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2017年8月21日 第3回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会

健康局 結核感染症課

○日時

平成29年8月21日(月)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1)薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(たたき台)について
(2)報告事項:抗微生物薬適正使用の手引きの公表について
(3)その他

○議事

○結核感染症課課長補佐(野田) 定刻となりましたので、ただいまより第3回薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会を開催させていただきます。開会にあたり三宅結核感染症課長より御挨拶を申し上げます。

○結核感染症課長 こんにちは、三宅です。711日に浅沼の後任として、結核感染症課長を拝命いたしました。私は約10年前に一度ここの課でいろいろやらせていただきました。その時に薬剤耐性という話は余り大きなトピックにはなっておりませんでした。今回ここに就任いたしまして、先生方のいろいろな御努力によってアクションプランができ、その中でもワンヘルスということで、人間の医療、そして動物の医療のそれぞれを統合しながら、しっかり薬剤耐性に立ち向かっていこうと。そのための一番基礎となるサーベイランスについて、ここでしっかりとまとめ、現在の位置を見定め、そして次をどうすべきかの方向を出していくという大切な会議であると承っております。

 本日は、事務局で作成いたしましたたたき台を出しましたので、先生方に忌憚のない御意見を頂き、しっかりとした調査報告書を出し、そして将来に向けて方向付けができたらと考えております。本日はいろいろ御議論いただき、御指導いただけることを楽しみにしております。よろしくお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐(野田) 続いて本日の構成員の出席状況を御報告いたします。本日は浅井構成員と御手洗構成員より欠席の御連絡を頂いております。早川構成員は少し遅れております。また、参考人として国立感染症研究所の大西真先生、東京都健康安全研究センターの小西典子先生においでいただいております。なお、田中構成員については、所用により途中で退席されると伺っております。

 続いて配布資料の確認をさせていただきます。議事次第のほかに資料1から資料2と、参考資料を御用意しております。不足している資料がありましたら、事務局までお申し付けください。冒頭の撮影はここまでとさせていただきます。以降の議事運営については渡邉座長にお願いいたします。

○渡邉座長 本日は2つの議題を用意しております。(1)「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(たたき台)について」、(2)「報告事項:抗微生物薬適正使用の手引きの公表について」、(3)「その他」になります。本日のメインは、皆様のお手元にある、また皆さんのほうにはこの前のたたき台のたたき台のバージョンが何回か回っていると思いますので、既に御覧になっていると思います。このたたき台について、皆さんからの御意見をお伺いするというのが今回の大きな趣旨です。これは60ページにも及ぶものですので、この時間内で全部やるのはなかなか難しいところもありますけれども、主に概要のところ等についての御意見を伺いながら進んでいこうと思っております。事務局から説明をお願いします。

○結核感染症課課長補佐(高倉) 資料1「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書(たたき台)」について概要を御説明いたします。1枚めくると「目次」があります。目次には「前文」「略称」「抗菌薬の種類と略号」「要旨」に始まり、6番目が「日本における耐性菌の現状」、7番が「日本における抗菌薬使用量の現状」、8番が「日本における薬剤耐性に関する国民意識」、9番は「今後の展望」と続いております。各調査に関しての詳細は、巻末の50ページ以降に「参考資料」という形でまとめてあります。なお「要旨」については、アクションプランの成果指標の表を載せてあります。ここも含め、今回の会議で御意見を賜り、適宜文章を追記したいと考えております。年次報告書のたたき台の全体の構成に関しては以上です。

○渡邉座長 今、説明のありました構成について御意見がありましたらお願いいたします。全部で1から9までになっています。6「日本における耐性菌の現状」で、各菌種等について細かく現状をまとめてあります。7「日本における抗菌薬使用量の現状」、8「日本における薬剤耐性に関する国民意識」、9「今後の展望」という形になっていますけれども、構成についてはよろしいでしょうか。

 特に御意見がないようでしたら、先に進ませていただきます。まず、資料1の「前文」と「略称」「抗菌薬の種類と略号」「要旨」の部分について、何かこのように付け加えたほうがいいとか、又はこれは要らないのではないかとか、その辺の御意見がありましたらお願いいたします。これをいちいち読み上げると大変な時間がかかりますので、こちらでは読み上げません。皆さんは何回か見ているという了解の下に進めさせていただきます。「前文」と「略称」ですが、略号は一般の人には分かりにくいと思いますので、ここは英語と日本語の表記が付いています。4「抗菌薬の種類と略号」です。

 「前文」について何かありますか。簡単にこのサーベイランス事業についてまとめられていますけれども、よろしいでしょうか。「抗菌薬の種類と略号」は、ほぼ共通なものを使っておりますので特にないかと思います。よろしいでしょうか。

 「要旨」の所は、先ほど事務局から説明がありましたように、ナショナルアクションプランに基づいての要旨ということでここに書かれていますけれども、こういう形でよろしいでしょうか。2020年度の目標値を1つのメルクマールとして、2015年度はこういう状況である、ということがこれを見ると分かる形になっています。肺炎球菌のペニシリン非感受性の現状は40.5%で、それを15%以下に持っていくのは非常に大変な目標かと思うのです。下のほうのカルバペネムについて、日本は世界と比べた場合にはかなり良い状況に現状ではなっているということだと思います。「使用量・販売量」に関しても、現状でそれを2020年度にどのぐらい減らすかということがまとめられております。動物についても同じような状況だと思います。基本がナショナルアクションプランの2020年度の目標値に対して、現状がどうか。これが2016年度、2017年度、2018年度、2019年度にかけてどのように変化、又はそれがアップされているかということになるわけですけれども、こういう形でよろしいですか。先に進ませていただきます。もし御意見があればまた言っていただければと思います。

6「日本における耐性菌の現状」です。これも幾つかに分けて、ヒトにおいてグラム陰性菌の状況をJANISのデータを基にしてまとめたのがここの所です。JANISは、今まで四半期ごとにまとめているのと、あとは年次ごとだと思いますが、その辺の説明を柴山先生からお願いいたします。

○柴山構成員 JANISについて説明させていただきます。JANISは四半期ごとにデータを集計しております。四半期ごとの集計というのは速報値という形です。速報値とは別に、年報という形で1年間のデータをまとめたものを公開しております。年報のほうは、エラーデータ等をしっかり除いた上での正確なデータとなっております。資料に載せてありますのは、この年報を基にしたデータです。これは、全て公開されているデータです。

 補足します。ここに耐性率の推移ということで数値が書いてあるのですが、途中でこの判定基準、この判定基準はCLSIの基準に基づいています。CLSIは非常に頻繁に基準が変わります。それに伴って、JANISに参加していただいております医療機関のほうでも判定基準が変わっています。それに合わせてJANISのほうも判定基準を変えております。資料の10ページにある、大腸菌の耐性率で言うと、2013年までの集計と、2014年以降の集計では、若干ブレイクポイントが変わっているところがあります。他の菌種でも幾つかそういうものがありますので、推移を見ていくに当たっては、ここも注意する必要があるということを申し添えさせていただきます。

○渡邉座長 これと、セファロスポリン系が2013年と2014年の間で耐性率が2014年のほうが増加していると見るのですか。それともCLSIの基準が少し変化したために、このようになったという感じなのでしょうか。その辺は何か解析していますか。

○柴山構成員 数値だけで見ると、これは急に耐性率が上がっているように見えるのですが、この大きな要因というのは判定基準が変わっているということになります。ただ、これは同じ基準での比較はちょっと難しく、なかなかできないので、実際のところどうなっているかという正確なことは申し上げられません。これまでの傾向から見ると、恐らくは上昇傾向にあると言えると思います。

○渡邉座長 他に御質問はありますか。「グラム陰性菌」のところはよろしいでしょうか。続いて13ページの「グラム陽性菌」に移ります。ここは何か注意すべき点はありますか。柴山先生お願いいたします。

