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2018年4月16日 第30回ILO懇談会議事概要

大臣官房国際課

○日時

平成30年4月16日(月)15:30~17:30

 

○場所

厚生労働省共用第21会議室(17階)
 

○議題

1 第334回ILO理事会について
2 未批准条約について
  第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
  第189号条約(家事労働者)
 

○議事


1 第332回ILO理事会について
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。
 
(使用者側)
資料1の1.主な議題(1)ILO総会議題「職場における暴力とハラスメント(基準設定議題)」については、国内でも議論中であるため、使用者側としては2019年ではなく、2020年にしてほしいと要望していたところ。
日本の政労使は、それぞれ目指す方向は違うが、同じバックグラウンドをもつということで、足並みを揃えた状態で議論が進むようにお願いしたい。
ある国の突出した事例そのものが基準設定の内容とされるようなことがないか懸念している。今まで、できもしないことを決めるILO総会を何度も見てきた。冷静な議論を進められるよう、お願いをしたい。
(政府側)
ILO総会前に政労使三者での打合せを予定しているが、そこで議論を行うということか。
(使用者側)
ILO総会前のみならず、会期途中にも意見交換をしたい。
(労働者側)
政労使で方向性はかなり違うが、考え方の基礎や土台は一つにしておき、色々な方向に飛び交う議論を日本としてまとめられるような役割をしていくべきという点では共通認識を持っておきたい。
(政府側)
政府側としても、しっかりと意見交換をしたいと考えている。ご指摘のとおり、イニシアチブを取っていきたい。
 
2 未批准条約について(1)第111号条約(差別待遇(雇用及び職業))
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。

(労働者側)
2点お願いをしたい。
ILO第111号条約の批准に向けて、少なくとも厚生労働省の関係部分については、抵触する可能性のある法令が少なくなるよう検討を進めてほしい。
また、基本条約のうち未批准である第105号条約と第111号条約については、毎回のILO懇談会で議題に取り上げていただきたい。
(政府側)
1点目について、今後は他省庁とも協議の上、法令への抵触の可能性については、精査してまいりたい。
2点目については、関係省庁との協議も必要であることから、両条約を毎回議題とすることはなかなか難しいと思う。
(労働者側)
批准の検討状況に進捗が見えない。政府には決意を持って検討を行ってほしい。各国の事例を調査いただいたことには感謝するが、他の175の批准国も条約の内容をすべて完璧に実施できているとは思えない。ILO理事国である日本の立場も踏まえ、本気で取り組むべき。
(政府側)
第111号条約においては、同条約の趣旨に沿った方針を定めた上で、「その遵守に必要とされる法令を制定すること」及び「方針と両立しない全ての法令の規定を廃止すること」等について規定されているところ、「方針と両立しない全ての法令の規定を廃止すること」については、漸進的でよいこととはされていないため、その点をどこまでクリアできるかが重要であると考えている。ただし、国会等の場で何度も批准についてご指摘を受ける等といったことは、決して喜ばしいことではないので、引き続き検討に取り組んでまいりたい。
(労働者側)
第4次男女共同参画基本計画が閣議決定されており、その中に「ILO第111号条約に関する検討」についての項目が盛り込まれている。当該項目においては、「批准について世界の動向や国内諸制度を考慮しつつ、締結する際に問題となる具体的な検討に着手すること」とされているが、具体的な検討状況について示していただきたい。計画を策定しても実施状況を報告する場がないということでは問題である。
2点目は、国際的な人権意識の観点からの質問である。2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催やSDGsの推進などでも日本が世界から注目を集めることとなるなかで、ILO第111号条約を批准していない、課題が整理されていないという状況は、ダブルスタンダードだという批判は免れられないのではないか。各省庁で人権課題についてどのような枠組みで議論されているのか。
(政府側)
2点目からお答えする。国際的な人権課題については基本的には外務省が主体となって取り扱っている。当省所掌部分については外務省と協議をし、最終的には外務省がとりまとめる。
1点目については、具体的な検討が見られないとの指摘は甘んじて受けたい。
(労働者側)
2020年は日本が注目を集めると思うが、その際に国際的な人権意識が低いとの印象を与えるのであれば、日本にとってデメリットが多いと思う。したがって、少しでも前進するように努力していただきたい。
(使用者側)
条約を批准せずとも、その内容をしっかりと履行していくという方法もあるのではないか。国連からは、国別行動計画を制定し、取り組みを推進するよう言われているところ、国別行動計画は条約の内容を履行する手段の一つであると考えている。
ILO第111号条約においては、条約の趣旨に沿った方針を定めた上でその遵守に必要とされる法令を制定することとされており、実際に批准をする際には方針を示せばよいとされる。しかし、批准をした場合には、条約に違反すると考えられる論点について、定期報告やILOへの申立てへの対応が求められる。批准を検討する場合は、この点を踏まえてほしい。
(労働者側)
一般論として、諸外国からの評価は、批准しているか否かで決まるものである。内容が大切であるというご意見もごもっともであるが、対外的には批准していることが重要である。公務員による政治的見解の表明の制限に関する制裁を設ける規定が批准に際して問題となるという点は、今回追加された論点か。
(政府側)
公務員による政治的見解の表明の制限に関する規定は、従前より問題となっている事項であり今回追加した論点ではない。
批准が大切であるという労働側のご意見は承知した。我が国の場合は批准のために制度改正が必要なのであれば制度改正を行った上で批准することとなるが、引き続き検討してまいりたい。
(使用者側)
日本において、三菱樹脂事件において判示されたとおり、採用段階における使用者による採用の自由が認められていることとの整合性を考える必要があると考えている。問題となるのは、今回取り上げられた部分だけではない。条約を批准するに当たっては、その点をしっかり理解いただいた上で、制度の変更等についても検討を加えていただきたい。
 
