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2017年7月27日 平成29年度 化学物質のリスク評価検討会(第2回有害性評価小検討会)議事録 

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成29年7月27日(木)15:00~


○場所

中央合同庁舎5号館専用第21会議室


○議題

がん原性試験結果の評価について 他

○議事

 

 

 

 

 

 

○平川化学物質評価室長補佐 本日は大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成29年度の第2回有害性評価小検討会を開催いたします。本日、委員が全員御出席です。それでは、座長の大前先生に以下の議事進行をお願いいたします。

○大前座長 それでは、座長を務めさせていただきます。2週間前も、このメンバーで評価、御検討を行いました。2週間ぶりですが、今日はその結果についても2つ目の議題にあります。最初に、事務局のほうから資料の確認をよろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、議事と資料の確認をさせていただきます。

 本日の議事ですが、(1)がん原性試験結果の評価と、 (2)ばく露実態調査対象物質の評価値について第1回有害性評価小検討会後の修正内容に係る検討の2題です。

 本日の資料につきましては、委員と傍聴者共通の資料と、机上配布資料の2点です。

 資料番号順に申し上げます。資料1-1-1「アクリル酸メチルのラットを用いた吸入によるがん原性試験結果」は共通資料の19ページです。資料1-1-2「アクリル酸メチルのマウスを用いた吸入によるがん原性試験結果」は1117ページです。資料1-2-1「アクリル酸メチルのラットを用いた吸入によるがん原性試験結果報告書(概要、本文)」は1949ページです。資料1-2-2「アクリル酸メチルのマウスを用いた吸入によるがん原性試験結果報告書(概要、本文)」は5179ページです。資料1-3は、「アクリル酸メチルに関するがん原性指針策定の要否について」です。資料2は、A3の折り込み資料で、「ばく露実態調査対象物質の評価値について(平成29年度第1回有害性評価小検討会後の修正)」です。

 次に、参考資料関係です。参考資料1「リスク評価検討会(有害性評価小検討会)参集者名簿」は共通資料の90ページです。参考資料2「国が実施する発がん性試験について」は9295ページです。参考資料3-1は机上配布資料で、「許容濃度に関する資料」ですが、ACGIHに関する資料が1ページから、日本産業衛生学会に関する資料が9ページからです。

 共通資料に戻ります。参考資料3-2「リスク評価書No.83(初期)(アクリル酸メチル)」が96127ページです。最後に、参考資料4「中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の実施状況」は128ページです。

 資料の漏れ等ありましたら、事務局までお知らせくださいますよう、お願いいたします。

○大前座長 よろしいでしょうか。それでは議事に入ります。議題1、がん原性試験結果の評価についてです。試験結果の評価をまず行い、「がん原性あり」という場合には大臣指針の公表の要否についても検討しますので、よろしくお願いいたします。それではアクリル酸メチルについて、事務局と日本バイオアッセイ研究センターの担当者から、説明をよろしくお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは事務局から、アクリル酸メチルの被験物質の物理化学的性状等についての説明をさせていただいた後に、日本バイオアッセイ研究センターから、試験結果の概要についての御説明をお願いしたいと思います。

 まず、資料1-1-11ページを御覧ください。被験物質の名称はアクリル酸メチル(Methyl Acrylate)、別名は2-プロペン酸メチル、アクリル酸メチルエステルです。CAS番号は96-33-3。構造式は資料に書いてあるとおりで、分子量は86.09です。

 物理化学的性状は無色の揮発性の液体で、比重は0.9535(20 )。沸点は80.7 ℃。蒸気圧は86.6 mmHg(25 )。溶解性はエタノール、エチルエーテル、アストン、クロロホルム、ベンゼンに可溶。保管条件は室温、暗所に保管となっております。

 次に製造量等です。平成27年の製造、輸入量で17,758tとなっております。

 用途はアクリル繊維、繊維加工、塗料、紙加工、接着剤、皮革加工、アクリルゴムとなっております。

 許容濃度ですが、管理濃度は未設定です。その他、日本産業衛生学会では2004年に2 ppmACGIHでは2 ppmSkinDSENの勧告があります。IARCでは1999年にGroup 3となっております。以上、物理化学的性状等のアクリル酸メチルについて試験を行いましたので、内容の報告については日本バイオアッセイ研究センターからお願いしたいと思います。

