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平成30年2月21日 第1回発がん性評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成30年2月21日(水)13:30~

○場所

労働委員会会館612会議室

○議題

(1)平成29年度に実施した中期発がん性試験の評価について
(2)平成30年度に実施する中期発がん性試験の物質選定について
(3)バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について
(4)既存情報による発がん性評価について
(5)その他

○議事 

○平川化学物質評価室長補佐 本日は大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成29年度第1回発がん性評価ワーキンググループを開催いたします。
 本日の委員の出席状況ですが、委員は全員、御出席を賜っております。また、今回は追加参集者といたしまして、遺伝毒性評価ワーキンググループの清水座長、本間委員に参画いただくこととしておりますが、清水委員は、本日欠席です。それでは、以下の進行は西川座長にお願いいたします。
○西川座長 議事に入る前に、事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。
○平川化学物質評価室長補佐 本日の議事次第と資料の確認をさせていただきます。本日御議論いただきますのは、4つの議題です。1つ目が「平成29年度の中期発がん性試験の結果の評価について」、2つ目が「平成30年度の中期発がん性試験の対象物質の選定について」、3つ目が「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」、4つ目が「既存情報による発がん性評価について」です。
 次に、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第に続きまして、「配布資料一覧」を付けております。本日の資料につきましては、委員と傍聴者共通の資料として、左上で留めている資料と、各委員におかれましては、紙ファイルを1冊用意いたしております。それでは、左上とじの資料から説明させていただきます。
 資料1です。「平成29年度中期発がん性試験対象物質一覧」、1枚ものです。次に、資料1-1「1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が3ページから。次に、資料1-2「カルシウム=ジホルマートのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が7ページから。資料1-3「4,α-ジクロロトルエン(4-クロロベンジルクロリド)のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が11ページから。次に、資料1-4「3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が15ページから。資料1-5「3-メチルブタン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が19ページから。資料1-6「2-エチルブタン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験」が23ページからです。
 次に次第の裏面にまいりまして、資料2-1です。「平成30年度中期発がん性試験の候補物質」、27ページから。資料2-2「遺伝毒性評価WG(3/19)での評価結果による中期発がん性試験の候補となる物質」が33ページから。次に資料3-1にまいりまして、「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」、35ページから。資料3-2、関係法令等を載せておりますものが39ページから。資料3-3、関係通達、OECDテストガイドラインに関する資料が43ページからとなっております。
 次に、資料4に移ります。資料4-1「文献調査を踏まえた平成29年度発がん性評価について」、47ページから。資料4-2「文献情報による発がん性評価物質(平成29年度第1回発がん性評価ワーキンググループ)総括表」が49ページと50ページ。資料4-3「文献による発がん性評価物質一覧(平成29年度第1回発がん性評価ワーキンググループ)」が51ページから64ページです。
 最後、資料5が「今後の予定」、65ページです。
 引き続きまして、参考資料です。参考資料1「発がん性評価ワーキンググループ参集者名簿」が本日の特別参集者も含めまして67ページから。参考資料2-1「職場で使用される化学物質の発がん性評価の加速化」が69ページ。参考資料2-2「中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の実施状況」が71ページ。参考資料2-3「ラット肝中期発がん性試験による調査の基準」が73ページから。参考資料2-4「中期発がん性試験(ラット肝中期発がん性試験)の結果の評価基準」が75、76ページです。
 次に、参考資料3「スクリーニングとして行う中期発がん性試験の対象物質の選定方法について」が77ページから。参考資料4-1「規制改革ホットラインへの提案に関する内容」が79ページと80ページ。参考資料4-2「課長通知(Q&A)」が81ページと82ページ。参考資料4-3「課長通知(廃止分)」が83ページです。参考資料5-1「職場で使用する化学物質の発がん性評価基準骨子」が85ページと86ページ。同じく別紙1が87ページ、同じく別紙2が89ページから92ページです。次に、参考資料5-2「既存情報による発がん性評価のうち、専門家による発がん性評価の基本的な考え方」が93ページから94ページとなっております。以上が委員、傍聴者共通の資料です。
 最後に参考資料5-3「評価対象物質に係る文献情報」ということで、これにつきましては委員机上配布としております。各文献番号に一致したタグを付けておりますので、御確認いただければと思います。以上、資料に不備がございましたら、事務局までお申し付けくださいますようにお願いいたします。
○西川座長 資料のほうはよろしいでしょうか。それでは本日の議題に入ります。まず議題1、平成29年度の中期発がん性試験の結果の評価について、事務局から説明をお願いいたします。
○平川化学物質評価室長補佐 それでは事務局より説明させていただきます。まず、資料1の1ページを御覧ください。
 平成29年度中期発がん性試験につきましては、6物質について実施していただいております。資料1の1番、2番の物質については日本バイオアッセイ研究センター、3番から6番につきましては、株式会社ボゾリサーチセンターに実施していただいております。この実施結果につきまして、後ほど、日本バイオアッセイ研究センター、株式会社ボゾリサーチセンターの方にメインテーブルに座っていただきまして御説明していただく予定としております。
 本日配布資料の73ページから76ページまでの内容を踏まえて、本日、陰性か陽性かの評価をしていただくこととしておりますので、よろしくお願いいたします。
○西川座長 それでは、まず1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオンの試験実施者から説明をお願いいたします。
○日本バイオアッセイ研究センター 日本バイオアッセイ研究センターの竹内と申します。よろしくお願いいたします。1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5トリアジン-2,4,6-トリオンのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果を発表させていただきます。
 資料番号が1-1、右下のページで3ページから6ページまでになります。被験物質名が非常に長いので、申し訳ございませんが、別名が1,3,5-トリスグリシジル-イソシアヌル酸、略称がTGICと申しますので、本日はTGICで述べさせていただきます。
 この物質は東京化成工業、純度が99.6%の物質を使っております。物理化学的性状等としては、白色からほとんど白色の結晶から粉末の固体です。融点が108℃。溶解性として、水にほとんど溶けません。
 製造・輸入量としましては、2015年度で5,000~6,000t。用途としましては、粉体塗料、エポキシ樹脂改質剤、難燃プラスチック安定剤、光半導体封止樹脂原料に使われているということです。
 簡単な有害性情報ですが、急性毒性としましては、ラット経口のLD50が188 mg/kgと評されています。刺激性については、眼には強い刺激性、皮膚には軽度から中等度の刺激性があるということです。遺伝毒性につきましては、強い変異原性がありということで、エームス試験陽性、染色体異常試験も陽性、変異原性指針が示されています。発がん性に関しては、情報はございません。特定の臓器の毒性としての情報もございません。
 これにつきまして中期発がん性試験を行いました。4ページをお願いいたします。方法について説明させていただきます。
 この試験は、被験物質投与群3群、媒体対照群及び陽性対照群の合計5群の構成で、1群当たり22匹のF344ラット、雄を用いまして、スタートが6週齢で行いました。起始物質としてN-ニトロソジエチルアミン、略称DENですが、200 mg/kgを腹腔内へ1回投与した後、第3週目から6週間にわたってオリーブ油に混和させた被験物質を、3 mg/kg、10 mg/kg、30 mg/kgの用量で強制経口投与しました。また、陽性対照群にはフェノバルビタールナトリウムを25 mg/kgの用量で、同じく毎日1回、強制経口投与しました。DENの処置後、第3週目の終わりに肝臓の3分の2を切除する手術を行いました。動物は投与終了日の翌日に安楽死させまして、肝臓の前腫瘍性病変であります胎盤型Glutathione S-transferase(GST-P)陽性細胞巣(計測値は直径0.2 mm以上のもの)の数及び面積を計測し、肝臓単位面積当たりの陽性細胞巣の数及び面積を算出することでプロモーション作用の有無を評価いたしました。
 本試験を実施するに当たりまして投与量の設定を用量設定試験を基に行いました。まず、被験物質投与量を20 mg/kg、40 mg/kg、60 mg/kg、80 mg/kgに設定しまして、1用量当たり5匹のラットにDENを200 mg/kg腹腔内投与した後、8週齢から毎日、4週間ですが被験物質を強制経口投与しました。その結果、死亡や一般状態の異常は特に観察されませんでしたが、一番下の20 mg/kg投与から、投与量に対応して体重増加の抑制、摂餌量の減少が認められました。投与4週間後の体重では、コントロール群を100%とした場合に一番下の20 mg/kgで91%、40 mg/kgで80%、60 mg/kgで79%、80 mg/kgで77%に抑制されています。また、全ての投与群で腎臓の相対重量の増加、肝臓の絶対重量の低下、それから、40 mg/kg以上で腎臓の絶対重量の低下と肝臓の相対重量の増加が認められました。病理組織学検査をしたところ、60 mg/kg以上で腎臓の近位尿細管上皮細胞での核の大小不同が散見されました。
 この結果を基に、本試験の高用量を最終決定する目的で、投与量を10 mg/kg、30 mg/kg、40 mg/kgに設定して、部分肝切除した1用量当たり6匹のF344ラット、雄9週齢に、部分肝切除翌日から2週間、毎日、被験物質を強制経口投与いたしました。その結果、死亡や一般状態の異常は観察されませんでしたが、全ての投与群で投与量に対応した体重増加の抑制や摂餌量の減少が見られました。特に一番上の40 mg/kgを投与した動物では、2週間後は投与開始時体重以下に減少しております、すなわち投与開始時と比べ増加しておりません。2週間投与後の体重が、対照群を100%とした場合に、10 mg/kgで96%、30 mg/kgで84%、40 mg/kgで77%と、部分肝切除後の体重減少が著しいことが分かりました。また、30 mg/kg以上の投与で腎臓、肝臓の絶対重量の低下が認められています。
 この用量設定試験の結果から本試験に用いる高用量は、動物に最小限の毒性徴候が見られるが、動物が部分肝切除及び6週間の投与に耐え得る用量として、30 mg/kgが適切であると判断しました。したがって、本試験では高用量を30 mg/kgに設定し、公比3で除して、中用量を10 mg/kg、低用量を3 mg/kgとして行いました。
 では、結果に移らせていただきます。結果は、6ページに体重のグラフ、表としまして肝臓重量の結果、それから表の2番になりますが、GST-P陽性細胞巣の結果、この3つの表を示してありますので、こちらを御覧いただきながら、お願いいたします。
 まず、被験物質投与に起因する一般状態異常は観察されませんでしたが、10 mg/kg以上の群に体重増加の抑制、それから、摂餌量の減少も認められています。また、10 mg/kg以上の群では腎臓の相対重量の増加が見られて、30 mg/kg、一番上の群では肝臓、腎臓の絶対重量の低下が認められています。ちなみに、病理組織学検査では一番上の30 mg/kg群に、予備試験のときと同じく、腎臓の近位尿細管上皮の核が大きくなっているという現象が認められています。一番重要な肝臓のGST-P陽性細胞巣ですが、単位面積当たりの数、面積ともに、被験物質投与の影響は認められていません。なお、陽性対照群、フェノバルビタールナトリウムを投与した群では、媒体対照群に比較して、摂餌量、肝臓重量、腎臓重量ともに増加、そして、肝臓のGST-P陽性細胞巣につきましては、単位面積当たりの数、面積ともに増加し、肝臓に対する発がんプロモーション作用は陽性であることを確認しております。
 以上でTGICは、本試験の条件下では肝臓に対する発がんプロモーション作用は示さないと結論いたしました。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。ただいまの説明に対して御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。
○小野寺委員 これは水に溶けないということになっていますが、オリーブオイルで混濁したということですか。。
○日本バイオアッセイ研究センター はい、溶けませんでした。
○小野寺委員 オリーブ油にも溶けない。
○日本バイオアッセイ研究センター オリーブ油に混濁の状態で投与しました。
○西川座長 病理組織変化として腎臓に、「近位尿細管上皮の核増大」とあるのですが、これは、いわゆるKaryomegaly(巨大核)に一致するものですか。
○日本バイオアッセイ研究センター はい、細胞質の変化はありませんでした。
○西川座長 なるほど。
○日本バイオアッセイ研究センター 核の形状も通常の形状でした。
