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2017年3月1日 (平成29年3月1日) 第3回発がん性評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成29年3月1日(水)15:00~


○場所

労働委員会会館612会議室


○議題

(1)平成28年度に実施した中期発がん性試験の評価について
(2)平成29年度に実施する中期発がん性試験の物質選定について
(3)遺伝子改変動物を用いた発がん性試験による調査の基準について
(4)その他

○議事

○上月有害性調査機関査察官 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻までまだ少しありますが、ただいまより第3回発がん性評価ワーキンググループを開催いたします。

 本日の委員の出席状況ですが、全員御出席を賜っております。以下の進行は、西川座長にお願いいたします。

○西川座長 議事に入る前に、事務局より議事次第と資料の確認をお願いいたします。

○上月有害性調査機関査察官 お手元の「平成28年度第3回発がん性評価ワーキンググループ」という資料を御覧ください。議事次第ですが、議事(1)は「平成28年度の中期発がん性試験の結果の評価について」、議事(2)は「平成29年度の中期発がん性試験の対象物質の選定について」、議事(3)は「遺伝子改変動物を用いた発がん性試験による調査の基準について」、議事(4)は「その他」としております。

 資料の確認をさせていただきます。裏面に配布資料一覧があります。その後、資料1からは、ページの右下に資料一連の番号があり、152ページまでとなっています。1ページの資料1は平成28年度の中期発がん性試験の対象物質一覧で、実施物質です。3ページは資料1-1、パラ-トルエンスルホン酸メチルに関するラット肝中期発がん性試験結果、7ページは資料1-2m-クロロフェノールのラット肝中期発がん性試験結果、11ページは資料1-3で、2.2'-[1.2-エタンジイルビス(オキシメチレン)]ビス(オキシラン)のラット肝中期発がん性試験結果、15ページは資料1-4で、3-メチルブタナールのラット肝中期発がん性試験結果、19ページは資料1-5で、3-クロロ-1-プロパノールのラット肝中期発がん性試験結果、23ページが資料1-6で、2-メトキシエチル=アクリラートのラット肝中期発がん性試験結果となっています。27ページの資料2-1は、遺伝毒性ワーキンググループのほうで評価検討いただいている平成29年度の中期発がん性試験の候補物質の一覧です。33ページ、資料2-2は、平成29年度の中期発がん性試験の候補物質として製造・輸入数量が1,000t以上のもののリストを整理しております。35ページは資料3-1で、前回の「第2回発がん性評価ワーキンググループの検討結果(要旨)」です。37ページは資料3-2で遺伝子改変動物を用いたがん原性試験による調査の基準(改正案)です。39ページ以降は参考資料で、参集者名簿等を整理しております。以上です。資料に不備等がございましたら事務局のほうにお知らせください。

○西川座長 それでは本日の議題に入ります。まず、議題(1)「平成28年度の中期発がん性試験の結果の評価について」を事務局から御説明願います。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、平成28年度中期発がん性試験の結果について、概略について申し上げます。この肝中期発がん性試験については、平成25年度から実施されており、この実施に当たりましては、参考資料2-1の「職場で使用される化学物質の発がん性評価の加速化」ということで新たに実施することとした試験で、平成25年度から平成27年度まで、過去に14物質評価されており、今年度、6物質の評価を行っていただくものです。

 具体的な調査の基準と評価基準については、参考資料1が調査の基準、評価基準が参考資料3-2ということで、これらの基準に沿って今回、評価を行っていただきます。

 今年度の物質については、資料1です。先ほども御説明がありましたが、パラ-トルエンスルホン酸メチル、m-クロロフェノールの2物質については、日本バイオアッセイ研究センターの実施分、残りの資料1-31-6の部分は株式会社ボゾリサーチセンターにおいて実施していただいたものです。これから1物質ずつ逐次に評価を行っていただきますので、よろしくお願いいたします。

○西川座長 それでは、まず、パラ-トルエンスルホン酸メチルからお願いいたします。

○日本バイオアッセイ研究センター 日本バイオアッセイ研究センターの竹内と申します。3ページ、資料1-1、パラ-トルエンスルホン酸メチルのラットを用いた肝中期発がん性試験の報告をさせていただきます。

 この物質は、常温では白色から黄色の液体から固体の物質で、融点が25℃で水に溶けません。用途としては、有機合成におけるメチル化剤・アルキル化剤・酸触媒、塩基性染料の中間体等に用いられているということです。この物質に関しての、特に動物を用いた有害性情報はほとんどありません。ラットの経口LD50 値が341mgであるということ。刺激性は強い物質です。遺伝毒性は陽性です。発がん性に関しては、当然、情報はありません。

 方法です。試験は被験物質投与群は3群、媒体対照群はオリブ油を用いています。陽性対照群はフェノバルビタールナトリウムで、合計5群の構成で行いました。1群当たり22匹のF344雄ラットの6週齢を用いています。試験の始めに起始物質としてN-ニトロソジェチルアミン(DEN) 200 mg/kgを単回腹腔内投与し、このDENの処置後3週目から6週間、被験物質を投与しています。被験物質の用量は次のページに載っています。

 媒体対照群が04080160 mg/kg/dayの用量で強制経口投与しました。また、陽性対照群としては、フェノバルビタールナトリウムを25mg/kg/dayの用量で、同じく強制経口投与を用いています。DENの処置後、第3週目の終わりに、肝臓の3分の2の切除手術を行っています。6週間の投与終了翌日に生存動物を安楽死させまして、肝臓の胎盤型Glutathione S-transferase (GST-P)陽性細胞巣を直径が0.2 mm以上の面積に相当するものに限定して、その数、面積を計測して、肝臓単位面積当たりの陽性細胞巣の数、面積を算出して評価をしました。

 本試験の投与用量を設定するに当たり、用量設定試験を幾つか実施しています。まず、3回投与試験を行い、用量としては100300600 mg/kgを設定して投与しました。その結果、一番上の600 mgは投与2回で瀕死状態になりましたので安楽死させ、300 mgでは、3回投与後の体重が顕著に減少しています。100 mgでは僅かな体重増加抑制が認められた程度でした。

 これをもとに3週間の反復投与試験を行っています。ここでの用量は2550100200 mg/kgに設定して、3週間強制経口投与を行いました。その結果、一番上の200mgでは餌の食べこぼし量が目立った他に、一般状態に異常は認められませんでした。体重増加の抑制は、100 mgから認められて、投与3週間後の体重は、100 mgでは対照群の95%、200 mgでは86 %でした。100 mg以上では、腎臓の相対重量が増加し、200 mgでは肝臓の相対重量も増加しています。なお、血液学や血液生化学検査で異常のあった項目はありませんでした。

 この用量設定試験をもとに、一番上の高用量を最終決定する目的で、部分肝切除した動物を用いて10日間の反復投与試験を実施しています。用量は100150200 mgとして、部分肝切除したラットに10日間投与しました。その結果、100mg以上で体重増加の抑制があり、対照群を100 %とすると、100 mgでは95 %、150 mg90 %、200 mgでは87%でした。100 mg以上で腎臓の相対重量が増加し、200 mgでは肝臓の相対重量の増加も認められています。

 これらの用量設定試験をもとに、本試験に用いる高用量は動物に最小限の毒性兆候が見られるが、動物が6週間の投与に耐え得る用量を設定するとして、100 mgから200 mgの間が適切であろうと判断しました。したがって、肝中期発がん性試験では高用量を160 mg/kgに設定し、公比2で割って、中用量が80 mg、低用量が40 mgという設定をしました。

 結果です。パラ-トルエンスルホン酸メチルに起因する一般状態の所見はありませんでした。結果の説明を、6ページに体重グラフと肝臓重量、GST-P陽性細胞巣の結果の表を記載していますので、こちらを御覧ください。

