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2017年11月30日 第6回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録

雇用環境・均等局雇用機会均等課

○日時

平成29年11月30日


○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階)


○議題

(1)前回ご指摘いただいた事項等について
(2)主な論点(案)について(職場のパワーハラスメント防止強化等のための方策)
(3)その他


○議事

 

 

○佐藤座長 

それでは出席を予定していた委員の方はお着きですので、第 6 回職場におけるパワーハラスメント防止対策についての検討会を始めます。今回から、吉住委員に代わって、漆原委員が就任されておりますのでよろしくお願いします。本日は、安藤委員から御欠席の御連絡を頂いております。また、杉崎委員と原委員は、業務があるということで、途中で退室されますので、時間のバランスで早めに御意見があれば伺えるような運営にさせていただければと思います。カメラ撮りはこれまでということでよろしくお願いします。

 早速ですが、本日のメインは、議題 2 の「主な論点 ( ) について ( 職場のパワーハラスメント防止強化等のための方策 ) 」について御意見を頂きます。最初に、前回御指摘いただいた事項等について、事務局から資料を用意していただいておりますので、それを御説明いただきます。さらに、議題 2 についても関連した資料を用意していただいているということで、それを先に御説明いただいて、議題に入りたいと思います。まず、議題 1 と議題 2 に関わる資料について御説明いただきます。

 

○堀井雇用機会均等課長 

資料の御説明に入る前に、本日の配布資料について若干補足をさせていただきます。まず、議題 1 に関連する資料 5 について説明させていただきます。資料 6 については、これまでに頂いた御意見を要約してまとめたものですので、後ほど適宜御参照いただいて説明は省略します。なお、お手元にこのような冊子を配らせていただいております。こちらは、 UA ゼンセンの流通部門で調査をされたもので、本日、浜田委員から御提供がありましたので参考に配布させていただいております。

 それでは資料 5 について御説明します。これは前回、原委員から御指摘があった点に関連する資料です。男女雇用機会均等法におきまして、セクシュアルハラスメントについて現在措置義務が講じられていて、その制度が導入されたことによってどういった効果があるのか。それに関連する資料ということで用意させていただきました。

 資料 5 1 ページ、セクシュアルハラスメントの防止措置の制度化の経緯についてです。そもそも平成 9 年になりますが、事業主にセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の配慮を義務付けるという制度改正がなされたところです。このための改正法は、平成 9 6 月に公布され、平成 11 4 1 日に施行されております。なお、この規定を具体化するための指針については、平成 10 3 月に告示されて、改正法と同日に施行されております。

 続きまして、平成 18 年にはここの部分について、防止のための雇用管理上講ずべき措置ということで義務化されたところです。さらには、従来、平成 9 年の制度改正のときは対象が女性労働者だけでしたが、平成 18 年の改正におきまして、対象が男女労働者になっております。この改正法は平成 18 6 月に公布され、平成 19 4 1 日に施行されました。そして、指針は平成 18 10 月に告示されて、改正法と同日ということです。

2 ページはそれぞれの条文を付けており、かつ、その配慮義務及び措置義務のときの実効性確保のための仕組みについて例示したものですので説明は省略させていただきます。

3 ページ以降は、このような形で制度化された考え方や背景が書いてあります。そもそも配慮義務を設けたときですが、 1 つ目の○、セクシュアルハラスメントについては概念が確立していなかったため、場合によっては、セクシュアルハラスメントの概念が無限定に拡張されることもあり、企業における組織的・体系的な対応を困難にしていたと。そのため、職場におけるセクシュアルハラスメントの概念を整理したということで、下の※ 1 、女子雇用管理とコミュニケーションギャップに関する研究会において議論されてまとめられております。

 そのときに指摘をされた点としては、そもそもセクシュアルハラスメントが発生する企業は、女性の役割に対する誤った認識やコミュニケーションの不足、さらには企業の女性活用方針の未確立、こういった点など、職場環境や雇用管理上の問題を抱えているということが指摘されたところです。結局、男女雇用機会均等法は、男女の職場における均等待遇を進めるための法律ですが、そのような職場環境、あるいは雇用管理上の問題を抱えている職場におきましては、配置、昇進、教育訓練、福利厚生など、男女の均等待遇を進めるための前提条件を欠いているだろうということで議論が進められていました。

 次の○です。そのときにセクシュアルハラスメントという行為自体に着目して、その行為者自身に対して懲戒や懲罰といったことも議論されたわけですが、そのようなことのみでは、職場環境や雇用管理上の問題の根本的な解決にはならないという指摘もありました。関連する国会答弁を参考で付けております。

4 ページ、もう 1 つのポイントとして、セクシュアルハラスメントの被害者にとっては、事後に裁判に訴えるということは躊躇せざるを得ないという部分もあるので、未然の防止対策が重要であるという指摘がありました。このような議論を経て、平成 9 年に事業主の雇用管理上の配慮が義務付けられております。ただ、その後もセクシュアルハラスメントについての相談件数が引き続き多く、深刻な事案もあったこと、そして、男性労働者に対するセクシュアルハラスメントも見られたことから、平成 18 年の制度改正に至っております。

4 ページ、下のほうに下線を引いてある部分です。セクシュアルハラスメントの防止措置義務の法的効果の所で、このような義務は、私法上の履行請求権や損害賠償請求権に直接基礎付けるものではないと考えております。データで関連するものを 5 ページ以下で付けております。そもそもセクハラの防止措置の制度化以前の状況ということで、平成 4 年のものが 5 ページです。これは性的いやがらせ、セクシュアルハラスメントを少なくするための方策を企業と女性に聞いた結果です。これを御覧いただくと、項目として、例えば左側の企業が高い割合として挙げているものが、 3 つ目にある困ったときに相談できる社内の相談窓口、相談相手を確保する、こういった割合です。ただ、これと同じような割合で、一番上の所にありますが、「女子自身が毅然と対応する」あるいは「男子社員の意識教育を行う」といったことが多くなっております。右側の女性のほうも、「女子自身が毅然と対応する」というのが 4 割を超えている状況です。

6 ページ、これは防止措置の制度化、平成 9 6 月時点の調査です。セクハラ防止措置の実施状況を聞いたところ、当時は企業の中で実施をしていないという割合が約 8 (79.9 ) あったという状況です。いろいろな調査を企業規模別に見ますと、かなり傾向は違いますが、この調査結果も同様ですが、全体として 8 割近くが実施していないという状況でした。

7 ページ、これは直近の平成 28 年の状況です。セクハラの防止措置の現在の状況ということで、これも非常に残念なことに企業規模で実施割合に差があります。例えば下から 5 番目の「相談・苦情対応窓口の設置」については、大企業になりますと 96.1 %ということで、 100 %近く措置をしているわけですが、企業規模が小さくなるとどんどん少なくなるという状況です。

8 ページ、これは対応の難しさということで、パワーハラスメントについてもこの検討会で発生したときの対応の難しさが何度も指摘されております。これはセクシュアルハラスメントに関して対応として難しいと感じた企業に内容を聞いたものです。これを御覧いただくと、真ん中辺りにある「当事者の言い分が食い違う等、事実確認の難しさ」を挙げる企業の割合が高く、次いで、一番上の所で、「プライバシーの保持が難しい」という企業割合も高くなっております。

9 ページ、男女雇用機会均等法関係の相談件数のトータルのものと、セクシュアルハラスメントに限ったものということで、時系列で挙げております。色が濃くて長い棒が全体、低くて薄いものがセクシュアルハラスメントということです。余り大きい傾向というような、分析的なところまでは見出すことは難しいかと思います。ただセクシュアルハラスメントの相談件数については平成 16 年度、平成 28 年度、統計の取り方を少し変えたことはありますが、いずれにしても、高い相談件数があるということで 7,000 件前後と言えると思います。例えば平成 19 年度は 1 5,000 件を超えて、相談件数が多くなっておりますが、これは事業主からの相談件数も含んでおりますので、制度改正の直後は事業主からの照会が多くなる傾向があることに起因するものです。そういったことがあるかと考えております。資料 5 の説明は以上です。

