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2019年7月31日 第54回中央最低賃金審議会 議事録

労働基準局

○日時

令和元年7月31日(水)
14:27~14:55

 

○場所

厚生労働省専用第21会議室
 

○出席者

【公益委員】

藤村会長、戎野委員、鹿住委員、中窪委員、松浦委員
 

【労働者委員】

伊藤委員、小原委員、冨田委員、平野委員、永井委員、新沼委員
 

【使用者委員】

佐久間委員、高原委員、中西委員、橋本委員、正木委員、堀内委員
 

【事務局】

坂口労働基準局長、吉永大臣官房審議官、五百旗頭賃金課長
瀧ヶ平主任中央賃金指導官、水島副主任中央賃金指導官、松本賃金課長補佐
 


○議題

(1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2)令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)


○議事

○藤村会長
 では、ただいまから第54回中央最低賃金審議会を開催いたします。本日は、権丈委員が欠席でございます。
 本日の議題は、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告と令和元年度地域別最低賃金額改定の目安についてです。本年度の地域別最低賃金額改定の目安については、目安に関する小委員会において、熱心な御議論を重ねていただき、昨日から今朝にかけての第4回小委員会において報告が取りまとめられましたので、委員長の私から報告をしたいと思います。
 今年度の目安審議については、去る7月4日の総会において諮問が行われるとともに、目安に関する小委員会に付託をされました。その後、小委員会においては、7月4日、7月22日、7月25日、7月30日までの4回にわたって会議を開催し、委員の皆様には、誠に熱心な御議論をいただきました。小委員会報告を取りまとめるべく、公益と労使各側の個別の打合わせを数回にわたり開催し、とりわけ第4回については明け方まで御議論をいただきましたが、労使の意見の一致を得ることができませんでした。しかしながら、公益委員の見解を小委員会報告として、地方最低賃金審議会に示すよう本審議会に報告することを了承いただき、御手元のとおり報告を取りまとめた次第です。では、小委員会報告を事務局に朗読していただきます。よろしくお願いします。

