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2017年8月1日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成29年8月1日(火)17:00~


○場所

新橋8E会議室


○出席者

出席委員(15名)五十音順

赤 羽 悟 美、  石 川 欽 也、 今 井 輝 子、 大 賀 正 一、
岡   淳一郎、○奥 田 晴 宏、 金 子 明 寛、 川 上 純 一、
神 田 敏 子、  杉       薫、 鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、
増 井    徹、◎松 井    陽、 森    保 道
(注)◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名

欠席委員(6名)

磯 部 光 章、 大 森 哲 郎、 佐 藤 雄一郎、 柴 田 大 朗、 
平 石 秀 幸、 山 田 清 文

行政機関出席者

宮 本 真 司 (医薬・生活衛生局長)
森    和 彦 (大臣官房審議官)
山  本    史  (医薬品審査管理課長)
佐 藤 大 作 (医薬安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
宇 津    忍  (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
林    憲 一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

 

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日は足元の悪い中、またお忙しい中を御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日の委員の出欠ですが、磯部委員、大森委員、佐藤委員、柴田委員、平石委員、山田委員より欠席との御連絡を頂いております。また、増井委員、鈴木委員についてはまだ到着しておりませんが、御出席の予定と伺っております。現在のところ、当部会委員数21名のうち、13名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。本日は、独立行政法人国立病院機構新潟病院院長の中島孝先生に参考人としてお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 事務局に人事異動がありましたので御紹介させていただきます。7月11日付けで、厚生労働省医薬・生活衛生局長に新たに宮本が着任しておりますので、一言御挨拶させていただきます。

○医薬・生活衛生局長 ただいま事務局から紹介のありました、7月11日付けで医薬・生活衛生局長を拝命いたしました宮本です。松井部会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、本日は大変お忙しい中、また途中から雨が降ってお足元の悪い中御出席を頂きまして誠にありがとうございます。

 新薬の承認についても、またそれぞれの専門分野において最新の科学的知見、あるいは豊かな御経験を基に、厳正な御審査を頂いておりますことにつきまして深く感謝申し上げます。引き続き今後とも、先生方の御指導、御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。簡単ではありますが、着任の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○医薬品審査管理課長 他に事務局の人事異動として、私は医薬品審査管理課長として着任いたしました山本です。どうぞよろしくお願いいたします。

 部会を開始する前に、事務局から1点御報告させていただきたい事項があります。本日の当日配布資料16という一枚紙の資料があります。右肩に6月29日付けと書いてあるほうが表ですので、まず表を御覧ください。これについては薬事分科会の委員、臨時委員、専門委員については薬事分科会規程第11条に基づき、「在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」とされております。今般、薬事分科会の部会に所属されておりました委員について、医療機器製造販売業の許可を取得している企業の役員に就任していたことが判明したため、当該委員におかれましては辞任いただいた上で、6月29日に本事案を公表し、同日開催した薬事分科会に御報告させていただきました。

 裏面を御覧ください。今御説明いたしました事案を踏まえ、薬事分科会全ての委員を対象に、改めて薬事分科会規程の適合状況を確認させていただきました。その結果、新たに臨時委員2名が薬事に関する企業から定期的に報酬を得る顧問に就任していたことが判明したため、加えて当該委員2名には辞任いただいた上で、7月31日に本事案を公表しております。なお、本部会においては、規程に抵触する委員はいらっしゃらなかったことを御報告いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を確認作業への御協力を頂きましたことを感謝申し上げます。

 今後の対応としては、同様の事案の再発を防止するために、薬事分科会の委員等就任時及び会議開催時に、薬事分科会規程や薬事分科会審議参加規程の適合状況を書面により御署名を頂く形で御申告いただく方向で検討をさせていただいております。具体的な方法等については、今後事務局にて検討の上、改めて御連絡を申し上げますので、何とぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 例えば、「薬事に関する企業」というのはどのような企業が該当するのか、あるいは寄附金・契約金等の申告に関する詳細なルールなど、規程の内容が分かりにくい点もあろうかと思われますので、そういう点も含め、重要事項については事務局より改めて分かりやすく御説明や、注意喚起をさせていただき、薬事分科会の適切な運営に引き続き努めてまいりたいと考えております。委員の先生方には御負担をおかけすることになりますが、この機会に改めて規程を御認識いただきますとともに、規程の遵守に御協力を頂きますよう何とぞよろしくお願い申し上げます。

 事務局からの説明は以上です。以降の議事進行は松井部会長にお願いいたします。

○松井部会長 早速本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告してください。

○事務局 配布資料の確認を順番にさせていただきます。議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1から資料12をあらかじめお送りしております。この他に資料13「審議品目の薬事分科会における取扱い等の()」、資料14「専門委員リスト」、資料15「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料15について御報告いたします。

 資料15の1ページを御覧ください。リュープリンSR注射用キット11.25mgです。本品目は球脊髄性筋萎縮症の進行抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 2ページを御覧ください。献血ノンスロン500注射用及び同1,500注射用です。本品目はアンチトロンビンIII低下を伴う門脈血栓症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページを御覧ください。レボレード錠12.5mg及び同錠25mgです。本品目は再生不良性貧血を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページを御覧ください。ビザミル静注です。本品目はアルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患者の脳内アミロイドベータプラークの可視化を予定効能・効果としており、同様の臨床的位置付けを有するものとして、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページを御覧ください。アトーゼット配合錠LD及び同配合錠HDです。本品目は高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページを御覧ください。ジメチルスルホキシドです。本品目は間質性膀胱炎を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 7ページを御覧ください。サインバルタカプセル20mg及び同カプセル30mgです。本品目はうつ病・うつ状態を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○松井部会長 ただいまの事務局からの説明に関し、特段の御質疑はありませんか。ないようでしたら、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆さんの御了解を頂いたことといたします。委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については次のとおりです。議題1、リュープリン、退室委員は石川委員、議決には参加しない委員は武田委員。議題2、ノンスロン、退室委員、議決には参加しない委員ともになし。議題3、レボレード、退室委員はなし、議決には参加しない委員は杉委員。議題4、ビザミル、退室委員はなし、議決には参加しない委員は杉委員。議題6、アトーゼット、退室委員はなし、議決には参加しない委員は杉委員、武田委員。議題7、ジメチルスロホキシド、退室委員はなし、議決には参加しない委員は武田委員。議題8、サインバルタ、退室委員はなし、議決には参加しない委員は杉委員、武田委員。委員からの申出状況については以上です。

○松井部会長 ただいまの事務局からの説明に対し、何か御意見等はありますか。よろしければ、委員の皆さんに御確認を頂いたものとして議題に入ります。本日は、審議事項8議題、報告事項4議題となっております。審議事項、議題1に移ります。なお、石川委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議題1の審議の間は別室で御待機いただきます。

                                 ( 石川委員退室)

○松井部会長 議題1について、機構から概要の説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品リュープリンSR注射用キット11.25mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 球脊髄性筋萎縮症(以下「SBMA」と略す)は、成人男性のみに発症する遺伝性の下位運動ニューロン疾患であり、X染色体上のアンドロゲン受容体遺伝子の第1エクソン内のシトシン、アデニン、グアニンの繰り返し配列の異常延長が原因となって、変異アンドロゲン受容体が神経細胞の核内に蓄積することで神経細胞の細胞死を生じ、四肢近位部の筋力低下・筋萎縮と球麻痺炎を生じる神経変性疾患です。

 通常3060歳頃に筋力低下を発症し、1015年程度かけて緩徐に症状が進行し、末期には車椅子上又は寝たきりの生活となるとされており、球麻痺に起因して生じる誤嚥性肺炎を繰り返して死亡に至る場合が多いとされています。SBMAは本邦では指定難病に指定されており、平成26年度の特定疾患医療受給者証所持者数は1,223人とされております。

