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2017年9月4日 第139回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成29年9月4日(月)13:00~14:30


○場所

中央労働委員会講堂


○出席者

【公益代表委員】

荒木委員、安藤委員、川田委員、守島委員、水島委員

【労働者代表委員】

川野委員、神田委員、柴田委員、冨田委員、八野委員、村上委員、世永委員

【使用者代表委員】

秋田委員、小林委員、齋藤委員、早乙女委員、杉山委員、三輪委員、輪島委員

【事務局】

山越労働基準局長、土屋審議官、村山総務課長、藤枝労働条件政策課長、増田監督課長、久知良計画課長、中嶋調査官

○議題

労働政策審議会建議を踏まえた対応について

○議事

○荒木分科会長 委員の方が全員おそろいということですので、ただいまから第 139 回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたします。

 本日の委員の出欠状況ですが、欠席の委員として公益代表の黒田祥子委員、平野光俊委員、両角道代委員、労働者代表の福田明子委員、使用者代表の佐藤晴子委員と承っております。本日の議題に入る前に、事務局から定足数について報告をよろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 定足数について御報告いたします。労働政策審議会令第 9 条により、委員全体の 3 分の 2 以上の出席又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数が満たされておりますことを御報告申し上げます。

○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。

 本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。本日の議題、労働政策審議会建議を踏まえた対応についてです。まず、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○中嶋調査官 資料は前回お配りした資料と同じものを配布させていただいております。お手元の資料についてタイトルを確認させていただきます。資料 No.1 が働き方改革実行計画の実行計画の関係部分をまとめた資料です。資料 No.2 が労働基準法等の一部を改正する法律案についてです。参考資料 No.1 は時間外労働の上限規制等について、こちらはおまとめをいただきました建議です。参考資料 No.2 は今後の労働時間法制等の在り方について ( 平成 27 年建議 ) です。前回と同じものですので、説明のほうは省略させていただきたいと存じます。

○荒木分科会長 それでは、前回に引き続いて議論を行いたいと思います。前回は労働側委員から、裁量労働制の対象業務拡大と高度プロフェッショナル制度の創設については反対という意見が表明されました。更に具体的な懸念点についての議論を深めたいというように考えております。

 前回の議論においては、高度プロフェッショナル制度については村上委員から具体的な懸念点の提示がありましたが、裁量労働制の対象業務拡大についても反対ということでしたので、更に補足があればお願いしたいと思っております。いかがでしょうか。

○柴田委員 具体例でもよろしいのですか。

○荒木分科会長 柴田委員、どうぞ。

○柴田委員 柴田です。裁量労働制に関する事例の紹介だけさせていただきたいと思っております。

 私ども、情報労連という組織に所属しているのですが、 2015 4 月から 5 月にかけて、 IT エンジニアの労働条件、裁量労働制の実態調査をさせていただきました。労働条件分科会における 2015 年法案の議論が終了したのちに調査しました。調査の母数としては 1,066 人の方から頂いておりまして、このうち 200 人ぐらいが裁量労働制の適用になっているということです。

 実態についてですが、労働時間に関しては、裁量労働制が適用されている方のほうが、適用されていない方に比べて労働時間がやはり長くなっているという傾向があります。特に納期前など、忙しい時期の 1 日の労働時間を比較しますと、 12 時間及び 13 時間以上の割合が非適用者に比べて約 10 ポイント高くなっているという調査結果が出ています。また、案件数の増減に対する決定権について、労働者側の意見とすれば決定権はないという方々が、裁量労働制の適用者のうち 70 %ほどがそういう決定権がないという実態にあります。

 業務量に関してですが、これも大体 200 人ぐらいの母数のうち、法定労働時間を優に超える業務量であると答えている人が 38 %ほどいるということです。、裁量労働制の対象業務拡大はもとより、現状の裁量労働制における労働時間の実態については、昨今過労死の現状など見ると少し危機感を覚えざるを得ないと考えております。

 とりわけ、こういった制度は労使でいかにするかという同意に基づいて対応するという前提があるわけです。現状の過半数代表者の在り方や、我々から言うのもおかしいのですが労働組合の組織率が低いという問題もあります。今回の裁量労働制の対象業務拡大というのは、このような点を解消することをまず前提にされたほうがいいのではないかと考えております。少し具体的事例について申し上げさせていただきました。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました、ほかにはいかがでしょうか。

○川野委員 前回も触れられたかもしれませんが、企画業務型裁量労働制を導入する際に決議を行う労使委員会について、若干懸念事項を申し上げておきたいと思います。加えて言いますと、労使委員会なるものを設置するという手続において、 2015 年法案の審議の中でも意見が出されたかもしれませんけれども、過半数代表者の不適切な選出の仕方も含めてなのですが、そうした不適切に選ばれた方が労使委員会の労側委員を指名することもあります。労働組合がある所については過半数労働組合がその任に当たるということは当然なのでしょう。ただ、そうでない所が多い中において、先ほども柴田委員が触れられたとおり組織率が非常に低い中において、適正にその人たちが選ばれているのかということについて、我々は労使委員会の設置に当たっての状況を十分に把握していません。事務局で、もしそうしたデータがあるならば開示いただきたいと思います。

その上で、裁量労働制を導入する際に、対象となる事業場において労使委員会を設置して、必要な事項を当該委員会の 5 分の 4 以上の多数による決議で必要な事項を決議する必要が位置付けられているわけです。労使委員会で対象となる業務の具体的な範囲を決議することが必要となるものの、これまで対象業務とされてきたのは自社における業務のうち、 1 点目は、業務が所属する事業場の事業の運営に関するもの、 2 点目は、企画、立案、調査及び分析の業務であること、 3 点目は、業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があると、「業務の性質に対応して客観的に判断される」業務であること、 4 点目が、企画・立案・調査・分析という相互に関連し合う作業を、いつどのように行うか、広範な裁量が労働者に認められている業務であることということがあって、そのいずれの要件を満たしているということが定義付けられているということです。

 今回は新たに「課題解決型提案営業の業務」が対象業務として挙げられており、法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析業務であることが要件となってくるわけです。これまでは自社における業務ということでしたが、果たして労使委員会において自社以外の業務について判断することができるのかという部分についてはいささか疑問があり、懸念として大きな不安の部分があります。そうした部分も含めてこの企画業務型裁量労働対象業務拡大ということには懸念もあることも踏まえ、その拡大には反対であるということを申し上げておきたいと思います。

○荒木分科会長 ありがとうございました。もし、労使委員会の実態について情報があればということでしたけれども、事務局から何か情報提供はございますか。

○中嶋調査官 申し上げます。過半数労働組合がない事業場における過半数代表者の実態ということで、過去に調査をした結果の取りまとめです。これにつきまして、当分科会における議論の中でもデータもお示ししながら議論を頂戴したところです。

 その中で 2 つの切り口がありまして、 1 点目は過半数代表者の選出方法のところです。選挙、信任、あるいは集まっての話合いといった民主的な方法での選出というものがある一方で、問題になるケースとして会社側が指名をしたというケース、それから社員会、親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になったケースもあるというのが、まず 1 点目です。

 もう 1 つの切り口として過半数代表者の職種というものがあります。これが一般従業員クラス、あるいは係長や主任といったクラスのほかに、管理職に相当すると考えられるような課長クラスあるいは部長、次長クラス以上といった職種の方が選ばれているという実態もあり、こういった点について問題であるということで議論をしていただいたところです。

