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平成30年2月28日 第2回発がん性評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成30年2月28日(水)10:00~

○場所

労働委員会会館612会議室

○議題

(1)遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定について
(2)バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査の基準について
(3)その他

○議事 

○平川化学物質評価室長補佐 本日はお忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより、「平成29年度第2回発がん性評価ワーキンググループ」を開催いたします。本日の委員の出席状況ですが、津田委員は欠席ですが、そのほかの委員は全員出席を賜っております。また、今回は特別参集者として、遺伝毒性評価ワーキンググループの清水座長、本間委員にも御出席いただいております。また、さらにオブザーバーとして、遺伝子改変動物による発がん性試験を実施していただいている日本バイオアッセイ研究センターの菅野所長、加納部長にも御出席いただいております。それでは、以下の進行は西川座長にお願いいたします。
○西川座長 議事に入る前に、事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。
○平川化学物質評価室長補佐 本日の議事と資料の確認をいたします。議事については大きく2点です。まず1点目は「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定について」、2点目が「バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査結果の判断について」です。
 資料の確認をいたします。資料については、メインテーブルに座っておられる皆さんには、2点の資料をお配りしております。傍聴者向けには1点、左上留めの資料のみとさせていただいております。順に資料の説明をさせていただきます。まず、表紙に「平成29年度第2回発がん性評価ワーキンググループ」と書いてある資料から説明いたします。1ページ、資料1-1「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験について」、3ページ、資料1-2「平成30年度の遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定(案)」、5ページ、資料2-1「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」、7ページ、資料2-2「バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査結果の判断について(案)」が資料です。次に参考資料です。9ページ、参考資料1「有害性評価小検討会発がん性評価ワーキンググループ参集者名簿」、11ページ、参考資料2-1「1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、15ページ、参考資料2-2「3-クロロ-1-プロパノールのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」、19ページ、参考資料2-3、クロロエタンの「有害性評価書」です。参考資料3ですが、資料2の「関係法令等」が37ページから43ページです。以上が共通資料です。最後に机上配布資料の参考資料4です。1ページから2ページが、平成29年度第1回発がん性評価ワーキンググループで議論をしたものの総括表です。3ページがNo.1の資料に係る修正版、5ページから13ページは前回の第1回発がん性評価ワーキンググループで議論した資料、15ページから21ページが今回の追加文献です。資料に不備等がありましたら、事務局にお知らせいただきますようにお願いいたします。
○西川座長 それでは、本日の議題に入ります。まず、議題1「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定について」です。昨年度のワーキンググループで導入を承認した経緯を事務局から説明してください。
○上月有害性調査機関査察官 資料1-1「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験について」を御覧ください。試験の導入に関しては、昨年1月の第2回発がん性評価ワーキンググループで、その導入を検討いただきました。この検討において、津田先生から粉状の発がん性評価は長期発がん性試験でも最終的に発がん性が認められることになるから、遺伝子改変動物による発がん性試験を対象とするかどうかの検討が必要であるということ、また各先生から遺伝子改変動物の選定については、被験物質に応じてrasH2マウス、p53ヘテロ欠損マウスの組合せを検討することが適当であるということ。なお、当面はrasH2マウス、p53ヘテロ欠損マウスの両方の実施が適当であるということで、その導入の承認を頂いたところです。
