ 渡邊委員
 そうでしたか。

○ 岩村座長
 自己都合離職で多分。事務局、お願いいたします。

○ 松本雇用保険課長
 救済措置を御説明いたします。

○ 田中課長補佐
 受給資格としては発生しますが、育児で、例えばハローワークから一定の職を紹介されても受けることができないような状態、すなわち、求職活動を行っているとは認められないような状態であれば、確かに失業認定はされずに給付は出ません。ただ、もともと基本手当は1年の期間でしか支給がされないのですけれども、育児等によってそういった求職活動を行うことができない状態であれば、一定の期間、4年間その期間を延ばすことはできるようになっています。

○ 渡邊委員
 結局、受給期間の延長は認められるけれども、実際に休んでいるときに支給されるかというと、結果的には支給されないということですね。

○ 田中課長補佐
 現行制度ではおっしゃるとおりです。

○ 岩村座長
 教育訓練給付はいかがでしょうか。私は、こういう人たちが正にこういう給付を受けるべきなのではないかという気がするので、給付を認めるということでよいのかなと思うのですが。

○ 渡邊委員
 不支給とする積極的な理由もなく、どちらかと言えば能力開発に資するということで、積極的に認めたほうがよいという帰結になりそうです。

○ 岩村座長
 かつこれは、賃金との連結がないので、そういう意味では考えやすいと言えば考えやすいのですよね。賃金とも雇用とも連結がないので、そういう意味では考えやすいのだと思いますし、こういうマルチジョブホルダーで比較的収入が不安定な方の場合は、むしろこういう給付を受けるのにふさわしいだろうと思います。

○ 酒井委員
 ちょっと1点だけよろしいですか。求職者給付以外の給付についてという説明の一番最初で、一応、基本手当か一時金かということに関わりなく検討するとしたら、教育訓練給付及び雇用継続給付をどうするかということだったかと思いますけれども、逆に言うと、基本手当方式を採用する場合には、いわゆる就職促進給付などについても適用するかどうかを検討する必要があるということですか。

○ 田中課長補佐
 回答いたします。議論としてはあろうかと思いますが、ただ、基本手当方式を採用している限りにおいて、早期に再就職された方に支給残日数分を支給しないという判断は、逆に一般被保険者の通常の基本手当を受給される方とのバランスを著しく失しますので、今回の事務局の判断としては、就業促進給付はほぼ議論がないだろうということで、資料は割愛させていただいております。

○ 酒井委員
 基本手当方式をもし採用するとしたら、ほぼ自動的に就職促進給付も適用されると。分かりました。

○ 岩村座長
 ただ、就職促進給付だとかなり特定の状況にということになるので、なかなかマルチジョブホルダーの方が適用するとして当てはまるかというと、結構難しい気はしますね。大体一通り御議論いただいたように思いますけれども、何かほかにありますか。

○ 酒井委員
 今頃元に戻るような話で恐縮なのですけれども、失業認定のところで、今日は結局どちらかと言うと、基本手当方式のときに来庁とかの問題をどうするかということで、なかなか失業認定が難しい面があるのではないかということに議論が集中していたかと思います。そうすると一方で、一時金にしてしまうとすごく整理がクリアなのではないか、事務的にも楽なのではないかというような考え方になるかと思うのですけれども、ちょっと一時金のほうに関するメリット、デメリットがはっきりしなかったので、もし事務局で何か資料というか、根拠みたいなのがありましたら教えてください。一時金方式を採用する際のデメリットというか、何か問題点みたいなところはどのように把握されていますか。