 まず、図1にある体重の推移です。一番高用量である160 mgで、明らかに体重増加抑制が投与開始からずっと認められています。中用量の80 mg、低用量の40 mgでは、体重増加に有意差はありませんでした。

 表1の肝臓重量です。肝臓の絶対重量はパラ-トルエンスルホン酸メチルの投与で影響がありませんでした。ただし、相対重量に関しては、一番下の40 mgから、ごく僅かですが有意差が付く程度の増加をしています。

 表2です。これはGST-P陽性細胞巣の測定結果です。パラ-トルエンスルホン酸メチル高用量の160 mgと中用量の80 mgで陽性細胞巣数が減少するという結果になりました。それから、面積に関しても、一番上の160 mgでは減少するという結果になりました。なお、陽性対照群のフェノバルビタールナトリウムの群は対照群に比べて明らかに増加が認められていますので、試験としては問題がなかったかと思います。以上です。

○西川座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について御質問、御意見をお願いいたします。

○小野寺委員 毒性所見があまり見られていなくて、体重だけを指標にして用量設定されていますが、このときの高用量などでは摂餌量はどうなっていますか。

○日本バイオアッセイ研究センター 摂餌量は、中用量の80 mgから減少傾向が認められています。

○小野寺委員 これは、減少というか、摂餌量が少なくなったために体重が減ったのか、それとも、その物質投与による刺激性が強いので、それによって忌避したなどと考えられるのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 非常に難しいと思うのですが、確かに対応はしていますので、摂餌量が全く関係ないとは言えないと思うのですが、かと言って、一般状態に何かあったかというと全く見えなかったので、その辺りは全く分からないというのが正直なところです。

○西川座長 よろしいですか。ほかにありますか。GST-P陽性細胞巣が減少するという意味は何かありますか。

○日本バイオアッセイ研究センター 以前にも減少するという物質はあったのですが、その場合には肝臓がかなり肥大をしていて、それで恐らく相対的に減ったのかなと。単位面積当たりですので。そういうものがあったのですが、今回は、肝臓の絶対重量は増えていないということがありますので、実質的に数そのものが減ったとしか言えないのです。それがどういう意味をなしているのかというのは分からないなというところです。

○西川座長 あとは、腎臓にも影響がありそうなのですが、これは組織変化がないということで、体重の増加抑制に伴う相対的な変化と考えてよろしいですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 実際、重量的に若干増えている感じはありますので、何か影響はあるかと思うのですが、捉えられませんでした。

○西川座長 組織変化は全くないということですね。ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかにないようでしたら、この試験については、プロモーション作用がないという結論になるかと思います。ありがとうございました。

 次の物質、m-クロロフェノールについて説明をお願いいたします。

○日本バイオアッセイ研究センター 7ページ、資料1-2を御覧ください。m-クロロフェノールのラットを用いた肝中期発がん性試験の報告をさせていただきます。m-クロロフェノールは、常温では白色から黄色の結晶あるいは固まり状の物質です。融点が33℃、これも水に溶けません。用途としては、医薬・農薬の中間体、接着剤溶剤、耐熱性樹脂原料として用いられているということです。この物質に関しても、異性体であるパラ体、オルト体に関しては動物実験がなされているのですが、このメタ体に関しては動物実験がまだなく、急性毒性でLD50 値が570 mgであるという情報はありますが、反復投与に関しては情報がありません。刺激性がかなり強いです。遺伝毒性は陽性。当然、発がん性の情報はありません。オルト体、パラ体についても、今回これから御報告させていただくメタ体もそうなのですが、神経毒性の疑いが動物で見られます。

 方法は、先ほどの物質と同じです。用量に関しては、180360720 mgの用量で行いました。この用量を設定するに当たり、用量設定の理由を8ページに記載しております。

 この物質に関しても3つの用量設定試験を行いました。まず、3回投与として、6001,0002,000 mgを設定して3日間強制経口投与しました。その結果、2,000 mg、少し高かったのですが、これは1回の投与で投与直後から激しい振戦、横臥が見られて、3匹とも1時間後ぐらいで死亡してしまうという濃度でした。1,000 mg600 mgに関しては、体重増加の抑制は見られたのですが、こうした振戦等は認められませんでした。

 これをもとに、3週間の反復投与試験を行いました。ここでは用量を1252505001,000 mgに設定して3週間経口投与しました。その結果、1,000 mgでは投与後に振戦あるいは流涎が見られた動物がありました。その中の1匹は投与6回で死亡いたしました。体重増加の抑制は、250 mg以上で認められました。250 mgでは対照群の96 %、500 mg94 %、1,000 mg80 %といった増加抑制でした。血液検査と生化学検査を行っています。血液検査は影響はなかったのですが、血液生化学で500 mg以上で総コレステロール、リン脂質が増加しました。肝臓、腎臓の重量ですが、3週間の投与では両方とも相対重量の増加が500 mg以上で認められました。

 この用量設定試験をもとに、高用量を最終決定する目的で、部分肝切除した動物を用いて9日間投与試験を行いました。投与用量は300500700 mgとして、部分肝切除したラットに9日間強制経口投与しています。その結果、死亡あるいは振戦等の異常は、たまたまかもしれませんが、見られませんでした。体重増加の抑制もありませんでした。剖検時の500 mg以上で臓器重量を測った結果、肝臓と腎臓の相対重量の増加は認められています。

 これらの用量設定試験の結果から、一番上の高用量が500 mgから1,000 mgの間が適切であると判断しまして、一番上の高用量を720 mgに設定し、公比2で除して360 mg、一番下を180 mgという用量で行いました。

 結果です。m-クロロフェノールの一般状態所見としては、一番上の720 mg群で、投与後に振戦が見られた動物は約半数近く、異常呼吸音が数匹に認められました。投与によると思われる死亡が3匹に認められています。720 mg群では体重増加の抑制も見られています。これらの表が10ページに記載してあります。

 図1の体重の推移です。一番上の用量である720 mgで体重増加の抑制が認められましたが、360 mg以下では認められませんでした。表1です。肝臓重量に関しては、絶対重量は影響がなく、有意差はありませんでした。相対重量に関しては、中用量の360 mg、高用量の720 mgで、これも僅かですが増加が認められました。

 表2です。GST-P陽性細胞巣ですが、陽性細胞巣の数に関しては、高用量の720 mgまで対照群との差は認められませんでした。また、面積に関しても同様に、差は認められませんでした。以上から、プロモーション作用はこの物質にはないと判断いたしました。以上です。

○西川座長 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。 一番高い720 mgの群で死亡が3例見られていますが、振戦と異常呼吸音が認められたのは、この3匹に限定した所見ですか。

○日本バイオアッセイ研究センター いいえ。それは異なります。3匹中の2匹には振戦を見ていますが、1匹は振戦が認められませんでした。ただ、継続して見ているわけではないので、あと、振戦そのものが投与後の10分間ぐらいしか続いていないということもありますので、見逃した可能性はあるのですが、見られませんでした。異常呼吸音は3匹と同じ動物ではありません。

○西川座長 何か死亡例の死因が分かるような所見というものは見つかったのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 剖検の結果なのですが、特徴的な病変は臓器には認められません。ただ、恐らく、振戦が見られた時期が肝臓の部分切除をした後の大体2週間ぐらいに集中して見られており、死亡もその時期に同時に見られていますので、その神経毒と何か関わりがあるのかなとしか想像できませんでした。

○西川座長 なるほど。死亡例は高用量群の3例だけで、対照群を含めたほかの群には全くなかったのですか。

○日本バイオアッセイ研究センター 投与による死亡はありません。ただ、手術の失敗等による死亡は群に関係なく数例認められています。

○西川座長 数例ですか。分かりました。

○小野寺委員 オルト、パラに神経毒性があるということになっていますが、今回のメタは、用量的には720 mgというのは高濃度ですか。

○日本バイオアッセイ研究センター パラ体とオルト体はSDラットを使っているので、単純にフィッシャーと比較していいのか分からないのですが、ちょうどこのメタ体は真ん中に位置しているぐらいだと。同じように、やはり振戦も投与後に一過性に見られると両物質に関しても書いてありました。

