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2019年12月13日 第136回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録

○日時

令和元年12月13日(金)  10:00~

 

○場所

中央合同庁舎5号館 共用第6会議室

○議題

・雇用保険制度について
・その他

○議事

 

○阿部部会長 ただいまから、第136回雇用保険部会を開会したいと思います。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の水島委員、田島委員が御欠席です。それでは議事に入りたいと思います。なお、カメラの頭撮りは以上となりますので、撮影の方は御退室をお願いします。
本日の議題は、「雇用保険制度について」と「その他」となっております。それでは、まず事務局から資料に沿って御説明を頂き、その後、質疑に入りたいと思います。では、お願いします。

○高島雇用保険調査官 よろしくお願いいたします。まず、本日の資料ですが、準備の関係で紙にて配布をさせていただいておりますので、その点御了承いただければと思います。委員の皆様のお手元にはタブレットも用意いたしておりますが、こちらはこれまでの雇用保険部会の資料を格納しておりますので必要に応じて参照いただければと思います。では、お手元の紙の資料に基づいて説明をさせていただきます。
これまで今年の9月から委員の皆様に御議論いただいた内容に基づきまして雇用保険部会としての報告の素案を事務局にて準備をさせていただいておりますので、本日はそちらについて御説明させていただきます。なお、内容については、一部調整中のものがありますので、今後追加されるものがあることについても、あらかじめ御承知おきいただけければと思います。
それでは、資料について御説明させていただきます。雇用保険部会報告の素案です。第1として、雇用保険制度等の見直しの背景についてまとめております。今回、議論いただくに当たった背景です。1つ目の○は、現在の雇用情勢に関してです。現在の雇用情勢は、着実に改善が進む中、求人が求職を大幅に上回って推移していて、基本手当の受給者実人員は減少傾向となっており、平成30年度は37万人まで減少しているという状況です。
2つ目の○は、関連の閣議決定等になりますが、雇用保険料率及び雇用保険制度の失業等給付に係る国庫負担の暫定措置については、令和元年度末で期限を迎えることになっており、「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太2019)」において、「雇用情勢はアベノミクス等の成果により引き続き安定的に推移していること等を踏まえ、消費税率引上げ後の国民の所得環境にも配意し、雇用保険の積立金の積極的な活用と安定的な運営の観点から、雇用保険料と国庫負担の時限的な引下げの継続等について検討する」ことが盛り込まれておりました。
その次は、前回の部会の報告書及び附帯決議に関するものになります。平成28年12月13日付け雇用保険部会報告、前回の改正の際におまとめいただいたものですが、その際の国会の審議、それに関する附帯決議において、国庫負担、マルチジョブホルダー、基本手当の取扱い等に関しての検討が求められているという状況でした。
こうした状況を踏まえ、平成28年部会報告において引き続き検討すべきとされた事項をはじめ、雇用保険制度全般について議論を進めてきたものであり、以下のとおり見直しの方向について結論を得たものとしています。
第2以降は雇用保険制度等の見直しの方向ということで、これまでの議論に基づき、方向性が出ているものについて順番に御説明をさせていただきます。1番目は基本手当の在り方についてです。(1)自己都合離職者の給付制限期間についてです。2ページ、1つ目の○は、前回の御議論、前回の制度改正において、どのような対応が基本手当について行われていたかになります。雇用保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第14号。以下「改正法」という。)において、特定受給資格者(解雇・倒産等により離職された方)及び特定理由離職者(期間のある雇止めによって離職された方々)について、法制上の措置について紹介をさせていただいております。
1つ目は、被保険者であった期間が1年以上5年未満である30歳以上35歳未満及び35歳以上45歳未満の特定受給資格者についての所定給付日数の拡充です。また2番目は、2年後までの暫定措置となりますが、雇止め等により離職した有期契約労働者等の給付日数の充実、地域延長給付の創設、個別延長給付の創設といったものがありました。