 引き続いて、議題 2 の「主な論点について」の関連の資料 1 ~資料 4 まで連続して御説明します。資料 1 、前回パワーハラスメントの定義、対象をどうするかというところに論点を中心に置いて御議論いただいた際も、主立った柱立てをお配りしましたが、今回も同様な形で幾つか御用意しております。

 まず主な論点として考えられるもので、 1 つ目の「対策の基本的な方向性について」です。まず 1 つ目の○です。現行制度の下で対応できていない点は何があるのだろうか。また、職場のパワーハラスメント事案の特色を踏まえて、どのようなアプローチをしていくことが効果的かというのが 1 点目です。 2 点目は、パワハラを防止する取組について、何らか統一的に取り組むとした場合、労使にとってどのようなことが明確化されると職場において実効性のある取組が進められるかということです。 3 点目は、パワハラについて民事法上の効果を持たせる規定を設けることについてどう考えるか。最高裁判例という形で確立したものはないのですが、そのような中でどのような定義、どのような効果を持たせることができるのかということです。 4 点目は、パワハラという行為自体に着目して、その行為を禁止する、あるいは行為者を制裁することについてどう考えるか。 5 点目は、現在はある意味、自主的に取組をしていただいていると、各組織、各職場でパワハラ防止のため実施をした自主的な取組のいろいろな例がありますが、そういったものを見つつ、現在事業主や関係機関などにより取り組まれている中身の中で、どのようなものが効果的、あるいは必要かと考えられるかというものです。

 次は、セクシュアルハラスメントというのは、ハラスメントということで、既に法的な措置もされておりますが、 1 つ目の○は、特にパワハラとセクハラは複合事案が多いということもあるので、対応としてどのようなことが効率的、かつ効果的かと。方策として共通点があるとしたら何かという点です。 2 つ目は、共通点ではない、逆にパワハラの特色を踏まえてどのような取組、効果的な防止策があるかという大きな柱を立てております。

 資料 2 、現在、様々な制度、刑事法、民事法ということで、職場のパワーハラスメントが発生したときに適用されるものがあるわけですが、その概要です。大きく事後的な措置、予防的な措置に分けて、主立った公として提供しているツール、措置・対策を中心にまとめております。職場のパワーハラスメントについては、今、円卓会議ワーキングチームの報告書の中の概念、あるいは 6 類型なども勘案して、様々な対応があると考えられるわけです。そういった中で、例えば刑事上の制裁ということで、その内容によっては傷害罪、暴行罪などの刑法犯ということで後者の処罰に結び付くようなケース。あるいは民事上の救済ということで、裁判、労働審判などによる損害賠償等の請求。あるいは紛争解決手続 ( 和解の仲裁 ) などで、 ADR が利用されるケース。そういった手法が用意されていると思います。

 また、相談対応ということでは、総合労働相談コーナーにおける対応ということで、これも以前の検討会で、いじめ・嫌がらせの相談件数の増加などについては御覧いただいたところですが、そのツールです。助言・指導は、同じく個別労働関係紛争解決促進法に基づいて、労働局長が助言・指導を行うということがあります。同様に、都道府県労働局の紛争調整委員会によるあっせんも実施されております。

 これも前回、精神障害の労災認定に限って御説明しましたが、非常に残念なことに、何らかの形で業務上の事由によりまして負傷、あるいは精神障害等による様々な事情が発生した場合の保険給付ということで対応されたものもあります。予防的措置については、周知啓発が主なことになると思いますが、現時点では、具体的に法令等の根拠、あるいは行政的な形でかっちりとした根拠があってやっているものはなく、円卓会議の提言に基づいて自主的な取組がなされているということです。

 行政庁としては、その取組を促すためにポータルサイトの運営や企業向け対策導入マニュアルを予算事業として実施して取組をお願いしております。もう 1 つは「過労死等ゼロ」緊急対策に沿ったメンタルヘルス、パワハラ防止対策の中で、これは下の※に書いてありますが、メンタルヘルス対策に係る企業、事業場への個別指導のときにマニュアルなども活用して指導を行う。そして、精神障害の労災認定が複数あった企業の本社へパワハラ防止も含めたメンタルヘルス対策の指導を実施しています。

 資料 2 2 ページ以降は、今申し上げた現行制度に関連する条文を参考ということで付けております。 3 ページの所で、これは以前、野川委員からも御紹介がありましたが、労働契約法の第 5 条に「労働者の安全への配慮義務」が設けられており、この解釈通達の中におきましては、生命・身体等の安全の中には心身の健康も含まれるということが明記されております。

 資料 3 、これは論点の中で、今、実施している効果的な取組などの関連ということで、既にお出ししている資料もありますので、その点については説明を省略しポイントだけを説明します。円卓会議のワーキンググループ報告の中では、労使が主な取組ということで進められている 7 つの取組が掲示されております。この資料の左側にある 5 つの○は、主に事前の予防措置に関わるような部分です。右側の 2 つは、発生してしまった場合、再発防止のための措置というイメージです。書いてある内容は御覧いただければと思います。特にパワーハラスメントの関係で、留意点、その取組の例を記載されているものがあります。左上の「留意点」の中で、特に経営幹部に対策の重要性を理解させると、経営幹部の認識は極めて重要だということだと思います。左側の「教育する」の所に「留意点」がまた併せて書いてあります。人権、コンプライアンス、コミュニケーションスキル、こういう関連が深い研修と併せて行うことで、相乗的な効果を期待する。そして担当者の養成が必要だということが留意事項として挙げられております。

 不幸にしてそういった事案が起きた、あるいは相談があるといったときは、右側の「留意点」ですが、やはり、上下関係や職場の上司からの行為、こういったことについては、なかなか調査に協力することは難しいことがあるからだと思いますが、留意点の中には、相談者や相談内容の事実確認に協力した人が、不利益な取扱いを受けることがないようにし、その旨を明確に周知するとか、あるいはプライバシー、人格、そういった相互の人格の配慮の対応の必要性が指摘されております。 2 ページ以降は説明を省略したいと思います。平成 28 年度の実態調査から、パワハラの防止のための取組を意図して何かをやっているかとか、あるいは 3 ページについてはどういったことをやったか、どういったことが効果的と実感できたか。 4 ページは、どういう取組による効果があったかということです。

5 ページ、これは今回初めて付けるものですので御説明します。データ元としては、平成 28 年度の実態調査です。平成 28 年度の実態調査の中で、パワハラの経験の有無について聞いた項目があります。右側の上に凡例がありますが、現在の職場で過去 3 年の間にパワハラの経験がある者、その下は、経験がない者、これは受けたことも見たことも、相談を受けたこともないという者、でまとめた調査結果があります。ある職場の属性が、グラフの下に書いてあります。それぞれごとにこの経験の有無についての割合を比較してみたということです。そのパワハラ経験があった、あるいはない、これが同じような割合の属性の所というよりも、むしろパワハラの経験があったと回答した者の割合がないという者よりも極めて高い、そういった要件、職場の属性は何かというのを見てみますと、その差が特に大きく、その差がポイントになるわけですが、大きいものが下に書いてある項目の中で点線で括ってある部分です。そもそも右側のほうに行けば行くほど、回答者の割合が少なくなりますが、例えば左側になりますと、「残業が多い / 休みが取り難い」あるいは「上司と部下のコミュニケーションが少ない」、こういった職場については、「パワハラ経験がある」と答えた割合が、「かなりない」という割合よりも多くなっていると言えると思います。同じように、「失敗が許されない / 失敗への許容度が低い」あるいは「業績が低下 / 低調である」、こういったところについても同様の傾向が見て取れるかと考えております。

6 ページ、これは私どもが作成したパワハラ対策の取組の好事例集です。この中から特に創意工夫のある取組、先ほど御覧いただいた円卓会議のワーキンググループの留意点とともに紹介されたポイントについて創意工夫が見られることを抜き出したものです。 4 つ大きい欄がありますが、左上の所に、経営幹部に対策の重要性を理解される取組が重要だという留意点がありました。この中で例えば、 N ( 製造業、 2 6,000 規模 ) の例では経営幹部・管理者を対象とした研修を全管理職に受講必須としているという取組がありました。

