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2019年7月22日 令和元年第2回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局

○日時

令和元年7月22日(月)
14:56~17:36

 

○場所

厚生労働省専用第21会議室
 

○出席者

【公益委員】

藤村会長、戎野委員、中窪委員
 

【労働者委員】

伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員
 

【使用者委員】

佐久間委員、高原委員、橋本委員、正木委員
 

【事務局】

坂口労働基準局長、吉永大臣官房審議官、五百旗頭賃金課長
瀧ヶ平主任中央賃金指導官、松本賃金課長補佐、手計賃金課長補佐
 


○議題

令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について


○議事

(第1回全体会議)

○藤村委員長
 では、ただいまから第2回目安に関する小委員会を開催いたします。本日は、鹿住委員が御欠席でございます。
 まず、御手元の資料について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。

○松本賃金課長補佐
 本日は、御手元の資料のほかに各種団体の要望書の一部を回覧させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 御手元にお配りしております配布資料につきまして、事務局から御説明させていただきます。
 まず、資No.1を御覧ください。令和元年の賃金改定状況調査の結果になります。冒頭のページでは、本調査における調査地域、調査産業等についてお示ししております。主要な調査事項は、昨年6月と本年6月の月間の所定労働日数、1日の所定労働時間数と基本給及び諸手当でございます。そこから賃金の上昇率などを算出しております。
また、本年の5月14日の中央最低賃金審議会におきまして、今年の調査の実施に当たり、変更点について2点御説明させていただきました。
 1点目が、調査対象事業所数の変更と集計対象事業所数の変更になります。昨年までの従前の調査では、約2万事業所の調査票を発送し、約4,000の事業所につきまして、各産業間の割合を製造業、卸売・小売業、宿泊・飲食サービス、医療・福祉、その他のサービス業の事業所数の比率をおおむね6対3対1対1対2として、規模の1~9人、10~29人の事業所数の比率が製造業ではおおむね2対1、その他の産業では3対1として集計を行っておりました。今年の調査におきましては、約1万6000事業所に対して、産業間や規模間の割合を先ほど申し上げた比率で発送させていただき、集計時点までに回収できた全ての調査票を集計するという形にしております。結果として、約5,000の事業所から回答が得られました。産業ごとの回答数につきましては、資料に記載しているとおりでございます。
 今年の調査における変更点の2点目といたしましては、第1表から第3表につきましても、復元集計を行っている点でございます。調査方法を、回収できた調査票を全て集計することといたしまして、過去の調査とは集計事業所の産業割合等が異なりますが、結果に与える影響といたしましては、平成30年も令和元年調査も単純集計ではなく、母集団への復元を行っておりますので、数値の比較は可能というところでございます。
 続きまして、中身の説明のほうに移らせていただきます。1枚おめくりください。
 第1表でございます。こちらは、今年の1月から6月までに賃金の引上げあるいは引下げを実施した、または実施しなかったという区分で、事業所単位で集計を行ったものでございます。産業、ランク計を見ていただきますと、1月から6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合が53.6%となっており、括弧内が昨年の実績になりますが、その43.9%よりは上昇しております。また、右の欄に移りまして、今年の1月から6月までに賃金の引下げを実施した事業所の割合は1.1%となっており、昨年の0.7%からは上昇という状況でございます。その結果でございますが「賃金改定を実施しない事業所」「7月以降に賃金改定を実施する予定の事業所」の割合につきましては低下しているという状況でございます。産業別の状況につきましても同様となっております。
 第2表を御覧ください。回答のございました平均賃金改定率を事業所単位で集計したものでございます。産業・ランク計で見ていただくと、賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は2.5%と昨年と比べて縮小しております。賃金引下げを実施した事業所はマイナス2.2%、改定を実施した事業所と実施しなかった事業所を合わせた、全体を平均した平均賃金改定率は1.2%という状況でございます。
 第3表は、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値になります。産業計・ランク計を見ていただきますと、第1・四分位数が1.1%、中位数が2.0%、第3四分位数が3.6%で、分散係数としては0.63という形でございます。大きな傾向としては、昨年からの変更は特段ないという状況でございます。
 次が第4表になります。第4表の1枚目、1のところですが「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率(男女別内訳)」を示しているところでございます。第4表の1の産業の「男女計」のところを見ていただきますと、ランク計の賃金上昇率は1.3%となりまして、昨年の1.4%から0.1%縮小という状況でございます。ランク別に見ていただきますと、Aが1.3%、Bが0.8%、Cが1.1%、Dが1.9%になりまして、昨年の上昇率と比較いたしますと、Bランクで縮小、Dランクで拡大という状況でございます。産業ごとに見ますと、計のところですが、製造業で0.9%、卸売・小売業も0.9%、宿泊業・飲食サービス業が1.7%、医療・福祉が2.2%、その他のサービス業が0.6%となっております。男女別の賃金上昇率を見ますと、産業・ランク計で男性が0.8%で、女性が1.9%という結果でございます。男性につきましては昨年より縮小、女性は昨年より拡大という状況でございます。
