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2017年7月12日 平成29年第2回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局

○日時

平成29年7月12日(水)
10:00~13:00


○場所

厚生労働省9階省議室


○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、中窪委員、藤村委員

【労働者委員】

小原委員、冨田委員、永井委員、新沼委員

【使用者委員】

秋田委員、小林委員、高橋委員、橋本委員

【事務局】

井上大臣官房審議官、増田賃金課長、菊池主任中央賃金指導官、伊勢中央賃金指導官
由井賃金課長補佐、大野賃金課長補佐

○議題

平成29年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

(第1回全体会議)

○仁田委員長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回目安に関する小委員会を開催いたします。議題に入る前に、事務局に人事異動がありましたので御紹介をお願いします。


○大野賃金課長補佐
 この度、厚生労働省の人事異動により大臣官房審議官が交代しておりますので、御紹介いたします。7月11日付けで大臣官房審議官となりました、井上でございます。


○井上大臣官房審議官
 7月11日に労災、賃金担当の大臣官房審議官を拝命いたしました、井上と申します。よろしくお願い申し上げます。


○仁田委員長
 よろしくお願いいたします。それでは、議題に入ります。まず、用意いただいた資料について事務局から説明をお願いします。


○大野賃金課長補佐
 私から説明させていただきます。本日はお手元の資料のほかに、各種団体の要望書の一部を回覧しておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 次に配布資料について説明いたします。資料No.1を御覧ください。平成29年賃金改定状況調査の結果です。最初のページでは、本調査における調査地域、調査産業等についてお示ししております。主要な調査事項は、昨年6月と本年6月の月間所定労働日数、1日の所定労働時間数と基本給及び諸手当でありまして、そこから賃金の上昇率などを算出しております。
 次ページ、第1表を御覧ください。こちらは今年1月から6月までに賃金の引上げ、あるいは引下げを実施した、あるいは実施しなかったという区分で、事業所単位で集計したものになります。産業・ランク計を見ていただくと、1~6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合が47.9%、下の括弧内に書いてあるのが、昨年の実績の43.1%ですので増加しております。ランク別に見ると、Aが48.6%、Bが51.9%、Cが47.4%、Dが44.4%となっています。それから、今年の1~6月で賃金の引下げを実施した事業所の割合が0.7%となっています。昨年は0.6%です。
 産業別で見ると、今年1~6月までに賃金の引上げを実施した事業所の割合が高いのは、右から2つ目の医療,福祉で67.4%、一番低いのは、その左側の宿泊業,飲食サービス業で35.8%となっています。
 2ページ、第2表を御覧ください。回答のあった平均賃金改定率を事業所単位で集計したものです。産業・ランク計で見ていただくと、賃金引上げを実施した事業所の平均賃金改定率は2.6%、真ん中にありますが、賃金引下げを実施した事業所はマイナス6.6%、改定を実施した事業所と実施しなかった事業所を合わせて全体を平均した平均賃金改定率は、1.2%となっています。昨年の1.1%からは0.1%ポイント上昇しています。
 3ページ、第3表、賃金引上げを実施した事業所の賃金引上げ率の分布の特性値になります。こちらも産業・ランク計を見ていただくと、第1・四分位数が1.2%、中位数が2.0%、第3・四分位数が3.3%で、分散係数が0.50%となっています。分散係数は昨年とほぼ同水準となります。
 4ページ、第4表、一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率です。第4表の(1)は男女別、次ページの第4表の(2)は一般・パート別に見られるようになっています。まず、第4表の(1)の産業・男女計を見ると、ランク計の賃金上昇率が1.3%で、昨年の1.1%から0.2%ポイント増加しています。ランク別で見ると、Aが1.4%、Bが1.4%、Cが1.2%、Dが0.9%となっており、昨年と比較すると、各ランクとも上昇又は同水準となっております。
 産業ごとに見ると、製造業が1.0%、卸売業,小売業が1.2%、宿泊業,飲食サービス業が1.9%、医療,福祉が1.6%、その他のサービス業が1.1%となっています。その下の男女別の賃金上昇率を見ると、産業・ランク計で男性が1.1%、女性は1.7%で、男女とも昨年より上昇しています。
 5ページ、第4表の(2)は一般・パート別の賃金上昇率です。産業・ランク計で、一般・パートともに1.3%の上昇率です。一般労働者は、昨年より0.3%ポイント上昇、パートは昨年と同水準となっています。
 次ページ以降、参考1から参考5の表をお付けしております。こちらは、第1表から第4表まででお示しした集計結果を、もう少し細かく集計したものです。適宜御参照いただければと思います。
 この同じ資料No.1の最後のページになりますが、付表ということで、賃金改定状況調査における労働者の構成比率と、年間所定労働日数をお付けしております。1のパートタイム労働者比率については、平成28年は24.4%、平成29年は25.4%となっています。2の男女別の労働者数比率については、平成29年は男性が56.5%、女性の比率が昨年に比べて0.6%ポイント上がっています。資料No.1の御説明は以上となります。
 続いて、資料No.2、生活保護と最低賃金の資料を御覧ください。資料No.2は、生活保護と最低賃金の比較をしたものです。1ページは、生活保護水準と最低賃金額との関係を示したグラフで、ともに平成27年度のデータに基づくものです。グラフの中の右上にある破線の△が生活保護水準で、生活扶助基準の人口加重平均に住宅扶助実績値を加えたものになります。実線の◇が最低賃金額で法定労働時間を働いた場合の手取り額を示しております。この資料では、全ての都道府県において生活保護水準が最低賃金を上回る逆転現象が生じていないことが確認できます。