 左下は、コミュニケーションスキルなどと組み合わせた研修という好事例です。 K ( 製造業、 2,500 人規模 ) は、リーダーを対象とした部下育成シーンを再現するロールプレイを撮影して、それを客観的に見る。よくスポーツの練習をいろいろな所で客観的に自分を見ることは大事なことだと指摘されていますが、こういう部分においても、こういうツールを確認する。その下の X 市は市役所の例です。アンガーマネジメントについて研修を実施する。コミュニケーションについて取り上げて、コミュニケーションギャップということにも留意しつつ、アンガーマネジメントということで、要は行為者とされる人についても、そのやったことだけではなく、どうやってマネジメントをしていくかということで、職場環境を整えていくという取組をされております。

 右上、関係者と連携をする。関係する組織などと連携してやっているということで、上の Z 社はハラスメント委員会を開催している。下の B 社については、年 2 回のハラスメント防止月間を設けるとともに、安全衛生委員会などの既存の委員会で議題として取り上げてやっているという例です。右下は、実態把握ということで、パワハラがあるかどうかアンケートで実態を把握した上で、それに基づく様々な取組をしている例ということです。

7 ページ以降についても時間の関係で説明は省略いたします。これは、パワハラ、セクハラ、マタハラ等との比較を出してくださいという御要望がありましたので、その資料を前回出させていただきましたが、 10 ページが一部ですが、それをもう少し細かく書かせていただいたものが 7 ページ以降で、取組例ということで参考にしていただければと思います。

 資料 4 、こちらは対応方針ということで、今までもこの検討会の中で御示唆があった点がありますので、そこについて、それぞれ効果、あるいは課題ということで、私どものほうでまとめたものです。左側の「対応方針」の一番上の所です。パワーハラスメントを防止するためにどうするかということですが、事業主が取り組む措置を明確化するといったものが今は全く何もないので明確化して取組を促すということです。これも 2 つ大きく指摘されております。 1 つ目の上のほうは、予防措置、事後措置について、事業主に対応を義務付けるということです。この効果としては、その事業者自ら取り組む措置によりまして、職場風土の改善や防止対策が促進されるということがあり、また、違反があったときに義務化されている部分についての行政の指導が考えられると思います。

 もう 1 つは、御指摘の中でもいろいろありましたので、セクハラやいわゆるマタハラについて相談窓口を 1 つにして実施している企業も多く見られるということもありましたので、そうだとすれば、既に課された措置義務と複合的・総合的に取組ができるのではないかという点を指摘させていただきます。右側ですが、ただ一方でパワーハラスメントという、個人の人格権の侵害に結び付いたり、不幸な事案に結び付いたりする件について、行為者に対する制裁としての効力は弱いのではないかという指摘があり得ると思います。

2 点目は、こちらの検討会でも今まで指摘があった点が次の 2 つに絡みますが、パワハラについての共通認識がないという状況の中で、義務として課されたという状況で、取りあえず義務に対応するために措置をするが、実際は蓋を開けてみると、形だけであったり、現場で自主的な対応が伴わないといった懸念を書いております。セクシュアルハラスメントなどとの違いでも御懸念がありましたが、やはりパワーハラスメントについては、これはどう考えても問題があるだろうという、検討会でも真っ黒な事案という言い方も出ていたと思いますが、そういう事案から、そうではないグレーで、業務上の指導等という形で議論された事案もあり、裁判例などでもそういった争点があったと思いますが、そういう境界線が引けるのか、定義が明確化できるかというのが 3 点目の課題で議論があったかと思います。

 その下の欄ですが、予防措置、事後措置について自主的な対応を促すということです。これも事業主による取組ですので、 1 点目と共通の職場風土の改善も含めて、それぞれの企業の実情、そういったものも含めた防止対策の促進が 1 点です。

 更に 2 つ目ですが、これまでの検討会でも、例えば業種によってもいろいろなパターンがあるとか、あるいはハラスメントの内容によってもいろいろなものがあるのではないかという御指摘があったと思います。そういったことが幅広く取り上げられる余地があるのではないかということで、先進的な取組や特定の業態向けの取組も含めた幅広い取組の推奨が可能ではないかというのが 2 点目です。

3 点目は、結局、いろいろな形で創意工夫がある取組が促される可能性を踏まえた上で効果の高い取組を更にフィードバックするということで、現場の実質的な対応を可能にするということが言えると思います。セクハラなどとの複合的・総合的な取組、これは 4 点目で共通です。ただ、課題としてはこちらに書いてあるとおりで、 1 点目と同じように、行為者に対する制裁としての効力が弱い、行政等による強制力が弱いということがあると思います。

 次の大きな 2 つ目ですが、パワーハラスメントが民事訴訟、あるいは労働審判の対象となるという形で、違法性を明確化するという御意見があったと思います。違法性の明確化の仕方として、 1 つ、こちらでは事業主がパワーハラスメントが起こらないようにする義務を明確化するという形で、効果としては、民事訴訟や労働審判など、損害賠償請求の民事上の救済手段の活用を促進するということがあると思います。ただ一方で、この課題としては、現在これも裁判例のときに見たような形で、不法行為や安全配慮義務違反、債務不履行、そういった形で今事案として存在していますが、場合によっては労働契約法第 5 条ということもあると思います。こういう中で、最高裁の判例という定着した部分がないので、どういう形で明確化の内容をしていくかということが 1 つ論点としてあるかと思います。

 最後ですが、これがパワーハラスメント行為自体の禁止ということで、これは極めて強力な、この中でも強力な形にはなると思います。効果ということで、 2 つ目の○です。不法行為として損害賠償請求の対象となることが明確になることで、民事上の救済や事業主による防止対策が進むという観点もあると。これもこれまでの検討会で議論があったと思いますが、どういう範囲を画するかというところが明確になるかどうか。それが暴行など悪質な言動については刑法犯ということもあると思います。更にもう 1 つ、先ほどセクシュアルハラスメントの導入の件のときにも議論としてあった内容ともかぶる所があります。行為者の制裁だけでは、職場風土の改善や根本的な解決までにはつながらないのではないかという指摘と同じものが該当しうるのではないかということで、課題として書かせていただきました。少し駆け足になりましたが、私からは以上です。

 

○佐藤座長 

議題 2 です。これは、今の一番最後の資料 4 の所です。職場のパワーラスメント防止強化のためにどういう取組が必要かということで、メインは資料 4 を、もちろんこの中だけという意味ではなく、これを少し参考にしながら、どういう防止強化の取組が必要かという議論をしていただきます。それに関係して、特に資料 2 とか資料 3 を御説明いただいて、あと、資料 5 は前回のということなのですが、まず最初に資料 5 について何か御質問があれば、先ほど私はそれを聞かなかったので、ではどうぞ。

 

○漆原委員 

資料 5 4 ページのセクシュアルハラスメント防止措置義務の法的効果について、 2 行目に厚生労働大臣の行政指導とありますが、ここで言う行政指導とは、例えば実効性があるかどうかに関わらず、窓口の設置など形式上の措置がなされていれば行政指導の対象に該当しないのでしょうか。つまり、指導の対象になるのは、形式上の防止措置に関してのみという理解でよろしいのでしょうか。

 

○佐藤座長 

もう一度、すみません。

 

○漆原委員 

ここで言う大臣の行政指導というのは、実効性の有無にかかわらず、形式上、例えば、窓口の設置とか相談体制の構築など、形式上対応を行っていれば行政指導の対象にはならない。つまり、行政指導の対象はそれのみだということでよろしいかどうかという確認です。

 

○堀井雇用機会均等課長 

行政指導は今、御覧いただいている 2 ページの「平成 18 年改正時」という所が、現在のセクハラの防止義務についての雇用管理上の措置についての規定です。そして、ここに書いてあるとおり、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じているかどうかが行政指導の対象になり、その内容が指針等で明確になっているものです。要は措置が講じられているかどうかが対象になるということだと思います。

