ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)> 平成29年第3回目安に関する小委員会 議事録(2017年7月20日)




2017年7月20日 平成29年第3回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局

○日時

平成29年7月20日(木)
14:30~19:00


○場所

厚生労働省9階省議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、中窪委員

【労働者委員】

小原委員、冨田委員、永井委員、新沼委員

【使用者委員】

秋田委員、小林委員、高橋委員、橋本委員

【事務局】

井上大臣官房審議官、増田賃金課長、武田大臣官房付(賃金担当)
菊池主任中央賃金指導官、伊勢中央賃金指導官
由井賃金課長補佐、大野賃金課長補佐

○議題

平成29年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

(第1回全体会議)

○仁田委員長
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第3回目安に関する小委員会を開催いたします。議題に入ります前に、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をお願いします。


○大野賃金課長補佐
 この度、厚生労働省の人事異動がありましたので、御紹介致します。7月11日付で大臣官房付(賃金担当)となりました武田でございます。


○武田大臣官房付(賃金担当)
 7月11日に、大臣官房付(賃金担当)を拝命いたしました武田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。


○仁田委員長
 それでは議題に入りたいと思います。前回の小委員会では、労使双方から今年度の目安について基本的な考え方が表明されました。前回の双方の主張を整理しましたので、最初に御確認いただきたいと思います。
 労働者側委員からは、最低賃金が依然として低い水準にあり、地域間の格差が拡大傾向にあることについて問題意識を持っている。最低賃金額の最高額は932円、最低額は714円であるが、法定労働時間で労働した場合でも年収200万円に到達せず、憲法25条に照らしても、低水準と言わざるを得ない。全ての都道府県で、生活に必要な賃金水準として少なくとも800円を上回らなければならないと考えている。生活文化圏・経済圏が広範囲となる中で、隣県との格差拡大が働き手の流出につながっている状況を是正するためには、地方最低賃金審議会の自主性発揮を促すことも必要である。目安の示し方はこうした点を考慮すべきである。最低賃金近傍で働く者は、いわゆる不本意非正規や家庭の事情によりフルタイムの労働が困難な者も少なくない。雇用形態のみにより低賃金で雇用されているとすれば大きな問題であることは、配意を求められた「働き方改革実行計画」においても指摘されている。雇用形態に関わらず、働いて稼いだ賃金で家族とともに生活できる社会を実現すべきである。こうしたことから、一般労働者の賃金改定率だけではなく、あるべき賃金水準議論を行うことが必要である。これまでの「円卓合意」「雇用戦略対話合意」も踏まえ、当面目指すべき水準として、最低賃金額が800円以下の地域をなくすことが急務であり、トップランナーは1,000円の到達を目指すべきである。到達時期は、経済環境等にも配慮しつつ、3年以内とすべきである。といった御主張がありました。
 一方、使用者側委員からは、中小企業の景況感は今年に入ってから緩やかな改善傾向にあるものの、その動きは大企業に比べて鈍く、休廃業や解散する企業数が過去最高になったことに加え、人手不足の影響が強まっており、先行きの不透明感は依然として強い。「働き方改革実行計画」に記されている最低賃金に関する内容は、これまで政府が示してきた方針「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく」と同じである。その意味は、毎年3%程度の機械的引き上げを行うことではなく、名目GDP成長率が3%に達しない場合は、それを考慮しながら引上げ額を議論することであると認識している。最低賃金の大幅な引上げには、影響を受けやすい中小零細企業に対する効果的な生産性向上等の支援策の実施・拡充が不可欠であるが、政府の施策の十分な成果が見られないまま最低賃金の大幅な引上げだけが先行して実施されてきたのが現状である。今年度も、合理的な根拠を示さないまま、最低賃金の大幅な引上げ目安を提示することとなれば、目安制度、ひいては最低賃金の決定プロセス自体が成り立たなくなるのではないかと危惧している。最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力の3要素を考慮して定めなければならないと最低賃金法第9条に明記されている。諮問文で求められている働き方改革実行計画への配慮は必要だが、法第9条の3要素を総合的に表している賃金改定状況調査結果のとりわけ第4表を重視するとともに、急激に上昇した影響率を十分に考慮した、合理的な根拠に裏打ちされた目安を提示すべきである。といった御主張がありました。
 また、前回、冨田委員から、第1回目安に関する小委員会の資料で配付された春闘結果に関する資料について、最終集計の結果に更新すること、同じく第1回目安に関する小委員会で配付された初任給の上昇額と率の推移に関し、高卒初任給の実額を把握できる資料を提示すること、等について、検討を求める意見がありました。事務局で意見を調整の上、資料を提出いただいておりますので、説明をお願いします。


