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2018年10月17日 第4回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会議事録

○日時

平成30年10月17日(木)15:00~16:26

 

○場所

中央労働委員会 労働委員会会館 612会議室講堂(6階)

○議題

 ○複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用について

○議事

 

 

○岩村座長
  それでは定刻でございますので、ただいまから第4回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を始めることにいたします。今日は皆様、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。カメラ撮りのほうは、ここまでにさせていただきたいと思います。早速、本日の議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第を御覧いただきますとお分かりのように、今日の議題は、複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用についてです。
なお、検討会の進行にもよりますけれども、渡邊委員は御所用によりまして、16時30分で、途中退席されるということです。
それでは議題に先立ちまして、前回の検討事項につきまして、事務局で資料を用意していただいておりますので説明していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○引田課長補佐
 では、事務局から説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。
 表紙の次の1ページ目です。酒井委員から御質問のありました短時間で働いている者が、どのくらいの確率で離職しているのかということです。これは「雇用動向調査」からの資料です。パートタイム労働者は、6か月未満、6か月~1年未満、1年から2年未満において一般労働者より離職している者が多くなっております。また、男女別についても同様の結果になっております。
2ページ目を御覧ください。離職率と転職入職率です。離職率は、一般労働者よりもパートタイム労働者が高くなっております。また、男女別でも同様の結果となっております。転職入職率、つまり入職前1年間に就業経験のある方の入職率ですが、一般労働者よりもパートタイム労働者が高くなっております。男女別も同様の結果となっております。事務局からは以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。ただいま、事務局からいただいた御説明につきまして御意見、あるいは御質問ございますか。

○酒井委員
 前回、私が質問させていただいたことに対して、資料を用意していただいてありがとうございました。パートタイム労働者とマルチジョブホルダーは必ずしも一致しませんけれども、少なくとも、短時間で働いている人たちが離職の確率が高いということが明らかにされたということで、ある意味、当然とは言えるかもしれませんが、やはり雇用保険の適用というのが、何らか必要なのではないかということが一定程度、示されたかなというように思いましたので、納得いたしました。

○岩村座長
 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは続いて、本日の議題に関して、事務局で資料2を御用意いただいております。この資料に基づいて、事務局から説明していただきます。引き続き、どうぞよろしくお願いします。ただ、資料2の場合については論点が複数あるということですので、大きく3つに分けて議論を進めたいと存じます。それでは事務局のほうで、まず、第1点目についての説明をお願いいたします。

○田中課長補佐
 事務局でございます。資料2に沿いまして、雇用保険の適用に関する論点について御説明させていただきます。
 まず、資料2、適用事業の範囲についてです。資料の2ページ目を御参照ください。雇用保険の適用事業の現行の取扱いですけれども、一部の事業、すなわち農林水産業の個人事業で常時5人以上を雇用する事業以外、これを暫定任意適用事業と呼んでおりますが、この一部の事業を除き、原則として労働者が雇用される事業を全て強制適用事業として扱っているという状況です。この強制適用事業、暫定任意適用事業に雇用される労働者を被保険者として取り扱うということになっております。点線の枠の部分ですが、直近の逐条解説書からこの強制適用事業とする考え方、それから暫定任意適用事業を認めた考え方についてお示しします。
 続きまして、資料の3ページです。適用事業の範囲、すなわち業種の範囲を考えるに当たり、具体的にそのマルチジョブホルダー、複数の事業所で雇用される方々、副業を持っている方々について、業種別に一定の偏りがあるかどうかの検討の資料です。第2回の検討会の資料2より抜粋させていただいていますが、その際にも御説明いたしましたとおり、仕事1つだけの方、すなわち副業をしていない方は、「製造業」「卸売業・小売業」の割合が高いという状況です。一方、仕事2つ以上の方は、「医療・福祉」「卸売業・小売業」「製造業」「その他のサービス」の割合が高いというような結果が出ているところです。
 続いて、4ページです。こういったマルチジョブホルダーとして副業している方の業種の割合と比較して、現行の雇用保険の中で、既に被保険者の類型が分かれております高年齢及び短期特例の方々について、業種別にどういった割合になっているのかを計算したものです。それぞれの産業分類について、一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者の被保険者数及び全体に対する割合を示しています。見ていただくと、お分かりいただけると思いますが、例えば、季節的労働者を対象としている短期雇用特例被保険者数については、例えば、建設が、性格として当然と言えば当然ですが、必然的に業種としては高い割合になっているという状況です。ただ、こういった状況にはありますが、特に短期雇用特例被保険者については、業種別で特段の適用事業を限るとか、そういった処置は講じていないというのが現状です。以上が、適用事業に対する考え方と、現行のデータの御説明です。
 続きまして、5ページ以降です。適用基準について、現行制度、それからデータの御説明をさせていただきます。
 6ページを御覧ください。従前から議論しておりますとおり、現行の雇用保険制度では、「同時に2以上の雇用関係にある労働者については、そのうち、労働者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける1の雇用関係についてのみ、被保険者となる」という考え方を取っております。この考え方に基づき、具体的なケースを下に挙げております。雇用保険が適用されるケースとして、CASEⅠでお示ししておりますが、例えば、A事業所で、週所定20時間で働いていて、更にB事業所で、週所定5時間で働いているという方の場合は、そもそも週所定20時間を超えてくる、すなわち雇用保険の適用要件を満たす雇用関係についてはA事業所のみですので、Aの雇用関係に基づいて、Aで支払われている賃金をベースとして雇用保険料を徴収します。更にAとの雇用関係が喪失した場合は被保険者資格の喪失となり、かつ、基本手当をAの賃金に基づいて算出される基本手当を支給するという形になっております。一方、CASEⅠ′として、その下に示させていただいている例は、まさに先ほどの複数の雇用関係で要件を満たす場合には、主たる賃金を受ける1の雇用関係についてのみと申し上げましたが、仮に、A事業所、B事業所で、それぞれ週所定労働時間20時間で働いていたケースを考えますと、ハローワークで、被保険者御本人にも確認して、主たる生計を維持していると考えられるほうの雇用関係についてのみ雇用保険を適用させるという現行の運用になっています。それに対しまして、その下のCASEⅡ、これは今回の問題になるケースですけれども、CASEⅠと同じように合計の週所定労働時間を25時間となるように設定しております。A事業所で週所定労働時間15時間、B事業所で週所定労働時間10時間、このようなケースについては、従前から御説明しておりますとおり、それぞれで雇用保険の適用要件、週20時間以上という要件を満たさない状況ですので雇用保険の適用はされないという状況です。まさに、御議論いただきたいのは、このCASEⅡにつきまして、どのような適用基準、仮に、このような方を雇用保険に適用させるとするならば、どのような適用基準にすることが考えられるかということになろうかと思っております。
 7ページです。こちらも第2回検討会の資料でお示ししたJILPTの調査のデータの再掲です。先ほどのCASEⅡのようなケースにつきまして、まさに議論されておりますとおり、具体的に合算してというような議論をやるとするのであれば、具体的にどのぐらいの副業を考えるのかという論点が上がってくるかと思いますので、副業の数について、現行のデータをお示ししているものです。まず、副業の数ですけれども、上の赤枠で囲っておりますとおり、現行、副業の数が2つ以上の方々で、9割を超えるという状況になっております。
 8ページです。上のデータは本業雇用、それから、本業、副業雇用の場合という形で、条件を付けた上で副業の数を分析したものですが、その下に赤枠で囲っている所ですけれども、副業1番目、2番目、3番目、4番目、5番目ということで、それぞれ平均所定労働時間がどうなっているかというものを取ったものですが、当然と言えば当然ですが、副業の数が多くなっていけばいくほど、週の所定労働時間が短くなっていくという傾向が見てとれます。
 9ページ目です。こちらの第3回の検討会で委員から頂いた宿題に対する御回答という形で御提示させていただいたものですけれども、具体的に副業を行っておられる方々について、その本業の労働時間に対して副業の労働時間がどのような分布であるのかという御質問を頂きましたので、分析した結果を提示したものです。こちらも雇用保険のCASEⅡ、先ほど申し上げましたCASEⅡに雇用保険を適用させるならば、ということで考えますと、赤枠で囲った部分ですが、本業の週所定時間が20時間未満である方の副業の週所定労働時間の長さということですが、こちらのデータのみを捉えますと、副業の所定労働時間が5時間未満の方も含めて一定程度おられるというデータになっております。
 さらに今回は追加で、もう1点、分析を出させていただいております。10ページです。第2回、第3回で、それぞれ分析を示させていただきましたJILPT調査の中で、9,200人超の方が副業しておられるということで分析対象となりましたが、更に、その中で雇用保険が適用されていない、本業も副業もそれぞれの週の所定労働時間がいずれも20時間未満である。かつ、合算した場合に20時間を超えるという要件を満たす方を抽出いたしましたところ、371人の方が該当するという結果が出ています。この371人の方につきまして、少々複雑な分析ではあるのですけれども、本業、副業の所定労働時間が一定時間未満の者を、その合算の対象から除外するという形で、除外する労働時間の変化に伴って、合計20時間を超える方々がどのぐらいの割合で残るかということを分析したものです。1つ目が、まず、週所定労働時間が3時間未満の者を対象外とした場合は98.4%、5時間未満の者は対象としても、9割の方が20時間を引き続き超える。さらに10時間未満の者を対象外とすると、一気に落ちまして大体5割程度の方が該当する。逆に言うと、5割程度の方が20時間を超えなくなるという状況になっております。さらに、その下は時間ではなくて数に着目した限定です。こちら先ほど、そもそも、副業の数が2つ以上の方が9割程度と申し上げましたが、こちらも合算対象となる本業と副業の数を5つ、4つ、3つ、2つという形で限定していくと、20時間を超える方の推移がどのようになるかというのを示しておりますが、5つ、4つの限定の場合には、371人全員が該当し続けると。3つ、2つと減らしていくに従って、98.7%、92.7%という形で落ちてはおりますが、限定に伴って余り数が変わらないという結果になっています。以上が、適用基準です。一旦、ここで切らせていただきたいと思います。