 本薬は、黄体形成ホルモン放出ホルモン誘導体であり、その持続的な作用に伴う逆説的抑制効果により、下垂体における黄体形成ホルモン放出ホルモン又は性腺における黄体形成ホルモンに対する反応性の低下を引き起こし、テストステロン分泌を低下させることで、変異アンドロゲン受容体の核内への移行と蓄積を抑制し、疾患進行を抑制すると考えられています。

 本邦では、本薬を有効成分とする製剤として、12週間持続型の徐放性製剤である11.25mg製剤(本剤が該当)に加え、4週間持続型製剤、24週間持続型製剤が承認されており、本剤については2002年に前立腺がん、2005年8月に閉経前乳がんの効能・効果で承認されています。

 本申請に係る臨床試験は、2006年9月から、名古屋大学大学院医学系研究科、神経内科を中心とした、医師主導治験として開始され、今般SBMAの進行抑制に対する有効性及び安全性が確認されたとして、効能・効果を追加するための承認申請が行われました。なお、本剤はSBMAを対象疾病として希少疾病用医薬品に指定されております。また、海外ではSBMAを対象とした開発は行われておりません。

 本申請の専門委員として、資料14に記載されている4名の委員を指名しております。

 臨床成績を中心に審査の内容を説明させていただきます。まず有効性ですが、審査報告書6ページの脚注3を御覧ください。SBMAの主な死因は、誤嚥性肺炎であるとされていることから、本剤の臨床試験では、嚥下機能に関連する有効性評価項目として咽頭部バリウム残留率が主要評価項目に設定されました。ただし、SBMA患者では、嚥下機能が低下しており、複数回に分けて小刻みに嚥下する特徴があることから、咽頭部バリウム残留率の評価として、初回嚥下時の残留率のみを評価する方式である「旧JASMITT方式(50%以上を含む)」、このうち初回嚥下時の残留率が50%未満である被験者のみを解析対象とする「旧JASMITT方式(50%以上を除く)」。最後に、複数回の小刻みな一連の嚥下全体を評価する「新JASMITT方式」の三つの測定方法が検討されました。

 最終的に開発計画全体を通して、治験実施者が蓄積したデータ及びそれに基づく考察内容、嚥下機能評価に関する国際的な知見、他の専門家の意見等を踏まえ、これら三つの方法の中では、「旧JASMITT方式(50%以上を含む)」による評価が最も適切であると判断されております。

 続いて審査報告書6ページの表1及び表2を御覧ください。SBMA患者を対象として国内第III相試験が実施され、主要評価項目に設定されたFASにおける旧JASMITT方式(50%以上を除く)及び新JASMITT方式による投与終了時の咽頭部バリウム残留率のベースラインからの変化量について、明確な有効性は示されませんでした。

 一方で、審査報告書7ページの表3を御覧ください。国内第III相試験の試験開始時に主要評価項目に設定されていたFASにおける旧JASMITT方式(50%以上を含む)による投与終了時の咽頭部バリウム残留率のベースラインからの変化量については、事後的に実施した探索的な検討結果ではあるものの、本剤群とプラセボ群の間に統計学的な有意差が認められました。

 また、審査報告書8ページの表4を御覧ください。国内第III相試験の結果の再現性等を確認することを目的として実施された第II相試験では、試験の実施可能性の観点から、十分な検出力を担保することができなかったため、本剤群とプラセボ群との間に統計学的な有意差は認められませんでしたが、旧JASMITT方式(50%以上を含む)による咽頭部バリウム残留率において、国内第III相試験と同様に本剤群で疾患進行の抑制傾向が認められております。

 さらに審査報告書16ページの表6を御覧ください。本剤投与により、期待される変異アンドロゲン受容体の蓄積抑制については、臨床試験で生検した陰嚢皮膚において、抗ポリグルタミン抗体陽性細胞数の割合が減少したことが示されており、また、別途実施した臨床研究の剖検例における橋底部及び脊髄前角ニューロンの病理所見においても同様の結果が確認されています。以上の結果を踏まえ、本剤のSBMAの進行抑制に対する一定の有効性は期待できると判断いたしました。

 なお、国内第III相試験における旧JASMITT方式(50%以上を含む)による咽頭部バリウム残留率の解析は事後的に実施されたものであり、本剤の有効性が検証されたとは言えないこと、臨床試験では長期的な有効性について、十分に検討できていないことから、本剤の製造販売後調査では、本剤の短期的、長期的な有効性について詳細な検討が必要と考えております。

 審査報告書28ページの12行目、「長期予後を含めた本剤の有効性に関して」で始まる段落を御覧ください。本剤の咽頭部バリウム残留率に対する有効性については、治験実施者を中心として可能な限り体系的な検討を行い臨床試験成績と比較検討することで、本剤の短期的な有効性について検討する計画とされております。また、本剤の長期的な有効性については、過去に名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科を中心に実施された、自然歴研究が2報報告されていることから、現時点では当該自然歴研究等の適切な外部データと比較検討することにより考察する計画とされております。

 次に安全性です。審査報告書19ページの表9を御覧ください。本剤の臨床試験では、鼻咽頭炎、ほてり、注射部位硬結等の有害事象が認められましたが、いずれも本薬でよく知られている有害事象であり、SBMAに特有なリスクは示唆されませんでした。

 なお審査報告書29ページの「1.2、本剤による性機能への影響について」の項を御覧ください。SBMAは、30代で発症する場合があり、進行が極めて緩徐な疾患であるため、患者が挙児を希望する場合等には本剤による治療を選択しない可能性が十分に想定されることを踏まえ、本剤による性機能障害について、患者に十分に説明するよう、添付文書に注意喚起を追加しております。

 以上の審査を踏まえ、SBMAが希少かつ重篤な疾患であり、現時点で有効な治療法が存在しないこと及び国内で追加臨床試験を実施することが事実上困難であることも考慮し、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年と設定することが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○事務局 本議題では、本剤の臨床的位置付け等について御説明いただくため、中島参考人にお越しいただいております。

○松井部会長 それでは、中島参考人から、本議題について御発言をお願いいたします。

○中島参考人 国立病院機構新潟病院病院長の中島孝です。専門は神経内科です。34年にわたり難病診療や、この疾患領域での診療を行ってきました。最近もこの疾患領域において、医療機器の医師主導治験を行った実績もあります。まず、本剤の医療上の必要性、臨床的位置付けを参考人として申し上げます。

 本疾患(SBMA)は、成人男性に発症する下位運動ニューロン疾患で、四肢近位部の筋力低下・筋萎縮等と球麻痺を主症状とします。緩徐進行性の経過をたどり、末期に患者は車椅子上又は寝たきりの生活を余儀なくされるばかりでなく、誤嚥性肺炎を繰り返し、それが死因となり、死亡することが多い疾患です。

 本疾患は、慢性進行性で経過が長いため、少しでも病気の進行を抑制する治療法の開発研究を、患者・家族、医療従事者など全ての関係者が渇望している状態です。現在SBMAに対して有効な治療薬は存在せず、症状の進行に応じて、運動療法、誤嚥予防、感染予防などの生活指導を含む、包括的リハビリテーションを行うとともに、耐糖能異常や、不整脈治療などの随伴症状に対する対症療法を実施しているのみです。本剤が承認された場合には、本疾患のSBMAの病的メカニズムを直接抑制する初めての画期的な疾患修飾薬となると言え、正に我々が渇望していた、臨床上必要な治療薬と言えます。

 次に、本剤の有効性について参考人の見解を申し上げます。本疾患(SBMA)のモデル動物において、精巣を外科的に切除する去勢手術により、疾患進行を抑制できることが分かり、これを化学的に去勢状態にする薬剤として、本剤の開発が開始されたわけです。本剤は、下垂体に作用し、テストステロン分泌を低下させることで、薬物療法的に去勢状態にすることが可能であり、SBMAの病因と考えられている、神経細胞への変異アンドロゲン受容体の蓄積を抑制することで効果を示すと考えられます。

