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2017年12月22日 平成29年度第五回高齢者医薬品適正使用検討会議事録

医薬・生活衛生局

○日時

平成29年12月22日(金) 14:00~16:00


○場所

航空会館 大ホール
東京都港区新橋1-18-1 航空会館 7階


○議題

(1)高齢者医薬品適正使用ガイドラインの骨子案について
(2)構成員等からの情報提供
(3)その他

○議事

○医薬安全対策課長 定刻になりましたので、ただいまから、「第5回高齢者医薬品適正使用検討会」を開会いたします。開会に当たりまして、傍聴の皆様にお知らせをいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしております注意事項をお守りいただくようにお願いいたします。また、本日の検討会は、従来と同様に公開で行うこととしております。カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただいておりますので、マスコミ関係者の皆様におかれましては、御理解と御協力のほどよろしくお願いをいたします。

 御出席の構成員、参考人の先生方におかれましては、年末の御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は、斎藤構成員、伴構成員から御欠席との御連絡を頂いております。本日は、構成員 19 名中 17 名の出席をもちまして、検討会を開催させていただきます。また本日は、参考人といたしまして、 NPO 法人高齢社会をよくする女性の会理事の石田路子先生、並びに埼玉県立がんセンター緩和ケア科部長の余宮きのみ先生に御参加いただいておりますので、御紹介をさせていただきます。

 それでは、これ以降は議事に入ります。座長の印南先生、よろしくお願いいたします。なお、カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○印南座長 それでは議事を進めてまいります。はじめに、事務局から資料の確認をお願いします。

○課長補佐 事務局より配布資料の確認をいたします。議事次第と配布資料一覧、座席表、出席者名簿、開催要綱、構成員名簿となります。資料1-1「WGにおけるガイドライン作成方針及びWG構成員名簿」、資料1-2「高齢者の医薬品適正使用ガイドライン(総論編)骨子案」、資料2「高齢者の服薬に関する現状と意識」、資料3「がん緩和ケアにおける高齢者の薬剤使用 課題と提案」、資料4「プレアボイド報告を中心とした高齢者薬物療法適正化の取り組み」、資料5「プレゼンテーションの論点等について」、参考資料「高齢者の医薬品適正使用に関する検討課題と今後の進め方について」、本日の資料は以上になります。不足等がございましたらお申し付けください。

○印南座長 それでは、議事次第に沿って議事を進めてまいります。本検討会では、本年8月に「中間取りまとめ」をまとめ、この中で「高齢者の内服薬の多剤服用に関する適正使用ガイドライン」を作成する必要があるとし、本検討会の下に設置するワーキンググループにてガイドライン案の作成を行うこととしました。ワーキンググループでガイドラインを検討中ですが、本日は中間報告として、作成中のガイドライン案の骨子の内容について報告をお願いしたいと思います。それではまず事務局から、ワーキンググループにおけるガイドライン作成の作業計画と作業状況について説明をお願いします。

○課長補佐 資料1-1を御覧ください。「WGにおけるガイドライン作成方針及びWG構成員名簿」です。WGにおける検討事項としては、高齢者における薬物療法に関する現状分析、ガイドラインの作成の2点となっております。ガイドライン作成につきましては、新たに実施が必要な調査分析について時間と費用がかかる一方で、関連学会のガイドライン等で既に一定のコンセンサスが得られたものがあることも考慮し、本年度に包括的なガイドラインを、次年度に専門領域別若しくは領域横断的な現場別のガイドラインの二段階で作成することとしています。

 進め方につきましては、まずはガイドラインの骨子案を親検討会に報告し、御意見を頂いた後、それを踏まえて内容の検討に入るといった形で進めていく予定としております。具体的なスケジュールについては、資料下半分のスケジュール図を御覧ください。上の段に親検討会、下の段にWGのスケジュールを示しております。先週 12 13 日に第2回のWGが開催されました。そこで包括ガイドラインの骨子案が固まりましたので、本日はその御報告となります。本日、骨子案について本検討会にて頂いた御意見をWGにお返しして、WGでガイドラインの内容の作成を進めていただきます。さらに、次回の3月9日の本検討会には、包括ガイドライン(案)という形でWGから報告させていただく予定です。なお裏面は、WGの構成員の先生方の名簿となっております。以上です。

○印南座長 ありがとうございました。この作業計画と作業状況につきまして、御質問等ありましたらお願いします。

○松本構成員 この上から2つ目の囲った中に、二段階でガイドライン案を作成する、これはよろしいかと思うのですが、2年度目の平成 30 年度の所に「専門領域別もしくは領域横断的な病院機能別のガイドライン」となっております。病院だけの話なのか、診療所等はここには含まれないというお考えなのか、あるいは、それにしても病院機能別にガイドラインを作るというのはそもそもどういうことなのか。もともとは、患者の病態別にガイドラインを作るべきであって、病院機能とは相いれるものではないと思うのですが、この辺はどうなっているのですか。

○医薬安全対策課長 事務局からお答えをいたします。資料1-1の計画の部分で、今、御指摘いただいたように「専門領域別もしくは領域横断的な病院機能別のガイドライン」ということが書かれております。これは、9月のスタートをする段階で作った資料ということで、十分には文言がよく練れていないところがあったのではないかとは思っております。今、先生から御指摘をいただいたように、診療所ですとか老健施設を排除するということではなくて、むしろWGにおいては、そういった施設も含めて、患者の病態によって必要な見直しのタイミングですとか、そういったものがあるということで、そういうことを踏まえた現場に対応したものを2年度目に作ったらどうかという議論をさせていただいておりますので、御指摘の点については、反映された形で、またWGで御議論いただくような形になるのではないかと思っております。

○松本構成員 では、この方針は変えるという理解でよろしいのですね。

○医薬安全対策課長 この1-1につきましては、不適切な文言ということであれば、ここについてはまた見直しをさせていただくということにしたいと思います。またWGにフィードバックをさせていただきます。

○松本構成員 あればというのではなくて、あると私は言っているので、それに対する反論があるのならどうぞおっしゃってください。

○医薬安全対策課長 反論はございませんので、WGにお伝えをして、見直しをさせていただきます。

○松本構成員 よろしいですか。いやいや、そもそも文言は練れていないと、練れていない言葉、9月の段階で練れていない言葉をそのまま記したと。今日は 12 22 日です。これはその資料です。なぜ練れていない言葉がそのまま3か月たった今も出ているわけですか。

○医薬安全対策課長 「よく練れていないところがあったのではないか」というふうに申し上げておりますので、十分そこは注意をいたしまして修正をさせていただきます。

○松本構成員 修正していただけるのであれば。

○秋下座長代理 ガイドラインの主査として一言。これは適当ではないと思います。WGで議論していることも、病院限定ということは全くなく、むしろ病院と病院以外、その間にもいろいろな病期がありますし、それを受け入れる施設等の形態も様々あるということで、そういうものを含めた非常に多様な高齢者の病態を考慮して作っていく必要があるということで議論しておりますので、次回のときにこれを改めたものを、是非出させていただきたいと思います。松本先生の御指摘のとおり、ここはちょっと適切ではないと私は思います。ありがとうございました。

○印南座長 他にございますでしょうか。それでは続きまして、ガイドライン骨子案について、WGの主査をお願いしております秋下構成員から御説明をお願いしたいと思います。

○秋下座長代理 資料1-2が、今回WGで作成した骨子案になります。今、作成方針について説明していただいたとおり、今年度は包括的なガイドラインということになりますので、老年医学会をはじめとした各学会で出している既存のガイドラインの内容を参考に、より医療現場で使用しやすく、かつ分かりやすいものを作成することを念頭に骨子案を検討しました。

 「はじめに」の部分に、ガイドラインの目的、位置づけ、対象などを記載しております。この辺りは特にWGでも議論のあった部分です。目的は、高齢者の薬物療法の適正化であり、医療の質の向上他、患者の健康に資するべく患者中心の考え方を強調することとしています。ガイドラインの対象としては、医師、歯科医師、薬剤師が中心となりますが、看護師等他の医療職が参照することも想定し、対象患者の範囲については、 75 歳くらいより上に焦点を当てることにしております。

 次に「ポリファーマシーの概念」が書いてあります。何剤以上が問題となる多剤服用なのかといったことの明確な定義はなく、一律の薬剤数の削減目標を設定することを目指すよりも、安全性等の確保という観点から、適正な処方内容が重要であることを記載することとしています。

 その下の所ですが、薬剤見直しの基本的な考え方を示し、フローチャートなどで解説するとともに、高齢者総合機能評価、 comprehensive geriatric assessment CGA というものがありますが、その観点から、患者ごとに病態と生活機能・環境などを総合的に判断していくこと、そこから薬剤の種類ごとに使用と併用の留意点を整理する流れのガイドラインとすることを検討しております。つらつらと見ていただくとそういう流れになっています。

 本年度は包括的ガイドラインで、来年度は、今、正に御議論を頂いているのですが、現場の特徴とか、患者の病態や病期といったものに応じた薬剤選択を踏まえた各論のガイドラインを作成する予定としております。包括的なガイドラインでも、患者が遭遇する様々な医療現場において、患者の状態に応じた薬剤使用の適正を判断するためのガイドラインを目指しております。患者の病態・生活機能等の把握、それから処方見直しのタイミングとして、例えば急性期であるとか回復期であるとかそういった病期、あるいは、そういった現場ごとの考え方も盛り込む構成にしたいと考えております。

 更に重要な点として、8ページ目の6のところで「多職種・医療機関及び地域を超えた協働」を挙げております。医師・歯科医師と薬剤師の協働だけではなくて、多職種、特に患者のケアをされる看護師といった他職種との情報共有などの連携における原則を記載していくこととしております。以下、詳細については事務局より説明をお願いします。

○課長補佐 それでは続いて、事務局より説明いたします。資料1-2の構成です。項目ごとに四角で囲んだ部分があります。この中には、それぞれの項目に記載する内容及び方針が書かれております。なお、事前に、事務局から送付しました版から文言等を少し編集している部分がありますので、御了承いただければと思います。

 まず初めに、「ポリファーマシーの概念」の部分は、先ほどの秋下先生の御説明のとおりです。また、このガイドラインでは「副作用」という用語ではなく、薬剤との因果関係が必ずしも明らかではなくても服用後に現れる有害作用という意味で「薬物有害事象」という用語を使用することとしております。