 2ページ目、こちらは、1ページ目の最低賃金のほうのグラフを平成28年度のものに更新したものです。生活保護水準は1ページ目と同じで、最低賃金が1ページ目より引き上がった形のグラフになりますので、こちらも同様に逆転現象は生じておりません。
 3ページ目、47都道府県について最新の乖離額を示すとともに、その乖離額の変動について要因分析したものです。左から3番目の列(C)の額は、今年度の乖離額です。列(D)の額が昨年度の目安小委員会で示した乖離額です。それから、その右の列(E)に示した額が、昨年度から今年度の乖離額の変動分です。乖離額が変動した要因としては、昨年度の最低賃金の引上げ、それから、最低賃金を手取り額に換算するために乗じる可処分所得比率の変動、それから、生活扶助基準の見直し及び国勢調査の更新による変動、そして住宅扶助実績値の増減があります。
 具体的な見方ですが、北海道を例にとると、列(E)に乖離額の変動マイナス52円と書いていますが、このうち昨年度の最低賃金の引上げがマイナス22円、可処分所得比率が低下したことによる影響がプラス1円、生活扶助基準の見直し等による影響がマイナス33円、そして住宅扶助の実績値が増加したことによる影響がプラス2円となります。このグラフの下の※2に書いてあるとおり、端数処理の関係で少し内訳と合計の数値にずれが生じる都道府県もありますが、これらの4つの影響により、昨年度から今年度の乖離の変動額が求められます。資料2の説明は以上です。
 次に、資料No.3を御覧ください。地域別最低賃金額、影響率及び未満率に関する資料です。1ページ目は、過去10年間の推移を「最低賃金に関する基礎調査」に基づき示したもので、一番右の列が、平成28年度のデータです。未満率についてランク別に見ると、Aが4.2%、Bが1.6%、Cが2.0%、Dが1.5%、ランク計が2.7%となっています。平成27年度と比較すると、A、Bランクが上昇して、C、Dランクが低下した状況となっています。同じ資料で影響率についてランク別に見ると、Aが14.5%、Bが8.6%、Cが8.6%、Dが10.1%、ランク計は11.0%です。こちらも平成27年度と比較すると、いずれのランクにおいても上昇している状況となっています。
 2、3ページ目は、平成29年目安全協報告を踏まえて、新たにお示しする資料ですが、未満率と影響率の都道府県別のグラフです。2ページ目は、最低賃金に関する基礎調査に基づく未満率と影響率の都道府県別のグラフです。上のグラフの影響率、四角の破線ですが、こちらでは神奈川、大阪が高く、山梨が一番低くなっています。下のグラフの未満率を示したものでは、東京、大阪が高く、島根が一番低くなっています。
 3ページ目、こちらも2ページと同様のグラフを賃金構造基本統計調査に基づいて示したものです。同じく影響率は、神奈川、大阪、北海道で高く、未満率では大阪と神奈川が高くなっています。資料No.3の説明は以上です。
 資料No.4を御覧ください。各都道府県別の賃金分布に関する資料です。こちらは平成28年の賃金構造基本統計調査を基にした賃金分布です。一般労働者・短時間労働者の計、一般労働者のみ、短時間労働者のみの順で、それぞれA~Dランクまで総合指数の順に都道府県を並べています。こちらは個別の御紹介は割愛させていただきますが、適宜御参照いただければと思います。
 資料No.5、最新の経済指標の動向です。今年度から指標の一部を第1回の主要統計資料に統合するとともに、ほかの指標については、5年間の推移とともに直近の数字を紹介する形にしております。
 まず、鉱工業生産指数です。平成27年、平成28年は前年比マイナスですが、直近3か月は、いずれも前年同月比はプラスで推移しています。次に、第3次産業活動指数については、平成27年、平成28年は前年比プラス、直近の数字で、2月は前年同月比はマイナス、3、4月は、前年同月比はプラスとなっています。
 企業倒産件数については、平成24年以降で減少傾向が続いています。今年の5月は前年比19.5%の増加となりましたが、直近6月は前年同月比マイナス7.5%でした。
 商業販売については、平成27年、平成28年は前年比マイナスで推移していましたが、直近3か月は前年同月比プラスで推移している状況です。
 個人消費については、平成27年、平成28年は前年比マイナス、平成29年3月以降で見ると、4月は前年同月比マイナスでしたが、5月はプラスとなりました。
 2ページ目、業況判断です。日銀短観の平成29年6月の調査結果が発表されております。最新の6月調査では、全ての規模で3月の調査から改善しております。その下の表の業況判断(中小企業)とあるのは、中小企業庁の中小企業景況調査の前期比季節調整値の数字になります。平成29年4月~6月期はマイナス幅が縮小し、改善しております。
 賃金については、現金給与総額を前年同月比で見たものです。パートタイム労働者は、平成28年はマイナス0.1%となっています。直近の4、5月はプラスとなっています。
 労働時間については、直近3か月を見ると、所定内労働時間は前年同月比でおおむねマイナス、所定外労働時間は前年同月比で一般労働者はプラス、パートタイム労働者はマイナスとなっています。
 3ページ目、名目経済成長率の動向ですが、2016年度はプラス1.1%、一番右にある2017年度の1~3月期は、前期比でマイナス0.3%、年率換算でマイナス1.2%、前年同期比ではプラス0.5%となっています。なお、内閣府年央試算による経済見通しについては、今年度分はまだ数値は公表されておりませんので、2016年度分まで記載しております。
 その一番下の実質国内総生産における日本銀行政策委員の大勢見通しの中央値ですが、2017年度は実質国内総生産プラス1.6%を見込んでおります。
 4ページ目、消費者物価の見通しについてです。今年1月20日に閣議決定された「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」では、消費者物価指数(総合)について2017年度は、前年度比でプラス1.1%程度と見込んでおります。また、次の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、いわゆるコアCPI)ですが、日本銀行政策委員の大勢見通しの中央値は、2017年度はプラス1.4%、2018年度はプラス1.7%、2019年度はプラス2.4%、消費税引上げの影響を除くケースでは1.9%となっています。資料No.5の説明は以上です。
