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2017年4月7日 第131回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成29年4月7日(金)18:00~19:30


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

【公益代表委員】

荒木委員、安藤委員、黒田委員、平野委員、水島委員、守島委員、両角委員

【労働者代表委員】

川野委員、神田委員、柴田委員、冨田委員、八野委員、村上委員、世永委員

【使用者代表委員】

秋田委員、小林委員、早乙女委員、三輪委員、輪島委員代理

【事務局】

山越労働基準局長、土屋審議官、村山総務課長、藤枝労働条件政策課長、荒木監督課長、平嶋勤労者生活課長、宮本安全衛生部計画課長、中嶋調査官

○議題

1 時間外労働の上限規制等について
2 その他

○議事

○中嶋調査官 定刻になりましたので、ただいまから第 131 回労働政策審議会労働条件分科会を開催します。本日は、 4 1 日付けの委員改選後、初めての分科会となりますので、冒頭は私、労働条件政策課の中嶋が司会を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。本日は、塩崎厚生労働大臣が出席しておりますので、大臣より御挨拶申し上げます。

○塩崎厚生労働大臣 労政審の労働条件分科会の新しいメンバーになって初めての会合ということで御挨拶をさせていただきます。今日は大変お忙しいところ、皆様方にはお集まりいただきまして、また金曜の夜のこういう時間にややブラックな感じですが、大変申し訳なく思いながら、心から感謝をまず申し上げたいと思います。

 御案内のように、 3 28 日に働き方改革実現会議で、働き方改革実行計画というのが取りまとめられ、決定を見たところです。安倍総理は今年の 1 月の施政方針演説の中で、「最大のチャレンジは一人一人の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を可能とする労働制度の大胆な改革、働き方改革です」ということを明言をされました。最初の一歩として実行計画が 3 月の終わりに決められたところです。特に長時間労働の是正の問題については大変重要なテーマで、今回の実行計画策定のプロセスにおきましては連合と経団連、労使のトップの間で話合いをいただきまして、時間外労働の上限規制について画期的な労使合意が 3 13 日になされました。さらに総理の要請によりまして、最終的には実行計画によって時間外労働の上限を初めて罰則付きで、法律で規制をするという労働基準法の歴史の中でも大きな制度改革の道筋が付けられたところです。安倍総理からは、今後は関係審議会の審議を経て、早期に法案を国会に提出するようにという指示がございました。本日の労働条件分科会により、働く現場の実態に通じた皆様方の下で、具体的な制度設計について検討を始めていただき、できるだけ早期に結論を得ていただきたいとお願いを申し上げる次第です。

 この実行計画ですが、臨時的な特別の事情がある場合でも、時間外労働の上限は年 720 時間とする旨を定められておりますが、他方で、労使合意文書にも記されているとおり、 36 協定で定める時間については、月 45 時間、年 360 時間の原則に近付ける努力が必要です。そのため、本分科会の検討に当たりましては、労使が労働時間の延長を可能な限り短くするために、行政官庁が助言・指導を行うための指針の内容、長時間労働に対する健康確保措置の具体的な内容、こういったことなどについても御議論をいただきたいと思っております。

 また、長時間労働の是正、過労死等のゼロの実現をしていく上で、重要なことは上限規制の問題だけではありません。実行計画では、 1 つ目は、勤務間インターバル制度の普及促進。 2 つ目は、職場のパワーハラスメント防止の強化。これについても、労使関係者を交えた場で対策の検討を行うことが明記されました。この 2 つの検討会についても大型連休前には立ち上げて、精力的に検討を進めたいと考えているところです。働き方改革は、深刻な人口問題に直面している我が国が、イノベーション革命と並んで達成すべき最大の課題だと私は思っています。この改革こそが、誰もが納得できる働き方実現の下で労働参加を促し、そして時間当たりの労働生産性を高め、イノベーション、新しい付加価値など、現場の自発的な創意工夫の後押しをして、成長と分配の好循環の実現をするエンジンとなる。そして、企業や地方、あるいは日本経済全体の再生にもつながると思っております。つまり、労働政策は今や経済政策とは全く切り離せない、重要かつ中核的な政策だと思っております。

 労働行政を所管し、責任を持つ厚生労働大臣として、働く人々の視点に立って、ワーク・ライフ・バランスを実現しながら、一人一人が意欲や能力を最大限に発揮でき、生産性向上や経済成長にもつながる働き方改革。すなわち、働く喜びと成長の好循環とも言うべきものを実現をしていく。そのために私も全力を尽くしてまいりたいと思っております。皆様方には、働く方々の視点、現場の視点、生産性向上の視点などから、新たな制度の設計に向けて、忌憚のない御議論をいただいて、結論を得ていただければ有り難いと思っております。大変お忙しい皆様方ばかりですが、何卒よろしくお願い申し上げて、私からの冒頭の御挨拶にさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 ありがとうございました。大臣は所用でここで退席させていただきます。まず、議事に入る前に、分科会委員の交替について御報告させていただきます。お手元の参考資料として、労働政策審議会労働条件分科会委員名簿を配布しております。名簿順に、新しく委員に就任された方々につきまして御紹介させていただきます。公益代表の委員に、新たに 5 名就任されました。まず、日本大学総合科学研究所准教授の安藤至大委員です。

○安藤委員 安藤です。よろしくお願いします。

○中嶋調査官 本日は御欠席ですが、筑波大学ビジネスサイエンス系教授の川田琢之委員です。次に、早稲田大学教育総合科学学術院教授の黒田祥子委員です。

○黒田委員 早稲田大学の黒田です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 神戸大学大学院経営学研究科教授の平野光俊委員です。

○平野委員 平野です。どうぞよろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 大阪大学大学院高等司法研究科教授の水島郁子委員です。

