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2017年11月22日 平成29年度 第1回化学物質のリスク評価検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成29年11月22日(水)15:00~


○場所

労働委員会会館612会議室


○議題

平成29年度初期評価対象物質のリスク評価について ほか

○議事

○平川化学物質評価室長補佐 本日は大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成29年度第1回化学物質のリスク評価検討会を開催いたします。本日は内山委員、宮川委員は所用により御欠席です。また、特別参集者として櫻井治彦先生、圓藤吟史先生に御参画いただいておりますが、両先生から御欠席との連絡を頂いております。また本日、オブザーバーといたしまして、中央労働災害防止協会労働衛生調査分析センター、山室様、岡村様に御出席いただいております。それでは、以下の議事進行を座長の名古屋先生にお願いいたします。

○名古屋座長 それでは、事務局からの資料の確認をよろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 本日の配布資料ですが、傍聴者の資料につきましては、左上1点留めの資料、委員の皆様の資料につきましては、左上1点留めの資料に加えて紙ファイルを配布しております。それでは、資料の説明をいたします。まず、左上1点留めの資料1、テトラエチルチウラムジスルフィド 初期リスク評価書()、右下141ページです。資料2、二塩化酸化ジルコニウム 初期リスク評価書()、右下4367ページです。資料3、ニッケル 初期リスク評価書(中間報告)()6997ページです。資料4、ピリジン 初期リスク評価書()99131ページです。資料5、メタクリル酸 初期リスク評価書()133159ページです。資料6、今後の予定について、161ページです。

 次に参考資料1、化学物質のリスク評価検討会開催要綱・参集者名簿、163167ページです。参考資料2、これまでのリスク評価進捗状況、169175ページです。参考資料3につきましては、委員には紙ファイルでの配布、各事務局には1点留めの資料を別に配布しております。参考資料4、ばく露実態調査対象物質の評価値について、177187ページです。最後、参考資料5は委員のみの机上配布です。189200ページ、A3の資料を折り曲げたものです。すみません、参考資料4A3版折り曲げの資料です。失礼いたしました。以上、資料に不備がありましたら、事務局のほうまでお申し付けくださるようお願いいたします。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。そうしましたら、本日の議事に入りたいと思います。議事1、ばく露実態調査対象物質のリスク評価について、これは物質1つずつ、事務局からの説明をよろしくお願いいたします。まず第1資料をお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、資料に沿って説明いたします。テトラエチルチウラムジスルフィドから5物質です。

1つ目のテトラエチルチウラムジスルフィドについて説明いたします。資料1を御覧ください。2ページ目から順に説明します。物理化学的性質です。化学物質の基本情報。名称、テトラエチルチウラムジスルフィドです。ジスルフィラムなどの別名があります。化学式につきましては、資料に示すとおりです。構造式も同じく、資料に示すとおりの構造です。分子量は296.6CAS番号は97-77-8の物質です。

 次に、物理的化学的性状です。外観です。特徴的な臭気のある、白~灰色の粉末、密度1.3/cm3 、沸点が117℃、初留点は情報なし、蒸留範囲、蒸気圧、蒸留密度とも情報なしです。融点は71℃、引火点、発火点、爆発限界とも情報はありません。溶解性は水に対して0.02 g /100 mLです。オクタノール/水分配係数log Powは、3.9です。換算係数につきましては、資料のとおりです。

 次に、生産・輸入量、使用量、用途です。製造・輸入量につきましては、平成25年度で929tとされております。用途ですが、有機ゴム薬品(加硫促進剤、硫黄供与型加硫剤)に使われており、医薬品ということです。製造業者につきましては、資料のとおりです。

 次に、有害性評価の結果です。まず、発がん性です。ヒトに対する発がん性は判断できないということになっております。根拠ですが、ヒトについてのデータはない。また、動物については、B6C3F1マウス及びBAKF1マウスを用いた試験で、肺腺腫、肝がん、皮下線維肉腫の発生頻度の上昇が報告されているが、試験の信頼性について疑問が呈されている。SDラット、F344ラットを用いた試験では、明らかな腫瘍発生頻度の上昇は見られていない。IARCではグループ3に、ACGIHではA4に分類しているということです。各評価区分です。IARCがグループ3、産衛学会、EUNTPは情報がありません。ACGIHは、1996年にA4です。

 閾値の有無ですが、「遺伝毒性」の判断を根拠とし、判断できないとしております。

 次に、発がん性以外の有害性です。急性毒性ですが、ラットにつきましては、吸入毒性は調査した範囲内で情報は得られていない。経口毒性は、LD50 5003,100 mg/kg体重、腹腔内毒性は、LD50 248580 mg/kg体重、皮下毒性はLD50 4 g/kg体重以上ということです。

 マウスです。吸入毒性は調査した範囲内で情報は得られていない。経口毒性はLD50 1,01314,000 mg/kg体重、腹腔内毒性はLD50 75600 mg/kg体重、皮下毒性はLD50 2,600 mg/kg体重です。

 ウサギは、経口毒性のみあり、LD50 6502,050 mg/kg体重です。

 次に皮膚刺激性/腐食性ですが、判断できないとしております。根拠ですが、ウサギ皮膚刺激性試験において軽度な紅斑が認められているが、ヒトでの報告はないとされております。

 眼に対する重篤な損傷性/刺激性は判断できないということで、根拠ですが、ウサギ眼刺激性試験においてわずかな角膜混濁がみられているが、ヒトでの報告はないとしております。

4ページ、皮膚感作性ですが、ありとしております。根拠ですが、接触性皮膚炎が疑われる患者のパッチテストで、ジスルフィラムに対する反応が見られていることを根拠としております。 

 次に、呼吸器感作性は、調査した範囲内で情報は得られていないということです。

 次に反復投与毒性に移ります。LOAEL100 mg//日ということです。根拠は、アルコール依存症ではないボランティア52人に、ジスルフィラムを連日2週間投与し、2週間目の最後にエタノール150 mg/kgを投与した。ジスルフィラムの用量は、最初の2週間は1 mg、次の2週間はアルコール不耐性を示さなかったボランティアに100 mg、同様にして200 mg300 mgと増量した。この試験の結果、アルコール不耐性反応は、ジスルフィラム100 mg(1.5 mg/kg体重)で現れるとしております。この試験結果の不確実性係数は、UF10、根拠はLOAELからNOAELへの変換です。

 評価レベルですが、1.0 mg/m3 としております。計算式は誤りがあり、正しくは100mg/60kg×60kg/10 3 ×1/10という計算式です。

 次に、生殖毒性に移ります。生殖毒性は、判断できないとしております。根拠は、ヒトでの調査報告例では、ジスルフィラムと催奇形性を結びつけることはできないとコメントされている。また、動物実験では、いずれも母動物に毒性が発現する投与量、あるいは母動物に対する毒性が不明なためとしております。

 参考ですが、NOAEL(発生毒性)が、30 mg/kg体重、根拠は、C3Hマウスにジスルフィラム1 mgを、妊娠前3週間及び妊娠期間中に5/週で混餌投与した。検査した83胎児に胎児毒性の奇形を認められなかったことによります。不確実係数は、種差(10)に基づく、UF10、評価レベルは18 mg/kg体重、計算式は資料のとおりです。

 次に、遺伝毒性です。判断できないとしております。根拠ですが、in vitroの姉妹染色分体交換試験、DNA鎖切断試験、マウスリンフォーマ試験で陽性を示したが、復帰突然変異試験及びin vivoの染色体異常試験、小核試験では陰性を示したことを根拠としております。

5ページに移り、許容濃度等です。まず、ACGIHTWAは、1976年に2 mg/m3 としております。根拠ですが、アルコール依存症治療の維持療法として推奨されている投与量(経口)に基づき、労働者が作業環境能度にばく露されることによって発現するアンタビュース(ジスルフィラム)様症状を最小限に抑えるため、TLV-TWA 2 mg/m3 を勧告するとしております。日本産業衛生学会では、情報なし、DFG MAK2 mg/m3(1978)NIOSHRELTWA 2 mg/m3 としております。

 次に評価値に移ります。まず、一次評価値ですが、なしとしております。これにつきましては、発がん性を検討されたが、結論を得られておらず、遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん1×10のマイナス4乗レベルに相当するばく露濃度が設定できないためとしております。一次評価値の基本的な考え方は、資料に示すとおりです。

 次に、二次評価値です。2 mg/m3 です。この根拠ですが、ACGIHが勧告している許容能度を二次評価値としております。二次評価値の基本的な考え方は、資料のとおりです。ほかの物質でも共通に記載しております。