○大野賃金課長補佐
 本日はお手元の資料の他に、各種団体の要望書を回覧しておりますので、適宜ご参照ください。前回の目安小委との間に届いた要望書です。
 次に配付資料について説明いたします。一枚目の資料は、第1回目安に関する小委員会の資料 No.1 の 12 ページ「春季賃上げ妥結状況」について、集計結果の数値を更新したものです。連合の二つの集計数値について、本年7月5日の集計の最終版の数値に差し替えておりまして、また、経団連(大手企業)について、本年7月12日集計の最終版の数値に差し替えています。労使各側の委員から補足があれば、後ほどお願いいたします。
 二枚目の資料は、高校卒の初任給の実額を示したものです。第1回目安に関する小委員会の資料No.1の7ページで、労務行政研究所の「労政時報」を基にして初任給の上昇額・率の推移を示しておりましたが、今回、同じ労政時報の数値を用いて実額をお示ししております。平成25年度から5年間の推移を示しています。資料の説明は以上です。


○仁田委員長
 それでは、労使の皆様には、私から御紹介したそれぞれの主張についての補足や訂正、本日提出の資料についての見解など、追加・補足意見があればお伺いしたいと思います。労、使の順にお願いします。


○冨田委員
 前回申し上げた基本的なスタンスから変更はありませんが、主張したい思いをよりストレートに申し上げたいと思います。
 昭和53年以降の目安審議において、目安金額を審議するにあたっては、一般労働者の賃金改定状況調査結果を重要な参考資料としてきたことは承知しております。日本経済・産業全体の底上げを図っていく、低賃金労働者の処遇改善を図っていくという意味で、大きな役割を果たしてきたことは否定しません。しかし、この手法を取ってきた弊害として、二極化、格差の拡大を引き起こしてしまいました。連合は、一般労働者においてもベース賃金が異なる中で、大手も中小も、正規も非正規も、同率の賃金改定では格差が拡大し、解消には結びつかないとして、産業・企業・地域の賃金相場と比較し、賃金の絶対水準に問題意識を持った取り組みを進めてきています。これは、「賃金の上げ幅」ではなく「個人別賃金水準にこだわる」という考え方です。このことは、「すべての企業で同率の総額人件費の改定が公平である」という考え方を変えたものです。
 一方で、現実の支払能力をみれば、本当の意味で自由な競争が確保できているのかという問題もあると認識しています。労働者側は、春闘において、「生み出した付加価値」と「実現した付加価値」の相違に着目し、取引慣行などの改善の取組を平行して進めてきました。こうしたテーマは、いわゆる春闘とは切り離して、産業政策的に通年で取り組むべき性格ではありますが、社会問題として共有するために、「春闘」時期に大きく取り上げて取組を進めてきた結果、社会問題として浸透してきていると認識しています。
 地域別最低賃金を考える上でも、そもそも生存権を踏まえ、職業人生の初期の労働者の賃金水準を念頭に、賃金の上げ幅ではなく、どのような賃金水準であるべきかを議論すべきであると主張したものです。
 その時に、これまでの議論経過の中で「円卓会議」では高卒初任給というターゲット、「雇用戦略対話」では、前提はあるものの「早期に800円、1000円」という目標水準に合意してきた経過があることを大変重く受け止めています。
 第2回目安に関する小委員会で伺った使用者側の基本的なスタンスに対して、労働者側から何点か意見を述べたいと思います。様々な統計数値を紹介いただきながら、議論にあたっては、最低賃金法第9条2項の3要素を踏まえた議論を行いたいとの御主張があったと受け止めております。紹介いただいた数値の労使の受け止めは見解が異なっていると思いますが、これらの数値に対する労働者側の見解を述べたいと思います。
 休・廃業が増加していることは認識していますが、その理由の多くは後継者不足ではないかと受け止めています。有効求人倍率は高まっており、失業率も低下し、ほぼ完全雇用の状況にある中で、最低賃金の上昇がその理由になっているかは見方が分かれるところであると考えます。
 影響率が高まっていることも否定しません。現下の労働市場において、支払能力以上の負担をされている企業があることも認識しています。しかしながら、人への投資は企業の存続と成長のために、経営判断として行われているものだと承知しています。
 賃金改定状況調査結果第4表の数字も示されていましたが、多くの企業が最低賃金の上昇により従業員全体の賃金カーブの是正まで踏み込んでいるとすれば、この第4表における賃金改定率はなぜ1%台なのか疑問が残ります。最低賃金の水準を2015年は2%程度、2016年は3%程度引き上げてきたことを踏まえると、賃金改定状況調査結果第4表における賃金上昇率は1%程度の上昇とはならないのではないかと思いますが、この第4表の数値をどのように見るのか、また影響率をどのように受け止めるのか大変悩ましいところだと感じます。ただし、従来から労働者側は、最低賃金はそもそも、一定程度影響を及ぼす水準でないと意味がないということは申し上げています。
 ランク間格差、隣県との水準差についてもご意見をいただきました。地域別最低賃金額の改定は、地方最低賃金審議会が行うことは承知しています。全員協議会でも多くの時間を費やしてきましたが、目安制度を継続する中で、地方の自主性発揮も促しながら、中央最低賃金審議会はどのような目安を示していくべきかということも検討事項の一つと認識しており、最終的な目安金額の決定に当たっては、単に各ランク同率でということを労働者側は考えていないということを申し上げておきたいと思います。
 こうした事を踏まえ、800円以下の県を3年以内になくしたい、東京・神奈川はトップランナーとして早期に1000円を超える水準をターゲットにした議論を進めたいと前回申し上げました。
 昨年、小委員会委員長補足説明を出していただいたことへの地方の受け止めについて、地方最低賃金審議会の労働者側委員は、目安の補足説明資料として大変有意義であったと受け止めています。単に支払能力論を中心とした引上げ額の説明のみならず、労働市場の動向等も踏まえ最低賃金法第1条に触れていただいたことは、地方最低賃金審議会での審議においても有意であったと思います。
 一方で、地方最低賃金審議会の公益委員に補足説明を発出した趣旨等が十分に伝わっていなかったとの報告もあり、その点は残念だと感じます。
 更新していただいた連合の春季賃上げ妥結状況の最終集計では、非正規労働者の改善幅は正社員を上回っており、平均賃上げ方式(加重平均)1.99%に対し、非正規の時給20円は2.2%の引上げに相当します。正社員で規模別にみると99人以下では1.92%となっており、規模の小さい事業所での健闘が目立ちます。これは、賃金の絶対水準が正社員よりも低位な状況で改定率が同じでは格差が拡大するということを主張し、労使の真摯な協議を通じて合意形成が図られたものと受け止めています。
 こうした短時間労働者の時給の改善が進んでいることを示すものとして、第1回目安に関する小委員会で配布された資料の中の「地域別最低賃金と賃金水準との関係」でも短時間労働者の時給改善が進んでいると同時に、その水準は1,000円を上回っています。
 本日示された労政時報の資料では、高卒初任給の伸び率に加え、実額も示していただきました。初めて職業生活に就く人たちの賃金水準として、これも踏まえた目安金額の議論に活用したいと思います。賃金構造基本統計調査における平均所定労働時間の164時間で時給換算すれば、高卒の補助職であっても978円であり、現状の最低賃金水準はワーク・ペイの観点からも不十分な水準と認識しています。労働者側からは以上です。


