ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(薬剤耐性(AMR)に関する小委員会)> 第2回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会(2017年3月6日)




2017年3月6日 第2回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会

健康局結核感染症課

○日時

平成29年3月6日(月)14:00~16:00


○場所

厚生労働省共用第6会議室(3階)


○議題

(1) 抗微生物薬適正使用の手引きについて
(2) その他

○議事

○結核感染症課長補佐(高) 定刻となりましたので、ただいまより第2回薬剤耐性(AMR)に関する小委員会を開催します。今回、渋谷委員の任期満了に伴い、後任として青森県中南地域県民局地域健康福祉部長の山中朋子委員に御着任いただいていることを御報告します。また、今回は、感染症関連の学会で8学会合同抗菌薬適正使用推進検討委員会を代表して青木参考人と二木参考人に、作業部会で議論に関わられた方として宮入参考人と山本参考人に御出席を頂いております。

 本日は19名中18名の方々に御出席いただいております。また、本日は賀来委員より御欠席の連絡を頂いております。現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立することを御報告します。

 次に事務局より資料等の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、座席図のほか、資料1及び2、参考資料18を御用意しています。不足の資料がありましたら、事務局にお申し付けください。

 なお、冒頭のカメラ撮りについては、ここまでとさせていただきます。御協力をお願いします。以降の議事運営については、渡邉委員長にお願いします。

○渡邉委員長 委員及び参考人の先生方、御多忙の折に出席いただき、どうもありがとうございます。では、本日の議題を確認したいと思います。本日の議題は、議題1として「抗微生物薬適正使用の手引きについて」、議題2として「その他」を予定しています。皆様方には円滑な議事進行に御協力をお願いします。

 次に、参加していただいている先生方の遵守事項について、事務局から報告をお願いします。

○結核感染症課長補佐(高) 事務局より審議参加について御報告します。本日参加された委員及び参考人の方々の、過去3年度の関連企業からの寄附金・契約金などの受取状況について御申告を頂きました。本日は各種抗菌薬等に関する議論がある予定ですので、申告を頂いたというものです。現時点での結果を御報告します。その結果、舘田委員と二木参考人より、500万円を超える寄附金等の受領があったとの申告が、そして、荒川委員と青木参考人より、薬事承認等の申請資料等の作成に関与されたとの申告がありました。したがって、「抗微生物薬適正使用の手引きについて」に関する審議及び議決時には、舘田委員と荒川委員には退室いただくことになります。

 また、その他の方では大曲委員、白石委員、八木委員、宮入参考人より、50万円を超え500万円以下の寄附金等の受領があったと申告がありました。したがって大曲委員、白石委員、八木委員については、同議決には参加をすることはできません。

 このほかには、審議や議決に不参加となる基準に該当の方はありませんでした。なお、企業に確認させていただいた内容は、後日、ウェブサイト上で公開させていただきます。事務局からは以上です。

○渡邉委員長 ありがとうございます。それでは、議事に入りたいと思います。まず議題1の「抗微生物薬適正使用の手引きについて」、事務局から説明をお願いします。

○結核感染症課長補佐(野田) 事務局より資料1を基にして、御説明をさせていただきます。資料1「抗微生物薬適正使用の手引き 第一版()」という資料です。この目次を御覧ください。この手引きに関しては、第1回の小委員会で御議論いただいたように、「はじめに」、「総論」、そして各論として「急性気道感染症」と「急性下痢症」をテーマとして、記載をさせていただいております。もちろん今回のものについては、第一版とさせていただいたように、できるところから始めていくということで、今回、作業部会のほうで3回にわたり御議論いただきまして、その結果が今回、小委員会に上がってきたというものです。

1枚おめくりください。「1.はじめに」という所です。ここについては「策定の経緯」という所で、世界的な動向、アクションプランの策定、日本での抗微生物薬の使用量などについて、記載をされています。

 また1枚おめくりいただきまして、「手引きの対象」として、本手引きの対象は主に外来診療を行う医療従事者を対象として、作成をしているということ、また、専門家の判断が必要になるような事項については、本手引きの対象外としているということを、記載をさせていただいております。

 さらに、「想定する患者群」としては、本手引きでは学童期以上の小児を対象としており、乳幼児では特殊な病態に配慮が必要であるため、本手引きの対象外としたということを、記載をさせていただきました。

4ページ目からは「2.総論」になります。総論についても、「抗微生物薬適正使用とは」という所、そして「適応病態」というもの、さらに、「不適正使用とは」というものを、記載をさせていただいております。さらに、「その他」ということで、感染症予防というものが、ひいては抗微生物薬の適正使用にもつながってまいりますので、手指衛生、ワクチン接種、咳エチケット、うがいについても記載をさせていただいたというものです。

 続いて7ページ目、各論に入ります。各論として、まず1つ目に「3.急性気道感染症」を、7ページ目から記載をさせていただいております。急性気道感染症については、まずその概念として記載をさせていただいているというものです。そして、その後に疫学として、疫学的情報を、国内外を問わず記載をさせていただいたというものです。

 更に今回、特に肝になってくるところですが、この急性気道感染症を手引きの中でどのように定義するかということに関して、3つの症状から4つの疾病に分類していくということで、89ページ目にかけて記載をさせていただいております。

 この診断の方法については、12ページ目の図3という所で、「急性気道感染症の診断及び治療の手順」という形で、フローチャートについても作成をさせていただいたというものです。

 特に今回、小委員会で御審議いただきたい内容としては12ページ目以降になりますが、推奨事項というものを、この手引きでは作成をさせていただいております。1つ目の推奨事項として、感冒に関して、12ページの中段に推奨事項を書かせていただきました。すなわち、感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨するというものを、1つ目の推奨事項とさせていただいております。

 また、2つ目の推奨事項として、13ページ目の上段になりますが、急性副鼻腔炎に対しての推奨事項を書かせていただいております。急性副鼻腔炎に関しては、まず1つ目に、成人では、軽症の急性副鼻腔炎に対しては、抗菌薬投与は行わないことを推奨するということ。成人では、中等症又は重症の急性副鼻腔炎に対してのみ、以下の抗菌薬投与を検討することを推奨するということで、基本的にペニシリン系の抗菌薬から使うことを推奨しているという内容です。学童期以降の小児についても、同様の推奨事項を記載させていただいております。

 続いて急性咽頭炎の推奨事項になります。15ページ目の中段を御覧ください。こちらの急性咽頭炎に関しては、迅速抗原検査又は培養検査でA群β溶血性連鎖球菌が検出されていない急性咽頭炎に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨するということ。さらに、このような検査で検出された急性咽頭炎に対して抗菌薬投与をする場合には、以下の抗菌薬投与を検討することを推奨するということで、こちらに関してもペニシリン系の抗菌薬を推奨しております。

 続いて17ページ目の急性気管支炎になります。こちらに関しては、成人の急性気管支炎に対しては抗菌薬投与を行わないことを推奨するという形で、成人のみの推奨となっています。こちらに関しては作業部会のほうでもいろいろと議論がありまして、なかなか小児に関しては、一律に推奨事項を作ることが難しいということもありまして、今後の検討課題ということで、小児に関しては、推奨事項は記載をしていないという状況です。

 このような診断、そして治療のところを踏まえて、17ページ目の下段以降、「患者・家族への説明」ということで、必要な項目についても記載をさせていただいております。また、19ページ目以降に関しては、「医師から患者への説明例」、「薬剤師から患者への説明例」ということで、このように説明をしてはどうでしょうかということについても、例としてお示しをしているというものです。

 続いて「4.急性下痢症」の所に入ります。21ページ目以降を御覧ください。こちらの急性下痢症に関しても、「急性下痢症とは」という定義の後に疫学、そして診断方法及び鑑別疾患について、記載をさせていただいております。そして、ウイルスに起因する急性下痢症、細菌に起因する急性下痢症ということ。さらに、特に食中毒等の関係するものもありますので、主な原因食品や潜伏期間についても、表6ということで23ページ目に記載をさせていただいております。

 そして、急性下痢症の推奨事項です。24ページ目を御覧ください。急性下痢症に関しては、「まずは」ということですが、水分摂取というものを推奨していくということで、24ページ目の上の所に推奨事項を記載させていただいておりまして、図4という形で25ページ目の上段に、その後の治療の手順についても記載をさせていただいています。

 さらに、小児についての脱水への対応ということ、小児に対する抗菌薬の適応についても記載をさせていただいた後に、個別の疾病としてサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、腸管出血性大腸菌腸炎についても記載をさせていただきました。なお、腸管出血性大腸菌腸炎に関しては、抗菌薬を使用すべきか否かというところで、まだまだ議論があるということもありますので、こちらについては、推奨事項は書かせていただいておりません。一方でサルモネラ腸炎とカンピロバクター腸炎については、軽症のみということになりますが、抗菌薬を投与しないことを推奨するということを、記載させていただきました。

 急性下痢症に関しても、(5)以降ですが、同様に「患者・家族への説明」ということで、説明する上での重要な要素について、さらに説明例について、記載をさせていただいたという状況です。

30ページ以降で、この手引きに関しては、患者さんに対しての説明も重要になってまいりますので、1つ目の参考資料として、「抗微生物薬適正使用を皆さんに理解していただくために」ということで、特に患者さんより質問があるような内容について、簡単に「このように答えてはどうでしょうか」ということを記載させていただいている状況です。また、参考資料の2つ目として、「抗菌薬の延期処方とは」として、34ページ目に記載をさせていただいております。

 最後に参考資料として3536ページ目に、この手引きに沿って適切に抗微生物薬の適正使用をしていただくために、チェックシートも付けさせていただきました。37ページ目以降は引用文献になります。手引きの内容については、事務局からは以上になります。

○渡邉委員長 ありがとうございます。では、作業部会の座長である大曲先生から、補足の説明をお願いします。

○大曲委員 国際医療研究センターの大曲と申します。この取りまとめをする部会がありまして、その取りまとめ役をさせていただきました。狙いとしては、今、御説明いただいたとおりですが、我々としても一番強調したかった点としては、やはり現状で抗菌薬が不適切に使われている頻度の高い状況を、定めていって、それから急性上気道炎と急性下痢症という話が出てきたわけですが、そこをターゲットにして、抗菌薬がいらない状況を、とにかくはっきり示そうとしたということです。

 その大前提として、そこに至るための診断もきちんとお示ししようとしたということと、もう1つはお薬を出さないということだけを前面に出したわけではなくて、例えば風邪を例にとりますと、風邪ということで括られる病態の中には、よく見ていくと危険な状態というものも紛れているわけでして、それは例えば高齢者の肺炎であったり、あるいは喉の奥の神経部の感染症であったりしますが、そういったことを、ちゃんと診断して見逃さないということも、適切な診療の観点から非常に重要でありますので、そういったものを見逃さないような指針といいますか、それは例えばRed flagということを書いていますが、お示ししてあります。本来救われるべき、早急に診断されるべき方を、ちゃんと診断するというところにも狙いを定めているところが、この手引きの指針です。以上になります。

○渡邉委員長 ありがとうございます。質問等は後でお受けしたいと思うので、続いて本日の参考人として青木先生と二木先生に来ていただいておりますので、それぞれの方からコメント等をお願いします。

○二木参考人 それでは、二木から一言コメントさせていただきたいと思います。私は冒頭で御案内いただきましたが、化学療法学会を中心にしまして、8学会合同抗菌薬適正使用推進検討委員会というのを立ち上げていまして、感染症学会、化学療法学会、それ以外の薬学系の学会、全部で8学会ですが、それでいろいろなことを議論してまいりまして、現在、この学会のほうでは、院内感染対策における抗菌薬の適正使用、いわゆるantimicrobial stewardshipに関わるガイドラインというものを作成させていただいております。