 次に、ばく露実態評価の方に移ります。有害物ばく露作業報告の提出状況です。テトラエチルチウラムジスルフィドの有害物ばく露作業報告については、平成27年に44事業場から計76作業について報告がありました。対象物質の主な用途は、「触媒又は添加物として使用」、「他の製剤等の原料として使用」で、作業の種類は、「計量、配合、注入、投入、又は小分けの作業」、「ろ過、混合、攪拌、混練、又は加熱の作業」、「成形加工、又は発泡の作業」でした。

 対象物質の年間製造・取扱量ですが、「1t以上10t未満」が47%、「500mg以上1t未満」が18%、「10t以上100t未満」が17%、「500kg未満」が9%、「100t以上1,000t未満」が5%、「1,000t以上」が3%でした。作業1回当たりの製造・取扱量は、「1kg以上1t未満又は1L以上1kL未満」が57%、「1kg未満又は1L未満」が39%、「1L以上又は1kL以上」が4%であったとしております。

 また、当該作業従事労働者数ですが、「5人未満」が66%、「5人以上10人未満」が、次のページに移って19%、「10人以上20人未満」が7%、「20人以上」が8%であったとしております。

 さらに1日当たりの作業時間ですが、「15分未満」が7%、「15分以上30分未満」が12%、「30分以上1時間未満」が18%、「1時間以上3時間未満」が27%、「3時間以上5時間未満」が12%、「5時間以上」が24%で、局所排気装置が設置されている作業は65%でした。

 次に、ばく露実態調査の結果に移ります。有害ばく露作業報告のあった44事業場のうち、平成28年度に13事業場を選定してばく露実態調査を実施いたしました。対象事業場においては、製造・取扱作業に従事する29人について、個人ばく露測定を行うとともに、31地点についてスポット測定を実施いたしました。個人ばく露測定結果につきましては、ばく露評価ガイドラインに基づき、8時間加重平均濃度(8時間TWA)を算定いたしました。

 測定分析法は別添4に添付されているとおりのサンプリングを行い、分析法は液体クロマトグラフ分析法としております。

 次に、対象事業場における作業の概要です。作業事業場におけるテトラエチルチウラムジスルフィドの主な用途は、「触媒又は添加物として使用」、「他の製剤等の原料として使用」でした。テトラエチルチウラムジスルフィドのばく露の可能性のある主な作業としては、「充填」、「原料投入」、「計量・秤量」等の作業で1回当たり数分から数十分の作業が多くを占めていたということです。また、作業環境は、調査した作業の全てが屋内で行われ、ばく露防止対策は48%の作業で局所排気装置が設置され、60%の作業で呼吸用保護具が使用されていたということです。

 次に、測定結果に移ります。測定は、29人の労働者に対して実施し、個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は、製品充填及び微調整の作業中に測定された1.1 mg/m3 でした。具体的な内容につきましては、7ページ、8ページの表に記載しているとおりです。また、次の8ページに、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値(上側5)は、1.5 mg/m3 でした。今回は、29データのうち定量下限値以上の濃度である19データを評価データとして採用しております。このことから、ばく露最大値は、ばく露評価ガイドラインの規定で、区間推定上側限界値又はばく露最大値の高いほうを最大値とすることから、区間推定上側限界値の1.5 mg/m3 となりますが、二次評価値を下回っております。

 また、スポット測定の実測データは、最大で原料投入及びかき落とし作業の1.361 mg/m3 であり、1回の作業時間は各1分、1月に各140回の作業ということです。

 最後、9ページ、リスクの判定及び今後の対応について説明いたします。これまでの内容から、テトラエチルチウラムジスルフィドの製造・取扱事業場においては、最大ばく露量1.5 mg/m3 は、二次評価値2 mg/m3 を下回っており、リスクは低いと考えられる。また、当該物質について、日本産業衛生学会又はACGIHによる経皮吸収の勧告はなされていない。当該物質は、ヒトに対する皮膚感作性のある物質であり、事業者は、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要であるとまとめました。

10ページ以降に、ばく露実態調査集計表、11ページにテトラエチルチウラムジスルフィドの有害性総合評価表、15ページに有害性評価書、39ページに、ばく露作業報告集計表、最後、別添4に測定分析法をまとめております。事務局から以上です。

○名古屋座長 それでは、御意見、御質問等ありますでしょうか。評価の結果からいくと、二次評価値に対して最大ばく露が超えておりませんので、このままいきますと、初期リスク評価で終了という形になりますけれども、御質問等ありますでしょうか。よろしいですか。

○圓藤()委員 ちょっと教えていただけますか。10ページの作業環境測定結果、最大値が9.5 mg/m3 で、幾何平均が1.4 mg/m3 になっているのですけれども、これ、最大値が1つだけ飛び離れて出ているのですかね。

○名古屋座長 そうでしょうね。

○平川化学物質評価室長補佐 机上配布資料の参考資料5F事業場のA測定結果で幾何平均値が1.4 mg/m3 、幾何標準偏差が3.0 mg/m3 、最大値が9.5 mg/m3 という数字が挙がっております。

○名古屋座長 先生、よろしいですか。

○圓藤()委員 はい。

○名古屋座長 ほかに、どうぞ。

○大前委員 ページの問題だけなのですけれども、2ページの化学構造式、左側の「N」でエチル基が2つ付いていますけれども、このエチル基の表現の仕方が、左側のNの右上のところだけ、ちょっとほかのところと違うので、どちらかに統一したほうがいいと思います。

○名古屋座長 構造式ですね。

○大前委員 はい、構造式です。

○平川化学物質評価室長補佐 分かりました、統一します。

○大前委員 これを印を付けるか、若しくはどちらか。それからもう1つは、41ページの測定法の別名のところで、2行から「N,N,N',N'-テトラエチルチウラム」というのがあるのですが、これが2ページの別名にないので、ここも少し統一をしていただきたい。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。修正いたします。

○名古屋座長 ほかに修正等ありますでしょうか。

○原委員 教えていただきたいのですが、4ページの計算式と、そのほかの関連資料、例えば、ちょっとすぐには出ないですけれども、この計算式は間違っているということで、100分の1と、ほかの例えば、179ページの10分の1とかいう、それは統一していただけるのでしょうか。もう一度、正式な式を教えていただければ有り難いです。

○平川化学物質評価室長補佐 179ページの計算式が正しいものと考えております。

○原委員 分かりました、ありがとうございます。

○名古屋座長 10分の1がないということですね。では、それはよろしくお願いします。あとはよろしいですか。

○江馬委員 13ページの3行目、「NOEL」になっているのですけれども、「NOAEL」だと思います。

○平川化学物質評価室長補佐 上から3行目でしょうか。

○江馬委員 はい、そうです。

○清水委員 細かいことですが、4ページの下から3行目で、「姉妹染色体分体」ではなくて、「姉妹染色分体」交換です。ほかにも何箇所かあるようですが。

○名古屋座長 姉妹染色分体ですね。染色体の体の字が余分だということですね。

○平川化学物質評価室長補佐 姉妹染色体の「体」を抜くということですね。

○名古屋座長 はい、そうです。

○清水委員 ほかにも何箇所かあります。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。

○平川化学物質評価室長補佐 同様の修正のところは対応いたします。

○名古屋座長 あと、ppmとかその辺のところの修正等ありますので、直していただいて、結果としては初期リスク評価で終わるという形でよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。続きまして、次の評価書の説明をよろしくお願いいたします。

○穴井化学物質評価室長 それでは、二塩化酸化ジルコニウム、43ページからです。44ページから中身に入りますが、物理化学的性質です。名称は二塩化酸化ジルコニウム、別名はオキシ塩化ジルコニウムなどとなっております。化学式はCL2OZr、構造式は御覧のとおりです。分子量は178.1CAS番号が7699-43-6で、労働安全衛生法施行令で別表9の物質となっております。

 物理的化学的性状です。外観は白色結晶又は白色の固体です。密度が八水和物のもので1.91 g/cm3 です。それから融点が八水和物のもので約60℃で分解ということになっています。溶解性は水に対して冷水に極めてよく溶ける。1L当たり1,000 g以上となっております。熱水、中和により分解となっております。

 次に、生産・輸入量ですが、2013年度のデータで、13,827tとなっております。用途としては、ジルコニル石鹸、レーキ顔料、触媒、紙・パルプ排水中の公害処理用、その他ジルコニウム化合物の原料などとなっております。製造業者は御覧のとおりです。

 続いて45ページ、有害性の評価の結果です。発がん性につきましては、ヒトに対する発がん性は判断できないということで、調査した範囲内では報告は得られていないということです。各評価区分につきましても、唯一、区分があるのは、ACGIHA4ということになっております。ほかは情報がありません。