それで、今回、御議論いただいた内容は、2つ目の○です。特定受給資格者及び特定理由離職者以外の一般の受給資格者のうち、自己都合(正当理由のない自己都合)により離職した者に対しては、昭和59年から現在に至るまで、3箇月間の給付制限期間が設定されているところである。これについて、安易な離職を防止するという給付制限の趣旨に留意しつつ、転職を試みる労働者が安心して再就職活動を行うことができるよう支援する観点から、その給付制限期間を5年間のうち2回までに限り2箇月に短縮する措置を施行することとし、その効果等を施行後2年を目途として検証するべきであるとしております。自己都合離職者の方の給付制限の見直しに関するものです。
(2)被保険者期間についてです。こちらは、基本手当の御議論を頂いた際に、事務局から御紹介させていただいた論点ですが、基本手当をはじめとする失業等給付の受給資格の判定に当たっての基礎となる被保険者期間について、現在、「賃金支払の基礎となる日数が11日以上である」月を算入している。11日以上であれば1箇月とカウントし、それに至らなければカウントしないという取扱いです。これは平成19年に一般被保険者と短時間被保険者を統合した以降の取扱いとなっております。
一方、その後の雇用保険の適用拡大により、現在では週の所定労働時間が20時間以上、雇用見込み期間が31日以上である等の要件を満たせば雇用保険被保険者として適用されることとなるため、例えば週2日と週3日の労働を定期的に継続する場合等、個別事例によっては雇用保険被保険者の資格を満たしながら失業等給付の受給のための被保険者期間に算入されない事例があるとしています。
次の3ページの○ですが、そのため、被保険者期間の算入に当たっては、日数だけではなく労働時間による基準も補完的に設定するよう見直すこととし、具体的には、従来の「11日以上である月」の条件が満たせいない場合でも、「当該月における労働時間が80時間以上」であることを満たす場合には算入できるようにするべきであるとしております。
2番目、マルチジョブホルダーについてです。1つ目の○は検討の経緯です。平成28年部会報告(前回部会報告)において、「マルチジョブホルダーについては、複数の職場で就労することにより雇用保険が適用される週所定労働時間20時間以上となる者のセーフティネットの必要性について議論がある中で、仮にマルチジョブホルダーについて適用を行う場合には技術的な論点、雇用保険制度そのもののあり方との関係など専門的に検討する課題があることから、専門家による検討会を設置し、検討を進めていくことが必要である」とまとめていただきました。
そして、この部会報告、また、その部会報告に基づく改正法の国会審議における附帯決議を踏まえ、複数の事業所で雇用される者に対する雇用保険の適用に関する検討会を平成30年1月から12月まで7回にわたり専門的、技術的な観点から検討が行われたものとなっております。
検討会の報告書において提言されたポイントを整理いたしております。提言された点は2点です。1点目は、雇用保険の趣旨、これは自らの労働により賃金を得て生計を維持する労働者が失業した場合の生活の安定等を図る制度ですが、そうした趣旨や、適用により生じる事務的コスト等に照らして、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用の必要性は直ちに高いとは評価できず、マルチジョブホルダー全体を雇用保険の適用拡大によって保護するよりも、むしろ、そのうち雇用の安定化等の必要性が高い者に対しては、求職者支援制度をはじめとする各種の施策を活用した支援が適当であるというのが1つ目でした。
2点目は、試行に関するものです。現状、実行可能性があるのは、本人からの申出を起点に合算方式を適用し、一時金方式で給付することとなるが、逆選択やモラルハザードが懸念されること。今後、マルチジョブホルダーへの雇用保険の適用を検討、推進していくならば、一定の対象層を抽出し、試行的に制度導入を図ることが考えられること。この場合、適用による行動変化や、複数事業所の労働時間を把握・通算する方向に関する検討状況を踏まえつつ、改めて制度の在り方を検討することが考えられることとされておりました。
これに基づき、本年の部会で御議論いただいたものです。当部会では、検討会による専門的、技術的見地からの整理を踏まえて議論を行った。マルチジョブホルダー全体を雇用保険の対象とすることについてという論点ですがマルチジョブホルダーには収入の低い者がおり、自らの労働により生計を立てている労働者が失業した場合の生活の安定等を図る雇用保険制度の趣旨からすれば、広く適用すべきであるという意見の一方で、雇用の安定化の必要性が高いものに対しては、求職者支援制度をはじめとする各般の施策により雇用の安定化に向けた支援を行うべきであり、制度設計上の課題への様々な懸念等を踏まえれば慎重に考えるべきという意見がありました。正に、両方の意見があったということです。