 今回、臨床試験の本剤投与群で陰嚢皮膚における変異アンドロゲン受容体の蓄積に対応する抗ポリグルタミン抗体陽性細胞の割合が減少していることが示されました。また、名古屋大学神経内科が実施した臨床研究の剖検例で、本剤投与により、脊髄前角細胞における抗ポルグリタミン抗体陽性細胞の割合の低下が認められています。これらのデータ及び本剤の作用機序の観点から、本剤投与により、ヒトで変異アンドロゲン受容体の蓄積を抑制し、臨床症状の進行を抑制することが期待できると考えられます。

 SBMAは、緩徐に進行する希少神経変性疾患であり、運動機能に対する有効性を、臨床試験において容易に評価することは困難ですが、作用機序に基づく変異アンドロゲン受容体の蓄積抑制が、臨床試験により認められたこと、SBMAの主要な症状である嚥下機能低下に対する有効性の検証は十分とは言えないものの、一定の有効性は認められていることから、本剤の有効性は臨床的に期待できると考えます。以上です。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。中島先生に対する御質問はありませんか。武田委員お願いします。

○武田委員 専門が泌尿器科の武田です。2002年にリュープリンが前立腺がんに対する保険適用になって、我々は長く使用しております。血中のアンドロゲンというのは、必ずしも精巣だけではなくて、副腎由来のものがあるので、この薬を使っても10%程度のアンドロゲンは血中に残ってしまいます。それを完全に遮断するためには、男性ホルモン受容体遮断薬を併用するというのが通常です。今回の臨床試験のデータは有効性が素晴らしいというわけではないので、恐らくそういうものを併用したほうが、疾患の発症予防には有効なのではないかと思うのです。その辺はこれからの問題ですが、いかがでしょうか。

○松井部会長 中島先生からお答えいただけますか。

○中島参考人 それについては私よりも、機構の審査の方の回答のほうがよろしいかと思います。

○松井部会長 機構はいかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 現時点で、このリュープリンと男性ホルモン受容体遮断薬と併用した臨床試験や臨床研究のデータは世界的には報告されておりません。ですから、併用したときの有効性及び安全性は明らかではありませんが、ご指摘の点については今後の検討課題かと考えております。

○松井部会長 よろしいでしょうか。

○武田委員 はい。

○松井部会長 他に御質疑はありませんか。神田委員お願いします。

○神田委員 現在、有効な治療法が存在しないということで、患者さんからの期待もかなり大きいものがあるだろうと思います。そうした中で、有効性評価の所に書いてあるのですけれども、臨床成績について患者、それから医療現場に十分に情報提供をする必要がある。そういうことを前提にしながら、現時点で医療現場に提供することは可能であろうというようなことが書かれています。

 医療現場に十分情報提供がなされるということは想像が付くのですが、その期待が大きい患者さんの所への情報提供というのが、一体どのぐらいできるのかということがちょっと気になりました。してくださるということなので大丈夫だろうと思うのです。リスク管理計画の所にも、患者向け資材の提供というのが、追加のリスク最小化活動という所に載っています。具体的に臨床成績についての情報提供を患者さんにするときに、どのぐらい具体的に、どんな資材ができて進められるのかなというところの説明は難しいかもしれませんけれども、そんな感触、あるいは、この資料の中にその例でも提供されていれば教えてください。

○松井部会長 重要な問題だと思います。機構からいかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 お手元に資材を配布させていただいています。こちらの「リュープリンSRによる治療を受けられるSBMA患者さんへ」という資材を御確認いただけますか。先ほど御質問を頂いたとおり、医薬品リスク管理計画の中で、このような資材を配布することとしております。内容としては、疾患自体の説明や現時点でどのような治療がなされているのか、本剤投与時に注意していただきたい内容について説明が記載されております。

 現時点での案ではあるのですが、今後もう少し検討させていただいて、臨床試験成績と、本剤のリスクについて、もう少し分かりやすく説明させていただくような資材とさせていただく予定です。

○松井部会長 神田委員いかがですか。

○神田委員 すみませんでした、これが提供されているのに気が付きませんでしたが、こういう形でと、審査報告書の中には、その臨床成績についてもきちっと伝えるのだということになっております。専門用語だけでは大変だと思いますので、そういうことも含めて伝わるようにしていただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘をありがとうございました。

○松井部会長 鈴木委員どうぞ。

○鈴木委員 本剤の作用機序から見て、有意差はなかったが、ある程度有効とのことです。それなら、海外で使われてもよさそうですけれども、その辺の状況はどうなのでしょうか。

○松井部会長 鈴木委員の質問に対していかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の海外での状況なのですが、まず海外で、現時点で本剤のSBMAに対する効能を追加することを目的として臨床試験は行われておりません。一方で、2002年辺りにオハイオ州立大学が独自に、本剤とテストステロンを使用した臨床研究などは実施してはいるのですけれども、我々のほうで詳細を把握できておりません。

○鈴木委員 海外で、リュープリンは幅広く使われていながら、どの国でもこの効能追加が行われていない、認められていないということは、効果がそれほど強くないということで、海外ではそこがネックになっている。要するに余り効かないので、費用対効果がよくないために認められていない可能性があるのではないかと思うのですが、いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 このリュープリンなのですが、武田薬品工業が合成して開発している医薬品です。少なくとも武田薬品工業では、海外においてもSBMAを対象とした臨床試験というのは実施しておりませんので、有効性については海外でも明らかになったデータというのは存在しないと考えています。確かに臨床試験で得られているエビデンスに関しては、有効性が検証されたというものではありません。嚥下機能に関して一定の有効性は期待できると判断しておりますが、明確なものではないと考えております。

 一方でこのSBMAの患者の病態を考えたときに、疾患が10年程度かけてゆっくり進行していく疾患ですので、臨床試験の中で実施可能な評価として、今回の嚥下機能というのが適切であったと考えております。現時点で検討可能な範囲で有効性に関しては検討されていると考えております。

○鈴木委員 参考人にお聞きしたほうがいいと思うのですけれども、作用機序から見たら、海外で検討されてもよさそうな気がするのですけれども、なぜ日本だけで取り上げられたのか、その事情を教えていただけますか。

○松井部会長 中島参考人お願いいたします。

○中島参考人 参考人として申し上げます。この疾患領域と、この研究領域は日本が一番進んでいる領域で、リュープリンの利用も含めてそうです。それから、この病態機序ですが、変異アンドロゲン受容体の蓄積を減らせばおそらく効くだろうということで、このリュープリンを投与するこの臨床試験において、陰嚢のポリグルタミン抗体陽性細胞の割合が減少しているので、明らかにメカニズムとして効いていることが分かっています。

 そういうことから考えると、病態的には抑制できているわけです。臨床症状の改善効果を証明するのは非常にきつかったのですけれども、私の目からこのデータを見ると、検証試験としてのICH-E9の統計学的原則から言うと、後解析で有意差があったということがちょっと気になるところです。臨床的な医学から考えると、これでも十分有意差があると思っています。生物学的なメカニズムからは、明らかにバイオマーカーとして、抗ポリグルタミン抗体陽性細胞が減少していることが示されており、それと、一定の臨床効果があることから、日本で先駆的に研究開発に成功した治療法だと考えております。

○鈴木委員 日本で使われるぐらいの有効性でよいのでしたら、海外にも同じ患者さんがいるはずですから、海外での使用の検討も進めるべきではないかと思います。薬事承認から保険適用に向けて、日本だけが特殊でハードルが低いので、その隙間を突いてきたような気がします。難病だということで事情は分かるのですけれども、日本だけで話が進められてきたことは、議論としては不十分ではないのかと思います。