○水島委員 水島です。よろしくお願いします。

○中嶋調査官 ありがとうございました。引き続きまして、分科会委員改選後、初めての分科会となりますので、分科会長を選出することとなります。分科会長は、労働政策審議会令第 6 条第 6 項に基づき、当該分科会に属する公益を代表する委員のうちから、当該分科会に属する委員が選挙することとなっております。当分科会におきましては、荒木委員と守島委員のお二人が該当されます。お二人にあらかじめ御相談いただいた結果、荒木委員が分科会長に就任されます。以降の議事進行は、荒木分科会長にお願いいたします。

○荒木分科会長 この度、分科会長を務めることになりました荒木と申します。皆様の御協力を得ながら、議事を進行していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、分科会長代理の選任から進めます。分科会長代理については、労働政策審議会令第 6 条第 8 項により、当分科会に属する公益を代表する労働政策審議会の委員又は臨時委員のうちから、分科会長があらかじめ指名することとしておりますので、当該規程に基づいて、守島委員に分科会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 次に、本日の出欠状況については、欠席の委員として公益代表の川田委員、使用者代表の加藤委員と承っております。また、使用者代表の鈴木委員の代理として、日本経済団体連合会労働法制本部長の輪島忍様、田中委員の代理として、東日本旅客鉄道株式会社人事部法規グループ課長の佐藤晴子様に御出席をいただいております。よろしくお願いいたします。なお、前回、当分科会を開催して以来、事務局にも異動がありました。そこで定足数の御報告と併せて、事務局より御説明をいただきます。

○中嶋調査官 それでは紹介させていただきます。大臣官房審議官労働条件政策担当の土屋です。

○土屋審議官 土屋です。よろしくお願いいたします。

○中嶋調査官 総務課長の村山です。

○村山総務課長 村山です。よろしくお願い申し上げます。

○中嶋調査官 労働条件政策課長の藤枝です。

○藤枝労働条件政策課長 藤枝です。

○中嶋調査官 勤労者生活課長の平嶋です。

○平嶋勤労者生活課長 平嶋です。よろしくお願いします。

○中嶋調査官 安全衛生部計画課長の宮本です。

○宮本安全衛生部計画課長 宮本です。よろしくお願いします。

○中嶋調査官 最後に私、労働条件政策課調査官の中嶋です。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、定足数について御報告します。労働政策審議会令第 9 条により、委員全体の 3 分の 2 以上の出席、又は公労使各側委員の 3 分の 1 以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされていることを御報告します。

○荒木分科会長 本日の議題に入ります。お手元の議事次第に沿って進めます。まず、 1 つ目の議題は「時間外労働の上限規制等について」です。事務局から資料 1 、資料 2 及び資料 3 について説明をお願いします。

○中嶋調査官 カメラ撮りについては、恐縮ですが、ここまでとさせていただきます。私から資料の説明をさせていただきます。資料 1-1 、働き方改革実行計画について御説明します。 2 ページは、働き方改革実現会議の概要の資料です。タイトルバーの下に二重丸で、会議設置の目的、会議の構成について記載しております。 1 つ目は、一億総活躍社会をひらく最大のチャレンジである「働き方改革」について、その実行計画の策定等に係る審議を行うとの趣旨です。 2 つ目が、総理自らを議長、働き方改革担当大臣と厚生労働大臣を議長代理とすること。有識者として、労使双方の代表、専門的知見や、現場での活動経験を有する方が参加するという構成です。

 有識者としては、四角の囲みの所でお名前、役職を御覧いただけます。上から順に、前分科会長である岩村先生、全国中小企業団体中央会の大村会長、日本労働組合総連合会の神津会長、日本経済団体連合会の榊原会長、日本商工会議所の三村会頭といった学識として、労使トップの方々に参加を頂いた会議です。

 続いて、働き方改革実現会議において、 3 28 日に決定された働き方改革実行計画について御説明します。 3 ページ、左右 2 段組みで、目次の形になっており、実行計画の全体構成を御覧いただけます。左上の 1. 働く人の視点に立った働き方改革の意義ということで、総論に当たる所です。 2. 以下が各論となりますが、本分科会において御審議いただく時間外労働の上限規制等については、 4. 罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正に、方向性や具体的な内容が盛り込まれております。後で御説明いたします。そのほか、全 10 回にわたる議論の成果が分野ごとに整理されており、 13 は、 10 年先の未来を見据えたロードマップ、いわゆる行程表を付す構成となっております。

4 ページ以下では、今、申し上げた各部分について、実行計画をそのまま引用、添付するという形で資料としております。 4 ページ、 1. 働く方の視点に立った働き方改革の意義を引用した所です。 (1) 経済社会の現状、 (2) 今後の取組の基本的考え方となっております。いずれも時間外労働の関係に限らず、計画全体を俯瞰しての記載となっておりますが、このうち時間外労働に直接言及した部分について御紹介します。

5 ページの 2 段落目、上から 9 行目です。「また、長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。これに対し、長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結び付く。経営者は、どのように働いてもらうかに関心を高め、単位時間 ( マンアワー ) 当たりの労働生産性向上につながる」。こういった形で、長時間労働是正に関する基本的考え方を整理しております。

6 ページ、本プランの実行についてです。初めに「コンセンサスに基づくスピードと実行」とあります。最初のパラグラフは、働き方改革実現会議は総理が自ら議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まって議論をしたという旨です。長時間労働の是正については、上限規制等についての労使合意を経て、政労使による提案がなされるに至ったという経緯。各分野につきまして、具体的な方向性を示すための議論が行われ、実行計画として、労働者側と使用者側、更には他の有識者も含め、合意形成がされた旨が記載されております。 2 パラグラフ目は、労働政策審議会において、実行計画を踏まえた審議を行っていただき、政府は関係法律案を早期に国会に提出することが求められる旨です。 3 パラグラフ目は、中でも罰則付きの時間外労働の上限規制について、今般、労働界と産業界が合意できたことは画期的なことであり、政労使が強い意思を持って法制化に取り組んでいく旨がまとめられております。