○柴山構成員 グラム陽性菌では、特に肺炎球菌のデータが13ページの下のほうに掲載してあります。こちらもCLSIの基準が途中で変わっております。ここの表では、2012年以降のデータを載せてあります。当初、アクションプランが作成された時点では、CLSI2007という古い基準をもって目標値が設定されていたと思うのです。こちらに載せてあるのは、CLSI2012という基準になっております。ペニシリン耐性で見ると、髄液以外の耐性率が2015年では2.7%となっています。これで、上のほうの髄液検体で見ると40.5%となります。髄液検体のほうは、CLSI2007と変わっておりませんので、こちらのほうは同じような傾向で見られると思います。髄液検体以外だとブレイクポイントが変わってしまっておりますので、データを見るときに注意が必要になります。

○渡邉座長 要旨のところで、肺炎球菌のペニシリン非感受性の髄液検体以外の2.7%が採られているわけですね。御質問等はよろしいですか。続いて15ページの「薬剤耐性菌感染症」のNESIDに基づいた集計に関して、松井先生からコメントはありますか。

○松井構成員 NESIDでは、全数把握対象疾患及び基幹定点把握疾患ということで提示された感染症が届け出られております。NESIDの特徴としては、同じシステムで1999年以来やっておりますので、長期的なトレンドが見られるのが特徴だと考えております。

○渡邉座長 御質問等がありましたらお願いいたします。これは、定点当たりの数は出てくるわけですけれども、感受性菌の割合が分からないから、耐性率としては難しいわけですね。

○松井構成員 はい。

○渡邉座長 JANISのデータとの比較というのはなかなか難しいですか。

○柴山構成員 JANISNESIDのデータの比較というのは、今後の検討課題として時々話合いをしているところです。

○渡邉座長 せっかく2つのデータが出されているので、その辺の関連性がどうなっているのかというところが分かると、これの意義がもう少しはっきりしてくるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。他にはよろしいでしょうか。次の「Campylobacter」は都の健康安全研究センターのほうで長らくこの研究をして、耐性菌の率を出してきております。そのデータがここに使われておりますので、都衛研の小西先生からコメントがありますか。

○小西参考人 東京都では、2000年に入った頃からCampylobacterの耐性率を調べています。その頃は大体フルオロキノロン系耐性が30%ぐらいだったのですけれども、だんだん年々上がってきて、ここ数年は50%、60%ぐらいが耐性を占めています。その後2015年の株については少し耐性率が減ってきたという状況です。しかし、調べている菌株数が少ないということで、もう少し菌株数を増やして検討していく必要があるのではないかと思っています。

 それから第1選択薬であるエリスロマイシンに対しての耐性率はそれほど増えていないという現状です。

○渡邉座長 これは、後でJVARMのほうから、農場におけるデータが出てくると思うのです。そことの関連性が現実問題としてどうなっているのかというのが非常に興味を持たれることだと思います。また後で出てきたところでお願いいたします。ヒトのCampylobacterについてはよろしいでしょうか。続いて「Non Typhoid al Salmonella」です。これは全国の地方衛生研究所のデータが使われています。四宮先生からコメントをお願いいたします。

○四宮構成員 概要はそこに記してあるとおりです。渡邉先生が代表の厚労科研で、2015年、2016年に分離された非チフス性サルモネラ属菌株の薬剤耐性について調べました。ヒト由来としては、有症者の下痢便由来のものが大部分で、食品としては、結果的には国産の鶏肉が主な材料になっています。地方衛生研究所では、従来食中毒の起因菌等を分離した過程で、その菌株の薬剤耐性を調べるという伝統があります。食品衛生法のほうで、薬剤耐性について調べなさいという項目は特にないですが、薬剤耐性というフェノタイプを調べることで、菌株間の相同性等を見る1つのファクターとして調べていたのであろうと思います。

 研究班に参加した約20か所の地方衛生研究所において、それぞれ似たような方法ではありますけれども、少しずつ違った方法でやっておりましたので、器材、プロトコール、判定方法を全てそろえて、分離株も2か年で1,000株近くのものをやったという点では、恐らく本邦では最初の報告ではないかと考えています。

 それから2015年と2016年のそれぞれの分離株の耐性状況が非常によく一致しております。それで、現在の日本における非チフス性のサルモネラ株についての耐性状況をかなりよく反映しているのではないかと考えています。

 それから18薬剤に対する耐性を見たものが17ページに示してあります。ヒトおよび由来のサルモネラ株の間の、各薬剤に対する耐性率についてのアンチバイオグラムが非常によく一致しております。食品由来サルモネラ株の薬剤耐性とト由来サルモネラの耐性における関連がかなり強く示唆されたところです。

○渡邉座長 WHOのグラス(GLASS)というサーベイランスの世界的ネットワークに、各菌の耐性率を報告するようにということになっています。その中にサルモネラも入っています。サルモネラの場合には、いろいろな血清型によって2,000以上の血清型に分かれるわけですが、その血清型によって耐性のパターンが少しずつ違う点があります。それをそこまで含めた形で報告を求めるかどうかということがWHOで議論されたときに、その血清型を決められる国というのは少ないだろうということで、そこまで要求した場合にはなかなかデータが集まらないということで、このサルモネラ全体として見るという形での報告を求めることに現在はなっています。

 将来的にサルモネラだけではなくて、いろいろなフェノタイプまで分けられる簡単な方法ができてくれば、それに基づいた形での報告になるのだろうと思うのです。これは血清型によって、例えばサルモネラ・ティフィムリウムとかエンテリティディスだとパターンが大分違うのだと思うのです。その辺は地研のデータとしてここには表われていないのですけれども、出そうと思えば出せる状況なのでしょうか。

○四宮構成員 それぞれの血清型別に、この18薬剤のアンチバイオグラムを作成することは可能ですので、それを表・グラフにすることは可能です。先生が言われたように、血清型によって異なります。

○渡邉座長 必ずしも世界的に見たときにどこの国も全部できるわけではないですけれども、ただヨーロッパの国はそういうものができています。そうすると、日本との比較ができやすいのかと思うのです。調べている菌株数が少なくて、有意性を持ってなかなか言えないと問題だと思うのです。もしそうでなければ、今回この中に入れるかどうか考えていただくと、もうちょっと細かいデータになって、有用性がもっと高まるのかと思うのですが、いかがでしょうか。

○四宮構成員 今回北海道から九州までの地研の協力を得られた1つのメリットは、2年間で1,000株近くに菌株数を増やすことができたことです。個々の地衛研で耐性の状況を調べている所はあるのですけれども、統計的な処理をするときには、菌株数の壁がありました今回の調査でヒト由来の場合は、血清型が60種類以上ありますので、非常にマイナーなものは難しいかもしれないのですが、トップ10とかとかに関しては、ある程度の菌株数がありますので、統計的な処理もできるのではないかと思います。

○渡邉座長 ヒトと食品との耐性パターンというのが非常に似ている部分と、例えばカナマイシンはヒトの場合には10%以下の耐性ですけれども、食品の場合にはかなり高い。ストマイも2倍ぐらいですか。こういう差異が出るというのはどういうことと考えられるのでしょうか。

○四宮構成員 先ほどのアンチバイオグラムを比べたときに似ていると言ったのは、この18剤に対する耐性率をグラフにすると、食品由来とヒト由来の間で、そのパターンが全体として非常によく似ているということです。

 先生が言われたように、個々のものを見ると、食品では高いけれども、ヒトではそれほどでもないというのもあります。それに関しての原因は今のところはっきりはしていません。

○渡邉座長 他に何か御質問はありますか。

○藤本構成員 四宮先生からの御説明なのですけれども、16ページの本文を拝見すると、食品由来株とヒト由来株の耐性率について、血清型で分けてみると相関が、ヒト由来のほうでは56.8%耐性で、後者では19.1%ということがあります。渡邉先生がおっしゃったように、これは血清型で分けて耐性のパターンを作ると、多分、率そのものもそろってくるのではないかというように拝見いたしました。

○渡邉座長 血清型のものは、すぐにまとまって入れられますか。

○四宮構成員 それは、すぐに出ます。

○渡邉座長 これが最終的に決まるのは次の回ですよね。

○結核感染症課課長補佐(高倉) さようでございます。

○渡邉座長 それまでに入れていただければ、今の藤本先生のコメント等も含めて、この理由がはっきりするということになるかと思うのです。もしできるようでしたら、考えていただければと思います。他にありますか。よろしければ次は「淋菌」です。これについて、感染研の大西先生からコメントはありますか。