○松井部会長 大賀委員どうぞ。

○大賀委員 今の件に関して、例えば海外の患者さんと、日本の患者さんで病態に関する解析結果が違うとか、そういう情報はあるのでしょうか。

○松井部会長 中島参考人お願いします。

○中島参考人 参考人から申し上げます。基本的に本疾患は遺伝子診断によって、疾患単位として同定されるもので、診断基準も、病態も、民族性などはありません。ですから、臨床試験が海外で行われていないのは、ただ日本が先駆的に行っているからです。今回、これで科学的な論文が出され、承認手続を行っていくという過程で、海外もまた追従していくものと考えております。以上です。

○松井部会長 他にはいかがですか。武田委員どうぞ。

○武田委員 このお薬は、LH-RHのアゴニストですので、投与初期に一過性にテストステロンの分泌が上がります。サージと言います。前立腺患者で転移がある場合に、そのために一過性に症状が悪化することがあるので、その辺は注意していかなければいけないのです。例えば、ちょっと進行している方にこれを投与して、一過性にテストステロンが増えて悪化するので注意が必要とか、そのような添付文書はあるのでしょうか。

○松井部会長 それは、今回の。

○武田委員 今回の薬物を承認する場合に、そういう添付文書の内容がないと、患者さんへのウォーニングも必要かと思います。

○松井部会長 機構はいかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘を頂いた点については、審査の中で臨床試験成績を基に検討させていただきました。臨床試験成績の中で、投与初期に疾患進行が進んだ又は症状が急激に悪化したというデータは認められませんでした。

 また、前立腺がん患者等では、もともとアンドロゲン、テストステロン濃度が高くなっていて、それがより上昇することで症状が悪化する可能性があるのですが、今回のSBMA患者に関しては、テストステロンの濃度に関してはもともと正常な患者です。その正常なテストステロンが、アンドロゲン受容体に結合することで徐々に核内に蓄積していくという病態メカニズムですので、必ずしも前立腺がん等と同様の有害な事象は起こらないのではないかと考えております。

○武田委員 それは絶対におかしいです。前立腺がん患者で、アンドロゲンが亢進していることは一般的にはないと思います。投与初期には、どうしてもテストステロン濃度は急激に上昇しますから、何らかの警告文は書いておいたほうがいいのではないかと思います。

○松井部会長 この点について、委員から何か御意見はありますか。それでは機構から。

○医薬品医療機器総合機構 現時点で、添付文書案に前立腺がんと同様の、投与初期の症状悪化に関する注意喚起は記載させていただいておりませんが、頂いた御意見を踏まえて、記載することを検討させていただきます。

○松井部会長 よろしくお願いします。他に御質疑はありますか。よろしければ議決に入ります。なお、武田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただきます。それでは、本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議はないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。中島参考人、本日はどうもありがとうございました。

                                 ( 中島参考人退席)

○松井部会長 別室で待機されている石川委員をお呼びください。

                                 ( 石川委員入室)

○松井部会長 議題2に移ります。機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2医薬品献血ノンスロン500注射用、同1,500注射用の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 門脈血栓症は、肝硬変による門脈圧亢進等の様々な疾患を背景に、肝内門脈から門脈本幹の部分とこれに連続した脾静脈及び上腸間膜静脈に血栓が生じる疾患です。門脈血栓症の薬物治療においては、ヘパリン製剤やビタミンK拮抗薬等による抗凝固療法や血栓溶解療法が用いられています。一方、門脈血栓症の患者は肝硬変等の重篤な肝機能障害を合併することが多く、重篤な肝機能障害のある場合は、血小板や凝固因子減少による出血傾向があることから、重篤な肝機能障害のある患者へのヘパリン製剤やビタミンK拮抗薬等の投与は原則禁忌とされています。

 献血ノンスロンは乾燥濃縮人アンチトロンビンIIIを有効成分とする製剤です。肝硬変等の肝疾患によりアンチトロンビンIIIの産生が低下すると、血液凝固線溶系のインバランスにより、凝固亢進状態となり門脈血栓を生じると考えられますが、本剤を投与することにより凝固亢進状態は抑制され、線溶系の二次的な作用により門脈血栓が消失すると考えられ、開発に至りました。

 なお、献血ノンスロン500注射用、同1,500注射用は、本邦において「先天性アンチトロンビンIII欠乏に基づく血栓形成傾向」、「アンチトロンビンIII低下を伴う汎発性血管内凝固症候群」の効能・効果で承認されています。

 また、2017年7月現在、本剤を含むアンチトロンビンIII製剤が門脈血栓症を適応として承認されている国はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料14に示す専門委員を指名しています。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 まず、有効性について、審査報告書5ページの表3を御覧ください。アンチトロンビンIII低下を伴う門脈血栓症患者を「対象とした国内第III相試験において、主用評価項目である対象とする血栓が消失又は縮小した症例の割合(最終投与後の造影CTによる評価)」のプラセボ群に対する本剤群の有意な差が検証されました。以上より、機構は本剤の有効性は示されたと考えました。

 続いて、安全性について報告書8ページの上から1~14行目を御覧ください。国内第III相試験において、プラセボ群に比べて本薬群で特定の有害事象が多い傾向や、重篤度が高度の有害事象が多い傾向は特段認められませんでした。また、出血関連の有害事象について報告書8ページの表7及び報告書9ページの表8を御覧ください。表7より、国内第III相試験では、出血関連の有害事象について特段問題となる傾向は認められませんでしたが、表8に示したように、抗凝固薬の併用の有無別での発現状況では、抗凝固薬の「併用あり」の患者で有害事象の発現割合が高い傾向が認められました。そのため、国内第III相試験で併用した症例が比較的多かったワルファリンカリウムについて、添付文書の併用注意の「抗凝固剤」の項に、ワルファリンカリウムを追記して注意喚起する必要があると考えました。

 以上の審査の結果、「アンチトロンビンIII低下を伴う門脈血栓症」を効能・効果とした本剤の有効性は示され、安全性は許容と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本申請は、新効能・新用量医薬品としての申請であることから、再審査期間は4年とすることが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。御審議、どうぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○大賀委員 門脈血栓症に対しては、アンチトロンビンIII製剤はほかにも幾つかあると思うのですが、今回初めてになるわけです。投与基準のところで、DICの場合には70%以下というのが従来からありますが、門脈血栓症の患者さんに、肝機能異常などの状況があった場合、同じように70%以下としていいのかどうかということに関しては、治験を組まれたときに、何か情報はございましたでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 今回臨床試験を実施するに当たって70%と設定した理由として、既承認効能・効果であるDICを基に設定しております。

 今回の臨床試験において門脈血栓症において70%の妥当性について確認できる知見は特段得られておりませんが、本薬の作用機序を踏まえますと、アンチトロンビンIII活性が比較的保たれている患者での本薬の投与の必要性は低いので、投与の目安として70%と考えるのが適切であろうと考えております。

○大賀委員 そうすると、表8の併用薬でワルファリンカリウムを使っているときの有害事象が多かったということは、特に関係があるとは考えていないわけですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。ワルファリンカリウムとの併用として有害事象の発現割合が高い傾向が認められたことについて、アンチトロンビンIIIの低下率の設定基準が関連しているとの情報が得られているとは考えてはいません。なお、今回の臨床試験において、ワルファリンカリウム併用例で認められた出血傾向の有害事象関連では、高度な事象はなかったものの、抗凝固薬の「併用あり」の場合に有害事象の発現割合が高い傾向が認められていること、抗凝固薬の「併用あり」の有害事象発現例ではワルファリンカリウムを併用した症例が比較的多かったことから、添付文書の併用注意の項にワルファリンカリウムを併記し注意喚起しました。本剤を抗凝固薬と併用したときの安全性については、製造販売後調査等で情報収集する予定になっています。