 

○漆原委員 

つまり、措置がされていれば行政指導はできないということですね。

 

○池田ハラスメント防止対策室長 

行政指導の場合ですが、単に形式的に窓口があるとかだけではやはり駄目で、実際にその機能が果たされているかどうかを確認しながら、行政指導を進めております。

 

○佐藤座長 

よろしいですか。ほかに資料 5 について御質問があれば。それでは、資料 2 とか資料 3 、議論ではないですが、特に議論は関係ないという言い方は変ですね、資料 2 と資料 3 について、特に今、聞いておきたいことがあればということで。資料 2 と資料 3 、関連資料ということで御説明いただいた部分についてです。

 

○中澤委員 

資料 2 は事後的措置と予防的措置と分けておられまして、予防的措置については、「周知、啓発等」と書いてあるのですが、 2 ページ目の個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律において、「未然に防止し」うんぬんという第 3 条があります。ここを見ていくと、最後に「相談その他援助」あるいは情報提供ということが書いてありますので、この事後的措置のところに助言指導とか相談対応というのがありますが、これも予防的措置の中に含まれるようなカテゴリーで整理すべきものではないのかと思いますが、いかがでしょうか。

 

○堀井雇用機会均等課長

 確かに御指摘のように、第 3 条では、このような形で未然防止、自主的な解決の促進という目的がありますので、あらかじめ相談に来られるケースもあるかと思います。それで、この資料の中で、実は同じように予防と事後でかぶる部分があります。例えば、提言を踏まえた自主的な労使のという、※の 1 も両方にかぶるのですが、どちらかと言うとこちらのほうが中心にやっているというところで、予防のほうに入れたということがあります。したがって、おっしゃるとおり、全くこれに入れたから他方は一切ないということではないことは補足をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 

○佐藤座長

 ほかに資料 2 と資料 3 で確認しておきたいことは。

 

○内村委員

 資料 3 にある円卓会議ワーキンググループ報告における取組事例の 1 ページ目の右の「相談や解決の場を設置する」については、設置している企業も多いとは思いますが、外部の専門家との連携については難しいのではないでしょうか。具体的にどういうことをイメージしているのか。例えば、先ほどから労働審判の話が出ていますが、第三者が中立的・客観的な立場で判断できることを想定しているものなのか教えていただければと思います。

 

○佐藤座長

 円卓会議で何か書いてあったと思うので。

 

○上田雇用機会均等課長補佐

 円卓会議のワーキンググループ報告の中で、御指摘いただいた所については注書きがあります。例えば、産業カウンセラーと連携している企業が存在する。また、メンタルヘルス相談の専門機関と連携することも考えられることを御紹介しています。そういう人たちと相談しながら対応している企業がいるということをワーキングでお示ししていた次第です。

 

○内村委員

 ということは、どちらかと言うと防止と言うよりも、パワハラの被害に遭った後のケアというイメージでよろしいのですか。

 

○上田雇用機会均等課長補佐

 はい、そうだと思います。解決するための手段としてそういうことをやっている企業がいたということで紹介しています。

 

○内村委員

 分かりました。

 

○佐藤座長

 ほかには。

 

○中澤委員

 資料 3 5 ページ目の、パワーハラスメントに関する職場の特徴の調査の比較は、点線で囲っている所を中心に御説明いただいていたのだと思います。パワーハラスメントの経験のある所とない所の比較ということで、一番左側の「上司と部下のコミュニケーションが少ない」という御指摘は、御説明の中である程度分かったのですが、その右側の「失敗が許されない / 失敗への許容度が低い」「業績の低下 / 低調である」、一番右の「 3 年間で吸収・合併・人員削減があった」「従業員間の競争が厳しい」等という、右側の 3 つは、正にこれは企業ベースとして求めていかなければならないファクターであって、例えば「業積が低下する / 低調である」というところは、これがベースになっていて、いわゆるパワーハラスメントが顕著に見られるという指標に使うのはいかがなものなのかと思うのですが、いかがでしょうか。コミュニケーションが少ないというのは確かにそうかと思いますが、正に真ん中の、失敗が許されないとか、業績の低下というのは、仕事をしているわけですので、当然のことながら、それは企業としては求めていかなければいけないことであるわけなのです。何か、すみません、うまく言い切れないのですが、企業としての求めるべき項目であると思っております。

 

○堀井雇用機会均等課長

 例えば、こちらの下のほうにいろいろな属性があって、今、御指摘のあった業績が低い所は必ずパワハラが多いとか、そこまで言える因果関係がある資料ではもちろんないとは思っています。なぜこの項目について点線で囲っているかと言うと、先ほどは細かい説明は省略させていただきましたが、経験がある、ないという回答の割合を比較して、経験がある割合はない割合の何倍ぐらいあるかを機械的に見て、多いものを抜き出したという。残業が多いとか、休みが取り難いという項目については、経験があるのは 1.88 倍とか、その隣のコミュニケーションは 2.06 倍と、そういった観点で数字をピックアップしたところ、失敗が許されない所は 2.72 、業績が低下というのは 1.8 ということで、多いほうから書いています。いろいろな属性、いろいろな職場の状況があって、それで職場全体として着目してパワーハラスメントを考えると、そういうきっかけになればというつもりで出しているものです。

 

○中澤委員

 分かりました。ありがとうございました。

 

○佐藤座長

 これは、分かりやすく言うと、働いている人に、過去 3 年間にパワハラの経験があったとか、見たこがありますかというのを聞いて、あると言った人とそうでない人がいるわけです。両方の人に勤務先の職場の特徴を聞いた、全員。両者の職場の特徴で挙げたものの比較だけなので、因果関係で分けたのではないです。多分、業積が低調だと、もしかすると失敗への許容度が下がってしまったりとか。ですから、それ自体というよりかは、そういうことがあると残業が増えたりとかということかもしれない。ですから、直接こう。

 

○中澤委員

 コミュニケーションが少ないというのは、裏を返すと、コミュニケーションを活発にしましょうという方策が出てくるのですが。

 

○佐藤座長

 そういう意味ですね。

 

○中澤委員

 それ以外のところは、これはいかんともし難いものなのです。

 

○内村委員

 私が労働組合の役員や職場で業務をしていた立場から申し上げますと、コミュニケーションが少ない理由は、社内の中でも競争が激しくなっていることや、給与体系や業績評価の関係で、どうしても殺伐としてきていると思います。これは日本の特徴か分かりませんが、人事評価を行う上で、どうしても加点主義よりも減点主義になる傾向があります。そうすると、この 10 年程度の間に評価制度を取り入れる企業が増えてきている中で、ここに書いてある「失敗への許容度が低い」といった傾向が出てきているのだろうと察します。実際に現場で組合役員をやっているときにも、自分に対する評価が不当に低いといった相談を受けたこともあります。しかし、その評価が不当に低いのか低くないのかということも含めて、徐々に職場が殺伐としてきている雰囲気が近年見受けられることを意見として申し上げておきます。

 

○佐藤座長

 中澤委員が言われるとおり、直接的に業績低下だから起こるというわけでもなくて、ただ大事なのは、セクシュアルハラスメントもそうですが、パワーハラスメントが起きたときに、そういう行為を取った人が、その人個人の問題の場合もあるけれども、結構、今みたいに、職場環境とかマネジメントにもあって、ですからその人だけ何か対応すればいいわけではなくて、そこも改善しなければいけない、多分、そういう趣旨も含めてだと思うので、御理解いただければと思います。ほかには。

 

○岡田委員

 今の話に関連して実際の経験談ですが、業績が落ちている職場があって、そうなっていくと、何か皆さんのやる気が落ちてしまい、そうすると、リーダーという人たちが発破を掛けるというか、叱咤激励するわけです。そういう背景も結構あると思うのです。ですから、職場の状況を把握するいろいろな指標があると、その職場の特徴、個人だけでなくて、全体がよく分かって、ここのところをきちんと解決することがまず大事なのだということが見えてくると思います。直接のように見えない設問も状況を把握するのにとても有効なのではないかとは思います。