 第4表の2につきましては、一般・パート別の賃金上昇率でございます。産業・ランク計では一般労働者は1.0%、パートは1.8%という上昇率です。一般は昨年より縮小いたしましたが、パートにつきましては、4表の2を作成するようになりました平成23年から見ますと、数値としては最大という状況でございます。
 次のページ以降の参考1~5の表につきましては、第1表から第4表まででお示しした集計結果の内容をもう少し詳しく集計したものでございます。こちらにつきましての説明は割愛させていただきますが、適宜御参照いただければと思います。
 最後のページにつきましては、付表という形で賃金改定状況調査におけます労働者構成比率と年間所定労働日数をおつけしておりますので、こちらも適宜御参照ください。
 続きまして、資料No.2は生活保護と最低賃金の比較についての資料でございます。
 1ページ目が、生活保護水準と最低賃金額との関係を示したグラフでございます。ともに平成29年度のデータに基づくものです。右上にグラフの説明がございますが、破線の△は生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助の実績値を加えたものでございます。実線の◇が最低賃金額で、法定労働時間を働いた場合の手取り額を示しております。全ての都道府県におきまして、生活保護水準が最低賃金を上回る逆転現象は生じていないことが確認できております。なお、下の注3)のところにもございますが、住宅扶助の実績につきましては、平成29年度の数値が現時点で未公表でございますので、こちらにつきましては平成28年度の実績値を使用しております。
 2ページ目につきましては、1ページ目の最低賃金額のグラフを平成30年度のものに更新したものでございます。生活保護水準は1ページ目と同様になりますので、最低賃金が1ページの部分より引き上がったグラフになりますので、逆転現象は生じていないという状況でございます。
 最後に3ページ目になりますが、こちらについては、47都道府県について最新の乖離額をお示しするとともに、その乖離額の変動についての要因分析をしたものでございます。列Cの額が今年度の乖離額というところで、列Dの額が昨年度の目安小委でお示しした乖離額となります。そして、列Eのところに示した額が昨年度から今年度の乖離額の変動分という形でございます。乖離額が変動した要因といたしましては、昨年度の最低賃金の引き上げ、e1で広がった部分と、最低賃金額を手取り額に換算するために乗じる可処分所得比率e2が昨年は0.824だったものが0.823に低下という形がありますので、この分の変動があったという状況でございます。
 資料No.3は、地域別最低賃金額の影響率及び未満率に関する資料でございます。第1回の目安小委におきまして、全国計の数値につきましては御説明させていただいたところですが、今回はランク別の数値を記載しております。
 1ページ目は、過去10年間の推移を最低賃金に関する基礎調査に基づきお示ししたもので、一番右の列が平成30年度になります。未満率についてランク別に確認をいただきますと、Aが2.4%、Bが1.5%、Cが1.7%、Dが1.4%、ランク計が1.9%になっておりまして、全体的に平成29年度からやや上昇という状況でございます。影響率につきましてランク別に見ますと、Aが15.3%、Bが12.3%、Cが12.7%、Dが13.3%、ランク計は13.8%でございます。平成29年度と比較しますと、こちらも全てのランクで上昇という形で、全て2桁台という形になりました。
 次の2~3ページにつきましては、未満率と影響率の都道府県別のグラフになります。2ページは最低賃金に関する基礎調査に基づく未満率、影響率のグラフでございます。上のグラフの影響率では、神奈川、青森、鹿児島、大阪、三重で高くなっておりまして、香川県が一番低いという状況でございます。下のグラフの未満率では岩手が高くて、富山が昨年度に続き一番低いという状況でございます。
 3ページ目の資料は、2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいてお示ししたものということになります。影響率では神奈川が最も高く、未満率では大阪が最も高いと いう状況でございます。
 続きまして、資料No.4は各都道府県別の賃金分布でございます。平成30年の賃金構造基本統計調査をもとにした賃金分布でございます。一般・短時間労働者の合計と、一般、短時間のそれぞれの順でAランクからDランクまで総合指数の順に都道府県を並べている資料でございます。最頻値と最低賃金額の関係、いわゆる張りつきぐあいというところにつきましては、影響率や未満率と同様に同一ランク内でも異なった傾向が見られるところでございます。個別の紹介につきましては割愛させていただきますが、適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料No.5は「最新の経済指標の動向」の形になる資料になります。こちらは、最新の経済動向の資料を客観的に示すものといたしまして、今年は昨年と同様、内閣府の月例経済報告の主要経済指標を提出させていただいております。重立った指標につきましては、第1回目安小委の主要統計資料の中でも御説明させていただいたところでございますので、個別の御説明は割愛させていただきますが、こちらにつきましても適宜御参照いただければと思います。
 続きまして、資料No.6が最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援策を、厚生労働省と中企庁との間でまとめたものでございます。支援策の主な内容といたしましては、賃金引上げへの支援、結果的に賃金引上げにもつながる観点からも、生産性向上への支援、労務費上昇分の適正な価格転嫁をできるようにするという観点からの下請取引条件改善の取り組み、その他、資金繰りに関する支援や各種相談窓口の整備というところで構成されております。内容が多岐にわたりますため、各施策の内容につきましては、かいつまんで御説明させていただきます。
 まず「賃金引上げに関する支援」でございます。4ページは当課で実施しております「業務改善助成金」になります。事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に生産性向上のための設備、機器の導入経費等の一部を助成するものでございます。地域間格差縮小の観点からもございまして、事業場内最低賃金が800円未満の事業場につきましては、助成率を上乗せするといった内容としております。本助成金につきましては、もっと使い勝手がよくといった御要望もいただいている状況でございますが、執行状況といたしましては、昨年度の申請受付件数が約1,000件というところで、前年度より90件程度ふえているという状況でございます。ホームページやリーフレット等による周知に加えまして、事業所の方が手にとりやすい小冊子の形での事例集というものを今年度も引き続き作成しておりまして、周知、広報を図っているという状況でございます。