○日本バイオアッセイ研究センター(鈴木) まずラットの結果について、資料1-1-11ページ、現在のページから引き続き御説明させていただきます。アクリル酸メチルのがん原性を検索する目的で、F344ラットを用いた吸入による2年間の試験を実施いたしました。方法は、被験物質投与群3群と対照群1群の4群構成で、各群雌雄とも50匹、合計400匹の動物を使用しました。被験物質の投与は、アクリル酸メチルを16時間、15日で104週間、全身ばく露により行いました。投与濃度は雌雄とも01040160 ppmとして行いました。検査は一般状態の観察、体重、摂餌量測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、解剖時の肉眼的観察、臓器重量の測定、病理組織学的検査を行いました。

 主な試験結果については、グラフと表で説明したいと思います。7ページにラットの生存率のグラフを示しております。上段が雄、下段が雌になっております。雌雄の生存率は、対照群と投与各群で大きな差はありませんでした。ちなみに○が対照群で、一番濃度の高かった160 ppm群が◇になっております。

8ページに体重の推移を示しております。生存率と同じように上段が雄、下段が雌になっております。雄の体重は160 ppm群で体重増加に抑制が見られ、投与期間を通して低値で推移しております。160 ppm群は◇で、雄も雌も下で少し間が空いております。対照群については、ほかの投与群とかぶっておりますので少し分かりにくいのですが、それぞれの投与期間を通して有意差が見られております。ここではお示ししておりませんけれども、摂餌量のほうにも差があり、雄では投与期間を通じて、雌では投与14週まで差がありました。

 続いて、腫瘍の結果について説明いたします。腫瘍の表は6ページに示しております。上段の表1が雄、下段の表2が雌の腫瘍発生状況を示しております。上段の雄ですが、扁平上皮癌の発生が40 ppm群で1匹、160 ppm群で6匹見られております。こちらは統計的にPeto検定、Cochran-Armitage検定で増加傾向を示しており、160 ppm群ではFisher検定で有意な増加を示しております。扁平上皮癌は悪性腫瘍で、当センターのヒストリカルコントロールデータでは、過去に発生が見られていない極めてまれな腫瘍です。この40 ppm群で見られている1匹についても投与の影響と考えております。したがって、40 ppm群と160 ppm群で見られた雄の扁平上皮癌の発生は、アクリル酸メチルの投与の影響であると考えております。

 下段の雌でも鼻腔の扁平上皮癌が、160 ppm群に2匹見られております。統計的な有意差は2匹ですので付いておりませんが、こちらも形態的には雄と同じ形態を示しており、やはり当センターのヒストリカルコントロールでは発生の見られない、極めてまれな腫瘍です。したがって、雌の160 ppm群の扁平上皮癌の発生も投与の影響と考えております。雌のほうですが、表の一番下段で、副腎の褐色細胞腫の良性のものと悪性のものを合計したPeto検定で有意差を示しております。しかしながらこちらの結果については、それぞれの発生も合計の発生も、私どものヒストリカルコントロールデータの範囲内であったので、アクリル酸メチルの投与による発生とは言えないと判断しております。

 以上の結果をもって、5ページにまとめを記載しております。ただいま御説明したとおり、雌雄とも鼻腔に扁平上皮癌の発生が認められました。これらの結果は、雄ラットに対してはがん原性を示す証拠、雌ラットに対してはがん原性を示唆する証拠としております。以上がラットのまとめです。

 続いて、マウスの結果について御説明いたします。資料1-1-211ページから説明いたします。物性については、既に説明していただいたものと同じですので、目的から説明させていただきます。

 アクリル酸メチルのがん原性を検索する目的で、B6D2F1マウスを用いた吸入による雄マウス94週、雌マウス97週の試験を実施いたしました。本試験開始時は104週の投与期間を予定していましたが、雌雄ともに各群でアミロイドーシスの発生により、生存率が低下いたしました。本試験で参考としていたOECDの発がん性試験テストガイドラインによりますと、「低用量群又は対照群の生存率が25 %を下回ったときには、試験の終了を考えること」「雄と雌はそれぞれ別に集計すること」と書いてあります。私どもではこのガイドラインを参考にして、雌雄別々に対照群の生存率が25 %を下回った段階で投与を終了し、動物の解剖をいたしました。その結果、雄マウスの投与は94週、雌マウスの投与は97週となりました。