 そのまとめとして、本年 6 月に取りまとめいただきました建議の中でも、こういった問題への対応ということでおまとめを頂戴しております。その中で、時間外労働の上限規制を導入するに当たっても、その実効性を確保するという観点から、こういったプロセス管理についてもしっかりやっていこうというところで記載を頂いております。

 具体的に申しますと、過半数代表者のところにつきまして、今申し上げましたような課題も踏まえ、平成 27 年、当分科会の報告でも頂戴いたしましたけれども、今、私が申し上げましたような使用者の意向による選出は手続違反に当たるなどの現在の通達の内容につきまして、これを省令に規定していくということ。それから監督・指導などを通じ、通達の内容に沿った運用が実際になされるように設定していくことが適当であるというおまとめを頂きましたので、この方向に沿ってしっかりと対応していくことで考えております。

○荒木分科会長 御紹介いただいたのは過半数代表者の選出の議論でしょうか。その話が労使委員会の労側委員の選出にもそのまま当てはまると受け取っていいのかどうか、そこはいかがでしょうか。

○中嶋調査官 今、私が申し上げました資料は、過半数組合がない事業場において、どのような形で過半数代表者が選ばれているのかといった実態の数値です。申し上げましたような実態を踏まえ、建議のところでおまとめいただいたものを適用していくという考えです。

○藤枝労働条件政策課長 補足しますと、制度的にはその過半数代表者が労使委員会の委員を指名するという制度になっています。

○荒木分科会長 そうすると、労使委員会の委員の選出に特化した統計やアンケート調査についてはまだないということですね。なかったのではないかなと思いますが、仕組みとしては、過半数組合がなければ過半数を代表する者が指名するという形で連動はしてくるということですね。ありがとうございました、ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 今の点で確認なのですが、 36 協定の場合は、過半数代表者が適切に選ばれた者でない、例えば使用者が指名したような場合については、その者との 36 協定は無効であるということになるかと思います。先ほどの御質問ですが、適切に選ばれていない過半数代表者が、労使委員会の労側委員を指名したような場合に、その労使委員会の決議事項はどのようになるのか、また、労使委員会自体、適切な労使委員会と言えるのか言えないのか、もし言えない場合、その効果はどうなのかということについても、もし何か見解があれば教えていただきたいと思います。

○荒木分科会長 今の点はいかがでしょうか。

○川田委員 今の点については恐らく、裁判所で確たる判断が示されたのではないかと思います。私なりに理屈として考えた場合、過半数代表者の場合、選び方が不適切であったときには不適当な労使協定であって、法律で定められた効果が発生しないという判断になっております。理屈としては、労使委員会についても同じことが言えるのではないかと考えております。

○世永委員 私から、前回も労働側から発言し、今、川野委員が発言された内容とも重複していますが、企画業務型裁量労働制度の対象業務の拡大については、対象業務の範囲が不明確だということです。企画業務型裁量労働制の対象業務の安易な拡大は認められないという立場で御説明させていただきます。

 今回、新たに追加されることになっています「課題解決型提案営業」と「裁量的に PDCA を回す業務」、この業務の枠組みが不明確ではないでしょうか。特に、法人顧客の事業に関する取組みにつきましては、顧客が法人でありさえすれば、結局のところ全ての営業業務が該当するのではないかという懸念があります。ルートセールスなり店頭販売につきましては除くということなのですが、条文と建議で示されている内容だと、やはりグレーゾーンが広がることを危惧しています。

 さらに、前回も申し上げましたが、経験年数の問題、新入社員も対象となるということについては問題意識を持っています。また、「裁量的に PDCA を回す業務」についても、定義が曖昧でして、拡大解釈の危険が大きいということがありますので発言させていただきます。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○八野委員 今、様々な議論があったように、例えば時間外労働の上限規制を議論している時には、 36 協定がきちんと締結されているのか、そこでの代表者は誰なのか、その選出基準はどうなのかということがありました。また今回、 2015 年法案を改めて議論しているこの場においても、労使委員会の在り方、裁量労働制の本旨の徹底という話を、またしてもこの場でも議論しなくてはいけないということなのです。

 これが何を意味するかと言うと、労働基準法に関わる労働時間規制というのは働く者の健康を守るためにあって、その根底にかかわる論点について、今このようにきちんとした答弁もない中で現状議論が進められているということです。また柴田委員が発言したように、これは情報産業でのということなのかもしれませんが、裁量労働制の本旨の徹底に書かれている時間に対する裁量権、業務量の問題がある実態の中で、果たして指示・命令が来た時に断れる状況なのかといったときには、疑問を生じるのです。また、労働災害ということで見ると、みなし労働時間制ということで労働時間の実態把握が難しく、労災の申請も難しいということが、弁護士の方々からの意見として出てきたように聞いております。

 こうした状況の中で、本当に生産性という言葉だけで、何を生産しようとして生産性ということを出されているのか分かりませんが、生産性を高めるということだけで、裁量労働制の拡大を行っていいのかというところには疑問を持たざるを得ません。これからの時代、グローバル化という言葉も経営の方々、使用者側の方々からも出てきました。人口が減少だということも出てきました。これは労働組合も同じ認識でいるわけです。そこの中でいかに生産性を上げて、成果の公正配分をきちんと求めていくことが労働組合の役割というように見たときに、労働実態が、特に裁量労働制であれば、こういう問題点があるのに、これらの問題点を置いたままで、働く者の健康を害するようなことが懸念される業務にまで拡大していくべきではなく、労使がきちんと話をし、今までの枠組みの中で、限られた時間の中で、いかに人事制度、経営戦略、事業戦略を結び付けてやっていくのかを生産的に話したほうがいいのではないかと思います。

 今回挙げられている、「課題解決型提案営業」では、法人である顧客事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析を行い、かつうんぬんという営業業務のことが書かれています。先ほど川野委員が発言したように、今まではきちんとされた労使委員会かどうかは別として、対象業務の 4 要件を充足して、指針の中で例示されている経営企画の策定や組織編成、人事に関することなどについて、企業内の業務に対してその範囲で企画業務型裁量労働制が認められてきたわけです。

 今回、法人である顧客事業の運営に関して、新たに対象業務が拡大されることであって、企業で言うと対顧客に対しての業務となるわけです。本当に労使委員会の中で、その業務範囲を定めることができるのか、また相手先の法人から「こういうこともやってくれ、こういうこともやってくれ」と言われた時、対 BtoB の取引関係の中で、本当にコントロールすることができるのかというと、私はコントロールできないと思っています。そこの中で成果を挙げていくことが課せられているわけなので、個人でコントロールすることは非常に難しいのだろうと思います。そういう意味で見ていくと、まだまだこれだけの文言で定義する場合には、対象範囲が非常に広がってくる懸念があります。また、自己裁量権というものに関しては問題があると思っています。

 もう 1 つ、当該事項を実施・管理するとともに、実施状況の評価を行う業務ということが書かれているわけです。私たちは「裁量的に PDCA を回す業務」と言っていますが、その内容をきちんと見ていくと当該事項を実施・管理するとともに実施状況の評価を行う業務としています。「評価」となると管理職が行う業務ではないでしょうか。その対象範囲が非常に拡大しており、もしかすると管理的職業従事者ということになるのかと思います。しかし、限定的に解釈されない余地があるので、解釈によっては全ての管理職も対象になりかねません。対象が分からないままでこのようなものに拡大していっていいのか、基本ができていない中でやっていいのか。やはり働く者の健康、生命を守っていく労働側としては容認しかねるということを言っておきたいと思います。