 最後、資料No.6、中小企業・小規模事業者に対する賃上げ等に関する支援施策をまとめたものです。1ページ目の目次にもありますが、資料の構成は、1.厚生労働省関係の最低賃金・賃金引上げ等に向けた生産性向上等のための支援策、2.中小企業庁関係の支援策、3.下請等中小企業の取引条件改善に向けた取組、4.支援施策等の実績等の4部構成となっております。資料の内容について御説明させていただきます。
 2ページ目、最低賃金・賃金引上げ等に向けた生産性向上等のための支援についてです。厚生労働省では、(1)最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業等ということで、最低賃金総合相談支援センターの運営、業務改善助成金、それから、業種別中小企業団体助成金の支給を行っております。このうち、特に2つ目の○にある業務改善助成金、こちらは事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた中小企業・小規模事業者に生産性向上のための設備・機器の導入経費等の一部を助成するものですが、平成28年度の第二次補正予算において助成率や、助成対象の拡充等を行っておりまして、平成29年度においても、補正予算の拡充内容を継続しております。
 また、左下にある(2)キャリアアップ助成金(処遇改善支援)は、有期契約労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給させた場合等に支給されるものですが、業務改善助成金と同様、平成28年度第二次補正予算において拡充した内容を継続して支援を行っているところです。
 右下の(3)、人事評価改善等助成金については、本年度から新設された助成金です。人事評価制度と賃金制度を整備することを通じて、生産性向上を図り、賃金アップと離職率の低下を実現した企業に対して助成金を支払うものです。
 3ページ目、その他の厚生労働省において実施した生産性向上等のための支援策をまとめております。平成28年以降、宿泊・飲食サービス業関係営業者の生産性向上のためのモデル事業、それから、地域金融機関等との連携、最低賃金の重点監督の機会に合わせた出張相談会の実施、雇用保険等の改正、生衛業「稼ぐ力」応援チームの実施など、様々な取組を行っておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 4ページ目、中小企業庁等における支援施策について、法律、予算、税制の3つの観点から支援策をまとめたものです。法律では中小企業等経営強化法が平成28年7月に施行されて、経営力向上計画の認定を受けた企業について税制優遇等の措置が講じられております。
 予算については、平成28年度補正予算等を通じて、商品・サービスの開発や、小規模事業者の販路の開拓に係る費用等を補助する事業を行っております。税制については、所得拡大促進税制により、雇用者への給与等支給額を増加させた場合の税額控除を行っているところです。
 5ページは、中小企業等経営強化法のスキームをまとめた参考資料ですので、こちらの説明は割愛させていただきます。
 6ページ、3.下請等中小企業の取引条件改善に関して、賃上げにも関係する項目を中心として関係省庁の取組をまとめたものです。下請等中小企業の取引条件改善については、平成25年及び平成26年の「経済の好循環実現に向けた政労使会議とりまとめ」においても取り組むとされたところではありますが、平成27年12月に「下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議」が設置され、大企業や中小企業に対するアンケート調査・ヒアリング等が行われています。それらの調査結果や、中小企業の意見や要望等を踏まえて、関係省庁が連携して、関係者の御協力をいただきながら様々な取組を実施しているところです。
 まず、同じ6ページの取組事項の一番上に記載されている下請法の運用基準改正では、労務費上昇時に一方的に単価を据え置いた場合等について、新たに下請法の違反事例に追加されております。また、次の下請中小企業振興基準改正においても、人手不足や最低賃金引上げに伴う労務費上昇の影響を十分に加味して取引対価の見直しを協議する旨が示されております。
 さらに、次の「価格交渉ノウハウ・ハンドブック」、「価格交渉事例集」の改訂で、最低賃金引上げ等に伴う労務費上昇の事例が追加されており、また、その下の業種別下請ガイドラインについても、本年、16業種中15業種でガイドラインの改定が行われたところです。
 7ページ、一番上の「自主行動計画の策定」については、自動車、建設、トラック運送業など、8業種21団体で業界の自主行動計画が策定されて、サプライチェーン全体での取引適正化、付加価値向上を目指すこととされております。
 その他、資料の真ん中辺りを見ていただくと、運送業関係で、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正とあります。これは、トラック運送事業者の荷積み・荷下ろし開始・終了の日時等の記録が義務付けられることとされたものです。また、建設業においても公共工事の設計労務単価が5年連続で引き上げられています。
 8ページは、支援施策等の実績を記載したものです。(1)厚生労働省関係としては、各種支援策の平成28年度及び最新の4月・5月の実績をまとめております。また、資料の下のほうの(2)には、平成28年度第2次補正予算成立後の活用状況について、補正予算で拡充した業務改善助成金とキャリアアップ助成金の実績をまとめたものです。第2次補正予算が成立した平成28年10月以降、直近5月までを見ると、いずれも前年同期比で、2倍以上の実績となっています。
 9ページ、上のほうの段では、中小企業庁関係の支援策の平成28年度実績をまとめておりまして、下の段では、下請Gメン(取引調査員)による、下請ヒアリングで得られた取引条件改善の動きをまとめたものです。こちらも適宜御参照いただければと思います。
 10ページ、こちらは下請法の運用状況ということで、公正取引委員会がまとめたものですが、勧告件数、指導件数、現状回復額の推移、下請法違反行為の自発的申出等のデータになっており、前年より増加傾向となっております。
 最後、11ページです。こちらは、「働き方改革実行計画」の最低賃金に係る取組の関連として、「総雇用者所得を増加させていく」という記載がありますので、参考として総雇用者所得の状況をお示しするものです。平成28年では、2.1%増となっております。資料の説明は以上です。