 5ページ、6ページに関しましては「人材確保等支援助成金」でございます。5ページにつきましては、人事評価制度と賃金制度を整備し、生産性向上と賃金アップ、離職率の低下に取り組む事業主に対する支援という形でございます。6ページにつきましては、生産性向上に資する設備投資を通じて、生産性向上と賃金アップに取り組む事業主に対する支援という内容でございます。
 7ページが「キャリアアップ助成金」でございます。有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者につきましては、企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化や賃金規定の増額改定等を行った場合に、対象となる労働者数に応じて助成する内容でございます。
 8ページからは、中小企業庁の施策でございます。まず8ページが、所得拡大促進税制でございます。青色申告書を提出している法人や個人事業主が、前年度から継続して雇用している方の給与支給額が、前年度を1.5%以上上回っていることなど一定の要件を満たして賃金引上げを行った場合に、その増加額の一定割合を法人税額から控除できるという税制になります。
 9ページは、昨年6月に成立しました生産性向上特別措置法に基づく「固定資産税の特例措置」でございます。導入促進基本計画を策定した市区町村に所在します中小企業が対象となっております。本年5月末の時点で、本措置により固定資産税ゼロの措置を講じた自治体の数は1,625となっている形でございます。
 10ページ、11ページにつきましては「中小企業等経営強化法」の関係でございます。
 12ページは、3つの助成金がまとめられておりますけれども、いわゆるものづくり補助金、持続化補助金、IT導入支援補助金という形で、中小企業庁の生産性向上支援のための施策といたしましては、比較的規模の大きい形になります。
 13ページが下請取引条件改善の関係でございます。ここのページに記載されておりますのは融資等の支援策になりますが、このほかにも、業界単位での自主行動計画の策定促進や下請Gメンによる実態把握など、取引条件改善のための取り組みを継続して、政府を挙げて行っているという状況でございます。
 14ページからは、貸し付けや雇用管理改善関係の取り組みがございます。
 19ページ、20ページになりますけれども、こちらが働き方改革推進支援センターや、よろず支援拠点といった相談窓口の関係でございます。これらの機関では、事業主の方からの労務管理や収益力向上等の相談に対応できる体制を整備しているところでございます。
 資料No.6までの説明は以上になりますが、このほかにも先ほど御紹介した働き方改革推進支援センターや、よろず支援拠点の専門家にも協力をいただきまして、最低賃金引上げの影響が大きい生活衛生関連分野の事業者が集まるような場を活用した最低賃金制度の周知や、収益力向上のセミナーや個別相談を行うといった取組等も引き続き政府を挙げて実施しているという状況でございます。
 続きまして、資料説明としては最後になりますが、お手元の参考資料を御覧ください。こちらは、前回の目安小委で委員の皆様から御要望のございました資料をまとめたものでございます。
 まず、1ページ、2ページは、高卒初任給の関係でございます。第1回目の目安小委の資料では、労務行政研究所がまとめております今年度の速報値といったものを、前年度からの上昇額、上昇率の形でお示ししたところですが、前回委員の方々より実額を把握できる資料についてという御要望がございました。
 1ページ目につきましては、労務行政研究所の資料につきまして、その実額を記載したものでございます。平成31年度につきましては、事務・技術について基幹職・事務職で差がない場合は17万505円、現業につきましては17万617円とそれぞれ1%程度上昇という状況でございます。
 2ページは、厚生労働省で実施しております賃金構造基本統計調査からのデータになります。対象年度は平成30年が最新値という形でございますが、企業規模別の情報が把握できるといったものでございます。資料の左側が規模計の数値、右側が企業規模10~99人の数値でございます。いずれも上昇傾向が続いているという状況でございます。最低賃金との関係という形でございまして、地域別最低賃金の全国加重平均の額との比率を記載しておりますが、比率の上昇傾向も続いているという形でございます。
 3ページ、4ページが、パートタイム労働者の募集賃金の関係でございます。ハローワークの求人票データから算出したデータでございます。求人票の募集賃金の欄は、上限額と下限額を記載するという形式になってございますので、上下限の平均額を募集賃金として、都道府県別に平均値を算出したものが3ページでございます。下限値を募集賃金として、都道府県別に平均値を算出したものが4ページでございます。
 平成30年平均のほか、直近については月ごとのデータという形の御要望がございましたので、現時点で算出ができます4月、5月のデータも掲載させていただいております。人手不足の影響等もあろうかと思いますが、最低賃金額の水準よりは100円以上高いといった水準となっております。また、都道府県によって変動の動きに違いはありますが、全国平均としては上昇しているという状況でございます。
 5ページが「春季賃上げ妥結状況」の関係でございます。連合様、経団連様のデータについて、第1回目安小委の後に取りまとまった最終集計結果を掲載させていただいております。連合様の資料ですが、第6回集計から99人未満では0.02ポイント増加で、規模計では2.14%という状況でございます。非正規労働者の賃上げ額の結果につきましては、単純平均で24.23円、加重平均で25.91円という形でございます。昨年より高い水準という形でございます。右上に移りまして、経団連様の大手企業の最終集計結果につきましては、2.43%という状況でございます。
 最後に6ページにつきましては、地域別最低賃金の最高額と最低額の推移を、時間額に統一されました平成14年以降のデータとして掲載させていただいております。
 以上、駆け足となりましたが、事務局からの資料の説明は以上でございます。

