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2018年7月26日 第51回中央最低賃金審議会 議事録

労働基準局

○日時

平成30年7月26日(木)
11:30~12:00

 

○場所

厚生労働省9階省議室
 

○出席者

【公益委員】

仁田会長、戎野委員、鹿住委員、藤村委員、松浦委員
 

【労働者委員】

伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員、新沼委員、平野委員
 

【使用者委員】

佐久間委員、高橋委員、中西委員、橋本委員、増田委員
 

【事務局】

山越労働基準局長、井上大臣官房審議官、武田賃金課長、
瀧ヶ平主任中央賃金指導官、伊㔟副主任中央賃金指導官、由井賃金課長補佐、
大野賃金課長補佐、松本賃金課長補佐


○議題

(1)中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告について
(2)平成30年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)
(3)その他


○議事

○仁田会長
 それでは、ただ今から、「第51回中央最低賃金審議会」を開催いたします。本日は、中窪委員、秋田委員が御欠席です。また、新任の松浦委員が御出席ですので、御紹介をいたします。

○松浦委員
 法政大学の松浦と申します。最低賃金の影響の大きさを肝に銘じてしっかりと勉強してまいりたいと思いますので、御指導のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

○仁田会長
 それでは、本日最初の議題は、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告と平成30年度地域別最低賃金額改定の目安についてであります。本年度の地域別最低賃金額改定の目安につきましては、目安に関する小委員会において、熱心な御審議を重ねていただきました。一昨日の第4回小委員会において、報告が取りまとめられましたので、委員長の私から報告をしたいと思います。
 今年度の目安審議については、去る6月26日の総会において諮問が行われますとともに、目安に関する小委員会に付託をされました。その後、小委員会におきまして、6月26日、7月10日、7月17日、7月24日まで4回にわたって会議を開催し、委員の皆様にはまことに熱心な御議論をいただいたところでございます。小委員会報告を取りまとめるべく、公益と労使各側の個別の打ち合わせを数回にわたって開催いたしまして、とりわけ第4回においては、夜遅くまで御議論をいただきましたが、労使の意見の一致を得ることができませんでした。しかしながら、公益委員の見解を小委員会報告として地方最低賃金審議会に示すように本審議会に報告することを了承いただきました。御手元にございますとおり、報告を取りまとめた次第でございます。それでは、小委員会報告を事務局に朗読していただきます。

