ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 一類感染症に関する検討会> 第3回一類感染症に関する検討会(2017年9月1日)




2017年9月1日 第3回一類感染症に関する検討会

健康局 結核感染症課

○日時

平成29年9月1日(金)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

報告事項
   (1) コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生について
   (2) ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの改定について

議題
   (1) エボラ出血熱患者発生時の対応について
   (2) その他

○議事

○繁本課長補佐 定刻となりましたので、ただいまより第3回「一類感染症に関する検討会」を開催いたします。

 初めに構成員の先生方の御出席状況を御報告いたします。本日は、大曲先生と齋藤先生より御欠席の連絡をいただいております。

 また、事務局に異動がありましたので御報告いたします。

 まず、結核感染症課の新しい課長、三宅でございます。

○三宅課長 三宅です。よろしくお願いします。

○繁本課長補佐 結核感染症課情報管理室長の磯貝でございます。

○磯貝室長 磯貝でございます。よろしくお願いいたします。

○繁本課長補佐 あと私、結核感染症課課長補佐の繁本と申します。よろしくお願いします。

 続きまして、事務局より配付資料の確認をいたします。

 まず1枚目が議事次第、次に配付資料一覧、座席表、構成員の先生方の名簿、ほか、資料1から5、資料5につきましては5-1から5-5までございます。そして参考資料1と2を御用意しております。

 不足の資料がございましたら、事務局にお申しつけください。よろしいでしょうか。

 では、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

 以降の議事運営については西條座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○西條座長 国立感染症研究所の西條と言います。この検討会の座長を担当させていただいております。きょうの検討会、しっかりと検討したいと思いますので、皆さん、御協力よろしくお願いします。

 では、本日の議事を確認させていただきます。

 報告事項が2項目あります。議題としましては「(1)エボラ出血熱患者発生時の対応について」を予定しております。構成員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をお願いしたいと思います。

 それでは早速ですが、議事に入りたいと思います。まず、報告事項からであります。「(1)コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生について」資料1から資料3を事務局から説明をお願いします。

○繁本課長補佐 御説明させていただきます。

 まず、資料1をごらんください。「コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の発生について」という資料です。ことしの5月にコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が発生いたしました。それについてまとめてございます。

 コンゴ民主共和国の北東部の限定的地域で発生し、7月2日に終息宣言がなされました。中ほどの枠でくくったところですけれども、今回、確定症例が5例と疑似症が3例の合計8例の発生でした。うち4名が亡くなっておられて、死亡率は50%ということでした。こちらについて、厚生労働省としては一番下の四角で囲ってあるように、国内に向けて事務連絡を発表しております。

 2ページ目ですが、こちらは時系列となっております。今回の流行の初発は4月22日でした。そして、確定診断がつきましてWHOに報告されたのが5月11日です。WHOの公表は現地時間の12日で、これは本邦では翌13日の未明でした。ですので、13日に国内に向けて、厚生労働省より通知を発出しております。

 その後は感染の拡大が見られずに、7月2日に終息が宣言されました。

 3ページ目ですが、これはその前の流行、2014年に始まった西アフリカでのエボラ出血熱の流行の資料になります。ただ、このときも、実はコンゴ民主共和国では別の流行が起きておりまして、このときは感染者数が84人、死者31人とされています。

 資料1につきましては以上です。

 資料2でございますが、これは5月13日に我々が発出した通知です。自治体向け、検疫所向け、あと医師会と国土交通省を通じて旅行会社等に注意喚起していただくための通知を発出しております。

 資料2については以上です。

 資料3は国内の体制整備状況です。表面は第一種感染症指定医療機関、現在52機関ございます。この52医療機関ですけれども、次のページの一番下にあるように、45都道府県で指定されています。残るは宮城県と石川県で、まだ指定がされていません。

 事務局からは以上です。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、これまでの説明について、質問、御意見等がありましたら皆さんのほうからよろしくお願いします。

 もしないようでしたら、続いて「(2)ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの改訂」について検討したいと思います。資料4について事務局から説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○繁本課長補佐 資料4をごらんください。ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの改訂についてでございます。

 ウイルス性出血熱への行政対応の手引きの第2版を6月30日に発出しております。これは6月19日の感染症部会で諮らせていただいた結果になります。それの御報告です。

 今回の改訂の主な内容は、資料4にありますとおり、1つはファビピラビルに関する新たな知見を反映させていただいたということです。もう一つは、西アフリカにおける流行が終息しまして1年が経過して、症例数等の数値が確定したものを反映させた、いわゆる時点修正になります。ウイルス性出血熱への行政対応の手引き第2版は参考資料2としてお手元に御用意してございます。

 以上になります。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、今、御説明していただいた内容について、質問、御意見等がありましたらよろしくお願いします。

 それでは、私のほうから。ファビピラビルに関する新たな知見の内容として『Clinical Infectious Diseases』に発表された、中国の研究者らの発表だったと思いますが、その具体的な内容について少し説明を加えていただけますでしょうか。

○繁本課長補佐 西アフリカでの流行に際して、治療目的でファビピラビルを投与したということです。ウイルス量が少ない方々への投与であれば治療効果があったようですけれども、結局、オーバーオールでは有意差が見出せなかったということで、治療薬としてのファビピラビルの立ち位置は今のところ確保できていないと考えております。

○西條座長 私のほうから説明を。

 多分、今の説明は『 PLoS Medicine』に発表された論文でありまして『Clinical Infectious Diseases』ジャーナルに発表された論文では、しっかりとした randomizedtrialではないものの、ファビピラビルでエボラ出血熱の患者さんを治療すると、有意に死亡率が下がった、それから検査結果の改善も有意に出ているということで『Clinical Infectious Diseases』ジャーナルに発表された内容はそういった(ファビピラビルがエボラ出血熱に有効であった)ことだと思います。ですから、新たにファビピラビルがエボラ出血熱の治療薬として有効性が示されているのではないかといった新たな知見が出てきているということです。

 『 PLoS Medicine』に発表されたものは、今、説明があったとおり、正確に治療効果が認められたということではなかったのですが、2報新たな(ファビピラビルとエボラ出血熱に関する)論文が発表されているということだったと思います。

○繁本課長補佐 失礼しました。ありがとうございます。

○西條座長 そのほか質問等、ございますでしょうか。

 足立先生、お願いします。

○足立構成員 足立でございます。

 ファビピラビルの新たな知見について、治療群と対象群で比較をされていて、治療群では確かに対象群と比べると有意に生存率が上がるという報告ではありますけれども、それでもファビピラビルを治療した方の中で、生存した方は55%で、亡くなった方は45%。ですので、個別の患者にとってみれば、ファビピラビルを投与されたから助かるかというと恐らくそういう話でもないと思うのです。

