ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第27回)議事録(2018年7月23日)

 
 

2018年7月23日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第27回)議事録

○日時

平成30年7月23日(月) 15:27~17:52

 

○場所

厚生労働省 共用第6会議室(3階)
 

○出席者

今村主査、志藤構成員、戸田構成員、土井構成員、三宅構成員、宮崎構成員

○議事

 

○今村主査

 それでは、定刻の少し前ではございますけれども、ただいまから「第27回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。また、最高気温40℃を超えたところが随分多いということで、大変な中お集まりいただきまして本当にありがとうございます。本日は関口構成員、高田構成員、中村構成員、松浦構成員、松尾構成員が御欠席です。次に、本日の議事について事務局から説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 政策評価官室長補佐の加藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は労働者健康安全機構につきまして、平成29年度業務実績評価、及び中期目標期間見込評価に係る意見聴取を行うことになっております。御意見を頂くにあたり、昨年までは全ての評価項目について法人様から説明を行っておりましたが、今年からは自己評価がA評定以上の項目、及び定量的指標の達成度が100%未満にもかかわらずB評定であるものなど、事務局が指定させていただきました項目について、法人様から説明の上、有識者の皆様から御意見、御質問をいただきたいと存じます。それ以外の項目については、法人様からの説明は行いませんが、御意見がある場合には、議事の最後にまとめてお伺いすることとさせていただきます。

 法人様からの説明項目は、参考資料9の労働者健康安全機構評価項目一覧(年度評価・見込評価)中の網掛けされているものとなります。議事の流れとしては、年度評価の各項目について、一通り御意見をいただいた後で、見込評価の意見をお伺いしますので、見込評価における法人様の説明につきましては、既に年度評価で説明された内容は極力省略の上、御説明のほど、よろしくお願いいたします。

 3つ目の議題であります業務・組織全般の見直しについては、通則法第35条の規定を根拠とし、主務大臣が、中期目標期間終了時までに、法人の業務の継続又は組織の存続の必要性その他業務及び組織の全般にわたる検討を行い、その結果に基づき、業務の廃止、若しくは移管又は組織の廃止その他の所要の措置を講ずるものでありまして、次期中期目標の内容に反映することを目的として実施するものです。これにつきましても本WGの御意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

○今村主査

 それでは議事に入りたいと思います。労働者健康安全機構の平成29年度業務実績評価について御議論いただきたいと思います。初めに、法人の業務概要について、12分程度でごく簡潔に説明をお願いします。その後、事務局からも説明があったとおり、年度評価のうち、自己評定がA評定以上の項目、B評定で定量的指標が100%未満の項目等を中心に議論いたしますので、まず、1-1-1、「統合による相乗効果を最大限に発揮するための研究の推進」について、法人から評価の要約の記載内容を中心にポイントを絞って、ごく簡潔な説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 それでは項目1-1-1、統合による相乗効果を最大限に発揮するための研究の推進、御説明いたします。資料1-12ページ目、この項目につきましては、中期目標において安衛研が持つ労災防止に係る基礎・応用研究機能と労災病院が持つ臨床研究機能との一体化による相乗効果を最大限に発揮できる研究。これを重点研究と言っておりますが、これに取り組んで労働災害の減少や社会復帰の促進に結び付けることとされております。重点研究に関係する施設等で構成する協議会等を設置・運営し、重点研究5分野に係る具体的な工程表の作成、公表することとしております。

 平成29年度の実績につきましては、資料の3ページ目を御覧いただきたいと思います。平成29年度ですが重点研究5分野という囲みがあります。産業中毒等をはじめとする5分野につきまして、前年度に策定した工程表に基づいて、それぞれ研究を進めております。また、その下の段ですが、お互いの研究内容に係る相互理解を深めるという観点から調査・研究発表会を初めて実施をいたしました。これは当日は安衛研の研究員や労災病院の医師など85名が参加をいたしまして、重点研究をはじめ17テーマについて意見交換を行い、意思疎通を図ったということです。その下の段ですけれども、産業中毒分野におきまして、有機粉じんによる肺疾患事案の原因究明等に係る研究、これを新たに平成29年度から開始をいたしました。このテーマですが、有機粉じんによる肺疾患に係る災害調査の結果を受けて、厚生労働省からの要請に基づいて新たに立ち上げたものです。この災害につきましては、人の肺に対する有害性が確認されていない物質に係る事案であり、健康障害の調査やばく露評価方法の確立に加えまして、実験動物を用いまして吸入試験による病理学的な解析も必要となりますので、これまでの重点研究の枠組みであります安衛研と労災病院のほかに、動物を用いた毒性試験に多くの経験を有する日本バイオアッセイ研究センターも加えた新たな研究体制を構築することによりまして、統合による相乗効果を更に高い水準で発揮できたものと認識をいたしております。

 4ページ目は、それ以外の平成28年度から開始した5分野の進捗状況です。この5分野につきましては、例えば労災病院の臨床データを安衛研で解析したり、あるいは安衛研で開発した予防診断方法を労災病院で検証するなど、統合による相乗効果を発揮しながら一体的に研究を進めているところです。

 また、2ページ目にお戻りいただきたいと思いますが、以上のように平成29年度におきましては、前年度に立ち上げた重点研究5分野を工程表に沿って実施したほか、新たな課題に対応するためのバイオを含めた、より高度な相乗効果を発揮する研究体制の構築、研究の開始によって、中期目標策定時より更に高い水準の相乗効果が発揮されたと考えられることから自己評価をA評価としております。御説明は以上です。よろしくお願いいたします。

 

○今村主査

 ありがとうございました。ただいま御説明がありました事項について御意見、御質問等がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

 

○戸田構成員

 御説明ありがとうございました。1点だけ、確認させていただきたいのですが、資料の4ページ目に記載している研究を平成28年度から推進していらっしゃると御説明があったかと思うのですけれども、その平成28年度に工程表も作って進めていらっしゃるということだと思うのですが、現状での進捗状況について、それぞれコメントをお願いしたいと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 では、資料の4ページ目から順番に御説明をしたいと思います。まず、産業中毒分野ですけれども、ベリリウムのばく露の判断に必要な、ベリリウムリンパ球幼若化試験の改良等による総合的な健康管理体制の確立ということで、労災病院におきましては胸部CT検査による肺病変の経過観察とか、血液中の免疫細胞の分析などをやっております。それから安衛研のほうでは、ベリリウムリンパ球幼若化試験、これの精度の向上と、それから放射性同位元素を使わない、新しい代替方法の開発を進めております。今年で3年目に入っているところですけれども、調査の結果を踏まえて、改良等々を重ねております。

 それからせき損の関係ですけれども、安衛研におきましては、人体ダミーを使った落下試験・ぶら下がり試験などによりまして、脚立が人体とともに倒れることによる頭部衝撃荷重の問題点なども明らかにしているところです。それから、労災病院では、せき損患者の生活支援策の安全性・効果の検証ということで、生活支援ロボットによる工学的支援技術の導入可能性について検討をしているところです。現在、需要に耐え得る工学的技術について市場調査などを実施しておりまして、有望な新技術を3課題ほど選定したところです。

 アスベストにつきましては、石綿関連疾患の臨床を行っている労災病院から、石綿のばく露歴の詳細記録とか、石綿小体の計測などを行うための病理組織試験の標本などを提供いただきまして、肺の組織の中の石綿の繊維数の計測をより迅速に行える方法の検討を進めております。メンタルヘルスにつきましては、安衛研、労災病院の健康診断とか、人間ドックの受診者のデータから分析をいたしまして、不眠スケールと抑うつとの関連について解明を進めているところです。過労死の関係では、安衛研は過労死の研究をいろいろやっておりますが、この研究を生かしまして、労働者の属性把握のためのアンケートを作成いたしまして、労災病院において、人間ドック受診者とか、急性心筋梗塞等の患者の御協力によりまして、症例収集を実施して研究を進めております。以上です。

 

○今村主査

 はい、どうぞ。

 

○土井構成員

 すみません。今年から参加した土井と申します。それで少し経緯が理解できていないところがあるので教えていただきたいのですが、例えば2ページ目の評価のところで、26年度、27年度が空白で、28年度のみなのですが、これはどういうふうに考えて見ればいいのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 本法人は、平成28年度に労働者健康福祉機構と労働安全衛生総合研究所が統合して発足した法人です。研究関係の項目につきましては、統合後の28年度からこの評価の項目に加わったということで、28年度からの評価という形になっております。

 

○今村主査

 すみません。このA評価の根拠として、労災病院と安衛研に加えて、更にバイオアッセイ研究センターも含めた3者が当初の工程表以上のことをやっているという御主張、正にそのとおりだと思うのですが、それ以前に、その上にある調査・研究発表会というのは大変興味深いと思います。つまりこれこそが、正にシナジー効果を出すための努力ではないかなと思うのです。余り強調されませんでしたが、これはすごく大事なことじゃないかなと思うのです。つまり、合併当時、心配したのは研究の安衛研と臨床の労災病院が一緒にやってうまくいくのかということでありまして、それがここで、少なくとも安衛研の研究員と労災病院の医師とが一緒になって場を共有して、いろいろな研究報告なりのコミュニケーションをしたということは、建物の場所が離れているだけに、こういう形で、一堂に会してやるというのは大変すばらしい試みではないかと思うのです。これがどのくらい研究に発展するかというのはこれからだと思うのですが、統合したシナジー効果として、こういう結果が見られると、共同の場でこういう動きが見られるとか、そういうことがありましたら是非、教えていただければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 労災病院の医師と安衛研の研究員は所属する学会も違いますし、通常の研究の中でなかなか接点を持つことは難しかったですけれども、この研究発表会に参加することによって、お互いが何をやっているか知るきっかけになったと思っております。この発表会は今年も継続して実施しますが、お互いに何をやっているかを知ることによって、もしかしてこのフィールドで何かできるんじゃないかという、共同研究のきっかけにはなり得ると考えております。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 補足させていただきます。この研究会などで、例えば現在、重点研究のせき損関連の研究をしております。これまで、安衛研のせき損関係というのは、やはり転落ということで、どうやって首などを守るかということでヘルメットのことになります。一方、それは労災病院の側で言いますと、やはり高齢者の転倒などによるせき損ということで、医学的に脊椎の何番がやられるかということを医療は考えるのですが、安衛研は物理学的にどのようなモーメントがかかって首がやられるかということなので、全く別、物理学的、医学的と考え方が違ったのですが、「この研究、あっ、お互い、そうなんだ」ということが分かって、そういう考え、つまり、物理学的なことと医学的なものが合体した考え方を研究者ができるようになったことが1点あります。

 あとまた、具体的な例としましては、いわゆるメンタルヘルスというものは当然、安衛研としては労災疾病、労災認定事案という職場鬱の問題で、自殺した患者さんとか、いろいろなデータがあると。一方、労災病院のほうでは、実際、鬱病としてかかっている患者さん、実際に困っている患者さんがいらっしゃる。それの発表をお互いにすることで、「ああ、これがこうなって、労災の疾病、ここまでいくんだ」とか、その辺のいわゆる社会学的な鬱、労災疾病としての鬱の考え方と臨床的な鬱の考え方とを統合して、現在、そのようなメンタルヘルスのことについて、考え方が非常にフュージョンしてきているというのが、この研究会などで非常に分かってきたと思います。

 

○労働者健康安全機構理事長

 せっかくなので追加させてください。今、言われたように、研究会という場で議論しますよね。その後に意見交換会があるんです。そのときに結構、それぞれ自分のやっている研究はこんななんだけれどもどうなんだろうというようなことを話し合う。その場で、今、労働安全衛生総合研究所で、ずっと熱中症をやってみえた方がいたんですね。その方は、基本的にはどういう服を着たらどうだとか、どういう家の中ではどうなんだとか、気象条件との関係はどうなんだというような、少なくとも物理的な観点から見れば、それなりの研究をずっとやってみえてたんですけれども、いわゆる具体的な患者さんの数をたくさん集めたいという希望がその意見交換会の席で出ました。その延長線上で救急医療をずっとやっている仲間たちとのコラボが進みまして、総務省消防庁の全国のデータ、熱中症で患者さんを運んでいるデータをかなりそこの部分に集約させて、臨床的なデータと、従前から彼らがやっていた物理的なデータとの合せ技をしながら、今後の働く現場における熱中症に関する研究を進めていくと。そんなようなことでコラボ、それぞれしているようであります。ちょっとだけ追加しました。

 

○今村主査

 はい、ありがとうございます。このことで余り時間を取るのも控えさせていただきたいと思いますが、なぜ、こういうこと申し上げるかと言うと、日本ではなかなか産業クラスターがうまくいかないと言われるのですが、実は先日ベルリンのアドラーズホフというところを見てきたときに、これは光学とフォトニクスのクラスターで大変成功しているのです。正に機構がやっていらっしゃるとおり、頻繁なワークショップとかセミナーをやって、しかもランチタイムとかコーヒーブレイクに徹底的に人同士がコミュニケーションするということで大成功を収めているのですね。是非、こういう御努力は高く評価したく継続していただければと思います。それが研究成果に表れますように期待しております。

