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2017年5月15日 第18回 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会

労働基準局

○日時

平成29年5月15日(月)14:00~16:00


○場所

中央合同庁舎第5号館厚生労働省議室(9階)


○出席者

荒木 尚志(座長) 石井 妙子 小林 信 小林 治彦 高村 豊
土田 道夫 鶴 光太郎 徳住 堅治 斗内 利夫 中山 慈夫
長谷川 裕子 水島 郁子 水口 洋介 村上 陽子 輪島 忍

○議題

・報告書のとりまとめについて
・その他

○議事

○荒木座長 それでは、御出席の委員はおそろいということですので、ただいまより第18回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御参集いただき、ありがとうございます。

 本日ですが、御欠席の委員として、大竹文雄委員、岡野貞彦委員、垣内秀介委員、鹿野菜穂子委員、中村圭介委員、八代尚宏委員と伺っております。

 本日の議題ですけれども「報告書のとりまとめについて」「その他」ということでございます。

 では、配付資料について、事務局より確認をお願いします。

○大塚調査官 本日の資料でございますけれども「『透明かつ公正な労働紛争システム等の在り方に関する検討会』報告書(たたき台)」が資料となっております。

 以上でございます。

 もし、落丁等ございましたら、お手数ですけれども、事務局のほうまでお申し出くださいませ。

○荒木座長 それでは、カメラ撮りは、ここまでということでお願いいたします。

(報道関係者退室)

○荒木座長 透明かつ公正な労働紛争システム等のあり方については、これまで大変真摯な御議論をいただき、ありがとうございました。委員の皆様方の御協力により、大変充実した議論が展開されてきたと思っております。

 本日より、報告書の取りまとめに向けた議論に入りたいと思います。

 これまでの御意見を踏まえまして、私から事務局に報告書のたたき台の準備をお願いしました。これに基づいて、報告書の取りまとめに向けた御議論をお願いしたいと考えております。

 本日の進め方ですけれども、まず、資料について事務局より説明をお願いし、その後、取りまとめに向けた議論をいただきたいと思います。

 では、事務局より資料に基づいて説明をお願いします。

○輪島委員 済みません、その前に1つ、よろしゅうございましょうか。

○荒木座長 どうぞ。

○輪島委員 ありがとうございます。

 1つ事務局にお伺いをしたいことがあるのですけれども、先週12日に、一部新聞に本日の検討会についての報道があったわけでございますが、これにつきまして、取材に会ったものの報道なのか、厚生労働省のほうで情報提供されたのか、どういうような位置づけで報道がなされたのかということについて、厚生労働省の御見解を伺いたいと思います。

○荒木座長 では、今の点について、事務局よりお願いします。

○大隈労働関係法課長

 本日の検討会の資料ですけれども、もちろん、厚生労働省のほうで情報管理を徹底しております。情報を厚労省から出したということは全くございません。

 記事掲載の経緯につきましては、承知はしておりませんけれども、検討会の取りまとめに向けた議論は、ただいま座長からお話があったとおり、まさに本日から始まるということでございますので、記事に書かれていたような、現時点で特定の方向性が決まっているというわけでは全くないと認識しております。

 以上でございます。

○荒木座長 輪島委員、どうぞ。

○輪島委員 情報管理につきまして、引き続き留意をしていただきたいと思っているところでございます。

 以上です。

○荒木座長 まさにこの場で、これから議論するということですので、その点、確認しておきたいと思います。

 それでは、資料について、事務局よりお願いします。

○大塚調査官 資料でございますけれども、これは、前回資料No.2としてお出ししておりました全体版の検討事項につきまして、これまで委員の皆様方からいただきました御意見などを盛り込んで、まだ議論の隔たりがある部分と、おおむね一致を見ている部分とさまざまあろうかと思いますけれども、とりえず、今日からの取りまとめに向けた議論のたたき台としてお示しするものでございます。

 中身につきましては、3ページから始まります。3ページの「I はじめに」でございますけれども、こちらは、まず、前段の部分では個別労働関係紛争がふえてきていて、さまざまな労働関係紛争の処理のシステムができ上がってきているといったような背景を述べております。

 真ん中あたりは、日本再興戦略に基づきまして、この検討会が設置され、現行のシステムの改善ですとか、あるいは解雇無効時における金銭救済制度のあり方及びその必要性について議論することになりましたといったような経緯などが書いてございます。

 次の4ページから10ページあたりぐらいまでは、現行のシステムの改善についての記述が続いております。

IIの1番の(1)のマル1ですけれども、こちらは行政の取り組みについての改善方策ですが、その前提として、現状の認識が書かれてございます。

 これは、従来、お出ししておりました検討事項に記載されているものにのっとったものでございます。まず、アの部分の労働局でございますが、労働局のあっせんなどにつきましては、最大の受け皿として機能してきたということでございますが、改善の余地があるという認識が示されております。

 イの部分は、自治体の取り組みでして、労働委員会のあっせんなどについてでございます。こちらは、時間をかけて丁寧に処理をするという特徴がある一方で、認知度が低いということもあって、取り扱い件数が少ないということが現状認識として挙げられます。

 次のマル2の司法による取り組みでございますけれども、労働審判制度がございます。労働審判制度につきましては、全体としては有効に機能しているということでございますが、解決金等のデータが対外的に公表されていないということもありますので、利用者にとっては予見可能性が低いといった現状認識でございます。

 マル3は、各システム間の連携についてでございますけれども、こちらは制度間の連携が制度的に担保されているわけではない、規定されているわけではないということがございますので、利用者にしてみたら、どの仕組みを利用したらいいのかわかりにくいといったことが現状認識として挙げられております。

 5ページ以降は、改善の方向性について、今、申し上げました行政、司法あるいはシステム間連携について述べているものでございます。

 まず、マル1のアでございますけれども、こちらは労働局の部分でございます。(ア)のaとb、こちらは都道府県労働局長が行う助言・指導についての記述でございます。

 aにありますように、助言・指導はほとんど口頭で行われているということがありますので、紛争の内容に即して、例えば、助言例等を整理するといったことですとか、あるいは職員・相談員の研修の充実を図るといったことが適当ではないかということが記述されております。

 bの部分は、助言・指導なのですけれども、ほとんど口頭ということで、文書による指導ですとか、文書による助言というのがほとんど行われていないということがありますので、これらを活用するということが記載されております。

 c以降は、あっせんについてでございます。cの2行目あたりにありますように、あっせんにつきましては、両当事者の参加義務があるわけではないということがありまして、参加率が6割にとどまっているといったような問題。

 また、事実認定をするわけではございませんので、両当事者の意見の幅寄せを試みるというような現状にあるといったような現状認識が書かれております。

 また、dにありますように、あっせんの案を示すためには、あっせん委員3人の合意が必要ということになっておりますけれども、実際の運用では、あっせん委員1名による簡易なあっせんが行われておりますので、あっせん案が示されることは実態としてはないという現状にございます。

 eにありますのは、このc、dを踏まえての対応策ですけれども、1つは任意性を見直すといったことですとか、あるいはある程度の事実認定を行った上で主体的に解決策を示すといった仕組みに改めることも考えられると書いてあるのですけれども、その一方で、これらをやることによって迅速性が失われる可能性もあるということがございますので、法的措置の要否も含めた具体的な方策につきましては、引き続き検討を深めるということになっております。

 fは、運用改善面のことが書いてございまして、例えば、参加勧奨について、引き続き積極的に行うですとか、あるいはあっせん開始通知書に書かれている参加が強制されないとあえて強調している記述について見直すなどのことが考えられるということが書いてあります。

 gにつきましては、認知度の向上ということで、インターネット等を通じた、あるいはシステム、各関係機関の連携などを通じた認知度の向上を図るといったこと。

 hは、相談員ですとか、職員のスキルアップを図るということなどが記載されております。

 (イ)のaは、時間的な予見可能性の向上に関してでございまして、労働局の助言・指導は、1カ月以内にほとんどが、あっせんの場合には2カ月以内に9割以上が処理されているという現状にありますけれども、これらが必ずしも国民に対して広くPRされているわけではないということがありますので、それらの処理期間の目安について外部に公表していくことが考えられるのではないかということが書いてございます。

 bは、金銭的な予見可能性の向上についてでございますけれども、解決金額の水準などのデータ、これは、JILPTが4局分について収集しまして、それの結果は、こちらの検討会でもお示ししたところでございますけれども、全労働局分のデータを毎年度とるような仕組みというのはありませんので、そういったものを収集・整理して、対外的に公表していくことを検討していくということが掲げられております。

 イは、自治体に関するものでございまして、労働委員会のあっせんもありますし、また、県によっては労政事務所で相談、あっせんなどを行っているところもございます。

 これらにつきましては、自治事務に基づいて、各都道府県が行っているものでございますので、国のほうから一律に指示できるという立場にはございませんけれども、ただ、こちらの検討会でも、さまざまな御意見を頂戴したところでございますので、改善策として考えられることを、こちらに盛り込むということにしております。

 まず、1つ目は、aのところにも書いてございますように、認知度が低いという問題があります。それに伴って取り扱い件数が必ずしも高くないということになっておりますので、一層の周知を図るために周知の方法を工夫するといったことがaに書かれております。

 bは、事例の共有ですとか、あるいは研修についての記述でございまして、やはり、労働委員会が何をやっていて、どういう事案について解決を図ることができるのかということを、まず、各相談機関の中で共有する。それぞれの相談機関のほうに来た相談者に対して、適切に振り分けるという、その前提としては事例の共有ですとか、あるいは職員の研修が必要なのではないかといったことが書かれております。

 7ページ、cの部分は、制度的な面といたしまして、時効の中断効を置くべきかどうかということを記述しております。

 労働局のあっせんにつきましては、時効の中断効の規定があるのですが、労働委員会のあっせんなどにつきましては、そもそも法律上の根拠がないということでございまして、各都道府県の要綱ないし条例などに基づいてやっているというような実態がございます。

 この時効の中断効を仮に法律に規定するとなりますと、労働局のように、あっせんの流れ、手続きですとか、あるいは文書の保存方法等々につきまして、一律に定める必要があるのではないか。

 そういたしますと、現在、都道府県の創意工夫でやっているあっせんのやり方を大幅に見直すことになることとの兼ね合いでどうなのかといった記述がなされております。

 (イ)のaにつきましては、時間的予見可能性で、これは労働局と同様に、どれぐらいの期間で処理されるのかということが必ずしも明らかになっていないので、そういったことを対外的に公表していく。

 あるいは、bにありますのは、金銭的予見可能性についてでございますけれども、こちらもどういう金額水準で決着しているのかというのは、必ずしも明らかになっていないということがございますので、可能な範囲で、都道府県労働委員会での解決金額の状況につきましても、情報の集積を図りながら、集計・公表していくようなことについて考えていくということが記載されております。

 マル2は、司法の取り組みでございまして、労働審判制度についてでございますけれども、(ア)に書かれておりますのは、こちらの検討会で徳住委員などから問題提起がありました書類の準備が大変という問題についてでございます。

 こちらにつきましては、負担が重いという御意見がある一方で、労働審判手続を3回以内で終わらせるということで、地裁によって微妙に運用が違うのかもしれませんけれども、1回目の期日から調停を試みるためには、事前の準備が重要だという御指摘もありましたので、結論といたしましては、最後の2~3行に書いてございますように「より使いやすいものにする工夫についても可能な範囲で検討を深める」ということにしております。