○岩村座長
 それでは、最初の2つ、適用事業の範囲と適用基準について、御意見、御質問がありましたら、どうぞお出しいただければと思います。

○酒井委員
 ちょっと申し訳ないですけれども、確認なのですが、適用事業の範囲の所ですが、資料は、業種を絞ってマルチジョブホルダーについて適用するかどうかということの議論の材料としてお示しいただいたという理解でよろしいですか。

○田中課長補佐
 はい。

○酒井委員
 分かりました。そうすると、意見になりますけれども、現行の雇用保険制度との整合性を考えても、どこかの業種に絞るということはちょっと考えにくいですし、特にマルチジョブホルダーという性質を考えると、1つの仕事が、ある業種であっても、もう1つの副業のほうが同じ業種だとは限らない側面が可能性として出てくるわけですから、業種を絞るというのは著しく煩雑なことになるのではないかなという気がいたします。

○岩村座長
 ほかはいかがでしょうか。適用範囲については、私も今、酒井委員がおっしゃったのに同感です。何か、副業が多い業種、例えば、この資料1の3ページの図で、仕事が2つ以上というのが黄色の部分で5つぐらい挙がっていますけれども、ここだけに絞って、マルチで働いている人、副業もある人を適用対象にするというのはちょっとやはり考えにくいことだと思います。おっしゃるように、同じ業種、あるいは職種で2つ以上の仕事をしているとは限らないというようなことも考えると、適用範囲の業種などを限定するというのはちょっと考えにくいなと思います。どうぞ、適用の基準のところでも、結構ですので。
 ちょっと質問ですけれども、資料2の6ページ目の、現行の適用の在り方の図がありますが、CASEⅠ′の場合は、御本人に確認した上で、主たる生計を維持していると考えられる雇用関係に適用を限定しているということで、含意は、通常あり得るとすれば、Aの事業所とBの事業所のどちらも所定労働時間20時間だけれども、賃金単価が違っていて、例えばA事業所がより多くの給料を得ているというようなことで、御本人がこちらで主たる生計を維持しているものだと考えれば、そちらに雇用保険を適用すると。したがって雇用保険の保険料の徴収はA事業所についてのみ行い、B事業所については行わないという理解でよろしいでしょうか。

○田中課長補佐
 はい。

○岩村座長
 ありがとうございます。

○酒井委員
 適用基準の資料に関して、副業の数を幾つまでにして、あるいは労働時間を何時間以上にした場合に大体どれくらいの割合の人たちがカバーされるかをお示しいただいたかと思うのですが、ちょっと私、把握しきれていないのですが、その2つの基準を合わせて、例えば仕事の数が2つ以上まで、かつ副業に関しては5時間以上といった、その2つの基準でクロスした割合はここに出ているのですか。もしよろしければ教えていただきたいのですけれども。