○仁田委員長
 それでは、ただいま御説明いただいた資料の内容につきまして御質問等がありますればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。


○小林委員
 中小企業・小規模事業者に対する支援策についてです。2ページ目の厚生労働省が行っております最低賃金・賃金引上げに向けた生産性向上等のための支援策の1ですが、都道府県から2つばかり意見が出ていますので、改善要望の意見ですが、お伝えしたいと思います。
 最低賃金総合相談支援センターについてです。相談業務については、原則、同一テーマについては複数回の相談に応じられないというような運営がなされているところもあるようですが、賃金規定の改定などというと、何回かの相談でないと対応できないというような状況があるそうです。ですから、複数回での相談にも応じられるような体制をお願いしたいということが1点です。
 もう1点は業種別の中小企業団体助成金の支給要件についてです。昨年から、全国団体向けに加えて、都道府県規模の助成金が加わったところです。これは拡充されて有り難いところですが、条件として、都道府県の場合、全県をカバーしていないと対象にならないというような制度になっているようです。県が広い所等については事業者が多いということで、南北に分けてしまうとか、また、都市部や、都道府県庁所在地に事業者が集中するような業界で、全県をカバーしなくても、業界の中では大多数を占めるような組合等があるそうなのです。それが助成の対象にならないような状況です。ある程度の構成員規模の所については対象にしていただくように、見直しをお願いしたいと思います。


○増田賃金課長
 ありがとうございます。支援事業についての御要望を頂きました。支援事業につきましては、これまでも、中小企業の皆様からの御要望、ニーズ等を踏まえて充実等を図ってきたところです。政府としても、中小企業への支援をしっかりやっていくということになっております。先ほどお話がございましたように、業種別の団体助成金も、昨年度、全国団体から都道府県規模の団体に拡大させていただいたところです。一方で予算の効率的執行という政府としての課題もあるわけですが、その中で、できるだけニーズに沿った支援措置が展開できるように、今後、検討してまいりたいと思います。よろしくお願いします。


○仁田委員長
 ほかにはいかがでしょうか。


○高橋委員
 資料No.6の支援策について、ここ何年間か、毎年のように政府の生産性向上等のための支援策について説明を受けているのですが、そうした施策の効果がどうであるのかということを検証することが大変重要なのではないかと思っております。過去何年か続けてこられている施策もあると思いますので、そうした施策を展開することによって、支援を受けた企業において、どの程度生産性の向上が見られているのかということについて検証していただいて、併せて、このようなメニューで支援しておりますというメニューだけを紹介するのではなく、政府の生産性向上施策によって、どの程度生産性が向上したのかということもこの場で報告を頂くという形に、是非お願いしたいと思います。以上です。


○増田賃金課長
 ありがとうございます。施策の効果をどのように表すかというのは、なかなか難しいところもあるわけですが、今回は、施策ごとに実績として、件数とか、そういうものを出させていただいたところです。これだけでは、なかなか成果が見えないのではないかという御指摘かと思いますが、これも、いろいろ御意見をお伺いしながら、どういう形で支援効果を見て、出していくことができるかということについては、引き続き検討させていただきたいと思います。


○仁田委員長
 ほかにはいかがでしょうか。これは前にも質問をしたかもしれないのですが、キャリアアップ助成金の処遇改善支援です。「有期契約労働者等」と書いてあるのですが、この「等」には何が入るのでしょうか。


○増田賃金課長
 すみません、正確には調べて御報告申し上げますが、基本的には、これは非正規の方々の賃上げを支援するものですので、短時間労働者、派遣労働者、有期労働者を含めて「有期契約労働者等」ということで表記させていただいております。


○仁田委員長
 それから、これは全員協議会で議論したほうが良かったのかもしれないのですが、影響率、未満率のデータを今年から都道府県別に出すということにしたわけですが、これは率で示しているのですが、全国の数字に換算すると、例えば影響率11%というと何百万人ぐらいになるのかというような、何か、そういう数字があると分かりやすいかなという気が少ししたのです。もちろん、賃金構造基本統計調査は5人以上ですし、賃金改定状況調査は100人未満あるいは30人未満です。つまり、パーフェクトな数字は出ないのですが、何らかの意味で賃金構造基本統計調査の結果をベースにその5人未満のところを何か推計すれば、大体、どれぐらいの人数が直接、最低賃金の影響を受けるのかとか、未満率で逆算すると、どれぐらいの人数がそこにはあるのかというような、そういう数字は、推定に過ぎませんが出せないことはないのではないかと思うのです。そういうものを実際に目安の報告に書くかどうかは別にしまして、我々が判断するときに、何かそういう、影響のスケールみたいなものを考えるときには役に立つかなと思うので、そういうものが出せるかどうか検討していただくというのはいかがかなと思っているのです。


○増田賃金課長
 人口等で一定の推計ということであれば可能であると考えておりますので、どのような範囲で、どういう形でということも含めて御相談させていただいた上で皆様方の御了承が頂ければ、お出しすることは可能かと思っております。


○仁田委員長
 よろしいですか。ほかには何か、御質問等はございますか。それでは、資料の内容についての質疑はここまでとさせていただきます。
 前回の最後のときに委員の皆様にお願いしておりますが、今回は2回目ということで、賃金改定状況調査等も明らかになったところであり、目安についての基本的な考え方を表明いただくことにいたしたいと思います。初めに、労働者側委員からお願いしたいと思います。