○水島副主任中央賃金指導官
 朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和元年7月30日。1 はじめに。令和元年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2 労働者側見解。労働者側委員は、地域別最低賃金額の最高額985円で年間2,000時間働いても、ワーキングプアと呼ばれる年収200万に届かず、「健康で文化的な最低限度の生活を営む」に足る水準としては十分とはいえないと述べた。また、最低賃金近傍で働く方には、いわゆる不本意非正規と呼ばれる方や、育児・介護など家庭の事情により時間の調整が可能な働き方をせざるを得ない方も少なくなく、かつては家計補助者中心だったが、自らが主たる生計者として家計を支えている方も増加している。最低賃金引上げの目的は、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善のみならず、労働者の生活の安定、労働力の質的向上、事業の公正な競争を確保し、国民経済の健全な発展に寄与することであり、ここ数年、過去最高額となる目安を示してきたが、消費マインドを喚起し、「国民経済の健全な発展に寄与」する水準までには至っていないと述べた。こうした状況を勘案すれば、本年示す目安によって800円以下の地域別最低賃金をなくすとともに、Aランクは1,000円を超えていくべきである。加えて、深刻さを増す人手不足を背景に、各都道府県の地域別最低賃金の水準差が、働き手流出の一因にもなっており、とりわけDランクを引き上げるべきであると主張した。地域間格差については、最高額に対する最低額の比率の改善のみならず、金額差を縮めるべきであり、あわせてランク間差も是正すべきであると主張した。また、1,000円は通過点にすぎず、ナショナルミニマムとしてふさわしい最低賃金水準について議論すべきであると主張した。さらに、中小・小規模事業者の経営環境の基盤整備にむけた政府施策が早期に確実に実施されるのは当然のこと、個人消費を喚起するためにも、最低賃金引上げのスピードを停滞させてはならないと主張した。消費税増税への対応については、これまでの消費税増税と異なり、最低賃金の改定と同時期に引き上げられることも踏まえ、消費税増税の影響が確実に見込まれる中で、最低賃金のセーフティネットとしての機能を後退させてはならず、消費税増税の影響を本年の目安にどのように勘案すべきか公労使三者で議論するべきであると主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3 使用者側見解。使用者側委員は、中小企業を取り巻く経営環境について、先行きに対する不安は根強く、中小企業の労働分配率は70%台で推移し、限られた利益の中から極めて高い割合で賃金原資を捻出しており、支払い余力は非常に乏しい状況にある。中小企業者数が直近2年間で23万者減少していることからも、中小企業の経営環境は極めて厳しい状況にあるとの認識を示した。また、従業員30人未満の企業における全国平均の影響率は、2012年度の4.9%から、2018年度は13.8%と6年間で急激に上昇しており、地域別では、神奈川が25%を超え、青森や鹿児島、大阪でも20%前後に達している。多くの地域で地域別最低賃金近傍に多くの労働者が張り付いており、最低賃金の引上げが中小企業に与える影響が極めて大きいことは明確であると述べた。「経済財政運営と改革の基本方針2019」等では、最低賃金について「より早期に全国加重平均が1,000円になることを目指す」とあり、「より早期に」との表現に、全国の中小企業から、これまで以上の引上げを求められるのではないかとの懸念や不安が噴出していると述べた。一方で、政府方針には、具体的な目標年次や引上げ率が示されていない上、中小企業の生産性向上のために思い切った支援策を講ずることが明記されていることから、機械的に最低賃金の引上げを行うということではないと主張した。また、最低賃金制度は、賃金の低廉な労働者に対する「セーフティネット」であり、賃金引上げや消費の拡大といった政策を目的としたものではないと主張した。さらに、最低賃金は、企業の経営状況に関わらず、全ての労働者にあまねく適用され、下回る場合には罰則の対象になることから、通常の賃金引上げとは性格が異なる。生産性が向上し収益が拡大した企業が賃金引上げに前向きに取り組むべきことは言うまでもないが、強制力のある最低賃金の引上げは慎重に判断すべき。生産性の向上や取引適正化への支援策によって、中小企業が自発的に賃金引上げをしやすい環境を整備すべきと主張した。近年の最低賃金は、いわゆる「時々の事情」によって、景気や経営の実態から乖離した、大幅な引上げが行われ続けてきた。これ以上、合理的な根拠を明確に示すことができない最低賃金の大幅な引上げが続けば、中小企業の事業の継続、ひいては企業の存続自体がおびやかされ、雇用や地域経済に重大な影響が及ぶことが懸念されると主張した。また、最低賃金の決定に当たっては、最低賃金法(昭和34年法律第137号)第9条に基づく労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力の三要素を総合的に表している賃金改定状況調査結果の第4表を重視した審議をすべきであり、明確な根拠に基づいた目安を提示すべきであると主張した。使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。加えて、最低賃金引上げの影響や効果について、影響率や雇用者数をはじめとする様々なデータ等を注視しつつ、継続的に検討・検証していくことが必要であると改めて、強く主張した。
 4 意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5 公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「経済財政運営と改革の基本方針2019」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」に配意し、諸般の事情を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。さらに、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や取引条件の改善をはじめとする適正な価格転嫁対策等、思い切った支援策を速やかに実行するよう、政府に対し強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金額の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 記。1 令和元年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。令和元年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。Aランク、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。金額28円。Bランク、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島。金額27円。Cランク、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡。金額26円。Dランク、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。金額26円。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、「経済財政運営と改革の基本方針2019」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ・令和元年度革新的事業活動に関する実行計画」に配意した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、1賃金改定状況調査結果第4表のうち、特にDランクの賃金上昇率が、最低賃金が時間額のみで表示されるようになった平成14年以降最大であることや、2春季賃上げ妥結状況が昨年度に引き続き2%を超える高い水準であること、3消費者物価の上昇傾向が続いており、今後も引き続き上昇することが見込まれていること、4名目GDP成長率は年率3%に及ばず、また、影響率は引き続き上昇傾向にあるものの、有効求人倍率が全ての都道府県で1倍を超え、就業者数も増加傾向にあるほか、失業率の低下や倒産件数の減少が見られるなど、最低賃金引上げが雇用情勢等に大きな影響を与えているとまでは言えないこと、5地域間格差への配慮の観点から少なくとも地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があることに加え、6最低賃金を含めた賃金の引上げにより、可処分所得の継続的な拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を継続・拡大させることや非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることを特に重視する必要があること等、様々な要素を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心を持って見守ることを要望する。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、前年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)来年度以降の審議においては、消費税増税の影響による物価変動等の状況を勘案するとともに、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備のため、今後、政府において効果的かつ思い切った支援策が講じられることを前提に、それらが適切に反映される水準について議論を行うことが必要である。
 (4)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。以上です。

