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2020年6月22日 第34回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

令和2年6月22日(水)16:00~18:00

 

○場所

労働委員会会館6階612会議室
 

○議題

1 未批准条約について
  第105号条約(強制労働廃止)
  第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
 

○議事

1 未批准条約について(1)第105号条約(強制労働廃止)
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
国家公務員法第102条(政治的行為の制限)の規定では、違反した場合は3年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっているが、過去に、実際に懲役刑になった例はあるのか。
 
(政府側)
国家公務員法違反での不起訴・起訴の人員、国家公務員法違反での起訴のうち公判請求・略式命令請求された人員、地方公務員法違反での不起訴・起訴の人員、地方公務員法違反での起訴のうち公判請求・略式命令請求された人員については統計上把握しているが、各法律のどの罰条(条文)が適用されて起訴されたのか、公判請求された事件の判決で懲役刑が選択されたのかについては、統計上把握できていないため、ご質問についてはお答えできない。
 
(労働者側)
どこで把握されているのか。
 
(政府側)
内閣人事局においても、違反行為があって起訴された後の状況を把握する仕組みはない。
 
(労働者側)
行政の中立性を確保するために、懲役刑まで規定することが本当に必要なのか疑問に思っている。罰金刑や禁錮刑等、懲役刑ではない刑罰で良いのではないか。
関連で、少年法改正の議論の中で、懲役刑、禁錮刑の一体化など刑罰の在り方について検討していると聞いているが、検討の状況を教えていただきたい。
 
(政府側)
現在、法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会において、懲役及び禁錮を単一化した新たな自由刑を創設することも含めて、犯罪者処遇を充実させるための刑事法の整備の在り方等について、調査審議がなされている。今後の見通し等については、現在、同部会で調査審議中であることから、お答えが困難であることをご理解いただきたい。
 
(労働者側)
直近20年程度の間に、国家公務員や地方公務員がストライキに参加したことをもって処罰されたことはあるのか。
 
(政府側)
先ほどご説明したとおり、国家公務員法違反、地方公務員法違反という法律単位での統計はあるが、どの罰条が適用されたか等は統計上把握できていない。
 
(労働者側)
実態はよくわからないが条約に抵触する法律があるので批准が難しい、というように聞こえる。それらの法律は、戦後、労使関係が厳しかった時代に作られたもので、今の実態に合っていないように思われる。中核的労働基準を批准してくことは日本にとって重要であり、しっかりと取り組むべき。
事実としてこのような実態があるため、戦後作られた法律が現在も必要であり、したがって批准できない、という説明があればまだ納得できるが、実態も不明ということでは納得しがたい。
 
(政府側)
厚労省、外務省としては、既存の法律と条約の規定との整合性がとれているかどうかを検討してきている。第105号条約については、特に、国家公務員の政治的活動に懲役刑が科される点について、ILOには、様々な機会に、懲役刑で処罰されている実態は、統計上の数字はないが非常に少ないと思われる、との説明を試みているものの、ILOとしては、法律で規定されている以上、整合性がとれていると解するのは難しいのではないかという見解のようだ。
 
(政府側)
争議行為への参加の話に少し補足すると、共謀、あおり、そそのかしの場合に懲役刑となっており、争議行為に参加しただけでは懲役刑の対象にはならない。
 
(労働者側)
諸外国では、国家公務員の政治的行為にどのような制限が設けられているのか。
 
(政府側)
かつて関係省庁で連携し、諸外国の政治的行為の制限の状況について把握しようと試みたものの、各国で何らかの制限が設けられていることはわかったが、そもそも公務員の位置付けや制限の範囲は国によって異なっており、実態をつかみきれていないというのが現状。
 
(労働者側)
人事院のHPには、「諸外国の国家公務員制度」という資料が載っているが、この資料作成時に調べたのではないのか。
 
(政府側)
人事院のHPでは、確かに一定の国について政治的行為の制限に関する資料を公表している。ただし、これはあくまでも諸外国の公務員制度について人事院が把握できたことを一般的に紹介するために取りまとめたものであり、ILOの第105号条約、第111号条約の批准と政治的行為の制限との関係を考えていく上では、単に諸外国でこのような制限があるという事実を知るだけではなく、批准している国において、何らかの制約がある中で、どのような整理をして条約を批准しているのかといった具体的な状況も含め、条約との整合性という観点からさらに深く掘り下げた検証をする必要があると考えている。
 