 閾値の有無については、なし。根拠としては、遺伝毒性があると判断されることからということです。

 発がん性以外の有害性につきましては、急性毒性ですが、ラットとマウスのデータをそこに掲載しております。

 それから皮膚刺激性/腐食性では判断できない。これも報告は得られていないということです。

 眼に対する重篤な損傷性/刺激性についてはあり、中程度の眼刺激性があるという情報があります。

 皮膚感作性については、なしということになっております。

 続いて次の46ページ、反復投与毒性です。ここはLOAEL6mgZr/m3 ということになっておりますが、ここに書かれているデータにつきましては古くて信頼性に欠けるということで、後の一次評価値に掛かってきます。ここに一応データとしては載せておきますが、後の一次評価値としての数値としては使わないということで、有害性検討会の場で、そういう結論となっております。

 それから、生殖毒性については判断できない、これも報告は得られていないということです。

 遺伝毒性については、あり。根拠としてはin vitroの試験系では、ネズミチフス菌のS9の添加の有無にかかわらず遺伝子突然変異を誘発しなかったが、ヒト末梢血白血球では10及び20μg/mLで、染色体異常及び姉妹染色分体交換の増加が見られた。in vivo試験系では、マウスの二塩化酸化ジルコニウム水溶液を単回投与した実験で、骨髄細胞の染色体が異常増加したということで、ありということになっております。

 許容濃度等です。ACGIHでは、TLV-TWA5 mg/m3 、これはジルコニウム及びその化合物で、Zrとしてということで1956年になっております。根拠としては、吸引試験では塩化ジルコニウム6 mgZr/m3 2か月ばく露により、ラット、モルモットでは死亡率はやや増加したが、ウサギ、ネコ又はイヌでは死亡率は増加しなかった。塩化ジルコニウム3.5 mgZr/m3 1年間吸入ばく露した試験では、動物に悪影響は見られなかった。以上のことから、TLV-TWA値として、5 mg/m3 を勧告するということから、この値を取っております。

 次の47ページ、日本産業衛生学会での設定はありません。DFG MAK1 mg/m3 NIOSH RELTWA 5 mgZr/m3 OSHAでもTWA5 mgZr/m3 などとなっております。

 それから評価値です。一次評価値はなしとしました。先ほども申し上げたとおり、ここの値として反復投与毒性のLOAELから求められる評価レベルを使用することはできますが、反復投与毒性の評価については信頼性が薄いということで、このデータは取らないということで、ここはなしとしております。それから、この書きぶりですが、「発がん性に関する情報がなく」はいいのですが、「遺伝毒性が判断できない場合」と書いてありますが、遺伝毒性があるということなので、「遺伝毒性はある場合で、生涯過剰発がん10のマイナス4乗のレベルに相当するばく露濃度は設定できないため」ということで修正します。

 二次評価値としては、先ほどのACGIHが勧告している基本濃度を採用して、5 mg/m3(Zrとして)ということになります。

3番目、ばく露実態評価に移ります。有害物ばく露評価作業報告の提出状況です。有害物ばく露作業報告については、平成27年に20事業場から計23作業について報告がありました。用途につきましては、主に「他の製剤等の原料としての使用」ということで、作業の種類につきましては、主に「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」ということになっております。

 対象物質の年間製造・取扱量につきましては区分があり、「1t以上10t未満」の35%というところが一番多くなっております。作業1回当たりの製造・取扱量は、「1kg以上1t未満又は1L以上1kL未満」が45%、「1t以上又は1kL以上」が55%となっています。従事労働者数で最も多いのが「5人未満」ということで86%となっております。1日当たりの作業量は、「15分未満」が14%、「15分以上30分未満」が27%、「30分以上1時間未満」が27%などとなっております。局所排気装置を配置している作業は69%ありました。

 ばく露実態調査の結果です。ばく露作業報告のあった20事業場のうち、平成28年度に6事業場を選定してばく露実態調査を実施しております。製造・取扱作業に従事する9人について個人ばく露測定を行うとともに、11地点についてスポット測定を、1単位作業場でA測定を実施しております。

 測定分析法につきましては、サンプリングについて、孔径0.8μmセルロースエステル混合メンブレンフィルターを用いて捕集しております。分析法はICP発光分光分析法です。

 作業の概要です。主な用途としては、「二塩化酸化ジルコニウムを含有する製剤その他のものの製造を目的とした原料としての使用」ということになっております。ばく露の可能性のある作業につきましては、「計量、原料投入」、「サンプリング」等の作業で、1回当たり数十分から数時間の作業が多くを占めておりました。作業環境としては、作業が全て屋内で行われ、ばく露対策は50%の作業で局所排気装置が設置され、58%の作業で呼吸用保護具が使用されておりました。

 測定結果です。9人の労働者に対し実施し、個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は、フレコンバック投入作業中に測定された0.022 mg/m3 でした。また全データを用いて信頼率90%で区間推定した上側5%値は、0.067 mg/m3 でした。(9データのうち、定量下限値以下の3データを除く6データを評価データとして採用しております。)このことからばく露最大値は、区間推定値、上側が5%の0.067 mg/m3 ということになりますけれども、この数値は二次評価値を大きく下回っております。それを表グラフにしたものが49ページになっております。

50ページの結論です。リスク判定及び今後の対応として、以上のことから二塩化酸化ジルコニウムの製造・取扱作業場においては、最大ばく露量0.067 mg/m3 は二次評価値5 mg/m3 を大きく下回っており、経気道からのばく露によるリスクは低いと判定される。また、当該物質について、日本産衛学会又はACGIHの経皮吸収への勧告はなされていません。しかしながら、当該物質は動物実験により、急性毒性、反復投与毒性、遺伝毒性が報告されている物質であり、事業者はリスクアセスメントを行い、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、実質的なリスク管理を行うことが必要であるという結論としております。以上です。

○名古屋座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について、御意見、御質問等はありますでしょうか。二次評価値に比べて著しくばく露が小さいということで、このままいくと初期リスク評価で終了という形になりますが、何か御質問等はありますでしょうか。

○津田委員 45ページの各評価区分でいろいろなIARCと書いてありますが、年号が書いてあるのはどういう意味でしょうか。(IARC 2015)や(産衛 2015)とか。

○穴井化学物質評価室長 2015年に調べたところ、情報がなかったということです。

○津田委員 ということは、現時点ではないということですか。

○穴井化学物質評価室長 そうです。

○津田委員 かえって誤解を招くのではないですか。

○穴井化学物質評価室長 分かりました。

○津田委員 その後で調べたら出る可能性があるということかもしれないので。

○名古屋座長 2015年現在ですかね。

○津田委員 現在です。

○名古屋座長 2015年現在とか何か書きますか、それとも、なくすか、どちらかですね。

○穴井化学物質評価室長 はい、どちらがいいか。

○名古屋座長 どちらがいいでしょうか。調べたことは調べたので現在にしておきましょう。ないと調べなかったのかと言われてしまいます。でも、きちんと調べているので、2015年現在でということで、どうしましょう、それでよろしいですか、記載としては。

○津田委員 今やっているわけだから、年号を入れなくてもいいのではないですか。

○名古屋座長 そうですね。

○津田委員 なしならなしで。

○名古屋座長 はい。そうしたら、なしという形で。

○穴井化学物質評価室長 では、なしの場合については、括弧を取るということにいたします。

○名古屋座長 そういうことです。そのような形で記載をお願いします。あとはよろしいでしょうか。西川委員、どうぞ。

○西川委員 補足と確認ですが、46ページの反復投与毒性試験があって、この試験を評価値に使わなかったという理由ですが、58ページの109行目に、これは非常に古い試験で、1956年に公表されたもの、それから、104行目に、ラットやモルモットでは、呼吸器感染による死亡だったということで、ちょっと試験の条件が劣悪であるというような可能性が高いので、この試験の取扱いについては評価値には使わないけれども、ここでは残すということにしたわけですよね。それと、50ページの213行目に、当該物質は、動物実験により、これは反復投与毒性が書いてあるのですが、ここは矛盾しないと考えてよろしいでしょうか。

○名古屋座長 どうしましょうか。

○大前委員 信頼できない結果ではありますけれども、報告はあるので、書いていてもおかしくはないかなと思います。少なくとも、質の非常に評価しにくい実験は1個あった。

○西川委員 ですね、そのために一応、この結果を残すということだったのですよね。

○大前委員 そうですよね。

○西川委員 分かりました。それで結構です。

○名古屋座長 よろしいですか。

○西川委員 はい。

○名古屋座長 それでは、この物質については、初期リスク評価で終了という形で認めたいと思います。では、次をお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、ニッケル(金属及び合金)のリスク評価書について説明いたします。資料3を御覧ください。説明は70ページからになります。物理化学的性質です。化学物質の基本情報ですが、名称はニッケル(金属)です。別名、化学式は記載のとおりです。原子量58.7CAS番号7440-02-0の物質です。これに該当するものということで、名称の所に、以下、関係物質を示しております。モネル、ニクロム、ハステロイ/インコネル、インコロイ、ステンレス鋼、アルニコ、パーマロイ、ラネーニッケルということです。

