ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 一類感染症に関する検討会> 第4回一類感染症に関する検討会

 
 

2018年9月12日 第4回一類感染症に関する検討会

健康局 結核感染症課

○日時

平成30年9月12日(水)14:00~16:00

 

○場所

厚生労働省 省議室(9階)

○議題

(1)エボラ出血熱患者発生時の情報公開の基準について
(2)「一類感染症への行政対応の手引き」の作成について(案)
(3)報告事項
  1.コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生について
  2.一類感染症等予防・診断・治療研修について
  3.バングラデシュへの人材派遣について
(4)その他

○議事

 

○嶋田研究推進専門官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第4回「一類感染症に関する検討会」を開催いたします。
初めに、構成員の出席状況を御報告します。本日は、大曲構成員より御欠席の御連絡をいただいております。
続きまして、検討会の開催に当たり、宇都宮健康局長より一言御挨拶申し上げます。
○宇都宮健康局長 皆さん、こんにちは。7月31日付で健康局長に着任しました宇都宮と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、エボラ出血熱患者発生時の情報公開の基準、そして、一類感染症への行政対応の手引きの作成ということで御議論いただくことになってございますが、実は私、平成26年に診療報酬改定の仕事をした後に、新宿の国立国際医療研究センターに夏に異動いたしまして、その直後に例の代々木公園を中心に起きたデング熱の騒ぎに大分巻き込まれまして、やっとピークが過ぎてほっとしたなと思った途端に、エボラ疑いの患者さんが発見されるという事件がございました。
その日は、結局病院の中に一日詰めたわけですけれども、あのときに公表していないはずなのに、いつの間にかマスコミの方々が国際医療センターの周りにだんだん集まり始めて、そういう様子がテレビで映されて、一体どこから漏れたのだろうと感じておりまして、さらに、余りよくないことに、疑いの患者さんは隔離病室に入っていただくのですが、そこで外部とお話をするモニターがふだんはテレビが映るんです。そうすると、テレビで患者さん自身がどういう報道がなされているかをごらんになって、その報道の仕方によっては非常に不安になってしまうということがあります。
また、マスコミの方がたくさんいらっしゃって、病院の外来の患者さんが一時的に減ってしまったり、実際に入院している患者さんが、そういう危険な患者がこの病院に入っているなら、私も危なくなるのではないかと不安になったりとか、そういうこともありました。そうやって考えますと、もちろん患者さんの個人情報は一番なのですけれども、その他波及する面も含めて、いろいろ考えないと難しい問題があるのかなと思ってございます。そういったことを身をもって体験したものですから、ぜひ先生方にはそういうところも含めて御議論いただけたらと考えております。
その後、成田空港検疫所に異動しまして、そちらでもこういった輸入感染症の課題に取り組んでまいったわけですけれども、こちらでは疑いの患者さんが出たときの訓練などを行いましたが、まず訓練を行うに当たって、少なくとも全国レベルのきちんとした手引きが整備されていることが必要最低限大事なことでございます。そういったことで、最近もコンゴ民主共和国でまたエボラが発生したり、昨年はマダガスカルで肺ペストの流行などもあったりということで、ところどころで部分的な流行があるわけですけれども、いつ我が国にそういったものが入ってくるかわからないという中で、マニュアルあるいは情報公開の基準をきちんと定めることは、非常に大事なことだと思っております。
繰り返しになりますけれども、きょうは先生方にぜひ忌憚のない御意見を交わしていただいて、国民が納得できる、また、それぞれの事情なども勘案した、いいアウトカムが出ればありがたいなと思っております。最初に申し上げるのを忘れましたけれども、きょうは本当にお忙しい中、また、お暑い中集まっていただきまして、本当にありがとうございました。貴重なお時間でございますが、ぜひ忌憚のない議論を交わしていただいて、実りある成果を出していただければと思います。よろしくお願いいたします。
○嶋田研究推進専門官 宇都宮局長ありがとうございました。なお、局長は公務のため途中で退席させていただきます。御了承ください。
次に、事務局より資料等の確認をいたします。
議事次第、配付資料一覧、座席表、構成員名簿、ほか資料1~5、参考資料1~3を御用意しております。不足の資料がございましたら、事務局にお申しつけください。
それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。御協力をよろしくお願いいたします。
以降の議事運営については、西條座長にお願いいたします。
○西條座長 国立感染症研究所ウイルス第一部の西條といいます。きょうは議事を進行させていただきます。
本日の議事ですけれども、議題1「エボラ出血熱患者発生時の情報公開の基準について」。議題2「『一類感染症への行政対応の手引き』の作成について(案)」及び報告事項が3項目あります。構成員の皆様におかれましては、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いしたいと思います。
それでは、早速ですが、議事に入りたいと思います。議題1「エボラ出血熱患者発生時の情報公開の基準について」、資料1を事務局から説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。
○嶋田研究推進専門官 それでは、事務局より御説明させていただきます。資料1をごらんください。
まず、表面ですが「公衆衛生上特に重要である感染症の国内初症例が発症した場合の情報の公表に係る基本方針(たたき台)について」です。
公衆衛生上特に重要とされる感染症の国内発症例が発生した場合は、国が感染症の発生状況等に係る情報を公表することとなります。以下、国がこれらの感染症に係る情報を公表するに当たって、基本的な考え方を基本方針として定め、今後実際に公表を行うこととなった際に、本方針に沿って対応することにします。
こちらは基本方針です。
まず、国は、公衆衛生上特に重要である感染症の国内初症例が発生した場合は、感染症法の第16条第1項に基づき、公衆衛生上の対策の必要性の観点から、感染症の発生状況等に関する情報を積極的に公表することとします。
一方で、情報の公表の際には、同法の第16条第2項に基づき、感染症患者の個人情報の保護に十分に留意しなければならないため、情報の公表に当たっては、公衆衛生上の対策の必要性等、個人情報の保護の必要性を比較考慮し、公衆衛生上対策の必要性のほうが高いと判断した情報のみを公表することとします。公表の際には、公衆衛生上の対策の必要性について感染リスクの観点等から丁寧に説明することが重要ですが、国民の間でこれらの感染症について誤った情報が広まってしまい混乱が生じている場合等には、正しい情報を伝えるため公表の範囲を広げるなど、その都度状況によって判断が必要です。
また、感染症それぞれについてですが、他者への感染力、他者への感染経路、他者に感染させ得る時期等に違いがあるため、その特徴に応じて公衆衛生上の対策の必要性の程度が変わってくるものです。例えば、他者への感染力が弱く、他者への感染経路が接触感染に限られている場合、他者に感染させ得る時期が発症後に限られている感染症については、相対的に公衆衛生上の対策の必要性よりも個人情報の保護の必要性が高くなると考えられることから、感染リスクの観点からは不要な情報である発症前の、つまり感染させ得る時期でないときの滞在日数を含めた予定や訪問理由などを公表することは控えるべきだと考えます。
したがって、公衆衛生上の対策の必要性と個人情報の保護の必要性を比較考慮する際には、公表の対象となる感染症に係る他者への感染力、他者への感染経路、他者に感染させ得る時期に着目し、感染症ごとの特徴に応じて公表する情報を決定することといたします。
また、一番下にありますように、わかりやすく図を使って説明するように考えております。
続いて、裏をおめくりいただきまして、こちらは一類感染症でもあり、また感染症上重要である感染症として、今回エボラ出血熱の国内初症例が発生した場合の情報公開基準のたたき台について出させていただきました。こちらにつきましてはたたき台ですが、今回の意見をいただいて事務局で整理し、また、たたき台を関係省庁や関係機関とともに協議して、改めて議論させていただきたいと考えております。
エボラ出血熱の特徴としましては、他者への感染力が弱い、感染経路が接触感染で、感染させ得る時期が発症後に限られることから、相対的に公衆衛生上の対策の必要性よりも個人情報の保護の必要性が高くなるとしています。