 (イ)でございますけれども、こちらは、労働審判員の68歳未満から登用するという点についてでございます。

 これは、原則的な運用としては、68歳未満の方から選ぶということでございますけれども、(ウ)、具体的には次の8ページに書いてございますように、今後、年齢のみで制限せずに、能力・適性のある者が登用されるような運用とするという記載にしております。

 (エ)は、研修についてでございまして、全国統一的な労働審判員に対する研修ですとか、あるいは労働審判員の経験交流等のより充実した研修を図っていくということが記載されております。

 イは、予見可能性についてでございますけれども、(ア)は、金銭的予見可能性についてでございます。

 こちらもJILPTが4地裁分についてまとめたデータを、こちらの検討会でお示ししたことはございましたけれども、毎年どれぐらいの解決基準かというのは、全く示していないということがございますので、データの収集方法等について検討することが適当という記載ぶりにしております。

 ※印を挟んで次の(ウ)は、時間的予見可能性についてでございます。

 労働審判制度は、3回以内の期日で終わっているのがほとんど全てでございまして、3カ月以内に終わっているのが7割程度、6カ月で終わっているのが、ほとんど全部ということになります。

 ただ、それらは、裁判所のほうでは公表しているのですけれども、必ずしも国民に対して周知されていないということもございますので、例えば、相談機関間で情報共有することによって、情報提供を図るとか、あるいは労働局のほうでパンフレットに、そういったような情報を載せまして国民に対して周知していくといった取り組みが記載されております。

 マル3は、システム間の連携についての記述でございまして、まず、アに書いてございますのは、労働局の取り組みについてでございます。

 労働局におきましては、裁判所や都道府県労働委員会などを初めとする、各相談機関の一覧をまとめたリーフレットを作成して、これに基づいて御案内しているところでありますけれども、必ずしも労働局での現場における活用の方法が統一されていないということもございます。

 このため(イ)に書いてございますように、具体的には次の9ページのところでございますけれども、労働局の仕組みを紹介するだけではなくて、ほかにどういうような制度が活用可能かなどにつきまして、窓口での案内の方法の統一などを図るといったことなどが記載されております。

 (ウ)にありますように、御案内する際ですけれども、2行目から3行目にかけて書いてございますような各相談、あっせん機関の具体的な特徴ですとか、あるいは処理期間や解決金額等の運用実態などにつきましても、併せて御案内することによって、その事案に即して、あるいは当事者のニーズに即して具体的な振り分けを行っていくというようなことが記載されております。

 (エ)は、労働局におけるあっせんの打ち切り時の御案内についてなのですけれども、今は打ち切り通知書にリーフレットを同封するといったような形で、次に、まだ争いたいというような方がいらっしゃる場合に案内をしているわけでございますが、例えば、あっせん打ち切りのその場において、労使の希望ですとか、あるいは事案の性質などに基づいて具体的な案内をするといったようなことを取り組んではどうかといった観点で記載されております。

 あとは、研修です。(カ)にありますように、各労働局、都道府県単位で、連絡協議会というのを構成いたしまして、労働局と都道府県、裁判所などで具体的な取り組みの検討を行っているわけでございますけれども、そこで、具体的にそれぞれの機関でどういう事案を取り扱っているのかといったことを共有したり、あるいは合同研修などを行うことによって、それぞれの機関の特徴を相互に理解し合って、そこに来た相談者について適切に振り分けていくと、そういったことが考えられるのではないかという観点で書いてございます。

 イの部分は、このシステム間の連携に関する制度的な手当が必要かどうかということでございまして、この検討会でも御案内いたしましたように、例えば、イギリスにおきましては、裁判所の手続の前に行政あっせんを前置するという仕組みになってございますし、ドイツにおきましては、裁判手続の前に、まずは和解を試みるといったような、和解前置、和解優先の考え方がルール化されておりますけれども、そういったことが日本でもとれるかどうかということについて御議論いただきました。

 結論といたしましては、諸外国とは、司法をめぐる状況は違うということですとか、日本の場合には、非訟手続であります労働審判制度が機能しているといった特徴もございますので、最後のところに書いてございますように、今後の紛争の動向等を踏まえながら引き続き検討ということにしております。

 「マル4 その他」の部分につきましては、企業内の紛争処理につきましての御議論も若干ございました。これにつきましては、好事例の紹介等の方策というのが考えられるのですけれども、他方で、長谷川委員のほうからも御指摘がございましたように、会社の企業内処理におきましては、信頼性ですとか、中立性の観点で課題もあるといった御指摘もございましたので、そういった点を十分に踏まえた対応が必要という記載にしております。

 以上が現行の仕組みの改善でございました。

11ページからは、解雇無効時の金銭救済制度につきましての記述がしばらく続きます。

 まずは、2の(1)のアの部分ですけれども、これは、検討に当たっての背景として何があるかということの記述でございまして、まず、1つ目のポツにありますように、解雇の無効判決がなされた後も、必ずしも全部が全部職場復帰を果たしているわけではないということ。

 2点目は、行政によるあっせんですとか、労働審判あるいは民事訴訟法上の和解におきまして、金銭で解決されているといった実態もあること。これらは、ただし、当事者の合意による解決でありますので、当事者があくまでも争うといったことを前提に金銭解決を図るような仕組みは、この中にはないということになります。

 3点目のポツは、解雇無効の地位確認訴訟にかえて損害賠償請求をすることによって金銭の解決を図るということです。これは、ある意味、合意ではなくて、ずっと争い続けるのを前提としたものでありますけれども、ただ、損害賠償請求による仕組みにつきましては、理論的に整理されていない面も多いということがありますので、救済手段として必ずしも確立されているとは言いがたいといったことがあろうかと思います。

 次のイでございますけれども、これは、日本再興戦略の2015に基づいて、この検討会は設置されたわけでございますけれども、その検討の進め方について記載したもの。

 ウは、その検討の際のコンセプトについて記載しているものでございます。

 具体的な内容につきましては、11ページの下の(2)のほうから始まります。

 マル1のアは、全体像についてでございますけれども、こちらは、まず、主体によって労働者申し立てと使用者申し立てに分かれますということを記載した上で、この検討会においては、3行目あたりから書いてございますように、解雇された労働者の保護を図る観点から、現行制度で利用可能な救済の仕組みは維持すると。それを維持しつつ、労働者の選択肢をふやす方向とすることについてどう考えるかと、こういうことで議論が始まったとしております。

 2番目のポツにありますように、例えばとして、職場復帰を希望しない労働者の方が利用できる新たな仕組みとすると。

 さらには、過去の検討の反省でもあるのですけれども、3点目のポツにありますように、一回的な解決を図る、1つの裁判手続で終わらせる、裁判の長期化などが起きないように一回で終わらせると、そういったことをコンセプトとして議論してまいりました。

 イの部分でございますけれども、これは、仮に、金銭救済の仕組みができたとしても、解雇は金銭救済が前提なのだというような規範意識にならないように、あくまでも解雇については地位確認が基本であるということは押さえておくべきという指摘がございましたので、その点、記述しております。

 次のマル2からは、具体的に労働者申立制度による金銭救済の仕組みについての検討の記述でございます。

 これは、これまでの検討会でバージョン4までの資料でお出ししておりましたように、例1、例2、例3の3つのやり方があるというようなことで議論が行われてまいりました。

 このうちの例1についての記述がアの部分でございまして、具体的な例1の流れは、32ページに図を掲載しておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 これにつきまして(ア)のところには、過去の検討で、どういうような結論になったかというのを振り返っておりまして、要すれば、確認判決と給付の判決と形成の判決、それを一回の裁判手続でやるのは困難であるといったことでございました。

 この点に関しましては(イ)に書いてございますように、中山委員のほうから御指摘がございまして、金銭の支払いを命ずる給付の判決と、労働契約の終了を宣言する形成の判決、これらを引きかえ関係にしないことによって制度化を図ることができるのではないかと、そのような御指摘がございました。

 これに関しましては、13ページの上のほうに書いてございますように、なかなか制度の仕組み方として非常に難しいのではないかとか、そういった御指摘もあったところでございます。

 とりあえず、締めの言葉といたしましては「困難な課題が多いと考えられる」ということにしております。

 次の例2方式については、イのところでございまして、これも32ページに図を載せてございます。

 損害賠償請求と契約の終了を結びつけて制度化できないかというものだったわけですけれども、これにつきましては、徳住委員のほうから、そういった損害賠償による仕組みは、リーディングケースになるような裁判例もない中で、なかなか難しいのではないかといったような御指摘もございましたので、これも締めの言葉といたしましては「困難な課題が多いと考えられる」ということとしております。

 次に、ウの例3方式、すなわち実体法に新しい権利を創設するようなやり方についてどう考えるかということでございまして、図としてはP33に掲載されております。

 なぜ、例3の検討に至ったかということが冒頭に書いてございますけれども、労働者の選択肢を拡大するという観点ですとか、あるいは金銭の支払いと労働契約の終了との関連性、あるいは国民にとってのわかりやすさなどを考慮しますと、例1や例2に比べると、相対的には選択肢として考え得るのではないかと。

 権利の法的性格ですとか、権利の発生要件あるいは権利を行使した場合の効果など、法技術的には検討すべき課題が多数ございますけれども、個別の論点について検討を深めることが必要と考えられますので、具体的な検討をこの検討会で行っていただいたところでございます。

 その具体的な論点についての検討の中で、結論を書いていないのもございますけれども、そういったものにつきまして、下に論点の(ア)から書き出しております。

 「(ア)対象となる解雇」ということで、従来の資料では論点1としていたところでございます。

 この制度の対象となる解雇につきましては、aに書いてございますように、基本的には労働契約法16条の要件を満たす解雇と同様に、要するに権利濫用に該当するような解雇というのが基本として考えられる。

 それに加えまして、労働契約法19条に規定があります雇止めについても対象とすることが考えられるのではないかといったことが、まず、書いてございます。

 次の14ページでございますけれども、bの部分は、禁止解雇ですとか、差別解雇に関する記述でございます。

 これにつきましても、いろいろ議論があったところでございますが、5行目に書いてございますように、労働者の選択肢をふやすという観点からは、そういった禁止解雇などにつきましても対象とすることが適当ではないかということが書いてございます。

 また、次の行から書き出してありますように、労働契約法17条におきましては、有期契約について期間途中の解雇は、やむを得ない事由がなければ解約できないということになっております。期間途中の解雇につきましても、労働者申し立ての場合であれば、同様の理由から対象とすることが適当ではないかということが書いてございます。

 ただ、これに関しましては、cにございますように、まず、禁止解雇の中でも特に差別解雇につきましては、本来は対象とすべきではないと。仮に対象とするにしても、差別的解雇を金銭によって解決することを法規範的にどう正当化するのかということについては、非常に重要な問題であるといったような御意見がございました。cの1ポツ目でございます。

 また、3ポツ目ですけれども、期間途中の解雇につきましては、残りの期間の賃金の支払いによって解決することができるのですから、そういう意味で金銭救済の対象としなくてもいいのではないかといったような御意見もございました。

 あと、4つ目のポツにありますように、労働協約等に違反するような解雇につきましてもどうするかというのが引き続き検討課題であるといったような御意見もございましたので、この辺を書き出しております。