一方、ここから先が試行に関するものとなります。定年及び継続雇用制度の期間を過ぎて就労が多様化する65歳以上の労働者については、近年、マルチジョブホルダーとしての働き方が相対的に高い割合で増加している一方で新規求職者数の伸びに比して求職者訓練及び公共職業訓練の受講割合は、むしろ65歳未満の年齢層の方よりも低下していることなど、これまでの職業人生で得られたスキルを生かして多様な就労を目指している層と考えられる。そのため、まずは、65歳以上の労働者を対象に、本人の申出を起点に2つの事業所の労働時間を合算して「週の所定労働時間が20時間以上である」ことを基準として適用する制度を試行することとし、その効果等を施行後5年を目途として検証するべきだとしております。
そうした対象者層に関する制度設計に関する詳細な部分です。その上で、現在、65歳以上の雇用保険被保険者は高年齢被保険者として独立の被保険者類型が設けられていることから、原則として、その給付等の在り方も現行の高年齢被保険者に合わせることとしつつ、マルチジョブホルダーの特性を踏まえて、一定の調整を行った上で制度を設計すべきである。具体的には、失業時の給付については、高年齢求職者給付(一時金方式)を支給することとし、一事業所のみを離職する場合であっても、当該事業所での賃金に基づき算出して給付する。2つのうち片方だけやめた場合は片方だけで給付することになります。
また、正当な理由のない自己都合離職の場合には、現行の高年齢求職者給付金と同様に一定期間の給付制限を行った上で給付することとするが、2つの事業所を共に離職する場合で、その離職理由が異なっていた場合には、受給者本人に何度も公共職業安定所に来所を求めることは受給者にとって効率的でないことから、給付制限がかからないほうに一本化してまとめて給付することとしております。一方、両方の事業所で、ともに育児休業又は介護休業を取得した場合に、育児休業給付又は介護休業給付を支給することとし、その他対象となる給付については、従来の高年齢被保険者の取扱いにそろえることとするとしております。
2点目の技術的事項ですが、本人からの申出による合算に当たっては、適用、給付等に当たっての事業主及び行政の事務的な負担も踏まえつつ、本人及び事業所にとって必要性の高くない保険料負担の発生を回避する観点、短時間就労している一事業所での離職についても失業給付を行った場合に給付額と就業時賃金額との逆転を回避する観点から幾つかの調整をするということで、試行に当たっては、マル1、合算に当たって必要な基準を定める。具体的には、週の所定労働時間5時間以上である雇用が行われている事業所を合算の対象とし、合算する事業所の数は2つとするとともに、一事業所を離職した場合には、他に合算して所定労働時間が20時間以上となるような働き方をしている事業所がないかを確認する。マル2、一事業所において週20時間以上労働することを前提として設定されている現行の賃金日額の下限の適用を外すといった措置を講ずるべきとしております。
最後、試行後の検証に関する話です。試行に当たっては、事業主等の事務負担に十分配慮するとともに、離職して給付を受けることが見込まれている者が申出をして適用されるといった逆選択の事象や安易な離職による循環的な受給といったモラルハザードの事象が起こる懸念に留意するべきである。その上で、試行結果について、適用による行動変化や財政的な影響等の視点から十分な検証を行った上で、必要に応じて適用対象を含めた制度の在り方について検討していくべきであるとしております。3番の高年齢雇用継続給付については調整中です。
次に6ページです。4番の財政運営についてです。1つ目の○は、原則、理念に関するものです。雇用保険は失業に対する必要不可欠なセーフティネットとして、労使が負担する保険料と国庫負担により運営されるものであり、将来にわたって安定的な運営を確保し、予期せぬ景気変動に伴う雇用情勢の悪化が生じたとしても十分対応できるものとしておくことが最も重要である。これが保障されることを前提に、各般の指摘にどのように対応しうるのかを検討すべきものと考えております。
このあと、財政運営に関する幾つかの議論を頂いた事項がありますので、順番に整理をいたしております。(1)育児休業給付の取扱いについてです。育児休業給付は、育児休業期間中で賃金が得られない労働者の方に対して、雇用保険制度における最も深刻な保険事故である「失業」に至らないよう、雇用継続を援助・促進する雇用継続給付の一類型として、平成6年改正により創設されています。