そうした意味で、事務局の素案としましては、公表情報、公衆衛生上対策の必要性と個人情報の保護の必要性を比較した場合に、原則として公衆衛生の対策の必要性が高いと考える情報、これは伝える情報と非公開情報、個人情報の保護の必要性が高いと考えられるので、伝えない情報というのを考えております。
また、非公表情報のうち、国民の間で誤った情報が広まって公衆衛生上の対策でよくない場合は、感染者本人が不特定多数の人と接触した可能性が極めて高い場合については、公表せざるを得ない情報としまして原則非公開情報としています。
下のカラムに具体的に書いてありますが、きょうはこちらの内容の基本方針を含めた妥当性を御議論いただいて、後にこちらで整理させていただき、議論をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○西條座長 ありがとうございました。
今、資料1、情報の公開等のあり方を含めた基本方針が説明されました。今の御説明について、まず、皆さんから御意見等、また質問等がありましたら、よろしくお願いします。特に今の御説明で議論の中心となるべき案件、例えば、情報公開のあり方、その情報の内容のあり方といったことを議論するわけですが、質問・コメント等がありましたら、よろしくお願いします。
それから、今説明の中にもありましたとおり、今日提案された案件について議論して、その意見を持ち帰って整理するという運びになります。
それでは、皆さんから質問・コメント等がありましたら、よろしくお願いします。
○杉下構成員 東京都の杉下と申します。
エボラ出血熱に関する公表基準のたたき台ということでお示しいただいたかと思います。自治体の立場からすると、公表については都道府県及び区市町村はどのように考えればいいのか、公表の可否やタイミング等を明記しておいたほうが安全ではないかというのが1つございます。
あと、整理されてからになると思いますけれども、プレス案文のひな形も示されるとよろしいのではないかと考えます。
○西條座長 どうもありがとうございます。
今、提案された案件は、都道府県、地方の行政サイドからの公表のあり方の点についても考えておかなければいけないということと、公表のあり方、ひな形があると多分都道府県等で余り混乱が起こらなくなるのではないかという意見だと思います。、今の御意見について何かコメント等ございますか。
どうぞ。
○野田課長補佐 事務局から説明します。
基本的には、まず今回つくらせていただいている基準については、例えば、絶対にこういう形でしなさいというところまで強制力を持ってさせるものではございませんが、一方で、国としてはこういう形でやりますよというところをお示しさせていただくということでございます。その上で、恐らく特にエボラ出血熱などに関しましては、発生した状況によって、どういうタイミングで公表するかというのは変わってくると思いますけれども、その際には、もちろん発生した自治体と御相談させていただきながらやっていく形になろうと思います。一概にこういう形でやりましょうというのは難しい部分も大きいと思いますが、一方で、エボラ出血熱などについては、特に典型的な部分については、いろいろとこれまでに出ている事例もございますので、そういうところを踏まえて、どういうタイミングで公表するかについては検討していく必要があると考えております。
また、プレスリリースのひな形等については、国のほうでつくっておくということは自治体における対応の負荷をより減らすという意味でも大きい部分だと思いますので、そこについては検討させていただきたいと思います。
○西條座長 ありがとうございます。
杉下先生、今のコメント等には何かありますか。
○杉下構成員 ありがとうございます。ぜひ検討を進めていただければ助かります。
○西條座長 国からの情報の出し方というのは、多分、自治体とも相当調整してやらない限りうまくいかないということもありますので、その辺の重要性のコメントだったと思います。ぜひ御検討をよろしくお願いします。
そのほか、コメントありますか。松井先生、お願いします。
○松井構成員 公衆衛生上特に重要である感染症という定義が必要なのかなと思います。これを読んだときに、これを適用するのはどういう状況なのかというところでコンセンサスがなければ、スイッチが押せないのかなというところが気になりました。
今のところ、例えばエボラ出血熱を想定するとすれば、ここは主に拡大の評価、いわゆるリスク評価において必要な情報はどういうことかということが整理されていると思います。それはそれとして、エボラ出血熱という事例を考えて、基本的な情報としてどういうものが必要か。例えば、IHR報告の中で求められるような情報はどのようなものかという基本的に出したほうがいい情報と、感染拡大防止対策のためというのは、ちょっと考える軸が違うのかなと思います。
感染拡大の評価に当たりましては、私ども感染研は、感染拡大の評価に関して技術的な支援をするという役割を持っていると認識しておりますが、その中では、感染症ごとに拡大の様式が決まっているわけではなくて、もちろんある一定の様相は定義されますが、周辺状況によって拡大の様相は異なってくるという観点からは、コンテクスト部分の記載がなく、病原体が決まればそこで感染伝播の可能性も決まると読めてしまうのかなというところが気になりました。
あと、公衆衛生上の対策の必要性というのは、感染拡大をすることが見込まれる場合は、必要な対策をとるという筋道がもう少し明確に示されるといいのかなと思ったことと、あと、公衆衛生対策上絶対必要であっても、個人が特定されてしまう可能性のある情報は、現状あるウイルス性出血熱の行政対応の手引きの中では、個人が特定されるおそれのある情報については公表しないとされています。ですから、それは「勘案する」というものではなくて、絶対的価値として個人が同定されるものは公表しないというのは現実の手引きにもございますので、そういう意味で、何を目標にして、どういう筋道をとっていくかというところが、もう少し明確にあるといいのかなと思いました。
あと、私どもはリスコミの専門家ではありませんが、誤った情報が広まって混乱が生じている場合に情報の内容を調整するのではなく、そのような混乱が起こらないような綿密なコミュニケーションプランを立てるところが本筋であろうと思いますし、あと、状況の変化に応じてリスク評価を再度行い、それに従ってコミュニケーションプランを立てていくという表現のほうがいいのかなと思いました。
あと、個別の項目については、まだ現状議論するのは控えたいと思います。
以上です。
○西條座長 松井先生、どうもありがとうございました。
確認ですが、病気の種類で情報開示のあり方が決まるわけだけではなくて、一定の状況(の範囲)ではあるけれども、その状況によって(情報開示のあり方が)変わってくるだろうということがまず1点ですね。
それから、個人情報の開示のあり方は、個人の尊厳も優先して考えなければならないということと、先生の大事なコメントとしては、リスコミのあり方についても(あらかじめ)しっかりと検討しておかなければいけないといったこと。
あと、状況の変化に応じて公表のあり方も、あわせて情報のあり方を考えていくといったポイントだったということでよろしいでしょうか。
ほかの委員の皆さんからも、今の松井先生のコメントに対して、また意見等はありますでしょうか。足立先生、よろしくお願いします。
○足立構成員 豊島病院の足立です。
診療の立場からしますと、こういった患者から我々臨床医が聞き取った情報の中で、何が公表されて、何が公表されないかという目安を示していただいたのは、医師と患者との間の信頼関係を保つ上で非常に重要で、これは非常にありがたいと思っています。患者に対してもお話しいただいた情報の中で、この部分は公表されます、この部分はされませんということが言えますので、この一覧表は非常に臨床医にとっては有用です。
松井先生御指摘の個人情報の保持と拡大防止対策のコンフリクトが生じる可能性がある状況というのは、私も心配していることがございまして、これはエボラの例ですけれども、MERSが日本に上陸するのではないか、あるいはH7N9が上陸するのではないかというときに、医療機関をどこか受診して、そこで交差感染が発生した可能性があって、渡航歴はないけれども、患者が受診した医療機関を受診した別の人が発熱、呼吸器症状、肺炎を起こして来る。それも含めた症例定義を厚生労働省から示されたことがありまして、それは患者が受診した医療機関を公表しない限りは成立し得ない症例定義ですので、そういった個別の医療機関名を症例定義を機能させるために公表するのか、それともしないのかというのは、我々患者を診療する側の臨床医が症例定義を正確に利用できるかどうかの分かれ道でありまして、そういった状況まで含めて検討していただけると、また議論が一歩先に大きく進むのではないかと思います。
以上です。
○西條座長 ありがとうございます。
比較的具体的な、例えば医療機関名を公表する必要性がある場合があるのではないかということですか。
