ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国際課が実施する検討会等> ILO懇談会> 第31回ILO懇談会

 
 

2018年8月20日 第31回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

平成30年8月20日(月)15:30~17:30

 

○場所

厚生労働省専用第13会議室(21階)

○議題

1 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)
2 第107回ILO総会の報告
3 2018年年次報告について
4 ILO総会基準適用委員会を踏まえた対応について

○議事

1 ILO懇談会開催要綱の変更について(報告)
事務局から、ILO懇談会開催要綱の変更について報告が行われ、労使から了承された。
 
2 第107回ILO総会の報告
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。

(使用者側)
 暴力とハラスメントの議題については、来年のILO総会に向けて、ILO事務局から質問票が送付され、回答をすることになる。使用者側からは、日本だけでなくの場でも、多くの国が批准し、なおかつ実行できる内容になるよう繰り返し主張してきた。国内でも、パワハラについて様々な検討が行われている状況にあるが、日本政府においては、実行可能なものとするにはどのような内容にすべきかを踏まえて、ILO事務局に対して回答するようお願いしたい。ほとんどの国が批准しない、又は批准しても実行できないような条約及び勧告を、ILO創設100周年という記念すべき年に採択することだけは避けていただきたい。
また、今回の総会では、勧告案の部分については議論ができなかったが、この部分について、来年の総会に向けた質問票に対して、前回と同じような回答をするのかどうか。また、昨年の質問票への回答の段階では、「勧告により補完される条約」を策定するということが決まっていなかったが、現時点では決定している状況にあることから、この違いを踏まえて意見を提出するのかどうか。このような点を踏まえ、日本政府には、意見を提出する段階から、前向きに取り組んでいただきたい。
(政府側)
 本年のILO総会では、日本政府としては、各国の実情に応じた柔軟な対策を促進するような基準が策定されることが重要であるとの立場から、積極的に議論に参加してきた。来年のILO総会に向けて、我が国を含め、世界各国が効果的にハラスメントの防止対策を進めていくことができる基準の内容となるよう、ILOにおける議論に引き続き積極的に参加してまいりたい。
 
3 2018年年次報告について
政府から年次報告の内容について説明が行われた。その後、労働者側、使用者側から、政府が提出する年次報告に関する意見を総括的に述べた。
 
【労働者側からの総括意見】
○ 第29号条約について
 日本政府の年次報告では、2016年度の監督指導により、重大又は悪質な労働基準関係法令違反について40件を送検したとある。一方、一般の事業主よりも実習実施者の違反率は高く、約7割にものぼるので、これについても記載するべきではないか。
検査の頻度は、技能実習制度の運用要領において、監理団体に対して1年に1回程度、実習実施機関に対しては3年に1回程度とされているが、上記違反率を鑑みれば、確実に実地検査を実施することに加え、開発途上国等への技能移転という国際貢献の制度本旨に沿った適正な運営が確実に行われるようにすべきである。
 また、技能実習生からの相談に対して、政府報告では、ベトナム語、中国語などの言語で電話やメール等による申告・相談対応を実施していると記載されている。しかし、言語によって電話相談の時間や日時が決められており、緊急に保護を必要とする場合には対応できない。実習実施機関で労災隠しがあったことで労働組合が入って交渉を始めたところ、技能実習生を強制帰国させようとしたとの相談が連合に寄せられたことがあった。強制帰国させられると、それ以上対応は出来ず、借金はそのままの状況となってしまう。したがって、技能実習生の適切な保護をはかるためには、シェルター等の確保も含めた、母国語によるワンストップで受けられる相談・支援体制が必要である。更にいえば、技能実習生に限らず、新たに在留資格を創設して外国人労働者を受け入れるのであれば、ますますその必要性は高まると思うので、対応をお願いしたい。
 
○ 第138号条約について
 「監督業務に従事する労働基準監督官の人数はむしろ増加している」と述べているが、具体的な根拠数値は示されていないため、具体的な数値を記載した方がよいのではないか。
 また、労働基準監督官の数は従来から申し上げているとおり労働者1万人あたり1人とするILO基準を大きく下回っている。労働基準法違反に厳正に対処するために、監督業務に従事する労働基準監督官はILO基準まで増員することが必要だと思う。
 
○ 第142号条約について
 若者の就労促進について、新規学卒者等への就職支援や就職氷河期の問題に対する国の施策が一定の成果を上げていることから、こうした取り組みについても本報告に記載すべきとの意見が反映され、年次報告に記載されているので、この意見は取り下げる。
 