 主な試験方法は基本的にラットと同様ですが、今申し上げたとおり、試験期間が104週ではなく、雄マウスが94週、雌マウスが97週の投与となりました。投与濃度は雌雄とも02.51040 ppmで行いました。なお、本試験の投与期間については、本試験が準拠した労働安全衛生法の規定によるがん原性試験の調査基準があるのですが、マウスを用いるがん原性試験の投与期間を、78週間に相当する18か月以上と規定しておりますので、本試験はこの投与期間を満たしております。

 前置きが長くなりましたが、結果については同様に、グラフと表を用いて説明させていただきます。16ページでマウスの生存率を示しております。雌雄とも各群で80週を超える辺りから生存率が低下してきました。先ほど御説明したとおり、OECDのガイドラインどおり、25 %を下回った時点で投与を終了しております。本試験は150匹で始めておりますので、25 %と言いますと12.5匹となるわけですけれども、13匹を下回った12匹となった時点で投与を終了し、解剖を行っております。各群で生存率が低下しておりますが、雄のほうを対照群と比較しますと、最高投与群となる40 ppm群の生存率が少し高いという結果も出ております。

 体重について御説明いたします。17ページを御覧ください。雄のグラフを上段、雌のグラフを下段に示しております。雄は最高投与群40 ppm群で増加の抑制が見られており、投与開始から50週まで低値で推移しております。雌でも体重増加が軽度に抑制が見られており、30週まで低値で推移しております。グラフはお示ししておりませんけれども、摂餌量も雄では78週、雌では74週まで低値でした。

15ページで腫瘍の説明をいたします。上段が雄、下段が雌です。雌雄ともアクリル酸メチルのばく露の影響と思われる腫瘍の発生は認められませんでした。以上の結果を踏まえ、13ページの5に、まとめとして記載しております。B6D2F1マウスを用いてアクリル酸メチルの雄94週間、雌97週間の吸入によるがん原性試験を行った結果、雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、アクリル酸メチルの雌雄マウスに対するがん原性を示す証拠は得られなかったと結論しました。ただし、先ほど説明したとおり、本試験では全ての群でアミロイドーシスによる低体重と死亡例の増加が認められております。このことから、本試験の発がん性に対する検出力は低下していた可能性があり、条件がより適切であれば、発がん性が示される可能性もあるとしております。

 概要は以上ですが、続いて本試験の病理を担当した者より、ラットの試験で見られた鼻腔の扁平上皮癌と、マウスの試験で見られたアミロイドーシスについて説明させていただきます。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) 病理組織学的検査について御説明いたします。ラットの鼻腔は、私どもは3か所から横断で切り出しております。前方からレベル123と病変の局在を表しております。本試験で認められた扁平上皮癌は、主に鼻腔の前方から中央、レベル1から2の背側に見られ、細胞異型や正常な層状分化の過程を取らない構造異型を示し、鼻腔を破壊する大きながんの発生も認められました。また、腫瘍に関連した病変として、扁平上皮過形成や呼吸上皮や嗅上皮の扁平上皮化生、扁平上皮と呼吸上皮の移行部に存在する移行上皮の過形成が、腫瘍の見られたレベル1から2の背側と同じ部位を中心に認められ、その発生は160 ppm群で増加しています。

 有意差は示しておりませんが、40 ppm群でも認められております。したがって、形態変化からも40 ppm群に見られた1匹の扁平上皮癌は、アクリル酸メチルの投与による発生と考えております。また、呼吸上皮や嗅上皮の炎症、粘液産生機能亢進を示す杯細胞過形成と、アクリル酸メチルの刺激に対する変化や嗅上皮の萎縮、呼吸上皮化生、上皮の再生等、アクリル酸メチルによる障害とそれに対応する再生性の変化が、40 ppm群まで認められました。雌にも雄と同様の変化が見られましたが、その発生は雄より少ない傾向にありました。以上がラットの病理の説明です。

 続いて、マウスの病理の説明をさせていただきます。マウスもラットと同様に、ばく露の影響による主な部位は上部気道に見られました。しかし腫瘍の発生増加は認められませんでした。鼻腔には腫瘍に関連した病変も見られなかったのですが、アクリル酸メチルの刺激に対する炎症性変化や障害性変化、呼吸上皮化生や再生性の変化は、雌雄とも10 ppm群まで認められております。本試験では、対照群を含めたほとんどのマウスにアミロイドの沈着が認められました。沈着が認められた部位は腎臓の糸球体、肺の血管周囲、心臓の筋層、筋層内、間質、肝臓の血管周囲、胃、小腸、大腸の粘膜及び粘膜固有層、副腎、精巣、卵巣の間質と、ほとんどの臓器に認められました。死亡は多臓器へのアミロイド沈着、すなわちアミロイドーシスによるもの、また、アミロイドの沈着が原因と考えている腎硬化症によるものと判断いたしました。