○荒木分科会長 ありがとうございました、ほかに何かありますでしょうか。

○冨田委員 今、八野委員からも、裁量労働制に関して本旨の徹底をという御発言があったかと思います。私からもそれに重ねて申し上げさせていただければと思います。

2015 年の建議の際にも、裁量労働制に関する実態の調査の御報告がありました。その中で、労使のチェック機能の下、制度に沿った運用がなされているという報告がある一方で、業務量を含め業務遂行に裁量がなかったり、若しくは日々の出退勤について一律の出退勤の時刻の規制があったりというような実態の報告もその中で頂いたかと思います。その際にも申し上げたのですが、まずはそうした実態をなくして、裁量労働制の元々の制度が意味する「業務の遂行が大幅に労働者の裁量に委ねられ、一定の業務に差し障るものについては労働時間の時間配分も含め、やはり業務遂行も労働者に委ねられる」という、しっかりと本旨に沿った状況をまず作るのが先決であって、その状況があって初めて、その先にどうしていくのかという議論があるべきだというように現時点でも思っております。このことにつきまして、前回の議論から 3 4 年も経っておりますので、もし新たな実態の調査などあれば、またこちらにお示しいただければと思います。そうしたことも含め、まずは裁量労働制の本旨の徹底を行い、その先にどういう制度であるべきかという論議をすべきではないかということを重ねて申し上げさせていただければと思います。

○荒木分科会長 事務局、お願いします。

○藤枝労働条件政策課長 先ほど来、労働側委員の方々から、継続審議中の法案についての確認的な御質問等ございました。

 今、冨田委員から御指摘があった点について手元には新しい資料はありませんが、改めて考え方を御説明させていただきたいと思います。まず本来の裁量労働制の本旨、時間配分の決定や業務量の問題が、業務対象を拡大する以前の問題としてしっかりと担保されるべきだという御指摘がありました。これにつきましては、前回も少し御説明いたしましたけれども、今、継続中の法案におきましても、裁量労働制の条文の中で、お手元に新旧をお配りしておりますが、その新旧対照表の 5 ページにございますように、時間配分の決定というところで、始業及び終業時刻の決定を含む、つまり始業及び終業時刻について、その決定権が本人の裁量にあることをはっきりさせるということを、法制度上も明確にすることを措置しております。

 また、前回申し上げましたように、平成 27 2 月の建議の中で、新たな指針で定める事項として「所定労働時間をみなし時間として決議する一方、所定労働時間相当働いたとしても明らかに処理できない分量の業務を与えながら相応の処遇の担保策を講じないといったことは、制度の趣旨を没却するものであり、不適当であることに留意することが必要である」ということも指針に明記することを建議いただいております。これはしっかりと対応したいと考えております。

 また、今回追加する 2 つの業務について、対象範囲が曖昧ではないかという御指摘を頂いております。まずもって、これは企画業務型裁量労働制ですし、当然先ほど新旧の条文の 6 ページのロ、ハを見ていただきますと、例えば PDCA 業務であればロのところ、事業の運営に関する事項について繰り返し企画・立案・調査及び分析を行う、いわゆる企画・立案・調査・分析がまずあって、それがベースとなって、かつこれらの成果を活用し、という形で一体的に当該事項の実施・管理、それから実施状況の評価を行う業務だということを明記しているところです。

 また、ハのソリューション営業につきましても、法人である顧客の事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査及び分析を行い、かつこれらの成果を活用したうんぬんということで、企画・立案・調査・分析がベースであるということは明記したところでございます。

 行ったり来たりで恐縮ですが、平成 27 2 月の建議の中の 7 ページ、この両業務について、 7 ページの中ほどに 1 2 とございますが、「課題解決型提案営業の業務 ( 具体的には、例えば「取引先企業のニーズを聴取し、社内で新商品開発の企画立案を行い、当該ニーズに応じた課題解決型商品を開発の上、販売する業務」等を想定 ) 」とあります。

 また 2 PDCA につきましては、例えば「全社レベルでの品質管理の取組計画を企画立案するとともに、当該計画に基づく調達や監査の改善を行い、各工場に展開するとともに、その過程で示された意見等をみて、さらなる改善の取組計画を企画立案する業務等」を想定するということが書いてあります。現時点の継続審議中の条文と合わせて、指針等にその解釈等もしっかり明記することによって、対象業務が安易に拡大することのないよう措置することで対応する予定です。

 その他、みなし労働時間そのものに関する労働時間把握の曖昧さがあって、健康への影響がそもそも懸念されるという御指摘もありました。これにつきましては、この 6 月に上限時間を議論していただいた建議の中でも、いわゆる健康管理の観点からの労働時間の客観的な把握について御議論いただいております。平成 27 2 月に引き続き、おまとめいただいたものですけれども、管理・監督者を含め全ての労働者、裁量労働の対象者を含めて、労働時間の把握については客観的な方法、その他適切な方法によらなければならないということを、安全衛生法令の省令に規定するのが適当とされたところです。こういった措置を通じ、健康の確保には万全を期してまいりたい、これが現状の考え方です。

○荒木分科会長 八野委員どうぞ。

○八野委員 今国会に出ている法案について、答えていただきましてありがとうございます。私どもはこの報告や 2015 年の法律案、それと、今まで議論の過程では、こういう過程でなってきたということを承知の上で、それを理解した上で意見を申しているということを言わせていただきたいと思っています。例えば 2015 年の報告の中で見れば、「企画業務型裁量労働制の新たな枠組」として、 1 2 の新たな類型を追加すると書かれていることを、私たちも理解した上で、ここで定義する範囲の中で、更に労使委員会において、こういう業務をきちんと決められるのか。また、対顧客という課題解決型営業ということでやっていたときに、対顧客の中からのニーズがきたときに、それは裁量の範囲で断れるのかどうなのかということについて、意見を述べているのです。

 また、裁量労働制の本旨の徹底ということは、前回の分科会でも言いましたけれども、労働条件分科会でこの点を様々議論していた中で、現状でも本旨の徹底ができていないではないか、こういう問題点が裁量労働制の中にあるということが確認されて、報告書に本旨の徹底についても記載がされ、そのことが法案になってきているという理解です。ですから、そのことをもう一度ここで議論しているわけですが、労働側は一本化には反対であり、高度プロフェッショナル制度の創設、企画業務型裁量制の対象業務拡大は除くべきであるということですから、そのスタンスで申し上げているのです。ですから、先程答えていただきましたが、それを十分踏まえ、我々も議論した上で、発言をしているということを御理解いただきたいと思います。

○荒木分科会長 ほかに、いかがでしょうか。労働側から意見出ておりますが、使用者側から、輪島委員、どうぞ。

○輪島委員 柔軟な労働時間制度の必要性、特に企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大については、前回も高度プロフェッショナル労働制に関連して発言をさせていただきました。企業、組織がフラット化をしているとか、事業活動の中枢を担うホワイトカラーの職種のような仕事が複合化しているとか、様々な現状があると理解しており、そういうものに対応するとともに、仕事の進め方、そして、時間配分に関して、労働者のほうが主体性を持って働けるようにするという裁量労働制の趣旨に沿った活用が進むように制度の見直しをするということは、大変重要ではないかなと思っているところです。

 また、労働側の委員のほうから、裁量労働制に関する趣旨、本旨という御指摘がありましたけれども、私どもとしても裁量労働制におけるみなし労働時間の趣旨については、その業務がクリエイティブな仕事だということで、使用者の具体的な指揮、命令、監督になじまない仕事、先ほど申し上げたとおりですが、そういうのが増えているということで、通常の方法による労働時間の算定が適切でない業務というのがあるのだろうと思っております。その点で、その業務をどのように処理をするのか、遂行していくのかということで、通常どの程度の時間が必要なのかということを、労使間で一定の方法で定めをする。労働側の委員から、そこが適切でないというような御指摘かもしれませんが、一定の方法で労使が決めて 1 日何時間にするのかを決めることが、そもそも趣旨、本旨だと理解はしているところです。