15ページの(イ)は、従来、論点2としていたものでございますけれども、支払い請求する権利について、権利の発生要件ですとか、法的性格を議論したものでございます。

 発生要件といたしましては、aに書いてございますように、3つの要件を書き出しております。

 1つは、解雇がなされていること。

 もう一つは、解雇が権利濫用に該当すること。

 3つ目は、労働者が金銭の支払いを求めていること。

 この3要件ではないかということで書いてございます。

 bは、法的性質ですけれども、この検討会の場では、請求した後に、その請求の取り下げができるのかどうかといったことで御議論がなされました。

 これにつきましては、具体的には(b)のところにさまざまな御意見を載せておりますけれども、1つ目のポツにあります、これは、水口委員の御意見ですけれども、いわゆるうっかり請求してしまった場合はどうするのかといったような問題提起がありまして、その1回金銭の支払いを請求した場合に、後で地位確認をしようとしても、もうこれは取り下げできないとなると、地位確認で争う道がなくなってしまうということがありますので、取り下げできるような仕組みにすべきではないかといったような御意見もございました。

 あと、さまざまな御意見がありましたけれども、取り下げができるとなると、権利関係が不安定になるのではないかとか、そういったような御意見もございました。

 このページの後ろのほうに書いてございますように、権利関係の早期安定の観点から言いますと、支払い請求後の取り下げができない仕組みとすることが考えられるということを、一応記載はしておりますが、御議論いただければと思います。

 (c)は、取り下げができない仕組みとした上で、そうした場合の、いわゆるうっかり請求問題についてどう対応するのかということが書いてございまして、1つ目のポツにありますように、裁判上の仕組みに限るやり方であれば、そういったのは解決できるのではないかといったような御意見などがございました。

 次のページも御意見が続いておりますけれども、結論めいた記述といたしましては、(d)のところに書いてございますように、労働契約解消金の支払い請求後の取り下げができない仕組みとした場合の課題の対応につきましては、権利行使を裁判上の請求や書面など一定の形式による請求に限るといった、仕組み上、そういう措置を講じるというやり方もありますし、あと、取り下げができない権利だということを国民に対して広く周知広報を図るといったような仕組み以外での対応というのもあり得るので、そういったようなさまざまな選択肢がある中で、労働者保護を観点から、どのような対応が望ましいのかについて、引き続き議論を深めることが適当というような記載ぶりにしております。

 ※印は、村上委員のほうから論点提起のありました問題でございますけれども、これらの問題につきましても、引き続き検討を深めることが適当であるというような記述にしております。

 (ウ)でございますけれども、これは、まず、金銭の性質についての議論がございまして、従来の資料だと論点3としていたものでございます。

 金銭は、労働契約解消金と称しておりますけれども、労働契約解消金の構成といたしまして、2つの要素があるのではないかということで、1つが、契約を解消することによる解消対応部分、もう一つがバックペイ分です。この2つをどう考えるかについてなのですけれども、その下のロのところに書いてございますように、解消金は、解消対応部分を基本として考えるべきなのではないかということが書いてあります。

 では、バックペイ分はどうなるのかというのが、次のハの記述でございます。

 これにつきましては、この検討会で、いわゆるA案、B案という考え方が示されまして、A案は、解消金の中にバックペイ分は含めなくて、別途、民法536条第2項によって請求することが可能であるという考え方。もう一つのB案は、解消金の中にバックペイ分を含めるという考え方が示されました。

 これにつきましては、17ページのニとかホにありますように、A案、B案それぞれにつきまして、それを肯定する御意見あるいは懸念なり課題などを示される御意見がさまざまございました。

 また、ヘに書いてございますように、A案につきましては、別途請求が可能ということで、紛争の蒸し返しがあるのではないか。また、B案につきましては、全額ではなく、相当額としたり、あるいは全額とした上で上限を設定するということになりますと、結局、別途、残余分のバックペイ分を請求するような訴訟が行われるということで、また、これも紛争の蒸し返しにつながるのではないかということから、Bのうちバックペイ分を全額含める構成とするのが適当ではないかというような御意見も土田委員のほうからございました。

 トのほうに書いてございますように、これの議論に関連してなのですけれども、解雇時に労働契約が終了することと整理した上で、労働契約解消金は解消対応部分のみによって構成されるとして、もし、バックペイ分を考えるような事案が生じた場合には、それは考慮要素とすればいいのではないかといったような中山委員の御意見もございました。

 さまざまな御意見があったわけでございますけれども、17ページのチです。18ページにかけてございますけれども、それらに関しまして、労働者保護を図りつつ、紛争の迅速な解決に資するというような構成にするためには、どのような整理とすることが適当かについて、引き続き議論を深めることが適当というような記述ぶりにしております。

 次に、18ページの(b)についてでございますけれども、バックペイ分につきましては、発生期間をどう捉えるかというような議論もございました。

 イの最後のほうに書いてございますように、これは、結局、労働者の就労の意思がキーワードになってくるわけでございます。その就労の意思がいつまで続いたのかによって発生期間の考え方がわかれるということです。

 具体的にはロに書いてございますように、1つ目のポツは、支払い時点まで就労の意思が続いているという考え方。

 2つ目のポツは、請求時点で就労の意思が終わるという考え方、この両者があります。

 これにつきまして、ハのところに書いてございますように、民法536条2項に基づき支払われるものであるということを基本としつつ、労働契約解消金の中にバックペイ分をどのように位置づけるか、あるいは労働契約の終了の関係等によって、その発生期間が定まってくるものということですので、労働契約解消金の性質等を踏まえまして、引き続き議論を深めることが適当と、そういうような記述ぶりにしております。

 次にbでございますけれども、労働契約の終了に関しまして、これは、従来の資料では論点4としていたものでございます。

 (a)は、そもそも何で終わるのかということを改めて確認したものでございまして、後段に書いてございますように、実定法に新たな契約の終了事由が規定されていることによって終わるものである。合意解約ではないという基本的な考え方が示されております。

 (b)も基本的な考え方ではあるのですけれども、後段のほうに書いてございますように、実際に解雇時点で権利濫用かどうかが確認されるわけでございまして、権利濫用であることを前提とした仕組みにするのであれば、解雇時点において解雇後も契約関係が存続していると解されると、これが基本的な考え方だろうと示しております。

 それら(a)(b)を踏まえて(c)でございますけれども、労働契約が終了する時点をどうするかということについて、この検討会でも御議論が行われまして、1つ目の考え方としては、解雇時点にさかのぼってということが考えられるのではないかという御意見もございました。

 これにつきましては、次の19ページに書いてございますように、それは、限りなく事前型に近いのではないか等々の反論もあったところでございます。

 (d)でございますけれども、こうしたような意見もありましたので、基本的な考え方といたしましては、労働者に対して、労働契約解消金が支払われた場合に、労働契約が終了することとすることが適当ではないかと、そういったような記述にしております。

 次の(エ)ですけれども、他の訴訟との関係ということで、これは、従来の資料で論点5として書いていたものでございます。

 これにつきましては、垣内委員にある程度議論を整理していただいたかと存じますけれども、結局、契約解消金の中に、例えば、バックペイ見合いのものが入るのかどうか、あるいは損害賠償見合いのものが入るのかどうか、それによって別途起こされるバックペイ訴訟あるいは損害賠償請求訴訟と訴訟物が一緒なのかどうかということが決まってくるということですので、解消金の性質によって訴訟物が一致するのか、異なってくるのかが変わってくるといったようなことを記載しております。

 次の「(オ)金銭的予見可能性を高める方策」ということで、従来の資料では、論点6として記載していたものでございます。

 これにつきましては、まず(a)の2つのポツに書いてございますように、一概にルール化することは難しい、あるいは労働者側には、必ずしも金銭的予見可能性を高めてほしいというニーズはないといったような御意見もありました。

 ただ、他方で次のポツに書いてございますように、金銭的予見可能性を高めるためにも何らかの枠が必要といったような御意見ですとか、あるいは泣き寝入りをしているような労働者を救うためにも、そういったような一定の下限が必要といったようなことがございました。

 こうした意見なども踏まえまして、予見可能性に関する議論が行われたわけでございますけれども、上限が必要なのかとか、そういったような御議論も行われました。

 次の20ページの(b)は、ペンディングとしておりますけれども、解消対応部分について、金銭の性質を踏まえた、一定の考慮要素を示すとともに、予見可能性を高めるために上限額や下限額などの限度額の設定をすることが適当というような記述ぶりにしておりますけれども、御議論いただければと思います。

 次の(c)でございますけれども、解消対応部分の考慮要素につきまして、2行目から3行目にかけて具体的な例、例えば、年齢、勤続年数、解雇の不当性の程度、精神的損害等々を挙げたわけでございますけれども、その具体的な内容や、どこまで考慮要素を法律に明示化するかなどにつきまして、引き続き、議論を深めることが適当という記述もしております。

 また(d)でございますけれども、具体的な限度額についての議論も、前回、若干ではございますが行われました。

 この中では、例えば、1つ目のポツにありますように、早期退職優遇制度ですとか、希望退職制度における割増額の水準が考慮できるのではないかといったような御意見、あるいは2つ目のポツにありますように、下限の水準については、解雇は有効という心証であっても1カ月から3カ月分という数字が出ていたので参考になるのではないかという御意見。

 また、3点目にありますように、早期退職優遇制度が参考になるのではないか。その平均額というのは、15.7カ月分なので、下限6カ月、上限24カ月ということも考えられるのではないかといったような御意見がございました。

 締めの言葉といたしましては、その具体的な内容については、引き続き、議論を深めることが適当であるといったことにしております。

 (e)でございますけれども、これは、バックペイの上限についてでございます。バックペイの上限については、未払い賃金が支払われるのは当然なので、上限を設けることは適当でないといったような御意見もございました。

 そして、労働者保護の観点からしますと、その限度額を設定しないこととすることが適当であるといったような記述にしております。

 次に、その下のbの部分ですけれども、法定の上限、下限に関しましては、別途、労使合意による柔軟な設定を認めるのかどうかといったような御議論も行われました。

 これにつきましても、さまざまな御意見があったところでございますけれども、次の21ページの(b)に書いてございますように、別途、労使合意等によって別段の定めを置くことができることとすることも考えられるのですけれども、その場合、労使合意等の範囲をどう考えるか、あるいは法定の水準との関係をどう考えるかといったような課題があるため、引き続き、議論を深めることが適当という記述にしております。

 次の21ページ「(カ)時間的予見可能性を高める方策」ということで、従来の資料ですと論点7でございます。

 これに関しましては、仮に新しい金銭請求権を設ける場合に、その消滅時効をどう設定するのかという議論が前回行われました。

 その具体的な期間につきましては、御意見がございまして、bのところに記載しておりますけれども、1つは、迅速性という制度趣旨に鑑みて、現行の賃金債権の短期消滅時効が参考になるのではないかという御意見がございました。

 2点目は、民法の改正ということも考えますと、権利者が権利を行使することができることを知ったときから5年よりも短くなることはあり得ないのではないかという御意見もございました。

 これに対しては、3点目に書いてございますように、5年という期間設定は困難であると。現行の労基法の文書の保存に関しても3年なのだというような御意見もございましたので、締めの言葉としては、その次に書いてございますように、民法改正の動向を踏まえつつ、引き続き、議論を深めることが適当という記述にしております。