○田中課長補佐
 お答えいたします。こちら10ページでお示ししたものは、条件をクロスさせてはおりません。上のほうは、週の所定労働時間が3時間未満のものを単純に落して、5時間、10時間、15時間でスライドさせていく。それに対して、下のほうは、合算する数自体を、もちろん週の所定労働時間の多いものから順に取っていますけれども、合算する数を限っていくという処理だけをしておりますので、おっしゃったようなクロスでの分析はこの中には含まれておりません。

○酒井委員
 分かりました。そうしたらおそらく、今、既にお示しいただいているものから大きな変化があるとは思われないのですが、一応、資料としては2つのクロスさせた基準で何%かというのが一番分かりやすいのかなという気がしたのですけれども。

○岩村座長
 それは、クロス集計は取れるのですか。

○酒井委員
 できないのですか。

○田中課長補佐
 データとしてはあります。

○岩村座長
 データとしてはある。

○田中課長補佐
 はい。ただ、それをどのように分析してお見せするかということについては、少し検討させていただきたいと思います。
 
○酒井委員
 可能ならばで構いませんので、御検討いただければと思います。

○岩村座長
 すみません、また適用基準の所で、さっきの資料2の6ページですが、この際いろいろな条件を余り考えないでという非常にシンプルな例を考えたときに、先ほどのCASEⅠ′の場合で、もしマルチで、この2つで働いている場合について、どちらについても雇用保険の適用をするというように考えるとすると、A事業所、B事業所いずれについても雇用保険の適用があると。したがって、またこれは別途の議論かもしれませんが、例えばA事業所で職を失うと、そうするかどうかはともかくして、仮にそうとすれば、基本手当がもらえるようになるだろうし、逆にA事業所の雇用は残っているけれども、B事業所の雇用がなくなったというときには、それに応じて基本手当がもらえるというようなことが基本的な考え方になって、時間の問題はちょっと横に置いておいてですが。もう1つは、A事業所もB事業所も適用されることになるので、したがって保険料もA事業所についても取りB事業所についても取ることに理論的には、製造設計上は当然そうなるという理解でよろしいですよね。というかそれはここで決めることだというなら、ここで決めることなのですが。

○松本雇用保険課長
 御議論いただければとも思いますけれども、適用と言っている時点で、適用事業所が対象労働者を雇っている場合には保険料徴収の対象になるという前提で、御意見を頂ければと思います。

○岩村座長
 ということですね。逆に言うと、CASEⅠ′の働く人たちの立場からすると、今まではA事業所についてしか保険料は取られなかったのが、今度はAからもBからも取られることになるということですね。時間の問題を除くと、CASEⅡについても、やはり同様で、今までは雇用保険料は全然払ってなかったのが、この場合のように仮に雇用保険がAにもBにも適用されるという話になれば当然AについてもBについても雇用保険料の徴収が始まってくることになるのでしょうか。

○松本雇用保険課長
 私どもでは、ここについても御意見を頂きたいと思っていますが、今回の検討会の射程は複数の事業所で通算なしでは適用にならない人をどうするかというところが出発点ですので、CASEⅠ′については、現に適用になっているのが現状ということからすると、これを通算するというのは、いわば所要ではないです。

○岩村座長
 はい。で、CASEⅡの場合が、むしろ。

○松本雇用保険課長
 CASEⅡについては、適用するということであれば、そういう御意見を頂戴したということです。

○岩村座長
 そういうことになるのですね。その場合にも、なおどっちかを選んでもらって、Aだけに適用するという道も、それが適切かどうかは別として、CASEⅡについても、それが適切かどうかは別にして論理的にはあり得るのですね。

○松本雇用保険課長
 それは選択肢的にはあります。

○渡邊委員
 確認させていただきたいのですが。例えばCASEⅠとCASEⅡは、週の所定労働時間の通算は25時間でそれぞれ合わせてあるということになると、CASEⅡに関しては、AとBを通算しないと20を超えないので、AもBも適用ありますと。そうすると、例えばAの職を失ったらAの給付は出るのだろうという前提で考えると、AとB、CASEⅠの場合、同じ週の所定労働時間25時間で働いている人が、片方で20時間だと、5時間のほうは捨てるというか、切り捨てられることになると。労働者からすると、週の所定労働時間は通算すれば同じ25時間なのに、雇用保険の適用の在り方で随分差が出てくるというようなことになるのですが、ここでの検討会では現に適用がある人に関しては議論のメインの対象外としてCASEⅡの場合に限定して検討しましょうということでよろしいでしょうか。

○岩村座長
 では、事務局からお願いします。

○松本雇用保険課長
 今回、検討をお願いしているのは、現在適用になっていない方についてどのような適用の在り方があるかという点でお願いしているわけですが、そこについての制度設計案を御議論していただく中で、現行制度についても検討すべき、当然に引きずられて検討すべき事項であるという御提言をいただくことは排除されません。

○岩村座長
 論理的に考えると、どうするかどうかは横に置いといて、CASEⅡの場合で、A事業所、B事業所を合わせて25時間なので、合算して20時間を超えるから、A事業所、B事業所双方を適用することにしましょうということだと、実はCASEⅠ′のほうが不利になってしまうのですね。だから、そうすると、もしCASEⅡについて合算し適用するというとおそらくCASEⅠ′についても適用することにしないと、かなりアンバランスな状況になってしまうだろうという気がするので、何となく合算してという話になってくると、どこからの時間を合算するかという問題は別にして、そこから上になればCASEⅠ′のようなケースについても、やはり適用する、合算するという方向にはいくのかなと。そうしないとちょっと妥当でない結果が出てしまうかなという気がしますね。

○渡邊委員
 CASEⅠ′のほうが合算すると40時間なので、40時間をマルチジョブで働いている人のほうが生計を担っていますねという発想につながりやすいと思います。ただ、その場合も、以前お話に出ていたかと思いますけれども、1つの事業所で勤めていて、40時間働いていた者が30時間とか20時間に減らされたときには保障がないのに、別々に働いていると保障があって、そことのアンバランスはどうなるのだというような、その問題はもちろん出ると思います。

○岩村座長
 そうですね、おっしゃる論点は出てくると思います。他方で、今度はCASEⅠの場合だと、これもそういう意味では適用がある事例なのですが、所定労働時間5時間まで、そうした副業まで救うのかという議論がまた別途あり、例えばCASEⅡの場合も、CASEⅡ′を仮に作って、所定労働時間がA事業所の場合は18時間でB事業所を5時間とすると合計すると23時間になるのですが、そのときにB事業所の5時間まで含めて合算するのかという、その問題はあるかもしれないです。さらに細切れにすると、Cまで出てきたときにはどうなるのかという、その問題もあるのだろうと思います。それがおそらく資料7ページ以下で先ほど御説明いただいたものになるのだろうと思います。ただ、資料2の6ページを見ると、CASEⅡのような事例を想定するならば、結局のところは所定労働時間20時間という今の基準を下げることを考えない限りは、このCASEⅡは雇用保険でのカバーというのがあり得ないということになるのですね。
 その場合に、仮に下げるとして、複数の事業所で働いている人だけにそういうことをするのか、それともおよそ一般に下げるのかというのも、実は論理的には選択肢として、あり得るのですが。

