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2018年9月27日 第3回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会議事録

○日時

平成30年9月27日(木)15:00~16:33

 

○場所

中央労働委員会 労働委員会会館 講堂(7階)

○議題

(1)ヒアリング
(2)複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用について

○議事

 

 

○岩村座長
 ただいまから、第3回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を始めたいと思います。皆様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。カメラで撮る場合は、ここまでということにさせていただきます。
 それでは、早速、本日の議事に移りたいと思います。お手元の議事次第を御覧ください。まず、議題(1)はヒアリングということになっています。複数事業所で雇用される者について多くの知見をお持ちの労働者団体の皆様に、今日はお越しいただいておりまして、複数の事業所で雇用される者の実態などについてお話を伺うということにしています。続いて議題(2)として、複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用の必要性についての御議論を頂戴したいと考えています。
 それでは、早速、議題(1)ということで、労働者団体からのヒアリングを始めたいと思います。本日は、全日本自治団体労働組合中央執行委員/法対労安局長でいらっしゃる白井桂子様、UAゼンセン常任中央執行委員/短時間組合員総合局長でいらっしゃる永井幸子様に御出席いただいているところです。今日は白井様、永井様、お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。検討会を代表いたしまして、私から御礼を申し上げたいと思います。
 次に議事の進め方ですが、白井様からは資料1、永井様からは資料2をそれぞれ御提出いただいております。そこで、お二方には資料に基づいてお一人20分程度お話を頂戴し、お二人の御説明を伺った後に、委員の方からの質疑応答ということにしたいと思います。なお、御説明いただく順番ですが、勝手ではございますが、お名前の五十音順ということにさせていただきたいと思いますので、御了承いただければと存じます。それでは、まず全日本自治団体労働組合中央執行委員法対労安局長の白井様からお願いいたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○白井様
 ただ今御紹介いただきました白井でございます。私からは2枚ほど資料を用意させていただきました。「公共サービスの現場の意見から」ということで、私は全日本自治団体労働組合ということで自治労ですが、地方公務員の労働団体というように御理解いただければと思います。
 まず、地方公務員の兼業・副業に係る制度ですが、地方公務員法第38条に、本職の業務遂行、能率の低下を来すおそれがないことを確認し、任期付きあるいは再任用、臨時的職員につきましては、許可制で副業が行えるということになっております。また、資料にも書きましたが、2020年に「会計年度任用職員」という制度が始まることになっておりまして、この制度になると、つまり2020年以降になりますと、いわゆる非正規の公務員については、一部、許可制ではありますが、副業ができるということになっています。ですので、今のところは全ての括りについて許可制というところですが、今度は非正規職員に限ってはダブルワークあるいはトリプルワークが可能となります。また、公務員の非正規職員は63万人とも64万人とも言われており、実際の数は把握しきれていないところです。現在、総務省等がお調べになっているところですが、多分もっと多いのではないかと思っております。
 その中で、当該の皆様に「なぜダブルワークをするのか」とストレートなことをお聞きしたところ、簡単に言うと「現実に生活できないから」というような答えでした。いろいろな研究結果を見ますと、ダブルワーク以上をしている7割程度の皆さんが、「生活ができないから仕方なくしているのだ」という論文等がありますが、地方公務員の部分についても、理由とすればそのことが一番大きいところです。
 こんなに低いのかと驚かれるかもしれませんが、非正規の地方公務員の年収は100万円から199万円というところです。それなので、奨学金の返済、通信費などについては、ダブルワークをしなければ得ることができないというのが現実です。非正規の公務員は正規の公務員のおおむね4分の3の労働時間ですので、空き時間、あるいはシフト制を組んでいる場合は、本業の週休日等を使って行っているということでした。
 その際、疲れないのかどうかをお聞きするのですが、「疲れているとは言っていられない」というような返事でした。働かざるを得ないのだという返事が返ってきたところです。
 特徴的なことについては、1.の3つ目の●の所に書いています。いわゆる公営競技に働く皆さんなのですが、雇用先が開催場となっているので、ある自治体が主催となって開催しても、競馬場、競輪場であれば、開催場がそれぞれの勤め先ということになります。そして、公営競技ですので、得るお金は公金になります。ですので、辞令がそれぞれに出るということになります。御存じの方もおられると思いますが、公営競技はおおむね1週間程度開催されます。足しますと20時間を超える場合もあるのですが、それぞれに雇用されているというところで不利益を被っているという現状があるという状況です。
 また、「相対的貧困の課題」と書きましたが、それは先ほど申し上げましたとおり、通信費など、その辺のところについてしっかりとお金を得ていかないと、結果的に社会から取り残されてしまうという不安も抱えながら、皆さんダブルワークをせざるを得ない状況になっています。
 また、2.の「ダブルワークの現実的な問題点」という所では、先ほど申し上げたとおり、慢性疲労を感じているのだけれども、何時間働いているのかが分からない。要するに、正規職員の4分の3の時間は確かに働いているのだけれども、その後の働いている時間は大体何時間という部分ということで、総労働時間を御本人でも感じづらくなるということでした。「柔軟な働き方」という耳触りのいい言葉が出ておりますが、なかなか週40時間を超えたのかどうかを自分で把握できないということ、また40時間超えの場合には時間外手当等の支給ができるということになっていますが、そこの部分を果たして得られているのかどうかについては、甚だ疑問ということです。
 それから、慢性疲労に関わって睡眠不足や、それによる過失運転、脳・心臓血管の疾病が考えられますが、雇用保険の加入等ができない方もおられるところです。
 それから、先ほど申し上げましたが2020年施行の会計年度任用職員制度では副業が認められておりますので、これから更に増えていくのではないかということがあります。ただ、勤務時間についてはしっかりと把握し、合算のルールなどがしっかりされていかないと労働者だけに負担がいくのではないかということが考えられます。また、穿った見方をすれば、公と民のダブルワークとなれば、公のほうに負担がいくのかなと、自分の立場からすると、少しそこを心配するところです。
 公務員という立場から、いわゆる非正規の皆さんの労働条件、私は労働組合ですので労働条件等を改善してきたところです。皆様の御協力があって改善してきたところではありますが、なかなか正規と非正規の差を埋めきれないでいるところです。特に、この保険などの部分については非常に歯痒い思いをすることが多くあります。そして、私はそもそも病院に勤めておりますので、病院では診療報酬を得るために看護師を短時間で雇用する場合も非常に多くあります。多くあるのですが、保険の適用をはじめ、同じ仕事をしていながら不利益を被っている。その場その場で同じ仕事をしていても、不利益を被っている方が多くいます。同じ免許職でありながら、複数の病院に勤めるというような働き方をしている仲間もいるところです。公務に関しては、4分の3で働いている非常勤の職員であれば、保険等の対策はしっかり取られていると考えておりますが、一部、今申し上げた病院や公営競技などの部分については、自分が知らないうちに不利益を被っているようなところもあるということを知っていただきたいと考えています。私の話は以上です。ありがとうございました。