○足立構成員 2015年に韓国でMERSが国内で広がったときには、既に水際対策が突破された後に二次感染、三次感染が韓国国内で起こった後にMERSが実は国内にあるということがわかりましたし、それはいろいろな過程の中で発端者あるいは一次感染者が受診した医療機関名が表に出ざるを得なかったし、それに基づいてまた続発例の診断がされていきましたので、公衆衛生対応上はいずれは表に出ざるを得ない情報だとは思うのですが、それを主導していただくのは厚労省なり保健行政の側ではないかと思いますので、その判断をだれがするのかというのは、一つ大きなポイントではないかとは思います。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほか構成員の皆さんから。事務局から今の議論の中でコメント等何かあれば、よろしくお願いします。
○野田課長補佐 では、幾つか、松井先生と足立先生からございましたコメントにつきまして、事務局からのコメントをさせていただきたいと思います。
まず、松井先生から、公衆衛生上特に重要である感染症の定義を明確にしたほうが良いのではないかという御意見をいただきましたが、事務局の感覚といたしましては、すべからく感染症を分類することは難しいのかなと思っておりまして、基本的には個別に判断していくものだと思っておりますが、一方で、事務局の今念頭に置いているものとしては、今回御議論いただいておりますエボラ出血熱やMERS、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザなどはあるかと考えております。すべからく感染症について2ページのような公表基準をつくっていくということは考えておりませんが、一方で今挙げたような感染症については、例示として今後議論していくことができればと考えております。
2つ目のIHR通報の関係で御質問いただきました。IHR通報につきましては、公表というよりもまず条約上、相手国に対して、またWHOに対して通報する義務があるというものでございますので、そこについては必ずしも公表を前提としていない情報も含めて通報する可能性もあるものだとは思っております。ですので、今回御議論いただく公表の基準とはまた別の観点で考える必要があるのではないかと考えています。
あと、個人情報の部分で絶対に公表すべきではないものがあるのではないかというところについては、事務局でも、具体的にもしそういうものがあれば内容についてお聞かせいただければと思っております。
最後に、足立先生からございました医療機関名についても、例えば、2ページの一番下に、治療状況のところで医療機関名は非公開情報という形で入れさせていただいておりますが、一方で、接触者が発生した時点という意味での、すなわちマル6の非公表情報というよりは、むしろマル4の受診に至る経路のような形での医療機関名はあり得るのかなと思いましたので、そこについては、患者さんが治療している医療機関名については非公表情報という形で今回、事務局案では出させていただいておりますが、一方で、例えば、患者さんが受診に至る経路として滞在し、また他の方に感染させた危険性がある、さらには感染させた可能性がある人については特定できていない場合には、マル4の受診に至る経路という観点で公表する可能性はあるのかなとコメントを聞いて感じました。
以上でございます。
○西條座長 どうもありがとうございます。
今日は限られた時間なので、できれば個別のところも少し議論したいと思います。公衆衛生上対策の必要性の高い情報については、先ほど松井先生からも意見があったとおり、そういった情報は一体どういったものなのかを踏まえて、2ページの表にある公表情報について議論がなされるべきだと考えます。この件は事務局で、もう一度明確にしていただくことになろうかと思います。しかし、公表情報と要検討情報、非公表情報、この非公表情報の中で医療機関名については、先ほどの足立先生の意見からすると、その状況によっては、もしかしたら(公表しないとされている情報についても)公表しなければならないことになるかもしれないということだったと思います。まず要検討情報の中で、例えば患者さんが乗っていた便とか座席などは要検討ではないかと。それから、国内移動の経路で症状出現後の行動歴、受診に至る経路は要検討ということなのですけれども、特異的にここの部分について何か御意見があれば聞きたいと思います。そのほうが、これからの議論にいいと思います。
釜萢先生、よろしくお願いします。
○釜萢構成員 今、西條先生から御指摘がありました点ですけれども、今回エボラ出血熱についてのたたき台案が公表基準として出てきて、一般論としてはこれで理解はできるのですけれども、個々の事例はみんな違うので、発見された状態の患者さんがどのステージにあるかによって大分変わってくるわけですから、今、野田さんからお話があったように、幾つかの代表的な疾病について対策を考えていくに当たっては、余り一般論というよりも、幾つか割合厳し目の場面を想定して、こういう状況の場合はどうなのだろうかと判断に迷うようなところをあらかじめ設定しておいて、この場合にはこうする、こういうふうにしたらどうかというようなケーススタディーを幾つか提示するほうが実際に役に立つのではないかと思います。それは、西條先生が言われた、考慮しなければいけない場面というのも幾つかに分けて場面を設定して、それに対してはこう対応するという案が幾つか用意されていることが、私はよいのではないかと感じております。
以上です。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほかの意見等ありますか。足立先生、お願いします。
○足立構成員 私も、医療機関名あるいは飛行機の便名ですとか、航空会社ですとか、何も公表するのが良いと申し上げているわけでは全くなくて、こういった情報を公表すると病人を引き受けてくれる医療機関が減ることは目に見えていますので、そういった社会不安を引き起こすことにもなり得ますので、そこは症例定義を機能させるためにオープンにするのか、それともしないのかという個別の判断はどうしても必要かなと思います。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほかございますか。齋藤先生、何か御意見ありますか。
○齋藤構成員 本来コミュニケーションというのは非常に時間をかけてやるべきところですが、これまでそれほど余り力を置かれていなかった部分ではないかと思っています。そういう意味で、コミュニケーションについてきちんと公式の場で具体的に議論がなされるというのは非常の喜ばしいことだと思っていますが、非常に難しい内容であることには変わりないかと思っています。
既に先生に御指摘いただいていますように、ケーススタディーのような形でもう少し関係者間でどういう場面なのかという絵を共有して議論ができると、よい議論ができるのかなと思います。それで最終的にこのような形で、事務局の素案として出していただいたような公表基準という割とかちっとした形のものが議論としてまとまるべきなのか、それとももう少し緩いといいますか、個々の内容についてもう少し柔軟に読めるような基準で書くのかというのが決まっていくのかなと思います。
私は前回、参加できなかったので、多分1回目の議論がそこであったとは思うのですけれども、きょう決めるということではなくて、このたたき台のさらにアップデートしたもので、また議論を進めていければいいと思っています。
○西條座長 ありがとうございます。
柏樹先生、御意見あれば。
○柏樹構成員 基本ラインとして考えられています公衆衛生上対策の必要性、特に他者への感染力、他者への感染経路、ほかの人に感染させるかどうかという観点において公表するかしないかという考え方、この基本的な考え方はそのとおりだと、大変良いと思いますけれども、そう考えた場合に、ここで分類されている中でも、先ほど足立先生から御指摘のあった、MERSのときの韓国の医療機関名はまさしく医療機関の中で院内感染が起きていたという状況がありますから、その医療機関名を公表するということは他者への感染を防ぐという意味において、感染させる可能性があったということを知らせる意味において、公衆衛生上必要な情報に分類されるという形で考えられるのかなと思います。
原則非公表情報においての説明で書いてある、「国民の間で誤った情報が広まってしまうことにより混乱が生じている場合」においては、先ほど松井先生からも御指摘があったと思うのですけれども、まず、リスクコミュニケーションをしっかりおこなって、感染は考えられないのだということをきちんとお伝えすることを前面に出して考えるべきであって、例えば、風評被害みたいなものが起きるような形になって困るときに、そこをどう公表していくかというところはケース・バイ・ケースで考えていくしかないのかなと思っております。まずは、公表することにおいても、リスクコミュニケーションの感染させる場合、させない場合という情報をきちんとセットで提供していくという考え方が必要なのではないかと私自身は考えております。
○西條座長 ありがとうございます。
事務局から、議題1の中で今の議論を踏まえて何か意見等ありますか。
○野田課長補佐 まさに今、御指摘いただきましたように、今回お示しさせていただいております公表の基準はある意味2段階の構成になっていまして、初めにも説明させていただきましたが、基本方針についてはいろいろな感染症に対して、これは変わらずに適用できるであろうという方向性を示しているものです。ただ一方で、もちろん個別の状況に応じて個別具体が変わってきますので、それが裏の部分の例えば今回エボラ出血熱でお示しさせていただいた各項目などについて、こういう形で落とし込まれてくると思っております。その中でも、特に原則非公開情報については、その場その場の状況に応じて変わってくるところでございますので、なかなか一概に言いにくいというのはそのとおりだと思っております。