○酒井委員
 それは20時間ではなくても10時間とかにしてしまうということ。

○岩村座長
 ということも、あり得ると思いますし、15でも10でもいいのですけれども。1つの事業所だけで働いている人は今までどおりで、2つ以上で働いているときは20ではなくて、もっと下げましょうという制度設計も観念的にはあり得るのですね。

○渡邊委員
 被保険者資格を区別してマルチジョブホルダーの人にはそもそもの適用基準の時間を下げるということですね。

○岩村座長
 下げるということも観念的観念的にはあるのですが、すぐ考えると、それをどうやってオペレーションするのだというその問題がすぐ出てきてしまうので、ちょっと現実性が乏しい。やるのだったら一般的に下げるしかないだろうと思います。

○中野委員
 一般的に下げるとなると、確か前回の御説明では、週20時間労働というのが生活を支える労働だという前提で雇用保険制度はできているというお話だったので、その前提自体を見直さないといけないということになりますよね。

○岩村座長
 ということになります。

○中野委員
 雇用保険制度の基本理念そのものを替えるということになるのではないかと。

○岩村座長
 そうなると、雇用保険の理念との関係で、仮に下げるとしてもどこまで下げるのが適当なのかという、そういう政策判断になるだろうし、その下げ方がどこまで下げるかが、ある程度エビデンスで裏付けられるのかというそういうことなのかなという気がするのです。

○酒井委員
 今、座長がおっしゃったことがすごく重要だと思うのですけれども、一般的な観点から言ってマルチジョブホルダーをどうやって救済すべきかという観点から言うならば、そもそも一般に適用基準の時間を下げるということも選択肢としてあるはずだと思うのですが、もしそれが難しいのであれば、難しいという論理構成も、この検討会としては必要なのではないかと思いました。

○岩村座長
 あともう1つの論点は副業の数で切るのかというのもあって、副業の数が増えれば増えるほど、今日のデータを見ていると、1つ当たりの時間が短くなっていくことでもあります。

○酒井委員
 今日のデータを見る限りは、やはり副業を3つも4つもというのは1つ当たりの時間が少なくなってきて、企業2つぐらいで大体の人たちはカバーできるというのはよく分かっているのですけれども。ちょっとだけ気になるのは、すごく経済的に深刻な状況にある人に限って、実は副業を4つとか5つとか抱えているといったことが、もしあれば2つで切るというのは良くないのではないかという論点もあり得るかなとは思いました。ただ、本当に5つももっている人たちがどういう状況にあるのかはデータから分かりにくいかなとは思いますので、そこを判断するのは難しいとは思うのですが、論点としてはあるのかなと感じました。

○岩村座長
 それはおっしゃるとおりだろうと思いますが、他方で数が増えると結局1つ当たりの時間がかなり細切れになって、そのためにそれを全部取り込もうとすると、相当20時間から下に下げないとそういったものが射程に入ってこないことになり、一般的に下げるのだという前提に立つと、週5時間の人も全部雇用保険でカバーします、つまりシングルジョブだけれども週5時間の人も全部雇用保険でカバーしますという話に結局はなってしまうという、そこの関係性があるかなと。先ほどの議論のように、そこを切り離すと、1つしか仕事していないのだったら、もうそれは常に20で見るというように切り離してしまえばそうはならないのですが。
 他方で仮定の議論として、副業としても2番目ぐらいまであれば十分でしょうと、それとの兼ね合いで時間数をどのぐらいというのをある程度考えますというようにすれば、少なくとも複数でもっと多くの仕事をしている人も短い者は駄目だけど、しかし一番大きい最初の2つについては失業すれば雇用保険で手当がもらえるということにはなるので、それでもいいではないかという議論もあり得るかなと思うのです。一番難解なのは複数が全部細切れになっていて、全部設定した基準より下に落っこちているとすると、これは全部アウトということになってしまってというところです。

○渡邊委員
 今おっしゃっているのは、幾つ仕事をしているかという個数だけで切って、そうするとこのCASEⅠ、CASEⅠ′とかも2つまでだったら含まれるという感じですか。

○岩村座長
 2つまでというよりも、時間数のラインをどこに設定するかを考えるときに、副業2つぐらいまでカバーできるようなラインをある程度設定するということでやれば、それはそれでいいのではないかという趣旨ですが。副業の方は2つまでしか救わないという話ではなくて、おそらく副業の数と、それからどの時間から適用するか、ある程度の時間のラインを考えるときに要素として入ってくるのかなという見方です。
 すみません、もう一度、資料の読み方を教えてほしいのですが、8ページの下の表です。副業している人の副業の平均所定労働時間で、最も多い副業5つだと3時間程度ということですが、これは5つの副業のトータルで見たとき平均が1つ当たり3時間という趣旨でしょうか。

○田中課長補佐
 こちらの形態につきましては、おそらく、それぞれ1番目~5番目は収入が多い順に書いてあります。

○岩村座長
 収入の多い順で並んでいるのですか。

○田中課長補佐
 ただ、副業の1番目、アンケート上で回答されたその副業についてそれぞれの所定労働時間平均値を出したものです。なので、必然的に5番目は5つまで副業している方の中で5番目と回答した者についての平均所定労働時間を取ったものです。

○渡邊委員
 今の資料の確認ですけれども、これはあくまで副業ですから2つ目以降のものを所得の多いものから平均時間を見てきたもので、本業自体の所定労働時間の分布を示したものは、ほかにあるのでしょうか。

○田中課長補佐
 少なくとも副業の労働時間を合算して、本業の所定労働時間に対してどのような分布になっているかというのは9ページにお示しをしております。ただ、これは今ほど申し上げたように、副業の所定労働時間を合算しておりますので、傾向としては副業の所定労働時間にそれほど大きな差は出ていないという状況になっています。やろうと思えば、本業の所定労働時間に対して副業の所定労働時間がそれぞれという形も取ろうと思えば取れるのではないかと思います。

○岩村座長
 なかなか難しいところですが、9ページを見ると、本業が10~20時間未満で、かつ副業も10~20時間未満だと31%ですね。副業をさらに5~10時間未満までに広げると、同じ本業が10~20時間未満は65%ぐらいまでそこで取れるということになっています。