○西川座長 ありがとうございました。
○若林委員 試験物質の、今から6つ話すのですが、ほかのものはほとんど、遺伝毒性は非常に弱いかほぼ陰性なのですが、この物質だけ強い遺伝毒性があると表記されていますね。だけれども、肝臓には全く影響ないということがありますが。この発がん性情報も全くないということなのですが、どのくらいの強さ、それでエームス試験はどのくらいのポテンシー、強さなのかということと、S9が必要なものなのか必要でないものかというような情報があれば教えていただきたいと。ほかはほとんどネガティブなものですから、ここだけちょっと強いものですから気になるのです。
○日本バイオアッセイ研究センター 今、資料の手持ちがございませんで申し訳ないですが。
○西川座長 結果には大きく影響しないと思いますが、もし分かりましたら、後で教えていただければと思います。
○本間委員 エームスが強いのに発がん性がないというのは理論的におかしいです。でもこれは、要するに、イニシエーション作用が見られないということでいいのですね、この試験ではプロモーションだけを見ていると。だから、発がん性がある可能性はあるということですよね。その理解でよろしいのですか。プロモーション作用はない、でもイニシエーションとしての発がん性の可能性があるという理解でよろしいですか。
○西川座長 いや、そういう理解ではなくて。一応、プロモーションを指標として発がん性を見ているわけなので、結果として発がん性がないということになります。
○本間委員 でも、エームス試験は強いわけですよね。
○西川座長 いえ。
○小野寺委員 私が一番最初に質問したのは、この物性が水に溶けないということになっていて、強制経口しても腸管を素通りしただけで、体内にどれだけ吸収されているのかなというのが1つの疑問だったのです。
○西川座長 いや、だから、そこはそうだけれども、今の話は違うわけでしょう。エームスがポジなので。
○本間委員 いや、発がん性がないことが説明できればいいのですが、ロジックとしては、突然変異を起こすものが発がん性がないわけがないです。
○西川座長 いやいや、エームスがポジでも発がん性がないものは結構あるではないですか。
○本間委員 でも、それは個別の問題です。でも、一般論としてそのようなことを言われると、我々は、遺伝毒性で何をやっているか分からなくなってしまいます。
○西川座長 いや、それは事実です、論文にもあるわけだから。
○本間委員 いや、それは。確かにケースバイケースはあると思います。今おっしゃったように、体内で吸収されなければがんは起こり得ませんから。
○西川座長 逆にエームスがポジだったら、必ず発がん性があるというのはおかしいです。
○若林委員 いやいや。でも、ここに「強い変異原性」と書いてあるから。
○西川座長 強くても同じだと思います。
○若林委員 いやいや、やはり強いものは発がん性があるものが多いと思います。
○西川座長 多いと思うのでしょう。
○若林委員 はい、弱いものに関しては発がん性があるかないかはあるかもしれませんけれども。強いと書いてあるけれども、どのくらい強いのかという。ですから、先ほどそれを。あと、S9が必要なのか、あと、どのようなDNAにアタックするのかという情報があれば非常に判断しやすいのですが、それが全くない。
○西川座長 エームスがポジであっても発がん性がないものが恐らくあると思うのですよね。
○本間委員 でも、それには、何らかの理由がないと説明がつきませんから、それを認めるわけにはいかないですよね。
○西川座長 逆に、何で100パーセントそうならなくてはいけないのかと。
○小野寺委員 ですから、本当にばく露があったのかなというのが一番気になるのです。
○本間委員 そういう説明が必要だということです。
○西川座長 だから、そこにいくとまた話がややこしくなるでしょう。
○本間委員 もともと、私の理解では、セルトランスフォーメーションで陽性だったものをここで試験にするということだったと思います。要するに、エームス陰性セルトランスフォーメーション陽性の化合物について中期発がん性試験をやるというロジックだと思ったのですが。これだけをなぜこれでやったのかがちょっと理解できない。
○西川座長 実施した理由はもちろんあります。以前に検討して。
○平川化学物質評価室長補佐 選定基準につきましては、参考資料3を御覧いただけますでしょうか。この中期発がん性試験対象物質の選定方針 ということで企画検討会の中で中期発がん性試験対象物質の選定基準として、(1)の下記1~4のいずれかに該当する物質を中期発がん性試験の対象とするということにしております。
 1が「国が委託した微生物を用いる変異原性試験結果において陽性で、比活性値が1,000 rev/mg以上となり、遺伝毒性評価ワーキンググループにおいて『強い遺伝毒性あり』と評価された物質」、2が「国が委託したBhas形質転換試験において遺伝毒性評価ワーキンググループで陽性と評価された物質」、3が「既存の遺伝毒性試験等の情報を踏まえ、遺伝毒性評価ワーキンググループにおいて、『強い遺伝毒性あり』と評価された物質(1、2を除く)」、4が「『国が強い変異原性物質』であるとして行政指導の対象としている物質」を基本選定方針としての対象として挙げております。さらに、「(1)により選定した物質の中から、予算上実施可能な物質数に絞り込みを行う。その際、製造・輸入量、性状、社会的な必要性等を考慮する」ということで、今現在、中期発がん性試験を行っていただいています。
 これまでの状況を申し上げますと、20物質でやっていただいている中で、陽性が1物質、残り19物質は陰性という結果が過去の中期発がん性試験では出ております。その状況につきましては、参考資料2-2の71ページに物質と試験結果の表がございまして、平成27年に実施いたしました1物質のみが陽性で、あとは陰性という結果となっております。
 共通的な問題点がございましたら、6物質が終わりましてから、また御議論等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○西川座長 それではこの試験、陰性ということですが、その結論についてよろしいでしょうか。
○若林委員 あともう1つ。
○西川座長 どうぞ。
○若林委員 化合物自体は安定なのですね。それが途中で分解しているとかいうようなことがなければ。
○日本バイオアッセイ研究センター それは確認しております。
○西川座長 よろしいですね。
○津田委員 これは、どうして混餌投与でなかったのでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター 混餌投与の検討はうちではやっておりません、もともと強制経口投与で行うという、試験系で決められているので。
○津田委員 これはこのシリーズで全部でですか、それともこの物質についてですか。
○日本バイオアッセイ研究センター いや、全て強制経口投与で。
○津田委員 IGでやるということ?
○日本バイオアッセイ研究センター なので、混餌は検討しておりません。
○津田委員 長期毒性は、ほとんど混餌でしょう。そんな、IG 2年間も実施したのですか?それは非常にお金も掛かるし、多くの場合、混餌投与だと思うのですけれども。
○日本バイオアッセイ研究センター ちょっと不確かで申し訳ないですけれども、ほかの所で混餌投与で、発がん性試験ではないですが、何か実験をやっているのは、私、記憶があるのです。それで何も出ていないというのが現状のようですし、これを食べるかどうかは、もちろん忌避があるかどうかも、我々、把握はしておりませんので、その辺はやってみないと分からないです。
○津田委員 もう1ついいですか。このフェノバルビタールについて、ほかのにもついてですが、混餌投与の、パーセントにするとどれぐらいになるでしょうか、1日の摂取量。例えば成獣ですと、1日30gぐらい食べるとかいう計算でやって、この1日の量をその餌の量にすると何ppmでしょうか。
○日本バイオアッセイ研究センター 混餌でやったことがないのであれなのですが。ので、確実に強制経口投与で25で。
○津田委員 いやいや、私の質問は、そのまま計算したらどうなりますかということです、何ppmぐらい。
○日本バイオアッセイ研究センター 計算したことがないので。
○津田委員 と言いますのは、フェノバルビタール、今、上がちょっと増えているけれども、今、最高用量6が8近くになっただけですね。
○日本バイオアッセイ研究センター はい。
○津田委員 普通の、このモデルでやると、0.05%混餌投与すると、フェノバルビタールの場合は、大体、コントロールの倍ぐらいになるというのが目安になるのですが、それは低いから、果たしてそれより少ない量であるかどうかという質問です。
○日本バイオアッセイ研究センター これは毎回、実験する度に値が変わりまして、大体、10のときがそれなりにありまして、次に御説明する実験では同じ用量をやっているのですが、11.7という数字も出ていまして、この試験系に関しては、なぜか陽性対照群のGST-Pの数が非常に少なかったという印象は確かにございます。
○西川座長 これは最初の試験ではなくて、既に強制経口投与でもう何回もやっていますので、混餌でないといけないみたいなことは今更と私は思いますけれども。よろしいでしょうか。それでは次に移りたいと思います。
 次のカルシウム=ジホルマートについて試験結果を説明してください。
○日本バイオアッセイ研究センター それでは7ページ、資料1-2です。カルシウム=ジホルマートのラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果を発表いたします。
 このカルシウム=ジホルマートは製造元がSigmaです。純度は99.9%です。物理化学的性状等として、白色粉末の固体です。融点が300℃超えとなっております。水への溶解性は水1L当たり172 gまで溶解します。製造・輸入量としては2015年度に9,000~10,000t。用途としては皮革用中和剤それから農薬(植物成長調整剤)等に使用されています。有害性情報として急性毒性としてラットの経口のLD50が2,650 mg/kgという文献があります。刺激性に関しては眼にはありますが、皮膚にはないと書かれていました。遺伝毒性に関してはエームス試験陰性、形質転換試験が陽性という物質です。発がん性に関しての情報はございません。反復投与等による標的臓器の毒性の情報もございません。
 方法としては先ほど申し上げた方法と一緒です。ただ当然投与量が違いますので、この物質に関しては水に溶けますので、注射用水を媒体として250 mg/kg、500 mg/kg、それから一番上が1,000 mg/kgの用量で行いました。あとは省略させていただきます。
 8ページ、この本試験を実施するに当たり、投与量設定試験を行いました。まず、被験物質の投与量を水に溶かして300 mg/kg、600 mg/kg、1,000 mg/kgそれから1,200 mg/kg。1,200 mg/kgは最大溶解した用量になりますので、1,200 mg/kgに設定して1用量当たり5匹のF344ラットにやはりDENを1回200 mg/kgを腹腔内投与した後に、8週齢から毎日4週間強制経口投与しました。その結果、死亡や一般状態の異常は認められませんでしたが、1,000 mg/kg以上の投与群で体重増加の僅かな抑制が認められています。投与4週間後の体重では媒体対照群を100%とした場合、1,000 mg/kg、1,200 mg/kgともに96%程度の増加抑制でした。また600 mg/kg以上の投与群で肝臓の絶対重量に軽微な低下が認められております。病理組織学検査をしましたが、投与に関連する病変は認められませんでした。この結果を元に、本試験の高用量を最終決定する目的で被験物質の投与量を300 mg/kg、1,000 mg/kg、1,200 mg/kgに設定しまして、部分肝切除した1用量当たり6匹のF344ラット、雄の9週齢に部分肝切除翌日から毎日、14日間、被験物質を強制経口投与しました。その結果、1,200 mg/kg、一番上の用量を投与した6匹中の3匹が投与1回目で死亡してしまいました。それから生存した動物では1,200 mg/kg、一番上の用量では体重増加の軽微な抑制が認められて、2週間投与終了後の体重は媒体対照群を100%とした場合95%でした。また1,000 mg/kg以上の投与では肝臓の絶対重量の低下が認められました。
 この用量設定試験の結果から、本試験に用いる高用量は一番上を1,000 mg/kgとしまして、以下公比2で除して、中用量を500 mg/kg、低用量を250 mg/kgとして本試験を行いました。結果に移ります。
 同様に次のページ、9ページに体重のグラフ、それから肝臓重量の表、GST-Pの表を掲載してあります。結果として、投与に起因するような一般状態の異常は観察されておりません。一番上の1,000 mg/kgに体重増加の軽微な抑制が認められています。また250 mg/kg以上の群に腎臓の相対重量の増加が認められました。病理組織学的検査で被験物質に関連した病変は観察されませんでした。肝臓のGST-P陽性細胞巣には単位面積当たりの数、面積ともに被験物質での影響は認められませんでした。なお陽性対照群では媒体対照群に比較して体重、摂餌量、肝臓重量それから腎臓重量が増加しました。また肝臓のGST-P陽性細胞巣については、単位面積当たりの数、面積が増加し、肝臓に対する発がんプロモーション作用が陽性であることを確認しております。
 以上から結論として、カルシウム=ジホルマートは本試験条件下では肝臓に対する発がんプロモーション作用を示さないとの結論です。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。それではただいまの説明について、御意見等ありましたらお願いします。
○小川委員 高用量予備試験のところで、1,200 mg/kgで死亡例が6分の3というのは、何か所見等はございますか。
○日本バイオアッセイ研究センター いきなりの死亡なので、徐々にというわけではなくて、翌日には既に状態が瀕死の状態であったという。特別に例えばよだれがあったとか、外陰部の汚染があったとか、そういうことはなくそのまま衰弱して死亡してしまった。
○西川座長 1,200 mg/kgで急に死亡したけれども、1,000 mg/kgでは体重が軽度に落ちるぐらいでということですね。大分違いますね。
○日本バイオアッセイ研究センター たかが200 mg/kgなのですが、全然状態が違います。
○西川座長 そのほかよろしいですか。ないようでしたらこの物質についても試験の結果は陰性ということにいたします。ありがとうございました。それでは試験実施者を交替いただいて次にまいります。
 次に4,α-ジクロロトルエン(4-クロロベンジルクロリド)について結果を説明してください。