7 ページ、ここからは罰則付き時間外労働の上限規制の導入など、長時間労働の是正についての記載です。上半分が基本的考え方についてです。 1 パラグラフ目は先ほど御紹介した部分と同じコンセプトですが、仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためには、長時間労働を是正しなければならないということ。働く方の健康の確保を図ることを大前提に、マンアワー当たりの生産性を上げつつ、ワーク・ライフ・バランスを改善し、女性や高齢者が働きやすい社会に変えていくこと。 2 パラグラフ目は、長時間労働の是正については、いわゆる 36 協定でも超えることができない罰則付きの時間外労働の限度を具体的に定める法改正が不可欠であること。 3 パラグラフ目は、他方、労働基準法は、最低限守らなければならないルールを決めるものであり、企業に対し、それ以上の長時間労働を抑制する努力が求められることは言うまでもないこと。長時間労働は構造的な問題であり、企業文化や取引慣行を見直すことも必要であること。最後に、労使が先頭に立って、働き方の根本にある長時間労働の文化を変えることが強く期待されることが示されております。

 このページの下半分では、法改正の方向性がまとめられております。 1 パラグラフ目は、現行制度の説明です。現行の時間外労働の規制では、 36 協定で定める時間外労働の限度を、厚生労働大臣の告示でもって原則月 45 時間以内、かつ、年 360 時間以内と定めていること。これには罰則等による強制力はなく、また、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して特別条項を設ける場合については上限に関する規定がないことが書かれております。 2 パラグラフ目は、今回の法改正は、今申し上げた現行の大臣告示を法律に格上げし、罰則による強制力を持たせること。また、臨時的な特別な事情がある場合として、労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を設定することです。より具体的な労働基準法の改正の方向性については、時間外労働の上限規制等に関する労使合意にあり、資料 1-2 に付しております。これを踏まえて、 8 ページです。

8 ページ、「時間外労働の上限規制」には、 3 つのパラグラフにわたって具体的な記述があります。 1 つ目のパラグラフは、時間外労働の限度、すなわち、労働基準法第 32 条の法定労働時間を超える限度を、原則として月 45 時間、かつ、年 360 時間として、違反には特例の場合を除いて罰則を課すということ。特例としては、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることのできない時間外労働時間を年 720 時間とすること、かつ、年 720 時間以内において、一時的に事務量が増加する場合において、最低限上回ることのできない上限を設けることです。 2 パラグラフ目は、今申し上げた上限について、 2 ないし 6 か月の平均で、休日労働を含んで 80 時間以内を満たさなければならないとすること。単月では、休日労働を含んで 100 時間未満を満たさなければならないとすること。加えて、時間外労働の限度の原則は、月 45 時間、かつ、年 360 時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年 6 回を上限とすることです。また、 3 パラグラフでは、労使が上限値までの協定締結を回避する努力が求められる点で合意したことに鑑み、更に可能な限り労働時間の延長を短くするため、新たに労働基準法に指針を定める規定を設けることとし、行政官庁は、当該指針に関し、使用者及び労働組合等に対し、必要な助言・指導を行えるようにするとしております。

 次の項目は、パワーハラスメント対策・メンタルヘルス対策です。職場のパワーハラスメント防止を強化するため、政府は労使関係者を交えた場で対策の検討を行うこと。併せて、過労死等防止対策推進法に基づく大綱において、メンタルヘルス対策などの新たな目標を掲げることを検討するなど、目標を見直すこととしております。次の項目は、勤務間インターバル制度ですが、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と、翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課し、制度の普及促進に向けて、政府は労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げる。また、政府は、同制度を導入する中小企業への助成金の活用や、好事例の周知を通じて取組を推進することとしております。一番下の項目、法施行までの準備期間の確保については、中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備期間を確保するとしております。

9 ページの冒頭の「見直し」については、政府は法律の施行後 5 年を経過した適当な時期において、改正後の労働基準法等の実施状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うとしております。その下の「現行の適用除外等の取扱い」については、働く人の視点に立って、働き方改革を進める方向を共有した上で、実態を踏まえて対応の在り方を検討するもので、パラグラフごとに 4 つの業務の取扱いを整理しております。

 自動車の運転業務については、現行制度では限度基準告示の適用除外とされておりますが、今回は、罰則付き時間外労働規制の適用除外とせず、改正法の施行期日の 5 年後に、年 960 時間以内の規制を適用することとし、かつ、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることとしております。 5 年後の施行に向けては、荷主を含めた関係者で構成する協議会で、労働時間の短縮策を検討するなど、長時間労働を是正するための環境整備を強力に推進することとしております。

 次のパラグラフです。建設事業についても、今回、罰則付き時間外労働規制の適用除外とはせず、改正法の施行期日の 5 年後に罰則付き上限規制の一般則を適用することとしております。「ただし」として括弧書きを付しております。復旧・復興の場合、仮設住宅の建設等については、 5 年後の段階では単月で 100 時間未満、 2 か月ないし 6 か月の平均で 80 時間以内という条件は適用しないというものです。この点についても、将来的には一般則の適用を目指す旨の規定を設けることとしております。 5 年後の施行に向けては、発注者の理解と協力も得ながら、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進することとしております。

 その次が、医師についてのパラグラフです。医師については、時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であるということ。具体的には、改正法の施行期日の 5 年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、 2 年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得るというものです。

 最後に、新技術・新商品等の研究開発の業務については、現行制度で適用除外とされているところ、これについては、医師による面接指導、代替休暇の付与など、実効性のある健康確保措置を課すことを前提に、現行制度で対象となっている範囲を超えた職種に拡大することのないよう、その対象を明確化した上で適用除外とするとしております。

10 ページは法改正事項ではありませんが、簡単に紹介をさせていただきます。上段の「事前に予測できない災害・その他事項の取扱い」です。突発的な事故等については、臨時の必要の限度において、労働基準法第 33 条による労働時間の延長の対象となっており、この措置は継続するということ。また、サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応や、大規模なリコールへの対応なども含まれていることを解釈上明確化するというものです。