(労働者側)
人事院のHPの資料には、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの制度の概要がまとめられており、イギリスでは、上級公務員、一般職員、現業職員それぞれの立場で政治的行為が禁止されていると書かれている。我々がこれまで政府に繰り返し言っていることだが、公務員全体に制限をかけるのではなく、イギリスのようにそれぞれの職種の立場や役割を踏まえた制度を検討されてはどうか。資料がないと言い切り、全く前に進んでいない状況ではないか。
昭和28年の閣議決定を理由に現状では批准できないという話はこれまでの懇談会で何度も聞いてきたが、昨年、衆参両院でILO創設100周年決議が行われたことも踏まえ、適切な対応を取っていいただきたい。
 
(政府側)
両条約とも、現時点では公務員法制が課題の中心になっており、ご指摘の諸外国の政治的行為の制限の事例は、それぞれの国の公務員制度の成り立ち、仕組み等を知っている者が調べる必要があるものと考えている。人事院と相談しながら、資料の充実化について検討を進めてまいりたい。
昭和28年の閣議決定は、条約の批准にあたって立法を要する場合は先に立法措置を講じる、ということが明文化されているもので、考え方は条約一般に共通したもの。我が国の場合、厳密に検討しすぎており、なかなか進展がない状況とも言われるが、ILO創設100周年決議も踏まえて、引き続き公務員官庁と相談しながら、努力していきたい。
 
(労働者側)
今年の第338回ILO理事会用に出された報告の中で、韓国と日本が、第105号条約に関して、法的枠組みについてのテクニカルアシスタンスをILOに求め、それが行われたとの記載がある。実際にどのようなアシスタンスを受け、どこまで前進したのか。批准するには国内法制の面で障害があることは理解しているので、日本政府に批准する気があるのかどうか確認したく、状況を教えていただきたい。
 
(政府側)
いわゆるILOが途上国に行うようなテクニカルアシスタンスとは異なり、例えば第105号条約について、ILOとの様々なやりとりの中で、実際には懲役刑は課されていないといったことを説明しており、そのような場の知見やアドバイス等を指しているものと思われる。政府としても、何かできないかと知恵は絞っているが、なかなか進展が難しい状況であることをご理解いただきたい。
 
(労働者側)
努力は理解するが、積極的な姿勢が見えているのに前進がないのは恥ずかしいことである。批准に向けて成果が見える形で引き続き努力していただきたい。
 
(使用者側)
先ほど政府の説明にあったとおり、諸外国の制度やその運用を把握するのは難しい問題と感じたが、諸外国では、日本のようにあおったり、そそのかしたりした場合に懲役刑、という法体系をとっている国はあるのか。次回以降、具体的な事例を教えていただきたい。
 
(政府側)
公務員官庁と相談しながら、進めてまいりたい。
 
○ 未批准条約について(2)第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(労働者側)
実質的な進展はないと受け止めているが、条約と国内法の関係を検討するにあたり、例えば船員法など、厚労省の所管以外の法律との関係については、各省庁とどのような調整を行っているのか。
 
(政府側)
厚労省としては、関係省庁に条約批准に向けた検討をお願いしている。ILO議連でも、国内法との間で本当に問題があるかよく精査するよう指摘されている。例えば労働基準法では、18歳に満たない者(年少者)は22時から5時まで深夜労働禁止としている一方、交代制の場合、男性(少年)はこの限りでないというような、時代との整合性がとれているのか疑問のある規定もある。国内法にそのような問題があるかどうか、関係省庁とは毎回相談しているが、なかなか全ての法令を改正するのは難しいので、批准に少しでも近づくために、本当に問題がある規定は何なのか、それは改正の必要があるのか、という観点から、外務省と相談しながら整理するのが近道だと考えている。
 
(労働者側)
社会の状況は大きく変化している。特に民間企業では、差別、人権といった第111号条約の内容は守らなければビジネスが成り立たないのが実態で、第111号条約に書いていないLGBT等の問題についても社員教育などに取り組んでいこうというのが大きな流れである。民間企業は進んでいる一方、公務員がここでも課題となっているのかという点について、改めてコメントをいただきたい。また、漸進的に取り組んでいけば良いという趣旨の条約であれば、民間企業のこうした状況を踏まえ、日本政府として前向きに進む努力を見せることが大事なのではないか。
 