 やはり国産の薬ですので、現時点でファビピラビルが使用可能な薬剤という扱いにはなっていると思います。もし、先進国並みの致死率18%を意欲的に目指すとしたら、ファビピラビルだけでいいのか、ほかの薬のアクセスを確保したほうがいいのではないかという議論はあり得るのかなと診療の視点からは思っています。意見です。

○西條座長 ありがとうございます。

 現在のファビピラビルの使用可能な状況とか、アクセスについて事務局から説明していただけますか。

○繁本課長補佐 日本国内ではファビピラビルは新型インフルエンザに適用が通っています。ただ、新型インフルエンザというのは現在、国内では発生していない状況です。

 そういうわけなので、製造と流通には厚生労働大臣の許可が要るという状況になっているので、例えば、現在、問屋から病院に搬入するとか、ほかの病気に使うといったことにまずできないような状況になっております。

○西條座長 ありがとうございます。

 また私からも少し説明を加えます。日本国内のメーカーで製造されている薬ではありますが、実際に治療ができるかというと、今説明していただいたとおり治療には使えません。

 ただし、NCGM、医療研究センターのほうで、そういった患者さんが出たときに、臨床研究として投与可能なフレームというものをつくっていたかと思います。全くアクセスができないというわけではなく、ある一定の条件の中で、フレームが維持されているか、またはそういった準備をすることができるというような状況と考えています。

 事務局のほうから、今の私の発言に対するコメント等はありますでしょうか。

○繁本課長補佐 いわゆる臨床研究としての枠組みと日常診療としての枠組みで違うということで理解しております。ありがとうございます。

○西條座長 ありがとうございました。

 そのほか、御意見、御質問等ございますか。

 今回、行政対応の手引きの中で、ファビピラビルに関する新たな知見を反映させた。これは非常に重要な2つの研究論文が発表されて、その成果を行政対応の手引きに反映させていただきましたが、議論を通じて大分問題点や意見整理ができたかと思います。

 もしそのほかにコメント、質問等がなければ、次のテーマに入らせていただきます。

 それでは「(1)エボラ出血熱患者発生時の対応について」に関する議題です。資料5について事務局から説明をしていただきたいと思います。

○繁本課長補佐 よろしくお願いします。

 こちらからはいろいろな御意見をいただきたいと思います。

 今回、皆様に御討議いただきたい内容は、不特定多数の方々への接触に対する対応についてです。いわゆる患者本人などを含めた濃厚接触者としてはどういった対応があって、適切に行っていくかということについてはほぼ決まっていて、皆さん特に御意見はないのかなと思いますが、そうではない不特定多数の接触者について積極的疫学調査とか公表のあり方、消毒の範囲をどこまで行うべきかというところを、我々結核感染症課内で議論するに当たって、直接または間接的な接触のリスクをどの程度と考えるかについて先生方の御意見を伺いたいと存じております。よろしくお願いします。

 資料5-1をごらんください。これがまず、きょう御討議していただきたい項目になります。

 真ん中辺の「1.患者の状況」のA)~C)ですが、これは患者の病気に応じて書かれております。時間軸で言うと感染して症状が出現する前、初期症状が出たとき、その後本格的に嘔吐、下痢、出血症状などのいわゆるエボラ出血熱の症状が出たとき。この3つの病期それぞれについて、例えば患者さんがいろいろな行動をとられると思うのですけれども、飛行機に乗っておられたり、電車やタクシーなどの公共交通機関を使われたり、あと、公衆トイレで下痢症状があったりした場合といったところで、どのぐらいのリスクがあるものと考えておられるか、御意見をいただきたいと思います。

 その後の資料ですけれども、資料5-2でございますが、これはエボラ出血熱の感染経路と感染リスクをまとめたものでございます。基本情報の下に感染源・感染経路をまとめてあります。また、後の資料にも出てくるのですが、針刺しや患者さんの遺体の処理など、感染予防策があるかないかで高リスク、低リスクと分けてございます。

 裏面です。患者さんのウイルス量の科学的根拠になります。感染して初期症状が出現するまでの潜伏期間の間、ウイルス量は物すごく少なくて、症状が出現して、嘔吐、下痢症状が出るころにウイルス量がピークになる。それから、治っていく過程においてウイルス量はどんどん減っていくというふうになっております。これは科学的な事実です。

 資料5-3ですが、これはウイルス性出血熱への行政対応の手引き、本日の参考資料2ですが、そちらから抜粋したものになります。関係するところ、感染源・感染経路、疫学調査、消毒方法や情報開示について、関連すると考えられる文章を抜粋しております。

 資料5-4は自治体向けの積極的疫学調査の実施要領になります。いろいろあるのですが、例えば4ページの下のほうに、例えば患者さんが公共交通機関や人が集まる場所で嘔吐などがあった場合には、感染伝播のリスクを評価した上でというふうな下りがございますが、嘔吐以外にもいろいろな症状が考えられると思いますので、御意見をいただきたいと思います。こちらについてもリスク評価を行った上でとありますがどういう評価を行うかというところがまだ完全には固まっていないものと考えております。

 資料5-5は、結核の接触者健康診断の手引きになります。エボラ出血熱は空気感染しないものです。結核は空気感染するものということで、感染経路は違うのですけれども、参考としてお付けしております。

 例えば、ページ番号26には、航空機内での接触者への対応という項目がありまして、これによると、結核みたいな空気感染するものについては、前後2列を含む合計5列の搭乗者リストを集めて対応すると書かれてございます。

 以上を踏まえまして、最初の資料5-1に戻っていただきまして、患者さんの状況と行動に応じたリスクをどの程度と見積もるべきか、御意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、議論に入りたいと思います。まず最初に、私の方から議論をする上での整理をしたいと思います。

 一類感染症にはエボラ出血熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱、ラッサ熱、南米出血熱があるわけで、その全ての一類感染症、今、5つ挙げたウイルス性出血熱の感染リスクが全く同じというわけではないと思います。

 まず、エボラ出血熱のことを念頭に置いて議論していきたいと思います。その中で、今、事務局から議論の提案がなされたわけですが、一類感染症、例えばエボラ出血熱の患者さんが日常生活の中で初期症状が出る前にいろいろな行動を起こしていった場合(を想定して議論したいと思います)。

 初期症状が出たときの発熱、倦怠感、発汗等、こういった初期症状の時期、

 それから5、6日たってくると症状がさらに進んで、消化器症状が出てきたり、または出血症状等も出てくるとも思いますが、こういった症状が出てきた時期に、公衆衛生上、どのような対応が必要なのか(ということを議論したいと思います)。

 こういった議論をそれぞれの皆さんの経験とか知識それから行政対応のあり方等の考え方を踏まえて意見をいただきたいと思います。

 まず、一類感染症、特にエボラ出血熱を念頭に置いて議論する時に、症状が出る前の方の行動を踏まえて対応のあり方がどうあるべきかという意見をいただきたいと思います。それでは、この件について、西アフリカで実際に対策の経験のある足立先生から意見をいただければありがたいと思います。