一方で、特に議論の部分でいいますと、公開情報や非公開情報について、これは明らかに公開すべきではないか、これは明らかに公開したほうがいいでしょうところについては、恐らく御議論というかコンセンサスが得られれば、あとはグレーゾーンの部分になると思いますので、そこは一つわかりやすい議論なのかなとは考えております。
○西條座長 ありがとうございます。
齋藤先生どうぞ。
○齋藤構成員 「最終的にそこはケース・バイ・ケースで」「状況によって」と言っているところでどういう要素がそこで影響するのか、というのがもうちょっとクリアーになるといいのかなと思っています。方針として、これは絶対に言うべきではないだろうという話と、絶対に言うべきだろうという議論、そこは結構きれいに分かれたのかなと、このたたき台の中では思っています。
○西條座長 どうぞ。
○釜萢構成員 一類感染症は大変重症ですから、一類感染症のことを最初に考えるのでいいのですけれども、これまでも我が国でいろいろな輸入の感染症でかなり広範囲に広がってしまった事例が幾つかあって、例えば麻しんなどもそうでしたけれども、その都度厚労省、当該の都道府県はいろいろ苦労してこられて、対応に苦慮した部分があると思うので、そのときのいろいろな検討や御苦労の様子がもう少しきちんと蓄積されて、我々もそのことについて学べるようだといいのですけれども、事務局そのあたりはいかがでしょうか。
○野田課長補佐 まさに今おっしゃっていただいた部分がございまして、内部的な部分でまさに公表できない情報も含めて議論しているという中での蓄積でございますので、議論の内容自体を公表することはなかなか難しいというところはございますが、ただ一方で、齋藤先生からもございましたように、仮に公開情報と非公開情報とある程度コンセンサスが得られているということであれば、原則非公開情報についてもどういうシチュエーションで公表し、または公表しないかについては、シチュエーションごとに検討されるべきものであり、またそれは今、釜萢先生からございましたように、今までの蓄積があるところでございますので、恐らく今後これをどういうシチュエーションでやっていくか、より落とし込んでいく部分においては、事務局からある程度こういう場合には公表したほうがいいのではないでしょうかという場合分けについても、お示しした方が良いかもしれないと考えております。
○西條座長 ありがとうございます。
それでは、議論もかなり深まってきたと思います。少しだけ整理しますと、齋藤先生が今おっしゃったとおり、公表すべき情報と個人情報の観点からしないという情報と、ある程度明確になってきたと思います。一方で、その状況によっては感染症対策の上では公表のあり方は変わってくるだろうと考えます。それには、幾つかのケーススタディーのような場面を想定した準備がなされていれば、情報のあり方がより適切なものにできるだろうという釜萢先生からの御指摘もあったかと思います。
簡単ではありまが、要検討情報の中でフライト名と座席の位置等、例えばその患者さんが乗っていたというだけで検討するかどうかということと、例えば、そのときに症状が出ていたとか、そういった状況によって公表のあり方も変わってくるということで、情報をどのように開示するかは、そのときに変わってくるだろうと考えます。
一方で、これは柏樹先生がおっしゃっていたと思いますが、公表のあり方は一方的なものではなく、どういった正しい情報が(国民の)皆さんに理解されているかという理解度によっても変わってくると思うので、例えば一類感染症についてはこういった感染症ですとか、正しい情報提供のあり方は普段から提供しておくということも重要かというコメントだったかと思います。そのほかに議論もあったかと思いますが、時間の関係上これまでの議論を踏まえて、事務局でさらに情報のあり方をブラッシュアップしていただき、またこの検討会で提案していただきたいと思います。
どうぞ。
○野田課長補佐 ありがとうございます。まさに今回、御意見いただきましたように、そこをまとめて次回に御提示させていただきたいと思います。また、公表の基準に関しましては一類感染症以外もかかわってくることでございますので、今後、感染症部会でも御意見をいただきまして、それ以外に関係省庁等からも御意見をもらいまして、その意見を踏まえて、また次回お示ししたいと思っております。
○西條座長 どうぞ。
○杉下構成員 1点確認させてもらいたいのですけれども、公表情報のマル3の渡航旅程で、一番下の発症後の旅程というのは、日本国内に入国するまでどこに寄って入国したという理解でいいのでしょうか。
○西條座長 事務局からよろしくお願いします。
○野田課長補佐 ここは必ずしも日本国内というだけではなくて、例えば、仮に海外において発症し入国した場合には、海外での旅程も含めてという形になろうかと思っております。
○杉下構成員 わかりました。
○西條座長 どうぞ。
○柏樹構成員 今のことにプラスしてですけれども、その場合は、搭乗した飛行機に関する情報の中でも、一部は発症後の旅程の中に含まれるということで公表されると理解していいわけですね。
○嶋田研究推進専門官 はい。発症であれば、そのようになると思います。
○西條座長 よろしいでしょうか。
それでは、意見も出尽くし、また議論も深まったところだと思います。本日いただいた意見については事務局で整理していただき、改めて議論させていただきたいと思います。
続いて、議題2に入りたいと思います。「『一類感染症への行政対応の手引き』の作成について(案)」について、事務局から説明をお願いします。
○嶋田研究推進専門官 事務局より、資料2の「『一類感染症への行政対応の手引き』の作成について(案)」について御説明させていただきます。
作成の経緯としましては、ペストはアジア、アフリカでも見られている感染症ですが、平成29年10月以降に、アフリカにあるマダガスカル共和国の都心部含む複数の地域において肺ペストの流行が報告され、流行が終息するまで死亡者200名以上を含む、2575名の患者が報告されています。
近年、約10年ぐらい前だと思いますが、中国でもペストの発生がありまして、人的・物的交流の活発化に伴い、今後日本においてもペストが発生する可能性を否定できないということです。そのため、ペストの患者さんが発生した場合に備えて、迅速かつ円滑な対応を行うことができるよう、既存のウイルス性出血熱、これは参考資料3の「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」にペストの記載を追加して、一類感染症への行政対応の手引きを作成したいというのが作成の経緯です。
ウイルス性出血熱については、参考資料にありますとおり「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」の第二版があるのですが、これはペストが存在しないため、これと従来の出血熱への行政対応の手引きに細菌感染症であるペストを足すことによって、一類感染症への行政対応の手引きをつくることを考えています。
ただ一方で、ペストは細菌感染症なので、ウイルスと細菌で変わってくるので、共通しているところと全然違うところをしっかりと分けて記載しなければならないということで、相違点を下の1、2、3に書いてありますが、1つは病原体、生物学的にも細菌とウイルスは違うものということと、感染症法的にも一種と二種で違うということと、感染予防策についても異なるということ、あと治療・予防、ウイルスについては基本的には抗菌薬は効きませんが、ペストについては今のところ治療薬や予防薬が存在するということで、こういった記載をするものにしたいと思います。
次のページをめくっていただくと案ですが、従来のウイルス性出血熱への行政対応の手引きとペストに関することを、共通できるところはそのまま使わせてもらって、ペストに特異的な部分については、そちらを記載するようにします。今のところの案としては、混ぜてしまうとややこしくなってしまうので、ウイルス出血熱とペストと章立てで分けてつくるようなものを考えております。
事務局からは以上です。
○西條座長 ありがとうございます。
今の御提案、御説明は、今現在作成されている参考資料3「ウイルス性出血熱への行政対応の手引き」が存在していると。別途天然痘対応指針もありますが、ペストについてはありません。今議論している一類感染症への行政対応の手引きの中にペストの項目を章立てで加える。共通の項目は1つにしますけれども、ペストは細菌感染症で、他の一類感染症と大分性質が違うことから、章立てでこれを加えるということだと思います。
今の御説明に質問・コメント等がありましたら、皆さんからいただきたいと思います。どうでしょうか。
松井先生、お願いします。
○松井構成員 このタイムラインはどのようになっていますか。