 続いて1ページ目の下のほう、「1 多剤服用の現状」です。ここには多剤服用の実態、処方変化のイメージを記載します。複数施設で処方されている薬剤を含めた服用薬の全体像として、高齢者における処方剤数、受診医療機関数等の現状をイメージできるデータを提示するとともに、入院時、退院時等の処方変化イメージに加えて、在宅復帰、施設入所といったケア移行場面での処方変化のイメージを紹介することとしております。ここまでが導入部分となります。以降は、どのように薬剤見直しを実施していくかの本論部分となります。

 2ページ、「2 薬剤見直しの基本的な考え方及びフローチャート」です。薬剤見直しの基本的な考え方としましては、老年医学会の「薬物療法ガイドライン」にも記載がある基本的考え方を参考に、処方見直しの一般原則を記載し、薬物動態から見た対処法も考慮することなどを盛り込むこととしています。さらに、非薬物療法の重要性、専門医の立場からの考え方に加えて、国民的理解の醸成についてもこの項目で盛り込んでおります。フローチャートとしましては、老年医学会ガイドライン記載のフローチャートの他、患者の病態、生活環境、生理機能確認等の総合的な判断を踏まえたフローチャートを検討することとしております。ここで引用しております老年医学会ガイドラインの基本的考え方及びフローチャートは、骨子案の8ページの後ろ以降にその引用部分を添付しておりますので、そちらも御覧ください。

 3ページ、「3 多剤服用時に注意する有害事象と診断、処方見直しのきっかけ」です。見直しのきっかけとして、有害事象からのアプローチ、薬剤起因性老年症候群の各症状について表を用いて紹介し、薬物有害事象が出たときの対応策について記載することとしております。

 4ページ、「4 多剤服用の対策の留意事項」です。まず、(1)減薬・変更する際の具体的留意点、続いて、(2)では薬学的な観点からの留意点として、腎機能評価や薬物相互作用に関する内容を盛り込んでおります。5ページ、さらに(3)で、汎用される薬剤の留意点として、中間取りまとめで挙げられた疾患領域の他、領域横断的に使用する薬剤ごとに、薬剤選択や併用注意等の留意点を記載することとしております。6ページの下の BPSD 治療薬等、認知症関連についても取り上げているところです。7ページの(4)で、現場ごとの患者さんの状態を踏まえた薬剤選択における考え方を挙げております。特に、患者さんの移行先における継続的な管理を見据えた処方見直しの必要性について記載することとしております。この(4)の部分は、今年度の包括ガイドラインでは概略の部分を記載して、次年度に各現場に対応したガイドラインを作成していくことを想定しております。

 7ページの下のほう、「5 服薬支援」では、患者の服薬をどう支援していくかを記載することにしております。(1)服用管理能力の把握及び(2)処方の工夫と服薬支援策ではそれぞれ、服薬アドヒアランスが低下する患者・介護者の要因及びそれを把握する方法、服用管理が低下している場合の対応策について記載することとしております。

 8ページ、「6 多職種・医療機関及び地域を超えた協働」では、医師と医師との間、医師と薬剤師の連携等を、看護師も含めた他職種との連携の原則論を記載することとしております。一元的な情報の集約、チームにおける処方見直し検討、患者のフォローアップに加えて、チームにおける患者視点の反映の仕方についても盛り込む方向で記載しております。

 「7 その他」として、老年医学会のガイドラインを参考に、薬効群別・注意薬剤一覧の表を載せることを予定しております。以上です。

○印南座長 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただいたガイドラインの骨子案について、先生方の御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○松本構成員 これはお願いですが、7ページの(4)の処方の見直しのタイミングの考え方についてです。今、中央社会保険医療協議会でもこのような退院時の薬剤見直しについて、いわゆる病院薬剤師と地域の薬局薬剤師との連携をどのように考えるかという発言もあります。現実に今その辺の連携が決してうまくいっているとは思えない状況なものですから、是非、その辺を盛り込んだ文章にしていただければ大変有り難いと思っております。

 それと、8ページの6番目の、多職種・医療機関のところですが、原則論を記載するとなっておりますので、1ポツ目なのですが、一元的な情報の集約というものと、医師をコアにした処方見直し検討チームというものを、1つにして考えるのではなくて、できたら、やはり情報を集約する部門と、それから検討チームは分けたほうが分かりやすいのではないかと思うので、その辺の書きぶりを少し検討していただきたい。

 それと2ポツ目の、チームの処方医とのコミュニケーションのあり方はそのとおりなのですが、やはりそれぞれのチームにそれぞれの役割と言いますか、役職の方がおられると思いますので、それぞれチーム内での役割を踏まえた上でのコミュニケーションというのが必要だと思いますので、その辺も併せて御検討いただければと思います。以上です。

○印南座長 ただいまの御発言に関連しまして、何かございますでしょうか。

○勝又構成員 私も8ページの6番目のところです。多職種協働による処方見直しとか、減薬効果のフォローアップ等の記載が中心になっているわけですが、多職種協働で服薬管理を行っていく視点というものも追加をしていただきたいと考えております。訪問看護師が在宅に行ったときに、その患者さんが処方されているお薬を確認している状況です。特に、ジェネリック医薬品等が多くなってきて分かりにくいお薬を、一つ一つの薬を、効能とかそういったものを一つ一つ調べて、そして残薬のチェックをしてものすごく時間が掛かっている状況があります。そこで例えば、訪問看護師が SOS を出したときに薬剤師の方に来ていただいて、そのお薬の効能とか効果について助言を得るとか、それから、大量に残っている薬の整理とか、あと、残薬を踏まえて医師にそれを連絡して薬の調整をしていただくというような具体的な中身を、できましたらガイドラインの中に記載していだだけるととても有り難いと思います。以上です。

○松本構成員 よろしいですか。私の見方はちょっとニュアンスが違うのです。あくまでも、医師・歯科医師と薬剤師の協働であって、やはり多職種というのは、「多」ではなくて、「他」の他職種とは連携での協働という感じで考えておりますので、何が何でもみんなでという、もちろん、結局はチームになるとは思うのですが、やはりチームの中でのそれぞれの役割を考えた中での書きぶりにしていただければと思います。

○秋下座長代理 御指摘の点は承知しているつもりです。この点を骨子としてどのように書くかということは、かなりワーキングでも議論いたしました。まず最初に、松本先生から御指摘いただいた、例えば薬剤師でも、病院の薬剤師から地域の薬局の薬剤師へという視点は、6の中にそこを盛り込むことがかなり議論されております。それで6番を立てたということがあります。処方見直しのタイミングのところで、と言うよりも、それを情報としてやはりきちんと伝えていく、そういうところに関わりますので、あとは処方見直し検討チームなどにももちろん関わっていて、そこで担当した病院の薬剤師が、退院した後に地域の保険薬局にそういう情報を伝えていくという、そういう薬・薬連携の話です。そういったものを6番の中に入れ込みたいと思っております。

 それから、おっしゃったように、情報の集約と処方見直し検討チーム、例えば、国立長寿医療研究センターで行っているようなチームについては、考え方としては違うニュアンスはもちろんありますので、分けて考えるということは対応させていただければと思います。役割ということも十分に承知しているつもりですので、本日いただいた御意見を受けて作業はさせていただきたいと思います。

 それから、残薬とか服薬アドヒアランスという点は、減薬の効果のところの経過観察やフォローアップ、それからフィードバックの内容に、薬物有害事象やアドヒアランス等のことも含んでいると御理解いただければ有り難いと存じますが、いかがでしょうか。

○松本構成員 ということは、これは退院支援チームというか、そういう中でのこの議論というような意味合いがあるのでしょうか。

○秋下座長代理 病院の場合はそのようになるのかと思います。ただ、先ほどもお話がありましたように、ここは病院だけでもなく、在宅、それからもちろん一般の開業医での外来も入ってきますので、そこら辺で少しずつ考え方が違う部分もありますので。

○松本構成員 先生がおっしゃるのはよく理解できます。ただやはり、場面場面で関わる職種が少しずつ変わってきますので。

○秋下座長代理 そうですね。

○松本構成員 その辺が分かっているだろうと思っていても、こういう書きぶりでは、いろいろな取り方ができてしまうのはなるべくなら避ける工夫をお願いしたいと思います。

○秋下座長代理 ありがとうございます。

○松本構成員 Q&A、いわゆる通知などのQ&Aというような形でもいいのですが。

○秋下座長代理 はい。では本日の議事としてそれを残して、そこはWGできちんと反映することにさせていただければ大変有り難いと思います。

○印南座長 この部分につきまして、御意見ございますか。

○美原構成員  6 番のことで教えていただきたいのですが、「チームの処方医とのコミュニケーションのあり方」というのは、この処方医というのはチームの人なのでしょうか、それともチーム外の人を言っているのでしょうか。もしチーム外だったら処方医と検討チームのコミュニケーションの在り方になると思いますし、その辺がこの処方医というのはどういう人を指しているのかが明確でないので、教えていただければと思います。

○秋下座長代理 すみません、ここというと厳密には。

○池端構成員 私の理解では、チームというのは医師も含めたチームがあって、そこでポリファーマシーを検討するのだけれども、主治医と処方医とそのチームの考え方をすり合わせしなければいけないだろうという意見が出たので、多分そのことを書いていただいたのかなと思っています。

○美原構成員 そういう意味ですね。であるならば、恐らくは処方医とチームの言葉の順番は逆のほうが分かりやすいですね。

○池端構成員 そのほうがいいかもしれないですね、おっしゃるとおりだと思います。

○秋下座長代理 確かに。

○島田構成員 それと、処方医も決してお一人ではないと、在宅で療養していると複数の診療科の先生もいらっしゃるのではないかと思います。

○秋下座長代理 その点ですね、ありがとうございます。それでは、この文言、処方医とチームというのは確かにこのままでは分かりにくいかもしれませんので、主査としましては、順番は入れ替えさせていただければと思います。ここは最終決定機関ですので、そのような形でよろしければ、本日ここでそのようにさせていただきたいと思います。

○印南座長 この点につきましてはよろしいですか。それでは、6番以外の点について御質問や御意見等がありましたらお願いしたいと思います。

○北澤構成員 基本的なことなのですが、0番では「ポリファーマシーの概念」と書いてあって、1番以降は「多剤服用」という言葉で説明されているのですけれども、ポリファーマシーと多剤服用というのは違うような意味で書かれているのか、同じなのかがちょっと分かりにくかったので、御説明いただければ大変有り難いです。

