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2017年9月29日 第32回 社会保障審議会生活保護基準部会
社会・援護局
○日時
平成29年9月29日(金)16:00~18:00
○場所
厚生労働省 省議室
○出席者
駒村 康平 (部会長) |
岩田 正美 (部会長代理) |
阿部 彩 (委員) |
岡部 卓 (委員) |
小塩 隆士 (委員) |
栃本 一三郎 (委員) |
山田 篤裕 (委員) |
○議題
・生活扶助基準の検証
・有子世帯の扶助・加算の検証
・その他
○議事
■駒村部会長 こんにちは。それでは、定刻になりましたので、ただいまから第32回「社会保障審議会生活保護基準部会」を開会いたします。
まず、本日の委員の出欠について、事務局より御報告をお願いいたします。
■鈴木社会・援護局保護課長 本日の委員の出欠の状況でございますけれども、宮本委員より御欠席との御連絡をいただいております。その他の委員の皆様は御出席でございます。
それでは、部会長、議事進行をお願いいたします。
■駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
前回の部会では、生活扶助基準の検証に当たり、消費支出階級別の消費データ分析をもとに議論したところですが、検討作業班におきまして、改めて議論を行った結果、集計方法に改良を加えて再度分析を試みることにしました。本日、事務局のほうから改良を加えたデータの処理作業について報告していただき、引き続き議論を行いたいと思います。
また、有子世帯の扶助・加算の検証方法についても事務局から御報告いただきたいと思います。
まず、事務局から資料1についての報告をお願いいたします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1について、簡単に御説明をさせていただきます。今、分科会長のほうから御紹介がございましたとおり、消費支出階級五十分位別の消費データの分析について、前回資料を提出させていただきましたけれども、少し集計方法を変更いたしまして集計をし直したものでございますので、その内容を御説明させていただければと思います。
1ページ目をお開きいただければと思います。消費支出階級五十分位別のデータの分析につきましては、支出弾力性をもとに固定的経費と変動的経費というものに分けまして、その状況を検証してみるという方向で分析作業を進めようと思ってございます。前回からの主な変更点、1ページ目の真ん中にまとめてございます。まず、経費の分類方法でございますけれども、前回は全国消費実態調査上の品目分類ということで、同じ消費は同じ項目に分類する方法ということで分けてございましたが、追加・修正案というところで「用途分類」、目的に応じた分類をする方法に応じた変更というものをさせていただいております。特に下の(参考)のところに書いてございますが、例えば贈答用のお菓子等については、品目分類ですと「食料」に分類されますけれども、用途分類ではその目的に応じて「交際費」ということで分類をされるというところになってございます。こういった社会参加支出とされる交際費というのを正確に捉える必要があるのではないかということで、用途分類で集計をし直してございます。
また、もう一つ下の四角でございますが、前回費目の分類について、中分類項目、ある程度まとまった項目で分類をさせていただいたところでありますが、同じ中分類の中にも、個別に分けますと、変動的か、固定的か、その性格が分かれるものがございますので、分類する支出項目を一番小さい小分類項目でそれぞれ集計をし直してございます。
また、一番下の支出弾力性の算出方法というところでございますけれども、前回は収入階級別、例えば夫婦子1人であれば年収200万とか、18階級別にそれぞれ平均を出したものから支出弾力性を計算するといった方法をとってございましたが、追加・修正案のところで、これは個別データがございますので、データサンプルから直接行ったほうが精度が上がるのではないかという御指摘をいただきまして、そのような形で修正をさせていただきました。
2ページ目は、その算出方法を書いたものでございますので、説明は省略させていただきます。
3ページ以降、それぞれ世帯分類ごとに固定、変動と分けたものを一覧にしてございます。品目分類と用途分類に分けた結果ですとか、集計方法を変えたところでそれぞれ個別の品目に若干変動等はございますが、全体の食料費については固定経費という、大きなところについては、傾向としてはさほど変わらない部分かと思ってございます。
特に5ページの一番下のところにございますその他の消費支出のところで「交際費」という項目が出てきてございます。こちらについては、用途分類にしたことによって「交際費」という枠で支出弾力性を見ているというところでございます。
6ページ目以降が、算出方法を見直した結果、グラフに落としたものということでございます。6ページは、高齢単身世帯のそれぞれ固定的経費と変動的経費の支出割合をグラフにしたものでございます。前回用途分類にしたものからどう変わったかというところでございますが、例えば「交際費」は、以前は「食費」に入っていたものが「その他の消費支出」ということで、変動的経費に移ったりというところもございまして、傾向としては、固定的経費の割合が前回より若干減りまして、変動的経費のほうに移った費目が多くございます。
そのため、固定的経費と変動的経費が若干交わるポイントが今、十分位ぐらいにございますけれども、品目分類で言いますと、もっと右のほうにあったのが左のほうに移ったという全体の傾向ではございます。
それぞれの固定的経費の傾きですとか変動的経費の傾きについては、特にさほど変わったという状況はないかなと思ってございます。
7ページ目は、それぞれ支出額を同じくグラフ化したものでございます。
8ページは、固定的経費の10大費目別の支出割合ということで出したものでございます。1つ、高齢単身世帯は、前回出したものについては住居が固定的経費になっていたものが変動的経費に移っている。計算上そうなったというところが変化でございます。
9ページ目につきましては、同じく変動的経費の各消費支出の費目割合、10大費目別に出したものでございます。特にその他の消費支出のところに「交際費」等で分類されたものが入ってきてまいりますので、品目分類で分類したときより、その他の消費支出の割合が少しふえているという状況でございます。
10ページ以降は、高齢夫婦世帯でございますけれども、傾向としては、先ほどの高齢単身世帯の傾向と特に変わってございません。固定的経費の割合が、品目分類でやったものより変動的経費のものがふえたということでございます。
11ページは支出額の状況。
12ページはそれぞれ固定的経費。
13ページが変動的経費の支出割合の変動ということでございます。同じようにその他の消費支出の割合が少し多くなっているという状況でございます。
14ページ以降は、同じく夫婦子1人世帯の支出割合でございます。こちらも交わるポイントが左のほうに移っているという傾向は同様でございます。
15ページ、16ページ、17ページは、支出額、固定的経費・変動的経費の比較、消費支出の費目の割合ということで出してございます。こちらは、例えば固定的経費の割合が他の分位と比べて高くなる点等があれば、それは家計の弾力性が失われるということで、生活が苦しくなるとか、余裕がなくなるポイントと言えるかどうかということを、今後統計的な分析をこちらのデータに沿って実証しまして、その評価というものも御意見を伺えればと思ってございます。
まず、費目分類の方法を変更したということで、資料を御提示させていただきました。
説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
では、資料1について、委員の皆様から質問を受けたいと思います。作業部会でない方は初めてごらんになっているかもしれませんので、確認等々あれば、それも含めてどうぞ。岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 3ページ、4ページの固定、変動の用途分類による分類なのですけれども、これは全部の費目が固定か変動に分類されているということについての質問です。例えば先ほど教育というのが単身と夫婦世帯のもので、単身は有意に出ないけれども、高齢夫婦世帯に合わせたとかいうのが出ていますが、例えば給食費とか教育費とか、そういうのは、常識的に言えば高齢単身とか夫婦世帯には出てこないので、ブランクでもいいのではないかという気もするのです。何でこれは全部埋めてしまったのかという質問です。
■駒村部会長 事務局、お願いします。
■免田社会・援護局保護課長補佐 固定的経費、変動的経費の分類方法につきましては、基本的には家計調査の分類方法をもとにしております。
2ページの、支出弾力性の算出方法の3番目といたしまして、固定的経費、変動的経費の分類方法という項目がございますが、高齢者世帯の給食につきましても有意な結果が出れば、その結果に応じて振り分けることができたのですが、高齢者世帯の給食費につきましては、(3)に該当し、「t値が有意でない」という結果になっております。この場合、総務省のルールに則り、1つ上の外食全体の経費に合わせるという処理を行わせていただいたため、変動的経費とさせていただいたところでございます。
以上です。
■駒村部会長 岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 いや、そういう意味でなくて、高齢単身世帯に学校給食費という費目は計上されるのですか。
■免田社会・援護局保護課長補佐 額としては入ってございませんが、機械的に割り振ったということでございます。
■駒村部会長 どうぞ。
■岩田部会長代理 そうすると、後の計算では、一応こういうふうに割り振ったけれども、金額は出てこない。
■免田社会・援護局保護課長補佐 おっしゃるとおりでございます。
■駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。小塩先生、お願いします。
■小塩委員 今回も非常に詳細な計算をしていただきまして、ありがとうございます。
