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2021年8月27日 第35回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

令和3年8月27日(金)10:00~12:00

 

○場所

ウェブ会議
 

○議題

1 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)
2 第109回ILO総会の報告
3 2021年年次報告について
4 未批准条約について
 第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
 第155号条約(職業上の安全及び健康)
 

○議事

1 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)
事務局から、ILO懇談会開催要項の変更について報告が行われ、労使から了承された。

2 第109回ILO総会の報告
政府側から、資料に基づき説明を行った。労使から発言はなかった。
 
3 2021年年次報告について
政府から年次報告の内容について説明を行い、その後、意見交換が行われた。

(労働者側)
第81号条約について、コロナ禍の下で連合にも全国から労働相談が寄せられており、例年の4割から5割増しとなっている。解雇、雇い止め、休業手当の相談や、外国人からの相談も増えている。引き続きの課題として、長時間労働の罰則付き規制に対する監督指導の徹底、過労死防止大綱の閣議決定を踏まえた取組の強化、労働基準監督官の更なる増員が必要。
 
(労働者側)
第87号、第98号条約の政府報告がILOからの指摘に回答できていないのは明らかであることを厳しく指摘したい。「慎重に検討する」とされていることは日本では「何もしないこと」であると指摘せざるをえない実態があり、ILOに伝えるために敢えて意見書で指摘した。政府報告中、議長集約の対応として連合と意見交換を行っているという記載があったが、ILO懇談会の場を指しているとしたら、そのような場にはなっていない。
第144号条約についても政府の回答には納得していない。第4次及び第5次男女共同参画基本計画で言及されているジェンダー平等に関する条約の批准に向けた検討について、どこで労使を交えた検討を行い、どこで政府の検討状況を知ることができるのか。ILO懇談会の場を指しているとしたら、そのような場にはなっていない。
 
(政府側)
第87号及び第98号関係のご意見について、自律的労使関係制度については多岐にわたる議論があることから、引き続き慎重に検討する必要がある。これまで自律的労使関係制度を含めた様々なテーマについて職員団体と意見交換を行っており、引き続きそのような機会やこのILO懇談会などの機会を捉えて職員団体との意思疎通に努めていくことが重要。
 
(政府側)
第144号関係について、第4次及び第5次男女共同参画基本計画にあるジェンダー関係の条約の検討については、関係省庁と連携しながら、また、政労使の代表者が参集するILO懇談会の場を活用しながら、未締結のILO条約について男女共同参画に関係の深いジェンダー関係の条約も含めた労使との意見交換、条約と国内法制の整合性についての関係省庁との検討を行ってまいりたいと考えており、ご理解いただきたい
 
(使用者側)
第81号条約について、今年過労死等防止対策大綱が3年ぶりに改定された。過重労働防止のためには、まずは労働時間把握を徹底する必要があるが、労働時間管理の正しいあり方が理解されていないと感じている。政府の尽力による労働基準監督官の増員は素直に評価するが、予算の関係で急な増員は難しく、苦労されていると思う。例えば行政手続きの電子化の促進、各種届出業務の簡素化を通じて、労働基準監督官が監督業務に注力できる環境作りも進めていただきたい。
 
(政府側)
電子申請も活用できるようにするなど、労働基準監督官が効率的に監督業務に従事出来るよう取り組んでまいりたい。
 
(労働者側)
ILO懇談会がジェンダー平等に関する条約や公務員の労働基本権に関して議論する場と説明があったが、5年間この懇談会に出席しているもののそのような場にはなっていないため、別途懇談会以外の意見交換の場を設けていただきたいと再度申し上げる。
 