○秋下座長代理 御指摘をありがとうございます。これは最後の段階で議論になりまして、多剤服用というとやはり数ということがどうしても想起されるのですが、ある程度多いところからいろいろな問題が生じて、更にそこに個別の要因等が加わって有害事象や大量の残薬など、いろいろな問題が生じていると。今「ポリファーマシー」といいますと薬の数を超えた概念になっていますので、0番のポリファーマシーの概念という所は非常に重要ではないか、つまり、薬が多くて害をなすものというのをポリファーマシーと捉えて書かせていただいています。1番で書くのは、実際にどれぐらい飲んでいるかとか、そういうようなことをここでは取り上げたいので、少し分かりにくいかもしれませんが、ここでは「多剤服用」という言葉をあえて分けて使わせていただいているということです。

○印南座長 他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

○池端構成員 1点確認というか、松本先生にお伺いしたいのですが、4番の処方のタイミングの考え方について、あくまでもこれは病態別であるべきだということは私も理解していますし、そのとおりだと思います。ただ、WGの中では、病態別だけれども、それぞれいろいろな所に急性期も慢性期も在宅期もいるので、その辺は病院の機能別にそれぞれ取り組み方を少しガイドラインに入れたほうがいいのではないかという意見も出たのですが、その辺はいかがでしょうか。

○松本構成員 それぞれ患者の病態で、急性期で見直さなければいけない部分、慢性期になって見直さなければいけない部分、慢性期の中でもまた見直さなければいけないことはあるかとは思うのですが、それが病院の機能別とはちょっと異なるのではないかと。例えば慢性期病棟においても、急性期の方がいる場合もあれば回復期の方がいる場合もあるわけなので、それぞれで考えるという意味では同じと言ってしまえばそうなのかもしれないのですけれども、これを考える中で病院機能別にそれぞれを考えるとなると少し意味が違ってくるのではないかと思うので、私は患者の病態別に考えていただきたいと思います。

○池端構成員 そうすると、病院と在宅と、そういうあれでは。

○松本構成員 それこそ、先ほど秋下先生が言われたように、やはりそれぞれの、在宅では在宅だけ、あるいは病院から在宅へ移る退院時の支援というのもあるでしょうし。

○池端構成員 そこは一番大きなギャップが出るところがあるので。

○松本構成員 一番それが大きいと思いますので。

○池端構成員 そこはどんどん書き込んでもいいということですよね。はい、ありがとうございます。

○印南座長 他によろしいでしょうか。

○島田構成員 この2ページの「薬剤見直しの基本的な考え方及びフローチャート」の安全な薬物療法の観点の、この四角で囲った所の3つ目の所に関連するのですが、この場合、患者の受診の状態や実際の服用の状況についてもここに書き込んでおく必要もあるのではないかと思います。それともう1か所ですが、この「嗜好」の中に「一般用医薬品やいわゆる健康食品の使用も含む」ということで一くくりになっているのですけれども、実際にこの部分を使用するときには、一般用医薬品は嗜好という範ちゅうに含まれない書き方の工夫をしていただきたいと思っております。

○秋下座長代理 その点に関しては承知いたしました。服薬状況などは生活機能のところにある程度含んではいるつもりなのですが、ご指摘いただいた意図を踏まえて、きちんと対応させていただきたいと思います。一般用医薬品等々は嗜好というところだけに掛かっているという意味でもないのですが、ここで議論が出ましたので、そこも含めて見直していきましょうという話です。

○印南座長 他によろしいでしょうか。

○北澤構成員 もう1つ質問していいですか。2ページの下のほうの「国民的理解の醸成」という所で、国民にも啓発の必要性というようなことが書いてあるのですが、このガイドライン自体は主として医療者が読むものというような説明だったので、国民的な啓発というのはどこで、どうやってするのかというのは、どこで考えればいいのでしょうか。

○秋下座長代理 それもWGでかなり議論されまして、今回出す包括的ガイドラインはあくまで医療者向けのものであるということで、今後段階的に出していくものの中に、いわゆる受療者というか国民向けのものを考えていきましょうということになっていますので、後で出るということです。

○北澤構成員 後で出てくる、分かりました。

○印南座長 他によろしいでしょうか。それでは、ここまでに構成員の先生方から頂いた御意見につきましては、WGにて再度御検討いただきたいと思います。以上で議題1を終了いたします。

 続いて、議題2に移ります。本日は、樋口構成員及び石田参考人に高齢者自身の服薬に関する理解・意識について、余宮参考人に緩和ケアとポリファーマシーについて、林構成員にプレアボイド報告を中心とした高齢者薬物療法適正化の取組について御発表をお願いしております。お三方に順に御発表いただき、その後にまとめて質疑を行いたいと思います。ただし、前回同様、発表について特段の御意見等がございましたら、各プレゼンテーションの合間に挙手をお願いいたします。

 まずは、樋口構成員及び石田参考人から「高齢者の服薬に関する現状と意識」について御説明をいただきます。発表時間は 20 分とさせていただき、失礼にならないようでしたら終了の1分前にベルを鳴らさせていただきますので、樋口構成員及び石田参考人、よろしくお願いいたします。

○樋口構成員 本日はこのようなお時間を頂戴して、ありがとうございます。私ども「高齢社会をよくする女性の会」は創立 37 年、その間、介護保険創設に関わるなど、介護、医療、高齢者の生活、特に多数派である女性の視点から様々な提言を行ってまいりました。今回はこの検討会が発足し、この骨子案にもまず「患者中心」と特筆大書していただき、その患者の立場で何を今考えているかということを、この9月、 10 月の2か月間で調査いたしまして、短い間ではありますけれども、会員中心の機縁法による調査ですが、 5,145 票の結果を集めております。ですから、これから先生方にお考えいただく一助として、もしお役に立てば幸いですし、私どもとしても是非我々の声を聞いていただきたいと思っております。

 なお、調査は、私どもは個人会員約 800 人、全国にグループがありまして、1つのグループもないという県は1つもありません。いろいろと盛んな所やそうでない所はありますけれども、ほぼ全国にわたって調査票は取れていると思います。この調査に関しましては機縁法による調査ですから、一定の限界はあるのですけれども、調査方法その他に関しましては城西国際大学、そして東京家政大学の調査を実施するときの倫理規定は、全てクリアしています。

 調査の概要ですが、男女別はやはり女性が多いので、男性が3割、女性が7割というところです。これは考えてみますと平均寿命が違うので、高齢者全体の男女比とほぼ近いと思います。年齢別には 75 歳で区切ると、前期高齢者と後期高齢者がほぼ半々、特筆すべきはこの中に 80 代が 1,144 票と、 1,000 票以上の 80 代、 90 代の方も 133 票ありまして、今までなかなか問題が見えにくかった 80 代、 90 代の実態が明らかになっているというところかと思います。家族構成は正に全国同じでして、一人暮らしと夫婦2人を合わせますと、全体で 65 %近くになるという日本の家族の現状と未来図を明らかにしています。ただ、この調査に応募してくださった方は、大体皆様お元気です。介護保険上の要介護者は僅か5%ほどしかいらっしゃいません。ほとんどの人が健康、まずは健康という中に8割が入っているというところです。やはり機縁法ですから、エリアは全国的にサンプリングするようなことはできませんが、先ほど申し上げましたように、ほとんど全県が入っております。居住地別ということで、少し人口規模などを調べてみましたが、この辺の分析はまだ今一つのところもあります。

 では、この1か月間に病院から処方してもらった常用薬の種類は何種類かとなると、ここにありますように、やはり5、6種類、そして7種類以上を合わせますと 23 %、つまり、この調査対象者の9割がほとんどお元気という方でも、この1か月間にもらった薬がなんと4人に1人は5剤以上。これまた私ども運動体の調査は自記式に加え会員が知り合いの家へ直に行って聞き取り調査をするというようなことが多いのですけれども、この間調査をした人たちの座談会を開きましたら、やはり皆さん1種類ぐらい少なく言っている感触がつかめたと。つまり、割と有識者が多いものですから、この頃ポリファーマシーに対する非難の動きなどというのが聞こえてきて、知った人に聞かれて答えるとき、本当は6種類なのだけれども5種類にしておこうとか、どうやらそういう抑制効果が働いたような趣があるということでした。そして、この右手のグラフですけれども、折れ線グラフは赤い所が7種類以上、紺の所が5~6種類で一目瞭然ですが、年齢が上がれば上がるほど多剤服用、ポリファーマシーというのはほぼ右肩上がりであらわれているということでして、これはもう先生方が今まで調査なさったことや予見なさっていることと全く重なり合っております。

 ところで服薬の管理ですが、薬はどこに置いてあるか、どこからもらってきて家の中のどこに置いてあるか、誰が管理しているかといいますと、これもまたお元気な方の比率と全く同じで 88.9 %、ほとんど9割の方が自分で管理をしていらっしゃいます。誰かにやってもらう、もっとも中には男の方はご自身お元気でも奥様が管理していて、奥様が認知症になったらすっかり分からなくなって困ったというような自由記述もありましたけれども、一応はお元気な方は自分で管理をしていらっしゃるようです。

 ここで、それでは自分が管理しなかったとしたら、あるいはできなくなったら、あるいは、たった1人の家族が倒れたりしたら、家族以外で服薬管理を頼める人は誰だろうという質問をいたしましたら、調査票というのも命がありまして、私どもはこの辺の所を見たとき、被調査者がどきっとした、何となくどきっという思いが伝わってまいりました。そしてなんと第1位は「誰もいない」、誰にも服薬管理を頼めないという方が 27 %で、意外に第2位が 23 %で「ヘルパー」でして、ここにいらっしゃるドクターでもなく、看護師でもなく、薬剤師がちょっと多いですけれども、それよりはるかにダブルスコア以上でヘルパーさんが多かったと。これは、実は空頼みだと思っています。そもそも要介護の人が少なくて、介護保険を利用している人はほんの少しですから、その代わり一方で、これは介護保険に対する信頼というか、ヘルパーという仕事が非常に日常的になって、頼めるのではないかという、これはもう何の根拠もなくヘルパーということばを選んだのだと思います。どのような年齢の方がヘルパーさん頼みかといいますと、 90 歳を超えるともう施設に入っている方などが多いので、それほどヘルパーは多くありませんけれども、これだけヘルパーに頼っているということはちょっと新鮮な驚きでした。同時に、はっきり言って自分でやれなくなったら薬が飲めなくなる、そのぐらいの言い方をしてもいいのではないかと。もしかして今、虚弱な高齢者は在宅で、と国の方針はそう指導していますけれども、一人暮らしあるいは老夫婦とも衰えたときの在宅療養は、服薬が不可能になるという事実から崩れていくのではないかという危惧を大変持った次第です。