 下段の「取引条件改善など業種ごとの取組の推進」については、中小企業等は、発注企業からの短納期要請や、顧客からの要求などに応えようとして、長時間労働になりがちなので、商慣習の見直しや取引条件の適正化を一層強力に推進するというものです。具体的には、自動車運送事業については、関係省庁横断的な検討の場を設けること。生産性の向上や人材の確保・育成など、長時間労働を是正するための環境を整備するための見直しや、支援措置を行う。そのための行動計画を策定・実施するということ。特にトラック運送事業については、事業者、荷主、関係団体などが参画して実施中の実証事業を踏まえたガイドラインを策定する。下請取引の改善など、取引条件を適正化する措置。複数のドライバーが輸送行程を分担することで、短時間勤務を可能にするなど、生産性向上に向けた措置。荷待ち時間の削減等に対する荷主の協力を確保するために必要な措置・支援策を実施することとしております。また、建設業については、適正な工期設定や週休 2 日の推進など、発注者を含めた関係者で構成する協議会を設置して、時間外労働規制の適用に向けた環境整備を進めていく旨。技術者・技能労働者の確保・育成、生産性向上のための取組を進める旨などが盛り込まれております。

11 ページの一番上です。企業本社への監督指導等の強化については、過重労働撲滅のための特別チーム ( かとく ) による対応や、従来の事業場単位だけではない対応として、企業本社への立入り調査や、企業幹部に対する指導によって、全社的な改善を求めていくということ。また、企業名公表制度の強化について盛り込まれております。その下の「意欲と能力ある労働者の自己実現の支援」は現在、国会に提出中の労働基準法改正法案についてです。中小企業における月 60 時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直しや、年次有給休暇の確実な取得などの長時間労働抑制策とともに、高度プロフェッショナル制度の創設や、企画業務型裁量労働制の見直しなどの多様で柔軟な働き方の実現に関する法改正について、国会での早期成立を図ることとしております。

 続いて、 7. 病気の治療と仕事の両立です。今後、安全衛生分科会において検討をいただく労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化についてです。ここでは治療と仕事の両立支援に当たって、産業医・産業保健機能の強化を図ること。メンタル不調等により、リスクが高い状況にある方への適切な対応が取れるように健康管理を強化する旨。産業医などが医学専門的な立場から、働く方一人一人の健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備することなどが盛り込まれております。以降、 12 ページからはロードマップです。時間軸、指標を用いて、実行計画の内容を整理したものですので適宜御参照ください。以上が、資料 1-1 についての説明です。

 資料 2 、仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会について御説明します。昨年の 9 月、厚生労働省に設置した有識者による検討会です。荒木分科会長、守島分科会長代理、黒田委員、平野委員にも御参集いただいたものです。時間外労働規制の在り方をはじめ、長時間労働の是正に向けた政府の検討に資するように、時間外労働の実態や課題の把握、長時間労働の原因分析や改善方策などについて、幅広く御議論をいただきまして、今年 2 月に論点整理をまとめていただいたものです。検討の成果として、塩崎大臣より、働き方改革実現会議の場に報告をさせていただいた当該論点整理がお手元の資料 2 です。御参照ください。

 資料 3 、論点 ( ) という A4 縦置きの 1 枚紙です。こちらには次回以降、御議論をいただく論点として考えられる点を記載したものです。実行計画の内容を踏まえて、1時間外労働の上限規制、2勤務間インターバル、3長時間労働に対する健康確保措置、4その他としております。1の時間外労働の上限規制については、 (1) 限度時間等、 (2) 適用除外等の取扱い、 (3) 新たな指針に盛り込むべき事項、 (4) その他。2の勤務間インターバルについては、 (1) 労働時間等設定改善法及び指針に盛り込むべき事項、 (2) その他と区分しております。こうした論点について御議論をいただきたいと思います。

 最後に、参考資料 1 をごく簡単に紹介します。議論の際に御参照をいただくように、現行の時間外労働規制の概要などを整理した資料です。 1 ページ以降、労働基準法に関連する条文。 5 ページからは、 36 協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準。いわゆる大臣告示について全文を載せ、また 36 協定の記載例などについても、 9 10 ページに入れております。その他としては、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法についても、勤務間インターバル制度との関係がありますので、法律及び指針の概要を 14 ページに付しております。 15 ページからは、昨年末、厚生労働省において取りまとめた「過労死等ゼロ」緊急対策を付しております。議題 1 について、事務局からの資料説明は以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。それでは、ただいま説明のありました資料 1 から 3 について、御意見、御質問等がありましたら御発言いただきたいと思います。

○八野委員 まず、全体的な観点からお話をしたいと思います。長時間労働の是正については、資料 1-2 に付いています 3 13 日の労使合意に基づいて、罰則付き時間外労働規制の導入という、労基法ができて 70 年の歴史の中で非常に大きな改革に至ったという認識です。労働時間の量的上限規制について、社会的コンセンサスが形成されて実行計画として結実したことは、非常に意義が大きい、又はそれは評価すべきであろうと思っております。

 それを前提とした上でということですが、実行計画を見ますと、「過労死又は過労自殺のゼロに向けて」という文言は具体的には入っておりません。安倍総理は、第 193 回の国会会期中、 1 20 日に施政方針演説をされています。そのときに、 1 つの企業で起きた過労自殺を事例として、「二度と悲劇を繰り返してはならないとの強い決意で長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる 36 協定でも超えることのできない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速化します」と述べ、時間外労働の限度は何時間なのかを具体的に定めることが重要であることを言われているわけです。

 それともう一点、資料 1-2 に労使合意の文書があります。その前文を見ていきますと、「働き方改革を強力に推し進め、長時間労働に依存した企業文化や職場風土の抜本的な見直しを図ることで、過労死・過労自殺のゼロの実現と、女性、若者、高齢者などの多様な人材が活躍できる社会構築に不退転の決意で取り組む」というものの上で、「記」書き以降のことが掲げられているという認識をしております。このことは合意文書の中に記載されておりますので、私たち労働側としても、そして経営者側もこれに基づいて議論を進めていかなくてはいけないという認識でいます。先ほども出てきましたが、長時間労働の文化を変えるという強い決意の下、または過労死・過労自殺をゼロにしていく決意の下で、今回の議論に労働側としては臨みたいと思っておりますので、総論として意見を申し上げておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。