 その点で使用者側としても、柴田委員、川野委員から御指摘があった不適切な制度の運用が現状でもあるのであれば、正していかなくてはならないと思っております。また、そのことを踏まえて、これから出ていく法案について、労働者側の指摘を踏まえて適切な制度運用がなされるように真摯に検討していきたいと思っているところです。以上です。

○荒木分科会長 ほかに、いかがでしょうか。

○秋田委員 今の輪島委員からもありましたように、企画型裁量労働制の対象範囲の拡大について、私からも重なるところもございますけれども、意見を述べたいと思います。やはり業務の高度化、多様化が進み、経済社会において競争が激しくなる中では、労働者の働き方に対する意識というのも変化してきております。事業活動の中枢を担う企画業務は、企業として欠くことのできない重要なポジションで、その業務の多くが労働時間と成果との関連性が余り高くないものが多くなっております。企画業務従事者には、業務の進め方について労働者自身の裁量で決定し、柔軟な思考と主体的な意思を持って業務に取り組んでもらうということで、高いパフォーマンスを実現していくことが求められますし、また、そのようにして自らも成果も高めていきたいと考える働き手もいると考えます。

 企画業務型裁量労働制の活用は、労働者が自ら働き方を選択することで働きやすい職場環境を構成し、その能力を十二分に発揮することが期待できる制度として、有用な制度であると考えております。また、新たに企画業務型裁量労働制の対象とされた業務は、いずれも労働者の働き方に対するニーズが変化、多様化する中で、時間と成果との関連性が強くなく、従業員が自らの裁量をもって主体的に取り組んでいき、能力を十二分に発揮して創造的な成果を上げられる業務として枠組みの中に入れることが妥当であろうということです。

 平成 27 年の建議として既に意見をまとめていただきましたとおり、従来の主張と同様ですが、導入に賛成です。また、労働側委員の方からいくつかポイントを指摘されましたが、例えば新入社員が対象となるのではないかという話ですが、我々は新入社員というと、いわゆる新卒の総合職をイメージしがちですが、最近は中途入社で即戦力のプロフェッショナルという方も、当然転職組でいらっしゃいます。これを、企業としては、新入社員として対象から除くというのは、企画そのものを担わせようとしているプロフェッショナルですから、あり得ないということで、一律に新入社員というのを制度として除くというのは難しかろうと考えております。

 また、管理、評価をするので管理職が対象になるという話でしたが、管理監督者の定義というのは全く別だろうと考えております。もし、事務局から補足していただければと思います。ここでいう評価は、例えば成果が目標に達していないということは、当然パフォーマンスとして評価ができるわけですから、例えば、これは誰が見ても目標に達していないというときに、もう一回 PDCA サイクルを回して更に成果を高めていこうというのは、これは企業活動として自明のことでありまして、これがなければ経済の成長がないだろうと考えております。

 それから、自社以外の業務に関わるので、非常に裁量が難しいという話がありましたが、ここで言う課題解決型提案営業は、この提案営業そのものが自社の営業です。マーケットのニーズを分析しないで営業するということは、企業の中ではあり得ないですし、その中のジャンルとして法人の事業に関するソリューション営業をするということです。これを専門にやっている会社も当然あるでしょうから、それが自社営業ではないということは、私には理解しかねるところです。それから、労災申請が難しいというような専門家の意見があるということでしたが、これも内容がよく分からないのですが、もし、労災申請が難しいということであれば、事務局からそういうケースがあるのかどうか補足していただければ有り難いと思います。以上です。

○荒木分科会長 事務局から補足ございますか。お願いします。

○藤枝労働条件政策課長 何点か補足させていただければと思います。新入社員の関係で秋田委員からも御意見がありましたけれども、まず、現行制度の確認だけさせていただければと思います。資料 No.2 、「労働基準法等の一部改正する法律案」についての 13 ページ、後ろから 2 枚目です。これは企画業務型裁量労働制の指針の抜粋で、 13 ページの 2 段目に対象労働者がございます。先ほど来御紹介がありましたけれども、対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であるということが求められるわけです。その指針の中で、下線を引かせていただいておりますが、客観的にみて対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有しない労働者を含めて決議した場合、当該知識、経験等を有しない労働者を対象業務に就かせても、労働時間のみなしの効果は生じないということに留意することが必要という原則。そして、例えばとしまして、大学の学部を卒業した労働者であって全く職務経験がないものは、客観的にみて対象労働者に該当し得ず、少なくとも 3 年ないし 5 年程度の職務経験を経た上で、対象業務を適切に遂行する知識、経験等を有する労働者であるかどうかの判断の対象となり得るものであることに留意することが必要であるということで、この指針について指導をしているという状況にあります。

 それから、 PDCA のところで管理者ではないかという話がありましたけれども、ここも繰り返しですけれども、例えばということで品質管理の計画を企画部門で企画を立案されて、それが実際に現場で、正に PDCA 、プランがうまく実施がされているかどうか、実施を管理してチェック、評価をして、アクション、さらに新たな品質管理計画の改善につなげるという、その一連の作業を企画・立案・調査・分析を主として行うような業務を念頭にしておりますので、現場のいわゆる工場の管理者ということを念頭にした議論ではなかったと承知しております。とりあえず以上です。

 労働災害の認定は、これは実際に脳、心臓疾患の労災認定基準の認定に当たりましては、実際に休日労働も含めて実際の労働時間の実態を把握した上で、発症された日から 1 か月なり 2 か月なり遡って認定基準に該当するかどうか、それを、実態をしっかり判断して総合的に認定、判断をするという取扱いになっています。以上です。

○荒木分科会長 ほかに、いかがでしょうか。

○齋藤委員 私からも、いわゆるホワイトカラーが、より主体的に働くことのできる選択肢を増やすことの必要性について申し上げたいと思います。いわゆる企画業務型裁量労働制の拡大についてですが、私の理解では、こちらについては賛成と申し上げたいと思っております。特に製造業におきましては、グローバルな競争もしかりですし、新しい技術の開発が非常に厳しくなっております。これまでの車なら車、電機なら電機というものではなくて、総合的に新しい技術が日々生まれる中で、特にホワイトカラーが、これまでのカテゴリーではない、いろんな仕事を複合的に実施し、新しいものを作っていかなければならないという状況に直面しておりまして、こちらを早急に進めていかないと、ますます会社は成り立たなくなるという事態もあると認識しております。こうした中で、中核を担うホワイトカラーにつきまして、スピード感をもって複合的になっている業務を創造的に生産性高く進めていただく中においては、先ほど労側の委員からもございましたが、心身の健康確保は前提としつつも、自ら考えて行動をするという主体的で裁量をもった働き方のできる方が、その力を存分に発揮できるような枠組みの選択肢を用意することが非常に大事なことではないかなと考えております。以上です。

○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○柴田委員 先ほどの対象業務拡大の「課題解決型提案営業」について、もう一度申し上げます。確かに新しい技術は、職種にとらわれないいろいろな技術を融合するという意味で、創造的な働き方をするというのが大事だということは十分理解していますが、現行の制度でも十分ではないかと申し上げておきます。課題解決型提案営業は、私自身も営業に関して経験がありますが、八野委員が発言したように、時間の配分の決定を労働者に委ねるとした点に関して、顧客の言うことに関して果して労働者が制御できるのかという問題があるのではないかと思っております。そういった意味でも、どのように労働者に業務量や時間配分を委ねさせるのかというところは、使用者側の立場から何かお考えがあるのか、お聞きしたいと思います。ユーザー数が多ければ多いほど、働き方は責任感がある人ほど、私は制御できないのではないかと思っていますので、その点を申し上げたいと思います。