 この後は一人暮らし、夫婦のみ、そういう居住形態別の薬の管理に関してですが、一人暮らしはやはり自分ができなくなったら「誰もいない」が3分の1を占めていますし、夫婦のみの方においてもほぼ3割を占めている。居住地別でいいますと、やはり人口の少ない所ではまだ御近所に頼めるという方もありますけれども、少し大きな都市になりますとほとんどそれもありませんで、現在進行形で高齢者の精神的・肉体的能力というのが衰えてまいりますと、私は在宅医療の先は、服薬という面から見ると、かなり暗いのではないかという意見を持ちました。以上は現状でして、意識につきましては石田理事から話してもらいます。

○石田参考人 次は医薬分業システムについてです。まず院内薬局希望という方は全体の 21 %、2割ぐらいでして、それ以外どちらでもよい若しくは院外のほうが便利であるという方は7割なのですが、自由記述の中では、やはり、近いほうがいい、遠いのはつらい、足腰が痛くなってきた場合は不便であるというような御意見がどうしても多くなるということがあります。この医薬分業について、年齢別に見ますと、当然ながら年代が高くなればなるほど是非近い所でお願いしたい、健康状態別で見ましても、やはり健康状態が悪くなってくれば、近い所、院内でという御希望が多くなっております。

 次に日頃の服薬生活に関する不安や心配ということについてですが、先ほどから何度も出ていますように元気な方が多いですから、不安や心配はないという方は 55 %いらっしゃいます。しかし、あと 45 %は不安や心配があるということであり、その中で多いのが副作用の件、その次に飲み忘れてしまっているけれども影響はどうかというようなこと、それから効き目が余りないと思うけれどもこのまま飲み続けていいのだろうかというような心配があるということです。健康状態別なのですが、やはり余り健康でない、あるいは病気がちという方々にとって、その辺の不安や心配が非常に大きいということが示されています。

 飲み残しについてですが、残さないという方は 42 %いらっしゃいますけれども、「飲み残しがある」が 40 %です。非常に飲み残しが多いという方、あえて残しているという方を含めますと 47 %が飲み残しているということになります。健康状態別に見ますと、健康状態が余り良くない、病気がちであるという方々のほうが飲み残していらっしゃるという現状があり、着目すべきと考えます。

 薬に関して医療関係者へ希望することですが、最初に「希望することはない」という意見が 35 %あるのですけれども、逆に 65 %の方々からは様々な御希望が出ております。特に、副作用の説明をしてほしい、それからやはり薬の量を減らしてほしいというような御希望があります。また、不安を解消する窓口の設置というような希望も 15 %あります。あとは長期分の薬を出してほしいという希望もありました。

 ジェネリック医薬品についてですが、積極的に利用したいという方が 37 %いらっしゃいました。一方で、余り使用したくない、絶対に使用したくないという方もやはり 12 %という割合でいらっしゃいます。どちらでもよい、調剤薬局に任せているという方々も多いのですけれども、エリアごとにちょっと調べてみました。全体的に積極的に利用するという意見が多いのですが、これはもう少し詳しい調査の必要があるかなとも思っております。

 「おくすり手帳」の活用についてです。どのように利用していいか分からない、あるいは持たされているだけというような方は合わせて 36 %、「おくすり手帳」がきっちりと制度化されているものではないということから、何で持っているのかよく分からないというような御意見もあったように思います。一方で、これは災害時等で活用できるので、きちんと制度化していただいたほうがよいというような御意見もありました。

 「かかりつけ薬剤師」のことですが、ここについてもよく知らない、あるいは今までで何ら不便を感じていないというような方々、両方合わせて半分以上いらっしゃいます。この辺のところから、「かかりつけ薬剤師」の内容が皆さんにはまだ少し分かりにくいのではないかなと思っています。

 最後が自由記述です。実はアンケート用紙の一番最後に小さなスペースしかなかったのですが、なんと 1,166 人の方がぎっしりと意見を述べてくださいまして、これらの記述内容について、樋口代表は直接手にとって目を通されたということなので、そこも含めて最後にご説明くださいますよう、お願いいたします。

○樋口構成員 是非この最後の7項目を、後でとっくりとお読みいただきたいと思います。とにかくこの調査をしてもらって良かったという声が大変多くて、やはりケネディの消費者の4つの権利ではありませんけれども、意見を聞いてもらえる喜びにあふれて、たくさんの意見が集まってきたという感じです。

 最後に一言だけ付け加えさせていただきますと、調査票や自由回答では余りしっかりとは出てこないのですが、この調査をやっている間に、がん患者が1人、たくさんのアレルギーを持っている人が1人、どちらも 80 代の男女でしたが、自分は薬によって今生かされている、多剤服用は良くないと思うけれども、片方の方は 10 種類、もう片方の方は 14 種類の薬を飲んでいらっしゃいましたが、「今までの医師の説明によると、これだけの薬でどうやら自分は生かされているらしい、精査していただくのはいいけれども、高齢者だからといって機械的にばっさりと半分に切るようなことは是非していただきたくない」というような声がありましたことを付け加えて終わらせていただきます。お時間をいただき、ありがとうございました。

○印南座長 時間内に、大変ありがとうございました。後で質問等は受け付けますが、今の段階で特段何か御意見があればということなのですが。よろしいでしょうか。

 それでは続きまして、余宮参考人から「がん緩和ケアにおける高齢者の薬剤使用 課題と提案」について御説明いただきます。発表時間は 15 分とさせていただき、終了1分前に失礼ながらベルを鳴らさせていただくということにしたいと思います。それではよろしくお願いいたします。

○余宮参考人 本日は、このような機会をいただきましてありがとうございます。日本緩和医療学会をはじめ、各がんに関わるガイドラインの統括や作成に携わらせていただく中で、こういった機会を頂けたものと思っております。よろしくお願いいたします。

 最初に背景です。本日は高齢者の検討ということですが、2人に1人ががんになると言っても、高齢者ほどがんの罹患率が高いということで、がん医療はすなわち高齢者の医療であるということを私も改めて認識をしております。がんと言ってもいろいろな苦痛症状があります。その中で、痛み、悪心、せん妄の本委員会に関することについて提案をさせていただきたいと思います。

 まず、痛みについてです。がんは痛いというイメージがあるかと思います。病気によって異なりますが、進行するにしたがってがんの痛みの罹患率が高くなり、しかも、がんの痛みは中等度から高度の痛みを呈するということが大きな特徴になっております。これは割と最近、日本で調べられたがん患者の痛みが取れているかという画期的な調査、除痛率の調査ですが、何が除痛率を低くするか、唯一の因子が抽出されました。それは高齢者であるというたった1つの因子なのです。ですので、ポリファーマシーの会ということですが、きちんと高齢者の苦痛を評価して、適切な鎮痛薬の使用を考えていく必要があるということをまず背景知識としてお伝えをした上で、お薬についてお話をします。

 がん疼痛治療は、世界保健機構が定めた、 30 年前にできた WHO 三段階除痛ラダーに沿って行います。第1段階は NSAIDs 、アセトアミノフェン、第2、第3段階はオピオイド鎮痛薬を中心としたものです。本日の私の提案は、 NSAIDs とオピオイドについてのもの、1つずつになります。

 まず NSAIDs です。骨子にもありましたように、がん患者の場合は痛みが強いので、医師や薬剤師、看護師は痛みを取らなければならない、患者も痛みを取ってほしいということがあり、どうしても鎮痛薬は大事だという形で、 NSAIDs は第1段階ですので、漫然として長期投与になりやすいというのが非常に大きな問題になっていると思います。例えば、 NSAIDs による腎毒性が問題となった事例を経験しました。 NSAIDs を飲んでいる患者がせん妄で緊急入院してきました。血液データを測定したところ、腎機能が低下をしていた、そして NSAIDs を中止したら腎機能が正常に戻ったということで、 NSAIDs による腎毒性からせん妄で緊急入院という症例があります。また、血圧低下と傾眠で緊急入院したら、貧血があって消化管出血だったということで、お亡くなりになるような NSAIDs の事例もあり得るわけです。ご承知の通り、 NSAIDs による消化性潰瘍は、高齢者そのものがハイリスクになるわけです。

 日本緩和医療学会のがん疼痛ガイドラインでは、 NSAIDs の使用に関しては、3番にあるように、鎮痛が安定していれば NSAIDs が本当に必要なのか常に定期的に検討するように推奨されているのですが、どうしても痛みのほうに患者や私たち医療者も囚われるために、次のオピオイド鎮痛薬が始まっても何となくベースに入っていて、長期投与になることで思わぬ副作用を体験するということがあります。このようなことから、提案1としては、がん疼痛に対して NSAIDs の漫然とした投与を避けることをもう少し周知徹底すべきではないかということです。

 次に、オピオイドについてです。がん疼痛治療の中心的な薬剤ですので、がん疼痛治療においてはオピオイドを使いこなすことが非常に重要になります。様々な課題がありますが、ピンクで塗ったところ、眠気、過鎮静、認知機能障害、せん妄という症状が高齢者で問題になりやすいかと思います。鎮痛領域であれば普通は過鎮静やせん妄にならないのですが、高齢であったり、脳血管障害の既往があったりすると、鎮痛領域と中枢神経症状の発現領域が重なってくるのです。痛みをとるかせん妄を避けるか、現場では二者択一の非常に大きな問題になります。特に肝腎機能障害の方では作用増強が顕著になります。

 つづきまして、本日一番お話したいことがオピオイドのレスキュー薬についてです。これは長年、緩和ケア医の中では大きな問題となっており、困っていることです。例と書いてありますが、オキシコドン徐放錠、1日2回の薬、こういった 12 時間製剤をベースに朝晩と服用し、このベースの薬の不足を補うために速放製剤という短時間作用型のものを、頓用の形で処方します。しかし、日本の保険の制度で、 10 回分を超える頓用薬は保険で査定されます。本来は、2週間処方で 40 回ぐらいの処方を我々緩和ケア医はしたいし、患者さんたちも必要なのですが、査定をされるのです。2週間で 10 回分の処方ですと、患者は 14 日間の間に1日1個も使えないということで、痛みを我慢して QOL を下げてしまうということがあります。それを避けるために、我々医療者は、1日3回 14 日分、定期処方として処方せざるを得ない現状があります。そうすると、高齢の患者さんはこういった説明がうまく記憶に残っていなかったり、若年者でもありますが、誤って定期的に服用したために過量投与になって緊急入院ということは、割と巷でよく聞く話なのです。