ちょっとテクニカルな質問をさせていただきたいのですが、今回の結果を拝見いたしますと、変動的経費の比率が高くなっているという傾向が見られますね。これは非常に直感的によくわかる結果です。というのは、用途別に回帰式を組みかえたので、支出総額により連動するようになったということもあるでしょうし、それから分類する支出項目を細かくしたということで、より支出総額に連動する度合いが高くなった。だから、変動する度合いが大きくなったというのはわかるのですが、解釈がちょっと難しい面もあると思うのです。というのは、変動か、固定かとどうして分けたかというと、固定が多いほど生活の困窮度、生活が苦しいという度合いを見るためでした。その度合いがどういうふうに変わるというのがポイントなのですが、こういう計算をすると、先ほど言ったような理由で変動する部分が大きくなりますね。ですから、簡単に見ると、生活の苦しさというのが緩くなるような印象を受けます。でも、それは多分間違っていると思うのです。では、どうして間違っているのかという説明が欲しいと思うのです。これは非常に重要な資料なのですが、細かく見れば見るほど変動する項目の比率が大きくなりますから、人々はそんなに困っていないというふうに恐らく間違った解釈をされるかもしれません。それに対してディフェンスする材料が必要だと思います。それが一つです。
もう一つは、前回もお聞きしたのですけれども、これは消費ベースで議論しているわけです。本来は所得ベースで議論すべきなのですけれども、消費で見たらどういう傾向が見られるかというのはチェックする必要があると思うのですが、ただ、実際人々が行動を決める場合、所得ですね。所得のうちどれだけを消費に回して、貯蓄に回すかという判断をして、その後でどういう品物を買うかという判断をするわけですから、こういう計算をして出てくる弾力性というのは、果たしてどう解釈していいのか非常に気になるところです。基準額を計算する場合、所得がベースになるので、今回の非常に重要な結果を所得ベースの議論に翻訳するときに、どういうことに注意したらいいのか整理しておく必要があると思います。
以上、2点コメントです。
■駒村部会長 阿部さんから手が挙がっていましたが、関連ですか。
■阿部委員 関連です。
■駒村部会長 では、お願いします。
■阿部委員 小塩委員の1つ目のことなのですけれども、ここで非常にわかりやすくして、費目を細かく分けたというのはすばらしいことだと思うのですが、変動する費目は、必要ないからではなくて、それは所得によって変動しているということだけなのです。なので、要らなくてゼロになれるというものではないわけです。だから、変動する価格の中でも最低限必要な額というのがあるわけです。それを例えば所得の高い層はこれだけ消費しているけれども、所得の低い層もこれだけ消費しているというボトムラインがあって、本来はそれも固定のほうに加えて、それでこのグラフを書き直したほうが、解釈するときに、必要経費の割合がここまで、何%だという議論になってくるのではないのかなと思うのです。そういう集計が可能なのかということをお聞きしたい。そういうふうに分ければ小塩委員の疑問にも答えられますか。
■小塩委員 と思います。
■駒村部会長 栃本委員、お願いします。
■栃本委員 最後の部分というのは非常に難しいと思うのです。ある意味では余計混乱してしまう。この区分けというのは結構重要なので、これは堅持したほうが逆にいいと思うのです。誤解を生む際にどうやって反論するかということで言うと、この委員の方々は全員御存じのロンドン調査とかヨーク調査における一次的ポバティラインと二次的ポバティラインのその部分で、二次的ポバティラインがぜいたくだというわけでは全くなくて、ある種の生活を維持する労働力の再生産の過程のために極めて重要だという部分が、この変動の部分のところですごく出ているわけです。
したがって、先ほど、一般の方々の理解はどうしても固定的経費が生活に必需的な費目となっていて、この説明は変動的経費のところが娯楽、教養とかで、所得の状況によって比較的変動しやすいというところに目が行ってしまって、そのあとの非常に重要な部分、「しやすい必需的な費目」と書いてあるのですけれども、後段のそれでも「必需的な費目」というところが余り注目されないで、その前のほうに引っ張られて、一般の方からそう思われて、先ほど来のお二人、阿部先生もそうですが、懸念というか、誤解されてしまうという部分が生ずるので、これは正当な書き方ではあるのですけれども、一般的な方々に説明する際には、これも必需的な費目だというのを強調しないと、全く知らない人は、娯楽とかそういうもので金持ちはこれだけ使うと非常にシンプルに解釈して、そういう議論が組み立てやすい。いわゆる俗論というか、そういうことがあるので、我々の世界だけであれば理解した上でのことなのですけれども、そこら辺、多くの方々がごらんになる部分だから誤解を受けないような形がとても重要ということ。
それと、従来からそれぞれの先生方で、この部会でも最低生活における客観的な数字を出すことについて、山田委員やほかの先生方も前回かな、いろんな主観的な部分の客観化であるとか、ラインの引き方とか、いわゆる相対的収奪とか、そういう部分がありましたね。その部分で非常に重要なデータが逆に、変動的経費のこの中で示されているわけだと思うのです。したがって、その持つ意味については、最終的な報告書の際には丁寧に説明することがとても大事だと思います。
以上です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
では、山田委員、お願いします。
■山田委員 改めて、詳細な計算をありがとうございました。
私から2つあって、1点目は、所得をベースにするのか、消費をベースにするのかということで、全消の場合には1カ月から3カ月ということで、必ずしも所得と消費の階級が合致するかというところが気をつけなくてはいけないところで、例えばたまたま3カ月ないし1カ月は所得が低かったけれども、消費は恒常所得を念頭にいつもどおりの消費をしていると、消費と所得の齟齬のようなものが出てくる可能性もありますので、前回も申し上げましたように、まずは消費階級でも見る必要があるのかなと。とはいえ、小塩委員が御指摘のように、その消費額を所得に翻訳するときにどうするのかというところで、そこは2番目のコメントとも関係しますけれども、軸として一体このカーブが何を意味するのかというのを見るためには、剥奪指標ないしほかの指標で折れ曲がっているところが一体どの所得階級に当たるのかという方法で、所得に変換していくほかないのではないか。そういう方法が考えられるのではないかというのが1点目です。
2点目は、今、栃本委員からも指摘がありましたように、変動的経費の1ページの書き方からすると、被服費や教養娯楽費というのが変動的経費の代表選手のように誤解されやすいのですが、これは資料の5ページ目にもありますように、夫婦子1人世帯では教育というのが変動的経費であると。食料は逆に固定的な経費であるということで。教育が変動的経費ということからもわかりますように、例えば教育というのを文化的に最低限確保したいとなると、消費支出が一定程度下がってきたところでは、教育費を確保するために食費を削るというのは当然考えられるかもしれない。そうすると、実は変動的経費にもかかわらず、教育が含まれるわけですが、そういったものを見て、どこら辺に抵抗点があるのかというのを見ていくという作業は非常に重要になってくるのではないかと思います。
私からは以上です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
支出で並べていったときの支出全体に占める固定経費の割合が50%を下回ってくるポイントは何の意味があるのかということをちゃんと議論しなければいけなくて、その意味をもう少し立体的に議論したほうがいいのではないかという話。
それから、もちろんどちらの経費に入るかということについても慎重に。この経費のとり方によっては50%ポイントがずれるかもしれないと。
それから、変動であっても、最低必要部分があるのではないか、それはどう考慮するかというのは、ちょっと難しいのではないかという意見があったということですけれども、一番悩ましいのは、50を切るポイントというのは一体何を意味しているのかというのは、我々がちゃんと考えていかなければいけないと思うのですが、ほかの委員のほうからこの辺について議論があれば意見をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。お願いいたします。
■岩田部会長代理 家計の構造分析で一応オーソライズされているのはエンゲル法則だけであって、こういう所得弾性値ではかったものが何%ぐらいが貧困を意味するなどというのは分かっていない。 50%のところで今回の世帯類型は変動と固定が逆転していくわけですけれども、それの意味についてきちっと解釈されているとか、何かオーソライズされているということがないので、使い方が非常に難しいのです。これだけで云々するのはちょっと無理かなと思います。
特に統計局がこれを必需、選択という言い方をしているわけですが、先ほど御意見がありましたように、これは誤解があるので、変動、固定という言い方に変えた。これは内閣府の使い方に準じていますが、それにしても、例えばこれは全体の調査対象の消費を見たときの固定か変動であって、例えば住宅費、家賃は変動なのです。だけど、個々の家賃を払わなければならない世帯にとってみれば、これは固定費なわけですが、光熱費のようには出ない。つまり、幅が広いということです。それから家賃を払わない層がいる。その2つでこういうふうになったのだと思うのです。
ですから、所得がふえていくに従って用途分類の支出が豊かになっていくという面と、そうではなくて、出さない世帯もたくさんいて、例えば家賃。それは住宅ローンで出しているという仕組みがあるので、うまくそこにはまっていかないという要素があるので、これから判断するのは非常に難しいのですね。それにしては、すごくきれいに交差してしまっているので、やれやれという感じもするのですけれども。
ですから、エンゲル係数を使えれば、エンゲル係数での検証というのは、水準均衡のときにそういうことが言われていますので、やる意味があると思うのですが、最低食費が出てこないので、できないのです。そうすると、それに近似的なものとしてこれを1つ使う。でも、これだけでやるわけではないというふうにやっておいたほうがいいかなと思います。