○大西参考人 感染研の大西です。「淋菌感染症」、淋菌の薬剤耐性に関しては、2015年、2016年の約600株程度のデータをWHOに報告していますが、それと同じデータがここに記載されています。注目すべき点は、これは最近あれなのですが、セフトリアキソン耐性株がEUCASTの基準でいくと5%前後と非常に高値になっているということ。それから、アジスロマイシン耐性率も33.5(2016年データ)、現在世界中で使われている2つの薬剤に対しての耐性率が高くなっているということです。ただし、国内で使われているセフトリアキソン、アジスロマイシンの用量からいきますと、ここではヨーロッパの基準で耐性と判定していますが、日本は高用量で使うということで、もう少し時間的な余裕があることは付け加えたいと思います。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。EUCASTを使っている理由は何かあるのですか、CLSIではなくて。

○大西参考人 アジスロマイシンの判定基準をCLSIがまだ出していなくて、アジスロマイシンは非常に重要な薬剤と世界的には見られていますので、そこが明示できるようにEUCASTを使わせていただいています。WHOの報告もEUCASTで出しているということです。

○渡邉座長 淋菌に関しては、この薬剤、特にセフトリアキソンに対する耐性が世界的に問題になって、WHOも、新しく開発すべき抗菌薬の中に淋菌のセフトリアキソンに対する耐性菌を治療できる新しい抗菌薬の開発をトッププライオリティに挙げているのだと思うのです。そういう意味では非常に重要だと思うのです。いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 続いて、「Salmonella typhi,Salmonella Paratyphi」、これは感染研に菌株が集まってきているということで感染研のデータが使われていると思うのですが、大西先生よろしいですか。

○大西参考人 チフス菌、あとパラチフスA菌の薬剤感受性の動向、耐性率を示してあります。ちょっと訂正していただきたいのですが、Salmonella typhiの「typhi」、大文字の「T」で始めていただいてノンイタリックでお願いします。キノロン耐性が進んでいるということ。一方で、フルオロキノロン耐性が進んでいるということです。ただし、チフス菌、パラチフスA菌の場合には約90%が輸入症例からの分離株になりますので、どの国から帰国された方から分離されているかでこの耐性率というのは基本的には変動し得るものとなります。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。Salmonella TyphiParatyphi、あとShigellaですね。Shigellaも入っていますが、これについては、これShigellaも感染研に集まった菌株でやっているわけですね。

○大西参考人 はい、Shigellaのほうは、年間約100株程度ですが感染研に集まっている菌株のデータでここに示してあります。WHOへの報告もこの菌株セットで報告していることになります。

○渡邉座長 よろしいでしょうか。では続いて結核菌ですが、御手洗先生が今日いらっしゃらないので、これは結研に集まってきている菌株を使っての耐性のデータだと思います。ここに書かれているように、これは培養陽性患者数もここにデータとして出ていると。INHRFPの耐性菌の数と耐性率、SMEBのやはり耐性菌の数と率がここに出されております。よろしいでしょうか。  

○結核感染症課課長補佐(高倉) ちょっと事務局から。今、渡邉座長が御説明された結核菌の感受性のサーベイランスについてです。こちらは結核研究所に菌株が集まっているのではなくて、結核登録者情報システムの中に報告された感受性を集計したというものです。ですので、こちらに関しては、御手洗先生も薬剤感受性検査の精度保証等に課題があるということは言及されておられました。こちらの参考資料の中の御説明のほうにそういう記載があります。事務局からの補足です。

○渡邉座長 ありがとうございます。そうすると、結核研究所はデータだけが結核研に上がるようになっているということでよろしいのですか、理解は。

○結核感染症課課長補佐(高倉) さようです。結核研究所と申しますか、これNESID、届出のほうの、結核登録者システムというのはNESIDの一部ですので、そちらのデータを集計したものということで、集計に関しては結核研究所のほうにお願いしているのがありますので、その情報を頂いております。

○渡邉座長 よろしいでしょうか。続いて「院内感染症の発生状況」ということで、これはJANISのデータですが、早川先生。

○早川構成員 これは私どものNCGMでまとめたものではないのですが、一応公表されているデータを使って書いたものになります。SSI、つまり手術部位感染症とデバイス関連の感染症を集めております。基本的には著しい増加傾向を示しているものはないことになります。数字に関してはそちらに記載のとおりになります。

○渡邉座長 これは感染症の発生率だけで、どういう菌が分離されているかというところまでは、今のこのJANISの報告では分からないのでしょうか。

これは将来的にはどういうことになるのですか。

○早川構成員 何を目的にこういうサーベイをするかなのですが、院内でこういうことが起こるとよくないので、モニターをして防ぐための指標とするために見ているということですので、まずは発生率を見るというのが他の先進国でも行われていて、それらと比較できる基準で見ていくようにするということは1つの課題かと思います。

○渡邉座長 例えばSSIの場合に、恐らく最初、なかなかどういう菌であるか分からないので経験的治療として抗菌薬を投与することにならざるを得ないのだと思うのです。ある時間内に投与しないと敗血症の場合亡くなってしまう可能性があるので。そのときに、それ用に使えるような日本のデータがあるというのは非常に、臨床家にとってはメリットがあることだと思うのです。MRSAが多いのか、ほかのものが多いのか。そうすると、最初にどういう抗菌薬を使えばいいのかというのを考えられるためのデータがあったほうがいいのかと私は思うのですが、いかがなのですか。

○柴山構成員 そうですね、JANISのほうは今まで感染研のほうで担当させていただいたのですが、私たちはなかなか臨床、特にSSIとかICUとかそういった部門というのは専門ではないということもありまして、医療センターともこれまで相談させていただいて、今後もさせていただきながら、臨床の先生の御意見を伺いながらそういったことを、臨床の面で役に立つようなデータをこれからも出していきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございます。臨床側からすると、私は臨床を1年ぐらいしかやっていないので余り大きなことは言えないのですが、そういうデータというのは多分あったほうがいいのではないかと思うのです。その辺は是非、検討のほうをお願いしたいと思います。他によろしいですか。

Clostridium difficileはなかなかやっかいな問題なのだと思うのです。世界では非常に問題視しているのですが、日本は余り重要視していないというと怒られますが、実際このデータというのはこの発生動向調査では、JANISでは出てこない、出てきているのでしたか。

○柴山構成員 JANISでは集計しておりません。

○渡邉座長 今後どうしますかね。

○柴山構成員 JANISに関しては、JANISのほうにデータが上がってこない、CDIに関してはデータは上がってきませんので、これをいわゆるナショナルデータというか、どういう形でやっていくかというのは、ちょっとこれは検討していかないといけないとは思います。

○渡邉座長 感染症学会などでもこのdifficileに対するセッションというのは、大体外国からスピーカーを招聘してやっているというのが常ですよね。私もこの間、その人の司会をやったのですが、そのとき日本では余り重きがないみたいなことを言ってしまったら、あるdifficileをやっている先生に怒られまして、そのようなことはない、非常に問題なのだと言われたのです。ちょっとそういう意味で認知度が余り高くないかと思うのですが、今後、やはり高度医療になってくると、これは非常に日本でも当然問題になってくることが予想されるので、どのようにこのデータを集めるかというのも検討課題なのではないかと思うのです。これはどこがどのようにやるかというのも今後ちょっと検討していかなくてはいけないと思うので、厚労省も含めて、今後どうするかを検討していただいたほうがいいかと思うのです。よろしくお願いします。何か御意見がありますか、これに関して。藤本先生、何かありますか。

○藤本構成員 欧米のように大きな問題になっている状態ではないので、一方で、感染症として診断されているものがどれくらいあるかということと、あともう1つは菌株がどのような特性を持っているか、バイナリートキシンなどは今、どのくらいあるのかといったことを、それぞれに調べていって全体像を予測するような形になるのではないかと考えます。

○渡邉座長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。続いてJVARMのほうで、これは遠藤先生のほうからお願いします。

○遠藤構成員 22ページからのJVARMです。1番目としては家畜由来細菌ということで説明してあります。ところどころ、確認中ですとか、まだ入っていない数字がありますが、次回102日だと思いますが、次回の検討会までには数字を入れたいと思います。今、確認中ということなのです。出しておりますデータは全て動物医薬品検査所のホームページに公表してから、こちらの報告書に同じものを反映させたいと思っておりまして、そのような手続を踏ませていただきます。