○岩村座長
 ありがとうございました。続いて、UAゼンセン常任中央執行委員短時間組合員総合局長の永井様から御説明をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○永井様
 UAゼンセンの永井と申します。今日はこのような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。私のほうでは、資料2ということで御用意しましたので、それに基づいて御説明いたします。
 「UAゼンセンについて」という所から御紹介したいと思います。私どもは自治労さんのように名称で組合の中身が分かるというほど簡単な名前ではありませんので、少し御説明させていただいてUAゼンセンのことを大まかに分かっていただいた後に、本題に入らせていただきたいと思います。
 「UAゼンセン」というのは総称ということで正式名称は「全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟」と申しまして、名前が示すとおり生活に関連する多くの業種の組合が集まっている労働組合の団体です。設立年は2012年で、統合を繰り返していますので、今の組織となってからはまだ丸6年がたったところです。
 組織現勢と組合員の数ですが、2017年の定期大会の数字で、合計170万人と少しです。そのうち正社員以外の組合員を「短時間組合員」と呼んでおりまして、現在では100万人を超えていますが、昨年の大会の時点でも100万人に近い方々が正社員以外の組合員だということです。様々な業種で働く仲間がいるということで、大まかに3つの業種、製造、流通、サービスと分けています。数字が合わないかもしれないのですが、このような比率でいるということです。特に流通部門、総合サービス部門については、短時間組合員の方が多いということです。
 次のページを御覧ください。今申し上げました短時間組合員の名称について、私どもは連合の中でも主張しておりますが、同じ組合員ですので今は「非正規」という言葉は使わないようにしておりまして、「以外」「非ず」という言葉も使わないようにということで、正社員以外の組合員の皆さんを「短時間組合員」と呼んでおります。その主な雇用形態ですが、パートタイマー、契約社員、派遣会社も組織化しておりますので、派遣労働者の方々もおられるというところです。「パートタイマー」とありますので、ざっくりですけれども、「主婦パート」と呼ばれる方々が多いのかなと思っておりますが、男性、女性も独身で、このような形態で働かれている方もおりますし、また後で触れますが、シングルマザーの方々も一定程度いらっしゃるということです。
 それから、推定の週所定労働時間ですが、昨年度、UAゼンセンとなって初めて組合員の皆さんに対する意識調査を行いましたが、そのときの状況ですと、短時間組合員の方々でも、おおむね週30時間ぐらいは働かれている方が多いということです。1日6時間、週5日というところがボリュームゾーンとなっております。組合員を対象にしている調査ですので、労働時間にしても少し長めに出ているのかなと思っています。要は、組織化している方々ということなので、労働時間も長いのかなと思っています。それから、賃金です。毎月の賃金の平均値はおおむね11万円程度ということです。単純に12か月を掛けても、それぐらいの年収だということです。組織現勢ですが、昨年と今年の大会の時点で数字を比較しますと、おおむねの傾向ですが、私どもUAゼンセンは短時間組合員の皆さんについては、週の労働時間が20時間未満、30時間以上、その間の人という3種類で分けて、大体の数字を取っているのですが、真ん中の部分の20時間以上30時間未満の方々が減少傾向にあると出ております。30時間以上の方また20時間未満の方については、増加傾向にあるということです。どうしてそうなっているかという調査はしておりませんが、もともと就業調整をしている方が、同じ意識調査の中でも3分の1ぐらいはいらっしゃるということと、やはり昨年に社会保険の適用拡大があったことの影響があるのかなと思っているところです。
 続いて、次のページを御覧ください。複数事業所における雇用の状況です。先にお断りしておきますが、私どもUAゼンセンの組織としては副業・兼業について特化した正式な調査は実施しておりませんので、今日お話させていただくのも、ほかの調査、全体的な調査であったり、日頃の活動の中で見聞きしていることをお話させていただくということでお許しいただきたいと思っております。
 今はインターネットでも求人サイトをたくさん見ることができますが、それで今回ここでお話をさせていただくことになったときに少し調べてみました。「Wワーク歓迎」というキーワードでお仕事を探せるというのがありましたので、それを見てみますと、私どもの加盟組合の名前も多く挙がってきました。公開の場ですので個別の名前は避けますけれども、スーパーマーケットであったり、ファミレスや居酒屋といったフードサービスの業態であったり、またドラッグストアというところが多く出ていたかなと思っております。私どもの組合の特徴かもしれませんが、副業・兼業といったときに、主たる仕事の場合もありますが、やはり従たる場合、要は兼業先として選ばれているという企業が多いのではないかと推測しているところです。そして、実態としてですが、短時間労働と短時間労働を掛持ちしている組合員が存在していることは、かなり昔から把握しているところです。ここが、要は雇用と雇用というところが私たちの主な関心があるところということです。
 先ほどもお話があったと思いますが、なぜ副業を兼業するのかということでは、私どもの組合員の皆さんの多くは、おそらく収入を増やしたいということだと思います。また、連続して長い時間を働けない、例えば育児や介護といったような事情から長時間働けないので、空いた時間で掛持ちをしているという方が多いのかなと思いますし、また会社のほうの都合でも、長い時間よりは、ほしい時間にほしい人を入れるという都合もあるのかなと思っております。
 どのようなところで副業があるのかということですが、例えばスーパーマッケットとホームセンターで掛持ちをしている方。ここにある例は、全て私ども組合の中での掛持ちという話になりますが、UAゼンセンは組合の会費を取っていますので、2か所からUAゼンセン会費を頂くようなことがあったことで発覚したことですが、昼間はホームセンターで夕方はスーパーマーケットで働いているという組合員の方も、実際にいらっしゃったところです。また、外食産業と外食産業というところで掛持ちをされている方も聞きますし、介護の業界でも非常に副業が増えていると聞いております。介護の場合については、特に訪問介護の現場で多いと聞いておりまして、やはり利用者のお宅にお邪魔しますので、その行き先のシフトによっては時間が空くということで、そこを有効に使うということで副業をするようですが、やはり介護で働いている方々の副業先は介護が多いようだということですし、またそういった働き方を推進している企業もあるということですが、なぜ副業をするのかというところは、結局のところ収入を増やしたいというところに行き着くようだということです。
 少し企業の例をお話させていただきますと、Wワーク歓迎として求人をしている会社ほかの事例ですが、仮にA労働組合とさせていただきますが、Aの労使は10年ぐらい前のようですが、労使で検討して副業・兼業の制度を導入しております。ここの企業は申請制で、会社名等も書いて出す形でやっているようです。この導入に当たって、導入の目的の1つは、会社側からすれば、必要な時間帯に必要な労働力を確保したいということ、そして働く側からすれば、パートタイム、アルバイトの方々の就労のニーズ、柔軟性への対応ということと、正社員の総労働時間の削減ということがあったということです。ここの企業の場合は、正社員はダブルワークの対象外ということでしたし、また同業種では兼業禁止ということです。これはこの会社に限らず、正社員対象外ということと、同じ業界では副業・兼業禁止ということは、幾つかの労使でこのように決めていると聞いております。また、ここの会社が従たる職場という場合では、厚生年金、健康保険、雇用保険については加入しないとされています。主たる場合であれば、要件に該当すれば加入するということですが、従たる場合は加入をしないということでした。
 それから、私どもUAゼンセンの副業・兼業についての考え方ですが、今年の初めにガイドラインが出されたことを受けて、我々としてもどのように対応していくかを検討しておりますが、今のところまだ検討中です。私どもは労働組合ですので、やはり適切な労働時間の範囲内で生活できる賃金を得るということが望ましいのではないかと思っておりますので、全て副業・兼業を認めるという立場ではない方向ですが、世の中の流れというものもある中で検討させていただいているというところです。しかし、先ほど申し上げたような形で、現に副業・兼業をしている組合員の皆さんがいるということで、更に現在では、労働時間、安全配慮、保険の関係など、まだまだ課題がある中では、労使でできることについては何らかのことはしていかなければいけないのではないかということを考えているところです。
 製造業のほうの組合の皆さんに聞きますと、どちらかと言えばガイドラインが示しているような新たな起業であったり、人生100年時代を見据えて、地域とのつながりを作るといったような視点から、副業・兼業を認めてもいいのではないかという議論もしているというところですが、ただ、まだ解禁という話に至ったという事例は聞いていないところです。もちろん、進んでいる労使もございます。
 次に、先ほども少し申し上げましたが、昨年の2017年度にUAゼンセンとして初めて組合員に対して意識調査を行いました。短時間組合員、契約社員、派遣組合員等に対しては、1万3,000人程度から回答を頂いているところです。複数就業している人に聞いたわけではありませんが、特に副業・兼業に関わるであろうパートタイマー等の意識から、課題になりそうなことに触れさせていただきたいと思っております。まず、なぜ短時間で働くのかということです。女性のパートタイマーの約半数の方々は、「通勤時間が短い」「休暇が取りやすい」「異動や転勤がない」といったような、その場所や働き方で短時間、パートタイマーという仕事を選択している方が多いと。その理由としては、やはり育児や介護など、家庭の事情による生活時間の確保ということがあるのだろうと考えています。それから、余り突かれたくないのですが「不本意非正規」と言われる、正社員として働けなかったからパートタイマー等で働いているという方々は、男女計で24.2%、4分の1近くいらっしゃいました。男性のほうが高く出ております。また、シングルマザーだけで見ますと3割が、正社員として働けなかったと回答されている方々がいたというところです。また、所得税の年収調整の状況で、これは所得税に限って聞いている設問ですが、夫が正社員で働いているという方の場合に3分の1程度が「調整している」とお答えになっています。ただ、年収調整をしている人でも、6割以上、7割弱の方が「時給など賃金を上げてほしい」と思っているということで、賃金や収入に対しての関心が、この層の方々は高いのではないかと思われます。
 最後のページです。「失業への不安」と書きました。生活への満足度を聞いておりまして、その中で失業への不安ということについて、正社員組合員の皆さんよりも、短時間・派遣組合員の皆さんのほうが失業することに不安を感じているという結果が出ております。また、今働いている職場で、今の働き方で働きたいという人が5割いらっしゃったということです。やはり、ここは賃金への関心が高いということに連動しているのだろうということと、「老後への備え」というのも項目で聞いているのですが、非常に満足度が低いということが出ていますので、失業への不安につながっているのかなと考えております。また、職場で改善してほしいことも聞いておりますが、やはり賃金への関心が高いということで、「時給など賃金を上げてほしい」「経験等に応じて賃金を上げてほしい」「ボーナスを支給してほしい」「退職金を支給してほしい」というのがトップ4でしたが、それに続く項目としては、「能力に合った仕事をさせてほしい」「能力アップのための援助をしてほしい」「能力アップできる仕事をしたい」といったことを選択されている方々もおられました。賃金が上がることと同時に、公正な評価、そして能力開発の支援というものを、短時間や有期で働かれている方々も希望されているのだと思っているところです。
 また、最後にひとり親の課題です。私どもの調査では、単純計算で、UAゼンセンの中で5万人ぐらいのシングルマザーがいるのではないかという試算をしていますが、こちらの方々はやはり育児や家庭のことがあって、パートとパートを掛持ちせざるを得なくて働いているのだろうなと思っているところです。私どもも、この掛持ちが解消できるような賃金だったり、制度上の優遇策など、少しでも労使で何かできないかということを検討しているところです。以上、簡単ではございましたが、御報告とさせていただきます。ありがとうございました。