○野田課長補佐 今回まずは作成について御提案させていただくということでございますので、まず今回、御了承いただきましたら事務局で案をつくらせていただくということで考えております。特にいつまでにつくらなければいけないというお尻が決まっているというわけではございません。
○西條座長 齋藤先生どうぞ。
○齋藤構成員 このウイルス性出血熱の行政対応の手引きをつくるときのたたき台を作成するときにかかわっていたのですが、この手引きの重要なポイントは2つありまして、1つは、ドイツの作成しているものを参考にしているのですけれども、特にエボラが西アフリカで発生したときに、日々いろいろな情報が入って日々情報が変わっている中で、非常にフレキシブルに対応できるように、ある章がアップデートされたら、それをすぐ差しかえられるような形で項目立てをしてつくったという経緯があります。
もう一つは、ウイルス性出血熱に対応するに当たって、行政対応を行う際にいろいろな告示や事務連絡がいっぱい出て、またそれが差しかえられてということが続いている中で、それを一元的に行政対応というコンテクストで1カ所にまとめるという2つのコンセプトがあってつくったものでした。
今回、一類の中でペストについては、これまでずっと手つかずでいたところがあったと思いますので、これにのっとって作成されるのは非常に賛成です。1つお伺いしたいのは、資料2で一番右に「記載変更又は新規記載の必要性」ということで、「なし」と書いてあるのですけれども、これは既に書いてあるものを準用するという形で書くということでよろしいのでしょうか。
○嶋田研究推進専門官 ウイルスとペストのところで共通しているものについては、そのままウイルス出血熱の手引きを使わせてもらうということですけれども、今のところ案なので、必要に応じてペストに特化したものがあれば、そこで新規の記載をするかもしれません。
○西條座長 柏樹先生どうぞ。
○柏樹構成員 一度資料を送っていただいて見させていただいて、そのときには気づかなかったのですけれども、ペストということになりますと、ベクターコントロールの視点も出てくるのかなと思いまして、例えば国内において、そんなことはほとんどないのかもしれませんけれども、渡航歴のない人からペストが発生したということになった場合には、ベクターコントロールの対策等をやっていかなければならないのではないかと思いますので、その点をどう記載していくのかという視点は入れておかないといけないのかなと考えております。
○西條座長 ありがとうございます。
今の御指摘は、輸入事例から国内で広がる、あとは国内発生のことも考えた上での行政対応の手引きも考えなければいけないのではないかという意見だということですね。
○柏樹構成員 例えば、患者さんがそのまま来た場合に、その患者さんがノミに刺されて、そのノミがほかの人を刺してという感染の可能性というのは、日本のような衛生環境ではほとんどないのかもしれませんけれども、そういう視点もペストに関しては入れておいた方が良いのかなというところです。頻度的にはそう高いとは思えないのですが、まるっきりベクターコントロールのことを書かないというのはどうなのかなという観点です。
○西條座長 ありがとうございました。
どうぞ。
○杉下構成員 病原体のところですけれども、ペストにおいては一般的な検査で同定され、診断し得るというところで、その後、地衛研で検査する形になるのか、それともダイレクトに感染研でやるのかというのも、きちんと書いていただけるとありがたいと思います。
○西條座長 ありがとうございます。
事務局から何かコメントありますか。
○野田課長補佐 ペストに関しましては、もちろん技術的な部分で言いますと、地方衛生研究所で検査は可能であると思っておりますが、より厳密に言うと、科学的な意味での技術的な部分で可能であったとしても、いろいろな機材やもろもろの部分で可能かどうかということはあろうかと思っております。そうは言いつつも、一元的に全てを感染研に送るという形になりますと、都内で起こった場合は良いにしても、関東から遠い地域で起こった場合はなかなか難しい場合もあろうかと思いますので、その辺については平時から地方衛生研究所と相談しつつ、できるところについてはやってもらうことがあろうかと思いますし、一方で、最終的には感染研で検査するということがあろうと思います。日本で特に近年起こっていない感染症でございますので、そういう意味でいうと最終的な診断については感染研で行うというところはあろうかと思っております。
○西條座長 ありがとうございます。そのほかコメントありますか。
今、事務局から一類感染症への行政対応の手引きの中に、改めてペストについて章立てで加えるという提案がなされましたが、これについてこの検討会としては、皆さん基本的に賛成するということだと思います。
その上で、松井先生からは、作成する上でタイムラインはいつかということだったのですが、これについては事務局でこれから整理して、後ろは今のところ決まっていないということですが、タイムラインについては基本的には早目に決めていくべきだということだろうと思います。
それから、柏樹先生からは、ペストが輸入感染事例から国内で広がる場合と、国内発生のことも念頭に置いておかなければいけないのではないかということと、そうであればベクターコントロールのことも考えていく必要があるのではないかという意見だったと思います。
また、可能性は極めて低いけれども、輸入感染事例が原因となってペスト菌が国内で定着するようなリスクも考える必要があるのではないかという意見だったと思います。これについても事務局の方で検討することになろうかと思います。
基本的に、一類感染症の中でもウイルス性出血熱と抗菌薬の治療があるペストとでは対応は違うと思いますが、行政上の対応ということになると、社会に与える影響等も勘案すると同様のものであると思います。一類感染症への行政対応の手引きの中にペストについても記載する方向性でまず検討していただき、きょうの議論を踏まえて、この検討会にまた提案していただきたく思います。
全体を通じてコメント・質問等ありますか。事務局からは何かありますか。
○嶋田研究推進専門官 御指摘ありがとうございました。国内で発生しないとも限りませんので、感染経路やベクターのことはきちんと書こうと思います。よろしくお願いします。
○西條座長 ありがとうございます。
一類感染症への行政対応の手引きの作成についての議題2は、重要なポイントは議論が尽くされたと考えております。また、ペストの項目が手引きの中に加えられることは、この委員会としても了承したということだと思います。
それでは、事務局で改めてきょうの議論を踏まえて作成をよろしくお願いしたいと思います。
もし、これでよければ議題3に入りたいと思います。議題3は報告事項です。①「コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生について」、事務局より資料3の説明をお願いします。
○嶋田研究推進専門官 それでは、資料3を御用意ください。「コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生状況について」です。
ことしは5~7月にかけて9回目のコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発生しまして、一旦7月末で終息宣言がなされたのですが、その後また8月1日に別の地域、前回は赤道州という地域だったのですが、今回は北東部の北キブ州において、同国10回目のエボラ出血熱が発生したことが2018年8月1日に同国の保健省及び世界保健機関(WHO)から発表されました。
今のところ保健省の情報によると、9月8日までに90名の死亡例を含む患者さん131名、うち確定例100名の発生が報告されています。
同国保健省においては、8月4日からMerck社が開発したエボラワクチン、現在はFDAの薬事承認が得られていないものですが、ワクチン接種を開始したと発表し、9月9日までに感染した患者さんの周囲の人たちに接種するワクチンが7409名行われています。現在、現地調査のためにWHOなどから専門のチームが派遣されていまして、日本にかかわることですが、現地では5月の流行時に、富山化学工業から提供されたファビピラビル(アビガン錠)1万2000錠が既に首都キンシャサの国立生物医学研究所(INRB)に保持されていまして、また、2000錠が国境なき医師団(MSF)に保持されています。
現在は、9月8日までに治療薬であるmAb114、Zmapp、こちらの抗体薬と、あとはRemdesivir、これは抗ウイルス薬が投与されている現状です。
今のところは特にほかに国は広がっておらず、一国内においてコンゴの中でまだ発生している状況ですが、8月16日にWHOの事務局は今回のアウトブレークをグレード3、国内において一番最高値である危機と宣言しております。
厚生労働省としましては、一般国民に対してホームページ等を通じて注意喚起を行うとともに、8月2日に検疫所、医療機関、国土交通省に注意喚起を行っております。そちらの資料が参考資料2になります。あわせてごらんください。
裏は、エボラ出血熱の一般的な基本情報を載せております。
コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生状況について、事務局からは以上です。