○ボゾリサーチセンター ボゾリサーチセンターの黒岩です。よろしくお願いします。資料1-3です。被験物質の名称は4,α-ジクロロトルエン(4-クロロベンジルクロリド)です。含量は100%のものを使用しております。物理化学的性状は外観は固体で結晶から塊、白色からほとんど白色ということで融点が27℃ですので若干加温すると溶けるという蝋のような形状をしている物質です。水に溶けませんので、コーンオイルに溶解させて使用しています。製造量は3,000t、用途は医薬、染料、顔料中間体になっております。有害性情報ですが、概ねの致死量500 mg/kgと推定されています。細菌を用いる復帰突然変異試験では陰性、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験において陽性と判定されております。当該物質は強い変異原性ありとして行政指導対象となっている既存化学物質です。
 方法については先ほどと同様です。被験物質をコーンオイルに溶解して15 mg/kg、50 mg/kg、150 mg/kgの用量で投与しております。
 投与量の設定の理由です。こちらは2回予備試験を行って用量を決めております。まずF344の雄のラットを用いた1週間の反復経口投与による用量設定毒性試験を行いまして、この500 mg/kg投与群の5例中2例が死亡いたしました。しかし50 mg/kg及び150 mg/kg投与群では体重、血液学検査、血液化学検査、器官重量、剖検で明確な毒性が認められませんでした。引き続き部分肝切除を行ったラットを使って、2週間の用量設定毒性試験を行いまして、こちらで300 mg/kg投与群の5匹中の2例が死亡しましたが、30と100 mg/kg投与群では用量を制限するような毒性は認められませんでした。したがいまして本試験では150 mg/kgを高用量に設定し、以下、公比約3で除して、50 mg/kgと15 mg/kgを中及び低用量に設定して実施いたしました。
 結果を説明いたします。体重のグラフと肝臓重量とGST-P陽性肝細胞巣の結果が後ろに付けてありますので御覧ください。150 mg/kg投与群では被験物質投与の影響により4例が死亡しました。また体重増加抑制が150 mg/kg投与群で見られ、媒体対照群と比較して9%低いという結果でした。それから摂餌量は高値が認められております。また被験物質の肝臓への影響を示唆する変化として、50 mg/kg及び150 mg/kg投与群で肝臓重量の増加が認められています。また病理組織学的には軽微な小葉中心性の肝細胞肥大が見られております。GST-P陽性細胞巣の測定結果としては、単位面積当たりの個数と面積の両方とも統計学的に有意な低値となり、プロモーション作用を示唆する変化とは逆向きの結果になりました。フェノバルビタールを投与した陽性対照群では、陽性対照群の反応として見られる種々の変化が正しく認められまして、GST-P陽性細胞巣の個数、面積のいずれにも統計学的に有意な高値が見られましたので、本試験の妥当性が示されております。
 結論として、以上の結果から4,α-ジクロロトルエン(4-クロロベンジルクロリド)は本試験条件下において肝発がんプロモーション作用を示さないと判断しております。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。これは先ほどと同じように一番高い用量で4例死亡していますが、何か死因について分かっていることがあれば。
○ボゾリサーチセンター こちらは解剖のときに肉眼的に心臓の白色化が認められまして、恐らく心臓がターゲットになっているだろうと想像しております。
○西川座長 4例ともですか。
○ボゾリサーチセンター 少なくとも数例は心臓の白色化で、そちらは予備試験で病理組織学的に検索しましたところ、壊死と石灰沈着等が認められており、心臓がターゲットなのではないかと推察はしております。
○西川座長 壊死ですか。
○ボゾリサーチセンター はい。
○西川座長 なるほど。
○若林委員 死んでない21匹の心臓はどうですか。
○ボゾリサーチセンター 肉眼的に全く異常はありませんでした。
○若林委員 切片か何かを見たのですか。
○ボゾリサーチセンター 本試験では心臓の病理標本作成はしておりません。
○西川座長 そのほかはよろしいでしょうか。
○津田委員 スタートは何匹でしたか。
○ボゾリサーチセンター 25匹から。
○津田委員 減ったのはどういう死因ですか。全部にわたって。
○ボゾリサーチセンター 中には手術の影響によるものもあるとは思うのですが、4匹は少なくとも投薬によるものであり、そのほか肝臓に先天性の横隔膜ヘルニア結節が見られる個体については、動物福祉的な観点から手術時に安楽死させるということで実験させていただいておりますので、各群有効匹数が若干少なくなっている形になります。
○津田委員 前のときは同じ質問にヘルニアが多くて手術失敗したと言われたのですけれども。
○ボゾリサーチセンター そういう個体も当然ございます。このほか4検体やらせていただいておりますが、どの試験もヘルニアが発生して、その時点で安楽死させていますので、有効匹数が減る形になっております。
○津田委員 それで25匹のうち3、4匹ヘルニアがいたということですか。
○ボゾリサーチセンター そういうことになります。
○西川座長 有効動物数については先ほどの施設よりも少し数は多いようですので、そんな大きな問題ではないと思います。
○若林委員 先生、こちらは25匹で前のところは22匹でスタートです。
○西川座長 22匹でしたか。そうですか。
○ボゾリサーチセンター 最初の開始匹数を我々は少し多目に取らせていただいております。
○西川座長 なるほど。
○津田委員 バイオアッセイさん、ヘルニアの頻度は一緒ぐらいですか。
○日本バイオアッセイ研究センター もちろんロットによって変わりますが、今回は1割弱だと記憶しております。
○津田委員 逆に抑制作用があるというのはどういう説明に。
○ボゾリサーチセンター 肝重量が増えていますので、標本上の肝臓面積も若干大きくはなっておりまして、大体4%ぐらい大きくなっていたのですけれども、GST-P陽性巣の実際の個数と実際の面積というのですか、面積で割らない前の値というのは50%ぐらい減少していますので、分母が大きいために少なくなったというよりは、やはりこの物質自体に何らかの抑制的な作用があったのか。あるいは体重の増加抑制がかなり強いですので、そういった形の栄養学的な面での抑制みたいなものがかかったのか。そのようなことを想像しております。
○本間委員 4-クロロでない基本的なベンジルクロリドに関してはIARCでクラス2Aで発がん性物質とされていますが、そのクロロが付いただけでこんなに違うものかというのは、非常に面白いことは面白いのですけれども、これで発がん性がないという結論でよろしいことなのですか。
○西川座長 この試験に関しては発がん性があるとは言えないですね。
○本間委員 はい。
○西川座長 GST-P陽性巣が減ることについてはあんまり意味付けがされてないと思うのですけれども、ご存じの方がいればお願いいたします。小川先生、いかがですか。
○小川委員 1つは体重増加抑制がある場合は肝臓自体の増殖が抑えられる可能性はありますけれども、ただこの150 mg/kgは体重増加抑制はあるけれども、50 mg/kgのほうは余り体重増加抑制がないので、それだけではちょっと説明がつかないというところはあると思います。この時点でそれ以上のことは。
○西川座長 いやいや、仮にその体重に影響、肝臓の重量もそうですけれども、影響がなかったとしてGST-Pが減るということについては何か意味があるのですか。聞いたことはないですよね。
○小川委員 GST-P陽性巣の減少という評価の仕方で抑制物質を検討するということをしていたこともあるとは思いますけれども、まとまったデータとして本当に抑制物質だと下がるかとかということは結論づけられてはいないと思います。
○西川座長 だからこの試験系では有意に増加するということが非常に意味があることであって、減ることについてはあまり何と言うか、意味付けがなされてないというか。恐らくほとんど意味がないと理解してますけれども。
○津田委員 そのまま取れば発がんを予防しているという結果になるのだけれども、ここでは主題ではないので、別に議論しなくても。
○西川座長 そうですね、その可能性もあるのですけれども、そうした場合に本当に体重は減ってないとか、臓器重量は大丈夫かみたいなことは考えないといけないので。
○津田委員 それと見かけ上、GST-P陽性巣が減るというのは、肝臓が肥大したときに接点の面積が増えますね。そのためにかえって相対的に減ったということはあるのですが、これは体重、肝臓の重量はほとんど変わってないので、そういうことではない。やはり何らかの機序でGST-P陽性細胞巣の発生が抑制されたということだけだと思います。
○若林委員 DENでインダクションがかかっているものを下げるという意味ですよね。
○西川座長 そうです。よろしいでしょうか。それではこの試験についても陰性ということになるかと思います。
 続いて3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸の試験結果について説明をお願いいたします。
○ボゾリサーチセンター 資料1-4です。3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ですが、純度は99.9%のものを実験に使用しました。外観はこれも固体で結晶から粉末、ごくうすい黄色から黄色という外見で、これも水に溶けませんのでコーンオイルに懸濁する形で投与させていただきました。製造量、輸入量は4,000t、用途は染料の中間体です。有害性情報として、ラットの経口投与のLD50が823~1,040 mg/kgと推定されています。細菌を用いる復帰突然変異試験において陰性又は陽性の結果が示されております。ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験においては陽性と判定されています。この物質も強い変異原性ありとして行政指導対象となっている既存化学物質です。
 用量設定の理由を説明いたします。こちらも実施前に2回の用量設定試験を行いました。まず、雄のラットを用いた1週間の反復経口投与による用量設定試験を行い、400 mg/kg投与群の1例が死亡しております。しかし40 mg/kg及び130 mg/kg投与群では体重、血液学検査、血液化学検査、器官重量及び剖検において明確な毒性は認められませんでした。
 続いて部分肝切除ラットを用いた2週間の反復経口投与による用量設定毒性試験を行まして、ここでは300 mg/kg投与群の5例中の2例が死亡しました。このことからこの300 mg/kgの用量は中期発がん性試験の投与には耐えられない用量であろうと判断いたしました。一方、30 mg/kgと100 mg/kgでは明確な毒性が認められていません。したがいましてこの試験では300 mg/kgと100 mg/kgの間の200 mg/kgを高用量に設定し、以下公比約3で除して60 mg/kg及び20 mg/kgを中及び低用量に設定しました。
 結果を説明いたします。被験物質による一般状態の変化、死亡の発生は見られませんでした。200 mg/kg投与群では摂餌量の低値を伴った体重増加抑制、これは媒体対照群の-8%が見られました。200 mg/kg投与群では肝臓の絶対重量の低値も見られましたが、これは体重の低値に影響を受けた変化ではないかと考えられました。肝臓には病理組織学的変化は認められませんでした。GST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積は媒体対照群との間に差は認められませんでした。陽性対照群においては、フェノバルビタール投与によって見られる種々の変化が認められ、GST-P陽性細胞巣の数と面積のいずれにも有意差が認められまして、本試験の妥当性が示されております。
 結論として、以上の結果から3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸は本試験条件下において肝発がんプロモーション作用を示さないと判断しております。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。用量設定試験、先ほどもそうですが、肝切除をしないものとしたもの2つやっているのですけれども、大体これは同じような感じですよね。切除してもしなくても。
○ボゾリサーチセンター そうですね、ただし、この剤のように強くなることもありますので、切除したもので確認することが大事かなと思っております。
○西川座長 より丁寧にやっていただいていると思います。何かございますか。よろしいですか。それでは特に御意見ないようですので、結果は陰性ということにいたします。ありがとうございました。
 それから次に3-メチルブタン酸の試験結果について説明をお願いいたします。
○ボゾリサーチセンター ボゾの山縣です。よろしくお願いします。3-メチルブタン酸のラットを用いた強制経口投与による肝中期発がん性試験の結果を説明いたします。試験物質は3-メチルブタン酸、純度が99.8%のものを使用しております。物理化学的性状は液体で、透明、無色、臭いは不快臭がしております。溶解性は水に溶解、エーテル、アルコール、クロロホルムに溶解となっております。試験物質にはコーンオイルに溶解して投与に用いております。製造・輸入量に関しては9万t、用途は有機合成原料、医薬原料となっております。有害性情報としては、急性毒性試験、ラットの経口投与のLD50が2 mL/kg、1,037 mg/kgとなっておりまして、遺伝毒性で、Bhasで陽性となっております。試験方法は省略させていただきます。
 次に、用量設定の理由としまして、今回は、部分肝切除ラットを用いた予備試験1試験を行っております。2週間反復経口投与による用量設定試験を行っております。用量は2,000 mg/kg、600 mg/kg、200 mg/kgでやっております。2,000 mg/kgの投与群では全例が死亡しました。一方、600 mg/kg、200 mg/kgでは明確な毒性は認められませんでした。本試験の試験物質は、ラットの経口LD50が1,037 mg/kgという情報もあります。それをも加味しまして、本試験ではLD50の半量以上に相当する600 mg/kgを高用量と設定し、以下、公比3で除した200 mg/kg及び60 mg/kgを中及び低用量と設定しました。
 結果となります。21ページに、体重の推移と肝重量とGST-P陽性肝細胞巣の結果が載っておりますので、そちらを参照してください。結果としては、被験物質投与による一般状態の変化、死亡の発生は認められませんでした。600 mg/kg投与群では摂餌量の低下を伴う体重増加抑制、媒体対照群の-5%が見られました。肝重量には変化は見られず、肝臓の病理組織学的変化も認められませんでした。高用量の600 mg/kg、LD50の半量以上に相当する600 mg/kgを反復投与しても、GST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数及び面積には、媒体対照群との間に統計学的な有意差は認められませんでした。陽性対照群では、体重、摂餌、肝重量の増加、小葉中心性の肝細胞肥大などが見られまして、GST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数と面積は、いずれも媒体対照群と比べて有意な高値が見られて、本試験の妥当性が示されております。