 これはどちらかというと、我々が監視をするという状況下にありますので、いろいろなアドバイスをしたり、適正使用を促すシステムを作ることが、比較的容易かなという気もしておりましたが、今日、御提示がありました、いわゆる外来での抗菌薬使用というのが、やはり一番問題ということで、私たち学会できれい事だけを並べても、なかなかうまくいかないので、どうしてもこの辺りは行政のほうから強い指導力を発揮していただかなければいけないだろうと思っておりましたところに、このようなものを御提示いただきましたので、これに関しては非常に私たちも心強い思いがしております。

 現実に私たちの学会にこの内容をお示しいただいたのですが、それ以前に、実はアクションプランが出てまいりました当初から、学会のほうで多少懸念していたことがありました。それはいわゆる数値目標、成果目標と言うのでしょうか、それで抗菌薬の使用量を減らすということが大きく謳われているわけで、それはある意味で理解できるのですが、どうもそれが少し乱暴な気がしておりました。ただ単に数字だけではなくて、よりどういう所で、どういう方法論をもって減らしていくのかということを明記しないと、本来使ったほうがいい場面も多々ある。今、大曲先生がおっしゃったように、ただ単に使わないということではなくて、使ったほうがいいケースもあるわけですから、その辺をと思っておりましたが、その辺にも一定の答えを出そうという試みが感じられますので、この辺りは私たちも、まだまだこれから、ますます練っていって、より良いものにしていく必要があろうかと思いますが、基本的にはこういう形で進めておられることは、学会としても大変ウェルカムであると思っております。

 ただ、一応、学会の中でも、こういうガイドラインを作って抗菌薬適正使用ということで、青木先生もコメントが出ると思いますが、そういうことに携わっているコアのメンバーだけにいろいろ意見を求めましたところ、幾つかの細かい意見がありまして、これは既に委員会のほうにお伝えしてありまして、ある程度修正もしていただいております。その中で1つ、まだ解決策として答えが出てきていないのが、やはり日本のデータというのが、もう少し現実的なものがあっていいのではないかと。例えばこれぐらい使われているという大まかな数字は出てきているのですが、より細やかな、どういう所で、どういう年代層に、誰が処方しているのかというところをきちんと把握してから、それに対していろいろと対策を練っていくことが重要なので、欧米のデータなどを見てみると、そういう非常に細かいのを見られることがあります。ですから、何らかの形でその辺のデータを、より詳細に検討された上で、こういう所をターゲットにして、こういう方法論でやっていこう、それにこういうものを当てはめていくということが重要ではないかなということで、1つは今の調査を是非、行政主導でやっていただければと思っています。

 もう1つは、余り細かいことを言うつもりはないのですが、やはり領域として呼吸器感染症と、今一番学会で問題視しているのは耳鼻科領域です。欧米のガイドラインなどを見ていると、呼吸器系にそのまま耳鼻科領域が引っ付けてあって、今回も副鼻腔炎が入っていますが、中耳炎とか、これはどちらかというと小さいお子さんになるのかもしれませんが、その辺におけるかなり不適正使用が今、日本国内では問題になっていると私は思うのです。ですから、その辺に対しても、これは次のステップになるのかもしれませんが、是非早い時期でやっていただきたいなと思います。

 それから、あとはターゲットとして開業医の先生方を、まず見ておられるわけですが、その場合にこの文章が詳細で、なかなか結論まで読んでいかれないのではないかと。ですから、これを伺いましたら、簡単な簡潔版をお作りになるということでしたから、そういうものも整備されることが、やはり現実に先生方に見ていただく上では重要ではないかなと思いました。

 あと1つは、やはり診断なのです。ここにいろいろ中等症だとか、Red flagだとか、急性気管支炎と咽頭炎を分けるとか書いてありますが、現実にはこれに大変苦労している。それは努力も余りしていないのかもしれませんが、そういうことをしなさいということで、これはいいと思うのですが、例えば肺炎といいましても、熱がある患者さんに全部レントゲンを撮るわけではないですから、肺炎のあるなしというのは一番困ることだと思います。特に内科医の先生方の所へ講演に行って御質問を受けると、そういう答えが出てきます。ですから、そういうことに関して現場と少し、この辺は理想論になりかけているような所もありますので、もう少し煮詰めていただければと思います。

 それから、これも既にお話がありましたが、できるだけ使うなというニュアンスはいいのですけれど、やはり使わなければいけないという場面があるわけで、その辺はもう少し、初めは緩くしたほうがいいのではないかなと思います。初めからガチガチにやると、やはり抵抗があります。ですから、ある程度こういうことで減らしていくけれど、こういう場面では使うのも仕方がないだろうなということ、半予防的な場面ですよね。そういうことも私は、まだ実際にはあっていいのではないかなと思います。

 それから最後に、実際に抗菌薬を使うときには、それぞれの学会が、我々も作っていますし、感染症学会も耳鼻科領域も全部、小児科学会も作っていると思うのですが、そういう所で作っておられるガイドラインというものも少し引き合いにしていただいて、そういうところとの整合性とか、あるいは協調性ということをやっていただければいいのかなと思っています。

 ただ、私たちも非常に勉強するところといいますか、ためになるところもありまして、特に延期処方なんていうのは面白い試みだなと思いましたが、現実にこれを国内でやるには、やはり日本のいろいろな法規上の問題とか、それから薬剤師の先生方でしょうか、そういうところと、どのように折合いをつけて、あるいはどのようにお互いに協調してやっていくかと、いろいろ制度上の問題もあるのではないかなと思いました。

 ただ、基本的には冒頭でも申しましたように、このようなものをお作りいただいて、少しずつ開業医の先生方にこういうことを考えていただくという上では、非常にいいものといいますか、とりあえず取っ掛かりとしては非常にいいものだと思っているので、いろいろと我々としても協力できるところは協力させていただきたいと思っています。私からは以上です。

○渡邉委員長 ありがとうございます。では、青木先生からお願いします。

○青木参考人 佐賀大学の青木と申します。この8学会合同抗菌薬適正使用推進検討委員会の化学療法学会の担当理事ということと、あと、化学療法学会で10年ほど前から、今日こちらにお見えの先生方と一緒に、抗菌薬適正使用セミナーをずっとやってきておりますので、そういう関係で参考人として、今日は参加させていただいたものだと思います。

 今回の手引きを一応全部読ませていただきましたが、概略については二木先生が今おっしゃったこと以上に、私から特に申し上げることはありません。急性上気道炎と急性下痢症、やはり抗菌薬が一番よく使われるものを対象にして作っていただいたということは、非常に意味があることではないかと思っています。

 特に後ろのほうに「患者への説明」というのがありまして、これは非常にいいのではないかと思います。やはり説明責任とか、医療の透明性ということを、患者さんのほうが声高に言われると、ドクターのほうとしては何かあるといけないから抗菌薬に行っておこうということで、患者さんに対して必要がないときに抗菌薬を内服することは、害こそあっても利益がないですということをしっかり伝えていただくことが、半分ぐらい重要なところを占めるのではないかと思います。そういう意味で、後ろのほうに細かく説明を書いていただいているというのは、非常にいいことではないかと思いました。

 何点か各論的なところで気づいたことがあるのですが、今ここで申し上げたほうがよろしいですか。4ページ目の(2)「抗微生物薬使用の適応病態」の一番最後のパラグラフで、重症の場合、速やかに適切な医療機関に搬送すべきである、その後に「経口抗菌薬の投与はせず、適切な培養検査を実施することが望ましい」と書いてあるのですが、これは血液培養をとって、何か「経口」と書いてあるのが、静脈注射はどうなのかという混乱があるかもしれないので、経口も点滴静注も抗菌薬を一括りにして、誤解のないように書いていただくほうがいいかなと思いました。

 あとは13ページに、初めて推奨の抗菌薬が出てくるのですが、細かく言うと学会が出したガイドラインみたいになるのですが、ペニシリン系が使えない人のために、もしペニシリンアレルギーがあるとしたらこれをという、オルタナティブなチョイスが1つぐらい書かれていてもいいのかなと思いました。

15ページですが、急性咽頭炎の所で括弧に書いてあるA群β溶連菌、有名な菌ですが、非常に細かいのですが、G群やC群も同じ可能性の溶連菌性咽頭炎を起こしますので、A群が陰性だった場合に、一切、溶連菌がないと思われるのも、抗菌薬が必要な人を見逃す可能性があるので、そこはG群とC群を、どれくらい細かく書くかもありますが、少しそこを考慮して、文を変更したほうがいいのかなと思いました。

 最後は21ページの急性下痢症ですが、これは急性上気道炎以上に、恐らく半分ぐらいは、半分といいますか何割かは、感染症ではない下痢症がありますので、これを見ると急性下痢症も急性上気道炎と同じように感染症の括りで書いてありますから、例えば細かく言うと浸透圧の高い食べ物を食べたり、キシリトールガムを食べても下痢をしたりしますので、そういう感染症ではない下痢もあるのだということを必要最低限、簡単に書いていただければいいのかなと思いました。

 患者さんへの説明の所で、冒頭に申し上げたように、常在菌を壊してはいけないのだということを、安心のために抗菌薬を飲んで、腸内細菌、自分の常在菌のバランスが崩れて、いいことは1つもありませんということを、是非強調して述べていただければ、より良いのではないかと思いました。私からは以上です。

○渡邉委員長 非常に貴重な意見をありがとうございます。では、事務局、大曲先生、参考人の先生方から発表していただいた内容について、皆さんのほうでディスカッションしていきたいと思います。まず、参考人からいろいろ意見が出ましたが、それに関して大曲先生、委員会から何かコメントがありましたらお願いします。

○大曲委員 国際医療研究センターの大曲です。それでは、部会からの回答といいますか、見解ということでお示しをさせていただきたいと思います。まず、二木先生のおっしゃった、日本の疫学的なデータに基づいた推奨が必要ではないかということは、私たちも正にそう思うところです。例えば個別のドクターのレベルまで行った処方の傾向ですとか、その地域差ですとか、患者さんそれぞれを層別化したときに、どういう診療が行われているかですとか、そういった実際に処方している先生方の状況を反映するようなデータというものが、日本は欠けておりまして、そこを見ないと、最終的にはみんなが納得できるような推奨もなかなか出てこないのではないかと思います。そこは我々も、今回の作業で痛感したところでありまして、これは今後、何らかの形で、まずは研究という形になろうかと思いますが、進められていければと思っています。そして、それを次のものに是非反映させたいと思います。

2点目の耳鼻科領域の点に関しては、次に何を行うかというところを議論した上で、国としての指針として取り上げるかどうかというところの検討になろうかと思います。ただ、二木先生がおっしゃったとおりで、耳鼻科領域が課題であるということは、私たちも重々理解しております。

3点目は、長い文章なので、なかなかポイントが見えなくて分かりにくいというのは、私たちも感じているところでして、これに関しては、実際に使っていただける先生方の、例えばイメージとしてはポケットに入るような冊子、非常に薄いもので、数ページで終わるような冊子に、本当に大事なところをまとめていくような形で、お示しができればと思っています。

4点目の診断のところに関しては、二木先生のおっしゃるとおりでありまして、これは診断のディシジョンツリーもお示ししている図が1つ、枝分かれ図がありましたが、ちょうど12ページ目の図3があります。ここまでお示しするのも大変な難産でありまして、我々としても非常に苦労しました。そして、現状の患者さんの診療が、全てこれで割り切れるものでもないということも理解しています。