○松本雇用保険課長
 若干の補足をいたします。前回の第3回の資料で、所定労働時間の本業と副業を通算したデータをお示しています。資料3の5ページに棒グラフを準備してあります。そちらは、いずれも雇用について通算した結果の分布を示していまして、全てを合計して、19時間未満になる者が全体の65.8%という結果でした。これは本業も含めて通算したデータです。前提として、どれか単独で20時間を超えた者はこの棒グラフの射程外です。

○岩村座長
 だから逆に言うと、先ほど中野委員から指摘されたこととの関係で、今は20時間で見ているので。そうだとすると、合計したら20時間を超える所で、ある程度ラインを考えるというのも1つの捉え方ではあります。そうすると、あり得ないけれども、19時間と1時間だったらどうなのかという、そういう議論もあり得るということです。複数の事業所で就業している人について雇用保険を適用しようとすると、どうしても今の20時間よりは下にもっていかざるを得ないことは確かだと思いますが、どの辺にラインを引くかは結構、微妙な判断かなという気がします。
 時間の関係もあるので、この点についてはこの辺でよろしいでしょうか。次の論点に移ります。事務局から資料の説明をお願いいたします。

○田中課長補佐
 事務局です。それでは、先ほどの資料2の11ページ以降について御説明します。11ページ、適用の強制性、すなわち強制適用とするか、任意適用とするかということになりますけれども、そちらの関係資料です。
 12ページを御覧いただけますでしょうか。前提として、雇用保険は当然、ほかの社会保険と同様に強制適用です。被保険者本人に関する任意適用制度は、現行雇用保険ではありません。強制適用とした趣旨、考え方ですけれども、こちらはコンメンタールのかなり古いものから、合わせて抜粋しています。より詳細に書いてあります下の段の失業保険法時代のコンメンタールで確認されたものを御説明させていただきます。下線が引いてある部分です。強制適用方式を採用した理由として、ここで掲げられているもの、一般的な強制適用の考え方そのものですけれども、(1)低所得者を保護する必要があること、(2)失業保険事業の円滑な運営を期するためには、できる限り多数の被保険者を集め失業のリスクを分散する。偶発性を平均化するとともに、続いて逆選択の話ですけれども、失業の発生率の比較的多い者だけが選択的に加入することを防止し、危険発生の少ない者をも加入させて、保険料の平均化、低額化を図ることが必要であるということです。それから(3)事業主側が保険料負担を免れるため、労働者の保険加入につき制約を加えることを防止する必要があるという3点が指摘されています。
 続きまして、先ほど他の社会保険制度との比較を少し申し上げましたが、13ページ以降です。こちらは、具体的な他の社会保険制度における任意加入制度の主な例を挙げています。13ページが年金です。国民年金、厚生年金、それぞれに任意加入制度が若干設けられています。御承知のとおり、年金の保険事故については、老齢、障害、生計維持者の死亡等、すなわち老齢年金、障害年金、遺族年金です。こういった保険事故による稼得能力の喪失に対して補償するものです。
 国民年金の部分ですが、御承知のとおり、現行の被保険者要件は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者を第1号被保険者としています。右側の欄は、具体的な任意加入制度の概要です。日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の者で、すなわち老齢基礎年金の受給開始年齢に到達する前の方について、保険料納付済期間が480月に満たない方、すなわち満額の保険料を納付されていない方については任意加入することができるという制度になっています。
 こちらの趣旨についても逐条解説を載せさせていただいていますが、2行目の部分にありますとおり、老齢基礎年金の受給資格期間を満たさない方を救済する。あるいは基礎年金の場合には、保険料納付済月数に従って年金額が上がってきますので、年金額が低い者に対しての年金額を増やしたりすることができるようにするといった救済制度的な意味合いで設けられているものです。
 続きまして、厚生年金です。こちらは適用事業所に使用される70歳未満の者を被保険者として対象にしています。右側に、具体の任意加入制度がありますとおり、「高齢任意加入被保険者」と「任意単独被保険者」という制度が設けられています。高齢任意加入被保険者については、適用事業所に使用される70歳以上の方について、受給資格期間を満たすまでの任意加入が可能です。こちらも、受給資格を満たさない方の救済措置です。
 その下の任意単独被保険者ですけれども、こちらの要件としては適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の方となっています。こちらの制度の意味合いですけれども、下の所にまた逐条解説を付けさせていただきましたが、3行目の部分です。制度発足当初に、強制適用事業が現在と比べて少なかったということから、受給資格期間の要件を満たし、年金の受給権を得ることができるような制度にするということで設けられています。しかしながら、現在は当然、強制適用事業所の数が格段に増えています。また昭和60年に、全国民の加入する国民年金ができるようになって、実質の通算制度が完備されたということがありますので、逐条解説にも書かれているとおり、現行の制度の存在意義は薄れていると説明されているところです。
 なお健康保険については、そもそも病気がちな者の任意加入を防ぐ、逆選択防止の意味もあって、この制度は設けられていないと説明されているところです。
 続きまして、14ページです。こちらの健康保険の任意加入制度として、いわゆる任意継続被保険者制度が設けられています。こちらは概要として、健康保険の被保険者の方が退職した後も、選択によって、引き続き最大2年間、退職前に加入していた健康保険の被保険者となることができるということです。こちらも逐条解説には、国民皆保険が実現している、若しくは国民健康保険の給付率の統一が図られている現在においては、制度の実質的な意義としては、国民健康保険の移行に伴う保険料負担の緩和と説明されているところです。
 その下の労働者災害補償保険ですけれども、そもそも被保険者という概念自体はありませんが、支給対象は労働者又はその遺族とされています。中小事業主や一人親方などの労働者以外の方も、一定の要件の下で特別加入することができるという制度が設けられているところです。
 このような他の社会保険制度における任意加入の例、それから雇用保険の保険事故、離職して失業状態になることが原則ですけれども、そういったものと照らして、強制適用とするか任意適用とするかという論点があろうかと思っています。
続きまして、15ページ以降です。所定労働時間の把握についてということで、現行制度、それから現在の労働時間の通算に関する検討状況についてお示しさせていただいています。こちらの16ページだけ、簡単に御説明いたします。御承知のとおり、労働基準法の法定労働時間は原則として、使用者は、1週間に40時間を超えて労働させてはならない。使用者は、1日に8時間を超えて労働させてはならないと規定されているところです。
 17ページ、副業・兼業における労働時間管理です。こちらも御承知のとおり、労働基準法第38条で、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算するという規定が設けられています。昭和23年の通知の中で、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合も含むとされているところです。