 対象物質の選定については、肝臓への標的性が弱く、他の臓器への標的性が高い化学物質、肝臓への標的性がなく他の臓器への標的性が疑われる化学物質、そして経口ばく露による調査が不能なガス、蒸気又は粉状の化学物質を対象とすることの御承認を頂いたところです。
 3です。昨年3月の第3回発がん性評価ワーキンググループにおいて、遺伝子改変動物を用いたがん原性試験による調査の基準を御検討いただき、御承認を頂いているところであります。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。昨年度の経緯について事務局から説明していただきましたが、そのとおりでしょうか。よろしいですね。それでは、平成30年度の候補物質について、事務局から説明をお願いいたします。
○上月有害性調査機関査察官 3ページ、資料1-2「平成30年度の遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定(案)」を御覧ください。この資料に沿って御説明してまいります。
 平成30年度の遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定について、まず経口ばく露の候補です。1、肝臓への標的性が弱く、他の臓器への標的性が高い化学物質、又は肝臓への標的性がなく、他の臓器への標的性が疑われる化学物質について、候補物質を2つ挙げています。候補物質1として、これは後ほど参考資料2-1を御覧いただきますが、「1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン」を対象物質としてはどうか。これについては、多臓器の標的性等について、平成29年度の肝中期発がん試験の結果、「肝臓に対する発がんプロモーション作用」は示されなかったが、腎臓の病理組織所見において「近位尿細管上皮の核増大」が認められているものです。
 候補物質2として、「3-クロロ-1-プロパノール」を対象物質としてはどうかということです。この多臓器への標的性については、平成28年度の肝中期発がん性試験の結果、「肝臓に対する発がんプロモーション作用」は示さなかったが、精巣の小型化が認められることから、選定の候補としているところです。
 それでは、経口ばく露の関係について、まず参考資料2-1、11ページを御覧ください。1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6トリオンの関係ですが、これは年間製造量としては5,000tから6,000tです。用途としては、粉体塗料・エポキシ樹脂改質剤・難燃プラスチック安定剤・光半導体封止樹脂原料といったもので使用されているものです。先ほど概略的に申し上げました多臓器の標的性が疑われる部分については資料の12ページの5の「結果」の所に要旨がまとめられています。
 次に15ページ、参考資料2-2の3-クロロ-1-プロパノールです。1.3で、製造・輸入量は1,000t未満ですが、用途としては医薬原料ということで、冠血管拡張剤、局所麻酔剤。現在は局所麻酔剤として使われることは減っているようです。毛髪を染める物質の原料として使用されています。多臓器発がんが疑われる関係に関しては16ページの5の「結果」の所にまとめがあります。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。経口ばく露の候補として事務局から説明があった2物質について、御質問、御意見等がございましたらお願いいたします。
○平川化学物質評価室長補佐 補足させていただきます。まず、最初の物質の1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンの遺伝毒性に関する情報です。先ほどの説明のほかに具体的な情報として、遺伝毒性情報です。エームス試験が陽性ということで、最大比活性値が2.6×10の3乗ということです。染色体異常試験も陽性ということですが、これについてもD20値が0.00013mg/mLという非常に強い数字が出ているところです。
 次の物質の、3-クロロ-1-プロパノールについても、変異原性が強いということで通達対象物質になっていますが、これについてもエームス試験が代謝活性化で陽性、比活性値についても1.5×10の3乗の陽性ということで、通達対象物質になっていることを報告させていただきます。以上です。
○西川座長 最初の物質について、長いので「TGIC」と言いますが、この中期発がん性試験で認められた腎臓近位尿細管上皮における核の増大について、前回確認したらkaryomegalyという所見に一致するということだったのですが、その発生の頻度や程度の情報はありますか。
○日本バイオアッセイ研究センター 日本バイオアッセイ研究センターの加納です。先週報告しましたこの物質について、中期発がん性試験を実施しましたが、今、御質問のありました発生頻度などの情報は持ってきておりませんで、申し訳ありません。