 がん疼痛治療の発展はこの 30 年で急速に進んでいて、現在の保険制度にレスキュー薬を適切にあてはめる方法がないと、緩和ケア医は考えています。ここに問題点を挙げておりますが、特に高齢者では肝腎機能障害があるために、長時間作用型のものをいきなり処方するよりは、短時間作用型のものを必要に応じて使っていただいて、投与量を調整するほうが安全なことがあるのですが、 10 回分しか処方できない。また、がん疼痛の特色ですが、3分の2の患者に突発的な痛みが見られる。それは中央値1日3回であるということは、海外の非常に多くのエビデンスがあります。ですから、レスキュー薬が7日とか 14 日で、 10 回分で不足することは明白な事実なのです。以上のことは度々、緩和ケア医の間では問題になっております。安全上も患者の幸せのためにも、是非、国単位での対策の検討をしていただきたいと思っております。がん疼痛に対するオピオイドのレスキュー薬は、今の保険上の頓服と少し異なる扱いとしていただけたらという強い願いを、緩和ケア医を代表して提案させていただきます。

 次に、悪心とせん妄の治療における抗精神病薬による錐体外路症状の過小評価についてです。まず悪心についてですが、オピオイドは非常に良い薬です。オピオイドがなかったら、本当にがんは辛い病気で、福音のような薬なのですが、投与初期に少し吐き気が出る患者さんがいらっしゃいます。それ程多い割合ではありません。報告によって異なりますが 10 30 %と言われています。海外も日本緩和医療学会も、予防的に制吐薬を投与することはどこのガイドラインも推奨していません。ところが、日本は慣習的にオピオイド導入時にプロクロルペラジン(ノバミン)やハロペリドールといった抗ドパミン作用の強いものが予防的に使用されるという歴史があります。そして、漫然と長期使用されることが多いのです。抗ドパミン薬によるアカシジアが非常に問題になっています。これは投与した翌日から出ることがあり、気付きやすい副作用であれば中止しやすいのですが、非常に見落としが問題になっています。かつ、患者の QOL を著しく低下させる、医療者の認識が低いということで、少しお話をさせてください。こちらは私が調査したもので、 100 人の観察研究ですが、プロクロルペラジンを開始して1週間以内で7人に1人、 14 %がアカシジアになっていたというデータです。非常に見落としが多い症状ですので、海外でも幾つかデータはあるのですが、母数が少ない報告になっております。海外では私の 14 %をはるかにしのぐ 61.5 %、しかも、 75 %の患者はこの症状について医療者に報告をしていなかったと。海外でも薬剤性の錐体外路症状は underestimate (見落とし)が問題であるということで、幾つか論文があります。

 薬剤性錐体外路症状とはどんな症状かというと、アカシジアと、長期投与によってパーキンソニズムといった症状が出ます。アカシジアは、じっとしていられない状態で、患者は何か眠れない、何か不安で胸がざわざわしたり、足もそわそわして落ち着かないということで QOL を落としますし、せん妄と誤診されやすいのも問題を深刻にしています。せん妄と考えられると、さらに抗精神病薬を投与され、更に症状悪化という状況もあります。パーキンソニズムというのは、長期投与された場合には筋硬直が起こり、嚥下障害から誤嚥性肺炎、歩行障害から廃用症候群という、患者の生命にとっても重篤な事象になり得ることが実際にあります。

 制吐薬の話をいたしましたが、その流れでスルピリド、商品名ドグマチールの保険適用が、うつ病・うつ状態、統合失調症だけでなく、胃・十二指腸潰瘍とされているために、がん患者の食欲不振に対して使われることが少なくありません。これは日本のデータで、大規模なデータベースから取った日本人の研究者のものですが、スルピリドもハロピリドール、非定型抗精神病薬と同様に、薬剤性錐体外路症状はこれだけの Odds ratio があるというデータがあります。ということで、制吐薬として、がん患者に対してプロクロルペラジン、スルピリドが食欲不振等で漫然と使われておりますが、がん医療に関わっている私たちも、抗ドパミン薬による錐体外路症状に対する注意がまだ足りないと考えています。そういったことも今後盛り込んでいただけたらという提案です。

 最後にせん妄ですが、こちらも錐体外路症状の過小評価ということでお話します。せん妄は、がんになったら誰もが経験する精神症状だということをまず強調したいと思います。終末期がん患者の3~4割と言われていますし、死亡直前においては患者の 90 %、要するに意識鮮明で亡くなる方はほとんどいないということです。最後は少しぼうっとした感じで、混乱した状態でお亡くなりになる。一般的に保険適用は通っていないのですが、抗精神病薬が使用されているのが日本の現状です。海外でもそうです。私は臨床医をしていて、緩和ケアの仲間とも話していますが、抗精神病薬のみではせん妄のマネジメントは難しいです。患者さんたちは体力が落ちてくるので、ベッドから転落したり転倒したりということで、患者の安全・安心が守れない状況で、むしろ患者の安全・安心を守るためのきちんとした鎮静を行うためには、ベンゾジアゼピン系をうまく使わないといけないということを経験してきました。使用できるガイドラインがあるわけではないのですが、何となく抗精神病薬、抗精神病薬でアカシジア、アカシジアが強くなると、アカシジアとせん妄はまず区別困難ですので、どんどん抗精神病薬が盛られていってしまうという悲惨な状況になるということも見聞きします。

 そのように思っていたら、去年、 JAMA 誌から無作為化比較試験が出て、私たち臨床医が感じていることが RCT で検証されました。これは上に行くほどせん妄が重症なことを示しています。横軸がせん妄になってから 1 日目、 2 日目、 3 日目となっているのですが、一番改善がいいのがプラセボを飲ませた患者でした。リスペリドンやハロペリドールを投与した患者では、せん妄の改善がむしろ阻害されたということで、この論文の結論としてはプラセボと比較して抗精神病薬ではせん妄の改善が乏しい。レスキューのドルミカム(鎮静剤)の使用率も、抗精神病薬群で高いということです。投与量が多いのかと思ったら、少量での試験です。また、この試験のもう1つの結果ですが、生命予後も抗精神病薬を投与した群で短かったという衝撃的なデータが報告されています。

 このようなことから、重度のせん妄でない限り、安易な抗精神病薬の使用はかえってせん妄を悪化させるということで、がん患者に関してですが、安易に抗精神病薬を使用しない方向で是非盛り込んでいただいて、ベンゾジアゼピン系薬はどうしてもポリファーマシーの原因になりますが、安易に禁止しすぎないで、適切に使うような方向で御検討いただけたらと思います。以上、提案 1 4 をスライドでまとめました。

○印南座長 どうもありがとうございました。ただいまの発表に関して、特段何かあればお願いします。よろしいでしょうか。

 続きまして、林構成員から「プレアボイド報告を中心とした高齢者薬物療法適正化の取組」について御説明をお願いします。

○林構成員 私から、プレアボイド報告を中心とした高齢者薬物療法の適正化について、現状と課題と題して御紹介します。今後の皆さんのディスカッションの参考になるような内容も少し込められたかと思いますので、お耳をお貸しいただければと思います。

 内容的には、今までの御議論も含めて4つの構成になります。プレアボイドというのは聞き慣れない先生方もいらっしゃるかもしれないので、最初にその説明と、どういうことが見えてきているかを御紹介します。次にポリファーマシー対策について、今、日本の薬剤師の現状はどの程度なのかという御紹介しつつ、溝神先生の大変すばらしい取組についても既にプレゼンがあったところですが、一般病院でどのぐらいまでできているのかを御紹介します。その上で、施設間での処方設計支援や処方提案の連携の問題について最後に触れます。

 最初に、「プレアボイド」について御紹介します。遠くから見ると、活字が小さい部分もあって恐縮ですが、これは医薬品の適正使用懇談会の厚労省の最終報告書をもとに、薬剤師がチームで貢献していこうという内容を示したものです。医師の皆さんが的確な診断をされて最適な処方をし、我々薬剤師が調剤、服薬支援をし、薬が正しく使われ、その効果と安全性が再評価されて、処方にフィードバックされるというサイクルが回っていくことによって、医薬品の適正使用が進むという報告書の内容を示しています。この中で、従前は、薬剤師は主に調剤や服薬支援を担当していましたが、平成 22 年頃よりチーム医療の検討会もあり、右上にありますように、薬物間相互作用や腎機能に合わせた処方設計等様々な観点で、処方する段階からチームで役割を担っています。このことが副作用の可能性に気付き、副作用を回避するような処方設計か出来るというプレアボイドの未然回避となります。

 また、左側のベッドサイドにいる薬剤師に関しては、患者の効果の出方と副作用の出方を、お会いして評価する役割も分担しているので、その中から検査値や患者の訴えで処方に関する個別化、最適化を担っている現状があります。そういった中から、既に副作用が発現しているのだけれども、このまま放っておくと重篤になるというのを防ぐような活動もあります。下のほうに小さく書いてありますが、「 Prevent and Avoid the Adverse Drug Reactions 」、あるいは「 Be Prepared to Avoid the Adverse Drug reactions 」ということで、副作用による健康被害を、チームに参加して少しでも直接防いでいくことに貢献しようというのが、重篤化回避の取組です。

 プレアボイドについては、もちろん現場でやって、国民の皆さんの薬物療法のお役に立つのが最大の目的ではありますが、そのまま放っておくと見える化できないので、後輩の育成のためにも日本病院薬剤師会としてもルールを決めて集めた上で、解析をして、情報共有しようということで、副作用を未然に回避した事例、副作用の重篤化を回避した事例、最近では TDM や抗菌薬の処方設計なども始まっていて、処方設計が有効性の向上に貢献したのではないかという事例も集め始めております。こういう薬物療法の最適化に貢献しよう、副作用回避に貢献しようというのが、プレアボイド報告という枠組みです。

 概念だけでは分かりにくいので、1つ事例を紹介します。入院して来られた患者さんに、最初に薬剤師がお会いすることは最近とても増えてきていると思います。何剤薬を持って来ているか、一通り全部確認するとともに、おくすり手帳、自分の病院の処方歴があれば電子カルテのデータ、それがない場合には医師の紹介状なども参照して、入院時の処方の整理をしていくわけです。 70 代男性で、脂質異常症があって、高コレステロール血症で脳梗塞の既往がある方です。 70 歳の割には腎機能、肝機能が極端に悪いわけではありません。また、アレルギー歴、副作用歴も顕著なものはありませんでした。チクロピジン、イルベサルタン / アムロジピン配合錠、アトルバスタチンとフェノフィブラートをスライド右に書いたような時期から飲んでいるということです。