○小野寺委員 ということは、神経毒性が起きている可能性は否定できないということですね。

○日本バイオアッセイ研究センター はい。

○西川座長 ほかはよろしいでしょうか。ないようですので、本物質についても、肝臓に対する発がんプロモーション作用はないという結論になるかと思います。ありがとうございました。

 続いて、2,2'-[1,2-エタンジイルビス(オキシメチレン)]ビス(オキシラン)の試験結果について説明をお願いいたします。

○ボゾリサーチセンター ボゾリサーチセンターの黒岩と申します。よろしくお願いいたします。[エタンジイルビス(オキシメチレン)]ビス(オキシラン)の説明をいたします。資料1-3を御覧ください。

 被験物質の名称、化学的特徴、物性、製造・輸入量及び用途、有害情報を記載させていただいています。物質の外見としては、透明の液体で、無色からごく薄い黄色、特異臭があります。水には溶けやすい物質です。有害性情報としては、既存化学物質のデータベースのほうにありましたラットを用いた反復投与毒性・生殖発生併合試験、それから細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の情報がありました。

 次に、実験方法の説明をいたします。前の物質と方法は同様ですので省略させていただきます。本被験物質に関しては、注射用水に溶解して、用量としては、0620及び60 mg/kgというドーズで試験を行いました。

 用量設定の説明です。本試験を実施するに当たって、事前に用量設定試験を2試験実施しました。また、先ほどの他施設で行われたSDラットを用いた毒性試験報告も参考にさせていただきました。

 まず、最初の用量設定試験では、無処置のF344ラットの雄を用いて、被験物質を1週間強制経口投与しました。その結果、600 mg/kg投与群で死亡が見られ、200 mg/kg投与群では、強い体重増加抑制が認められました。その結果に基づきまして、200 mg/kgは、2段階発がんモデルにおける最大耐量を上回るだろうという判断をしました。

 続いて、F344の雄ラットに被験物質を1週間投与して、その後部分肝切除を行い、更に1週間、計2週間投与する用量設定試験というスケジュールで実施しました。この試験においては、60 mg/kgの投与でも動物の状態悪化は認められませんでした。先ほど御紹介したSDラットを用いた4週間の反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験では、50 mg/kgで体重の低値、それから腺胃の慢性潰瘍が認められたという報告がありました。

 したがって、本試験では、部分肝切除ラットに被験物質を6週間反復投与するということを考慮しまして、軽度の毒性が発現する可能性のある60 mg/kgを高用量とし、以下、公比約3で除して、20及び6 mg/kgを中及び低用量群に設定いたしました。

 結果を説明いたします。先ほどと同様に、図1に体重があります。体重には被験物質投与の影響は認められませんでした。それから、摂餌量にも変化は認められていません。それから、一般状態の変化もありませんし、死亡の発生もありませんでした。表1ですが、肝臓重量の増加が60 mg/kg投与群で認められました。しかし、肝臓にはHE染色の観察では、被験物質投与による組織学的変化は認められませんでした。GST-P陽性細胞巣は表2に示していますが、こちらも被験物質投与群では、いずれの群にも差は認められませんでした。一方、陽性対照群のほうでは、フェノバルビタール投与で認められる体重や摂餌量の増加、肝重量の増加、小葉中心性の肝細胞肥大等が見られ、GST-P陽性細胞巣の面積当たりの個数、それから面積のいずれも統計学的な有意な高値が認められ、試験の妥当性が示されました。

 以上の結果から、[エタンジイルビス(オキシメチレン)]ビス(オキシラン)は、本試験条件下において、肝発がんプロモーション作用はないと判断いたしました。以上です。

○西川座長 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

○小野寺委員 肝に対するプロモーション作用はないとは思いますが、これは前胃で扁平の過形成とか、潰瘍が見られたのはこの薬物の直接的な作用と見ていいのですか。

○ボゾリサーチセンター 今回のF344ラットの試験では、前胃の変化は認められなくて、肝臓の重量変化だけが認められたという結果になってしまいましたが、SDラットの方では、恐らく直接的な前胃、あるいは腺胃に対する刺激性を反映した変化ではないかと考察されていると思います。

○小野寺委員 ラットによっても反応が違うのかと思ってよろしいのですね。

○西川座長 60 mg/kg群の肝臓の相対重量が増えていて、体重には変化はないということから、何らかの投与の影響が示唆されますけれども、組織変化はないという記載がありますが、軽微な肥大等もなかったという理解でよろしいですか。

○ボゾリサーチセンター 若干の小葉中心性の肝細胞肥大のような雰囲気もあったのですが、毒性所見、異常所見として取り上げるような程度の変化ではありませんでした。

○西川座長 あったとしても、ごく軽度ということですね。

○ボゾリサーチセンター はい。

○西川座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。

○若林委員 前のバイオアッセイさんと、ボゾさんで表12で、表の片方は検索匹数で、片方は有効動物数と書いてありますが、これは、違いはないのですね。

○ボゾリサーチセンター 基本的な違いはないと思います。ただし、我々の施設では、最初の試験開始匹数を25匹から開始しています。若干、動物数が多かったかという気はします。

○津田委員 25匹でスタートなのですね。

○ボゾリサーチセンター はい。

○津田委員 そうすると死亡原因は何ですか?

○ボゾリサーチセンター 全て肝臓のヘルニア結節があって、手術に耐えられないと判断して、動物福祉的な観点から安楽死させたということになります。

○津田委員 オペ中に死んだのではないですか?

○ボゾリサーチセンター オペ中に死んだのはありません。この試験に関して、2例が試験期間中に手術の影響で死亡しましたが、被験物質投与による死亡はありませんでした。

○西川座長 よろしいですか。検索匹数と有効動物数とは、全く同じと考えてよろしいですね。

○ボゾリサーチセンター そうですね、検索匹数、はい。検索されている匹数と有効動物数はイコールです。

○西川座長 同じですね。

○若林委員 細かいことですが、図1も横軸はweekdayのどちらかに統一されたほうがいいのではないでしょうか。

○西川座長 どちらに統一するかという問題はありますので、本質なところではありませんので、取りあえず。

○若林委員 でも報告書になりますよね。

○西川座長 だから、どちらに合わせるかという問題もありますので、取りあえずは。今後の課題としたいと思います。

○平川化学物質評価室長補佐 どちらが適当かという知見があれば、教えていただければと思います。

○若林委員 どちらですかね、これでいくと。

○津田委員 週でやっているから、週のほうがいいわけですよね。

○若林委員 週のほうがいいかもしれないですね。

○西川座長 また御意見をいただくということで、今回は。

○平川化学物質評価室長補佐 今のところは、そうすると週で一応いくということでの方向で、また来年度以降につなげていくという感じでよろしいでしょうか。

○西川座長 よろしいですか。

○平川化学物質評価室長補佐 週ということで、来年度以降対応させていただきます。

○西川座長 あと、動物数はどうしますか。検索匹数か、有効動物数なのか。

○津田委員 それはですね、2520となるのは、やはり技術的な問題だと思うので、十分習熟してください。

○西川座長 いや、そういう問題ではなくて、記載ぶりなのです。検索匹数という記載か、有効動物数という記載か、どちらが適当かということです。

○津田委員 言葉が違うわけですか、意味が。

○西川座長 意味は全く同じだと思いますが、記載方法が違うということです。

○津田委員 事実上は有効動物数になるでしょうね。

○小野寺委員 実験開始動物数のことだけだと思いますね。それで、先ほどヘルニアが多いからと物理的にどうしても肝部分切除のときに、そこがネックになって出血も起こるというのは分かるのですが、その発生率も大体一定なのでしょうか。