○西川座長 少なくとも有意には増えているのですよね。
○日本バイオアッセイ研究センター すみません、その辺も。後ほどでよろしければ連絡を取って。
○西川座長 そうですね。有意に増加していて、その程度がひどければ、腎発がん物質でそういう所見が見られるという報告もありますので、非常に重要なエビデンスかと思います。
○若林委員 TGICというのは、前回バイオアッセイさんが最初に報告をして、変異原性は強いのですけれどもGST-P positive fociは陰性であったというものですよね。
○西川座長 そうです。
○本間委員 そのときの説明として、「溶解性が低くて十分にばく露されていないのではないか」というような意見があったと思いますが、もしこれをやった場合に同じような問題が生じる可能性があるのではないかと思いますけれども。
○西川座長 それはそうですね。ただし、その点については一応解決したのではなかったですか。ちょっとよく覚えていませんが。小野寺さん、覚えていませんか。
○小野寺委員 経口投与で十分に吸収されたか不明かと・・
○本間委員 オリーブオイルか何かに混和したのではなかったですか。
○若林委員 そう書いてありますね。2ページの上の「方法」の所ですかね。
○西川座長 オリーブオイルですね。
○小川委員 少なくとも、用量相関性に体重は下がっているということであれば、100%吸収されているかということは分からないにしても、ばく露の影響は用量相関性に受けているということは言えるのかと思います。
○西川座長 ほかにいかがでしょうか。
○若林委員 エームス試験は2,640/mgだと思いますけれども、これはS9存在下ですか非存在下でですか。その情報が来ていないです。
○平川化学物質評価室長補佐 最大の数字が、TA100の -S9 で、2,640という数字が上がっています。あと、TA100の +S9 においても、用量相関性のある陽性と思われるデータということで、これは先ほど -S9よりは比活性値は低いのですが、1.0×10の3乗で、-S9 が2.6×10の3乗で、あとTA1535でも陽性で、1.4×10の2乗、同じくTA1535の +S9 で、陽性で5.4×10の2乗、あとTA98の -S9で5.6×10の2乗、同じくTA98の +S9 で2.6×10の2乗という、3菌株で±S9の両方で陽性の所見が出ているというものです。
○若林委員 分かりました。
○清水委員 染色体異常のD20が非常に低い値ですが、これは構造異常ですね。
○本間委員 本剤の構造を見ますと、エポキシが3つ付いているということで、そのエポキシが非常に強い変異原性を示しますので、特にS9に関係なく直接DNAにアタックして、変異原性を示すものと考えます。
○西川座長 それから、2つ目の試験で、3-クロロ-1-プロパノールの中期発がん性試験で認められた精巣の小型化ですけれども、これは組織学的な所見ですか、あるいは単なる肉眼所見なのでしょうか。
○平川化学物質評価室長補佐 具体的なことにつきましては場合によっては後ほど御報告させていただきたいと思います。
○西川座長 どちらにしても、発がんにつながるような大きな所見ではないので、それはともかくとして、腎臓の変化を重視したいと思います。よろしいでしょうか。
 今、腎臓のkaryomegalyの頻度や程度について確認していただいているところですが、恐らくこの記載を見ると、有意に増えているというように理解しますが。
○若林委員 2番目の物質もS9存在下で1 mg当たり1,546のエームス試験の陽性値が出ているのですね。これは98ですか100ですか。
○平川化学物質評価室長補佐 これはTA1535です。これはS9ではなくて、10%のHLIというものを加えているようです。外国の試験で。
○本間委員 Hamster Liver Inducedですかね。
○若林委員 それ以外の遺伝毒性、変異原性についての情報はないのですか。
○平川化学物質評価室長補佐 ここで挙がっているもの以外で言いますと、TA100で。
○若林委員 いや、エームス以外についてです。
○平川化学物質評価室長補佐 平成28年度の遺伝毒性評価ワーキンググループで文献情報を集めたところ、エームス試験のみでした。
○若林委員 分かりました。
○西川座長 よろしいでしょうか。2つの物質から選ぶとしたら、恐らく最初のTGICになるかと思いますが、よろしいですか。今、念のために確認しているところですが、もし反対がなければそのようにしたいと思いますが、よろしいですか。ありがとうございました。それでは、平成30年度の経口ばく露の対象物質は、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンといたします。どうもありがとうございました。
 それでは、続けて吸入ばく露の候補について、事務局から説明をお願いいたします。