 「病畜由来細菌」、これは鶏だけまだ確認中ですが、そういう形になって入っております。その次には、「農場における健康家畜由来細菌」というのが26ページから入っています。

31ページからは、「と畜場及び食鳥処理場における家畜由来細菌」ということで、これも健康家畜ではあるのですが、JVARMは収集方法が途中から変わっておりまして、株をと畜場・食鳥処理場で採ることにした関係で作業が現在まだ進行中というか準備中となっております。これも次回までに入れたいと思います。次回までに入った数字を見まして、考察も若干の追加、書き換えをしたいと考えております。

36ページからは「養殖水産分野」ということです。これは、それほどたくさん数値はありませんが、これまでJVARMでやってきたものについて書いております。養殖水産分野についてはこれから拡大をする方向です。

37ページの3番目の「愛玩動物への取り組み」ということで、これはこれから始めるということです。書いてありますように、2016年度に「愛玩動物薬剤耐性(AMR)調査に関するワーキンググループ」において、どのような調査方法がいいかということについて、有識者の意見を取りまとめまして、動物医薬品検査所のホームページでその概要を公表しておりますので、お時間があるときに御覧になっていただければと思います。以上、まだ数字が入っていないものですから考察が書けないところもありまして、次回充実させたいと思います。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。これちょっと分量がありますが、2238ページまでですね。

○遠藤構成員 37ページです。

○渡邉座長 37ページ、はい。「環境」になってしまうからそうですね。御質問等ありましたら。これと、恐らくこの1つのトピックスとしては、大腸菌の第3世代のセファロスポリン系の耐性率が特に肉用鶏において減ってきているというところが、例えば29ページの一番下辺りですか。あと、30ページのCTXとか、この辺が2011年には高かったのが2012年ぐらいから下がっているというところ、57ページをちょっと見ていただいて、そこのグラフ、図5です。これは何回か出されている図だと思うのですが、2012年、2013年で急激にこれが減っていると。それは、ブロイラーに今まではセフチオフルでしたか、抗菌薬を飲料水などに入れて使っていたけれど、それを自主的にやめたのでこれが下がったという、そういう理解でよろしいわけですよね。

○遠藤構成員 はい。セファロスポリンについては鶏での承認がないのですが、ないにもかかわらず使われていたものを適正に使用していただいたということで下がったということです。

○渡邉座長 そうですね。それで下がったということを分かるようにするためには、お願いなのですが、2011年だけが19.9あって、2012年が9.7となっていると、2011年のデータが間違いではないかと見られてしまうといけないので、例えば2010年のをここに入れていただくと、これも高いという形になるのだと思うのです。例えば29ページの肉用鶏の、2011年は19.9ですね。でもこれだとそれから下がっているので、急に下がったのは何か理由があって下がったということを説明してくれれば分かるのですが、そうでないと、2011年の測定方法とか何かの問題でこの辺が高かったのではないかという誤解をするといけないので、2010年のデータを入れていただくと、それも高いということで、継時的に見たときにどうなるかというのがこのデータから分かるのではないかと思うので、もし時間的にデータを集めるのが大変でしたらあれですが、できるのでしたら2010年のデータを、特にセファロスポリン系と肉用鶏の辺りにはちょっと加えておいていただくと、先ほどの57ページの図との相関が出るのではないかと思うので、ちょっと検討していただければと思います。

○遠藤構成員 はい、検討させていただきます。ほかのところと合わせて2011年から始めてしまったものですからちょっと焦点がぼけてしまいましたので、そこについては分かるような形でお示ししたいと思います。

○渡邉座長 ほかに御意見がありましたら。田村先生よろしいですか。

○田村構成員 先ほどサルモネラの血清型ごとのデータという話がありましたが、て、それは動物由来で見ると、病性鑑定由来の菌株はいろいろな血清型にばらつくので提出可能であると思います。ただし、健康な動物由来のサルモネラというのはほとんどが鶏のインファンテスに集約されて、それ以外のものは僅かしかないので、血清型で耐性の分布を見ていくというのはちょっと難しいという気はします。

 それから、Campylobacterの先ほどのjejuniの話なのですが、Campylobacter jejuniは、ヒト由来のものと動物由来の耐性率を比較していただくと、エリスロマイシンとフルオロキノロンの耐性率は動物のほうが若干低いのです。それは私たちの理解としては、ヒトの場合は症例から分離しているので治療が影響しているのではないかと思うのです。ですので、動物由来株ではエリスロマイシンの耐性というのはほとんど認められません。ヒト由来では、エリスロマイシン耐性が少し出ているということもありますし、フルオロキノロンも若干高いのはサンプリングのやり方の問題だと考えています。

 あとはMRSAの話です。今、問題になっているのは家畜関連型のMRSAで、今日は言及されなかったのですが、今後JVARMでも家畜関連型のMRSAを対象とした調査に入ると聞いています。

○渡邉座長 ありがとうございます。この報告書内に、考察の辺りに今の先生がおっしゃられたような観点をちょっと加えていただくと、どうして違いがあるのだということが分かると思います。それは先ほどのブロイラーにおける問題もそうだと思うのです。そうすると、これの表のと、あと実際のものの見方に対する考察があると、我々見ている側としては非常に理解しやすいのではないかと思うのです。ただ、この図だけ見ていても、何だか分からないというのが一般の方なのではないかと思うのです。

 私も今、エリスロマイシンの話を、先生がおっしゃっていたようにちょっと聞こうと思っていたのです。ヒトの場合には、先ほど小西先生が16ページ目で言われたようにCampylobacterEMは数%耐性があるわけです。ですが、動物のほうは先生が言われたように、例えば33ページとか、エリスロマイシンはほぼゼロということです。その辺の違いを説明していただくと非常に分かりやすいのかと。あと26ページのCampylobacter jejuniの健康家畜もずっとゼロですよね。そうすると、何で人間のものだけがEMが高いのかというのはちょっと疑問に思う点だと思うので、そこは、今のような考察になれば、なるほどと理解できるのかと思うので、その辺もちょっと加えていただければと思います。これをもう1回御覧になって、どこに加えたらいいか、専門の先生方から入れていただくと非常に有り難いと思います。

○結核感染症課課長補佐(高倉) 今、渡邉先生がおっしゃったように、考察につきましては、各執筆御担当の先生等の御意見を確認して、記載に加える方向で検討したいと思います。ありがとうございました。

○渡邉座長 よろしくお願いします。ほかに、今度は養殖水産。これは先ほど説明があったような形です。それとあと愛玩動物、これは今後取り組んでいくということです。食品については、先ほどNon typhoidal Salmonellaについては四宮さんから説明がありました。環境については今後プロジェクトとして、これはメタゲノム解析で主に行うということですが、菌株の分離とかも当然やるわけですか、説明をちょっと黒田先生。

○黒田構成員 感染研の黒田です。環境のほうを担当させていただいております。経緯は、デンマークのDTUの大学のほうで、WHO支援の下、環境下水の調査を昨年度から行っていて、今年は2年目になります。日本は参加していなかったこともあり要請がありました。そこで、今年度は一箇所の下水処理場から下水を頂戴し、採取場所を公開しないという約束を頂きましてデンマークに送付済みです。およそ今年度は90か国がデンマークへ送って、20181月にはデータがそろうだろうと。これはメタゲノム解析の結果でして、菌が生きているか生きていないか、またその生菌の調査をやるかどうかはまた別な話になりますので、今後、日本において広域に自治体との連携ができればと考えております。以上です。

○渡邉座長 このメタゲノム解析は耐性菌がいるかどうかだけ見るのですか。それともどういう菌がどういう耐性を持っているかというところまで分かるぐらいの解析をやるのですか。

○黒田構成員 現状は予備調査なのですが、下水が排水される一般河川、一般人が立ち入れる所が実はありまして、そこで水をくんでフィルターで濾して、そこにトラップされているDNAを網羅的に検査する。そこで菌種と耐性遺伝子のプロファイリングも可能になります。今、数点やって幾つか見つけている現状です。以上です。