○松井部会長 ほかにはいかがでしょうか。特に御発言はありませんか。議決に入ろうと思いますが、よろしいですか。それでは議決に入ります。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題3に移ります。議題3について、機構から概要を御説明ください。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、医薬品レボレード錠12.5mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 再生不良性貧血の治療は、年齢、重症度、ドナーの有無及び免疫抑制療法に対する反応性等により決定されます。移植非適応でやや重症以上の再生不良性貧血患者に対しては、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンとシクロスポリンの併用療法が標準療法として用いられておりますが、有効率は3、4割程度であり、より治療効果の高い治療方法が医療現場で要望されております。また、既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者に対する治療は輸血療法が中心となりますが、輸血には感染症や血小板輸血に対する不応性等を招くリスクが伴うため、代替治療が必要とされています。

 本剤はトロンボポエチン受容体作動薬であり、造血促進作用を有しており、本邦では201010月に、「慢性特発性血小板減少性紫斑病」を効能・効果として承認されています。

 今般、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン未治療又は既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者を対象とした二つの国内第II/III相試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、当該効能・効果及び用法・用量の追加に係る医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。

 なお、本剤は2017年6月時点において、再生不良性貧血に対して欧米等30か国以上で承認されております。

 本品目の専門協議では、本日の配布資料14に示す専門委員を指名しております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性に関しては報告書9ページの上から2段落目を御覧ください。既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者対象の国内第II/III相試験の主要評価項目である「投与26週時の血液学的反応率」は47.6%であり、95%信頼区間の下限値が、あらかじめ設定された有効性判定基準である15%を上回りました。続いて報告書11ページの一番下の段落を御覧ください。抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン未治療の再生不良性貧血患者対象の国内第II/III相試験の主要評価項目である「投与26週時の奏効率」は70%であり、期待有効率60%を上回りました。以上より、機構は本剤の有効性は期待できると判断しました。

 安全性に関しては、10ページの表9を御覧ください。既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者対象の国内第II/III相試験における有害事象の発現状況を示しています。「鼻咽頭炎」、「蕁麻疹」及び「肝機能異常」が比較的よく認められたものの、ほとんどが軽度又は中等度でした。続いて、報告書12ページの表13を御覧ください。抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン未治療の再生不良性貧血患者対象の国内第II/III相試験における有害事象の発現状況を示しています。「悪心」、「頭痛」及び「便秘」等は比較的よく認められたものの、いずれも軽度又は中等度でした。以上より、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン未治療及び既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者における有害事象の発現状況に、臨床上特段問題となる傾向は認められなかったことから、機構は本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 ただし、国内臨床試験において本剤が投与された日本人患者は限られていることから、製造販売後調査において引き続き安全性及び有効性について情報収集し、検討する必要があると考えました。

 以上、機構での審査の結果、抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン未治療及び既存治療で効果不十分な再生不良性貧血患者に対する本剤の有効性は期待でき、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。

 なお、本品目は稀少疾病用医薬品であることから、本申請に係る再審査期間は10年とすることが適切と判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いします。

○今井委員 この薬は食事前後の2時間を避けて空腹時に投与するということで、多分食事の影響が非常に強い薬だと思うのですが、個人の中でも吸収率の差だとか、個体間変動等が結構大きいのかなと思うのですが、その点は大丈夫なのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の食事の影響につきましては、初回承認時に審査しておりまして、臨床試験において食事の影響が認められたことから、初回承認の効能・効果である慢性特発性血小板性紫斑病でも、今般の申請効能・効果の再性不良性貧血においても、空腹時に経口投与すると規定しました。

○今井委員 変動は大きくないのでしょうか。変動というか。

○松井部会長 AUCの。

○今井委員 はい。同じ人においても、飲んだ時間で変わると思うのですが、個人の日内変動というか、常に同じ投与量で投与して、危険度が増すようなことはないのかという意味でお尋ねしました。

○医薬品医療機器総合機構 1.8添付文書案の5ページ目の左の段落の「食事の影響(外国人データ)」を御覧ください。この「食事の影響(外国人データ)」のデータは、本剤の初回承認時に提出されたデータです。今井委員から御質問されたように、この「食事の影響(外国人データ)」を検討した試験において、同一の健康成人被験者に対し食事の前と後のそれぞれに本剤を投与した時、空腹時に比べて食後投与でAUCが59%低下、最高血中濃度(Cmax)65%低下しました。同一個体内で本剤の食事の影響について検討したところ、食事の影響が認められたことから、初回承認時の本剤の用法・用量は「食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する」となっています。

 本剤は食事の影響を受けることから、今回実施した臨床試験においても、同様に「食事の前後2時間を避けて空腹時に経口投与する」という条件で実施しました。

○松井部会長 ほかにはございますか。もしないようでしたら、議決に入ろうと思いますが、よろしいですか。なお、杉委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加は御遠慮ください。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題4及び議題5に移ります。機構から御説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品ビザミル静注の製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。

 本剤は脳内アミロイドβ(以下「Aβ)に結合するフルテメタモルを放射性フッ素(18 )で標識したもの(以下「フルテメタモル 18 F」)を有効成分としており、Aβプラークの可視化を目的としたPET検査用の放射性医薬品となります。海外では、2017年3月現在、アルツハイマー型認知症(以下、AD)が疑われる認知機能障害を有する患者における脳内Aβプラークを評価するためのPET画像検査用の放射性医薬品として、33か国において承認されております。

 本邦ではフルテメタモル 18 Fを医療機関で合成するための医療機器として、FASTlab2015年5月に製造販売承認を取得しておりますが、当該医療機器を用いた本剤生成に必要な設備を有していない医療機関においても、フルテメタモル 18 Fを用いたPET画像検査の実施を可能とするため、今般、日本メジフィジックス株式会社により、FASTlabの承認時に資料とされた臨床試験成績等に基づき、本剤の医薬品製造販売承認申請がなされました。本剤の審査に関し、専門委員として本日の資料14に記載されている委員を指名いたしました。以下、本剤の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 審査報告書の2526ページにお示しした「7.R.2臨床データパッケージについて」を御説明いたします。審査報告書26ページの上段を御覧ください。国内外の第I相試験の成績等の比較では、本剤の臨床評価に影響を与えるほどの内因性及び外因性民族的要因の差異は認められなかったこと、国際共同第II相試験成績と海外第II相試験成績の比較においても、本剤を用いたPET画像所見及び安全性は日本人と外国人で類似していたことから、海外第III相試験成績を日本人における本剤の有効性及び安全性の評価に利用することは可能と判断しております。

 続いて、有効性について御説明いたします。審査報告書19ページ、「7.3.1海外第III相試験(GE067-007試験)」の項を御覧ください。治験責任医師により、余命が約1年以内と推定された患者を対象に、本剤約185370MBqを単回静脈内投与して得たPET画像評価と死後脳の病理組織学的評価を比較した非盲検試験において、主要評価項目とされた「剖検脳の定性的病理診断を真のスタンダードとした場合のPET画像の視覚的画像読影評価の感度」の結果は、審査報告書20ページの表8のとおりでした。こちらの結果から、既存の臨床診断等ではADの診断が不確実な場合に、本剤を用いたPET画像検査はAβ蓄積があるという情報を与え、より確実なAD診断が可能となることが期待されると判断いたしました。

 次に、審査報告書21ページの「7.3.2海外第III相試験(GE067-015試験)」の項を御覧ください。

 若年健康成人を対象に、本剤約185MBqを単回静脈内投与して得たPET画像の特異度を評価する非盲検試験において、主要評価項目とされた「若年健康成人をAβ陰性(正常)と仮定し、当該仮定を真のスタンダードとした場合の本剤を用いたPET画像の視覚的読影評価の特異度」の結果は、審査報告書22ページにある表9のとおりでした。本剤を用いたPET画像検査の特異度について、審査報告書20ページの表8のとおり、GE067-007試験ではPET画像の評価を行った5名の読影医の過半数で88%以上、また審査報告書22ページの表9のとおり、GE067-015試験では、5名の読影医の過半数で99%以上であったことから、臨床的にはADと診断され得る患者から非ADの認知症患者を除外するという本剤に期待される有用性を支持する結果であると判断いたしました。