○伊㔟副主任中央賃金指導官
 朗読いたします。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。平成30年7月24日。1 はじめに。平成30年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2 労働者側見解。労働者側委員は、最低賃金の水準が依然として低く、地域間の格差が依然として大きいとの課題意識から、引き続き、当面目指すべき水準を意識した目安を議論すべきであり、まずは、800円以下の地域別最低賃金をなくすことが急務であると主張した。その上で、トップランナーとも言えるAランクは1,000円への到達を目指すべきであり、これらの到達時期については、経済環境等にも配慮しつつ、2020年を目途にすべきであると主張した。また、生活圏や経済圏が広範囲となり、人手不足がますます深刻化する中、隣県や都市部との格差拡大は働き手の流出に直結しており、この状況を早急に是正しなければ、地方における中小・零細企業の事業継続や発展は困難であるとの認識を述べた。さらに、地方最低賃金審議会の自主性発揮を促す観点からも、中央最低賃金審議会において最低賃金の地域間格差の是正に向けた議論を行い、ランク間差を最小限にとどめるとともに、最高額と最低額の比率の更なる改善を図っていく必要があると主張した。さらに、地域別最低賃金の最高額の水準で2,000時間働いたとしても、年収200万円に到達せず、憲法第25条及び労働基準法(昭和22年法律第49号)第1条に照らしても低水準であると述べた。また、非正規労働者の処遇改善が社会的要請であることは、配意を求められた「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)でも指摘されており、雇用形態に関わらず、働いて稼いだ賃金で家族とともに生活できる社会を実現すべきであるとともに、人材不足への対処として、高卒初任給や非正規労働者の時給を戦略的に引き上げている企業も見られることから、高卒初任給や非正規労働者における時給の実態も勘案すべきであると主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3 使用者側見解。使用者側委員は、急激な原油価格の上昇、原材料価格の増大、労働力の確保が困難な状況による人件費の高騰など、経営コストの上昇圧力が非常に強く、中小企業を取り巻く経営環境は中小企業景況調査や法人企業統計の結果をはじめ、総じて厳しい環境にあり、中小企業の経営者は賃金支払能力が乏しい中で深刻な人手不足に対処するため、実力以上の賃上げを強いられているとの認識を示した。また、最低賃金は全ての企業・使用者にあまねく適用され、最低賃金を下回る場合は罰則の対象になることから、通常の賃上げとは性格が異なるとともに、政府による各種支援策の効果は未だ十分に上がっているとは言えず、近年の大幅な引上げによる企業経営への影響を十分に考慮した審議をすべきであると主張した。さらに、「働き方改革実行計画」に記載された「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく」という政府方針は、毎年3%程度、機械的な引上げを行うことではなく、名目GDP成長率が年率3%に達しない場合は、それを考慮しながら引上げ額を議論することであり、そうでなければ、目安審議や地方最低賃金審議会で審議を行う意味はないと述べた。また、最低賃金の決定にあたっては、最低賃金法(昭和34年法律第137号)第9条に基づく労働者の生計費、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力の三要素を総合的に表している賃金改定状況調査結果の第4表を重視するとともに、明確な根拠に基づいた納得感のある目安を提示すべきであると主張した。使用者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。加えて、平成29年3月28日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度の在り方に関する全員協議会報告」(以下「平成29年全員協議会報告」という。)の3(2)及び4(3)の趣旨等を踏まえ、最低賃金引上げの影響や効果について、影響率や雇用者数をはじめとする様々なデータ等を注視しつつ、継続的に検討・検証していくことが必要であると強く主張した。
 4 意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5 公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、「働き方改革実行計画」に配意し、諸般の事情を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すように総会に報告することとした。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。さらに、政府において、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等に引き続き取り組むことを強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 記。1 平成30年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、次の表に掲げる金額とする。平成30年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安。ランクA、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪。金額27円。ランクB、茨城、栃木、富山、山梨、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島。金額26円。ランクC、北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、徳島、香川、福岡。金額25円。ランクD、青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄。金額23円。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、働き方改革実行計画に配慮した調査審議が求められたことについて特段の配慮をした上で、総合的な審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、賃金改定状況調査結果第4表の賃金上昇率や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率など賃金に関する指標が全般的に上昇していること、消費者物価がプラスに転じ、今後も引き続き上昇することが見込まれていること、名目GDP成長率は年率3%に及ばないものの平成29年は前年比で上昇していること、影響率は引き続き上昇傾向にあるものの、有効求人倍率が全ての都道府県で1倍を超え、雇用者数も増加傾向にあるほか、失業率の低下や倒産件数の減少が見られるなど、最低賃金引上げが雇用情勢等に大きな影響を与えているとまでは言えないこと、地域別最低賃金の最高額に対する最低額の比率を引き続き上昇させていく必要があることに加え、働き方改革関連法案が成立した中で、働き方改革実行計画の重要な目標である非正規雇用労働者の処遇改善が引き続き社会的に求められていることを特に重視する必要があること等、様々な要素を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、目安を十分に参酌することを強く期待する。また、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、前年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続きその時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)最低賃金引上げの影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。以上です。

○仁田会長
 ありがとうございました。皆様の御尽力によりまして、先ほど御報告申し上げましたように小委員会報告を取りまとめることができました。重ねて御礼を申し上げたいと思います。なお、この報告にもございますとおり、小委員会といたしましては、政府が中小企業・小規模事業者等の生産性向上のための支援や取引条件の改善に引き続き取り組むことなどの要望をさせていただいております。今年の答申におきましても、この趣旨を盛り込みたいと考えております。ここまでの内容につきまして、何か御意見等ございますでしょうか。

(異議なし)

〇仁田会長
 よろしゅうございますか。それでは、答申案の審議に進みたいと思います。事務局から答申案を配付してください。

(答申案配付)