 よろしいでしょうか。次は1-2をお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 1-2について御説明いたします。資料の13ページです。労働災害調査事業については、労働安全衛生法第962の規定に基づく災害調査の実施はもとより、調査結果を踏まえた再発防止対策の提言、災害防止研究への活用・反映、調査研究内容の公表、災害調査の高度化に向けたリスク評価・管理手法の開発等をやるということになっております。

 平成29年度実績ですけれども、厚生労働省からの要請に基づいて災害調査を9件、捜査事項照会・鑑定等を12件、労災保険給付に係る鑑別、鑑定等7件等々を実施をいたしております。

 次の14ページを御覧ください。左側に災害調査の流れを書いてありますけれども、先ほどの1-1-1の所でもちょっと御説明いたしましたが、今年については厚生労働省からの依頼によって実施した災害調査の結果により、ばく露開始から2年前後と極めて短期間で肺疾患、間質性肺炎等の重篤な肺疾患を発症する有機粉じんが、災害調査に入った作業場内に高濃度で発散しており、労働者が極めて危険な労働環境下にあるということが分かりました。

 この物質については、物質の肺に対する有害性の情報がほとんどないという状況ですので、これをもって直ちに法令改正等ということにはつながらなかったのですが、そうはいっても危険な状況であるということで、労働者のばく露を防止するという観点から厚生労働省において法令で規制する内容に準じた発散抑制措置、防護性の高いマスクの着用、健康診断の実施等の指導・要請が速やかに行われる契機につながっています。先ほどもちょっとお話いたしましたように、有害性とか健康影響、ばく露評価方法については重点研究として、引き続き検討を進めております。

 もう一度13ページですが、一番下のほうに赤い文字で書いてありますけれども、今年についても災害調査の結果が製造メーカーや業界団体への指導につながって、それ以降の職業性疾病発生の防止に大きく寄与したものと私どもは認識していますので、本年度についても自己評価をAとしております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。それでは、何か御意見、御質問等がありましたらよろしくお願いいたします。

 

○三宅構成員

 三宅と申します。御説明ありがとうございました。災害調査は、ある意味ではもともとの安衛研のほうも非常に特殊な、行政ニーズにも対応する非常に重要な事業だと思っています。それに対して、今回もきちんとした成果が出ているのだろうと感じています。

 1つ伺いたいのは、やはり災害が発生した場合に、ほかの関係省庁との関係というのが当然あると思います。それぞれの災害調査とか、あるいは調査員が派遣されていったときの連絡の受渡しだとか。当然ここでやっている仕事というのは、労働安全とか災害抑止ということでやっていると思うのですけれども、そこら辺でのほかのグループとの関係がどうかということは、1つ伺いたいことです。

 もう1つは、ちょっと揚げ足を取るような話になってしまうのですが、13ページの中期目標の内容の最後の所で、災害調査の高度化のためにリスク評価や管理手法の開発というのは、私はちょっと違和感があります。これはもうしようがないのだろうけれども、リスク評価というのは、本来自主的な活動に基づいているものであって、これから起こるであろう不確実なものをなるべく予測しようということだから、「災害調査の高度化のため」というのはちょっと私としては違和感があるなと。そこに何かあれば、まあもともと中期目標の内容だから今更どうかということもあるのでしょうけれども、コメントだけさせていただきます。

 先ほどのほかのいろいろな、例えば警察とか消防とか、会社の中でも事故調査委員会ができたりすると思いますけれども、そことの情報のやり取りで、特に今回ほかのグループとは違った観点での知見が得られたようなことがあれば、ちょっと教えていただきたいと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 災害調査は法令に基づいて行うもので、守秘義務もありますので、むやみに手を広げるわけにはいかないのですが、災害調査が終わった後に、可能なものから報告書という形で公表をして、それをほかの場所における再発防止に役立てていただくという活用は、これまでもなされておりますし、そういうこと等もきっかけになって、他省庁の研究機関などとの共同研究につながっていくということは、これまでもあると思っております。

 

○労働基準局安全衛生部計画課長

 すみません、目標を設定した側の立場で御説明いたします。実際に安衛研との統合の際には、こういう形で目標の設定をさせていただいたところです。確かに今御指摘を受けると、そういう観点というのはあるかなとも思いますので、これは次期中期目標策定の際に、今頂いた御意見も含めてどのような目標にするかを検討させていただきます。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。

 

○戸田構成員

 御説明ありがとうございました。この項目は定量的な指標がありませんので、定性的な観点から目標を上回るかということを検討しないといけない項目であるかと思いますが、13ページの中期目標の内容の4つ○がある中で、恐らく3つ目の点が機構としては当初の目標よりも上回っているので、Aを付けられているという理解なのですけれども、よくよく考えてみるとなぜAなのかというところについて、もう一度御説明していただければと思います。

 例えば、この3つ目の項目で、「調査実施後、調査内容についてはその公表を積極的に行い、同種災害の再発防止対策の普及等に努めること」と書いてあります。今回、御指摘された比較的短期間で肺疾患を患うケースというものも、そうした調査結果を公表されて、かつ再発防止対策のために厚生労働省で指導を要請するようになったということですが、この案件自体を見ても、この目標どおりにやっているという認識で、これ自体をAというように目標を超えた何らかのことを行っているとは言い難いのではないかと、お話を聞いているとそういった印象を持つところがありますので、なぜこの目標よりも高い成果を上げているのかといった点について、もう一度御説明をお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 今年の有機粉じんの災害に関しては、通達が出たということももちろんですが、年度の後半において重点研究として、原因究明で更に深掘りする方向につながったということで、大変困難度の高い調査であったと認識しています。調べて濃度が高かったということにとどまらずに、次につなげられたということもありますので、例年よりも貢献度の高い仕事をやったと認識をいたしております。

 件数の公表とか実施件数につきましては、厚労省からの要請に基づいて行う調査ですので、私どもの一存で増やすというのは難しいところですけれども、難しいものについて解決に向けて、より高い水準の結果を出していったということで、私どもはAと評価をしたところです。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。困難度が高いとおっしゃいましたけれども、具体的に何が難しかったと言えるのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 まず、この物質については、有害性に対する情報がほとんどなく、測定のやり方についても前例がなかったわけです。例えば昨年の膀胱がんに関する調査のようなものでしたら、有害物の有害性など、ある程度のデータは既に学術的に出ておりますけれども、今回はそういうものがほとんどない状態で調査をせざるを得なかったというところがあります。そのような中で、次の研究にもつなげていかざるを得なかったということで、困難度が高かったと考えております。

 

○戸田構成員

 測定のやり方が前例ではないという話ですと、仮にですけれども、例えば論文にしようと思えば、論文になり得るような価値のある調査・研究をされたというふうに見てもよろしいでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 今後こういった環境における健康障害防止措置を講ずるとなると、測定方法等もきちんとしたものを出さなければいけなくなりますので、確立できたときにはそういうことにつながるものと考えております。

 

○土井構成員

 今の御質問とも関連するのですが、中期目標の読み方と、今実現されていることとのマッチングがどうなのかというのがまだ具体的に理解できません。中期目標の所では、「その公表を積極的に行い」となっていて、ここに関しては確かに困難な調査をやって、積極的に行ったということは今の御説明で理解できましたが、次の「同種災害の再発防止対策の普及等に努めること」というのは、この下のほうに書いてあるので見ると、安全機構のほうが公表して、それを厚生労働省がそれに基づいてプッシュしたから普及したというふうに読めます。だとしたら、普及等に努めることということでは、具体的に何をやったかということがここに書かれていないので、更に深掘りする研究をされたということは今の御説明で理解できたのですが、深掘りした研究をしたぐらいではなかなかメーカーさんが動かないというのも実情なので、何をしたからメーカーが動いて、きちんとコストを掛けて防じんマスクとかそういうのをやりましたという、そこに関して安全機構が具体的に何をされたかということがここに書かれていると、Aであるということの理解がすごくしやすいです。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 災害調査の報告書は、必ず書面でまとめて行政に提出しておりまして、行政ではその報告書をよりどころにして、そのようなばく露防止を求める通達を出されたと理解をいたしております。その通達を出すための材料として、私どもの報告書が役に立ったということで、ちょっと間接的なアクションではあるのですが、行政がアクションを起こす契機になったと認識しております。

 

○今村主査

 今の件ですけれども、14ページの災害調査の流れで四角が5つ並んでいますが、災害調査原因を科学的に分析して特定化して厚生労働省に報告するという流れの所ということですね。つまり、この機構は行政権は持っていないですから、政策的に影響するというプロセスはこのルートしかないということで、ここにいかに正確で信頼に足る情報を流すかということが重要な役割かと思いますが、そういう理解でよろしいですか。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 そうです。

 

○今村主査

 つまり、そうするとこのプレゼンの受取り方なのですけれども、13ページのⅡの3つ目の○は意外と重要で、100%高い評価を受けているというのは、これに関しては100%以上高い評価を得られることは不可能ですから、120%なんて言っていられないので、これ自体が非常に高い達成度だということになるわけですよね。それに加えて、2年という極めて短期間で行政に対して非常に有効となる政策変更のアクションを確かな研究調査に基づいて起こすことができたということで、これがプラスアルファでAだというふうに解釈してよろしいでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 もう1つ、重箱の隅をつつくような説明なのですが、同じ13ページにやたらと安衛研が登場するのですけれども、安衛研というのは現在存続しているのでしょうか。これは、形としては存続しているのですね。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 しております。

 

○今村主査

 安衛研のホームページがあって、そこで公開して、それを統括するものとして労働者健康安全機構があるということでよろしいですね。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 はい、そうです。

 

○今村主査

 分かりました。

 

○志藤構成員

 このような会議を何回か続けておりますと、当然ほかの団体の方の説明を伺うことになるわけで、そうすると、それぞれはそれぞれの立場でこれがAであり、Bであるとおっしゃるわけですけれども、全体を通して見たときに随分ばらつきがあるなという気がいたします。どこというふうに申し上げるつもりはありませんけれども、今回のは、私はAということで特に異議はないのですが、クライアントというか厚生労働省さんの意向で、あるものを提出するとか報告書をまとめるとか、意見を具申するという形でのお仕事だと思うのですけれども、そのときに相手がどの程度納得したか、あるいはそれに感心したと言うと変な言い方ですが、非常にそれが参考になったかという、そのことがやはり評価につながってくるのだと思います。

 何回かお話を伺っている団体の中には、提出したけれども今はそれを使う予定はないが、貴重な研究だと思うというような表現が役所のほうからあったりして、私はそれはAとは言わんだろうと内心思ったりするところがあるのですが、そういう意味で率直に申し上げると、こちらの研究の内容というのは、クライアントである厚生労働省にとっても非常に高い評価があったと理解してよろしいでしょうか。

 

○労働基準局安全衛生部計画課長

 厚生労働省のほうからお答え申し上げます。やはり私どもの行政というのは、事業場に対して一定の規制を掛けたり、あるいは規制に準ずるような行政指導をやったりというときに、これは私どもの分野だけではないですけれども、よほどの根拠がないと、政策的に何かをやろうとすれば科学的なエビデンスがないとできないという。安全衛生の分野は特になのかどうかは分かりませんが、やはりそういうものでして、きちんと規制なり行政指導なりをやるに足りるだけの根拠を頂けるということは、行政としてはものすごく大きなことですので、そういう意味では、今回のように行政指導の根拠になるレベルまでやっていただいたというのは、非常に高く評価していいのだと私どもとしては思っております。

 

○今村主査

 ありがとうございます。いかがでしょうか。

 それでは、次は当期の評価ですので、1-4です。お願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 産業保健総合支援センター事業です。19ページを御覧ください。中期目標の内容は、関係機関とのしっかりとした連携の下、様々な支援を通じて事業場における自主的産業保健活動の促進などを図っていくということになっております。

 これらの目標に対する平成29年度の実績ですが、小規模事業場における産業保健活動の促進や、産業保健関係者育成のための専門的研修等の労働者に対する支援の充実・強化について着実な取組を実施し、平成29年度実績として、全体としては年度計画に定める目標をおおむね達成しています。

 20ページ上段で、各指標に関する達成状況について記載しています。9項目のうちで、7項目100%を超えております。特に4項目については120%を超える達成度となっています。一方で、2項目については達成度100%には至っていません。

 各事業について説明いたします。20ページ下段を御覧ください。(1)の1,地域の産業医等の産業保健関係者への研修、あるいは2,自主的産業保健活動促進のための事業主セミナー等については着実に実施し、目標を達成しております。