○渡邉座長 分かりました。よろしいでしょうか。下水も取る場所によって多分違ってくると思うので、それこそ製薬会社の下水か何か取るとまた違ってくるかもしれないです。そうなるとなかなか公表できないかもしれません。よろしいでしょうか。

 続きまして、39ページの「日本における抗菌薬使用量の現状」ということで、村木先生、よろしくお願いします。

○村木構成員 抗菌薬の使用量の現状です。表に示してありますのは以前報告しました販売量に基づく使用量になります。最初に示してあるのは経口抗菌薬で、次の40ページに示してあるものが注射用抗菌薬になります。本文中の概要に書いてあります2段落目なのですが、今現在、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用した使用量のデータも投稿中です。まだアクセプトされていませんので、一部中身を抜粋したものを途中に記載してあります。販売量と比較して、2013年のこの表で示す一番右側の列になるのですが、それの全抗菌薬、経口第3世代セファロスポリンとフルオロキノロン、経口マクロライド静注抗菌薬はそれぞれそちらに示してある数値で、ほぼ、若干の誤差はあるのですが、大きな差は存在しないことが明らかとなっておりますので、今後は、こうしたNDBを利用して経年的にデータを出せるような仕組みを作ろうという形で動いております。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。御質問等ありましたら。次の所に、JVARMの抗菌薬の使用うんぬんという所で使われているのは、これは使用量としてデータが出ているのだと思うのです。ヒトのほうは量というか、これはDIDでしたか、どちらでしたか。

○村木構成員 そうですね、DIDという値なのですが。

○渡邉座長 どのようにすれば比較ができるのか。多分一般から見ると、ヒトでどのくらい使っていて、動物でどのくらい使っているということが分かると非常に状況を把握しやすいのだと思うのです。

○村木構成員 はい。

○渡邉座長 なかなかDIDとかという言葉は聞き慣れない言葉で、一般の人からすると何を表しているのか、どのように考えたらいいのかというのがちょっと分かりにくいのかと思うのです。多分、専門家は分かるのだと思うのですが。これはどのようにすればよろしいですか、動物との比較をした場合に。

○村木構成員 そうですね、トンで示すこともできるのですが、実際、動物とトンを比べて多い少ないを語っていいものかどうかというのもちょっと、はい。実際に、以前出したことはありまして、全体で1,400トンぐらいの3分の1ぐらいが人という形で示すことはできます。使用比率を見てみますと、やはり動物ではテトラサイクリン系の使用比率が高かったり、人ではセファロスポリンが多いとか、量で示すよりは、それぞれの使用の割合とかで比較できるような形を示していくというのも1つの形かとは思います。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 動物分野のほうで少し補足をさせていただければと思います。今、JVARMのデータは有効成分の純末換算の重さで出しております。ただ、国際的にも、例えば動物の大きさが大きければ、使用する量は多くなるということがありますので、その抗菌剤の使用頻度を適切に評価するための単位ですね、それがEUとかでも検討が進んでおりますので、今後我々としても、どういった単位でお示しするのが動物の中でいいのか、あるいは人との比較としてDIDのような単位が使用できるのかというところは検討していきたいと考えております。

○田村構成員 使用量の調査の場合に2つ視点があって、1つは国内での話になります。そうすると、先ほど先生が言われたように、ヒトと動物でどのぐらい使われているかというのが1つの視点なのです。それと今言ったのは、国際的な比較をする場合、動物の国際的な比較をする場合は、動物の数も抗菌薬の使い方も違うところを合計量で比較しても意味がないので、そのときの単位どうするかを今検討しているわけです。

 ですので、その2つのものを公表するということは、海外に公表することになると思うのですが、そういう視点を入れた形でまとめられればいいかなと思っています。

○渡邉座長 現実に生産されている量と実際に使われている量に違いがあるというのは一般的だと思うのですが、それと実際にどれだけ使ったときにどういう耐性菌や耐性遺伝子が選択されるのかというのは結構大きな問題で、今後対策と当然結び付いていく話なので、そこが客観的なデータとして見えるような形を作っておかないと、データだけここに出ているということで、それがどのように施策的な形で利用していくのかというのが分からないというのは、意味がないとは言わないまでも、将来的なことを考えた場合には、その辺の考え方をきちんとした上で、このデータをどうするかということを検討していかなくてはいけないのかなと思います。

○藤本構成員 田村構成員が言われたことが1つと、もう1つは既に御発言があったように、適正使用という観念と地球全体としての選択圧という2つの観点があると思うのです。総使用量をトンで出して何になるのかという話はあるのですが、それは日本というある環境の中に、どういう選択圧がかかっているかということを示す基礎的な数字になると思いますので、ヒトについても動物についても総量というのは出しておいて、その上で適正使用が行われているかどうかという観点で、動物の大きさとか、ヒトならば標準的な使用量という観点でのまとめ方という、その2つがどうしても必要になるのではないかと思います。

○田中構成員 次の環境のところにも関わると思いますが、環境でどれぐらいそれが問題になるのか分からないのですが、環境の濃度を測定する、あるいは環境に流れていく手前の排水系での量の推定に、発生源からの推定というのがかなり有効な方法の1つではあるので、可能であれば家畜系あるいは生活系、ヒト由来系ですね。これも病院だけではなくて一般家庭で使われている量も含めた推定値があって、それを例えば下水道であれば、代謝率の問題は少しあるのですが、水量で割れば大体の濃度は出るのです。そうすると、それがどのぐらいのギャップがあるのか。排水系であれば、更にそれが処理をされて、処理の段階でどれぐらい減っているのかも、ばらばらのデータではあるのですが、ある程度推定がされ始めているので、全体の流れをある流域で推定するには、今言われたような物質量が非常に役立つと思います。

○渡邉座長 今日、全部をディスカッションするのは時間が足りないと思うので、別途使用量のまとめ方をどのようにするのかというのは、どこかで討議する所を設けていただければと思うのです。関係者に集まっていただいて。そのほかに事務局からはよろしいですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) 次回、また今回頂いた御意見を踏まえて案を出させていただきたいと思います。関係の先生方には、適宜メールで御相談させていただきながら作成したいと思いますので、よろしくお願いします。

○渡邉座長 今のことを踏まえて、動物用医薬品のほうの量というのが41ページから出ていますので、この説明をお願いします。

○遠藤構成員 41ページからの「動物用医薬品」ですが、これは動物用医薬品の販売量高から推定しております。各製造販売業者から提出された、どのぐらい何を販売したかという値を基に計算しています。

41ページの上の表は、動物用の抗菌剤だけの原末換算量ということで、全体のものを物別にまとめてあります。

 その中で、内数として畜産動物にどれぐらい使われているかというのが、41ページの➀の「畜産動物」の数になります。これは、先ほど数字の意味という話がありましたが、減少傾向かなと思っています。

2番目の「水産動物」というのは、水産薬として使用されたものについての最初の表の内数の推計です。その次の43ページが「愛玩動物」について、どのぐらい使用されているかという話です。愛玩動物はほかの動物に比べて、かなり量的に少なくなっております。動物用医薬品として承認されているものについての数値になります。

 その下の「抗菌性飼料添加物」については、また別な集計となっており、飼料添加物としての値が入っています。

○渡邉座長 御質問はありますか。

○村木構成員 愛玩動物なのですが、以前、ヒト用に使われている抗菌薬が卸されているという話を聞いて、実際に卸しからもデータを手に入れてみたら、バンコマイシンとかメロペンとか、動物病院に卸されている実情があって驚いたのですが、それはこのデータには反映されているのでしょうか。

○遠藤構成員 これには含まれておりません。愛玩動物にヒト用の医薬品がどのように使われているかということについて調査する方法を検討しているところなので、もし情報がありましたらよろしくお願いいたします。

○渡邉座長 今の話は、動物病院がそういうものを購入できてしまうわけですね。そういう制限というのは特にないのですか。

○田村構成員 それは獣医師会から言ってもらえばいいのですが、使用制限というのはなくて、一般には90%以上は人体薬が使用されていますので、ここで示されたデータは実際の使用は反映されていないと考えていいと思います。

○渡邉座長 境構成員からコメントはありませんか。

○境構成員 今、田村構成員がおっしゃったとおりです。95%ぐらいはヒト用の医薬品が使われているということですし、ディーラーからヒト用の医薬品を購入して、動物病院で使っているという実態ですから、出された数字の10倍か20倍ぐらいは実際は使われているということですし、御質問があったように、バンコマイシンなども使われている可能性は十分にあるということです。今後、私どもにとって大きな検討課題になってきます。