○上月有害性調査機関査察官 3ページ、資料1-2を御覧ください。3の経口ばく露による調査が不能なガス、蒸気又は粉状の化学物質についてです。候補物質として、クロロエタンを1物質挙げています。多臓器の標的性等に関しては、平成29年度の第3回有害性評価小検討会において、現在IARCのGroup3ということになっているが、雄マウスではばく露群の生存率が低く、細気管支/肺胞上皮腫瘍の発生増加がある。また、雌マウスでは子宮がんの増加、肝細胞腫瘍発生の僅かな増加が認められるという報告があることから、新たな試験によって発がん性の有無を確認する必要がある旨の意見があり、選定の候補としているものです。
 19ページ、参考資料2-3に有害性評価書を付けています。3の生産・輸入量/使用量/用途を御覧ください。製造・輸入数量は年間2,000t、用途はオレフィン重合触媒原料、発泡助剤、農薬、エチルセルロース、有機金属化合物、エチル化剤等で使用されています。
 有害性評価の関係として、発がん性については25ページのキの「発がん性」の所で、吸入ばく露ということで、幾つかの評価が記載されています。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明について、御質問、御意見をお願いいたします。
○若林委員 24ページですが、この化合物はIn vitroの遺伝毒性、エームスとCHO細胞というようなものでは陽性で、In vivoではマイナスになっているのですが、エームス試験ではどれぐらいの強度であるかという情報はありますか。
○平川化学物質評価室長補佐 これ以上の情報については手元に持っておりません。ここに書かれている情報だけです。
○西川座長 補足しますと、25ページに吸入ばく露による発がん性試験の成績があります。上のほうにマウスの成績があって、実は投与群で子宮がんが好発したので、そのために死亡率が上がったということで、雌の投与群は50例中2匹しか生存していないとか、それに対して対照群では50匹の中の32匹が生きていたということです。
 結局、これは相当明らかな子宮に対する発がん性があると思うのですが、IARCは死亡率が高いということも考慮して、Group3という分類にとどめているわけです。
 ラットにおいても、26ページにあるように、皮膚の腫瘍を、特にがんだけをまとめてみると、ばく露群で増えているような傾向があって、これは早めに評価したほうがいいのかなということで、前回の有害性評価小検討会で議論になったものです。以上が補足説明ですが、何かございますでしょうか。
○小川委員 このtransgenicで行うときは、雄と雌と両方行うという意味でよろしいのですか。
○西川座長 そういうことになっていたと思います。よろしいでしょうか。それでは、吸入ばく露の対象物質は1物質ですので、平成30年度はクロロエタンを対象とすることでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、続きまして議題2、「バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査結果の判断について」に移ります。前回のワーキンググループでバイオ医薬品の有害性調査について承認した内容を、事務局から説明してください。
○上月有害性調査機関査察官 5ページの資料2-1「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」です。規制改革の要望があったものですが、1、「趣旨目的」については、バイオ医薬品の多くはタンパク質又はペプチドにより構成される高分子化合物であり、生物の遺伝子に直接作用しない可能性が高いことから、生物の遺伝子に作用して化学反応を起こしたり、その分子構造の一部を変えたりする性質(変異原性)を調べる変異原性試験では、がん原性の疑いをスクリーニングできないおそれがある。
 このため、バイオ医薬品のうち一定の要件を満たすものは、変異原性試験以外の試験による調査の基準として、OECDテストガイドラインによる標準的試験法を定める。対応については、厚生労働大臣の定める基準に基づき、労働基準局長通達において、バイオ医薬品のうち一定の要件を満たすものを対象に、変異原性試験以外の試験による調査の基準として、OECDテストガイドラインによる標準的試験法を定める。
 制定内容ですが、対象となるバイオ医薬品については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の規定に基づく医薬品審査が行われたもので、PMDAに承認申請したバイオ医薬品の中から、次に掲げる要件を満たすものとする。適用範囲としては、サイトカイン、プラスミノーゲンアクチベーター、ペプチドホルモン、組換え血漿因子、酵素、受容体又はモノクローナル抗体に限定する。分子量は2,000以上、構造は、ヒトに本来あるタンパク質又はペプチドのほか、ヒト化抗体又はヒト抗体により構成されるものとする。
 変異原性試験以外の試験による調査の基準については、がん原性試験による調査の基準によるほか、OECDテストガイドラインとして、TG408:げっ歯類における90日間反復経口投与毒性試験、TG409:非げっ歯類における90日間反復経口投与毒性試験、TG452:慢性毒性試験、TG453:慢性毒性/がん原性併合試験のいずれかを実施しているものとする。以上です。