 

○久保村委員

 今、お話があったように、実際の現場観で言わせていただきますと、業績が悪くなってくると、リーダーへの発破の掛け方、特に経営から現場のリーダーに対しての発破の掛け方はものすごくあります。そのプレッシャーが強ければ強いほど、現場のリーダーは部下に対しての言葉遣いはやはり厳しくなるのが実態です。

 

○佐藤座長

 よろしいですか。それでは、そういうことを踏まえた上で、今日の議題 2 の職場のパワーハラスメント防止強化、これをどうやっていくかということで、一応、これまでの議論を踏まえて、いろいろな意見があったわけですが、大きくここに資料 4 、対応方針を大きく分けて、さらにその内訳という形で整理しました。これ以外ももちろんあったら言っていただいて構わないのですが、これについて御意見を頂きたい。そのときに、多分、セクシュアルハラスメントもそうですが、取組が変わってきています。ですから一応、まずは当面、 5 年後どうするということもあるかも分かりませんが、当面どうするかでまずは議論していただいていいかと思っています。セクシュアルハラスメントの取組もずっと変わってきているので、当面これをして将来的にはここというのもあるかもしれませんが、基本は当面どうするかという議論がまず大事で、将来的にこうするというのがあってもいいと思いますが、メインで議論するのは当面ということかなと思います。ですから、例えばまだ最高裁判例、定着した既判がないと。つまり現状の中でできるだけ早くやるとすればどういう取組からまず始めるべきかということで、御意見を伺うのがいいかと思います。その上で、先ほどお話ししましたように、杉崎委員と原委員はちょっと先なので、まだ時間はあるかと思いますが、議論が進んでしまうと発言の機会がなくなるので、あともう二度と言わないというのではないですが、まず最初に言っていただいて、時間があればですね。

 

○杉崎委員

 資料 4 で、自主的な対応を促すというところで、いわゆる周知とかが重要だと思うのです。確か、前に東商のセミナーの参加者に対するアンケートをこの会議でも取り上げていただいたのですが、そのときに、やはり定義の明確化で各社が困っているということであったり、あと、経営層とか管理職のパワハラに対する意識が低いとか、特にパワハラに対して対応していないという回答結果も少なくなかったので、まずは、現状の 6 類型とか、パワハラ全体のことを周知していくのが大事かというのが 1 点です。

 あともう一点、これも周知に関連するのですが、今回、働き方改革関連法案がこれから施行されますが、その施行を見据えて中小企業のほうで就業規則を改定したり、就業規則そのものを作っていく会社も多いかと思います。厚労省さんのモデル就業規則に 6 類型がびっしり書いてあるのですが、例えば、各自治体が出しているモデル就業規則だとか民間が出しているものを幾つかチェックすると、パワハラが入っていないケースがありますので、そういった自治体とか民間に対するモデル就業規則にちゃんとパワハラを入れてくださいという働き掛けも大事なのではないかと考えております。以上です。

 

○佐藤座長

 そうすると確認で言うと、現状の取組をもう少し進めるという感じでよろしいですか。ここの 3 つではなくて、今の現状の取組を進めるというのがここにないから、そこだということでよろしいですか。ただ、中身はもう少しいろいろやることはあるけれどという御意見という理解でよろしいですか。

 

○原委員

 資料 4 に対応策の例が 4 つありますが、私は一番上の「予防措置、事後措置の事業主の対応の義務付け」という案に賛成です。理由などについて、大きく 2 つ申し上げます。 1 つ目は、最初に説明があった資料 5 です。セクハラへの対応の歴史を見ますと、概念が確立していない、とか、定義が難しい、というのは、何もパワハラに特有な問題ではなくて、セクハラも全く同じだったというのがよく分かります。そして、セクハラについては、対応を行ってきたことによって今現在かなりの効果が上がっていることがあります。こういう歴史的なことというのは、パワハラ対策においても十分参考になろうかと思います。

2 つ目です。セクハラの場合には、「配慮」から始まって「措置」と進んできましたが、これは資料 5 を見ますと、セクハラに関する配慮義務を入れるとき、企業はセクハラ対応をほとんど何もやっていなかったという面があるわけです。今と比べて全くやっていないという状況があったので、最初は「配慮」だったということがあります。しかし、パワハラは、既にワーキンググループ以来、様々な対策が進んでいますので、ある程度下地があることから考えると、その次の段階の「措置」から始めるのがよいのではないかと思います。資料 4 の一番上の対応策の例○1の右側に、課題として、パワハラの共通認識がない、というところはもちろんありますが、これは立法などによってリードするという考え方もあると思うのです。少なくとも、パワハラだけ法的な定義が全くありませんというのはおかしいです。バランスが悪いです。ですので、法律によって多少リードすることも含めて、現時点でセクハラへの対応の歴史もふまえて考えますと、パワハラの場合には、企業に措置などの義務付けを行うことが一番望ましいと感じております。以上です。

 

○佐藤座長

 もう一度、二度目もありですので、ほかのどなたからでも。

 

○小保方委員

 主な論点の資料 1 にも、 1 つ目の○で書いてあるとおり、現行の下で対応できていない点は何かという投げ掛けがあると思うのです。現状で一番問題なことは、再三言ってきていることですが、パワハラが招くことの重大性です。つまり、最終的には命をも奪いかねない事態に発展しかねないことへの認識です。事の重さに対する社会的な認識はやはり十分でないところがありますので、それであるが故に、企業における対策率がまだ半分にとどまってしまっているのが現状だと思います。したがって、これも再三言ってきていることではありますが、まずはできるだけ強制力のある形で法制化を実現する。そして、パワハラは絶対に起こしては駄目なのだと、未然に防止すべきことなのだということを、いかに社会全体の意識を変えていくところにつなげていくかというのが不可欠であると思っています。

 その上で、資料 4 で言いますと、先ほど原さんが御賛成だとおっしゃっていた予防措置・事後措置の義務付けについて、課題の 3 つ目の○に書いてあるような、いわゆる線引きが曖昧だという課題は、過去から言われていることだと思います。この課題を認識した上で、次の一手をしっかりと打っていくことが重要だと思っています。線引きが難しいからと言って対策を怠る、そして新たな悲劇を生むことは絶対に起こしてはいけないと思っているところです。ですので、真にパワハラを撲滅していくという趣旨では、やはりこれまでの延長線上ではない、ガイドラインの対応のみにとどまることは不十分だと思っていまして、しっかりと法制化していくことが前提だと思います。

 先ほど座長から当面の対応について言及がありましたが、これは前回の流れの中で、まずはパワハラに絞って議論するという話がありましたので、それを認識した上ではありますが、もう少し長いスパンで見たときには解決すべきことはパワハラだけではないということです。これも前回から申し上げているとおりですが、いわゆる業務の適正な範囲を超えてなされる精神的・身体的苦痛を与える行為、あるいは職場環境を悪化させるハラスメント、これは、あらゆるものが許されるべきではないと思っているので、すぐに対策を講じることはハードルが高いのかもしれませんが、やはりあらゆるハラスメントを禁じ、あるいは防止に取り組むという新たな基本法を考えることも必要だと思っています。少なくとも、今回スポットが当たっているパワハラについては、一番上の対応策をベースに法制化に取り組むことがマストだと思っています。したがって、絶対このタイミングで中途半端で終わらせることなく、しっかりとした対策を講じるべきだと思っています。報告書の取りまとめは 3 月を予定していると聞いていますが、当然のことながら、必要に応じて、その後もいずれかの場でしっかりと論議をしてきちんとした対策を出していくことが必要だと思っています。

 

○佐藤座長

 どうぞ。

 