(使用者側)
今の労働者側の意見は非常に重要なのでサポートする。厚労省では安全衛生の問題は安全衛生分科会で議論を行うなど、それぞれ各専門部局で取り扱うこととなっていると思料するところ、ジェンダー平等の問題は、ILO懇談会ではなく雇用環境・均等分科会で適切に議論していただくのが筋ではないか。
公務員関係の問題については、2018年総会基準適用委員会で日本の公務員案件が議論され、同時期に結社の自由委員会でも公務員案件が議論された時にも言ったことだが、行政府と立法府では役割が異なり、政府としてILOの条約勧告適用専門家委員会や総会基準適用委員会から言われていることを実施するには、立法府が動く必要がある。労働者側は、立法府を動かすためにどれだけ努力をしてきたのか説明した上で、政府の取組が足りないと指摘していただきたい。条約勧告適用専門家委員会のオブザベーション、結社の自由委員会の勧告、三者で協議する総会基準適用委員会の議長集約は、いずれも拘束力は無い。それぞれ様々な形で意見の集約がなされているが、これらを受けた対応は行政府だけに丸投げすべきではなく、当事者それぞれがしっかりと取り組むべき。
 
(労働者側)
立法府への働きかけについては、表には見えないかもしれないが連合の構成組織が立法府と意見交換を行っている。
 
4 未批准条約について
(1)第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
政府側から、いくつかの国における国家公務員の政治的行為の制限に関する調査を進めたことも含めて、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
まずは第105号条約の批准に向けた関係法令の改正に努力いただき感謝。
第111号条約については、批准に向けてどんなことでもフォローしていきたい。日EU経済連携協定の関係もあり、ヨーロッパ側としては同じ土台で取引したいという意図であると思うので第111号条約の批准は必須。諸外国の国家公務員の政治的行為の制限と比較して、日本は遅れているのか、批准できそうなのか、評価があれば伺いたい。
 
(政府側)
各国の様々な政治的行為の制約がどういった意味合いで定められているのか見極めつつ、第111号条約で例外となる政治的行為の制限についても更に研究を続けていく必要があり、引き続き慎重な検討を進めてまいりたい。
 
(連合)
前回の懇談会から一年経って同じ回答ということに驚いている。中核的条約である第111号条約の批准は非常に重要であるところ、政府としてやる気があるのであればスケジュールが出てきてもいいと思うが、昨年と同じ課題だけが提示されていると進捗を感じることができない。政府として批准する気があるのであれば、批准に向けた工程表をお示しいただきたい。
 
(政府側)
第105号条約については、ILO議連を中心として議員立法の取組が行われたが、労使それぞれの動きがあった中での成立であったと認識。
第111号条約については、その重要性は十分認識しているが、いくつかの大きな課題があるので国内法令との整合性について慎重な検討が必要であるのでご理解いただきたい。
 
(労働者側)
第105号条約も、これまで大きな課題があって批准出来ないと言われてきた中で、今回批准に向けて動き出したので、是非第111号条約も諦めずに前に進めていただきたい。
 
(2)第155号条約(職業上の安全及び健康)
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
政府としては、労働安全衛生を中核的労働基準に位置づけるというILOの議論をどのように認識し、またどこまで各国の状況を把握しているのか。来年のILO総会に向けて世界の動きが速いのではないかと考えているが、政府としてはどう対応していく予定なのか。
 
(政府側)
労働安全衛生は非常に重要であると認識。ILOにおける議論については、結社の自由や児童労働など他の基本原則との並びの中でどう位置づけられるのかや、どういう方法で基本原則に入れるのか等、他の加盟国や労使の動きも見ながら、積極的に議論に参加していきたい。第155号条約については、G7のどの国も批准していない状況もあり、これらの国ともよく意見交換していかなければいけない。
 
(労働者側)
ITUCをはじめ労働者側グループ全体では第155号条約を非常に重要と捉えており、是非労働安全衛生を中核的労働基準にしたい。コロナ禍でより労働安全衛生の重要性が増しており、その中でも特に第155号条約が重要。労働安全衛生は日本の得意分野だと考えており、是非日本がイニシアチブをとってその重要性を訴えていただきたい。発展途上国にとって日本がどのような対応をするかは非常に大きく、サプライチェーンのトップに立つ日本企業が多いという意味でも、労働安全衛生に関する問題は非常に重要。
 