○藤村委員長
 どうもありがとうございました。ただいま御説明いただきました資料について、何か御質問がありましたら、どうぞ、していただきたいと思います。よろしいですか。どうぞ、佐久間委員。

○佐久間委員
 ありがとうございます。まず、中小企業施策関係の資料を取りまとめていただきまして、ありがとうございました。なかなか成果というのは、私たちがものづくり補助金を実行している段階であっても、そのサンプル数とか、どれだけの結果が出たというのはとりにくいところでございます。今、厚生労働省さんとか中小企業庁が実施している施策は、全て入っているのではないかと思います。ありがとうございます。
 もう一点なのですけれども、資料No.3の未満率、影響率の関係で、これもちょっと難しいかもしれませんが、未満率、影響率のカウントは労働者数なのですけれども、実際に企業数がどのぐらいあるかというのは、今年も取りまとめが難しいでございましょうか。例えば1.9%とか13.8%がどれだけの企業数になるかとか、その取りまとめというのは出ないものでしょうか。

○藤村委員長
 どうでしょう、事務局、いかがですか。

○松本賃金課長補佐
 こちらのデータにつきましては、労働者単位ではとれるのですが、企業数、企業の割合という形では、難しいという形でございます。

○佐久間委員
 わかりました。

○藤村委員長
 そのほか、御質問はございますでしょうか。どうぞ、橋本委員。

○橋本委員
 今、佐久間さんからも話が出ていましたけれども、中小企業の支援策の部分について、業務改善助成金については、受付が確か1,000件で、前年度より100件程度の増加ということでしたでしょうか。

○松本賃金課長補佐
 前年よりは90件程度増えている。

○橋本委員
 そういう形で、幾つかの助成金等々を紹介していただいていますけれども、そういった実績値、予算に対してどのぐらい、受付件数がどのぐらい、といったものを全部が全部示せるとは思いませんけれども、把握できるものについては、できたらお示しいただけないかと思います。生産性向上策というのは結構思い切ったという話で、なかなか難しい問題だとは思うのですけれども、現実が今どうなっているか、こんな助成金があるよというのと同時に実績をとれるものについては出していただければ、検討する際に役立つのかなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○松本賃金課長補佐
 一部手元で持っているものはあるのですが、きちんと整理した形で、また次回にお示しするという形でもよろしいでしょうか。

○橋本委員
 はい。

○藤村委員長
 そういうデータは、労働側の委員の皆さんはよろしいですか。

○冨田委員
 労側としても、実態は把握させていただきたいと思っておりますので、そうしたデータを提示いただけるようであれば、私どもからもお願いしたいと思います。

○藤村委員長
 次回の目安小委員会で、発表できるようにお願いしたいと思います。そのほか、御質問はございますか。よろしいでしょうか。では、配付資料に関する議論は以上としたいと思います。
 それでは、次に、前回の委員会で皆様にお願いをしたとおり、目安についての基本的な考え方を表明していただきたいと思います。
 初めに、労働者側委員から、どうぞお願いいたします。

○冨田委員
 それでは、まず、私から本年の目安に対する労働者側委員の基本的な考え方を総括的に発言し、委員の方からそれぞれ補強の意見を申し上げるという形で表明をさせていただければと思います。
 初めに、私から労側の基本的な課題認識として3点申し上げたいと思います。
 まず、1点目でございますが、現在の地域別最低賃金の絶対額の低さについて申し上げたいと思います。現在の地域別最低賃金の最高額の985円は年間2000時間働いても、ワーキングプアと呼ばれる年収200万円に届かず、最低額の761円は年収150万円をかろうじて超える水準となってございます。この金額では、憲法第25条、労働基準法第1条、最低賃金法第1条という法の求める、健康で文化的な最低限度の生活を営むに足る水準として十分ではないと認識していることを、まずは申し上げておきたいと思います。
 現在、最低賃金近傍で働く人の多くは、いわゆる非正規労働者と呼ばれる方でありますが、非正規雇用で働く人は、今や全就労人口の4割を占めるまでに増加をしてございます。かつては主婦パートや学生アルバイトなど家計補助者が中心でございましたが、現在では、いわゆる不本意非正規、ひとり親世帯、育児、介護など様々な事情を抱えながら、自らが主たる生計者として家計を支えている人が少なくないと認識してございます。
 連合が昨年6月に実施をしました、非正規雇用で働く者の生活実態調査によれば、世帯収入に占める本人の賃金収入が全てという割合が男性で約4割、女性で2割、世帯収入の大部分を占めるまで含めますと、男性は5割超、女性は約3割に上っており、この割合は年々増加の傾向にございます。
 翻ってみれば、そもそも最低賃金引上げの目的は、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善のみならず、労働者の生活の安定、労働力の質的向上、事業の公正な競争力を確保し、国民経済の健全な発展に寄与することを目的としていると考えてございます。
 2007年の最低賃金法改正以降、2008年の円卓合意、2010年の雇用戦略対話合意の中では、絶対水準を意識し、地域別最低賃金引上げの流れをつくり、そして、ここ数年はニッポン一億総活躍プラン、働き方改革実行計画の趣旨にあります、非正規労働者の処遇を改善し、全体の消費を引き上げていくためにも、過去最高額となる目安を示してきたと受けとめてございます。
 しかしながら、現在の日本の経済を見てみますと、土台となる個人消費は緩やかな改善が見られるものの、経済発展に寄与する水準までには至っていないのが現実だと思います。
 その要因の一つが、現在の最低賃金の水準の低さにあると考えてございます。冒頭申し上げましたとおり生活の安定には不十分な水準であるがために、消費マインドを回帰するまでには至っていないのではないかと考えてございます。
 今ほど申し上げました状況を勘案しまして、労側としては本年示す目安によって、まずは800円以下の県をなくし、トップランナーであるAランクは1,000円を超えていくべきと考えてございます。加えて、時給1,000円は通過点にすぎないとも考えており、先ほど申し上げました、最低賃金法の目的を達成するに足るナショナルミニマムとしての水準はいかにあるべきなのか、この議論を深めていくべきと考えてございます。
 なお、最低賃金を引き上げていくためには、中小企業、小規模事業者の基盤強化が必要であることは労側も承知しており、中小企業、小規模事業者の基盤強化には、先ほどお示しいただいた資料、本年の骨太方針に記載された政府の各種支援策が早期、確実に実施されることは当然のこと、需要増に欠かせない要因であります個人消費を喚起していくためにも、最低賃金引上げのスピードを停滞させてはならないと考えていることもつけ加えさせていただければと思います。
 課題の2点目は、地域間格差の是正についてであります。地域間格差の是正については、公労使3者共通の課題認識の下、ここ数年最高額と最低額の割合の改善に努めてまいりましたが、額差については拡大に歯止めがかかっていない状況にございます。深刻さを増す人手不足を背景に、各都道府県の地域別最低賃金の水準差が低い地域から高い地域への働き手の流出の一因にもなっており、本年においては、額差の改善につながる目安を示すべきと考えてございます。なお、額差については最高額と最低額だけではなく、各ランク間の額差についても改善すべきと考えていることをつけ加えておきたいと思います。
 3点目は、消費税増税への対応についてであります。2019年度の地域別最低賃金は10月発効予定でありますが、消費税も同時期に2%引き上がる予定となってございます。これまでの増税のタイミングと異なることもあり、消費税増税の影響を目安にどのように勘案していくべきなのか、公労使3者で議論をすべきと考えてございます。
 以上が、本年における労側の基本的な考えであります。本年度の目安額につきまして、様々な現場の実態を熟知する皆様方と、この小委員会で真摯な議論を積み重ね、決定してまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 以降は、それぞれの委員から各論点につきまして、補強意見を申し上げさせていただきたいと思います。