 続いて、安全性について審査報告書28ページの「7.R.4安全性について」の項を御覧ください。国内外の臨床試験11試験の併合解析の結果、本剤との因果関係が否定できない重篤な有害事象として、製剤に含まれるポリソルベート80に起因すると考えられるアナフィラキシーが海外臨床試験で1例に認められておりますが、それ以外の有害事象の多くは軽度又は中等度の事象であり、特段の処置を要することなく回復していること、並びに国内での合成医療機器及び海外での本剤の製造販売後安全性情報から、特段の問題なく使用されていると考えられることから、本剤の安全性は臨床的に許容されると判断いたしました。

 以上の審査の結果、本剤を「ADが疑われる認知機能障害を有する患者の脳内Aβプラークの可視化」の効能・効果にて承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。なお、本申請に伴い、放射性医薬品基準の改定を予定しております。以上です。

○事務局 引き続きまして、議題5、放射性医薬品基準の一部改正に関して御説明させていただきます。資料5の1ページを御覧ください。先ほど機構から説明がありましたとおり、「ビザミル静注」の承認申請に伴い、本品目の製法等に関する基準を放射性医薬品基準に追加するため、当該基準の一部改正を予定しております。

 また、同時に既に放射性医薬品基準に収載されている「フルデオキシグルコース」及び「フロルベタピル」について、規定整備を行う予定です。これは赤外吸収スペクトルによる確認試験についての記載を日本薬局方の記載方針とそろえるための整備で、規定の本質に変更はありません。以上、議題4と議題5について、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 質疑のある委員はおいででしょうか。

○奥田部会長代理 この薬は日本メジフィジックスの、例えば品質に関する概括資料の2.3の6ページを見ると、□□のラボで作るということです。これで日本中をカバーするということなのでしょうか。つまり、どのように供給していくのだろうというのが気になったので、医療機器として病院に既にある場合は、そこでお作りになるのでしょうけれども、これで大体カバーできているということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 先生が御指摘のとおり、現時点では国内の拠点で製造を行うことで全国への供給は可能と申請者より聞いております。本剤の物理学的な半減期が110分と非常に短いことを踏まえての御質問と思いますが、本剤は完全受注で製造され、1日に回の製造を行い、それぞれの製剤を各医療機関へ輸送する方法で供給すると説明されていますので、現時点においては製造所で全国をカバーできると聞いています。

○岡委員 安全性についてお伺いします。7ページの表3の一番上で、ラットを使ったIrwin変法でいろいろと作用が出ているのですが、下の審査の概略の所に、対照群で括弧をして「(生理食塩液群においても、眼球突出、異常歩行が出る)」とありまして、これはとても信じ難いのですが、対照群と有意差がなかったから安全だということなのですが、対照群のほうの試験自体がどう考えてもおかしい結果だと思うのですが、これは大丈夫なのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 眼球突出という事象名だけを見ると驚かれるかもしれません。眼球突出と評価された事象はありましたが、そもそも非臨床の安全性試験においては、我々は普段その施設での背景値というか、その施設で試験されている動物では大体どのぐらいの所見が出るのかも考慮して、被験物質の投与群と対照群あるいは溶媒群との比較で総合的に異常を判断しています。本試験についてもそういった確認をして、背景値とか溶媒群とも比べており、単に各事象が出ても大丈夫だと思ったわけではなく、眼球突出については特段手当が必要な所見ではなく、特段臨床において懸念するべき所見ではないという評価をしているということです。

○岡委員 何ともよく分からないのですが、生理食塩水を静注して、Irwin変法の評価はそんなにいい加減なものではないと思うので、眼球突出や異常歩行が出たりするのですか。そんなにたくさんそこの施設では、普段から出ているとしたら、薬理試験そのものが怪しいことになると思います。

○医薬品医療機器総合機構 この実施施設はGLP適合施設であり、施設として、一定の妥当性は示されていると思っています。

 生理食塩水を投与するという手技自体のストレスによる所見とか、眼球突出というところもあるかもしれませんが、今、手元に詳しい個々の資料がないので後で確認させていただきます。所見の意義は、その程度や出方を考えて総合的に判断しておりまして、我々もいろいろな毒性試験を評価する中で、生理食塩水を投与した群で所見が起こること自体は問題視するようなことではなく、対照群との比較で意義を考えるというのが基本的なスタンスと思っております。

 この事象自体については、また確認をいたしまして、問題があるようでしたら御確認いただくこととしたいと思います。

○赤羽委員 今のページのハーグチャネルの電流に対する抑制作用が、特にこれは溶媒と比較して特段強い抑制作用があったわけではないという解釈の説明なのですが、0.7μg/mLという濃度は、実際に血中の濃度に換算すると、どういう濃度に相当する濃度として、これを試験されたのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 血中濃度と比較してどれぐらいというところの具体的な数値は持ち合わせていませんが、少なくとも非臨床の検討においては、臨床投与量よりも十分量高い量での検討がなされています。

○松井部会長 先ほどの7ページの記述に関して、臨床例ではないというように受け取れますが、どのように対処したらいいか、御意見を委員の先生方から聞きたいと思います。ただ、御異議はないですかと通過してよろしいのかどうか。いかがでしょうか。

○森委員 今の話は7ページの安全性薬理試験に関することでよろしいのでしょうか。

○松井部会長 そうです。

○森委員 中枢神経系の所見の成績は、投与デザインには、投与量として0、1.5、5、16μg/kgと、四つの群で検討されていると理解していいでしょうか。これは、0の群があるというのは溶媒の効果を見ているためだという理解でいいのでしょうか。あと、偶然でも発生する可能性はあるかと思いますが、立毛と受動性は1.5μg/kg以上で見られているということは、0では見られていなくて、残り四つの群ではあったという理解でよろしいのでしょうか。以上、質問です。

○医薬品医療機器総合機構 まず、御質問いただいた投与量0については、溶媒群を設定したということでございます。

○松井部会長 以上でしょうか。岡委員、最初に口火を切ってくださったのですが、どのようにお考えでしょうか。これでこのことについては、調べていただいて、異議なしとして報告していいのかどうかということをお聞きしたいのですが。

○岡委員 直接臨床試験での成績ではないので、調べていただいて。ただ、今のお話で、0は溶媒群ですが、下の対照群の中に入っていますので、立毛も受動性も0でも出たということですよね。全部あることはあるのですが。

○松井部会長 ということは、それに関して不十分あるいは疑義のある点について明らかにしてもらうということで、認めるということにしていいという御意見でしょうか。

○岡委員 はい。

○松井部会長 ほかにこの点について。

○医薬品医療機器総合機構 先生、よろしいでしょうか。

○松井部会長 どうぞ。

○医薬品医療機器総合機構 質問の意図を得ず御回答をしてしまい、すみませんでした。投与量0について、先ほど溶媒群と御説明させていただきましたが、実際の試験系としては、生理食塩液群と溶媒群、この他にフルテメタモルについて3段階の濃度を検討しているという試験でございます。生理食塩液群と溶媒群で、実際に事象がどの程度起こっているのかについて、今、手元に細かい情報はございませんので、確認をしてまた御説明させていただくことでよろしいでしょうか。

○松井部会長 報告していただけますか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○松井部会長 今井委員。