○冨田委員
 それでは、労働者側の見解を申し上げさせていただきたいと思います。前回の本審の際にも、本年の審議に臨む基本的な態度については申し上げたところではありますが、改めて地域別最低賃金についての労働者側としての現状認識や課題認識について、取り分け2点申し上げさせていただきたいと思います。
 1点目は、やはり、この地域別最低賃金の水準が依然として低い水準にあるということが課題にあると思っています。2点目につきましては、地域間の格差が拡大傾向にあること、これに歯止めが掛かっていないということがあります。ここに重点を置いていきたいということを、本年の課題としておきたいと思います。
 こうした現状認識を踏まえますと、本年のこの目安の審議におきましては、当面目指すべき水準を意識した目安の審議を進めていくべきではないかと考えております。具体的には、全国でまだ何県か、800円以下の県がありますので、こうした800円以下の地域別最低賃金をできるだけ早くなくしていくことが重要と考えます。その上で、トップランナーとも言えるAランクについては1,000円の到達を図ることを考えていきたいと思います。当然、経済環境等にも配慮しながらということにはなりますが、この到達の時期についても3年以内といったような目安もある程度持ちながら、今年の目安額を決定していきたいと考えております。
 背景について、何点か補足させていただきたいと思います。現在の地域別最低賃金の最高額は東京都で932円、最低額の宮崎、沖縄でも714円となっていて、ここ数年で一定程度の引上げは図ってまいりました。しかし、法定労働時間、これは計算すると、約2,080時間という数字だと思いますが、これだけの時間働いてもワーキングプアと称される年収200万円に到達することができない水準です。これは、憲法第25条の生存権や労働基準法第1条に照らし合わせても低水準になっていると言わざるを得ないと考えております。
 連合はマーケットバスケット方式で必要生計費を満たす賃金水準としてのリビングウェイジを算出しております。2013年基準の連合リビングウェイジによれば、単身者で全ての都道府県では、時給800円を上回らなければ生活できない水準と考えております。この水準自体につきまして、本年4月に連合総研で勤労者の仕事と暮らしのアンケートを実施しておりますが、回答された方の全体の7割の方が、何らかの費目で支出を切り詰めているといったような回答も見られております。2割程度の回答で、医療費や子供の教育費といった必要性の極めて高い品目についても切り詰めが行われているといった実態もございます。
 最低賃金近傍で働いている方々の多くは、いわゆる非正規労働者と呼ばれる方々です。その中には、不本意ながらそうした雇用形態で働いている方がいらっしゃいます。また、そうした状況でなくても、例えば、家事や育児、介護といった家庭の事情などでフルタイムの勤務が困難といった方も少なくないと思います。仕事の内容とか、役割や責任にかかわらず、雇用形態のみで低賃金で雇用されているとすれば、これは大変大きな問題だと考えております。このことは、今年度、配意を求められました働き方改革実行計画でも指摘されているところですし、雇用形態にかかわらず、働いて得られる賃金で家族共々生活できる社会を実現していくべきではないかと思います。
 次に、ランク間格差の拡大についてです。全員協議会の中でも、制度については議論し、当面、幾つかのランクに区分して目安を示す現行方式を継続することについては合意してきたところではあります。しかし、目安制度を導入した昭和53年当時に比べて、生活文化圏とか経済圏が広範囲となる中で、隣県との格差の拡大が働き手の流出にもつながっている状況がありますので、こうしたことを是正していかなければならないと考えます。
 地方最低賃金審議会の自主性発揮を促す観点からも、このランク間格差拡大の是正について、この場での議論が不可欠であると認識しております。したがいまして、憲法第25条の生存権を確保した上で、労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準をいかに設定すべきかということをしっかりと考えていきたいと思います。
 なお、連合はこれまでも「誰でも1,000円」という目標を掲げて今年の春の労働条件交渉にも臨んできております。2017年の交渉の結果につきましては第1回目安小委員会でも参考資料としてお示しいただいておりますが、時給で働いている人たちの今年の改善額は20円を超え、平均時給は単純平均でも965円を超えていること、さらに、今年の5月の毎勤統計のパートタイムの時給についても1,110円となっている実態があることを申し添えておきたいと思います。
 ここからは参考資料についてのお願いです。第1回小委員会の中で、ご報告いただいた春季生活闘争の結果につきましては、7月5日に最終集計を公表しておりますので、参考資料としてリバイスさせていただきたいと思っております。
 2点目に、賃金改定状況調査の第4表は、あくまでも本年の6月と昨年の6月時点の1人当たり人件費を比較したものであって労務構成の違いが調整されていない数字であり、個別の労働者の賃金水準の変動を表しているものではないと考えております。したがって、至近の外部労働市場の動向を把握していくことも必要と考えます。第1回目安小委員会の中で初任給の上昇額と率の推移を記載した資料を出していただいておりますが、そのうち、高卒初任給については実額を把握できるような資料の検討もお願いできればと思っております。また、同様の趣旨で求人時給を把握していくための何らかの資料、こうしたことについての検討も求めていきたいと思います。
 いずれにしても、重視すべきは一般労働者の賃金の伸びではなくパート労働者の時給の水準であると思っておりますので、こうした実態が把握できる資料の御検討をよろしくお願いしたいと思います。
 本年も、この場で様々な現場の状況を熟知した皆様方と、真摯な論議を通じて今年の目安額を検討してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。労働者側からは以上です。