○ボゾリサーチセンター ある程度動物のロットによって変わりますが、チャールス・リバーのこの系統に関しては、1020 %近い発生率があります。多い方を見越すと、25匹から開始したほうがよいと考えました。

 それから、昨今の動物福祉の関係で、そういったヘルニア結節のある動物を無理に手術して、そのまま生きながらえさせるということはなかなか難しい。我々の施設の動物福祉のポリシーとしては難しいということがありまして、そういう病変があった場合には、その場で安楽死処置をするというような処置を取りますので、どうしても最初の動物数が多くなってしまうということになります。

○小野寺委員 津田先生がおっしゃったように、結局、技術的に解決できるものだったならば、それは術技を習練し、うまくなって死なせないほうがいいのですけれども、ラット自体がそういう奇形を持っていて、手術が成功しても死んでしまうとなれば、使用するラットの系統を考えなければいけないのか、それとも、従来からこのぐらい多かったのか、私の経験からすれば、昔はもうちょっと少なくて、最近などの20 %は、結構の頻度で出てくるのかという感じがするので、もしかしたら、動物の系統を考えて、これの試験に関してはそういう不具合を、少ないほうに変えていくのも方法かなという気はします。

 それで、どうしてもやはり、以前のというか、前の試験を見てもそうなのですが、動物数が高濃度で弱って、欠損率が高くなってくるのです。そういうところから考えると、物質の投与が原因で死んだのか、技術的アクシデントが原因で死んだのか鑑別がつかなくなるので、やはりこれからは少し考えておいたほうがいいかと思いました。

○西川座長 いわゆる肝部分切除法というのは、恐らくフィッシャーラットでずっとやってきているというデータの蓄積があると思います。したがって、ここで系統を替えるというのはどうなのでしょうか。

○小野寺委員 例えば、これからどんどん欠損率が増えていって、30%あるいは40%以上もこういう事態が出てきたときには、やはり評価に影響を与えると思います。

○西川座長 様子を見ながら。

○小野寺委員 そうですね。

○西川座長 あまり多いようであれば、系統を替えることも考える、視野に入れるということですね。

○若林委員 F344でも、購入先によって少し違ってくるような気がした経験がありますが。

○西川座長 そうですね、そのブリーダーによって、大分違うということはよく言われます。

○日本バイオアッセイ研究センター 同じブリーダーの同じ系統でも、ドリフトしたときに、もとの卵に戻せと言って、うまくいったケースはマウスではあるのです。だからラットでドリフト、ブリーダーが気付いているかどうかなのですが、今、竹内に聞きまして、彼はあまり増えたように思っていないので、もともと1割から2割と言っているので、もしドリフトしていないなら、このままでいいのかと。ですから、データを集めるのが先かもしれないですね。

○西川座長 そうですね、取りあえず進めてみて、あまりにも多いということになれば、少し考えるということでいかがでしょうか。

○津田委員 そのヘルニアがあるために死亡したことを、どうやって見つけるのですか、具体的に。私はそのようなヘルニア例はほとんど経験していないので、よく分からないのです。

○ボゾリサーチセンター 開腹したときに、ポコッと横隔膜にはまってしまっていると手術ができないという、そういうことだと思います。

○_ 無理にそこをはずしてしまっても結局、ヘルニアの部分が空いてしまうので、内臓が吸い込まれて死んでしまいます。

○ボゾリサーチセンター 術前に、もうおかしいのが見つかっている場合はやめているということなのです。

○津田委員 そんなに腹を開くのですか、肝臓が全部見えるぐらい。

○ボゾリサーチセンター 横隔膜に、ヘルニアで。

○_ 完全に穴が空いてしまっています。

○_ 陥入してしまっています。

○津田委員 どのぐらいですか。5 mmとか、7 mm

○ボゾリサーチセンター はい。大きいものでは1 cmぐらい。

○津田委員 要するに、肝臓が胸腔に入っているということですか。

○ボゾリサーチセンター そうです。

○_ それは奇形として。

○津田委員 もちろんそうだけれども、どの時点で分かるのですか。

○ボゾリサーチセンター 手術をする際に、開腹した時点ですぐに分かります。

○津田委員 そんなに腹を開くのですか。

○ボゾリサーチセンター はい、パカッと。

○津田委員 普通、私の経験では、1 cmあれば十分、それできちんとPHできました。

○ボゾリサーチセンター いえ、肝臓を出してきたときに、引っ掛かっているのが分かるので。

○津田委員 どこに引っ掛かっていますか。

○ボゾリサーチセンター 横隔膜に陥入している状態で。

○津田委員 横隔膜ごと出てくるということですか。

○ボゾリサーチセンター 横隔膜に陥入している状態で引っ掛かって、肝臓がいつもどおり出てこない状態になります。

○日本バイオアッセイ研究センター 手術のときに腹壁を開いて、肝臓を上に出すのですが、そのときに、横隔膜にくっついていると当然出てこない。あれっと、思って見ると、確かに中を覗くと、ヘルニアが完全にあって、横隔膜に癒着しているので、小さいものに関しては何とかそっとはずしてやるのですが、大きいものですと、それを除去した時点で、出血が大量に出ますし、無理にすると、横隔膜に穴が空いて、この場で死亡するということを、こちらで経験しています。そのままちょっとひどいもので、おっしゃるように、頑張ってそのまま取って、閉腹して置くと、今度、肝臓が肥大してきたときに、肝臓が出るというよりも、腸管を胸腔内に押し出してきて、ある日、呼吸異常が見つかって、あっ、これは起きているなというのが分かって、安楽死させてみると、胸腔内に腸管がたくさん入り込んでいるというのが数例見られます。

○津田委員 それが20匹のうち5匹もいるのですか。

○ボゾリサーチセンター 20 %。

○津田委員 ちょっと異常ですね。

○小川委員 以前、そこまではなかったかもしれないですけれども。

○津田委員 小川先生はたくさんやっておられますが、どうですか。

○小川委員 確かに腹腔を開けたときに、小さい結節があるというのは以前からあったと思いますが、以前にやっていた頃はそこまでの数はなかったかもしれないです。事実であれば仕方がない。

○西川座長 だから、ブリーダーによる可能性があるので、それを見てということでいいではないですか。

○小川委員 そうですね。

○西川座長 ということで、ほかはよろしいでしょうか。それでは、この物質についても、肝臓におけるプロモーション作用はないという結論になるかと思います。ありがとうございました。

 続いて、3-メチルブタナールの試験結果について説明をお願いいたします。

○ボゾリサーチセンター 続いて、3-メチルブタナールについて説明いたします。資料1-4を御覧ください。被験物質名称、物理化学的性状、製造・輸入量及び用途、有害性情報については記載のとおりです。試験方法に関しても、先ほどの物質と同様ですので省略いたします。

 この物質は水にあまり溶けませんので、コーン油に溶解する方法で投与しました。投与量については、0100300及び1,000 mg/kgとしました。

 用量設定の理由についてです。先ほどの物質と同様の方法で、事前に2つの用量設定試験を実施しています。本被験物質については、動物試験の情報が乏しかったため、LD50 の値を参考にしています。

 最初に行った1週間投与の用量設定試験では、LD50 値の4分の1の用量から始めましたが、著変が見られませんでしたので、途中でLD50 値の半分量まで増量して検討しました。その後に肝部分切除した動物での検討を行いました。これらの用量設定試験の結果、高用量を1,000 mg/kgとし、以下、公比約3で除して300100 mg/kgを中及び低用量に設定しました。