 ニッケルは、このように、鉄、クロム、モリブデン、マンガン、銅、チタン、アルミニウム等、多くの金属と合金を形成する。合金中のニッケル含有率は、目的により大きく変わるが、本評価書では、ニッケル含有率0.1%以上で粉じんとして吸入される可能性がある場合、評価の対象とすることとしております。なお、ニッケル化合物は、本評価書の対象外ということで、既に特化則に規定されているということです。

 次に、物理的化学的性状です。外観は様々な形状をした銀色の金属固定です。比重は8.9、沸点は2,730 ℃、融点は1,455 ℃、溶解性は水に溶けないということです。

 次に、製造・輸入量、使用量、用途です。生産量は2013年、金属ニッケルで46,418t、輸入量は、同じく金属ニッケルで、2013年に305,238tとなっております。

71ページ、用途です。特殊鋼、鋳鍛鋼品、合金ロール、電熱線、電気通信機器、洋白、メッキ、貨幣などということです。(ニッケル地金の90%が合金で、そのうち2/3はステンレス鋼に用いられる)ということです。製造業者については、資料に示すとおりです。

 次に、有害性評価の結果です。まず、発がん性ですが、ヒトに対する発がん性が疑われるとしております。根拠ですが、日本産業衛生学会、2009年では、「ヒトへのばく露で発がんが認められているのは、ニッケル製錬所においてのみであり、それら発がんの大部分は20世紀前半に見られ、原因物質の環境中濃度測定はほとんど行われていないと報告している。一方、米国のNTPによる動物への2年間吸入ばく露実験により発がん性を認めている。これらにより、ニッケル化合物(製錬粉じん)1群:ヒトに対して発がん性があると判断できる物質、これ以外のニッケル化合物:第2Bヒトに対しておそらく発がん性があると判断できる物質と分類している。」IARCは、金属ニッケルをグループ 2Bとしています。

 各評価区分です。IARCは金属ニッケルを1990年に2B、一方、ニッケル化合物は、2012年にグループ 1としています。産衛学会は、ニッケル精錬粉じんを2011年に第1群としています。EU CLPは、粒径1 mm未満をグループ 2NTPでは金属ニッケルを、合理的にヒト発がん性因子であることが予測されるということとしております。一方、ニッケル化合物は、ヒト発がん性因子であることが知られているとしております。ACGIHでは、金属ニッケルはA5となっています。一方、不溶性ニッケル、二硫化三ニッケルをA1、水溶性ニッケルはA4としています。

 次に、閾値の有無です。判断できないとしております。根拠は、遺伝毒性の判断を根拠としております。

 次に、発がん性以外の有害性です。急性毒性については、72ページに表でまとめてあるとおりです。

72ページ、皮膚刺激性/腐食性です。なしとしております。根拠は、実験動物、ヒトにおいて刺激性の報告がないとしております。

 次に、眼に対する重篤な損傷性/刺激性です。調査した範囲内で情報は得られていないとしております。

 皮膚感作性は判断できないということです。根拠は、金属ニッケルや、ニッケルの水溶性塩類を含む物質から溶出したニッケルが皮膚に接触すると皮膚感作が起こり、アレルギー性接触皮膚炎を誘発することがある。しかし、ヒトへの感作経路や、ばく露量の推移では困難などとしております。

 呼吸器感作性は調査した範以内では報告は得られていないということです。

 次に、反復投与毒性です。LOAEL0.1 mgNi/m3 としております。根拠は、雌雄Wistarラット(各群50)に、00.10.41 mgNi/m3 金属ニッケル粉末を6時間/日、5/週で103週吸入ばく露し、130週間観察したところ、対照群と比較し、雄0.1 mgNi/m3 群で赤血球数・ヘモグロビン濃度・ヘマトクリットで平均値が78%上昇し、統計学的有意差を認めたとしております。この試験に係る不確実係数を種差、LOAELからNOAELの変換で合計100としております。評価レベルはそれらに基づいて、7.5×10のマイナス4乗(mgNi/m3)としております。

 次に、生殖毒性です。判断できないとしております。根拠ですが、ヒトの症例報告や、疫学研究による生殖毒性は明確に示した研究は見当たらない。また、動物実験による生殖毒性試験の報告は見当たらない。よって、生殖毒性を判断する十分な情報はないとしております。

73ページ、遺伝毒性です。判断できないとしております。根拠ですが、ヒト末梢血リンパ球を用いた染色体異常試験で、金属ニッケル粉末は染色体異常の増加を示さなかったとの報告があるが、遺伝毒性を判断する十分な情報がないとしております。

 次に、許容濃度等に移ります。ACGIH TWAは、金属ニッケルについては2001年に1.5mg/m3 としております。その他のニッケル化合物については、以下に示すとおりです。金属ニッケルの根拠ですが、上記は吸引性粒子に対する職業ばく露の許容濃度であり、実験動物で報告された肺がん、鼻腔がんや、肺、胃の炎症性変化が生じている可能性が最小限とすることを意図したものと。金属ニッケルはA5、不溶性ニッケルと二硫化三ニッケルはA1、水溶性ニッケルはA4と分類される。SkinSENTLV-STELを勧告する十分なデータはないとしております。

 次に、日本産業衛生学会です。ニッケルについて、許容濃度1 mg/m3 としております。さらに、気道感作性第2群、皮膚感作性第1群、生殖毒性第3群と勧告しております。ニッケル化合物については、精錬粉じんに関し、10のマイナス3乗、10のマイナス4乗の過剰発がん生涯リスクレベルを示しております。また、精錬粉じん職場以外での許容濃度(吸入性粒子)として、水溶性ニッケル化合物等の勧告を行っている。

DFG MAKは設定なし、NIOSH REL0.015 mgNi/m3 としております。

 次に、評価値に移ります。一次評価値はなしとしております。根拠は、発がん性を示す可能性があり、遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん10のマイナス4乗レベルに相当するばく露濃度を設定できないためとしております。

74ページ、二次評価値です。二次評価値は1.5 mg/m3 としております。勧告の理由ですが、ACGIHが勧告している許容濃度を二次評価値としています。

 次に、ばく露実態評価、有害物ばく露作業報告の提出状況です。ニッケル(金属及び合金)の有害物ばく露作業報告については、平成27年に405事業場から、計904作業についての報告がありました。対象物質の主な用途は、「他の製剤等の原料として使用」、「表面処理又は防錆を目的とした使用」、「触媒又は添加物使用」で、作業の種類については、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「めっき等の表面処理の作業」、「鋳造、溶融又は湯出しの作業」がありました。

 対象物質の年間製造・取扱量ですが、一番多かったのが、「1t以上10t未満」で、30%となっております。また、作業1回当たりの製造・取扱量で、一番多いのは、「1kg以上1t未満又は1L以上1kL未満」で71%となっております。

 また、当該対象従事労働者数で一番多かったのは「5人未満」です。

 また、1日当たりの作業時間については数字が割れておりまして、「15分未満」が21%、「15分以上30分未満」が12%、「30分以上1時間未満」が14%、「1時間以上3時間未満」が23%、「3時間以上5時間未満」は12%、「5時間以上」は19%となっております。また、局所排気装置が設置されている作業は56%でした。

 次に、ばく露実態調査の結果です。有害物ばく露作業報告のあった405事業場のうち、平成28年度に7事業場を選定してばく露実態調査を実施しました。対象事業場においては、製造・取扱作業に従事する23人について、個人ばく露測定を行うとともに、25地点についてスポット測定を行いました。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき8時間加重平均濃度(8時間TWA)を算定しています。測定分析法については、サンプリングは、石英繊維ろ紙を用いた捕集、分析法はICP-AES測定です。

 次に、作業事業場における作業の概要です。対象事業場におけるニッケル(金属及び合金)の主な用途は、「ばく露作業報告対象物の製造」、「他の製剤等の原料としての使用」でした。ニッケルのばく露の可能性のある主な作業は、「ガウジング」、「研削、研磨」、「切断」、「包装」、「投入」等の作業で、1日当たり数分から数時間の作業が多くを占めていました。また、作業環境は調査した作業の全てが屋内で行われ、ばく露防止対策は、75%の作業で局所排気装置が設置され、97%の作業で呼吸用保護具が使用されていたということです。

 次に測定結果です。23人の労働者に対し実施し、個人ばく露測定の結果から、8時間TWAの最大値は、ガウジングの作業中に測定された0.68 mg/m3 でした。また、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値(上側5)0.63 mg/m3 でした。(23データとも定量下限値以上の濃度であったことから、評価データとして採用した。)このことから、ばく露最大値は、ばく露評価ガイドラインの規定、(区間推定上側限界値又はばく露最大値の高いほうを最大値とする。)に準拠し、区間推定、上側限界値の0.68 mg/m3 となるが、二次評価値を下回ったということです。また、スポット測定の実測データは最大で、安定化ニッケル触媒包装作業の0.133 mg/m3 であり、1回の作業時間は60分、1日に4回の作業であったとしています。詳細の結果等については、7577ページに示しているとおりです。