 21ページでは、小規模事業場等における産業保健活動の支援の充実という観点から、(2)の1,医師等による小規模事業場への訪問指導及び両立支援の普及促進のための観点からの個別訪問についても目標件数を達成いたしました。2,産業保健総合支援センターにおける専門的相談については、達成度90.7%と達成には至っていませんが、全国産業安全衛生大会等に相談コーナーを設けるなど、相談しやすい環境づくりに加え、アクセス向上のために最寄りの産業保健総合支援センターにつながる全国統一ダイヤルを設置する等、様々な努力をしながら、一番下の左のグラフに示すように、経年的には実績を上げてきているところです。なお、3,地域窓口における専門的相談については、高い実績を上げて達成度248.7%となっております。

 22ページの(3)の1にホームページアクセス件数がありますが、今年度については達成度76.4%となっています。アクセス件数が減少した原因については、ストレスチェック制度という検索ワードでアクセスする件数が平成28年度に比べ減少していることから、ストレスチェック制度がある程度事業者に浸透し、制度実施に係る疑義解消にセンターのホームページを用いることが減少したことが大きな要因と考えています。このため、当機構ではホームページアクセス向上に向けて更新回数の増に加え、新たに、事業主の大きな関心事項である治療と仕事の両立支援に係る情報を集約したポータルサイトを作成し、その経由で産業保健総合支援センターのホームページへのアクセス数向上などのホームページの内容の充実に取り組んできました。

 また、(4)研修方法や内容又は相談対応がどうか、あるいは事業場における産業保健活動の効果の把握については、1,研修受講者からの有益であったとの評価、2,相談利用者から有益であつたという旨の評価、各々達成度100%を超えております。

 以上より、全体として達成度100%を大きく超えている項目が多数あり、9項目のうち7項目が目標を達成していることから、平成29年度についてはおおむね達成できるとして、自己評価をBとしております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。それでは御意見、御質問をお願いいたします。

 

○戸田構成員

 一点確認です。産業保健総合支援センターにおける専門的相談という項目が目標を達成していないというお話ですが、21ページの下側の左側のグラフが専門的相談件数の推移という形で、平成26年度から比べて平成29年度まで増加しているというトレンドはうかがえるかと思います。そもそもこの目標設定自体は、平成24年度実績が46,703件ということで、平成24年から平成26年ぐらいまで結構下がっているという見方もできるのですが、ここは何か事情があるのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 これは、厚労省の方にも御確認いただきたいのですが、カウントの仕方が違うというか内容が違っておりまして、カウントすべきものが少なくなったのだけれども目標自体の多さは、たくさんカウントしたときの目標値に設定されたという事情があって、平成26年が極端に減ったのではなくて、そこで目標のカウントの仕方が変わってしまったので、率直に申し上げると今おっしゃってくださったように、目標の設定数が偉く高くなってしまったという中で、我々も必死で取り組んでここまで上げてきたというのが実情と理解しております。

 

○戸田構成員

 この当時は、私もこの有識者会議の委員をやっていなかったので存じ上げていないのですが、数え方をどのように変えたかみたいなことは、具体的にお分かりになるでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 1つ聞いていますのは、それまではメンタルヘルス等に関係するものをカウントして、一部ダブルカウントにもなっていたということは伺っております。そこを外してきたら、平成26年は一部下がったと。ただ、おっしゃるとおり当初の目標設定値が平成25年度より高かったですので、平成26年度からの目標設定は、そのまま平成25年度までの値を使って作られているので、そこでメンタルヘルスはどこかでダブルカウントになったらしいのですが、それがなくなってしまったのでこうなったというようなことは伺っております。私もそのときはおりませんでしたので、すみません。

 

○戸田構成員

 あと、数字の件で細かく聞いて恐縮ですが、もう1つ目標を達成していないのはホームページのアクセス件数に関してです。資料2-2の実績報告書を拝見すると、経年のデータが103ページに載っているのですが、これを拝見すると平成29年度は約163万件であるのに対して、前年の平成28年度が224万件ぐらいで、前年から前々年にかけて約60万件ぐらい減っているように見えるのですけれども、ここは何か要因の分析等はされていらっしゃいますか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 今おっしゃってくださったのは、ホームページアクセス数という103ページの所ですか。これは今申し上げたように、ストレスチェック制度というものが始まるということがありまして、それはどのようなものだということが各事業場、特に小規模事業場から大規模事業場まで周知されていなかったというか、していなかったので、我々のホームページにアクセスされた方が非常に多かったということから、ずっと伸びたところです。それがもう御存じのように、大分たって各事業場でやり方も、何回も出されていて周知されてきましたので、そこがどうしても減ってきているというのが我々の分析です。

 

○戸田構成員

 確かにメンタルヘルスの話は平成28年度ぐらいに出てきて。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ストレスチェックですね。

 

○戸田構成員

 その頃、話題になったというのは確かですけれども、減り方としてはちょっと大きすぎるかなという、印象論で恐縮ですが、そういうところがありますので、この辺はもう少し、分析というのはなかなか難しいところがあるかと思いますが。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ただ、先ほども申しましたように、現在ストレスチェック制度は減ってきております。後で申し上げますが、いわゆる治療と仕事の両立支援制度が徐々に増えてきたのですけれども、それが大きく花開いたのは今年です。ちょっと先の話で申し訳ございませんが、実は今年度は、現在この456は、またホームページアクセス件数がぐっと増えているのです。これは、我々がずっとこの1月ぐらいから両立支援を大きくアナウンスしていますので、そこはやはりアナウンスと社会の事業場におけるトレンドが非常に敏感にこういうホームページアクセスに出てくるというのは、我々としても感じているところです。

 

○今村主査

 よろしいですか。ちょっと今のに関連してですけれども、目標設定としては、そういう条件はあらかじめ予見として起こり得ると考えながら目標設定をしているわけだから、むしろプラス要因としては考えられるとしても、こういうマイナス要因として何が起こったかというのが、ちょっと説明不足ではないかという感じがするのですが。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 つまり、今年度が下がったということに関してですか。

 

○今村主査

 そうです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ストレスチェック、実際。

 

○今村主査

 ストレスチェックで100%達成していたわけですから。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 そうですね。

 

○今村主査

 おっしゃるとおり、ストレスチェックで100.5とか103.5ですから、つまり、そうするとこの時期は、逆にストレスチェックがなければ達成できなかったという解釈になりますから、もう少しそこを説明していただければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 そうすると、資料1-121ページの先ほどの経年的なグラフを見ていただきますと、目標が45万件というところが当初は26万件に減っていたわけです。そこはまだストレスチェックの話もなかったのですが、産業保健自体の我々のアナウンスでダブルカウントを退けたところで、各種産業保健の事業場へのアナウンスというものを工夫してやってきたわけですが、確かにおっしゃったように、高い中でストレスチェックが花開いて100%をやっと超えたというところだと思います。そこは、残念ながらストレスチェックが落ちると、やはり設定値が高かったので、100%を割って今回、大分下がってきているというのは実際のところだと思います。ただ、今申し上げたような次の工夫をしておりますし、現状だけを申し上げると、この3か月間では平均して設定値を、また100%を超える勢いにはなってきています。ですので、それなりの努力ということは、いろいろ手を打ってきているということだけでも御理解いただければと思います。

 

○今村主査

 ほかにいかがでしょうか。

 

○土井構成員

 まだよく理解できていないので、ちょっと教えていただきたいのですけれども、今のストレスチェックというお話で言うと、電話相談のほうはストレスチェックで相変わらず増えていると。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 減っています。

 

○土井構成員

 減っているのですか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 21ページの真ん中(2)の2の◆のストレスチェック制度に関する専用の電話相談窓口は、平成28年は17,425件あったのですが、平成29年度は4,757件と極端に減っています。これだと4分の1ぐらいになっていますので、やはりこの影響はホームページのほうにも拭えないかなと考えているところです。

 

○今村主査

 今の質問に加えて、こういうものを評価するときに機構として全体の人的支援とかその他資源の一定の制約がある中で、どのように割り振っていくかという、緊急時対応というか、そのときに臨機応変にやっていくという意味では、一方で事業主セミナー等が達成度322と、組織に対して大変な負担が掛かっていると。したがって、もしかしたらホームページにもうちょっと改良を加えれば、そこに魅力的な情報を載せればアクセス数は簡単に増えたかもしれないけれども、専ら事業主へのこういう直接的な対応によって、より質の高い情報の伝達を心掛けたとか、組織としてそういう何か総合的な判断をされたのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 今おっしゃってくださったのは、事業主へのそういう啓蒙アクセスに類するものは、各産業保健総合支援センターに属しております両立支援促進員や相談員という者が行っております。一方で、ホームページの管理等については、産保センターにおります副所長やプロパーの職員が行っていて、そこは別ですので、その方たちに更新回数をアップさせるということと、先ほどから申し上げていますように、去年ぐらいから話がされている両立支援のポータルサイトを作ったりということは、それで割り振って新たにしていますので、その効果が今ようやく出てきたところだと思います。そこできちんと分けて、かつ本部においてもホームページのほうは管理しておりますので、そこはうまくやったからこそ、今なんとかリカバリーしようとできていると考えております。

 

○今村主査

 よろしいですか。おおむね理解はできましたが、やはり今後に向けて、例えば両立支援に関してはホームページをもっと有効に活用するようにとか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ポータルサイト等を作る。

 

○今村主査

 正にシナジー、横の連携ですよね。これについては課題があるということは申し上げておかなければいけないと思いますので、是非次回には対策をしてくださるようお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 特によろしいですか。ありがとうございました。

 次は、1-5でよろしいでしょうか。これはS評価ということですが。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 治療就労両立支援センター事業についてです。23ページ以降がこれに該当しますが、まず24ページを先に御覧いただきたく存じます。治療と仕事の両立を取り巻く最近の社会状況は、特にこの2年間で、国の制度・政策が大きく動いていることは、皆さんもお感じになられているものと存じます。こうした中での事業内容ですが、左下に示しますように、両立支援コーディネーターを養成し、そのコーディネーターを中心とした支援チームにより、職場復帰や両立支援の事例を収集すること、そして、その集積事例によりマニュアルを作成し、他の医療機関へ普及していくことです。右側の図で示しております、患者さんを中心とした医療機関と企業とを橋渡しするコーディネーターを中心とした支援スタイル。これが、当機構が構築したオリジナルのモデルになります。これが24ページの右の図です。

 25ページを御覧ください。研修会等についてです。平成293月に政府が決定した働き方改革実行計画において、我々のコーディネーターのシステムを政府が取り入れましたので、このコーディネーターを2020年までに2,000人養成することを政府が決めました。この政府方針を実行するため、我々はこの研修を、これまでは労災病院の職員だけに限定していましたが、平成29年度から一般の医療機関や企業などの担当者にも拡大して開催して行いました。そして、平成29年度は年間を通し、合計525名の受講。また、これは前年度比1,117%増という驚異的な数字となりましたが、更に受講者アンケートでは有用度87.7%と高い評価を得ています。かつ、この基礎研修を修了した対象者に応用研修を開催しまして、この応用研修においては有用度97.8%と高い評価を得ました。

 25ページの右側を御覧ください。当機構はこれまでの人材育成を生かした両立支援コーディネーターの役割や養成方法について、更なる検討を行うため委員会を設置しました。その取りまとめ結果は厚労省へ提言しましたが、その内容は国のカリキュラムとして反映され、研修の実施主体は「労働者健康安全機構が全国で行う」と明記されるに至りました。すなわち養成研修を実施することで、日本国内に広く普及・発展させることが、当機構の重要なミッションであることが、国から明言されるに至ったと認識しております。

 26ページを御覧ください。左側の支援事例の収集です。この件数はアウトプット指標となっていますが、目標値及び前年値を大幅に上回る680件、目標は500件、前年度は532件です。その事例収集を行いました。目標値に対して達成度136%となっています。

 下の矢印箇所、こちらもアウトプット指標の1つですが、支援が終了した患者に対してのアンケートを実施し、97.6%から有用であったとの評価を得ておりますので、目標値に対し達成度122%となっています。

 続いて、右側の医療機関向けマニュアルの普及ですが、昨年3月に完成し発刊しましたが、現在これを様々な機関を通じ配布及び広く普及したところ、当機構のダウンロード件数だけでも6,428件のダウンロードを得ています。下段を御覧ください。支援方法は、医療機関との連携について悩む企業や担当者も少なくありませんので、産保センターと連携して、労災病院の患者のみならず事業者や産業保健スタッフからの相談に応じるため、両立支援相談窓口を全国の労災病院に順次開設しているほか、労災病院以外の医療機関にも、産保センターで委嘱した両立支援促進員を派遣し、当機構で作り上げたコーディネーターを中心とする両立支援の普及を図っているところです。