○荒木分科会長 使用者側委員への問い掛けですが。

○秋田委員 御質問についてですが、例えば提案、ソリューション営業をして、お客さんからあれもやってくれ、これもやってくれと、どんどんリクエストが多くなってくるという場合と思いますが、そもそもそれを売っているほうとしては、我々が提案した中身でお客様と契約をするわけですので、それ以外にまた、これもやってくれ、あれもやってくれと言われれば、それは逆に言うと追加でお金をもらわないと、売るほうとしても、通常ですとそれはちょっと契約の範囲に入っていませんという話になります。また、逆に提案の中に入っている事項で、仮に新たなリクエストが出てきてマンパワーが掛かる、日にちが延びるということであれば、これも工程が延びますので、通常はきちんと追加料金を頂きます。したがって、そうなると我々の投入する人員も当然増えていきますので、通常はそうしないととても採算が取れなくなります。逆に言うと、ずるずるお客様のニーズを聞いていると、採算が取れなくなるというのが、我々の実務的な感覚です。

○荒木分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○神田委員 今ほどあったお話は、経営側から見た契約の仕方としてはごもっともな部分があるかもしれません。しかし、包括的な契約の中では、私は基幹労連ですから、どこぞとは言いませんが、今発言のあった時間の延長、あるいは契約の修正、あるいはシステムの変更等のいろいろな課題があったときに対する全体の入り口の契約の在り方は、その企業ごと、産業ごと、あるいは対象とするものによって違ってくるのではないかと思うのです。

 そもそも、先ほど柴田委員がおっしゃったように、前回もお話しましたが、我々弱い立場にある働く者の安全と健康を守るという労基法の持つ最低限のルールという中で、こうした制度の創設などにつき、議論しているということです。したがって、縷々裁量労働制の問題をはじめ、先ほど幾つか質問をさせていただいた中にも、例えば 2017 6 月の報告の中ではということで、事務局から御報告もありました。例えば過半数代表者のところでは、使用者や親睦会等による指名など、そもそも論として、まだまだその中に多くの課題があるということです。前回、少し乱暴な言い方ですがということでお話させていただきました。最低限のルールを作るというときに、今は土台そのものに幾つかの課題があるなかで、その上にまた作ることになるのですが、それが 100 とはいかずとも、足らざるところを補うのであれば、 80 90 のオーダーはしっかり守られていかなければいけない。しかし、省令違反などといった法令が守られていない中で、その次にこうした整理をしっかりとしていくべきところ、また新たな制度を作っていかなければいけないという現実があるということを、冒頭お二人の委員からもあったのではなかろうかと思っています。

 それから、高度プロフェッショナル制度の関係も少しお話させていただきます。いわゆるプロフェッショナル、エキスパートの方々が対象ということではあるのですが、成果ということからいくと、前回労側委員からも述べましたが、エースという方々は本当にストイックに一生懸命に仕事をします。成果を出します。その成果を更に伸ばそうとします。 A さん、 B さんというエースは、横の方々の成果を見ながら、更に成果を伸ばそうとします。つまり、無理をしながら働いているなかで、そのときに本当に、雇入れ側が管理者として、労働時間、あるいは健康管理時間を含めて、担保をするということが必要ではなかろうかというお話をしました。そうした点を改めて見ていきますと、我々労働組合としては、今ある制度をどう磨き上げていくのか、労働者を本当に守ることができるのかというスタンスです。また、企業の発展なくして私たちの雇用と生活の安心、安定なしということも変わりません。それは、私自身も思っています。しかし、正に命に関わる問題、病に関わる問題を議論しているのであり、我々としてはこの間、高度プロフェッショナル制度の創設には反対だということを言わせていただいたということを、繰り返しになりますが述べておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○八野委員 先ほど秋田委員からも、「労働側委員の方からいくつかポイントを指摘されましたが、例えば新入社員が対象となるのではないか」という発言がありましたが、新入社員について、確か提示していないと思います。それから、管理監督者のことを言っているのではなくて、対象業務が、事業の運営に関する事項について PDCA を回し、当該事業の実施管理をするとともに、実施状況の評価を行う業務となっているので、管理に携わる者も対象になってくるのではないかということです。こうした労働者が、労働災害の申請をする際に、みなし労働時間制であったり、被害を受けた方が調査をしようとしたときに、どれぐらい働いているのか、その辺りが隠れてしまって表に出てこない部分もあるので、そういう心配もあるということで申し上げたということを述べさせていただきます。

 高度プロフェッショナル制度について、少し触れさせていただきたいことがあります。高度プロフェッショナル制度の対象業務が非常に不明確だという指摘を、私たちも 2015 年の法案が出される前の議論でもさせていただいたと思います。この前、厚労省から出していただいた過労死、過労自殺の実態を見ていきますと、高度プロフェッショナル制度の対象業務に想定されるだろうというものが、総務省の日本標準職業分類の中の専門的・技術的職業従事者に近い類型にあるのではないかと思います。その中の脳、心臓疾患及び精神障害の状況を見ていきますと、過労死又は過労自殺とも、特に精神疾患で非常に多いという状況が出ています。ただ、これは職業分類の中でも、まだ広く捉えられておりますので、それを更に細かく、経営・金融・保険専門職業従事者の定義を見ていきますと、高度な企業経営や金融・保険に関する専門的な知識や、コンサルティング業務や、資産運用や金融取引に関する助言、リスクヘッジ、リスクマネジメント、投資戦略等を行うとあり、高度プロフェッショナル制度の中に具体的な例示として出てきている業務です。まだ他にも少し類型があるのですが、その類型の中でも精神障害による過労自殺も、平成 27 28 年の 2 年間だけですが、発生している実態があります。これは、何らかの労働時間管理なり、監督行政が行われている中ですが、このような実態があります。

 高度プロフェッショナルになりますと、確かに、健康管理時間のもと、健康確保措置は講じられるわけです。しかし、働き過ぎ又はいろいろな目標を達成するためのストレスなどが、実際は心身の問題となり、それが過労死や過労自殺に結び付くことを見ていったときに、ただでさえ対象の業務が条文又は報告書の中で記載されている内容で読み切れず、さらには対象範囲がまだ拡大をしていくかもしれない懸念があるなかで、対象となる労働者は労働時間の管理の適用除外になると、やはり働く者の健康、命に対して、私たちは心配せざるを得ません。そういう意味では、こういう制度でいいのかということがあります。

 それから、高度プロフェッショナル制度は、「時間ではなく成果 に応じて賃金を決める制度」 と言われる場合がありますが、時間で賃金をもらっている人たちは、例えばパートタイマーなどの人たちであり、多くの労働者は、成果というものの中で評価をされたうえで賃金が支払われているのではないかと思います。条文の中にも、成果で評価をされるということは一切書かれておりません。また、年収要件も、基準年間平均給与額の 3 倍となっております。先日、毎月勤労統計を調べてみますと、 2015 年当時はその統計を踏まえ、 1,075 万といわれておりましたが、現在の統計で計算すると、 100 万以上減額になってしまいます。ポンチ絵にある「 1,000 万円以上」というのはどこの話なのかということがあります。このように、制度的にまだ不明確なものがある中で、労働時間規制を適用除外にする制度であるという観点からは、やはりもう一度制度全体の見直しをし、今回の法案一本化の中には入れていかないことが必要なのではないかと思います。以上です。