○仁田委員長
 どうもありがとうございました。引き続いて、使用者側委員からお願いいたします。


○高橋委員
 それでは私から基本的な見解を申し述べたいと思います。初めに、中小企業を取り巻く状況について申し上げたいと思います。
 中小企業庁の中小企業景況調査結果によれば、今年に入って緩やかな改善傾向にあります。全産業の業況判断DIは、4~6月期にマイナス14.3(前期比プラス2.7)となりましたが、小規模ではマイナス16.5と、依然としてマイナス10%台後半の高い水準となっています。賃金引上げの重要な考慮要素である労働生産性の動向を財務省「法人企業統計調査」を用いて計算したところ、2012年度の全産業の規模計を100といたしますと、2015年度は108.9となっているのに対して、資本金1,000万円未満の企業は104.2と、その伸びは半分以下にとどまっています。
 また、東京商工リサーチの「休廃業・解散企業動向調査」によると、倒産件数は2008年の15,646件をピークに減少傾向にあり、2014年から3年連続で1万件を下回っています。
 一方で、休廃業・解散件数は増加傾向にあります。2016年の休廃業・解散件数は過去最高の29,583件で、2000年と比べて2倍近い件数となっています。
 さらに日本商工会議所の「人手不足等への対応に関する調査」集計結果で見ますと、「人員が不足している」との回答が年々上昇しており、今年の調査では6割を超えています。そのうちの7割近い企業が、「人員不足によって企業経営に影響が出ている」又は「影響が懸念される」と回答している状況にあります。このように中小企業の景況感は緩やかながら改善しているもののその動きは大企業に比べて鈍く、休廃業や解散する企業数が過去最高になったことに加えて、先行きの不透明感は依然として強いものがあります。
 次に、先月27日開催の中央最低賃金審議会において塩崎厚生労働大臣からなされた諮問に関して申し上げます。諮問文では働き方改革実現会議で決定した働き方改革実行計画に配意した調査審議を求めていますが、実行計画に記されている内容は、これまで政府が示してきた最低賃金引上げ方針と同じであり、今回の実行計画で新しく決まったことではありません。政府の引上げ方針、「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく」ということは、全国加重平均が1,000円になるまで、毎年、3%程度、機械的に引き上げることではありません。名目GDP成長率が3%に達しない場合には、それを考慮しながら引上げ額を議論するということです。そうでなければ、中央最低賃金審議会や目安に関する小委員会、各地方最低賃金審議会で金額審議を行う意味はないことになります。最近の名目GDPの推移を見ますと、2016年4~6月期以降、四半期別成長率は年率換算で一度も3%を超えておらず、今年の1~3月期は、マイナス1.2%とマイナス成長となっています。
 ちなみに、2016年度の名目GDP成長率は1.1%でしたが、昨年度の最低賃金の引上げ率は、一番低いAランクでも2.86%、最も高いBランクでは3.20%となり、全国平均では3.13%に達しました。こうしたことも考慮して今年の目安を検討することが、本当の意味で諮問に応えることになると思います。
 以上のような認識に基づきまして、今年度の目安審議における使用者側の基本的な考え方を申し述べたいと思います。
 御承知のとおり最低賃金は、「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定めなければならない」と最低賃金法第9条に明記されているところです。諮問文で求められている働き方改革実行計画への配慮は必要だと思っていますが、目安審議は法の原則に即して行うことを基本として、先に述べた3要素を総合的に表している賃金改定状況調査結果の、取り分け第4表の結果を十分に踏まえて決定すべきです。収益の持続的な改善・拡大や生産性向上を伴わない形での継続した最低賃金の大幅な引上げは、最低賃金の影響を受けやすい中小・零細企業の経営を直撃し、そこで働く者の雇用を失わせるだけでなく、事業の継続自体も危うくすることになります。その結果、地域経済に悪影響を及ぼし、我が国経済の再生の実現が遠のくことになりかねません。
 厚生労働省の最低賃金に関する基礎調査によると、2012年度に全国平均で4.9%であった影響率は、2016年度には11.0%となり、10%超の地域も、2012年度の4件から2016年度は20件と5倍に急増するなど、近年における最低賃金の大幅引上げの影響が明確に表れています。
 一方、消費者物価指数の対前年上昇率は、2015年が1.0%、2016年がマイナス0.1%で、今年に入ってからも0.5%前後で推移しております。したがいまして、今年度の目安におきまして、物価動向は大幅な引上げの根拠にはなり得ません。一般に物価が十分に高まっていない状況では、人件費の増加分を価格転嫁で吸収することが難しく、こうした点からも中小企業の経営は大変厳しい状況にあると言えます。合理的な根拠に乏しい最低賃金の大幅な引上げによって、収益の動向に関係なく多くの中小零細企業が、人件費の増大を強いられることになれば、人件費の増加が企業経営を更に圧迫する危険性が高まることになります。こうした状況であることを踏まえ、これまで以上に慎重な審議、判断が求められることを肝に銘じておく必要があると思います。
 最低賃金の大幅な引上げにはその影響を受けやすい中小零細企業に対する効果的な生産性向上等の支援策の実施・拡充が不可欠であります。にもかかわらず、施策の十分な成果が見られないまま、最低賃金の大幅な引上げだけが先行して実施されてきたのが現状です。近年、政府の引上げ方針に対する配意が求められた審議の結果、時々の事情のウエイトが高まり、根拠が明確でない大幅な引上げ目安が示されてきたことで、目安に対する地方最低賃金審議会の信任は著しく毀損しています。今年度も合理的な根拠を示さないまま、大幅な引上げ目安を提示することとなれば目安制度、ひいては最低賃金の決定プロセス自体が成り立たなくなるのではないかと、非常に危惧しています。法で定められている最低賃金決定の原則に則った議論としていくため、中小零細企業の実態を表している賃金改定状況調査結果のデータを重視するとともに、急激に上昇した影響率を十分に踏まえた合理的な根拠に裏打ちされた目安を提示すべきであることを改めて申し上げます。以上が今年度の目安審議における使用者側の基本的な見解であります。あとはほかの委員から、補足等を申し上げたいと思います。以上です。