 23ページに戻ってください。下段に記載しましたとおり、従来からのアウトプット指標である罹患者の有用度に加え、平成29年度に新たな達成目標として支援事例件数を自ら設定し、質と量の観点から業務を遂行し、いずれも120%を超えた達成度を得ているのみならず、両立支援コーディネーターの一般オープン化や、カリキュラムの国への提言といった創意工夫により、量的・質的の両面で顕著な成果を上げています。

 さらには本年度の診療報酬改定で、両立支援コーディネーターの存在を前提とし、療養・就労両立支援指導料が新設されたこと。医学教育モデル・コア・カリキュラムの改定で両立支援が盛り込まれたこと。また、これらは当方の取組が社会全体の関心の高まりを牽引し、目標策定時に想定した以上の政策実現に大きく寄与したと考え、自己評価をSとしています。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございました。では、御意見、御質問等をお願いします。

 

○志藤構成員

 すみません、質問です。私は今日、国立がんセンターに用事があって、待合室で1時間ほどいたのですが、そこに貼ってあったポスターで、「がんと診断されても、退職などを考えるのは早まらないでください」というポスターがあって、それで60何パーセントだか70何パーセントの方が、そのままの職場で働き続けていますというポスターが非常に目立ったのです。

 それで、がんセンターだと病気に対することがいろいろあるのは分かったのですが、正直、それを見たときに、今はこういうところにきちんと目配りをした、患者さんにとってある意味、一番不安な部分を、ここがこういう形で、御相談はここで受け付けますと窓口に書いてあったのですが、これのことですか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 がんセンターはもともとがんだけですが、我々はがん、糖尿病、脳卒中、いろいろな疾患をやっていますが、がんセンターは我々ともコラボしておりまして、がんセンターの方々も、この両立支援コーディネーター研修を受けていらっしゃいますので、そのことです。ですから、がんと診断された時点で、4割が辞めてしまう。逆に言えば4割が辞めていますよということが、我々のデータと合致するところです。

 

○志藤構成員

 よく分かりました。見たばかりのものだったので、このことかなと思って、そういう意味で言ったら、非常にいい場所に貼ってあって、本当に診断に来て、そういう診断が出た方にとっての、働いていらっしゃる方にとってはある意味、一番心細い部分を、こういう形でサポートしているんだなというのは、私、すごく強く思いましたので、あれは素晴らしい取組だなと思いました。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。全国のがんの拠点病院には、少なくともこういうものは、我々のシステムは広く普及しているものと思っています。

 

○志藤構成員

 分かりました、ありがとうございました。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。

 

○土井構成員

 中間目標で挙げられているアウトプット指標の関係など、ちょっと質問させてください。アウトプット指標の所で、資料1-2121ページを見ると、罹患者の有用度ということに関して言うと、94.7%、97.8%、97.6%ということで、27年度から29年度はそんなに大きく変化していないなという感じで、それ以外で言うと、29年度に新しく設定された500件という目標に対して680件、これは確かに多いのですが、新しく設定した目標がよく出来ているからというのと、あと、先ほど説明をされたコーディネーターの受講対象者に関して、これは今の121ページには挙がっていないのですが、それがものすごく多かった。目標の10倍以上だったというお話なのですが、だからSなのだと言われると、それは経年から見て、そんなにすごく変わったのかというところが、そんなに簡単に理解できないのです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 おっしゃるとおり、それだけ見ていただくと、もちろんSは、この数値的目標は当然全部が120%以上やっているということで、今おっしゃってくださいましたように、121ページの有用度では94.7%、97.8%、97.6%が有用と言っているので、これは目標は80%で、達成度は122%に上がっています。

 かつ、おっしゃってくださった事例収集も多くできた。かつ、政策として我々の両立支援コーディネーターというものが、国の政策になった。かつ、国が平成32年までに2,000人を養成しろということですが、我々は今年だけで既に1,500人から1,600人は養成できて、来年には軽く達成できるだろうというペースでやっているということ。そして、先ほどの診療報酬改定にもつながった。そして、この両立支援の普及が、既に全国の拠点病院に両立支援コーディネーターを配置しています。我々が今年、約1,000人を育てていますので。だからそこで今おっしゃってくださったように、全国の拠点病院には、もう両立支援というのは、少なくともがんの分野においては、普及できているということは、これは目標値以上に国の施策及び国民への大きな寄与をしたというところでSにしています。

 

○今村主査

 どうぞ。

 

○戸田構成員

 御説明、ありがとうございました。私はこの項目をSにするのは妥当だと考えていまして、やはり120%の数値目標を超えているということ。それに加えて、定性的にも顕著な成果が見られると言ってもいいのではないかと考えています。

 それを踏まえた上で1つ質問ですが、政府が両立支援コーディネーターを2020年度までに2,000人養成するという目標を掲げていますが、平成29年度でコーディネーターの受講対象者というのが525名ということで、まだもう少し2,000名という目標に。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 平成29年度はそうですね。オープン化、初めての年です。

 

○戸田構成員

 平成29年度が525名ですので、単純にその方が全てコーディネーターになられるとしても、約1,500名ぐらい足りないというところも。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 いえ、ですから今年1,000名の予定で、既に600名養成しています。今年は8回ぐらい予定していますので、軽く1,000名はいく予定です。あと2年ありますから1,000名、1,000名で、我々の目標としては平成32年までに3,000名から4,000名は養成する予定です。

 

○戸田構成員

 では、2,000名の目標は、もう超える見込みは立てているという理解ですね。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 はい、軽くクリアできます。

 

○戸田構成員

 分かりました、ありがとうございます。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 あと、全国の病院の機能を評価する病院機能評価機構というのがあります。これまで病院評価機構は、どういうことをやっていれば病院機能というのはOKかと言われたのですが、その病院を評価する項目の1つに、両立支援をしているかどうかということが、今年から加えられました。それは先ほど申し上げたように、医者が知って初めてこれができるので、今年から医学生の教育にしろということは、文科省からも両立支援というのをアプローチ。これも我々の社会貢献の1つと思っています。

 

○戸田構成員

 そのように厚生労働省のみならず、いろいろな行政機関との連携をきちんとされているところは、やはり重要なポイントかなと思いますので、いろいろとコメントをありがとうございました。

 

○今村主査

 ありがとうございます。余り重複はしませんが、正に23ページの一番下の所ですね。自主的な取組と創意工夫によって、顕著な成果を上げたということと、社会全体の両立支援への関心の高まりを牽引、目標策定時に想定した以上の政策実現に大きく寄与というのは、これは非常によく分かります。ずっと前から治療と就労の両立ということで、機構が努力をしておられて、シンポジウムやキャンペーンなどをやっておられて、それがここに来て実を結んだということで、正に機構の活動がここに来て評価されてきて、社会的に影響力を与えたということではないかと思います。

 その上で、確かにこれはSにするに足るというのは、120%以上であるということと、プラス非常に顕著な質的、定性的な貢献をしたということですから、正にそれに該当するのではないかと思うのですが、その上で1つお伺いしたいのは、昨年まで47名の講座に対して、525名の講座をどうやって実施できたかと。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 おっしゃるとおりで、講師チームというものを、これは朝から晩まで、いろいろな科目をやるのですが、これまで講師チームというのは1つしかなかったのですが、それは労災病院の職員だけに向けたので、50名、60名だった。それをオープン化すると、実際、今は150名の枠を開けると、1分か2分で閉まるぐらい人気があります。ですから労災病院の中で、関係者の講師のチームを複数作って、今までは東京だけだったのが、東京、福岡、名古屋、大阪で行う。さらに今後、今年度の秋以降には地方で行うような、講師チームをたくさん作りました。

 

○今村主査

 ストレートな質問ですが、講座の質はどうやって維持されたのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 我々はもともと講師チーム中心だったのですが、それがまずは我々と一緒にやって見ていただく。そして、既に労災病院の両立支援で活躍している人、産保センターで活躍している人を引っ張ってきて、それを見ていただいて、そして我々と一緒にもう1回やってということで、繰り返して講師チームの質を担保しています。

 

○今村主査

 分かりました。既にポテンシャルのある人、意欲のある人をピックアップして、迅速にチームを編成したということですね。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 おっしゃるとおりです。

 

○今村主査

 これは私も前から申し上げていて、産業医やメディカルソーシャルワーカーなど、いろいろな人を戦力化することが治療と就労の両立というのは必要だということで、更にオープン化するという努力は、非常に高く評価したいと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 よろしいですか。

 

○三宅構成員

 御説明、どうもありがとうございました。私はS評価は妥当だと認識しているので、先生方のコメントと同様なのですが、1つお願い事としては、やはり受講生がどんどん増えていくとなると、今度は講師陣のほう、ティーチングスタッフのほうがレベルをより上げていかないといけない、数も増やさなければいけないということで、忙しい中でどんどん別の業務も増えてきてしまうということに対して、何か今後の取組があれば伺いたいです。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 幸いほとんど全部の労災病院には両立支援部といって、両立支援を専門にしている部署があります。そこのドクターや看護師、両立支援コーディネーターが各労災病院におります。その労災病院は全国に点々とありますから、そこには既にやっている、両立支援の経験を積んでいる医師、MSW、看護師がいるということ。それに加えて、各都道府県の産業保健総合支援センターに両立支援促進員がいます。この両立支援促進員は産業保健側のことをよく分かっていますし、今申し上げた労災病院の医師や両立支援コーディネーターは、そちらの医療側のことが分かっているので、それらの方々に、先ほど申し上げた我々の講習を見ていただいて一緒にやるということで、今年は全国で7箇所の新たな講師チームを作るのは、そのような方法で労災病院のスタッフの力を生かそうと思っています。

 

○三宅構成員

 そうすると、例えば最初の基礎研修と、その次にアドバンスの応用研修というのがある。その応用研修を更に超えて、今度は逆に教える側に回るということも。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 あり得ると思います。

 

○三宅構成員

 そういうスパイラルで回っていくということですね。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 はい。

 

○三宅構成員

 分かりました、ありがとうございます。

 

○今村主査

 よろしいですか。それでは、今年度の評価のうちで、今回説明がなかった評価項目について、御意見がありましたらお願いします。

 

○宮崎構成員

 資料1-137ページになりますが、「財務内容の改善に関する事項」と掲げられていまして、本年度の評価が平成28年度から継続してB評価ということで、目標達成という評価になっているのですが、その37ページの内容を見ますと、代行返上等の退職給付債務の特殊要因の影響を除くと、21億円黒字、改善という書きぶりになっていまして、冷静によく見ますと、平成28年度は代行返上の特殊要因を加味した場合にプラス1,100億円になって、プラス74億円になったからB評価となっていまして、昨年は代行返上の影響を加味して目標達成、財務改善という評価をしておきながら、本年度はその影響を除いて改善したと言っているのですが、実際に出ている数字自体はマイナスになっておりますので、評価の継続性を勘案すると、本年度も損益としては赤字、悪化しておりますので、ここはBではなく、平成27年度以前のCと同様の評価とすべきではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

 

○労働者健康安全機構総務部長

 私からお答えします。今、御指摘がありましたが、過去の評価との継続性ということで申し上げますと、過去は繰越欠損金が存在していることからCという評価を得ていまして、平成28年度におきまして、繰越欠損金が解消している状態を評価いただいてBというように、私どもは理解しています。平成29年度におきましても、繰越欠損金が解消している状態は継続しているという意味から、私ども、基本的にはBという評価をしているということです。その意味で評価について、基本的に継続性を維持していると理解しています。

 

○宮崎構成員

 中期目標の内容が、その繰越欠損金を解消することという目標が、達成度の測定なのか、そのほかの取組を含めた改善なのか、ということの解釈なのかなと思ったのですが、その他の点は特に目標に入っていないということでよろしいのでしょうか。

 

○労働者健康安全機構総務部長

 評価の継続性という意味で申し上げたわけですが、その他の取組をもちろん行いながら、厳しい経営環境の中でもということを例年御説明申し上げておりますが、一番大きなところでは、繰越欠損金の問題かなという意味で申し上げたところです。

 

○宮崎構成員

 見方はいろいろあると思うのですが、内容として本年度は、損益としては悪化していますので、個人的に評価はCが適切ではないかなと思っています。

 

○今村主査

 そのほかには、何か御質問はありますか。よろしいですか。今の項目に関しては、35ページの「主な中期目標」の中に、「病院の運営体制の見直し等を図る」ということで、「繰越欠損金の解消計画を策定するに当たっては」ということは書いてありますが、経営についての赤字、黒字の指摘は、読む限り多分なかったと思います。その辺を判断してのB評価ということかと思いますが、その辺は評価担当で御判断いただければと思います。よろしくお願いします。

 それでは、次は中期目標期間の見込評価についてですが、そのまま入ってもよろしいでしょうか。それとも、少し休憩をしたほうがよろしいでしょうか。

 

○政策評価官

 続けていただいて結構です。

 