○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 何点か申し上げます。先ほど使用者側の委員の皆さんから、「クリエイティブな業務が増えてきていることによって、柔軟性のある新しい働き方が必要なのだ」という御発言が続いてきました。仕事の仕方が少しずつ変わってきているということはあるのかもしれませんが、なぜそれがみなし労働時間制でなくてはならないのか、高度プロフェッショナル制度でなければならないのかということについては、きちんとした理由を私ども労働者側委員としては見いだしにくいと考えております。

 この間、企画業務型裁量労働制などについて、様々な意見を聞いてきました。その中では、「自社では制度を導入したのだけれども、その際、会社と協議を重ねて厳重なルールを作ってきたのだけれども、現在、運用に大変な労力を掛けており、果たしてここまでして入れる必要があったのだろうか」というような声もありました。また、実際には制度を入れなかったところからは、例えば夏休みの宿題のように、量と期間が常識的な範囲で収まっているようなものであれば、進め方、いつ行うのかは労働者の判断であるだろうけれども、しかし実際は業務量も期限も自分で決められるわけではない中で、本当に労働者に裁量があるのかという意見がありました。それから、 1 つ目標を達成していくと、次々にハードルが上がっていくというのが裁量労働制の運用実態ではないかというような指摘もされたところです。また、過重労働が問題になり、実際に裁量労働制をやめた事業所もあるというように聞いております。そういった声ですが、いずれも労働組合のある職場の話であり、労働組合があってもこうした実態がある中で、労働組合がない所でどのようなチェックができていくのか、どのような運用ができるのかということは、やはり疑問があります。そういう中で、対象業務を拡大していくことは本当によいのかということについては、疑問を持っています。

 また、先ほど八野委員からもありましたが、高度プロフェッショナル制度について、時間でなく成果で評価されるというのは、労働時間制度を変えなくても、労働基準法を変えなくても十分できる話ではないかと思っております。この点についても、疑問があるということを申し上げておきたいと思います。

○荒木分科会長 ほかにはいかがでしょうか。

○藤枝労働条件政策課長 先ほどの八野委員の御意見の中で、高度プロフェッショナル制度の年収についての疑問が示されましたので、現状の考え方だけ改めて説明いたします。条文にありますように、新旧で申し上げますと、 12 ページの 2 項のロですが、労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を 1 年間当たりの賃金の額に換算した額が、基準年間平均給与額、毎勤による決まって支給する給与の額を基礎として算定した平均額の 3 倍の額を相当程度上回る水準として、厚生労働省で定める額ということです。これは、前回平成 27 2 月の建議に至る当分科会の議論の中でも御質問があり、事務局からも説明しておりますが、この 3 倍の額を相当程度上回る額という水準ですが、 3 倍にも 4 倍にも張り付かない程度の水準ということで、 3.3 から 3.4 倍程度が考えられるという説明をいたしました。今の平均給与の 3 倍の額は、大体 930 万円程度ですので、それを 3.3 倍なり 3.4 倍しますと、 1,000 万円を超える額になると考えております。こういったことを念頭に、具体的には省令で定める際に議論していただくことを改めて説明いたします。以上です。

○荒木分科会長 制度の導入についても、労働側から意見が述べられました。それらのコメントについて、使用者側から更に何か御意見を頂けますか。

○輪島委員 どの様な観点からでしょうか。

○荒木分科会長 例えば、高度プロフェッショナル制度などについて、働き方の多様化に対応して、何か変わっているのは分かるけれども、本当に導入する必要性があるのかということでしたね。

○輪島委員 今日議論している企画業務型裁量労働制の適用の拡大、それから前回議論した高度プロフェッショナル労働制について、私どもとしては働く側、働く方の健康の確保をかなりの程度ビルドインされているものだと思います。その一方で、自立的な働き方を可能とする制度と考えているところです。そういう意味では、使用者側としても濫用されるということは本意ではありませんので、そういう意味での様々な保護制度は必要だと思っておりますし、労働側から示された懸念もある一定程度は理解をしたいと思います。そこも含めて、全体を進めていく必要があるということは、改めて申し上げておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 それでは、公益の委員から何か御発言はありますか。

○川田委員 前回以来、議論になっている裁量労働制の対象拡大と高プロ制度の導入に関して、議論をお聞きした上で、私なりに考えたことについて意見を述べたいと思います。

 こうした制度の意義に関しては、前回、公益委員として安藤委員の御発言もありました。私としても労働者がビジネス上のスキルも含むような専門的な知識・技能をいかして、一定の主体性、柔軟性を持った働き方をするということに対応した制度上の選択肢を増やすという方向で、現行の労働時間法制に修正を加える可能性については、検討に値する意義があるだろうと考えております。

 審議の中では、制度導入の是非の点を中心として、導入した場合の制度の内容に及ぶような議論がなされてきたものと認識しております。私としては、問題になるのは先ほど述べたような専門性、主体性、柔軟性を持った働き方に制度の対象が適切に限定されているということ、そのような働き方を前提とした上での働き過ぎに対する適切な歯止めが掛けられているということ、例えば、賃金減額の手段として制度を用いるという濫用的な使い方の排除が徹底してなされることという制度の内容が、運営の在り方を含めて問題になるのだろうと考えております。

 そのような観点からは、まず、企画業務型裁量労働制の対象拡大の問題に関しては、完全に私の考えている問題点と、これまで議論されてきた点が一致していると考えております。裁量制を確保できるような形にするということ、それから、手続要件がきちんと機能するようなものにすることという点と並んで、特に重要と考えているのが、制度の適用対象が適切に限定されていることだと思います。裁量労働制の適用対象に関しては、過去にも専門業務型の裁量労働制について、対象が制度の趣旨を超えて拡大するような運用がなされてしまうという実態が生じて、その後で対象を限定するような制度的な対応をしたという経緯があることも考えると、特にこの点が極めて重要だと考えております。

 もう 1 つの高プロ制度についてです。この点については、考える前提として、この制度は現行の労働時間規制の適用除外というよりは、現行の規制を先ほど来述べているような専門性等を持った働き方に対応したものに組み換えていくという、規制内容の修正、組換えという性質を持つものと理解すべきであろうと考えております。

 現行の法案の中では、高プロの制度は一定の要件を満たした場合に、現行の労働時間規制の適用を除外するという形になっており、形式的には、確かに適用除外という形のものであるわけです。その要件の部分の中で、対象業務や対象労働者を限定する、あるいは、健康管理時間という概念を想定して、それによる時間管理を行う。あるいは、健康・福祉確保措置として、休日の確保や休息時間の確保等の形による労働からの解放について、最低限の保障を行うということ等について定めているわけです。

 こうした要件について、それ自体が労働条件の基準であることと遜色がないような形で、行政監督を含めた実行性の確保が図られるのであれば、恐らく、そういうものとして想定されているのだろうと思います。そうであれば、先ほど述べたように適用除外というよりは、現行の割増賃金規制と連動するような形で労働時間を細かく測定、管理して規制するという規制を、高度な専門性を有して、それに見合った賃金処遇を受ける労働者の働き方に合うような形で、一連ではカバーというか柔軟化する。他方で、そのような一定の柔軟性を持ったような働き方に合うような時間管理や、健康確保、労働からの解放の保障について、今の規制とは異なる形、かつ、その一部には休息時間のような、現時点では現行の規制の中には存在しないようなものも含めて規制を掛けるという、規制内容の修正組換えと見るのが適切であろうと考えられるということです。