それから、収入、年収というのは、やってみるとうまくいかないのですよ。この間も言いましたけれども、最下10%の低所得層と比較するのが妥当であるというのが水準均衡のときの結論なので、それを踏襲すると年収階層でやるのがいいわけで、それでやってきたのですが、先ほど山田委員からもおっしゃったように、2カ月、3カ月の消費なので、うまく合わなくて、でこぼこになるのです。それが消費支出にしたときのほうが滑らかなわけです。生活扶助水準の検証なので、基本的には収入を貯蓄と消費に。例えば消費性向であるとか、ローンとか、そういうのは実際の家計を見る場合は背後にあって、当然考えなければならないのですけれども、生活扶助基準に関して言うと、逆に消費支出だけ見ていればいいという面もあるかなと私は思います。
■駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。
50を切るポイントが、3類型とも50分の10から15ぐらいのあたりにあると。何で50なのと言われると、なぜ60ではいけないの、40ではいけないのという話になってしまうのかもしれませんけれども、50に積極的な意味があるのか。前、栃本委員がおっしゃったように、50のところで具体的なものを引っ張り出してみて、こういう感じになっているけれども、これ一本で決めるのでなくて、ほかの指数も組み合わせて、50前後のところでいろいろな指数を見ても一気に悪くなっているとするならば、そこで補強的に使っていくということで。
きょうは、そういう意味では、50のポイントあたりに少しフォーカスして、ほかのデータでも見ていきましょうという議論になっていると。ただ、費目選びは少し注意を持ってやらないと結果が変わってきますねという話だったと思いますが、ほかの委員からきょうの資料1についての御意見、御質問があれば受けますし、もしなければ、資料2のほうに移っていきたい。
きょうはこれで決めつけるという話でなくて、とりあえずこれでつくったものにフォーカスを当てながら、ほかの指数データを皆さんで考えていきましょうという感じでいいでしょうか。
栃本さん、前回お話しされた具体的なイメージというのは、このような感じでいいのでしょうか。どうぞ。
■栃本委員 そうです。
それと、今回、高齢単身と高齢夫婦と夫婦子1人で見て、そして五十分位で見ているわけですけれども、一番大ざっぱなことで言うと、高齢単身と高齢夫婦と夫婦子どもという3分類があって、固定と流動で、変動するという方に類別されるものの割合、また、変動の幅というか大きさは違うものなのか。つまり、これを見ると、ここのポイントで50、50になって、大体それが高齢単身と高齢夫婦と夫婦子1人で少し右に寄ったり、そうなっているわけです。それはなぜかなということを考えたときに、そもそも高齢単身と高齢夫婦と夫婦子1人というのでそれぞれ一つ一つ見てみると、これは変動に今度位置づけたなとか、これは固定にしたなというので入り繰りが多少ありますね。
■駒村部会長 それはデータ上、大ざっぱな類型上ね。
■栃本委員 そうです。それを足し合わせたら何の意味もないのですけれども。意味がわかりますか。
■駒村部会長 ちょっとわからない。
■栃本委員 そういう工夫をするとね。50からもうちょっと右ラインのここら辺を見てみるというのが、今、部会長がおっしゃったことなのだと思います。ちょっとわかりにくいあれかな。
■駒村部会長 栃本さんがおっしゃっているのは、パターンがこの前後で何か大きく変わっているかを個別に見てみましょうということだったと思います。
だから、いずれにしてもここは丁寧に見ないといけなくて、ぱっとデータだけ見て、さあ、これで行ってしまいましょうというのは危険だよね、何か大きな変化が出ていると、気をつけて見たほうがいいですねという話だと思いますが、もしあれでしたら、今の話を具体的に作業を言っていただくと、よりわかりやすくなるのですけれども。では、山田さん、お願いします。
■山田委員 今の栃本委員の議論は、例えば高齢単身世帯の消費支出の費目割合とか何かが8ページに出ていますけれども、もう既にデータも出してくださっているので、そこを丁寧に見て、突然各費目の比率が落ちているとか、落ちていないというのを精査して、そういうのが突然大きくガクッと変わっているのでなければ、栃本委員のおっしゃっている費目が突然入れかわっているということにはならないと思うのですけれども、そこら辺はいかがなのでしょうか。
■栃本委員 あとは、固定の部分でも五十分位で1から50まで見ていって、それぞれ升目というか、2枠でかなりの幅でおさまってしまっている。表現が悪いな。固定のほうはずっと横になっているものでしょう。固定というのは大体そうなるではないですか。五十分位で見ても。変動のところはこうやって上がったり下がったりする形になるわけですね。固定の部分でも一番左側と一番右側というのはすごく変化するのですね。真ん中あたりは20ぐらい合わせてもそれほど変わらない。大体プラトー状態になっているのがあるのですね。それを高齢単身と高齢夫婦と夫婦子どもと先ほど並べて見ていたのですけれども、微妙に違うのですね。固定の部分の上がったり下がったりするのと、そうでない、ほとんど横ばいみたいな形で、多少でこぼこはあるけれども、収入が下がっても変わらないという部分があるので、そこら辺を検証部会の人たちは相当回数をされているのでしょう。
■駒村部会長 相当というか、このための準備は何回かやりますけれども。
■栃本委員 そこら辺、固定のところももう一度見たほうがいいということですね。固定は変わらないということが基本でしょう。
■駒村部会長 どうぞ。
■山田委員 固定は、事務局から説明があるかもしれませんが、変わらないというよりは、全体の支出の伸びに比べてどうかという話なので、私が理解しているのは、変わらないというわけではないと思います。
■栃本委員 わかりました。
■駒村部会長 ちょっと栃本さんの考えていることは違うのかもしれませんけれども、それは後にして、今までの議論で事務局から補足の説明等ありますか。何かあれば。なければ次の話に行きますが、いかがでしょうか。いいですか。
■清水社会・援護局保護課長補佐 1点済みません。先ほど山田先生のほうから御紹介いただいたとおり、支出弾力性、消費支出が1%変化したときに、それぞれのサービスが何%変化するかということなので、固定的経費は、全体の消費支出の額が変わるより変動幅が少ない経費ということなので、多少は変わり得るというところでございます。
あと、少し分析方法、いろんな御意見をいただいたところで、こういったところで分析してみてはどうかという御意見はいただければと思ってございますけれども、今、思っておりますのが、固定的経費につきましても、変動的経費についても、固定的経費がほかの分位から比べて割合がきゅっと上がるところですとか、変動的経費の割合なり支出額がどこかできゅっと縮小するような、ほかの分位から比べて少し少なくなるようなポイントというのは、一つ生活が苦しくなるポイントですということで解釈できないかなということは考えてございまして、ほかにも個別の品目、どういった品目で見るべきではないかという御意見がございましたら、いつでも結構でございますので、ぜひ御教示いただければと思ってございます。
■駒村部会長 もう少し丁寧な作業も必要かもしれません。とりあえず何かで目星をつけないと始まらないので、この方法で、とりあえず50のところのポイント前後で少し丁寧に深く分析をしていくということで、資料1の進捗状況ということになります。
では、よろしければ、事務局のほうから資料2について説明をお願いします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、続きまして、資料2「有子世帯の加算の検証方法について」ということで、御説明をさせていただきたいと思います。1ページ目をお開きいただければと思います。基本的な検証に向かっての考え方ということの整理をしたいと思ってございます。
1ページ目の上の四角については、前々回の基準部会のほうで有子世帯の扶助・加算の検証、生活扶助本体と、子どもにかかる健全育成のための追加の加算が必要かどうかというところと、ひとり親世帯のかかり増し費用の検証と、教育の関係ということで、4つの項目に分けて検証を進めてはどうかということで御提示をさせていただきまして、今回の資料2については、生活扶助本体と子どもにかかる費用の検証、また、ひとり親世帯のかかり増し経費の考え方をどう整理していくかということで御提示をさせていただいたものでございます。
1ページ目の1番、生活扶助基準本体(1類費、2類費)と子どもの健全育成にかかる費用の関係整理、考え方がこのような形でいいかどうかということで御提示をさせていただいております。
1つ目の○、生活扶助基準本体(第1類費、第2類費)については、先ほど資料1のほうでも御提示させていただきましたけれども、年収分位ですとか消費の分位に応じて分析を進めまして、下線を引っ張ってございますが、あくまでも最低限度の生活を維持することができる水準で検証を行うということで考えてございます。
下の○「一方」というところで、子どもの健全育成にかかる費用というところで考えますと、これまでの基準部会でも一般低所得世帯との比較だけでいいのかどうかという御意見もいただいたところでございますけれども、子どもの健全育成にかかる費用というのが確保できているかと検証した上で、子どもの健全育成、将来に向けた自立助長のために必要な水準はどういった水準にあるのかということで検証を行ってはどうかということで整理をしてございます。
2ページ目、それに従って具体的に検証をどう進めていけばよいかということで、考え方、検証方法ということで挙げさせていただいております。
2点目の子どもの健全育成にかかる費用の検証方法の考え方でございますが、まず消費実態による検証というところで、これまでも年収五十分位の消費支出の動向を1類費、2類費の検証でも実施するということになってございますが、今まで変曲点ということで支出ががくっと減るポイントを最低限度の生活ラインということで、検証を進めていくということで考えてございますが、年収が減少しても一定の消費水準を保とうとする段階、いわゆる抵抗線の有無について確認をしまして、抵抗線の水準で夫婦子1人の費用がどういう状況なのかということを検証してはどうかということで挙げてございます。
もう一つ下の「また」のところでありますが、先ほど資料1のほうで提出させていただきました固定的経費、変動的経費の動向に関しましても、その中で子どもの健全育成にかかる費用の状況がどうなのかという検証を進めていきまして、全体の消費水準が減少した場合に固定的経費、変動的経費がどう変わるかというところで、特に夫婦子1人世帯の中でどの水準でどういう費用が変わっていくかという観点から、子どもの健全育成が図れる水準というのも考えてはどうかということで挙げてございます。