 ただ、1つ考えましたのは、広く括ると風邪、もう少し狭く括ると急性気道感染症になりますが、その中にも実はいろいろな病態があって、そこには診断をしていく過程があるのだと。区分けをして、例えばそれは急性副鼻腔炎であり、咽頭炎であり、気管支炎であり、もう少し広く捉えて風邪症候群一般と捉えますと、そもそも気道感染症以外の疾患も入ってくるわけですが、そういったところを診断していく過程が、実は広く括れば風邪症候群、狭く括れば急性気道感染症の中にあるのだということを、是非お伝えしたいと思いまして、あえて書かせていただいているところです。そして、その概略を掴んでいただいた上で、現実の診療は複雑ですので、そこに臨んでいただければと思っています。もちろん中身のアップデート、改善は努めてまいります。

 もう1つですが、まず使う場の定義、特に最初は緩くしたほうがよいのではないかということがありました。重ね重ねですが、使うべき場、もう少し言うと適切な診断をちゃんと付けるということと、それに基づいていれば、適切な使用というのはむしろ推奨されるのであるということを、我々としても強く感じているところでして、そこをお示ししていければと思っています。

 あとは国内のガイドラインとの協調という観点ですが、実際、これを作る際には大変参考にさせていただきました。各所に折り込んであります。一方で、このガイドを作る中で非常に苦労した点がありまして、それは非常に判断が迷う、専門家でも判断が迷うような状況です。お薬の具体的な選択であったり、検査の選択であったりします。そこを今回の手引きの性質で考えたときに、この手引きの中に組み込むこと自体が、少し無理があるのかなと考えたところがありました。ということで、現状の科学の状況からしますと、こちらのところはむしろ学会の専門家の方が集まって作っていただくガイドラインを参照していただくというところで、整理をさせていただければと思っています。

 あとは青木先生に御指摘を頂いた点ですが、4ページ目の所です。パラグラフの抗菌薬の所に、内服薬と書いてある所がありました。これは御指摘どおりでありまして、静注薬だったらOKというわけではありませんので、これは「抗菌薬」という書き方で統一できればと思います。内服にしても静注にしても全部含めるという形に書き直したいと思います。

 あとは13ページ目の、特にペニシリンが使えない状況のお薬の選択という所がありまして、これも実は部会の中で大いに議論になったところでした。ここを突き詰めてまいりますと、実はかなり意見の相違といいますか、専門家の中でも多くの意見があり、もう少し言いますと日本の疫学、微生物の状況を含めたデータがないと、これはなかなか言えないというところに気づきました。ということで、今回の手引きの中でこれを無理矢理に取り上げるのは、むしろ不適切ではないかと思いまして、こちらはガイドラインを参照していただければということで、整理をさせていただいております。

 あとは15ページ目のA群β溶連菌の、例えば検査が陰性だった場合の対応ということで、G群ですとか、C群ですとか、あるいはFusobacteriumの感染症が、どうも咽頭炎の中にもあるのだということは出てきていまして、この点をどうするかということも議論させていただきまして、その存在自体はもちろん記載すべきと思っています。ということで、概略的に記載をさせていただくと。ただ、これに対して治療すべきかどうかというところは、現状の科学の状況からすると、強い指針は出せないだろうということは考えています。

 もう1つ大事だと思っているのは、一見、咽頭炎に見える病態の中で、A群β溶連菌の検査が陰性の場合に、やはり注意すべきことは、その中に重篤な病態が含まれていることがあり得ることでありまして、それは例えば1つは神経部の感染症でありますが、これは若者でもかかりますし、場合によっては死にも至りますが、A群β溶連菌の検査が陰性だからといって、そういった重篤な病態も否定されるわけではないというところを、むしろ示すべきだと思いまして、そうすることによって救うべき人をちゃんと拾い上げて救うという書きぶりにしたいと思っています。

 あとは21ページ目の下痢症のエチオロジー、原因の究明というのは青木先生の御指摘のとおりでして、食べ物によっても、中毒によっても、あるいは全身疾患の影響としての下痢というものもあります。糖尿だったり、甲状腺の病気だったり、いろいろあります。こういったものも下痢の中にはあり得るのだということを、是非書き加えたいと私たちも思っています。それは一般診療にも、必ず資すると思っています。

 あとは最後の点ですが、患者さんへの説明の中で、常在菌を壊していくことが1つもいいことはないということは、私たちも非常に強く感じているところです。特に一般の方とお話して、最近私たちも強く感じるようになりましたのは、お薬を飲んで何も変わらないかもしれない、でもひょっとしたらいいこともあるかもしれないということは、よく認知されているようですが、お薬を飲むことによって、実は身体に害があり得るということは、余り認知されていないように思います。ですので、そこを我々医療者が責任を持ってお伝えしていくということは、非常に大事だと思っておりまして、青木先生の御指摘のところは、しっかりと反映させていただければと思っています。私からは以上になります。

○渡邉委員長 参考人の先生方、今のコメントに対するお答えでよろしいでしょうか。ありがとうございます。いろいろなデータ等が皆さんから発表されましたので、これから委員の先生を含め、参考人の先生も御意見が更にありましたらお願いしたいと思います。まず、全体的に何か気が付いた点がありましたらコメントを頂きまして、次に、各部門ごとにまた詰めていきたいと思います。

 全体的に、今回、手引きを読まれて御感想等がありましたらよろしくお願いいたします。

○舘田委員 東邦大学の舘田です。まずは、非常に短期間に非常にいい指針ができつつあるなと感じました。その中で、今、先生方から御指摘になった点は私も同感です。やはり長さだけではないですけれども、この指針の一番の特徴は、抗菌薬を使う使わない、使わない状況をどうやってはっきりさせていって、そしてガイドしてあげるかのところが一番大事ではないかと思います。そこが大事で、逆に言えば、抗菌薬を使う場合は、ある意味、先ほどから出ていますけれども、そこは余り細かく書かなくても、それぞれの学会等で出しているガイドライン等を参考にしてください、ただ、ポイントはこうですというような書き方にすることによって、少しコンパクトになるのではないかと思いました。

 やはり大事なのは、これは作って、それぞれの学会が推奨して、ちゃんとこれに従ってやっていきましょうという形で協力を頂くことが大事です。耳鼻科のほうからは、保富教授から御指摘いただいていたようですけれども、学会のものとちょっと違うのではないかという御意見がありました。そういう形はできるだけ学会のものに合わせながら、細かいところはそちら側を参考にしてくださいというようなことが大事で、とにかくこれは、使わない状況をどうやって見出していって、そして抗菌薬フリーにしてあげるかというところに焦点を当てるのがいいのではないかと思いました。

○渡邉委員長 舘田先生からお話がありましたように、使わないという選択肢が具体的にどういうことなのかは、今までどちらかというと使うことが前提みたいなそういう発想で、臨床の先生方又は患者さん方もそういう考えが多分あったと思うので、その辺をどういう形でソフトランディングのほうにもっていくのかは一番重要なことだと思うのです。まずは臨床の先生方に御理解いただいて、それから患者さんにも御理解いただくというこれからのステップが多分あると思うので、その辺をどのように説明していくか。このガイドラインの中に全て書くのはなかなか難しいところで、恐らくいろいろな先生方の努力で、いろいろなコミュニケーションがこれからされていかないと、せっかく非常にいいものができたと私も思っていますけれども、こういうものを世の中の人々が利用しないと困るわけで、それが利用していただける方向にもっていくということが重要な点ではないかと思います。正しく舘田先生の言われたことだと思うのです。ほかに全体的なことでありますか。

○宮崎委員 薬剤師会の宮崎です。今、舘田委員がおっしゃったように、短時間でこういうガイドラインができたことは非常に御苦労だったなと思います。ただ、一読して感じたことが2つほどあります。1つは、舘田委員が言われましたように、抗菌薬を使わない状況をどうするか。使わない状況でも患者さんは具合が悪いわけです。その間のケアをどのように考えるかです。私は薬局ですので、目の前に患者さんと家族がいて、抗菌剤を出さない場合にどうするか。そういう中で、漢方薬的な日本の民間療法的なところに全然言及されていないのがちょっと気になります。例えばこの中に書いてあるのは、コーヒーにハチミツというのがありますが、確かに海外のエビデンスとしてあるのでしょうが、日本の国情と言いますか、合ってないのではないかと考えますので、その辺はできればせめて、生姜糖にエビデンスがあるのかというと、また問題はありますが、ただ、コーヒーにハチミツというのも同じレベルではないいかと考えています。それなら葛根湯などのほうがまだいいのではないかと。それは実際に患者さんに相対した場合の薬剤師とすると、やはりそういう提案をどこかでしないといけないのではないかと考えております。そこの辺りを是非検討していただきたいと思います。

 それからもう1点は、第1選択薬としてほとんどアモキシシリンというのが出てきています。現在、確かに日本はセフェムとマクロライドとキノロンが多いという現状ですが、世界的にはちょっと違うと、それでペニシリンをもっと使いましょうというようなことになります。ただ、私の理解では、ペニシリンがまず抗生剤として出てきて、それからペニシリンアレルギーであるとかそういうものが出てきたので、そういうのも含めて、よりアレルギーが少ないような形のセフェムとかが出てきたように理解しておりますので、では、このガイドラインが使われることによって、よりペニシリン系が使われるということは、今まで使っていなかったがゆえに出てきていないペニシリンアレルギーというようなものが顕在化する恐れはないのかというのが、老婆心ながらちょっと心配事であります。そこの辺りも検討する必要があると考えています。

○渡邉委員長 今度は薬剤師さんが患者からいろいろコメントがあったときに答えなくてはいけない立場になるかもしれないですね。そういう意味では薬剤師会としては非常に重要な任務になるのかなと思います。あと、アレルギーの問題に関して御意見があったのですけれども、これは検討会としてはどういうことになっていますか。

○大曲委員 アレルギーを含め、様々な有害事象はお薬を使えば起こり得るわけですけれども、そこに関して、具体的な方法の検討は必要ですけれども、そこは注意して見ていく必要は当然にあろうかと思います。

○渡邉委員長 漢方薬のお話が出たのですが、これは何か議論されましたか。

○大曲委員 漢方薬に関しては、本来の漢方の在り方に忠実に対した場合に、私は漢方医としてのトレーニングを受けていないですけれども、でも、私でも理解しているのは、漢方薬を使おうということになりますと、漢方としての物の見方、それは症を見てそれに合うものを出していくことを踏む手続はあると思います。そこのところをやってこそ患者さんに説明ができるような診療内容が提示できるだろうと。一方で、そういった漢方の診療を学んで実践することがなかなか大変といいますか、皆がそう思っているわけではないということも現状です。もちろんエビデンスの議論もあるのですが、私個人としては、そういった最初に申し上げたような理由もありましたので、ある意味誰もが身につけていないような素養を今回の手引きに入れてしまうと、ちょっと手引きの中のスコープからずれてしまうのかなと考えており、そういうこともありまして、入れていないという事情がございます。

○渡邉委員長 第一版が出た後に、漢方医の先生方からもコメントが多分くると思うので、それはそのときにまた考えていただくということでよろしいでしょうか。ほかに全体的にありますか。

○白石委員 私も薬剤師ということで、病院の立場の薬剤師ですけれども、今、宮崎先生が葛根湯という具体的な漢方の名前を出しましたが、葛根湯と言いますと、もう一般的な漢方薬になっていますので、エビデンスとか、あとは専門の処方医がいないというのも、ちょっと違うのかなという感じもしましたので、一言だけ。