こちらの給付ですが、育児休業制度の浸透に伴う受給者数の増加、育休取得率の向上等による受給者数の増加とともに、次世代育成支援の観点からの累次の給付拡充(給付率が伸びたり給付期間が伸びたりなど)により、給付額は一貫して増加しており、今年度には基本手当に匹敵する給付総額となることが見込まれるものです。こうした育児休業給付の伸びの傾向は、景気状況にかかわらず、引き続き継続することが見込まれるものです。
なお、累次の給付拡充について、※書きで注を付けており、平成19年の制度改正以降の給付率の拡充は、「当分の間」の暫定措置として実施しているものであり、雇用保険法の附則において規定をしていたものです。
下から2番目の○ですが、着実に改善が進んでいる現在の雇用情勢では、求職者給付(失業者向け給付)は相対的に低い支給状況にあるが、このまま育児休業給付を求職者給付等と一体的な財政運営を続けた場合、景気状況が悪化した際には、育児休業給付の一貫した伸びに加えて求職者給付の増加が相まって財政状況が悪化し、積立金の取り崩しや保険料率の引上げが必要になり、ひいては給付にも影響を及ぼすことも懸念される。これは求職者給付と育児休業給付の双方にとって望ましくない状況にある。
このため、見直し内容ですが、育児休業給付については新たに、子を養育するために休業した労働者の雇用と生活の安定を図る給付として、失業等給付とは異なる給付体系に明確に位置づけるべきである。
その上でですが、7ページの○です。併せて、その収支についても失業等給付とは区分し、失業等給付全体として設定されている雇用保険料率の中に、育児休業給付に充てるべき独自の保険料率を設けて、財政運営を行うべきであるとしております。育児休業給付に充てる保険料率の水準は、現在の同給付の支出状況及び今後の見通しを踏まえ、当面、現行の雇用保険料のうち4/1,000相当とすべきである。一方で、育児休業給付の在り方について、中長期的な観点で議論すべきであるとしております。
続いて弾力条項に関するものです。(2)失業等給付に係る弾力条項の考え方についてです。失業等給付に係る弾力条項は、積立金を好況期に積み立て、不況期に取り崩すことで景気変動による給付の増減に対応しつつ、機動的に保険料の引上げ又は引下げを可能することにより、過剰な積立や積立不足を回避して安定的な財政運営を可能とするものであります。これが弾力条項の趣旨です。
こうした弾力条項の考え方は、失業保険法(昭和22年法律)における規定に遡るものですが、その後、保険給付の種類が、失業給付から更に多様化しており、景気変動により給付が変動する求職者給付と、景気変動の影響を受けないその他の給付が混在し、失業等給付を包括したまま弾力倍率の算出が行われている現状にあるものです。
今回の見通しは育児休業給付の取扱いについても、先ほど申し上げたとおり見直しを行うことと併せて、積立金の本来の役割を踏まえて弾力条項における各給付の取扱いの考え方を整理するべきである。具体的には、先ほど御説明申し上げた(1)のとおり育児休業給付については、収支を失業等給付から区分することとなることから、弾力倍率の計算対象からは除外されます。それに加え、2つポツで説明をいたしております。給付総額が景気変動によって影響を受けない給付は、前回の部会での御議論の中で資料を出している部分ですが、教育訓練給付並びに高年齢雇用継続給付及び介護休業給付です。これについては、毎年度の保険料収入が得られるまでの期間の費用の支出と、臨時の変動に予備的に備える観点から、積立金において1年分を保持することを前提としつつ、そのほかの給付、いわゆる失業給付は景気変動により給付が増減する求職者給付の給付額を基礎として弾力倍率を算出することとし、従来どおりの指数に基づいて失業等給付の保険料率の引上げ又は引下げを可能とする。この指数の意味は、すなわち弾力倍率で2を超える際に保険料率の引下げを可能とし、1を下回る際に保険料率の引上げを可能とするものとするべきであるとしております。
これらを前提として、(3)失業等給付に係る雇用保険料率についてです。平成28年部会報告においてもまとめられているとおり、失業等給付に係る保険料率については、平成28年度に12/1,000に引き下げられました。その後も引き続き雇用情勢の改善が進み、積立金残高も必要な水準の目安である弾力倍率2を大きく上回ることになっていたことから、安定的な運営が維持されうると見込まれる3年間に限り、雇用保険料率を2/1,000引き下げ、労使の負担軽減を行うこととしたものである。
そのため、本来、本部会としては、国庫負担とともに、暫定的な引下げ措置は3年間に限るものと考えていたものであるが、経済財政運営と改革の基本方針2019を踏まえ、引き続き雇用保険財政の安定的な運営が維持されると見込まれる2年間に限り、当該暫定措置を継続することもやむを得ない。