3番目、ひとり親世帯のかかり増し費用に関する検証方法の考え方というところで、1点目は「消費実態による検証」ということを挙げてございます。こちらについては、1つ目の○でございますけれども、まず上記の子どもの健全育成にかかる費用の検証と同様に、ひとり親世帯にかかる水準についても、ひとり親世帯における子どもの健全育成にかかる費用というものをあわせて検証する必要があるのではないかということで、挙げてございます。
次の○は、夫婦子1人世帯との比較を行う観点からも、今、モデル世帯としては夫婦子1人世帯を挙げてございますが、ひとり親子1人世帯の消費の実態というものも確認をする必要があるのではないかということで、サンプルサイズ等の問題がございますので、年収階級、まずは二十分位なりに分類いたしまして、そういった変曲点なり抵抗線の状況がどうなのかというところを検証してはどうかということで挙げてございます。
3番目のところでございますが、同じくひとり親世帯につきましても、固定的経費ですとか変動的経費の動向がどうなっているのか、家計の状況がどうなっているのかというところも検証を進めていってはどうかということで、挙げてございます。
また、それぞれの共通ということで、生活実態による検証ということで、今回家庭の生活実態及び生活意識に関する調査というものを実施してございますので、年収階層別の、どういった項目が欠けているか、剥奪の指標がどうなっているかという検証も含めまして、子どものいる世帯の生活実態というものも見ながら、必要な水準を考えていってはどうかということで挙げさせていただいております。
資料説明は以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございます。
有子世帯の加算についての考え方の整理ですけれども、委員の皆様からこの点について議論したい点、確認したい点がありましたら、お願いします。岩田委員、お願いします。
■岩田部会長代理 2ページの消費実態による検証。2も3もそうなのですが、先ほど議論した固定、変動のところでも品目別、例えば食料とか出ていますけれども、通常抵抗線とかエンゲル係数の逆転と言われて、私たちが抵抗のメルクマールにしてきたものは、単純に消費水準を保とうとするというのでなくて、消費構造を保とうとするのです。したがって、エンゲル係数を高めてしまったほうがいいのに高めないで、そこで逆転が起こるという考え方なので、消費水準を保とうとするというようには出てこないと思うのです。今まで出ているいろいろなグラフなどを見ていると。それで、余り抵抗していない。
これを見ても、下のほうは固定的経費が非常に高くなっていますね。これは先ほど使い方が難しいと言いましたが、固定経費の主な費目は、食料と光熱水費と、夫婦と子の場合は住居費ですので、かなりエンゲル係数に近く使えると言えば使えるものなのですね。それが余り抵抗していないのかもしれないという感じもするので、実態によって検証が非常に難しいだろうと思います。
ひとり親はもっと難しいと思うのです。これは健全育成にかかわる費用を検証しようとする場合に、前提として子どもの貧困論みたいなものがあるわけですね。子どもの貧困論というのは実態ですね。だから、特に全消みたいなもので押さえられている子どものいる世帯の費用というのは、必ずしも健全育成を反映して十分出されているという前提には立てないわけです。特にひとり親の場合にそうはならない可能性が非常に強いわけですね。
だから、消費実態から健全育成費を持ってこようというのは、どだい無理なのではないかと思うのですよ。健全育成という考え方は理論的な考え方ですね。あるべきという。それに対して実態というのはそうなっていない。子どもの貧困が中に含まれているようなもので、ひとり親世帯の場合、半分がそういう状態だとすれば、こういうものから出てこないように思うのです。生活実態から。
もちろん、やるなということではなくて、一応やってみるというのでいいと思いますが、ただ、これは先ほどの消費支出階級でもある程度出てきているので、むしろ無理している家計という意味では、先ほどの小塩先生の意見ではないのですが、借金ですね。子育て世帯が消費者金融とかカードとか、そういうもので当面の消費水準を維持しているというような、そういう実態でもわかるとまたちょっと違うかなと思うのですけれども、それも3カ月調査なので、非常に難しい。だから、健全育成にかかる費用の検証だとすると、これは理論アプローチでないと無理ではないかと思います。
■駒村部会長 健全育成のコストをどうはかるのかというのと、2ページ目について、岩田先生は、一定の消費水準ではなくて消費構造を変えないという意味ではないかと。水準ではないよという意味ですね。
■岩田部会長代理 例えば収入が下がると、消費も下げていく。そうすると、通常はエンゲル係数が上がっていくのですね。そういう構造の組みかえをやっていけばいいのに、組みかえない。なぜ組みかえないかというのは違う理屈があるのですけれども、そこで抵抗して、前の消費水準、収入が高いときの消費構造を維持しようとするという理屈なのです。だから、そこで逆転が起こると考えてきたわけです。これは特に1950年代に観察されていることで、今はそうならないみたいな感じですね。私たちが見た場合、そのまま素直にエンゲル係数が上がっていきますので、必ずしもそこで抵抗しないというのはなぜなのだろうという気もちょっとしますけれども、こういうふうに出るか出ないかはわからない。
逆に言うと、デプリベーションインデックスみたいなものが、ある収入のどこかから急に高くなる点というのも変曲点とよく言いますね。これはこれとは違う指標で収入のどこかの点を問題のある点だとみなすわけですね。だから、問題ある点だとみなすための仕掛けというのは、単純な消費水準でなくて、消費構造かデプリベーションインデックスみたいなものを使うしかないのですよ。
逆に言うと、子どものことをやろうとすると、子どものデプリベーションインデックスみたいなのが非常に高くなるのはどの辺かと。そういうやり方のほうが、特に子どもの健全育成という意味ではいいような気もしますね。繰り返し言いますが、ひとり親世帯の家計というのは、ほとんど使えないのですよ。非常に数も小さいし、ばらつきが大きいのです。例えば子ども1人の世帯と2人の世帯だと、平均して2人の世帯のほうが消費水準が低いとか、そういうふうに出てきてしまうのです。だから、ちょっと使いようがないし、押さえられている実態から健全育成のためのどのあたりに持ってくるかというのは、なかなか難しいですね。
例えばひとり親世帯だと、50%はだめだから、上の50%の真ん中辺でとるとかなんとかいう工夫をしなければならないけれども、そうすると、非常にサンプルが少なくなりますので、まず無理ではないかなと思うのです。実態から行くというのは、説得力はあるのですが、子どもの貧困対策にはならないような気がします。
■駒村部会長 栃本委員、お願いします。
■栃本委員 今の資料2の部分で、前回どういうことでこう進めたかと書いてあるわけで、有子世帯についても見ていきましょうということで、サンプル数とかそういうことについてはいろいろあるかもしれないけれども、とにかくそれをどういう形で活用するかは別にして、それも一応確認するということは大切だということになっているわけですね。なおかつ、1ページに書いてあるように、生活扶助本体と子どもにかかる費用、かかり増し費用。かかり増し費用というのも2回ぐらい議論したと思うのです。あと、子どもの教育にかかる費用については、説明がこれから始まる資料3-1のほうで説明があるわけですが、4点の項目のうち、子どもの健全育成にかかる消費支出や生活実態の分析もしてみようということで今回の重要なポイントです。従来、子どもの健全育成にかかる費用というものに着目するということが、生活保護のこういうものを見る視点として余りなかったわけですよ。だから、その部分を宣言的にと言いますか、こういうものもちゃんと見なければいけないなというのは報告書における非常に重要なメッセージでもあるし、具体的なテクニカルなことは岩田先生のおっしゃるとおりかもしれないのですが、これは子どもの健全育成という視点も生活保護における扶助というものを考えた際に欠くことができないものであるということで、参考的なデータにするのかどうかは現在のところわからないけれども、とにかく出そうということであるということだと思うのです。
■駒村部会長 実態データからこの数字が抽出できるかというところの議論がここに出てきているわけですね。
阿部委員からも手が挙がっていました。失礼しました。お願いいたします。
■阿部委員 微妙に言葉の使い方がまだはっきりとみんなで共通の理解ができていない中でこうあるのではないかなというのがすごく懸念されるところで、私がこれを単純に読みますと、生活扶助基準本体(第1類、第2類)では最低限度の生活を維持する水準だけを保障する。それ以外のところを健全育成というふうに仕分けしているように思い、健全育成の部分は、後の資料のほうに出てきますけれども、そのほかの加算ですとかで見ているのではないか、分けられているのではないかなと思うのです。
そうすると、1ページの丸ポツの2つ目の2行目、「上記の最低限度の生活を維持することができる水準が子どもの健全育成にかかる費用を確保できているかを検証した上で」という文がちょっとわからなくなってきて、子どもの健全育成にかかる費用も生活扶助本体の「最低限度の生活を維持する」の中に含まれるのか、それはエキストラプラスなのかというのがはっきりとわからない。
下のほうの2番の検証、今まで高齢者とかでやってきたのは生活扶助本体の話であって、生活扶助本体のほうの最低限度の生活を維持することができる水準については、同じやり方でやるというのはあると思うのですけれども、健全育成の部分というのはプラスの部分だと思うのですが、それはこのやり方では検証することができないはずであって、先ほど岩田先生がおっしゃった意見と同じになってきて、健全育成にかかわる部分というのは違うやり方でやるしかないのではないか。