 次に(キ)でございます。これは、論点8として、前回バージョン4で提示したものでございまして、他のシステムへの影響ということでございます。

 まず、aにありますように、制度設計の仕方によって紛争解決システムに影響を与える可能性があるのかどうかということで、さまざまな御意見が出されましたので、その御意見をこちらに記載しております。

 例えば、水準が定められることによりまして、あっせんによる解決額も上がるのではないかとか、あるいはその水準が明確化されることによって、行政あっせんですとか、労働審判もよりうまくいくのではないかといったような肯定的な御意見もありました。

 また、3点目に書いてございますように、労働審判よりも明らかに有利な基準を定めると裁判に流れてしまうのではないかというような御意見もございました。

 次の22ページでございますけれども、仮にバックペイにつきまして、上限を入れるという考え方にしますと、現状の調停や和解に大きな影響を与えてしまうのではないかという御意見もございました。

 また、5点目でございますけれども、労働審判制度がうまく機能している現状からすると、影響が大きいのではないかという御意見もございました。

 その次に書いてございますように、それは、あまくでも事実上の影響であって、結局、金銭水準の有利不利による影響のみなのではないかというような御意見もございました。

 これを設けることによって紛争処理の期間が長くなってしまうのではないかという御意見も、前回いただきましたけれども、それに関しましては、従来の解雇紛争において問題とされていた要素と余り変わらないのであれば、すごく延びるということはないのではないのかといった趣旨の御意見もございました。

 また、何でも裁判に持ち込まれることにならないように、行政ADRのほうの活用も同時にやるべきだといったような趣旨の御発言もありました。

 また、bの部分は、裁判上の仕組みに限るのか、あるいは裁判外でも認めるかどうかという観点で、さまざまな影響論の御意見が出されましたので、そちらを書いてございます。

 1つ目は、裁判上の請求に限った場合には、ある意味、すみ分けができて、本人のニーズに応じた選択をすることが可能なのではないかという肯定的な意見もございました。

 2点目は、裁判上の請求に限った場合に、労働審判から流れてくるとは限らず、心配するほどの悪影響はないのではないかという御意見もございました。

 3点目は、裁判上の請求に限った場合でも、裁判外で合意により金銭解決するという道が閉ざされるわけではないということもございますので、当然、事実上の影響は受ける。ただ、本質的な違いはないのではないかというような御意見もございました。

 4点目は、裁判外での請求を認めた場合ですけれども、これは、いわば脱法的に法定の下限よりも低い額での合意というのがなされてしまうのではないか、そういったことも論点として検討する必要があるのではないかといった御意見もございました。

 そういったさまざまな御意見がございまして、cに書いてございますように、仮に金銭救済制度を創設する場合でありましても、既存の紛争解決システムが引き続きその趣旨・目的に沿った形で有効に機能するように制度的な設計を図るべきではないかということを、まず、書いてございます。

 次の23ページのところでございますけれども、この項目の最後の2行でございます。「金銭救済制度を前提とした都道府県労働局におけるあっせんのルール等を構築するなどの方策について、引き続き、議論を深めることが適当である」ということも併せて書いてございます。

 次の(ク)につきましては、これは、前回改めて水口委員のほうから御指摘があったので記載しておりますけれども、解雇無効時の金銭救済制度の検討に当たりましては、解雇は結局、金銭問題だというような規範にならないように、就労請求権などにつきましても考えるべきなのではないか、という御意見がありましたので記載しております。

 次にマル3からは使用者申立制度についての記載でございます。

 これにつきましては、アにありますように、労働者申し立ての基本的な枠組みの検討を踏まえつつ、労使双方の予見可能性を高めるという観点などから検討を行ってきたものでございます。

 これについては、イの1つ目のポツにありますように、労働者申し立てのみではなく、さまざまな可能性を含めて議論していくべきだという御意見もございました。

 また、労使双方の信頼関係が崩壊しているというような状況下であれば、使用者申し立てを設けることも合理的なのではないかといったような御意見もございました。

 他方で、これに関しましては、使用者申し立てや労働者申し立てよりも一段ハードルが高いのではないかという御意見もございましたし、使用者のモラルハザードを招くことにもなるといったような御意見もございました。

 こういったことも踏まえまして、ウに書いてございますように、使用者申立制度につきましては、現状では導入は困難であり、今後の検討課題とすることが適当であると考えられると、一応、記述しておりますけれども、ペンディングとしておりますので、御議論をいただければと思います。

 次に(3)についてでございます。

 (3)は、金銭救済制度の必要性についての御議論でございまして、先ほどの(キ)の他の制度への影響と、いわばセットで、これまでこの検討会でも議論がなされてきておりました。

 アに書いてございますのは、まず、日本再興戦略でどういうような指摘がなされたかということを振り返るために記載したものでございます。

 具体的に、この検討会で出されました御意見につきましては、次の24ページのイから記載しております。

 職場復帰を望まない場合に、労働審判等で金銭による解決が図られていることについて、現行の仕組みは、当事者間の合意の成立を前提としているということでございますけれども、合意が成立しない場合も少なくない。そういった場合の解決の制度につきましては、別途考える必要があるといったような御意見もございました。

 また、2つ目のポツにありますように、中小企業における解雇につきましては、泣き寝入りをしている場合が多いといったような御意見もあったところでございます。

 また、ウに書いてございますように、損害賠償のみを請求しているような仕組みもあります。これにつきましては、救済の手段として確立されているとは言いがたいといったような御指摘もございました。

 エでございますけれども、このため、解雇された労働者が職場復帰を望まない場合に、金銭を支払って解決する仕組みが必要であり云々といったような御意見が出されたところであります。

 他方で、オの部分ですけれども、これは、どちらかというと、反対である、あるいは不要であるといったような御意見でございまして、1つは労働審判制度が有効に機能しているにもかかわらず、この制度を新しく導入するとなると、有効に機能している労働審判などのシステムに悪影響を及ぼす可能性があるといったような御意見もございました。

 また、こういったような金銭水準が定められますと、解雇予告に応じた場合には、金銭水準の一定割合の金銭を支払う旨提示するなどによりまして、企業のリストラの手段として使われかねないのではないか。あるいは解雇の選択肢をふやすことにつながるのではないか等々の御意見もございましたので、こちらのオのほうに記載しております。

 カの部分ですけれども、こちらは、要するに金銭の水準次第の面があるのではないかということで、金銭の水準がどの程度になるのかという点が明らかにならなければ、必要性についても、なかなか判断しがたいのではないかといったような趣旨の御意見がございました。

 こうしたさまざまな御意見がありましたので、最後のキのところに書いてございます必要性の締めの言葉でございますけれども、ペンディングにしておりますので、今回の検討会でもさらに御議論をいただければと思っております。

 長くなって恐縮ですけれども、次に25ページ、その他の論点でございます。

 その他の論点は、大きく3つありまして、1つ目は「マル1 解雇予告期間在り方」ということでございまして、これに関しましても若干御意見がございましたが、今回の労働紛争解決システムの改善等の状況を踏まえつつ、引き続き検討を深めることが適当という記載にしております。

 次に「マル2 個別労働関係紛争当事者の負担の軽減の在り方」ということでして、これに関しましては、ドイツの権利保護保険の例などを御紹介したところでございますけれども、締めの言葉といたしましては、必要な方策を検討することが適当ということとしております。

 最後に「マル3 その他」でございますけれども、紛争の未然防止の観点から、労働者、使用者に対しまして、労働関係法令への理解が深まるように周知を行うことが適当ということを記載しております。

 最後「III おわりに」でございますけれども、26ページ、こちらは、全体が括弧書きになっておりますけれども、日本再興戦略2015に基づきまして、こちらの検討会が開かれました。そこでは、可能な限り早期に結論を得た上で、労働政策審議会の審議を経て、所要の制度的措置を講じるとされたことを踏まえまして、次の段落でございますけれども、今後、厚生労働省におきましては、この報告書を踏まえて、労働政策審議会における検討を進めて、所要の措置を講じることが適当であるということにしておりますけれども、これは全体がペンディングでございますので、御議論いただければと思います。

 後ろのほうには、開催要綱につきまして27ページですとか、メンバー表が28ページ、29ページは開催の経緯、30ページは日本再興戦略の記述、31ページは規制改革実行計画の記述、3233ページは例1から例3の図になっておりまして、最後のほうに関係する参照条文がついてございます。

 説明が長くなって恐縮でございます。

 以上でございます。

○荒木座長 1年半にわたる、大変多岐にわたる論点についての多様な議論をまとめていただきました。ありがとうございました。

 本検討会は、平成27年6月に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」及び「規制改革実施計画」に基づいて透明かつ公正、客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の構築に向けた議論を行うという目的のもとに設置されたものです。

 この閣議決定の趣旨を踏まえて、透明かつ公正な労働紛争解決システムの構築に資するような取りまとめができればと考えております。

 では、議論を整理するために、項目ごとに議論したいと思いますが、今、見ていただきましたとおり、この報告書(たたき台)は「I はじめに」と「III おわりに」を除きますIIが本体ですが、本体は洋数字の3つの部分から成り立っております。1、2、3それぞれについて1つずつ区切りながら御議論をいただければと考えております。

 まず「1.現行の個別労働関係紛争解決システムの改善について」、これは4から10ページの部分ですが、この部分について、御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。

 村上委員。

○村上委員 ありがとうございます。

 荒木先生からは、項目ごとに区切って議論するというお話ではあったのですけれども、残された検討会の回数は少ないということで、報告書(たたき台)について、全体的な意見を申し上げたいと思います。

 特に後半の論点についてなのですが、私自身は、労働審判制度が十分に機能し、高い評価を得ている中で、新たに解雇の金銭解決制度を設ける必要性はないという考え方に立ちながらも、仮に制度を考えるとすれば、どのような方法があるのかという観点から、議論に真面目に参加してきたつもりであります。

 年明け以降、解雇の金銭解決制度導入の必要性の有無につき、どのような制度が考えられるのかという点について、具体的な議論を行ってきました。前回申し上げましたけれども、この間の議論を通して強く感じたのは、この制度を入れていくのは難しいのではないかということであります。

 例1、例2、例3、使用者申し立てとそれぞれの法技術的な論点やほかの権利との関係などを見てまいりましたが、いずれについても困難があり、特に議論を中心にしてきた例3というのは、全く新しい権利を創設するというものであって、裁判例などもない中で問題が多いと考えております。

 また、ここからが本題でございますが、本日、事務局から出していただいた報告書(たたき台)の内容、書きぶりについては大きな違和感を覚えております。

 検討会では、さまざまな分野の関係者が集いまして、それぞれの御専門の立場から見解を述べられ、有意義な議論となっていたと思っております。

 その上で、これだけの意見の分布が多い検討会であれば、報告書というものは3ページの「I はじめに」に記載されているように、議論の結果を報告するというものであるべきであって、この間の議論や意見を忠実に整理してまとめていくのが本来の姿であると思います。

 つまり、論点として出された意見を記載しないということであるとか、意見として述べられたことについて、「適当である」などと、あたかもコンセンサスが得られているような記述にするのは不適当ではないかと考えております。

 今後、報告書案を作成していくに当たっては、議論の内容と経過を忠実にトレースした報告書案を作成いただくことを要望いたしたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 という御意見がありましたけれども、この点について、ほかの委員の御意見はありますでしょうか。