○岩村座長
 永井様、大変ありがとうございました。それではこれで、白井様、永井様からの御説明を頂いたということになります。この後はお二人に対しまして、今、お話いただきました内容についての御質問、あるいは御意見などをお出しいただければと思います。

○酒井委員
 現場の実態に関して貴重な御意見、ありがとうございました。これは主に全日本自治団体労働組合様に伺いたいのですが。働かざるを得ないという状況からダブルワークをしている方という、その実態についてお話いただいたのですが、この検討会は一応、雇用保険の適用を考えている検討会で、その観点からすると職を失ったときのセーフティネットが重要になるかと思うのですが、そちらの労働組合の組合員さんのほうで、単にダブルワークをしているということだけではなくて、ダブルワークをしていて、そのダブルワークとして就いている仕事が、仕事として非常に失いやすくて不安定だというようなことに関して何か把握しているような実態とか、エピソード的なことでも構わないのですが、御存じでしたら少し教えていただきたいのですが。

○白井様
 ありがとうございます。例えばですが、職とすると司書の皆さん、あとは博物館の研究員の皆さんとか、専門性が非常に高くありながら正規の枠が多くはありません。公務員ですので条例定数というところで非常に縛られてしまい、スタッフが欲しいのだけれどもその定数がないものですから、非正規の皆さんが担っているというようなことが多くあります。
 その場合、実は、非常に専門性が高いものですから、仕事に対しての情熱とか、そのことについては非常に高くございますが、雇用が不安定であり、1年雇用、1年の更新になってしまうので非常に不安定です。大抵の場合は労働時間が正規職員の4分の3で雇用されておりますので、保険などにカバーできている部分が一部あるのですが、公務員ですのでカバーでき得ない部分もございます。それで、つなぎというのですか、そんなところで副業をされている方も多くいるというようなところの実態がございます。