○今村主査

 分かりました。それでは、重複する内容が多いので、できるだけ工夫していきたいと思いますが、これは独立して、「1-1-1、統合による効果を最大限に発揮するための研究の推進」ということについて、法人から評価の要約の記載内容で、年度評価と異なる部分のみ、ポイントを絞って簡潔な御説明をお願いします。よろしくお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 それでは、資料2-12ページ目から御説明をいたします。この項目は、労働者健康安全機構として発足した平成28年度からの項目です。平成28年度については、別法人と活動していた労災病院と安衛研のコラボレーションによる研究の立ち上げに向けて、お互いの研究内容の相互理解を図りつつ、共同して出来る5分野の重点研究を選定して、具体的な工程表を作成、公表するところまで漕ぎ着けたところです。所属学会も異なる等々で、異なった組織が一体となって行う、チャレンジングな研究の立案や工程表の作成を短期間で行ったということで、平成28年自体A評価を頂いております。平成29年度は、先ほど申し上げましたとおり、更に高いレベルでの統合効果を実現するための試みも実施してきたということですので、見込評価の自己評価もA評価としております。御説明は以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。今の御説明に関して、御質問、御意見等ございましたらお願いします。

 

○三宅構成員

 質問ではないのですが、質問なのです。タイトルとして、「相乗効果を最大限に」と言うと、かなり意欲的な表現になっているわけです。今まで個別にやられていた研究とか臨床というのを、シナジーを目指して一緒にいろいろ研究会から始めていくというのは新しい取組で、これは評価できるところだと思うのですが、ある意味で言えば、当然やっていなければいけなかったはずのことだと思うのです、以前に。それは、組織というものはいろいろあると思うのです。学会であるとかその他、いろいろ個人レベルでも同じような研究、あるいは同じような狙い所、ターゲットを持っている人たちが集まるというのは本来あって然るべきだったので、今度は組織的にそういうことがなされてきたということでいいのですが、1つ、先ほどの評価の所で、質問というわけではないのですが、本当に融合ができているのかと。つまり、情報の受渡しをしているだけであってはならないし、それが、ある所で並列をしていたり混合しているだけではなくて、本当に融合するフュージョンになるかというところの見通しが何かあれば伺いたいのです。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 それぞれの研究主体で共同で研究班会議などをやって、お互いの研究でどのような進捗をしてどのような知見が得られたかということを共有して、自分の研究にいかすという動きをしていると承知しております。これまでと違って、同じ組織になったということで、そういう意思疎通がしやすくなりましたので、今後、お互いに顔が見えるようになって、このような交流というのは一層進んでいく方向に持っていけるものと考えています。

 

○三宅構成員

 そうですね、お答えは、多分予想したとおりのお答えなのですが、やはり、本当の意味で、新しいものを融合して作るというのは、これまでのものを単に延長している、深めるだけではなくて、新しい分野を作っていくことが必要なので、そこに対する今後の取組を是非お願いしたいと思います。

 

○今村主査

 よろしいですか。はい、どうぞ。

 

○土井構成員

 今の御質問は、最大限に発揮するために融合領域を切り開いてほしいというお話だったと思いますが、一方で、最大限に発揮するということは、お互い異分野から見た視点で、それぞれの既存の分野でより良い成果を上げていくのも、もう1つの面として期待されていると思います。そういう点で、研究成果として今までよりは、例えば、サイテーションインデックスがこのように上がったとか、そういうような、全ての分野でということは必ずしもなく、ここの分野で、この融合によってこういうところの成果があったのだみたいな、もしそういう事例があれば、論文の数とかそういうのではなく、何て言うのですか、尖っているところを教えていただけると有り難いと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。実際、統合されてから、私も医師、研究者ですので申し上げますと、例えばつい最近では、安衛研等のインパクトファクターで『Industrial Health』は1点ちょいなのですが、つい最近では、『ジャーナル・オブ・トキシコロジカル・サイエンス』、インパクトファクター5点、6点のものには掲載されるようになってきたという。おっしゃるとおり、安衛研だけでもそうです。そして、一昨年では、いわゆる脊椎センター、せき損が両方のコラボの重点研究の1つなのですが、せき損では『サイエンス』という、いわゆる臨床雑誌があるのです。インパクトファクターは16点です。それに昨年掲載されております。それほどまあまあ、まあまあですが、まだまだ私に言わせると、できたらば本当の『サイエンス』『ネーチャー』『セル』に載せたいのですが、それを期待してトランスレーショーナルリサーチ、つまり、基礎と臨床を一緒に合体した論文になるとそこまでいけるのではないかということで、おっしゃってくださるように、確実にインパクトファクターは上がってきています。

 

○戸田構成員

 御説明ありがとうございました。この分野は、本当に、平成28年度で統合して以来、やはり重点的な項目であると認識していますし、設置法の改正のときにも附帯決議に、シナジー効果を発揮させるというところをケアするようにという項目があったかと思うのです。そういう意味でも、機構としては、非常に強くシナジー効果の発揮というところを目指して取り組まれていることはいろいろな説明で理解しているのですが、逆に、なかなか異分野の方々が一緒に研究するとか、やはり共同研究そのものも、一般論としてですが、かなり難しい面があると。例えば、会話がかみ合わないとか、そこまでひどい話はないかもしれないですが、なかなか統合していると、当初はかなりいろいろと苦労された点とかもあると思うのですが、そういった苦労された点は、今でも続いている側面はあるのかというところと、あとは、実際に、そういうシナジー効果が発揮できるように、今でも工夫されている点等があれば教えていただければと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 研究所と労災病院が地理的に離れており、なかなか顔を合わせて議論することが難しいということもありますので、距離を縮めていくのには、まだ時間を要すると思うのですが、こういった研究をきっかけにして、少しずつ距離は縮まりつつあると考えております。先ほど、調査・研究発表会のお話などもありましたが、いろいろな機会を通じて、そういう相互理解というのは、今後も一層深めていかなければならないと思いますし、その中からまた新しい研究の芽というのも出てくるものと考えています。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 追加させていただきます。実際に、もっと深い人的交流もしております。例えば、うちのメインのアスベスト研究ですが、これまで、おっしゃるように安衛研と労災病院とでお互いのデータを持ち寄ってディスカッションをしているのですが、今年からは、実際に労災病院の職員が2名、安衛研に出向します。出向して、そちらの研究を一緒にやっていくという人的なこともやっておりますし、同時に、安衛研の職員が、今回労災病院で、いわゆる本部の産保センターアドバイザーとなって、労災病院全体のネットワークを見て社会的研究をするということで、人の交流を現実的にようやく、おっしゃってくださったようにできるようになってきましたので、大分、非常に熟れてきたとは思っています。

 

○今村主査

 今のことについて、重複は避けますが、実は私ども、来年の3月にスクール・オブ・マネジメントのクリエーティビティというのを始めるのです、北米とヨーロッパの大学と協力して。私もこの間、カナダのスクールに行ってきたのですが、一言で申しますと、クリエーティブなプロセスを共有すると言うのですか、そういうことが、とてもいろいろな意味で新しいものを作り出す、イノベーションを起こすのにすごく重要だということは実感しております。今のように、人を移動することはもちろん大事なのですが、その先、本当にクリエーティブなプロセスをきちっと横の連携を取って、コミュニケーションをして深く入り込んでいくことがとても大切だと思いますので、是非、ただの人の移動だけではなくて、クリエーティブなプロセスでちゃんと共有していくという、これは自家薬籠中の物で釈迦に説法かもしれませんが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 いかがですか、よろしいですか。残った3つなのですが、2つずつまとめてやろうと思ってよく見たのですが、1-2は安衛研のほうで、1-3は労災病院のほうなので、別々にやったほうがいいと思いますので、すみません、1-2をまずお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(木口)

 災害調査です。14ページを御覧ください。中期目標期間中の実績です。まず、平成28年度につきましては、膀胱がん事案に係る災害調査を契機として、規制対象物質の追加とか、特殊健診項目の見直し、それから経皮吸収対策の強化といった、政省令改正につながったということでA評価を頂いております。それから、15ページに、これまで2年間の災害調査の実績などを書いています。例えば、平成28年度に兵庫県神戸市内で発生した橋梁建設工事における橋桁落下災害など、かなり大規模な労働災害に係る災害調査などにおきましては、専門家の立場から原因の究明等に当たっておりまして、報告書は災害の再発防止指導などにいかされているところです。こういったことも踏まえまして、中期目標期間中において、災害調査の結果が法令改正等に活用され、将来的な職業性疾病発生の防止や災害防止に大きく寄与したということで、中期目標見込期間中の自己評価もAとしております。以上です。

 

○今村主査

 どうぞ、御意見、御質問等がありましたらお願いします。これは大分、先ほど年度評価で議論をいたしましたのでよろしいかと思いますが、特に何かあればお願いします。よろしいでしょうか。

 それでは次、1-3、これは新しい項目です。よろしくお願いします。

 

○労働者健康安全機構総務部長

 私から、1-3、労災病院事業について御説明いたします。資料の16ページをお開きください。平成29年度の評価について御説明申し上げておりませんので、16ページ上段の中期目標の概要の部分です。こちらでは、高度・専門的な医療を提供するとともに、その質の向上を図ること。あるいは、大規模労働災害をはじめとした災害、新型インフルエンザなど公衆衛生上重大な危害が生じた場合に速やかに対応すること。地域医療計画も勘案し、病床機能区分変更や効果的な地域医療連携を行うことなどが中期目標の概要とされております。

 これに対しまして、中期目標に対する実績概要であります。指標は次ページで御説明申し上げます。ここの16ページの部分で申し上げるところとしましては、高度・専門的な医療を提供いたしますとともに、勤労者医療の中核的な役割を果たすため、「地域医療支援病院」や「地域がん診療連携拠点病院」の施設数を維持しております。また、高度医療機器についても計画的な更新を実施しております。さらには、患者が抱える問題の解決に向けて、メディカルソーシャルワーカーが様々な問題に対応しております。

 また、大規模労働災害等への対応としては、自治体等との合同訓練を毎年実施し、特に平成28年度、熊本地震が発生した際には、機構本部に災害対策本部を設置し、労災病院と連携の下、災害支援や救急患者の受入等に速やかに対応しております。また、その経験をいかしまして、病院の災害医療を担当する医師とともに、ディスカッションを行った上、マニュアルの見直し等々を行うということで対応に努めております。これは今年度の話ですが、先般の豪雨におきましても必要な対応を行っていることだけは申し上げておきたいと思います。地域の中核的な役割を果たすため、地域の医療需要事情等を考慮した上で、最適な病床機能区分を検討し体制の見直しを行っております。連携医療機関からの意見・要望を踏まえ業務改善を行うなどの取組を継続的に実施し、その結果、紹介率、逆紹介率等、各指標について素早く目標値を達成しているということです。

 17ページを御覧ください。これにつきまして説明をとお話になった点は、恐らく、目標に対して実績が100%を下回っているものが2つあるから御指定を頂いたのだと理解をしております。この8つある中で、100%を下回っているものは、3の27年度と、5の26年度の2つの分があります。1点目の症例検討会・講習会、それぞれそれ自体については100%を各年度でも超えている状況は見ていただければお分かりいただけるかと思います。

 3の症例検討会・講習会の開催回数については、これは、法人統合の時点で中期目標上の指標が変更されておりまして、それまでは参加人員の指標でありましたものが、回数の指標が全体で延べ3,700回と直されたということです。平成27年度時点の実績としては、当時の参加人員についての実績は満たしていたものであります。また、今見ていただきますと大体分かるかと思うのですが、延べ3,700回というのは、この5年間で見ますと、ほぼ達成の見込みになっているという状況です。5の患者満足度調査、これは目標各年80%以上ということで設定されておりますが、平成26年度は90.4%ということです。その際に、特に低い項目でありましたのは、職員の接遇などがそのアンケート上に出ておりました。これにつきましては、各病院の数字の積み重ねということになってきますので、病院は様々な職種の組合せによって、それを全て、結局患者さんは病院として受け止めるということから、他職種で患者サービス向上委員会というものを設けて改善策を検討するという取組をして、それとともに、全職種対象の接遇研修とか、当たり前なのかもしれませんが、外来診療待ち時間の状況の声掛け等々といった取組、あるいは、入院食の献立の見直し、分かりやすい院内表示といったことを継続的に、以後取り組んできているということでして、平成27年度以降は、見ていただきますとおり、患者満足度調査についても目標80%以上の状況を維持しているということです。以上のことから、勤労者医療の中核的役割につきましても、地域の中核的医療機関としての役割についても適切に対応していると私ども考えております。