 そのような観点から見ると、ここでも私の意見と審議内容がかなりかぶってしまっています。全体的な要件の設定の仕方が問題になり、正に、それがこのような労働者についての労働時間の規制として適切なものであるのかということが問題になると思います。特に重要だと思われるのが、今、法案として出されている働き過ぎの防止の核になる健康・福祉確保措置の内容で十分かというところが特に重要なのではないかと考えております。少々長くなりましたが、以上です。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○世永委員 今までの論議とは異なるのですが、前回も発言させていただいた問題についてお話いたします。前回、中小企業における時間外労働の割増賃金率のダブルスタンダードの関係について発言いたしました。我々としては、 2010 年の改正労働基準法施行以降、既に 7 年が過ぎているということ、また、雇用労働者の 6 割を占める中小企業で働く労働者が適用猶予されている実態にあることについて重く受け止めています。企業規模あるいは業種によって、適用の在り方について格差があるのはいけないということについて、改めて要請させていただきたいということが 1 つです。

 もう 1 つは、時間外労働の上限規制の適用除外等業務についてです。この間、業種の観点から、私から発言しましたが、やはり長時間労働に起因する脳、心臓疾患やメンタル疾患、過重労働、労災防止の観点からも、これらの業務についてもきちんとした対応が必要であるという 2 点について発言いたします。以上です。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○小林委員 今、世永委員から出ました中小企業の 60 時間超の件、労働側はダブルスタンダードと言っています。これは平成 27 年度に終わって出したときにも解消しましょうということで、解消の方向へ向かっていますから、これは使用者側の中小企業の団体としても、これは解消する方向へ向かいたいのです。先ほどのお話にもありましたが、上限規制の問題、これは命に関わる大きな問題で早急に取り掛かろうというのは、この建議を出す前の法案の検討を行った段階で、私からもこれは命に関わる問題だから早急に検討して早急に改正案をまとめましょうということを申し上げたところなので、これについては異議はありません。

 ただ、中小企業の適用除外の部分について、それから働き方改革の中でいけば、企業側にとってみると、同一労働同一賃金、時間外の問題、安全衛生を含めた対応をしなければならない、これは非常に大きな問題となっています。

 例を挙げれば、就業規則の改定から上限規制でいけば 36 協定の在り方です。今まで労働者代表者制の問題はいろいろ意見が出ていましたが、きちんとした形で適正にやらなければならないということになると、それなりの周知をして、厚労省をはじめ私ども使用者団体としてもしっかりした指導をしていかなければならないと考えております。それには、それなりの時間が掛かるのだということを御理解いただきたいところです。

 それから、同一労働同一賃金について言うのであれば、就業規則から賃金規定の改定をしなければならない。これは、対象が正規の方々、短時間労働者の方や有期雇用の方々等の待遇の在り方の見直しも含めて考えなくてはならないということになると思います。これも、それなりに十分な時間が必要になってくるのです。

60 時間に話を戻すのであれば、過去の今までの議論の中にも、先行して大企業で 60 時間を超えたら 1.5 倍にしたのですけれど、それが、 1.5 倍の支払いを高くしたからといって、時間を抑えるということに働かなかったという経緯が若干あるということも含めて、とは言え、長時間の 60 時間超の労働に対しては、それなりの労働者の方々に負荷しているわけですから、賃金の待遇面を見直しましょうと。これは、賃金規定を含めてゆっくり考えなければならないと私どもは考えております。ですから、前回の法案のときには、 3 年間の猶予期間をという形になっていたので、法案が成立しなかった現在に至っても、それなりに十分な時間を持って対応していただきたいというのがお願いです。

 それから、柔軟な働き方の部分で、企画業務型裁量労働制について、いろいろ労働側の皆さんから御意見が出ておりました。そもそも企画業務型裁量労働制の反対をしているのか、私にはどうもそうにしか聞こえないのです。従前から専門型と企画業務型はあったわけですから、前の議論のときにもっと問題点等の指摘をしてほしかったです。現段階でも対象業務の範囲が不明確というのであれば、これを明確にしましょう。これは指針等で明確にできると思いますので、この辺りは法案として、企画業務型裁量労働制についても、労働時間の上限規制についても、労働基準法の 1 本の改正になるわけですから、まとめてやっていただいて、詳細をまだ言い足りないところがあると思いますが、労側の方々の御主張で受け入れられるところは我々も十分検討します。そういう法律とは別に指針等でお示しして直せる部分については、今後も議論を重ねながら、この全体をワンパッケージで、是非とも法案を提出していただくようにお願い申し上げます。以上です。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○川野委員 今ほど発言のあったことも含めてですが、先ほど、ダブルスタンダードとなっている中小企業における時間外労働の割増賃金率の適用猶予措置については、既に法改正から 7 年が経過していることを含めて、これ以上の時間が必要なのかということが前提としてあります。加えて、労働の価値、規模によって割増率の違いがあってよいのかということもあります。確かに中小企業の経営的な力もあるかもしれませんが、だからといって、中小企業の時間外労働が安くていいのかという観点から見ると、公正競争を阻害し、それが、ひいては人材確保を困難にして中小企業の魅力を奪うということにつながっています。これについてはいろいろな方面から指摘があり、中小企業の魅力作りをどのように行っていくのか、賃金や労働条件をどのように向上していくのかなど、様々な意見があり、これは我々労働者側委員だけが言っているわけではないということを前置きしておきたいと思います。

 その上で、先ほどの同一労働同一賃金に関する施行時期も含めてですが、なぜ、今、中小企業に法改正の猶予期間が必要なのかという考え方の元にあるのは、価格に転嫁できない公正取引の話があります。これまでもずっと課題として上げられ、今、それを日本全体で改めようという動きの気運が高まってきており、経産省も含めて安倍首相までも、公正取引の確立に向け、取引環境を改善することで中小企業の賃金を上げようという動きを 2 年前から積極的に展開してきたという背景もあります。そういう観点から見ると、中小企業で働く、 6 割を超える雇用労働者が除外されるような状況のままでいいのかということが、私たちの主張の前提にあるということを申し上げておきたいと思います。

 加えて、先ほど川田委員から説明があったとおり、我々、高度プロフェッショナル制度の導入に反対というのは、対象となる労働者が適切に限定されて、その濫用、懸念をどのように払拭できるのかということも含めてですが、今回の「働き方改革」は、命と健康を守るために長時間労働を是正するということが前提にあるにもかかわらず、労働時間規制から外れる人たちが出るということも非常に大きな懸念、不安があるということです。

 選択的な健康福祉措置に対しては、これまでも主張してまいりましたが、現状の選択的措置では不十分だということです。勤務間インターバル規制の導入や労働から解放される時間をどれほど担保して健康を守っていくのかという観点から、様々な措置が義務化されたとしても、労働者の安全が確保されるという観点からは、選択的措置では不十分であるということも含めて、高度プロフェッショナル制度の導入に反対ということも発言しておりますので、そこが担保できていない中で、早期に制度を入れるということについては、 2015 年の審議に当たって、当時、私は委員ではありませんでしたが、 22 回の審議を経ても、労働者側の委員の理解が得られなかったという背景があるということを理解いただければと思います。以上です。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○小林委員  60 時間超の問題です。まだダブルスタンダードにこだわっているようですが、上限規制の問題の検討をやったときに、運送業、建設業、 IT 産業、医療関係、教育機関等、ある特殊な分野だけが長時間労働になっているケースが多いわけです。今回の改正でも運送業と医療については再検討、建設業については条件的に若干ずらすような形を取っています。この業種は、それぞれの企業では解決が付かないのです。