 最後、リスクの判定及び今後の対応です。以上のことから、ニッケル(金属及び合金)の製造・取扱事業場においては、最大ばく露量0.68 mg/m3(個人ばく露測定値)は二次評価値1.5 mg/m3 を下回っており、評価した結果からは、リスクは低いと考えられるが、明らかにヒューム等が発生することが見込まれる溶接作業に関しては、データが不足しており、広くばく露実態調査を実施した上で、ニッケル(金属及び合金)のばく露評価を行う必要があるとまとめました。

 また、当該物質について、日本産業衛生学会又はACGIHによる経皮吸収の勧告はなされていない。当該物質は、ヒトに対して発がんの可能性がある物質であり、事業者、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として自主的なリスク管理を行うことが必要であるとしております。以上です。

○名古屋座長 ただいまの御説明に関して、御質問、御意見等はありますか。

○圓藤()委員 74ページのばく露実態評価の所で、局所排気装置が設置されている作業は56%と書かれていて、75ページの一番上の所で、ばく露局所排気装置が設置されているのは75%となっているのですが、これは、ばく露報告での結果ということですか、75%というのは。

○平川化学物質評価室長補佐 ばく露実態評価の(1)の所に書かれているのは、労働安全衛生規則に基づき提出された有害物ばく露作業報告の中で、局所排気装置が設置されていると報告があったものの割合が56%です。

○圓藤()委員 こちらがばく露報告。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。もう1つの75%というのは実際に現場のほうの調査結果ということで、75%ということです。

○圓藤()委員 分かりました。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。

○圓藤()委員 はい。

○名古屋座長 ほかにありますでしょうか。

○鷹屋委員 2つあるのですが、97ページの標準分析法のサンプリングの記載は、これは多分、定点用なのですが、これから類推するに、ばく露測定もinhalableのサンプリングをして、ばく露測定したということでよろしいでしょうか。これは確認、1点です。

 もう1つは、ここで調査した所で、1か所、触媒のパッキングという事業場があって、それ自身はそれほど高くなかったのですが、逆にその触媒を使っているほうは多分、使用量が少なくて引っ掛かってこなかったのでしょうか、何かそちらの粉体扱いで、気にはなるのですが、逆に触媒の製造業者は候補に挙がってきたけれども、もう、そもそも使っているほうは報告がなかったということの理解でよろしいのでしょうか。使うほうの使用量は多分減るのでおかしくはないのですが。

○中央労働災害防止協会 そのとおりです。ばく露作業報告の細かいデータが分からないところがありますが、調査をする所はコントロール・バンディングを使用してできるだけばく露の高い所を選ぶということですので、使用量が少ないと、落ちてしまうということは当然考えられることです。

○鷹屋委員 はい、分かりました。

○名古屋座長 よろしいですか。これは中間報告になっているのは小検討会の中で、一番ばく露されているのはガウジング作業になっている。ガウジング作業は御存じのようにエアーで吹きますので、そうすると、ばく露自体がそれほど高い状況になってこないだろうと、それに比べると、溶接はそのまま金属ヒュームが熱気流により上昇しますので、ばく露は高くなるのではないかということがあったので、やはりガウジングの一番高い濃度でリスク評価をするのは、ちょっと危険ではないかというのが小検討会でありました。そこで、実際に溶接作業で、特にニッケル及びニッケル合金用の溶接棒で溶接作業を行った時に発生する溶接ヒューム中のニッケルが多く含まれているのです。一般的に溶接ヒュームは、溶接に用いられる溶接棒から出ることが多いので、ニッケル及びニッケル合金と、それから、ステンレス鋼用の溶接棒とか、硬化肉盛用の溶接棒を用いた溶接作業時にどのくらいのニッケルが発生するかという基礎実験が溶接協会で行われまして、その結果、ほかの溶接作業に比べると、ニッケル及びニッケル合金が一番ニッケルが発生しているので、では、そこのところでニッケルが一番発生するところで抑えておけば、リスクとしては大丈夫だろうという事で、そこについてもう一度詳細な測定してもらって、その結果を受けて、リスク評価を改めてしてしまうということで、今回は、中間報告という形になっています。事後報告になりまして、申し訳ございません。このような形で、もう一度そのところの溶接の作業を入れて、最終的な報告の形にしようと思います。ということで、よろしいでしょうか。何か御質問等はありますでしょうか。

○西川委員 71ページの発がん性の所で、「ヒトに対する発がん性が疑われる」とありますが、この根拠はIARC2Bということに加えて、ほかにも疑われるような評価、結果があるということでしょうか。通常、2Bだけですと、「可能性あり」のような表現をしてきたと思いますけれども。

○大前委員 これは表現のルールがありまして、ルールブックに2Bの場合はこのように書く。

○平川化学物質評価室長補佐 これについては、IARCでは金属ニッケルをグループ 2B、資料183ページで簡単に全体の評価書関係のところをまとめたものがあります。こちらを御覧いただければと思います。183ページの中で、「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで、根拠として、IARCは、金属ニッケルグループ 2BとしているWistarラットへの金属ニッケルの吸入試験及び腹腔内への注入試験の発がん性が確認されている報告があるとしております。この「疑われる」という表記ですが、GHSでこの表現、リスク評価の際の発がん性評価の書き方のルールで、GHSの記載の仕方に準拠した形で書くということになっておりますので、この場合はグループ 2Bに当たるものが、ヒトに対する発がん性が疑われるというところになりますので、このような書き方をさせていただいております。したがって、IARCの分類基準と評価書における表現は違っております。

○西川委員 違うのですね、分かりました。そうすると、73ページの一次評価値の所で、「発がん性を示す可能性がある」と書いてあるのですが、したがって、これ、疑われるのであれば、これも統一したほうが。

○名古屋座長 可能性ではないね。

○西川委員 表記にこだわるのであれば、そのようにしたほうがよいのかなと思います。

○名古屋座長 そろえましょうということですね。

○西川委員 はい。

○大前委員 そうですね。

○名古屋座長 大前委員、それでよろしいでしょうか。

○大前委員 もちろんです。

○名古屋座長 では、一次評価値なしの所は、「ヒトに対する発がん性が疑われる」という形の表記に直すということでよろしいでしょうか。

(意見なし)

○名古屋座長 ほかに何かありますか。よろしいでしょうか。それでは、これはまた溶接のデータが出てから再評価するということは、中間報告という形ということです。よろしくお願いします。では、次の物質をお願いします。

○穴井化学物質評価室長 ピリジンになります。99100ページを御覧ください。物理化学的性質です。名称はピリジン、別名はアザベンゼン、化学式は、分子量、構造式は御覧のとおりです。CAS番号110-86-1、労働安全衛生法施行令で別表9の物質です。

 物理的化学的性状です。特徴的な臭気のある、無色の液体です。比重は水1に対して0.98、沸点が115℃、蒸気圧が20℃で、2.0kPa、蒸気密度が2.73、融点が-42℃。溶解性については混和する。

 生産量・輸入数量です。2012年度のデータで4,000tとなっています。用途としては、スルホンアミド剤や抗ヒスタミン剤などの医薬品、無水金属塩の溶剤及び反応媒介剤などとなっています。

 有害性評価の結果です。発がん性については、ヒトに対する発がん性が疑われるとなっております。根拠としては、IARCはヒトでの明らかなデータはないものの、B6C3F1マウス雌雄での肝細胞がん及び肝芽腫、F344ラット雄での腎細胞腺腫、あるいは腎細胞癌及び雌での単核急性白血病の発生率が有意に増加したことから、sufficient evidenceと判断し、機序からも発がん性が否定できないため、グループ 2Bとしております。

 各評価区分としては、IARC2B、これは今年になったということです。ACGIHではA3、産衛学会は情報なし、DFG MAK3BEU CLPは情報なしなどとなっています。

 閾値の有無ですが、ありということで、遺伝毒性がないと考えられるためとなっています。参考として、LOAEL=15 mg/kg体重/日となっています。根拠としては、B6C3F1マウスにピリジンを雄に02505001,000 ppm104週間及び雌に、1125250500 ppm105週間経口投与した実験で、雄の250 ppm以上、雌で125 ppm以上で肝細胞がん、雌雄の250 ppm以上で肝芽腫の発生率が有意に増加したということです。評価レベルを計算すると、0.13 mg/m3(0.04 ppm)となっております。