 16ページを、もう一度念のため御覧いただければと思います。各年度ごとの評価につきましては、先ほどの資料にありましたが、中にAもありますがB以上の評価を得ております。自己評価としまして、中期目標期間に関してもBと考えているところです。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございました。今年度の評価についてはスキップしましたが、なぜスキップしたかと言うと、平均で120を超えるぐらいの非常に高い達成率を実現しているので、これは、今年度は間違いなくBであろうということでスキップしたわけです。目標の3については、旧目標であれば達成したということ。それから、5の患者満足度については、これ以降、努力をされて常に高い水準を維持されたということで、全体としてはAと承りましたが、御質問、御意見等がございましたらよろしくお願いします。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。5の患者満足度調査ですが、これは恐らく、分母、分子、何か数字を出して、多分パーセンテージを計算されているかと思うのですが、ここの項目は、第三期全体を通じて目標を達成しているかというところですので、5年間を通じて、この目標数字である80%を超えるかというところが1つの判断のしどころだと思うのですが、この分母、分子を足しても、恐らく30年度に仮に80%を超えれば、全体として5年間を合わせても80%を超えるという見込みが立っているという理解でよろしいでしょうか。

 

○労働者健康安全機構総務部長

 見込みとしては、御指摘のとおりと私ども理解をしております。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。あくまでも、今おっしゃったように見込評価ですので、まだ平成30年度が終わらないと最終評価にはならないということですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは次、1-4にいきたいと思います。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 産業保健総合支援センター事業につきまして、22ページ以降となります。中期目標期間においては、平成26年度の今期中期目標期間スタートから、産業保健総合支援センターという形で47都道府県に新たに展開を開始しました。これを拠点として、年度評価でも申し上げました取組をしております。23ページに各指標についての達成状況をまとめております。先ほどの説明でも触れさせていただきましたが、4番の産業保健総合支援センターにおける相談対応は、年々実績を上げているところであり、6番のホームページアクセス件数は、残念ながら平成29年度については目標達成には至っていませんが、全体としては、ほぼ達成と評価できるのではないかと考え、おおむね達成見込となっています。これに加えまして、治療と仕事の両立支援に係る普及のため、事業主セミナー研修、事業所訪問相談対応の実施に加え、事例集の作成、両立支援カードの配布、メディアを通じた広報を積極的に取り組んでおり、中間目標期間についても自己評価をBとしております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございます。先ほど来議論をしておりますが、一部、29年度で未達成のものもありますが、全体として、この4年間でほぼ目標を達成しているということでB評価ということですが、御意見、御質問等ございましたらよろしくお願いします。よろしいでしょうか。特になければ、では早速、次に進みたいと思います。1-5をお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 治療就労両立センター事業です。28ページ以降がこれに該当しますが、30ページで全体像を説明したいと思います。勤労者の職業生活とその過程で患う様々な病等をいかに両立させるかという課題は、第1期や第2期中期計画期間中から研究として当機構にて検討を重ねてきましたが、労働人口が減少し少子高齢化が急速に進む中、職場復帰や就労をしつつ治療を継続できるシステムの構築が急務という認識の下、平成26年度から、モデル事業化をさせ、この第3期中期目標期間を通して実施してきたのがこの事業になります。31ページを御覧ください。コーディネーターの養成については、平成27年度から内部研修期間を経て、昨年度から国内に広く普及する観点で、一般オープン化して実施していることは先ほど説明したとおりです。この間、カリキュラムは、受講者アンケートを踏まえ、適宜検討を行い、内容の見直しを図ってきました。

 32ページを御覧ください。症例収集についてです。この間、4疾病で1,731例の症例を収集しました。支援数は左上に示す棒グラフのとおりであり、年々増加してきたことが理解いただけると思います。これは、従来であれば、いわゆる就労継続を諦めていた潜在的な患者のニーズがあったことを浮き彫りにしているということです。この研修を受講し、医療機関としての両立支援のノウハウを学んだ者が増えるにつれて、これまで支援に至ることがなかった潜在的な声を拾い上げることができた結果と考えられます。もちろん、右下にありますとおり、支援件数が増加しても患者さんからのアンケート結果は継続して高い評価を得ており、質の水準も維持してきました。このように、支援を適切な治療継続につなげる際の構築を実践できたことは大きな実績と考えております。

 33ページを御覧ください。両立支援マニュアルです。事業開始後から全国労災病院で実施の上、集積した両立支援のノウハウを他の医療機関でも活用できるようにしたもので、昨年3月に完成、発刊しました。

 2829ページにお戻りください。自ら定めた数値目標を達成度120%超で継続して達成してきたことはもちろんですが、社会的にまだまだ普及が進んでいなかった治療と仕事の両立支援ということについて、当機構はそのスタイルを作り上げ、マニュアルや研修制度によって広く普及する体制を整えたことは、労災病院のみならず、幅広い地域での実践を可能にしたものとして顕著な成果と考えます。この間、社会の様々な動きがありましたが、モデル事業として始めた内容は、中期計画期間中に社会に大きな影響を与え、国が推薦する事業となりました。そして今、更に普及させる役割を担っており、正しく、当機構、独立行政法人の事業としてふさわしいものと考えまして、自己評価はSとさせていただいております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございました。通期では、26年度B27年度B28年度がS、それから平成29年度がSということで、BBSSではありますが、BBに関しても、その間、大変な努力を積み重ねてきて、指標についてもほぼ120%に近いものを達成しているということで、通期ではS評価ということの申出ですが、御意見、御質問等がございましたらお願いします。

 

○三宅構成員

 意見、質問というより応援演説というか、是非、頑張っていただきたいということです。やはり、新しいシステムを社会に導入することは非常に重要なポイントだと思います。研究の分野で、例えば基礎研究、応用研究があって、それをいかに社会に実装していくかというところが今回のシナジーの一番のポイントになると思いますので、それが実現に向かってどんどん進んでいるというのは、非常に頼もしい限りだと思います。やはり、先ほどちょっとお話しましたように、どんどん導入、設計の段階があって、今、このようなシステムを導入しつつある。これからどんどん普及に向かっていくときに、スケールが大きくなることにしたがって、新たないろいろな予期しないような、それこそリスクが、システムとしてのリスクが生まれてくる可能性があるので、そこら辺もきちんと目配りして、是非このままどんどん社会に認められて、役に立つような制度として進めてほしいと思います。どうぞ頑張ってください。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。何かありますか。どうぞ。

 

○戸田構成員

 ありがとうございます。この点は、かなり社会的にもやはり、治療と就労を両立させるというところは課題が大きいところで、機構の取組ということは、しっかりやられていらっしゃると理解していますし、やはりSという評価は、それにふさわしい取組をされているという理解はしております。ここまでの評価についてはそういう話ですので、特にコメントはないのですが、今後に向けて是非、御意見を伺いたいのです。いろいろと、例えばコーディネーターの方を2,000名以上、先ほどの話ですと3,000名、4,000名ぐらいの規模感で養成するというところ等を中心にいろいろと取組をされているわけですが、何か、社会的にもっと、そうした難病を抱えているがために離職してしまうですとか、そういった課題というのはまだまだあるようには理解しているのです。やはり、今後の取組として、そのようなはコーディネーターを増やすだとか、いろいろとされている中で、もっと治療と就労が両立できるような社会になるためには、更に何が必要だとお考えでしょうか。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 これを話し出すと1時間では止まらないのですが。まず一番大切なことは、やはりここは患者さんを取り巻く事業場と主治医側、もちろんコーディネーターはあるのですが、やはりまだ主治医側が忙しくて、両立支援に対しては両立支援コーディネーターに頼っているところがありますので、主治医教育というのを専門医機構を通じて何らかのそういう、実際にがんや脳卒中で第一線で頑張っている主治医に対して、このマインドを植え付けたいと思っております。

 もう1つは、中小の企業の問題です。嘱託であろうが産業医がいる所は、両立支援については企業で頑張れるのですが、50人未満の中小企業、日本の多くの人が働いている企業においては、やはり産業医の選任義務がありませんから、どうしてもまだ手薄になっています。そこは、我々の産業保健総合支援センター又は地域産業保健センターを介して産業保健の手を及ぼしたい、両立支援の手を及ぼしたいという意味で、着々と今、モデル事業を開始しようということを行っております。

 もう1つは、もっとも全国的な普及においては、やはりこういうモデル事業の収集にとどまらず、これで大きなデータベースを作って、どなたでもアクセスできるようなデータベースを作って、両立支援データベースで、このような難病、このような症例で、どうやったら両立支援ができるかというような好事例の収集のデータベースをより普及させたいということが今後の課題と考えております。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。ちょっとだけ付け加えさせていただきますと、確かにすばらしいことで、S評価というのは私も異存はないのですが、まだトップダウンのような印象が受けられるのです。つまり、志藤委員がおっしゃったように、病院で諦めないでくださいと言って、その患者さんがどこに行ったらいいかについては、まだアプローチの道筋がはっきり、つまり一番ボトムの人に見えないような印象がいたします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 はい。

 

○今村主査

 前から、機構さんに私から指摘したのは、産業医レベルでとどまって、企業レベルでとどまって、それで治療と就労の両立ができるはずがないから、もう少しボトムアップで、困った人が、では機構のホームページを見てアクセスして、非常に、何て言ったらいいのでしょう、いい情報を受けて、いいアドバイスを受けるという仕組みにならないですかと質問したのですが、現状では産業医止まり、そこから更に進展しないということで。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 はい、今、考えているのでそれはありまして、未病という考えを導入しております。つまり、健康である方、いや、病気になって働いている方はおりますが、まだ病気でもないけれども健康でない。つまり、血圧でちょっとかかりつけ医のお医者さんにかかっている方でも、別に仕事をするには全然問題がない、両立支援など必要ないという未病という方がいらっしゃいます。その方に関しては、やはりその方がもしなったときということで、両立支援がありますよということを普及させたいということで、例えば、全国の医師会のクリニック、かかりつけの意味ですね、そういう両立支援カードを今、全国で各都道府県に特色のあるものを配布しております。そして、各クリニックさんで、こういう所があるから、何かあったらこういう所に相談しなさいと言って、裏を見ると産保センターやそういう相談窓口の電話番号が書いてありますし、また今後は、統一ダイヤルも書きますので、おっしゃるとおり、ボトムアップ、国民に広く周知することと、あとここに書いてあります『島耕作』のような漫画も作りまして、もっと展開して全国に、国民への周知も必要と考えて、既に取り組み始めています。

 

○今村主査

 ありがとうございました。両立支援コーディネーターを増やすというのはその第一歩かと思いますが、是非、今後、引き続きよろしくお願いします。ほかに何か御意見、御質問はございますか。どうぞ。

 

○志藤構成員

 何かと比較して申し上げるのは余り好きではないのですが、1点だけ申し上げさせていただきたいのは、先ほど、構成員の方から、クリエーティブなプロセスの共有という言葉が出て、正に、機構さんは今、クリエーティブなプロセスを共有なさっていらっしゃるから、この団体に力があると思いながらお話を伺っておりました。120%の数字がどうとか、実際に何かということではなくて、何かにチャレンジしていることが、やはりその組織に力を与えていることを今、受け止めさせていただきました。やはりどうしても、私たちは評価をするときに数字とか何かを見てしまいますが、これが必要だからそれに対してこうやって、それがうまくいきましたからAとかBとかという、そういう発想ではなくて、必要とされている、クライアントから必要とされているものではなくて、自分たちから、何かこういうことができないかという提案をしていくという発想をお持ちになっていることに、私は非常に心強いものを感じて、何て言うのでしょう、全体のこういう独立行政法人が、そういう発想でものに取り組めるような動きが共有できないかと思いながら、お話を伺っておりました。どうもありがとうございました。

 

○今村主査

 どうもありがとうございました。それは、この機構ではなくて別の機構に聞いて頂きたいという、そういう御指摘です。

 

○志藤構成員

 すみません、この間からそのことばかり。

 

○今村主査

 どうもありがとうございます。いかがでしょうか。

 

○土井構成員

 今回のことに関して、特に何か注釈をすること、コメントをすることではないのですが、今後のことを考えると、両立支援コーディネーターの方、忙しい方も増えますので、やはりフェース・ツー・フェースで相談を受けるのが大事だと思いますが、患者さん側も、なかなかその場に行けないということもあるので、ICTが進んでいますので、テレビ会議とか、そういうものを使って気軽にできるとか、何かいろいろそういう、何て言うのですか、わざわざそこに行かなくても相談が受けられて、その地域のローカルな所でいかに効率よく受診して働いてということができるかという情報が得られるという、そういう体制を是非、作っていただきたいと思います。

 あともう1点は、もちろん、厚生労働省は、先ほど文科省からの話ということもありましたが、育児をされている方であれば、やはり保育園、病院に通う間の保育園の問題とかもありますので、いわゆる、今まで就業者向けの保育施設というだけではなく、治療のためのという、両立するためのということも必要なので、是非、もう少し広い範囲でライフスタイルを考えていただいて、コーディネート、厚生労働省の中だけでなく、中小企業も含めて、いろいろ考えていただければと思います。よろしくお願いします。

 

○労働者健康安全機構理事(大西)

 ありがとうございます。

 