○大前座長 ラットについては、雄ラットの鼻腔の扁平上皮癌で有意であり、雌もそうであろうと。マウスに関してはアミロイド沈着による寿命の短縮がありましたが、悪性腫瘍に関しては特になかったという結果です。先生方から何か御質問、あるいは御意見はいかがでしょうか。

○西川委員 ラットについては、雄ラットで有意な鼻腔の扁平上皮癌の増加と、雌でもFisher検定では有意差はなかったものの、背景データに全く出てこない扁平上皮癌が出てきたということで、「発がん性あり」でいいと思うのです。

 マウスですが、アミロイドーシスのために、特にコントロール群で死亡例が多発したことによって、試験の終了を早めたということですよね。これは毎回というか、何度も申し上げているのですが、やはり発がん性の検出のためにはあまり好ましいことではないと思うのです。そこで1つ確認したいのは、アミロイドーシスの発生率について、最近増加しているという傾向はあるのでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター(鈴木) 御指摘のとおり、昨年、こちらでアクロレインという物質の試験結果を評価していただきました。昨年のその試験でも、アミロイドーシスの発生によって試験期間を短くしております。しかしながら、アクロレインの場合は腫瘍の発生があったわけですが、今回の場合はなかった。試験期間が死亡数の増加によって短くなってしまったのは、昨年の試験と今回の試験の2試験だけです。昨年の試験の途中解剖のときには、本試験も1年たっており、その時点で雄の生存率はまだ92%、雌のほうも100%ありましたので、前年の試験の途中解剖時に試験の中止は考えませんでした。しかし結果的に、この試験に関してもこういう結果になりました。

 実は、この翌年に導入したB6D2F1については、動物の導入元、ブリーダーは同じチャールスリバーという所で、維持の形の異なるIGSという方法で維持している系統でのB6D2F1マウスを導入しました。こちらは今年1月に解剖が終了しており、104週まで無事に飼育しました。雄のほうは生存率が90 %、雌のほうは72 %あり、アミロイドーシスによる死亡もなしでしたよね。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) 肉眼で見る限りは、ないのではないかと。

○日本バイオアッセイ研究センター(鈴木) そろそろ標本が出来上がってきますので、詳しい検査はこれからです。系統を変えた結果はそうであったということです。

○西川委員 系統は変えてないのですよね。

○日本バイオアッセイ研究センター(鈴木) そうですね。維持の形が異なっているということです。

○西川委員 最近実施した試験ではアミロイドーシスの影響はあまりなかったということですね。分かりました。この試験については90数種以上やっていますので、ガイドライン上は多分、問題ないと思うのです。確認したいのは、あちらこちらにアミロイドの沈着があって、それが死亡の原因だと今伺ったのですが、一番大きなダメージは、どの臓器にあったのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) アミロイドの沈着がいろいろな臓器にありますが、特に死亡に影響するのは、心臓や肺の血管等に沈着が目立ったものです。アミロイドの沈着を原因として考えているのですが、沈着が腎硬化症を引き起こしていて、そちらも生存率の低下を招いております。

○西川委員 確か、腎臓の変化もアミロイドの沈着に関連するとおっしゃったと思うのですが。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) 腎臓がアミロイドの沈着として明らかによく標本で確認できるのは、実は糸球体にたまっている像ですが、繊維化がひどくなってしまいますと、ほとんどアミロイドが確認できないものですから、恐らくアミロイドによるものと考えているという形でお答えしています。

○西川委員 死亡例については、全例にアミロイドの沈着があったというように理解できますが、生存例だとどうでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) 生存例の中には全くないものもありますが、もう本当にこれはすぐにでも瀕死になってしまうのではないかというものもありました。どちらも認められています。

○西川委員 分かりました。したがってガイドラインを満たしているということもあって、その結果、がん原性がないということでよろしいかと思います。あとは細かい点ですが、2ページの下から10行目辺りに、「毒性病理組織学(文献4)」を「参考とした」とあります。実は、これは今年改訂されています。恐らくクライテリアは変わってないと思いますので、確認された上で今年の番を引用したほうがよろしいと思います。