○渡邉座長 流通経済というのは難しいですね。その辺もディスクローズするというか、明らかにしていかないと耐性菌全体を考える場合には、動物、特に愛玩動物はヒトとのコンタクトは非常に強いので、動物からヒトに移るのか、ヒトから動物に移るのかは難しいところだと思うのですが、それはさて置き、データとしてはきちんとしたデータが表に出たほうがいろいろなことを考える上でいいと思いますので。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 愛玩動物の薬剤耐性の調査を今年度から行います。それから、ヒト用の抗菌剤の使用実態についても、先ほど遠藤委員からありましたけれども、どのように調査したらいいのかを検討しておりますので、きちんとした調査を行いたいと考えております。

○渡邉座長 ほかに御質問はありますか。

○釜萢構成員 今の説明を読んでいて理解できなかったのですが、愛玩動物のところで、文章の所は2009年、2011年、2013年の販売量が130トンと書いてあります。それと、この表のトータル、これも推定販売量ですが、トータルは3.8トンとなっていて、両方原末換算だと思いますが、そこはどのようになるのでしょうか。

○遠藤構成員 これは間違いがありまして、確認して、また修正をいたします。

○渡邉座長 確かに、販売量と大分誤差が大きいですね。よろしくお願いします。ほかに御質問はありますか。

 環境の問題は先ほど田中構成員から指摘がありましたが、安定なコンパウンドと、βラクタマーゼは余り安定ではないので、分解されてしまう傾向が強いと思うのです。キノロン系は安定なのだと思います。そういうものは、この環境の推定をする場合には、どのように位置付ければいいのでしょうか。環境を見てもβラクタマーゼはほとんどないとデータが出てしまうと、何も外に出ていないと誤解されてしまうと思うのです。

○田中構成員 環境の全てを測っているわけではないので、よく分からないところはあるのですが、例えば排水系を考えると、先生が言われるように生分解のレベルがどの程度か。これでかなり決まるのですが、ほかにもどれぐらい脂溶性を持っているか。要するに、有機物側のほうに水側から移行するか。これが排水であれば汚泥になるのです。汚泥が何らかの形で有効利用されて、また環境に戻ってくるか、あるいはそのまま吸着されないで水に残って環境に出るか。生分解と脂にどれぐらい溶けやすいかというようなことが、1つのファクターに大きくなっています。

 そのほかに、光分解が環境の中ではかなり効いていることが分かりはじめていて、幾つかの化学物質については進んでいるのですが、ここの対象になっているものが、必ずしも環境側では余り今まで意識してこなかったものが多いのです。どちらかというと、生態影響のほうからの重要なものという視点が多かったので、その辺をすり合わせる必要があるのかなと思っています。

○渡邉座長 いろいろと検討課題があるということですね。

○田村構成員 環境ではなくて、その上の農薬のところです。農薬で、StreptomycinOxytetracyclineというのが使われているというのは、私は初めて見たのですが、これは公表されているデータなのでしょうか。

○渡邉座長 どこから出てきているのですか、農水省ですか。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 農水省で公表しているものです。

○田村構成員 そうすると、StreptomycinOxytetracyclineは農薬としても使われているということでいいですか。

○農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課課長補佐 そうです。農薬として登録されているものです。

○渡邉座長 トンだから、かなりの量が使われているのですね。今後、真菌の耐性が問題になってくるときがあるので、この間、『Nature』か何かに、真菌に効くようなアゾール系のものが相当農薬として使われていて、真菌の耐性遺伝子をセレクトする方向に向かっているのではないかというような報告が出ていたと思うのですが、今回はバクテリアだけですが、将来的には真菌も含めなくてはいけないと思うので、そういうときには農薬の問題もこの中に入れ込むようになるのではないかと思います。なぜかというと、WHOでそういう議論がされていて、そのうち出てくるのだと思うので、将来的には考えておいたほうがいいと思います。よろしいでしょうか。

 では続いて、45ページの「日本における薬剤耐性に関する国民意識」ですが、事務局からでしょうか。

○結核感染症課課長補佐(高倉) こちらはアクションプランでも、「国民意識の調査をする」ということが記載されているものですから、それで研究班で一般国民に対する調査が行われていて、今年度も実施予定となっています。それは45ページと46ページに示しています。

47ページの「医療関係者への調査」というのは、これまでは公的な機関で行われたものはありませんが、全国的な、比較的にサンプル数の多い調査が学会発表でなされていましたので、発表者の先生の御了解を頂き、こちらに掲載させていただいた次第です。以上です。

○渡邉座長 御質問等がありましたら、発言をお願いいたします。これは次の使用の手引きにも関係すると思うのですが、そこで実際にこういうリスク・コミュニケーシヨンがどのようにやられていて、また、やろうとするのか。その辺も、後で事務局からコメントを頂ければと思います。よろしいでしょうか。

 では、「今後の展望」です。簡単にこういう形で書かれていますが、ここは皆さんからいろいろと御意見があると思うのですが、こういうことを加えたほうがいいというような御意見がありましたら、発言をお願いします。

 先ほどいろいろとお話が出た、抗菌薬の使用量というか、販売量と、それがヒトでの問題と動物での問題、その辺をどのようにクリアにするかということも今後大きな課題の1つになるのかなと思います。あと、環境中の抗菌薬の問題で、それが実際に耐性菌の選択圧として働いているのかそれがどのように人体に戻り得るのか、その辺のサイクルも今後解明していかなければならない点なのかなと思うのです。

 あと、JANISにおいては、前から言われている精度管理の問題で、それを今のシステム内でやり得るのか、それともそうではないような形があるのか。その辺は今後の展望の1つになるのかなと思いますが、ほかに何かございますか。

 皆さんのほうで、自分が担当しているところ、それ以外でも結構ですが、そこにおける問題点と今後の展望という形で、少しまとめていただいたものを事務局に送っていただければと思います。そうすると、もう少しここの部分がリッチになると思うので、その辺はよろしくお願いいたします。

 あと、参考資料は皆さんから頂いたものをまとめたものです。これに関して、特にコメント等はありますか。

 これも重要だと思うのですが、ここに書かれている文献以外に、こういうものを付け加えておいたほうがいいだろうということがありましたら、事務局のほうに、文献のディスクリプションに沿った形で、メールで送付をお願いしたいと思います。

 全体を流して見てきましたが、振り返ってみて、全体的にこういうところはこのようにしたほうがいいというコメントがありましたら、御発言をお願いします。

○藤本構成員 細かいことではあるのですが、基本的に全部母数が入っているのですが、母数が入っていないものとか、あるいは表の中に母数が明らかになっていないものがあるので、これは全体として統一したほうがいいのではないかと考えました。

○渡邉座長 各担当者の先生方、そこを見ていただいて入れられるものは入れていただければと思います。ほかに何かございますか。

○佐藤構成員 まとめていただきまして、どうもありがとうございます。誰を対象としてこの報告書を作っているかというところが問題だと思うのです。先生から「一般の方が」というようなお話がありましたが、その辺のところを一般の人が見て分かるようにするのか、あるいは医療関係者なのか、獣医なのかというところが分かる形にするのが大事だと思っています。

 それから、これは17年ということで最初にできたわけなのですが、これからアニュアルに毎年出していくような形で考えていらっしゃるということなのですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) さようでございます。

○佐藤構成員 そういうことであれば、これは2011年からのデータしか書いていないわけですが、JVARMなどはもっと長い歴史があって、これまでのデータをどうしていくのかとか、そういったことも必要かなと思います。

 それから、見る対象のことを考えた場合に、海外の方から見られるような形にするということを考えると、これも是非英文で出していただいて、分かるようなホームページから、海外からもアクセスできるような形にしていただけるといいのではないかと思いました。

○渡邉座長 その辺は事務局も考えていると思うのですが、報告書の読み手を誰とするかということですが、この数字が入っているとなると、一般の人が見てもよく分からないので、そういう意味を考えると対象はある程度知識のある方という形になるのだと思うのです。