この場合、予期せぬ雇用情勢の変動に備え積立金を一定程度確保しておくとともに、雇用保険料率の急激な上昇を避ける観点から、弾力倍率が2程度となることを1つの目安として今後も財政運営を考えていくべきであるとしております。
(4)国庫負担についてです。平成28年部会報告において、未来への投資を実現する経済対策(平成28年8月2日閣議決定)を考慮し、国庫負担について、3年間に厳に限定し、法律上もそれを明記した上で、本来負担すべき額の10%に相当する額とすることもやむを得ないとされているほか、これらを実施するとしても、国庫負担を速やかに本則に戻すべきであるとの考え方が変わるものではないとされてきたところです。その上で、骨太2019において引下げ措置の継続の検討について盛り込まれているが、平成28年部会報告に至る当部会での議論を踏まえれば、本来、こうした引下げ措置の継続は適当ではなく、雇用対策への国の責任に基づき、失業等給付の国庫負担を本則に戻すべきというのが労使双方の意見でした。
その上で、今後の財政見通しを踏まえ、雇用保険財政の安定的な運営が維持されると見込まれる2年間に限り、失業等給付の保険料率の引下げを継続することと併せ、雇用保険の失業等給付と求職者支援制度に係る国庫負担についての暫定措置を継続することは、いわば苦渋の決断ではあるがやむを得ないものと考える。ただし、当該暫定措置の継続は厳に2年に限るとともに、雇用保険法附則第15条の規定ですが、「雇用保険の国庫負担については、引き続き検討を行い、平成三十二年四月一日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で附則第十三条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとする。」と規定されており、令和4年度以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で雇用保険法附則第13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止する。
なお、求職者支援制度についても、これまでの経緯に鑑みれば同様の取扱いとなることもやむを得ないが、そもそも求職者支援制度は全額一般財源で措置すべきものであり、政府は引き続き一般財源確保の努力を行っていくべきであるとしております。
次に、雇用保険二事業に関してです。(5)雇用保険二事業の財政運営についてです。雇用保険二事業に関しては、雇用情勢の改善等に伴う継続的な収支改善傾向により、平成30年度末の雇用安定資金残高は1兆4,400億円となっております。求人が求職を大幅に上回って推移している状況が続いている中で、雇用保険二事業に係る雇用保険料率を3/1,000に引き下げた上でも安定資金残高が増えていることを踏まえ、弾力倍率が1.5倍を上回っている場合には、労働政策審議会での議論の上で、更に保険料率を0.5/1,000引き下げることができる規定を整備し、保険料率を引き下げるべきだとしております。
その上で、雇用保険二事業については、雇用保険被保険者等の雇用の安定並びに職業能力の開発及び向上を図るために必要な事業について、引き続き効率的な運営に努めていくべきであるとしております。
最後に、10ページですが、その他の技術的な部分です。労働保険の保険料の徴収等に関する法律、いわゆる徴収法ですが、それに基づく立入検査の対象は、現在保険関係が成立している、又は過去成立していた事業所等となっています。また、雇用保険法に基づく立入検査の対象は、被保険者等を雇用している、又は雇用していた事業主の事業所等となっております。
この点について、雇用保険の適用促進に向けた取組の実効性を高める観点から、雇用保険被保険者がいると認められる事業所も立入検査等の対象であることを明確化すべきであるとしております。
あと、参考資料で資料を幾つか付けております。財政の見通しに関して、今、雇用保険部会報告書の素案に盛り込まれている内容を前提とした場合の雇用保険の財政運営の資産を、1、2ページに付けております。また、3ページには、弾力条項の見直しについて、部会報告書の素案に出ておりますものに基づいて考え方を見直した場合に、どのような計算式になるかを赤字で示しております。また、4ページには、現在、雇用保険部会報告書の素案に入っている改正項目を行った場合の財政影響額についてです。施行時期は様々ですが、1年分でどれぐらい影響があるかというものを条件をそろえて整理したものです。基本手当の充実に関しては、自己都合離職者に係る給付制限期間の見直し、65歳以上のマルチジョブホルダーへの適用拡大。収入関係については、保険料率及び国庫負担率の時限的引下げの延長に関する財政影響額を整理したものです。事務局からの説明は以上となります。