○仁田会長
 それでは、答申案を朗読してください。

○伊勢副主任中央賃金指導官
 それでは、朗読いたします。(案)。平成30年7月26日。厚生労働大臣加藤勝信殿。中央最低賃金審議会会長仁田道夫。平成30年度地域別最低賃金額改定の目安について(答申)。平成30年6月26日に諮問のあった平成30年度地域別最低賃金額改定の目安について、下記のとおり答申する。
 記。1 平成30年度地域別最低賃金額改定の目安については、その金額に関し意見の一致をみるに至らなかった。
 2 地方最低賃金審議会における審議に資するため、上記目安に関する公益委員見解(別紙1)及び中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(別紙2)を地方最低賃金審議会に提示するものとする。
 3 地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることとし、同審議会において、別紙1の2に示されている公益委員の見解を十分参酌され、自主性を発揮されることを強く期待するものである。
 4 政府において、中小企業・小規模事業者の生産性向上等のための支援や、取引条件の改善等に引き続き取り組むことを強く要望する。
 5 行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 別紙1及び別紙2は、先ほど読み上げたものですので省略いたします。以上です。

○仁田会長
 ただ今の答申案につきまして、何か御意見ございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。それでは、ございませんようですので、この案のとおり答申を取りまとめたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。

(異議なし)

○仁田会長
 それでは、そのようにさせていただきたいと思います。答申を山越労働基準局長にお渡ししたいと思います。

(答申手交)

○仁田会長
 それでは、一言御挨拶をお願いいたします。

○山越労働基準局長
 本年度の目安につきまして、答申を取りまとめていただきまして、委員の皆様方にまず御礼を申し上げます。
 本年度の調査、審議に当たりましては、働き方改革実行計画に御配慮いただきまして、さまざまな要素を総合的に勘案していただき、真摯な議論を尽くして答申をいただいたと承知をしております。今後、いただきました答申につきまして、各都道府県の労働局に伝達をいたします。私どもとしては、各地方最低賃金審議会における地域別の最低賃金額の改定審議が、円滑に進められますようにしてまいりたいと考えているところでございます。
 皆様方の御尽力に心から感謝を申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。大変長時間の御審議をいただきまして、どうもありがとうございました。

○仁田会長
 どうもありがとうございます。それでは、次の議題に移りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

○大野賃金課長補佐
 それでは、私から、日本医療労働組合連合会から特定最低賃金の決定に関する申し出がありましたので、報告をさせていただきます。資料としては、本日御手元に配付した「全国特定最低賃金決定の申出」と書かれている資料になります。こちらの資料は事務局で概要として作成させていただいたものになります。
 本件は、病院を営む使用者に使用される看護師、それから、老人福祉・介護事業で直接介護に従事する介護職員に対しまして、全国規模の特定最低賃金設定の申出を行うものとなっております。
 本件の申出は「公正競争ケース」によるものとなっております。平成4年の中央最低賃金審議会公正競争ケースの検討小委員会報告におきましては、「公正競争ケース」は不当な賃金の切り下げを防止するものであり、特定最低賃金の新設の申出に当たっては、その前提として賃金の不当な切下げによる競争関係が存在していることの具体的な疎明が必要不可欠とされているところです。
 本件申出については、看護師、それから、介護職員の賃金が全産業平均や、高等学校教員と比較しても低いことを述べておりますけれども、賃金構造基本統計調査によりますと、看護師、介護職員ともに平成20年以降、賃金水準は増加傾向が続いており、賃金上昇率についても、全産業平均より高い状況が確認できるところです。このように不当な賃金切下げにより、サービス価格の競争が生じ、その結果として申出の範囲である全国規模で利用者がサービス価格の低い施設に移動する等の競争関係も確認できていないところでございます。
 本件申出に係る申出者数を見ていただきますと、看護師は約8万人であり、看護師全体の約9.5%、介護職員は約1.5万人であり、介護職全体の約0.8%と、審議会への諮問が行われることが望ましいとされている3分の1以上の合意との要件を満たしていないところです。
 以上により、本件申出については、競争関係が認められない事業等、新設に無理があると判断できることから、諮問の対象外とさせていただきたいと思います。事務局からの報告は以上です。

○仁田会長
 ただ今事務局から、特定最低賃金の申出に関する御報告をいただきました。よろしゅうございますでしょうか。

(異議なし)

○仁田会長
 それでは、ただ今の事務局の報告について了承することにいたしたいと思います。他に何かございますでしょうか。よろしいですか。それでは、以上をもちまして、「第51回中央最低賃金審議会」を終了いたしたいと思います。本日の議事録の署名につきましては、新沼委員と中西委員にお願いをしたいと思います。本日はどうもお疲れ様でございました。
 

 

(了)
<紹介先>

労働基準局賃金課
最低賃金係(内線:5532)

  代表:03-5253-1111

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