○岩村座長
 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

○中野委員
 すみません、私も白井様に2点ほど確認させていただきたいのですが、まず1つは、非常勤職員の方たちの年収が非常に低いのは、端的に時間当たりの賃金が低いのか、それとも、先ほどからのお話ですと週30時間雇用なのかなと思うのですが、労働時間が短い、あるいは雇用の期間が短いためにこういう年収になってしまうのかという点です。
 もう1つは、先ほどお話いただいたときの最後のほうで、公と民でダブルワークをするときに公のほうに負担がいくということをおっしゃっていたのですが、どのような御趣旨なのかが分からなかったので、補足で御説明を頂けたらと思います。お願いいたします。

○白井様
 ありがとうございます。非正規の皆さんの収入が低いのはどうしてかということですが、時間の単価が低いこと、それから、当然、働く時間が短いこと、この両方のことが原因と考えているところです。公務員は予算執行主義なので交付税の範囲内で雇うというような形になってきますので、そこの範囲の中で働けば働くほど収入が得られるという、そういう企業の皆さんとは事情がちょっと違っておりますので、そういうところで収入が低いというようなところです。
 それから、私たちは雇用というよりも任用というような形になっているところでして、御存じとは思いますが、地方公務員法と、あと、働く所ではパートタイム労働法などが短時間の雇用の皆さんにはあると思うのですが、地公法に関連しまして、パートタイム労働法をはじめ、非正規の皆さんに対するカバーが十分ではありません。例えば、今、5年連続の非正規の方は無期雇用になる制度につきましても、公務の職場では、それはカバーできていないといいますか、外れているというのが実態というようなところがございます。年収の低さに加えて、そこの部分でもカバーができていないというようなところがございます。
 それから、公と民の負担のことについてですが、本当にうがった見方で大変申し訳ないと思うのですが、例えば様々な事業などを見させていただいたときに、公は基本的にも最後の生活のセーフティネットというような部分でその労働者、ダブルワークを公と民でやっているときに、もちろん、公のほうが主で民のほうが副業なのであれば公のほうが負担をするというようなことについてはいささかも問題はないと考えられるのですが、逆に民のほうに主があって公のほうが副であったときにも、公に勤めているのだからというところで公のほうにより大きな負担が来るのではないかと、公の立場から少しうがった見方をして、心配だなと考えているところなのです。

○岩村座長
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

○酒井委員
 永井様のほうの資料についてちょっと確認させていただきたいのですが、最後のページに「職場で改善してほしいこと」という所の抜粋がございますが、これは意識調査の結果ということで、そちらの組合員全般に関する回答結果ということでよろしいですか。あるいは短時間の、何十時間未満の人たちの回答結果とか、そういうことでしょうか。

○永井様
 はい、「正社員組合員」「短時間・派遣組合員」のそれぞれ2%という基準で、配布は単組に任せておりますので、全体ということでよろしいかと思います。

○酒井委員
 ではその上で、もしかして調査上は把握されていないかもしれないのですが、そこに「能力アップのための援助をしてほしい」といった回答があったということですが、そちらの実態として、やはりそういう短時間で働いておられるような方から能力開発への支援に対する希望は強いということはあるのでしょうか。実態的なことを御存じでしたら、教えてください。

○永井様
 両面あると思っておりまして、能力アップの機会を望んでいる方々もおられる反面、やはり、短時間の労働者の皆さんは時間的な制約がありますので、そういう場になかなか時間を割けないという方々もおられると思っております。ですので、こういう機会を得たいけれども、やはり時間的制約で断念しているという方々が一定程度いらっしゃるのではないかと感じているところです。

○酒井委員
 分かりました。ありがとうございます。

○岩村座長
 ほかにはいかがでしょうか。

○中野委員
 私も永井様に1点、こういう理解で良いかということを確認させていただきたいのですが、資料の後ろから2ページ目の意識調査の一番下の年収調整の話になります。年収調整をしている人たちの67%が賃金を上げてほしいということなのですが、これは、調整している所得の範囲内で、より短い労働時間数で所得の上限まで稼ぎたい、言いかえれば、労働時間をもっと減らして効率良く上限まで稼ぎたいという趣旨だと、そのように理解してよろしいでしょうか。

○永井様
 この意識調査ではそこまで聞いておりませんで、これもクロス集計で出しておりますので、全ての方がそう思われているか分かりませんが、パートタイマーの皆さんは全体としてこの賃金アップの要望が高いという中で、調整をしている方々であっても同じように出ていると認識しております。そういう方々の中にはもちろん、短い時間で時給が上がればいいと思っている方々もいると思いますし、本当はもっと働きたいのだけれどもと思っている方々もいるのではないかと思っております。

○中野委員
 資料の3ページ目によると、昨年と比べると、短時間組合員の方々の働き方が社会保険の適用拡大の影響で30時間以上と20時間未満に、より長いほう、あるいはより短いほうに分かれていっているような動きが見受けられると思います。そうすると、例えば賃金が上がって、所得税などのことを考えても、より世帯収入が上がるようになるなら、長い時間働きたいと考えている人たちも、この中にいるだろうと考えてよろしいでしょうか。

○永井様
 その部分もあると思っております。ただ、社会保険の適用の拡大のときにも思いましたけれども、まだまだ、実は周知が進んでいなかったのではないかと。保険料を取られるんだという思いのほうが先行し、今後、保険に入ったことで得られるメリットが薄れていて、どちらかというと、適用にならないように労働時間を減らした方々もいたのではないかとは思っているところです。

○中野委員
 ありがとうございます。

○岩村座長
 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。

○白井様
 すみません、先ほど法律の名前が全然出てこなくなってしまって申し訳なかったのですが、地方公務員の場合は、労働契約法やパートタイム労働法であっても、適用除外がまずあります。
 それから先ほどの、賃金のお話だったのですが、予算の範囲内と申し上げましたが、それもあるのですが、実は地方公務員の部分につきましては、最賃、いわゆる一番下の賃金の適用除外になっているというようなところがございます。それを合わせまして賃金が低くなってしまう要因と考えております。すみません。

○岩村座長
 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

○渡邊委員
 今の点をもう少し確認させていただきたいのですが、低年収の原因は時給が低いといった点と短時間であるというお話なのですが、非正規の場合は正社員の4分の3という労働時間が多いとおっしゃっていたかと思います。これは、週30時間程度というのが多いという、そういった理解でよろしいですか。