 以上の結果から、3-メチルブタン酸は、本試験条件下において肝発がんプロモーション作用は示さないと判断いたしました。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。何かございますか。
○小野寺委員 物性的に水に解溶性なのに、何でコーンオイルにした理由はなにか。
○ボゾリサーチセンター 溶けるのですが、水に溶かす場合に分離してしまうことが多くて、コーンオイルですと分離せずに馴染むということで、今回コーンオイルを使用しております。
○西川座長 この結果として、一番高い用量の600 mg/kgの群で5%程度の体重増加抑制、あと、そのほかは毒性所見はないのですよね。ちょっと、用量が低すぎたという可能性はないのですか。
○ボゾリサーチセンター そうですね、結果として、もう少し投与できたらよかったかなというところは感じておりますが。ただし、1つの目安としては、LD50の半量ぐらいはかせげているのかとは思っておりますので。
○西川座長 そうですね、はい。よろしいでしょうか。それでは、この試験についても陰性ということになろうかと思います。ありがとうございました。
 それでは次に移ります。2-エチルブタン酸の試験結果について説明をお願いします。
○ボゾリサーチセンター 資料1-6を御覧ください。被験物質名は2-エチルブタン酸、純度は99.7%のものを使用しております。物理化学的性状としまして、液体で透明、臭いは特異臭がしております。溶解性は水に微溶、エーテル、アルコールに可溶となりまして、今回もコーンオイルに溶解して投与に使用しております。製造・輸入量及び用途としまして、製造・輸入量は9万t、用途は甘味剤溶剤となっております。有害性情報として、急性毒性の情報として、ラットの経口のLD50が2,000 mg/kg以上、遺伝毒性としまして、エームス試験が陰性、染色体異常試験が陽性、マウス小核試験が陰性、Bhas試験が陽性となっております。試験方法は今までのと変わりませんので省略いたします。
 投与量の設定の理由としまして、今回も2週間の肝切除ラットを用いた用量設定試験1試験を行っております。今回は、毒性が余り強くなさそうでして、あと、LD50が2,000 mg/kg以上となっておりましたので、高用量を2,000 mg/kgと設定して、以下600 mg/kg、200 mg/kgと設定しました。2,000 mg/kgの投与群では全例が死亡しました。200 mg/kg及び600 mg/kgでは、一般状態及び体重には明確な毒性は認められませんでしたが、600 mg/kg投与群では肝重量の増加、媒体対照群と比べて25%の増加が見られております。したがって、本試験では、肝臓に明らかな影響が認められた600 mg/kgを高用量群と設定し、以下、公比3で除した200 mg/kgと60 mg/kgを中及び低用量として設定しました。
 結果となります。体重、肝重量GST-P陽性肝細胞巣は26ページに図と表を載せております。被験物質による一般状態の変化、死亡の発生、体重変化、摂餌量の変化は、ともに見られませんでした。肝臓への被験物質の影響として示唆する変化として、60 mg/kg以上の投与群で肝重量の増加が見られ、200 mg/kg以上の投与群では軽微な肝細胞のびまん性好酸性変化、600 mg/kg投与群では、軽微から軽度な小葉中心性肝細胞肥大も見られました。また、肝細胞腺腫は600 mg/kg投与群の1例のみですが見られました。しかし、GST-P陽性肝細胞巣の単位面積当たりの個数は、600 mg/kg投与群で媒体対照群と比較して有意な低値を示し、肝発がんプロモーション作用を示す変化とは逆向きの変化でした。また、陽性対照群では、体重、摂餌、肝重量の増加、小葉中心性の肝細胞肥大などが見られ、GST-P陽性肝細胞の単位面積当たりの個数及び面積は、いずれも媒体対照群と比較して統計学的な有意な高値が見られたことから、本試験の妥当性は示されております。
 以上の結果から、2-エチルブタン酸は、本試験条件下において肝発がんプロモーション作用を示さないと判断しました。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。これ、一番高い用量の600 mg/kgの群で1例腺腫が見られていますが、これはGST-Pは陽性ですか、陰性ですか。
○ボゾリサーチセンター GST-Pは陽性でした。
○西川座長 陽性。
○ボゾリサーチセンター はい。
○西川座長 ありがとうございます。
○小野寺委員 よろしいですか、座長の質問と重なるのですが、腺腫が見られていることに関してプロモーター作用がないと言えるのですか。結局、GST-P陽性というのは腺腫の前がん病変をマーカーとして検索していて、その後に腺腫が出ているのでは。
○西川座長 これは、ですから、全く無処置の動物ではなくて、DENを打って、それから部分肝切除をしているという、そういうモデルですよね。したがって、こういうモデルで腺腫が発生し得るかどうかですよね。
○小野寺委員 では、腺腫が出ても、GST-P fociが増えてなければプロモーション作用はないということですか。
○西川座長 それがこのモデルの判断の決め手になっていると思うのです。GST-P陽性巣でも。
○若林委員 腺腫の1例に、いわゆる有意差があるかどうかというところも1つ問題になるのではないのですか。これ1例ですよね。
○西川座長 1例ですね。
○平川化学物質評価室長補佐 評価基準につきましては、参考資料2-4を御覧ください。これまで、平成26年の第1回の発がん性評価ワーキンググループで確認、合意を得た陽性の判断基準です。「投与群における肝臓の胎盤型(GST-P)陽性細胞巣の単位面積当たりの個数又は面積が、媒体対照群と比較して有意に増加し、かつ、用量反応性が認められる場合、又は単一の用量群において明らかな増加が認められる場合、陽性と判断する」ということで判断基準を示しております。検査方法については、参考1「GST-P陽性細胞巣の検査方法について」に書いております。これをずっと適用し続けているということです。
○西川座長 私もそう思っています。腺腫が出ても、それを判断基準には考慮していなかったのですよね。
○若林委員 でも、小野寺先生が言うのは、もし腺腫がたくさん出た場合に、もっと強いエビデンスではないかということを言われるわけですよね。
○小野寺委員 そうですね。それともう1つは、いわゆる、数が増えるか、グレード、大きさが増すかで両方の判定があると思うのですが。
○ボゾリサーチセンター 今回の結果に関しましては、腺腫は1で1個発生はしてはいるのですが、fociが増えているという感覚はないですし、GST-Pに染まらないタイプのfociも増えてないです。腺腫自体はGST-Pに染まるということですので、その発がんの多段階を考えたときに前がん病変が増えていませんので、この1例の腺腫は限りなく偶発変化と言うか、DENと部分肝切除をしていることに起因する腫瘍なのではないかと考えております。
○西川座長 このモデルで、被験物質を投与しない群で腺腫など出るものなのですか。
○小川委員 余り聞いたことがないですが、でも。
○津田委員 大きさはどのようなのですか。
○ボゾリサーチセンター 大きさは、病理学的診断基準としては、もう腺腫とせざるを得ないというレベルです。
○津田委員 大きさはですね。
○ボゾリサーチセンター 対物20倍で視野より大きいくらいです。
○津田委員 小葉の大きさと比べてどのくらいですか。
○ボゾリサーチセンター 小葉よりは大きいかというぐらいだと思いますが。
○津田委員 これ対照群ですね。陽性対照群、フェノバルビタール群のことですか。
○ボゾリサーチセンター いえ、フェノバルビタール群ではありません。フェノバルビタール群には時々見られるのですが、今回、高用量群に1例見られてしまって。
○西川座長 1例だけですし。
○津田委員 「陽性対照群では」と書いてあるのはどこですか。
○小川委員 両方です。上から4行目と8行目に。
○ボゾリサーチセンター 結果の4行目の「また」以降の所に書かせていただいております。
○西川座長 先ほど事務局から説明していただいたように、これはもうGST-Pだけで判断するものであって、腺腫が出た場合、複数出たような場合は少し考えないといけないと思うのですが、1例だけですので、余りこれを強い所見と考える必要はないのかと思いますが、いかがでしょうか。
○小川委員 前がん病変が全く増えていなくて、腺腫だけがぼんと発生しているというのは、IARCとかでも、がんだけがぽんと出て前がん病変が全くないという場合、特に非常にまれな腫瘍でしたらまた別なのですが、よくある腫瘍で前がん病変とか連続性がないものに関しては偶発性で取るという方向だとは思います。
○西川座長 そうですね、はい。
○小川委員 ですので、ちょっと。
○津田委員 腺腫は、前がん病変ですよ。腺腫は全部がんになるとは限らないです。
○小川委員 はい。
○津田委員 たくさん出てもがんになるのは僅か、ほんの、勘定したことはありませんが少しなのですよ。ですから、GST-P陽性巣と腺腫と、そういう一連の変化が出てくることであって、GST-P陽性巣と染まる腺腫らしいのが出ても、それを別に問題にすることは全然ないです、そのまま測れる、測って有意差を見るということだけで問題ないと思います。ここの腺腫ががんになるという約束は何もありません。
○小野寺委員 ということは、腺腫と診断することはないということですね。
○津田委員 いや、一応、それでフィンションで、H&Eで。
○小野寺委員 意味がないということですね。
○西川座長 いや、いや。
○津田委員 H&Eで腺腫と言うからには言わざるを得ない。ですが、これはそれもGST-P陽性にちゃんと染まってくる前がん病変の1つだから、入ったということで、それを腺腫だからそれを腫瘍だというふうに取ってやると、肝発がんでは正しい予想ではないということになります。
○西川座長 ちなみに、この腺腫のGST-P、染色から、これは病理検査が含まれていないですよね。
○ボゾリサーチセンター そうですね、外しているかと思いますが。
○西川座長 外していますよね。
○ボゾリサーチセンター はい、値がおかしくなると思いますので外していると思います。
○津田委員 外しているのですか。
○ボゾリサーチセンター ちょっと確認します。
○津田委員 外す必要はないです。それも病変の中に入るわけですから、陽性巣として入れるべきです。陽性病変として。
○ボゾリサーチセンター ちょっと今すぐ確認できませんので、申し訳ありません。後ほど、打合せするということで。
○西川座長 そうすると、面積などかなり分厚くなりませんか。
○津田委員 多少はそういうことは起こります。ですが、20匹もいるから、1匹いてもそれほど影響しない。
○ボゾリサーチセンター まとめている可能性もありますので、ちょっと分かりません。
○津田委員 これ、肝生検していますか。
○ボゾリサーチセンター はい。
○津田委員 腺腫のタイプ。
○ボゾリサーチセンター はい。
○西川座長 でしたら、加えたものと加えない場合と両方やってみて、多分ないと思うので、念のため確認をお願いします。
○ボゾリサーチセンター 分かりました。後ほど提出させていただきます。
○西川座長 はい。
○平川化学物質評価室長補佐 来週ワーキングがありますけれど、そのときまでに御報告をいただくということで。
○西川座長 そうですね。
○平川化学物質評価室長補佐 御報告をいただいたものを、こちらで発表させていただくということでよろしいですか。
○西川座長 よろしくお願いします。ほかによろしいですか。ないようでしたら、この物質につきましても、試験の結果は陰性ということにいたします。ありがとうございました。
 それでは次に移ります。議題2「平成30年度の中期発がん性試験の対象物質の選定について」、事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 資料は27ページからになります。よろしくお願いします。
 資料2-1「平成30年度中期発がん性試験の候補物質」ということで、来年度6物質を予定するものの候補ということでお示ししております。これにつきましては、平成29年度の中期発がん性試験候補物質から、今回実施したものを網掛けしたものの資料という形で本日作っております。したがいまして、今回、実施した分も一応、リストとしては入っておりますが、灰色の網掛けをし、更に番号は抜いておりますので、それ以外のものが候補物質ということになります。候補物質の選定につきましては、この後、企画検討会においても御意見をいただくこととしております。基本的には数量が優先されるかと思いますが、その結果を再整理し、また改めてワーキングの各委員の皆様にお諮りさせていただくというものです。この資料2-1はそのような位置付けです。
 次に資料2-2です。中期発がん性試験の対象候補としては、Bhas42形質転換試験で陽性のもの、あと、微生物を用いる変異原性試験において、強い変異原性が認められたものがなるということですので、今後開催されるの遺伝毒性評価ワーキンググループの結果で候補に入ってまいりまして、企画検討会で検討をしていくことになります。企画検討会後、また各委員の皆様にお諮りさせていただくというものですので、よろしく御承知のほどお願いします。
○西川座長 ただいまの説明について、御質問、御意見等をお願いします。今、説明がありましたように、試験物質は、今後、企画検討会における意見を頂いてから最終的に決めるということです。現時点で、特にこれについて実施したほうがいいという御意見がありましたらお願いします。よろしいですね。それでは、事務局で企画検討会に諮った後に最終案を整理し、各委員に確認していただくということで進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 次に移ります。議題3「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」を、事務局から説明をお願いします。
○上月有害性調査機関査察官 それでは、資料3-1の35ページを御覧ください。「バイオテクノロジー応用医薬品の有害性調査について」という表題にしているものです。まず、この議題を上げた経緯です。1.規制改革ホットラインへの提案があったことに対して検討したものです。平成29年、昨年の3月、内閣府の規制改革ホットラインに対して内外の製薬業界3団体、具体的には、欧州製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、日本製薬工業協会ですが、この3団体から、新規化学物質の製造又は輸入の届出において、バイオテクノロジー応用医薬品については、変異原性試験又はがん原性試験に代わり、医薬品審査等におけるPMDAの審査報告書等を認めるべきとの提案が寄せられたものです。