○日本バイオアッセイ研究センター(梅田) ありがとうございます。新しいのが出ておりますね。

○大前座長 そのほかにいかがでしょうか。マウスは10週間ぐらい少し短い期間ですけれども、ルール上は規定を満たしているので、マウスに関してはこの結果をもって発がん性はないと判断していいのではないか、ということでよろしいですか。

 ありがとうございました。ラットに関しては発がん性があるという判断ですね。雄は明らかにあり、雌は160 ppm群で2匹ということで、統計学的には有意ではないけれども、バックグラウンド、ヒストリカルコントロールでは出てこない扁平上皮癌が2例出ているので、多分雌も「あり」と言っていいだろうという判断でよろしいですか。

 ありがとうございました。そうしたら今回の試験の結果から、アクリル酸メチルはラットに対しては「がん原性あり」ということになります。がん原性ありの場合は遺伝毒性の有無も考慮して、大臣指針の公表の必要性についても議論をすることになっておりますので、このことについて、まず事務局から説明をよろしくお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-388ページと参考資料の92ページを用いて説明します。先ほど、アクリル酸メチルについて「がん原性の証拠あり」という形で結論をいただいたところ、今後のがん原性指針策定の要否についてということです。これまでの手順について確認するために、参考資料293ページを御覧ください。真ん中辺りに「学識経験者による試験結果の評価」がありますが、その後、指針にいくかどうかの判断ということで、その下に「がんを労働者に生じるおそれのあるもの」であることの判断とありますが、おそれのある場合は指針作成、おそれのない場合は指針作成の必要なしということになります。更に、指針以外の行政的な対応ということで、おそれのある場合は、右側にリスク評価の対象物質とすることの企画検討会への提案の検討と書かれております。

 実は、アクリル酸メチルについては、既にリスク評価対象物質として初期評価を行っております。初期評価の結果、リスクが高いということで詳細評価に移っているという状況ですので、今回については、リスク評価の対象物質とすることの提案の検討は要しません。したがって、指針を作成するか作成の必要なしかの判断をいただいて、必要があれば、93ページの一番下、労働者の健康障害を防止するための指針案の作成・指針の公表に向け、化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会に舞台を移すということとなるのが基本的なルートです。

 資料1-388ページに戻ります。判断の基準、考え方です。基本的な考え方のただし書きです。当該物質に変異原性がなく、かつ、試験の高用量のみで腫瘍発生増加が認められた場合には、労働環境中の濃度を考慮して指針策定の要否を判断することとしている。また、発がん性はあるが、このような理由により、がん原性指針を策定しないこととなった物質については、必要に応じ、有害性情報を収集した上でリスク評価を行うこととしております。

 今回、これまでに発がん性ありと評価されたが、がん原性指針の策定を要さず、リスク評価の対象とすべきとされた物質については、酢酸イソプロピルとジフェニルアミンの2例があります。

 次に、アクリル酸メチルの場合については、ラット雌雄において腫瘍の発生増加が認められています。遺伝毒性について判断できないとしているのは、先ほど、申し上げたリスク評価の初期評価でリスク評価書を策定しており、そこでの遺伝毒性の評価に基づきます。

 遺伝毒性の評価の根拠です。in vitro試験において、細菌を用いた復帰突然変異試験においては、代謝活性化系の有無にかかわらず陰性であった。哺乳類細胞を用いた遺伝子突然変異試験においては、マウスリンフォーマTK試験では代謝活性化系非存在下で陽性であったが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いたHprt試験では陰性であった。マウスリンフォーマ細胞及びチャイニーズハムスター細胞を用いて染色体異常誘発性を検討した試験では、代謝活性化系非存在下で陽性だった。

in vivo試験においては、ddYマウスを用いた小核試験を2試験(吸入及び経口ばく露)では陰性であったが、BALB/cマウスを用いた腹腔内投与による試験では陽性であったということで、総合的に評価して、判断できないということとしております。

 なお、試験結果から得られたNOAEL(最大無毒性量)等と労働環境中の許容濃度については、以下の(1)(3)のとおりです。今回の試験から考えられる(1)発がん性に関するNOAELですが、ラットについては10 ppm、マウスについては40 ppmと考えられます。また、(2)慢性毒性に関するNOAEL等ですが、ラットについてはNOAEL10 ppm、マウスについてはNOAEL2.5 ppmと考えられます。(3)として、先ほどの資料でも申し上げた労働環境中の濃度の参考値ですが、日本産業衛生学会の許容濃度で2004年に2 ppmACGIH-TWA2 ppm、あと、SkinDSENの勧告がなされているという状況です。これを踏まえて、がん原性指針策定の要否について御検討をお願いしたいと思います。