○仁田委員長
 ありがとうございました。では、使用者側からもお願いいたします。


○橋本委員
 資料についての確認をさせていただきたいと思います。今回配付された、労政時報の資料について、集計対象は何社となっていますか。


○大野賃金課長補佐
 平成29年の数値は、速報値ですが、回答があった228社を集計したものです。


○高橋委員
 基本的考え方については、前回申し上げたところから追加はございません。1点、労働者側に質問ですが、今年度の審議では、なるべく参考資料はまとめるということで進めてきました。その上で、今回、高卒初任給の実額の資料を追加する理由を教えていただきたいと思います。そもそも労政時報の回答は220社程度の回答にとどまっています。また、円卓合意では、平均的な高卒初任給の水準をみるのではなく、低位な高卒初任給を念頭に置いたものではなかったでしょうか。この平均的な実額で御主張される趣旨を御説明いただきたく思います。


○冨田委員
 高卒初任給の資料については、第1回目安に関する小委員会の主要統計資料の中で伸び率等は示されています。議論する上で、実態を把握するために、実額が分かるものとして示していただきたいと主張しました。
 本日の資料で、約16万円が示され、これが初めて仕事に就く方の賃金であると考えています。初めて仕事に就く方の賃金の絶対額にこだわりたい、というのが我々の主張です。


○仁田委員長
 他には何かございますか。この後は、公労・公使で個別に主張を伺いながら、とりまとめに向けて詰めていきたいと思いますが、よろしいですか。


(了承)


○仁田委員長
 それでは準備の後、公労から始めたいと思います。


(第2回全体会議)


○仁田委員長
 ただいまから、第2回目の全体会議を開催します。本日は、今年の目安を取りまとめるべく、個別に意見を伺いながら、鋭意調整を進めさせていただきました。
 しかしながら、現時点では依然として双方の主張の隔たりが大きいことから、本日の取りまとめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。よろしいですか。


(了承)


○仁田委員長
 労使双方におかれては、本日の議論も踏まえ、目安を取りまとめるという観点から、再考をお願いします。次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いします。


○大野賃金課長補佐
 次回の第4回目安に関する小委員会は、7月25日火曜日15時から中野サンプラザ15階エトワールルームで開催いたします。


○仁田委員長
 以上で、第3回目目安に関する小委員会を終了します。議事録の署名につきましては、永井委員と小林委員にお願いします。皆様、どうもお疲れ様でした。


(了)
<紹介先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)> 平成29年第3回目安に関する小委員会 議事録(2017年7月20日)

ページの先頭へ戻る