○今村主査

 その点はICTだけではなくて、AIIoT、機構の技術力はぬかりないと思いますので、どうぞよろしくお願いします。それでは、今の見込評価について、今回、説明がなかった項目について、何か御意見、御質問等がございましたらどうぞよろしくお願いします。よろしいですか。

 それでは続いて、法人の監事及び理事長から、年度中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえ、今後の法人の業務運営等についてコメントを頂ければと存じます。最初に法人の監事から、続いて、法人の理事長よりお願いします。

 

○労働者健康安全機構監事(黒須)

 常勤監事の黒須でございます。それでは、資料1-5にある監査報告を御覧ください。1枚ものです。この監査報告については、本年626日付けで理事長に提出しております。Ⅰには、監査の具体的な方法と内容について記載しております。例年どおりですが、全国に展開する労災病院や産業保健総合支援センターなど、平成29年度は30施設を対象として監査を実施しました。Ⅱは監査の結果についてです。次のページのⅢは、閣議決定において監事の監査が必要とされている事項について意見を記載しております。法人の業務執行の適法性、有効性、効率性等について監査してまいりましたが、特に指摘すべき事項は双方とも見受けられなかったと評価しております。

 監査報告としては以上ですが、以下、若干の意見を述べます。まず、本日、報告された中期目標や年度計画についてです。この場では、いろいろと御指摘や御議論を頂きました。通年で監査を行っている監事の立場から見れば、各項目や課題については全体的に真摯な取組がなされ、おおむね期待に応える成果を上げられてきたのではないかという印象を持っております。特に治療と就労の両立支援については本日も多数の御意見を頂いたとおり、国の方針や施策に沿い、あるいは、自らがより高い意識を持って社会に影響を及ぼしていくという、機構として果たすべき役割を発揮できた1年ではなかったかと評価するところです。今後もPDCAを着実に実施して、更に効果的な取組が展開されていくことを期待しております。

 一方、機構にとって最大の課題は労災病院の収支、経営状況です。先ほども、一部、御意見がありましたが、厚生年金制度の見直しにより平成28年度に繰越欠損金こそ解消いたしましたが、その要素を除けば、経常損益、当期損益ともに赤字を継続しており経営の厳しい病院も幾つか見受けられております。超高齢化や人口の偏在が進む中、地域によって求められる医療の質が変わりつつあることは我が労災病院だけの問題だけではないと考えております。ついては、現在も取り組まれている経営改善への判断や施策について、一層の危機感やスピード感を持ち進めていただくことが重要ではないかと思っております。機構本部と各施設の連携はもちろんですが、様々な利害関係者があると思いますので、そちらとの意見交換等を行うことも含めて、労災病院群の健全な経営を目指すとともに、その存在価値を一層高めていけるよう、引き続き御尽力されることを期待しております。以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございました。非常に的確かつ内容のある御指摘でした。それでは、法人の理事長からお願いいたします。

 

○労働者健康安全機構理事長

 では、理事長として発言させていただきます。私たち労働者健康安全機構は、既にお話が出ていますが、労働者健康福祉機構と労働安全衛生総合研究所が統合して出来上がり、平成28年に発足して3年目です。私たちの機構の大きな柱は、勤労者医療の充実、勤労者の安全の向上、産業保健の強化の3つです。全国に配置されている労災病院、労働安全衛生総合研究所、日本バイオアッセイ研究センター、産業保健総合支援センター、地域の窓口などをもって、我が国の産業と経済の礎を維持、発展させるとともに、勤労者、一人一人の人生を、キャリアパスを支えるという大きな役割を担っているという認識です。

 本日、報告した取組の中でも、治療と就労の両立支援については、政府が推進する一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革においても重要な位置付けとなっております。さらに、今のところ、がんに限定されておりますが、先ほども少しありましたが、平成30年度から診療報酬に療養・就労両立支援指導料が新設されました。併せて、相談体制の充実加算というものがあり、その施設基準となっているコーディネーターの研修を当機構が実施していくことになっております。

 したがって、従前にも増して労働者の健康安全に意を払って、病にあっても働き続けることができるように支援するということは、当機構の最重要課題です。働く人々の職業生活を医療の側面から支える。産業保健という観点もありますので、様々な局面から支えるという理念のもとでフロントランナーであるべきだということで取組を進めております。

 先ほど少し出ましたが、主治医、会社の産業医、患者に寄り添うコーディネーターのトライアングル型のサポート体制の構築の実現に向けては、両立支援のコーディネーターの養成や両立支援マニュアル等の普及などの取組を進めていく必要があります。また、事業場における両立支援の推進については、事業場における両立支援に対する理解の醸成が必要です。労災病院及び治療就労両立支援センターだけではなくて、産業保健総合支援センターや地域窓口などが、より一層密接に連携しながら課題の解決に取り組んでいきたいと考えております。一方、先ほども出ましたが、病気ではないけれど健康でもないという高齢の労働者が増えている昨今です。労働者が健康に働くために、企業における産業保健活動を高めていくことが大事であるということは当たり前です。産業保健活動がどちらかというと低調な、企業の大多数を占める中小規模の事業場における産業保健活動を高めていくことが、労働者が健康で働き続けて日本国が元気であり続けるためには必要なのだという考え方で、産業保健総合支援センター並びに地域窓口などが中心となって、小規模の事業場に対する産業保健活動の強化を図っていきたいと考えております。

 労働安全衛生総合研究所や日本バイオアッセイ研究センターとの統合については、労働安全衛生総合研究所の労働災害防止に関わる基礎応用研究と、労災病院が持つ臨床研究の一体化による重点研究として、既に5分野の研究に取り組んでいます。平成29年度には調査・研究発表会を開催して、その後に意見交換会を行い、基礎、応用研究を専門とする人たちと臨床研究を専門とする人たちが一堂に会して、お互いの研究の内容に対して専門的な立場から議論するなどしております。そして、そこに日本バイオアッセイ研究センターも積極的に加わってくれておりますので、更に、そういう形で研究を進めていきたいと考えております。ですから、先ほどから統合に伴うシナジー効果ということがたくさん出ておりますが、是非、それを充実させて研究を労働災害の防止、減少、並びに社会復帰の促進に結び付けることができるように、引き続き、有効な考えや措置を講じていきたいと思っております。

 両立支援を含む勤労者医療の実践のためには、労災病院においてー定レベルの医療が提供可能であるということが前提です。そのためには、今、監事が申しましたが、安定的な運営、経営基盤の確立が大変重要です。そのような安定的、かつ、継続的な医療を提供するためには、現在の医療を取り巻く厳しい環境、社会情勢の変化を踏まえて、個々の労災病院が果たすべき役割について検討していく必要があります。現在、各労災病院の中長期的、かつ、戦略的な機能の強化等に努めているところです。その中には、産業保健の総合支援センター、地域窓口、労災病院がシンクロするようなことも模索しているところです。当機構においては、独立行政法人として、あるいは病院事業を行っているという観点から、高いレベルの社会的要請にしっかりと応えていく必要があるので、事業を実施するためにも法令の遵守、コンプライアンスの徹底はもとより、法人としてのガバナンスの強化にしっかり取り組むということを経て、内部統制の強化に努めていきたいと思っております。

 先ほど構成員の方からも出ましたが、がっちりとコンプライアンスをやっていくという基本的な背景、コアとなる原動力は、先ほどお話した3つのミッションへの職員の理解と、それを実践するということであると私は思っております。ですから、引き続き、そのような形で頑張っていきたいと思っております。本日は、有識者の方々から大変貴重な御意見をたくさん賜りました。心より感謝申し上げたく思います。どうもありがとうございました。

 働く人々の健康を守り続ける火を消すわけにはいきませんので、その思いを更に強くして頑張りたく思います。本日頂きました先生方の貴重な御意見を十二分に参考にさせていただきます。そして、今後の運営に取り組んでいきたいと思っております。本日は、重ねて誠にありがとうございました。

 

○今村主査

 大変、詳細、かつ、前向きな業務運営の方針の御表明、ありがとうございました。それでは、ただいまのお二人の御発言内容について、御意見、御質問等をお願いいたします。よろしいでしょうか。

 今日は、もう1つあります。労働者健康安全機構の業務・組織全般の見直しについて議論していきたいと思います。まず初めに、見直し内容について法人所管課からポイントを絞って簡潔に御説明いただき、その後、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○労働基準局安全衛生部計画課長

 法人所管課として、ポイントを絞って簡潔に説明させていただきます。資料2-3です。この資料を簡潔に説明するために、少し行政の置かれている全体的な状況を簡潔に説明します。1つは、今年の3月に、第13次労働災害防止計画という私どもの分野の基本的な方向を示す政策が策定されております。これは5年間の計画です。基本的には、関係者がこれに従って取組を進めるということになりますので、機構もこの計画に基づいてやっていくということが、1つ重要であるということです。

 この計画の中で、特に機構に期待されるものが幾つかあるのですが、政策のエビデンスを作っていただくという役割が非常に大きいです。労働安全衛生の分野については、国としては直轄の研究組織を持っておりませんので、この部分のエビデンスについては機構にしっかり貢献していただくことが、引き続き必要になるということです。

 もう1つ大きな動きとして、昨年3月に、働き方改革の基本計画を政府として策定したところです。これを受けて、今年の通常国会に法案が提出され働き方改革の関連法案が629日に成立しております。その中で、私どもにとっても非常に重要な内容が含まれておりますが、1つは、労働者の健康の確保を強化するために、産業医、産業保健機能を強化する。もう1つは、仕事と治療の両立が、国の行うべき施策として初めて法律に明記されました。

 これらを踏まえて、私どもとして政策展開をしていきます。特に、政策展開を行う上で、規制を作り守らせるという部分は国の直轄の監督署が行うところですが、実質的に規制、ルール、政策を実効的に行う上で、人材をきちんと確保するということが非常に重要です。産業医、産業保健機能の強化、あるいは仕事と治療の両立の分野については、人材の育成や確保の部分については、今後も機構に相当重要な役割を担っていただかなければいけないと思っております。特に、治療と仕事の両立の部分については政策としても新しい部分なので、機構の中で更にプラクティスを積み重ねて精度を高めていただくということを行うとともに、これを世の中に広げていくということを、次の中期目標でやっていただかなければいけないということが全体的な状況です。

 その上で、このペーパーについて簡単に説明します。前置きの部分は先ほどの説明に代えさせていただきます。まず、研究事業です。研究事業については、この政策決定のエビデンスを収集する役割をしっかりやっていただくということです。2ページです。上のほうからテーマを掲げております。これは、労働災害防止計画のテーマともかなりの部分重複しております。こういう政策的なテーマについて、中長期的なテーマを社会情勢の変化等も見据えてやっていただくということです。

 その際、2にあるように、この法人が有する基礎・応用研究機能、臨床研究機能、化学物質の有害性の調査機能等について、それぞれの強みをいかして協働的な研究を推進していくということ。(2)にあるように、過労死等に関する研究は、自然科学的な側面と社会科学的な側面の両方を考慮しながらやっていかなければいけないという分野です。こういうものについては、例えば、社会科学系の他の研究機関との連携等の強化も必要になります。(3)については、客員研究員やフェローの活用ということで、多様な研究テーマに対応できるようにする。それから、政策立案に必要な1つの柱として、諸外国の研究に関する知識・経験の取り入れを推進していただくということです。

 3番にあるように、これは、正に政策の立案のエビデンスをやっていただくということからくるものですが、厚労省の政策担当部門との連携を強化しPDCAの取組を強化していくということをやっていただきます。3ページの4番です。国としてやっていくべき大きな労働災害防止計画のテーマの中から、機構として適切な研究テーマを設定していただき、その上で、行政施策への反映についても引き続き厳格に評価していくということです。5については、国際貢献、海外への発信をしっかりやっていくということです。

 Ⅱの産業保健活動の総合支援事業です。先ほど申し上げたように、21、下から4行目にあるように、この分野として事業者や産業医等の産業保健の関係者に対する研修をして、この分野の人材をしっかり作っていくということです。特に、産業医の質の向上を図るために、より現場のニーズに合った実践力がつくような研修をやっていけるような見直しを図っていくということです。

 2番の中小企業・小規模事業場の対策です。50人以上の事業場であれば、産業医が設置されるということは法律上の義務です。それよりも小規模な事業場においても、産業保健活動をしっかり支援していかなければいけないということで、産業保健のセンター、地域窓口、助成金というツールを活用しながら進めていくということです。

 45ページです。Ⅲの治療と仕事の両立支援事業です。正に治療と就労の両立支援を労災病院としてずっと取り組んでこられたということがあります。これが政策として結実したわけですが、次の5年間では、これを世の中全体に広めていかなければいけないということです。1としては、治療就労両立支援センターにおいて、今、4疾病を対象としてモデル事業をやっております。この対象分野を拡大していくということ、それから、収集した事例をデータベース化して分析して次につなげるということ、マニュアルの充実を図るということが必要であるということです。2の人材育成については、先ほどから何度も議論になっておりますように、両立支援コーディネーターをしっかり育成していくということが必要だということです。