(政府側)
労働者側が労働安全衛生を非常に重視されていること、日本がアジアのサプライチェーンの中核的立場に立っていることも踏まえながら、しっかり対応してまいりたい。
 
(使用者側)
まだ十分に精査されていないかもしれないが、G7で第155号条約が批准されていない理由は何か。
労働安全衛生の条約の中核的基準化と、労働安全衛生そのものを現場に根ざした形で定着させていくことは同時並行的にやっていけるものだと理解。
 
(政府側)
G7各国が批准していない理由については、詳細を確認できていないが、第155号条約は、枠組み条約とされる第187号条約に比べると技術的な面が多いために批准が難しいのではないか。
 
(使用者側)
第29号条約については、2014年の議定書も含めて批准が促進され、未批准の場合でも毎年フォローアップ報告の対象になっているが、仮に第155号条約の議定書が中核的基準になった場合も同様の扱いとなるのか。
 
(政府側)
ILO理事会資料では第155号条約と議定書がセットで記載されていることからも、第29号条約と同様、議定書も報告義務の対象になるのではないか。
 
(使用者側)
労働側には、議定書の批准国数は非常に少ないのは何故かということや、これまでの中核的労働基準の8条約と、今回の第155号条約のような労働安全衛生に関する技術的な条約とは性質が違うことを理解していただいた上で、今後議論を行ってほしい。
また、公衆衛生の問題と労働安全衛生の問題がクリアカットされていないところ、使用者が公衆衛生含めて全て責任を持って対応するのかどうかという論点があるので、IOE、ILO理事会の使用者側の立場からするともう少し丁寧に議論してほしい。
 
(使用者側)
第155号条約批准の課題点について、どれが一番問題なのかという優先順位と、それに関する法整備の進め方について教えていただきたい。
 
(政府側)
どの課題についても、それぞれの規定の趣旨を踏まえ、十分に検討していく必要。
 
(使用者側)
労働者の生命身体に関わるテーマは大変重要な労働基準であり、どのように労災防止の実を上げていくか各国が知恵を出しながらドライブをかけていくことが重要。中核的労働基準の議論と同時に、技術協力などを通じた現場レベルの活動をILOはじめ関係団体がしっかりと取り組んでいくことも重要だと改めて強調したい。ILOでは第161号条約も中核的労働基準に含める候補に挙がっているとのことだが、日本が第161号条約について批准できていない理由は何か、また批准国数が少ない理由をどう考えているのか。
 
(政府側)
まず批准国数について包括的に申し上げると、第155号条約は72カ国、同条約議定書は17カ国、第161号条約は35カ国、第187号条約は54カ国という状況。
第161号条約については、第1条の職業衛生機関は労使に対して助言する責任を負うという規定について、我が国においていかなる組織が職業衛生機関に該当し得るかにつき慎重な検討が必要。また、第10条の職業衛生業務を提供する職員が使用者、労働者及び労働者代表から十分な職務上の独立性を有するという規定について、いかなる組織が適当かということについて慎重な検討が必要。
第161号条約が諸外国で批准出来ていない理由は十分には把握していない。
 
(使用者側)
まだ第161号条約について十分検討されていないと言うことは理解したが、今年3月のILO理事会資料にも記載されている条約なので、どういう課題があるのか検討を進めて欲しい。
第161号条約でいう職業衛生機関とは、日本で言うと例えば中災防にあたるのか、安全衛生委員会も該当するのか。
 
(政府側)
それぞれ条約上の「職業衛生機関」に該当すると解釈しうるかどうか検討中である。
労働安全衛生関係は、次回の理事会の議題にもなっている重要な条約であるので、今後必要な調査を行うなどにより検討を進めてまいりたい。
 

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