○釜萢委員 日本医師会の常任理事でございます。この手引きを拝見して、本当に短期間に大変な御議論を経て、とても良いものができたと、大変感謝を申し上げます。私もずっと小児科で実地臨床に携わっておりましたが、実は患者さんを拝見して、最初に診断がその場でピタッと付いて、これは薬を使わなくてもよいのだというところまでの思いをしっかりできるかどうかというと、そういうことができる場合もかなりありますが、しかし、かなり迷うところもあって、なかなか直ぐには判断できない場面が多いなということを自分自身では感じました。したがって、それぞれの医師が患者さんを拝見していくときに、どういうことを考えて、そして何を根拠にどのように薬を選んできたのかというところを、もう少し、先ほど大曲先生が研究の立場でとおっしゃっていただいて、それを少し事例をもっと集めて、そしてこういう思考過程でこのようにしたというようなところを、もう少し蓄積していく作業が必要ではないかと感じております。

 と申しますのは、今、診療に関するビッグデータが大分蓄積されてきましたが、今回の問題にそのデータを使おうとすると、診断の部分が余りに大雑把すぎて役に立たないと思います。二木先生も先ほど指摘されましたけれども、この重み付け、重症度がどうなのかと。この患者はこのような状態だったからこそ薬をこのように使ったとか使わなかったとかというところのパターンが、もう少しはっきり出てきて、それを実地の臨床に携わる者が見ながら、共感を覚えて、そしてやっていこうというような、そういうステップが必要ではないかと感じております。今回のこの手引きも、是非、私どもも普及に力を尽くして、医療現場でこれが役に立つように、使われるように、普及させるように、力を尽くしたいと思っておりますが、今申し上げたようなところを、是非、今後詰めていかなければいけないのかなと思っております。

 それからもう1点、延期処方の話が出ております。これはよく読んでみると、後ろのほうに、日本の現状においては患者さん御自身がその薬をどうするかというのを考えるよりも、1日あるいは2日後に症状が変わったり思わしくなかったらば、受診をして、医師が判断すべきだということも書いていただいているので、それはそのとおりだと思うのですけれども、この延期処方というのは、まだ我が国においては余り実情に即してないのかなという印象を持って、そういう準備が整っていないように思いました。

○渡邉委員長 今のコメントに対して、委員会から何かありますか。

○大曲委員 先生、ありがとうございます。最初に御指摘になった点は正にそうだと思っております。現状の例えばDPCのデータとか、あるいはNDBのデータとかを見て、あれは診断に基づく医療行為の中身が確かに見えてくるのですけれども、そこに至る段階が見えない、見えないという言い方はよくないかもしれませんが、そもそもデータの属性上そこからは引き出せないというのは我々も痛感しているところです。

 それともう1点は、これは話がちょっとずれるかもしれませんけれども、判断上のこともそうなのですが、例えば急性上気道炎の患者を目の前にしたときの医師の思いとか、あるいは患者さん側の思いとか、そういうところが、本当の中身のところはどうも見えてきていないのではないかと。我々は推測で語っていまして、そうだと思い込んでいるところがあるのですが、実際にいろいろな方の話を聞くと全部ずれていまして、どうもこれはそこが把握できていないのではなかろうかという強烈な問題意識を持っております。

 ですので、これは、私は決して専門家ではないので詳しい方にお願いする形になるかもしれないのですが、そうしたところ、認知の問題とかも含めて明らかにして、診断の過程における様々な課題も明らかにして、そしてそこを問いていけるような何らかの道筋をお見せできるともっと質の高いものができると思いますし、釜萢先生がおっしゃったような納得していただける内容になると思いましたので、是非そこのところは部会でも取り組んでまいりたいと思います。

 あと、DAPの点は、盛り込ませていただいたのですが、1点、私自身が思ったのは、表現としてもう少し強調すべきだったなと感じているのは、この中で点ではなくて線で患者を診るということが書いてあるのですが、日本においてはドクターに対して患者さんが受診しやすいという状況が幸いにしてあります。ということは2度目3度目の受診で更に患者も医療者側も情報をもっと得ることができて、それに基づいた判断ができるという、ある意味幸せな環境に日本はあります。そこを我々としてはもっと自覚して使っていけないかというところを出したいと思っており、そこのところはちょっと気を付けたいと思っております。

○渡邉委員長 非常に重要なコメント等が出されていますけれども、ほかに先生からありますか。

○二木参考人 またテーマは変わるのですが、1つここで触れておいていただきたいことは、経口抗菌薬の場合は投与量です。日本の投与量は欧米に比べて極めて少ないわけですね。一部ペニシリンのことが触れてありますけれども、セファロスポリンにしろマクロライドにしろ、キノロンは最近同じ量を投与するようになりましたけれども、欧米に比べると非常に少ない量を使っているわけです。特にセファロスポリンは未だにそのままやっているわけです。こういう使い方をしたからこそ日本では外来の耐性菌が増えたと。これは量を多めに使っておけば、こういうこともなかったのかなという気もしないではないです。

 ですから、セファロスポリンを使えという推奨はほとんど出てこないので、セファロスポリンの投与量のことは出てこないですけれども、例えばクラリスロマンシンでも今、欧米では11,000mg飲みますよね。日本は400mgでやっています。少量長期ならそれでいいのでしょうけれども、本当に感染症を治療するなら1,000mg欲しいわけです。そのような日本における投与量の特殊性というのをどこかで触れて、修正をしていかなければいけないと。

 なぜ、こういうことになったかというと、経口抗菌薬というのは、過去は半分は予防投与だったわけです。感染症を治しにいく薬ではないのです。さっきの、それこそ、風邪だから出しておくという薬だったので、効果よりも安全性という時代が過去何年も続いたわけです。そこの反省から、今は段々と投与量も増えてきているし、いろいろなことが変わってきているだろうと思いますけれども、日本の投与量は未だに部分的には非常に少ないです。子供のは大分修正されてきていると思うのですが、ただし、ここに書いてあるような投与量をペニシリンを子供に使ったらとんでもない下痢をしますよね。ですから下痢をするような量は、日本人と欧米人は若干違いがあると思うのです。それをまたやみくもにアメリカと同じ量を使っていいというわけでもないとは思うのですが、下痢をさせたら、副作用を出したら、治療が途中になっていい加減になって、かえってまずいことになるでしょう。ですからその辺のことを、せっかくの機会ですから、日本における投与量をどのように考えるかを、順次織り込んでいっていただいて、修正していただけるといいと思います。

○渡邉委員長 ありがとうございます。何かありますか。

○大曲委員 二木先生、ありがとうございます。実はこの手引きを作る際に一番問題になった点が用量で、用法もそうですけれども、適応の問題と用量の問題が非常に問題になりました。例えば学会のガイドラインを拝見しても、そこで推奨されているような用量は、必ずしも日本の添付文書の用法・用量どおりではないものもございます。でもそれは、現状の科学の状況、実践の状況を踏まえた上での専門家としての推奨ですので、そこをお示するのが我々の責務ですし、患者さんに対する責任だと思いますし、当然示されるべきだと思います。

 ただ一方で、添付文書を見ていきますと、必ずしもその内容が追いついていない状況があります。今回、公的な文書になりますので、用法・用量を書くということになりますとどうしても添付文書の用法・用量を無視できない面が出てきます。より縛りがあります。これはいい状況とはやはりとても思えませんので、端的な言い方をしますと、用法・用量の記載をまずは変えていくと。そこにたどり着くためには、現在の科学の状況も踏まえて、必要に応じて日本のデータも取りながら、適切な用法・用量を示していくことが私も大事だと思いますし、今回の手引きでぶつかった大きな壁でもありますので、そこは是非問題点として上げさせていただいて、次の一歩に是非つないでいただければと思っております。

○渡邉委員長 ありがとうございます。ほかの先生方。

○山中委員 全国保健所協会の山中です。保健所としては、これまでAMR対策というとCRE等のサーベイランス、あるいは院内感染対策として保健所が関わっておりましたけれども、最近になりまして、こういう抗菌薬の適正使用の研修会の場作りとか、そうしたものにも保健所は関わってくるようになってまいりました。こういうガイドラインが作られることによって、地域全体でこれを使わないと意義がありませんので、是非、そういうのを使っていただくための調整役とか、あるいは住民の方々もこういうことを理解してくださらないと、お薬を出してくれる先生に移ったりすることもありますので、地域全体がこういうことに取り組むための場作りには、保健所としても活用していただくことができるのではないかと思いました。感想です。

○渡邉委員長 医師側と患者側と、そこのある意味でコラボというか、そこがお互いに分かりあわないとなかなか難しいというのは正しくそのとおりだと思います。この手引きが出た後のプロセスというのは、何か考えているのか、厚労省のほうでよろしいですか。

○結核感染症課長補佐(野田) 現状、平成29年度予算は国会を通っていない状況ですけれども、29年度予算で、国立国際医療研究センターでAMR情報センターを設置することを検討しております。その中で、先ほどから出ています疫学的なサーベイランスとともに、教育というものについてもきちんと行っていきたいと考えております。

 あと、厚生労働省以外の部分ですけれども、内閣官房で、国民運動ということで現状、様々な施策を打っており、会議体をつくっておりまして、さらに、大使を任命する、さらに、よりよい取組については、それを表彰していくものも、現在検討し、募集をしている状況です。

○渡邉委員長 総合的にこれから行っていくということで、今日のこの手引きというのは、その第一歩であるというように考えていただければと思います。ほかにございますか。

○宮崎委員 用法・用量のことが出たときに気になりましたのが、欧米に比して少ないと。ただ、注意しないといけないのは、体格が成人だと明らかに10kgは違うということを認識しておいていただかないといけない。ただ、日本の研究の中では、まだPK/PDに関する言及が少ないような気がしますので、これを機会にきちんとMICと血中濃度とか体液中濃度に関してもデータを集めたほうがよろしいのではないかと思います。私自身がシミュレーションをしたときに、MICを考慮すると、えっ、これで効くのという医薬品が幾つかありますので、その辺りをちゃんとサイエンス的にやっていただければと望むところでございます。よろしくお願いします。

○渡邉委員長 今日はいろいろなコメントが出て、日本人に合ったデータが必要であるというのは何人かの先生から出ていることだと思うので、その辺は厚労省としては研究班か何かを立ち上げてやっていくということで、よろしいですか。

 これから、ビッグデータもありますし、そういうものの活用も含めて、もっと科学的な根拠、それこそMICPK/PDの問題等を、臨床の先生方はどのようにそれを入れ込んでいくか、なかなか難しい点はあるかもしれませんけれども、そういう考え方を根付かせていくことも必要だと思います。

○宮崎委員 あるときに、たまたまあるメーカーの抗生剤をPK/PD的なことをしたことがあって、表には出ていないですが、メーカーとしては全部母集団パラメーターを持っている所が多いようです。ですからそれを精査したり、オープンにすることによって、日本人の適切な投与量は把握できるのではないかと思いますので、是非、メーカーから発掘していただいて、使うようにしていただければと思います。

○渡邉委員長 ありがとうございます。ほかにありますか。

○荒川委員 まず、全体的なことで少しお伺いしたいことがあります。1つは、この非常に御苦労して作っていただいた手引きですが、この扱いは厚労省のドキュメントとして出てくるのか、あるいは専門家の検討した結果として、専門家の意見として、手引きですから、ガイドラインというよりもガイダンス的なものとして出てくるのか、最後のできた後の取扱いがどのような形になるのか。厚労省の文書ですと、かなり重みがいい意味でも悪い意味でも付いてきますし、専門家の意見であればそれなりの参考書類という扱いになりますし、どのようなことになるのかその辺りのところを教えてもらいたいです。