 ただ、それだけだともったいないので、事務局とも話をしたのですが、これのエグゼクティブサマリーのような形で、一般人又はステークホルダーにもそれが伝わるようなものを考えるということです。事務局から何かありますか。

○結核感染症課課長補佐(高倉) 今後、各先生方の御意見等を踏まえまして、こちらでも考えていきたいと考えています。

○渡邉座長 今の佐藤構成員のような御意見に、付け加える点はありますか。せっかくこれだけのものを出したので、これは利用していただかないともったいないと思うのです。これは英文でも出すのですよね。

○結核感染症課課長補佐(野田) 報告書が出てから、それを英訳する形で作成したいと考えています。

○渡邉座長 ということは、今年度中に英文として出るだろうと。これは厚労省のホームページに出すのですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) これについては、少なくとも厚生労働省のホームページには掲載させていただこうと考えています。

○渡邉座長 ほかに何かございますか。これを見て、初めてこういうものが出るので、研究者も含めて非常に有用だと思うのです。そうすると、引用したいという人たちが出てくるのだと思うのです。英文で出せば、外国からは当然だと思うのです。そのときは、年次報告書というのはアニュアルレポートとするのか、英文で考えないといけないと思うのですが、それを引用すれば、全部使えるという形になるのですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) そちらにつきましては、基本的に表題をどうするかというところになると思うので、そこは次回、案という形で出させていただこうと思っていますが、そのときに「これでよろしいでしょうか」という形で出させていただきたいと思います。

○渡邉座長 多くの人に利用していただければ、作っている側としても本望だと思います。また、今までWHOの会議などに出ていても、「日本のデータはよく分からない」といわれます。大体、日本のデータで引用されるのはJVARMが引用されます。JANISWHOAGISAなどにも出てこないので、私は入れてくれと何回も言ったのですが、なかなか入れてくれなかったのです。というのは、英文で出していなかったという点もあるのだと思うのです。今は英文で出しているのですよね。

○柴山構成員 はい。JANISは今は公開情報も英文で公開しております。

○渡邉座長 それで、日本はせっかくいろいろとやっているのに、余りそれが表に出ていなくて、どうしてもヨーロッパとかアメリカが自分たちのことを宣伝しているところで、我々もそういう意味では、日本としてもこれだけのものをやっているのだということを宣伝していければいいのではないかと思うのですが、それの第一歩となるのだと思います。

 全体に向けてコメントはありますか。よろしいですか。それでは、今のような形で修正を重ねて、次回にもう一回皆さんに見ていただいて、最終版として、それを、できれば今年度中に英文としても発信して、日本もこういう形で耐性菌およびその関連のものを実施していることを見せていくということになるのだと思います。よろしいでしょうか。

○釜萢構成員 まとめていただいたとおりなのですが、展望の所にきちんと書いてあるのですが、今回の報告書がワンヘルスの視点から、ヒト、動物、農業、食品、環境の各分野の状況が非常によく分かるようになりました。そのことはとても画期的なことだと思います。それを自分の専門以外の部分も含めて、この問題についてどう取り組むかという中で、一番最後の段落で、「薬剤耐性菌及び抗微生物薬の使用に関するヒト、動物、農業、食品、環境各分野の関係性やその機序の解明、比較検討する手法の妥当性の検証等においては、更なる研究が必要である」とありまして、このとおりなのですが、もう一歩踏み込んで、ワンヘルスという観点で、これをどのように統合するかという、もう少し強い意思を。少し抽象的ですが、せっかくこれができるので、その辺りの統合について、更に私どもの強い意思が滲み出るようなまとめになるといいなと願っています。

 というのは、抗菌薬の使用量について、全体の抗菌薬のうち、ヒトにこれだけ使われている、農業にこれだけ使われているというような情報が、例えば厚労大臣なども発言しておられますが、そのことの意味付けがどこにあるのかというところが、なかなか分かりにくいわけです。ですから、全体をしっかりと統合していって、今後はどういう方向にそれぞれの分野をまとめていくかというようなことが、まず第1回のこの報告書の中で、もう少し方向性が出るといいなと。少し抽象的ですが、せっかくワンヘルスという言葉の中で考えてきているわけなので、そこをもう少し強調できるといいなという印象を持ちました。以上です。

○渡邉座長 非常に重要なポイントだと思います。皆さんからも、こういうことを追加したほうがいいということを、是非、案を事務局にメールでお願いします。それ等を基にして、事務局で案を作っていただいて、それを次回に揉むという形になると思います。

 今後の展望と、前文も含めたサマリーというか、ここは非常に重要で、一般的に見る人はそこしか見ないのだと思うのです。専門家が見ると多くなった、低くなったというのは分かるのだけれども、ほかの人が見ても数字が並んでいるだけで、捨てられてしまう可能性があるので、一番重要なのは要旨、展望、一般の人に分かるようなエグゼクティブサマリーというか、一般の人にここを強調したいのだというところが出てくれば、非常にこれが有効になるのではないかと思うのです。エグゼクティブサマリーをここの中に入れなくてもいいのかもしれないのですが、厚労省のホームページに、それが表に出るようなところに表れれば、一般の人が見て、こういうことをやっているのだ、日本はこういうことをやっていて、こういうデータがあるのだということを分かっていただくと、やっている側としてもやりがいがあるだろうし、厚労省としても表にそういうものをアピールできるのではないかと思うので、是非よろしくお願いいたします。

 ほかにございますか。よろしいですか。予定の時間よりも少し早く終わってしまったかもしれないのですが、もしあるようでしたら最後のところでお聞きしたいと思います。その前に、皆さんのお手元に「抗微生物薬適正使用の手引き」がありますので、これについて事務局からお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐(高倉) 資料2を御覧ください。「抗微生物薬適正使用に向けた取組」として、これはアクションプランの中のもう1つの柱ですが、これに関しましては、我が国で使用されている抗菌薬のうち、90%が外来診療で処方される経口抗菌薬で、その中でも広域の抗菌薬が多いというデータがございましたので、そちらに関しまして、特に優先的に適正使用を進めなければならないということで、AMRに関する小委員会の下に設置されました作業部会におきまして、抗微生物薬適正使用の手引きの第1版を作成し、61日に公表いたしました。その内容は、外来でよく遭遇するであろう、急性気道感染症、いわゆる風邪として扱われているもの及び急性下痢症に対するものです。この資料2の中には、今日皆様方のお手元に製本された、抗微生物薬適正使用の手引きが配布されていると思いますが、その中に記載されているものを抜粋と申しますか、簡潔に示したものです。

 いずれに対しても、急性気道感染症の中で、もう少し診断を深めていくことによって、抗菌薬、抗微生物薬が必要なのか、そうでないのか。そして、必要かそうでないかをどのように判別するのか。必要な場合に使用すべき薬剤が何が推奨されるかといったものをまとめたもので、この資料2にある感冒から気道感染症の図、コンセプトの図も手引きの中に記載しておりますし、実際の冊子を手に取っていただけるとお分かりかと思いますが、フローチャート式のものを使ったり、推奨事項の所は四角に囲って分かりやすく示してあります。

 また、この手引き全体、気道感染症、急性下痢症ともに、患者さんや御家族の方に説明するための説明例、そして末尾には参考資料としてQAを示しておりますし、同じく末尾にはチェックシートを設けまして、手引きに沿った診療が現場で使われやすいようにという配慮をさせていただきながら作成したものです。この適正使用の取組について、この検討会で御報告することになっておりましたので、この場を借りて御報告させていただきました。なお、この適正使用に関する、あるいはこの手引きを用いた診療の啓発を進めなければいけませんが、こちらに関しましては、本年4月に設置されたAMR臨床リファレンスセンターと共同して様々な啓発の企画を進めている状況です。事務局からは以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。こういう形で適正使用をしていただくための手引きが出たわけですが、今後、これがどのように使われているのか、使い勝手等がどうなのかは、どこかでアンケート調査か何か、やる予定があるのですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) 実際にこの手引きにつきましては、第1版という形で今回出させていただいておりますが、これについては、よりアップグレードしていく必要があるというところは御意見を頂いておりますので、そこについても今後、AMR臨床リファレンスセンターも設置いたしましたので、そこでの議論も踏まえて進めていきたいと考えております。