 ユニットリスクに関する情報はありません。

 急性毒性についてのデータは、吸入毒性以下、載っているとおりです。

 皮膚刺激性/腐食性についてはあり、眼に対する重篤な損傷性/刺激性あり、皮膚感作性あり、呼吸器感作性は報告なし、神経毒性ありとなっています。これはLOAEL= 6 ppmで、根拠としては、ピリジンの蒸気濃度が612 ppmの範囲にある化学工場7人の労働者で、頭痛、一過性のめまい、神経過敏、不眠、時々の悪心、嘔吐等の消化管トラブルが見られ、一例では集中力の欠如、記憶力の低下、性的能力の減退が見られたということから出ております。

 生殖毒性については判断できない。

 遺伝毒性についてはなしとなっています。根拠としては、ヒトにおける遺伝毒性に関する情報は得られていないということ。in vitro試験系では微生物の復帰及び前進突然変異試験、ほ乳類細胞の姉妹染色分体交換試験、染色体異常試験及び遺伝子突然変異試験でほとんど陰性を示し、酵母の染色体異常試験では陽性であった。in vivo試験系では、マウスの小核試験、染色体異常試験及び不定期DNA合成試験で陰性、ショウジョウバエの伴性劣勢致死試験では陰性あるいは陽性であったということから、なしとしています。

 許容濃度等については、ACGIH TLV-TWA1 ppm2004年です。根拠ですが、ラットの短期間吸入ばく露試験で最低濃度の5 ppmで嗅上皮の障害が見られた。ラット及びマウスでの反復経口投与の影響が検討された。2年間の飲水投与試験の最も低いNOAELは、F344ラットで7 mg/kgWistarラットで8 mg/kg以下、マウスで15 mg/kg以下であった。7 mg/kg/日の経口用量は、仕事中の70 kgの男性が10 3 の空気を呼吸するとして、49 mg/m3 の吸入用量に相当する。これを5 ppmでのラットの鼻組織の病変が生じたデータと統合すると、TWAとして1 ppmを守れば障害を最小化することが示唆されることで、1 ppmが勧告されております。

 日本産業衛生学会では設定がありません。DFG MAKについても、MAK値はなし。

NIOSH TWAは、5 ppmUKではLong-term5 ppmShort-term10 ppmということになっております。

 次に、評価値です。一次評価値は0.04 ppmで、これは先ほどの閾値のところの参考にあったLOAELを用いた評価値から0.04 ppmとしております。

 二次評価値については、ACGIHは勧告している濃度を採用して1 ppmとしております。

 ばく露実態評価です。有害性ばく露作業報告の提出状況ですが、平成25年に85事業場から162作業について報告がありました。物質の用途は主に「溶剤、稀釈又は溶媒として使用」、「触媒又は添加剤としての使用」でした。

 対象物質の年間製造量と取扱量です。いろいろな区分がありますが、一番多いところで「1t以上10t未満」が36%となっています。作業1回当たりの製造取扱量は、一番多いところで「1kg以上1t未満又は1L以上1kL未満」というところで63%のところが多くなっています。

 また、当該作業従事労働者数は、「5人未満」のところが一番多く、89%を占めております。

 さらに1日当たりの作業時間は、一番多いところで「15/日未満」が42%です。全ての作業で局所排気装置等が設置されていました。

 ばく露実態報告の結果です。ばく露作業報告が行われた事業場から6事業場を選定し、平成28年度にばく露実態調査を実施しています。対象作業場において、製造・取扱作業に従事する8名について個人ばく露測定を行い、9地点についてスポット測定を実施しております。個人ばく露測定については、8時間加重平均濃度(8時間TWA)を算定しています。測定分析法は記載しているとおりです。

 作業事業場における作業については、主な用途は、「ピリジンを含有する製剤を製造するために原料としての使用」ということでした。ばく露の可能性のある主な作業は、「ドラム缶充填(補助)作業」、「原料の仕込み作業」でした。

104ページ、作業環境については97%の作業が屋内で行われておりまして、ばく露防止対策については、1事業場を除き屋内作業で局所排気装置が設置されています。主に、ドラム缶充填(補助)作業、原料仕込み作業では呼吸用保護具(有機ガス用の防毒マスク)が使用されています。

 測定結果です。測定は8人の労働者に対して実施し、うち1名は定量下限濃度未満でした。2名は破過と書いてありますけれども、サンプラーの破過が考えられておりましたが、「サンプラー」が抜けておりました。「その」が抜けておりますが、その2名については午前中のばく露平均濃度が二次評価値を超えていたので、ばく露濃度として採用しました。7データを評価データとしています。個人ばく露測定の結果は、8時間TWAの最大値は0.94 ppmでした。全データより推計した信頼性90%区間推定、上側5%上限値は2.9 ppmです。105ページに移ります。最大ばく露量は、ガイドラインの規定に基づきまして、区間推定が5%のほうが高いので、2.9 ppmが最大ばく露量となります。この最大ばく露量2.9 ppmは、二次評価値の1 ppmを上回っております。今、申し上げたデータについては、グラフと表になっております。

 結論です。リスク判定及び今後の対応です。以上により、ピリジンの製造・取扱事業場においては、二次評価値を上回るばく露量があると判定されたことから、更に詳細なリスク評価を行い、ばく露の高い要因等を明らかにする必要がある。

 なお、当該物質には、ACGIH又は日本産業衛生学会による経皮吸収の勧告はなされていない。詳細リスク評価の際には、二次評価値を上回るばく露量があると思われる作業のドラム缶充填(補助)作業等について、当該作業工程に共通した問題かをより詳細に分析するとともに、実態調査を行った作業以外に高いばく露の可能性があるかどうかを確認する必要がある。また、詳細リスク評価の実施にかかわらず、当該物質はヒトに対して発がんが疑われる物質であり、事業者はリスクアセスメントを行い、当該作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要であると考えるとまとめております。以上です。

○名古屋座長 ありがとうございました。ただいまの御報告につきまして御意見、御質問等はありますでしょうか。従来の規定でいきますと、これは詳細リスク評価にいって、再度、そこに書かれていますような作業と、ほかにまた、実態調査をしなかった所の中でも高いばく露がある可能性の所はやはり確認しましょうという形になると思いますが、質問等はありますでしょうか。

○大前委員 先ほどの104ページのサンプラーの破過の所ですが、これは午前中だけで破過してしまったということだと思うので、131ページの測定分析法の所のサンプラーのXADではまずいのではないですか。

○中央労働災害防止協会 午前と午後とで2つのサンプラーを使用しています。午前で1つのサンプラーを使って、午後で1つのサンプラーを使ってということです。

○大前委員 それで破過したのは午前中。

○中央労働災害防止協会 午前と午後と両方とも破過しています。

○大前委員 そうすると、いずれにしても、分析法で破過するようなサンプラーを使うのは間違いだという。

○中央労働災害防止協会 このときは、雨がひどくて湿度が高くて、作業者が屋外に出られることもあったということで、ガスとして破過したのではなくて、雨がサンプラー内に入って2層目まで流れてしまった可能性のほうが高いのではないかと、そのように考えています。はっきりしないところではありますが。ほかの事業場でこの程度の低い濃度で破過していませんので、そういったことが要因ではないかと考えています。

○名古屋座長 とりあえずは、例えば150ではなくて、200100という形のものに変えれば別段、大丈夫でしょうということですよね。今のところはこの規定では。

○中央労働災害防止協会 充填量のことでしょうか。

○名古屋座長 重量を多くすればいいよということで。

○中央労働災害防止協会 はい。

○名古屋座長 要するに、濃度を見てと。

○中央労働災害防止協会 はい。

○名古屋座長 ではその辺、よろしくお願いいたします。あと、よろしいでしょうか。

○大前委員 これ、分からなかったのですが、197ページのA事業場という所ですが、このA事業場は、読みますと、アクリロニトリルを製造する事業場で副産製品としてはアセトニトリルが出てくると。その低純度のアセトニトリルの中にピリジンが1.49%入っているという、そのような解釈でいいわけですか。要するに、アクリロニトリルの製造過程でピリジンが出てくるのは何か非常に不思議な感じがしたものですから。

○鷹屋委員 これ、アセトニトリルも副産品で作っているアクリロニトリルなので、Nを入れる工程が入るというのとは違いますか。

○大前委員 いいえ、要するに、ピリジンが何で出てくるのかなという、あの構造式のピリジンが。やはり出てくるのですかね。いや、これは確認だけしておいていただきたいのですが。

○中央労働災害防止協会 確認します。

○大前委員 本当にこの過程でピリジンが出るのかがちょっと、ちょっと不思議に思ったものですから。

○名古屋座長 詳細にいきますので、ここのところも確認しておいてください、これで終わるわけではありませんので。

○大前委員 そうですね。

○名古屋座長 ではよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。そうしましたら、この物質につきましては詳細リスク評価にいくという形でまとめたいと思います。最後、メタクリル酸、よろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 それではメタクリル酸の評価書の説明をいたします。資料5133ページを御覧ください。本文は134ページから始まります。まず、メタクリル酸の物理化学的性質から説明させていただきます。