○大前座長 先ほど、ルールブックといいますか、指針を公表するかどうかに関するルールの話と、今回の結果のNOAEL等が載っておりますが、これについて説明がありました。いかがでしょうか。

○津田委員 これは、もしGroup2Bとしたら、そういうことはなしに指針作成に移っていくわけですか。

○平川化学物質評価室長補佐 IARCGroup2Bについては現にかなりの物質が指定されていますが、それらの物質をすべて指針の対象物質とすることについては、今回の議題とは別にまた検討すべき課題と考えております。

○津田委員 このデータから言うと、前の3にあったものは入っていないのですね。その後で、新しくがん原性がはっきりしたのが出てきたので、もしこれを評価すれば確実に2Bになると思います。これをなるべく早く論文にして出されることをお勧めします。

○大前座長 このラットの発がん性の10 ppmは、40 ppm1匹出ていると、その1匹出ているというのは、恐らく、これはLOAELと見られてNOAEL10 ppmとされたと思います。マウスはマックスで40 ppm出ていないので40 ppmと、それから慢性毒性は、今回議論になっておりませんが10 ppm2.5 ppmで、許容濃度がACGIH2 ppmですので、第2評価値が2 ppmということで、初期評価でばく露評価をやって詳細評価に移ったということは、2 ppmを超えている職場があったということになろうかと思います。

 したがって、結構、10 ppm2 ppm2.5 ppmという数字から見ると、低くないレベルのばく露になっているというのが現状であるという判断だと思います。そういうことを勘案して、93ページのフローを見ていただいて、がん原性があることは皆さんの同意を得ました。その後、法第28条第3項第2項の判断で、がんを労働者に生じるおそれのあるものと我々が判断するか、あるいはしないのかということです。これは今の数字、実際のばく露評価の数字、詳細評価もしたという意味で、ばく露評価の数字を見て、これをおそれがある場合と判断してよろしいでしょうか。

 決して、動物実験は高濃度でやられているわけではなくて、実際のばく露も比較的発がんを持っている濃度に近いところであるということで、指針の作成の方向ということでよろしいですか。本物質については、労働者に生ずるおそれのあるものと認められますので、大臣の指針を公表する必要があると判断するということでよろしいですか。事務局は指針に向けて準備をしていただきたいと思います。お願いいたします。今日の議題の第1番目は以上です。

 議題の第2番目ですが、2週間前に行われたばく露実態調査対象物質の評価値に関して、幾つか意見があり、修正の必要があるということでした。今日は、その修正が出てきておりますので、先生方に確認していただきたいということですので、よろしくお願いいたします。事務局から説明をお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、713日に開催された第1回有害性評価小検討会において御意見いただいた内容を踏まえて、資料1-11-5について修正を行いました。この修正の内容を基にして、今後リスク評価書の案を作成していくということですので、まず、こちらの内容について中身を御確認いただいた上で、この内容でよろしければ、この内容を踏まえてリスク評価書の作成に向けていきたいというところです。

 それでは、資料1-11-5の順に主に修正点を説明します。資料1-1です。まず、重視すべき有害性の発がん性以外の所のNOAELのところです。NOAELに発生毒性を入れるようにという意見がありましたので、発生毒性という表記を追加しております。

 次に、上から2つ目、一次評価値なしの表記です。ここの表記として「発がん性を検討されたが、結論が得られておらず、遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん1×104 レベルに相当するばく露濃度が設定できないため」といたしました。

 資料1-2です。ここについては2か所、許容濃度等というところと評価値()についての修正を行っております。許容濃度等のところです。ラットへのジルコニウム長期投与で発がん率に影響がなかったことからの上限について、二塩化酸化ジルコニウムであるか確認することということでした。確認したところ、二塩化酸化ジルコニウムに係るものではなかったということですので、発がん性の表記についても、対象となる物が違うということで、1の発がん性についての表記は変えず、許容濃度等のところの表現の追加をいたしました。

 次に、評価値()です。根拠とする文献が古いという話が理由としてありましたが、ACGIHの表現、二次評価値のほうにACGIHが勧告している許容濃度を二次評価値としたということで、これを根拠としているということもありますので、理由の書き方については、「発がん性を示すとする情報がなく、遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん1×104 レベルに相当するばく露濃度が設定できないため」としたく、御確認をお願いいたします。