○西川座長 前回の内容について、事務局の説明のとおりでよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、今回、検討することとした有害性調査結果の判断について事務局から説明をお願いします。
○上月有害性調査機関査察官 7ページの資料2-2です。「バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査結果の判断について(案)」です。1、試験結果の評価方法については、バイオ医薬品については、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく医薬品等審査において、PMDAに承認申請した添付資料中の試験結果に加えて、がん原性評価文書というものをもって、試験結果の評価を行うということです。がん原性評価文書というのは、PMDAに出された資料の抜粋です。
 2、有害性調査結果の判断については、まず、届出として新規化学物質製造・輸入届を見て、特性、分子式、構造式及びCAS等から、対象となるバイオ医薬品であることを確認した上で、上記、OECDテストガイドラインに基づく試験結果とPMDAに出された資料中のがん原性評価文書で、有害性調査結果の判断をする。がん原性評価文書として抜粋するのは、薬理作用、反復投与毒性試験、代謝プロファイル(実験動物とヒトとの比較)、ホルモンのかく乱作用、免疫抑制、その他の試験結果としてはどうかということです。
○西川座長 バイオ医薬品の有害性調査について、事務局から説明の判断内容について御質問、御意見をお願いいたします。
○小野寺委員 医薬品の中で、バイオ医薬品を申請したときというのは、通知からがん原性試験は求められていないのですね。評価の所で、結局、がん原性試験は実施されていないという一文があります。ですから、結局、100%に近いものが薬理作用と反復投与試験の結果から、がん原性の可能性を予測するということで、まして、医薬品の場合、今のところはないのですが、対象疾患によってはがん原性が考えられるというか、可能性が否定できないものでも承認されているものが、これからも出てくると思います。
 そうなった場合に、化学物質の評価は、ほとんどが学識経験者や、その専門家の意見を聴くと思うのですが、実際に使用されている現場等、医薬品の承認の場合は、その辺りのところは余り検討していないので、その辺りの専門家を入れて総合的に評価されるよう注意していただきたいと思います。
○上月有害性調査機関査察官 事務局から補足いたします。医薬品の関係について、専門家の意見をお伺いするならば、医薬品に対する高度な専門的な知識を持っておられる先生方でないといけないと思っております。本日、参考資料として、この学識経験者に関する関係法令の条文の抜粋を添付しております。
○奥村化学物質対策課長 41ページです。
○上月有害性調査機関査察官 法律の条文としては、労働安全衛生法の第57条の4の第4項です。厚生労働大臣は、第1項の規定による届出があった場合には、有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聴く。そして学識経験者からの意見聴取については、労働安全衛生規則第34条の15で、学識経験者から意見を聴く場合については、変異原性試験等結果検討委員候補者名簿に記載されている者から聴く、第34条の16で、高度の専門的知識を有する者のうちから委嘱して名簿を作成することととなっております。実際、ここにはPMDAの先生方も入っていただき、具体的にその辺りのところは配慮して御意見を賜るということになるのだろうと思っております。
○西川座長 よろしいでしょうか。そのほかに何かございますか。
○清水委員 今と関連するかもしれないのですが、実際に作業者がばく露することに対する規制は掛けられるのですか。
○上月有害性調査機関査察官 ばく露防止の観点から事業者に対して注意喚起していく形になります。届出の段階でも、ばく露防止の方法が届け出られますが、抗がん剤などの中にははっきり発がん性のあるものもあります。そういうものについては、取扱方法等や試験結果を踏まえた上で、更に注意喚起が必要だということであれば注意喚起すべき事項を示す形になると思います。
○若林委員 これは、製造現場だけではなくて、例えば、抗がん剤を調剤をする場も対象になるのですか。
○上月有害性調査機関査察官 はい。医療の関係では、実際に点滴剤に含ませる方、調剤などの各取扱いをする方、運ぶ方も含めて多くの方が対象になります。
○西川座長 そのほか、よろしいでしょうか。発がん性試験がない状態で、いろいろな状況証拠から発がん性を予測するわけです。判断はどのような形で出ていくものなのでしょうか。つまり、強く発がん性が疑われるとか、発がん性はないであろうとか、幾つかの段階を想定しているのかどうかです。
○上月有害性調査機関査察官 医薬品によって試験動物種が様々です。カニクイザルを使っているケースもあれば、げっ歯類を使っているケースもあり、一律に決めかねるところがあります。専門家の意見を聴いた上で、発がん性の評価を検討いただくことになると思います。