○足立構成員 ありがとうございます。

 現地に行きまして、私は治療センターの中で診療をやっていた時期があったのですけれども、どういう曝露で感染をするのかというのを聞き取り調査を行いました。亡くなった人からは残念ながら聞き取ることはできないのですが、回復して退院された患者さん、あるいは医療従事者から聞き取り調査をしたのです。

 どういったことが自分の感染につながった曝露なのか覚えていますかということを聞きますと、結構はっきり覚えている方が多くて、11名にインタビューしたのですけれども、7名の方がはっきり覚えているというのです。

 いろいろ聞くと、明らかに具合が悪くなった入院している患者さん、あるいは具合が自宅で悪くなった自分の家族、家族の嘔吐物、下痢便を、自宅に防護服がばっちりあるわけではないですから、素手で処理して、家族が後からエボラに感染していたとわかって、それが感染機会になったと思うですとか、あと、治療センターで曝露したとはっきり覚えている人でも、現地は混乱のさなかにありましたから、ガウンと手袋はつけていたけれども、顔の保護がまだできていない状況で患者と向かい合うような形になって、吐血後で顔が血だらけの患者が興奮して、唾を自分の顔に吐きかけた。その血液まじりの唾液が飛んできて、それが感染機会になったと思うですとか、発病した患者の血液、体液、体液の中でも特に嘔吐物、下痢便との直接曝露があっての感染ということが丁寧に問診をするとかなりのケースでわかるのです。

 ですので、2次感染をまず心配すべき状況というのは、症状出現後であって、しかもそれなりに症状が進んだ患者、状況A)、B)、C)で言うとC)ですね。その方の嘔吐物、下痢便、血液まじりの何ものかに直接触れた方ということになると思います。逆に言うと、それ以外の状況では、エボラウイルスというのは人から人には感染しないものではないのかなというのがエボラ出血熱から生還した方十数人からの聞き取りを通して、私の持った印象であります。まだパブリッシュしているデータではないのですが、そういった情報を現地で聞き取ってきております。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、そのほかに意見等ございますか。今のコメントに対する質問等でもいいです。

 松井先生、エボラ出血熱、ウイルス性出血熱の疫学的な情報から感染リスクというのはどのように考えたらいいのかとか、なかなか難しいとは思いますが、何か質問とか意見があればいただけますでしょうか。

○松井構成員 現時点では、平成28年段階、積極的疫学調査の手引きに書いている以上のエビデンスは得られていない、具体的には、発症後、体液に曝露した場合が高リスクであるという理解でおりますが、よろしいでしょうか、という他の委員の方々への確認をお願いしたいと思います。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、公衆衛生上の対応とか、検疫所なんかでもいろいろなことで議論されていると思いますが、柏樹先生、何か質問、コメント等があればお願いします。

○柏樹構成員 西アフリカでエボラ出血熱の大流行が起きて、それでかなり臨床症状の変化といいますか、そういうもののレポートがかなり出てきて、こういう形で初期症状出現時と嘔吐、下痢、出血症状の出現時とで分けて資料を提示されたのはそういうタイムラインというか、臨床症状の流れがはっきりわかってきたからこうされたのだろうと思っております。

 うろ覚えなのですけれども、ちょうどエボラ出血熱が西アフリカで流行しているときに読んだ臨床症状の論文の中の一つに、実際に発症した人の接触歴を聞いたら、いずれも嘔吐、下痢とかが出現した人と接触した人がほとんどで、発熱だけの人に接触してエボラ出血熱になったという人はいなかったというレポートは読んだことがあります。先ほどの足立先生のお話を聞いていて、なるほどなと私も思った次第です。

 ただ、具体的なところが示されていますけれども、例えば電車に乗って、つり革にさわって、この人をどうするとか、そこを議論できるだけのものが今、あるのかどうなのかというところは私もわからないです。

 以上です。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは釜萢先生、御意見があればお願いします。

○釜萢構成員 もう2年以上ですか、かなりの大流行が西アフリカであって、今、足立先生からもお話がありましたけれども、大分それ以前に比べると知見が新たに出てきたという認識をしております。

 例えば、ここにも一つ、5-1に出てきています。患者さんが飛行機に乗っていて、感染したという事例はないように言われていますが、そのあたりのところが今後どうなのかというところは、きょうも御議論があったように、まだ余りはっきりエビデンスというほどのものではないと思っております。しかし、そういう知見の蓄積、経験の蓄積が必要だと感じております。現時点の意見は以上でございます。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは、東京は発生するリスクが一番高いかもしれないけれども、東京都の立場から、杉下先生お願いします。

○杉下構成員 東京都感染症対策課、杉下です。

 症状出現前、出現時、それと嘔吐等が出たときと3段階に分けられて今回示されたところです。国が今まで出してきている手引き等に沿った形で発症前もしくは無症状者については感染のリスクはほとんどないという考え方でいいのではないかと考えます。

 ですので、Bの発熱のみとか発汗というのはどうなのかというのがわからないのですけれども、基本的にはCの嘔吐、下痢、出血症状、そういったところをメーンにしてやっていくのでいいのではないかと考えます。

○西條座長 ありがとうございます。

 今、全体的な情報とかこれまでの皆さん、または自分も含めた知識とかを合わせるための議論をしましたが、続いて、改めて初期症状の場合はどういった対応をすべきなのか。

 症状が出る前の場合の対応はどうすべきか。初期症状だけのときの対応はどうあるべきか。

 例えば嘔吐、下痢、消化器症状や出血症状が出ている患者さんが、公衆の中で活動したときにどういった対応をすべきなのかということを改めて議論したいと思います。

 今の議論を通じてはっきりしたことは、初期症状が出る前においては、少なくとも公衆衛生上の対応はどうあるべきなのかということについては、情報の公表ということは必要かもしれませんが、感染予防のための対応は必要ないというような意見だったと思います。そういったくくりでよろしいでしょうか。もし、御意見があれば。

 なければ、私のほうから知識とか経験の話を少し、議論を深めるためにしたいと思います。

 感染研に勤めているのですが、今から1516年前にラッサ熱の患者さんが飛行機に乗っていたということで、西アフリカからヨーロッパのフライトの中に患者さんが乗っていたことがわかって、そこで日本の方が40名ぐらい同じフライトに乗っていた。

 その方々は日本に帰ってきた際、(ラッサウイルスに感染しているかどうかを)検査をしてほしいという依頼があったのです。そのとき、我々としては専門家の立場からすると、検査の必要性はないという判断をしていましたが、その方々が生活されている県から、社会的な要請といいます強い依頼がある、それで抗体検査を実施したという経験があります。

 それから、一昨年になろうかと思いますけれども、西アフリカで活動していた人、この方はドイツの人なのですが、帰国されて、それでラッサ熱で死亡した。その方の埋葬ですね。お葬式のときの埋葬に携わった方がラッサ熱に感染したという事例もあるということです。これは自分の経験の話なのですけれども、こういった事情を踏まえて、続いて初期症状が出現している方のリスク(について議論したいと思います)。