○ 岩村座長
 事務局、いかがでしょうか。

○ 田中課長補佐
 御質問は、一時金方式を採用した場合のメリット、デメリットということですが、一時金方式を採用した場合は、基本手当方式で生じてくるような状況、まずマルチジョブホルダーに関しては基本的にベースになるケースとして、おそらくは片方の雇用が継続する状態で保険事故が発生して給付が行われるという状況を想定しますので、先ほど座長から御指摘があったとおり、まずは内職減額によってマルチジョブホルダーの方は給付額を削られる状況が想定されますので、そういったことはまず起こらないような給付設計だと言うことが可能かと思います。ただ、少し細かい論点を申し上げるようですが、一時金方式の場合は、逆に合算をするのであれば、継続している雇用のほうに関しては給付のベースに加えた上で減額の仕組みがないという状態で支給することになりますので、それは1つ論点となるかと。減額の仕組がないがゆえに、そのような給付設計が妥当かという議論は1つあろうかと思います。
 あと、デメリットという御指摘がありましたので申し上げると、やはり一時金方式である以上は、現行の制度は全てそうですけれども、基本手当の最低の日数の90日より低くどうしても設定されてまいりますので、一時金として払われるのでそれなりの額がある月には出る形にはなるのですが、給付としてどうかというところは議論としてあろうかと思います。正にそういった観点で先ほど委員からありました、離職理由によって給付、すなわち、一定の払う日数分を変えるということだと思いますけれども、そういった議論は出てくる。給付額が低くなるということをもって実際に払う日数分をどうするかといった議論は、1つ出てくるかと思います。

○ 酒井委員
 では、一時金方式の場合は、合算というのはかなりのアンバランスを生じさせる可能性があると。

○ 岩村座長
 そこは制度設計次第です。つまり、少なくとも今の高年齢への給付として行っている一時金の場合は全部失業を前提としているので、したがって賃金をもらっている場合についてそれを減額するとかという発想は持っていないのですが、マルチジョブホルダーの場合については、合算方式でもって一時金の額を計算した上で、賃金については減額というのを制度設計として、立法論であれば入れるということはあり得るだろうということだと思います。ただ、どの範囲でどのように入れるかというのをうまく計算しないと、ほかとのアンバランスが生じることにはなるだろうと思います。

○ 酒井委員
 分かりました。

○ 岩村座長
 もう1つは、事務局は言いにくかったのかも分かりませんが、定期的にハローワークに来てというコントロールがないので、そういう意味ではモラルハザードが起きやすいというのがあります。おそらくそれとの関係で、基本手当の給付額よりは低い所に水準を設定するという考え方に立っているのかなというふうには想像はします。
 段階を付けるというのも先ほど酒井委員からお話があったのですが、現在実は65歳以上の高齢者は、1年以上の加入期間があると50日が上限となっている。そうなると、おそらくそれより上に持っていくというのが多分難しいということだと思いますので、したがって1年未満だと30日で、1年以上だと50日ですから、段階を付けるとしてもその間でのということになってしまう可能性はあるかというように思います。高年齢の人とは違うのだ、65歳以上とはやはり労働マーケットの状況が違うのだという話であれば、場合によっては上に持っていくということはあるかもしれませんけれども、むしろ逆かもしれないという気はする、年齢によりますけれども、そういう気はするので、今の高年齢の人たちの上限より上に持っていくという議論はなかなかしにくいところがあるのではないかという気はします。

○ 酒井委員
 分かりました。

○ 岩村座長
 事務局のほうで補足は、よろしいですか。それでは、大体予定していた時間に近づいておりますので、ほかに御意見がなければこの辺りでとさせていただければと思います。今日の御議論で、第2回の検討会でお示しした論点について一通り御議論を頂いたと考えてよいかと思います。
 次回は、それぞれの論点についてのこれまでの委員の御意見を整理していただいて、全体を通じて整合性が取れているのか、更に議論を深める必要があるところがあるかといったことについての御検討を頂きたいと思っております。事務局では、そのために必要な資料の準備をお願いできればと思います。
 それでは最後に、事務局から連絡事項があればお願いいたします。

○ 引田課長補佐
 次回の検討会については、決まり次第御連絡をさせていただきたいと思います。

○ 岩村座長
 ありがとうございます。では、よろしくお願いいたします。
 それではこれで、第5回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を終わりとさせていただきたいと思います。今日は、お忙しい中、長時間にわたりまして、ありがとうございました。

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