 Ⅳの労災病院・専門センター事業です。こちらについては、引き続き、私どもとして政策的にやっていただきたいということと、地域から求められる地域医療への貢献をしっかり両立させてやっていただくということが必要だということです。6ページの1にあるように、勤労者医療の推進の部分としては、治療と就労の両立支援の部分を含めて、しっかり効果的に普及していくということが必要だということです。また、アスベストやじん肺の部分についてもしっかりやる必要があります。政策的な医療とともに地域医療への貢献ということで、地域の医療機関と連携しながらしっかりやっていくということです。3にあるように、せき損患者等の重度被災労働者に対して、しっかり支援して社会復帰の促進をしていくということです。

 第2は組織の見直しです。こちらについては、労働政策課題に対応して、より質の高い成果を生み出すために、引き続き優秀な人材の確保・育成を図りながら、スケールメリットをいかして効率的かつ効果的な組織運営を実施するとともに、ニーズの多様化等の変化に積極的に対応し得るよう、柔軟な組織運営を図っていくことです。

 第3は業務全般に関する見直しです。1つは業務運営の効率化です。世の中全体として働き方改革を進めるわけですが、機構の中においても業務の効率化等に向けた取組をやっていくということ。それから、法人の給与水準について、国家公務員、民間企業の従業員の給与等の事情を考慮しながら、国民の理解と納得を得られるような適正な水準となるようにすること。それから、法人の職員の評価方法についても、客観性の高い評価の仕組みとなるように引き続き人事給与制度の見直しを行うということです。Ⅱは内部統制の強化です。理事長のリーダシップの下でPDCAを適切にやっていくこと。Ⅲは労災病院の経営改善です。政策的な医療、地域医療への貢献をしっかりやっていくためには、病院自体の安定的な運営がしっかりなされるということが重要ですので、経営改善をしっかりやっていくということです。Ⅳについては、この法人だけではなくて、独法一般についてですが、情報セキュリティをしっかりやっていかなければいけないということです。簡単ですが、以上です。

 

○今村主査

 ありがとうございました。ただいまの発言内容について、御意見、御質問をお願いいたします。

 

○志藤構成員

 この資料を拝見して、DMATの母体が労災病院だということを今初めて知りました。今回の災害、水害に対してDMATが対応なさっておられるのだと思うのですが、今、何だか災害がやたらとあるので、もちろん、地域貢献はとても大事なことなのですけれど、DMATとしての活動が、結構負担になっている部分もあるのかと思ったりしながら、非常に素朴な質問ですがお伺いさせていただきます。

 

○労働者健康安全機構理事長

 DMATは基本的に厚生労働省の災害の部門が面倒を見ている仕組みです。基本的に厚生労働省のDMATへの取組は、DMATとして働くことができるような勉強の仕組みについては、立川の災害医療センターなどを使って研修のプロセスを提供してくれています。ただ、DMATそのものが外へ出ていくというときの足代、現地で食べたり飲んだりするもの、場合によって、けがをしたときにどのようにするのかということについては、それぞれの地域、例えば、東京のDMATは基本的に東京消防庁の傘下に入るので、今言った、出て帰ってくるまでは、東京都の職員として面倒を見てもらいます。

 神戸や札幌のような大きな消防本部も、今、東京とほぼ似たような形でやろうとしています。田舎に行くとなかなか、そうは問屋が卸さないので、基本的には病院長の業務命令で出ているという形を取っています。したがって、もしけがをすれば、病院でけがをしたというのと同じような労災の仕組みを使って面倒を見る。ですから、そういう意味では病院の持ち出しになっています。

 そこのところは、厚生労働省が、救急災害医療などの面倒を見るような所が、最初から、今言ったような、出て帰ってくるまでの身分保障やお金の問題などを体系的に構築してこなかったということがあるので、今そういうことになっています。

 

○志藤構成員

 今、なかなか大変だと思いながら。

 

○労働者健康安全機構理事長

 ですから、そういう意味では、各労災病院にDMATがいますが、労災病院同士で行ったり来たりするというときは別ですけれど、例えば、この労災病院が現地へ出るとか、例えば、この間の水害のときには中国労災病院が出ました。つまり、そういうときには、病院長の指揮下で業務命令として出て行っているということです。大きな消防本部のある所以外は、今言ったような状況にならざるを得ないということになっています。

 

○今村主査

 いかがでしょうか。

 

○三宅構成員

 質問というよりもお願いごとです。先ほど、研究の推進、あるいは研究事業に関するいろいろなお話がありました。この機構は、特に安衛研は優秀な研究者がたくさんおられます。もちろん、いろいろな行政ニーズも含めて非常にお忙しいと思います。いわゆるプロジェクト研究のような出口が定まっているものも、当然、必要だと思います。やはり、研究者個人の資質を向上させる、あるいは、独創的な発想を絶対に阻害しないような、研究者として育てていくということも、ある部分必要なのではないかと思います。

 もちろん、その中からどんどん展開して、みんなで実用的なものとか社会実装できるものに作り上げていかなければいけない。その基にあるのが、研究者個人のいろいろな素養を伸ばしていくということだとすれば、研究者の自由な発想を伸ばしていけるようなところも、是非、残しておいてほしいと思います。

 もう1つは、海外との連携です。どうしても海外の研究者を招聘したり、あるいは、海外に研究者を派遣したりということは、研究としてレベルを上げていこうということだと思います。この表現で言うと、海外の制度や運用の状況を把握するニーズが高まっているということと、そこで研究のレベルを上げるということはフェーズが合うかどうか。ですから、研究者の招聘イコール精度だとか、すぐ政策に反映させるかというのは時間的なギャップがあるかと思います。その辺りをうまくランディングさせていただきたいと思います。

 特に、これはどこの分野でもあるのですが、海外でこういう取組をしているからすぐ日本にという性急なことはあり得ないと思います。法の立て付けも違いますし、安全だとか法に関する考え方も違うと思います。ですから、その辺りは、向こうでやっているからこちらでOKということではなくて、もちろん、国際的な整合もにらみながらだと思うのですが、うまく日本の中の社会になじむような形に少しモディファイしていく必要があると思います。その辺りを含めて、是非、研究の話と海外連携を進めていただきたい。どうぞよろしくお願いします。

 

○今村主査

 よろしいでしょうか。

 

○戸田構成員

 文章の中身をいろいろ拝見させていただくと、機構がこれまで取り組んでいらっしゃることをより強化するという話と、これから新しい課題に取り組むために新しい取組をするというところが、メリハリよく書かれていて非常に良いまとめであるかと思います。特に新しい分野で申し上げると、社会科学系との研究の連携や海外との連携、4ページにある中小企業の取組です。言うのは簡単ですが、これは結構難しいと思います。なので、こういうチャレンジングな課題については、今後どのように取り組んでいくかということを、是非、御検討していただければと思います。

 あと、加えて、7ページに労災病院の経営改善について記述があります。既に労災病院の経営改善は難しいと存じ上げているところです。民間とは違いますので、民間のように不採算部門を縮小するということはなかなかできない。労災病院に求められているニーズは、減ることはないにせよ増えていくばかりですので、やはり、その中でいかに収支を健全化させていくかということは大きな課題であるかと思います。その点については、専門家でも解は見つかっていないということが現状なのかと思っています。

 そういう中で、書きぶりとして病院収入の増加に努めるという言い方よりも、むしろ、経営を悪化させない、収支を更に悪化させないみたいな言い方で、まず、いかに収支を悪化させないように組み立てていくかというフェーズが重要なのではないか。もちろん、そのための1つのツールとして収入の増加のために何らかの取組をするというところもあるかと思います。あと、経営効率化を進める中で、費用を削減していくという話もあるかと思います。私は状況に応じてどちらが最適なのか分かりませんし、もしかしたら、皆さんのほうが詳しいかと思います。そうした観点で、まず、赤字を増やさないというところから目指していくという以外、現実かつ実行可能なプランを作っていくということは難しいのではないかと思います。その辺りは、そのようにしてほしいという意見ではなくて、そういうことも踏まえて御検討をお願いしたいということで、意見として申し上げさせていただきます。以上です。

 

○土井構成員

 御説明ありがとうございました。そういう意味では、今ありましたようによくまとまっている資料だと思いました。2点ほど教えていただければと思います。1点目は、産業医です。これから産業医を増やしたいというお話ですが、実際に産業医の研修を受けるのに何回か通わないといけないのですよね。現業を持っていらっしゃるお忙しいお医者様が土日をそういうところに費やして、なおかつ、地元ではなく遠方に行ってやるというのは、増やすということに対してかなりハードルになっているのではないかと考えます。そういう点をもう少し改善していただくということも重要かと思います。

 一方、人口減少ということで、海外からの労働者、雇用者も増えています。そういう方に対応しようとすると、必ずしも日本語だけではなく、少なくともバイリンガルでないとメンタルヘルス、ストレスチェックとかそういうもので、産業医として対応するのは難しいという側面も今後出てくると思います。そういうことも考えて、長期にわたった視点で、是非、適切な人口構成に見合った産業医の育成を考えていただければと思います。

 2点目は、今も御指摘のあった病院の経営に関してです。資料1-3を見ると、結構、ベッド数によって経営が随分違っていると思います。ベッド数が少なくて赤字だからやめろというものではなく、やはり、少なくともやり続けなければいけないという、それぞれのミッションがあると思います。ですから、そういうところを明確にして、小さい所でも特徴をいかして、安定的と言うと言い過ぎになるかもしれませんが、収入を増やせないとしてもきちんとその強みをいかしていけるような経営を考えて、モチベーションを上げていただくということも重要かと考えます。

 普通、病院の経営は、ベッドの回転数ということもあり、そういうものも、収入増とは言いませんけれど、やはりベッドの回転数とか、いわゆる普通の病院経営の指標で見て判断していくということも、一方では重要かと思います。よろしくお願いいたします。

 

○今村主査

 よろしいでしょうか。時間が限られておりますので、重複は避けて少し申し上げたいのですが、機構が非常にいい雰囲気になってきているというのは、皆さん共通の理解だと思います。更に、おねだりするようになって申し訳ありませんが、大変よく出来ているのですが、1つだけ気になる所は、ボトムアップの発想というか、そういう部分をどのように実現していくかということが少し気になるところです。多分、この中に書き込まれているとは思うのですが、全体としてどのようにシステムをデザインしていくか。クリエーティビティとかイノベーションがどこからくるのかというときに、やはり、ユーザー目線と言いますか、サービスを受容する人の目線はとても大事だと思います。

 私は、ついこの間、6月末にモントリオール大学の子供と母親のための病院を見てきました。入院するとしたらどのような病室がいいか子供に絵を描かせるというのです。そうすると、必ず母親がどこかにいる病室を描く。それで、そのエビデンスに基づいて病院は待合室から何から全てのデザインを発想し直して作り直したと聞いております。何を申し上げたいかというと、そういう目線を常に忘れないで、これまでの貢献を更に充実した成果としていかしていただければと思います。多分、書き込まれていると思いますが、そういう印象を受けました。よろしくお願いいたします。

 いかがでしょうか。それでは、特になければ、以上で、労働者健康安全機構の業務・組織全般の見直しについての議論を終了いたします。法人所管課におかれましては、構成員の皆様から本日いただきました御意見等を踏まえ、見直し内容の修正等について御検討いただき、内容の最終的な確定をよろしくお願いいたします。以上で、本日の議事を終了いたします。最後に事務局からお願いします。

 

○政策評価官室長補佐

 今後の流れについてです。本日、御議論いただいた労働者健康安全機構の平成29年度業務実績評価並びに中期目標期間見込評価については、この後、本WGにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。また、業務・組織全般の見直し内容についても同様に本WGにおける御意見等を踏まえ厚生労働大臣が決定し、独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに、公表いたします。

 決定したそれぞれの内容については、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。なお、中期目標期間見込評価及び業務・組織全般の見直し内容については、参考資料2の別添7の流れのとおり、独立行政法人評価制度委員会への通知後、同委員会において点検が行われ、その点検結果に基づき出される意見を踏まえて、厚生労働省において次期中期目標案を作成することとなります。そして、その次期中期目標案については、来年1月以降、再度、独立行政法人評価制度委員会の審議に付されることが予定されているため、次期中期目標案等についても、来年1月頃に本WGの意見聴取を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。

 最後に構成員の皆様におかれましては、本日、配布した資料の送付を御希望される場合には、机上にそのままにして御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○今村主査

 長時間にわたり双方向の熱い議論を展開していただき、どうもありがとうございました。外はまだ暑いと思いますが、皆様、気を付けてお帰りいただきたいと思います。独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG(27)を終了いたします。

 

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第27回)議事録(2018年7月23日)

ページの先頭へ戻る