 どうぞ。

○三宅課長 Aの初期症状出現前について少しおまとめをいただいたと思うのですけれども、今、本当に難しいところだと思うのです。

 私どもが考えているのは、安心・安全といつも一括りにして我々役人は簡単に言ってしまっているのですけれども、よくよく考えてみると、安心と安全というのは分けて考えないといけない。

 どういうことかというと、医学的、科学的に安全であるか安全でないかというのは客観的なものだと思っています。一方で安心というのは、先ほどのラッサ熱に同乗の客のように、安全だと言われてもいやいやわからない、安心はできない、主観的には心配でしようがないのだというのを、ちゃんと大丈夫なのだよと、念には念をということでやってあげるという。そういう意味で安心と安全というのは実は違う。

 特に昔のSARSの件とか新型インフルエンザのときもそうでしたけれども、最後にみそぎのように消毒を、自治体の方々が安全・安心宣言を出すためにやるようなこともよくあったと思うのです。あれは科学的には不要であるけれども、安心のためにやるというところもあると思うのです。

 そういう意味で先ほど初期症状が出現の前のところというのは、基本的には医学的、科学的には今までのエビデンスを合わせると安全である。公衆衛生学的、科学的にはわざわざその症状発生前に行動している公衆衛生的な、外に出たときに周りにうつす可能性はほぼないのだろうということでおまとめいただいたと思うのです。

 その上で、委員長は公表はするかもしれないけれどもみたいなことをおっしゃいましたが、そこがまさに、安全ではあるが安心のためにわざわざそこまで公表するのかという話だと思うのです。私個人の考えとしては、安全である限りにおいて、わざわざ個人情報であるどこに立ち寄った、どこのトイレに行ったというところまで、初期症状出現前に報道、公表するのかというのは非常にバランスが難しいと思うのです。安心と個人情報との考え方で、そこはまた我々のほうで考えないといけないのですが、少なくとも、安全であるということで御結論いただいたということでよろしいのでしょうか。

○西條座長 何か構成員の方から今の質問に対して意見はありますか。

○足立構成員 足立です。

 初期症状発現前の感染リスクは考えなくてもいいというのが、恐らくエボラ出血熱にかかわっている専門家の一致した見解と考えてもよろしいのではないかと思います。

 ただし、例外的な事象があることはありまして、これも私の現地での聞き取り調査の一つなのですけれども、エボラ出血熱に感染して親が亡くなった小さな1歳の子供。当初は症状が全くなく取り残されたので、エボラ治療センターの看護師が症状がないですから、感染性はないという判断のもとに隔離をせずに面倒を見ていたという事例がありました。その子の遊び相手を看護師がしたりとか1歳の子供ですのでおむつの取りかえもしていたのですけれども、その子があるとき何となく具合が悪い。経過を見ていていよいよ具合が悪くなって、検査をしたらエボラ陽性ということがわかった事例があったのです。その子のおむつ交換をしていた看護師が2次感染したという事例がありました。

 ですので、そういった非常に小さい子供、いつが初発症状なのかはっきり言えない子供ですとか、そういった事例に関しては多少症状発現時期を前倒しで広く考える必要はあると考えています。

 ただ、成人で問診がきちんととれて、いつから症状が出てきたということがはっきりわかる人に関しては、初期症状発現前は感染性が基本的にないと考えていいのではないかというのが、専門家の割と一致した見解ではないかと思います。

○西條座長 ありがとうございます。

 公表のことはとても重要で、センシティブではありますが、重要なコメントだったと思います。この点について何か御意見はありますか。

 釜萢先生、お願いします。

○釜萢構成員 釜萢です。

 今、三宅課長から御指摘のように、確かに安心と安全は区別をしなければならないのですが、現在の国民の皆さんの要望を考えると、例えばある時点で症状が全くないときに、一緒にいた方々に対してその患者さんが後で診断が確定した場合に、しかし、情報についてはなるべく早くお伝えする。これを公表するかどうかはあれですけれども、少なくともきちんと積極的に疫学的なトレースをしていくという中で情報をお伝えしなければいけないのではないか。

 この時期は全く症状が出ていない、感染の可能性、周りにうつす可能性は非常に低いので、全くそのことについてふれないというわけにはいかないのではないかという印象を持っておりますが、いかがでしょうか。

○西條座長 ありがとうございます。

 松井先生、何かありますか。

○松井構成員 今、検討しているシナリオは、確認ですが海外からの帰国者に対するシナリオという理解でよろしいですか。なぜならば、仮に国内で確定患者さんが出た場合の接触者に対する対応というのは少し違っています。

 高リスクの接触者の方は外出自粛をお願いしますであるとか、あと、検査のタイミングも、発熱の段階で検査をするとか違っていきます。

 ただし、海外からのいわゆる初発例の患者さんという理解であれば、患者さんの状況をよく評価しながら、あと、実際に患者さんの周りの、接触者の状況ということもわかってきている段階でありますので、そういう意味でモニターする時間間隔というものも考慮して、ケース・バイ・ケース判断となってしまう部分もあると思います。

○西條座長 お願いします。

○三宅課長 ありがとうございます。

 少しヒントをいただいたような気がするのです。今回は、本来ならばこういう患者さんは、エボラが外国から来ても検疫所で発熱でひっかかるか、または健康観察ということで、発熱が出現すればすぐに医療機関に行くということで余り考えにくいのですが、まさに今、おっしゃっていただいたように、初発みたいに、昔の京都での台湾の医師のSARSの例みたいな、結果的に検疫をすり抜けていることがあった場合、何日かして発熱をして何日か行動して医療機関で初めてわかった。国内において無症状期、初期症状の出現期それからある程度の症状が出た。それぞれで公共の場所に出てしまった場合についてどう考えるかということを今、討議をしていただいていると思っています。

 なので、まさに最初に繁本も言いましたけれども、いわゆる濃厚接触者、患者さんに対しての家族でありますとか、一緒に働いていた者などは、先生が先ほどおっしゃったように、一般の人たちに対して全部言うかはまた難しいところがありますが、そういう方々にはその事実をお知らせするとともに、無症状期であっても健康観察等はするのだろうと思っております。患者の行動状況、そういう意味で不特定多数と接触する場合は、ア)~カ)まで今、書いております。

 そういう場合は、そこまで一般の方々に、何月何日に山手線に乗ったまで、初期症状が出るまでは特にお知らせする必要はないのではないかということで大体まとまっているのかなと感じました。

 ありがとうございます。

○西條座長 ありがとうございます。

 座長の私のほうからもまとめる意見を言うと、エボラ出血熱、一類感染症患者さんが出た場合について、その情報については公表する。接触者の中でも、症状が出る前であっても濃厚な接触であったり、接触のあり方も温度差があるので、そういった方々についてはリスクや事実のことについえはお伝えする。