○浜田委員

 ありがとうございます。私も全く原委員と小保方委員が言われたことに賛同しております。資料 5 のセクハラの事例のように対策の制度化に時間がかかるとしても、小保方さんが言われたように、パワハラにより精神疾患にもなり、最悪の場合、命を落とすような事態まで実際に起きている現状において、段階を追って対応を図っていくというのは、現場としては何故それほど悠長になっていられるのかという心配はあります。また、予防の効果としても、実際に資料に出していただいたように、 6 7 ページに平成 9 年と平成 28 年の比較があります。初めから中小企業への対応が難しいと言われていましたが、平成 9 年には約 8 割の企業が全く防止措置行っていませんでしたが、平成 28 年になれば少なくとも 48.5 %の所はやっていると、実施をし始めているところを見ますと、やはりこういう措置義務があることによってかなり効果があったのではないかと考えております。

 

○佐藤座長

 ほかにはいかがでしょうか。

 

○布山委員

 ありがとうございます。この 4 つの中でという前に、少しセクハラとの関係で、私どもの会員企業から伺った内容を御紹介したいと思います。セクシュアルハラスメントについては、もともと定義が分からなかったとここにありますが、実際に相談者あるいは被害を受けたと言われている方から相談を受けたときに、その方が言っているような内容どおりの場合や、そうでないとしても、性的な言動については、仕事と全く関係がないのできちんと対応ができることをまず言われました。一方、いわゆるパワーハラスメントについては、単に殴るケースみたいな話でしたら別ですが、やはり仕事に関係していると、どこまでが指導なのか、指導の範疇がどうなのか。ワーキンググループの報告書でも、過度なもの、範疇を超えるようなものと書いてありますが、その「範疇を超える」というのがどのくらいのものとなるのかがよく分からないという中で非常に対応に苦慮していることも聞いております。

 また、一方で、周りの方からの事情を聞くと、上司の言い方うんぬんというのもあるけれども、訴えてきている方の御本人の業務の態度に要因がある場合もあります。やはり対応策を考える場合には、御本人の、自分の意に沿わない業務の指導とか、あるいは、アサインがパワハラということにならないこともきちんと明記するような形で進めることが必要かと思っています。実際問題、そういう中で、それがクリアになってどう進めていくかが必要かとまずは思います。以上です。

 

○佐藤座長

 そうすると、現段階では、措置義務的なのはちょっと難しいのではないかという話でいいのですか。

 

○布山委員

 せめて、何かもう少し分かりやすくするガイドラインみたいな形かと思っています。

 

○佐藤座長

 ガイドライン、はい。

 

○内藤委員

恐れ入ります。私は原委員、あるいは小保方委員と浜田委員がおっしゃったとおり、この予防措置、少なくとも事業主に何らかの対応を義務付ける、少なくとも義務規定を置いた方がよろしいのではないかと思っております。その理由としては、これは、例えばのお話ですが、一番下、最下段にしますと、確かに当初御説明のあったとおり、構成要件を明確にすることが非常に難しいのと、それを明確にしようとすれば、それだけ非常にコアの部分しか押さえられなくなりますので、一番上の予防措置、あるいは少なくとも事業主に対する対応の義務付けをするところから始めてはいかがかと思います。セクシュアルハラスメントが定着するついては、先ほど原委員がおっしゃったとおり、ほとんど意識されていなかったところから始まって 20 年かかったと思うのです。でも今回は、恐らくはかなり多くの人々が、明確でないにしても理解している中で始めますので、例えば、将来のハラスメント全体像の法制化を踏まえたとしても 10 年単位かと思います。もちろん 5 年かもしれないですが、その第一歩として考えたときに、まずは何らかの形での措置の義務付けをして、そこから職場環境の改善を考えるのが一番現実的な対応であろうという気がします。ですから、諸委員がおっしゃいますとおり、私も賛成させていただきます。

 

○佐藤座長

 ほかにはいかがですか。

 

○内村委員

 仕事と業務の指導の線引きが難しいことはよく分かります。私は労働審判の委員をやっているのですが、紛争内容には、残業代の未払いや解雇といった問題に加えてパワハラもあります。問題だと思うのは、なかなか言うことを聞かない、あるいは指示に従わない社員に対して、何らかの処分や解雇を行う経営者も多く、本来はそこにたどり着くまでに何回か指導していくことが重要なのですが、それを怠って感情論に走ってしまってパワハラになるケースがあります。

 今日は、安藤さんが欠席されていますが、例えば、日馬富士と貴ノ岩の件については傷害や暴行になるため全然別の話ですが、そうでなくても、もし態度の悪い後輩に対して先輩として指導しようとしたときに、言い方や感情がエスカレートしてしまうことはあるだろうとは思います。ただし、一線を越えてはいけないところで言うと、防止措置をした場合には、やはりマネジメント能力をより高めていくという認識を会社側にもってもらう必要があります。

 もう 1 つは、相談者から説明を受けたときに、文言でこう言われている、ああ言われていると書き残す以外に、録音テープなどがあると、ああ、これはもう明らかに人格否定しているというケースがあります。要するに何が適正な指導か、パワハラかというと、人格否定といった観点で客観的に見ればおよそ分かるし、職場の中でもおよそ、あの人はパワハラをしているというのが分かるので、これは会社側だけというよりも、職場全体で改善していく意識が必要だと思います。

 

○布山委員

 この 4 分類ということではなく、言い方ということで思ったのですが、指導しているつもりでも、言い方次第で相手の受止め方は当然違ってきます。そういう意味では今でもできると思いますが、厚生労働省が出しているマニュアルか何かに、アサーションということなのかもしれませんが、どういう言い方をして指導していくのかということがきちんと入っていると、企業はもう少し参考になるのではないかと思います。今日は安藤さんが御欠席なのですが、多分ノウハウなどお持ちだと思うので、一般的に汎用できるようなものがあれば、そういうのを入れていただければと、今、御意見を聞いて思いました。

 

○佐藤座長

 企業としてもやりやすくなると思いますね。

 

○野川委員

 前回も今回も、皆様の御意見を伺っていると、大勢は資料 4 の表で言えば、一番上の対応策を工夫していくということだろうと思い、私ももちろん異論を唱えるものではありません。対応策としては一番上の対応策でいいのですが、効果としてはできれば 3 番目の民事上の損害賠償請求等が可能であるという効果をもたらすような形で、 1 を工夫するということが考えられなければいけないと思うのです。というのは、セクハラは、実は今でもセクハラをしてはいけないという法律はないのです。セクハラについては均等法の中にセクハラを防止するための措置を講じなければいけないという条文があるので、あの条文によって、具体的に行われたセクハラに対して、加害者及び会社に損害賠償を請求するときには、あそこに記載された措置がきちんと行われているかどうかは 1 つの非常に重要な要素になるわけですね。

 法律の規範が、ああいう形であれ、きちんとセクハラを行ってはならないような職場を作るという義務として意識されますので。このパワハラの場合には、 1 の義務付けを実現するとして、どのような具体的な形でするかというと、セクハラの場合のように均等法に入れるということは無理だと思うのですね。パワハラ防止法を作るというのも、 1 つの考え方ですね。そうすると、新しい法制度を作ることになると、そこには非常に大きなハードルがある。そのことを考えながら対応しなければいけないと思いますね。

 私は結論としては、パワハラ防止法があったほうがいいなと思います。というのは、先ほど申し上げたように、単にあるパワハラが起こらないような措置を講じることというような形であっても、法のルールとして明定しておけば、それは具体的なパワハラをめぐる訴訟、紛争の解決に十分に役に立つので、そのようにしたいと思うのですが、それが無理だ、なかなか難しいということであれば、やはり 3 番目の具体的に民事的な効果をもたらすことを、どこかでプッシュできるような対応は必要だと思うのです。私は一番いいのは、確かに最高裁の判例は出ていませんが、労契法の 5 条は中身として、心身の安全も含めるというものがありますので、それを踏まえて、パワハラが起こらないような職場を作っていく、そういう配慮も必要なのだということが何らかの形であそこに反映させることができれば、 3 の効果も出てくると思います。ですから、私の結論としては、 1 の義務付けの制度を作るでいいのですが、セクハラと違って、すぐにすんなりと入れられる、今、実定法がなかなかないので、パワハラ防止法を作るか、それが難しいのであれば、 3 をもう少し考えるというのが 1 つ。