○白井様
 私どもは38時間45分ですので、30時間弱です、29時間何分、すぐ計算できませんが、そのぐらいの方が多いということです。多いだけで、全部かと言うとそうではもちろんなくて、週10時間とか14時間とかという方ももちろんおられます。

○渡邊委員
 ただ、一般的には30時間をちょっと欠けるぐらいの人たちが普通だということですね。

○白井様
 そのとおりです。

○渡邊委員
 ありがとうございます。

○岩村座長
 では私から、まず白井様にお伺いしたいのですが、資料の2ページ目の所で、なぜダブルワークをするのかということで聞き取りをされたということで、ある公共施設ではほとんどが独身者であるというのが一番最初の●に出ていますが、この方々の年齢層はどんな感じなのでしょうか。

○白井様
 独身層ですので40歳前の方。

○岩村座長
 40歳前の方ですか。

○白井様
 前ぐらいの方というか。

○岩村座長
 そういう方々ですね。

○白井様
 はい、そんな感じです。

○岩村座長
 男女の区分けはいかがですか。

○白井様
 男女の区分けは特にございません。ただ、非正規の方は、比率で言うと女性の方のほうが全体的には多いので、女性の方が全般的には多いのですけれども、伺った場の方につきましては、男性、女性、関係なくお伺いいたしました。

○岩村座長
 ありがとうございます。もう1つは、今、渡邊委員の質問ともちょっと関係するのですが、同じページの「ダブルワークの現実的な問題点」の2番目の●の所で、公共施設の非常勤職員の場合は正規職員の4分の3の労働時間の場合が多いという先ほどのお話ですが、他方で、1.の1番目の●だと、ある公共施設の非常勤職員がこういう年収というようになっていて、働いている時間数と年収の水準がちょっと結び付かないのですが、これは、もちろん、施設の特性とか、そういったものもあるのかもしれませんが、この点はいかがなのでしょうか。

○白井様
 おっしゃるとおりにいろいろな職種がございますので、専門職であればこの年収100~199万円ではなく、もう少し高いことも考えられるのですが、いわゆる一般事務の皆さんなどにつきましてはこの程度というように御理解いただければと思っております。

○岩村座長
 ありがとうございます。それから永井様についてもお伺いしたいと思ったのは、やや似ているのですが、意識調査についてお話をいただきまして、1万3,000人程度を取ってということでお話いただきましたが、これも、例えば年齢層とか男女別とかはどうなのかなと思った次第です。特に2番目の黒ポツの所の不本意非正規という所で、短時間・派遣男女計で男性では何パーセント、女性では何パーセントなどと出ていますが、やはりこれも年齢層はどうなのだろうかというのが、例えば次は独身女性というのが出てきますが、この辺も年齢層はどうなのかなというのをお伺いできればと思った次第ですが、いかがでしょうか。

○永井様
 ありがとうございます。男女比ですが、回答者の85%が女性です。年齢層は、女性で平均値が47.6歳、男性は38.4歳です。合計しますと、全部平均しますと、46.4歳です。それから、男性の独身の方に限るともう少し若くなって34.3歳、女性で、いわゆる主婦パートと言われる方であれば、先ほどとほぼ同じの47.3歳というのが平均で出ております。もし御希望であれば、調査概要がございますので渡させていただきます。

○岩村座長
 それでしたら後ほど事務局にお渡しいただければと思います。

○岩村座長
 それともう1つお二人に、もし分かればということなのですが、この検討会では、当然のことですが複数就業の場合の雇用保険の適用をどうするかということで検討していただいているわけですが、その辺りについて、関係する組合員の方に直接お話を聞いて、お考えの傾向とか、何か、そういったものを知見としてお持ちであれば、教えていただければと思うのですが。組合様は組合様の考えがもちろんおありでしょうけれども、ただ、現場の組合員さんのお考えが分かればという気はしたのですが、いかがでしょうか。

○白井様
 ありがとうございます。非正規の地方公務員に関しましては、雇用保険に入れる方も中にはおられますが、基本的には地方公務員ですので、入っておられないというような状況がございます。

○岩村座長
 ありがとうございます。永井様、いかがでしょうか。

○永井様
 私どもでは特に調査などはしておりませんので、考え方ということではまだ出していない状況です。先ほど申し上げた傾向があるということしか申し上げられません。

○岩村座長
 ありがとうございます。そのほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 白井様、永井様、ありがとうございました。本日の労働者団体からのヒアリングはここまでとさせていただきたいと思います。全日本自治団体労働組合中央執行委員/法対労安局長の白井桂子様、UAゼンセン常任中央執行委員/短時間労働組合員総合局長の永井幸子様、本日はお忙しい中、御協力をいただきまして、大変ありがとうございました。
   
                   〈ヒアリング対象者、退席〉

○岩村座長
 それでは、次に議題2として、複数事業所で雇用される者に対する雇用保険制度の適用の必要性について御議論を頂戴したいと存じます。まず、前回、第2回検討委員会での指摘事項について、事務局から説明いただきたいと思います。お願いします。

○引田課長補佐
 事務局から御説明させていただきます。資料3を御覧ください。表紙の次の1ページ目に、こちらは酒井委員から御質問がありました、雇用保険の加入希望について、本業と副業の週の所定労働時間の合計が20時間以上の者に絞った場合です。こちらにありますように、そのような制度を希望するという者が43.1%ということです。本業で雇用保険に加入していないということで副業の所定労働時間を合算することについて、お手元に第2回の資料を冊子としてファイルを用意させていただいておりますので御覧いただければと思いますが、こちらにありますように、雇用保険を適用することを希望する者というのが41.7%ということで、大きく違っているところはないということです。
 2ページ目を御覧ください。副業していることの勤め先への申告ということと、副業の可否についてです。知らせていない者は27.5%、本業の勤め先で副業は禁止されている者は2.7%と、それぞれ全体の者からでは39.6%、15.3%ということでしたので減少しています。また、副業を禁止されていると回答した者は9人いますけれども、うち知らせていない者は3人で、33.3%ですが、できれば知らせたくないと回答している者が100%となっております。ただ、いずれにしろ人数が少ないので、結果については、留意して考える必要があります。
 3ページ目を御覧ください。こちらは渡邊委員から御質問がありました副業の週所定労働時間の分布状況です。副業の週所定労働時間は、収入が最も多い副業及び収入が2番目に多い副業の週の所定労働時間は、20時間も一定人数いますが、収入が3番目以降に多い副業ではほとんどが20時間未満となっております。また、収入の多い順に限らず、副業の週所定労働時間は10時間以下が多いところです。
 5ページ目を御覧ください。本業の就業形態が雇用である週所定労働時間と副業の就業形態について雇用が1つでもある場合についての状況です。合計しても本業及び副業の週の所定労働時間が20時間に満たない者は65.8%います。ただ、この数字を出すに当たりまして、本業及び副業の週の所定労働時間がそれぞれ20時間未満の仕事を合計しているということと、本業及び副業の週の所定労働時間のいずれかが20時間以上の者は排除しているという前提での分布です。
 6ページ目を御覧ください。本業の就業形態が雇用である所定労働時間と副業の就業形態について雇用が1つでもある場合の週の所定労働時間の合計をクロス集計表という形で分析したものです。本業の週所定労働時間にかかわらず、副業の週所定労働時間の合計は「5時間未満」「5~10時間未満」「10~20時間未満」が多くなっているところです。事務局からは以上です。