○阿部部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明について御質問、御意見がございましたら御発言をお願いしたいと思います。佐藤委員どうぞ。

○佐藤委員 1ページの基本手当ての在り方についての(1)自己都合離職者の給付制限期間についてということで、記載については2ページの2つ目の○です。今回、措置を試行するということではありますが、その期間を短縮することについては賛同する立場です。1点、事務局に御質問させていただきたいのですが、雇用保険法第33条では、給付制限期間は1か月以上3か月以内とされております。今回、1か月ではなく、2か月とした理由について、何か御説明があればお伺いしておきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○阿部部会長 では御質問ですので、事務局お願いいたします。

○松本雇用保険課長 素案にもございますように、昭和59年前は1か月であったところ、59年以降は3か月という運用をしているところです。今般は試行ということですので、1に戻すのではなくて、まずは中間の2で試行することとしてはどうかという素案です。

○阿部部会長 佐藤委員、よろしいですか。では、ほかにいかがでしょうか。仁平委員お願いします。

○仁平委員 8ページの国庫負担のところについてお伺いしたいと思います。これまでの部会での労使双方の意見や2017年の雇用保険法改正時における附帯決議の内容に沿ったものではないということについては非常に残念に思っております。積立金が十分に確保できているのであれば、国庫負担の引下げ継続よりも給付日数や期間などの基本手当ての充実を目指すべきというのが、繰り返しになりますが我々の考えであるということを改めて申し上げておきたいと思います。
今後は育児休業給付の取扱いをはじめ、雇用保険全体の財政運営方法が変わっていくと思いますが、国が責任を持って雇用保険制度を支えるということに、やはり変わりはないのだろうと思っております。その意味で、必ず2年間で終了する措置であることが確約されるものでなければ、とうてい認められないということを申し上げておきたいと思います。以上です。

○阿部部会長 御意見として承っておきます。ほかにいかがでしょうか。では湊元委員、お願いします。

○湊元委員 改めまして私のほうからも日本商工会議所としての考えを意見として言わせていただきたいと思っております。まず、マルチジョブホルダーのところですが、試行に当たりましては、事業主の負担を十分に配慮していただきたいということです。また、PDCAをきちんと回していただいて、雇用保険会計の財政的な影響を含めて、想定どおりの効果が出ているかをしっかり検証していただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。
また、育児休業給付の取扱いについて、育児休業給付に関わる保険料率については、現在の同給付の支出状況及び今後の見通しを踏まえ、当分は4/1,000にする方向ということは承知しましたが、育児休業給付のあり方について、中長期的な観点でしっかり議論を頂きたいと思っております。
また、国庫負担の件ですが、先ほどもありましたが、暫定措置の継続はしっかり2年に限るということで、今後の本則に戻すためのロードマップを早急に作っていただきたいということを改めてお願いしたいと思います。
また、雇用保険二事業の財政運用については、平成30年度末の安定資金残高が1兆4,400億円まで増えていることを踏まえまして、保険料率を2.5/1,000まで引き下げ可能とする規定を早期に整備していただきたいと思っております。
また、一方で、二事業について、雇用機会の増大、労働者の能力開発等、二事業の趣旨に見合っているという観点から、支出の内容、目的、効果等を精査し、必要以上に支出が膨らまないような効率的な制度運営を行っていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。では続いて菱沼委員どうぞ。