3 未批准条約について(2)第189号条約(家事労働者)
政府側から、資料に基づき説明を行い、その後意見交換が行われた。

(使用者側)
そもそも、政府がこの条約を採択することに賛成したことについて非常に疑問に思っている。なぜ政府は、自国が批准しない条約を採択することに賛成したのか。
(政府側)
政府が条約採択に当たって投票する際は、批准できるかどうかという観点もあるが
国際労働基準として必要な内容かどうかという観点から賛否を決めるものである。本条約については国際労働基準として必要であるという理由から賛成したものである。
(使用者側)
その趣旨がわからないわけではないが、そもそも日本では家事使用人は労働基準法の適用が除外されていることを踏まえると、条約採択への賛成について、政府は思い切った態度をとったという印象。
(労働者側)
労働基準法等の適用対象外となっている家事使用人も、訪問先で具体的な指揮命令を受けて働いているという実態があるという点では雇用されている家事支援人材と変わらないのだから、家事使用人を労働基準法の適用除外とすること自体がいかがなものかと思う。
家事使用人については、ハラスメントや虐待等にさらされやすいという実態があるところ、現行の法制度の下でハラスメントや虐待等からの家事使用人の保護について実態の検証を行うことが重要ではないか。また、現在、特区での規制緩和により外国人の家事支援人材の受け入れが進んでいるが、条約の批准を見据えながら、この点についても実態把握を進めるべき。
(政府側)
特区における状況についてはこれからデータ等がそろってくるものと思われるので、それを踏まえて検討したい。
また、家政婦紹介所等に雇用されたものが請負の形態で各家庭において作業を行う場合、個々の家庭の指揮命令は受けないこととなる。
(使用者側)
特区の場合には、家事使用人が労働基準法の適用除外となることはあり得るのか。
(政府側)
特区の場合は、派遣会社に雇用され、一般家庭に派遣されるので、労働基準法が適用される。
(使用者側)
現地法人で勤務している人が、現地で家事使用人を雇用し、その家事使用人をそのまま引き連れて帰国した場合はどうなるのか。外交官以外は家事使用人の帯同が認められないのか。
(政府側)
例えば高度人材と認定された方等、外交官以外でも、諸要件を満たしていれば家事使用人の帯同が認められる余地はある。
(使用者側)
その場合の家事使用人は、労働基準法の適用対象外となるのか。
(政府側)
そのとおりである。
(労働者側)
条約の適用対象となる家事労働者の数についての調査はあるか。
(政府側)
条約適用対象となる家事使用人の人数については把握していないが、国勢調査における家政婦・家事手伝いの人数が2005年では24,000人、2015年度では11,000人と減少していると承知している。
(労働者側)
職業紹介事業報告書においては、家政婦新規求職申込者数、常用就職者数という項目があり、前年よりも増加したとされている。分析を行うためにも新たな調査をしてデータの提示を頂きたい。
(使用者側)
勤務形態も様々であると思われるため、難しいとは思うが、年間でおおよそ何人程度勤務しているといったデータはあるのか。
(政府側)
労働基準法の適用がないため、直接的なデータがない。
(労働者側)
参考までに、職業紹介事業報告書における平成27年度の家政婦(夫)にかかる常用就職件数は47,437件、新規求職申込者数が57,075件であるとされ、対前年度増減率は7%となっている。
(使用者側)
請負とそうでないものがあるので人数を把握することは一概には難しいと思う。
また、指揮命令を受けずに家事を行うことが可能かという疑問がある。つまり、指示しなければ家事使用人に何もやってもらえないということもあり得るため、実際には法律が求めている状態と異なり、請負の場合でも指揮命令がなされているのではないかと思う。
(労働者側)
政府の説明について、家事使用人が労働基準法の適用除外とされていることから条約を批准できないと考えていると受け取った。それであれば、少なくとも労働基準法の適用となる家事労働者について条約に抵触している部分があるのかについて精査をしていただきたい。
(使用者側)
労働者側の話と重複するが、条約においては雇用条件の通知について7項目が列挙されているが、これは労働基準法において明示することが義務づけられている項目と全く一致するものか。
(政府側)
労働基準法で示されたものとは必ずしも一致しないと思われる。
 
 

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