 続きまして、18ページです。このような労働時間の管理に関する規定はあるところですが、副業・兼業の促進に関する検討として、左上の部分ですけれども、働き方改革実行計画の中の一番下、労働時間管理及び健康管理の在り方について検討を進めると規定されています。右側に矢印が伸びていますけれども、平成29年12月まで、労働基準局で「柔軟な働き方に関する検討会」を立ち上げて、副業・兼業についてガイドラインの策定、それからモデル就業規則の改定、制度的課題の整理といったことを行っています。
簡単にその概要だけ御説明させていただきますが、20ページです。こちらは検討会でまとめられたガイドラインです。ガイドラインの中では、副業・兼業を進めるに当たっての企業の対応や労働者の対応ついて留意すべき事項等々をまとめたものとなっています。更に1ページ進んでいただきまして、モデル就業規則です。この検討会の議論を受けまして、このモデル就業規則の改定を行っています。モデル就業規則というのは、21ページの上の箱の部分に書かれていますとおり、そもそも就業規則については、常時10人以上の従業員を使用する使用者は、就業規則を作成し、監督署長に届け出なければならないとされています。2つ目のマルの部分ですが、就業規則の作成・届出の参考とするために、規程例や解説を厚生労働省のホームページに掲載しています。いわゆる、モデル就業規則において、下の第11条(6)の所ですけれども、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと。」と規定されていたところですが、22ページを御覧いただきますと、この遵守事項における副業に関する規定を削除した上で、第67条として、(副業・兼業)として、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」というような改定を行ったところです。
更に、先ほど申し上げました検討会の報告の中で23ページの部分ですが、労働時間、健康管理、労災保険、雇用保険、社会保険について、制度的な課題を挙げた上で検討していくこととされている状況です。
 こういった制度的課題の中で、雇用保険については、まさにこの検討会の場で議論しているところですが、労働時間管理の在り方については、24ページにありますとおり、現在、既に立ち上がって検討を進めているところですけれども、「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」というのがあります。
 こちらの検討事項については、開催趣旨の2つ目のマルの所にポツで列記されています。労働時間制度の基本的な考え方や、現在に至るまでの働き方の変化の整理を行う。それから、労働者本人のキャリア形成に資する副業・兼業の実施に向けた実務上の課題、工夫例を収集する。諸外国の制度等の分析を行う。そして、事業主を異にする場合の労働時間制度の在り方について検討を行うということで、検討が進められている状況です。現行、一番下に規定しているとおり2回の検討会で議論が行われている状況です。
こういった労働時管理の検討の状況がある中ですが、25ページに、足元のデータとして再掲させていただきました。そもそも、兼業・副業されておられる方について、本業の勤め先に知らせているかというようなアンケートを行ったところ、左上の部分ですけれども、40%近い方が現状知らせていないと回答しているという状況です。
 続きまして、適用に係る手続の主体についてということで、26ページ以降の資料です。こちらの現行の事務、マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用を考えるとするのであれば、実務上どのような手続になるかということも重要かと思っています。現行の得喪に関する事務フローについて、代表的な流れを示させていただいています。
 27ページは、先ほど6ページでCASEⅠというものを示させていただきましたが、まさにその例の被保険者、労働者の方がいらっしゃった場合に、どのような事務フローになるかということです。27ページの図の部分を御覧いただければと思いますが、A事業所で週所定労働時間20時間、B事業所で週所定労働時間5時間の雇用契約を締結するということを考えた場合です。この状況であれば、基本的にはA事業所のみが適用要件を満たしてまいりますので、基本的にはA事業所のみとの間で得喪の事務が行われるということになっています。具体的には、A事業所で20時間以上の雇用契約を締結していますので、取得届出がハローワークに出て、ハローワークで受理・確認し、資格確認通知をA事業所から本人に返すということで、被保険者資格の取得になります。その場合の保険料は、後ほど御説明しますが、年度徴収という形で行われた上で、雇用契約がA事業所との間で終了すれば資格喪失届とともに離職証明書が出て、資格の喪失及び基本手当の受給資格の決定という流れに移っていくところです。
 具体的な、ちょっと複雑な事例としまして、28ページです。こちらは両方とも20時間を超えるということで、先ほど、CASEⅠ′として示させていただいた例です。このケースについては、A事業所、B事業所、それぞれで週所定労働時間20時間以上の契約を結ぶ形になります。多いケースとしては、まず双方から資格取得届が出てくるということが、一般的に考えられます。その場合には、ハローワークでそれを認識したら、本人の意向確認なども含めまして、どちらの雇用関係を主たる生計を維持していると考えるかということで、これがA事業所であればA事業所のみに資格確認の通知を送るという形で、Bの方は結果的には資格取得届を受理しないという形でA事業所のみの適用が成立します。この状態で、A事業所の雇用契約が終了しますと、A事業所から喪失届出が出るという形になりますが、B事業所については本人からの申告等々もあり、資格取得届出が今度はBの事業所について出てくるという形になります。この場合に、B事業所で被保険者の資格の取得がなされれば、基本手当の受給の要件は満たさないことになりますけれども、B事業所でのB被保険者資格が成立するという事務フローになってまいります。
 こうした得喪の事務フローについて、更に具体的なもの、どういった添付処理があるかも含めて示させていただいているのが、29ページです。これは一般的な事務フローの例ですが、ここに複数の事業所で、例えばCASEⅠ′のような場合ですと、御本人に対する連絡・確認など、そういったものが入ってくるというところだけ、申し添えさせていただきたいと思っています。
 今ほど申し上げました、具体的な事務フロー等々を鑑みまして具体的な適用の強制性、それからどういった形で事務を行うのか、所定労働時間の把握について、どう考えるかということについて御議論いただきたいと思っています。以上です。

○岩村座長
 ありがとうございました。なかなかテクニックな問題も出てくるので、御議論は難しいと思いますが、どうぞ御意見、御質問がありましたらお出しいただければ。

○酒井委員
 他の社会保険における任意加入の例をお示しいただいたのですが、他の例えば労災保険の任意加入といったものと、雇用保険を任意加入にした場合の違う点というのは、雇用保険は自ら離職するといったことで、保険事故を起こしやすい、すなわちモラルハザードが生じやすい、そのような人たちが入ってきがちになる側面があるのかなと感じています。したがって、やはり基本的には、強制適用を本来は旨とすべきだと考えるのですが、ここからは技術的なことに関して質問なのですが、もし強制適用にする場合には、現行では労働時間20時間未満に関しては届け出られていないものに関しても、合算して例えば20時間以上になるかどうかといったことに関わりなく、とにかく短時間の労働者に関しても、届け出てもらうことになるという理解でよろしいですか。