○奥村化学物質対策課長 発がん性に限らないと思います。
○上月有害性調査機関査察官 有害性の調査自体は発がん性なのですが、ケースによっては発がん性だけが問題にならないケースもあると思うので、注意喚起する上で、その辺りの関係も総合的に見た上でということです。
○西川座長 発がん性に絞っていろいろなエビデンスを総合的に評価するわけですから、結構、ケース・バイ・ケースの判断になるかと思います。なので、その辺りは難しい面もあるかと思います。
○上月有害性調査機関査察官 今回、対象にしている物質は高分子で、医薬品の種類についても限定しているので、多くは発がん性なしとなると考えますが、その評価にあたってはICH-S6に基づき発がん性が評価されております。PMDAへの届出中のその部分を抜粋いただいて、労働安全衛生法の届出を頂くということです。
○西川座長 PMDAの資料をそのまま使える場合もありますし、恐らく、もう少し検討しないといけない部分もある。多分、薬よりも作業現場のほうが、ばく露する量が多いと思います。
○小野寺委員 今、座長がおっしゃったように、PMDAとしては製品となったものに関して、使う患者と医療従事者をメインにして、いろいろなリスク、いわゆるハザードも含めて規制を掛けています。個々の化学物質となるとそれ以前の問題です。もう1つ心配なのは、PMDAは申請資料として出てきたもので、承認されたものに関しての評価なので、実際の製造現場では、まだ承認以前のものでも製造してばく露されている可能性が結構あると思います。
 その辺りのところを、こちらのほかの規制でどのように注意喚起していくのかというところを考えてもらえれば、必ずしもPMDAは承認したものだけの資料ということに限定されているところを気を付けていただければと思います。
○上月有害性調査機関査察官 労働安全衛生法の届出においては、製造又は取り扱う場合のばく露防止に関する措置内容は添付を義務付けておりますので、当然、そういうものを見た上で判断いただくことになります。
○小野寺委員 そういう資料は、こちらに取れるわけですか。
○上月有害性調査機関査察官 労働安全衛生法令で義務付けたものです。
○小野寺委員 了解しました。
○西川座長 そのほかに何かございますか。そうすると、バイオ医薬品の有害性調査の判断については、資料2-2のとおり有害性調査結果の評価や、判断を行うことを本ワーキンググループにおいて同意するということでよろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、次に移ります。議題3、「その他」について、事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 「その他」について説明する前に、日本バイオアッセイ研究センターから、先ほどの腎臓の近位尿細管上皮の核増大について御説明いただきます。
○日本バイオアッセイ研究センター それと、せっかくいろいろな先生方がおられるので、ドーズ設定のところも少し御相談させていただきます。
 まず、近位尿細管です。近位尿細管全体の形態は変化なく、上皮の腫大も目立たないのですが、10個に1個とか20個に1個の核が明らかに腫大していたということで、今、電話で確認して多倍体、要するに2nが肝臓の4nになったような大きさまでいくのかと言ったら、そのくらいまではいくと、ただ、2nと4nの2種類だけではなくて、中間の大きさもあるようだとは言っていました。
 毒性という意味では軽度な変化ですが、これが30 mg/kg群では20匹中20匹全例に確認できる。10 mg/kg、3 mg/kg、0 mg/kgは全て0で全く見られないということで、10 mg/kgと30 mg/kgの間に境目があり、30 mg/kgは100%出るということです。1つは、シアヌル酸にエポキサイドが3つ付いているもので、エポキサイドが取れてしまってシアヌル酸になると、シアヌル酸だけの毒性は腎毒性なのです。もしかすると、それを見ている可能性はなくはないのです。
 あと、どこでエポキサイドが消えてしまったのかということが問題で、そこを本間先生にお伺いしたかったのです。DMSOに溶かしてから、一度完全に溶かしてからオリーブ油に薄めて再結晶するかもしれないけれどやる方法と、実はバイオはメノウですり潰してDMSOを介さずにオリーブの懸濁でスタートしているのです。ですから、懸濁でいく限りにおいては、メチルセルロースのお水の懸濁、オリーブオイルみたいな懸濁、あとは悪あがきをしてDMSOに一度溶かす努力をして油に戻して再結晶しても仕方がないという3通りありますが、本番はどうしましょうか。
○若林委員 この間、化合物の安定性について聞いたところ、安定であるということでした。
○日本バイオアッセイ研究センター 大丈夫だったのか確認が必要です。
○若林委員 なので、DMSOによって、何か溶かすことによって変化が起きるとかいうことでは。
○日本バイオアッセイ研究センター そこはチェックします。やったことがないので、安定性はチェックしなければいけないのです。あと、エポキサイドがどこで開裂するかというのは、こういう場合はどこで起こるのでしょうか。