 2です。厚生労働省では、これら製薬団体から意見の聴取をしております。(1)提案主体の意見です。ア.バイオ医薬品の多くは、生体内にあるタンパク質又はペプチドにより構成される高分子化合物であり、生物の遺伝子に直接作用しない。このため、生物の遺伝子に作用して変異原性を調べる試験は不適切である。イ.バイオ医薬品のうち、抗がん剤には、慢性毒性試験の結果、発がん性が明らかであるものがある。発がん性が明らかであるのに、陰性結果が出る変異原性試験の実施を求めることは不合理である。ウ.医薬品規制調和国際会議、ICHのガイドラインでは、変異原性試験を含む遺伝毒性試験は不要としている。欧米各国では医薬品の審査以外に規制はない。日本の労働安全衛生法が求める変異原性試験で、欧米各国における医薬品の審査が中断する問題がある。こういう問題があるので、変異原性試験又はがん原性試験に代わりPMDAの審査報告書等も認めるべきである、こういう意見が主にあったところです。
 (2)厚生労働省では、このような意見を踏まえ、現行制度の枠組みによって何ができるかを整理しております。ア.有害性の調査については、変異原性試験、化学物質のがん原性に関し、変異原性試験と同等以上の知見を得ることができる試験又はがん原性試験のうち、いずれかの試験を行うとされております。また、これら試験については、厚生労働大臣の定める基準に従って行うとされております。下の枠組みの所です。厚生労働大臣の定める基準には、変異原性試験による調査基準が規定されております。また、変異原性試験以外の試験による調査の基準は、厚生労働省労働基準局長が定めると規定しております。そして、厚生労働省労働基準局長は、現時点では、がん原性試験による調査の基準を定めているところです。
 36ページです。このような枠組みの中で、何ができるかということでまとめているのが1から3です。1の現行制度では、試験及びその調査の基準を定めることが必要であり、PMDAの審査報告書等を認めるとの意見への対応はできないということ。2のバイオ医薬品には生物の遺伝子に作用するものもあるから、対象は限定すべきではないかということ。3の変異原性試験と同等以上の知見を得ることができる試験、また、その調査の基準を定めることができるのかということ、このようなことを検討する必要がある。これらについては、後ほど、下記(3)で説明をさせていただきます。
 イ.次に、現行制度では有害性の調査を必要としない場合があるので、これも整理しております。一つ目は労働者が新規化学物質にさらされるおそれがない旨の厚生労働大臣の確認がある場合です。これについては、設備等が十分に機密性を持っている等々、個別申請が可能な場合があると考えますが、これは本件の提案への対応とはならないと考えております。二つめは2は新規化学物質の有害性がない旨の厚生労働大臣の確認ということです。これについては、提案主体から、発がん性が明らかである場合に、変異原性試験の実施を求めることになるのは不合理という意見があって、これも提案への対応にならないと考えております。
 (3)今回の提案に対する対応の基本的な考え方(案)です。ア.対象となるバイオ医薬品ということで、生物の遺伝子に直接作用しないものに限定してはどうか。適用範囲は、バイオ医薬品にはいろいろなものがあるから、適用範囲は限定列挙することとしてはどうか。また、増殖因子や構造がはっきりしていない、特定されないものは対象から除外をすることとしてはどうか。次に分子量です。低分子のものは遺伝子に作用する変異原性試験実施ができるということですので、高分子に限定することとしてはどうか。最後に構造です。バイオ医薬品にはいろいろなもの(昆虫又は植物等々からできているものがある)がありますが、ヒトに本来あるタンパク質、又はペプチドのほかは限定的な構成に限定すべきではないか。これら、限定したバイオ医薬品について、変異原性試験以外の試験による調査の基準については、現在、OECDテストガイドラインとの関係では国際的整合性を図ることとしておりますので、今回のバイオ医薬品に関しては、該当となるOECDテストガイドラインを限定列挙してはどうかということです。
 37ページ、4検討要請項目への対応案です。(1)対応案の骨子です。厚生労働大臣の定める基準に基づいて、厚生労働省労働基準局長通達で、バイオ医薬品のうち一定の要件を満たすものを対象に、変異原性試験以外の試験による調査の基準として、対象となるOECDテストガイドラインを標準的試験法として定めることとしてはどうか。
 具体的には(2)対応案の内容です。ア.対象となるバイオ医薬品は、旧薬事法ですが、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づく医薬品審査等において、承認申請がなされたバイオ医薬品のうち、次の要件を満たすものとしてはどうか。適用範囲は、サイトカイン、プラスミノーゲンアクチベーター、ペプチドホルモン、組換え血漿因子、酵素、受容体又はモノクローナル抗体に限定してはどうか。分子量は、数平均分子量は2,000以上ということにしたらどうか。構造は、ヒトに本来あるタンパク質又はペプチドのほかは、ヒト化した抗体又はヒト抗体により構成されるものに限定してはどうか。
 イ.変異原性試験以外の試験による調査の基準をどうするかです。現在、がん原性試験による調査の基準を定めていますが、それによるほか、次のいずれかのOECDテストガイドラインを調査の基準としてはどうか。TG408、げっ歯類における90日間反復経口投与毒性試験、TG409、非げっ歯類における90日間反復経口投与毒性試験、TG452、慢性毒性試験、TG453、慢性毒性試験/がん原性併合試験、こういうことに限定してはどうか。
 ウ.実際に実施をするとなると、学識経験者からの意見聴取等については、有害性調査結果の判断基準等を御検討いただくことになるということです。以上です。
○西川座長 ありがとうございました。バイオ医薬品について、生物の遺伝子に直接作用はしないものに限定してOECDテストガイドラインの毒性試験を導入することについて、皆様から御意見をお願いします。
○若林委員 教えていただきたいのですが、37ページが対応案の内容になるわけですね。この適用範囲の所に「酵素」とあります。この酵素とバイオ医薬品のものに関して、ある酵素に関しては、「生物の遺伝子に作用を及ぼすような酵素」とあります。それの扱いはどうなのでしょうか。例えば我々が使っていたような酵素で、DNAにモノADPリボシル化するといった、明らかに酵素があるものを介してDNAをアタックして遺伝毒性を示すものが幾つか出てくると思うのです。そうすると、それらのものは酵素なのですが、酵素というのは遺伝子に直接作用しないような酵素という定義になっているのですか。
○上月有害性調査機関査察官 44ページを御覧ください。バイオテクノロジー応用医薬品は非常に範疇が広いので、ここでは厚生労働省の医薬食品局審査管理課長の通知を抜粋しております。適用範囲ということで、ここに幾つか例示として挙がっているのですが、今、若林委員からありましたように、生物活性は基本的に薬ですからあります。例えば、今アンダーラインを引いておりますが、増殖因子などは正にプロモーション作用を持っているものなので、対象にしていません。もう1つは、ホルモンというのも多種多様の働きかけをするものですが、ペプチドというある程度の大きさに限定したものにしています。
 お尋ねの酵素については、遺伝子作用として2,000という分子数で線引きしています。
○若林委員 2,000以上ですね。
○上月有害性調査機関査察官 そうです。
○若林委員 2,000以上のものでもあります。でも、医薬品としてはないですよね。
○上月有害性調査機関査察官 はい。
○若林委員 医薬品としてはないから、その枠の中だったらいいかもしれないけれども、遺伝毒性というのは低分子のを今までずっとやってきて、DNAにアタックするようなものというようになってきて、タンパクはそういうものにアタックしないからということですが。
○上月有害性調査機関査察官 今回の対象は、まず医薬品であることを前提にしていて、その中のバイオテクノロジー応用医薬品であって、更に絞り込んでいます。
○若林委員 そういう限定でやっていれば、絶対に入ってこないと思いますが、酵素全体という話になってしまうと入ってきます。確かに、増殖因子やホルモンはみんなプロモーターですからね。
○上月有害性調査機関査察官 はい。
○本間委員 これは変異原性の問題ではなくて、ほかの毒性の問題ということです。変異原性以外のものというのは先ほど最後にあったようなTG408の反復経口投与試験等を実施するということですね。
○上月有害性調査機関査察官 変異原性試験をしなくていいということです。
○本間委員 しなくていいというか、する必要がないということですか。
○上月有害性調査機関査察官 そうです。
○本間委員 ですから、代わりになるというわけでもなく、変異原性はもうなしで。
○上月有害性調査機関査察官 変異原性試験、同等以上の試験、がん原性試験の3つのうち、一つを実施いただくということです。
○本間委員 企業は変異原性試験を選択することも可能なのですか。
○上月有害性調査機関査察官 はい。しかし、企業は変異原性試験は有用でないということで、医薬品の審査では実施していないわけです。発がん性を評価できる特定の試験を実施しているならば変異原性試験はやらなくていいということです。
○本間委員 分かりました。医薬の段階でこれをやっているからいいということですね。余計なことをやるわけではないと。
○上月有害性調査機関査察官 はい。
○小川委員 すみません、私はまだよく分からないのですが、医薬品の申請をされているものと同じものに関して、作業環境等の安全性という意味でということですか。
○上月有害性調査機関査察官 はい。安衛法では、製造又はそれを取り扱う労働者の安全確保のために、現行は変異原性試験か2年間試験であるがん原性試験の2つしか選択肢がなかった。変異原性試験が機能していないということで、機能していないものをするのは非常に不合理だという意見があって、発がん性のスクリーニングということで、一定の試験を認めるという趣旨です。
○小川委員 変異原性試験の代わりに、37ページのイのいずれかをやればよろしいということですか。
○上月有害性調査機関査察官 そうです。
○西川座長 変異原性試験というのは、要するにエームス試験ですね。染色体異常試験はどうですか。
○上月有害性調査機関査察官 現行、染色体異常試験は選択肢の中に入っていない。
○西川座長 多分、問題になるのは、医薬品というのは実際に使う用量から余りかけ離れた量を試験に使っていないということなのです。作業現場で想定外の大量ばく露があった場合にどうなるかということは、議論しなければいけないと思うのです。
○上月有害性調査機関査察官 発がん性が本当にあるかどうかとなれば、長期試験をするしかなく、かつ投与量も職場環境中のことを考えると相当大きくなる。これはあくまでも、発がん性のスクリーニングであるということです。ばく露量等を踏まえた有害性調査結果の判断基準等については、御検討いただかなければならないところです。化審法などでは監視化学物質への該当する判定等に係る判定基準があって、スクリーニング特性の関係では、細菌復帰突然変異試験について比活性値おおむね1,000ということで、安衛法と同じようなものが含まれています。反復投与毒性試験についてもNOAEL及び発現した毒性の程度を3段として見ているのですが、職場の環境を考えると、少しでも病理組織学的変化があったような場合は黒にするとか、そういった工夫が必要ではないかと考えております。
○小野寺委員 私も理解できていないのですが、37ページの対象となる医薬品の中で、適用範囲がサイトカインやプラスミノーゲンアクチベーター、ペプチドホルモン、モノクローナル抗体等あるのですが、構造がヒトに本来あるタンパク質又はペプチドのほかということは、これも含むわけですね。ヒト化させてあるものを、動物試験で何を求めようとしているのですか。
○上月有害性調査機関査察官 1つの例としては、適用範囲の中でモノクローナル抗体というものがあります。欧米、日本で抗がん剤開発で熾烈な競争がありますが、レセプターに形をそろえるために構造を少し変えているということまでは許容するということです。ただ、人間ではない、ネズミ等のものではなく、ヒト化、ヒト抗体まででしょうという制限です。
○小野寺委員 確かに、生物学的活性は高いと思うのですが、その中で例えばこういうものをヒトに投与する量や、いわゆる有害性の量はマイクロの量で使用するわけですね。グラムやキロといった莫大な量を作ったり使用したりしないわけです。また、製造するときの管理は非常に厳重にしていて、コンベのところでは行わないような厳重にやっている所で、労働者に対する影響の何を見たいのでしょうか。例えば、この中でヒトと同等のタンパクやペプチドが生体内にあるものがどういう毒性を示すか、そのものは関係ないけれども、それを修飾しているものか、核酸などでもいろいろなものがありますが、そのもの自体はペプチドで、タンパクとアミノ酸でできていて、ヒトの構成成分と同じということで、全然そういうものはないのですが、それにアンカーやリンカーといった化学修飾をした場合に、その化学物質がいろいろな作用が起こるのではないかという懸念はしているわけです。ただ、そういう懸念にしても、量が非常に微量であるということと、動物試験で今まで低分子の化学合成物質を検定するような試験法で、果たして作用を検知できるかどうか。もし、検知してあったとしても、それが何トン、何百キロレベルの、ヒトが製造される量、ばく露される量からかけ離れた天文的な量で何かが起こるとなったときには、どういう対処をするのか。また、今、現実的にこういうバイオ医薬品の中で労働者に対して危険だと言われている情報や、規制をしなければならないような事例は何があるのでしょうか。
○上月有害性調査機関査察官 欧米では、医薬は医薬の1つのカテゴリーで規制が掛かっていて、ほかに規制がないのですが、日本は2つ掛かっている。製薬関係の方々と話しているときに説明しているのですが、製造するときは本当に何が起こるか分からない。定常作業では問題がないが、非定常作業では、製造ラインで噴出して口の中に大量に入ったとか、肺から吸い込んだといったことも起こっている。製造又は取り扱う労働者の安全を考えた上では、やはり何らかの措置は必要ではないかと考えます。
○西川座長 この試験を実施していただくわけではなくて、PMDAの審査報告書を参考にして評価するということですか。
○上月有害性調査機関査察官 PMDAの審査報告書に付いている試験の1つを、届出いただくということです。
○西川座長 そういうことですね。
○上月有害性調査機関査察官 研究開発段階のバイオ医薬品はグラム単位でも何千万の経費がかかり、かつ貴重であるのに、機能しない変異原性試験に使用するのは、不合理であるから、何らかの対応を考えるという趣旨です。