○輪島代理 本日は代理ですが、冒頭、発言をさせていただきます。この度、 3 28 日に、働き方改革実現会議において実行計画が取りまとめられた。これは、正に日本が今、求められている働き方改革を実現するための大変必要な政策パッケージが全て盛り込まれたと考えております。とりわけ、日本の雇用慣行に留意しつつ、同一労働同一賃金のガイドラインを策定しまして、法的な整備の方向性を固めたことや、時間外労働が実質的に青天井である現状に対して、 36 協定の仕組みを抜本的に見直して、罰則付きで上限規制の導入を決めたことについては、今、八野委員がおっしゃったとおり、私どもとしても大変画期的なことだと考えているところです。特に、これから労働条件分科会において、議題として時間外労働の上限規制等について議論をしていくわけですが、 3 13 日の労使合意、直接当事者である労使がしっかり議論を重ねて合意形成をしたという大変重いものだと私どもも考えているところです。そこで政府においては、この点を大変強く受け止めていただいて、労使合意及びこの実行計画の内容で法案を作っていただきたいと切に考えているところです。私からは以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○村上委員 今の認識は輪島代理とほぼ同じ認識ではありますが、資料 3 の論点 ( ) について、これが今後の議論の土台になっていくと思いますので、申し上げたいと思います。

1 番目の時間外労働の上限規制です。これについては、労使で真摯に議論をしてきたことはありますが、 1 点懸念している点があります。それは休日労働の取扱いに関してです。休日労働について、週休 2 日制が普及していることから、休日労働というと、例えば土日が休みの職場で土曜日に働いた場合は時間外労働として取り扱われないのではないか、休日労働として取り扱われるのではないかという誤解が広がっていることがあります。ここで言う休日労働というのは、あくまでも法定休日の労働であって、週 1 回の休日に働かせる場合のことであることを、改めて周知していくことが必要ではないかと考えております。

 また、上限規制の特例である「臨時的な特別な事情がある場合の要件」として、労働基準法の構造および導入された基準の経緯や性質に応じて、休日労働を含むものと含まないものということで合意をしておりますが、これらについてその経緯も踏まえて、休日労働が悪用されないようにしていくことも必要ではないかと思っております。

 また、特例の要件には、こうした経緯等を踏まえ、休日労働を含む含まないという両方のものがありますが、現実の運用の中では、休日労働も時間外労働も含めて労使の協定なり労働時間の管理をしていくことになるだろうと考えておりますので、そういうことも是非分かるように議論をしていきたいと考えております。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○世永委員 運輸労連の世永です。私から自動車運転業務について発言をさせていただきます。現行、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準という改善基準告示では、年間の拘束時間が 3,516 時間となっています。これは、休日出勤を含めて、年間 1,170 時間の時間外労働を可能とする内容です。この間、私ども労働組合としましては、行政並びに事業者団体へ拘束時間の短縮の要請を続けてきております。

 今次、働き方改革実現会議で、時間外労働の上限規制の適用除外となっている自動車の運転業務について、改正法施行 5 年後に 960 時間以内の規制適用、かつ、将来的には一般則の適用を満たす旨の規定が設けられたということで、先ほども御説明をいただきました。加えて、同業務については、単月 100 時間未満、 2 6 か月、平均 80 時間の規制の対象外となっています。更に休日労働の取扱いでは、一般則の年間の上限 720 時間では別扱いとされるものの、今回の 960 時間には、対象となっていないということです。休日労働が 960 時間の別枠となりますと、現行の改善基準告示と何ら変わらないという意見が多く挙げられています。実行計画が明らかになって以降、政府が掲げた目標から我々自動車運転者、特にトラックドライバーから、「切り捨てられた」という声が全国から寄せられています。皆さん御存知のとおり、過労死等の現状を見れば、自動車運転従事者、あるいは道路貨物運送業は、共に脳・心臓疾患の支給決定件数ワーストワンとなっています。是非ともこの実態を直視していただきたいということ、そして、自動車の運転業務こそ長時間労働の改善に向けて最優先に取り組まなければならない職種であるということです。そこで、関係労使と所管官庁も交えた検討の場を設けるなど、早期に具体的な施策を講じていただきたいと考えております。

 最後になりますが、私ども運輸労連には運輸共済という共済制度があり、 13 4,000 名が加入しています。実は、この仲間の中で、自殺者が 10 年間で 241 名という、非常に痛ましい状況となっています。自殺の原因に関するアンケートも行っているところ、業務上に関連する問題が多くを占めている実態です。原因の全てが過重労働に結び付くかは定かではありませんが、我々としては、何としてでもこの業界の体質改善が必要であることをを強く訴えさせていただきます。したがいまして、自動車の運転業務についても、一般則の適用となることをこの会議の場でも発言をさせていただきます。

○荒木分科会長 ありがとうございます。

○神田委員 関連して、建設産業を抱える産業別の労働組合として、今回の実行計画に基づき、これから議論をしていくということですので、現状と考え方について触れておきたいと思います。

 建設産業で働く方々からは、いろいろなお話を伺う中では、物を作り、形を残す、そして地図に残る仕事としてのやり甲斐を持って働いて一方で、厳しい労働環境から、せっかく入職した若い方々が他産業に移動する、こうしたことが現状としてあるということです。魅力ある建設産業にするという観点では、そうした点でこれから議論がされます長時間労働、この是正が極めて重要だということと、そのことが労働安全衛生にも関わってくるのだと認識をしているところです。