 鶴委員。

○鶴委員 個別のところから議論するというお話だったと思うのですけれども、今、村上委員からお話があったので、私のほうからも申し上げたいと思うのですが、この報告書については、従来であれば、いろんな議論をして、そこのコンセンサスを報告書にきちんと書き込んでいくという形にはなるのだろうと思うのですけれども、特に、金銭救済のところについては、やはり、さまざまな意見が出ました。

 私は、このたたき台を見させていただいて、各委員、自分はあの回に、あんなにいいことを言っていたのに入っていないなとか、もっと入れさせてくれとか、そういうのはもちろんあると思うのですけれども、私の目から見たら、かなりいろんな意見のバランスを配慮して、事務局、座長を含めておまとめいただいて提示していただいたという感じが非常に強くて、これを少し修正していくのかというのはあると思うのですが、これまでの議論をかなり率直に報告書の形にしていただいているという認識ではないのかなと、それが非常に素直な認識ではないのかなということを、まずは申し上げたいと思います。

 この扱いをどうするのかというのは、多分そこで話をしてしまうと、順番にということで、今、座長がおっしゃっているので、ここで私もやめたいと思うのですけれども、私は、今の御意見に対しては、そういう認識です。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 報告書のたたき台が出されたところで、たたき台について、これまでの議論を忠実に反映しているかどうか、部分的には、必ずしも十分に主張した議論が反映されていないという箇所があるかもしれません。それをまさにこれからの議論の中で、これをきちんと書くべきではないかというような発言として御指摘いただければと考えております。

 基本的には、今、鶴委員から御指摘がありましたように、私どもとしては、これまでの議論を忠実にまとめたつもりですけれども、もちろん不十分な点があるかと思いますので、今後、御指摘をいただければと考えております。

 中山委員。

○中山委員 中山です。ありがとうございます。

 これまでいろいろな議論で出てきたので、たたき台については事務局も相当御苦労されたと思います。集約してまとめるところですが、もともとの議論の初めは、要するに金銭解決制度を日本において導入すべきかどうか、その是非と、もし、導入する場合、どんなたてつけがいいのかという設計内容、この2つの問題です。これは、鶴先生のほうで、たしか早い時期にお話がありまして、金銭解決制度やその設計については賛否はあるけれども、それはそれにして、各論的にそれぞれの委員の知見、経験で大いに議論をしてということでこれまできたと理解しております。

 今回は、それを踏まえて検討会のとりまとめをするということですが、たたき台の結論部分、最後の24ページの点々のところはまだ書かれていない。これまでのいろんな議論を踏まえて、各委員が金銭解決制度の導入についての賛否、各論でも例1、例2、例3の検討をしてきたわけですが、それらについて、それぞれの委員のこれまでの見解を考えると、意見集約としては恐らく、複数の意見を併記することにならざるを得ないのではなかろうかと推測します。少なくとも、私が聞いていた範囲では、委員により意見の隔たりも相当あって、コンセンサスを得るというのは難しいだろうと思います。

 先ほど言った2点の部分の各委員の先生方の意見も踏まえて、取りまとめをするといっても、異論のある委員も相当いらっしゃるのではないかと思います。とりまとめにあたり、その点を少し申し上げさせていただきました。

○荒木座長 ありがとうございました。

IIの本体には1と2と3がありますが、2の金銭解決制度の取りまとめ方についての御異論が強いように思われます。しかし、当初よりこの検討会では、1の個別労働紛争解決システムの改善も大きな柱で、この問題については、恐らくかなりの程度、コンセンサスが得られているのではないかと思いますので、それを議論し、今、御指摘いただいた2の部分については、さらに踏み込んだ御意見を伺いながら進めていくということにしたいと思います。

 それでは「1.現行の個別労働関係紛争解決システムの改善について」の御意見を伺えればと思います。

 土田委員。

○土田委員 8ページから9ページにかけてのマル3のシステム間の連携のところについて、一言お話ししたいと思います。

 ここは本当に重要なところだと考えていまして、特にマル3のアの(ア)の現状認識を前提にした(イ)の箇所です。つまり、情報提供を、いわばワンストップサービスのような形で行って、どの紛争解決機関で対応するのが適切かというようなことも含めて情報発信をする。

 その際、(イ)を実現するためには(カ)が必須でありまして、案外、労働局も労働委員会もそれぞれお互いが何をしているかということは余り知らないところがあります。ですから、情報共有ということは、現状でも行われているというですが、今後もぜひ、実質的に行っていただきたいと思います。

 私のごく最近の経験から言うと、私は京都で労働局と労働委員会と両方やっているのですが、労働局のあっせん事案で、これは、どう見ても労働委員会に行ったほうがいいだろうという事案が来たり、逆に労働委員会に、これは簡易迅速に労働局で解決するのが妥当という事案が来たりして、結構ミスマッチはあるのです。

 ですから、そこは、マル3のような形で、できるだけ情報提供をきちんとして解消していくということが妥当かと思います。

 ついでに労働委員会のあっせんにつきましては、以前、徳住委員、私も申し上げましたけれども、労働条件の不利益変更のような集団的紛争、利益紛争、それから、ある程度複雑な事案が適しているだろうと思います。やはり、公労使三者構成で時間をかけて行うということがありますから、そういった紛争にはかなりなじむだろうと思います。

 私が経験した中では、ハラスメントについて、ハラスメント自体は個別紛争なのですが、2件ほど、今後、その会社でどういうふうに防止体制をつくっていくかということを含めたあっせん案を出したことがあります。

 こういうのはなかなか労働局のあっせんでは難しい、公労使三者構成で時間をかけて初めて可能だというところがありますので、そういったところを各紛争機関がそれぞれのメリットを認識しつつ、情報提供して、紛争解決に当たっていくことを実質的に進めていただければと思っています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 輪島委員。

○輪島委員 ありがとうございます。

 報告書の7ページのマル2の(ウ)の「定年後に再雇用される事案も多く」というところですが、使用者側の事情だけ重ねて申し上げておきたいと思います。

 使用者側としては、定年後に再雇用された後、65歳前後で労働審判員になっていただくということから、65歳から68歳までというところで、結果として非常に時間が短くなってしまうという事情があると申し上げたかったところでございますので、私どもの事情は、そういうようなことをお含み置きいただければという点でございます。

 さらに、8ページ目の(エ)の全国統一的な研修ということと労働審判員の経験交流ということでございます。特に、さまざま労働審判員の方のお話をお聞きすると、それぞれの事案において審判員として、こういうふうに考えたということについて、正しかったのか、正しくなかったのか、どういうところで労働審判員として判断するべきなのかというところについて、やはり確認をしたいというニーズが非常に大きいということでございますので、個別の事情ないし個人情報とか、さまざまなクリアーしなければならないことがございますけれども、労働審判員の経験交流ということが非常に大事ではないか。さらに、労働審判制度を充実させていくには大変重要な点だと考えておりますので、検討をさらに深めていただきたいと考えているところでございます。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 徳住委員。

○徳住委員 21世紀に入って、個別労働紛争解決促進法ができて、多様な紛争解決制度が整備されてきたことは、労働者にとって大変よかったと思うのです。

 その中で、各紛争解決制度については、よいとの評価ができると思うのですけれども、改善すべきなのは、都道府県労働局のあっせん制度です。都道府県労働局のあっせん制度は、もったいない制度なので、もう少しブラッシュアップしてよりよい制度にすれば、労使ともにさらに使いやすい制度になる可能性があると、個人的には思っています。

 そのためには、1番目は、使用者側の参加率を高めること、2番目は、問題とされている解決金の水準について、どうにかして改善する方法を考えることが重要です。

 3番目は、先ほど、土田委員もおっしゃいましたけれども、他の制度との連携性の問題を解決することです。この点は、様々な工夫によって解決できるのではないでしょうか。

 例えば、都道府県労働局のあっせん参加率について、報告書に書いてありますように、あっせん開始通知書の中で、「参加は強制されるものではない」との記載をやめることは当然だと私は思います。参加率については、例えば、労働審判についても、第1回期日に使用者側が出てくるかということが大変問題になったのです。以前、東京地裁の裁判官が「出てこない気持ちがあれば出てこなくてもいい、そのかわり、欠席でも進めて、その意向を踏んで決定を出すのだ」ということをおっしゃったことがあるのです。このように強い態度で意思表明されたことによって、第1回期日から労使が、使用者側は社長とか役員を連れてくる、労働者側は本人を連れてくる、こういうルールが確立していったのです。

 ですから、第1回期日の参加率を高めるサンクションについて、私はもう少し使用者側なりに参加する方向で抑制をかける措置を考えるべきではないかと思います。

 また、解決金の水準が低いということは、深刻であり、考えなければいけない問題だと思うのです。この点については、八代委員が指摘されている点は、私はもっともだと思って前々から聞いていたのですけれども、そのためには、本件の解雇の金銭解決制度とは別に、何らかの解決の目安などを考える時期に来ているのではないでしょうか。

 つまり、フランスとかイタリア等でも、解決金の金額の上限、下限ではなくて、目安というのは入ってきていますので、この点について、有効、無効等の考慮要素を踏まえながら、最低限の基準のところを引き上げる方策を考えるべきではないかと個人的に思っています。

 紛争解決システム間の連携については、報告書に書かれているとおりでいいと思うのですけれども、利用者にとって本当にわかりやすいように情報を明示・提示していただくということを希望しています。

 以上です。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 私も徳住先生の意見に賛成でありまして、今回の検討会の中で重要なのは、八代先生がよく、「中小企業、零細企業で働いているかわいそうな労働者の金額を引き上げなければいけない」とおっしゃった点だと考えます。

 この点、すぐに改善できるのは、あっせん事案の最低金額を上げることだと思うのです。解雇された労働者の多くが一番先にどこに行くかといったら、都道府県労働局のあっせんのところに行くわけです。個別労働紛争解決促進法は、厚生労働省の所管する法律でもありますので、できたら、この点について、報告書は現在の書きぶりのままとせず、もう少し積極的に法的な措置を講じること、例えば、あっせんに対する使用者側の参加についても、何らかの法的な措置を講じることが必要だと思います。

 徳住先生は、さきほど、何らかの目安みたいなものと発言されましたけれども、もし、法律で記載することは難しいとすれば、通達や指針など、そういう形でもう少し最低金額を上げること、さらにはあっせんの参加について、積極的に政策的に何か促す方策をここに明確に書くべきではないかと思います。

 そうすると、中小企業で働いている人たちは、今までは解決金額は大体1カ月分であったけれども、もっと多くなったなと、そういうふうに感じるようになると思います。

 よって、あっせんの解決金については、解雇の金銭解決制度の箇所で記載されている様々な事例がありますけれども、そういうものがあっせんの解決金にもはね返るような書き方がいいのではないかと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。

 石井委員。

○石井委員 私もあっせんの任意性について意見を申し上げようと思っていたところですが、多様な解決方法で、かつ、それぞれの解決方法が連携してというところの意見は一致するのですが、任意性という点について、これが労働局のあっせん制度の特徴でもあり、長所でもありますので、むしろ大事にすべきではないか。意見の中では、結論としては、さらに検討することが必要であるとなっておりますけれども、大切にしてほしいと思っております。

 というのは、今、任意であるにもかかわらず、参加するというからには、それなりに参加意欲、解決意欲があるので、だからこそ、今みたいな1回の双方の言い分を聞いてすり合わせをしてというやり方でまとまっているのだと思うのです。それは、そういう制度として1つの特徴だからこそ、あれだけの件数をこなせているというのもあると思います。