○永井委員
 それでは、私からナショナルミニマムとしてふさわしい水準について、最低生活賃金の観点から2点御意見を申し上げたいと思います。
 1つ目は、最低必要生計費として、現在の水準では不十分だということでございます。連合は最低必要生計費を満たす賃金水準として、マーケットバスケット方式で連合リビングウェイジを都道府県ごとに5年に一度算定をしております。最新の数字は2017年でございますが、2017年基準では900~1,120円となっており、全ての都道府県で時給900円を上回らなければ、単身世帯でも生活できないという結果になっております。
 連合リビングウェイジは、労働者として健康に働き続けるための基本である衣食住、そして、保険、医療、社会的、経済的つながりに必要となる交通・通信費、健康で文化的な最低限度の生活のために必要な教育費などをベースに算定しており、決して華美なものは含んでいないということをつけ加えておきたいと思っております。
 2点目は、現在の日本の最低賃金、全国加重平均で874円が国際的に見て、先進国で最低レベルの水準にあるということでございます。国によって物価も社会保障も異なるため単純比較はできませんが、イギリス、ドイツ、フランスでは日本円換算で1,000円を超えておりますし、アメリカでは1,500円を超える地域もあるということでございます。平均賃金の中央値との比較で見ても日本は40%程度にとどまっており、OECD平均の50%超を下回っているという状況にございます。
 昨年、私はこの場でも、私どもの組織でも多い、ひとり親世帯の問題にも触れさせていただきました。ひとり親世帯の8割が母子世帯、その4割以上が非正規、フルタイムでは働くことができていないという状況でございます。
 私どもUAゼンセンの調査では、月給平均で12万円ぐらいということで、先ほど申し上げましたような世界水準と比べた中でも、今のグローバル社会の中を考えれば、将来を担う世代を育むという義務がある中では、欧米並みの水準も意識しつつ、健康で文化的な最低限度の生活を営むに足るナショナルミニマムとしてふさわしい賃金水準は、いかにあるべきかという議論を深めるべきであると考えております。以上です。

○伊藤委員
 それでは、私から労働の対価としてという意味での最低賃金について、簡潔に2点ほど御紹介させていただきたいと思っています。
 まず1点目、非正規労働者が現在の働き方を選んだ理由ということで、こちらは連合の調査も披瀝しながら、若干御意見させていただきたいと思っております。
 本来は、正社員として働きたいのに、不本意ながら非正規で働いている方々、いわゆる不本意非正規と呼ばれる方も少なくないわけでございますが、育児とか介護、こうした家庭の事情により、残業や出張、転勤が非常に難しい。そうしたために非正規で働いているという人たちも当然少なくないわけでございます。
 連合の調査の結果によりますと、現在の非正規という働き方を選んだ理由で、4割以上の方が正社員の仕事に就けなかったという御答えを選択していらっしゃる。また、同じ調査で5割弱の方々によると、家事ですとか育児、地域活動、こうしたことに参加せざるを得ないことから、時間の調整が可能な働き方をしたいという方も当然いらっしゃるわけでございます。
 いずれにしましても、非正規で働かざるを得ない、あるいは働くことを選択する全ての働く方々が生きがい、働きがい、こうしたことを通じながら、豊かに働くことができる社会を実現すべきだと思っております。
 仕事の内容やアウトプットにかかわらず、雇用形態のみで最低賃金、いわゆる低賃金という形で雇用されているとすれば、これは大きな課題であると考えております。
 2点目は、初職につく方の賃金、すなわち高卒初任給との均衡について少し着目したいと思っております。
 連合は、2019年春季生活闘争の方針の中で非正規労働者の賃金について、初職につく際の賃金ということを重視しながら、高卒初任給見合いの1,050円を最低到達目標といたしました。その結果、前回差しかえていただいた資料、こちらにもありますとおり、時給で働いている人たちの改善額という意味では、単純平均で24円を超えておりまして、平均時給で1,004円となっております。本日の追加資料を見ましても、高卒初任給、ハローワークにおけるパートタイム労働者の募集賃金額のいずれも引き上げ傾向にあると思っております。特に高卒初任給におきましては、所定内実労働時間換算で1,000円前後まで引き上げられております。また、ハローワークにおけるパートタイムの労働者の募集賃金額は全国どこを見ても、地域別最低賃金額をかなり上回る額で募集してございます。
 これは、労働力人口が減少する現下の環境におきまして、企業の存続、発展に向けまして、まず人材確保が重要だということの表れではないでしょうか。中小企業、小規模事業者こそ賃上げによって人材を確保しなければ、事業存続もままならないということも見てとれます。
 私の所属する団体におきましては、ここ数年でとりわけ中小企業において、賃上げを上回る額で初任給の引上げが行われております。これは経営として、自発的に人材確保、流出の防止に向けた対策がとられているということなのでありましょう。現在の地域別最低賃金額は労働市場の実額から見ても、著しく低位に置かれているのではないか、したがって、早急な引き上げが必要ではないかと考えるところでございます。以上でございます。