 ただし、公衆の一般的な活動範囲の中で感染するリスクはないので、特段細かな行動パターンを公表するということの必要性はない、またはその必要性は極めて低いというような考え方かと思います。三宅課長の先ほどのコメントは、そういったことの考え方でよろしいでしょうか。

○三宅課長 はい。

○西條座長 ありがとうございます。

 それでは大分初期症状が出現する前の場合についての議論がなされました。実は、初期症状が出た後、それから消化器症状または出血症状等の症状が出てきた後、これについてはかなり温度差があるので、こちらの議論に入りたいと思います。

 初期症状、発熱、発汗、こういった症状が出たときについて、各構成員から対応のあり方について御意見をいただけるとありがたいと思います。

 三宅課長、お願いします。

○三宅課長 おっしゃるとおりで、当初、私どももA)、B)、C)の順番でやるのが一番いいかなと思ったのですけれども、先生方の議論がしやすければ、ホワイトとブラックと間のグレーと考えた場合には、もしかしたら嘔吐、下痢、出血症状出現時のはっきり本当に一番危ない時期をどこまで公表するかを考えた後に、初期症状が発熱のときだけだったらどこまでそれを減らせるかと考えたほうがよければC)を先にしてもよろしいですし、今のように普通にB)から議論したほうがよければそちらでも。どちらのほうがやりやすいものなのでしょうか。

○西條座長 ありがとうございます。

 今の御意見、御指摘を考えると、C)を先に検討したほうがB)についても検討しやすいかと思います。

 それでは私のほうから提案します。消化器症状、出血症状等が出てきている時期、こういった症状が出てきた場合は、ほとんどエボラ出血熱の場合も含めてウイルス性出血熱の場合は回復される方はほとんどいないという状況なのです。こういった状況のときにどのような対応をとるべきなのかということをまず先に議論したいと思います。

 それでは、これについて御意見を杉下先生からいただければありがたいと思います。

○杉下構成員 それでは、C)の嘔吐、下痢等の症状が出現した場合のという状況下でというところになります。

 課内でも少しディスカッションをしまして、こういった症状がある場合には、その期間利用した施設は全て把握すべきであろうし、あとは移動した手段、電車とかバスとか、そういうものもきちんと把握して対応する必要があるだろう。

 ただ、では実際どういう人を対象にしていけばいいのかというところで、吐物なり汚物を処理した人は濃厚接触ということになりますし、それ以外に何メートル離れているとか、そういったところまでは議論は深まらなかったのですけれども、実際に処理した人はきちんと追うべきだし、下痢などについても、公共の場のトイレですとか、あとは宿泊先ですとか医療機関、そういったところでトイレ、下痢症状があった場合にはそこの処理、清掃員などの方も含めてだと思うのですけれども、きちんと対応すべきだろうというようなディスカッションです。

○西條座長 ありがとうございます。

 釜萢先生は、この場合はどう対応すべきか、という御意見はありますでしょうか。

○釜萢構成員 今、資料5-1の2のところにア)~カ)がありますが、例えばカ)のショッピングモールを利用していたということで、ショッピングモールで買い物をできるくらいの状況だったのかもしれませんけれども、しかし、これで直接幅広い人に伝染してしまうということは余り考えられないだろうと思います。

 一方で、オ)の手洗いとかホテルなどはかなり関わってくるだろうと思います。やはり、濃厚な、かなり感染の可能性が高まる人をきちんと選んでいく作業がまずは非常に大事になると思います。ア)からカ)の状況をCの症状が出る人がそこに行ったら同様に同列にみんな同じように扱うというものではないような気がしております。

○西條座長 ありがとうございます。

 今の釜萢先生の御意見は、ただ単に行動パターンを公表するということではなく、行動の中でもリスクのあるなしをしっかりと評価した上で、そのリスクに合わせて対応すべきだということでよろしいですか。

 そのほか御意見等ありますか。

 リスクがあって、安全支援のために何でもするのだという、そういった考え方もあると思います。議論を進めるために私から(意見を提供します)。

 流行地は先進国のような状況ではないので、同一に扱うことはできないと思うのですが、例えば、エボラ出血熱の西アフリカでの大流行のときに、病院以外とかの環境、家族と接触した人以外の人がエボラ出血熱になったという事例はほとんどありませんでした。ほとんどないというのは、そういった事例が、例えばコナクリとか流行地の都市の中で日常の生活を普通に行っている人が感染した事例というのはちょっと考えづらいというか、なかったのではないか。むしろ、感染リスクというのは現実的(流行地で患者と接触する場合を除いて)なかったのではないか。クリミア・コンゴ出血熱であったり、ラッサ熱であったり、それが人から人に感染する事例は病院以外または家族以外のところで起こることはまずありません。

 そういったことを踏まえると、仮に嘔吐、下痢等の消化器症状、出血症状等が出たときに、ただ単にそういった時期の人が歩いた、または、行動した場合に、その経路(環境)が感染源にならないのではないかと考えます。

 ただ、例えばホテルに投宿し、または、電車に乗っているときに嘔吐をした場合には、その環境のリスクはもちろん高くなります。ただ単に上記の症状がある時期の人が公衆の中で移動したからといって、それ(その経路、環境)が感染源になるリスクは、そういった状況であっても、(低いと考えられる)感染することは(まず)ないとうメッセージを出すほうが本当はいいのではないか。

 逆に、本当にリスクは極めて低いけれども、念には念を入れて、しっかりと公表して対策をすべきではないかといった考え方があると思います。これはあくまでも公衆衛生上の対応のためには、現実的にはそういった必要性はないのではないかという議論も必要であり、議論を深めるためにあえて意見を述べました。

 足立先生はこの点、仮にCの消化器症状、出血症状が出ているような時期の方が移動した場合にはどう対応すべきか、意見をいただければありがたいです。

○足立構成員 ありがとうございます。

 この議論は、疑似症患者ではなく、確定患者に関する対応ということでいいのですね。

○三宅課長 確定した後にそれ以前の行動をどう判断すべきかということです。

○足立構成員 エボラ出血熱確定患者が嘔吐、下痢、出血症状を発現した後というのは、体調としては物すごく悪い状況ですので、そういう状況で一般の方々と同じような行動がとれるとはとても思えないのです。非常に重症感があります。ですので、確定患者の嘔吐、下痢、出血症状が出現した時期以降の接触者というのは、同居家族か医療施設で直接対応した方にほとんど限られるのではないかと私自身は思います。ですので、この症状出現時以降の接触者のリストアップというのは、恐らくそんなに膨大な作業にはならないと思います。逆に言うと、この時期以降の接触者はこれはどうあれ追跡はしないといけない人たちですので、接触した方はリストアップして、同居家族あとは医療施設での直接ケアに当たった方ということにはなると思います。どのみち、リストアップとフォローアップはせざるを得ないと思います。