○渡邉座長 ありがとうございます。これと先ほどの使用量との関係がデータとして出てくると、非常に効果を判定するのに使えるのではないかと思いますので、先ほどの皆さんの意見が出ました使用量等を、将来的には藤本先生の研究班で各地域ごと、各病院ごとにやれるような方向を考えるということを、前にサーベイランスのときに言われましたが。

○藤本構成員 ええ、それは私の研究班というよりは、AMRCRCのほうで現在RICSSの事業を引き継いで行っていただいておりまして、その中で村木先生のJACSと、もともと言っていた所のデータになりますが、各施設の個別の抗菌薬の使用量、その地域、それを作っているグループでの使用量を取りまとめる仕組みを、これは既に動いておりますので、そこを今後どう全国に大きく展開していくかというところではないかと思います。

○渡邉座長 データとして出すには何か特定な所を選んで、そこで手引きに基づいての介入をやった結果、実際に抗菌薬の使用がどうなって、その耐性率がどうなったかを出していただくと、これをやることの意義がアピールできるかと思います。そのときに先生の今やられているようなシステムがうまく利用できるかと思ったのですが、いかがですか。

○藤本構成員 データの収集の仕組みとしては、有用だろうと考えます。ただ、対策そのものはバンデルで行われることが多く、もちろん患者さんの安全が最優先ですので、それをどう評価するかが今後の作業になってくるだろうと考えます。

○渡邉座長 その辺は是非、研究班でも結構だと思いますが、全体で見ると薄まってしまっていて、なかなか実際の介入の対策というか、介入をやったときにどうなるかというのが見えにくいのではないかと思います。実際にそういうアクションがどのぐらいの効果があるかというのは、研究ベースでやられたほうが、きちんとしたデータが出るのではないかと思います。

 研究費があるかないかという、その辺の絡みも当然あるので、難しい点もあるかと思いますが、是非事務局のほうで考えていただければと思うのですが、いかがですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) 今、現状動いている研究班もありますので、その先生方と御相談させていただきたいと思います。

○境構成員 私どもの検討会は動向調査ですので、当然薬剤耐性の現状把握、あるいはリスク管理措置の成果の判定に使われると思いますが、私ども獣医臨床現場を預かるほうとしては、実際にどう使うか、どう慎重使用するかとか、そういったリスク管理措置の部分に非常に関心があるわけです。人の医療現場での成果指標の達成が数値で出ているわけです。その達成する手法としては、この適正使用の手引きがメインのリスク管理措置になるわけですか、あるいはもっと細かい指導をされるようなリスク管理措置が提案されるのでしょうか。それを私ども小動物の獣医療にも反映させていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○結核感染症課課長補佐(野田) ありがとうございます。正にこの適正使用につきましては、いろいろと難しい部分もあるかとは思っておりますが、これは一番初めにも申し上げましたが、適正使用という部分は、あくまで抗菌薬の目標について、減らすために減らすわけではありませんで、ちゃんと適切な診療をしていただいて、その結果として減ってくることはあるだろうというのが目標ではございますので、減らすために減らしているわけではないところは強調させていただきたいと思います。いずれにしても、抗菌薬でいろいろと不適切な診療もあるに違いないということも言われており、実際に風邪については抗菌薬は使わないでいいということが言われていますので、ひとつ、この手引きについては、大きなツールであろうとは思っております。もちろん、手引きについて、強制していくわけではありませんので、実際に医師の方々が、これを見ていただいて、ちゃんと診断できるという自信を持っていただき、また一方で、患者さんにとっても抗菌薬を使わなくても良い場合があることを知っていただくことで、より良い医療が進んでいく、その結果として抗菌薬を使う量も減っていくのであろうと考えております。その意味では、この手引きは大きい意味があるものと考えております。

○釜萢構成員 今、事務局から御説明がありましたが、私どももそのとおりだと思っております。まず診断が適切に行われることが大事で、その患者さんにとっての一番必要なお薬が、必要なだけきちんと提供されなければならないというところがあります。

 で、診断について、この手引きがひとつの役割を担ってくれるであろうということについては期待しておりますが、ただ一方で、この手引きによって医師の診断が、あるいは医師の処方を行う行動に対してどのような、適正な方向にこれが役に立ってくれればいいのですが、一律に使わないことを選択ということで、患者さんに不適切な影響が出てしまうと困るというところがあって、私どもはその辺りも含めて今後の動向に非常に注意をし、慎重に対応しなければいけないと考えております。今、事務局からお話があったように、現状において抗菌薬の使用に、まだ改善すべき点があると私どもも考えておりますので、それをどのようにうまくすり合わせていくかということについて、慎重に対応したいと思っております。以上です。

○渡邉座長 ありがとうございます。ネットか何かを見ていると、臨床の方が一番心配しているのは、さっき先生がおっしゃった、診断上で重症になるケースを見逃してしまった場合に、例えば、ただの風邪だと思っていたのが、細菌性の感染症で、髄膜炎を起こしてしまって、取返しのつかない状況まで行ってしまったというようなケースのときに、現場のお医者さんは、最初は風邪だと思ったから使わなかったと。どこの段階で抗菌薬をちゃんと使っていれば、そのようなケースを防げたのかということを心配している方がかなりいらっしゃる。初期の段階で適切に診断できるような診断能力の向上、それは診断手法の開発も含めて重要になるとおもいます。

 最初に質問がありましたサーベイランスの意義とアクションプランに掲げた目標値との関係も重要項目です。実際にサーベイランスだけやっていて、2020年になっても肺炎球菌、ペニシリンが40%で余り変わらないときにどうするのだと。何の意味があるのだという話になってしまう可能性もあるので、そこは先ほど話が出ていますように、対策との関係でどうなるかを見ていかないと、有効性を判断できないと思います。例えば、こういう対策をやってどうなるかというのは、2018年ぐらいにその結果が分かれば、それをもっと推進していくということにもなるわけです。もしそうではないとすると、もっと効果がある方法があるかを検討することも、この年度内にやっていかないと、なかなか目標達成まで行かないのかという気がしないでもないのですが、その辺は事務局としてはどうですか。

○結核感染症課課長補佐(野田) ありがとうございます。正に実際に施策をやり、フィードバックとしてこの結果が出てくるところはあろうかとは思います。この報告書に関しましては、一番初めに事務局から申しましたように、要旨の部分がまだ記載がありませんので、そこのところはまず、記載させていただくことがありますし、各分野の所でも今日御議論を頂きましたように、ディスカッションの部分については、より膨らませていくということで、解釈を含めていけば、そこはある程度は今後、施策が行われて、その結果数値の上下が出てきた場合には、ひとつ有用な記載になってくるとは思います。

○渡邉座長 ほかに御意見がありましたら。

○藤本構成員 ワンヘルスとして全体のことを考えること、それから抗菌薬による選択圧をある程度コントロールしていくことが1つありますが、もう1つは、感染対策をしっかりすることがあって、1つは耐性菌の拡散を防ぐこと、もう1つは、先ほどSSIですね、術後感染の所で、感染率だけ集めて何になるという話がありましたが、もちろん感染が起きればそのために抗菌薬の投与が行われる、あるいは起きる可能性がある場合には、抗菌薬の予防投与が過剰に行われる可能性もあるわけなのです。感染対策がきちんと行われるようにしていくこともアクションプランの中に盛り込まれておりますが、そういったことも、このサーベイの中でひとつ見ていく必要があるだろうと考えます。

○渡邉座長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。よろしいですか。この場で言い足りないことがありましたら、是非先ほどのように、要旨又は今後の展望等に関して、各分野からどう考えるかという点も含めまして、メールで事務局に送っていただければと思います。それを事務局がまとめて皆さんにフィードバックして、実際にどういう形で入れ込むかが今後の道筋かと思いますので、よろしくお願いいたします。

 もしなければ、時間が10分ほど早いのですが、今日の会は終わりにしたいと思いますので、事務局からお願いします。

○結核感染症課課長補佐(野田) 次回第4回の検討会につきましては、102日の14時からを予定しております。よろしくお願いします。

○渡邉座長 ありがとうございます。長時間にわたり、いろいろ皆さんからの御意見を頂きました。これを基にして、また改訂をやって、次回までに最終的な案まで持っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


(了)

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