○結核感染症課長補佐(野田) まず、会議体の部分で言いますと、この小委員会がありまして、さらに感染症部会もございますので、感染症部会までお諮りしていただいた上でという話になりますが、厚生労働省としては、最低限、厚生労働省の結核感染症課の文書としては出したいと考えております。また第1回のときから、今回も、御発言いただきましたが、日本医師会にも御協力いただけるということですので、日本医師会ともいろいろと調整をさせていただいた上で、どのような形で出していけるかというところは調整をしていきたいと考えております。

○荒川委員 もう1点。この文章はよく練っていただいて非常に参考になる内容が含まれていると思うのですが、この手引きの対象の所に書かれていますように、やはり臨床家の方、特に外来診療で日々抗菌薬を処方するとかしないとか、そういう判断をしないといけない状況に立っておられる方々を対象としたものかなという理解になります。それは重要なことで、こういう文書をまとめていただくのは非常に大事なことだと思うのですが、一方で、薬を使う側、患者側は、医師が熟慮して出した抗菌薬であっても、例えば3日ぐらい飲んだら症状がよくなったので、本当は4日か5日ぐらい飲んだほうがよかった薬を3日ぐらいで切り上げたりとかいうこともあって、それによって耐性菌が出たり出なかったりということもあるので、患者側に対するメッセージとして、何か別の、この中には患者への説明文章というのはありますけれども、これはあくまでも医療側に対しての説明だと思うのです。だから患者に対して、実際に抗菌薬を使う側の、一般の専門的な知識を余りお持ちでない人を対象としたメッセージというか、そういうものがあると、両方でうまくいくかなという気がするのです。ですから、そういうものの作成などは考えておられるのかどうか、ちょっとお伺いしたいです。

○結核感染症課長補佐(野田) 正に今回作っている部分はもちろん患者さんをスコープに入れておりますけれども、御指摘のように恐らく内容的にはメインは医師というところになっていこうかとは思っております。患者に対しての普及啓発も必要だと考えております。そこについては、大きい国民全体の部分に関しては、先ほども申しましたように、内閣官房で国民全体の普及啓発を行っていくということを進めております。また患者に対しての普及啓発の部分に関しては、平成29年度の、先ほど申しましたAMR情報センターにおいて、そこの普及啓発の活動も行っていきたいと考えております。

○渡邉委員長 先ほど、山中先生から保健所の役割の中には、地域の医師だけではなくて、地域の方々への啓発もあるということですか、我々も含めた一般の方々がそこに入ると思うので、その辺もうまく活用していただければ、もうちょっと浸透していくのではないかと思います。今、荒川先生が言われたように、患者さん側というか、受益者側が、どのようにそれを考えて、こういう抗菌薬が投与されなくても大丈夫だと、それの確信を患者側が持たないと、これは実際の診療所で、あの先生は出さないからやぶ医者だというような話がどんどん広がっていくと、それこそ開業医の先生が非常に困ったことになりかねないので、両方をちゃんとやっていかないとまずいと思うので、これから厚労省も含めて全体を考えていくと思うので、よろしくお願いいたします。

○舘田委員 荒川先生の質問に関連してですが、これはかなり大きなインパクトを持って受け入れられていくと思います。それだけに、ちょっと注意しなければいけないのは、とにかく大事なのは「抗菌薬の使用を推奨しない」という一文が出てくるわけですが、大事なのは「ただし」の後です。先ほどから出ていましたが、Red flagみたいな形で、いかにいろいろなケースを想像して、推奨しないけれどいろいろなことがあり得るし、それをちゃんとカバーできるような説明をやらないと、インパクトが大きいだけに、いろいろな問題につながってしまうリスクは考えておかなければいけないと思います。

 私が見ていて思ったのは、25ページの図4「急性下痢症の診断及び治療の手順」です。これは文献110で、これを見たら、2016年の「Am J Gastroenterol」の図を少し改変して作られたということですが、例えば左側の水様下痢で、中等症~重症で、海外渡航歴と関係なしで、38℃未満で発症72時間未満だったら、対症療法のみとなっています。しかし、この水様の下痢で重症となると、日常生活に大きな支障のあるものです。熱はショックになれば下がってしまうこともあります。いろいろなことを考えたときに、本当にこれで大丈夫なのか。多分、委員会の中でも議論されているのでしょうが、血便、血性の下痢です。これはall blood no stoolなのかもしれない。しかし、そのときは軽症だったから、これは対症療法のみでいいのか。現場だったら、粘血便あるいは血性の下痢だったら、かなり注意して臨床的には診ていくような対応をとるのではないかと思います。先ほどの「ただし」という所はちょっと注意してやっていったほうがいいのではないかと思いました。

○渡邉委員長 なかなか難しいのは、老人というか、高齢者の場合には熱だけで判断すると非常に危険で、特にサルモネラも含めて、そういう血中にいるような菌の場合には、注意しないと、気が付いたときにはもう遅かったということになっても困るので、その辺はもう少し丁寧に説明しないと、臨床の先生、現場の先生方が困ってしまうということもあるのかもしれません。その辺は委員会のほうも、今後、更に検討して、これが第一版なのか、これをまた改正していくのか、その辺も含めて検討していただいたほうがいいのかという気はします。

○荒川委員 細かいことですが、抗菌薬を今までたくさん使いすぎていたので、少し使うのを抑制して適正に使いましょうということは非常に大事だと思います。

 私の経験ですが、50年以上前、小学校に行くか行かないかの頃、喉が痛くなったのです。その当時は健康保険がまだできたばかりか、できなかったかという時代で、結局、A群連鎖球菌に罹ってしまい、足の関節が腫れて、そのまましばらくしたら、今度は顔がむくんだり、尿が出なくなって、急性糸球体腎炎になってしまい、病院に入院して死ぬか生きるかという状況になったのです。

 抗菌薬が悪いとか、そういうことではなくて、使い方が大事なので、抗菌薬は使いすぎてはいけないというのは当然ですが、抗菌薬が何となく悪いとか危ないというような、一般の人向けにそういう誤ったメッセージが伝わらない配慮は必要だと思います。

 このようなものができると、多分マスコミなどが、抗菌薬は使うなという感じの記事を作るかもしれませんが、使い方が問題なので、賢く使うことが大事なのだということを、もっと強くメッセージとして出していく必要があるかなという気がします。私が言うべきことかどうか分かりませんが。

○渡邉委員長 確かに重要なポイントだと思います。ほかにいかがですか。

○瀬古口委員 歯科医師会の瀬古口と申します。短期間にこの手引きを作っていただきました。見させていただきましたが、非常に素晴らしいものが出来上がったと感じております。

 ここで言うことかどうか分かりませんが、残念ながら、我々の歯科につきましては、余りここに直接関連することはありませんでした。今後の我々の歯科領域について、この適正使用について、どのような議論を進めていくかという案がありましたら、厚労省のほうからお聞かせていただきたいと思います。

○結核感染症課長補佐(野田) 現状、データがあると思いますので、そこについて精査をしていく必要があります。先ほどからありますように、第一版ということで、平成29年度予算のほうでAMRの臨床情報センターも設置をするということですので、まず、どのような状況か、更にどのような内容について適正使用における問題があるかというところは精査をしていき、必要に応じて、それについては国の手引きにするのか、若しくはより専門的なガイドラインとしていくべきなのかは検討していく必要があると思います。

 先ほどからありますように、この手引きという手段、さらに、AMRの臨床情報センターという手段、さらに学会のほうで御議論いただくという様々な手段がありますので、そこについては検討していきたいと考えております。

○結核感染症課長 歯科医師会の先生方には、次のこうした手引きなどを作るときには、是非、御指導、御協力をお願いしたいと思います。先生方のお力がなくては、絵に描いた餅になりかねませんので、そこは丁寧に詰めさせていただきたい。

○瀬古口委員 非常によく分かりました。先ほど二木先生が言われていましたように、耳鼻科領域の副鼻腔炎の所は、我々の所の歯のほうと直接関係してまいりますし、咽頭炎にも関係してきます。肺炎も誤嚥性肺炎というところで大きく関係してまいりますので、できる限り協力してやっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○渡邉委員長 口腔内細菌の嚥下性肺炎又は腸管感染症としても口腔内細菌は非常に重要だというのは、昨今いろいろデータが出ていますので、是非、口腔・歯科関係の先生方の御意見も入れ込んでということで、よろしくお願いいたします。ほかに御意見はありますか。

○宮崎委員 確認ですが、釜萢先生からも御指摘があった34ページの抗菌薬の延期処方についての、この書きぶりについては変更されるか、あるいはなくすのかどうかをお聞きしておきたいのです。このままの状態でいきますと、多分、こういうのもあるのだということで、日常的に、もしこういった処方箋が出ると、ちょっと困った状態になるかもしれませんので、この辺りはどうされるか確認をしておきたいのです。

○渡邉委員長 大曲先生、これは委員会として、今の御意見を踏まえて、どうしますか。

○大曲委員 現状の日本のやり方に、今の表現のままではそぐわないという御指摘を頂いておりますので、そこのところは合うような形で変えることを検討したいと部会としては考えております。

○渡邉委員長 事務局から何かありますか。

○結核感染症課長補佐(野田) できれば大曲先生とも御相談させていただきながら、事務局のほうでも修正をさせていただきたいと思います。具体的に、どこをどう修正すべきかということは、御指摘いただければ大変助かります。

○宮崎委員 注のほうに「日本における」という形で書いてありますので、例えば現状、日本ではそのときの症状に合わせた薬を処方するというのは原則だと思います。ですから、処方箋上で、これはこうなったときに、例えば痰が黄色になったら飲みなさいみたいな状況の処方は多分ないはずです。ですので、頭に、注のところを書いていただいた上で、海外ではこんなこともあるというのだったら分かります。そうしたら誤解はないのではないかと思います。法的な部分も含めて、後ほど釜萢先生も含めて相談をさせていただければと思います。そうでなければちょっと困ることがあるかもしれません。

○渡邉委員長 後で薬剤師会と医師会とで御議論いただいて、大曲先生のほうに意見をまとめて提出していただければと思います。よろしくお願いします。ほかに御意見はありますか。

○白石委員 病院薬剤師会の白石です。20ページで薬剤師から患者さんへの説明例というのが書かれておりまして、これは非常に評価したいと思っております。

 特に※がありまして、大曲先生が非常に具体的に書かれておられます。必要なのは、抗菌薬を患者さんに処方しなかった場合の説明は、患者さんは非常に不安なことがありますので、そこは処方医あるいは処方歯科医と薬剤師が緊密に連絡を取り合って情報をしっかり連絡を取っておかないと、医師と薬剤師が違うことを話すこともありますので、この辺については非常によく書かれていると感じました。

○渡邉委員長 医療関係者のコラボレーション、コーディネーションがうまくいかないと、これが絵に描いた餅になるということは、皆さんのほうからいろいろ意見が出ていることですので、この辺は、今後、厚労省も各学会又は各団体へのコミュニケーションをよろしくお願いいたします。

○八木委員 名古屋大学の八木です。非常に短期間に立派なガイドラインができて良かったと思います。先ほどからお話がありましたが、患者さん側が納得することが大事で、海外の報告でも患者さんの満足度をいろいろ調べたレポートがあります。患者さんの満足度というのは、抗菌薬を出さないから下がるのではなくて、その先のことを十分説明するか・しないかが満足度の一番大きな鍵になるというデータがあります。