○仁田委員長
 ほかにいかがでしょうか。


○橋本委員
 今、高橋委員から使用者側見解をお示しいただきましたが、あえて2点、被る部分もありますが、私からお話申し上げたいと思っております。1つは、最低賃金が法により全ての事業者、労働者に強制的に適用される制度である以上、実態、現実に即した慎重かつ丁寧な議論が必要ということであります。
 先ほど中小企業を取り巻く状況について、高橋委員から説明がありましたが、日本商工会議所が6月、全国の商工会議所の会員企業3,500者を対象に実施した中小企業景況調査でも、業況DIは、前年同月比でマイナス14.5、建設、製造、卸売、小売、サービスの全対象業種でマイナスの数値となっております。また7月~9月の先行きの見通しもマイナス14.7と、こちらも建設、製造、卸売、小売、サービスの全対象業種でマイナスの数値となっております。中小企業庁の調査等も同様の傾向を示しておりますが、ここ1年、日商の調査で、業況は緩やかながら改善傾向にあることは事実でありますが、先ほど申し上げた数値をはじめ、採算など各指標とも未だ水面下で動いているということ、また、今回調査においては人手不足の影響拡大、原材料、輸送費の上昇等を指摘する声が多く聞かれておりまして、改善への動きは依然鈍いと言わざるを得ない状況となっております。こうした中での最低賃金の改定であり、最低賃金の引上げの影響率は先ほどの御説明でも11%を超えるという状況を踏まえると、大幅な最低賃金の引上げは経営基盤が取り分け脆弱な中小零細企業に、従前以上に重大な影響を及ぼすことが危惧されます。
 2点目は簡略に申し上げますが、私ども日本商工会議所に対し、各地の商工会議所から、最低賃金に係わる声がかなり上がってきております。その中には、年率3%程度を目途として引き上げるといっても引上げの原資がない。大幅な引上げが続けば人員削減も考えなければならない事態に追い込まれる。人手不足を背景に賃金水準は上昇傾向にあるが、これに最低賃金の大幅な上昇が拍車をかけている状況であり、先行きがとても不安である。など、最低賃金の大幅な引上げに苦しむ声が多く寄せられております。そうした中で最低賃金を引き上げるには中小企業の生産性向上が前提条件となるが、実際に生産性は上がっていないという声とともに、目安について、地方最低賃金審議会の委員を務める会員から、明確な根拠があるのであればいいが、根拠のない目安は不要である。あるいは、目安の根拠を示してほしい。目安の結果がデータに基づいてない。目安は必要だと思うが、データの根拠なく示されるのであれば、議論のしようがない。こうした、明確な根拠を示さない中での目安の提示について、強い疑問や不満が寄せられております。現状を踏まえた慎重な審議に基づき、目安についての根拠を具体的に示していく、これが従前以上に必要になってきているのではないかと考えています。それがないと、中央最低賃金審議会の議論に対する地方の不信、不満を増長していく結果にならないか、この辺が非常に危機感を感じているところです。この2点について申し上げたいと思います。


○仁田委員長
 どうもありがとうございました。ただいま双方から御主張を頂いたわけでございますけれども、それぞれの御主張につきまして、何か御質問等ございましたらお願いいたします。いかがでございましょう。


○小林委員
 先ほど冨田委員から、地域間の格差の問題の話がありましたけれども、金額ベースでは確かに全体的にかなりの金額が上がってきていて、格差は前年度に比べて縮小傾向にあると承知しております。もう1つ、隣県との格差が拡大しているという話がありましたけれども、これは中央最低賃金審議会が各ランクごとの最低賃金額改定の目安を決めるものであって、それぞれのランクごとの目安に基づいてそれぞれの県が隣県との配慮をしながら最低賃金額を決定していくものだと理解していますので、地域別最低賃金といっても、こちらではランク別の最低賃金であるということで議論をしていきたいということでございます。
 さらにもう1つは、今回配られた資料の中で、先ほどの分布の資料No.4ですが、賃金分布に関する資料を見ていくと、特に一般・短時間の計を見ても、Aランクの東京をはじめ、神奈川、大阪、愛知と見ていきますと、最低賃金額に非常に張り付いています。それともう1つは、Dランクの県もかなり最低賃金額に張り付いています。特に短時間労働者の賃金の状況を見ていくと、非常に最低賃金額の所に張り付いている状況になっています。去年の20数円の引上げの影響が出ているものと思われます。それによって影響率もかなり高くなってきている状況なので、本当に最低賃金の大幅な引上げが続いていることによって、相当最低賃金額に張り付いている状況があるということです。更に大幅な引上げをすると、後から最低賃金額に張り付いていって、未満率の企業が増してくるのではないかと、大変懸念に思っていることを申し上げますとともに、先ほど来、高橋委員と橋本委員が申し上げているとおり、私どもでも地方最低賃金審議会の委員を集めて、いろいろな検討会とか勉強会をしているところなのですけれども、昨年の大幅な引上げについて、委員長からの補足説明もあったのですが、やはり十分理解できないという、地方の声は非常に多く出ております。賃金の引上げは生産性の向上があって初めて可能なものであるということ、この中央最低賃金審議委員会は、法の三原則に基づいて十分議論していただきたいという意見と、従来からの使用者側が申し上げている第4表を重視した議論をしてほしいという意見が多かったということを、補足として付け加えさせていただきます。以上です。