○岩村座長
 ただいま資料3について説明いただきましたが、これについて何か御意見、あるいは御質問がありましたらお願いしたいと思います。
 よろしいでしょうか。あとで何かお気付きであれば、御遠慮なくおっしゃっていただければと思います。
 それでは、次に資料4、今日の議題2の関連で、事務局のほうで用意いただいておりますので、資料について説明をお願いします。

○田中課長補佐
 事務局でございます。資料4「マルチジョブホルダーに対する雇用保険の適用に関する論点(検討資料(1))」ということで御説明させていただきます。
 1ページ、雇用保険制度の趣旨、再確認ですけれども、第1回検討会の資料2より抜粋しております。従前から申し上げておりますとおり、(1)の所にありますが、雇用保険制度は、労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、このほか雇用の継続が困難となる事由が生じた場合、それから自ら職業に関する教育訓練を受けた場合などに、生活及び雇用の安定並びに就職の促進のために失業等給付を支給するということが目的とされているところです。
 2ページ目です。第1回と第2回の資料には入れておりませんでしたが、こちらは雇用保険の適用に関する雇用保険部会の資料では例年使われているものでして、そちらを抜粋したものです。先ほど申し上げた雇用保険の趣旨に照らしてということですけれども、下の2.の赤枠でくくった部分を御覧いただくと、雇用保険制度については、自らの労働によって賃金を得て生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定を図る制度ということで考えられておりまして、その趣旨に鑑みて、保護の対象とする労働者を一定の者に限っている、適用を限っているという取扱いをしてきたところです。
 2つ目の○にあるとおり、一般に保険制度、社会保険制度とは、同種類の偶発的な事故による危険にさらされている人々が、この危険の分散を図るために集団を構成して適用していくものです。雇用保険では、現在、この同種類の危険にさらされている人々として、週の法定労働時間が40時間であること等を考慮して、その半分の20時間、これを適用の下限とするという考え方をとっているところです。
 3ページです。現在は、今ほど申し上げたとおり、週所定労働時間が20時間を適用の下限、適用の要件としているところですが、これは昭和50年代から何度かの改正を経て、適用拡大が図られてきたところです。
 それについて簡単に概要を御説明させていただきます。雇用保険制度は、雇用保険法に名前が変わった昭和50年の頃は、週所定労働時間に関しては、通常の労働者のおおむね4分の3以上という形で所定労働時間が置かれておりました。加えて、年収の要件は、52万円以上という形で当時付いておりまして、次ページに資料がありますけれども、考え方としては、人事院規則の扶養手当の支給基準、すなわち、その一定の所得を超える所得を稼いでいる方に関しては扶養されていないと、若しくは、それより低ければ扶養されているということで、扶養手当の支給基準が当時52万円だったことを考慮して、これより高ければ、自らの労働によって生計を維持していると考えて適用するという考え方をとっていたところです。それは平成元年の頃に週所定労働時間を22時間以上にするという形で制度の見直しが行われておりまして、こちらは当時、短時間労働者への適用拡大を図るという考え方で導入されたものです。
 それから、平成6年から平成13年にかけては、当時、短時間労働者や登録型の派遣などの多様な働き方が社会の中で増加してきているという状況でしたので、このときは年収の要件を撤廃するという形で見直しが行われているところです。それから、平成21年、平成22年には、これも雇用のセーフティネットの充実ということで、雇用見込みのほうの要件を1年から6か月に、6か月から31日にという形で適用拡大を図ってきておりまして、先ほど申し上げましたとおり、現行、週所定労働時間は20時間以上、それから雇用期間は31日以上見込みというところが適用基準として残っております。逆に申し上げると、これが現在の雇用保険における、自らの労働によって生計を維持している労働者の考え方になるということです。
 続いて、4ページ目以降は、御参考までに雇用保険法の条文の変遷、確認できる範囲で雇用保険業務取扱要領の規定がどのように変わってきたかというところを付けさせていただいております。御説明は省略させていただきます。
 8ページは、短時間労働被保険者制度の概要です。平成元年に創設されまして、平成19年で廃止されているものです。いわゆる適用拡大の議論ですので、簡単に制度を御説明させていただきます。
 上の●の部分ですが、平成元年に短時間労働者に雇用保険の適用拡大が行われましたが、その際、短時間労働者の特性として、一般の労働者に比べて単に所定労働時間が短いのみならず、当時、離職率が高い、一方で求人が豊富で比較的就職が容易であるというように捉えられていて、そういった特徴がありましたので、基本手当の受給資格要件や所定給付日数に一般被保険者と異なる取扱いを導入したというものです。
 具体的には、受給要件の所で一例を申し上げると、下の表の基本手当受給要件の部分ですが、当時、一般被保険者の受給要件は、1年以内に6か月以上の被保険者期間があることとされていましたが、この計算の際に、短時間労働被保険者についてはざっくり申し上げると、1か月を1/2か月カウントで計算して、受給資格要件を満たすかどうかを判定したというところです。また、一般被保険者に比べて短時間労働被保険者のほうは、比較的賃金日額が低いという特徴がありましたので、これに合わせて賃金日額の下限を下げる、若しくは、所定給付日数について一定の差を設けるというような取扱いをしていたところです。
 こちらが、産業構造や勤労者意識の変化などに伴って就業形態が多様化するにつれて、一般労働者から短時間労働被保険者に変わったり、短時間労働被保険者から一般被保険者に変わったりというような就業形態の変更というところが増加してきましたので、差を設ける意味が薄れてきているということで、平成15年改正で賃金日額・所定給付日数の特例を廃止、それから、平成19年の改正で受給要件の特例も廃止するという形で、実質、短時間労働被保険者制度が廃止されて、現行の週20時間以上で全て統一されている状況になっております。以上が、雇用保険の適用、現行の考え方と、そこに至る過程と考え方の御説明です。
 続いて、10ページ以降です。今ほど申し上げた雇用保険の考え方を踏まえて、こちらは第2回検討会で出させていただいた資料の再掲です。10ページは重複した説明になりますので、説明は簡単にさせていただきます。前回も御説明しましたとおり、JILPT調査で、今回、複数就業者、複数の雇用がある者についての調査をしております。有効回答数は前回も申し上げましたが185万人に依頼して、15万7,000人の方から回答を得ている状態で、更にその中から副業していると回答された方は9,299人がおられたという状況です。
 次ページ、この中から更に3つの条件を掛けて絞り込んでいますが、11ページの上の対象となる者の○の(1)~(3)ですが、この雇用保険に加入していると回答した方を外す、それから、本業及び副業における週所定労働時間の合計が20時間以上となる者、かつ、それぞれの雇用の週所定労働時間がいずれも20時間未満であるという者を抽出すると、9,299人のうち371人になるという結果です。
 先ほども少し関連した資料の御説明がありましたけれども、12ページ以降、この371人の方に限って、世帯においてどういった地位を占めているのか、収入状況が世帯の中でどうなっているのか、就業形態がどうなっているのかという資料について、19ページまでで分析したものを再掲しております。
 以上を踏まえて、20ページです。こちらは前回の資料で論点として出させていただいたものの1つ目ですが、複数事業所の所定労働時間を通算することで適用基準を満たす者を雇用保険の保護の対象とすることについてどう考えるか。具体的に、1.ですが、今ほど申し上げたような調査、それから各種統計、本日いただいたヒアリング等々を踏まえて、マルチジョブホルダーの方の状況についてどのように考えるか。そして、2.にあるとおり、そういった状況を踏まえつつ、今、私が御説明申し上げたような雇用保険制度の趣旨も踏まえて、雇用保険の適用の必要性についてどのように考えるかという論点を示させていただいております。こういった点について御議論いただければと考えております。私からの説明は以上です。