○西條座長 どうもありがとうございます。
今の御説明に質問・コメント等、委員の皆さんからありますか。
それでは、私から。ファビピラビル(アビガン錠)が富山化学工業から提供されていると。既に1万2000錠、それから、2000錠が国境なき医師団に提供されているということですが、こちらは流行国のコンゴ民主共和国から依頼があったとか、WHOから依頼があって提供されているとか何か詳しい情報はありますか。
○嶋田研究推進専門官 薬剤の依頼についてはMSFから依頼があって、富山化学工業が提供しています。
○西條座長 ありがとうございます。
2014年の大規模なエボラ出血熱の流行があったときに、このファビピラビルの治療に関する大規模な研究、これはフランスの研究グループが中心に行われているものと、中国の研究グループがファビピラビルの治療を実際のエボラ出血熱の患者さんに行って、その研究成果が「Clinical Infectious Diseases」に発表されているものと、2つあります。特に後者の論文では、予防・治療効果が期待できるのではないかという内容だったと思います。日本の製薬メーカーの薬が実際に使われた経験があるということです。今現在も必要に応じて投与される体制が整っているということだと思います。
そのほか、質問等ありますか。
松井先生、今回のアウトブレークについて何かアップデートの情報とかありますか。
○松井構成員 特にありません。
○西條座長 ことし5月、6月にコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行したときに、特にコンゴ民主共和国のイネルベ(INRB)の研究所に私も訪問しています。INRBには行くことが結構多いのですが、コンゴ民主共和国の関係者はエボラ出血熱流行の経験もあることから、INRBの所長を中心としてしっかりとした対応が十分できるようになってきていることと、WHO、アメリカのCDCやヨーロッパのグループなどが、検査、感染症対策等を支援しています。前回5月、6月の流行時には、外務省の国際緊急援助隊の感染症対策部門で、感染研やNCGM(国立国際医療研究センター)から専門家が派遣されて対応に当たるということにもかかわっています。これは説明です。
もし、これについて質問等がなければ、次の議題に入りたいと思います。
続いて、報告事項「一類感染症等予防・診断・治療研修について」、事務局より資料4の説明をお願いします。
○吉井主査 結核感染症課の吉井でございます。ことし3月にマダガスカルで実施いたしました、平成29年度一類感染症等予防・診断・治療研修事業について、御報告させていただきます。
本研修事業は、我が国において発生のない一類感染症について、今後我が国で患者が発生した場合に、診療に当たることになる特定感染症指定医療機関や、第一種感染症指定医療機関の医師の先生方を対象として、これらの感染症の研修を事前に行うことにより、国内における感染症医療体制を充実させることを目的として例年実施されているものです。
今回、研修先としてマダガスカル共和国を選定いたしましたが、その理由は、まず、マダガスカルは世界でも有数のペストの発生国であるということがございます。マダガスカルでは例年、ペストの患者さんが報告されておりますけれども、特に2017年10月以降マダガスカル共和国の都市部を含む複数の地域において肺ペストの流行が報告されました。研修を行った時期には既に流行は終息しておりましたけれども、今後、我が国で発生した場合に備え、対策等を学ぶことができればということで選定いたしました。
次に、マダガスカル共和国における肺ペストの流行の概要です。
肺ペストを発症した患者さんが、タクシーブルースという乗り合いバスを利用して、首都のアンタナナリボを経由するような経路で移動していたことをきっかけに、首都のアンタナナリボを含む都市部で流行が拡大いたしました。
その後、都市部での感染拡大をWHOが公表しまして、我が国としてはウェブサイト等を通して一般国民への注意喚起を行うとともに、関係各省を通して渡航者への注意喚起や医療機関への注意喚起を実施しております。
この後、マダガスカルにおいてはWHOの介入等もあり、次第に患者数は減少し、11月27日に都市部における肺ペストの終息が宣言されております。
5ページが、マダガスカル共和国の概要です。
次に、今回の研修参加者ですけれども、特定感染症指定医療機関や第一種感染症指定医療機関の医師の先生方と、私が事務局として同行いたしました。。
日程ですが、研修日程の前後の2日間が移動日でして、中の3日で研修を行っております。
順に御説明させていただきますけれども、まず、研修初日の午前中にマダガスカルの保健省を訪問いたしました。マダガスカルの保健大臣や次席への御挨拶のほか、感染症部門の責任者との意見交換を行わせていただきました。この中では、マダガスカルで例年発生が見られるのは主に腺ペストなのですが、昨年のアンタナナリボでの肺ペストの流行は想定外の出来事で、アウトブレーク発生後に方針を検討する必要があったということを伺いました。
その日の午後にアンタナナリボ郊外にあるペストの専門病院を訪問しました。ここでは、24時間365日患者さんの受け入れを行っているということですが、昨年の肺ペスト流行の際は約850名の患者さんの検査を行って、450名がペストと診断されたそうです。治療を行って、うち死亡したのが3名にとどまったということでした。
次が病院の外観になります。
その専門病院での診療の流れになりますが、この病院にやってきた患者さんは、まず病院の敷地内に入ってすぐのところでトリアージを受けます。その後、診療や問診が行われて、検体検査を行い、ペストと診断されれば入院加療という流れになります。この際、検査には迅速検査キットが用いられているということでした。また、マダガスカルにおいては、検査を含めペストにかかる医療費は全て公費で賄われているということでした。
次が、院内の様子です。屋内の病床は限られているということで、流行していた際は写真にあるようなテントを張って、診療を行っていたというお話を伺いました。
次のスライドが、院内に張られていたポスターです。ペストの症状ですとか、感染経路などに関するポスターが張られておりました。
次に、2日目の午前中ですが、マダガスカル保健省の疫学部門を司るDVSSEという機関を訪問させていただきました。ここでは主に感染症のサーベイランスに関するお話を伺いました。マダガスカルでは2015年から感染症のサーベイランスを開始して、現在は28種類の感染症についてサーベイランスを行っているそうです。また、現在は紙のシステムで運用しているそうですけれども、今後は各地にタブレットを配付して実施していく予定という見通しについて伺いました。
その後、アンタナナリボ市内にある大学病院を訪問いたしました。この病院は総合病院で、通常はペストの診療は行われていないということですけれども、昨年の流行の際にはペスト患者を受け入れ、治療に当たったそうです。
その病院では、ペストの診療に当たった感染症課の先生からお話を伺いました。昨年の流行の当時は、ふだん流行のない肺ペストの大規模な流行によって、アンタナナリボでは社会的な不安が増大し、そのあおりを受ける形で、この病院では一時300人もの患者さんが受診のために列をなしたそうです。また、社会的な不安によって、薬局で独自に抗菌薬を買い求め内服する人が多くいたそうです。これによって薬剤の供給不足が起こったり、自己判断で中途半端な内服を行うことによる臨床症状のマスクが起こるなどの弊害があったことを伺いました。
その日の午後にパスツール研究所を訪問いたしました。ここでは、マダガスカルで使用されるペストの迅速診断キットの作成ですとか、送付されてくる患者検体の検査が実施されています。そのほか、ペストに関する研究ですとか、そのほかの感染症に関する研究が行われている機関になります。
次のスライドが研究施設の様子ですが、ペストの培地ですとか、ペストを保菌するネズミの研究施設などを見学させていただきました。
3日目は、例年風土病としてペストが発生する農村部の見学を行いました。向かったのはアンタナナリボから約90km西に位置するイタシーのミアリナリボという都市になります。この都市でDRSPという医療機関と保健所のような機能を併せ持つ機関を訪問しました。ここでは民間療法の浸透によって受診行動がおくれてしまうなど、地方におけるペストの問題などについて伺いました。
次に、ペストに罹患した患者さんのお宅を訪問しました。この患者さんは1月にペストに罹患したということなのですけれども、15歳の男の子で、ネズミと接触した後にリンパ節腫脹で腺ペストを発症しまして、先ほどのDRSPという機関で治療を行ったそうです。この患者の両親はラジオでペストの情報を得ており、発症後すぐにペストを疑い、受診することができたということでした。
次の2つのスライドがマダガスカルでの風景になります。
最後に研修のまとめですが、マダガスカルを訪問しまして、ペストの予防・診断・治療について研修を行いました。マダガスカルにおいては、ペストは風土病でペストの存在は国民にも広く周知されております。一方で、正しい知識が普及していないことによる誤った対応、自己判断で抗生物質を服用してしまうなどということも存在しておりまして、適切な予防行動・受診行動がとられるよう普及啓発を行っていくことが課題だと感じました。