○西川座長 その趣旨はよく分かるのですが、バイオ医薬品の長期は試験はほとんどないですね。実際に慢性毒性とか、ましてはがん原性はほとんどないのです。そうすると使えるのは90日試験ぐらいですが、90日もないものもありますね。ということで、実際問題使える試験はかなり限られるような気がするのです。
○上月有害性調査機関査察官 バイオ医薬品に関してはこの程度の試験はやっている。実際は、カニクイザルを使う試験が多いようです。
○西川座長 何となく分かりました。やはり、問題は試験に使用した投与量は相当少ないですね。
○上月有害性調査機関査察官 薬効を求める組織以外で、何が起こるかということで、用量的には想定されるよりは多く投与している。抗がん剤などは2次発がんしているという事例もたくさんあるようです。
○西川座長 言いたいのは、いろいろな毒性は出ると思うのですが、発がんするかどうかまでは分からないわけですね。そこは議論しないといけないと思うのです。今、問題にしているのは発がん性に関することですよね。
○小野寺委員 今、発がん性のことなので、例えばの話ですが、ヒトでの正常ホルモンのエストロゲンホルモンも、長期で大量にやれば発がんしてきます。今までのエビデンスで生化学的にとか薬理学的にエビデンスとしてあるものは、甲状腺のホルモン、成長ホルモン、増殖性ホルモンなどは何らかの細胞に、ここにも書いてあるようにGrowth factorのあるものは、作用のあるものはがんのPotentialityがあると。ただし、それも生体の中に正常の範囲であるもので、医薬品で使うときにもヒトの正常範囲を超えない程度でしか使わないわけです。そうなったときに、本当にそういうものが工場や労働者、製造者が製造過程において高量・高濃度ばく露され危険だとするというのですが、どうやって物質を選んで、どこまでやるのかというのが非常に難しいかと。もし、それがあったところで、それを規制というよりも現実の、現場からいけば先ほども言いましたように非常に細菌学、微生物学的に清浄に管理されている所で製造・保管されているわけです。そうなったときに、本当にその意味合いからしてどこまでのハザードとして求めて、どこまでのリスクとして評価すべきなのか、まだぴんとこないところがあるのです。もし、具体的にこういう物質が考えられるというものがあれば考えられるのですが、例えばペプチドにしても、ヒトの体内に入ればすぐ分解されてしまって、何の影響もなくなる。むしろ、そちらの心配のほうが医薬品では大きいので。
○上月有害性調査機関査察官 関係法令ということで、化学物質の有害性の調査に関しては、第57条の4の第4項で、厚生労働大臣は、第1項の規定による届出があった場合に有害性の調査の結果について学識経験者の意見を聞く。まず、ここで製造段階で何らかの措置を取る必要があるのかどうかも踏まえて意見を聞く対応を考えたいと思います。
○小野寺委員 何となく分かってきた気がします。
○西川座長 確かにエームス試験をやる必要のないケミカルもあると思うのです。それと同等の試験として、4つある試験が同等かどうか。
○小野寺委員 別に通知上こういうものがあるだけで、必ずしもこれをやるというものではなくて、本来こういうことが必要かどうかを学識経験者の中で議論してもらって、そこでリスクなり必要性があったならば、こういう試験をやることも考えられるということですか。
○上月有害性調査機関査察官 試験自体はやっているものを出していただく。
○西川座長 PMDAで審査した報告書の一部を利用すると。
○本間委員 まず安全性を担保するために、何も評価しないわけにいかないのです。エームス試験に関しては、どう考えてもこれは変異原性は関係なく、科学的に考えればやる必要がないと私は思いますが、法令上は何もないものをないと言えないので、その代替として、一般毒性試験で置き換えて読み込むことができるのではないかということです。これによって医薬品の開発が進むわけですから、安全性に、特に遺伝毒性に対して問題がなければ、これまでのスキームと変わらないはずなのです。ですから、今ここで評価するのはあくまでも変異原性なので、変異原性は基本的には問題ないわけです。それをこの試験で読み込むことを承認していただければ、全く問題ないのです。安衛法の場合は基本は変異原性ですから、ほかの毒性は関係ないのです。
○西川座長 しかし、変異原性がなくても発がん性のある物質はありますよね。
○本間委員 それをやると、今の安衛法自体の問題になります。
○西川座長 法律はともかく、理屈の上では。
○本間委員 もちろん、そうです。
○西川座長 だから、変異原性はなくても、発がん性があるかないかは一応確認する必要があるということですね。
○本間委員 そうです。
○上月有害性調査機関査察官 発がん性のスクリーニングの手法として変異原性があるので、発がんに至るような要因があるかどうか評価できればいいということで。
○小野寺委員 先ほど本間委員がおっしゃったように、昭和52年に作られた安衛法の条文をこね回して、何とか理屈が通るようにしているだけなので、科学的に遺伝毒性が検出できるようなものではなかったときには慣例的にほかの試験で代行して、既存で行われている試験を代行して、その中で変異原性が疑われないということで皆さんの中でコンセンサスを得ればいいということでよろしいですか。
○上月有害性調査機関査察官 ただ、試験の種類と実施方法は決めなければいけない。45ページで、今の安衛法令では、がん原性試験としてTG451のがん原性試験、2種のげっ歯類を使った2年間試験のどちらかしか選択肢がないので、そこにTG453、TG408、TG409、TG452を入れましょうと。
○西川座長 例えば、TG408、ラットの90日試験でがん原性もある程度予測できると主張している外国の人もいるのです。しかし、それがメジャーな意見かというと、そうでもないですね。何らかの検査をプラスしないと、恐らく予測は難しいだろうと思います。
○上月有害性調査機関査察官 実際に企業としてはものすごいリスク管理をしていて、1つだけやっているわけではなくて、組み合わせてやっている。発がん性は評価しているので、この辺りの試験を押さえておけば。
○西川座長 例えば90日試験を同等に近い試験と考えたとしても、評価がまた難しい。単に毒性量がこれだけで大丈夫だとかというぐらいですね。発がん性があるかないかは全く分からない。
○小野寺委員 発がん性のハザード評価ではなくて、学識経験者が議論して、実際に現場で労働者にリスクがないところとか、ある可能性があるとすれば、どういう防護策をするかという手段として使えばいいのではないですか。
○西川座長 それはすぐできるのですか。
○小野寺委員 科学的に、それが本当にがん原性があるかないか、白か黒か付けられるかというのは、バイオの世界になってくると難しいと思うのです。本当にそれが確実なものかどうか分からなくなってきて、先ほどおっしゃったように二次発がんの問題も出てきて、当初は二次発がんは余り重要視されなかったのですが、最近ではがんの生存者の数が3年生存率ではなく5年、10年生存率で決定されて、その間に新たなものが起きたときに、新たながんが抗がん剤ではないかという話が持ち上がってきています。そういう意味では、適材適所というか、ハザードというよりもリスク評価ですね。危なかったら予防するとか、違うものに変えるとか、そういうことだと思うのです。
○西川座長 そういうことだと思うのです。だけど、法律上は発がん性があるかないかについて評価することになっているので、そこが変えられないとしたら、一般毒性でどの程度担保できるかですね。エームス試験をやる必要がないというのは分かるので、それはそれでいいとして、何らかのそれを補うような試験という意味合いですね。その候補としてこういうものが挙がっているのですが、いかがでしょうか。意味のない変異原性試験は、やってもしょうがないと思うのです。
○上月有害性調査機関査察官 要望主体は、多分ここまで認めるならば、相当助かると考えます。
○西川座長 そうですね。よろしいですか。ありがとうございます。
 少し時間を使ってしまいましたが、皆さんの合意が得られたようです。以上から、バイオ医薬品の有害性調査として、対象となる医薬品を限定し、毒性試験を導入することについて、本ワーキンググループでは同意することになりますが、よろしいですね。
 ありがとうございました。それでは、今後は事務局において局長通達の発出手続を進めていただきますが、次回のワーキンググループでは判定基準を検討することといたします。
 次に、議題4「既存情報による発がん性評価について」、事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 それでは議題4「既存情報による発がん性評価について」説明いたします。資料4-1を御覧ください。発がん性評価ワーキンググループにおいては、文献調査を踏まえた発がん性評価を行っています。これまでの内容ということで、おさらいの意味を込めて、説明をいたします。発端は1,2-ジクロロプロパンという物質で、胆管がんの問題が発生いたしました。その問題が出て以降、世の中にある化学物質についてきちんと発がん性評価をしていこうということで、一番の情報源として化審法の情報がありましたので、それを活用するということで、平成22年度の一般化学物質製造数量等届出があった物質について情報をいただきました。全国合計が10t以下の物質については安衛法で評価を行うという整理をし、平成27年度までに国の委託事業により、発がん性に係る情報収集を実施いたしました。今回分については特に平成27年度に調査を行い、該当するものがありましたので、61物質を選定し、この発がん性評価ワーキンググループで評価を実施していただきたいとするものです。
 61物質の選定基準は、以下により選定しています。リスク評価対象物質や疫学調査に関する文献があるものは、除いております。条件としては、1つは、国際がん研究機関(IARC)または他の評価機関において、発がん性分類がなされていないが発がん性試験等が実施されているもの。もう1つがIARCの発がん性分類が3又はEU等他の機関において同等の評価であるが、発がん性試験情報の公表が評価後と考えられるような物質です。こういったものをこれから発がん性評価ワーキンググループで検討していただくということです。
 今回は前半の36物質について評価を実施していただくことを予定しております。5時までという時間の制約のある会議ですので、よろしければ先生方の評価で「IARC2B以上相当」とされた2物質、判断保留とされた物質を主に検討することとしたいと思います。事前に御確認させていただき、それ以外の物質でも追加で提案、検討したいものがありましたらそれも検討するということにさせていただきます。
 今回対象とするものについては資料4-2を御覧ください。36物質、物質リストを付けております。これらの物質については、事務局でIARCの評価がなされたもの、なされた後文献が出てきているかどうか。文献調査はあるが評価がされていないものを事務局で選定し、あらかじめ各委員の先生にお送りし、分担して評価を頂いております。それぞれの物質の用途例、性状については表のとおりです。その中で検討結果、「IARC2B以上相当か」ということで、○のものが2物質あります。この2物質と判断保留の物質、一部×の物質で、本日検討したいという物質については、参考資料5-3のかなり分厚い紙ファイルに、一番左の番号1、2、6、7、8とあります番号と同じタグを付けておりますので、必要の都度御確認ください。一部、○、判断保留以外のものにもタグが付いておりますが、これについては各委員から、×だが検討したいとの申し出がありましたものにタグを付けております。資料4-3に沿い、当該物質についての評価結果を簡単に申し上げて、補足がありましたら各委員から評価等についての御説明をお願いできればと思います。
 順番に、資料4-3の網掛けの部分、1~12番まで説明いたします。通し番号1、A0001、5-フルオロウラシルです。これについては1981年にIARCグループ3と言われており、その後文献調査の結果、1990年、2000年に文献が出ております。文献を踏まえた検討結果として、文献1よりマウスへの腹腔内投与での雌雄の肺腫瘍及び肺のリンパ網内系腫瘍ということで、こうした結果からIARC2B相当以上ではないかということで、コメントを頂いております。
 通し番号2、A0014、2,4,6-トリヒドロキシ-1,3-ジアジン、別名バルビツール酸です。これについてはIARC等の評価はされておりませんが、文献調査として1985年、1990年に動物試験の文献が出ております。これらの結果を踏まえ、判断保留となっております。理由としては、単独でのがん原性試験のデータなし、文献により、雄ラットにおいて腎臓の尿細管上皮がんに対しプロモーション作用があるが、限定的な証拠ではないかということで、判断保留としています。
 通し番号6番、A0031、Ethyl 2,3-epoxy-3-phenylbutyrateです。IARC等の評価はありませんが、1981年に文献が出ております。軽度の毒性影響のある用量でのラット2年間試験において明らかな発がん性は示唆されていないということで、IARC2B相当に当たらないのではないかとの評価です。
 通し番号7番、A0033、ペンタエリスリットテトラナイトレートです。これについてもIARCの評価はありませんが、文献として1989年にNTPのテクニカルレポート365でレポートがあります。この内容を踏まえると、マウスは発がん性ない、ラットでは雌雄ともジンバル腺の腺腫及び腺がんは僅かに見られているが有意とは言えないということで、IARC3B相当、IARC2B以上に当たらないと評価されています。
 通し番号8番、A0038、ピルビンアルデヒドです。1991年に、IARC3です。評価としては判断保留ということです。単独でのがん原性試験データなし、雄ラットにおいて腺胃に発がんプロモーション作用ありということです。これについてはIARC2B相当でないか、もしくは評価できないとされております。
 通し番号9番は×です。2-(3-ジエチルイミニオ-6-ジエチルアミノ-3H-キサンテン-9-イル)安息香酸=クロリドです。IARCはグループ3、1978年に評価され、その後1980年、1989年と文献が出ております。NTPの364テクニカルレポート等を踏まえての評価で、IARC2B相当に当たらないということです。
 通し番号10番です。A0066、CASナンバーが85-01-8、フェナントレンです。国際機関の評価ではIARCグループ3が1983年、1990年にEPAの評価があります。その後2010年、EPAの評価と同年の1990年に文献が出ております。この文献を踏まえた評価として、判断保留としています。雌ラットを用いた肺内投与試験で1/35のみに扁平上皮癌、判断困難とされています。