 入院時にお会いしてお薬の整理をしながら、一方で医師が血液検査等をオーダーしていることもありますので、チェックしていたところ、 CK が上昇していることが確認されました。ここで原因薬剤を評価していくと、アトルバスタチン、あるいはフェノフィブラートの併用が関係するであろうということが推察されます。添付文書上、原則禁忌というカテゴリーに入るものでもありますが、治療上の必要性があればここは併用も認められています。そこで、薬剤師から医師にまず1剤を切ってみるのはどうかという提案をして、その後の経過を評価し、下がってはいるけれども、下がりが十分ではないということをディスカッションした上でもう1剤も切ってという事例です。実際に起こっている状況に合わせて、処方の再提案をしていくような役割も担っているのがプレアボイドの現状です。

 そういうことはどのぐらいあるかというと、全国に私どもの会員が3万7千人ぐらいいますが、未然回避して、副作用が重篤になって副作用被害救済にいく手前で未然回避、重篤化回避しているものが年間に3~4万件と報告として集まってきています。

 これらの報告の中で高齢者についてはどんな見え方をするのかを解析してみました。年齢層が 20 歳未満、 20 から 49 歳、 50 から 69 歳、 70 歳以上と切ってみると、副作用によって薬の処方再設計をした、あるいは未然に処方の見直しをしたものは、検査値が発端になっているものや持参薬の再評価時に、高齢者ではより多く報告されています。また、同じように切り口を変えて見ると、同種同効薬の重複があったということで副作用の見直しをしたというものも、高齢者に多いということが確認されています。

 その時にどのように対処したのかということですが、医師への処方提案と医師とのディスカッションの中で、副作用が起こっていれば一旦は中止してみるものが多いし、副作用が今後起こる可能性があるということであっても、中止してみるのは1つの方策であるということは、とてもよく分かると思います。また、腎機能や幾つかの薬物反応性に合わせて薬剤の減量をしてみるのも、高齢者に多い状況です。ただ、小児でも多いことは事実ですので、減量については小児もそれなりの数はあります。

 このような副作用の未然回避、重篤化回避の提案は、入院患者の中でどのぐらいの比率でやっているのかというと、プレアボイドは分母のないデータでしたので、虎の門病院の1病棟に1人ずつ配置している薬剤師たちが、薬剤の中止や減量、変更、剤形の変更等いろいろなことを提案していますが、どのぐらいあるのか見てみました。大体 10 %前後、 10 人に1人ぐらいはプレアボイドに取り組んでいます。これは副作用の懸念や相互作用の懸念、実際に起こっている副作用に対処していっているところですので、この検討会で問題になっているポリファーマシー対策をするとなると、この流れに更に新たな活動が必要になります。本日ガイドライン骨子が既に話し合われたと思いますが、更なる取組のコンセンサスとなるものを作っていくことによって、より加速させることができるのかなと感じます。逆に言うと、そういうガイドラインを現場で活用していく素地は、既に多くの全国の病院に整いつつあると思っております。

 では、一般の病院でポリファーマシーにどのように取り組んでいるのかを、虎の門病院を例に御紹介します。

 入院してこられた患者に対して、受持ちの看護師は CGA7 等で基本的に受持ち患者の高齢者の方の評価をしていて、それで問題が見付かれば、更に詳しく評価していくという段取りになります。虎の門病院には、循環器内科や神経内科、血液科、消化器外科といったいわゆる臓器別の診療科の枠組みとは別に、高齢者総合診療部というものを設置しており、ここの中で多職種でチームを組んでいます。先ほど申し上げたように各病棟に在席している看護師や病棟薬剤師、あるいは主治医とも相談をして、専門家チームに再評価してほしいということがあると、このチームにコンサルが来ます。認知症チームやポリファーマシーチームが月に3回ぐらいラウンドしていると思いますが、現場確認をした上で、主治医の先生たちと話し合うようなチームが動いています。この中で、看護師が基本的な入り口の評価をしており、医師の皆さんがそれを総合的に判断するのですが、薬剤師は高齢者の医薬品適正使用ガイドラインを基に、高齢者にハイリスクになっている薬の代替薬等があるのか、あるいは中止することも可能そうなのかということを評価し、また、複数の薬剤の中で重複、あるいは相互作用のあるようなものをどのように整理しうる可能性があるかといったことを提案する役割分担しております。

 その中で、薬は減らすけれども、運動療法や栄養指導を強化したいということがあると栄養士さんも参加してくれますし、ベンゾジアゼピン系や精神・神経系の抗不安薬を調整するときには心理療法士さんにも加わっていただくことがあって、退院に向けていろいろな専門職が餅は餅屋で協力をしながら取り組んでおります。

 私どもは薬剤師の団体ですので、現状では学会に作っていただいた「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015 」を一番のよりどころとしておりますし、薬物動態や薬の副作用に関しては専門性を有する職業ですので、腎機能、肝機能、あるいは体成分組成に合わせた処方設計を提案してきています。患者さんは 100 %絶対、何が何でも飲んでいる方だけではないので、アドヒアランス( Adherence )、飲みやすいタイミングでの飲みやすい薬の種類数に製剤変更をするといった提案も含めてやっていくわけです。ベースとしては各病棟に1人ずつ配置している薬剤師が基礎的な患者とのコンタクトを取っていて、それを高齢者の専門家チームにいる薬剤師が橋渡しする形で、専門家チームの中で再評価しているということになるかと思います。

 虎の門病院はそんな感じですが、全国的にどうなっているのかということで資料をお持ちしました。スライドにありますように、私ども日本病院薬剤師会の中に学術委員会があって、1年ないし2年で特定のテーマに対して全国調査をして解析しています。今年の 11 月3日に学術委員会第1小委員会から報告のあったデータから1つ御紹介します。

 急性期の病院では在院日数が 7 10 日ぐらいで今は進んでいますし、回復期の病院は数か月患者さんが入院しているので、入院中の薬剤の再評価にも違いが見えます。急性期の病院は、安定しているのであれば、手術や移植等いろいろなことに向けて薬を余りいじらないで、そのまま安定した状態で治療に取り組みたいということもあります。それでも全体の施設数のうち半分ぐらいは薬を削減するような取組をしていると、アンケートには答えてきています。一方で、回復期、慢性期というと在院日数が長いことが起因しているだろうと推察していますが、2か月や3か月いていただけると、1つの薬を減らした後に、そのことが御本人の健康にマイナスになることがないかどうかを確認した上で、安心して切っても大丈夫でしたね、とお声掛けできるところまで評価し得るという意味では、回復期、慢性期のほうが3分の2、4分の3の施設で薬の変更に取り組んでいました。

 急性期の病院でも正に薬を切っていくことはあるわけですが、そのときに切っただけでは、次の病院で続きの評価をしてほしいですというバトンタッチが、病床機能間のシームレスな患者ケアには必要かと思われます。薬剤管理サマリーの確認というのは、調剤薬局の方、保険薬局の方から在宅のとき薬がどんな具合だったというのを、おくすり手帳に挟んで情報提供していただいたりすることがあります。あるいは、慢性期の病院から入院中はこうでしたというサマリーを頂くことがあります。退院時の業務を見ると、退院時指導に加えておくすり手帳に処方薬、副作用情報、指導の要点を記載しているかというのは、薬を減らしているほうがワンランク多いかと思います。「他の医療機関や保険薬局に対する薬剤情報提供書として薬剤管理サマリーを記載して付けていますか」というのも、薬を減らしたからには、次の病院でも継続的に確認してほしいという意図もあるので、 30 %ぐらい薬剤管理サマリーを記載してお渡ししているという状況が見えてきています。それがケアマネ向けであったり、かかりつけ薬局向けであったりするということが見えてきていて、1つの病院でずっとお世話できなくなってきている中では、このように病院間で薬剤師同士が、処方医の紹介状等とセットでお渡しするという取組をしている病院もありますし、おくすり手帳を使う病院、薬剤情報提供書を御本人の同意を得てお渡ししている病院もありますが、幾つかの取組が実際に始まっていることは確かかと感じています。

 副作用発現時に薬を中止・減量した経緯に関しては、なんで中止したのかが次に伝わらないといけないので、この情報もその患者の関係する医療機関の間で共有することが必要だと思われます。未然に回避したものについても、同様に処方変更・減量の趣旨が伝わる必要があると思いますし、同種同効薬の重複についても、本来必要と思われて処方されているのだとは思われますが、こういう趣旨で変更したということが伝わるのがよろしいかと思います。飲みやすく、アドヒアランスを上げるために薬を変更したということも、情報共有があったほうがいいかなと考えています。

 まとめます。現状で病院薬剤師は副作用の未然回避、重篤化回避、これを「プレアボイド」と称して御紹介しましたが、処方の変更や中止に関する処方設計を医師と協働で担っておりますが、高齢者ではこういう処方設計をする頻度は確かに高いということは事実だと思います。ポリファーマシー対策のために、薬剤師は入院時の持参薬の評価、入院中の有効性・安全性の評価を医師と協働で行ってきていますが、実際の中止・減量・変更が見られているということ。高齢者の医薬品適正使用を更に進めるためには、多職種連携による実務的な進め方をよりお示しいただけることは、多くの医療機関でそれが加速することに寄与しそうだと考えております。また、地域医療構想等で病床機能が分化していく中で、急性期、回復期、慢性期、あるいは地域の薬局の皆さんと連携して、何のために薬を減らしたのか、何のために減量したのか、その後何をバックアップして患者のその後の体調を見てほしいのかといったことが、薬剤師も参加するチームの中で連携していくことで、患者のシームレスな薬物療法に関するケアが進んでいくといいなと思って、現在進行形で取り組んでいるという御紹介です。御清聴ありがとうございました。

○印南座長 ありがとうございました。ただいまの樋口構成員、石田参考人、余宮参考人、林構成員の御説明に、御意見あるいは御質問等がありましたら、お願いいたします。

○松本構成員 それぞれに幾つか御意見と御質問をさせていただきます。まず樋口先生のお調べになった大変手間の掛かる骨の折れる調査をしていただいて、本当に敬意を表させていただきます。比較的お元気な高齢者ではありましたが、お一人一人が抱えている不安とかそういうのもよく分かりましたし、非常に貴重な資料だと思います。その中で、やはり我々が医薬分業と言っていることが決して高齢者には優しくない制度なのだなというのもよく分かりました。しかも自由記述の中には、院内薬局のほうが費用が安いように思う、正にそのとおりなのですが、本当に聞いていて頭が下がると言いますか、耳が痛い部分もあります。かかりつけ薬剤師に関しましても、いわゆる行政の枠組みということではなくて、 16 番目のスライドにもありますように、 25 %の方が顔見知りの薬剤師に相談できる状態は重要であると言われており、正にそのとおりだと思います。おっしゃっていること一つ一つが納得いくものです。最後の 17 番目のスライドに関しましても、医師が処方するときに患者さん本来説明するべきことを言っていなかった部分もあるのかなと、非常に恥ずかしい思いもいたしました。大変ありがとうございました。