○小原委員
 私から、最後に地域間格差の是正の観点から補強意見を申し上げたいと思います。
 先ほど、冨田委員から本年においては、額差の改善につながる目安を示すべきであると発言させていただきました。ランク区分を維持することについては、前回の目安全協での合意事項であると思いますけれども、そもそも1978年に目安制度を導入した目的は全国的な整合性のある決定が行われることであり、Aランクの目安が最も高くないといけないということではないと思っています。
 追加していただいた資料を見てもわかるとおり、2002年に時給表示に統一されて以降、最も額差が少なかったのは2003年の85.5%、額で103円です。これまで、時々の事情なども勘案しながら総合判断をもって目安を示してきましたけれども、結果として、現在の額差は人材流出、地域経済に与える影響に対するC、Dランクの危機感につながっていると思います。
 これは、前回の資料で御配りいただきましたけれども、昨年の地方審議で、Dランクが16県すべてで目安を上回り、その多くが目安プラス2円ということで、C、Dランクのトータル23県が目安を上回る引き上げで結審したということです。私たちの立場で申し上げますと、格差がCとDだけ2円あいていた、その額差は地方最低賃金審議会の審議で埋めていただいたと考えています。こうした地域の危機感は額差を審議で埋めてきたということを踏まえて、額差の改善につながる目安で応えるべきだと思っています。そのためには、C、Dランクの大幅な引き上げが必要だと考えます。以上でございます。