 結果についてです。被験物質投与による一般状態の変化や死亡の発生は認められませんでした。また、摂餌量にも変化はありませんでした。図1に体重の推移を示しております。1,000 mg/kg投与群で、体重増加の抑制が見られ、試験の48日以降、2回の測定時点の所で統計学的に有意な低値が認められました。剖検を行った結果、いずれの臓器にも肉眼的異常は認められませんでした。表1に、肝臓の重量の測定結果を示しております。高用量の1,000 mg/kg投与群では、肝臓の絶対重量に統計学的な有意な低値が認められましたが、相対重量のほうには明らかな差がないということから、剖検時体重の低値に影響を受けた変化ではないかと考えました。また、100 mg/kg投与群でも、相対重量のほうに有意な差がつきましたけれども、これも用量との関連性がないので、偶発的変動ではないかと考えました。

 続いて、表2GST-Pの陽性細胞巣の測定結果を示しています。いずれの被験物質投与群においても、統計学的な有意な差は認められませんでした。なお、肝臓のHE染色の観察結果においても異常は認められていません。陽性対照群においては、GST-P陽性細胞巣が統計的に有意な高値が見られており、本試験の妥当性が示されました。

 以上の結果から、3-メチルブタナールは、本試験条件下において、肝発がんプロモーション作用はないと判断いたしました。以上です。

○西川座長 ありがとうございます。それでは、御意見、御質問をお願いいたします。

○若林委員 表23-メチルブタナール、GST-Pの陽性肝細胞巣ですが、100300とちょっと増えて、1,000でやや減っているのですが、この減っているところは有意差はないのですね。

○ボゾリサーチセンター はい、ありません。

○若林委員 分かりました。

○西川座長 そのほかはよろしいでしょうか。

○津田委員 細かいことを聞きますが、麻酔は何でやりましたか。やはり報告書に書いたほうがいいと思います。

○ボゾリサーチセンター 手術の際の麻酔ということでよろしいでしょうか。

○津田委員 はい。

○ボゾリサーチセンター イソフルランの吸入麻酔を使用しております。

○津田委員 何パーセントですか。

○ボゾリサーチセンター レポートのほうに明記していたか分かりませんが。手術ですので、2 %の濃度で実施しております。

○津田委員 はい。それは報告書に本当はきちんと書いたほうがいいです。

○ボゾリサーチセンター はい、分かりました。

○津田委員 PHのところに。

○ボゾリサーチセンター 今後、注意いたします。

○西川座長 これは、多分、事務局にお伺いしたほうがいいのですが、LD50 値が5,600で、遺伝毒性試験で、エームス試験、小核試験が陰性なのですけれども、これをどうして試験をしたかについて。すごく毒性は弱いと思いますけれども。

○小野寺委員 すごく用量は高いと思います、5,600というのは。何か安全性に懸念があったのでしょうか。

○西川座長 念のためお伺いします。

○平川化学物質評価室長補佐 3-メチルブタナールについては、資料2-130ページを御覧ください。形質転換試験が行われた結果、陽性の評価となりまして、それで候補ということで入れさせていただいております。製造量等区分についても、化審法の製造数量より、2tという数字もあり、試験が可能であるということで、試験をしていただいたものです。

○西川座長 よく分かりました。ほかはよろしいでしょうか。ないようでしたら、この物質についても、肝発がんプロモーション作用はないという結論になるかと思います。

○若林委員 そうすると形質転換試験の結果は、ここに書く必要はないのですか。

○平川化学物質評価室長補佐 今回は記載を求めておりませんでした。

○若林委員 それがないと、これを見ただけだと。

○平川化学物質評価室長補佐 分かりました。

○西川座長 そうですね。

○若林委員 西川先生のほうが質問されたので。

○平川化学物質評価室長補佐 次回以降、形質転換試験の結果についても入れていただくような形で、こちらの方でも留意いたします。

○西川座長 よろしくお願いします。では、次に移ります。3-クロロ-1-プロパノールの試験結果について説明をお願いいたします。

○ボゾリサーチセンター 資料1-5を御覧ください。被験物質の名称、物理化学的性状等、製造・輸入量及び用途、有害性情報等については、こちらの記載のとおりです。試験方法についても先ほどと同様ですので省略いたします。

 投与量については、060200及び600 mg/kgとして、注射用水に溶解する方法で投与しました。

 用量設定の理由についてです。これも先ほどの2つの物質と同様の方法で、用量設定試験を実施しております。本被験物質についても毒性情報が乏しいということから、LD50 値を参考に設定しています。この用量設定試験の結果、高用量を600 mg/kgとし、以下、公比約3で除して、200及び60 mg/kgを中及び低用量という群を設定しました。

 結果についてです。被験物質投与による一般状態の変化や、死亡の発生は認められませんでした。図1を御覧ください。体重を示していますが、600 mg/kg投与群で強い体重増加抑制が見られ、試験の34日目以降のところで、統計学的な有意な低値となっています。この群では、摂餌量の低値も認められました。剖検においては、600 mg/kg投与群で、精巣の小型化が認められました。表1に肝臓重量の測定結果を示しています。600 mg/kg投与群で肝臓の絶対重量及び相対重量に統計学的に有意な低値が認められました。しかし、HE染色の観察では、肝臓に組織学的な変化は認められていません。表2GST-P陽性細胞巣の測定結果を示しています。600 mg/kg投与群で単位面積当たりの個数の低値が認められました。陽性対照群では、フェノバルビタールナトリウム投与によって認められる増加が観察されて、本試験の妥当性が示されました。

 以上の結果から、3-クロロ-1-プロパノールは、本試験条件下において肝発がんプロモーション作用はないと判断しました。以上です。

○西川座長 ありがとうございます。それでは、御意見、御質問をお願いいたします。

○小川委員 こちらも先ほどと同じで、有害性情報のところにあまり情報が書いていないので、できれば記載いただいたほうがよろしいかと思います。

○平川化学物質評価室長補佐 補足をさせていただきます。同じく資料2-129ページを御覧ください。網掛けのところの英語表記で3-chloropropan-1-olとなっているものがこの物質です。

 これが選ばれた経緯ですけれども、備考欄にあります今年度の遺伝毒性評価ワーキンググループで文献調査の結果、「強い遺伝毒性あり」という評価で、同じく平成28年変異原性指針の対象物質となっています。

○若林委員 そうすると、これはエームス陽性ですね。

○平川化学物質評価室長補佐 遺伝毒性の総合評価ということで「強い遺伝毒性あり」ということで、文献でもエームス試験の結果が陽性と出ているものです。

○西川座長 これ、肝重量が減っているのですが、GST-Pの陽性巣もやはり減っていると。以前の肥大があったから、見掛け上、数が減ったというのとちょっと違うような気がしますけれども、いろいろなパターンがあるのだと思いました。肝重量はそれなりに減少しているのですが、組織変化は全くないということでよろしいですか。

○ボゾリサーチセンター こちらも生理的に体内の変化としては、グリコーゲンの減少傾向のようなものは見られております。摂餌量が10 %程度の低値を示していますので、栄養不良というような原因での変化かと。

○西川座長 なるほど。

○ボゾリサーチセンター ただ、生理的範囲内の変化でしたので、所見とはしておりません。

○西川座長 よく分かりました。ありがとうございます。

○津田委員 このモデルは、一般的に肝毒性のある物質の試験では、肝臓がやはり年齢というか、日齢に比して、それほど大きく育ってこないで、遅いのです。そうすると、そういう状態でこのモデルでPHをやっても、やはり小さい。これは一般的に経験されています。

○小野寺委員 それは肝毒性になるものですか。例えば、この例のように、今までのような、いわゆる摂餌量が足りなくて、その影響で体重が下がって、発育が抑制され、肝臓のグリコーゲンが抜けて、いわゆる肝重量が低くなったという場合も、肝毒性と同じような反応でGST-Pが少なくなると考えていいのですか。