○菱沼委員 ありがとうございます。湊元委員と若干かぶる部分がありますが、使用者側としての意見を述べさせていただけたらと思います。先ほど仁平委員から国庫負担の部分がありましたが、湊元委員同様、やはり国と労使の1対1対1のそれぞれの負担というのは本来あるべきだと思いますので、今回はこういう形になりますが、報告素案のとおり、本則に戻せるような努力をしていただきたいというのが1点ございます。それから失業等に係る保険料率ということで、8ページにありますが、前回、使用者側委員のほうからも、雇用保険料率の急激な上昇を避けるべきという意見がありましたが、下げたときよりも上げたときの影響を心配するというのは、雇用保険でなくても、他の保険制度も同様なことですので、事務局からいただいた資料などからも、2年限定継続はやむを得ないかなとは思っているところです。
あと、マルチジョブホルダーは先ほど素案にありましたが、使用者側委員からも申し上げていますように、そちらへの誘導、もともと求職者支援制度が始まったときに第3のセーフティネットだということで生活保護に落ちないようにということで制度を作ってきたものですから、今回、マルチジョブの手法ということですが、試行にあたっての準備とか、周知、そして素案にありますが、あくまでも推計値でやっておりますので、これが実際に制度を置いてから、どのように動いてきたか、そういったことを検証していく必要があると思っております。
資料9ページですが、雇用保険二事業についての意見です。雇用保険二事業については、厚生労働省においてPDCAサイクルによって事業運営されていることは理解しています。そのおかげかもしれませんが、安定資金残高が平成30年末で1兆4,400億円になっていることは事実だと。雇用保険二事業の保険料の引下げについては弾力倍率が1.5を上回っていた場合は更に0.5/1,000引き下げが可能となるというくだりについては、使用者側のほうが長年要望していたことと思っているところです。失業等給付に係る保険料率と同様、来年度から弾力条項をお願いしたいところではありますが、難しいという状況があると思います。いずれにしても雇用情勢が良くて、これ以上安定資金残高が積み上がりますと、何かあったときに、ここに財源があるのではないかという懸念を持っているところです。もともと事業主が拠出して政府が資金管理しているもので、国が困ったときでなくて、事業主等が困ったときに、あって良かったと言える助成金であればと思っておりますので、引き続き財務当局や、関係各方面への説明をお願いしたいなということです。
最後に、育児休給付については平成6年の制度の発足から四半世紀以上が経過してきました。公益委員からも、制度が収束して次の段階を考える時期が来ているのではないかという意見があったと思います。事務局で関連する資料を準備して、部会での議論を経まして、その素案が育児休業給付のいわゆる第二段階になると思います。給付のあり方については、こちらもマルチジョブ同様に、シミュレーションなどでもございますので実際に制度が変わったところで、このまま雇用保険制度であっていいのかとか、その辺も含めて中長期的な議論が必要かなと思っております。長くなりましたが意見として申し上げました。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。ほかにいかがでしょうか。では三島委員どうぞ。

○三島委員 ありがとうございます。私からも国庫負担について1点、意見要望をさせていただきます。9ページになりますが、求職者支援制度の国庫負担についての財源は国庫負担が2分の1とされているところですが、現在は95%を労使で負担している状況です。報告書にも記載されていますが、求職者支援制度は雇用保険を支給できない求職者に対するものですので、そもそも給付や負担の関係が明確な雇用保険制度の枠外の制度として全額を一般財源で負担すべきと考えますので、是非とも財源確保に向けた具体的な道筋を付けていただきたいということを申し上げさせていただきます。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。御意見として承りたいと思います。ほかはいかがですか。では、清家委員どうぞ。

○清家委員 国庫負担については皆様から出ている意見と全く同じですので、ここに書かれた方向で、2年間ということは本当にやむを得ないのですが、その後しっかり議論していく必要があると思います。それに関連して、今後の議論の問題提起ということで、私から意見を述べさせていただきたいと思います。1つは、雇用保険本体についてはこちらに書かれているような論点かと思いますが、今回、失業等給付から育児休業給付を区分する財政運営に変わりますので、こちらの国庫負担のあり方についても次の議論では非常に大きな課題になるのではないかと思っています。今回の素案の中には、中長期的な観点で議論をしていくというようにありますが、今日いただいた財政運営の試算を見ていますと、育児休業給付の国庫負担についても中長期で見ていられる状況なのかと感じました。これも重要な論点かと思いますので、あえて発言させていただきます。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。御意見として承っていきます。ほかにいかがですか。では柳沢委員どうぞ。