また、ペスト患者の診断には迅速診断キットが有用ですが、マダガスカルでは検査後速やかに治療を開始することができる体制が整っておりました。一方、日本には迅速診断キットは存在していないので、発熱・リンパ節腫脹等の臨床症状とともに、ペスト流行地への渡航歴ですとか、ネズミとの接触歴といった問診を確実に行い、診断につなげることが重要だと思います。
また、早期に治療を開始し、肺ペストに移行することがなければ、ペストは後遺症なく治癒する感染症です。しかし、不十分な感染対策による医療従事者への感染事例もあったということで、治療に当たる際は十分な感染対策を行うことが重要だと思います。
ペストは、かつては黒死病として世界を震撼させた感染症ですけれども、現代では治癒可能な疾患でございまして、適切な知識を持って診療に当たれば、決して恐れることのない感染症であると感じました。
以上で、研修事業の報告を終わらせていただきます。
○西條座長 吉井さん、どうもありがとうございます。
平成29年度一類感染症等予防・診断・治療研修事業で、マダガスカルで日本の専門家、忽那先生を初め、吉井さんを含めて研修を行ってきた。ペストについての内容の報告と、感染症が起こっている状況、背景の説明にもなったかと思いますが、皆さんから質問・コメント等ありますか。
吉井さん、説明事項とあまり関係ないかもしれませんが、マダガスカルの政情はどうなっていますか。
○吉井主査 アンタナナリボ市内にも貧困層が過ごしているようなスラム街のようなものはあるのですけれども、治安は、ひとり歩きを注意されたりということはあるのですけれども、基本的には政情としては紛争が起こったりということはなくて、ちゃんと政府の機能としても存在しておりまして、そういった印象でした。
○座長 もう一つ、私のほうからの質問です。この3カ所でも患者さんは出ていると思います。人から人に感染した事例とか、院内感染事例は報告されていたようでしたが、その点についてもう一度説明していただけますか。
○吉井主査 今回は肺ペストの流行があったということで、人から人感染が多かったということは伺いました。2500名いた患者のうち、どの程度がヒト・ヒト感染だったかというのは詳細にはわからないのですけれども、ペストの専門病院のほうでは診療に当たった医師が、患者さんからのしぶきを直接浴びて感染してしまった事例もあったそうでして、450名のペスト患者を診療したペストの専門病院においては、医療従事者に感染した事例、院内感染事例といったものは、1名の医療従事者についてはあったということで伺いました。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほか委員の皆さんから質問・コメント等ございますか。足立先生。
○足立構成員 私も一類感染症研究班に6年におりまして、こういった国内の医師・看護師のトレーニングにかかわって定期的に研修をやってきたのですけれども、47都道府県ございまして、そこに基本的に1つ、多いところは2つ第一種指定医療機関があって、それぞれから代表の方がいらしてトレーニングをして、それぞれの施設に持ち帰っていただいて、知識・経験の定着を図るというのを目標にやってきたのですけれども、なかなか難しいところ、こちらとしても気づきがあったんです。といいますのは、一類感染症専門の医師・看護師というのはそんなにいるわけではありませんから、ほかの感染症あるいは感染症以外の専門の方がいらしてトレーニングを受けて戻っていただくのですけれども、各医療機関で感染症が必ずしも専門でない方が一類感染症対策のポジションに定着しないんですよね。こういったトレーニングをやっても、3年ぐらいしたら担当の方が人事で交代になって、その方には引き継がれていないとか、47都道府県のそれぞれでインスティテューショナル・メモリーというのでしょうか、引き継ぎされて我々のやった研修が定着するかというと、かなり限界を感じたんです。ペストに関しては国内で常在しない病気ですし、こういった研修自体は意義あることだと私も信じていますけれども、どれくらいの規模の方を対象に、第一種指定医療機関皆さんにいらしていただくことを目指すのか、それとも関心のある方、ある程度選ばれた方に今後の国内のコアとなっていただくことを目指すのか、その辺の目標の設定の仕方が難しいところがあるかなと思いました。質問というわけではく、コメントです。
以上です。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほかございますか。齋藤先生。
○齋藤構成員 1つ質問なのですが、今回患者さんは診られたのでしょうか。
○吉井主査 実際に行ったときにペストに罹患していた患者さんというのは拝見できませんでした。
○齋藤構成員 この研修では結構そういうことは多いと思うのですが、この研修への参加というのは医師に限られてしまうものなのでしょうか、それとも感染管理看護師といった方も参加の機会はあるのでしょうか。
○吉井主査 研修の対象者になっているのは、特定感染症医療機関や感染症指定医療機関のお医者様ということになっています。
○西條座長 ありがとうございます。
そのほかございますか。ありがとうございました。
続いて、報告事項3「バングラデシュへの人材派遣について」、事務局より資料5の説明をお願いします。
○嶋田研究推進専門官 それでは、事務局より資料5の説明をさせていただきます。世界保健機関(WHO)の要請を受けて、2名の感染症の専門家がバングラデシュに派遣された件です。
御存じだと思いますが、ミャンマーのラカインというところの北部に住んでいる人々が、避難民としてバングラデシュのコックスバザールというところのキャンプにいます。今現在では、そこに90万人以上避難民がいらっしゃると言われているのですが、そこで去年11月からジフテリアが流行していまして、足立先生が行かれた12月時点では1841人でしたが、6月の時点でも7000人以上の患者さんが出て、うち40人以上が亡くなっています。
このため国際協力の一環として、WHOからジフテリアの専門家の派遣要請を受けて、東京都の豊島病院感染症内科の足立拓也先生が派遣されました。期間は、平成29年12月26日から平成30年1月15日です。後で、足立先生から発表していただきたいと思っています。
ジフテリアというのは、ジフテリア菌による感染症法で言うと二類感染症なのですけれども、これは細菌感染症で時々心筋炎などの合併症が起こりまして、致死率が5~10%になることがあります。日本では三種混合ワクチンにジフテリアは入っているので近年の報告はないのですが、途上国においてはジフテリアの流行が今もあるということでした。バングラデシュでは現在でも7000人以上の患者さんがいるということで、足立先生が行かれたことが1つ。
3ページですが、こちらは感染症危機管理専門家(IDES)の養成プログラムから、7月1日から3カ月間、井手一彦先生がバングラデシュに派遣されています。このIDESというのは、感染症の危機管理に対応できる人材養成を行うことを目的につくられた厚生労働省のプログラムでして、こちらの2期生の井手一彦先生が7月1日から向かいました。井手一彦医師が行かれたときには、もう7000人以上の患者さんがいたということで、42人が亡くなっています。
厚生労働省としましては、今後も開発途上国を含む諸外国に対して知識、経験、技術を生かして公衆衛生の支援を行っていくということです。
事務局からは以上です。
○西條座長 ありがとうございます。
それでは、今の事務局の説明に続きまして、足立先生から実際に派遣されたときの内容について説明いただきたいと思います。
○足立構成員 ありがとうございます。足立です。とじてある資料5のページをめくっていただきますと、横長の資料5別添があります。「バングラデシュのジフテリア対策」からが私の御説明の内容でございます。
御案内のとおり、昨年12月からことし1月にかけて3週間行ってまいりまして、WHOのジフテリア対策のほとんど初動の時期でしたので、当時の状況ということでお話しさせていただこうと思います。
状況としましては、昨年8月以降、ミャンマー側で起きた土地を追われたロヒンギャの方々が難民として越境しまして、12月時点で80~90万人が巨大な難民キャンプをつくって暮らしていたという状況で、衛生環境は当然よくないですからコレラが発生し、麻しんが発生し、それぞれ水質対策やワクチンキャンペーンで何とかなったのですけれども、その後続いてジフテリアが発生して、これに応じて私が現地に参ったわけであります。
行った当初は、国連機関や国境なき医師団、赤十字を初めとする国際NGOあるいはバングラ国内のNGOも多数集結していまして、さながら人道危機の最先端の総力戦みたいな感じになっていました。
ページをめくっていただきまして、難民キャンプの地図を2つつけてありますけれども、左下はバングラデシュの地図です。一番南東の端がミャンマーとの国境地帯で、細長くバングラデシュ領土が伸びているのですけれども、国境地帯に川がありまして、下流は幅が広過ぎて大きな船でないと渡れないのですが、上流のほうに行きますと何とか小舟でも渡れるくらいの、そこを難民の方々が国境を越えてバングラ側に逃れてきて、そこで暮らすようになったという状況です。