○津田委員 ありえます。

○西川座長 ほかによろしいでしょうか。ないようでしたら、本物質についても肝発がんプロモーション作用がないという結論になります。ありがとうございます。

 最後ですが、2-メトキシエチル=アクリラートの試験結果について説明をお願いいたします。

○ボゾリサーチセンター では、資料1-6を御覧ください。被験物質の名称、物理化学的性状等、製造・輸入及び用途、有害性情報については、記載のとおりです。試験方法についても先ほどと同様ですので、省略いたします。

 本被験物質については、投与量は、02060及び200 mg/kgとしまして、これも注射用水に溶解して投与いたしました。投与量設定の理由について説明いたします。先の物質と同様に、2つの用量設定試験を実施して用量を決めました。この物質に関しましても毒性情報が乏しく、LD50 の値を参考に用量設定を行っております。これらの用量設定試験の結果、投与量を200 mg/kgとし、以下、公比3で除して60及び20 mg/kgを中及び低用量に設定いたしました。

 結果の説明をいたします。被験物質投与による一般状態の変化や死亡の発生は見られませんでした。図1に体重の推移を示しております。60及び20 mg/kg投与群で体重の増加抑制が見られました。200 mg/kg投与群では部分肝切除の手術の前の測定時点から有意な低値が、60 mg/kg投与群では、最後の2回の測定ポイントのところで有意な低値が認められています。また、これらの群では摂餌量の低値も認められました。剖検では、200 mg/kg投与群で前胃の隆起巣、精巣の小型化、胸腺の小型化が見られています。表1に肝臓の重量の測定結果を示しております。200 mg/kg投与群では、肝臓の絶対重量が有意な低値を示す一方で、相対重量では逆に有意な高値となっています。しかし、これらは剖検時体重の著しい低値に伴う変化で、毒性学的には意義のない変化ではないかと判断いたしました。

 続いて、表2GST-P陽性肝細胞巣の集計結果を示しております。全ての被験物質投与群において、統計学的に有意な変化は認められませんでした。また、HE染色の観察においても、肝臓に組織学的な変化は認められませんでした。陽性対照群においては、フェノバルビタールナトリウム投与で認められる変化が観察され、GST-P陽性細胞巣も有意な高値となっていますので、本試験の妥当性が示されました。

 以上の結果から、2-メトキシエチル=アクリラートは、本試験条件下において肝発がんプロモーション作用はないと判断いたしました。以上です。

○西川座長 ありがとうございました。

○平川化学物質評価室長補佐 事務局から補足をさせていただきます。2-メトキシエチル=アクリラートにつきましては、本日配布資料の30ページの真ん中下辺りにあります網掛けしておりますところの、平成27年度の形質転換試験陽性ということで候補に挙がりまして、本日、評価をしていただいているものです。

○西川座長 ありがとうございました。それでは御意見、御質問をお願いいたします。

○若林委員 この化合物の表1と表2ですが、投与量0 mg/kgの有効匹数が15匹と、かなり少ないのです。ほかのものは、ほとんど20匹前後なのですが。何か理由があったのですか。

○ボゾリサーチセンター これら弊社で担当させていただいた4試験は、それぞれ、ちょっと時期を違えて実施しておりまして、この試験が最後に実施した試験なのですが、この、納入ロットというか、動物ロットの肝臓のヘルニア結節の発生率が特に高かったということになります。

○津田委員 結構多いのではないですか。

○ボゾリサーチセンター そう思います。

○津田委員 いや、そう言われても。スタートは何匹ですか。

○ボゾリサーチセンター スタートは25匹からやっております。

○津田委員 25匹で15匹というのはまったく異常です。

○ボゾリサーチセンター 異常ですね。

○若林委員 25匹で15匹ですから、10匹がそうだったということでしょう。

○ボゾリサーチセンター 当然、中には手術のミスというものも考えられると思うのですが、それ以前に、やはり肝ヘルニア結節の発生が多かったということは弁明させていただきたいと思います。

○津田委員 そのぐらい多ければ、ブリーダーに文句を言ってもいいのではないですか。その前にPHの技術の向上を図ってください。

○小野寺委員 あともう1つよろしいですか。

○西川座長 どうぞ。

○小野寺委員 全般的に思うのですが。先ほどの質問ですが、体重が減ったときには肝重量も減って、GST-Pの陽性細胞も減ってくるということになってくると、肝に対する発がんプロモーションの検定からいくと、いわゆる少なくなって陰性という結果が出ると思うのです。それは真の結果ですか。

○津田委員 そこまで減ってしまうことは経験していません。

○小野寺委員 ないですか。

○津田委員 一般にあまり強くない肝毒性があって肝臓も大きくないという場合、GST-P陽性巣も少ない、あるいは、増殖もやはり弱いということが経験されました。しかし、それが陽性になるものを隠してしまうほど強力ではないです。

○西川座長 よろしいでしょうか。

○小川委員 結果自体にはそれほど問題はなく、このとおりでいいのかなと思うのですが、記載の方法も問題かと思うのです。剖検時の体重が著しく低値であるということで毒性学的な意義がないという言い方は、言い回しをもう少し工夫されたほうが。これは毒性影響だけれども、プロモーター作用を見ているところではあまり関係のないことだということだと思うのです。

○西川座長 どの部分ですか。

○小川委員 結果の24ページの5行目ですかね。

○西川座長 だからこれは肝臓のことを言っているわけでしょう、それ以外の毒性について書いているわけではないですよね。

○小川委員 分かりました。すみません。

○西川座長 確かにロットによってヘルニアの頻度が高いような傾向はありますので、この辺り、引き続き注意しながら進めていくということしかないかと思いますので、よろしくお願いいたします。これはよろしいでしょうか。

○日本バイオアッセイ研究センター 不勉強で申し訳ないので津田先生とかにお伺いしたいのですが、これにカロリー制限を加えるとどうなりますか。単にDNと部分肝切除をやったときのカロリー制限の影響と、それにフェノバールをこのように25 mg与えたときにカロリー制限を同時にやったときにどのぐらい影響されるかということは、恐らく基礎検討された上だと思うのですが、その辺はデータはありますでしょうか。

○津田委員 それはやっていません。

○日本バイオアッセイ研究センター そうですか。当時、いろいろなことを一生懸命にやられてここのプロトコールを決められたとは思うのですが、先ほどから津田先生のコメントを伺っていると、再生するところで邪魔してしまうと止まってしまうというお話があったので、一番簡単なのはカロリー制限だと思うので、それでどのぐらい影響しているかというのを知っておいたほうがいいのかなというのが1つと、今更プロトコールを変えるということはできないかもしれませんが、部分肝切除のときは投与しないとか。きっと昔、そういうこともやられたのでしょうね、どうなのでしょうかね。だから、肝障害性とGST-P 細胞巣のプロモーションが違うメカニズムで出てしまう薬の場合、どうなるのかなと。それをフェノバルビタールで再現するとなると、カロリー制限をかませてみるとか。今後も、こういうパターンが多いのだとすると、そういうことで少し安心しておきたいというところはあるのです。

○津田委員 バイオアッセイさんでやってみてください、ちょっと研究的になってしまいますが。

○西川座長 研究ですよね。一応、完成したプロトコールがありますので、それに沿ってやっていただくということで、それ以外の改良については。

○小野寺委員 もしも改良して最高用量の群を体重に変化を及ぼさない群と決めてしまうかですね、取りあえず肝に対するプロモーター作用だけを見るとすると。

○日本バイオアッセイ研究センター そこは、今までの経験で言うと、そこまでやると弱すぎるのでしょうね。

○西川座長 そうです、用量が少なすぎるということになりますよね。だから、そこはやはり問題だなと。

○津田委員 大雑把に言うと、最高用量はLD50 値の半分の用量ということで実施していました。大体、これでも合っていますね。その辺りだと思います。

○西川座長 そのほかはよろしいでしょうか。ないようですので、本物質につきましても肝発がんプロモーション作用はないという結論になります。ありがとうございました。

 それでは議題(2)に移りたいと思います。平成29年度の中期発がん性試験の対象物質の選定について、事務局から説明をお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 議題(2)の説明に移らせていただきます。平成29年度の中期発がん性試験の対象物質の選定です。この候補物質ですが、まず、参考資料4を御覧いただければと思います。こちらは、参考資料4の所に「中期発がん性試験対象物質の選定方針について」ということで、()がついていますが、これで確認されているというものです。この平成26年度第2回リスク評価に係る企画検討会での確認事項ということで、この企画検討会で中期発がん性試験対象物質の選定についても行っているというところです。この2番の選定方針ですが、下記の1から4のいずれかに該当する物質が中期発がん性試験の対象ということです。1、3、4につきましては、基本、遺伝毒性の強い物質ということ。2が形質転換試験において陽性と評価された物質が候補に挙がってくるというものです。