○柳沢委員 ありがとうございます。2ページ目の○の2つ目ですが、5年間のうち2回までに限り2か月に短縮するという措置を試行されるということなのですが、その効果を試行後2年を目途として検証するとあります。その効果というのを、どういった視点で、どういったポイントで検証されようとしているのかということと、その検証の結果によって、5年のうち2回までと言いながら、2年後にやはりやめたというのがあるのかどうか、そういうことも含めて検証されるということの理解でよろしいのでしょうか。

○阿部部会長 では、御質問ですので事務局お願いします。

○松本雇用保険課長 2ページの試行では5年間のうち2回までという要件を御提案申し上げているので、つまり検証としては、少なくとも5年間を経過しないと全体像が見えてこないと思います。けれども、5年間、その間は何もしないということではなくて、つまり随時ウオッチしていくこととしたいという意味で、一旦、2年を目途としてということを御提案申し上げております。

○阿部部会長 柳沢委員よろしいですか。

○柳沢委員 効果というのは、どういったポイントで話されているのですか。

○松本雇用保険課長 効果等と言っているわけですが、期間の変更によって、就職率または就職の時期などがどうなっているか、また、給付の実績がどうなっているかという点をつぶさに見てまいりたいと考えております。

○柳沢委員 ありがとうございました。

○阿部部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。小林委員どうぞ。

○小林委員 7ページの育児休業給付の保険料率について、質問をさせてください。安定的な財政運営の観点からも育児休業給付等、失業等給付の財政運用を切り分けるということについては労働側も賛同したいと思っております。その上で、当面育児休業給付に係る保険料率を4/1,000としていますが、その数字の考え方についてお伺いできればと思います。

○阿部部会長 では事務局お願いします。

○松本雇用保険課長 参考資料の2ページを御覧ください。育児休業給付は下半分なのですが、育児休業給付を独立して収支を管理するということですと、本当に厳密に言えば各年度ごとに見込まれる支出に応じた料率を設定して、毎年これを法改正でということも原理的には考えられるところですが、若干それは非現実的なところがあります。ということで、まずは支出について過去3年分の実績である伸び率、年平均8.8%で伸び続けるという試算の下で、まず支出を令和2年度から想定した上で、数年間の平均的な支出所要額に見合う料率として、1000分の4を設定しました。つまり、ここの下半分で申し上げますと、令和の4年度から5年度あたりで収支が均衡するような料率を設定し、前半では単年度黒字が出て、後半では単年度赤字が出る。5、6年程度を合わせての収支均衡するような想定として4/1,000を一旦、設定するという案を御提示しているものです。

○阿部部会長 では小林委員、何かありますか。

○小林委員 令和5年度以降は差引余剰がマイナスになっていますが、それ以降の保険料率は改めて検討するという考えでよろしいのですか。

○阿部部会長 では、事務局のほうからお願いします。

○松本雇用保険課長 あくまでも今の時点で、8.8%伸びるという仮定での試算ですので、今後、令和2年度から独立して会計をしていくことに伴って、その後の伸び率も勘案しながら随時、必要な見直しをしていくということになろうかと思います。

○阿部部会長 よろしいですか、ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。別段よろしいでしょうか。それでは本日もいろいろと御意見を頂きましたので、事務局におかれましては、本日の意見を踏まえまして本日出された素案を適宜修正して取りまとめ案を準備してもらいたいと思いますので、よろしくお願いいたします。その他ですが、こちらで準備しているものはございませんが、委員の皆様から何かございますでしょうか。よろしいですか。それでは本日の会議は以上をもちまして終了したいと思います。本日の会議に関する議事録については、部会長のほか、2名の委員に署名を頂くことになっております。本日の署名委員は使用者代表の柳沢委員に、労働者代表の千葉委員にお願いしたいと思いますので、後日、事務局は連絡をお願いいたします。
次回は本日の議論を踏まえまして、取りまとめ案を議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。次回の日程については事務局から改めて各委員に御連絡を差し上げたいと思います。
それでは、以上をもちまして本日は終了いたします。委員の皆様におかれましては、年末のお忙しい中、どうもありがとうございました。

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