○岩村座長
 事務局のほうではいかがでしょうか。何か、今の現時点での何か見方があればと思いますが。

○田中課長補佐
 この検討会の場で、具体的にどのような方法があるかということを含めて御議論いただければと思いますが、ただ原則として強制適用にする以上は、合算して20時間になるかどうかを含めて、外形的に把握できていなければ当然、成立しませんので。ひとつ、委員のおっしゃるような方法では、確かに強制適用は成立するかと思います。逆に、それ以外の方法で労働時間が把握できるような方法がなければ難しいということにはなろうかと思います。

○酒井委員
 分かりました。

○岩村座長
 おそらく、先ほどの議論との関係で、適用基準をどうするかということと結び付いていて、今の労働時間の週20時間という要件を例えば週10時間や15時間にするとすれば、例えば週10時間の場合は週10時間以上の労働者を事業主が雇用した場合は、結局今と同じで、おそらくハローワークに対して届け出をするという仕組みで、強制適用を担保するということになると思います。ただ、その人が本当に最終的に雇用保険の適用になるかどうかというのは合算しないと分からないので、最後はおそらくハローワークでしか把握できないのではないか。あるいは、別の把握の仕方が、労働時間管理の先ほどの検討会で、企業、事業主の異なる場合についても、通算するときの労働時間把握の仕方というのが、何らかの形でルール化されるなりシステム化されれば、それに乗っかって適用対象になるかどうかを判断するということになります。最悪の場合としては、ハローワークで全部名寄せして20を超えているかというのを把握、考える、見るということにならざるを得ないという気はしますね。

○田中課長補佐
 だから、要は実際のマルチジョブホルダーとして認定される雇用保険が適用される人たちよりも、かなり多くの数の人たちについて、届け出がなされないといけないし、それを把握しておかなければいけないということになるかと。

○岩村座長
 なる可能性があるということ。

○田中課長補佐
 そうなると思います。

○松本雇用保険課長
 関係する事業所から雇用保険被保険者資格喪失届をつぶさに、例えば5時間以上であるとか10時間以上というのを全ていただいたとしても、ハローワークで必ずしも名寄せしても分からないことがあるという件に関しては、全てが同一日に、同一時点で出てくれば、名寄せも把握可能なのですが、4月に入ったA事業所、6月に入ったB事業所とバラバラと出てくる場合に、A事業所では労働時間が短くなっただけで雇用が維持されているかという場合あるので、そういう意味で事業主から10時間以上とか5時間以上といった雇用保険被保険者資格喪失届を提出いただいても、ハローワークではこれまた直ちには分からないと思っています。

○岩村座長
 技術的にはかなり難しいところがあるということなんですね。だから、常にリアルタイムで雇用の動きを、個人の雇用の動きをキャッチできるようなものに、何か仕組めるのか、そのようなところが最後にどうしても残ってくるのだと思います。
 ただ他方で、雇用保険が、確かに一部あることはあるのですが、現実的にはおそらくその例はほとんどないのだろうと理解していますが、雇用保険の場合は任意適用というのはあり得ないだろうと基本的には私は考えていて、それは先生が先ほどおっしゃったように、結局、自分は失業してそうだと思う人だけが、多分マルチジョブホルダーの中では入ってくる可能性があるし、もちろん、もともと辞職の場合についても給付の支払いは、一定要件の下でのみ認められたりしていることもあるし、もともとモラルハザードが非常に起きやすいという制度ですので、やはりこれは強制適用ということで考えざるを得ないかなと思っています。辞職の場合は御承知のように、今、基本3か月は手当てが出ないということにして、それでモラルハザードを防止しようということにはなっています。
 あとは、とにかく労働時間の複数事業所の把握の仕方をどうするのかというのを検討会で決めてくれないと、こちらが動けないということかなと思うし、システム上、おそらく事業主を通すしか把握のしようがないのでしょう。他方で、それを確実に名寄せできるような、先ほど課長がおっしゃったような問題を克服して名寄せできるようなシステムというのが構築できるか、そこにもかかっているのかなという気がします。

○中野委員
 すみません。任意適用だということにしてしまうと、例えば事業主側が届け出をためらうというか、届け出て雇用保険料の負担が生じることを嫌がって、結局、労働者が入りたいと思っても入れないみたいなことが事実上起こるのではないかという問題もあると思います。

○岩村座長
 そうですね。それは、どこか今日御紹介いただいた任意加入の制度のところでも確か、説明がどれかについては、そのような説明があったような気がします。事業主が保険料負担を嫌って任意加入に応じなくなってしまうという可能性もあるということですね。
だから、労働時間の把握については、検討会のほうで何らかの形で、少なくとも複数就業の場合に、どちらかの事業主が必ず把握するような仕組みというのを事業主レベルで構築できるということになれば、その事業主から届け出させるという形での把握はできるのかもしれませんが、そこのところは今のところ、まだ何とも分からないというのが現状です。
 よろしいでしょうか、この点については。あと、何かお気付きの点とか、この辺を考えておく必要があるのではないかということがありますか。なかなか技術的な話なので、事務局のほうで、是非この点を、もしできれば伺っておきたいということがあればですが。大丈夫でしょうか。