○今井委員 先ほどの件と少し関係があるかもしれないのですが、溶媒群に関しては、フルテメタモルという化合物を溶かすために、実際の薬にもポリソルベートが入っているということで、界面活性剤を入れないと溶けないということですよね。アナフィラキシーショックも起こっているということで、溶媒として本当にそれが適切なのか、どれぐらい検討されてこの溶媒になったのかが不安なのですが、ほかの界面活性剤に置き換えるとか、濃度を下げるとか、何か対処はできないのかなと。アナフィラキシーショックが起こるという添付文書に関しても、ポリソルベートによって起こるという書き方ではなくて、ただ「起こる可能性がある」と書かれているので、薬によるものではなくて、溶かす溶剤で副作用が起こることに関してもう少し喚起したほうがいいのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 まず、本製剤の溶媒について、ポリソルベート80、ほかにも複数の添加剤が入っていますが、それらについてはいずれも既に本邦で流通している医薬品の添加剤として使用されているもので、またその量についても使用前例の範囲内というところですので、今回の製剤だけで新たに問題になるようなものではないと考えております。また、注意喚起に関してですが、本剤の含有成分であるポリソルベート80も含め、アナフィラキシー等が起こる可能性があるということから、本剤の成分に過敏症のある患者は禁忌として注意喚起されております。また、本剤は資材等も用いて情報提供を行うこととされておりますので、具体的に生じた事例については資材等で情報提供がなされると考えています。

○松井部会長 ほかに御質疑はございますか。なければ、今問題になりました表3を中心とするデータについては、次回までに疑問の点が明らかになるように報告していただくという条件で、この議題について承認可としてよいかどうかを伺いたいと思います。なお、杉委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。それでは、本議題について、条件付きで承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。司会の不手際で時間を取りました。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会にその条件下で報告をするということにいたします。

 それでは、議題6に移ってください。機構からお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品アトーゼット配合錠LD等につきまして、機構より御説明いたします。本剤は、HMG-CoA還元酵素阻害剤である、アトルバスタチンカルシウム水和物、及び小腸のコレステロールトランスポーター阻害剤であるエゼチミブを有効成分とする配合剤です。両有効成分は、異なる作用機序で血中のLDL-Cを低下させ、それぞれ高コレステロール血症治療薬として、国内外で承認されております。今般国内臨床試験成績を基に、アトルバスタチン10mg又は20mgとエゼチミブ10mgを配合するLD錠及びHD錠が、「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」を効能・効果として製造販売承認申請されております。なお、201610月現在アトルバスタチンカルシウム水和物とエゼチミブの配合剤は、欧州を含む37の国又は地域で承認されております。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料14に記載されております委員を指名しております。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性について、審査報告書10ページ以降を御覧ください。高コレステロール血症患者を対象として、審査報告書11ページ表2に示す各用量の単剤投与時と2成分併用投与時のLDL-C低下作用を比較する二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、有効性の使用評価項目であるLDL-Cのベースラインからの変化率について、いずれの併用群においても対応する用量の各単剤に対する優越性が示され、また併用時のLDL-C低下効果では、アトルバスタチン20mgとエゼチミブ10mg併用群が、アトルバスタチン10mgとエゼチミブ10mg併用群よりも上回ることが示唆されております。

 安全性について、審査報告書11ページ表3を御覧ください。国内第III相試験において、併用投与群で各単剤投与群と比べ、特に発現率が高くなる有害事象は認められませんでした。次に、審査報告書19ページ表7を御覧ください。各単剤で共通して懸念される有害事象である筋肉関連の有害事象及び肝臓関連の有害事象の発現状況を検討したところ、併用投与時に各単剤投与時と比較して、有害事象の発現リスクが顕著に高まる傾向は認められませんでした。また、併用により特に留意すべき新たな有害事象の発現は認められませんでした。これらの結果から、本剤の添付文書において、両単剤と同様の注意喚起を行うことが妥当と判断しております。

 本剤の配合意義について、審査報告書1314ページにかけて7.R.1の項を御覧ください。審査報告書14ページの最後の段落に記しましたように、HMG-CoA還元酵素阻害剤とエゼチミブの併用は、国内外の動脈硬化性疾患治療ガイドライン等で推奨される併用療法の一つであり、アトルバスタチンとエゼチミブは本邦の医療現場で既に併用されていること。提出された本剤の臨床試験成績から、これら2成分の同時投与での効果に臨床的意義があると判断できることから、この2成分を投与する際の選択肢の一つとして、配合剤という形で医療現場に提供することに意義はあると判断しております。以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において、御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新医療用配合剤に該当し、再審査期間は4年と設定することが適切と判断しております。

 製剤は劇薬及び毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いします。

○赤羽委員 安全性に関してですけれども、20ページの表8とか、19ページの表7の所で、先ほど併用することによって特段リスクが増加することはないという御説明だったかと思うのですが、若干ALT値がやはり併用によって上がる傾向があるように見受けられるのですが、この点については、その添付文書の使用上の注意でそこを喚起するということで解決されるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的にはこの肝機能の部分というのは、もともとアトルバスタチンのときから肝機能障害のところは注意喚起されているような状況でございまして、御指摘のとおり、2剤併用、エゼチミブ、アトルバスタチン両方でALTの上昇というのが認められている部分もありますので、数値は多少高くなってしまう状況ではあるのですが、肝機能障害等に関する注意喚起に関しては、これまでの単剤の注意喚起と同様の注意喚起を行うことで、対応は可能と考えております。

 またその2成分配合した際の、薬物動態的に何かどちらかの血中濃度が上昇するというようなこともないことは確認しておりますので、現時点でそういう観点からも安全性が単剤と比較して重症になるということはないと考えております。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○川上委員 錠剤が2規格あり、それらの視認性が悪いと思うのです。外観がそっくりで、刻印も薄く、ほとんど同じ番号のものが付いています。確かに、シートに関しては紫と緑で色調は変えてあるのですけれども、外箱も含量を長方形と台形のイメージで示しているのですが、それほど強調されていないのでかなり類似しています。医療現場では、裸錠の状態で一包化し、鑑別等をして、患者さんに投薬しているケースが多いことを考えると、取り違えが起こりやすいような形状かと思うのですが、いかがでしょうか。

○松井部会長 ただいまの川上委員の御質問に対していかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 ただいま川上委員から御指摘いただいたとおり、視認性という点では多少劣る点があるかと思いますので、企業にはそうした御意見があったことも踏まえて、今後どういう検討をしていくのかを確認させていただきたいと思います。

○松井部会長 よろしいですか。

○川上委員 ありがとうございます。

○松井部会長 杉委員、いかがですか。

○杉委員 この薬の配合の意義について、もう一回伺いたいたいのですが、エゼチミブ(ゼチーア)と、それからアトルバスタチンの併用を選択した理由です。というのは、ゼチーアは単独で使っても臨床的には余り効果がないような感じがしますが、今までのいろいろな試験を見ますと、LDLを下げるということは、結局心血管イベントを予防するということだろうと思うのです。そうするとこの二つの併用はほかの強力なスタチンがあるのですけれども、そういうものよりも心血管イベントを下げるというような意味合いがあって、こういう配合にしたのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 杉委員から御指摘いただいた点ですが、今回の配合の剤を選択するに当たっては、国内での処方割合を検討した上で、アトルバスタチンとエゼチミブを配合するということを決めておりますので、今、先生から御指摘いただいたように、この組み合わせが、心血管イベントの抑制に一番いいからという理由での組み合わせではないと考えております。

○杉委員 はい、ありがとうございました。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。では議決に入りたいと思います。なお、杉委員、武田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 議題7に移ります。説明をお願いします。

○事務局 議題7に関しましては事務局から御説明させていただきます。議題7、資料7、ジメチルスルホキシドを希少用医薬品として指定することの可否に関しまして、事務局より御説明いたします。資料の評価報告書のタブをお開きください。評価報告書1ページ目中段を御覧ください。申請者は杏林製薬株式会社。予定される効能・効果は「間質性膀胱炎」となります。間質性膀胱炎は、頻尿、尿意亢進、尿意切迫感、膀胱痛等の症状を呈し、これらの症状により、患者の日常生活に支障を来す疾患でございます。まず、1ページの対象患者数について。厚生労働省の患者調査統計における患者総数が2,000人であったこと。また日本間質性膀胱炎研究会による医療施設の調査によりますと、該当患者数は4,531人であったことから、患者数が5万人未満という基準を満しているものと考えております。