○藤村委員長
 どうもありがとうございました。それでは、引き続き使用者側の委員から意見表明をお願いしたいと思います。

○佐久間委員
 それでは、私から今年度の目安審議における使用者側の見解を申し上げます。
 初めに、中小企業を取り巻く経営環境について申し上げます。
 中小企業庁が6月27日に公表した中小企業景況調査によれば、全産業の前年同期比の業況判断DIは4~6月期にマイナス17.3、小規模企業はマイナス18.4であり、依然として大幅なマイナスの値となっており、前期比で見ても2期連続してマイナス幅が拡大するなど、先行きに対する不安は根強いものがあります。
 また、日本銀行が今月1日に公表した6月の短観においても、中小製造業の業況判断指数がマイナス1となり、2016年9月以来2年9カ月ぶりにマイナスの値へと転落しています。これは、米中貿易摩擦の影響や中国経済の不透明感の高まりなどが重なった結果であると考えられ、3カ月後の先行きについてもマイナス5であり、経済の不透明感が強く現れていると言えます。
 中小企業の経営状況に目を転じると、企業が賃金引上げを検討する際の考慮要素である労働分配率は、規模が小さくなるほど高くなっており、中小企業では70%台で推移しております。これは、中小企業の経営者が限られた利益の中から極めて高い割合で賃金原資を捻出しており、支払余力は非常に乏しい状況であることを示しています。加えて、年々深刻化する人手不足や働き方改革への対応も喫緊の課題となっております。
 こうしたことは中小企業者数の推移にも現れており、2009年の421万者から2016年には358万者へと63万者も減少しており、2014年からの直近2年間だけでも23万者も減少しています。こうしたことからも中小企業の経営環境は極めて厳しい状況にあります。
 次に、今年度の目安審議に関する諮問について申し上げます。
 諮問文では6月21日に閣議決定された、「経済財政運営と改革の基本方針2019」などに配意した調査審議を求めています。政府方針には、「最低賃金についてはこの3年、年率3%程度を目途として引き上げられてきたことを踏まえ、景気や物価動向を見つつ、地域間格差にも配慮しながらこれらの取組みと相まって、より早期に全国加重平均が1,000円になることを目指す。」とあります。「より早期に」との表現が盛り込まれていることから、全国の中小企業から、これまで以上の引上げを求められるのではないかとの懸念や不安の声が噴出しています。一方で、この政府方針には、具体的な目標年次や引上げ率が示されていない上、中小企業の生産性向上に向けて思い切った支援策を講ずることが明記されております。このことからしても、機械的に最低賃金の引上げを行うということではなく、足下の景況感や国内外の経済情勢、中小企業を取り巻く経営環境・経営実態を十分に踏まえた審議を行うべきであります。
 以上のような認識に基づき、今年度の目安審議における使用者側の基本的な考え方を申し上げたいと思います。
 まずもって、最低賃金制度は、最低賃金法第1条に記されているとおり、賃金の低廉な労働者に対するセーフティーネットであることから、賃金引上げや消費の拡大といった政策を目的としたものではありません。加えて、同法第9条には、地域別最低賃金の決定に当たっては、労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならないと明記されています。
 したがって、中央最低賃金審議会においては、あくまでこの3要素に基づき、法で定められた決定の原則に則した目安審議を行うべきであります。
 使用者側は各種統計等に基づく調査審議を行うべきこと、中小企業の賃金引上げの実態を示し、先の3要素を総合的に表している「賃金改定状況調査結果」の、とりわけ第4表を重視する旨を主張してきました。この考えは現在においても何ら変わるものではありません。
 厚生労働省の最低賃金に関する基礎調査によれば、従業員30人未満の企業における全国平均の影響率は、2012年度の4.9%から2018年度は13.8%と6年間で急激に上昇しています。前年の2017年度の11.8%と比べても、2.0ポイント増の大幅アップとなっています。地域別では神奈川が25.6%と25%を超え、青森21.6%や鹿児島19.6%、大阪19.4%と20%前後に達しています。全国平均以上の地域は19道府県に及んでいることからしても、多くの地域で地域別最低賃金近傍に多くの労働者が張り付いており、最低賃金の引上げが中小企業に与える影響は極めて大きいことは明確です。
 最低賃金は、企業の経営状況のいかんにかかわらず、全ての労働者にあまねく適応され、仮に下回る場合には罰則の対象になることから、通常の賃金引上げとは異なる性格を有しています。生産性が向上し、収益が拡大した企業が賃金引上げに前向きに取り組むべきことは言うまでもありせん。
 しかし、強制力のある最低賃金の引上げは慎重に判断されるべきであり、生産性の向上や取引適正化への支援等によって、中小企業が自発的に賃金引上げをしやすい環境を、まずもって整備すべきであります。
 多くの中小企業は、「働き方改革関連法」の施行を契機に、今まさに生産性向上に取り組んでおります。「最低賃金を引き上げた結果として生産性が上がる」のではなく、まず生産性を上げることによって、それが持続的な賃金引上げにつながり得るということです。
 近年の最低賃金は、いわゆる「時々の事情」によって、景気や経営の実態から乖離した大幅な引上げが行われ続けてきたと認識しています。これ以上実態にそぐわない、合理的な根拠を明確に示すことができない最低賃金の大幅な引上げが続き、多くの中小企業がさらなる人件費の増大を強いられることになれば、事業の継続、ひいては企業の存続自体が脅かされ、雇用や地域経済に重大な影響が及ぶことが懸念されます。
 したがって、今年度の目安については、これまで以上に慎重な審議・判断が求められていることを肝に銘じておく必要があります。
 近年、政府方針に配意した目安審議が求められた結果、公益委員見解として、根拠が必ずしも明確ではない大幅な引上げ目安が提示されてきました。その結果、地方最低賃金審議会における審議の混乱や、目安に対する信認の大幅な低下を招いていると認識しています。地方の使用者側委員からは、中小企業の実態や地域経済の実情、近年続いている大幅な引上げによる影響を踏まえた目安審議を求める声が多数寄せられています。こうした声を十分に意識して、納得感のある目安を提示すべく、審議を進めていくことが必須であると考えています。
 今年度の審議に当たっては、明確な根拠に基づいた目安を提示するべく、最賃法で定められている決定の原則に沿って、慎重の上にも慎重に審議を行うべき旨を主張いたします。使用者側は毎年第4表を重視した審議を求めており、今年度の審議におきましても、重ねてこの点を強調いたします。
 今年度の目安審議における使用者側の見解は、以上でございます。

○橋本委員
 佐久間委員から使用者側見解を述べさせていただきましたけれども、私から2点ほど補完的に発言させていただきたいと思っております。
 1つは、先般日商が行った最低賃金引上げの影響に関する調査の内容について御紹介したいと思っております。
 日商では、本年春に会員の中小企業2,775社を対象に調査を実施いたしました。この調査結果では、昨年度の改定後、最低賃金を下回ったため、事業所内の最低賃金を引き上げた企業、いわば最低賃金引上げの直接的な影響を受けた企業の割合が38.4%、約4割に上っております。その割合は年々高まってきております。
 また、あくまで仮のお話ですが、今年度の最低賃金が30円あるいは40円引き上げられた場合、どのような対応策をとりますかと尋ねたところ、30円、40円の場合でも4割の企業が設備投資の抑制を挙げております。次いで正社員の残業時間の削減、一時金の削減といった回答が続くことから、最低賃金の大幅な引上げは、設備投資による生産性向上の阻害要因になることに加え、賃金増には必ずしも直結しないということがうかがえる結果となっております。
 2つ目は、せんだって中小企業3団体で行った最低賃金に関する緊急要望について御報告させていただきます。
 最低賃金の引上げの影響を受ける中小企業が増加している中、5月14日の経済財政諮問会議、与党内の一部は、さらなる大幅な引上げや全国一律化に関する議論が高まり、これを受けて、私どもに対して大変多くの中小企業者から不安を訴える声が寄せられました。
 こうした状況に応え、日本商工会議所は、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会との連名で、5月28日に急遽緊急要望を政府・与党に提出いたしました。
 この緊急要望の中では、先ほど佐久間委員から使用者側見解の中でも触れておりますが、最低賃金の審議では中小企業の経営実態を考慮することにより、納得感のある水準を決定すべきであり、数字ありきの引上げには反対である。そして、政府は賃金水準の引上げに際して、強制力のある最低賃金の引上げを政策的に用いるべきではなく、生産性向上や取引適正化への支援等により、中小企業が自発的に賃上げできる環境を整備すべきであると、こういう内容を特に強く主張した次第であります。
 この時期に、中小企業3団体がそろって緊急に要望を行うことは近年なかったことであります。それだけ今年の最賃関係の議論については、中小企業経営者の間に危機感がかつてないほど高まっているといった実情にあることを御理解いただきたいと思っております。
 今年度の目安賃金におきましては、今2点申し上げましたけれども、こうした点も考慮していただきますようお願いしたいと思っています。以上でございます。