デプリベーションインデックスも、実のところ最低限度しか見ていないはずなのです。というのは、デプリベーションインデックスに用いられるインデックスというのは、必要なもの、必需品だけを入れているはずなので、それが欠けてくるというふうになるのは、最低生活以下の生活になるというのが理論的なデプリベーションインデックスの考え方であるのです。でも、やってみると実際すごい高くなるので、それをどう解釈するかというのがあるのですけれども。
それを考えると、健全育成の部分というのは、ここの検証のやり方では見えないということを共通の理解としてきちんと書いておくべきではないかなと思います。
■駒村部会長 阿部さん、ちょっと待ってください。1回切ったほうがよくて、複数の話がたくさん来ていると、事務局に確認したほうがいい部分がありましたね。つまり、1ページの2ポツの読み方は、どういう構造で読むのかという点。
■栃本委員 それは事務局に聞くまでもなくて、委員が読めばすぐわかることです。2つ目のポツというのは、「子どものいる世帯の消費実態や生活実態といった多角的な視点から、上記の最低限度の生活を維持することができる水準が子どもの健全育成にかかる費用を確保できているか」ということが書いてあるから、それで答えは出ているわけですよ。
■阿部委員 できていないというふうに解釈するのですが。
■駒村部会長 若干ややこしいのは、最初の「子どもの健全育成」には括弧がついていないけれども、後半の「子どもの健全育成」には括弧がついているので、これは一体何か意味があるのかとか、僕も読んでいて。1回整理してもらったほうが、言葉が同じ言葉で使われているかどうか。では、課長からお願いします。
■鈴木社会・援護局保護課長 1つ目の○と2つ目の○の関係ですが、今も生活扶助基準そのものは変曲点に基づいて設定をした水準でございます。それに加えて、現在としても児童養育加算と母子加算が出ている。そういう現行の制度が念頭にあったものですから、したがいまして、上の段は、今までと同じような理論で、変曲点を持って最低生活ということの水準だということがもし導き出されるとすれば、それが1つ目の○の水準であるということをイメージして書いています。
したがって、今もそれに上乗せして児童養育加算なり母子加算なりを乗っけているわけですから、それはそこに何らかのかかり増しであったり、特別な需要があるという考え方に立っておりますので、それを言葉を変えて今時点としてはこういうふうに書いているということでございます。
■駒村部会長 済みません。括弧をつけている部分は特別意味を加えているわけではないということでいいですか。「子どもの健全育成に」と「子どもの健全育成(将来に向けた自立助長)」というのは、2つの「健全育成」があるわけではないのですね。
■鈴木社会・援護局保護課長 そこは特別意味がないということで結構です。
■駒村部会長 阿部委員、どうですか。
■阿部委員 ということは、1つ目の○は生活扶助本体の話をしていて、2つ目の○は児童養育加算と母子加算の話をしているという話ですね。
■鈴木社会・援護局保護課長 はい。
■阿部委員 下のほうの3のひとり親世帯のかかり増し費用というのは、母子加算の話をしているわけですね。
■清水社会・援護局保護課長補佐 はい。
■阿部委員 これは、ひとり親であることが、二人親の子どもを持っている世帯に比べてさらにかかるかいう話をしているので、母子加算の話をしているのですね。
ここの話は生活扶助本体の話をしているような感じがするのですね。そうすると、では、児童養育加算の検証の仕方というのはここには書かれていないという整理なのかなと思うのですが、それでよろしいでしょうか。
■駒村部会長 事務局、お願いします。
■鈴木社会・援護局保護課長 例えば2ページの2番の健全育成にかかる費用の検証、上のほうは、ある意味子どもがいることによるかかり増し経費というものが恐らくは健全育成のために必要な費用ではないか、そういうことを想定して書いたものでございます。したがって、試しにやってみてはどうかという提案は、変曲点よりも少し上の生活構造を維持しようとする、そういう水準というのは、実は子どもの育成にとっても、変曲点の水準よりも多くの費用を必要とする生活構造、維持しようとする生活構造があるのではないかという仮説を検証できないかということを提案しているということで、もしこれ以外に方法があれば、それもやってみたいと思っております。
■駒村部会長 だから、データで少し上のところを見ると、そこに健全育成のコストの部分が見えてくるという仮定でやってみているけれども、委員の中では岩田先生などがおっしゃったように、健全育成の費用というのは、そういうふうな家計データからは見えないのではないのかという意見があった。では、どうやって根拠のある健全育成費を提案するのかという話になってくるということで、今、皆さんからアイデアをいただかないといけないという状態で、とりあえずはそのデータから見る方法がある。
もう一つ、では、理論的にということか、何か根拠のあるような健全育成コストというものを我々が提案できるかということになってくるのですけれども、この点は、今後の作業チームの話もありますので、委員のほうからこういう切り口で見ていけばいいのではないかという御意見をいただくと、これもまた事務局案に並行して分析対象にしたいと思っているのですけれども、いかがでしょうか。知恵をいただきたいなと思っているのですが。岩田先生、お願いします。
■岩田部会長代理 いろんなことをごちゃごちゃ言い過ぎると、かえってわかりにくくなるかもしれないのですが、ちょっと気になりますので。
2ページの消費実態による検証というのは、生活扶助の検証でいいわけですよ。変な言い方ですけれども。夫婦子1人世帯というのは、ずっとモデルで来たわけですから、その検証をして、抵抗線の有無というのも一応見たりしてきたわけですが、必ずしもそこで決めたのではないのですよ。格差縮小で来ていますから、格差縮小というのは、平均家計の6割水準ぐらいまではいかなくてはねという話なのです。6割以上になっていますよというのが、ようやく水準均衡のときに来たということなので、いつもいつも抵抗線みたいなのが発見されてきたわけでは必ずしもないというのが事実です。だから、ここに書いてあると、ちょっと違和感があるのです。
少なくとも小さい子のいる世帯というのは、モデル世帯で来ていますから、そのモデル世帯の生活扶助の検証の中に、生活扶助における妥当線というのが出るはずなのですね。問題は、子どもの年齢とか数でどう考えるかという展開のところに問題があります。その問題は出てくると思うのです。
だけれども、生活扶助自体の減少というのは、子どもがいる世帯を別途やっているわけでなくて、そこがモデルだったのですから、今回高齢世帯をもう一つモデルにしようという仕掛けで今のところやっているわけですが、そういうモデル世帯であったにもかかわらずこういうことを言わなければならないというのは、子どもと言っても年齢や数によって違うのではないのという話なら私は納得するのですけれども、そうでないと、二重になる。加算の話と生活扶助の検証が、子どもの健全育成という観点からもう一回検証しましょうみたいになってしまって、まずいかなと思うのです。
だから、展開の場合に、子どもの年齢や数でどう考えていくかというのは1つ出てくると思うのです。生活扶助それ自体の検証について。
それから、ひとり親世帯のかかり増し費用というのは、私の解釈では、ひとり親世帯はもちろんそうですし、生活保護の子どものいる世帯でも、何かマイナスの要素があって、通常の検証で生活扶助がここで妥当ですよといったものよりもげたを履かせないと、子どもの貧困連鎖を絶てないという非常に積極的な理由があって、かかり増しというより、げたを履かせると。実態でかかり増しというのは出てこないと思うので、貧困の連鎖を絶って、子どもを自立させていく。これは比較的年齢の高い子どもです。中学生とか、あるいは高校に行ったとか、こういう子どもたちを生業扶助や何かも含めてどういうふうにしていくかという非常に大きな問題は出てくると思うのです。
これはかかり増しというよりは、均衡しているのですけれども、それより乗せないと貧困世帯の子どもというのは浮き上がれないよというニュアンスです。しかし、これがどれだけ市民的合意が得られるかどうかというのは難しいところだと思います。具体的な実態みたいなものがないと難しいと思いますし、それを金銭給付でやるのかどうかという問題も別途出てくると思うのです。
実際かかり増しているのでなくて、かかり増さなければいけないというか、げたを履かせましょうという積極的な策というのは、私自身は必要だと思っています。そういう形でないと、ここに書いてある非常に積極的な理屈というのは出てこないような気がします。
■駒村部会長 ありがとうございます。
前半の部分は、展開式の中できめ細かく健全育成部分を考慮するということと、事務局からは、比較対照の中で少し上を見ることによって健全育成部分のコストが見られるのではないかという話があったのですが、これは今後少し慎重に議論しなければいけないテーマかなと思います。
あと45分ありますが、もう一問ありますので、場合によって今の議論にまた戻ってきてもいいと思いますけれども、私もすぐにわかるわけではない話だと思います。
事務局のデータ分析案はやってもいいかもしれないけれども、データ量のサンプル数の関係で不安定だよということは少し考えなければいけない。
後半のかかり増し経費というのは、ひとり親世帯であるその構造自体がかかり増しを生んでいるか。それを分析しても費用として見える形で出てこないのではないか。むしろひとり親世帯は、時間のやりくりや精神的な課題とか、子どもの健康状態とか、なかなか支出面では見えてこないようなところでハンディがある。そこで貧困の連鎖などを脱出させるためには、げた履かせ部分の費用を積極的に見たほうがいいのではないかという話。
ただ、ここについては少し議論もあると思うのですけれども、それを現金で給付するのがいいのか、現物サービスで給付するのがいいのかという議論は、当然出てくるかもしれない。私も最近、レイヤードというイギリスの経済学者が心理学者と一緒に研究しているのを見ると、貧困世帯で精神的課題を持った子どもの精神問題を解消するためには、現金給付よりはカウンセリング、現物給付がかなり有効だったという研究もありますから、どちらがいいかというのは少し考えなければいけないのですけれども、いずれにしてもげた履かせというロジックをつくったほうがいいのではないかということで、従来のかかり増し経費、ひとり親世帯ゆえに余計にお金が出ているということを見つけるのはちょっと難しいかもしれないねという話だったと思いますが、この点について、委員のほうからいかがでしょうか。いや、それは違うとか、あるいはこういう見方も加えたほうがいいのだとか、意見がありましたらいかがでしょうか。ありますか。栃本先生、お願いします。