○西條座長 お願いします。

○三宅課長 ありがとうございます。

 嘔吐、下痢をしてからいろいろ出回っているというのは余り現実的ではないというのはいただいてよくわかりました。

 ただ、一方で我々が勝手に想像していたのは、例えば観光だか通勤だかわかりませんけれども、電車に乗っていて、気持ち悪くなってしまって、駅のホームで吐いてしまった。そういった場合には、直接的に清掃した者は完全なる濃厚接触者ですので、厳重な監視下になると思いますし、それを処理した一連の方々はみんなそうなると思うのですけれども、そこに多分不特定多数の人たちが通りがかる。

 その場合、先ほどから何度も言っているように接触感染ですので、汚物に直接さわらないものというのは飛び散るわけではないので大丈夫なはずなのですけれども、それに関しては例えば品川駅で3時ごろに嘔吐をした。そこに通りがかった人たちは何らかの症状を認めたらとか、不安になったら医療機関に行きなさいとか、リスクがある程度あると判断。そこはどうこうしなくてもいいということなのでしょうか。リスク上は大丈夫だということでいいということでしょうかね。

○西條座長 松井先生、お願いします。

○松井構成員 その点は手引きをつくるときに大変な議論になりました。そこにどのように表現をしているかと申しますと「積極的疫学調査実施要領」、資料5-4の4ページ一番下のポツになります。「症例」というのは確定例のことを指します。発症した後にいろいろな対応をとるというところが前段に入っております。飛行機についてはやはり一定時間は乗りますので、1メートル以内の距離で同乗した者、客室乗務員、清掃員等については、上記のリスクレベルの表にしたがって、具体的にはどのようなものに触ったか、感染対策をとっていたかどうかということで分類をするというところで、今の議論のとおりでございます。

 あと、公共交通機関、人が集まる場所で嘔吐等があった場合は、と言及しておりますが、これにつきましてはまさしく足立先生がおっしゃったとおり、本当にエボラによる嘔吐であったかどうかということをまず患者さんの状況をきちんと評価することにより感染、伝播のリスクを評価する。あと、今、課長がおっしゃったように、その周辺の環境はどうかというところが重要です。ホスト要因と汚染された場所の状況等を評価した上で公表して情報を収集するかどうかを考えるという表現になっております。

 「感染伝播のリスクを評価した上で」というところが少しぼんやりしておりますので、そこをもう少し具体的に書く必要があるというのであれば、それは検討してもよいのかもしれません。

○西條座長 ありがとうございます。

 今の御説明に対して何かコメントはありますか。

○三宅課長 すごくよくわかりました。

 ただ、おもしろいなと思ったのは「メディア等を活用し接触した者の情報」ということで、当然のことながら、汚物があれば汚物をさわった者にリスクがあるのであって、汚物の1メートル、2メートル横を通り過ぎた人はリスクがないとも読める。

 つまり、逆に言えば、もしメディアに公表するとしても、品川の3時ごろのホームで汚物に万が一にも接触した可能性がある人は申し出てください。通りがかっただけでは大丈夫ですという言い方をしたほうがいいのではないかということでよろしいのですか。

○松井構成員 ここは日本語が余り適切ではありませんね。接触した者というのは必ずべたっとさわったという意図で書いたものではなくて「曝露様式」とここに書いてありますようにこれに準ずる接点がなかったかどうかということです。

 もう一つ、このリスク分類のところはかなりこの当時議論をしました。一般の方々の接触と職業性の接触というものはレベルを分けておりまして、搬送の方々というのは一般の方々より少しレベルが高くなっているので、搬送作業に従事したということでということですから、コンテクストも含めて接触というのはぺたっというものからもう少し幅広い概念も含むということです。ただし、ここは確かに明確ではないかもしれません。必要があれば修正いたします。

○西條座長 ありがとうございます。

 この議論を踏まえて、例えば消化器症状、出血症状が出た時期の患者さんの行動パターン、またはそこからの感染リスクというのは状況によって大分変わってくる(ことが確認されました)。それから一概にこの時期はリスクがあるから危険だとか、この時期は感染性の体液を出すけれども、感染リスクとしては現実的には低いのではないかとか、こういった議論を踏まえてもなかなか難しい課題ということが今の議論を踏まえてわかったわけです。

 今、西アフリカでは大きな流行がある状況ではないので、こういった時期だからこそ、より丁寧に状況を考えて、そして対応を今後検討していくことの重要性がこの議論の中で確認されたと思います。今のまとめ方でよろしいでしょうか。

 そうすると、この議論を踏まえて、症状が出る前、それから後期の消化器症状や出血症状が出ている時期の患者さんの行動を踏まえた対応を議論しましたが、これまでの議論を踏まえて発熱、発汗それから倦怠感等の初期症状が出たときの患者さんの状況毎に議論をしたいと思います。各状況ではどのような対応が求められるのかというのを議論したいと思います。

 A)のパターンとC)のパターンに加えるとさらに難しい状況ですけれども、きょうのところはフリートークのような気持ちでもいいので、ぜひ御意見をいただければと思います。こういった時期でも厳重な対策、もちろん厳重な対策は必要なのですが、公表のあり方はC)に準ずるべきだとかA)に準ずるべきだといったことの意見をいただければありがたいです。

 それでは、柏樹先生、御意見ありますでしょうか。

○柏樹構成員 資料5-2の裏のページを見させていただきました。これは血液中のウイルスの量ということで、初期症状が出現した後から1日目、2日目とどんどん上がっていくということで、初期症状だけのときも、3日目、4日目ぐらいになるとかなりの量のウイルスが出ているということなのです。ただ、嘔吐や下痢とか、そういう症状がないので、より簡単に感染させるようなことは起こりにくいということは確かではあると思うのです。

 ただ、こういう状態にある患者さんの吐物とか便、血液をさわったというケースについては、やはりC)と同様に扱うべき話なのかとは思うのです。ただ、このような状態のときにはより表面というか、多分下痢とかそういうこともしていないですから、患者の体とか手にはウイルスがそうはたくさんついていないような状況が考えられると思うのです。そこもケース・バイ・ケースで考えていくべきなのかなと思っているところです。難しいですね。

○西條座長 基本的にはC)の場合に準ずる対応、または情報の公表のあり方というのは必要ではないかという御意見ですね。

 難しいとは思いますけれども、やはり感染症対策の上で特に一類感染症ということになると、医療従事者の感染の予防というのは非常に重要になってきます。そういった意味では、一般の方々に対してしっかりした情報を提供するということも大事かと思います。

 足立先生、C)とB)の垣根、またはA)とB)の垣根、どっちをまたは全部をひっくるめるのかとか、改めて先生の御意見をいただければありがたいです。

○足立構成員 私は現地の経験に基づいたお話を差し上げていますので、日本国内でいろいろごらんになっている方々とはちょっと温度差のある意見を申し上げます。

 流行地では、発病後の方であってもDry symptomWet symptomで2次感染の起こる度合いは違うだろうという前提で、発熱だけの方と胃腸症状が明らかに出ている方とは入るスペースを同じ隔離病棟の中でも区別をしていたのです。ですので、私の感覚ではB)とC)とでは感染源になり得る度合いというのはかなり質的な違いがあって、ここは接触者の方の対応も濃淡をつけてもいいのではないかと考えます。