 余宮先生のこれに関しても、がん患者の緩和ケアの観点から鎮痛薬の使用による弊害ということに関しましては、私もがん患者を扱ったこともある医師としては非常に恥ずかしい限りで、本当にこんなことを注意していかなくてはいけないというのがございました。少し質問をさせていただきたいのですが、先ほど言われました、鎮痛薬の頓用は 10 回で査定されるということなのですが、これは症状詳記しても、全然受け付けられなかったのですか。

○余宮参考人 御質問ありがとうございます。症状詳記をした場合に受け付けてもらえる場合と、受け付けてもらえない場合があるというのが事実です。県によっても違いますし、監査をする方が交代をしたりすると、また変わるという事情があります。

○松本構成員 おっしゃるように、ここに書かれているように、1日3回飲めば 14 日分で審査は通ってしまう。でも、それを超えて処方するから、こういうふうに飲んでくださいねと患者さんに言うのは、本来そういうことはあってはならないことですのでなかなかこれは難しい。やはりこれは審査機関の問題になってくるかと思いますので、今後検討させていただくようにしたいと思います。

○余宮参考人 心強い言葉、ありがとうございます。

○松本構成員 やはり、ここも同じようなのですが、スライド 16 にあるように、 75 %の患者さんが症状を報告していなかったというようなことは、これも医療者として非常に恥ずかしい話で、患者さんとのコミュニケーションがなかなか取れていないと思いました。それで、提案として、周知・注意喚起の重要性を指摘されていますが、今回のガイドラインに乗せる話なのか、また違う方法でこれは啓発したほうがいいのか。先生のお考えはいかがですか。

○余宮参考人 今回の資料を拝見させていただきますと、プロクロルペラジンも、スルピリドも、 NSAIDs も全て注意喚起に挙がっており、秋下先生の作られたガイドラインにも書かれてはいるのですが、私たちがん患者に関わっている医師は、果たしてこのようなガイドラインに目を通しているかということが問題です。私は、今回初めてこの会でこのガイドラインの存在を知ったという、とてもお恥ずかしいお話です。私たちがんの専門のところにはなかなか届かないので、何らかの形で、全体でも入れていただくのは既に入っているかと思うのですが、やはり「がん患者に関して」というふうに1つの枠組みを作っていただいたほうが、がんセンターやがんを診療している医師には届くのかなという思いはあります。

○松本構成員 その辺を秋下先生はどう考えるかは、WGの方々がどうされるかはもちろんなのですが、そこで少し触れていただくのも大事ですが、もしそこで十分でないとなったら、先生またひとつどこかで考えていだければと思います。是非よろしくお願いいたします。

○余宮参考人 ありがとうございます。

○松本構成員 最後の資料 4 のプレアボイド報告ですが、これは先ほど5万人の会員がいらっしゃると言われましたが、医療機関数としてはどれぐらいなのですか。

○林構成員 すみません、私の立場で即答できないといけないのですが、今正しい数字を持っていなくて、ごめんなさい。

○松本構成員 いや、これはそれで結構なのですが。というのは、 20 枚目のスライドで、虎の門だけではありませんとおっしゃったので、全国でどれぐらいの病院がこの高齢者総合診療部、名前はともかくとしてそういうものをお持ちなのかを教えていただきたかったのでお聞きしました。 15 枚目から高齢者総合診療部のことが書かれているのですが、患者の病態を評価して副作用の有無を診断するのは医師であるべきだと思いますが、私の性格がいけないのか、これを見ていましても、どうも医師が直接関わっているように思えないスライドですので、この書きぶりといいますか、表現の仕方はもう少し丁寧に考えていただければ有り難いなと思います。

○林構成員 御助言ありがとうございます。薬剤師の学会で発表した際のものをベースにして今回少し改編したこともあって、薬剤師として何をやっているかを中心に書かれています。 17 枚目に書いてありますように、医師の方が最終的に中心になって、患者のその後の治療を考えていただくことなしには進みません。看護師の皆さんが、ベースラインの評価をしてくださっていますし、相互作用や過量投与、重複投与等の問題は提案はしますが、皆で考える中で、医師の皆さんが中心になっていただいて、その中心の医師のデシジョンメーキングもあって、処方医、主治医の先生とのコミュニケーションがそこから始まって決定していくということには間違いございませんので、御助言のとおりだと思います。ありがとうございました。

○松本構成員 ありがとうございます。それと総合診療部のことで、処方が自院内で完結する場合というのは効果は抜群だと思うのですが、問題は、患者が他の医療機関でも受診をしたりして、そこで処方を受けている場合、あるいは転院などの場合は、病院薬剤部では誰に対してどのように患者の服薬情報を情報共有しているのか教えていただければと思います。

○林構成員 先ほどの御質問と併せて、今答えられる範囲でお話すると、常勤の医師が 10 人で、常勤の薬剤師が5人ですというような中規模、小規模の病院で、 150 床、 100 床というご施設では、毎週全医師と薬剤師が顔を合わせて、その週の患者さんたちの打合わせをするというような話も聞いています。こういう名前を付けるまでもないということもあって、高齢者総合診療部というのを置いているのは、少し規模の大きい病院に偏っているかもしれません。その上で、例えば虎の門病院を例に挙げますと、自分の病院から入院してくる患者さんは3分の1いるかいないかで、他施設からの紹介で入ってくる方、自院にもかかっているけれども他施設で見出された問題で入ってくる方が半分強いらっしゃいますので、逆紹介率といいますか、逆紹介状をお書きするのはほぼ 100 %になっています。ですので、院内に主治医がいて、最初にその処方を決定した医師がいれば、院内で話合いができるわけですが、他施設にお返事する場合には、先ほどちょっと申し上げましたように、医師が書いてくださった逆紹介状に、薬剤師がおくすり手帳か、その医師の紹介状に、合わせてこんな経緯もあったのでと薬学的な連携書を医師のものと一緒にして、医療連携部のほうに、その返信の内容をセットにしてもらえるようにお願いをするというような取組になるかと思います。

○松本構成員 ありがとうございました。もう少しよろしいですか。 18 枚目のスライドに「薬剤師の役割」とございます。どうも1ポツ目と3ポツ目と5ポツ目が丸で、2ポツ目、4ポツ目が四角く私は見えてしまうのですが、3ポツ目が2行ありますが、この2行は違う文章なのですか、それとも続いていくのですか。何が言いたいかというと、投与量の調整というのは、薬剤師がするのではなくて、やはり医師がする。だから、これは提案をしていただいて、協働してやっていくと私は思っているのですが、この辺はいかがなのですか。

○林構成員 これはフォントを何かいじったときになったのか、この丸と四角があるような見え方をしていて恐縮なところです。ポツは5個です。その肝腎機能に合わせた調整とか、御本人の食欲だとか、いろいろ排便の状態などの全身状態を考慮したトータルで処方提案をして、医師の皆さんと一緒にやっていくということです。丸と四角っぽく見える点はおわびしなければいけないですが、ここの丸が抜けているというわけではなくて、処方提案は全体に掛かると御理解いただければと思います。

○松本構成員 調整も含めて提案ということですね。最初に触れたように、いわゆる病床機能分化、なぜこれをしつこく言うかといいますと、急性期病棟には急性期の患者さんしかいないのだというように誤解をされている保険者がいるのです。7対1病棟の重症度医療看護必要度 25 %というのは、そこに入院しなくていい患者が4分の3いると理解をされている方がいるものですから、そうではない、急性期病院でも、本当に急性期の患者だけではないのですよということを言いたい。だから、余り病床機能でこういうふうに分けられると、やはりいろいろな誤解を生むのではないかと思いますので、是非、患者の病態像でこれを分けるのだとお願いをしたいと思います。

○印南座長 他に御質問、御意見ございませんか。

○島田構成員 私も今、3人の構成員の方、参考人の方からのお話は非常に参考になりました。たくさんのデータをいただきまして、ありがとうございました。その中で樋口構成員のご発表、今の松本構成員からもお話がありましたが、とにかく比較的お元気な方がたくさんいらっしゃるデータであることについては非常に興味深く拝見しました。この中でお薬を飲まれていないという方や、1種類から2種類、3、4種類の少ないお薬を飲まれていたりする方は、お元気ですから、お薬も少ないのだろうと思いますし、お薬が少ないから、お元気なのか、様々なケースがあると思います。しかし、その中で、先ほど医薬分業についてのご報告、ご感想もありました。確かに、まだ1種類、2種類をお飲みの方であれば、今まで院内でもらっていたのに院外処方に変わった、そういったご経験をされた方がいらっしゃると思います。やはりそれは院外のほうが手間が掛かる、というご感想もあろうかと思いますが、これは当然のことだろうと思います。今回のこのポリファーマシーの検討会も含めて、高齢になるにしたがって複数の医療機関にかかるという実例もあることを考えれば、情報の一元化を可能にするという意味では、この医薬分業の制度自体は決して悪いものではないと思っております。優しくない面を持つ医薬分業の制度かもしれませんが、対応する薬剤師は優しい薬剤師が対応していると思いますので、そういう観点からも評価をしていただければと思います。

 それからもう1つ、ご発表の中で、 16 ページの「かかりつけ薬剤師について」と書いてありますが、松本構成員もおっしゃいましたように、制度という意味で、前回の調剤報酬の改定で、かかりつけ薬剤師・薬局という言葉が使われてはおりますが、これはそもそもここにありますように、“これまで顔見知りの薬局の相談で充分”であると、これが正にかかりつけになっている薬局、かかりつけになっている薬剤師ということに言い換えれば、こういうふうに薬剤師も十分お役に立っていると理解もできるのではないかと思っておりますので、まだ周知が十分ではないという実態もありますので、このかかりつけ薬剤師のいろいろな機能をこれからもお知らせしていきたいと思います。そういったことがポリファーマシーの、いわゆる情報の一元化において、町の薬局がする役割がたくさんありますので、そうご理解いただければうれしいです。