 少しその数値等について御紹介をしていきたいと思います。日建協さんのアンケートで、 2015 年、平成 27 年外勤技術系、いわゆる外で働く方々で、建築の場合は月に 79.9 時間、それから外勤土木の方々で 79.5 時間ということです。そして、所定外労働時間を、時間帯の分布で分けてみますと、 80 時間以上は外勤建築で 48.3 %、うち 100 時間以上が 29.9 %です。土木の方々で、 80 時間以上が 47.3 %、うち 100 時間以上が 29.7 %という状況です。私ども基幹労連の中では、鉄鋼、造船-重機、非鉄という産業で働く仲間がいるのですが、これらのグループにおける平均の時間外労働は 21 時間程度です。したがって、いかに建設事業における労働環境の実態が厳しいのかということが分かります。その中に鉄筋工さんや、建設事業の専業職に関わる方々は、事業所や、現場を転々としていきますので、実際の労働時間をどのように把握しているのか、こういうことも懸念をしております。

 そして休日労働の関係です。外勤技術者は、日曜日についてはほぼお休みを取れているわけですが、工期設定等の関わりから、土曜なり祝日はなかなか取りにくいのです。建設産業労働組合懇話会というのがあるのですが、統一土曜閉所運動、これをもう数年取り組んでいるという実情があることを是非お含み置きいただきたいと思っています。

 今回の働き方改革実行計画において、こうした課題改善に深く関わる時間外労働規制の適用除外等の取扱について、建設事業は 5 年後の施行に向け、段階的な短縮に向けて取組を強力に推進することが明記されていること、また、労働条件の取引条件改善など業種ごとの取組の推進については、労働環境の改善に向けた種々の取組を掲げて、その取組に向けて、発注者も含めた関係者で構成する協議会の設置等も示されております。これらを率直に評価しますとともに、大いに期待をしているところです。だからこそ、働く者全ての安全安心を確保して、生き生きとした産業・企業、そして職場を作り上げていくために、個別具体的な対策、その実施に向けて早急な取組を前倒しに行っていくという気概を含めてこのことに取り組んでいただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○藤枝労働条件政策課長 労働条件政策課長です。政府への要請というお話もありましたので、一言御回答させていただきます。まず、最初の自動車運転の業務については、自動車運転者の長時間労働の是正、それから過労死防止、これは大変重要な課題だと認識しております。先ほどの御発言にもありましたように、自動車の運転については、いわゆる手待ち時間とか運転時間とか、そういう業務の特殊性を踏まえて、休憩時間も含めた拘束時間の規制をしようという趣旨で、今、お話があった自動車運転者の労働時間等の改善基準を定めて、これを労働基準監督機関、それから地方の運輸局とも協力をしまして、かなり指導を徹底してこれまでもきているところですが、残念ながら、トラック等で言えば 7 割近い違反率がまだ見られるとか、そういう状況の中で今の物流が動いているという現実があります。

 今回の実行計画にも書かれたように、貨物運送等については、荷主都合による手待ち時間、倉庫の前で待っている時間とか、必ずしも運送事業者だけでは解決できない課題もあり、そういった実態を踏まえた対応ということで、この実行計画において、 5 年後にまずは年 960 時間、そして将来的には一般則の適用を目指すことが掲げられたところです。計画にも書いてありますように、施行に向けて、荷主を含めた関係者で構成する協議会で労働時間の短縮策などを検討するなど、長時間労働の是正をするための環境整備を強力に推進することが明記されているところです。私どもとしても、国交省をはじめとした関係省庁と速やかに協議の場をどう設定するかからの議論になりますが、その場を設定して、荷主も入った形での環境整備を強力に進めていきたいと思っております。また、建設業についても同じように、将来的には一般則を目指すことが掲げられています。こちらも、発注者も含めた協議の場を設定したいと思っておりますので、引き続き取り組んでいきたいと思っております。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○秋田委員 今の関連です。御承知のように物流業としても、労働時間の短縮、長時間労働の防止については、各企業が全力を挙げて取り組まなければならない課題だと認識をしております。ただ昨今は、物流に対する国民的な認知も上昇してきましたが、震災等で物流が止まって初めて物流が重要な社会インフラであるという認識も起きてくるような、それほど普段は目立たない業界であります。そういったこと、あるいは今、事務局からもありましたように、荷主都合の手待ち時間とか、事業者の自助努力ではいかんともし難い背景が多々存在しているのも事実です。このようなことを踏まえて、この実行計画では、一定の着実なステップが踏めるような措置が提示されていると理解していますので、是非、実態に即した着実な改善が図られるよう取組をやっていただきたいと考えております。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○川野委員 先ほど御提示いただきました資料 No.3 の論点 ( ) について、また、先ほど来、各委員から出ております上限規制の実効性を高める意味での御発言をさせていただければと思います。論点(案)では、1時間外労働の上限規制の「( 4 )その他」に当たるのかもしれませんが、御存知のとおり、労働基準法第 36 条の 36 協定の締結に当たっての締結主体は、過半数を占める労働組合があれば労働組合、ない場合は過半数を代表する者が労働者の代表ということになっています。この点、第 120 回の当分科会の中で提示いただいた資料の中には、約 4 割の企業において過半数代表者の不適切な選出がされているというデータが提示されています。その中身を見てみますと、社員会、親睦会などの代表者が自動的に過半数代表になっている例や、会社側が指名したことで選ばれている所が 4 割に及ぶということです。こうした実態にあることを踏まえて、罰則付き時間外労働規制の実効性担保のためには、 36 協定の適正化が必要であり、過半数代表の選出手続の厳格化及び適正化等の検討をすることも必要であると考えております。

 加えてもう一点は、罰則と監督体制に関する部分です。時間外労働規制に違反した場合の罰則をどのように考えるのかについては、働き方改革実行計画の中に記載がないわけです。そこの点についても議論をする必要があるのではないかと思っておりますので、申し上げておきたいと思います。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