■栃本委員 かかり増し経費について、過去1~2回議論があったと思うのです。それが本当によく出るかとか、実際に隠れてしまうとか、ほかの部分でやるから、本当にかかり増しについて検討することについて意味があるのか。それは前から岩田先生が話されていて、そういう部分もある。
ただ、繰り返しになりますが、かかり増しと称すべきものがあるのだということは、先ほどの健全育成。健全育成というのは、ぜいたくという意味でなくて、健康的で文化的な最低限度の生活を営む。そして、将来に向けて、経済的な貧困部分でなくて、文化的な貧困とかそういうものを解消する。でないと自立助長にならないから、そもそも生活保護制度の生活扶助たる部分においても、他の部分についても、「健康的で文化的」という部分は入りますよと。これは住宅のことでもあったわけだから。
その上で、今回は「健全育成」というワード、フレームというか、コンセプトというものを見なければいけないなというのが一つある。
もう一つは、「かかり増し」のボタンを押すと、すぐ「げた履かせ」に転換するというのはなかなか難しいと思うのですけれども、実証レベルでかかり増しの部分がなかなか出ないと仮にしても、報告書レベルで理論的に言うならば、どの程度かは別にして報告書に書ける、その部分で言うと、げた履かせとは言わないけれども、そういうものが実際に発生するということは確かだと。
この調査ではなかなか出にくい部分とか、そういう書き方はあると思うのですね。その上で、かかり増しという概念というものをきちっと考えたということは事実として残るから、それはとても重要なことなのでお願いしたい。検証作業で作業という形になりますが、参加はしていませんがアイデアは出しますけれども。
■駒村部会長 それを数字にして、検証して、給付にするのが難しいのですから、簡単に。
小塩さんが手を挙げていて、岡部さんが手を挙げていらっしゃる。では、その後、岩田先生に。関連ということでいいですか。
■岩田部会長代理 はい。
■駒村部会長 岡部さん、関連ですか。
■岡部委員 はい。
■駒村部会長 では、その後、岩田先生で。
■岡部委員 消費の実態からこの費用というものを算出することは、一定意味はあると考えます。しかし、費用に関して、かかり増しと言われているものについては、そのデータからそれを見出すのはなかなか難しい。実態生計費で見るのではなくて、理論生計費で見るというのが、かかり増しという考え方からすると、一定意味を持つのではないか。
これは別な言い方をすると、積極的に優遇策をとるかどうかという規範的、理論的な話になるため、これをデータから見出していくことがなかなか難しい。そのため、データを出して、どう見るかということとどう使用していくのかということを相当慎重にしなければならない。出す以上は、こうでしたということでなくて、そのデータを解釈して、一定この報告書に載せるということの先まで見通して考えなければ、このデータがひとり歩きしてしまう。先ほど一番最初に出てきた固定的経費と変動的経費を慎重にしなければいけないというのと同じように、私個人としては、かかり増し費用データを出すということはよいが、その後の処理の仕方を、考えておかないといけないと考えます。
■駒村部会長 栃本さん、これに関係して。
■栃本委員 一言で終わるので。データがひとり歩きしないためにこの委員会があるので。それで、最終的に公明かつ簡素に、そして国民に対してわかりやすい説得をつくるということで、データだけだったら議論しないで済むことが結構あるわけです。データでなかなかとれないことがありますよ。それも丁寧にきちっと書いて、また、これはサンプル数がこうこうこうだから参考的なものである。ただし、我々は検討したと。そして、これはこういう家庭とかこういう類型の形、また子どもの貧困であるとかそういうものにとっては、生活保護のこういうものを考える際には重要であるから、これについて考えたということで、それは最終的な報告の書きぶりだけだと思うのです。だから、やるべきことはやるということだと思います。
■駒村部会長 岡部委員も同じ趣旨だと思っていますので。
■岡部委員 同じです。
■駒村部会長 ただ、ちゃんとやらなければいけない。ちゃんとコメントなりデータ数の問題もちゃんとつけなければいけないと。かかり増し経費について評価した上で、場合によっては、先生のおっしゃるような、飛び上がらせるような給付が部会としては必要だと判断したというならば、そこもそう書くと。要するに、根拠、世帯構造の違いによって本当にお金がかかっているのですかという疑問に対して答えられないわけですから、それはそれで出すということになり、だからといって、その費用相当部分が必要ないという結論になるわけではなくて、ジャンプアップさせるための経費が必要なのではないかというふうにも評価したとか、いろいろな書き方がある。そこは透明性があるようにやりましょうと。
■岡部委員 そうですね。
■駒村部会長 ほかはどうでしょうか。先に岩田先生、次に小塩先生、お願いします。
■岩田部会長代理 ちょっと積極的な意見です。今の議論を聞いていて思い出したのですが、最近の研究成果で時間貧困という考え方があって、日本では浦川先生たちがやっていらっしゃるのですけれども、もともと母子加算の根拠として、お母さんが1人で働いて、子育てもしなければならないから、例えばでき合いのものを買ってくるとか、そういうことをしなければならないのでお金がかかるという言い方をしてきたのです。それは実態的であると同時に印象的で、なかなか説得力がない。
時間貧困という考え方は、端的に言うと、育児とか家事とか介護という労働と市場労働、両方引いてしまうとほとんどマイナスになってしまうとか、そういう考え方で、これは一定の慶應パネルとか、社会生活基本調査のマイクロデータを使った検証をされています。それの結果でいくと、母子世帯が一番所得貧困であり、時間貧困である。例えば共稼ぎの場合だと時間貧困なのですけれども、所得が貧困でないので、所得で時間貧困分のサービスや外食をするとか、そういう代替が可能なのですが、不可能なのが母子世帯であるという結論なのです。
私は、それについてはいろんな意見があるのですが、今、それは全部置いておくとすると、これは母子世帯については結構使えるのではないかなという気もするのです。どのぐらい時間貧困なのか。これは一般の専業主婦のいる家庭の家事労働時間が基準なのです。そこからどのぐらい貧困かというのが出ていますから、そうすると、その分を代替していくというのがかかり増しになる。つまり、家計だけでは出てこない。時間みたいな要素を入れないと出てこないのです。
でも、全消は時間調査でないので、別のデータを使うということになりますけれども、割合母子世帯については、かかり増しすべき、つまり、時間貧困を補うためのかかり増し費用というふうに読みかえることは可能なのではないかと思います。家計だけでは難しい。
■駒村部会長 では、どうぞ。
■栃本委員 その部分は前からの部分で、きょうは説明されていないけれども、資料2のところの生活実態による検証というのを議論したでしょう。要するに、「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」を行って、子どものいる世帯の生活実態を検証しましょうというので、どういう時間をどういう形で使っているかというのも参考的に見ましょうとありましたね。子どもにかかわる時間がなくて云々とかね。だから、それも今回の報告書では取り上げられるということですね。
■駒村部会長 消費データだけで出てこない部分があって、それは実質的には家計に負担になっているかもしれない。ひとり親と二人親では役割分担とか時間のやりくりとかを考えれば、当然家計支出には見えないようなコストが出ている可能性はある。そこも少し考慮する。
小塩先生、お待たせしました。お願いします。
次の議論もあるので、そろそろ切らなければいけない。先生は初めてなので、お二人の意見はもちろん尊重します。
■小塩委員 手短に申し上げます。どちらかというと作業班の先生方に検討していただきたいことが2点あります。
1つは、抵抗線、変曲点をどのように決めるかという作業をされると思うのですが、そのとき統計的ないろんな処理をされたと思います。その際、今いただいた資料では、階級平均をベースにされるような説明になっています。ひとり親だと二十分位でやります。これは恐らくサンプルが少ないからだろうと思うのですが、きょうの1回目のテーマの場合と同じように、ここでももとのサンプルで計算して、その結果を階級で翻訳するという作業のほうが統計的に安定的な結果が出るのではないかと思います。それが1つです。
2つ目は、ちょっとこだわるのですけれども、固定的経費と変動的経費の区別ですが、弾性値が1かどうかで決めますね。そのとき、1を単純に上回るか、下回るかで処理されていますが、統計的にこれはまずいのではないかと思うのです。というのは、1を有意に上回るかどうかで区別するという作業もあっていいのではないかと思うからです。1を有意に上回るのを変動的経費、上回らないものを固定的経費というようにやってみたら、結果どうなるか、ちょっとチェックしていただけると非常にありがたいと思います。
以上、2点です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
後で作業班で検討したいと思います。ありがとうございます。
阿部委員、お願いします。
■阿部委員 ひとり親のところだけ、私自身のこれからの考え方ということについて申し上げさせていただきますと、私は、ひとり親であることについて、げたを履かせなければいけないとか、そういった考え方はもう古いのではないかなと思っています。というのは、かつては生活保護世帯の中での子どもというと、大半がひとり親だったという背景があったと思うのです。それがその他世帯がふえてきて、今はいろんな形の家族、子どもを持った家族が生活保護の被保護になるようになってきたといったときに、ひとり親だからどうのこうのというのではなくて、健全育成、貧困の連鎖をとめるといったことを考えれば、岩田先生の言葉を使わせていただければ、げたを履かすというのは全ての子どもたちにかかってくるのではないかと思うのです。