○本間委員 Vitroの試験で陽性ですので、培地中や、細胞中では短時間では、十分にエポキサイド活性があります。この場合は、vivoの遺伝毒性試験がないので、実際に生体内に入ってどのような挙動を取るのかというのは、現時点では分かりません。もしかすると、非常に強い活性を持つために、先にタンパク質に結合し強い毒性を示すことが考えられます。要するに、核までに達する前にエポキサイドが消失するということかもしれません。
○日本バイオアッセイ研究センター 核に対してはないという可能性もあるわけですね。
○本間委員 エームス試験や染色体異常試験の細胞毒性のほうからエポキシの関与が推測できるかもしれませんが、確かに、おっしゃるように意外と生体内に入ったときには非常に不安定なのかもしれないですね。
○日本バイオアッセイ研究センター 例のグリシドールのときには意外と安定で、全身臓器に行ってしまいました。今回、口頭ですが解剖した連中に前胃等の所見はなかったか確認したところ、肉眼レベルですが全く正常だったと言うので、そういう刺激性は余りなかったようです。
 では、安定性に気を付けて、溶かすことができれば溶かしたほうがよろしいでしょうか。それともDMSOはやめておいたほうがいいでしょうか。DMSOでエポキシドは開裂しないかは確認いたします。
○西川座長 少し検討していただく必要があると思います。
○日本バイオアッセイ研究センター はい、分かりました。それが1つと。
○若林委員 あと、懸濁は、完全にサスペンジョンですか。
○日本バイオアッセイ研究センター はい。水でやらなかった理由は、沈殿してしまうことが早かったということもあります。ただ、メチルセルロースは試していないです。一応、油とやったほうが吸収がいいという目論見でやっています。
 それと、クロロエタンなのですが、これは、幸いに1.5%やるとしても爆発限界には届いていないので、今回は安心なのですけれど、吸入の場合は経口のときの1,000 mg/kgみたいな上限はないのですか。それは設定しないのですか。
○小野寺委員 多分、可能な限りだと思います。
○日本バイオアッセイ研究センター 1.5より上になることはないと想像しているのですが、予備試験は高い濃度から確認してゆくのですけれど、余り高いと爆発するので、少し怖いというところです。
○小野寺委員 最高用量の設定根拠の中に、いわゆる実施可能性というところも含まれるので、そういう爆発のリスクを背負って、また、引火点がすごく低いので、そういうところから考えると、逆に労働者の安全性のところに危険を冒してまでデータを作るのかということです。
○日本バイオアッセイ研究センター 1.5%を守れるのかどうか。難しいときには、また相談でしょうか。
○西川座長 はい。
○日本バイオアッセイ研究センター させてください。ありがとうございました。以上です。
○西川座長 検討をお願いいたします。
○小川委員 1つ目の話について、もちろん御検討いただければ結構だと思うのですが、この1個目の試験と、全く違う条件ではないほうがよいということが私の私見です。検体の。
○西川座長 考え方は2つあり、先にやった試験の条件が不適切であれば追い追い適切なほうに変えるべきです。
○小川委員 それは、もちろん、そのとおりです。
○西川座長 あるいは、先ほどの試験と比較する意味で同じ条件でやるのか、どちらかなのです。
○小野寺委員 所見だけ見て、腎臓のKaryomegalyだけ見ていると、結局、そういう物質、この与えた物質の最終産物が影響していると思われます。初期の物ならば肝臓や消化管等、ほかの臓器に影響があるのですが、腎臓の、ましてKaryomegalyだけということは、結局、最終の排泄の所で何らかの影響で、また、壊死や再生像等、ほかの腎毒性と言われるものが見られていなくてKaryomegalyだけだとするならば、どこまで発がん性ということに寄与するのかというところも、文献調査なりをして調べておかないといけないのかと思いました。
○日本バイオアッセイ研究センター そういうこともあり、たくさん吸収させたいと思ったわけです。
○西川座長 よろしいでしょうか。
 それでは、次に移ります。「その他」について事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 参考資料4です。まず、最初の案件です。前回、平成29年の第1回発がん性評価ワーキンググループで結論が出ておりませんでした1番の物質について、追加データが出ておりますので、また改めて、本日、御評価いただければということで付けております。
 結論が出ているのは、1番のA0001、5-フルオロウラシルです。修正案ということで、追加文献等による判定理由ということで参考資料の3ページに付けており、小川委員から御意見等を頂き、この判定理由としております、文献1の信憑性に疑念かあること、文献2のラット試験の陰性結果及びその中で引用されている岩河先生の論文、これは、本日、追加で文献を付けており、15ページからの文献が岩河氏の論文です。この論文のF1マウス雌雄各群51-52匹の82週間飲水投与試験結果等を踏まえると、IARCの2B相当には当たらないのではないかという結論でいいのではないかということで、小川委員から御意見を頂いております。