○西條座長 ありがとうございます。

 杉下先生はいかがですか。

○杉下構成員 この部分については先ほど冒頭でも申し上げましたが、なかなか難しいグレーのところだなと。今、足立先生がおっしゃられたように、C)とB)は感染性の度合いというのは区別して考えていいのではないかと思います。ただ、一応B)は感染源になり得るという理解で、足立先生、よろしいのでしょうか。

○足立構成員 念のためといいますか、2次感染者が出たときのインパクトはとても大きいですから、接触者追跡の対象にはすべきだと思います。

○杉下構成員 ありがとうございました。

○西條座長 釜萢先生、お願いします。

○釜萢構成員 今、足立先生からもお話がありましたけれども、私はB)の状態にあっても、しっかり接触者の追跡はC)と同じようにやるべきだと思います。一般に対する公表とか、周知に関してはC)ほどにやる必要は多分ないだろうと思っておりまして、そこはA)に準ずるということでよいのではないかと思います。

○西條座長 ありがとうございます。

 松井先生。

○松井構成員 対策という点では、足立先生がおっしゃったとおり、一般の方々も血液をさわったりしない限り、このステージでは感染しないというフェーズだと思いますので、一般の方に対する周知は恐らく必要ない段階だろうと思います。

 あと、患者さんの状態が、ドライか、ウエットかと足立先生が言われて先ほどの手引きの4ページ目のリスク表を見ているのですけれども、患者さんがドライかどうかで診察のドライな作業をした方に対する対応という職業性の曝露の方のリスクは再検討できるのかなという、全然違う観点ですが考えたりしました。

○西條座長 事務局、三宅課長から意見。

○三宅課長 ここで我々が議論したときに、汗なのですね。汗という中途半端なものはB)にしろC)にしろ、どこまで。

 例えば通勤途上につり革に触っていただろう、つり革で汗をかいていたのだからその汗でね、汗というのはウイルスが入っているのかと言われたら入っています。では、ウイルスが入っているかもしれなくて、暑かったのだろう。満員電車だったのだろう。通勤電車のそこでみんな汗をかいてべたべた周りにさわるわけではないか、大丈夫なのかと言われたときに、大丈夫です。うつる可能性はないのでそこのことについては公表するつもりはございませんと、いざ矢面に立つとそう言い切れないのではないかというのを考えると、リスクがありません、なので安全ですまで言ってしまうのか。

 それとも先ほどの足立先生のおっしゃるとおり、ドライとウエットでは全然違うので、感染率は非常に低いのですが、8月8日山手線の3両目に乗っていましたと。なので、心当たりがあって発熱等、何かあれば医療機関に御相談くださいぐらいは言うのかなと思ったりして、ただまあいう必要はないだろうなと思ったり、その辺がすごく悩ましいなと思っております。

○西條座長 皆さんのほうから意見等ありますか。

○釜萢構成員 もう一度確認です。

 今のような情報は、A)の段階では出さない。

○三宅課長 今日の御議論をしていただくと、A)の初期症状出現前はわざわざ公共交通機関に乗って不特定多数の人と接触したからといって、それに対して注意喚起はわざわざしないのだろうと。

 C)についてはある程度、特に吐物の周りを歩いたりとか、少しでもはね返りがあったとかそういう可能性がある人は少し注意してくださいという言い方。

 B)はまだ悩ましいかなと思いました。

○西條座長 私の意見からすると、B)のステージとC)のステージとくっきりと分けられるかというとやはり難しい(と考えます)。ですから、対策としてはB)とC)のパターンというのは同一に扱うことのほうが公衆衛生の対策上、いいの(適切)ではないか(と考えます)。区別するという考え方はむしろ難しいのではないかと思います。

 例えば、熱が出ている時期、2日目、3日目、4日目ぐらいから消化器症状とか出血症状が出てくる。ただ、目に見える出血と、目に見えないけれども出血が起こっているということが実はあります。ですから、BとCというのはプラクティカル(現実的)に言うと、区別することではなく、むしろ対策なんかは同じでもいいのかなと(考えます)。その上で、情報の公表とか、それは国民の方々ととってみると非常に重要なことではないかと思うのです。

 ただ、その上で、それでも感染リスクは極めて低い。ただその方が嘔吐をした場面とかがはっきりしている場合には、それについてはよりしっかりした情報を提供して、その(嘔吐物に接触した可能性のある)方々については、もし症状があったらできるだけ早目に、例えば東京で言えばNCGM、国立国際医療研究センターを受診するように(呼びかける)など、そういったメッセージ(発すること)は非常に重要と考えます。

 きょうの議論の中で、大分議論も深まっていろいろな意見があったり、これからまだまだ検討しなければならない案件があったりするということが確認されました。一方で今日のこの議論を踏まえて、ある一定の方向性が明確になったかと思っています。

 その1つが、A)の場合については、感染リスクはもともと極めて低く、公表のあり方等もB)とC)の場合に比べると異なるだろうということ(です)。詳細な行動パターンを公表する必要はないだろう(ということです)。

 逆にC)の場合は、やはり公衆衛生上の対策が非常に重要で(あり)、それを踏まえた公表(することを前提に)、公表のあり方をしっかりと(検討)する。より積極的に行動のパターンだとか行った場所とか、そういったことを公表していく。ただ、その中でも電車を利用した場合とか、ホテルに投宿したとか、ショッピングモールに行ったとか、そういったいろいろな行動状況、ア)からカ)がありますが、それらの間でも温度差(違い)があります。その中で(各状況にあわせて)公表のあり方をしっかりと検討する必要がC)のパターンであってもある(と思います)。

 最後にB)の場合を検討しました。A)とB)、それからB)とC)、B)の場合は感染リスクが、足立先生の御意見を踏まえると、ドライの場合は感染リスクが低いので、公表のあり方もC)に比べるとより低いレベルでいいのかもしれないという御意見もあれば、最後、私の意見も述べさせてもらったのですが、B)とC)を区別することは逆に難しいので、こちらの場合は一体に取り扱う必要があるのではないか。こういった意見もあるということです。

 今日(の議論の目的は)、ある一定の方向性の結論を出すということではなく、色々な意見を皆さんのほうから出していただいて、そして今後の厚生労働省の行政の対応のあり方にまた反映させていくということです。

 事務局のほうからこの議論を踏まえて何か意見とかさらに聞きたい質問等があればお願いします。

○三宅課長 もう一つ、先ほど以下の検討を行うというところで、感染リスクのある対象と感染リスクのある時間という書き方をさせていただいています。新型インフルエンザ、インフルエンザであれば、例えばウイルスは24時間、48時間で死滅する。