○松本雇用保険課長
 今、頂戴した御意見と、あと、他局の状況も含めて、もうしばらく情報収集をして御提示します。

○岩村座長
 次の論点としては、保険料率と保険料の徴収事務ということで、これも事務局から資料を説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○田中雇用保険課長
 改めて事務局から御説明いたします。30ページ以降の資料です。まず、31ページの雇用保険料率の設定と雇用保険財政についてです。こちらは四角の枠の中に書いてあるとおりです。
 雇用保険については、失業した場合の求職者給付などが、各被保険者類型によって、それぞれ内容が異なっておりますが、現行、それぞれの被保険者類型については、納める保険料については原則、同様の料率を適用しておるという状況です。ただ、日雇のみ印紙保険料を負担しているという状況です。この保険料負担を行った上で、その保険料の総額と国庫負担をもって、失業給付全体の財政が賄われている状況です。こちらの雇用保険は短期保険ですので、保険料収入と給付総額がもともと均衡しているものではありません。失業と給付の支出額と積立金の状況に応じて弾力的に料率を決定することで、雇用保険財政全体の安定化を図るというような制度設計になっております。
 32ページに弾力条項の料率の決定の仕組みについて載せております。現行、失業等給付の雇用保険料率、本則上は原則12/1000となっており、平成29年度から31年度まで0.2下がって10/1000という状況になっております。これを原則として、その下の弾力条項の記載は、失業等給付の給付費に対して、ざっくり申し上げると積立金の水準が2以上である場合には4/1000料率を下げることが可能、逆に、先ほど申し上げましたが、失業等給付に対する積立金の水準が1を割る状況であれば4/1000料率を上げることができる状況になっております。
 平成29年度、30年度にこの弾力条項が発動しており、10/1000から4/1000下げて6/1000の料率が適用されている状況です。この考え方としては、32ページに逐条解説の規定を抜粋しておりますが、「雇用保険の保険事故である失業等は、経済の変動や社会経済の変化に応じてかなり増減を示すものであるから、失業等の発生について厳格な数理計算や長期予測を行うことは難しく、雇用保険収支について単年度ごとに収支のバランスを図ることは本来的に不可能である」ことを前提として、更に不況によって失業者が多発しているような経済状況では、料率の引き上げは行い難い性格があることも含めて、好況期に生ずる剰余金を積立金として保有し、これを不況期に増大する給付の財源に当てるということで、この弾力条項が設定されているところです。
 具体的に33ページ以降に、失業等給付に関する積立金の推移、求職者給付の受給者実人員、それから雇用保険料率の推移について載せておりますが、こちらを見てお分かりいただけるかと思いますが、積立金の水準、経済状況に応じて雇用保険料率を弾力的に変動させることで財政のバランスを取ってきたという状況です。
 続いて、34ページは、徴収の事務に関するデータです。御承知のとおり、労働保険料の徴収、いわゆる年度更新については、労働保険、労災保険と雇用保険は原則一元的に徴収を実施することになっております。具体的な納め方は、上の四角囲みの2つ目の○にありますとおり、労働保険料については年度更新期間中、すなわち6月1日から7月10日までの間に、当年度の概算額と前年度の確定額を申告・納付いただく形にしており、前年度の確定額と前年度の年度更新時に申告した概算額との過不足を精算する形になっております。
 具体的な事務のフローを下に書いてあります。年度更新のタイミングで、事業主は1年に1回、保険料を納める形になっておりますが、雇用保険については、失業等給付分の労働者負担分がありますので、そちらは賃金から徴収する形で、事業主が保険料を徴収し、それを年度更新のタイミングで、事業主負担分と合わせて納付していただく形になっております。
 具体的な雇用保険料の算出については、右下枠の所の後段部分に書いてありますが、雇用保険の被保険者に支払った賃金総額に雇用保険料率を乗じる形で算出されます。この具体的な算出方法についてイメージしていただけると思い、35ページに、様式そのものを添付しております。この算定の賃金集計表は、真ん中から左側部分が労災及び一般拠出金の算出で、右側が雇用保険に関する賃金の算出です。こちらの赤枠の部分に、そもそも雇用保険の適用対象となる方の人数と、その1年間に払った賃金の総額を個々の労働者の賃金をおさえずに賃金の総額をおさえる形で算定対象となる賃金の総額をまず算出いたします。36ページですが、その上で、具体的な申告書です。赤枠の「保険料算定対象者分」として具体的な計算部分を付けております。赤枠の左側の数字部分に先ほど申し上げた算定の対象になる賃金の総額のみを書き入れて、真ん中に適用される料率を書いた上で、具体的に納付する額を右側に記載する形になっております。基本的に料率は一緒ですので、逆に料率を分ける判断をすれば、この賃金の算出に当たり、その料率を分けた被保険者については、別に事業主が管理する必要が出てくる状況になっております。以上が雇用保険の料率、徴収事務に関する関係資料です。

○岩村座長
 ありがとうございました。それでは、ただいま説明していただきました点について御意見、御質問があればお出しいただければと思います。酒井委員どうぞ。

○酒井委員
 この保険料徴収の在り方に関して、論点を理解していなければ申し訳ないのですが、絶対水準として雇用保険料率を幾らにすべきかというのは、何とも申し上げられないのですが、少なくとも、このマルチジョブホルダーに関して、合算してマルチジョブホルダーとして雇用保険に適用された場合に、一般被保険者と違った保険料率を適用するのは考えにくいのではないかと思います。
 事実として、マルチジョブホルダーの方が保険事故が多い、すなわち失業しやすいということが事実であったとしても、それをもって、マルチジョブホルダーの保険料率を高くするということでは、やはりセーフティネットとしての機能が損なわれる気がしますし、また、労災保険のように、業種ごとあるいは事業所ごとに保険料率が変わってくるという仕組みについては、それはあくまでも保険事故を抑制するというインセンティブがあるので、そのことが意義あるものとなってくると思うのですが、このマルチジョブホルダーに関しては、そういうインセンティブを付与するという側面はないので、少なくとも、その一般被保険者よりもマルチジョブホルダーの保険料率を高くするといったことは考えられないのではないかという気が個人的にはしております。

○岩村座長
 ありがとうございます。多分それは、先ほど議論していた雇用保険を強制適用にするということと結び付いていることでもあるかなと思っています。失業のリスクの低い人も高い人も全部強制適用で取り込んだ上で、できるだけ大きな集団でリスク分散をすることによって、失業のリスクの高い人に対しても、きちんとした保障ができるようにするのが、おそらく失業保険の1つの目的だとすると、保険料率を何かマルチジョブホルダーの人について別立てでということは考えられないと、私も思っております。
 そうなると多分、その議論に立てば結局のところ、徴収の具体的なやり方についても今の一般の被保険者と同じようにやることに多分なるのでしょうね。何かマルチジョブホルダーの人だけ切り離してというのは考えにくいし、また事務的にもおそらく、ハローワークも事業所もコストが掛かってしまうことは当然出てくるだろうという気はします。この論点は大体こんなところでよろしいでしょうか。何か事務局でありますか。ここはやはり御意見を伺っておきたいことがあればですが、よろしいでしょうか。では課長どうぞ。

○松本雇用保険課長
 いえ、私どもとしては、本日、御意見を頂きたい論点について各委員から御意見を頂戴できたと思っております。

○岩村座長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。そうしますと、予定していた内容は一応、議論はできたということなので、本日はここまでということにしたいと思います。事務局から連絡事項等がありましたらお願いしたいと思います。

○引田課長補佐
 事務局です。次回の検討会の日程は決まり次第、御連絡をさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

○岩村座長
 ありがとうございます。それでは、これをもちまして「第4回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会」を終了させていただきたいと思います。本日はお忙しい中、皆様お集まりいただき誠にありがとうございました。
 

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