○正木委員
 私からも補足させていただきます。政府の働き方改革実行計画等では、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていくとされておりましたけれども、実際には、名目GDP成長率を上回る最低賃金の引上げが続いております。企業業績のいかんにかかわらず、賃金を引き上げなければならないということで、地方の中小企業の経営者からは近年の3%の最低賃金引上げに伴う人件費の増大が経営を圧迫しており、これ以上の引上げは限界との厳しい声が多数寄せられております。
 あわせて、近年の最低賃金の引上げが我が国経済に及ぼした影響と効果の検証を求める意見も増えてきております。昨日の選挙後の安倍総理の「上げると言えば簡単だが、経済にどういう影響を与えるかを考えないといけない」との御指摘も様々な声を受けとめての重いコメントだと認識しております。まさに中央最低賃金審議会の役割は国民が選択した政治的なメッセージも受けとめつつ、エビデンスベースでしっかりとした検証をした上で、説得力のある目安を示すことだと考えております。十分な検証がなされないまま生産性向上に先行して、最低賃金のさらなる引上げを求めるということは中小企業の経営、さらには、地方経済に悪影響を及ぼすのではないか。雇用や事業継続への影響が顕在化してからでは手後れであるとの認識を関係者間で十分に共有しながら、今年の目安審議を進めていくべきだと考えております。
 また、先ほど労働側からの御指摘の中で地域間格差の是正ということがございましたけれども、同一労働同一賃金に関する改正で、7月8日に職業安定局長通達が示されております。これは同じ職種で、同じ程度の能力、経験を持つ派遣労働者について、一般労働者と同等以上の賃金を支払うことになっているため、一般労働者の平均的な賃金の額を示したものです。
 この中で、平成30年度職業安定業務統計による地域指数が示されております。今後この計数に応じた労使協定がそれぞれの地域で締結されて、派遣労働者の賃金における地域間の差の相場を形成していくということになろうかと思います。
 この地域指数によりますと、全国平均を100としたときの東京の指数が114.1、鹿児島は86.4、最も低い沖縄が84.4となっております。東京と鹿児島の差について、東京を100として換算しますと鹿児島は75.7となります。第1回目安小委の資料No.1の44ページで、東京が985円、鹿児島が761円で格差が77.3ということでございましたので、こうした意味では、最低賃金による地域間格差の方が同一労働同一賃金の観点から設けられた地域指数よりも小さいということになります。政策の整合性の観点から言えば、少なくとも地域間格差が大き過ぎることはないということについて指摘しておきたいと思います。以上です。

○藤村委員長
 わかりました。まずは、公益の委員から質問があればどうぞ、よろしいですか。
 では、ただいまの双方の主張について、御質問があればそれぞれからお願いをしたいと思いますが、いかがでしょうか。冨田委員、どうぞ。

○冨田委員
 もし、私の聞き方に誤解があったら、そのように申し上げていただければと思うのですけれども、中身の話ではなくて、先ほど正木委員から昨日の選挙の結果をもって、そのことが民意を表しているような、政治の話に言及されたように私はちょっと受けとめたものですから、ここはそうした場ではないのではないかと思います。私どもは、あくまでも現政府の閣議決定に基づいた調査審議をしているわけであって、昨日の選挙結果に左右されるものではないと認識をしてございます。もしも私の誤解であったら大変申し訳なく思いますが、ちょっと違和感を持ったということだけを一言申し上げさせていただければと思います。

○正木委員
 私としては、いろいろな声を受けとめての総理のコメントがあったにしても、中央最低賃金審議会の役割はエビデンスベースでしっかりとした検証をした上で、説得力のある目安を示すことだと申し上げたということですので、政治的メッセージがどうこうであるから審議会をやる意味がないということを申し上げたつもりはございませんので、もし誤解があれば、今言った趣旨でございます。

○藤村委員長
 いいですか。

○正木委員
 はい。

○藤村委員長
 そのほか、御質問はございますか。
 今、双方の主張をお伺いしている限り、かなりの開きがあります。これからは公労、公使で個別に主張を伺いながら、大きく開いているところを詰めていきたいと思いますが、そういう方式でよろしいでしょうか。それでは、まずは公労から始めたいと思います。

(第2回全体会議)

○藤村委員長
 ただいまから、第2回目の全体会議を開催いたします。
 本日は、本年度の目安取りまとめに向けて、労使双方から基本的な考え方をお出しいただきまして、それに基づいて御議論をいただきました。その結果、双方の御主張がかなり明確になってきたと考えますが、その主張の隔たりは相当大きいなと思います。
 そこで、次回の目安小委員会において、さらなる御議論を行っていただき、目安の取りまとめに向けて努力をしていただきたいと思います。
 それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いいたします。

○松本賃金課長補佐
 次回の第3回目安小委員会につきましては、7月25日木曜日の15時から、こちらと同じですが、厚生労働省専用第21会議室で開催させていただきます。

○藤村委員長
 それでは、本日の小委員会は、これをもちまして終了といたします。
 議事録の署名につきましては、伊藤委員と佐久間委員にお願いしたいと思います。どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。

 

(了)
<紹介先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

  代表: 03-5253-1111

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