 通し番号12番、A0074、α,β-ジクロロ-β-ホルミルアクリル酸です。これについては国際機関の評価はありませんが、文献調査で1969年、1999年と文献が出ております。評価結果については判断保留、理由としては雄ラット及び雄マウスにおいて、腸内投与においてACFの数とクリプト数の増加が見られた。定型的な発がん性試験はされていないということで、根拠としております。ここまでとさせていただきます。
○西川座長 ただいまのところまでで何かありましたら、お願いいたします。追加ですか。
○小川委員 余り追加ということでもないのですが、1については腹腔内投与ではあるのですが、雌雄で発がん性が見られていれば、少なくとも2にはなるだろうということで、2と考えております。一応mutagenicityも陽性であるような所見というか、情報があるというようなものになります。
○西川座長 今のは番号1の話ですね。
○小川委員 1です。
○西川座長 マウスの雌雄で肺腫瘍が有意に増加し、雌でリンパ網内系腫瘍の増加が認められた。よろしいですね。これは2B相当になるかと思いますが。
○若林委員 これ2B相当、2種類以上ので。
○西川座長 雄雌、両方に出て。
○若林委員 雄雌で、リンパ腫ですね。対象になる、良性腫瘍は対象にならないですよね。
○西川座長 雌はリンパ網内系腫瘍、これは腫瘍ですね。
○小川委員 そうですね、腫瘍としかなくてというところはありますね。
○西川座長 リンパ腫のようなものですかね。
○小川委員 網内系腫瘍という、リンパ腫と言えばリンパ腫になる。飲水投与のほうでは、がん原性がなかったというところにはなるので、ちょっとその辺のディスクレパンシーがあるということで検討と。
○若林委員 2種類の動物の雌雄両性で腫瘍発生率が増加した場合も、十分な証拠は。
○小川委員 今は、はい。
○若林委員 片方の性だけですと十分ではないのではないかというような、ちょっと気にしています。それで質問したのです。
○西川座長 ええ、肺腫瘍については雌雄両方出ていますので。
○小川委員 はい。
○西川座長 2Bに相当するかと。
○若林委員 これ腫瘍はアデノーマですかカルチノーマですか。
○西川座長 いや、そこまでは書いてない。アブストラクトだけです。
○若林委員 もし、アデノーマだったのならば、ならないですね。
○西川座長 どうですかね。
○若林委員 良性腫瘍は入らないと書いてあるのですね、確かね。
○小川委員 良性腫瘍の。
○若林委員 tumorというのがどちらか、判断できないのですけれども。
○小川委員 なかなか肺の腫瘍は判断が難しいところではあるとは思うのですが、有意に雌雄ともに上がってきているという場合だと、考慮せざるを得ないところと思っています。必要であれば、何とかもと文献をもう一度確認してということが可能ですか。
○平川化学物質評価室長補佐 この物質については、判断保留ということで、情報を収集することといたします。
○小川委員 ではもう一度、はい。
○西川座長 そのほうがいいですね。
○小川委員 はい。
○西川座長 はい。では、この文献を見た上で、もう一度検討するということにしたいと思います。
○小川委員 次が通し番号の2番になりますが、こちらは雄のラットのみで。プロモーション作用があるということだけですので、単独でのがん原性の情報がないということなので、判断ができないという状況と考えます。
○西川座長 以上ですか。
○小川委員 はい。
○西川座長 ありがとうございます。
○平川化学物質評価室長補佐 2番については判断保留ということで。
○西川座長 そうですね、はい。
○小川委員 通し番号6番のものになります。
○西川座長 これ、×になっていますし、特には余り議論する必要なければ飛ばしていただいてもいいですけれど。
○小川委員 十分な検討がされていてということで、特に問題はないだろうと判断いたしました。7番についても、NTPの十分な試験がされていて、特にバックグランド以上の腫瘍はないということで、よろしいかと考えられます。8番については、やはり単独で投与したがん原性のデータはないということと、雄ラットで肺へのプロモーション作用はあるということで、全く問題ないとは言えないということで、判断保留とさせていただきました。
○西川座長 はい。
○小川委員 9番のものに関してはやはりNTPの試験が実施されており、ラット・マウスともに発がん性がないことが十分示されておりますので、こちらは×でよろしいかと思っております。
○西川座長 今のラットの試験で、副腎の良性、悪性のクロム親和性細胞腫の発現が高投与群で増加し、背景データと比較しやや多いので、この被験物投与に僅かに起因するかもしれないとあるのですが、これでも判断保留ではなくて、×でいいですか。
○平川化学物質評価室長補佐 9番についてはレポートを付けておりますので。
○小川委員 一応Equivocalという形ではあるのですけれども。
○若林委員 それの右側にコメントがありますね。これ、事務局のほうでされているわけですね。
○平川化学物質評価室長補佐 コメントの原案作成は、委託事業で行っていただいたものです。その中でのコメントということで書いております部分と、あとは一部先生方から直していただいている部分もございます。
○若林委員 分かりました。それでは専門的な試験をしてられる方が。
○平川化学物質評価室長補佐 そういうふうに。
○西川座長 そうですね、40ページのところですね。
○小川委員 NTP TR 364の40ページと114ページの両方にあります。
○西川座長 判断保留ですか。全く何もないとは言えないですね。
○小川委員 はい。では。
○西川座長 判断保留。
○平川化学物質評価室長補佐 判断保留ということですか。
○西川座長 よろしいですね。IARCのグループ1~2B相当か判断できませんので。
○小川委員 10番についてはフェナントレンですが、雌のラットにおいて肺内投与ですが扁平上皮癌が1例だけということですけれども、扁平上皮癌はほとんどできない腫瘍だということで、完全に偶発的といえるかと言われると、少し難しいところがあるのではないかと考えて、判断保留といたしました。形質転換試験はネガティブです。ほぼないとは言えるのですけれど、これも定型的な試験はされていないところもあり、データとして十分ではないと考えざるを得ないのかと。
○西川座長 これ、2年間の試験ですか。135週、2年間以上ですね。
○小川委員 単回投与というのが、肺の中に単回投与という試験です。
○西川座長 肺内単回投与、変わった。
○小川委員 はい、非常に変な試験しかないという状況なのです。
○西川座長 1匹だけですね、出たのは。
○小川委員 1匹だけなのですが、35分の1ということなのですが、ラットで扁平上皮癌の自然発生はほとんどない。腺癌だったら結構あるかなとは思うのですが。いずれにしてもネガティブであるというデータ自体が2年間の試験というのをきちんとされていないというところからは、今の段階では言えないのではないかと思うのですが。
○西川座長 いかがですか。
○津田委員 DHPNを投与すると、それは腺腫と腺がんしか出ないけれども、肺内に異物的に入れると溶媒だけでも扁平上皮の増殖活性が起こるので、そういうの余り意味はないと思います。
○小川委員 定型的な試験がないというところが一番大きいかと思います。データがないということで保留と。根拠として、扁平上皮癌がということよりは、2年間定型的な試験がなされていないということ。
○津田委員 扁平上皮癌のような変なものが肺内にあっても、吸入試験でよくあるので問題になるのです。大抵は腫瘍かそうでないかという議論があって。最終的にはないことにしようとなっています。
○西川座長 であれば×でもいいと。保留でいいですか。
○小野寺委員 そうですね。定型的ながん原性試験ではなくて、肺内投与の問題。1回肺内投与で、期間は結構長いのですね。
○西川座長 135週だから相当長い。
○小川委員 1回投与されてという状況です。
○西川座長 ただ、それ何か余り意味がないような。
○小野寺委員 これ単独ではなくて、ほかの化合物とたくさんやっていて、その中の1つですね。ほかの物は結構いろいろながんが出来ている中で、これが1例なので。
○小川委員 これ自体には意味がないとは思うのですけれども、データがないということと考えます。
○西川座長 データがなくとも判断に困るようなものはないから、×でいい気がしますよ。
○小野寺委員 いや、×というのはちょっと度胸が要るかな。
○西川座長 どちらでもいいのですが、では判断保留。
○平川化学物質評価室長補佐 保留でお願いします。
○西川座長 では、判断保留のほうにします。
○平川化学物質評価室長補佐 はい。
○西川座長 ではもう1つですね。
○小川委員 もう1つの12番のものについてはaberrant crypt fociで、大腸の前がん病変が増えるという所見はあるのですが、やはり定型的な試験がなされてはいないということで、若干懸念はありますが、判断できないという状況だと思います。
○西川座長 これはいいと思うのですが、よろしいですね。では、次に。
○平川化学物質評価室長補佐 それでは、15番から28番まで説明させていただきます。まず15番、A0099、5-ニトロフルフラールジアセテートです。これにつきましては、国際機関の評価はありませんが、1969年に文献が出ていまして、その結果を踏まえて判断保留ということとなっています。次は20番、A0147、Benzenamine,N,N,4-trimethylです。2012年に文献の調査の情報がありまして、そこの中で2種の発がん性試験で、雌雄とも肝腫瘍を主として誘発ということで、これにつきましてはIARC2B相当以上ではないかということでの評価です。
 次に22番、A0204、メタアルデヒドです。これにつきましても、国際機関の評価はありませんが、1975年に文献がありまして、根拠としまして、非食用作物殺虫剤としてナメクジ類、カタツムリ類に使用、遺伝毒性なしということで、評価×ということでの評価です。次に23番、A0207、吉草酸です。これにつきましても、国際機関の評価はありませんが、1953年、1985年の文献がありまして、その結果から判断保留ということです。次に25番、A0229、2,2,2-trichloroethanolです。これにつきましても、国際機関の評価はありませんが、2002年に文献が出ていまして、この結果から判断保留ということとなっています。
 次に26番、A0308、Methyl 2-aminobenzoateです。国際機関の評価はありませんが、1973年、1978年に文献が出ています。その結果からIARC2B相当に当たらないということで、×という評価となっています。次に28番、A0336、2-ヨードアセトアミドです。国際機関の評価はありませんが、1953年、1975年にそれぞれ文献が出ています。この結果を踏まえますと、判断保留ということです。
○西川座長 ありがとうございました。それでは、何か追加があれば担当者からお願いします。
○小野寺委員 15番の判定保留となったものですが、これは実験の週齢と数が非常に少なくて、実験を2つやられているのですが、1つの実験では36週までで5匹の動物というので、ちょっと判定ができないのと、2つ目も44週齢までなのですが、13匹しかいなくて、そのうちの4匹に乳腺の腫瘍が出来たというのですが、コントロールでも16中3例が出来たというのですが、この数が少ないということで、これは保留、判定不能ということにしました。
 次の20番ですが、これは先ほども申しましたが、ラットとマウスの50匹、2年の定型的な現在の試験が行われていて、ラットとマウス、両方とも肝腫瘍が用量相関的に認められて、発がん性ありという評価をされています。なので、2B相当でもいいのかなという結論にしました。
 次に22番です。これは最高用量500 ppm、Wistarラットで107週で腫瘍性なしということで、混餌で2年間の実験で25匹ずつ、雌雄に投与して腫瘍性がなかったということで、なしという判断でいいのかなという結論です。
 次は23番です。これは混餌で行われたラットですが、1つのものではなくて、幾つかの化合物でまとめてやっていまして、脂肪酸の中の1つとして、胃の変化を検討した実験でして、50日から500日付近まで長い間、経時的に観察しているのですが、100日目が35匹で、500日目というのが5匹しか検討されていなかったので、検討される数として非常にプアということで、判断不能ということにしました。それで、これも先ほど言いましたように1つの化合物ではなくて、幾つかの化合物の中の1つだったので、判定ができませんでした。
 23番はマウスだけの実験でして、背部というか肩甲骨間の所に局所投与した実験で、そこの投与、局所に扁平上皮がん、線維肉腫、線維腫が認められたのですが、これは本当に全身の影響を見た試験ではないので、局所の発がん性で保留にしたのですが、どういう評価をするのかなというのを、皆さんの意見を聞きたい。いわゆる局所投与で、局所に出来た腫瘍で発がん性ありといって、今までは経口投与とか、いわゆる全身ばく露で、各臓器での腫瘍性で評価していたと思うのですが、いかがですか。ありとするべきなのですか。ちょっとここは迷ったところなのですが。
○西川座長 これは各群50匹ですか。
○小野寺委員 いや、マウスのほうは各群50匹なのですが。
○西川座長 50匹ですよね。対照群にも悪性の扁平上皮がんがあったと。扁平上皮がん(4/4)というのは、これは雄雌の話ですか。
○小野寺委員 いや、各群50匹ではなくて、これはトータルで50匹だったと思うのですが。
○西川座長 そうなんですか。扁平上皮がん(4/4)というのは、これはどういう意味ですか。多分、雄雌ですよね。違うかな。
○小野寺委員 そうですね。肩甲骨間に週に2回ずつ投与して、4週目以降から用量を半分に変えて、80週見た試験です。それで投与局所に腫瘍が発生しましたが、全身臓器には誘発がなかったということでした。それで、認められた扁平上皮がんが4例、肉腫が6例、線維腫が5例、対照群が1例。
○西川座長 だから、皮膚への投与によって、投与部位に腫瘍が出る可能性があるけれども、よく分からないということですよね。
○小野寺委員 そうです。
○西川座長 では、これは判断保留しかしょうがないですよね。
○小野寺委員 25も保留にしたのは、マウスを使った新生児投与で、生後8日と15日齢に、腹腔内に2回投与しただけの実験なのです。12か月目に観察しているのですが、この実験系として成立するのかなというので、用量相関。腫瘍は幾つか出てきたのですが、腺腫などが出てきているのですが、これは用量相関は見られないし、コントロールとの差も余りなかったということなので、私はこれだけでは判断できないと思って保留にしました。
○西川座長 なるほど。
○小野寺委員 26番は、これも遺伝毒性評価グループのほうで遺伝毒性なしということで評価されたもので。
○西川座長 ラット・マウスとも腫瘍の増加はなかったと。
○小野寺委員 なかったということです。腫瘍性なしで×にしました。28番ですが、これは発がん性試験ではないのです。これはプロモーションの影響を、胃だけで見ているイニシエーションプロモーション試験で、胃の線維への脂肪変化が発がんに進展する可能性という仮定を目的として見られているもので、通常の発がん性試験のデータとして評価出来なかったので保留にしました。