なので、今までの類型的にひとり親だったというのは、ただ単にひとり親の子どもが多かったという時代的背景がある。ただ、げたを履かせないと、その子たちは生活保護から抜けていかない、貧困に固定化してしまうというその理念は、もう少し広く拡大していくようにするべきではないかなと思うのです。
ですから、げたを履かせるというのは大賛成ですけれども、言えば貧困の連鎖をとめるということですね。生活保護階級を固定化させないということ。それは今、非常に重要な生活保護の目的だと思いますし、そのためには、次世代という観点からそこのところにそれを脱出するだけのものを保障していくという考え方に切りかえてもいいのではないかなと思います。
■駒村部会長 今の貧困世帯に対する全ての子どものげた履かせというか、スプリングのところは、今やっている資料の1ページ目、先ほどの「子どもの健全育成(将来に向けた自立助長)」のところ。これは消さないでくださいね。括弧のところを残しておいてくださいね。先ほどのは消してくれという意味ではないですから。この括弧が大事なので、ここに含まれていて、岩田先生が話したのは、ひとり親世帯ゆえに、さらにもう一段スプリングボードが必要なのではないかというさらなるものと、それから、それに時間貧困による分業できないものなどのことも考慮して、ひとり親世帯のさらなるハンディみたいなものを、かかり増し経費が仮に出なかった場合でも見たほうがいいのではないかという話だったと思う。そういう理解をしているのですけれども、違いますか。
■阿部委員 理論的にそうなのですけれども、今までは自立助長に向けたほうのところからかなり母子加算でカバーされていたという事実があったのだと思うのです。なので、ひとり親世帯のところにげたを履かせなければいけないという議論を健全育成のところでもちゃんとアプライしていきましょうという考え方だということです。
■駒村部会長 時間も詰まってきていますので、この話はきょうは踏み込んで話ができたと思いますので、体系的に考え方も整理できたので、次回以降さらに膨らませるとして、資料3-1と3-2について、事務局から説明をお願いいたします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3-1、3-2をまとめて御説明をさせていただきます。有子世帯に関する教育費用の関係でございます。
3-1の1ページ目をお開きいただければと思います。1ページ目の四角のところの○の2つ目でございますが、基本的に今回義務教育にかかる費用は教育扶助で、高等学校にかかる就学費用は、高等学校等就学費ということで対応してございますが、こちらについては、文部科学省さんのほうで実施されています子どもの学習費調査をもとに検証を行ってまいりたいと考えてございます。
1ページ目、基本的な考え方というところでありますが、教育費用の検討に当たりましては、今日の教育環境に照らして自立助長に資するための扶助の内容、水準をどう考えるかということを考えていくということで載せてございます。
検証の視点、内容でございますが、1つ目の○、それぞれの教育費用がございますが、現行想定している費目の対応関係とか教育で見る費用の範囲というのが、現行の考え方で適当かどうか、御意見をいただければと思ってございます。
他法他施策との関係等についても整理をしたいと思ってございます。
2つ目の○、その上で、必要な範囲について水準をどう考えるかということで、これは学習費調査の結果等を用いまして、どの程度勘案して、どの水準を設定するのかというところの議論が必要かなと思ってございます。
また、「例えば」というところでありますが、個別の費目の水準に関しまして、例えば個々人によって必要度が異なるもの等もございますでしょうから、そういった自立助長の観点から課題があると考えられる費目はないかということで挙げてございます。
一番下でございますが、こちらは支給方法につきまして、毎月定額に支給するもの、また、実費で支給するもの、回数の制限を行っているもの等々ございますけれども、こういったものが目的とか使途に応じて適当かどうかというところも論点の一つになってこようかと思ってございます。
資料に沿って、論点も含めて提示をさせていただきたいと思います。2ページ目は費用の範囲というところで整理したものでございます。小中学校でございますが、現行の扶助・加算が左の枠にございますが、教育に関するもの、義務教育に伴い必要なものというのは教育扶助の基準の中で、それぞれ学用品ですとか、また、実費により支給するものとしては学校給食費、教材代等を支給してございます。
そのほか生活扶助基準の中で一時扶助といたしまして入学時に必要なもの等々、上限額がございますけれども、そういったもので支給しているというところ。あと、先ほどの議論にもかかわってくる部分でございますが、基準生活費と現行の児童養育加算のところでは、学校外で必要な家庭内の学習費用とか習い事とか、その他文化的なもの、映画、観劇等の費用については、基準生活費もしくは児童養育加算の中で評価をしていくということを現行考えてございますけれども、こういった整理がいいかどうかというところがございます。
他法他施策については、就学援助というところで、修学旅行費については、小中学校が就学援助で出しているという記載をさせていただいております。
3ページ目は、同じく高等学校の費用ということで記載をしてございますが、基本的な構成としては先ほどと同様でございますが、1点、実費による支給、右側の(2)の3番目のところに「授業料、入学料、入学考査料」というのがございます。こちらについては公立学校の相当額で出してございまして、入学考査料は1回限りということで、1校に限定して出しているという状況でございます。
関連して下の他法他施策というところでございますが、現行授業料につきましては、公立、私立も限度額が定まっておりますが、こちらも文部科学省のほうで高等学校等就学支援金というものがございまして、こちらについてはそちらの費用でほぼカバーされているという状況でございます。
入学金については貸付なり、修学旅行費については別の高等学校等奨学給付金というものもございまして、そちらのほうで対応いただくということを前提にしてございます。
4ページ目につきましては、今回子どもの学習費調査の実態に応じて、それぞれ教育扶助の費目に関する水準が妥当かどうかというところの検証をしてまいりたいということで考えてございますので、それぞれの集計項目と教育扶助の費目の対応関係を整理させていただいたものでございます。
特に毎月定額で支給している教育扶助の費目の一番左の基準額ですとか、右から2つ目の学習支援費、入学準備金というのは、この水準を決定していかなければならないというところで、子どもの学習費調査の実態も踏まえまして、少し水準を考えてまいりたいということで挙げてございます。
5ページについては、学校外活動費ということで挙げてございますが、現行学習支援費ということで、家庭内の学習費についても一部対象にしてございますので、そういった費目の対応関係等が適当かどうかというところも挙げてございます。
6ページ目は、同じく高等学校の費用について整理をしたものでございます。
8ページ目以降が、学習費調査の関係を一時的に平均額を集計をさせていただいたものを提示させていただいております。それぞれ年収階級別に必要な費用がどう変わってくるかということをまず整理をしてみました。
学習費総額の中で真ん中の学校教育費というのが、いわゆる教育に基本的にかかる費用というところで考えてございますが、こちらについては、下に年収ごとに平均額を1とした指数を記載してございますが、ほぼ年収によった差は見られないという状況でございます。
一方、右側の学校外活動費につきましては、例えば塾代とか家庭教師代、図書の費用とかが入ってございますが、こちらについては年収による差が見られるという状況でございます。
9ページ目、10ページ目以降は、それぞれ細かい内訳でございますので、説明は省略させていただきます。
13ページが公立中学のものでございますけれども、こちらについても同じように学校教育費については年収ごとの差はほとんど見られないという実態でございます。
内訳が続きますが、18ページについては公立の高等学校の費用。
23ページは、私立高校の状況についてまとめたものでございます。
28ページは、教科外活動費の世帯の費用の状況をまとめたものでございます。特にクラブ活動に関する費用が教科外活動費に入るわけでございますが、こちらについては、クラブ活動をやっている子、やっていない子、どういったものをやっているかによって支出の状況が変わってくるのではないかということで、分布を少し特別に集計してみたというものでございます。このグラフの見方でありますが、例えば上の8割は5,000円以上支出しているということで、累積をしていくようなグラフになってございます。
こちらについても、今、月額支給している中で、例えば全体の世帯の水準を考える場合に、平均額を載せればいいのか、それとも個別的に必要な場合について、必要な費用が個別世帯に応じて出せるようにしたほうがいいのかというところも御意見をいただければと思ってございます。
29ページ以降は、それぞれ支給方法に関するところでございますが、それぞれ月別にどういった支出額がどう変わるかというところで家計調査の集計をしたものでございますが、教育費用、それぞれ分けてございますが、3、4、5月ぐらいに支出のピークが来るというところで、まとまって必要になる費用というのも多くございますので、今、毎月定額で支給しているものから、場合によっては、必要な場合に必要な費目について支給するものというものも分けて考えてみてもいいのではないかということの参考の資料としてつけてございます。
ほかは参考資料をつけてございますので、ごらんいただければと思います。
もう一つ、資料3-2について触れさせていただきますけれども、こちらはもう一つの制度に関する審議会の生活困窮、生活保護部会の資料を抜粋してつけてございます。
こちらについては、先ほどの子どもの貧困対策の関係についても、若干現物的な、サービスの部分の議論ですとか、実証してございますが、1点、資料の4ページにつきまして、生活保護世帯の大学等への進学支援の関係についても、こちらの審議会のほうで御議論いただいておるところでございます。この中で4ページ目の一番上、例えば住宅扶助が世帯分離することによって減ることの負担等々、費用面での課題というものも論点として挙がってございますので、制度の枠組みについてはこちらの制度の部会のほうで議論いただいておりますので、費用の関係でこちらの基準部会のほうでも御報告なり今後追加提案するようものが出てきましたら、その際に応じて提示をさせていただきたいということで、今回はまず御報告ということで、資料をつけてございます。