○八野委員 今の所と関係し、罰則と監督体制というか、そういう観点から少し発言させていただきたいと思います。労使合意や実行計画などの根底にあるのは、人たるに値する生活を営むという考え方がそのベースにあるのだと思います。ある方が、「働く者の健康なくして健全な経営はない」ということを言われております。先ほどもあったように、時間外労働規制は長時間労働の文化を変えることになります。

 その前提となるわけですが、御承知のとおり 36 協定、労基法第 36 条というのは、当該労使の協定を締結して、これを労基署に届けることによって、労基法の第 32 条で定められた法定時間を超えて労働をさせたり、又は労基法第 35 条で定められた法定休日に労働をさせたりすることが認められるということです。労使協定を締結し、労基署に届けることが、まず前提であるということになります。

 第 119 回労働条件分科会ということで少し前になりますし、資料も少し前のものになるわけですが、その際の資料をもとに少し実態を見ていったときに、労働協約の存在を知らない使用者ということで言うと少し語弊があるかもしれませんが、「時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結の有無等」という調査結果が出ています。

 出典は平成 25 年労働時間総合実態調査ということなので、少し古いと思うのですが、そこの中に「協定あり」という事業所が 55.2 %、「協定なし」の事業所が 44.8 %となっています。「協定なし」の中で「時間外・休日労働がない」という所が 43 %になっているわけですが、これを裏返して言うと、「協定なし」の事業所の中で協定を取らないで時間外・休日労働を実行している所は、逆に言うと 57 %あるとも読めるわけです。さらに、「時間外労働・休日協定の存在を知らなかった」という事業場は 35 %。それと、非常に残念ですが、「時間外労働・休日労働に関する労使協定の締結・届出を失念していた」という事業場が 14 %あるという結果が、実際出てきているわけです。

 こういう実態に対して、我々はこの場の中でもどうしていかなくてはいけないのかを真剣に話していく必要があると思っています。今回、罰則付き時間外労働の上限規制ということになっていますので、この理解をどこまで浸透させていくのかが、国としても重要な責務であると思います。この点は、例えば過労死の防止に関しても、それは国の責務ということが法の中にも、過労死の大綱等にも示されています。これが 1 点目です。

 もう 1 点は、上限規制の実効性を担保するためにどうしていくのかということです。これは、働き方改革実現会議の中でも、労働基準監督官の数が少ないということでの課題指摘が出ていたと思います。実行計画の中では、企業本社への監督指導等の強化も書かれているということで見ていきますと、社会的なチェック体制をいかに強化していくのか、そういう面からしても、労働基準監督署による監督指導等の徹底・強化という観点からも、監督官の増員や監督体制の整備を図ることが必要なのではないかということを発言させていただきたいと思います。さらに、トータルで考えると、仮に監督官の増員ができたとしても、それだけで問題がすべて解決できるわけではありません。労使の現場における労働時間のルールを正しく設定することであるとか、決めたルールを職場の中で守っていくことが非常に重要な課題だと捉えております。

 労働組合の組織率が決して高くはないというところが、労働側としても反省すべきところかと思いますが、先ほど川野委員からも指摘がありましたとおり、労働組合がない事業所においても、きちんとした協定を結ぶことが重要だろうと思います。そういうことを労働条件分科会の場で提起し、ワークルールの基本的な知識を働く者又は管理する側もしっかりと身に付け、それを実施していかなければ、長時間労働の文化は変わらないということがありますので、罰則や監督体制の論点とあわせて、そういう観点から考えていく必要があるだろうと思っております。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○小林委員 全国中央会の小林です。今の八野委員の御指摘は、以前、私も監督官の数を増やせということをこの分科会で申し上げたと思います。それを記憶に思い出すところですが、今日は 2 つばかりお話させていただきたいと思います。この分科会運営の仕方と、今の八野委員に関連していますが、法施行までの準備期間等について少しお話をさせていただければと思います。

 時間外労働の上限規制については働き方改革実現会議で取りまとめられて、労使合意があって大筋の方向性が示されているわけですから、細かい部分や技術的に検討が必要な部分については、この分科会で真摯に議論していきたいと思っております。そして、本来であれば時間外の上限規制の問題を議論するのに、 6 時から始まるというのが、私はどうも何か納得がいかないところでして、言わば時間外の労働時間にこれを議論するのはいかがなものかと感じております。とはいえ、スピード感を持って対応しなくてはならないことが実行計画のほうにもありますので、この議論についてはスピード感を持って対応したいとは考えております。

 一方、働き方改革の実行計画を見てみますと、資料 No.1-1 8 ページに「法施行までの準備期間の確保」があります。「中小企業を含め、急激な変化による弊害を避けるため、十分な法施行までの準備期間を確保する」と記載されているところでして、この準備期間、周知期間、いろいろ相談体制をもって対応すること等々、言わば是非とも準備の期間を十分に確保していただきたいのがお願いです。この分科会の結論を出して法案要綱を出すなど早くするのは結構ですが、大枠が決まった段階でそれをいかに企業に伝えていくかが重要なことだと思っています。

 その上でもう 1 つ考えなければならないのが、働き方改革では、時間外労働の上限規制、長時間労働の是正の問題だけではなくて、同一労働・同一賃金についても、言わば法改正をして、その対応が企業には迫られているわけです。これも同じようなタイミングで検討・議論され、国会に改正法案が上がっていくのだと承知しているところです。中小企業にとっては、これも大変大きな課題だと認識しております。

 それらのものを踏まえ中央会としても、働き方改革に関連して 9 つのテーマで幅広くありますが、いろいろな対応策の改正内容等については企業には周知していきたいと思いますし、いろいろな相談にも乗っていきたいと思います。是非とも厚生労働省におかれましては、より一層の周知の活動を徹底していただきたいのがお願いですし、相談体制、これもしっかり取っていただきたい。企業の相談、労働者からの相談というような体制を作っていただきたいと。さらには、八野委員が言われていたような監督体制の整備もしっかり行っていただくことをお願い申し上げます。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○冨田委員 私からは 2 点、論点 ( ) について、上限規制を導入するに当たって、その実効性を高めていくための観点からの要望が 1 点と、健康確保措置の観点で、 1 点論点として含めていただきたい点を申し上げたいと思います。