 参加強制のあるほかの制度としては、例えば、民事調停の制度などもありますし、同じような制度をたくさんつくるのではなくて、やはり、多様な制度のもとで、十分情報は提供して、それぞれの制度の特徴を知らしめたり、あるいは連携を上手にとっていったりというところを考えればいいので、任意の制度ということで生かす方向を考えたほうがいいのではないかと思います。

 参加に関する法的サンクションという点で言えば、民事調停は出頭義務があって、科料の制裁もありますけれども、それで解決率が上がっているかと言えば、そうでもないと思います。

 交渉段階で民事調停の提案をしても、申し立てても出頭しませんからと言われたりということもございまして、出頭を強制しても、結局、紛争解決にはつながらないのではないか。むしろ、1つの特徴ある制度として、それを生かす方向を考えていただきたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 高村委員。

○高村委員 私は、労働局のあっせんに関して発言をさせていただきたいと思うのですが、厚生労働省が毎年発表しております、個別労使紛争解決促進制度の施行状況でいきますと、平成20年度の都道府県労働局のあっせん申請件数は、8,457件だったのです。ところが、これは年々減少してきて、平成27年の数字になると、4,775件に減少しているのです。

 私は日々いろんな労働相談を受けていまして、その相談に対して私のほうから、例えば、「連合東京に個人加入して団体交渉をして解決するという方法もあります。法的に争うという方法もあります。さらには、東京労働局にあっせんという方法もあります」というように、いろんな投げかけをしています。東京労働局にあっせん申請をする方の多くは、困っているけれども、経営者と徹底的に対決するようなことは避けたいと、何とかこの問題が円満に解決すれば、引き続き勤めたい。何とか円満に解決をしたいという思いで、労働局のあっせんを選択する労働者は、私の経験からすると多いと思っています。

 要は、労働者が何とか円満に解決したいということで、労働局のあっせんを申請しているのに、使用者が、その参加を拒否することによって、手続はそこで終結してしまいます。

 いろんな相談者と話をしていますと、労働局のあっせんは、相手が参加しないと、そこで手続が終結するということが、多くの人に理解されるようになってきているのです。

 結果として、私は、先ほど申し上げたように、平成20年では8,000件を超える申請件数があったのに、平成27年では4,700件にまで申請件数が減少しているということにつながっているのではないかと思います。

 もちろん、制度上、難しい問題があるにしても、せめて入り口で参加をどう確保するかということを真剣に考える必要がありますし、また、労働局の皆さんは、私が先ほど申し上げたように、なぜ、労働者が労働局のあっせんを申請するか、それは、円満に解決したい、使用者と決定的に対決するようなことは避けたいという思いで、あっせんを申請するわけですから、その思いを使用者にもきちんと伝えて、双方が参加をすれば、これまでも申し上げたように、7割を超える解決率になるわけですから、その辺は、真剣に取り組んでいただきたいということを申し上げておきたいと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。

 時間の関係もございますので、一旦、次の2の問題に移りたいと思います。後ほど、時間があれば、また戻ってくることにしますが「2.解雇無効時における金銭救済制度について」で、11ページ以降ということになります。この書きぶり等について御意見等があれば、よろしくお願いいたします。

 鶴委員。

○鶴委員 どうもありがとうございます。

 大きく分けて2つあるのですけれども、1つは、24の最後【P】となっているところで、先ほど、中山委員がおっしゃったように、ここの書きぶりがどうなるのかというところで、多分、それぞれの委員の考え方が違うだろうということをおっしゃって、その考え方について少し申し上げたいと思います。

 1番目は、この報告書を出した後、労政審でさらに御議論がされるという理解でおります。これについては、日本再興戦略で既に閣議決定されて、結論が出たら労政審で検討していくということになっているかと思いますので、これは、我々はそういう議論で考えるべき問題と思っています。

 2点目は、そこで何を議論するのかということだと思うのですけれども、この報告書で労働者申立制度について、例1、例2、例3とあって、例3について、ここではかなり議論したという理解でおります。

 例3については、いろんな課題、それから、法技術的な論点があると。そのことについても、この検討会は共有されたということで、それを前提にさらに労政審で、そういった論点について、この例3をベースに御議論をしていただきたいということが、この【P】のところにぜひ書いていただきたい内容かと思います。

 それで、いろんな論点とか課題があるから、これ以上もう検討できないというほど、物すごくそれぞれの課題についてどうしようもない、乗り越えられない困難があるのかということになると、これまでの議論をしている限りは、やはり、それはさらに議論をして判断すべき事柄であろうと思いますし、私自身は、それは必ず乗り越えていける課題、論点だと考えております。

 以上、2点について、ここに書き込んでいただきたいということです。

 それから、もう一つのコメントなのですけれども、具体的に申し上げますと、24ページの下から3番目、オというところがありまして「解雇無効時の金銭救済制度を導入すれば、こうした有効に機能している現行の紛争解決システムに悪影響を及ぼす可能性がある」。同じような趣旨の文言が、21ページから始まっている「(キ)他の労働紛争解決システムへの影響」の次の22ページを見ていただくと、上から2番目のポツで「既存の紛争解決システムへの影響が大きいのではないか」という記述がございます。

 私の理解では、前回の検討会で、21ページの「(キ)他の労働紛争解決システムへの影響」ということを議論したと思うのですけれども、そこでの考え方は、具体的な制度設計、例えば、解決金の水準とか、バックペイに上限を入れるとか、そういうことをいろいろやっていく中では、もしかして大きな影響が出てくるかもしれない。ただ、そういうものを除いた場合に、必ずしも大きな影響が出るのか、余りそれは心配しなくてもいい部分もあるのではないか。ここに数々の意見というのは、かなり正確に書いていただいているのですけれども、この金銭救済制度を入れたら、それがどんな形であっても、悪影響を必ず与えるというような書き方は、少なくとも今の報告書の流れとか、前回の議論とは整合的ではないなと思っております。

 例えば、最後の24ページについては、金銭救済制度を導入した場合、制度設計いかんによっては、悪影響が出る場合があるとか、何か文言をつけ加えていただくということ。

 例えば、21ページの(キ)のところの最初の出だしは「制度設計の仕方によって」という文言がついておりますので、より正確ではないのかなと。

 それと、22ページの、先ほど申し上げた2番目のポツのところについては、ほかのコメントは、どういう場合だと影響を与えるのか、どういう場合だと、余り影響はないと考えていいのではないか。その辺をかなり峻別にしてコメントをしているので、ここのコメントについては、必ず、これはどういうようなことを問題視しているのかということを書き加えていただかないと、報告書の中で、この2つのコメントについて整合的ではないと判断しています。

 以上でございます。

○荒木座長 土田委員。

○土田委員 私は、報告書の中身について幾つか個別にあるのですが、差し当たって、今、鶴委員が言われた、基本的な1点目のところについて、1点コメントしたいのですけれども、先ほど、中山委員が、特に最後の24ページを中心に、ここでコンセンサスを得るのはなかなか難しいのではないかという趣旨のことをおっしゃいました。しかし、一体、それはどのレベルでコンセンサスを得られなかったのかということは整理する必要があると思っていて、例えば、例2を検討して、きょうの報告書にもたくさんありますが、いろんな意見があるから引き続き検討することが適当と考えられる、これは幾らでもあるわけです。

 しかしながら、問題は、大きな方向性として、この検討会で議論してきたことを踏まえると、各論は別にして、基本的な方向性としては、労働者申し立てを前提とした例3のタイプについて、引き続き検討を深めることが適切であるというようなまとめ方ができると思うのです。

 ですから、そのような形で、全体の方向性をまとめられるようなものができればと考えています。

 あと、各論は幾らでもありますけれども、差し当たり、以上でございます。

○荒木座長 水口委員。

○水口委員 全体の方向性の前に、少し各論について、気になる点を申し上げたいと思います。

 報告書(たたき台)13ページ「ウ 例3について」と書かれているところで、例3については、例1や例2に比べると相対的には選択肢として考え得るものであるが、いろんな個別論点があると、こういう取りまとめがされているのですが、ここの「相対的に選択肢として考え得るもの」というのが、果たしてコンセンサスを得られているのかというと、私はそうではないと思っているところです。

 例3に議論が集中したのは、例2は判例も検討しましたけれども、例1については、過去、平成15年、平成17年検討時に議論をしていたため、今回はあまり議論がされなかったためです。今回、例3が新たな制度として提案されたので、仮定的に導入するとしたらどうするかという議論をしてきたということになるので、はたから見ると、相対的にみんなが例3に興味を示しているのかとお考えになったのかもしれません。相対的に選択肢として考え得るもの、そういう意見の方がいらっしゃったことは事実ですから、そのような意見が出たという書きぶりであれば構わないのですが、報告書の書きぶりだと、全体的なコンセンサスとして、例3が相対的に選択肢として考え得るものとなってしまうように読めてしまうので、議論の取りまとめとしてはバイアスがかかり過ぎているのではないかと思っています。「例1、例2と比較して、例3は新たに提案された制度であるが、権利の法的性格等は云々だ」というような、少なくともこの部分では、もう少し中立的な観点での表現であるべきではないかというのが1点目です。

 2点目ですが、20ページの(d)の具体的な限度額の箇所は、委員の皆さんがおっしゃっていることを書かれているところであり、それぞれの意見については、このように発言された委員がいたことは間違いないので記載自体はいいのですが、(d)の2つ目のポツで「解雇有効の可能性が高い場合であっても、1~3か月という数字が出ていたので、今後議論の際の目安になるのではないか」と書かれています。そのときに、1~3カ月というのは、解雇が有効の場合であって、検討事項の補足資料ver4の10ページなどに出されていた今までの統計資料でいったら第三四分位の数字です。解雇無効の場合には、例えば、労働審判だったら7.5カ月、本訴における和解だったら11.5カ月ということなので、それを水準にすべきだということを、たしか、以前の検討会で村上さんがおっしゃったと思うので、私が言うのも変ですが、その際の意見はきちんとつけ加えるべきです。解雇有効の場合の目安が水準ではなくて、解雇が無効だろうと想定される水準で考えるべきだという意見が、たしかあったと思いますので、その点が報告書から落ちているのではないかと思っています。

 また、私の立場からは、解決金の上限、下限について余り言いたくはないのですが、その点に対する意見は、きちんと並列的に書くべきだろうと思います。

 同じく20ページの(e)バックペイ分について、「なお、バックペイに限度額を設けない場合は、審理の長期化を招くことになり、弊害が大きいとする意見もあった」ということですが、これは、恐らく中山委員がおっしゃった意見で、その後に和解との関係で云々という話をされていたと記憶しているのですが、労働者側の立場からすると、バックペイに限度額を設けると使用者側のほうが徹底的に争って、審理が長期化するという側面があります。バックペイの上限を設けてしまうと、今度は使用者側の審理の長期化を招くという意見も申し上げたつもりなので、ぜひ、その点は追加をいただきたいと思っています。

 最後ですが、23ページの「(ク)その他」で就労請求権のことが取り上げられているのですが、その他の中に様々なことが書いてあれば、その他としてまとめていただいても結構なのですが、ここでは就労請求権のことしか書いていないので「(ク)その他」の表題を就労請求権としていただきたいということです。全体的なまとめの方向については、もう少し先生方の意見を聞いてから、また、述べたいと思います。