 次に1ページ下段から2ページ目の医療上の必要性について御説明いたします。現在、間質性膀胱炎の治療に関する効能・効果で製造販売承認を取得している医薬品及び医療機器はなく、「膀胱水圧拡張術」が保険収載されておりますが、本疾患で膀胱容量が低下した膀胱に、水圧をかけて拡張するという当該方法では、激痛を伴うため腰椎麻酔等が必要とされ、膀胱破裂のリスクがあると考えられております。そこで間質性膀胱炎治療における本薬の作用機序は十分に解明されてはおりませんが、抗炎症、筋弛緩、鎮痛、コラーゲンの分解、肥満細胞の脱顆粒等が想定されており、本薬の膀胱内注入療法は、「間質性膀胱炎診療ガイドライン」において、推奨グレードb(行うよう勧められる)とされ、米国のガイドラインでは、第2選択の治療法に位置付けられております。以上より、本薬の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、2ページの開発の可能性について御説明いたします。本薬は米国及びカナダで既に承認されております。本邦では現在第III相臨床試験を実施中で、申請者は当該試験成績に基づき本薬の製造販売承認申請を行う予定であります。よって本剤の開発の可能性は高いと考えております。なお、本薬の間質性膀胱炎の適応症については、一般社団法人日本病院薬剤師会より開発要望が提出され、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議におきまして、医療上の必要性が高いと判断されたことを踏まえまして、開発要請がなされております。

 以上より、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生から御質疑をお願いします。武田先生、何か御意見はございますか。

○武田委員 御説明いただいた資料のとおり、患者数は恐らく数千人ぐらい。ただ、欧米に比較しますと日本の患者の数が少なめだと思います。これは人種差があるのかもしれませんが、特に女性が多くて、疼痛を主体とする疾患で、なかなかその治療法がなくて難治でありまして、日常診療は非常に苦労します。ただ、非常に患者の数は多くないので、どの治療機関でも取扱えるというものではないですので、やはり希少疾患としては妥当だと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかに御質疑はございますでしょうか。

○岡委員 本日はこれを希少疾病用医薬品として指定するかどうかだけであって、指定したからといってその後、医薬品として承認するかどうかはまた別の問題と理解してよろしいのでしょうか。

○松井部会長 いかがですか、そう理解してよろしいですか。

○事務局 おっしゃるとおりでよろしいかと思います。

○松井部会長 イエスです。ほかにございますか。ないようですので、議決に入ろうと思います。なお、武田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。

 議題8に移ります。事務局から概要を御説明ください。

○事務局 審議事項議題8、医薬品サインバルタカプセル20mg及び同カプセル30mgの再審査期間延長の可否について、事務局より御説明いたします。まず、再審査期間の延長に係る制度について御説明いたします。お手元の資料の表紙にございます諮問書に記載された医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条の4第2項におきましては、「厚生労働大臣は新薬品の再審査を適正に行うため特に必要があると認めるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、再審査期間をその製造販売の承認があった日から10年を超えない範囲内において延長することができる」旨の規定がございます。この規定に基づきまして、小児の用量設定等のために臨床試験を計画する場合で、必要があると認められる場合には、個別に本部会にお諮りした上で、再審査期間を延長しているところでございます。

 続いて資料に基づきまして、今回の品目の概要を簡単に御説明いたします。資料8の一つ目の品目概要のタブをお開きください。本品目の申請者は塩野義製薬株式会社、品目名は「医薬品サインバルタカプセル20mg、同カプセル30mg」です。有効成分として「デュロキセチン」を含有し、今回の開発対象の効能・効果は「うつ病、うつ状態」となっております。用法・用量欄の記載のとおり、本品目は小児に係る用法・用量の設定はなく、添付文書の「小児等への投与」の項では、「低出生体重児、新生児、乳児又は幼児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)。」とされております。

 1ページ下段、本品目の当該効能・効果の承認日は平成22年1月20日、再審査期間は8年となっておりますが、裏側2ページ目の再審査延長案のとおり、今般申請者からは小児(児童思春期)うつ病患者を対象とした、第III相臨床試験の治験を実施することから、再審査期間を当初より2年間延長し、通算で平成32年1月19日までの10年間とする要望が提出されております。

 続きまして、2つ目のタブ、「再審査期間延長に係る要件の該当性について」のタブの2ページ、1.2医療ニーズの項を御覧ください。昨年日本うつ病学会治療ガイドラインが改定され、児童思春期のうつ病に関する章が追加されるとともに、児童思春期精神医学の専門家より、小児開発の要請を受けていること。また小児うつ病の臨床試験開始に先だち、企業が実施した臨床試験の実施可能性調査におきまして、全国41施設で治験参加の賛同が得られており、小児うつ病に対して、薬物療法のニーズがあることから、本剤の小児開発の必要があると判断されております。

 続いて、最後の6ページを御覧ください。上段のとおり、承認時前より小児に対する臨床試験の検討を開始しており、更に専門家より抗うつ薬の小児開発の要請を受けるなどの医療ニーズを踏まえ、小児うつ病に対するサインバルタの開発計画を再考し、小児うつ病患者を対象とした第III相臨床試験の治験計画届が提出されたことから、再審査期間延長に係る要件に該当するものと考えられます。

 以上のことから、再審査期間を最長10年に延長することが適当と考えております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。特段御議論がないようですので、議決に移りたいと思います。なお、杉委員、武田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして再審査期間の延長を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、再審査期間の延長を可とし、薬事分科会に報告いたします。

 報告事項に移ります。お願いします。

○事務局 報告事項について、まとめて御説明いたします。始めに報告事項議題1医薬品ビムパット錠50mg、同錠100mgの製造販売承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料9を御覧ください。本剤は、ラコサミドを有効成分とする抗てんかん薬であり、現在、ほかの抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法の効能・効果で承認されております。今般、ユーシービージャパン株式会社から、「てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する単剤療法」に関する効能・効果を追加する、製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。

 機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続きまして、報告事項議題2、医薬品ネオーラル内用液10%、同10mgカプセル、同25mgカプセル、及び同50mgカプセルの製造販売承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料10を御覧ください。本剤は、シクロスポリンを有効成分とする免疫抑制剤であり、現在「重症の再生不良性貧血」等の効能・効果で承認されております。今般、ノバルティスファーマ株式会社より、重症以外の再生不良性貧血への適用拡大に係る製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて報告事項議題3、オビソート注射用0.1gの製造販売承認事項一部変更承認について、御説明いたします。資料11を御覧ください。本剤はアセチルコリン塩化物を有効成分とする注射剤であり、現在、「麻酔後の腸管麻痺、消化管機能低下のみられる急性胃拡張、円形脱毛症」の効能・効果が、筋肉内、皮下及び皮内投与の投与経路で承認されております。「本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適用外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成29年3月2日に開催された本部会における事前評価の結果、公知申請が適当と判断されたことを踏まえて、今般、第一三共株式会社から「冠動脈造影検査時の冠攣縮薬物誘発試験における冠攣縮の誘発」の効能・効果と、動脈内投与の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。なお、本申請の申請区分は、「新投与経路医薬品」ですが、既に本部会で事前評価済みであること等を踏まえ、部会報告とさせていただいております。

 機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 最後に、報告事項議題4、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。資料12、こちらは一般的名称、エゼチミブ、販売名はゼチーア10mgの医薬品再審査報告書です。こちらの品目について、製造販売後の特定使用成績調査、製造販売後臨床試験に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられております承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない、「カテゴリー1」と判定したものでございます。事務局からの報告事項に関しては以上です。

○松井部会長 ただいまの報告につきまして、御質問はございますか。よろしいでしょうか。それでは、報告事項については御確認を頂いたものといたします。

 事務局からほかに報告はございますか。

○事務局 次回の部会は9月1日金曜日、午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 本日はこれで終了といたします。どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)

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