 これについて、本日、配布している資料が、今回の1に係る資料の全部ですので、これを踏まえて御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○西川座長 小川委員から追加の説明がありましたら、お願いいたします。
○小川委員 信憑性という言葉は強過ぎたかと、申し訳ありません。前回からの宿題で、1個目の試験でlung tumorがどういう内容なのかということを、もう一度確認するようにということでした。残念ながら、この論文が取れなかったということで確認できておりません。
 ただ、2の文献については、2000年の試験ですが1990年のTumorの論文等などを受けて、きちんとデータを整理する必要があるということで始まった試験ということで実施されております。2の試験ではラットの試験でネガティブであり、イントロにもう1つ引用してあったのを見落としておりましたが、1991年に日本で実施されたマウスの試験がありました。それが、15ページからの論文です。
 こちらのデータとして、19ページに病理の所見があります。幾つか腫瘍等が出ておりますが、有意差が付いているものとして、Harderian glandのadenomaについて雄で有意差が付いておりますが、マージナルな発生であるということや、ドーズレスポンスがないということから、最終的には論文の中でも発がん性は否定しているということです。この2つのラットとマウスの試験で陰性であるということを考慮すると、少なくとも2以上ではないと修正させていただきたいと考えます。
○西川座長 19ページのマウスの試験で、雄の高用量群でHarderianのadenomaが、統計学的には有意に増えています。これはいかがでしょうか。
○小川委員 こちらも論文中のディスカッション等で、背景データ等と比較しても非常に発生頻度としてはわずかな増加であるということで、最終的に、この試験において5-フルオロウラシルについてはcarcinogenicityは見られなかったという結論になっており、そちらでよろしいかと。コントロールでも所見が出ております。
○西川座長 結論的にはそうなると思うのですが、取りあえず議論はしておいたほうがいいかと思い、今、聞きました。よろしいでしょうか。
 ということで、1990年のアブストラクトだけですが、その報告では、マウスに肺の腫瘍とリンパ網内系の腫瘍が増えたとする文献がありました。その後、1991年と2000年の論文のラットとマウスで行われた試験では、全く発がん性がないという結果です。総合的に、これをIARCの2B以上とするのはあり得ないという判断になりますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。それでは、さらに、前回のワーキンググループで、2-エチルブタン酸の中期発がん性試験についても、宿題事項があったと承知しております。事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 試験実施者に確認した内容を報告します。まず、1点目、肝細胞腺腫が600 mg/kg投与群の数値及び統計解析結果に入っていたかどうかということなのですが、試験実施者に確認したところ入っているということでした。
 2点目、その肝細胞腺腫の診断根拠についてはどうかという御質問があり、これについても試験実施者から回答を頂いております。「Adenomaの診断根拠についてですが、INHANDの診断基準に沿って診断をしています。増殖巣の短径は明らかに1mmを超え、実際の大きさは短径1.3mm、長径1.9mmということでした。周囲への圧排及び周囲との境界は明瞭で、一方、肝細胞索の配列は不明瞭である。本細胞巣の場合は、周囲肝細胞に比べ明らかに大型で好酸性の細胞質をもつ肝細胞の充実性増殖を示し、核小体も大型で明瞭。また、核分裂像が散見されることなどから腺腫と判断いたしました」というコメントを頂いております。以上です。
○西川座長 ただいまの説明について、何かございますか。腺腫を加えても加えなくても結果は同じだったということですね。
○平川化学物質評価室長補佐 はい。
○西川座長 GST-Pの染色上は、陽性所見としてまとめて評価したということですが、それをHEで見ると、やはり腺腫としか言いようがないという所見のようですので、これは、その報告どおりで問題ないかと思います。
 それでは、最後に事務局より今後の日程について説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 次回のワーキンググループの開催ですが、改めてこちらから連絡いたします。
○西川座長 それでは、平成29年度第2回発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。ありがとうございました。

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