○西川座長 以上ですね。では、続けてお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 それでは、評価の確認だけさせてください。15番が判断保留、20番がIARC2B相当以上、22番が×、23番が判断保留、25番が判断保留、26番が×、28番が判断保留ということでよろしいでしょうか。
○西川座長 結構です。
○平川化学物質評価室長補佐 それでは、引き続きまして31番から37番まで説明させていただきます。まず31番です。A0355、1,8-エポキシパラメンタンです。国際機関の評価はありませんが、1973年、1979年に文献があります。この内容から発がん(-)ということで、判断保留という評価です。次に32番、A0369、1,3-dichloroacetoneです。国際機関の評価はありませんが、1989年に評価がありまして、文献の内容から発がんinitiation(-)ということで、判断保留の評価を頂いています。次に33番、A0373、チオシアン酸ナトリウムです。国際機関での評価はありませんが、1989年に文献がありまして、これも一応発がん(-)ということですが、判断保留の評価です。
 飛ばしまして58ページの35番、A0400、4-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトールです。国際機関の評価はありませんが、1993年に文献が出ています。発がん(-)ということで、判断保留という評価を頂いています。次に36番、A0417、N-アセチル-L-システインです。国際機関の評価はありませんが、1993年、1996年、1997年、1998年、2000年に6件ほど文献が出ています。その評価から、がん抑制に関して(-)(+)の評価が分かれていたり、発がん(-)という評価もありまして、判断保留の評価です。最後に37番、L-ヒスチジン=モノクロロヒドリトです。国際機関の評価はありませんが、1996年に文献が出ていまして、発がん(-)ということですが、判断保留という評価を頂いています。事務局からは以上です。
○西川座長 それでは、担当の津田先生、お願いします。
○津田委員 特にネガティブであっても、1つや2つの論文でネガティブという場合は判断保留にしました。そういう意味で、ほとんどネガティブでも判断保留ということにしました。やはりネガティブというのは、ものすごい作業が要るわけで、そういうことで判断保留というのは、ある範囲ではないということです。
 やった範囲では、36番は全くがん予防の実験なのです。発がん試験ではない。これも判断保留と。それから、終わりも同じようなことで、1つだけでネガティブでないということは言えない、ということで保留です。以上です。
○西川座長 そうするとラット・マウス両方の長期試験において陰性でないと×にならない。
○津田委員 そのぐらいのつもりで見ています。だけど、本当に発がんがないと言うのは、なかなか難しいです。IARCでもグループ4というのが1物質だけありますが、それでもプロバブリー・ノット・カルシノージェンというだけ。
○若林委員 いや、先生、これは2Bではないということですね。
○津田委員 そうです。
○若林委員 だから3か、又は4であるかもしれない。
○津田委員 いや、無理矢理に発がん性を見ると言えば、みんな3になってしまうのです。材料がなくて何とも言えないということです。どういう意味か迷ったのですが、その辺も含めて判断保留にしました。3というのは判断保留と同じなのです。材料がないから何とも言えないという。
○平川化学物質評価室長補佐 すみません。34番はこちらのほうで×としていますが、これも判断保留ということでよろしいでしょうか。
○津田委員 そうしてください。
○西川座長 全部そうなってしまいますよね。
○津田委員 そう思います。
○平川化学物質評価室長補佐 前回やったときも判断保留というのが、確かかなりありましたので、そう思います。
○津田委員 ここで発がん性がないと言うには、どういうクライテリアで言うかということがはっきりしていないと、たとえ座長が今言われたように、マウスとラットの雄雌全てでロングタームをやって、なかったときちんとしているものだったらそうなのですが、これを見たらそこまで言っているものはないので。
○西川座長 そこまで決めるのですか。
○平川化学物質評価室長補佐 となりますと、逆に○か判断保留かということに次回からさせていただいてもよろしいでしょうか。
○津田委員 そのほうがいいと思います。
○西川座長 そうですね。
○平川化学物質評価室長補佐 分かりました。
○西川座長 多分、それぞれクライテリアが違うようなので。
○津田委員 一応、俎上に乗ったということで、判断保留というのは気持ちとしてGroup 3だということにしておけばいいのではないですか。
○西川座長 それは2Bか、あるいはそれ以外判断できないということですね。
○平川化学物質評価室長補佐 ×だと何か終わったみたいな。
○津田委員 ×だと、それを保証したらどうかという話なので。
○平川化学物質評価室長補佐 ○か判断保留ということでよろしいですね。
○西川座長 はい。それでは、続けて説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 41番から48番になります。それでは説明します。41番、A0459、4,4’-ジアミノベンズアニリドです。国際機関の評価はありませんが、1981年に文献がありました。これにつきましては、×の記載をいただいています。次に42番、A0470、ジナトリウム-3,3’-ジオキソ-2,2’-ビ(インドリン-2-イリデン)-5,5’-ジスルホナートです。国際機関の評価はありませんが、1985年の文献をはじめ、6種の文献が出ています。判断保留ということで、ラット皮下投与による皮下腫瘍の増加ということで、判断保留ということとなっています。
 43番と44番は×ですので、次は45番、A0572、アシッドオレンジ-10です。IARCの評価で、1975年に3という評価が出ていますが、その同じ年の文献、あと1987年に文献が出ています。評価につきましては、ラット混餌投与による肝腫瘍の増加があるので、判断保留ということとしています。次に47番、A0653、トリシクロデカンです。国際機関での評価はありませんが、1984年に文献が出ていまして、ラット吸入ばく露による泌尿器系腫瘍の増加、詳細不明ということで、判断保留ということとしています。48番は×ということです。以上です。
○西川座長 ありがとうございます。最初に41番、これはマウスの60週間試験で、腫瘍の発生増加はなかったということで×にしたのですが、ラットの試験はないということで、判断保留ということにしたいと思います。それから、42番についてはラット・マウスの長期試験があるのですが、皮下投与の試験で腫瘍が増えているという試験結果もありますので、判断保留としました。次に43番、これはラット・マウスで特に腫瘍の発生増加はないので×としましたが、これは×では駄目なのですか。普通は×ですよね。こういうのも×では駄目ですか。
○小野寺委員 これ以上の試験がないので。
○津田委員 吸入試験をこれで繰り返されるということは、以後、永劫にないので、そこでなかったら、もうないという。
○__ これはNTPからですか。
○西川座長 とりあえず判断保留か○しかないというクライテリアからいくと判断保留になるのですが、これは×の候補になるということで、ちょっと括弧で×と。次の44番についても、これはラットの長期試験しかないのですが、特に明確な腫瘍発生の増加はないので×としましたが、これはマウスがないと駄目なのでしたか。
○津田委員 そうですね。
○西川座長 ということで、判断保留になるかと。ラットでは駄目ですか。とりあえず、そのようにしたいと思います。それから、45番についてもラット・マウスの長期の試験があるのですが、これについてはラットの混餌投与の試験で、肝腫瘍の増加が見られていることから2B相当ではないのですが、そういう意味で判断保留ということにしました。次は47番、これはラットの1年間の吸入試験ですが、記載を見ますと泌尿器系の腫瘍が増加したとあるのですが、これは実は抄録しかなくて、詳細は不明であることから判断保留としました。次は48番、これはマウスの皮膚塗布試験がありますが、発がん性はなかったということから×にしましたが、これもラットの試験がないので判断保留となるのでしょうか。
○津田委員 ほかのルートで扱っているかもしれない。
○西川座長 ということで、判断保留で括弧で×を。判断の基準を合わせないとまちまちになりますので、そういう意見もあったということで、それでは次の説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 本日、御意見の中で×ということで頂いているものについては割愛させていただきます。次は最後の85番、判断保留、多分×ということです。A1166、名前が長いのですみません。国際機関の評価はありませんが、1994年に文献が出ています。これにつきまして、エームス陰性でマウス発がん性試験、雌に下垂体腫瘍の発生頻度増加、雄雌に肝腺腫数増加、肝腺腫発生頻度は変化なしという文献の内容ということで、判断保留ということとしています。文献については85番に入れておりますので、よろしくお願いします。
○若林委員 49番から私で、平川さんから来たものでは、評価の指針でIARCの1から2B相当が○で、IARCの1から2B相当ではないというのが×になっている。それで、上のいずれか判断できないというのを判断保留というように、ここに書いてあって、私は1B相当ではないというものに全部×をしています。ですから、不十分なものも×なのです。 ×という意味は、発がん性があるかないかということではなくて、十分な発がん性の根拠がないものは×にしたということなのです。ですから、そこのところがずっと、この5人の中で少し判断基準が違っているということを御了解した上で説明させてください。49番は遺伝毒性なしで、発がん性試験はラットのみで、2年間で発がん性は認められていないということです。一応、マウスですとかいうようなものも×にしたということです。
○西川座長 同じクライテリアです。
○小野寺委員 2Bではないということですよね。
○若林委員 2Bではない。51番もエームスですとか遺伝毒性はなくて、ラットの雌雄の混餌を2年間、これは陰性だったと思います。それから、その後マウスのIP試験、マウスを使った皮膚の塗布の試験であります。これについても肝細胞がんの発生増加は雌のみで認められたのですが、用量相関はないということと、後のマウスのIPと塗布の試験では、発がん性はないということで×にしたのですが、この×が判断保留なのかどうかということについて、事務局で進めてください。
 それから57番、これに関してもやはりエームスですとか……。発がん性試験は0.2%の混餌の52週間のものでやりました。それで発がん性はなし。マウスの発がん性試験に関しては、やはり1,000 mg/kgの混餌で105週間というもので、発がん性はないということで×にしてあります。だから2B相当ではないということです。
 それから61番、これも遺伝毒性はありません。ラット・マウスを用いた発がん性試験ですが、2年間のラットの混餌、皮下のラットで32か月間、それからマウスの混餌の23~24か月間で、発がん性はなしということで×です。
 65番に関してはエームス、SCE陰性で、マウスの発がん性試験は皮下です。それから、もう1つマウスの発がん性試験は腹腔内の、それぞれ単回投与だということで、発がん性がそこの中では認められていませんが、十分な証拠がないということで×にしてあります。
 それから85番、これはやはりエームスが陰性で、マウスの発がん性試験は雄雌を使って混餌で90日間行っていますが、雌に肝腺腫の増加、これは明らかにアデノーマです。カルチノーマの発生頻度は変化なしということで、良性腫瘍のみ、更にマウスだけということで、×でいいのではないかと、2B相当ではないということだと思います。
 それから、88番に関してもマウスの雌雄の群で、混餌で18か月間をやりましたが、これについても肝細胞がんの頻度は雌で増加傾向であるけれども、これは詳細なデータがないため、有意差が判断できないということで、十分なデータがないということで×なのですが、これは黒川先生の国立衛生試験所の報告書みたいですね。ということで、私は×にしたのですが、ほかの先生方のクライテリアからすると、全て判断保留という形になると思います。
○平川化学物質評価室長補佐 考え方として、こちらのほうの行政として必要なものというのは、IARC2B相当以上かどうかというところで、判定保留ということで当初考えておりましたのは、もしかしたらIARC2B相当ではないかというのを判定保留で、あと、×でお願いしているのはIARC2B相当以上でない、要するにIARC3よりも上の評価にはならないという、そういう形で書かせていただきました。
 その辺の説明を判定表の中に入れていなかったものですから、そこは一応3つの区分ということで、判定保留のところについては実際に御議論いただいて、もしかしたらIARC2B相当に入るのではないかという可能性があるものについては、判定保留ということで本日は出させていただいたところです。最終的な結果としては、どちらかに分かれると思いますので、そういう整理を今後していきたいと思っています。
○西川座長 どういう基準で評価したかというのは、口頭で皆さんおっしゃったので、その辺りを事務局で調整していただければと思います。よろしくお願いします。
 それでは、以上で本日の文献情報による評価は終了いたします。次に議題5「その他」について、事務局から説明をお願いします。
○平川化学物質評価室長補佐 事務局のほうから説明させていただきます。資料65ページを御覧ください。次回の会議ですが、2月28日(水)の午前10時から、会場は本日と同じです。議題ですが、「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の対象物質の選定について」。あと、本日の議題の続きとなります、「バイオテクノロジー応用医薬品に係る有害性調査の基準について」ということで、御議論いただく予定としています。
 あと、先ほど長期発がん性試験について宿題がありました部分については、試験実施者と回答いただいたものを御報告させていただきますとともに、文献調査の残り分については、平成30年度の発がん性評価ワーキンググループで御議論させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○西川座長 それでは、以上で本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。ありがとうございました。
 

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