 もう1点、林先生に御質問したいのですが、 23 ページの「薬剤削減と他の医療機関との情報共有」の退院時の業務の部分です。“処方変更についてかかりつけ医への情報提供”、それから“薬局への情報提供”、“ MSW ・ケアマネジャーへの情報提供”とありますが、情報提供というのが非削減群と削減群の比較のところで、まだ提供の比率がなかなか伸びていない、というのは、具体的に何か背景や原因があれば教えていただきたいと思います。

○林構成員 御質問ありがとうございます。この学術集会での報告と報告書については私も目を通しているところなのですが、その頻度の違いについて考察している状況にはなかったように思います。現場にいる身として考えたときに、今実際に退院時の、地域の薬局の方と一緒にカンファランスをやろうと思うと、意外と日程調整等に関してはハードルが高い現実に直面しているところがあって、どうやって乗り超えていって、患者さんの薬物療法を引き継いていかなくてはいけないかということは重要な課題だと思っています。

 ここは数字でしかないので、その内容の濃さという意味で言えば、恐らくより薬剤師同士で踏み込んだ話ができているのが、 9.0 %と 12.6 %で、もう少し飲み方の嚥下ゼリーであるとか、そういうような問題にとどまることであったとしても、服薬に関する引き継ぎをケアマネジャーさんたちとも、あるいは MSW の皆さんと、それがどんなお世話をしてもらえるところかというような相談がされているということもあって、これはある定点に関するアンケート調査に関する集計ですので、御質問の点についての明確な考察が多分報告会の際にはされてなかった。もうすぐ活字になると思うので、確認はしておきますが、多分、そういう量的な問題点と質的な問題点との双方を考えていくという意味で言うと、数字だけで、ゴールに達している達していないは決められないと思います。いずれにしろまだ進めていかなければいけない事業ではあると思いますが、そこの数字の多寡を今問うほどのものではないという認識を持っております。

○島田構成員 なかなか退院時のカンファレンスに同席できないというのは、1つの問題として私たちも認識しております。そういう中でおくすり手帳等のそういった紙の媒体とか、電子媒体とか、こういったものが更にそれを補完する意味で活用できるといいかなと思っておりますので、今後も薬薬連携といいますか、町の薬局薬剤師と病院薬剤師さんとの連携が更に深まるような取組をしていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○印南座長 他にございますか。

○大井構成員 林構成員に御質問したいのですが、スライド 21 とか 24 のところについてです。スライド 21 で、薬剤削減されて、その後、中止した薬剤の健康への影響も評価する必要があるというようなことを書かれているのですが、ここで削減された薬剤、薬剤は難しいかもしれませんが薬効群とか、スライド 24 のところで、副作用発現時の対応として処方を中止・減量した経緯に関する情報共有、また副作用未然回避のそういう情報共有等、これは薬効群である程度絞られたのか、それとも、それは絞られない、病院によってそれぞれ違うのかというところをお聞きしたいのです。

○林構成員 御質問ありがとうございます。この内容に関しては、削減のあり方をこのグループは調査したものと思いますので、薬効群別に減らしやすい、減らしにくいということを重点に置いている解析ではないと記憶しています。

 もう1つ、先ほどの 24 ページのほうは、プレアボイドのことも含めてですので、やはり副作用の原因になっている薬剤は中枢神経薬剤にしろ、抗菌薬にしろ、プレアボイドの中で見えてくるものにもそういったものがございますし、循環器用薬もありますしということになっていて、それは私どもの印象としては副作用被害救済制度、 PMDA のほうに出ている重篤なものを私たちも防ごうとしていますので、比率は似ている印象を持っています。この調査班のほうで、そこを踏み込んでいるというものではないことを御了解いただければと思います。

○大井構成員 ありがとうございました。

○印南座長 他にいかがでしょうか。

○水上構成員 余宮先生に教えていただきたいのですが、よろしいですか。私も抗ドパミン作用のある薬がやはり懸念されるというのは賛成です。お話の中でせん妄に対してベンゾジアゼピンを用いることをおっしゃられたのですが、通常、高齢者の場合はベンゾジアゼピンは逆にせん妄を起こしやすいということが言われていると思うのですが、どのような薬剤をどのように使われるのかを教えていただきたいです。

○余宮参考人 ありがとうございます。どのような薬剤というのは、ベンゾジアゼピン系でということですね。

○水上構成員 内服ではなくてということですね。

○余宮参考人 内服と注射、どちらかを患者さんの状態によって選択します。注射のラインを付けること自体が患者さんを混乱させてしまう場合には、内服薬となります。もちろん、内服が困難な方は、がんの終末期だと多いので、ミダゾラムやフルニトラゼパムなどを使います。

○水上構成員 少しセデーションをかけるという意味ですね。

○余宮参考人 そうですね。やはり夜間、人の目がないときにはきちんと鎮静をしてさしあげることが、患者さんの安心・安全と QOL を、尊厳を守るために必要だと思っております。

○水上構成員 分かりました。もう1点ですが、多剤併用の観点からの話ですが、がん患者さんにはうつ状態が高率にあると思います。以前のデータだと、がん患者さんのうつに対する抗うつ薬のエビデンスというのはあまりなかったように思います。一方で、 SSRI は、出血のリスクのある患者さんに対して注意しなくてはいけないということが言われています。 NSAIDs を使う方が多いがん患者さんのうつに対する SSRI NSAIDs の併用に対して、お話を聞いていて、少し注意しなくてはいけないという感じを持ったのですが、先生の御経験とかそういう報告というのはあるのですか。

○余宮参考人 是非、それを記載して進めていただきたいと思います。私も今勉強不足で、 SSRI NSAIDs の併用が出血のリスクを高めるというのは初めてお聞きしました。

○水上構成員 いや、私自身もデータを持ってないのですが、高齢者で出血リスクのある方の SSRI は注意すべきという話があるので。

○余宮参考人 ないのですね。私の施設自身が、余り SSRI を使用していないということもあるかもしれません。がん患者さんのうつ病の発症率は5%と、他の慢性疾患に比べて高くはないという特徴もあって、がんという死に直面したような状況なので、まずはきちんと夜眠れるとか、お話を聴くなどして、抗うつ薬までいかないで対応ができるよう努力をし、どうしてもこれは抗うつ薬が必要だなというときに精神科の先生にお願いをして抗うつ薬ということです。そのときも SSRI というよりも、むしろ SNRI を使われたり、新しい NaSSA みたいなものを使われているのをよく見かけます。

○水上構成員 どうもありがとうございます。

○余宮参考人 ありがとうございます。

○印南座長 他に。樋口先生、お願いいたします。

○樋口構成員 ありがとうございます。本日は私どもの調査を発表させていただき、また皆様には大変適切なコメントをいただきまして、本当にありがとうございました。何分にこの 1,155 人の自由回答というものについては、まだ私たちもきちんと分類分析などいたしておりません。これからそのような作業をいたしました上で、本日、この会はこれだけ各業界の錚錚たる先生方がそろっていらっしゃいますので、厚労省へはもちろんのこと、あるいは薬剤師の業界の方、医師会あるいは製薬業界などに、それぞれの要望書をまとめまして、提出したいと思っておりますので、どうぞその節はよろしくお願い申し上げます。

○印南座長 他に。池端先生、お願いします。

○池端構成員 ありがとうございます。私も皆さんと同じで、本当に樋口構成員、それから余宮参考人のお話を聞いて、非常に参考になりました。特に、樋口構成員のお話は、お元気な高齢者で、もの申せる高齢者の方々、今後その方が弱ったときに、本音はここだよということが非常に明確に出ていたと思うので、これは是非ガイドラインに生かせる方向で考えられればと思っております。

 余宮参考人のお話は、私も在宅でのがん患者診療をやっている人間にとって、高齢者の除痛率が非常に低いというのは本当に意外でしたが、よく考えたら確かにそうかなという感じがしています。特に、高齢者のがん患者のポリファーマシーを考えると、一方で除痛しなくてはいけない、一方で除痛が難しいが、なおかつ、いろいろな有害事象が出やすく、制吐剤も使わなくてはいけない、あるいは便秘薬も使わなくてはいけないということがあって。個人的には、やはりこれは何かポリファーマシーの考え方の1つの大きなジャンルとして捉えられたらと思うので、またWG等で意見させていただきたいと思います。

 1点、林構成員に質問です。蒸し返すようで申し訳ないのですが、 21 ページの松本先生が懸念を示されている病床機能区分のことなのですが、このまとめ方が正しいかどうか、私も少し疑問に思う点があります。この中で、回復期、慢性期にポリファーマシーの減薬が多かったということのコメントに、「中止した薬剤の健康への影響を評価する必要がある。この評価には一定の入院期間が必要であることが関与している可能性が考えられた」とあります。確かにこれもあるかとは思うのですが、実はこの回復期、慢性期というのは包括的医療になっていて、薬剤費が基本的に包括になっているわけです。慢性期病床の立場としては、そういうバイアスが関わっていることが一番大きいのではないかという気がするのです。それが1点です。だからこそ、この図で見ると、ポリファーマシーが多いと言われている急性期病院から回復期が、このギャップが余りにもあるのはいかがなものか。松本構成員がおっしゃったように、急性期の中にもそうでないところもあるので、もっとこのギャップを縮めるような形を、急性期の退院時に橋渡しすることがやはり大事なのかなという気がしているのですが、それについて、いかがですか。

○林構成員 御質問と御助言ありがとうございます。このグループの解析の、私自身が主担当でなかったために、本日の段階で適切な回答ができない点はおわびしないといけないと思っているのが1点です。

 御指摘のように、1つの事実が見えてきたときに、それに対して影響し得る因子が幾つあって、そこをどういうふうに検討していくかというのは、サイエンスにとっては大事なことなので、そのまま報告書から今回は引用させていただきましたが、解析をしたグループとも少し確認をしてみます。先生が御指摘のような因子も一定の範囲で関与していることは推定されると思いますので、その辺の寄与度について、このグループが解析をしている材料が何かあるようでしたら、また追って御報告させていただければと思います。御指摘ありがとうございました。

○印南座長 他にいかがですか。それでは、議題2についてはこれで終了としたいと思います。今後の予定について、事務局のほうから御説明をお願いします。

○課長補佐 本日は活発な御議論をありがとうございました。次回の検討会の日程については、来年、平成 30 年3月9日、金曜日、 16 時からを予定しております。場所等の詳細については、追って事務局より御連絡させていただきます。なお、本日の議事録については後日送付させていただきますので、内容の御確認をお願いいたします。修正、御確認いただいた後には厚生労働省のホームページに掲載いたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○印南座長 本日はどうもお疲れ様でした。これにて閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)

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