 それぞれの業界団体では、今、政府とともにいろいろ検討会をやっているわけです。トラックはトラックの適正化、建設や情報関係も行政と一体になって取り組んでいただいて準備を進めているわけですから、これがすぐに解決しているわけではないのです。ですから、 3 年間の猶予期間を残した上で多少の時間を与えて対応していただきたいという意味で、中小企業はダブルスタンダードを残すようにとお願いしているのです。一般的な製造業の今の残業時間を見てみると、 60 時間を超えているのは余りないのです。大企業に比べれば、中小企業の場合、残業時間数は少ない現状にあるわけですから、その辺りを含めて、十分御配慮いただきたいというお願いです。

 高プロについて申し上げると、時間外労働の仕組みを作る必要があると思っております。ですから、そういうものを含めて法案を出した上で、並行してもいいですし、法案成立後に検討するようなことを検討した上で、労使の中でも、十分に納得いく形でスタートさせる準備に取り掛かってもいいのではないかということです。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○八野委員 今、いろいろお話が出てきました。最後になるのかもしれませんが、労働側の見解だけを少し申し上げます。私たち労働組合は、長時間労働の問題等に対して、今回、政府が取り組んだことや、政労使の合意の下、時間外労働の上限規制ができたことは非常に重要だったと思っております。というのは、労働時間は働く者にとって最も基本的な条件があるということです。

 今、私たちがやらなくてはいけないのは、過労死、過労自殺ゼロはもとより、全ての労働者が健康でワークライフバランスを確保することであり、これらを実現することが重要であると思っております。そういう観点から、時間外労働の上限規制等を早期に施行をすべきであると考えております。

 先日、労働者側委員から申し上げたとおり、 2015 年の法案にある企画業務型裁量労働制の対象業務拡大や高度プロフェッショナル制度の創設は、今、話した時間外労働の上限規制等の趣旨とは異なるということから、一本化には反対であるということです。ただし、議論に上がっていた中小企業における月 60 時間超の時間外労働の割増賃金率の適用猶予廃止、また、年次有給休暇の取得促進については、時間外労働の上限規制の法案と一緒に盛り込むべきと考えております。

 企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大、また、高度プロフェッショナル制度の創設については、前の法案要綱でも労働側の意見を付していただいたように、反対であるということについては変わりございません。この間の様々な議論等、我々も意見を述べさせていただきましたが、今後、労働条件分科会においても、様々な局面があると思いますが、こうした前提で、臨んでいきたいと考えております。以上です。

○荒木分科会長 ほかに何かございますか。

○村上委員 労働者側委員として総括的な意見は、今、八野委員が述べたとおりです。別の件で、前回発言を漏らした点等を 2 つ申し上げます。

1 つは、前回の冒頭で労働基準局長から 2 点の御提案を頂いていたと思います。まず 1 つ目は、労基法については、 2015 年の法案と時間外労働の上限規制の法案とを 1 つの法律案にまとめることが適当だと考えており、この両者を一本化して提出したいという御提案を頂きました。その上で、働き方改革に関連する法案全般についても一本化していきたいという御提案でした。後者については、意見を申し上げておりませんでした。この点については、労働政策審議会での議論でありますので、なぜ、そのような改正をするのかという立法プロセスの部分について、ある程度見えるようにはなっており、労使で意見を述べ合っているということがあります。しかし、立法府での議論も大変重要だと考えております。この点は、以前、雇用保険法で 4 つの法案を束ねる際にも、別の審議会で申し上げたのですが、多くの法案を束ね過ぎてしまうことで、結果としてきちんとした議論していただけないということにならないようにすることが、必要であると思っております。その点については、前回と同様の意見を持っておりますので述べておきたいと思います。

 また、 2 つ目は、細かな点ですが、先ほど事務局より高度プロフェッショナル制度の対象労働者の年収要件について御説明がありましたけれど、「相当程度上回る」という部分に対しては、「 3 倍にもはりつかず、 4 倍にもはりつかず」という御説明はいただいており、相当程度というのは 3 4 割程度離れたものだということは、以前の労働条件分科会でお答えがあったところです。「相当程度上回る」という文言が条文のどこの文言に掛かるのかということについては、理解が共有化されていないのではないかと思っており、その点を意見として申し上げます。以上です。

○荒木分科会長 本日は 2 時半までということで、もう時間がきておりますので、ここで頂いた意見を少しまとめておきたいと思います。継続審議中の労働基準法改正案は、平成 27 2 月の当分科会の報告建議を基にしており、諮問された法案要綱についても、労側委員から裁量労働制の対象業務拡大と、高度プロフェッショナル制度の創設について反対意見が付されておりましたが、法案全体については、公労使一致した意見として、おおむね妥当との答申が出されたところです。この点については、もう一度確認しておきたいと思います。

 そして、当時、合意が得られず引き続いて検討課題となっていた時間外労働の上限規制、勤務間インターバル制度の導入については、本年 6 月のこの分科会の報告建議で、その道筋が付けられたところです。このような当分科会の議論の経緯に鑑みると、 2 つの建議の内容は、全体として労働者の多様な働き方を踏まえ、その健康を確保しつつ労働時間制度に多様な選択肢を用意するものと理解することができるように思います。

 労働側委員からは、継続審議中の法案と上限規制の法案との一本化には反対であるという意見が述べられたところですが、先ほど発言があったように、 2015 年の法案に含まれている中小企業の割増賃金の引上げ、年休取得促進の措置については、今回の上限規制の法案に盛り込むべきであるという主張もなされているところです。

 そうすると、これは法案の形式の問題というよりも、政策論として裁量労働制の対象業務拡大や、高度プロフェッショナル制度の導入について反対という御意見を述べられていると理解することもできるように思います。また、働き方改革に関するその他法案についても、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現等は、いずれも労働者の実情に応じた多様な働き方を可能にするとともに、多様な労働者が、その能力を有効に発揮できるようにするという目的を有しており、その趣旨や諸施策の関連性を考えると、これを 1 つの法案で整理するということも、 1 つのあり得る考え方とすることもできるかと思います。

 いずれにしても、その内容については、政策論として各分科会や各部会で議論して判断すべきものと考えます。この労働条件分科会においては、裁量労働制の対象業務拡大と高度プロフェッショナル制度の創設については、労働側委員から制度導入に反対する意見が述べられたとともに、仮に現在の法案が制度化された場合の払拭すべき懸念点についても述べられたところです。

 具体的には、裁量労働制に新たに追加される対象業務の範囲が不明確であるとか、その本旨の徹底の点に懸念がある、高度プロフェッショナル制度の健康・福祉確保措置が不十分ではないか、という懸念点が示されたところです。これらの点については、公益委員からもその懸念について理解が示された点があり、使用者側委員からも一定程度の理解はできるという意見も述べられたところです。以上のような経緯を踏まえると、政府においては、この分科会での議論の経過、労働側委員から示された懸念点を踏まえた上で、次回、法律案要綱を示すようにお願いしたいと考えます。

 それでは、時間がきましたので本日は以上といたしますが、次回の日程について事務局からお願いします。

○中嶋調査官 次回の労働条件分科会の日程は、 9 8 ( ) 18 時から 19 30 分、場所は TKP 新橋カンファレンスセンター会議室を予定しております。

○荒木分科会長 議事録の署名については、労働者代表の柴田委員、使用者代表の齋藤委員にお願いいたします。以上で第 139 回労働政策審議会労働条件分科会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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