○荒木座長 輪島委員。

○輪島委員 ありがとうございます。

 私は、前回の検討会の最後に発言をさせていただきましたが、私どもの認識は、現時点で、1つの方向性が示されたとは言えないと考えているところでございます。

 その点で言うと、12ページから13ページのところですが、例1と例2についての振り返りというのは、今、水口先生がおっしゃったとおりだと思います。それで、例3について議論をしてきたというところですが、同じ箇所ですけれども「相対的には選択肢として考え得るものであるが」と、そういう方向性にあるとは考えていないわけであります。

 その点で、つけ加えて言えば、24ページの使用者申し立ても含めて、例1と例2と例3と使用者申し立ては並列な関係にあると考えているところでございます。

 そういう意味では、24ページのまとめのところですけれども、仮に例3を検討したということはそうだと思うのですけれども、さまざまな検討課題に関して議論すると、そういうまとめ方が適切な方向性ではないかと考えているところでございます。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 私も輪島さんの意見と同じような意見を持っているのですが、この報告書の書き方に対して、大変違和感があるのです。誰が書いたか名前を聞きたいぐらいなのですけれども。この点、なぜかというと、公平、中立な書き方がされていないためです。特に例1、例2、例3のそれぞれについては、きっちりと公平に書いてほしいのです。比較的、例2については、議論を踏まえると、全体的にこれは無理だなということがありましたけれども、例1と例3については、この間議論のあったところです。

 私の記憶に間違いがなければ、中山先生は例1で行くべきだということを何度もおっしゃっています。比較的、例1についての記載が少ないのはなぜかというと、事務局の説明の際に、かつての議論の内容を詳細に説明されたので、あのときはこういう議論があって、これであのときはできなかったのだというのが、その際の説明で理解できたということもあり、意外と例1についての議論をしていないのです。

 したがって、今回の報告書では、例3についても、各論点に入る前にたった何行かで書いていますけれども、議論の中でこの例3については、裁判例や判例があるわけでもないし、新しい権利を創設するのだという発言があったわけです。例3という非常に重要なことが、この説明の中から落ちているということは、問題だと思うのです。

 この検討会では、まず、解雇の金銭解決制度導入の必要性の有無を検討し、最終的に例1、例2、例3はどうなのかという議論があると思います。仮に導入するとしても、例1と例3は同格だと思うのです。そういう意味でも、きちんと記載をしてほしいのです。例1についても事務局が説明した点をもっと丁寧に書いてほしいと思います。

 私は、基本的には一巡の議論を踏まえると、例3は新しい権利の創設であるので、自分なりにこの間様々なことを考えて、これはなかなか無理があり、そう簡単ではないと思いました。最終的に、これは創設すべきではない、解雇の金銭解決制度は時期尚早なのではないかと思っています。

 しかし、検討するというのであれば、例1、例3は同格に扱うべきだと思います。

○荒木座長 中山委員。

○中山委員 ありがとうございます。

 今、話のあったところで、例1について、13ページで「困難な課題が多い」ということで、それだけで排斥されているようなので、私も今、長谷川委員の言われたとおり、例3とともに検討していただきたい。

 ですから「困難な課題が多い」というのは、少し表現が行き過ぎているのではないかと思います。これが1つです。

 あと、輪島委員のほうから御指摘の23ページの「マル3 使用者申立制度」なのですが、ウの結論で「現状では導入は困難であり」となっているのです。その理由として「こうした意見を踏まえ」ということでイに意見があって、特に「法技術的にも労働者申立より一段ハードルが高い」というのが、3つ目の黒ポツのところに書いてあります。これは、第13回の検討会でそういう話が出たというので、私は第13回を欠席しておりまして、その議事録が今アップされているので見たのですが、私の見落としがあるといけませんけれども、山川委員も使用者申立について触れておりますが「一段ハードルが高い」という、そういう記載はないですし、むしろ、実体法的な例3の形でいくのであれば、使用者申し立てについても、新たな解雇権というものを認めるという形で整備すれば、次元の違いが割とクリアーになるのではないかと、こういう旨が議事録に出ておりました。

 使用者申立制度は、法技術的にも一段ハードルが高いので導入は困難という記載については、そこまで簡単に言えないのではなかろうか、また、そこまで詰めた議論がされていないのではないかということで、ウの結論については修正をいただきたいと考えています。

 それから、先ほど来、最後の24ページのまとめのところで、土田委員からもコンセンサスの問題が出ましたが、今、輪島委員あるいは長谷川委員からもお話があったところと、私は同感です。

 もう一つは、各委員がそれぞれ金銭解決制度導入の是非についてどういうお考えなのか、その点を表明されていない委員も相当多いのではないかと思います。

 同じように、設計手法のたてつけ方についてもそれぞれの委員で御意見がどうかというのを私も確認できない、議事録とか、検討会での意見の中で、必ずしも意見表明されていない委員もいらっしゃいます。設計については、いろんな条件つきで、こういう場合ならばいいけれども、これだと困るという意見もあろうかと思います。

 したがって、まとめとしてどう書くかという書き方の問題もありますが、1つの方向性を明確に出すというのであれば、これだけの委員が参集しているわけですから、多数決というわけではありませんけれども、各委員の御意向も確認して、最後のまとめに反映するような形をとっていただければありがたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 先ほど、小林治彦委員から手が挙がっていましたね。

○小林(治)委員 はい。私ども商工会議所の立場につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

 解雇に関するルールが明確化されまして、労使双方が納得する早期の解決制度が実現するということにつきまして、私ども商工会議所は従来から賛同しております。

 先ほど鶴委員からもお話がありましたように、理由といたしましては、2015年3月の規制改革会議の提言でありまして、あくまで今回の場合は、労働者からの申し立てというのが前提となっておりますので、労働者自身が選択できるようになれば、労働者側にもプラスになるのではないかというのが、その理由でございます。

 そういうことから、これまで議論もされてきましたので、報告書の26ページにございますように、今後、労働政策審議会で検討を進めるということにつきましては、商工会議所として賛同したいと思っております。

 ただし、労政審での議論につきましては、限られた論点について、例えば、別途専門家の方々の作業部会を設置するなどの方法もあるのではないかと思っております。

 また、もし、この制度が導入されるようになれば、訴訟が頻発するということも考えられますので、各地行政の労働局などにおかれましては、新制度導入をしっかりと説明していただくとともに、相談体制というのもしっかりと整備していただきたいというのが、私どもの総論的な考え方でございます。

 また、各論でございますけれども、金銭的予見可能性を高めるということにつきまして、従来から私どもとしても言っておりまして、特に金銭に上限、下限を設けるということにつきましても、御提言されておりますけれども、解消金が高額になり過ぎますと、中小企業はなかなか支払いが難しいということもございますので、中小企業の負担にも配慮した議論を、ぜひ今後もお願いしたいと思っております。

 また、金銭の算定根拠を明示する方法につきましては、趣旨には賛同しておりますけれども、解雇に至った背景や様態ですとか、労使の責任の度合い、企業の支払い能力などもさまざまでございますので、企業横断的に一律に決めるということは難しいのではないかと考えております。

 最後にバックペイの問題ですが、解雇から判決時または解雇から支払い時までに認めることになりますと、裁判が長引くほど、解消金額が増大するという懸念がございますので、バックペイの発生期間につきましては、解雇から金銭請求時点までという形でお願いできればと思っております。

 以上でございます。

○荒木座長 土田委員。

○土田委員 少し各論的なことでもいいでしょうか。

○荒木座長 どうぞ。

○土田委員 報告書の13ページから14ページ以降の「(ア)対象となる解雇」のところですが、私自身は、以前から言っておりますとおり、14ページのcの1つ目のポツの意見でして、労基法16条、雇止め以外の特に差別的な解雇については対象とすべきではないと考えています。

 感想ですが、14ページの上から8行目「労働者の選択肢を増やす観点からは対象とすることが適当である」ということですけれども、差別解雇のように公序性のある保護法益を対象とする解雇については、労働者の選択肢をふやすということだけで正当化できるのかということについては、なお、疑問を持っています。これは、意見です。

 今後の課題としては、特にここの検討会議で議論していないと思うのですが、14ページの下のほうにある不当労働行為解雇です。ユニオン・ショップもそうですけれども、これは、労働者個人の雇用の利益だけではなくて、労働組合の団結権、団体交渉権、団体行動権、これが重要な保護法益ですので、これについては、今後、くれぐれも慎重に議論を進める必要があると思います。拙速に決めていただきたくないと考えています。

15ページの書き方の話なのですが、(イ)のaの最後の「※ 労働基準法等の法律によって禁止されている解雇等も含む要件を設定する」。これだけですと、16条の要件マル2が変わって、例えば、労基法3条の差別の禁止の要件が入ってくるということなのでしょうけれども、少しそこが読みづらいので、もう少し別の要件に取ってかわるのだということを丁寧に書いていただけないかなと思います。

20ページ、先ほどからの上限、下限の件ですが、私が申し上げておきたいのは(d)の3つ目のポツです。

 先ほど、小林治彦委員から言われた中小企業の配慮は、もちろん私もよくわかるのですけれども、水口委員が言われたこととの関連でいうと、(d)の3つ目のポツのところで、解雇が無効である場合の金銭の額について触れています。

 2つ目は、解雇が有効の場合を前提にしているのでしょうけれども、(d)の3つ目、私が言いましたのは、解雇無効を前提とするということです。

 そうだとすると、無効とした場合の額については、労働者に帰責性がない状況で労働契約を解消することの代償なので、早期退職者優遇制度の割り増し、つまり、相当高い額が参考となるだろうというので、そこで、例えばということで挙げています。

 小林委員の指摘について言いますと、確かに中小企業への配慮は必要なのでしょうが、これはあくまでも解雇が無効であるということが前提となった場合の解消金ですので、その場合には、以前も申し上げたとおり、額の相場がある程度上がっていくことになることについては御了解いただければと考えております。

21ページの一番上のところ、労使合意の取り扱い。これは、前回、労使委員双方から、そもそも労働契約の解消金の水準について団体交渉して、労働契約で決めることのイメージがわかないという御意見がありました。それは、もっともな御意見だと思うのですけれども、イメージがわかないのは当たり前の話で、現時点では、この制度がないからイメージがわかないわけです。仮にこういう制度ができたとすれば、団体交渉や労働契約ということも行われるのではないかと思いますので、その点を述べておきたいと思います。

 最後に、21ページから22ページの影響の点、それから、23ページの必要性の点ですが、先ほど鶴委員もおっしゃったのかな、そもそも他の紛争解決システムへの影響については、制度設計によるところがあるわけですから、そのことを前提にして考えないと、直ちには影響云々は言えないのではないかということを前提にして、労働局や労働委員会からのあっせんで、労働者のニーズを現場で肌に触れて感じた上での感想を1点言いたいと思います。

 特に労働局あっせんでは、何度も出ているとおり、この解雇について、この金額で労働者に提案するのは、いかにもかわいそうだと。この解雇には相当問題があるという心証があって、これでは気の毒だけれども、使用者が譲らないというので、泣く泣く低額で合意するケースが結構あるのです。特に労働局はそうです。

 しかしながら、迅速性を旨とする労働局において、かつ正確な事実認定と法的判断ができないわけですから、これはどうしようもないわけです。

 この種のケースについては、確かに次のステップとして労働審判あるいは道府県によっては労働委員会のあっせんもあります。しかしながら、こういった制度の中に合意が組み込まれるということになってくると、合意が得られるかどうかわからないわけです。