赤いところは舗装された幹線道路で、幹線道路沿いに何万とか、一番大きいものは北のほうに54万7200という数字がありますけれども、これだけの人々が集まって巨大なキャンプをつくって住んでいるわけです。
右側が50万のメガキャンプの拡大図ですけれども、巨大なキャンプの中に展開しているのが、各国から集まった主にNGOの方々でして、一つ一つの赤の印がフィールドポスピタル、病院ですとかクリニック、医療施設、一つ一つです。私が行ったときには、もう現地でたくさんの支援団体が全部で200くらい大小含めてあると言われていましたが、医療活動を展開しておりました。
私がまずびっくりしたのは、8月から始まった大きな人道危機に対して、デジタル時代ですから、携帯の位置情報なども駆使して、これだけ詳細な地図ができ上がっていることなんです。人口もかなり正確に把握されていまして、メガキャンプの中もAAから始まって幾つかの地区に区分けして、どこにどれだけの人数が住んでいるという大まかな把握がされていました。こういった地図あるいは位置情報を頼りに、各国の支援団体が活動を展開していたわけです。
さらに次のページにいきますと、現地入りしたときの当時の流行曲線です。横軸が時系列で、縦軸が一日当たりの患者の発生数です。ジフテリアの発生がわかった11~12月にかけて急速に患者数が立ち上がっていきまして、一日当たり100名の患者発生。ジフテリアは重篤な疾患ですから、一日100人というのは相当な数字です。ただし、この時点で報告数が二千幾ら、このうち死者が26人ということで、致命率が1%ということになります。過去のジフテリアの報告からしますと、致死率は少なくとも5%、多いときには10%くらいと言われていますので、報告されている全てがジフテリアなのかどうなのかというのは、ちょっと疑いはあったわけです。
さらに、次のページをめくっていただきますと、二千数百名の報告数のうち何パーセントがどんな症状を持っていたかを示したグラフです。当時の症例定義は今でも変わりませんけれども、プロバブルケースとして定義されていますのは、のどの炎症の症状、のど痛に加えて偽膜があるか、あるいは肉眼的に明らかにわかるような頸部リンパ節腫脹がある、少なくともどちらかを満たさないといけないという定義でした。現地では全てが検査診断できるわけではありませんから、これが事実上の症例定義です。
症状ごとの発生頻度を見ていきますと、咽頭痛あるいは痛みのための嚥下困難がほとんどの事例でありまして、発熱も8~9割くらいありました。ただし、偽膜が大体4割、リンパ節腫脹が1割ということで、偽膜とリンパ節腫脹を足しても100%にならないんです。ということは、この症例定義に忠実に沿って全ての症例が報告されているわけではなくて、少なくとも報告されているうちの半数は、この症例定義上はきちんと満たしていないという理屈になるわけです。
我々の想定としましては、現地に各国の支援団体が入って医療施設が立ち上がって、ジフテリアに特化した医療施設も当時、1カ所だったのが7カ所に急速にふえて、何とかベッド需要が足りてきた時期でしたから、こういう流行下でのどが痛いとやってきた患者、主には子どもですけれども、それを診た医師が、ベッドが空いていれば恐らく念のためということで入院させているのではないかと。それで症例定義をきっちり満たしていなくても、ジフテリア治療施設に入院しているから、それはジフテリア疑いの患者ということで報告が上がってきているのではないかということを考えたわけです。
症例定義は症例定義ですので、これにきちんと沿った数がどれくらいか把握するのは非常に重要ですから、そこで各施設に出向いて、報告書式があるのですけれども、それをもう一度デザインし直しまして、入院患者の数を報告するときには、きちんとチェックリストを埋めてから上げてくださいというお願いをしまして、そういった報告書式を整理したのと、研修もしまして、こういう形でWHOに報告を上げてくださいと。あと、オンラインフォームをつくりまして、各施設で診断した医師が毎回書式をつくって、だれかがWHOまで出向いて書式を送るのはもしかすると大変なこともあるかもしれない。ただ、患者発生はできるだけリアルタイムで知りたいので、携帯でも登録できるような報告システムをつくりました。
そういった書式の整理と普及、報告の標準化をしまして、次のページ、私が現地を出たのが1月15日ですけれども、大体このころの最新の流行曲線がこのグラフです。この時点で全体数はさらに積み上がって4600ということになりますけれども、そうやってもう一度どの事例が偽膜があって、どの事例が頸部リンパ節腫脹があって、どの事例は発熱・のど痛だけなのかを洗い直してみますと、きっちりプロバブルケースの症例定義を満たしている事例は4600のうち大体1600、3分の1くらいなんです。色分けもこのグラフでしてありますけれども、全体の報告数の中でプロバブルケースは紫で示されたグラフです。ですので、多いときでも一日100例を超えることはなくて、そのうちいろいろな対策が功を奏して、一日当たりのプロバブルケースの発生数は大体20例前後に落ち着いてまいりました。
私たちが現地のジフテリア治療センターに入院して、抗毒素を投与されている数が一日大体平均して20くらいでしたから、恐らくこれが真のジフテリアの患者の発生数であろうと、かなり確信を持って判断できたわけです。
また、資料5別添の一番最初のスライドに戻っていただきますと、こういったことで現地に行きましてからは、まず症例定義はアウトブレーク対応の一丁目一番地でございますから、これに忠実に報告書式も整理しまして、研修も行いまして、真の流行曲線を把握する。これを疫学と診療チームと合同で一番力を入れてやったところです。
診療チームとしては、国境なき医師団、英国チームやバングラデシュのNGOのBRACというのもありますけれども、あと日赤の方も現地で頑張っていましたが、各施設での診療手順の標準化、これはWHOの仕事でございますので、診療プロトコルをつくって、抗毒素投与のプロトコルもつくりまして、感染対策のガイドもつくって病床数が足りるように確保して、抗毒素の在庫の確保も重要でございまして、当時バングラデシュだけではなくてイエメンでも大きなジフテリアの流行がありましたので、グローバルな抗毒素のストックが尽きないように確保すると。それから、医療従事者に対する研修をやってきました。
診療以外では、接触者追跡を接触者追跡チームが担当していまして、あとワクチンチームがまず子どもを対象に、1回当たり15万くらいの住民が対象になるのですけれども、難民の子ども、続いて地元住民の子ども、それから人道支援に入った方向けの予防接種を次々と行っておりました。
大体初動で行ってきた、3週間で手をつけたことはこのくらいなのですけれども、その後今まで数カ月たっていますので、井手先生が現地にいらして、また報告をお持ちいただけると思いますので、井手先生の御報告を私も楽しみにしております。
概要は大体こういったところでございます。
○西條座長 どうもありがとうございました。大変重な仕事、御苦労さまでした。
今の足立先生、事務局からの報告に質問・コメント等ありますか。
先生、患者さんの年齢分布の情報とかはありますか。
○足立構成員 患者の年齢分布は、子どもが圧倒的に多いです。ここには示しませんでしたけれども、15歳以下の年齢層が全体の75%でした。ですので、子どもの間で流行しやすい病気ということが言えると思います。難民ですので、予防接種歴を確認できた人はほとんどいなくて、予防接種を受けていない難民キャンプで子どもという条件がそろうと、かなり流行しやすい病気の一つなのだと思います。
○西條座長 イエメンも今、大変な状況だと思いますが、エボラ出血熱の流行地も同様です。社会基盤の脆弱なところに感染症が入り込んで流行を起こすという、典型的なことかなと思いました。
これについて質問等なければ、今日の検討会で予定しておりました議題、報告事項等はこれで終わりたいと思います。事務局からさらに追加する意見等ありますか。
○嶋田研究推進専門官 特にございません。
○西條座長 ありがとうございます。構成員の皆さんから本日の議題、報告、全体を通じて改めて何か意見等がありましたら、ここで受け付けたいと思いますが、いかがでしょうか。
もし、なければ、本日の議事は以上で終了させていただきたいと思います。
事務局からのさらなる意見・報告等もございませんということなので、次回の会議について嶋田補佐にお渡ししたいと思います。
○嶋田研究推進専門官 今日はありがとうございました。
次回の会議については、改めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。
事務局としては以上です。ありがとうございました。
○西條座長 それでは、皆さんの協力もありまして、議論も十分なされて、さらに予定より20分早くに終わることができました。
これで、きょうの会議を終わりにしたいと思います。御協力どうもありがとうございました。 

 

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 一類感染症に関する検討会> 第4回一類感染症に関する検討会

ページの先頭へ戻る