 そのような考え方の下、作成いたしましたのが本日配布しております資料2-1です。先ほども、逐次、この資料2-1で特に今年度実施された物質、網掛けをしております部分についての備考欄の根拠ということでお話させていただきました。ここの網掛け部分につきましては、本日、評価は済んでおりますので、この網掛けの部分のものにつきましては、今回、候補から消えるということになります。残りの物質、1から102の物質が候補として考えております。一方、先ほど参考資料4のところで数量についても考慮するという考え方が示されており、数量を考慮した表を資料2-2として配付させていただいております。

 こちらの数の拾い上げですが、◎が化審法一般、化学物質製造・輸入数量で1万tを超えるもの、●が5,000tから1万t、▲が1,000tから5,000tの範囲ということでの数字です。ある一定の数量があるものということで、検索いたしますと、ここに掲げております約20物質が対象になるものと考えられます。ここに製造量等区分ということで付けています。あと、その隣に平成27年度企画検討会候補物質ということで付けております。企画検討会から言われているものとしてここに●と書かれているもの。あと、平成28年度遺伝毒性評価は、遺伝毒性ワーキンググループ結果ということで挙がっている、陽性、強い変異原性があったり、形質転換で陽性があるようなものが■ということで書かれております。一応、考えられる物質としてはここのリストになりますが、この物質につきましては、また、後日開かれます企画検討会で選定についての御議論をいただいた後に、試験実施可能性等を踏まえまして、今後、物質の選定をさせていただくことになりますので、本日は、こういった候補があるということの説明にとどめさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○西川座長 ありがとうございました。ただいまの御説明について何か御意見、御質問等がありましたら、お願いいたします。資料2-2の一番上、これは今日、審議した物質の1つではないですか。

○平川化学物質評価室長補佐 これは、化審法の番号は、同一であり、同じ種類の化学物質ということになりますが、構造が若干違う物質ということです。

○西川座長 すみません、違いが分かりませんでした。非常によく似ていますね。

○平川化学物質評価室長補佐 見方としましては、CAS番号で同じかどうかというのを見ていただければと思います。CASナンバーが違うものにつきましては違う物質ということです。

○西川座長 分かりました。確かにちょっと違いますね。それでは、よろしいでしょうか。

 それで、ただいま説明していただきましたように、試験をする物質につきましては、今後、企画検討会における御意見をいただいてから最終的に決めるということになっております。その前に特に御意見があればお願いしたいということです。特にないようですので、次に移りたいと思います。

 次に、議題(3)、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験による調査の基準についてです。前回の審議でその導入に関して各委員から熱心な議論をいただいたことから、まず、前回の進行内容を事務局から御説明願います。

○上月有害性調査機関査察官 それでは資料3-135ページ、第2回発がん性評価ワーキンググループの検討結果(要旨)を御覧いただきたいと思います。第2回のワーキンググループでは遺伝子改変動物による発がん性試験の導入について御検討を賜りました。前回の検討結果を要旨としてまとめておりますものです。

1つ目は、多臓器の発がん性試験に遺伝子改変動物による発がん性試験を導入することはワーキンググループとして承認。ただし、粉じんの発がん性評価は、長期発がん性試験でも最終期に発がんが認められることになったことから検討が必要。

2つ目は、遺伝子改変動物の選定について御検討いただきました。各委員から、遺伝毒性が強い化学物質についてはrasH2マウスのみで十分ではないか。発がん性が微妙なものについてはrasH2マウスとp53ヘテロ欠損マウスとしてはどうか。遺伝子改変動物の選定については、被験物質に応じてその組合せを検討することが適当ではないか。このような御議論をいただき、最後に西川座長から、当面は本試験のキックオフであり、軌道に乗るまでrasH2マウス、p53ヘテロ欠損マウスの両方の実施が適当との整理でもいいのではないかというまとめをいただきました。

3つ目は、平成29年度の対象物質につきましては、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、二酸化窒素を対象とするということで承認。

 最後は、次回、本日ですが、用量設定試験における遺伝子改変動物の使用の必要性について調査基準を議論ということで進行いただいたところです。以上です。

○西川座長 ただいまの御説明について何か御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。

○若林委員 二酸化窒素の投与方法はどういう方法でしょうか。

○上月有害性調査機関査察官 前回御説明しているところですが、本日の資料の中にも、もともとは一酸化窒素という形であるのですが、金属払拭であるとか、多い所として、メッキ塗装とか、そういう所で発生するという、払拭の現場では製造工場等で結構多い使用があるというようなものです。

○若林委員 いや、動物への投与方法については。

○上月有害性調査機関査察官 投与方法は経気道ばく露という形に。

○若林委員 分かりました。

○西川座長 よろしいでしょうか。

○若林委員 経気道ばく露は局所ですか、それとも全身ですか。

○上月有害性調査機関査察官 全身で。

○西川座長 ほかはよろしいでしょうか。p53ノックアウトというのは、非遺伝毒性発がん物質は検出力があまり良くなかったのではないかと思うのですが、違いますか。

○小野寺委員 弱いと思います。

○西川座長 当面、その2種類の遺伝子改変マウスでということにしているのですが、やはり両方必要ですか、なかなか難しいことですが、どっちかでということであれば意味はあると思うのですが。よろしいですか。特にないようですので。

 次は、前回の審議で用量設定試験における動物の選定などについて日本バイオアッセイ研究センターに検討をお願いした、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験による調査の基準の改正案について、説明をお願いいたします。

○日本バイオアッセイ研究センター 前回のワーキンググループのときの、特に用量設定試験の部分の議論を踏まえまして、簡単ですが、幾つかこのような追加をしたらいかがかということで提案させていただいたものです。37ページの資料3-2にあります調査の基準の改正案として記載してあります。

4番の被験物質の用量の所ですが、最初と順番が逆になりますが。用量設定試験に用いる動物として、なお書きで下線部に書いてありますとおり、「なお、用量設定試験に用いる動物は、がん原性試験に用いる遺伝子改変動物の野性型を用いることができる」とただし書をしたらいかがかと。それから、「1か月」と言ったら4週間イコールではないだろうかとか、「6か月」と言ったら26週間イコールではないだろうかという、そういうことを言う方もいらっしゃったので、できれば、予備試験に関しては4週間程度の用量設定試験、5番の投与期間においては26週間以上とさせていただければその辺はクリアになるのかなということで、この辺はあくまで追加ですが、変更させていただければという御提案をさせていただきます。

○西川座長 ただいまの改正案について御意見をお願いいたします。いいですか。

○小野寺委員 いいです。

○西川座長 ありがとうございます。

○若林委員 遺伝子改変動物はもう少し短期に出てきませんか。

○西川座長 一応、遺伝子改変モデルにつきましては結構多くの試験がやられていて、26週間というところで一応、投与期間は決まっていますので。

○小野寺委員 先生のおっしゃっているのは、物質に発がん性があった場合にはですか。

○若林委員 もう26週間以前に終わってしまうような。

○小野寺委員 それはそれとして、最長26週間ということで。通常のがん原性試験でも、結果が陽性となって早期にがんが発生してきた場合には期間前に試験を終わることも可能です。ですからこれは、26週間は最長期間であって、ここまで観察してもがんができなかったと判定する。それ以前に判定できる分に関しては、もうそこで実験を終了しても構わないということなのです。