 そういう状況の中で、労働者のニーズから見ると、地位確認は求めない。金銭解決でリセットしたい。しかし、合意がなかなか得られそうにないというようなケースについて、合意を必要としない金銭救済制度を設ける意味はあると思います。

 そういう意味で、他の制度との関係あるいは最後の必要性のところで、合意が成立しない、成立の見込みがないという状況で金銭救済制度を本訴として設ける必要性について引き続き議論する意味はあると考えております。

 その場合には、当然、裁判所が事実認定と法的判断を前提にして行うわけですから、そういう制度を考える余地はあるのではないかと考えています。

 以上です。

○荒木座長 斗内委員。

○斗内委員 ありがとうございます。

 私からは、21ページ「(キ)他の労働紛争解決システムへの影響」について発言をさせていただければと思います。

 以前、第12回・第13回検討会の際にも、労働紛争解決システムの中に、既に構築されている集団的労使関係というものが含まれるのかどうかという疑問を呈させていただいたことがありました。

 まさに今回のような制度が創設されると、実際に労働組合があるところの集団的労使関係に大きく影響してくるものだと思っております。

 不幸にして、残念ながら人員削減を行わなければならないということになりますと、労使自治の中で、そのときの退職条件をどうするかということを議論し、労働協約を結んで、希望退職なり何なりで応じているというところでございます。それは労働契約の合意解約ということになりましょうが、先ほど来出ていますように、解雇無効時における解雇の金銭解決制度なのだということの線引きが世の中的にきちんとされないと、集団的労使関係が変な影響を受け兼ねないということがあるのではなかろうかと思っております。

 そういう意味では、解雇無効時というものを、何をもって、どのような要件でということが、やはりまだこの報告書(たたき台)の中でも不明確なのではないかという気がしております。そういったことを少し発言させていただければと思います。

○荒木座長 それでは、村上委員、その後、水島委員、お願いします。

○村上委員 時間がないので、全ては言い切れないのですが、冒頭に申し上げたように、この報告書(たたき台)の、特に2.の部分が、これまでの議論の経過を忠実に反映していないのではないかということで申し上げたいと思います。

 それは、自分の発言が記載されていないということではなくて、どのような意見があったのかということについて、この間の議論の状況がきちんと公平に書かれていないのではないかということです。

 例えば、先ほど14ページで土田委員が指摘された、bの部分です。どのような解雇を対象にするのかという箇所で、法律で禁止されている解雇の場合も対象にできるのではないかというまとめになっておりますが、これは、石井委員の御意見としては出てきましたけれども、この検討会全体のコンセンサスにはなっていませんでした。このように随所に、まだコンセンサスにはなっていないところに評価が加えられているということについて、ぜひ修正をいただきたいと思います。細かな部分については全部言い切ることができないので、また、後ほどお知らせをしたいと思っております。

15ページでは、(b)の箇所で、 労働契約解消金の支払請求後に 取り下げできるか、できないかというところで「支払請求後の取り下げができない仕組みとすることが考えられる」とありますが、その点に対してもさまざまな意見があって、このようなコンセンサスになっていたのではないと感じているところです。

 それから、ここも議論がございましたが、20ページの上段に「予見可能性を高めるため、上限額や下限額などの限度額を設定することが適当であると考えられる」と、【P】になっておりますが、この【P】が示すとおり、様々な御意見があった中で、ここまでのコンセンサスには至っていないのではないかと思います。

 また、(d)のポツの中では、中村委員の発言が抜けておりますので、ぜひその点は御記載をいただきたいと思います。

 最後に、まとめの部分については、次回も申し上げたいと思いますが、日本再興戦略で言われていたのは、何も解雇無効時における金銭救済制度のあり方のみについて検討して、労政審で議論するということが書かれていたわけではなくて、その点も含めて、紛争解決システム等の在り方についての具体的な議論をするとなっておりますので、特に例3のようなものを前提に議論するということが、ここでの命題であったわけではないと確認をしておきたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 水島委員。

○水島委員 ありがとうございます。

14ページの不当解雇にかかわるところで、先ほど、土田先生がおっしゃった御意見に対して一言述べさせていただきます。

 理念的におっしゃることは十分理解しますけれども、これは、労働者申し立てですから、組合員が団結権をみずから失わせるような行為をするかどうか。また、法律で禁止してまで、守らなければいけないかには疑問を持っております。

 先ほど、村上委員の御発言で、bが石井委員の御意見という御指摘がございましたけれども、私もbの意見については賛成の立場です。

 それから、報告書の書きぶりですが、19ページの(エ)に関して何か意見等、こうした問題がある、課題があるといったことが出ていたのではないかと思いますが、出ていたのであれば、記載いただければと思います。

 最後に、23ページの使用者申し立ての書きぶりですが、中山委員がおっしゃったように、私もやや疑問があります。特にウの書きぶりにつきましては、さらに御検討をいただければと思います。

 以上です。

○荒木座長 徳住委員。

○徳住委員 結論の部分と関係してくると思いますけれども、解雇の金銭解決制度を法制化する立法事実があるかということをもう一度考えておく必要があるのではないかと思います。

 そのことは、11ページに、「 行政によるあっせんや労働審判制度、民事訴訟上の和解においては、解雇をめぐる個別労働関係紛争の多くが金銭で解決されているという実態があること」とあり、 解雇の事案で、金銭解決制度の割合が高いと、これは私も事実だと思うのです。その場合に、解雇された労働者が、「不当解雇である。職場に戻りたいけれども、金銭解決したい」という要求があることは私も十分わきまえていますけれども、金銭額を判決に基づいて解決すると考えるのか、労使合意に基づいて解決するのか、ここは重大な岐路があると思っているのです。

 それは、ドイツの解消判決制度がほとんど使われていないというのは、解雇された際の解決金の金銭額を裁判所が決定して、それに従えという思想が、労使に受け入れられない可能性が十分あるためと、私は思っています。

 ですから、ドイツの場合も、結果的に、その制度はほとんど利用されずに、訴訟の第1回期日における冒頭の和解勧試によって、解決が図られています。私が、以前調査に行ったときは、労働裁判所へ60万件の申し立て件数がありましたけれども、その4分の3の約45万件の事件が一日で解決しているということでした。現在、申し立て件数は減っていますから、現状がどうなっているかわかりませんけれども、当時はそういうことでした。労使の合意によって金額を決めて終わるということが、一定の有意性を持っていると考える必要があります。

 フランスにおける制度については、調停が不成立の場合に、判決制度です。これがなかなか早期に解決しないため、2年、3年と長引いて、お互いに主張し合って解決金を決めている実態にあります。このような実態が、本当にふさわしいのか、また、我が国でも、この間の議論で出てきましたように、都道府県労働局のあっせんにしても、労働審判における調停にしましても、訴訟における解決にしましても、やはり労使がそれぞれの要求を出して、あっせん委員など中間に立つ人がいて、最終的に合意して解決していくという流れです。

 ですから、今、必要なのは、労使合意ができる素地と、仕組みを充実させることが重要であって、判決に基づいて金銭額を決めて解決してしまうという制度は、今の時点では必要ないのではないでしょうか。

 労働者側に聞いても、判決に基づいて金銭額を決めて解決してしまうという制度に対する要求があるかというと、ほとんどそのような意見は聞きませんし、使用者側の先生に聞いても、「いや、俺らはそんなの求めていない」とおっしゃいます。では、一体誰が求めているかということを聞かれたときには、分からないと言っているのですけれども、そういう点では、土田先生の意見とは少し逆の立場になりますが、判決に基づいて金銭額を決めて解決する制度に対する立法事実というのは、今の時点では、社会的に存在しないのではないかと、仮に存在しても小さい立法事実しかないのではないかというのが私の考え方です。

 2番目に、例3の問題についても、いろいろ細かい点を言いたいことはあるのですけれども、例3については、法技術上の問題が出てきました。法技術上多くの論点があって、これらの論点の選択の仕方や組み合わせによっては、労働者側にとってみれば、検討の余地がないような立法制度になる可能性がありますし、逆に言うと、使用者側にとってみても、これは怖くて絶対に反対をせざるを得ないような、検討するに値しないような案になる可能性は十分含まれているのです。

 例えば、労働側で言うと、一旦、形成権行使したら撤回できなくて地位確認ができないこと、形成権行使したら、その日に労働契約が終了して、バックペイがその点で頭打ちになること、解消金について上限を定められて、バックペイも入らないこと、そして、使用者申し立てなど、様々な組み立てがありますけれども、そういう組み合わせによっては検討に値しないものになるし、使用者側がなかなか賛成とは言えないのは、そこに逆の立場の問題があるのではないか。

 そういう点では、私は、立法技術上の問題は非常に困難な問題であり、各論点について存在する問題点と、論点の組み合わせによって双方が到底納得できない、検討に値しないものが出てくる可能性があると思います。よって、例3を踏まえて制度を検討するという結論ありきで報告書を作成することについては、私は反対です。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 小林委員。

○小林(信)委員 時間がないのであれなのですけれども、今回ずっと検討会に出席をさせていただいて、いろんな意見を聞いている中で、非常に難しい問題だということがよくわかりました。

 まだ、引き続き検討が必要な項目がかなりあるということと、法律上、まだ細かい部分について、より専門の法学者とか、使用者側、労働者側の弁護士も交えてもいいと思うのですけれども、専門家による検討が必要な箇所が随分あるなと感じております。

 先ほど、商工会議所の小林委員もおっしゃっていましたけれども、金銭解決のルール、私がずっと感じていたのは、水準がどういう水準になるのかというのがわからない中で議論するというのは非常に難しかったので、あえて意見を申し上げられなかったところもあるのですけれども、いずれにしても、多分、労政審の労働条件分科会で検討するのだと思うのですが、この検討会が終わってすぐに議論を始めたところで、公労使双方でなかなか納得いかない状況になるのではないのかというのが想定されるような感じがします。

 ぜひとも法律の専門家を交えて、今まで分科会でいろいろ検討する前、事前に法学者等で検討するような検討会を持って、そちらで御提案いただいたものを労政審のほうで議論する手続等もありますから、この検討会が終わった後、より専門家の方々に集まっていただいた検討会を立ち上げていただいて、そちらで法律的な、技術的な側面というのは十分議論していただいて、労政審に上げていただくようにしていただければと、これはお願いでございます。

 以上です。

○荒木座長 済みません、時間が来てしまいましたが、最後の「3.その他個別労働関係紛争の予防や解決を促進するための方策について」に何か御意見があれば、お一方、お二方、御意見を伺いたいのですが、この点については、よろしゅうございますか。

 それでは、済みません、時間が来てしまいましたので、きょうの議論は、以上ということにさせていただきたいと思います。

 本日の議論を踏まえた上で、次回も引き続き、報告書の取りまとめに向けた議論を行いたいと考えています。

 さまざまな意見が出ましたが、次回の検討会においては、きょうの意見を踏まえた報告書案を事務局のほうで用意していただきたいと思います。

 それでは、次回の日程について、事務局からお願いします。

○大塚調査官 次回の日程につきましては、現在、調整中でございますので、決まり次第、委員の皆様方に場所とともにお知らせいたします。

 以上です。

○荒木座長 それでは、本日の検討会は、以上といたします。

 どうもありがとうございました。


(了)

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