 化学物質の基本情報です。名称、メタクリル酸、別名、2-メチルプロペン酸です。化学式構造式は資料に示すとおりです。CAS番号は79-41-4です。

 次に、物理的化学的性状です。外観は、特徴的な臭気のある、無色の液体又は無色の結晶です。比重は、水1に対して1.02、沸点は、159℃~163 ℃、蒸気圧は、25℃で130 Pa、蒸気密度は空気1に対して2.97、融点は16 ℃、引火点は68 ℃です。爆発限界以下のデータにつきましては、爆発限界、溶解性は資料のとおりです。オクタノール/水分配係数log Pow0.93、換算係数は資料のとおりです。

 次に、生産・輸入量、使用量、用途です。製造・輸入量は158,304t。経産省の2013年のデータです。用途は、熱硬化性塗料、接着剤、ラテックス改質剤、共重合によるプラスチック改質、イオン交換樹脂、紙・織物加工材、皮革処理材です。製造業者、輸入業者は、資料のとおりです。

 次に、有害性評価の結果に移ります。発がん性です。ヒトに対する発がん性は判断できない。調査した範囲内で情報が得られていないということです。

 各評価区分です。IARC、産衛学会、EUNTPACGIHとも、情報なしです。ここに数字が書いてありますが、先ほどの議論の中で、全て年代の数字につきましては削除とさせていただきます。

 次に、閾値の有無です。判断できないとしております。135ページです。「遺伝毒性」の判断を根拠ということで、後ほど説明させていただきます。

 発がん性以外の有害性、急性毒性につきましては、資料のとおりです。

 次に、皮膚刺激性/腐食性はあり、眼に対する重篤な損傷性/刺激性ありとしております。根拠ですが、メタクリル酸は、塗布した部位に有害な影響を引き起こし、原液は皮膚及び眼腐食性と気道病変を引き起こすことが報告されているとしております。

 皮膚感作性はなしとしております。「根拠」が2つありますが、一方を削除いたします。根拠、メタクリル酸は、ヒトにおける知見、及び実験動物における試験から感作性の証拠がなく、感作性物質であるとは言えないと考察されているとしております。

 呼吸器感作性ですが、調査した範囲では報告は得られていないということです。

 反復投与毒性ですが、LOAEL20 ppmとしております。根拠ですが、F344/Nラット(雌雄各10/)SDラット(雌雄各10/)にメタクリル酸020100300 ppm6時間/日、5/週、90日間吸入ばく露した試験において、最少用量とした20 ppm以上のばく露群で雌雄ともに、鼻腔上皮の変性がみられたとしております。

 不確実係数はLOAELからNOAELの変換による10です。種差に関する不確実係数については、マウスなどの齧歯類は鼻粘膜刺激に対してはヒトよりも感受性が高く、種差に関する不確実係数は1を採用することが妥当だとの意見を採用しております。よって、評価レベルは1.5 ppmです。計算式は資料に示すとおりです。

 次に生殖毒性です。判断できないとしております。根拠ですが、調査した範囲内ではヒトでの調査報告例がなく、動物試験による検討例もラットを用いた吸入ばく露による発生毒性試験により300 ppmまで発生毒性なしとする報告が1件、90日間吸入ばく露試験により生殖器官に器質的病変なしとする報告例が3件、(マウス1件、ラット2)とありますが、判断材料に乏しいことから、メタクリル酸の生殖毒性の有無は判断できなかったとしております。136ページ、これに関するNOAEL300 ppmとしております。根拠ですが、SDラット雌22又は23匹を1群とし、メタクリル酸050100200300 ppmを妊娠6日から20日まで吸入(6時間/)させた結果、300 ppm群で体重増加の有意な抑制を認めたが、着床や胎児の数、死亡胚や吸収胚の発生率、胎児の体重に影響はなく、奇形や変異の発生率にも有意な増加はなかったということです。不確実係数は種差の10、評価レベルは22.5 ppm、計算式は資料のとおりです。

 次に遺伝毒性に移ります。判断できないとしております。根拠ですが、メタクリル酸は、in vivo試験系において細菌を用いる遺伝子突然変異試験で陰性、DNA付加体形成試験で陽性と報告されているが、in vivo試験データは調査した範囲内で報告がなく、メタクリル酸が、in vivoで遺伝毒性を発現するか否か判断できなかった。また、USEPAは、構造的に関連のある化学物質であるメタクリル酸メチルがin vivoでは遺伝毒性を発現しないことを考慮するとメタクリル酸にもin vivoの遺伝毒性はないと予想されるとしており、同様の理由でEU RARもメタクリル酸に関するこれ以上の遺伝毒性試験は不要であるとの見解を示しているとしております。

 次に許容濃度等に移ります。ACGIH TWA20 ppmとしております。2005年の設定です。根拠ですが、メタクリル酸の職業ばく露の許容濃度としてTLV-TWA 20 ppmを勧告する。この値は、限定的な動物及びヒトのデータを基に、眼及び皮膚に刺激性変化が生じる可能性を最小にすることを意図したものである。メタクリル酸の刺激性は、類似物質であるアクリル酸のそれよりも小さいと考えられるため、設定に際しては、アクリル酸の閾限度値との類似性も考慮される。SkinSENあるいはcarcinogenicity表示やTLV-STELを勧告するに足るに十分なデータはないとしております。

 次に、日本産業衛生学会は2012年の提案で2 ppmの数字を勧告しております。根拠ですが、メタクリル酸の急性毒性に関する動物試験の主要症状は、鼻と眼などの接触部位の刺激症状のみである。ラットを用いた1,300 ppm5時間/日、5日間の吸入ばく露試験でも、鼻と眼への刺激以外に、血液・尿試験、解剖所見で臓器に異常所見は認められなかった。また、ラット、マウスを用いた慢性吸入ばく露試験でも、鼻腔上皮の変性所見が主体であった。これらの試験結果から、最少毒性量は20 ppmと考えられた。一方、ヒトに関する報告は事故事例のみである。いずれも経口ばく露か経皮ばく露であり、口腔・消化管、皮膚の接触部位の炎症所見が主体であった。以上の点から、許容濃度は動物試験の結果から設定せざるを得ず、鼻・気道刺激症状を評価指標として閾値が求められれば設定できる。マウス、ラットの慢性吸入ばく露試験から得られたLOAEL 20 ppmより、LOAELを評価に用いることの不確実係数を10とする。一方、種差に関する不確実係数については、マウスなどの齧歯類は、鼻粘膜刺激に対してはヒトよりも感受性が高く、種差に関する不確実係数は1を採用とすることが妥当だと考えられる。以上より2 ppmを提案するとしております。

DFG MAK5 ppmNIOSH REL20 ppmとしております。また、上記以外の機関において許容濃度に関する情報は得られなかったとしております。

 次に評価値です。まず一次評価値ですが、なしとしております。根拠ですが、発がん性を示す可能性があり、遺伝毒性が判断できない場合で過剰発がん生涯リスクレベル10のマイナス4乗に相当するばく露濃度が設定できないためとしております。

 次に二次評価値です。2 ppmとしております。これについては日本産業衛生学会が勧告している許容濃度としております。

 次に移ります。138ページです。ばく露実態評価の説明になります。まず、有害物ばく露作業報告の提出状況から説明いたします。

 平成25年におけるメタクリル酸の有害物ばく露作業報告については、173事業場から計322作業について報告があり、用途は、「他の製剤等の原料として使用」、「対象物の製造」で、作業の種類は、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、「サンプリング、分析、試験又は研究の業務」、「ろ過、混合、攪拌、混練又は加熱の作業」であったということです。

 対象物質の年間製造・取扱量ですが、「1t以上10t未満」が29%で一番多いところになっています。また、作業1回当たりの製造・取扱量ですが、「1kg以上1t未満又は1L以上1kL未満」のところが一番多く、67%です。

 また、当該作業従事労働者数の所ですが、「5人未満」が62%で一番多いところです。さらに、1日当たりの作業時間ですが、「15/日未満」が44%、「15分以上30分未満」が27%、この2つが多いということです。また、発散抑制措置の状況ですが、「密閉化設備」が24%、「局所排気装置」が56%、「全体換気装置」が10%の状況です。

 次に、ばく露実態調査の結果に移ります。有害物ばく露作業報告のありました10事業場に対しまして、ばく露実態調査を行いました。対象事業場においては、製造・取扱作業に従事する12人について個人ばく露測定を行うとともに、21地点についてスポット測定を実施いたしました。個人ばく露測定結果については、ガイドラインに基づき、8時間過重平均濃度を算定いたしました。