○岩村座長
 ただいま、データ、それから論点について御説明いただいたところです。これらについて御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。一番最初の絞り込みは、結局のところ、現行の仕組みの中では、現行制度を前提とする限りは、副業をしていても、雇用保険の網には引っ掛からない人たちというのが何人いるかといったことを示したという、そういうことになるわけですよね。

○酒井委員
 最初に質問すべきかどうか分かりませんが、お示しいただいた資料によって、前回も一部お示しいただいておりますけれども、マルチジョブホルダーの実態というのが、統計的にはかなり明らかにされてきたのかなと思いますが、雇用保険の適用を考えるという観点からいうと、先ほどヒアリングのときにも少し質問させていただきましたし、前回も実は少し違う文脈から同じような内容の質問をさせていただいたのですが、いわゆる保険事故というか、失業がどれぐらいの確率で発生し得るのかという点も重要になるかなという気がしております。その意味からすると、マルチジョブホルダーとして把握するのは難しいにしても、短時間で働いている人たちがどのくらいの確率で離職しているのか、失業状態に置かれることが多いのかということを、一応、データとして把握しておくことが、雇用保険適用の必要性ということを考える上では、その議論を埋める1つのピースとして必要になってくるかなと思いました。ですので、現時点で把握されているようでしたら、若しくは次回、可能であればで構いませんので、教えていただけると有り難いです。
 なぜそういう質問をしたかというと、先ほどお示しいただいた資料の中で、短時間労働被保険者制度の概要で過去の経緯を話していただきましたけれども、短時間労働被保険者制度を導入した際に、単に所定労働時間が短いのみならず離職率が高いということがその1つの特徴として考えられたのでという説明がありましたが、平成元年からはかなりたっておりまして、そういう事情も時代によって変わっていることもあるかと思いますので、確認のために今のような質問をさせていただきました。以上です。

○岩村座長
 ありがとうございます。事務局、その点はいかがでしょうか。

○酒井委員
 すみません、私の考えを補足させていただきます。例えば、日本ですと、いわゆる常用の非正規と呼ばれるような人たちも多くて、短時間でマルチジョブホルダーということがあっても、結局、実はすごく安定して働き続けているのだという人たちもいないわけではないと思います。その場合と、そうではなくて、やはり短時間でマルチジョブホルダーの人たちは非常に離職も多いのだということであると、その状況は雇用保険の必要性という観点からは違ってくるのではないかと思ったので、質問させていただいた次第です。

○岩村座長
 ありがとうございます。

○松本雇用保険課長
 次回までに準備します

○岩村座長
 次回までに検討していただければと思います。いわゆる季節労働とか何かは別の仕組みになっていたりするのですが、それ以外は一般の被保険者となってしまうと、多分、直ちに統計的にそこが分かるということでは必ずしもないように思います。つまり、入職、被保険者資格を取得して離職するまでの期間、それで基本手当がもらえるかどうかの問題とか、さらにそれが循環的に回っているかどうかとか、要するに、ある人にとって、それが回っているかとか、その辺の属性が雇用保険の業務統計でどこまで取れているかということかという気がします。私も詳細は分かりませんが、なかなか難しいかもしれないという気はします。

○酒井委員
 ただ、私がイメージしていたのはおおざっぱな話で、単純に、いわゆる非正規の人たちと正規の人たちで本当に非正規の失業確率が高いのか、例えば非正規の人たちが雇止めに遭うことが多いと言われますけれども、その事実も資料として必要なのではないかということを述べておきたかったということです。

○岩村座長
 業務統計でそこまで見られるかどうかという気はします。松本課長、お願いします。

○松本雇用保険課長
 研究した上で、次回に準備いたします。

○岩村座長
 どうぞよろしくお願いします。ほかはいかがでしょうか。最終的には、今回のこの調査で分かっている371人の人たちの属性とかそういったものも含めてある程度は分かっているのですが、今、酒井委員がおっしゃったことと若干関係しますが、雇用保険の必要性を考えたときには、2つのジョブを持っているうちの1つを失ったときに、それがどの程度生活に影響するかという、その問題も多分あるのだろうという気はしています。
 例えば、考えてみると、フルタイムで働いている人で年収水準がそれなりにあり、全サラリーマンの平均程度の年収であって、更にプラスアルファで兼業している人が、その兼業分について失業したというか、それが失業と言うのかどうかはともかく、雇用を失ったときに、雇用保険でそこの部分をカバーしてあげる必要があるのかどうかという話というのも一方であります。それから、371人の人がそうだということではなくて、シミュレーションで空想的に考えたときに、両方の仕事が合計して20時間超にはなるけれども、いずれの仕事も20時間未満である非常に極端な例、例えば1つが19時間で、もう1つが1、2時間といった仕事をしているときに、1時間、2時間という仕事を失ったときに、そこの部分を雇用保険でカバーしてあげる必要があるのかというような、恐らくいろいろな状況があり得るのかなという気がしています。必要性を考えるときに、では、どのレベルで失業手当をもらう必要性と考えるのかという問題ももう1つあるのかと思います。これはなかなか定量的には分からないので、どちらかというと定性的な議論になってきてしまうのかもしれません。そういったものもあるかという気はしているところです。もちろんそれは仮想の例であって、現実にはあり得ないということは当然あるのだろうと思いますけれども。ほかにいかがでしょうか。