○ 第144号条約について
 中核的労働基準である第105 号条約および第111 号条約については、依然批准の道筋すら立っていない。そのため、政府での検討状況について、懇談会への情報提供をさらに充実させることをお願いしたい。また、男女共同参画基本計画においては 第111 号条約、第175 号条約、第183 号条約及び第189 号条約について批准を検討すると記載されているが、これについても検討が進んでいない。懇談会で議論する条約は1年に2本以内に限られていることから、批准に向けた推進を図ることが困難になっている。

○  第182号条約について
 特に意見はない。
 
【使用者側の総括意見】
○今回提出された第29号、第144号条約についてコメントする。
 外国人技能実習制度について限られた人的リソースの中で、外国人技能実習の適正な実施および実習生の保護に取り組んでいることに敬意を表する。今後、技能実習生が増大することが見込まれるため、監理団体許可、技能実習計画認定や指導監督に係る予算と人員を、監理団体や実習実施者の負担とならない形で拡充することについて検討いただきたい。
第144号条約については、ILO懇談会に関し、効果的な協議を実現するため、引き続き、年2回の開催、議事録の非公開という了解を徹底していただきたい。
 
4 ILO総会基準適用委員会を踏まえた対応について
 政府から、第107回(2018年)ILO総会基準適用委員会において審議され、採択された日本案件(第87号条約案件)個別審査議長集約及び当該議長集約における要請に対する日本政府の報告案について説明が行われた。その後、労働者側及び使用者側から、政府が提出する報告案について、意見交換が行われた。
 
○(労働者側)政府が示した報告案においては、議長集約への回答が十分になされておらず残念である。2点意見させていただく。
 まず、公務員の自律的労使関係制度の措置について社会的パートナーと協議がなされていない。本来求められているのは、当事者である公務労協又は連合傘下の公務員労働組合との協議であると考えているが、このILO懇談会の場で社会的パートナーとの意見交換を行ったとの記載になっており、話がすり替えられている。政府にはしっかりと対応してほしい。
 また、議長集約においては期限付きの行動計画を示すよう求められているが、報告案でいっさい行動計画について触れられていないことについて深い懸念を表明する。この点も、政府にはしっかりと対応してほしい。
 
○(労働者側)消防職員の団結権について意見を申し上げる。消防職員委員会制度の運用改善について記載されているが、労働者が求めている消防職員への団結権の付与について記載されていないことは遺憾である。災害が増加している中で、消防体制をしっかりと構築することが喫緊の課題であると考えており、そのための労使対話を求めている。消防職員が求めているのはよいサービスを提供するための団結権である。その点は何とかできないのかと考えている。
 
○(政府側)多くの意見をいただき、意見を重く受け取った。どういった対応ができるかについては公務員官庁とも相談の上で、今後対応させていただきたい。
 
○(使用者側)連合に賛同する点としては、連合及び経団連と対話することが社会的パートナーとの意見交換になっていないのではないかという点である。
 また、私としては、専門家委員会のオブザベーションや、総会基準適用委員会の議長集約、結社の自由委員会からの勧告に対応するためには、いずれにしても法改正が必要であり、法改正に向けた環境を整備することは連合を含めた労働組合側の責任であると考えている。そもそもILOのリコメンデーション(勧告)などはそれぞれの国の状況を踏まえて作成されているわけではない。法改正に向けてどのように働きかけを行うのか、という点については、私は、自由にやっていただければよいと考えている。また、刑事施設職員について、現場から団結権を付与せよという意見が上がってきているのか。連合にはそのような話が上がっているのか。
 
○(労働者側)法改正に向けては、公務労協や連合としてもそれぞれの立場でいろいろな取り組みをしているものの、結果として実現には至っていないということであると認識している。引き続き協議しながら働きかけを進めていきたい。
 
○(政府側)刑事施設職員については、社会的パートナーに該当する団体がないと認識しており、話し合いを行うことができないと考えている。また、職員から、職員団体を設けたいという話は聞いたことがない。
 
○(使用者側)議長集約、専門家委員会のオブザベーション、総会基準適用委員会の議長集約、結社の自由委員会の勧告の全てにおいて刑事施設職員に関して記載されているが、連合は、ILOの見解に対してどのようにお考えか。
 
○(労働者側)連合としては、団結権を付与すべきという意見は当然であると考えている。小泉政権下の行政改革の際、農林水産省職員から刑事施設職員となった者に団結権が付与されず、団結権を付与してほしいとの意見があった。また、少年院の施設職員には団結権が付与されていることから、これに類似する刑事施設職員にも団結権を付与することは可能であると考えている。なお、刑事施設職員に関して社会的パートナーが不在であるという点については、公務労協あるいはその傘下の国家公務員の労働組合が窓口になれると考えている。

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国際課が実施する検討会等> ILO懇談会> 第31回ILO懇談会

ページの先頭へ戻る