 もう一点だけ、スケジュールです。来年の 1 月に通常国会が始まりますが、懸案が多くて、労働関係では 9 月に労政審が例の働き方改革をまとめた法律案要綱を作りましたので、あれが、残念ながら労働関係の法律は真っ先に議会で検討されるという情勢にはないのでかなり終わりのほうになるとは思いますが優先的に検討されるだろうと思います。そうなると、もしパワハラについて法案を作りましょうということをここで言ったとしても、それは当然これから審議会に掛かるということになります。そうなると、来年の通常国会ですぐということには、なかなか難しいと思うのです。ということであれば、先ほど座長が当面どうするのだとおっしゃいましたので、当面のこととしては、この 2 番目についても考えることは大事。それは、しかし 1 番目をちゃんと想定した形ですよね。 1 番目に必ずいくのだということが担保されるような形でいくと。そして、 1 番目を考えるに当たってじっくりと、できればパワハラ防止法みたいな形での対応を、再来年のできれば通常国会に掛けられるぐらいのつもりで検討を続けたらいいのではないかと思います。以上です。

 

○佐藤座長

 趣旨はよく分かりました。

 

○漆原委員

 今の野川委員の冒頭のところに重複するところもあり、また、最初にセクハラの質問をさせていただいた際にも、正にそういう感覚があったのですが、資料 4 の一番上の効果の所に、「行政が指導できる」という記載があります。この指導がどの程度の効果があるのかという点が気になるところです。単に形式的なこと以外に、今、野川先生のおっしゃられたような 3 番目の点を踏まえて、行政が指導する際に、行政にどのような権限を持たせるのか。そういった仕組み作りが重要なのではないかと思います。

 一番上の所に、内藤先生からもお話のあった「コアな部分」をどのように定義として押さえるかという点について、資料 4 の○の 3 つ目に、業務上の適正な指導との境界線との記載がありますが、逆に、業務上の適正な指導を定義して、それを超えたものは「不適切な指導」としてはどうでしょうか。業務上の適正な指導が明確になれば、それ以外は違うよねという言い方ができるのではないかと思います。例えば暴力とか人格否定とか名誉毀損になるような言動がないような指導であるとか、そういった定義付けは行政としても考えられると思います。そういったアプローチ、つまりパワハラ自体を定義するのではなく、パワハラ以外を定義し、その周り、コア以外のところも対応できるような定義ができないのかなと思っているところです。

 また、既に何名かの委員も発言されていますが、多くの方がパワハラを原因に鬱になられたとか、精神疾患になられたとか、更に自殺をされたりといったことが起きている現状では、一定の措置義務を課すということが必要です。また、そうした義務を課すために法律を改正しましたという周知広報も、パワハラ対策の機運を社会で高めていくことにつながるのではないかと思っています。

 前回、労災認定基準の御説明もありましたし、今回、資料 2 の所でメンタルヘルスのパワハラ防止の周知のところもありましたが、パワハラを原因としてメンタルヘルス不調とか、精神疾患につながるということを考えれば、長時間労働による精神疾患と同様に、安衛法上への記載も十分考えられるわけですし、例えば現在のストレスチェックの問診票のチェックリストの中には、もともとパワハラのことは入っていませんので、そういったところに入れるなりして、出てきた結果に問題があれば、お話にありましたような外部の産業カウンセラーなどといった相談機関につなぐというやり方も考えられるのではないかと思っているところです。

 

○川上委員

 前回、そのような御発言があって、私のほうでも産業医等に意見を聞いて回ったのですが、労働安全衛生法にこれを入れるのは、少し慎重のほうがいいかなと思います。むしろパワハラの対策基本法を作ったほうが素直というか、筋に通っているし、パワハラ対策を小さなものにしないためにも、労働安全衛生法に押し込めるのではなくて、広い立法のほうがいいかと思います。一方、労働安全衛生法に入れることについて産業医に少し聞いてみると、相当違和感があって、今まで余り扱われていない事案なので、入っても実効性が担保できるか、少し自信がないという点とか、あるいは先行事例がどのぐらいあって、どのぐらいうまくいくのかというのが、ちょっと見えにくいです。例えば今動いているセクハラの相談の窓口と違う窓口、つまり安全衛生の窓口でやるかなど整合性が取れないところがあるので、慎重に検討したほうがいいかなと、個人的には思っています。

 

○漆原委員

 産業医の先生方が心配されているのも、それも当然だと思っており、選任したとしても月に 1 回職場を訪れるだけで、そこの人間関係が分かるかといえば、人間関係まで把握するのは当然難しいところだと思います。先ほど話をさせていただいたストレスチェックのところについては、労災の認定基準の中にもパワハラに関する「出来事」の記載が入っていることを踏まえ、先ほど発言させていただいたのは、それを産業医の先生に見てもらうということではなくて、外部の専門機関につなぐというイメージで発言をしたのですが、安全衛生法に言及したのは、ストレスチェック自体が安全衛生法に入っているので、仮にそこに何か記載をするとすれば、法というよりは規則なのかもしれませんが、そういう改正が必要なのではないかと思ったところです。

 

○川上委員

 それも、仕組みを慎重に検討したほうがいいかなと思うところがあります。先ほどと同じ理由です。

 

○原委員 

私も大きな括りではパワハラ防止法ができればいいなと思っているのですが、いずれは、セクハラなども吸収して、「ワークハラスメント防止法」みたいなルールができれば一番いいのかなと思っています。ただ、実現が難しいのであれば、何とか工夫して、既存の法律に押し込むこともやむを得ないかなと思っております。そのときに、資料 4 1 番目の予防措置等の話のところで、課題となる「業務上の適正な指導」、これは繰り返し議論になっているかと思うのですが、判例を見てみますと、もちろん業務上の適正な指導を超えているかということも判断されるわけなのですが、同じぐらい、あるいはそれ以上に、労働者の人格を侵害しているか、人格権侵害かどうかということがあって、それが本質であるようにも理解できると思います。ですから、業務上の適正な指導がどこまでか、ということを考えるよりも、むしろ端的に、人格を損なうのは会社であれ誰であれ駄目なわけですから、人格権侵害は駄目なのだと、それをベースに措置を組み立てていくことも工夫できるかなと思うのが 1 点です。

 もう 1 点は、先ほど野川委員からもお話がありました資料 4 3 番目の損害賠償等との連携です。この 3 番目のことについては、特に新しいルールがなくても、今現在でも、人格権侵害、パワハラが起きれば、損害賠償請求等はできるわけです。ですから、労契法などに盛り込むことができれば一番いいとは思いますが、できなければ何らかの形で、例えば指針等でも周知をする。つまり、「パワハラが法律問題で、裁判沙汰になりますよ」ということをきちんと周知することが重要かと思います。その際に、資料 4 1 番目の措置等との連携としては、例えばですが、会社側の損害賠償責任を考えたときに、措置をろくに取っていない中でパワハラが起きたら、損害賠償額が増えるとか、そういったことまである程度踏み込むことも考えられます。もし踏み込む場合には法律よりも指針等のほうが望ましいかもしれませんが、うまく措置と連携させるということでいうと、措置をやらないでいてパワハラが起きると、余計に責任が重くなる、ということをきちんと指針等に書くことは、これは当然あり得るかと思います。そういった細かい工夫も今後考えていけたらと思っております。

 

○小保方委員

 いろいろお話を聞いていて、今後、報告書の取りまとめに向かっていく中で、少なくとも今のお話を踏まえると、まず最短で何を目指すのか。それから、 2 年ぐらいのスパンでどうしていくのか。それから、その先に最終的にはどういった姿があるべきなのかと、この辺を明確にすべきだと思います。その上で、国会スケジュールとか、いろいろ現実的なことを考えてどうかというのはあるものの、後手に回れば回るほど、より苦しむ人が出てしまうのだということは強く認識をした上で、やり得る最善策を取っていくことは必要だと思いますが、その視点はよろしくお願いします。