説明については以上でございます。
■駒村部会長 ありがとうございました。
済みません。中間のテーマが少し時間がかかってしまったので、この時間は15分しかとれませんけれども、事務局、きょうは、これでいいですとか結論を出す必要はなくて、とりあえずはこの議論をまずやりましょうということでよろしいですね。
■鈴木社会・援護局保護課長 はい。
■駒村部会長 では、15分しかございませんけれども、委員の皆様からきょうの事務局説明に関して質問、確認、あるいは検証に当たってのポイント、意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。山田委員、お願いします。
■山田委員 詳細な資料をありがとうございます。
何点かあって、時間が来ているので少なく挙げますけれども、まず入学考査が1回限りというのは、かなり厳しいのではないか。これは受験のシステムを考えてももう少しふやす必要があるのではないかというのが1点です。
2番目としては、今、学校外活動費で、特に学習塾の費用が世帯年収区分によって大きく3倍ぐらい違うということです。ここは、ひょっとしたら生活困窮世帯の子どもの学習支援事業のほうでやっているからいいのではないかという考え方もありますが、やっていないところもありますし、子どもによっていろいろなレベルのものが要求され、多様な水準の需要があると思いますので、それで本当に足りるのかというのは大きな論点になるかと思います。
さらに、それを現金でやるかどうかということについては、確実に子どものそういった学校外活動費に行くようなシステム、制度が必要になるのではないかと思います。これが2点目です。
3点目としては、先ほどの健全育成のところのかかり増し費用のところとも関係して、これは多分次回以降に持ち越す議論だと思うのですが、時間の貧困でかかり増し費用というものを考えた場合に、時間の貧困が生じる一つの大きな理由というのは、就労しているからということになるわけです。そうすると、時間の貧困をかかり増し費用の根拠にすると、就労しているか、就労していないかでかかり増し費用をどうするのかという問題が出てきますので、それとは別途どういったかかり増し費用推計のあり方があるかというのは考えなくていけないというのが、今、結論はなかなか出せないのですけれども、一つの論点だと思いました。それが3点目です。
私からは以上です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。岡部委員、お願いいたします。
■岡部委員 3点です。
1点目、かかり増し費用の関係で、健全育成について。「健全育成」という用語ができたとき非常に意義のある用語であるとお話をさせて頂いたと思います。一つは一般児童対策として使う用語であると。これを考えたときに、一般児童対策として生活保護の問題も考えていく、同じ地平に立つということ、この中で議論ができるというのが非常に喜ばしいとお話をしたかと思うのです。
そのことに関連して、一つは学びの保障と育ちの保障という言葉で、これはある意味では学習、就学の機会をきちんと提供していくということと、十分な養育環境を提供していくということにつながる。そうなったときに、先ほどの学習の機会というときに、受験の機会を何回か設けるというのは、これも一つ機会の幅を設けることで意味があると考えます。
もう一つ、学校外活動費は所得階層によって随分開きがあります。学校外活動費は、学びのということもありますが、もう一方で社会的、文化的な機会の幅をより広げるという意味合いがあります。これをどう考えるかということになってくるかと考えます。
2点目、先ほど岩田委員が時間の貧困という言葉をおっしゃいましたので、私は別な観点、「関係性の貧困」という言葉を使わせていただきます。いろいろな機会の提供。体験的な活動、地域活動、芸術文化に触れる、スポーツ・レクリエーションであるとか、教養というのでデータが出ていますが、所得階層によってこの費用に大きな開きがあるものについて、どれだけ開きを縮めるようなことができるのかどうか考える必要がある。
そういう意味で、関係性の貧困について、そういう幅を持たせるということを考えることができないか。それは先ほど阿部委員がおっしゃったようなひとり親ということは当然ありますが、それ以外に広く有子世帯一般で考えられることではないか。
3点目は高等学校等卒業後について。教育扶助は義務教育です。定時制高校等の夜間高校に行く場合については、世帯分離、世帯内就学。高等学校の昼間部については世帯分離をしている。夜間部については世帯内就学を認めているということになっています。この流れからしますと、高等学校等卒業後の進学については世帯内就学の道を考える方向性が必要なのではないか。この点は特別部会の中で発言をさせていただきました。そういうことが、例えばこれまで学習費用とか進学費用についての収入認定除外という項目があり今後は、住宅扶助というお話も出ましたが、同一の世帯の中で世帯内就学を認める方向で足延ばしをしていくことが考えられるのではないか。
これは、先ほどのかかり増し費用や、固定的な費用を、実態生計費から見ていくということと、もう一つは、理論的、規範的な意味合いで算定を考えていく。これはかかり増し費用をどう考えるかというところに全てつながってくる話と思います。いつも理念的な話ばかりして申しわけないのですが、一つは理論的な生計費という考え方を少し取り入れながら水準というのを考えていくということも必要なのではないか。実態生計費を否定するという意味ではなくて、当然それはきちんと行わなければいけないが、その中だけで語られるということはなかなか難しいこともありますので、一言述べさせていただきました。
以上です。
■駒村部会長 ありがとうございます。
ほかに。栃本委員、お願いいたします。
■栃本委員 資料3-1の48ページに義務教育段階の就学援助というので、文部科学省のほうの施策の説明の概略版があるのですが、一番下に「4 準要保護者に係る支援」というのがありますね。準要保護者に係る支援の経緯については、そこに書いてあるとおりなのですけれども、準要保護者に係る支援というのは、保護の停止とかそういった場合に、教育委員会とかそういうところで対応するということになっているのですが、保護を脱した後の世帯のお子さんなども、保護を脱したからといっていろんな経費が要らないというわけにはならないので、この部会とは直接関係ないのですけれども、こういうもののデータというのはちゃんと掌握している必要があります。把握しているのでしょうか。これは文科省のほうだから。準要保護者に係る支援については、各市町村の単独事業になったからということで、文科省のほうではきちっと押さえているということなのですか。そんな質問をされても困るということがあるかもしれないけれども、これは先ほどの子どもの貧困とか、就学をどうするかという場合、直接的に言えば、世帯の保護が停止された後、これが準要保護者になるはずなのですね。今でなくてもいいのですが、どういうのがあるのかなというのを教えていただければということです。これはお願いを申し上げただけです。
■駒村部会長 これは、事務局、いいですか。どうぞ。
■清水社会・援護局保護課長補佐 文部科学省さんのほうの調査で、就学援助を行っている世帯、例えば自治体ごとにどういった基準でやっているかとか、何人やっているかという基礎的なデータは調査をしていたかと思いますので、そちらについては必要な部分、参考資料としてお出しはできるかと思います。
■駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。阿部委員、お願いします。
■阿部委員 幾つかの点は繰り返しになるのですけれども、学校でかかる費用を保障するべきだというのは、言わずともかも、それは絶対だと思うのです。
私たちの議論というのは、学校外の教育費をどういうふうに見るかといったところで、何人かの委員はそこを見なければいけないということについて、全く同感なのですが、そのレベルをどこにするのかというのが非常に難しいところかなと思って、これは先ほどの議論ともかかわってきますけれども、そこで回数を固定するようなことはないようにするべきだなと思います。
もう一点、余り明示的に論じられていないところが、私立高校をどう考えるかということだと思うのです。これは、恐らく被保護でない世帯の子どもたちに対しても、今、政策の議論が起こっているところではございますが、私が行った東京都の調査でも、かなり厳しい基準で見た貧困層の子どもたちでも4割は私立高校に通っているのです。通っている理由で圧倒的に多いのが、公立高校に受からなかったということ。今、実際公立高校というのが全ての子どもにオプションとして残っているという状況でないということを鑑みると、公立高校に入るのに試験を受けなければいけないという日本の教育行政の中では、私立高校というのは考え直すべきではないかなと私も思っていて、そこのところでそれを保障できるのかというところがやはり生活保護でも問われているところかなと思います。
■駒村部会長 ありがとうございます。
ほかはいかがでしょうか。
この問題は一般施策との問題もありますので、なかなか難しい点も出てきて、部会として対応できる範囲と報告書の中で一般施策として底上げを期待する部分と丁寧に書き分けていかなければいけないところだと思いますが、今後引き続きこの議論は続けていきたいなと思います。
ちょうど時間が来てしまいました。追加で御発言する方はいらっしゃいますか。
よろしければ、きょうの審議は以上とさせていただいて、次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。
■清水社会・援護局保護課長補佐 次回は、10月12日午前10時から。場所は厚生労働省内の会議室を予定してございます。また追って御連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
■駒村部会長 本日の議論は以上とさせていただきます。
御多忙の中、大変ありがとうございました。お疲れさまでした。
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