 測定分析法につきましては、サンプリングはメタクリル系樹脂捕集管を用いての捕集、分析法は高速液体クロマトグラフ分析法です。

 対象事業場における作業の概要です。用途ですが、「メタクリル酸を他の製剤等の原料として使用」、「メタクリル酸の製造」、「メタクリル酸の触媒又は添加剤としての使用」等でした。ばく露の可能性のある主な作業ですが、計量、配合、注入、投入又は小分けの作業、サンプリング、分析試験又は研究の業務で、1回当たり1分~30分の作業でした。また、ばく露防止対策は、56%の作業で局所排気装置が設置され、24%の作業で密閉化設備が設置されていたとしております。

 測定結果に移ります。17人の労働者に対して実施いたしました。個人ばく露測定の結果、8時間TWAの最大値はメタクリル酸を含む触媒の小分け作業を行った者に測定された0.24 ppmでした。また、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値は、0.37 ppmでした。140ページに移りまして、このことから、ばく露最大値は、ばく露評価ガイドラインの規定に準拠し、区間推定上側限界値の0.37 ppmとなり、これは二次評価値を下回っております。なお、個人ばく露最大値0.24 ppmも二次評価値を下回っております。また、スポット測定の実測データですが、最大値はメタクリル酸を移送する作業で、1.787 ppmで、1回の作業時間15分間、11回の作業ということでした。

 最後のまとめとして、リスクの判定、今後の対応です。以上のことから、メタクリル酸の製造・取扱事業場においては最大ばく露量0.56 ppmは二次評価値2 ppmを下回っており、経気道からのばく露によるリスクは低いと考えられる。また、当該物質については、日本産業衛生学会又はACGIHの経皮吸収の勧告はなされていない。

 当該物質はヒトに対する皮膚刺激性のある物質であり、事業者は、その製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として自主的なリスク管理を行うことが必要であるとまとめております。以上です。

○名古屋座長 ありがとうございました。今の報告に対しまして御意見、御質問等はありますでしょうか。6ページの測定結果の所、「0.024」の所は「0.24」ですよね。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。

○名古屋座長 直してください。ほかに何か御質問等はありますでしょうか。このままいきますと、二次評価値に比べて低いという形で初期リスク評価で終了という形になりますが、よろしいでしょうか。

○鷹屋委員 これは用途として塗料とか接着剤とかがあるのに、例えばそれを使用している所は、そもそも、500 kgを扱っていないのでしょうということなのですが、何か、もしかして数としては、かなり多くの労働者が関わっているような印象をどうしても受けてしまうのですが。

○名古屋座長 複数あるのか、あるいは、もしかしたらここの所、前に評価したときにそれほどではなくて、高いところを設定しましたよということ、選定はちょっと、これは中災防さんに聞かないと分からないのですが、どちらかだと思いますが。どうですか。

○中央労働災害防止協会 先ほども申し上げましたとおり、事業場を選定するときには、コントロール・バンディングを使用してばく露が高い所から選んでいますので、使用量が少ない所は落ちてしまうということです。

○名古屋座長 よろしいですか。

○鷹屋委員 はい。

○名古屋座長 ほかにありますか。よろしいですか。

○原委員 表現ですが、136ページのACGIHの下から3行目の所で、アクリル酸の同濃度でいいと思うのですが、「閾限度値」という言い方はちょっと変えたほうがいいかなと。

○大前委員 アクリル酸のTLV-TWAですよね。

○原委員 ええ、「TLV-TWA,2 ppm」でいいですし。これは用語としては使わないですよね。

○名古屋座長 そこのところを直してください。あと、よろしいですか。そうしましたら、メタクリル酸につきましても初期リスク評価で終了という形になると思います。以上、5物質が終わりましたが、単位とか用語の修正等はありますが、それ以外は内容に関する問題はなかったようですので、詳細は、後日、事務局から各委員に御連絡があると思います。よろしくお願いいたします。

○西川委員 ちょっと戻って恐縮ですが、ピリジンについてです。

○名古屋座長 何ページになりますか。

○西川委員 101ページの冒頭にヒトに対する発がん性が疑われるとあるのですが、これはIARCのグループ 2Bのみに基づいているのですよね。したがって、そのルールからいくと、「可能性あり」ではないでしょうか。

○穴井化学物質評価室長 表記のことですか。

○西川委員 はい。

○穴井化学物質評価室長 ヒトに対する発がん性が疑われるという表記の仕方についてということですか。

○西川委員 ええ、これまでだと、発がん性の可能性ありみたいなことではなかったでしょうか。

○穴井化学物質評価室長 ここの表記は、先ほど申し上げましたとおり、GHSの表記に基づいて表記するというルールでやっていますので、IARCのみが根拠であっても表記としてはGHSの表記で書くというルールになっていると思いますので、そういう。

○西川委員 分かりました。それはいいのですが。これは今年のIARCの評価に基づいて評価していたわけですが、その添付してある総合評価表、その110ページを見ますと、これは以前の評価で「グループ 3」と書いてありますよね。これはアップデートしなくてはいけないと。

○穴井化学物質評価室長 分かりました、ここはリニューアルします。

○平川化学物質評価室長補佐 評価表と評価書ですかね、両方ですね。評価書と評価表の両方を直すという形でよろしいですか。

○西川委員 はい、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○津田委員 今、IARCでグループ 2Bであっても「疑われる」という表記になっているということですが、今度、この「疑われる」をIARCに戻すとグループ 3から上全部になるのですが、よろしいですか。

○穴井化学物質評価室長 IARC2Bの日本訳は可能性があるですが、その可能性があるということを根拠にしてこの場で表記する場合は、2B相当の物質をこの場で表記する場合はGHSのルールに従った表記とするというルールになっているので、そうやっているということです。

○津田委員 どこかに明文化したほうがいいですよね。

○大前委員 ルールブックはありますよね。

○穴井化学物質評価室長 あります。

○津田委員 ここにも書いてあります。

○穴井化学物質評価室長 書いてありますね。

○津田委員 といいますのは、訳文が「疑われる」とする場合はIARCの立場から言えば3以上は全部疑っているわけなので誤解を招きます。それともう1点よろしいでしょうか。今の最後の所等にあるいろいろなデータは、これはどこでやったとか、その出典はどうなるのでしょうか。

○名古屋座長 これを委託されたのは、今日オブザーバーでいらっしゃる中災防さんですので。

○平川化学物質評価室長補佐 有害性評価書につきましてはテクノヒル株式会社に委託しておりまして、成果物として提出されたものを資料として提出しております。

○津田委員 そう入れたほうがいいのではないですか。見て、出典はどこだというと、全然ないと。それは常識で通っている話なのでしょうか。

○大前委員 今の話は委託先の話で出典ではない話なので、別なのですが。順番としては、委託先で原案を作って、それを小検討会でこの形にして、今、ここに出しているので。

○名古屋座長 2回チェックをされています。

○津田委員 いや、それはいいです、内容については何も言っておりませんで。ここにデータが出てきたときに。出典がどこかというのはやはり気になるのですけれども。

○大前委員 出典自体はそれぞれの所に書いてあると思うのですが、委託先を書く必要があるかどうかというのがちょっと。

○__ あるいは委託先からどこどこに行ったレポートとか。

○平川化学物質評価室長補佐 出典につきましては資料5のメタクリル酸で言いますと、有害性評価書が147ページからとなっておりまして、155ページから引用文献を示しております。

○名古屋座長 いいえ、そうではなく、測定の委託、測定でしょう。

○平川化学物質評価室長補佐 引用文献の書き方としてこの155ページの317行目から引用文献と書いてある、このような形で今まで書かせていただいているということです。

○名古屋座長 そうではなくて、測定したものの委託先だということです。

○平川化学物質評価室長補佐 これらの引用文献をまず委託事業でまとめまして、そのまとめたものに基づいて行政の検討会ということで、まず有害性評価小検討会でこの評価書と評価表に基づいて評価値の決定を行い、その評価値と、ばく露の評価値ですが、それを高いか低いかという検討をこの検討会で行うということで今行っているところです。

○大前委員 ばく露測定の委託先は中災防で、有害性評価書の委託先は先ほどのテクノヒルということですね。

○平川化学物質評価室長補佐 そうです、はい。

○大前委員 そのテクノヒルから回ってきたものを、この前の小委員会、有害性評価小委員会、先生たちもメンバーですよね、それでチェックをしてという形で。元の引用文献自体はそれぞれの評価書の後ろにありますので、これを使って評価書を作ったということになります。

○名古屋座長 よろしいですか。そうしましたら、後は事務局から今後の予定ということで、説明をよろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料6を御覧ください。次回は、122()15時からの開催です。場所は現在、調整中です。経皮吸収による健康障害のおそれのある化学物質のリスク評価方法について御検討いただく予定です。事務局からは以上です。

○名古屋座長 ありがとうございました。そうしましたら、以上で本日のリスク評価検討会を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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