○藤村会長
 どうもありがとうございました。皆様の御尽力により、先ほど御報告した小委員会報告を取りまとめることができました。重ねて御礼を申し上げます。
 なお、この報告にもありますとおり、小委員会としては、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や取引条件の改善をはじめとする適正な価格転嫁対策等、思い切った支援策を速やかに実行するよう、政府に対し強く要望させていただいておりますので、答申においても、この趣旨を盛り込みたいと考えております。御異議はございませんでしょうか。

(異議なし)

○藤村会長
 ここまでの内容について、御意見などがあればお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。橋本委員、どうぞ。

○橋本委員
 今、藤村会長からお話しいただいたことで、全て網羅されているような気がいたしております。本日明け方まで本報告の取りまとめに御尽力いただきました公益委員の皆さんには、まずもって御礼を申し上げたいと思っております。
 使用者側の立場は、先ほど御報告をいただいたとおりで、特に影響率がこれまでになく高まり、最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が増加の一途をたどっている状況下で、4年連続の大幅な引上げが中小企業の経営や地域経済に与える影響を大いに懸念しております。そうした中で、今、藤村会長からおっしゃっていただいた中小企業等に対する思い切った支援策、これを速やかに実行する必要が明確に記載されております。まさにそのとおりだと思っておりまして、これを受け、政府におかれては一連の支援策、これを早期に具現化されますことを強く私どもとして期待しております。それだけ触れさせていただきたいと思います。

○藤村会長
 わかりました。ありがとうございます。労働側委員からは何かございますか。よろしいですか。
 それでは、事務局から答申案を配付していただきたいと思います。お願いします。

(答申案配付)

○水島副主任中央賃金指導官
 朗読します。(案)。令和元年7月31日。厚生労働大臣 根本匠殿。中央最低賃金審議会 会長藤村博之。令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。令和元年7月4日に諮問のあった令和元年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
 記。1 令和元年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
 2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
 3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
 4 中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や取引条件の改善をはじめとする適正な価格転嫁対策等、思い切った支援策を速やかに実行するよう、政府に対し強く要望する。
 5 行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 別紙1及び別紙2は、先ほど読み上げましたので省略させていただきます。以上です。

○藤村会長
 どうもありがとうございます。ただいま朗読いただきました答申(案)について、御意見などはございますでしょうか。よろしいですか。ないようでしたら、この案のとおり答申を取りまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。

(異議なし)

○藤村会長
 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただき、答申を坂口労働基準局長にお渡しをしたいと思います。答申を用意していただきたいと思います。

(答申手交)

○藤村会長
 それでは、局長から一言御挨拶をいただきたいと思います。

○坂口労働基準局長
 一言、御挨拶を申し上げます。本年度の目安につきまして、ただいま答申を取りまとめていただきまして、誠にありがとうございます。
 本年度の調査審議におきましては、経済財政運営と改革の基本方針2019及び成長戦略実行計画に配意しつつ、さまざまな要素を総合的に勘案して、真摯な御議論を尽くしていただいたと承知をしております。今後、答申を私どもとしまして、各都道府県労働局に伝達をいたしまして、各地方最低賃金審議会における地域別最低賃金額の改定審議が円滑に進められるようにしてまいりたいと考えております。
 改めまして、皆様方の御尽力に心から感謝を申し上げまして、御礼の御挨拶とさせていただきます。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。

○藤村会長
 局長、どうもありがとうございました。ほかに何かございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、これをもちまして、第54回「中央最低賃金審議会」を終了いたします。本日の議事録の署名は、平野委員と堀内委員にお願いをいたします。本日は、どうもお疲れさまでございました。暑いので皆さん気をつけて。

 

(了)
<紹介先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

  代表:03-5253-1111

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