○仁田委員長
 労働者側から何かございますか。


○冨田委員
 小林委員から先ほどの労働者側の見解に対して御意見いただいたと思いますので、少し補足させていただければと思います。1回目の配布資料の中にも、最高額と最低額の格差の推移を示した表があって、確かに平成27年度と平成28年度を比較すれば、格差の指標は若干改善がされたというのは、そのとおりだと思っております。けれども、この表でもあるとおり、19年~28年を比較したときの、現時点の格差がそれでもまだ218円という大きな格差があることは事実であります。こうしたことを重点においたときに、隣県がその水準の違いをもってして、そのことをどう捉えて地方が自主性を発揮できるのか、地方の自主性を発揮する観点からも中央がこのランク間の今ある格差をどのようにしていくのかが、議論としては必要ではないかと申し上げました。先ほど言った隣県と隣県の個別の話ではなくて、現時点の今あるランク間の格差についてどう考えるのかということを論議したいということを、補足で申し上げておきたいと思います。


○新沼委員
 影響率の話が出ましたけれども、影響率がこの資料No.3で11.0%と出ているのはあくまでも最低賃金に関する基礎調査のデータです。賃金構造基本統計調査で見ると、全国でも4.5%ですし、未満率を見てもそんなに大幅に上昇しているとは言えず、影響率が高いと言ってもその結果は4表に表れていませんし、最低賃金が引き上げられれば実際に支払っている企業は多いと考えます。その点を考慮して審議していただければと思います。


○小林委員
 未満率の問題はあくまでも最低賃金というのが、それぞれ地域別最低賃金が決められて、法律を守るために一生懸命に努力しているわけです。支払能力がなくても固定費として非常に人件費負担が高まっても、払わざるを得ないという状況で企業は努力しているということなので、未満率が高まって、違反者が増えることを懸念しなければいけないわけです。法律を守っていると未満率は低くなって当然なのです。それでも、法律を守っていないところがこれだけ出ているという状況、そこを注視していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。


○高橋委員
 賃金構造基本統計調査で見れば水準が低いから影響率が低くても問題ないといったようにも聞こえましたけれども、そうではなくて、やはり最も最低賃金の大幅な引上げの影響を受けやすい中小零細企業の所を、しっかりと見ていく必要があります。非常に収益の高い企業も含めた全体的なマクロの数字がいいのだから問題ないわけではないと思います。
 それから、労働者側に対して質問なのですが、先ほど冨田委員から800円以下を早くなくす、Aランクの平均を1,000円にするとありました。しかもそれは3年以内なのだというような御主張と拝聴しましたが、今は最低の県が714円ですから、800円まであと86円ありますよね。Aランクの平均は900円ですからあと100円を3年以内に到達するのだというようなことを御主張されたわけですけれども、その3年の根拠というのを教えていただきたいということと、やはり最低賃金の審議というのは、最低賃金法に則って考慮すべき要素の3要素に基づいて審議をするところと我々は考えているわけですけれども、先ほどの御主張はただ、単純に私が受け止めますと、目標水準を設定して、機械的にその到達年限を定めて、それに到達するようにするのだと理解してしまったのですけれども、そうすると3要素を含めた審議の在り方の基本というのはどこにいってしまったのだろうと、そのことについてもその御主張の背景を御説明いただければと思います。


○冨田委員
 高橋委員から今いただいた御質問に対して、これまでも労働者側は主張してきましたが、やはり2020年までの目標として「出来る限り早期に全国最低800円」「全国平均1,000円」を目指すとした雇用戦略対話の合意から考えると、当面目指すべき水準としての800円到達をどういったタイミングで考えるのかと言われたら、例えば2020年まで、もうあと残り何年かということまで考えれば、当面そこに向けての3年間という考え方で論議をしてはどうかということです。当面目指すべき水準への到達をどう考えるのかは、これまでの論議の背景から、3年を1つの達成目標に置いてはどうかという労働者側の主張でございます。


○仁田委員長
 よろしいでしょうか。議論が始まった段階ですので双方の御主張の間に開きが当然ですけれども、大きなものがあるというように思います。しかしながら本年の目安を取りまとめていく観点から、その開きを何らかの形で詰めていくような作業をこの小委員会で行っていくことが趣旨であると考えております。よろしければそのための作業に入らせていただきたいと思います。公労・公使で個別に主張を伺いながらその作業を進めていくことにいたしたいと思いますけれども、そういう進め方でよろしいでしょうか。


(異議なし)


○仁田委員長
 それでは、公労から始めたいと思います。


(第2回全体会議)


○仁田委員長
 ただいまから、2回目の全体会議を開催いたします。本日は本年度の目安取りまとめに向けまして、労使双方から基本的な考え方をお出しいただき、それに基づく御議論をいただいたところでございます。その結果といたしまして、双方の御主張につきましては、ある程度明確になってきたと考えておりますが、御主張の隔たりはかなり大きなものがあると感じております。そこで次回、3回目の目安小委員会におきまして、更に御議論を行っていただいて、目安の取りまとめに向けた御努力をお願いいたしたいと思います。それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いいたします。


○大野賃金課長補佐
 次回の第3回目安小委員会は、7月20日木曜日14時30分から、厚生労働省の省議室で開催いたします。


○仁田委員長
 ということですので、20日に再度御参集をいただきたいと思います。本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。
 議事録の署名につきましては、小原委員と橋本委員にお願いいたしたいと思います。どうもお疲れさまでございました。


(了)
<紹介先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

代表: 03-5253-1111

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