 ここでは患者さんへのいろいろな説明例がありますが、その論文でも紹介されており、このときに簡単なリーフレットを渡すといったことがあると、例えば先ほど言われたような薬剤師さんとの、こういうことが大事なのだということの共有でもいいですし、今、診断のところでの簡単なリーフレットというか、チェックシートが書かれているのですが、例えば、患者さんに説明するときに、今後こういったことがあれば受診をしてくださいとか、今は必要ないが、こういったところを注意したほうがいいですという注意点が分かるような、簡単なリーフレットの例が示されていると、非常に有用ではないかと思いました。

○渡邉委員長 そうですね。患者さんが抗生物質を期待していたのに出さなかった場合は、言葉で説明されてもすぐ理解されないというか、忘れてしまうこともあるので、そういうときには、今、話があったようなリーフレットみたいなものがあると、臨床医の先生も説明が非常にしやすいし、これをよく読んでくださいということにもなるのだと思いますので、非常にいいアイディアだと思います。

○二木参考人 2年前からWHOWorld antibiotics awareness weekというのを1115日前後から2週間やります。去年もやっていたのですが、うちの大学はそれに取り組みました。同じようなパンフレットを作って、病院中に貼り出したのですが、あの中に、そういう患者さん向けのパンフレット、それこそ畜産も含めて、医師、看護師、それから畜産、もう1つはポリティシャンという幅広いそれぞれの立場で、みんなで考えようということを毎年2週間やっています。是非、今年は日本も参加したらいいのではないか。中国語、イスパニア語、イタリア語、ロシア語でパンフレットが作られているのに日本語だけないので、是非、参加されればと思うのです。

○結核感染症課長補佐(野田) 正に昨年度からAMRも推進月間を政府としても行っておりますし、また、いろいろな普及啓発のいろいろなツールも、海外のものを日本語訳することも含めてですが、それについては重要だと考えておりますので、そこについても平成29年度予算のAMR臨床情報センターで、そういう啓発ツールについても作っていくことを考えています。

○渡邉委員長 私もWHOの委員をやっていて、そういう意見が出ていました。若い人はSNSを利用して、みんな簡単にやります。それをうまく利用すると若い人などにも読んでいただけます。年寄りはなかなか付いていけないところがありますが、若いお母さん方は、それを見ていろいろ情報を得ているので、AMR情報センターが医療センターにできるということでしたが、医療センターもそういうツールをうまく利用していただくといいのではないかと思いますので、よろしくお願いします。ほかに全体的な御意見はありますか。

○皆川委員 愛知県衛生研究所の皆川です。私どものホームページでは、抗菌薬、マイコプラズマ肺炎が、学童保育のお母さん方に人気があって、そのような形で何か雛形を示していただければ、地方衛生研究所などからも情報発信というか、見ていただくことができるのではないかと思います。

 もう1点、すごく細かい話ですが、先ほどから出ているとおりAMPCが推奨されていますので、チェックシートなどにペニシリンアレルギーの有無等に関するチェック項目もあるほうがいいと思ったのですが、その辺りは御検討なさったのでしょうか。

○大曲委員 まず資料の件は、是非分かりやすいものを作りたいと思っております。アレルギーの件に関しては、まず一般的な医療の仕組みの中で出す薬のアレルギーは聞くべきであろうということがありますので、そういう意味では議論は特にしていなくて、だからこそ、中に入ってないということはあります。つまり、当然聞いているだろうということです、

 一方でアレルギーの話は今回も何回か出ておりますので、そこのところは注意していただけるような何らかの配慮を考えたいと思います。

○渡邉委員長 ほかに何かありますか。

○青木参考人 全体的なことは参考人として余り言う必要はないと思いますが、いろいろな専門家とか、ステークホルダーというか、関連した人が集まると、いろいろな意見が出てくると思います。極端に言うと、総論は賛成できるが、やはりできない、ということがいろいろ起きてくる可能性があると思います。

 大曲先生は非常に御苦労されていると思いますが、総論というのはビジョンだと思います。各論反対と言い出すと、結局ビジョンに賛成してこない。これは偉い人の言葉ですが。抗菌薬が、どう考えても適正以上に使われすぎているというのがやはり現状ですので、それを減らすという、そのビジョンを唯一大事にしていただいて、シンプルに、そこのビジョンをいつも大事にして決めていっていただければ、いいものができるのではないかと思いました。以上です。

○渡邉委員長 考え方の根本をちゃんとして作るということで、それは多分、皆さん肝に銘じた形でやられているのだと思います。ほかによろしいですか。

 それでは、各論というか、セッションに、細かい点も含めて御意見を頂きながら、時間があれば、もう一度総論のほうに戻っていきたいと思います。まず「1.はじめに」の所で、御質問なり、コメントはありますか。対象と、想定する患者群、あと目的が書かれていますが、いかがですか。よろしいですか。

 続いて4ページ目からの「2.総論」で、(2)の所の、経口抗菌薬だけではなくて、ほかもあるということで、「経口」は削るということですね。ほかに、(3)抗微生物薬の不適切使用から、手洗い、ワクチ接種、咳エチケットの辺りで、細かいコメントはよろしいですか。

○洪委員 5ページの咳エチケットの所ですが、「咳やくしゃみを他人に向けて発しないこと」、その3行下の「顔を他の人に向けない」という重複した表現は削除し、腕の内側はわざわざ使わないと思いますので、削除いただければと思います。

 「うがい」は参考ということですので、それがどうということは何も示していないのですが、では、どうなのかということがあるかと思います。

○渡邉委員長 うがいについては、やらないよりやったほうがいいというぐらいですか。

○大曲委員 うがいに関してはかなり議論がありました。ですから、推奨を出すには至らない、ただ、うがいに関しては、この問題を語るときに興味のある方はたくさんいらっしゃると思います。そのときに我々として説明できる内容ということで示してあります。推奨はないのかと言われると、そうなってしまうのですが、現状をまずお伝えすることが大事かと思いまして、このようにしております。

○渡邉委員長 ただ、これを一般の人が見たときにどうしようかと。家庭では大体お母さんは日本の習慣として「帰ったらうがいをしなさい」と教えているわけで、別に害がないのだったら、やってもいいのかなと、個人的には1つの習慣としてよいと思うのですが、確かにちょっと中途半端な書き方だと思います。あとで考えていただいて、もし要らないのであれば外してしまうか、または慣習としてやられているのだったら、別にやっても害はないという程度で済むのか、御検討いただけますか。

○山野委員 先ほどから診断の話も少し出ていたと思いますが、今回こういう不適正使用というのをする上でも、正確な診断、本当は病原菌の診断ができるのが一番適正使用につながるはずなので、それが十分できていないという背景の下に、症状等で適正使用を考えようとしているといところが、一部限界もあるかと思いますので、その辺りもせっかくなので総論の背景的なところに書き加えるのもありかなとも思うのですが、いかがですか。

○渡邉委員長 診断の現状ですかね。

○大曲委員 1つ診断に壁がある現状として、やはり検査の限界というのは必ずあると思います。特に検査は簡易的なものも出てきたとはいえ、実際に例えば我々が外来で診療する、あるいはクリニックで診療するということを考えた場合に、非常に簡便に壁を感じないでそういった検査機器なり、キットなどを使えるような状況かというと、必ずしもそうではないと思っています。そこはやはり変えていく必要があるのではないかと思っています。そこは議論にもなりました。そこを特に議論したのは百日咳のところで、どのように診断するかというところで、大変な議論になりました。

 ということで、どこに、どう書き込むかは検討させていただければと思います。そこは私たちの部会としても問題意識として強く持っておりますので、お示ししておきたいと思います。

○渡邉委員長 「総論」はほかにはよろしいですか。

 では、「3.急性気道感染症」の項目に関していかがですか。まず(1)(2)の疫学の辺り、(3)の診断法方法及び鑑別疾患。

○舘田委員 9ページの下から3行目4行目ですが、引用文献が46番、47番で、「急性ウイルス性上気道感染症のうち、急性細菌性副鼻腔炎を合併する症例は2%未満と報告されている」という所ですが、これは1964年と1986年で、ちょっと文献が古いかもしれません。もう少し新しいのはありませんか。最近のもののほうがいいのかと思いました。

○渡邉委員長 日本の感染症学雑誌に出ているのはないのですかね。いろいろ調べられたのだと思いますが、日本のデータは調べられたのですか。

○大曲委員 そこに関しては山本先生、何か追加はありますか。

○山本参考人 神戸大学の山本です。作業部会でこのたたき台の作成に関わらせていただきました。非常に古いという御指摘はそのとおりです。これは一般住民を10年間にわたって追跡した、今ではできないような調査でして、気道感染症について、通常では医療機関を受診しないような人も対象に含まれています。特に古いということもあって、現代とは異なり、医療介入が余りなされていない状況を反映していると考えられます。ですから、気道感染症の自然経過を観察するのに非常に参考になる資料です。

○渡邉委員長 よろしいですか。

○大曲委員 補足します。言い方を換えますと、現状の日本で同じようなことをしようとしますと、何らかの形で医療介入が入ってしまいます。そうすると、自然歴が非常に見にくくなる状況があると思います。

○渡邉委員長 急性副鼻腔炎のときにアモキシシリンをやりなさいと。その主立った原因菌というのは肺炎球菌を想定されているのだと思いますが、これだとそれが2%以下ということですが、こんなに低かったでしたか。舘田先生の所でやられたデータはありませんか。

○舘田委員 うちではないですね。

○山本委員 これは母集団が普通の感冒も含まれていますので、例えば急性副鼻腔炎症状のある患者さんに限定した集団を母集団にすると、もう少し高くなると思います。

○渡邉委員長 よろしいですか。余りデータかないということですので、このぐらいしか使えないということです。そのほかによろしいですか。急性咽頭炎、急性気管支炎、この辺はいかがですか。

 続いて、12ページ以降の「治療方法」ですが、これは先ほどペニシシリン、アモキシシリンしか書いてありませんが、ペニシリン系を使えない人に対しての場合はどうするのかというのは、先ほど、何にするというのはなかなか難しいという話だったのですが、そういうことも考えているということは、どこかで示しておいたほうがいいかと思います。

 続いて、15ページの「急性咽頭炎」も、A群だけではなくて、ほかのものもあるということで、A群以外のものですね。これも全ての所で調べられるかというと、キットとしてA群ぐらいしかないですよね。その意味では難しいかもしれませんね。

○大曲委員 実際に調べるとなると培養も必要ですし、ものによっては研究培養も必要になりますので、全ての所とは言いませんが、病原性を用いるという議論があるのは事実ですので、そこは何らかの形で反映させたいと思います。

○渡邉委員長 続いて急性気管支炎です。これは百日咳を例に取ってありますが、百日咳ではなくてマイコプラズマとか、その辺も重要であるというコメントがありました。よろしいですか。

17ページの(5)患者・家族への説明です。これはこれだけに限らず、先ほど皆さんからの御意見がありましたように、患者さんに理解していただいて、初めてこれがうまくいくという点も考慮した場合に、WHOが出しているパンフレット等も考慮しながら、日本版のパンフレットも診療で使えるようにしたほうがよいのではないかという御意見がありましたので、その辺は厚労省も考えているということで、どこかに、その辺のパンフレットも作成して利用していただくということも加えておいていただければいいかと思います。