○若林委員 ……。

○小野寺委員 ええ。それで、動物が死ぬ、もしもそうなったときに、最高用量ががんで全部亡くなる場合とか。

○若林委員 コントロールまでも含めて一緒に。

○小野寺委員 いや、発がん性の評価だけなのでコントロールを見なくても、陽性判断ができればいいと思います。

○若林委員 そんな決まりがありますか、私はそうした決まりがないとは思うのですが。

○小野寺委員 いや、ポジティブかネガティブかという評価をするのだったら、私はそれでいいと思うのです。

○若林委員 では、取りあえず26週間ばく露して。当然、早く腫瘍ができて、特に高い用量群で死亡例が出ることがある。

○小野寺委員 いや、がんが原因でも死亡ですよ。

○若林委員 がんで。

○小野寺委員 ええ。

○若林委員 それはあるのでしょうけれども、その時点で打ち切ってしまうという。

○小野寺委員 高用量が100 %がんになったならば試験は続けられない。

○若林委員 えっ。

○小野寺委員 高用量の動物が100 %がんで途中死亡したならば、特にトランスジェニックマウスの場合はがんが多発し、早期に死亡してしまう場合が多いですよね。

○若林委員 それはまた、結構まれなケースだとは思うのです。

○小野寺委員 いや、長期に投与を継続すれば対照群でも100 %がんができるから26週くらいで評価しないと、自然発症するがんと差がなくなるということで26週間時点で評価しようということになったと私は記憶しているのですけれども。

○西川座長 いや、だから、早めに終わるかどうかというのは、多分、極めて特殊なケースだと思うのです。だから、原則26週間飼うというのがやはり、それは守るべきだと思います。

○小野寺委員 確かに対照群の背景値を見るためにはその比較は必要だと思うのですが、がんの発生だけを目的とするならば、例えば10週でも投与群にがんが全例出てきたならば実験の目的は達せられる。

○西川座長 いや、だから、がんであることを確定するためには組織診断をしなくてはいけないし、その間にも時間はたっていくのではないですか。あまり早めにその試験を終了してもいいかどうかというのはちょっと。

○小野寺委員 気になるのは、26週間以上というのは、いつでも終了していいということですよね。

○西川座長 26週間。だから。

○日本バイオアッセイ研究センター 以下にならないということですよね。

○西川座長 なるほど。

○日本バイオアッセイ研究センター 短くはしないという意味です。

○西川座長 26週間で十分だと思うのです。

○小野寺委員 ですから、26週間以上、例えば1年間飼うと、対照群でも100%がんが出てくるので、投与群と差がなくなるからという理由で26週と決めたという記憶があるのですが。

○日本バイオアッセイ研究センター そのとおりだと思います。ですから、強烈なものを試験してしまって投与群でバンバン死に出した場合は、一応、2年間のがん原性だと、最高用量群がいろいろな理由で死んでしまうとそこでやめてしまうという、そういうしきたりはありますよね。6割以下になったらやめてしまうみたいなのがあります。

○小野寺委員 それはがんが原因以外の死亡例でですよね。

○日本バイオアッセイ研究センター 普通の場合も含めてですけれども。

○小野寺委員 ええ。

○日本バイオアッセイ研究センター だからこの場合は、座長がおっしゃるように、一応、26週は見ておくということで、後で統計処理で、いわゆるPeto検定みたいなもので、できた病変ごとに時期のずれは補正するということになるのではないかと思います。

○小野寺委員 いや、うがった言い方というか、実験をやるほうにすれば、80週ぐらいやってしまって100%がんを出させれば対照群と投与群の差がなくなるのかなと。

○日本バイオアッセイ研究センター だから、それも本当は、コクランアルミテージみたいなものでやれば差は出るはずなのですが、恐らく、大体、半年やれば出るものは出るだろうという話だと思うのです。それは繰り返しになるので、そこはいじるのはやめたほうがいいと思うのです。

○西川座長 26週というのは決まりですから、それはいじらないほうがいいと思います。

○小野寺委員 いや、異存はないのですが、その以上の期間というのは。

○西川座長 以上ではなくて、原則26週間とか、そのほうがいいかもしれないですね。

○小野寺委員 そう書いたほうがいいのかなと。

○日本バイオアッセイ研究センター そういう意味だと思うのです。確かに、経験上、アスベストみたいなものは半年待たないと出ないですね、ああいう異物発がん的なものは。ですからものによるのですよね、早いものはうんと早いでしょうし、遅いものは遅いと。

○若林委員 投与量によって26週以内にできたとしても別に構わないという理解ですか。

○西川座長 それはそのとおりだと思います。当然、早くできるでしょうし、その答えによっては。

○若林委員 以上としなければならないということであると、投与量を抑えて26週以上に、というように解釈しなくてもいいということですね。

○西川座長 多分、以上と書いてあるのは、最短を狙ってやるのが普通だと思うのです。したがって、それを念頭に置いていると思うのです。したがって、その記載が誤解を生まないようであれば、原則26週間にしたほうが多分、分かりやすいのかなと思いますけれども。

○日本バイオアッセイ研究センター 原文が6か月以上だったのをそのまま残してしまっただけなので。以上という所はオリジナルの引きずりなものですから、原則26週間でも問題ないです。

○小野寺委員 原則26週間と決めておいたほうが、後から例えば対照群とか何かの背景値を比べるときにはやりやすいと思うので、ばらばらになるよりはよい。

○西川座長 原則26週間で固定するというような感じがいいと。

○日本バイオアッセイ研究センター 考え方としては、2年間と用量設定は基本的に同じということで、そこはあまりいじらないでやるはずです。というのは、やはり半年ありますので、MTDを超えると、やはり死にはじめてしまいますから。

○西川座長 それでは、投与期間については、原則26週間とすることにします。あと、用量設定試験ですが、1か月以上を4週間程度にする、似たようなものですが。場合によっては4週間やらなくてもいいというように読めますが、いいかなと思います。

 もう1つは、この下線部分の用量設定試験に遺伝子改変動物そのものではなくて、野生型を用いることができるということについて、これはいいと思いますよね。

○日本バイオアッセイ研究センター 一応、論議はいたしまして、ごく少数の報告で、MTDに対してワイルドとトランスジェニックで差が出るという報告はあるのですが、それほどものすごい差は出ないだろうということと。

○小野寺委員 そこの議論はしないのではないですか、用量設定試験は予備試験なので。

○日本バイオアッセイ研究センター 国際的に見ても、どっちでもいいと書いてありますし、実際に生物学的に構わないと判断いたします。

○西川座長 では、改正のポイントは今まで議論してきたところですが、この改正についてお認めいただくことでよろしいでしょうか。

(意見なし)

○西川座長 では、お認めいただいたということにいたします。

 それでは、次が議題(4)、その他ですが、事務局から御説明をお願いいたします。

○平川化学物質評価室長補佐 次回以降の日程ですが、議題等が出そろい次第、日程調整等をさせていただければと思います。平成28年度の第1回発がんワーキンググループの際に、文献調査結果の評価依頼を各委員にお願いする旨、申し上げておりましたが、平成29年度以降のワーキンググループのほうでやらせていただければと思います。また、こちらで文献をまた整理しまして、割当をさせていただきます。以上です。

○西川座長 ありがとうございました。それでは、ほかに何もなければ、これをもちまして本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室(内線5511)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成28年度化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ)> (平成29年3月1日) 第3回発がん性評価ワーキンググループ 議事録(2017年3月1日)

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