 資料1-3です。ここの修正箇所は、二次評価値の修正です。ACGIHの勧告が、より新しい勧告ということも踏まえ、1 mg/m3 のところを1.5 mg/m3 としました。したがって、理由も「ACGIHが勧告している許容濃度を二次評価値とした」と修正いたしました。

 資料1-4、ピリジンです。ピリジンについては、IARCの評価結果が3から2Bへの変更が2017年に行われたとのことでしたので、重視すべき有害性の「発がん性」について、IARC2Bに相当する区分ということで、評価書上、GHSの表現を持ってくるということから、それに照らし合わせて「ヒトに対する発がん性が疑われる」とするなどの修正を行いました。

  また、閾値の下の参考欄についても、LOAELとなっている雌の125 ppmが出るように、「雄の250ppm以上及び雌の125ppm以上で肝細胞がん、雌雄の250ppm以上で肝芽腫の発生率が有意に増加した」と修正しております。また、反復投与毒性に関するデータのところ、ヒト反復投与毒性に関するデータと修正しました。最後に、評価値()のところですが、理由の表現の整合化を図り、「米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が勧告している許容濃度を二次評価値」としました。

 資料1-5です。資料1-5については事前に委員の方々にお送りしました資料からも、若干修正いたしました。発がん性以外のところ、NOAEL=300 ppmと書いていたところ、NOAEL(母体毒性)=300 ppmと修正しました。

 左下、反復投与毒性に関する動物試験データです。NOAELとなっているところは、LOAELであるという指摘がありましたので、本日の資料ではNOAELからLOAELと追加修正をしております。

 評価値()です。一次評価値なしの理由ですが、「発がん性を示すとする情報がなく、遺伝毒性が判断できない場合で、生涯過剰発がん1×104 レベルに相当するばく露濃度が設定できないため」ということとしております。よろしくお願いいたします。

○大前座長 2週間の議論を少し思い出していただいて、今、事務局で修正した説明を確認していただき、今の5物質について、どの物質でも結構ですので何かございますか。

○津田委員 先回、見落としていたのですが、金属ニッケルの場合、IARCで見るとニッケルコンパウンドがG1になっています。要するに2BでなくてG1のクラス分けになっています。

○大前座長 IARC1ですか。

○津田委員 そうです。

○穴井化学物質評価室長 ニッケルの化合物は確かに1になっているのですが、金属そのものは2Bではないでしょうか。

○津田委員 金属そのものはそうです。ニッケル化合物ですね。それからニッケルの製錬工程です。それはG1です。

○大前座長 これは、ニッケル金属や合金なので。

○津田委員 どう違いますか。実際、事業場として。

○大前座長 例えば、ステンレスなどは金属なのです。

○津田委員 はい。

○大前座長 ステンレスを作る所とか、ステンレス合金を加工する所とかでは、ニッケルメタルの合金ですけれど。

○津田委員 合金を作るときに、どうしたとしてもニッケルを溶かすわけでしょう。

○大前座長 メタルを溶かす分にはメタルです。

○津田委員 私は詳しいことは分かりませんが、ニッケルの製錬がGroup1で、ニッケルの金属がGroup2というのは、製造過程からいって分かりにくいのです。

○大前座長 製錬というのは、鉱石から金属を作る過程です。ニッケル製錬過程です。そこで何とか法という、すみません、今は覚えていませんが、ニッケルカルボニルを経由してニッケル金属を作ったという、それがニッケル製錬ということだと思います。それと出来上がった金属。

○津田委員 金属そのものですね。

○大前座長 そのもの。

○津田委員 溶けた状態を言わない。

○大前座長 いいえ、溶けた状態は金属です。溶けた状態は金属そのものです。

○津田委員 そうすると、ニッケル製錬ではニッケルの金属の蒸気はない。

○大前座長 蒸気があるかないか分かりませんが、ニッケル製錬というのは、鉱石からニッケル金属を作る過程をニッケル製錬と呼びますから、多分、IARCもそういう意味だと思います。恐らく、もとのニッケル製錬をやっている、確かに鉱石から金属ニッケルを作るところでは、肺がんがたくさん出たと、それは今、先生がおっしゃったようにニッケル製錬の一因です。