○渡邊委員
 今、メインで考えているマルチジョブホルダーというのは、2つ以上働いているけれども、本業も副業も週の所定労働時間がどれも20時間に達しないので、雇用保険の適用が現状ではないと。しかし、2つ以上合わせれば適用対象になる。そういった方がどのぐらいいるかというと、今日配付された資料ですと、資料3の5ページの所に出ていると思いますが、非常に対象者が少ないというような状況が見て取れます。今現在、調査結果などで分かっている範囲では、通算して適用対象にしたとしても、その対象になり得るような方がどうも少ないような状況で、事務的な変更などのコストとかをどう考えるかといった面なども問題になると思います。先ほどの岩村座長のお話もありますが、どの範囲をどう含めるのか、マルチジョブホルダー自体もどのようなマルチジョブホルダーを適用対象とするのか、それ自体によっても、結果というか、考え方が変わってくるような気がしております。

○岩村座長
 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。

○中野委員
 本日、労働組合の方々からお伺いしたお話ですとか、前回から頂いている調査資料などを拝見しておりますと、特に本日お伺いしたお話から、週30時間働いた上で、生活のために収入が足りないので副業をしているという人たちのイメージというのは抱けたのですが、メインのお仕事で週30時間働いていれば、現在の仕組みでも雇用保険は適用されているはずで、逆に週20時間未満で働いている人たちというのは、どうも就業調整をしている被扶養者の方たちが多いようだという印象を抱きました。そうすると、先ほど事務局から御説明いただいた雇用保険制度の目的からすると、現在の仕組みを前提にするならば、必要性という意味では雇用保険による保護がどの程度必要になるのだろうかという点は疑問を感じたところです。

○岩村座長
 ただ、他方で、今日、組合の方からもお話がありましたけれども、独身者あるいはシングルマザーの人たちというケースもやはりあって、そのときに、もちろん週30時間の労働時間で働いていれば、民間であれば雇用保険の適用の対象になるので、30時間働いている本業が失業してしまえば、当然、失業手当は出るということになりますが、プラスアルファの副業の部分については、そこは今の仕組みの下では出ないだろうということになるのと、もう1つは、非常に制約があって、週20時間以下を2つ重ねて、しかし20時間はトータルでは超えているというケースで、どちらか一方を失業したときは当然収入減になるので、そこをどう考えるかという話というのは、どうしてもそこはシングルマザーとか独身者の方については残ってしまうだろうと。
 ただ、もう1つの問題は、副業というか、2つのマルチジョブホルダーをやっていて、1つを失ったときに20時間未満になってしまったというケースを仮に考えたときに、それを雇用保険の基本手当という枠でその喪失分の所得の一部の保障というのを考えるのか、それは、むしろ別の問題として考えるのか、雇用保険とはまた別のメカニズムで考えるのかといった制度設計の問題自体というのは、大きな観点からすると、実は存在するだろうという気はするのです。むしろそれは、働いているけれども、必ずしも生活を支えるのに十分な所得が安定的には得られない人たちに対して、公的な所得保障というのはどういうメカニズムで作るかという、そちらの問題なのかもしれないという気はします。ただ、これは、この検討会で考える領域を超えてしまうことは超えてしまうのですが、そういう観点というのも実際は、本当はあるという気はします。雇用保険ということになると、結局、最終的に保険料を払わなければいけない。したがって、労働者側も結局、保険料を負担するということになるので、もともと賃金水準が低い人はそれほど大きな負担にはならないにしても、やはり手取りが減ることは確かであるので、その辺のことをどう考えるかというのはもう1つの問題としてはあるかもしれないという気はします。
 必要性の議論をするときに、どういう属性の人をイメージして議論するかということによっても、かなり見方が違うかなというようにも思います。一番典型例で今日取り上げている371人の人たちのマルチジョブホルダーは、どれを取っても20時間には満たないけれども、合計すると20時間超の人たちのところについてどう考えるかということと、先ほど言ったように、30時間あるいは40時間働いていて、更にプラスアルファでやっている人をどう考えるかというのとは、取り上げる側面というか、性質がちょっと違うかなという気はしなくはないですね。マルチジョブホルダーというように考えたときのイメージが、後者の、要するに40時間働いていて、更にプラスアルファというと、最近言われているようなクリエイティブな仕事とか、そういうような兼業ができるのだといった側面につながる話なのですが、そこを雇用保険でやってあげる必要はあるのかというのもあるような気がしますし、他方で、マルチジョブホルダーのどれを取っても20時間未満というケースについてどうするかという問題も他方であるのかと。どちらを取ってみるのかという話なのだという気がします。すみません、繰り返しになってしまいました。ほかにいかがでしょうか。

○酒井委員
 ちょっと小さいことですが、統計資料としてマルチジョブホルダーの平均像を浮かび上がらせる中で、例えば、現状では、いわゆるシングルマザーのような形でマルチジョブホルダーとなっている人が割合的には少なかったということがあったとしても、もう1つの観点としては、今後そういう人たちが増えるのだろうかと、もし今後そういう人たちが増えるということがある程度の蓋然性を持って予測できるのであれば、今のうちに何らかのセーフティネットを準備するという意味もあるかと思います。ですので、トレンドというような視点というのも1つの観点としては大事なのかと思う次第です。

○岩村座長
 ありがとうございます。もう1つ多分効果があり得て、マルチジョブホルダーで今日お話していたようなシングルマザーとかそういった人たちについて、例えば20時間未満、20時間未満で、しかし合計で20時間を超えるというところでカバーするという話になると、逆に女性の行動が変わる可能性もあるのですね。

○酒井委員
 そうですね。

○岩村座長
 そうすると、それが制度に影響を与えるということも起き得るかなと思います。ほかはいかがでしょうか。今日のところは、大体この辺りでよろしいでしょうか。特になければ、事務局は何かありますか。よろしいですか。それでは、まだ時間的には余裕がありますが、適用の必要性の問題については、御意見が今日の段階では大体出たのかなと思います。ということで、今日はここまでとさせていただければと思います。
 それでは、事務局から連絡事項がありましたら、お願いしたいと思います。

○引田課長補佐
 次回の検討会の日程は、決まり次第御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○岩村座長
 それでは、これをもちまして、第3回複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を終了させていただきたいと思います。今日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。
 

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