 続いて、19ページからの「医師から患者への説明例」です。これも非常に重要なポイントだということと、先ほど診断がなかなか難しいところがあるので、その1つのexampleを示していただいたほうが、臨床の現場では分かるのではないかという話もあったと思いますが、全部が全部示すのも、なかなか難しいとは思います。これに加えてしまうと、ボリュームがたくさんになって、皆さんが読まなくなるということもあるので、これは別添で、今後、AMR情報センターができるわけですから、そこにそういう事例集みたいなものを入れておいて、それに関心のあるドクターがそこを見れば、こういうケースの場合はこのように診断したのだという参考を幾つか示していただくのも一つですね。これからビッグデータをいろいろ解析していく研究班が立ち上がるかもしれないという話ですので、そういう所のデータも今度のAMR医療情報センターで利用していただけるような形をとっていただければと思います。

 続いて「4.急性下痢症」はいかがですか。先ほどの御意見では、感染症以外の下痢症もあるということですので、その辺も少しコメントを加えていただければと思います。

○舘田委員 細かいことですが、22ページの上から2行目に、帰国して約1週間以内の場合には細菌性腸炎という形で、例として、腸チフス、サルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、アメーバ赤痢等となっていますが、もちろん腸チフスで余り下痢はないと言いますけれども、これは前のページの真ん中ぐらいで、「腸チフス、パラチフスに関しては下痢を伴わないことが多いとされている」という形になっています。何となく矛盾してしまうから、ここに入るのであれば「etc」のようなものが入ってしかるべきなのかと思いますが、どうなのでしょうか。これは渡邉先生が御専門ですけれども。

○渡邉委員長 確かに腸チフスは年間50例ぐらいあります。最近は海外からの帰国者に関して検疫所でチェックしなくなっておりますので、臨床医の先生の所に患者さんが直接に行くのだと思います。そういう意味では、情報はきちんと出しておいたほうがいいと思います。症状等のどういったものが今多いのかというのは、感染研に腸チフスの患者データが集まってきているものをまとめたものがありますよね。その辺を少し引用していただければ、診断の参考になると思います。

○荒川委員 今、舘田先生が御指摘の数ですが、ここには例えば、そういう旅行者下痢症のようなエンテロトキシンを作る大腸菌とか、そういうものを、あと、ビブリオ属とかそういうのも、海外から帰って来た人で結構感染している人が多いと思います。アメーバ赤痢は、これは細菌性ではないので、これは括弧の外へ出すなりして、少しそこの記載の整備をしていただけるといいかと思います。

○大曲委員 これは御指摘のとおりだと思います。分けます。ありがとうございます。

○渡邉委員長 先ほど舘田先生から、腸管毒素原性大腸菌、これは、表6の所にもう少し加えていただくと参考になるかもしれません。ほかによろしいでしょうか。24ページの治療方法、25ページの診断手順。図4の所で、海外渡航歴なしで、体温が38℃以下で、うんぬんで、対症療法のみというところに、サルモネラとかの、いわゆる血液に菌が侵入するような例で、余り体温が上がらないケースとかはどうするかという御指摘があったかと思いますが、その辺も考えていただいて、特に高齢者とかの場合です。

26ページのサルモネラ腸炎の中ほどに、3か月未満の小児又は65歳以上の高齢者、これは例外であるというような記載もありますけれども、その辺も踏まえた形で何か注意書きを入れていただければいいと思います。よろしいでしょうか。

○皆川委員 ウイルスのところに戻りますが、22ページの「ウイルスに起因する急性下痢症」のところには、ノロウイルスのことのみ書かれていますが、21ページには、ロタウイルスのことが少し書いてありまして、表に入れるほどでもないかもしれませんが、ロタウイルスは診断キット等もありますので、あと、ノロウイルスと近縁のウイルスとしてサポウイルスやアストロウイルスの名前だけでも載せておくと、説明されるときに楽かと思います。いかがでしょうか。

○渡邉委員長 では、その辺をよろしくお願いします。2429ページは、よろしいでしょうか。

○山中委員 27ページに戻りますが、腸管出血性大腸菌に関してですが、保健所としても感染症法上の取扱いの中で、ベロ毒素が出てしまうと就業制限をかけることになります。あるいは、積極的疫学調査で御家族等の検査をすると、やはり無症状の保菌者というのが出てきまして、直接これには関係ないかもしれませんけれども、その方々の対応を、結構、苦慮することがあります。

 これは御専門の先生の御意見を伺いたいのですが、症状のない保菌者に対して、例えば抗生物質を使うと、その菌の陰性化が早まるのかとか、そういうエビデンスなどはあるものなのでしょうか。

○渡邉委員長 このEHECに関しては、2年ぐらい前にガイドラインが出ました。そこには、余り抗菌薬を保菌者に使うということは推奨していないと思いますけれども。昔、O血清型だけで腸管出血性大腸菌と判断して、抗菌薬をずっと投与していて、30日も投与したけれども消えなかったという例があります。それは論外の話ですけれども、実際に臨床でそういうことがやられていたということもあるので、常在化している大腸菌に抗菌薬を投与しても、余り効かないというか、依然として菌を排出するという例がありますので、ここはEHECの場合は、日本のガイドラインは、早期に投与すれば効果が出るということが言われていると思いますが、外国の場合には、そこがいいという先生と、悪いという先生が混在していて、ここにも書いてあるように、統一されていないというのが現状だと思います。その辺のガイドラインはこの中に引用されていなかったでしょうか。もしあれでしたら、引用していただいたほうが。ありましたか。

○結核感染症課長 113番の文献がガイドラインではないかと思います。

○渡邉委員長 EHECに特化したガイドラインが厚労科研の研究班として出ていたように思います。国立成育医療センターの五十嵐先生が中心になって出されたものが多分あると思います。後で調べていただいて。

○山中委員 今の課長の話した文献でいくと、生活状況や背景などを総合的に判断して、必要があれば、抗菌薬投与を考慮すると書いてあるかと思います。そこで結構悩んでいたりしています。

○大曲委員 よろしいでしょうか。

○渡邉委員長 大曲委員、どうぞ。

○大曲委員 ということで、部会としてはかなり意見もいろいろあるところですし、一般の先生方に除菌のことをお願いするのは少し厳しいと思いますので、できればそれは専門的なところを見ていただきたいというのが私たちとしての考えです。

○結核感染症課長 ちなみにローマ数字5番のEHECのところの、なお書きの前の引用の所がありますけれども、これらのことも踏まえて、JAID/JSCの指針では、「現時点では抗菌薬治療に対しての推奨は統一されていない」とされていて、これは原文も当たりまして、このような表記になっております。以上です。

○渡邉委員長 143144の論文ですね。

○結核感染症課長 113です。今、抗菌薬治療に対して議論がありましたけれども、推奨は統一されていないというのが現状だと我々は認識しておりますし、先生方からもそういったお話で承っております。

○渡邉委員長 そういうことでよろしいでしょうか。続いて、「5.参考資料」の30ページ以降に関して、先ほど常在菌を壊さないということが非常に重要であると。これは最近、マイクロバイオームという概念が出てきて、確かにそこが言われているところだと思います。その辺のところを加えていただければと思います。ほかに質問等事項に関して、よろしいでしょうか。

 続いて、35ページからのチェックシートです。先ほど、ここにアレルギーのことを入れたほうがいいのではないかというコメントがあったと思いますが、その辺も検討してください。もしここに加えていないような引用文献で、何かこれはということがありましたらお願いいたします。よろしいですか。

○山野委員 1つだけです。全体的なことですが、クリアにこうしたらというところがないので、御意見だけをお伺いしたいのですけれども、多分、この目的として、抗菌薬を減らして、その上で、耐性を減らしていきましょうというところがそもそもの目的だったと思います。日本ではやはりペニシリン耐性の肺炎球菌、あるいはペニシリン耐性のインフルエンザ菌が多いという現実があって、それを減らしていくことにこれがつながると期待するのですけれども、そのときに、ペニシリン薬という形になってくるので、その辺りが、ある程度フォーカスを当てるのがいいのか、使い方にもよるのでしょうけれども、耐性を減らすという意味では、この推奨する薬剤としてはどういうものがいいのかという議論も、作る上で何かあったのかどうか、もしあったならば、どういう議論があったのか教えていただきたいと思いました。

○大曲委員 ペニシリン系を前面に出すこと自体に、大きな異論はなかったわけですが、そこは部会の人間の中である程度共通の認識があって、それは恐らくこれまでに得られた知見の中での効果という観点で、ペニシリンというものは少なくともデータの蓄積が一番多いというのがある。

 もう1つは、ただ、実際の使われ方を見ると、先ほどの用法・用量のお話もありましたけれども、どうだったかという話はあります。必ずしも適切ではなかったのではないか。あるいは期間もそうだと思います。そういうことが諸々に絡み合って、それ以外の要因も、耐性に関連して、AMRに関連して、ワクチンの影響ですから必ずや諸々あると思いますが、少なくとも、抗菌薬治療という側面でいくと、そういった問題はあったであろうということで、あえて、今現在、標準とされているところを真正面に据えて、そこをまずは推奨していこうということを示したというのが今回の狙いであります。そこで実際にどう変わっていくかを見させていただきたいといところです。

○渡邉委員長 よろしいでしょうか。

○二木参考人 今のこととも関連するのですが、日本でマクロライドやキノロンやセフェムがたくさん使われているというのは、コストの問題もあると思います。欧米ではペニシリンはすごく安いと、だから使え使えとガイドラインにも書いてありますし、だけれども、明らかにキノロンのほうがよく効くというケースも間々ありますよね、肺炎は別にしても、細菌感染がある場合は。それは短期間で済むかもしれないと。その辺のことも含めて全部ペニシリンでいいのでしょうかという話ですよね。

 それから、ペニシリン耐性菌は日本は多いわけです、特に、中途半端な量で治療する場合は。ですから、そこも踏まえて考えておかないと、非現実的、理想論になりかねないという気はします。

○大曲委員 うまく伝わるかどうか分かりませんけれども、1つ、例えば目の前に、明らかにペニシリン等々を含めた抗菌薬を使用しなければいけないような患者さん、それは中耳炎とか、こじらせた副鼻腔炎とかありますけれども、そこに対して、何を選ぶかというところに関しては、恐らく今までの議論のとおりだと思います。

 一方で、我々がもう少し強調しなければいけないのは、現実にはそこに至らない例があって、いわゆる風邪を風邪のまま診療がなされてしまって、何となく抗菌薬が入ってしまっているとか、あるいは急性上気道炎と認識されてはいるけれども、実際には抗菌薬は必要でない状態という見極めがなかなかできなくて、あるいは諸々の理由でそれができなくて、抗菌薬が出ている状況があることも事実なのだと思います。そういった状況で、ペニシリン以外の、いわゆる広域と言われるようなセファロスポリンとか、キノロン、マクロライドがたくさん出ているということが、むしろ課題だと思いまして、まずはそこを正していくことだろうと。

 一方で、実際にペニシリンを必要とする、例えば肺炎球菌の感染症も含めてですが、そこに対して、そこまで診断が迫られている例に対して、薬をどう使っていくかというところは、もちろんこれから私も議論があっていいと思いますし、少し分けて我々も考えているところはありました。

○渡邉委員長 ありがとうございます。皆さん、抗菌薬の使い方に関しては、いろいろな意見があると思います。多分、今回これを出す一番の目的というのは、先ほどの急性呼吸器疾患又は下痢症疾患で、軽症の場合には抗菌薬を使わない、使わないようにしましょうというのが一番の問題で、使わない場合には、では、どうするのだという話が次のステップになるのだと思います。