1 点目ですが、時間外労働の上限規制を実効性あるものとしていくためには、労働時間を適正に把握していくことが大変必要だと思っています。本年 1 月に労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に対するガイドラインが改めて策定されたところではありますが、このガイドラインの中では、管理・監督者やみなし労働時間制の労働者については、対象者から除かれている状況にあります。

 ただ、一方でこのガイドラインの中には、ガイドラインが適用されない労働者についても健康確保を図る必要があり、適正な時間管理を行う責務があるということも記載がされています。安全配慮義務の観点から、そして時間外労働の上限規制の実効性担保の観点からも、健康管理時間として、管理・監督者を含む全ての労働者の労働時間を適正に把握する仕組みについて論点に加えていただければと思っています。

2 点目は健康確保措置ですが、先ほどの適用除外の業務の中の、新技術・新商品開発の研究開発業務については、現行どおり上限規制の適用除外とするとされています。ただ、一方で、こうした業務に従事する労働者の方は、仕事の進め方に裁量を持っているとはいえ、実際には長時間労働を強いられているケースも大変多く、健康確保措置の充実、これは避けて通れないと思っています。

 実行計画の中では、実効性ある健康確保措置を課すことが前提とされておりますが、具体的な措置の検討に当たりましては、こちらの例示にありますように、例えば医師による面接指導や代替休暇の付与のタイミングについて、どのタイミングでそうした面接を行うのか若しくは休暇を与えるのか、そうしたことに関しても、十分に予防措置を踏まえた観点からこうした内容が議論されていくようにお願いさせていただきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○柴田委員 勤務間インターバルについて、少し申し上げたいと思います。時間外労働の上限規制だけではなく、勤務間インターバルも重要な論点だと思っております。私どもも、「協約から法律へ」ということを合言葉にして、春闘を含めて、その導入に向けた取組を進めてきたところです。今回、努力義務ということになりましたが、勤務間インターバル導入に当たりましては、当然、業務の特性や職場に見合った制度を労使間で話し合って導入することが大切だと認識しております。また、今年度から職場意識改善助成金に、勤務間インターバル導入コースが新設されたところです。今後、検討会が立ち上がるということですが、普及促進に向けて労使の話合いを促進し、具体的な方策を立てていただくこととともに、実行計画には仕事と子育て・介護を無理なく両立させるという言葉もありましたし、健康確保の観点もありますので、そうしたことをしっかりと実行に結び付けるような対策を講じるべく検討していただきたいことを申し上げておきたいと思います。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。

○村上委員 時間のない中ですが、 2 点申し上げます。資料 No.1-1 9 ページの実行計画における現行の適用除外業務等の取扱いの部分です。医師の業務において、医師法に基づく応召義務の特殊性があること自体は理解しております。ただ、勤務医は紛れもなく労働者ですので、その観点が必要だということです。今後、 2 年後を目途とした検討の場においても、働く人、医師も参加する中で、救急や産科や小児科などをはじめとした勤務医の厳しい業務の実態も、是非把握した上で対策を講じていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 先ほど小林委員から施行の時期についての御意見がありましたが、事業活動も大切であることは重々承知しておりますし、周知も必要だと考えておりますが、労働者の命や健康の問題でもありますので、スピード感を持って施行をしていただきたいことも、意見として申し上げておきたいと思います。

○荒木分科会長 ありがとうございました。今日はもう 1 つ議題があります。この分科会も時間外労働となると問題ですので、次の議題 (2) 「その他」について、事務局から資料 No.4 に基づいて御説明をお願いします。

○平嶋勤労者生活課長 勤労者生活課長の平嶋です。資料 No.4 「国家戦略特別区域におけるテレワーク推進センターの設置について」ということで、 1 件報告があります。働き方改革の一環でテレワークの推進をしておりますが、今般、厚労省と地方公共団体が連携し、テレワークを導入しようとする企業等に対して、各種相談・支援をワンストップで行うテレワーク推進センターを設置する内容を含む特区法改正案が提出されております。平成 29 年度については、この要望を出した東京において、この事業を実施する予定としております。

 東京についてですが、設置主体は国と東京都による共同設置とし、対象者は、都内企業の人事・労務・ IT 部門等の担当者です。国はこれまでの知見を活かし、専門的な助言・相談を行うこととし、都は独自にワーク・ライフ・バランス施策を実施しておりますので、その登録企業などを中心に対象企業の堀り起こしを行うということで、その相乗効果を活かし、情報提供・相談・助言等をワンストップで実施していきたいと思っております。

 スケジュールですが、 2 21 日の国家戦略特区諮問会議で追加の規制改革事項等として取りまとまっております。それから、 3 10 日の閣議決定により、国家戦略特区法に位置付ける改正法が提出されております。この件は、規制改革案件というわけではありませんが、意欲ある自治体に国が協力することを約束することになっております。

 東京都との関係では、現在、事業の詳細なスキームを相談しており、平成 29 年、今年の夏に設置を目指しております。内閣府の法案になりますが、関連する動きとして御報告させていただきます。以上です。

○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの資料 No.4 の説明について、何か御意見、御質問等があればお願いします。特によろしいですか。まだ若干時間もありますので、先ほどの資料 No.1 3 についての更なる御発言の御希望があれば承りますが、いかがですか。特によろしいですか。それでは、本日は新しい体制での第 1 回目の労働条件分科会でしたが、重要なテーマですので、今後も更に議論を深めていきたいと考えております。では、次回の日程について事務局からお願いします。

○中嶋調査官 次回の労働条件分科会の日程・場所について、調整の上お知らせをさせていただきます。

○荒木分科会長 本日の議事録の署名ですが、労働者代表の冨田委員、使用者代表の早乙女委員にお願いすることとします。それでは、本日の分科会は以上とします。どうもありがとうございました。


(了)

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