○津田委員 はい。

○大前座長 今回の場合は、出来上がった金属を、例えば、ステンレスとして使ったり、いろいろな合金を作りますが、それに関してということですね。それは、今、先生がおっしゃったニッケルメタルを、多分、2Bでしたか3でしたか、IARCはどうでしたか。

○津田委員 2Bです。

○清水委員 製錬の場合には、いろいろな不純物が入っているので、ニッケルそのものかどうかは分からないのです。

○津田委員 そういうことですか。

○大前座長 鉱石の中にヒ素も入っていますし、それから多分硫黄が入っているので亜硫酸ガスがたくさん出てきますので、いろいろなよく分からないものがたくさん出てきます。

○津田委員 ニッケル製錬作業というものですね。

○__ そうです、はい。

○大前座長 そのほか修正されたところ、あるいは、今日、気が付いたところでももちろん結構ですが、いかがでしょうか。よろしいですか。

○西川委員 資料1-587ページです。評価値()です。「発がん性を示すとする情報がなく」ですが、これはもっと簡単に、発がん性に関する情報がなくではいけないのですか。

○大前座長 ここは、ほかの物質でも同じような表現をしているので、統一で、その形、発がん性の情報がなくというシンプルにするかということでいかがですか。発がん性を示す情報がないということは、発がん性の情報が。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-21-5は、表現を同じにして。

○大前座長 どちらかに決まれば、統一すると思うのです。

○平川化学物質評価室長補佐 こちらが、「発がん性に関する情報がなく」でよろしいでしょうか。

○大前座長 それがいいですかね。

○宮川委員 今のがよろしいかと思います。というのは、バイオアッセイ研究センターの報告書を見ると、示すと示唆するとを使い分けているのです。 clear evidence some evidence で示すと示唆すると使い分けています。そうすると、そのうちのどちらかに該当するものはないと言っていると全体で見られてしまうと少しおかしいと思いますので、今の「情報はない」とするほうがよろしいような気がします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-21-5については、一次評価値の理由の書き方として、「発がん性に関する情報がなく」といずれも合わせるということでよろしいですか。

○大前座長 よろしいですか。

(意見なし)

○大前座長 では、示すという言葉を使わないほうがいいですね。

○津田委員 もう1件、Group2Bの日本語訳が疑われると書いてありますが、やはり、可能性があると。

○平川化学物質評価室長補佐 リスク評価に用いる有害性評価書における発がん性評価の記載に当たっては、IARCの表現でなくGHSの表現に合わせておりますので、このような書き方となります。

○津田委員 それはIARCだけではなくて、全体の意味ということですね。

○平川化学物質評価室長補佐 そうです。

○津田委員 分かりました。IARCの場合は、Group2Bが疑われるという言葉が入っていないので、間違いのないようにお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。

○西川委員 資料1-183ページです。これは評価値()の所で、「発がん性を検討されたが、結論が得られておらず」と。要するに、発がん性に関する結論が得られていないということだと思います。そうすると、つながりがあまりよろしくないのかと。

○大前座長 先回、Group3は発がん性が検討されているのだということを先生がおっしゃったので、それでこういう表現にされたと変えたと思うのですが。

○西川委員 例えば、発がん性について結論が得られておらずみたいな表現はいかがでしょうか。

○津田委員 同じことだと思います。要するに、発がん性がないという表現ではないということです。

○大前座長 いずれデータが出てくれば上がる可能性があるということです。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-1については、発がん性について結論が得られておらずと表現を直すということでよろしいでしょうか。

○大前座長 ありがとうございました。

○平川化学物質評価室長補佐 今後、リスク評価検討会に向けて今回の議論を踏まえて案をまとめることといたします。

○大前座長 その他になければ、今日の議題2は終わりますがよろしいですか。ありがとうございました。

 あと、残っている議題ですが、中期発がん性試験結果の報告について、事務局から説明をお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の実施状況を報告します。平成28年度においては、6物質の試験を行い、この評価について発がん性評価ワーキンググループで評価を行っていただきましたところ、いずれも陰性という結果でした。

 今後の予定ですが、リスク評価検討会(合同)の開催については、改めて日程調整をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○大前座長 中期発がんは20物質ですか。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。

○大前座長 実施して、陽性が1つという状況です。これは議論はせず、単に実施の状況の報告です。何か先生方から御意見はありますか。それでは、今回、予定している議題は以上です。事務局から特になければ、化学物質のリスク評価検討会の「第2回有害性評価小検討会」を終了します。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室(内線5511)

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