 今回、その中で示されているのは、1つの例としては、アモキシシリンはこういう形で使うのはいいのではないかというのが、委員会のほうの総意という形で出してこられたのだと思いますが、多分、学会の先生方の中には、それだけでいいのかというのが先ほどからいろいろコメントが出ているところで、今後、その辺は詰めていかないと協力が得られない、せっかくこれを出しても絵に描いた餅になるので、やはり皆さんが納得して、まずは医者が使って、それをみんなやる。それが納得されていないと、患者さん側も当然納得しないわけで、第一弾目は、医療側が納得して出すということだと思います。そのためには、もうちょっと議論も必要かというのが今日の先生方のいろいろな御意見かと思います。

 ただ、厚労省としては、AMR対策アクションプランを作って、これは世界に約束した形ですので、日本としてもそれに取り組んでいるのだという姿勢は見せたいというところだと思います。だからといって、無理強いするわけでは当然ないのですが。

 これから審議に入りますが、そうすると、先ほどの二木参考人と、COIに絡む荒川委員、舘田委員は申し訳ありませんが、退室していただかなければいけないということになります。よろしいでしょうか。参考人の二木先生、貴重な時間をありがとうございました。

(荒川委員、舘田委員、二木参考人、青木参考人退室)

○渡邉委員長 では、今日話し合った結果について、これから審議という形で、今回の「抗微生物薬の手引き 第一版」の()を承認していただいて、それを感染症部会のほうに上げるというプロセスがこれからあります。今、いろいろな御意見が出されたわけですが、先ほど言いましたように、基本的には、今回のこのマニュアルの一番のポイントは、軽症の例に関しては、急性呼吸器感染症及び急性の下痢症に関しては、抗菌薬はなるべく使わないようにしようという点です。

 中等度又は重症の例に関しては、委員会のほうで挙げられたアモキシシリンだけで本当によろしいのかという意見がいろいろ出されてきたと思いますが、これは第一版ですので、今後、これから第二版、第三版と修正を重ねていくというときに、その辺の問題点もこれに取り込まれていくだろうということを踏まえて、皆さんのほうから今日のこの案は感染症部会に、これで提出ということでの御了承を得たいのですが、いかがでしょうか。

○釜萢委員 先ほどの参考の部分の延期処方の件は、大体この御趣旨は分かるのですが、どのように整理をするかという話はどういう形にしたらよろしいでしょうか。

○渡邉委員長 これは委員会としてどうでしょうか。

○大曲委員 部会の見解として申し上げると、先ほど宮崎委員からも御指摘がありましたとおりです。海外では、一度処方箋を持って、しかし、薬をもらうことがなくて帰るということが可能です。日本ではそれは一般的ではありません。ですから、例として出すことは必要かと思います。例えばスペインでは、あるいは米国でもそうかもしれませんが、一旦、そういった処方箋を出して、しかし実際には、医者の指示に基づいて遅れて抗菌薬を取りに来るという状況があるということを説明していく。その上で、日本では、同じような処方箋の扱いをされていないけれども、似たような扱いとして、まず最初は、初日の受診の際には医者がきちんと説明して、抗菌薬を出さない。ただ、次の外来の日を指定するとか、あるいは患者さんにセルフヘルスケアの方法を適切に説明して、症状が悪くなったら、こういう症状がきたら来ていただけるようにということで御指導するという形で、次に来ていただくタイミングなり、時期をきちんとお示しして、そのときに判断して、必要であれば抗菌薬を処方するといった形が、日本の医療になじむのではないかといった書きぶりであれば、御納得いただけるのではないかと思いました。

○渡邉委員長 それでよろしいでしょうか。

○宮崎委員 欄外に書いてあったものと、併せて書いていただければということと、今のように順番を入れ替えていただければよろしいのではないかと思います。釜萢委員、よろしいですね。

○釜萢委員 結構です。

○渡邉委員長 ほかによろしいでしょうか。

○松井委員 しつこいようですけれども、患者さんだけではなくて、やはり一般市民の方に対する啓発が必要だというところとか、あと、受診行動ですが、具合が悪くなったらドクターショッピングをするのではなく、同じ先生にかかってほしいとか、折々で入っているのですが、やはり頭の所に少し、「はじめに」若しくは「総論」のところで入れていただいたほうがいいかと思いますが、いかがでしょうか。

○大曲委員 その点の重要性は重々分かっております。それは何らかの形で伝えていくべきだと思います。ただ、部会としての整理としては、医療者向けの指針ですので、最初の冒頭のところは、適正使用の理念から入っていまして、そこでは入れなくても、例えば、この中に入れるのか、あるいは我々がこれから患者さん方にコミュニケーションを取る中でやっていくのか、方法はまだ検討していいと思います。今、先生がおっしゃったような受診の仕方は、極めて重要だと思いますので、それを何らかの形で、やはり伝えていくことは必要ではないかと思います。この中に入れるのがいいのか、入れるとしたらどこが適切かというのは、にわかにはお答えできかねるのですけれども、そのように考えております。

○松井委員 はい。

○渡邉委員長 先ほどお話があったように、患者側の重要性というのは皆さんも分かっていることなので、今後、これとは別個の形で、先ほどお話が出ましたように、今後できる医療センターのAMR情報センターを使って、又は保健所等の関係する部署を使って、どんどんリスクコミュニケーションはしていくということですので、そのときに感染研も是非その中で重要な役割を果たしていただければと思います。ほかはよろしいでしょうか。

○山野委員 先ほどの使用薬剤、推奨薬剤のところだけ1つコメントさせていただきます。コンセプトで今言おうとされている、適切な患者さんだけに使う、あとは使わない場合をつくるというのは、非常に重要なポイントなので、推奨薬剤のところで変な議論になって、この手引きがうまく浸透しないのもよろしくないと思いますので、あとは書き方だと思います。ペニシリンを第1に推奨していただくのは、そこは特に異論はないのですが、先ほど議論があったように、いろいろなガイドライン等々もほかにもありますので、その辺りを踏まえて適切に使っていくのだというところがもう少し分かりやすいように書かれていると、いろいろな先生方からのコメントも、もう少し少なくなってくるのではないかと思います。どのように工夫すればいいのかは、なかなか一言では言いにくいのですが、そこのところを入れていただくのがよろしいのではないかと思います。

○渡邉委員長 確かにここに、例えば13ページの所にアモキシシリンしかないと、それだけで本当にいいのかという御意見がいろいろな方々から出ていますので、そこは分かるように、例えば、手引き作成委員会においては、ここを強く推奨するけれども、ほかのチョイスとしては、こういうところにいろいろなガイドラインもありますよというような何かを付けていただいて、そちらを参照という形も一つできると思います。その辺、もう一度部会で検討していただけますか。

○大曲委員 はい。既に話は出ておりまして、コミュニケーションの取り方として、この手引きの内容だけで全ての診療が完結するとは私たちも全く思っておりません。異論のあるところ、難しいところ、先ほどのアレルギーの話もありましたが、それに関しては、ほかの資材を見ないとやはり現実には不親切ですし、進まないと思いますので、そういったところも含めて診療を行いましょうということで、コミュニケーションをやっていくということで、私たちはそこは非常に重要だと思っておりますので、そうやって対応させていただきたいと思っています。

○渡邉委員長 ありがとうございます。

○宮崎委員 具体例として、先ほどハチミツが何箇所か挙がっていましたので、そこは今回はそのままということになるのでしょうか。

○大曲委員 できれば、今回は一つ盛り込ませていただいて、今回、医療者向けに作られた指針ではありますけれども、そういう意味では、本来、患者さん向けの文書ではないのですが、とはいっても、そういう文書の性質の違いもあって盛り込めなかったのですけれども、いわゆるセルフヘルスケアといったものをどうしていくかということも、こういった風邪診療などでは非常に重要だと思いますので、こういったことを契機にして、患者さん方が自分の健康の問題にどう理性的に、適切に対処できるかというところも考えていければと思っているところもありまして、できれば、その皮切りにしたいところもありまして、入れさせていただきたいというのが部会としての思いです。

○宮崎委員 では、今後、意見を出させていただいて、第二版か何かで取り入れていただければと思います。よろしくお願いします。

○大曲委員 セルフヘルスケアに関しては、薬剤師さんの役割は私はすごく大きいと思っております。そういう意味では、またこれからよろしくお願いいたします。

○渡邉委員長 今日はたくさんの意見が出ました。例えば、日本のデータが足りないのではないかということ。これは先ほどから、今度、調査研究等を行っていくということですので、また、耳鼻科の問題とか、歯科領域の問題とかいろいろなところですが、あとは、実際にこれをコミュニケーションをする前に、ポケット版を作る必要があるのだという問題、又は学会のガイドラインを参照してほしいという御意見とか、いろいろな意見が出てきたわけですが、今回、これは第一版という形で、これで進めさせていただいて、改良はどのぐらいの目安でやるのですか、1年か、2年ぐらい、1年ぐらいですか。

○結核感染症課長補佐(野田) 基本的にはエビデンスなどを集めていく必要があると思います。また、そういう意味では研究班の成果が集まってくる。またAMR臨床情報センターで様々なガイドラインの情報を集めてくるというところもありますので、そこを踏まえてやっていくというところは重要だと思っております。

○渡邉委員長 ということですので、そのときに、いろいろなほかのものも取り込んでいくということです。あとは、細かい点で適時修正できる点は修正していただいて、それをもって当感染症部会のほうに上げて、第一版として、こういうことでやりたいということで示したいと思います。これで御了解いただけますでしょうか。よろしいですか。

(異議なし)

○渡邉委員長 ありがとうございます。では、大曲先生と、私のほうで最終的に確認させていただいたものを、感染症部会のほうに提出したいと思います。

 それでは、当小委員会として了承されたということで進めさせていただきます。

 荒川委員と舘田委員を呼びに行ってもらっています。少し時間がオーバーしていて、申し訳ありません。

(荒川委員、舘田委員入室)

○渡邉委員長 それでは、議題2、その他について事務局から資料2で説明をお願いします。

○結核感染症課長補佐(野田) では、資料2について、かいつまんで御説明いたします。この小委員会とは別の枠組みですけれども、健康局長の私的検討会ということで、「薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会」を23日に開いております。これはまだ第1回の議論ですので、その進捗で、まだまだ今後議論が煮詰まっていくというところですが、現状、薬剤耐性ワンヘルス動向調査のイメージということでお示しさせていただいております。その中では、ヒト、動物、環境というものを一緒くたで見ていくというところが必要であるというところでお示しさせていただいています。更にそれらを統合的に分析して、評価を今後行っていくということで議論を更に進めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。適宜、その検討会の成果、議論についてはこちらの小委員会のほうにもフィードバックさせていただきたいと思っております。以上でございます。

○渡邉委員長 何か御質問はよろしいですか。では、引き続き、いろいろな議論の進捗状況については、この小委員会に報告させていただきたいと思います。何か御意見等はありますでしょうか。よろしいですか。なければ、これで閉会にしたいと思います。

○結核感染症課長補佐(高) 事務局からです。次回開催に関しては、また改めて日程調整の上、御連絡をさせていただきます。事務局からは以上です。

○渡邉委員長 少し時間をオーバーして申し訳ありませんでした。それでは、これで終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(薬剤耐性(AMR)に関する小委員会)> 第2回厚生科学審議会感染症部会薬剤耐性(AMR)に関する小委員会(2017年3月6日)

ページの先頭へ戻る