(政府側)
第111号条約は、差別待遇を除去し、雇用又は職業の機会及び待遇の均等の促進を目的とする国家の方針を明らかにした上で、[1]方針の承認及び遵守を確保するに適当とされる法令を制定し、[2]方針と両立しない全ての法令の規定等を廃止することを求めている。[1]は問題ないと考えているが、[2]はILOの見解でも即時に対応する必要があると言われているところ。国内法令の規定を精査する必要があるが、性別に基づく区別については、労働基準法の年少者の交代制の規定、助産師の問題などがある。一方、国家公務員と地方公務員は、役職に関係なく政治的行為が制限されているが、ILOは職種や階級を限定して制限することは、第111号条約を批准する上で問題にはならないという見解である。日本と類似の制度を有している韓国に対するILOからの指摘を踏まえると、今の国内法制では乗り越え難いものがある。
 
(労働者側)
世界の状況が変化していることを踏まえ、国内の課題がある中でも、条約の批准に向けて前に進めていく姿勢が重要。
 
(労働者側)
これまで何度も繰り返し言われていることだと思うが、全ての法律をクリアすることが条約批准の条件ではない。国内法の問題がありながらも批准している国がある一方で、日本政府はまだ批准していないというのは理解に苦しむ。
特に、第111号条約の差別の問題については、ビジネスの世界では遵守しないことは国際団体から非難の対象となる。本国の会社だけではなく、サプライチェーン全体で第111号条約の内容を実施するのが当然というのが世界の常識で、民間企業だけではなく、政府もこれに挑みながら取引をするというのが国際的な流れであるので、ぜひ前向きに、批准に向けて確実な準備をしていただきたい。
 
(政府側)
繰り返しになるが、方針と両立しない全ての法令の規定等の廃止については、即時に対応する必要があるというのがILOの立場である。他の国では徐々に国内法を直していけば良いという姿勢で条約を批准するところもあるかと思うが、日本の場合は、憲法や昭和28年の閣議決定を踏まえると、必要な立法措置を講じない限り条約を批准できないため、ご指摘は受け止めつつ、前に進めていきたい。
 
(使用者側)
韓国の公務員制度がILOにおいて指摘を受けていることを踏まえると、方針と両立しない全ての法令の規定等を廃止するという点については、厳しい条件をクリアする必要があることを考えなければならない。
 
(労働者側)
日EU経済連携協定や「『ビジネスと人権』に関する行動計画」(NAP)においても、中核的労働基準の批准の取組がフォローされていくものと考えている。
実態としては、とにかく公務員制度が課題で条約を批准できないということなので、我々としても与野党の議員に理解してもらうべく取組を進めている。
政治的行為の制限については、日本では公務員というだけで役職や職種に関係なく一律に規制がかかっているため、イギリスのように上級の幹部だけが対象となるよう仕切ってはどうか。
今の公共サービスは、民間委託も増えて公務と民間の境が曖昧になっている中、公務員というだけで柔軟性のない制度というのは、現場で矛盾が生じるのではないかと思われる。
繰り返しになるが、昨年国会でILO創設100周年決議が採択されたことも深くご認識いただき、取組を進めていただきたい。
 
(労働者側)
最後にお願いだが、やはり改めて理事会の報告を見ても、第105号条約、第111号条約について、日本が未批准の国として指摘されているのは名誉なことではない。先進国として批准して当たり前という認識に立って前向きに検討していただきたい。ILOの世界では、アジアで中核的労働基準の批准が進まないことは問題視されており、アジアの指導的立場にある日本が批准していないのは恥ずかしいことである。条約批准に関する日本政府の真面目な態度は評価しつつも、周りのアジアの国々も日本の姿勢を注視しているので、日本はアジアの中でどのように見られているかを念頭に置き、批准に向けた姿勢を態度に表す必要がある。できない理由ではなく、政府としてどうすれば批准できるのかと前向きに考えていただき、ILOへの政府報告の中でも批准する意思を明確にしていただきたい。
以上
 

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