 

○佐藤座長

 報告書をまとめるときは、もちろん基本的な方向はきちっと議論しておいたほうがいいと。その上で、でも早めに手を打たなければいけないわけですね。そういう意味では、すぐ具体的に効果がある取組としてどうか。両方視野に入れながらやれるといいなと思っています。

 

○久保村委員

 ずっと先生方のお話をお聞きしてきて、現場観でお話させていただきますと、第 3 回目の検討会のときにも弊社の実態を、現場で実際起きているパワハラの例をお話させていただきました。資料 6 5 ページ目の下から 3 番目、「被害者が加害者になる場合もあるので」ということに関しては、最近の紛争調整委員会のあっせんでお世話になった実例を 2 つ発表いたしましたが、実際にその 2 つともが被害者が加害者であったということでした。

 もし義務付けとなった場合は、会社として対応する時に、本当に加害者であると特定することが非常に難しくなります。したがって、現場としては簡単にパワハラの加害者を特定することができないことを踏まえ、義務付けに関して、ある程度の配慮を行っていただきたいと思っています。

 

○中澤委員

 感想だけなのですが、先ほど来ずっとお話がありますが、パワーハラスメントというのは、まずはパワーを持った人間がハラスメントを行うというのが定義だと思うのです。その場合、円卓会議の中での 6 類型は、それでいいと思うのですが、あの中に部下から上司へ、あるいは同僚間ということがありました。あの辺りは、改めてもう一回考え直してやるべきではないのかなと思っております。特に部下から上司というお話は、ある意味、例えば就業規則上の服務規律違反でありという可能性もありますし、企業の中での 1 つの取組でやっていかなければいけない話かなと思いますし、セクハラとかマタハラとはちょっと違った分野ではないかと思っております。

 

○内藤委員

 先ほどの発言の後、諸委員のお話を伺って、ちょっと考えたことをお話申し上げたいと思います。なぜ私が事業主に対応を義務付けるかという点を申し上げたかといいますと、事業主に対応を義務付けますと、諸先生方がおっしゃいましたように、その義務を果たさなかったことで、事業主に民事的な責任が生じてくると思うのです。そうしますと、先ほどから何度か最高裁判例はないというお話はありましたが、現行であっても不法行為、あるいは債務不履行を用いて訴訟は起き得るわけで、その裏打ちになる。これについては、行政指導の指針があることが、即座に使用者側の義務を生ずるかという点に議論がありますが、やはりその義務を果たしていないということの社会的な制裁等が掛かってまいります。そうしますと次第次第に、先ほど加害者・被害者というものの特定が難しいというお話がありましたが、これは社内に内部調整機関があって、そこで少なくとも調整的に、あるいは我が社においては、どういう行為を非難の対象とするかという点が煮詰まってくる。次第次第にそういった条件といいましょうか、メルクマールは涵養されていく、養われていくと思うのですね。そういうプロセスをある意味では 2 年でも置けば、その間に各企業の中に非常に対応策が浸透していくのではないか。もちろん、最初は大企業の方が対応が早いでしょうし、中小の方々は少し遅れるかもしれません。ただ、そのタイムラグはかなり短いものになっていくだろうと思うのです。

 そうしますと、これは私が表の一番上の案ではいかがかと申し上げたのは、もちろん法律に関係する者として申し上げれば、先ほど野川委員がおっしゃいましたように、これは労働契約上の使用者の義務としてどこまで位置付けるかの話になってくるだろうと思うのです。ただ、今いきなり労働契約法に入れるかどうかについては、私としてはちょっと難しいと思います。いきなりそうやって法改正で掛けるよりは、もう 1 段階ステップを置いたほうが、緩やかにできる。と言うと、少し問題があるかもしれませんが、解決策としては進展するのではないか。そう思いましたので、 1 番目の案をまず取って、もちろん何らかの形での義務付けをする。あるいは義務違反というものの効果については、社会的に様々な形で周知していただきたいということを考えております。発言の趣旨は、こういった意味合いのものです。

 

○岡田委員

 私も最初の義務付けという辺りに賛成なのですが、ここで事後ということもあるのですが、やはり予防がとても重要で、問題が起きてしまうと結構こじれてしまって、どうにもならないので、予防策ということになったときに、境界線の話は、より明確にしていかなければいけないと思うのです。類型とか、それだけでなく表現方法も関係してきます。たしかに指導の範囲ではあっても、言い方、表現の仕方が非常に攻撃的であったり、高圧的であったり、あるいは自分の感情をただぶつけているだけとか、そこで行われているケースのほうが結構多いように思うのです。だから、文字で書くと余り問題には見えない。例えば殴ったりとか別にしていない。だけれども、言い方の問題というのが一番大きいと思うのです。ですから、一般に企業の人たちも、あっ、こういうことなんだというのが分かるような、少しそこの辺りを丁寧に説明していくことが 1 つだと思います。

 また、要因としては、加害者要因、被害者要因、環境要因というのがあると思いますので、それによって誰からハラスメントをしてしまうわけなので、その辺りのこともちょっと注意をして見ていきましょう、判断していきましょうということを含める必要があるかなとは思います。

 

○佐藤座長

 実際そういうルールを作ったとき、運用をね。今日は取組を強化していくとき、どういう考え方でということで、最終的にどこを目指すかで、どこから手を付けるかということの御意見を伺えたと思います。多少幅はありますが、今日は御意見を伺っておくということでいい会かなと思いますので、一応御意見を出していただいたということでいいですかね。これまで資料 1 もあります。今までの議論はこの続きということになったわけです。ですから、総論なり定義で、今日、取組についての考え方を順次、議論してきていただきましたので、次回は今日出たようなどういう時間感で、当面どういうということも含めて、全体をどのように進めていくかについて、もう一度整理していただくという形にしたいと思いますが、いいでしょうか。

 それでは、そんな形で、次の検討会までに準備していただくようにしたいと思います。その他について、事務局から御説明いただければと思います。

 

○上田雇用機会均等課長補佐

 本日はありがとうございました。次回の日程については、調整させていただいて、改めて御連絡することとしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

 

○佐藤座長

 先ほどの速報のことだけちょっと。

 

○浜田委員

 御配慮いただきまして、速報版を配布させていただきました。この手のデータは見当たらないということを何度かお聞きしておりましたので、私どもの UA ゼンセンの流通部門のほうで、今年の 6 月から 7 月にアンケートを取ったものです。大前提として、通常のクレームは基本的にはお客様からの大切な声として受け止めるものということは十分に理解した上で、それでも近年、質が変わり始めて、いわゆるモンスター化した迷惑行為が散見されるようになり、今回は流通業での調査ではありますが、あらゆるサービス業に関連するところから、顧客、取引先など、上司・部下との関係だけでなく、仕事を通じて第三者からの攻撃的な対応に苦慮している実態があることが、このアンケートからも見えるかなと思いますので、現場から出てきた生の声だというように見ていただければと思います。

 ポイントのみ申し上げます。合計で 5 878 件の回答がありました。 7 割の方が暴言、威嚇、脅迫、暴力行為、セクハラ行為、長時間の拘束、土下座の強要や、最近はやりの SNS などのインターネット上の誹謗・中傷など、嫌がらせを受けた経験があると回答しており、その中でも 53 %の方は強いストレスを感じており、また、 359 名の方は精神疾患になったことがあると回答されています。また、このような迷惑行為が年々増えていると回答した人が 49.9 %という実態もありますので、その対策としては、前回、国民運動というお声も出ましたが、今は何もないという状態から、意識啓蒙に向けた一歩を踏み出す対応が求められているということだけはお伝えしておきたいと思います。

 

○佐藤座長

 確かに課題としてあるのは事実なので、これは労働関係の問題と考えるかどうかは別として、社会的な課題で何らかやらなければいけないのはよく分かります。皆さん、見ておいていただければと思います。貴重な調査、情報提供をどうもありがとうございました。それでは、今日の検討会はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。

 

 



(了)

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