 ただ、あれはたんとかそういうウエットな中でのウイルスですので、こういうものはもっとウイルスの死滅する時間というのは短いのだろうとは思いつつも、例えば先ほどの電車の情報を出した途端に、その電車は1時間ごとに往復しているのではないか。上野と茅ヶ崎だか何だかわかりませんけれどもね。そうしたら3時に乗った電車は6時と9時に何駅を出た電車ですので、その方々まで注意してくださいまで言わなくてはならないのかというのが、どんどん心配だと無限に可能性が広がっていくのです。その辺の時間的なものは何かあるものなのでしょうか。

○座長 多分その件は、私が一番詳しいと思うので説明させていただくと、例えば温度、それから日光が当たっている天気のいい日かどうか、それから湿度とかで相当変わってきて、いずれにしても環境を汚染した汚物やそれの乾燥が早ければ感染性は非常に早くなくなるということもわかっていて、特に紫外線、日光が当たっている状況では、感染性はすぐなくなります。

 これについては、環境を汚染させたことを模して行った研究はありませんが、環境に置いたときに感染性はどのくらいの早さでなくなるのかという研究は幾つか報告されています。基本的には環境汚染をしたとしても比較的早期、早い時期に、場合によっては日光の当たり具合によっては数分とか数秒で感染性がなくなるなど、そういった論文発表があります。それを踏まえて公表のあり方も検討できるかと思います。

 一方、病原性のあるウイルスの液を暗室状態で、4℃で保管しておくとすると感染性は1カ月間維持されるなど、条件によっては長く感染性が維持されるといった研究成果もあります。それ(らの研究成果)を踏まえて検討していくことが、今、必要になってくるのかなと思います。

 よろしいでしょうか。そのほかに今の三宅課長の質問に対して意見等があれば、いただきたいと思います。

 なければ、そろそろ議論が尽くされてきたと思いました。特段しっかりとした対立するような意見というのはなく、議論を踏まえて今後の対策のあり方に役立つ議論がなされたと思いました。

 そろそろまとめに入りたいと思います。

 まとめますと、患者状況A)については特段リスクがないということを前提とした対策でよろしいと思いました。

 また、患者の状況B)、C)についてのリスク評価についてはきょうの議論を踏まえて事務局のほうで意見を整理していただいて、改めてまとめていただいて検討委員会の中で議論をしていきたいと思います。

 最後は非常に短いまとめに入りましたが、皆さんにこれで(このまとめで)よろしいか確認したいと思います。皆さん、何か御意見ありますでしょうか。

○足立構成員 いろいろな御意見をありがとうございます。私自身も勉強になりました。

 リスク評価というのは、単純に考えるとリスクがあるなしで分けるのがすぱっと決まってわかりやすいという見方もあります。ただ、今回のエボラ出血熱の2次感染リスクというのは、ノーリスクかローリスクかそれなりに有意なハイリスク、3つの段階に分けて考えるのが一番対策としては健全になるという気がします。

 リスクがありの中でも本当に真剣に2次感染を考えなければいけない出来事と、それから念のため追跡しておくという、恐らく2次感染はしていないであろうけれども、万一に備えて追跡をしておくという、私自身は3段階で考えるのが対策としては一番健全になると思います。きょうの議論は非常にリーズナブルに、先生方の御意見も私自身伺ってよかったと思います。

 ありがとうございます。

○西條座長 今の足立先生の御意見を踏まえて、座長からも意見をちょっとだけ追加すると、無駄な対策をすると本当に大事な対策も手薄になってしまうので、そこも踏まえて、ただ単に効率とかそれから安心・安全のためには何でもやるのだということではなく、先ほど科学的な研究成果とか対策あり方を検討して、十分理解が得られて感染対策に資するような検討が、今、大流行がないこの時期だからこそまとめられるのかなと思いました。

 改めて事務局のほうで、本日の意見を整理していただいて、意見をまとめていただき、そしてまた、この委員会で検討したいと思います。

 それでは、本日の議事は以上で終了といたします。そのほか、事務局から御連絡等ございますでしょうか。

○繁本課長補佐 先生方、きょうは貴重な御意見をありがとうございました。

 次回の会議については改めて御連絡させていただきます。

 事務局としては以上です。ありがとうございました。

○西條座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○釜萢構成員 直接関係がなくて、その他でと思っておりましたのですが、この場での検討が適当かどうかはわかりませんけれども、いろいろ御存じの方が多いので伺いたいと思って発言をいたしました。

 感染症の指定医療機関が、例えば特定が4カ所あって、一種がほぼ都道府県ごとにあるという状況ですが、それぞれの感染症指定医療機関がどのような精度管理になっているかということについては、何かチェックする仕組みがあるのでしょうか。

○西條座長 ありがとうございます。

 そのほかの質問ということで、事務局のほうからお答えください。

○三宅課長 ありがとうございます。

 非常に重要なお話だと思います。ただ、今、ぱっと完全な答えを持ち合わせておりません。ただ、私の記憶ではNCGMにおきまして、一類感染症の対応に関する講習会みたいなことで医療機関の質の維持ということについてはいろいろやっているはずです。その中で、精度管理というのはどこまでそれ以上のいろいろな手順とか、陰圧のそういうものまで含めて、ハード面まで含めてだとそこまでやられていないかもしれません。そこはまた確認をして御報告をさせていただければと思います。ありがとうございます。

○釜萢構成員 余りぎりぎりやり過ぎると手を挙げられるところがなくなってしまうというようなこともあるかもしれないのですが、やはり今、現状で指定を受けている医療機関では、どのくらいの機能があるのかということについてはぜひ把握しておきたいと思うものですから、発言をさせていただきました。ありがとうございます。

○西條座長 足立先生。

○足立構成員 この件に関しては、私、昨年度まで一類感染症研究班というものに入っていました。国立国際医療研究センターの加藤先生が代表者なのですけれども、この研究班内で東京大学の公衆衛生学教室の冨尾先生が第一種指定医療機関向けのチェックリストというものをつくっています。それで人材確保ですとか施設面ですとか、あるいは定期的な訓練の状況ですとか、かなり包括的なチェックリストをつくってどこまで満たしているかを確認できるという枠組みはできています。

 本来の研究班の目標としては、それをもって各施設の外部評価みたいな形で専門家が行ってチェックをするのが理想的ということにはなっているのですけれども、昨年度に成果物として出したのはチェックリストの完成まででして、その先の現場でどれだけうまくやっているかというのは今年度以降の課題になっているはずです。

○西條座長 いろいろ御説明ありがとうございました。

 この件につきましては、次の検討会のところでまた改めて説明と議論をできればと思います。

 それでは、本日はこれで検討会を終了とさせていただきたいと思います。

 皆さん本当にお忙しい中、ありがとうございました。また、活発な議論をありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 一類感染症に関する検討会> 第3回一類感染症に関する検討会(2017年9月1日)

ページの先頭へ戻る